本発明は、可変焦点レンズ装置に関するものであり、より具体的には液体界面の形状をアクチュエータで駆動することにより焦点を可変とするレンズ装置に関するものである。
従来の可変焦点レンズ装置の代表的なものとして、複数組み合わせした固体レンズの一部を光軸方向に可動とするものがある。しかし、この方式では光軸方向への移動距離の制約から薄型化が困難であり、これに対して薄型化が可能な液体レンズを用いた可変焦点レンズが提案されている。
従来の液体レンズを用いた可変焦点レンズ装置としては、屈折率の異なる2液界面により形成された液滴をレンズとし、かつ一方の液体をイオン導電性、もう一方の液体を絶縁性とし、これらの2液界面に設けた電極と、イオン導電性の液体中に設けた対向電極との間に電圧を印加することにより、液滴の形状を変化させるものがあった。例えば特許文献1にはこのような構成の液体レンズが開示されている。電圧の印加でこのような2液界面の形状を変化できるのは2液界面と電極よりなる、液体―液体―固体(電極)界面の表面張力バランスが、電圧印加により変化することを主な駆動原理としており、このような現象は、エレクトロウエッティング現象と呼ばれている。特許文献1の模範的な実施形態では、印加する電圧は250Vとしており、比較的高い電圧印加を要する。
また、特許文献2には、エレクトロウエッティング現象を利用した別の可変焦点レンズ装置が開示されている。電圧印加によりレンズ形状の優れた調整性能を実現する目的で、2液界面の接触角のヒステリシスやスティックスリップを軽減するため、電極表面に絶縁層と、さらに液界面と接する潤滑層をその上に形成する構成が開示されている。特許文献2中の実施形態の一例としては、ポリイミド誘電体層の上に高フッ化ポリマーの薄膜を形成するとしている。2液界面の接触角変化には、同時に液体―液体―固体界面点の位置移動を伴うのでその制御は十分に濡れ性を制御された表面上でなされる必要があり、非常に小さな表面張力のバランスで制御されているため、外力による外乱に弱い難点がある。
特表2001−519539号公報
特開2003−177219号公報
前記背景技術で述べたエレクトロウエッティング現象を利用した可変焦点レンズ装置では、非常に小さな表面張力のバランスで制御されているため、外力による外乱に弱い欠点がある。
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、外力による外乱に対して液体レンズの形状を安定に保持できる可変焦点レンズ装置を提供するものである。
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明によれば、第1の液体と、
前記第1の液体と混和せずに前記第1の液体との間で界面を形成可能でかつ前記第1の液体とは異なる屈折率を持つ第2の液体と、
前記第1の液体と前記第2の液体が封止されるセルと、
前記セル内で前記第1の液体と前記第2の液体の2つの液体の界面がエッジ部で固定されかつ前記2つの液体の界面に当接した状態で移動可能な開口部材と、
前記開口部材に連結されて、前記開口部材を移動させることにより、前記開口部材の開口部内に形成された液体レンズの前記2つの液体の界面の形状を制御して、前記液体レンズによる焦点の位置を可変とするアクチュエータとを備える可変焦点レンズ装置を提供する。
以下説明するように、本発明によれば、前記2つの液体の界面が、前記2つの液体の界面に当接する前記開口部材の前記エッジ部で固定されており、前記開口部材に連結された前記アクチュエータで前記開口部材を駆動することにより、前記2つの液体の界面の形状を制御して、前記液体レンズによる焦点の位置を可変とする構成により、前記2つの液体の界面が前記開口部材の前記エッジ部で固定されているため、外力による外乱に対して液体レンズの形状を安定に保持できるという効果を有する。
さらに、前記背景技術で述べたエレクトロウエッティング現象を利用した可変焦点レンズでは、比較的大きな電圧印加を要するという欠点があったが、本発明では、駆動に高電圧を要するエレクトロウエッティング現象を用いないため、低電圧駆動型のアクチュエータで駆動することができ、従って昇圧回路を省くことができて省電力の可変焦点レンズ装置を提供することができる。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1Aは、本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図であり、
図1Bは、本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図であり、
図1Cは、本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置の平面図であり、
図1Dは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の液体レンズが形成される物理的メカニズムを説明するための原理説明図であって、開口部材が第2の液体中にあって、2液の界面を第1の液体に押し込む前の状態を示す図であり、
図1Eは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の液体レンズが形成される物理的メカニズムを説明するための原理説明図であって、開口部材を第1の液体の側に押し込んだ後の状態を示す図であり、
図2は、本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置のアクチュエータの動作原理を示す断面図であり、
図3は、本発明の第2実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図であり、
図4は、本発明の第2実施形態における可変焦点レンズ装置のアクチュエータの動作原理を示す断面図であり、
図5は、本発明の第3実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図であり、
図6は、本発明の第3施形態における可変焦点レンズ装置のアクチュエータの動作原理を示す断面図であり、
図7Aは、本発明の前記第1〜第3実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材の平面図であり、
図7Bは、本発明の前記実施形態の変形例にかかる可変焦点レンズ装置の楕円形状の開口部材の平面図であり、
図7Cは、本発明の前記実施形態の別の変形例にかかる可変焦点レンズ装置の矩形状の開口部材の平面図であり、
図8Aは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材の断面図であり、
図8Bは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材の1つの例のエッジ部の拡大断面図であり、
図8Cは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材の別の例のエッジ部の拡大断面図であり、
図9Aは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材のある曲率半径を有するエッジ部の拡大断面図であり、
図9Bは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材の別の曲率半径を有するエッジ部の拡大断面図であり、
図10は、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材のエッジ部の構成する別の例を示す断面図であり、
図11は、本発明の第4実施形態であって、本発明の前記第1から第3実施形態のいずれかの可変焦点レンズ装置を適用した撮像装置のブロック図である。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する前に、先ず本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、第1の液体と、
前記第1の液体と混和せずに前記第1の液体との間で界面を形成可能でかつ前記第1の液体とは異なる屈折率を持つ第2の液体と、
前記第1の液体と前記第2の液体が封止されるセルと、
前記セル内で前記第1の液体と前記第2の液体の2つの液体の界面がエッジ部で固定されかつ前記2つの液体の界面に当接した状態で移動可能な開口部材と、
前記開口部材に連結されて、前記開口部材を移動させることにより、前記開口部材の開口部内に形成された液体レンズの前記2つの液体の界面の形状を制御して、前記液体レンズによる焦点の位置を可変とするアクチュエータとを備えることを特徴とする可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、前記2つの液体の界面が、前記2つの液体の界面に当接する前記可動な開口部材のエッジ部で固定されているから、外力による外乱に対して前記液体レンズの形状を安定に保持することができる。さらに、駆動に高電圧を要するエレクトロウエッティング現象を用いないため、低電圧駆動型のアクチュエータで駆動することができる。
本発明の第2態様によれば、前記第1の液体が非水溶性であり、前記アクチュエータが電気刺激型のポリマーアクチュエータであり、かつ前記電気刺激型のポリマーアクチュエータが、前記非水溶性の前記第1の液体中に内包されていることを特徴とする第1の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、アクチュエータが電気刺激型のポリマーアクチュエータであり、前記非水溶性の第1の液体中に内包されているため、水分を遮断した環境下でポリマーアクチュエータを動作させることができ、水分の存在下での劣化を防止することができ、サイクル寿命、信頼性に優れたものとすることができる。
本発明の第3態様によれば、前記非水溶性の第1の液体がイオン性液体であり、前記電気刺激型のポリマーアクチュエータが、前記イオン性液体のアニオン又はカチオンの出入りに伴うイオン駆動型のポリマーアクチュエータである第2の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、低い電圧で駆動可能であるとともに、駆動に要するアニオン又はカチオンが第1の液体であるイオン性液体から供給できるため、アクチュエータに必要な電解質層を兼ね備えることができ好都合である。
本発明の第4態様によれば、前記非水溶性の第1の液体がエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)であることを特徴とする第3の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、イオン半径が比較的大きい有機カチオン又はアニオンの出入りに伴うポリマーの伸縮を利用することができるので、発生変位の大きなアクチュエータとすることができる。
本発明の第5態様によれば、前記第2の液体が水溶性であり、前記水溶性の第2の液体が水より比重の大きい物質の水溶液であることを特徴とする第2の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、水溶液濃度を変えることにより、水溶液の密度を精密に調整することが可能となる。
本発明の第6態様によれば、前記水溶性の第2の液体がポリタングステン酸ナトリウム水溶液であることを特徴とする第5の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、比較的密度の大きいイオン性液体に対して、広範囲の密度の水溶液を得ることができる。
本発明の第7態様によれば、前記アクチュエータが、薄板状の屈曲動作する電気刺激型のポリマーアクチュエータであることを特徴とする第1の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、2つの液体の界面の形状変化に要する開口部材の移動距離は小さいので薄型とすることができる液体レンズの特徴を活かし、薄型の可変焦点レンズ装置を提供することができる。
本発明の第8態様によれば、前記第1の液体と前記第2の液体及び前記開口部材がほぼ同じ密度を持つことを特徴とする第1の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、外力による外乱に対してさらに液体レンズの形状を安定に保持できる可変焦点レンズ装置を提供することができる。
本発明の第9態様によれば、前記開口部材が、密度の異なる複数の部材よりなる複合材料であることを特徴とする第8の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、開口部材の密度を、密度の異なる複数部材の含有比率を変化させることにより精密に調整することが可能となる。
本発明の第10態様によれば、前記開口部材に撥水性又は疎水性の表面処理を施すことを特徴とする第1の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、開口部材のエッジ部で固定された2つの液体の界面がより安定に固定される効果を有するとともに、広範囲な開口部材の材質を選択することが可能となる。
本発明の第11態様によれば、前記開口部材が円形であり、前記アクチュエータが、複数個かつ前記円形の開口部材の接線方向沿いにかつ前記液体レンズの光軸回りに点対称に配置され、かつ、前記アクチュエータの全てが同期して駆動制御されることを特徴とする第1の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、前記複数のアクチュエータにより、開口部材を光軸方向沿いに確実に平行移動させることができて、前記開口部材の開口部内に形成された液体レンズの前記2つの液体の界面の形状を精度良く制御できて、前記液体レンズによる焦点の位置を精度よく可変調節させることができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1A及び図1Bは、本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図、図1Cは本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置の平面図(図1A及び図1Bの断面図を下から眺めた、アクチュエータの断面の平面図)を示している。図1Aと図1Bの違いは、液体レンズ6の曲率が異なることであり、このように液体レンズ6の曲率が異なることにより、光軸9上の異なる位置に焦点11をそれぞれ結ぶ様子を図1Aと図1Bに示している。ここでは、図1Aの焦点11の位置が、図1Bの焦点11の位置よりも液体レンズ6に近い位置となっている。
絶縁性の第1の液体1と第1の液体1との上に位置する絶縁性の第2の液体2とは混和せず界面3を形成している。このように混和せず界面3を形成させるためには、第1の液体1と第2の液体2の密度をほぼ等しくすればよい。すなわち、重力の影響による液体レンズ6の歪防止や、落下、衝突等の外力による外乱に強くするには、第1の液体1と第2の液体2との2つの液体の密度がほぼ等しくすることが、より望ましい。
絶縁性のリング状の開口部材4のエッジ部5Aは、第1の液体1と第2の液体2との界面3に当接して、2つの液体1,2の界面(2液界面)3A,3Bを形作っている。ここで、開口部材4の内側の2液界面3Aは、液体レンズ6を形成する2液界面であり、開口部材4の外側の2液界面3Bは、液体レンズ6として機能しない2液界面である。開口部材4はリング状で円形の開口部4aを有し、2液界面3Aの表面張力により円形開口部4aの2液界面3Aは液体レンズ6を形成している。2液界面はエッジ部5A、5Bを越えて濡れ進むことなくこれらのエッジ部で固定される。
ここで、液体レンズ6を形成する2液界面3Aと、液体レンズ6として機能しない別の液界面3Bを設けた理由は、第1の液体1と第2の液体2ともセル14に封止されているので、それぞれの体積は一定であり、開口部材4の開口部4aに形成される液体レンズ6の部位で容積が変わるのを、この別の液界面3Bで吸収することができるようにするためである。開口部材4のエッジ部5Aと同様に、封止部材13に設けたエッジ部5Bでこの液界面を固定することは、外力による外乱に強くする上で好ましい効果がある。
開口部材4の下面の円形凸部4dには、複数のアクチュエータ7のそれぞれの一端が光軸9回りに点対称に連結されており(一例として、図1Cでは、光軸9回りに90度間隔にかつ円形の開口部材4の接線方向沿いに配置された4個のアクチュエータ7のそれぞれの一端が開口部材4に連結されかつそれぞれの他端が後述する封止部材13に連結されており)、全てのアクチュエータ7は、1つのアクチュエータ駆動制御部54により同期して駆動制御されるようにしている。よって、アクチュエータ駆動制御部54の駆動制御の下に、全てのアクチュエータ7の屈曲方向8への同期した屈曲動作により、開口部材4は光軸9の方向に平行移動するように進退駆動される。無限遠から液体レンズ6に入射する光線10は焦点11に集光され、開口部材4の光軸9の方向の位置に応じて、液体レンズ6の曲率が変わり、焦点11の位置が図1Aと図1Bのように移動する。
第1の液体1と第2の液体2、可動な開口部材4及びアクチェータ7は、絶縁性でかつ円板状の透明板12A,12Bと透明板12A,12Bの外周部に円環状に配置されて第1の液体1と第2の液体2とを封止する絶縁性の封止部材13により形成される絶縁性のセル14の内部に収容されている。
このように、前記可変焦点レンズ装置は、円板状の透明板12A,12Bと透明板12A,12Bの外周部に円環状に配置された封止部材13とで構成されたセル14の内部空間に、第1の液体1と第1の液体1との上に位置する第2の液体2とが収納され、かつ、第1の液体1と第2の液体2との界面3に開口部材4が当接され、アクチュエータ駆動制御部54の制御に基づく複数のアクチュエータ7の駆動により開口部材4が光軸6の方向沿いに進退かつ平行移動するとともに、開口部材4の円形の開口部4a内の2液界面3Aで液体レンズ6を構成するようにしている。
このような構成によれば、液界面3が、前記2液の界面3に当接しかつ光軸9の方向に可動な開口部材4のエッジ部5Aで固定されているから、外力による外乱に対して液体レンズ6の形状を安定に保持することができる。さらに、駆動に高電圧を要するエレクトロウエッティング現象を用いないため、下記するように、低電圧駆動型のアクチュエータ7で駆動することができる。
なお、液体レンズ6が形成される物理的メカニズムを、図1D及び図1Eに示す原理説明図(端面図)により説明する。図1D及び図1Eの構成要素は、図1A、図1B及び図1Cと同様であるが、説明の便宜上、アクチュエータ7による駆動部分の構成要素は図1D及び図1Eでは省略している。図1Dは、開口部材4が第2の液体2中にあって、2液(2つの液体1,2)の界面3A,3Bを第1の液体1に押し込む前の状態を示している。図1Eは、開口部材4を第1の液体1の側に押し込んだ後の状態を示している。図1Dにおける2液の界面3A及び3Bは、説明の都合上、平面であるとすると、図1Eにおける2液の界面3A及び3Bは、開口部材4の押し込みによって、上向き凸に湾曲する。このとき、第1の液体1及び第2の液体2の容積はそれぞれ変わらず、かつ、第1の液体1及び第2の液体2はセル14内に密閉されて封止されているから、図1Eのハッチングで示した容積部分A1,A2,A3,B1,B2の容積には次の関係が成り立つ。
A1+A2+A3=B1+B2
ここで、容積部分A1は、開口部材4が第1の液体1内に押し込まれた部分の容積である。容積部分A2は、開口部材4が第1の液体1内に押し込まれたときに、開口部材4の開口部4aの内側の近傍の第2の液体2が開口部材4とともに第1の液体1内に押し込まれる部分の容積である。容積部分A3は、開口部材4が第1の液体1内に押し込まれたときに、開口部材4の開口部4aの外側の近傍の第2の液体2が開口部材4とともに第1の液体1内に押し込まれる部分の容積である。容積部分B1は、開口部材4が第1の液体1内に押し込まれたときに、開口部材4の開口部4aの内側に位置する第1の液体1が開口部4a内で上向き凸に湾曲するように盛り上がる部分の容積である。容積部分B2は、開口部材4が第1の液体1内に押し込まれたときに、開口部材4の開口部4aの外側に位置する第1の液体1が開口部4a外で上向き凸に湾曲するように盛り上がる部分の容積である。
2液の界面3A,3Bにおける表面張力により、開口部材4の開口部4aの内側の液界面3Aは、無重力下では球面になることが知られているが、本発明の前記第1実施形態にかかる液体レンズ6においても、開口部材4のエッジ部5の形状が円の場合には、液体レンズ6は、ほぼ球面レンズになる。特に、2液の密度と開口部材4の密度を合わせることによって構成される、より好ましい実施例の場合には、2液の界面は、無重力と等価な状態となり、2液の界面を真球に、より近づけることができる。
図2は第1実施形態のアクチュエータ7の動作原理を示す断面図である。アクチュエータ7の一例として、導電性のポリマー層20A、20Bが、固体電解質21を挟むことにより短冊状の電気刺激型のポリマーアクチュエータ7を構成しており、アクチュエータ7の固定端となる絶縁性の固定部材32により固定されている。なお、図1A、図1B及び図1Cでは封止部材13がこの固定部材32の機能を兼ねている。導電性のポリマー層20A、20Bには、アクチュエータ駆動制御部54の制御の下にそれぞれ動作制御される電源30及びスイッチ31が接続されており、電源30により電圧を導電性のポリマー層20A、20Bに印加することにより、固体電解質21のイオンが導電性ポリマー20Aと導電性ポリマー20Bとに出入りすることにより屈曲駆動される。なお、図1Aでは、一見すると、2つのアクチュエータ駆動制御部54が存在するように見えるが、理解しやすくするためにそれぞれ図示しているだけであって、実際には、図1Cに示すように、1つのアクチュエータ駆動制御部54ですべての電源30及びスイッチ31を制御することが好ましい。図1Bなど、他の図では、説明しやすくするため、アクチュエータ駆動制御部54と電源30とスイッチ31は、その一部又は全ての図示を適宜省略している。
イオンは、印加電圧の極性に応じた方向に移動し、図2で示す場合では、カチオン(正イオン)が導電性ポリマー層20Aから固体電解質21の方に抜けて導電性ポリマー層20Aが縮み、導電性ポリマー層20Bには逆にカチオンが固体電解質21から入り込み、イオンの嵩が増すことにより導電性ポリマー層20Bが伸びることにより、このアクチュエータ7は下向き凸に屈曲駆動される。図2とは逆の場合では、カチオン(正イオン)が導電性ポリマー層20Bから固体電解質21の方に抜けて導電性ポリマー層20Bが縮み、導電性ポリマー層20Aには逆にカチオンが固体電解質21から入り込み、イオンの嵩が増すことにより導電性ポリマー層20Aが伸びることにより、このアクチュエータ7は上向き凸に屈曲駆動される。前記説明ではカチオンの出入りでアクチュエータ7の屈曲動作原理を説明したが、アニオン(負イオン)の出入り、あるいは両者の出入りでも同様に屈曲動作させることができる。
なお、これらの各屈曲型のアクチュエータ7は平板の薄板状であるので、薄型の可変焦点レンズ装置を構成するのに適している。ここで、一例として、アクチュエータ7を構成する導電性ポリマー層20A及び20Bの厚みはそれぞれ10μm〜25μm程度、固体電解質21の厚みは10μm〜100μm程度とすることができ、アクチュエータ7の総厚みは30μm〜150μm程度の厚みとすることができる。また、一例として、開口部材4の厚みは1mm程度の厚みとすることができるので、アクチュエータ7の厚みはセル14の厚みを薄くする上で制約となることがなく、セル厚みが数mmの薄型の可変焦点レンズ装置を構成することができる。
この電気刺激型のアクチュエータ7は、第1の液体1中に内包するよう配置しており、この第1の液体1を非水溶性の液体とすることで、水分を遮断した環境下で、ポリマーアクチュエータを動作させることができ、水分の存在下での劣化を防止することができ、サイクル寿命、信頼性に優れたものとすることができる。
アクチュエータ7を構成する導電性のポリマー層20A,20Bを構成する導電性のポリマーとしては、ポリマーそれ自体で電子導電性を有する、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェインなどの有機導電性ポリマーや、炭素系微粒子を分散した導電性のポリマーなどが、前述の動作原理で作用させることができる。
以下、この第1実施形態のいくつかの実施例について説明する。
(実施例1)
導電性のポリマーとして、ピロールのモノマーを支持電解質層となるプロピレンカーボネート中に溶解した有機溶媒中で、カーボン電極を析出電極としてガルバノスタットモード(定電流制御モード)にてポリピロールを電解重合により合成した膜を用い、固体電解質として、イオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)をゲル化した膜を用いて、図2で示した構成のアクチュエータを得た。
第1の液体として、メチルフェニル系のシリコーンオイルを用いた。このオイルは非水溶性である。第2の水溶性の液体として、塩化ナトリウム水溶液を用いた。図2に示すごとく、前記アクチュエータは、非水溶性の第1の液体であるシリコーンオイル中に配置した。このような構成のアクチュエータは、±1V〜2Vの低駆動電圧で駆動可能である。
このポリマーアクチュエータでは、主に、EMIカチオンがポリピロール膜に出入りすることにより屈曲駆動される。イオン半径が比較的大きい有機カチオンであるEMIカチオンの出入りに伴うポリマーの伸縮を利用することができるので、発生変位の大きなアクチュエータとすることができる。
本発明のこの第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置において、重力の影響によるレンズの歪防止や、落下、衝突等の外力による外乱に強くするには、第1の液体と第2の液体との2液の密度がほぼ等しくすることが、より望ましい。
本第1実施例で用いたシリコーンオイルの密度を、振動式密度計で計測したところ、1.07g/cm2であった。第2の水溶性の液体としては、塩化ナトリウム水溶液を用いた。振動式密度計で塩化ナトリウムと水との混合比を調整することにより、密度1.07g/cm2の水溶液を精密に調整して得ることができた。両者とも透明の液体で、かつ混和することなく液体レンズが形成できた。屈折率をアッベ屈折率計を用いて測定したところ、シリコーンオイルの屈折率は1.51であり、前記塩化ナトリウム水溶液の屈折率は1.35であり、異なる屈折率を持つ液体レンズが形成可能であることが分かった。小さい曲率変化で大きな焦点位置変化を得る上で、屈折率差は大きいほうが望ましい。同等の密度及び異なる屈折率を持つ材料の組み合わせを得るために、第1の非水溶性の液体として、前記シリコーンオイル系以外にも、各種有機物とその混合物を適用することが可能である。さらに、前記第1の非水溶性の液体は、外力による外乱に強くするため、その流動性を抑制する目的で増粘剤を添加したものであったり、高分子クロスリンク構造を有するゲル化された流動体であってもよい。
なお、本実施例の第2の水溶性の液体として塩化ナトリウム水溶液の例を述べたが、低温での使用を可能とするためエチレングリコール水溶液等の不凍性の液を使用することがより好ましい。
(実施例2)
実施例1と同様、導電性のポリマーとして、ピロールのモノマーを支持電解質層となるプロピレンカーボネート中に溶解した有機溶媒中で、カーボン電極を析出電極としてガルバノスタットモード(定電流制御モード)にてポリピロールを電解重合により合成した膜を用い、固体電解質として、イオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)をゲル化した膜を用いて、図2で示した構成のアクチュエータを得た。
第1の液体として、この固体電解質ゲルの電解質材料として用いたイオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)を用いた。この電解液は、EMI有機カチオンとTFSIアニオンよりなるイオン結合性の常温で液体である常温溶融塩であり、非水溶性である。
このような構成のアクチュエータは、±1V〜2Vの低駆動電圧で駆動可能であるとともに、駆動に要するアニオン又はカチオンが、第1の液体であるイオン性液体から供給できるため、アクチュエータに必要な電解質層を兼ね備えることができて好都合である。
このポリマーアクチュエータでは、主に、EMIカチオンがポリピロール膜に出入りすることにより屈曲駆動される。イオン半径が比較的大きい有機カチオンであるEMIカチオンの出入りに伴うポリマーの伸縮を利用することができるので、発生変位の大きなアクチュエータとすることができる。
イオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)の密度を振動式密度計で計測したところ、1.52g/cm2であった。第2の水溶性の液体として、ポリタングステン酸ナトリウム水溶液を用いた。ポリタングステン酸ナトリウムは、水より比重の大きい水溶性の物質で、広範囲の密度を持った水溶液を得ることができる。ポリタングステン酸ナトリウムを質量比で40%〜42%の水溶液を作製し、振動式密度計で水との混合比を調整することにより、密度1.52g/cm2の水溶液を精密に調整して得ることができた。両者とも透明の液体で、かつ混和することなく、液体レンズが形成できた。
屈折率をアッベ屈折率計を用いて測定したところ、エチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)の屈折率は1.43、前記ポリタングステン酸ナトリウム水溶液の屈折率は1.40であり、異なる屈折率を持つ液体レンズが形成可能であることが分かった。
次に、リング状の開口部材の材質として、それぞれ、密度の異なる複数の部材よりなる複合材料としてガラス繊維含有ポリアミド(密度1.65g/cm2)、密度の異なる複数の部材よりなる複合材料としてガラス繊維含有ポリフェニレンサルファイド(密度1.66g/cm2)、ポリエーテルエーテルケトン(密度1.30g/cm2)、PTFE(密度2.14g/cm2)の3種類を用いて、前記2液界面にこのリング状の開口部材を当接させた状態で1Gの重力加速度で加振試験を実施したところ、ガラス繊維含有ポリアミドのリング状の開口部材の場合と、ガラス繊維含有ポリフェニレンサルファイドのリング状の開口部材の場合には、液体レンズ界面の乱れがほとんど認められなかったが、PTFEのリング状の開口部材の場合には明らかな液体レンズ界面の乱れが認められた。この結果、本発明のこの第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置を、落下や衝突などの外力による外乱に強くするためには、第1の液体1と第2の液体2との2液の密度に合せて、開口部材4の密度もほぼ同じ(具体的には、例えば、差が±0.3g/cm2以内)にすることが好ましいことが分かった。
実験に用いたガラス繊維含有プラスチックはガラス繊維の含有比が50%のものであったが、この含有比を調整することにより、開口部材4の密度を第1の液体1と第2の液体2の密度に精密に合せることができる。
実験に用いたリング状の開口部材はいずれもイオン性液体と濡れにくい傾向があったが、開口部材4に撥水性又は親水性の表面処理を施すことにより、開口部材4のエッジ部5Aで固定された2液界面3が、より安定に固定される効果を有するとともに、開口部材4の材質を広範囲に選択することが可能である。特に、開口部材4の、第1の液体1と第2の液体2と接する部位の濡れ性を、表面処理により調整することにより、エッジ部5Aの固定を、より強固なものにすることができる。
(実施例3)
次に、リング状の開口部材のエッジ部の形状について実験した結果について述べる。
図8Aに示すリング状の開口部材4の断面図において、エッジ部5Aを拡大した断面図を図8B及び図8Cに示す。図8Bはエッジ部5Aの角度θを鋭角に形成した場合、図8Cはその角度θを鈍角にした場合をそれぞれ示す。ガラス繊維含有ポリフェニレンサルファイド製の内径4.5mm、外径9mm、厚み0.8mmのリング状の開口部材4を用い、その内径のエッジ部5Aが様々な角度を持つリング状の開口部材4を作製した。エチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)を第1の液体1として用い、第2の液体2として、実験の便宜上、密度合わせをしていない純水を用いて、これらの2液界面3に、リング状の開口部材4を第2の液体2から押し込み、エッジ部5Aで2液界面が固定される様子を観察した。
以下の表1はこの実験の結果をまとめたもので、図8Bのようにエッジ部5Aの角度θが鋭角の場合(30°、45°、70°)及び直角(90°)の場合、エッジ部5Aによる2液界面3の固定はいずれも良好であった。しかし、図8Cのようにエッジ部5Aの角度θが鈍角の場合、110°ではリング状の開口部材4の押し込みが進み、液面曲率が小さくなると、2液界面3がリング状の開口部材4の内側の側面4A側に濡れ進む現象が観測された。さらにエッジ部5Aの角度θが135°及び150°の場合には、2液界面3はエッジ部5Aではなく、エッジ部の反対側のエッジ部5A−1で固定することが観測された。以上の観察結果から、エッジ部5Aの角度θは鋭角又は直角が好ましく、鈍角は適用可能な範囲はあるが、好ましくないことがわかった。
以上の実験で用いたリング状の開口部材4のエッジ部5Aの曲率はR0.1mm以下であったが、この曲率半径を0.5mmとしたものを作製し、これを用いてエッジ部5Aの固定の様子を観測した。図9A及び図9Bにエッジ部5Aの断面図を示す。図9Aは、リング状部材4を2液界面3Aに押し込み開始した段階での2液界面3Aの様子を示す。2液界面3Aは、エッジ部5Aである、曲率半径0.5mmの面取り部5Aを濡れ進むことが観測された。図9Bは、さらに、リング状の開口部材4を押し込んだ状態を示しており、2液界面3Aがエッジ部5Aである面取り部5Aと側面4Aの境界部まで濡れ進んだ以降は、この部位で2液界面3Aが固定されているのが観測された。以上の観察からエッジ部5Aに曲率を持たせることは適用可能であるが、固定を強固にする観点では、シャープなエッジ部5Aであることが望ましい。
リング状の開口部材4の開口部4aの内径は、1mm以下のマイクロレンズの領域から数10mm程度のものが適用可能と思われるが外力による外乱に強くする観点では小径の方が好ましい。リング状の開口部材4の厚みは、同様に外力による外乱に強くする観点では、強度上、その形状を保持できる範囲で例えば0.2mm〜0.5mm程度の薄く、それ自体の質量が小さいものが好ましい。
開口部材4のエッジ部5Aは、開口部材4の開口部4aの上下いずれかの端縁に限るものではなく、開口部材4の開口部4aの内壁面の中間部に形成されるようにしてもよい。例えば、図10は、開口部材4のエッジ部5Aの構成の別の例を示す断面図である。第2の液体2に親水性の表面処理膜15Aを開口部材4の開口部4aの内壁面の第2の液体側(図10では例えば上半分側)に形成し、第2の液体2に撥水性の表面処理膜15Bを開口部材4の開口部4aの内壁面の第1の液体側(図10では例えば下半分側)に形成し、その表面処理膜15Aと表面処理膜15Bとの境界にエッジ部5Aを構成した例である。具体的には、第2の液体2が水溶液の場合、親水性処理としてシランカップリング剤膜を形成し、撥水性処理としてテフロン(登録商標)系膜を形成することにより、このようなエッジ部5Aを構成することができる。このようなエッジ部5Aは、開口部材4の開口部4aの内壁面の中央部分に形成するものに限らず、表面処理膜15Aと表面処理膜15Bとの領域を適宜調整して形成することにより、内壁面の任意の場所に形成することができる。
以上、2液の界面3Aを開口部材4のエッジ部5Aで固定する方法に関して述べたが、2液界面3Aがこのエッジ部5Aを越えて濡れ進み、2液界面3Aが、より確実に破壊されないようにするため、開口部材4の可動範囲を制限することにより、2液界面3Aのエッジ部5Aでの変化角度に制限を加えることがより望ましい。開口部材4の可動範囲を制限する具体的な例としては、図1Eに示すように、ストッパとして機能する突起4pを透明板12Bの内面に配置して、開口部材4が突起4pに接触することにより、開口部材4の下限位置を規制するようにしてもよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態における可変焦点レンズ装置について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図である。アクチュエータ7Aの配置は、図1Bの平面図でのアクチュエータ7の配置と同様であるので、平面図は省略した。図4は、本発明の第2実施形態における可変焦点レンズ装置のアクチュエータ7Aの動作原理を示す断面図である。この第2実施形態では、電気刺激型のアクチュエータ7Aが、第1の液体1である電解液中に内包させている特長を活かし、この第1の液体1中に、他の電極(対向電極22A,22B)を別に設けることにより、アクチュエータ7Aの駆動性能を向上させるものである。アクチュエータ7Aも、第1実施形態のアクチュエータ7と同様に、アクチュエータ駆動制御部54の制御の下に駆動制御される。
第1実施形態と同様、導電性のポリマー層20A,20Bを構成する導電性のポリマーとして、ピロールのモノマーを支持電解質層となるプロピレンカーボネート中に溶解した有機溶媒中で、カーボン電極を析出電極としてガルバノスタットモード(定電流制御モード)にてポリピロールを電解重合により合成した膜を用い、固体電解質として、イオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)をゲル化した膜を用いて、図4で示した構成のアクチュエータ7Aを同様に得た。第1の液体として、この固体電解質ゲルの電解質材料として用いたイオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)を用いた。
このような構成のアクチュエータ7Aは、対向電極22A及び対向電極22Bにも、図4中で示した極性で(言い換えれば、導電性のポリマー層20A,20Bと対向電極22A及び対向電極22Bとは、第1の液体1を介して互いに対向する電極同士の極性は異なるように)電源30から電圧を印加することにより、伸縮する導電性のポリマー層20A及び20Bの両面から(固体電解質21側及び第1の液体1である電解液側の両方の界面から)イオンの出入りが可能であるため、大きな駆動変位が得られるとともに、速やかにイオンの出入りが可能であることから、アクチュエータ7Aに高速な駆動動作をさせることができる。なお、図4では、一例として、カチオン(正イオン)が、導電性ポリマー層20Aから、導電性ポリマー層20Aと対向電極22Aとの間の第1液体1の方に及び固体電解質21の方に抜けて、導電性ポリマー層20Aが矢印40Bのように縮み、導電性ポリマー層20Bには、逆に、カチオンが、固体電解質21から及び導電性ポリマー層20Bと対向電極22Bとの間の第1液体1からそれぞれ入り込み、イオンの嵩が増すことにより導電性ポリマー層20Bが矢印40Aのように伸びることにより、このアクチュエータ7Aは下向き凸に屈曲駆動されている。電圧を逆に印加すれば、逆の動作がそれぞれ行なわれる。
なお、本発明においては、前記実施例1及び実施例2で述べた2液材料以外にも、各種オイルと有機溶媒との組み合わせ、例えばシリコーンオイルとアルコール類の組み合わせや、各種イオン液体と有機溶媒との組み合わせ等、混和せず屈折率の異なる2液の組み合わせを用いるようにしてもよい。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態における可変焦点レンズ装置について説明する。
図5は本発明の第3実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図である。アクチュエータ7Bの配置は、図1Bの平面図のアクチュエータ7の配置と同様であるので、平面図は省略した。図6は、本発明の第3実施形態における可変焦点レンズ装置のアクチュエータ7Bの動作原理を示す断面図である。この第3実施形態はこれまでに述べた第1及び第2実施形態と異なり、固体電解質21を用いない形式のアクチュエータ7Bの場合であり、電気刺激型のアクチュエータ7Bが、第1の液体1である電解液中に内包させている特長を活かし、電解液1中に他の電極22を別に設けることによりアクチュエータ7Aの構成を簡便化でき、従って製造のしやすい構成としたものである。アクチュエータ7Bも、第1実施形態のアクチュエータ7と同様に、アクチュエータ駆動制御部54の制御の下に駆動制御される。
図6に示した通り、この構成のアクチュエータ7Aでは、導電性のポリマー層20と対向電極22との間に電圧を電源30から印加することにより、屈曲動作するものである。伸縮する導電性のポリマー層20は、非伸縮性部材23と貼り合わされた構成となっており、導電性のポリマー層20がイオンの出入りにより伸縮するのに対して、非伸縮性部材23は伸縮しないため、結果として、導電性のポリマー層20と非伸縮性部材23とが貼り合わされて構成されたアクチュエータ7Aが屈曲駆動されることになる。
この構成のアクチュエータ7Aは次ように簡便なプロセスで製作することができた。ポリピロールを電解重合法で形成するためには、析出させるための電極が必要であるので、非伸縮性部材23として機能するポリイミド膜の表面に、先ず金薄膜を蒸着し、この電極(図示せず。)上に伸縮部材として機能するポリピロール膜を直接電解重合して形成することにより、このような、アクチュエータ7Aとして貼り合わせた構造を得ることができた。また対向電極22は、透明板12Bのセル内面上に形成した透明電極とすることもできる。
導電性のポリマーとして、ポリピロール膜を用い、第1の液体としてイオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)を用いた。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態は、本発明の前記第1〜第3実施形態にかかる可変焦点レンズ装置を撮像装置に適用した例である。前記撮像装置のブロック図の一例を図11に示す。
撮像装置は、アクチュエータ駆動制御部54を含む前記可変焦点レンズ装置50と、撮像合焦点判定部55と、撮像板51と、像記録再生部56とより構成されている。
この撮像装置では、アクチュエータ7,7A,又は7Bにより駆動される液体レンズ6を有する可変焦点レンズ装置50の光軸9の付近にある被写体52の像を、撮像板51上に、被写体の像53として像を結ばせるため、撮像板51から出力された撮像信号により判定部55で合焦点を判断する。合焦点を判断した判定部55からの信号がアクチュエータ駆動制御部54に入力されて、入力された信号に基づき、アクチュエータ駆動制御部54により、全てのアクチュエータ7,7A,又は7Bを同期して駆動制御する。具体的には、判定部55で焦点が合っていないと判断された場合には、アクチュエータ駆動信号が判定部55からアクチュエータ駆動制御部54に入力されて、入力された信号に基づき、アクチュエータ駆動制御部54により、全てのアクチュエータ7,7A,又は7Bを同期して駆動されて、開口部材4が光軸9の方向沿いに進退するように平行移動して、液体レンズ6の曲率を変化させて、焦点11の位置を調節する。判定部55で合焦点と判断されたとき、アクチュエータ駆動制御部54による全てのアクチュエータ7,7A,又は7Bの駆動を停止するとともに、合焦点された像信号は判定部55から像記録再生部56に送られて、像記録再生部56で記録又は再生される。
なお、前記第1〜第3実施形態の開口部材4は、図7Aに示すようにリング状で円形の開口部4aを持ったものについて述べたが、このような液体レンズ6は、例えば、携帯電話等の薄型携帯端末に搭載するカメラ用可変焦点レンズ装置として有用である。また、図7Bに示すように楕円形の開口部材4Bの開口部4bを楕円にすることにより横長画像の周辺部の歪を補正するようにすることができる。
さらに、開口部材4Cが図7Cに示すように矩形状で矩形の開口部4cを持ったものの場合には液体レンズ6はシリンドリカルレンズを形成する。このようなレンズは例えばプリンター光学系用の可変焦点レンズ装置として有用である。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明の可変焦点レンズ装置は、携帯機器、携帯端末機、電子ペーパーなどに装着される各種光学装置の焦点位置の可変機能(光学変調機能)を付与する装置として利用可能である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
本発明は、可変焦点レンズ装置に関するものであり、より具体的には液体界面の形状をアクチュエータで駆動することにより焦点を可変とするレンズ装置に関するものである。
従来の可変焦点レンズ装置の代表的なものとして、複数組み合わせした固体レンズの一部を光軸方向に可動とするものがある。しかし、この方式では光軸方向への移動距離の制約から薄型化が困難であり、これに対して薄型化が可能な液体レンズを用いた可変焦点レンズが提案されている。
従来の液体レンズを用いた可変焦点レンズ装置としては、屈折率の異なる2液界面により形成された液滴をレンズとし、かつ一方の液体をイオン導電性、もう一方の液体を絶縁性とし、これらの2液界面に設けた電極と、イオン導電性の液体中に設けた対向電極との間に電圧を印加することにより、液滴の形状を変化させるものがあった。例えば特許文献1にはこのような構成の液体レンズが開示されている。電圧の印加でこのような2液界面の形状を変化できるのは2液界面と電極よりなる、液体―液体―固体(電極)界面の表面張力バランスが、電圧印加により変化することを主な駆動原理としており、このような現象は、エレクトロウエッティング現象と呼ばれている。特許文献1の模範的な実施形態では、印加する電圧は250Vとしており、比較的高い電圧印加を要する。
また、特許文献2には、エレクトロウエッティング現象を利用した別の可変焦点レンズ装置が開示されている。電圧印加によりレンズ形状の優れた調整性能を実現する目的で、2液界面の接触角のヒステリシスやスティックスリップを軽減するため、電極表面に絶縁層と、さらに液界面と接する潤滑層をその上に形成する構成が開示されている。特許文献2中の実施形態の一例としては、ポリイミド誘電体層の上に高フッ化ポリマーの薄膜を形成するとしている。2液界面の接触角変化には、同時に液体―液体―固体界面点の位置移動を伴うのでその制御は十分に濡れ性を制御された表面上でなされる必要があり、非常に小さな表面張力のバランスで制御されているため、外力による外乱に弱い難点がある。
特表2001−519539号公報
特開2003−177219号公報
前記背景技術で述べたエレクトロウエッティング現象を利用した可変焦点レンズ装置では、非常に小さな表面張力のバランスで制御されているため、外力による外乱に弱い欠点がある。
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、外力による外乱に対して液体レンズの形状を安定に保持できる可変焦点レンズ装置を提供するものである。
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明によれば、第1の液体と、
前記第1の液体と混和せずに前記第1の液体との間で界面を形成可能でかつ前記第1の液体とは異なる屈折率を持つ第2の液体と、
前記第1の液体と前記第2の液体が封止されるセルと、
前記セル内で前記第1の液体と前記第2の液体の2つの液体の界面がエッジ部で固定されかつ前記2つの液体の界面に当接した状態で移動可能な開口部材と、
前記開口部材に連結されて、前記開口部材を移動させることにより、前記開口部材の開口部内に形成された液体レンズの前記2つの液体の界面の形状を制御して、前記液体レンズによる焦点の位置を可変とするアクチュエータとを備える可変焦点レンズ装置を提供する。
以下説明するように、本発明によれば、前記2つの液体の界面が、前記2つの液体の界面に当接する前記開口部材の前記エッジ部で固定されており、前記開口部材に連結された前記アクチュエータで前記開口部材を駆動することにより、前記2つの液体の界面の形状を制御して、前記液体レンズによる焦点の位置を可変とする構成により、前記2つの液体の界面が前記開口部材の前記エッジ部で固定されているため、外力による外乱に対して液体レンズの形状を安定に保持できるという効果を有する。
さらに、前記背景技術で述べたエレクトロウエッティング現象を利用した可変焦点レンズでは、比較的大きな電圧印加を要するという欠点があったが、本発明では、駆動に高電圧を要するエレクトロウエッティング現象を用いないため、低電圧駆動型のアクチュエータで駆動することができ、従って昇圧回路を省くことができて省電力の可変焦点レンズ装置を提供することができる。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する前に、先ず本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、第1の液体と、
前記第1の液体と混和せずに前記第1の液体との間で界面を形成可能でかつ前記第1の液体とは異なる屈折率を持つ第2の液体と、
前記第1の液体と前記第2の液体が封止されるセルと、
前記セル内で前記第1の液体と前記第2の液体の2つの液体の界面がエッジ部で固定されかつ前記2つの液体の界面に当接した状態で移動可能な開口部材と、
前記開口部材に連結されて、前記開口部材を移動させることにより、前記開口部材の開口部内に形成された液体レンズの前記2つの液体の界面の形状を制御して、前記液体レンズによる焦点の位置を可変とするアクチュエータとを備えることを特徴とする可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、前記2つの液体の界面が、前記2つの液体の界面に当接する前記可動な開口部材のエッジ部で固定されているから、外力による外乱に対して前記液体レンズの形状を安定に保持することができる。さらに、駆動に高電圧を要するエレクトロウエッティング現象を用いないため、低電圧駆動型のアクチュエータで駆動することができる。
本発明の第2態様によれば、前記第1の液体が非水溶性であり、前記アクチュエータが電気刺激型のポリマーアクチュエータであり、かつ前記電気刺激型のポリマーアクチュエータが、前記非水溶性の前記第1の液体中に内包されていることを特徴とする第1の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、アクチュエータが電気刺激型のポリマーアクチュエータであり、前記非水溶性の第1の液体中に内包されているため、水分を遮断した環境下でポリマーアクチュエータを動作させることができ、水分の存在下での劣化を防止することができ、サイクル寿命、信頼性に優れたものとすることができる。
本発明の第3態様によれば、前記非水溶性の第1の液体がイオン性液体であり、前記電気刺激型のポリマーアクチュエータが、前記イオン性液体のアニオン又はカチオンの出入りに伴うイオン駆動型のポリマーアクチュエータである第2の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、低い電圧で駆動可能であるとともに、駆動に要するアニオン又はカチオンが第1の液体であるイオン性液体から供給できるため、アクチュエータに必要な電解質層を兼ね備えることができ好都合である。
本発明の第4態様によれば、前記非水溶性の第1の液体がエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)であることを特徴とする第3の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、イオン半径が比較的大きい有機カチオン又はアニオンの出入りに伴うポリマーの伸縮を利用することができるので、発生変位の大きなアクチュエータとすることができる。
本発明の第5態様によれば、前記第2の液体が水溶性であり、前記水溶性の第2の液体が水より比重の大きい物質の水溶液であることを特徴とする第2の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、水溶液濃度を変えることにより、水溶液の密度を精密に調整することが可能となる。
本発明の第6態様によれば、前記水溶性の第2の液体がポリタングステン酸ナトリウム水溶液であることを特徴とする第5の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、比較的密度の大きいイオン性液体に対して、広範囲の密度の水溶液を得ることができる。
本発明の第7態様によれば、前記アクチュエータが、薄板状の屈曲動作する電気刺激型のポリマーアクチュエータであることを特徴とする第1の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、2つの液体の界面の形状変化に要する開口部材の移動距離は小さいので薄型とすることができる液体レンズの特徴を活かし、薄型の可変焦点レンズ装置を提供することができる。
本発明の第8態様によれば、前記第1の液体と前記第2の液体及び前記開口部材がほぼ同じ密度を持つことを特徴とする第1の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、外力による外乱に対してさらに液体レンズの形状を安定に保持できる可変焦点レンズ装置を提供することができる。
本発明の第9態様によれば、前記開口部材が、密度の異なる複数の部材よりなる複合材料であることを特徴とする第8の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、開口部材の密度を、密度の異なる複数部材の含有比率を変化させることにより精密に調整することが可能となる。
本発明の第10態様によれば、前記開口部材に撥水性又は疎水性の表面処理を施すことを特徴とする第1の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、開口部材のエッジ部で固定された2つの液体の界面がより安定に固定される効果を有するとともに、広範囲な開口部材の材質を選択することが可能となる。
本発明の第11態様によれば、前記開口部材が円形であり、前記アクチュエータが、複数個かつ前記円形の開口部材の接線方向沿いにかつ前記液体レンズの光軸回りに点対称に配置され、かつ、前記アクチュエータの全てが同期して駆動制御されることを特徴とする第1の態様に記載の可変焦点レンズ装置を提供する。
このような構成によれば、前記複数のアクチュエータにより、開口部材を光軸方向沿いに確実に平行移動させることができて、前記開口部材の開口部内に形成された液体レンズの前記2つの液体の界面の形状を精度良く制御できて、前記液体レンズによる焦点の位置を精度よく可変調節させることができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1A及び図1Bは、本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図、図1Cは本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置の平面図(図1A及び図1Bの断面図を下から眺めた、アクチュエータの断面の平面図)を示している。図1Aと図1Bの違いは、液体レンズ6の曲率が異なることであり、このように液体レンズ6の曲率が異なることにより、光軸9上の異なる位置に焦点11をそれぞれ結ぶ様子を図1Aと図1Bに示している。ここでは、図1Aの焦点11の位置が、図1Bの焦点11の位置よりも液体レンズ6に近い位置となっている。
絶縁性の第1の液体1と第1の液体1との上に位置する絶縁性の第2の液体2とは混和せず界面3を形成している。このように混和せず界面3を形成させるためには、第1の液体1と第2の液体2の密度をほぼ等しくすればよい。すなわち、重力の影響による液体レンズ6の歪防止や、落下、衝突等の外力による外乱に強くするには、第1の液体1と第2の液体2との2つの液体の密度がほぼ等しくすることが、より望ましい。
絶縁性のリング状の開口部材4のエッジ部5Aは、第1の液体1と第2の液体2との界面3に当接して、2つの液体1,2の界面(2液界面)3A,3Bを形作っている。ここで、開口部材4の内側の2液界面3Aは、液体レンズ6を形成する2液界面であり、開口部材4の外側の2液界面3Bは、液体レンズ6として機能しない2液界面である。開口部材4はリング状で円形の開口部4aを有し、2液界面3Aの表面張力により円形開口部4aの2液界面3Aは液体レンズ6を形成している。2液界面はエッジ部5A、5Bを越えて濡れ進むことなくこれらのエッジ部で固定される。
ここで、液体レンズ6を形成する2液界面3Aと、液体レンズ6として機能しない別の液界面3Bを設けた理由は、第1の液体1と第2の液体2ともセル14に封止されているので、それぞれの体積は一定であり、開口部材4の開口部4aに形成される液体レンズ6の部位で容積が変わるのを、この別の液界面3Bで吸収することができるようにするためである。開口部材4のエッジ部5Aと同様に、封止部材13に設けたエッジ部5Bでこの液界面を固定することは、外力による外乱に強くする上で好ましい効果がある。
開口部材4の下面の円形凸部4dには、複数のアクチュエータ7のそれぞれの一端が光軸9回りに点対称に連結されており(一例として、図1Cでは、光軸9回りに90度間隔にかつ円形の開口部材4の接線方向沿いに配置された4個のアクチュエータ7のそれぞれの一端が開口部材4に連結されかつそれぞれの他端が後述する封止部材13に連結されており)、全てのアクチュエータ7は、1つのアクチュエータ駆動制御部54により同期して駆動制御されるようにしている。よって、アクチュエータ駆動制御部54の駆動制御の下に、全てのアクチュエータ7の屈曲方向8への同期した屈曲動作により、開口部材4は光軸9の方向に平行移動するように進退駆動される。無限遠から液体レンズ6に入射する光線10は焦点11に集光され、開口部材4の光軸9の方向の位置に応じて、液体レンズ6の曲率が変わり、焦点11の位置が図1Aと図1Bのように移動する。
第1の液体1と第2の液体2、可動な開口部材4及びアクチェータ7は、絶縁性でかつ円板状の透明板12A,12Bと透明板12A,12Bの外周部に円環状に配置されて第1の液体1と第2の液体2とを封止する絶縁性の封止部材13により形成される絶縁性のセル14の内部に収容されている。
このように、前記可変焦点レンズ装置は、円板状の透明板12A,12Bと透明板12A,12Bの外周部に円環状に配置された封止部材13とで構成されたセル14の内部空間に、第1の液体1と第1の液体1との上に位置する第2の液体2とが収納され、かつ、第1の液体1と第2の液体2との界面3に開口部材4が当接され、アクチュエータ駆動制御部54の制御に基づく複数のアクチュエータ7の駆動により開口部材4が光軸6の方向沿いに進退かつ平行移動するとともに、開口部材4の円形の開口部4a内の2液界面3Aで液体レンズ6を構成するようにしている。
このような構成によれば、液界面3が、前記2液の界面3に当接しかつ光軸9の方向に可動な開口部材4のエッジ部5Aで固定されているから、外力による外乱に対して液体レンズ6の形状を安定に保持することができる。さらに、駆動に高電圧を要するエレクトロウエッティング現象を用いないため、下記するように、低電圧駆動型のアクチュエータ7で駆動することができる。
なお、液体レンズ6が形成される物理的メカニズムを、図1D及び図1Eに示す原理説明図(端面図)により説明する。図1D及び図1Eの構成要素は、図1A、図1B及び図1Cと同様であるが、説明の便宜上、アクチュエータ7による駆動部分の構成要素は図1D及び図1Eでは省略している。図1Dは、開口部材4が第2の液体2中にあって、2液(2つの液体1,2)の界面3A,3Bを第1の液体1に押し込む前の状態を示している。図1Eは、開口部材4を第1の液体1の側に押し込んだ後の状態を示している。図1Dにおける2液の界面3A及び3Bは、説明の都合上、平面であるとすると、図1Eにおける2液の界面3A及び3Bは、開口部材4の押し込みによって、上向き凸に湾曲する。このとき、第1の液体1及び第2の液体2の容積はそれぞれ変わらず、かつ、第1の液体1及び第2の液体2はセル14内に密閉されて封止されているから、図1Eのハッチングで示した容積部分A1,A2,A3,B1,B2の容積には次の関係が成り立つ。
A1+A2+A3=B1+B2
ここで、容積部分A1は、開口部材4が第1の液体1内に押し込まれた部分の容積である。容積部分A2は、開口部材4が第1の液体1内に押し込まれたときに、開口部材4の開口部4aの内側の近傍の第2の液体2が開口部材4とともに第1の液体1内に押し込まれる部分の容積である。容積部分A3は、開口部材4が第1の液体1内に押し込まれたときに、開口部材4の開口部4aの外側の近傍の第2の液体2が開口部材4とともに第1の液体1内に押し込まれる部分の容積である。容積部分B1は、開口部材4が第1の液体1内に押し込まれたときに、開口部材4の開口部4aの内側に位置する第1の液体1が開口部4a内で上向き凸に湾曲するように盛り上がる部分の容積である。容積部分B2は、開口部材4が第1の液体1内に押し込まれたときに、開口部材4の開口部4aの外側に位置する第1の液体1が開口部4a外で上向き凸に湾曲するように盛り上がる部分の容積である。
2液の界面3A,3Bにおける表面張力により、開口部材4の開口部4aの内側の液界面3Aは、無重力下では球面になることが知られているが、本発明の前記第1実施形態にかかる液体レンズ6においても、開口部材4のエッジ部5の形状が円の場合には、液体レンズ6は、ほぼ球面レンズになる。特に、2液の密度と開口部材4の密度を合わせることによって構成される、より好ましい実施例の場合には、2液の界面は、無重力と等価な状態となり、2液の界面を真球に、より近づけることができる。
図2は第1実施形態のアクチュエータ7の動作原理を示す断面図である。アクチュエータ7の一例として、導電性のポリマー層20A、20Bが、固体電解質21を挟むことにより短冊状の電気刺激型のポリマーアクチュエータ7を構成しており、アクチュエータ7の固定端となる絶縁性の固定部材32により固定されている。なお、図1A、図1B及び図1Cでは封止部材13がこの固定部材32の機能を兼ねている。導電性のポリマー層20A、20Bには、アクチュエータ駆動制御部54の制御の下にそれぞれ動作制御される電源30及びスイッチ31が接続されており、電源30により電圧を導電性のポリマー層20A、20Bに印加することにより、固体電解質21のイオンが導電性ポリマー20Aと導電性ポリマー20Bとに出入りすることにより屈曲駆動される。なお、図1Aでは、一見すると、2つのアクチュエータ駆動制御部54が存在するように見えるが、理解しやすくするためにそれぞれ図示しているだけであって、実際には、図1Cに示すように、1つのアクチュエータ駆動制御部54ですべての電源30及びスイッチ31を制御することが好ましい。図1Bなど、他の図では、説明しやすくするため、アクチュエータ駆動制御部54と電源30とスイッチ31は、その一部又は全ての図示を適宜省略している。
イオンは、印加電圧の極性に応じた方向に移動し、図2で示す場合では、カチオン(正イオン)が導電性ポリマー層20Aから固体電解質21の方に抜けて導電性ポリマー層20Aが縮み、導電性ポリマー層20Bには逆にカチオンが固体電解質21から入り込み、イオンの嵩が増すことにより導電性ポリマー層20Bが伸びることにより、このアクチュエータ7は下向き凸に屈曲駆動される。図2とは逆の場合では、カチオン(正イオン)が導電性ポリマー層20Bから固体電解質21の方に抜けて導電性ポリマー層20Bが縮み、導電性ポリマー層20Aには逆にカチオンが固体電解質21から入り込み、イオンの嵩が増すことにより導電性ポリマー層20Aが伸びることにより、このアクチュエータ7は上向き凸に屈曲駆動される。前記説明ではカチオンの出入りでアクチュエータ7の屈曲動作原理を説明したが、アニオン(負イオン)の出入り、あるいは両者の出入りでも同様に屈曲動作させることができる。
なお、これらの各屈曲型のアクチュエータ7は平板の薄板状であるので、薄型の可変焦点レンズ装置を構成するのに適している。ここで、一例として、アクチュエータ7を構成する導電性ポリマー層20A及び20Bの厚みはそれぞれ10μm〜25μm程度、固体電解質21の厚みは10μm〜100μm程度とすることができ、アクチュエータ7の総厚みは30μm〜150μm程度の厚みとすることができる。また、一例として、開口部材4の厚みは1mm程度の厚みとすることができるので、アクチュエータ7の厚みはセル14の厚みを薄くする上で制約となることがなく、セル厚みが数mmの薄型の可変焦点レンズ装置を構成することができる。
この電気刺激型のアクチュエータ7は、第1の液体1中に内包するよう配置しており、この第1の液体1を非水溶性の液体とすることで、水分を遮断した環境下で、ポリマーアクチュエータを動作させることができ、水分の存在下での劣化を防止することができ、サイクル寿命、信頼性に優れたものとすることができる。
アクチュエータ7を構成する導電性のポリマー層20A,20Bを構成する導電性のポリマーとしては、ポリマーそれ自体で電子導電性を有する、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェインなどの有機導電性ポリマーや、炭素系微粒子を分散した導電性のポリマーなどが、前述の動作原理で作用させることができる。
以下、この第1実施形態のいくつかの実施例について説明する。
(実施例1)
導電性のポリマーとして、ピロールのモノマーを支持電解質層となるプロピレンカーボネート中に溶解した有機溶媒中で、カーボン電極を析出電極としてガルバノスタットモード(定電流制御モード)にてポリピロールを電解重合により合成した膜を用い、固体電解質として、イオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)をゲル化した膜を用いて、図2で示した構成のアクチュエータを得た。
第1の液体として、メチルフェニル系のシリコーンオイルを用いた。このオイルは非水溶性である。第2の水溶性の液体として、塩化ナトリウム水溶液を用いた。図2に示すごとく、前記アクチュエータは、非水溶性の第1の液体であるシリコーンオイル中に配置した。このような構成のアクチュエータは、±1V〜2Vの低駆動電圧で駆動可能である。
このポリマーアクチュエータでは、主に、EMIカチオンがポリピロール膜に出入りすることにより屈曲駆動される。イオン半径が比較的大きい有機カチオンであるEMIカチオンの出入りに伴うポリマーの伸縮を利用することができるので、発生変位の大きなアクチュエータとすることができる。
本発明のこの第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置において、重力の影響によるレンズの歪防止や、落下、衝突等の外力による外乱に強くするには、第1の液体と第2の液体との2液の密度がほぼ等しくすることが、より望ましい。
本第1実施例で用いたシリコーンオイルの密度を、振動式密度計で計測したところ、1.07g/cm2であった。第2の水溶性の液体としては、塩化ナトリウム水溶液を用いた。振動式密度計で塩化ナトリウムと水との混合比を調整することにより、密度1.07g/cm2の水溶液を精密に調整して得ることができた。両者とも透明の液体で、かつ混和することなく液体レンズが形成できた。屈折率をアッベ屈折率計を用いて測定したところ、シリコーンオイルの屈折率は1.51であり、前記塩化ナトリウム水溶液の屈折率は1.35であり、異なる屈折率を持つ液体レンズが形成可能であることが分かった。小さい曲率変化で大きな焦点位置変化を得る上で、屈折率差は大きいほうが望ましい。同等の密度及び異なる屈折率を持つ材料の組み合わせを得るために、第1の非水溶性の液体として、前記シリコーンオイル系以外にも、各種有機物とその混合物を適用することが可能である。さらに、前記第1の非水溶性の液体は、外力による外乱に強くするため、その流動性を抑制する目的で増粘剤を添加したものであったり、高分子クロスリンク構造を有するゲル化された流動体であってもよい。
なお、本実施例の第2の水溶性の液体として塩化ナトリウム水溶液の例を述べたが、低温での使用を可能とするためエチレングリコール水溶液等の不凍性の液を使用することがより好ましい。
(実施例2)
実施例1と同様、導電性のポリマーとして、ピロールのモノマーを支持電解質層となるプロピレンカーボネート中に溶解した有機溶媒中で、カーボン電極を析出電極としてガルバノスタットモード(定電流制御モード)にてポリピロールを電解重合により合成した膜を用い、固体電解質として、イオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)をゲル化した膜を用いて、図2で示した構成のアクチュエータを得た。
第1の液体として、この固体電解質ゲルの電解質材料として用いたイオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)を用いた。この電解液は、EMI有機カチオンとTFSIアニオンよりなるイオン結合性の常温で液体である常温溶融塩であり、非水溶性である。
このような構成のアクチュエータは、±1V〜2Vの低駆動電圧で駆動可能であるとともに、駆動に要するアニオン又はカチオンが、第1の液体であるイオン性液体から供給できるため、アクチュエータに必要な電解質層を兼ね備えることができて好都合である。
このポリマーアクチュエータでは、主に、EMIカチオンがポリピロール膜に出入りすることにより屈曲駆動される。イオン半径が比較的大きい有機カチオンであるEMIカチオンの出入りに伴うポリマーの伸縮を利用することができるので、発生変位の大きなアクチュエータとすることができる。
イオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)の密度を振動式密度計で計測したところ、1.52g/cm2であった。第2の水溶性の液体として、ポリタングステン酸ナトリウム水溶液を用いた。ポリタングステン酸ナトリウムは、水より比重の大きい水溶性の物質で、広範囲の密度を持った水溶液を得ることができる。ポリタングステン酸ナトリウムを質量比で40%〜42%の水溶液を作製し、振動式密度計で水との混合比を調整することにより、密度1.52g/cm2の水溶液を精密に調整して得ることができた。両者とも透明の液体で、かつ混和することなく、液体レンズが形成できた。
屈折率をアッベ屈折率計を用いて測定したところ、エチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)の屈折率は1.43、前記ポリタングステン酸ナトリウム水溶液の屈折率は1.40であり、異なる屈折率を持つ液体レンズが形成可能であることが分かった。
次に、リング状の開口部材の材質として、それぞれ、密度の異なる複数の部材よりなる複合材料としてガラス繊維含有ポリアミド(密度1.65g/cm2)、密度の異なる複数の部材よりなる複合材料としてガラス繊維含有ポリフェニレンサルファイド(密度1.66g/cm2)、ポリエーテルエーテルケトン(密度1.30g/cm2)、PTFE(密度2.14g/cm2)の3種類を用いて、前記2液界面にこのリング状の開口部材を当接させた状態で1Gの重力加速度で加振試験を実施したところ、ガラス繊維含有ポリアミドのリング状の開口部材の場合と、ガラス繊維含有ポリフェニレンサルファイドのリング状の開口部材の場合には、液体レンズ界面の乱れがほとんど認められなかったが、PTFEのリング状の開口部材の場合には明らかな液体レンズ界面の乱れが認められた。この結果、本発明のこの第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置を、落下や衝突などの外力による外乱に強くするためには、第1の液体1と第2の液体2との2液の密度に合せて、開口部材4の密度もほぼ同じ(具体的には、例えば、差が±0.3g/cm2以内)にすることが好ましいことが分かった。
実験に用いたガラス繊維含有プラスチックはガラス繊維の含有比が50%のものであったが、この含有比を調整することにより、開口部材4の密度を第1の液体1と第2の液体2の密度に精密に合せることができる。
実験に用いたリング状の開口部材はいずれもイオン性液体と濡れにくい傾向があったが、開口部材4に撥水性又は親水性の表面処理を施すことにより、開口部材4のエッジ部5Aで固定された2液界面3が、より安定に固定される効果を有するとともに、開口部材4の材質を広範囲に選択することが可能である。特に、開口部材4の、第1の液体1と第2の液体2と接する部位の濡れ性を、表面処理により調整することにより、エッジ部5Aの固定を、より強固なものにすることができる。
(実施例3)
次に、リング状の開口部材のエッジ部の形状について実験した結果について述べる。
図8Aに示すリング状の開口部材4の断面図において、エッジ部5Aを拡大した断面図を図8B及び図8Cに示す。図8Bはエッジ部5Aの角度θを鋭角に形成した場合、図8Cはその角度θを鈍角にした場合をそれぞれ示す。ガラス繊維含有ポリフェニレンサルファイド製の内径4.5mm、外径9mm、厚み0.8mmのリング状の開口部材4を用い、その内径のエッジ部5Aが様々な角度を持つリング状の開口部材4を作製した。エチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)を第1の液体1として用い、第2の液体2として、実験の便宜上、密度合わせをしていない純水を用いて、これらの2液界面3に、リング状の開口部材4を第2の液体2から押し込み、エッジ部5Aで2液界面が固定される様子を観察した。
以下の表1はこの実験の結果をまとめたもので、図8Bのようにエッジ部5Aの角度θが鋭角の場合(30°、45°、70°)及び直角(90°)の場合、エッジ部5Aによる2液界面3の固定はいずれも良好であった。しかし、図8Cのようにエッジ部5Aの角度θが鈍角の場合、110°ではリング状の開口部材4の押し込みが進み、液面曲率が小さくなると、2液界面3がリング状の開口部材4の内側の側面4A側に濡れ進む現象が観測された。さらにエッジ部5Aの角度θが135°及び150°の場合には、2液界面3はエッジ部5Aではなく、エッジ部の反対側のエッジ部5A−1で固定することが観測された。以上の観察結果から、エッジ部5Aの角度θは鋭角又は直角が好ましく、鈍角は適用可能な範囲はあるが、好ましくないことがわかった。
以上の実験で用いたリング状の開口部材4のエッジ部5Aの曲率はR0.1mm以下であったが、この曲率半径を0.5mmとしたものを作製し、これを用いてエッジ部5Aの固定の様子を観測した。図9A及び図9Bにエッジ部5Aの断面図を示す。図9Aは、リング状部材4を2液界面3Aに押し込み開始した段階での2液界面3Aの様子を示す。2液界面3Aは、エッジ部5Aである、曲率半径0.5mmの面取り部5Aを濡れ進むことが観測された。図9Bは、さらに、リング状の開口部材4を押し込んだ状態を示しており、2液界面3Aがエッジ部5Aである面取り部5Aと側面4Aの境界部まで濡れ進んだ以降は、この部位で2液界面3Aが固定されているのが観測された。以上の観察からエッジ部5Aに曲率を持たせることは適用可能であるが、固定を強固にする観点では、シャープなエッジ部5Aであることが望ましい。
リング状の開口部材4の開口部4aの内径は、1mm以下のマイクロレンズの領域から数10mm程度のものが適用可能と思われるが外力による外乱に強くする観点では小径の方が好ましい。リング状の開口部材4の厚みは、同様に外力による外乱に強くする観点では、強度上、その形状を保持できる範囲で例えば0.2mm〜0.5mm程度の薄く、それ自体の質量が小さいものが好ましい。
開口部材4のエッジ部5Aは、開口部材4の開口部4aの上下いずれかの端縁に限るものではなく、開口部材4の開口部4aの内壁面の中間部に形成されるようにしてもよい。例えば、図10は、開口部材4のエッジ部5Aの構成の別の例を示す断面図である。第2の液体2に親水性の表面処理膜15Aを開口部材4の開口部4aの内壁面の第2の液体側(図10では例えば上半分側)に形成し、第2の液体2に撥水性の表面処理膜15Bを開口部材4の開口部4aの内壁面の第1の液体側(図10では例えば下半分側)に形成し、その表面処理膜15Aと表面処理膜15Bとの境界にエッジ部5Aを構成した例である。具体的には、第2の液体2が水溶液の場合、親水性処理としてシランカップリング剤膜を形成し、撥水性処理としてテフロン(登録商標)系膜を形成することにより、このようなエッジ部5Aを構成することができる。このようなエッジ部5Aは、開口部材4の開口部4aの内壁面の中央部分に形成するものに限らず、表面処理膜15Aと表面処理膜15Bとの領域を適宜調整して形成することにより、内壁面の任意の場所に形成することができる。
以上、2液の界面3Aを開口部材4のエッジ部5Aで固定する方法に関して述べたが、2液界面3Aがこのエッジ部5Aを越えて濡れ進み、2液界面3Aが、より確実に破壊されないようにするため、開口部材4の可動範囲を制限することにより、2液界面3Aのエッジ部5Aでの変化角度に制限を加えることがより望ましい。開口部材4の可動範囲を制限する具体的な例としては、図1Eに示すように、ストッパとして機能する突起4pを透明板12Bの内面に配置して、開口部材4が突起4pに接触することにより、開口部材4の下限位置を規制するようにしてもよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態における可変焦点レンズ装置について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図である。アクチュエータ7Aの配置は、図1Bの平面図でのアクチュエータ7の配置と同様であるので、平面図は省略した。図4は、本発明の第2実施形態における可変焦点レンズ装置のアクチュエータ7Aの動作原理を示す断面図である。この第2実施形態では、電気刺激型のアクチュエータ7Aが、第1の液体1である電解液中に内包させている特長を活かし、この第1の液体1中に、他の電極(対向電極22A,22B)を別に設けることにより、アクチュエータ7Aの駆動性能を向上させるものである。アクチュエータ7Aも、第1実施形態のアクチュエータ7と同様に、アクチュエータ駆動制御部54の制御の下に駆動制御される。
第1実施形態と同様、導電性のポリマー層20A,20Bを構成する導電性のポリマーとして、ピロールのモノマーを支持電解質層となるプロピレンカーボネート中に溶解した有機溶媒中で、カーボン電極を析出電極としてガルバノスタットモード(定電流制御モード)にてポリピロールを電解重合により合成した膜を用い、固体電解質として、イオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)をゲル化した膜を用いて、図4で示した構成のアクチュエータ7Aを同様に得た。第1の液体として、この固体電解質ゲルの電解質材料として用いたイオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)を用いた。
このような構成のアクチュエータ7Aは、対向電極22A及び対向電極22Bにも、図4中で示した極性で(言い換えれば、導電性のポリマー層20A,20Bと対向電極22A及び対向電極22Bとは、第1の液体1を介して互いに対向する電極同士の極性は異なるように)電源30から電圧を印加することにより、伸縮する導電性のポリマー層20A及び20Bの両面から(固体電解質21側及び第1の液体1である電解液側の両方の界面から)イオンの出入りが可能であるため、大きな駆動変位が得られるとともに、速やかにイオンの出入りが可能であることから、アクチュエータ7Aに高速な駆動動作をさせることができる。なお、図4では、一例として、カチオン(正イオン)が、導電性ポリマー層20Aから、導電性ポリマー層20Aと対向電極22Aとの間の第1液体1の方に及び固体電解質21の方に抜けて、導電性ポリマー層20Aが矢印40Bのように縮み、導電性ポリマー層20Bには、逆に、カチオンが、固体電解質21から及び導電性ポリマー層20Bと対向電極22Bとの間の第1液体1からそれぞれ入り込み、イオンの嵩が増すことにより導電性ポリマー層20Bが矢印40Aのように伸びることにより、このアクチュエータ7Aは下向き凸に屈曲駆動されている。電圧を逆に印加すれば、逆の動作がそれぞれ行なわれる。
なお、本発明においては、前記実施例1及び実施例2で述べた2液材料以外にも、各種オイルと有機溶媒との組み合わせ、例えばシリコーンオイルとアルコール類の組み合わせや、各種イオン液体と有機溶媒との組み合わせ等、混和せず屈折率の異なる2液の組み合わせを用いるようにしてもよい。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態における可変焦点レンズ装置について説明する。
図5は本発明の第3実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図である。アクチュエータ7Bの配置は、図1Bの平面図のアクチュエータ7の配置と同様であるので、平面図は省略した。図6は、本発明の第3実施形態における可変焦点レンズ装置のアクチュエータ7Bの動作原理を示す断面図である。この第3実施形態はこれまでに述べた第1及び第2実施形態と異なり、固体電解質21を用いない形式のアクチュエータ7Bの場合であり、電気刺激型のアクチュエータ7Bが、第1の液体1である電解液中に内包させている特長を活かし、電解液1中に他の電極22を別に設けることによりアクチュエータ7Aの構成を簡便化でき、従って製造のしやすい構成としたものである。アクチュエータ7Bも、第1実施形態のアクチュエータ7と同様に、アクチュエータ駆動制御部54の制御の下に駆動制御される。
図6に示した通り、この構成のアクチュエータ7Aでは、導電性のポリマー層20と対向電極22との間に電圧を電源30から印加することにより、屈曲動作するものである。伸縮する導電性のポリマー層20は、非伸縮性部材23と貼り合わされた構成となっており、導電性のポリマー層20がイオンの出入りにより伸縮するのに対して、非伸縮性部材23は伸縮しないため、結果として、導電性のポリマー層20と非伸縮性部材23とが貼り合わされて構成されたアクチュエータ7Aが屈曲駆動されることになる。
この構成のアクチュエータ7Aは次ように簡便なプロセスで製作することができた。ポリピロールを電解重合法で形成するためには、析出させるための電極が必要であるので、非伸縮性部材23として機能するポリイミド膜の表面に、先ず金薄膜を蒸着し、この電極(図示せず。)上に伸縮部材として機能するポリピロール膜を直接電解重合して形成することにより、このような、アクチュエータ7Aとして貼り合わせた構造を得ることができた。また対向電極22は、透明板12Bのセル内面上に形成した透明電極とすることもできる。
導電性のポリマーとして、ポリピロール膜を用い、第1の液体としてイオン性液体であるエチルメチルイミダゾリウム・トリフロロメタンスルフォニルイミド(EMI・TFSI)を用いた。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態は、本発明の前記第1〜第3実施形態にかかる可変焦点レンズ装置を撮像装置に適用した例である。前記撮像装置のブロック図の一例を図11に示す。
撮像装置は、アクチュエータ駆動制御部54を含む前記可変焦点レンズ装置50と、撮像合焦点判定部55と、撮像板51と、像記録再生部56とより構成されている。
この撮像装置では、アクチュエータ7,7A,又は7Bにより駆動される液体レンズ6を有する可変焦点レンズ装置50の光軸9の付近にある被写体52の像を、撮像板51上に、被写体の像53として像を結ばせるため、撮像板51から出力された撮像信号により判定部55で合焦点を判断する。合焦点を判断した判定部55からの信号がアクチュエータ駆動制御部54に入力されて、入力された信号に基づき、アクチュエータ駆動制御部54により、全てのアクチュエータ7,7A,又は7Bを同期して駆動制御する。具体的には、判定部55で焦点が合っていないと判断された場合には、アクチュエータ駆動信号が判定部55からアクチュエータ駆動制御部54に入力されて、入力された信号に基づき、アクチュエータ駆動制御部54により、全てのアクチュエータ7,7A,又は7Bを同期して駆動されて、開口部材4が光軸9の方向沿いに進退するように平行移動して、液体レンズ6の曲率を変化させて、焦点11の位置を調節する。判定部55で合焦点と判断されたとき、アクチュエータ駆動制御部54による全てのアクチュエータ7,7A,又は7Bの駆動を停止するとともに、合焦点された像信号は判定部55から像記録再生部56に送られて、像記録再生部56で記録又は再生される。
なお、前記第1〜第3実施形態の開口部材4は、図7Aに示すようにリング状で円形の開口部4aを持ったものについて述べたが、このような液体レンズ6は、例えば、携帯電話等の薄型携帯端末に搭載するカメラ用可変焦点レンズ装置として有用である。また、図7Bに示すように楕円形の開口部材4Bの開口部4bを楕円にすることにより横長画像の周辺部の歪を補正するようにすることができる。
さらに、開口部材4Cが図7Cに示すように矩形状で矩形の開口部4cを持ったものの場合には液体レンズ6はシリンドリカルレンズを形成する。このようなレンズは例えばプリンター光学系用の可変焦点レンズ装置として有用である。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明の可変焦点レンズ装置は、携帯機器、携帯端末機、電子ペーパーなどに装着される各種光学装置の焦点位置の可変機能(光学変調機能)を付与する装置として利用可能である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。
図1Aは、本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図である。
図1Bは、本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図である。
図1Cは、本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置の平面図である。
図1Dは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の液体レンズが形成される物理的メカニズムを説明するための原理説明図であって、開口部材が第2の液体中にあって、2液の界面を第1の液体に押し込む前の状態を示す図である。
図1Eは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の液体レンズが形成される物理的メカニズムを説明するための原理説明図であって、開口部材を第1の液体の側に押し込んだ後の状態を示す図である。
図2は、本発明の第1実施形態における可変焦点レンズ装置のアクチュエータの動作原理を示す断面図である。
図3は、本発明の第2実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図である。
図4は、本発明の第2実施形態における可変焦点レンズ装置のアクチュエータの動作原理を示す断面図である。
図5は、本発明の第3実施形態における可変焦点レンズ装置の断面図である。
図6は、本発明の第3施形態における可変焦点レンズ装置のアクチュエータの動作原理を示す断面図である。
図7Aは、本発明の前記第1〜第3実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材の平面図である。
図7Bは、本発明の前記実施形態の変形例にかかる可変焦点レンズ装置の楕円形状の開口部材の平面図である。
図7Cは、本発明の前記実施形態の別の変形例にかかる可変焦点レンズ装置の矩形状の開口部材の平面図である。
図8Aは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材の断面図である。
図8Bは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材の1つの例のエッジ部の拡大断面図である。
図8Cは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材の別の例のエッジ部の拡大断面図である。
図9Aは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材のある曲率半径を有するエッジ部の拡大断面図である。
図9Bは、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材の別の曲率半径を有するエッジ部の拡大断面図である。
図10は、本発明の前記第1実施形態にかかる可変焦点レンズ装置の開口部材のエッジ部の構成する別の例を示す断面図である。
図11は、本発明の第4実施形態であって、本発明の前記第1から第3実施形態のいずれかの可変焦点レンズ装置を適用した撮像装置のブロック図である。
本発明によれば、第1の液体と、
前記第1の液体と混和せずに前記第1の液体との間で光軸方向と交差する方向沿いの界面を形成可能でかつ前記第1の液体とは異なる屈折率を持つ第2の液体と、
前記第1の液体と前記第2の液体が封止されるセルと、
前記光軸方向に貫通する開口部を有し、前記開口部の端縁又は内壁面で形成されるエッジ部が前記セル内で前記第1の液体と前記第2の液体の2つの液体の前記界面に接触して前記エッジ部により前記界面が固定されかつ前記2つの液体の界面に当接した状態で前記光軸方向に平行移動可能な開口部材と、
前記開口部材に連結されて、前記開口部材を前記光軸方向に平行移動させることにより、前記開口部材の開口部内に形成された液体レンズの前記2つの液体の界面の形状を制御して、前記液体レンズによる焦点の位置を前記光軸方向に可変とするアクチュエータとを備える可変焦点レンズ装置を提供する。