以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明を適用した駆動制御装置の一実施形態に係る構成例を示す図である。
図1において、駆動制御部1は、液体を用いて可動部材の動作を制御する液体アクチュエータ11と、液体アクチュエータ11を制御する制御部12を有している。
液体アクチュエータ11は、基板21、下部電極22、下部電極23、絶縁膜24(撥水コーティング25)、無極性液体26、極性液体27、封止材28、上部電極29、および可動部材30(撥水コーティング31)を有している。基板21上に各部が構成され、その各部は、基板21と封止材28により封止されている。液体アクチュエータ11は、制御部12の制御に基づいて、可動部材30を、基板21の図中上面に平行な方向に(図中左右方向)に移動させる装置である。
基板21は、土台となる部材であり、例えば、シリコン、プラスチック、またはガラス等の素材により構成される。基板21は、液体アクチュエータ11の用途に応じた任意の素材により構成される。例えば、液体アクチュエータ11に光を通過させる場合、基板21は、透明な素材により構成されるのが望ましい。
基板21の上面(図中上側)には、下部電極22および下部電極23が設けられる。下部電極22および下部電極23は、例えば、短冊状(ライン状)の電極(ライン電極)であり、アルミニウムや銅等の金属膜により構成される。例えば、下部電極22および下部電極23は、基板21の表面に、所定の方法により、アルミニウムや銅等の金属膜を形成させることにより生成される。なお、液体アクチュエータ11に光を通過させる場合、光路の妨げとならないように、下部電極22および下部電極23を、酸化インジウム(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)等の素材を用いた透明電極にするようにしてもよい。この下部電極22および下部電極23には、可動部材30の位置を制御するために、極性液体27(上部電極29)との間に電圧が印加される。
基板21の上面には、さらに、その下部電極22および下部電極23の上から、絶縁体の皮膜である絶縁膜24が形成される。絶縁膜24の素材は、絶縁性の物質であればどのようなものであってもよいが、誘電率が大きい物質が望ましい。その際、誘電率を大きくするためには膜厚はより薄い方が望ましいが、絶縁強度の面から考えると厚い方が望ましく、最適な値は両者の兼ね合いで決定される。
なお、絶縁膜24は、少なくとも下部電極22および下部電極23上に形成されていればよく、下部電極22および下部電極23の配置に関係なく基板21の表面全体を覆うように形成されるようにしてもよいし、下部電極22および下部電極23の配置に応じて任意のパターンで形成されるようにしてもよい。
また、絶縁膜24の上面の一部または全部は撥水処理が施され、撥水コーティング25の層が形成されている。撥水コーティング25は、例えば、フッ素系のポリマーであるPVdFやPTFE、またはテフロン(登録商標)等の疎水性のコーティング材により構成される。この撥水コーティング25は、極性液体27により絶縁膜24の表面を濡れにくくするための表面処理である。つまり、この撥水コーティング処理が施された部分は、極性液体27より無極性液体26の方が濡れやすい。
なお、撥水コーティング25は、少なくとも無極性液体26と極性液体27の界面が接する可能性のある範囲に形成されていなければならないが、それ以外の部分については任意であり、基板21の表面全体を覆うように形成されるようにしてもよいし、任意のパターンで形成されるようにしてもよい。
また、絶縁膜24自身の一部または全部が、例えば、PVdF、PTFE、またはテフロン(登録商標)等の疎水性の高い物質(かつ誘電率が大きい物質)により構成されるようにしてもよい。さらに、液体アクチュエータ11に光を通過させる場合、光路の妨げとならないように、絶縁膜24および撥水コーティング25を、透明な材質の部材で構成するようにする方が望ましい。
撥水コーティング25の上には無極性液体26および極性液体27が注入され、封止材28で封止されている。
無極性液体26は、可動部材30を絶縁膜24(撥水コーティング25)に固定するための絶縁性の液体であって、素材には、例えば、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、若しくはウンデカン等の炭化水素系の材料、屈折率の高いシリコンオイル、または、1,1-ジフェニルエチレン等が使用される。なお、無極性液体26の素材は、状態が安定しており、かつ、下部電極22および下部電極23と極性液体27(上部電極29)との間の電圧印加により絶縁膜24の撥水コーティング25と極性液体27との濡れ性が変化することにより、結果として、無極性液体26の上に設けられた可動部材30を駆動させることができるものであれば特に限定されるものではない。
極性液体27は、可動部材30および無極性液体26の周囲を満たすように封止材28と基板21との間の空間に注入される導電性の液体である。その素材には、例えば、水、塩化カリウム、若しくは塩化ナトリウム等の電解質を溶かした水溶液、分子量の小さなメチルアルコール、または、エチルアルコール等のアルコールが使用される。もちろん、これ以外のものであってもよい。
後述するように、下部電極22および下部電極23と極性液体27(上部電極29)との間に電圧が印加されることにより、極性液体27は、絶縁体24(撥水コーティング25)に対する濡れ性が変化し、それにより無極性液体26(可動性部材30)の位置を移動させる。このような動作を行うため、無極性液体26と極性液体27は、互いに混在しない素材により構成されるのが望ましい。また、応答速度を向上させる場合、共に低粘度のものであることが好ましい。さらに、極性液体27と無極性液体26は、不要な力の発生を抑制するために、互いに比重を一致(または近似)させることが望ましい。
封止材28は、無極性液体26および極性液体27の状態、すなわち、可動部材30周辺の環境を保つために、これらを、気密封止ができるような状態で封入する素材である。封止材28は、例えば接着やシール部材を挟んでのボルト締結等の方法を使って基板21に接続される。
上部電極29は、下部電極22および下部電極23に対応する電極であり、下部電極22および下部電極23と同様の素材を用いて同様の方法で封止材28の内側に形成される。上部電極29は、極性液体27に電圧を印加することができればどのような形状、位置、および材質であってもよい。なお、液体アクチュエータ11に光を通過させる場合、光路の妨げとならないように、上部電極29も酸化インジウム(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)の薄膜からなる透明電極とすることが望ましい。また、上部電極29は、極性液体27に接触するように配置されるのが望ましい。
可動部材30は、駆動制御の対象物であり、無極性液体26の上に載置される。可動部材30の無極性液体26と接触する面の一部または全部には、撥水処理が施され、絶縁膜24の撥水コーティング25と同様の撥水コーティング31の層が形成されている。可動部材30には、例えば、レンズ、鏡、プリズム、または磁性体等が用いられる。無極性液体26の上に載置可能なものであれば、もちろんこれら以外のものであってもよく、複数の部材を組み合わせたものであってもよい。また、絶縁膜24と同様に、可動部材30自身の一部または全部が、例えば、PVdF、PTFE、またはテフロン(登録商標)等の疎水性の高い物質(かつ誘電率が大きい物質)により構成されるようにしてもよい。
制御部12は、液体アクチュエータ11の駆動を制御する処理部であり、図1に示されるように、駆動制御部41、接続選択部42、および電源43を有している。駆動制御部41は、外部より供給される制御情報に基づいて、接続選択部42による接続を制御することによって、可動部材30が指示に対応した動作を行うように制御する。接続選択部42は、図示せぬスイッチング回路を有し、駆動制御部41に制御され、電源43と下部電極22または下部電極23とを接続したり切断したりする。電源43は、極性液体27(上部電極29)と、下部電極22および下部電極23の内、接続選択部42により接続された方との間に所定の電圧を印加するための電圧源である。電源43は、一方が上部電極29に接続され、他方が接続選択部42に接続される。
次に、図1に示される駆動制御装置1の動作について説明する。
制御部12の駆動制御部41の制御に従って、接続選択部42が下部電極22または下部電極23を電源43に接続すると、極性液体27と下部電極22または下部電極23との間に電圧が印加される。すると、極性液体27の撥水コーティング25(絶縁膜24)に対する濡れ性が増加し、撥水コーティング25の下部電極付近に極性液体27が濡れ広がる。これにより、電圧印加の影響を直接的に受けない無極性液体26は、その濡れ広がる極性液体27により押し出される。その押力により無極性液体26は、絶縁膜24の撥水コーティング25上を移動する。
このとき、絶縁膜24は、無極性液体26に接触する面(図中上面)が、撥水加工されているので(撥水コーティング25が形成されているので)、電圧が印加されている下部電極付近以外は、極性液体27よりも無極性液体26の方が濡れやすくなっている。また、無極性液体26の界面張力も働くので、無極性液体26は、極性液体27に押し出されても、絶縁膜24(撥水コーティング25)から離れず、絶縁膜24の撥水コーティング25上を図中上面に沿って移動する。
この無極性液体26に戴置される可動部材30は、無極性液体26に接触する面(図中下面)が、撥水加工されているので(撥水コーティング31が形成されているので)、極性液体27よりも無極性液体26の方が濡れやすくなっており、さらに、無極性液体26の界面張力も働くので、上述した無極性液体26の移動に伴って、絶縁膜24の撥水コーティング25上を図中上面に沿って移動する。
つまり、可動部材30は、無極性液体26によって、絶縁膜24(撥水コーティング25)に、その表面と平行に移動可能(駆動可能に)に、強力に固定される。液体アクチュエータ11は、上部電極29と下部電極22または下部電極23との間に所定の電圧を印加することにより、極性液体27の濡れ性を変化させ、この可動部材30(無極性液体26)の位置を移動させる。
より具体的に説明する。図1は、下部電極22および下部電極23が電源43に接続されていない状態を示している。つまり、下部電極22および下部電極23は、「OFF」の状態であり、極性液体27に電圧が印加されない。従って、可動部材30(無極性液体26)は、下部電極22と下部電極23との間の中央付近に位置している。
図2は、図1の状態から下部電極23を電源43に接続した場合の、可動部材30の動きの例を説明する図である。なお、図2において、配線や制御部12については省略している。図2において、下部電極22は「OFF」のままであり、下部電極23は「ON」の状態に移行する。このとき、極性液体27(上部電極29)と下部電極23との間に電圧が印加され、それにより、矢印51に示されるように、極性液体27が撥水コーティング25の下部電極23付近に濡れ広がろうとし、矢印52に示されるように、無極性液体26を図中左側に(下部電極22に近づく向きに)押し出す。上述したように可動部材30は無極性液体26により保持されているので、その無極性液体26の動きにあわせて、可動部材30も、矢印53に示されるように図中左側に移動する。
図3は、図1の状態から下部電極22を電源43に接続した場合の、可動部材30の動きの例を説明する図である。なお、図3においても、図2と同様に、配線や制御部12については省略している。図3において、下部電極22は電源43に接続されて「ON」の状態に移行し、下部電極23は「OFF」のままである。このとき、極性液体27(上部電極29)と下部電極22との間に電圧が印加され、それにより、矢印61に示されるように、極性液体27が撥水コーティング25の下部電極23付近に濡れ広がろうとし、矢印62に示されるように、無極性液体26を図中右側に(下部電極23に近づく向きに)押し出す。上述したように可動部材30は無極性液体26により保持されているので、その無極性液体26の動きにあわせて、可動部材30も、矢印63に示されるように図中右側に移動する。
次に図4のフローチャートを参照して、このような可動部材30の駆動制御を行うために駆動制御部41により実行される駆動制御処理の流れの例を説明する。駆動制御処理を開始すると、駆動制御部41は、ステップS1において、可動部材30の駆動を指示する制御情報を受け付ける。ステップS2において、駆動制御部41は、制御情報を取得したか否かを判定し、取得したと判定するまで、ステップS1およびステップS2の処理を繰り返す。ステップS2において、制御情報を取得したと判定した場合、駆動制御部41は、処理をステップS3に進め、取得した制御情報に基づいて、接続選択部42を制御し、指示どおりに可動部材30が駆動するように、電極に電圧を印加する。これにより接続選択部42は、下部電極22または下部電極23を電源43に接続したり、それらの接続を切断したりする。このような制御に基づいて、可動部材30は、上述したようにその位置を変動させる。
ステップS4において、駆動制御部41は、駆動制御処理を終了するか否かを判定し、終了しないと判定した場合、処理をステップS1に戻し、それ以降の処理を繰り返す。また、ステップS4において、駆動制御処理を終了すると判定した場合、駆動制御部41は、処理をステップS5に進め、接続選択部42の接続状況を初期状態に戻すなどの終了処理を行った後、駆動制御処理を終了する。
このように、接続選択部42が下部電極22または下部電極23を電源43に接続することにより、可動部材30(無極性液体26)が基板21上(撥水コーティング25された絶縁膜24上)を移動するので、駆動制御装置1は、可動部材30の駆動を制御することができる。
この駆動制御装置1の液体アクチュエータ11は、上述したように、撥水コーティング25された絶縁膜24上に、無極性液体26、極性液体27、および可動部材30を封止するだけの簡単な構成であり、部品点数も少なく、さらに機械的構成や形状の限定等もないので、装置の小型化や薄型化を容易に実現することができるだけでなく、製造コストを低減させることも可能であり、さらに、応用の幅もより広くなる。
また、この場合、無極性液体26および極性液体27は封止材28により封止され、それらの状態が安定して維持されるので、蒸発の恐れがない。
さらに、上述したように、絶縁膜24と可動部材30が無極性液体26の界面張力により強力に、駆動可能に固定される。つまり、絶縁膜24と可動部材30の位置関係(互いの間の距離方向の位置関係)が安定し、可動部材30は、液体アクチュエータ11が傾けられたり、上下を反転させられたりしても、絶縁膜24の表面に対して水平方向に移動する。
このように可動部材30の動きが安定し、かつ、各素材の状態も安定するので、駆動制御装置1は、可動部材の位置制御をより正確に行うことができる。すなわち、駆動制御装置1は、より簡単な構成でより正確な駆動制御を行うことができる。
さらに付言すると、液体アクチュエータ11は、機械的構成がなく、可動部材30が無極性液体26や極性液体27に囲まれているため部品の磨耗や摩擦熱の発生が抑制される。従って、駆動制御装置1は、磨耗や摩擦熱による部品の変形等を抑制し、故障の発生を低減させることができ、さらには装置の寿命を延ばすこともできる。このように駆動制御装置1は、より信頼性の高い動作を、より長期間継続して行うことができる。さらに、可動部材30が無極性液体26や極性液体27に囲まれていることにより、駆動制御装置1は、動作音を低減させることができる。
また、上述したように、制御部12は、液体アクチュエータ11を電圧印加により動作させる。すなわち、駆動制御装置1は、可動部材30の駆動を電圧制御する。このとき、電流は、ほとんど流れないため、駆動制御装置1は、可動部材30の駆動制御に関する消費電力を低減させることができる。
図5は、以上のような駆動装置1を用いて凸レンズを制御する場合の例を説明する図である。図5において、配線や制御部12については省略している。
図5Aは、下部電極22および下部電極23のいずれも、電源43に接続されていない場合(「OFF」の状態である場合)を示している。
図5Aに示されるように、無極性液体26の上には、可動部材30として凸レンズ70が戴置されている。また、基板21、下部電極22、下部電極23、無極性液体24(撥水コーティング25)、無極性液体26、極性液体27、封止材28、および上部電極29は、いずれも無色透明の物質により構成されている。さらに、凸レンズ70も同様に無色透明のガラスやプラスチック等により構成される。なお、凸レンズ70の下面(無極性液体26と接触する面)には、図1の可動部材30と同様に、撥水コーティング31が施されている。
図5Aの状態において、駆動装置1に図中上側から入射し、凸レンズ70を通過して、下側に出射する光は、矢印71および矢印72に示されるように、凸レンズ70により屈折され、焦点73に集光する。
このような図5Aの状態において、下部電極23が「ON」状態にされ、電圧が印加されると、極性液体27は、図5Bの状態になり、矢印81に示されるように下部電極23付近に濡れ広がり、凸レンズ70(無極性液体26)は、それにより押し出され、矢印82に示されるように図中左側に移動する。図5Bの状態において、駆動装置1に図中上側から入射し、凸レンズ70を通過して、下側に出射する光は、矢印71および矢印72に示されるように、凸レンズ70により屈折され、焦点83に集光する。つまり、図5Bの場合、図5Aの場合よりも焦点が図中左側に移動する。
また、図5Aの状態において、下部電極22が「ON」状態にされ、電圧が印加されると、極性液体27は、図5Cの状態になり、矢印91に示されるように下部電極22付近に濡れ広がり、凸レンズ70(無極性液体26)は、それにより押し出され、矢印92に示されるように図中右側に移動する。図5Cの状態において、駆動装置1に図中上側から入射し、凸レンズ70を通過して、下側に出射する光は、矢印71および矢印72に示されるように、凸レンズ70により屈折され、焦点93に集光する。つまり、図5Cの場合、図5Aの場合よりも焦点が図中右側に移動する。
以上のように、液体アクチュエータ11は、凸レンズ70の駆動を制御することにより焦点位置を制御することができる。このような液体アクチュエータ11は、例えば、カメラのレンズ部等に利用し、手ぶれ防止機能として駆動制御することができる。
なお、可動部材30は、凸レンズ70のような光学レンズ以外にも、ミラーやプリズム等の光学部品であってもよいし、光学部品以外のものであってもよい。
なお、液体アクチュエータ11が制御する可動部材30の移動方向は、上述したように左右方向以外であってもよい。ただし、下部電極の配置は、制御方向に応じたものとなる。
図6は、液体アクチュエータ11を上部電極側(上側)からみた図であり、下部電極の配置の他の例を示す図である。図6においては、駆動制御装置1のうち、下部電極の配置についての説明に必要な部分のみが示されている。下部電極101乃至下部電極104は、円を描くように配置される。可動部材30(無極性液体26)は、点線で示されるように、各下部電極に囲まれるように、下部電極により描かれる円の中心に中心位置がくるように配置される。すなわち、各下部電極は、上から見て可動部材30の淵に沿って配置される。
各下部電極は、それぞれ、接続選択部42に接続される。この接続選択部42を介して、図示せぬ電源に接続された下部電極には、上部電極との間に電圧が印加される。
例えば、接続選択部42により下部電極101に電圧が印加されると、絶縁体24(撥水コーティング25)の下部電極101上付近に、極性液体27が濡れ広がり、無極性液体26を矢印111の方向に押す。つまり、可動部材30は、矢印111の方向に(下部電極103により重なるように図中右下に)移動する。
これに対して、例えば、接続選択部42により下部電極102に電圧が印加されると、絶縁体24(撥水コーティング25)の下部電極102上付近に、極性液体27が濡れ広がり、無極性液体26を矢印112の方向に押す。つまり、可動部材30は、矢印112の方向に(下部電極104により重なるように図中左下に)移動する。
さらに、例えば、接続選択部42により下部電極103に電圧が印加されると、絶縁体24(撥水コーティング25)の下部電極103上付近に、極性液体27が濡れ広がり、無極性液体26を矢印113の方向に押す。つまり、可動部材30は、矢印113の方向に(下部電極104により重なるように図中左上に)移動する。
また、例えば、接続選択部42により下部電極104に電圧が印加されると、絶縁体24(撥水コーティング25)の下部電極104上付近に、極性液体27が濡れ広がり、無極性液体26を矢印114の方向に押す。つまり、可動部材30は、矢印114の方向に(下部電極104により重なるように図中左上に)移動する。
以上のように、この駆動制御装置1は、4方向に可動部材30の位置を制御することができる。さらに、接続選択部42が複数の下部電極に電圧を印加させるようにすることにより、駆動制御装置1は、可動部材30の位置を、上述した方向を組み合わせた方向にも制御することができる。
図6においては、下部電極が4つの電極により構成されるように説明したが、これに限らず、下部電極の数は任意であり、その下部電極の数や電圧印加の方法によって、駆動制御装置1は、平面上の任意の方向に可動部材の位置を制御するようにすることができる。
なお、この可動部材30の位置制御を応用することにより、駆動制御装置1は、可動部材30の運動(移動方向)を制御することもできる。
図7は、液体アクチュエータ11を上部電極側(上側)からみた図であり、下部電極の配置のさらに他の例を示している。図7においても駆動制御装置1のうち、下部電極の配置についての説明に必要な部分のみが示されている。図7において、複数の下部電極は、下部電極121乃至下部電極127に示されるように、図中左右方向に直線状に並べられて配置されている。可動部材30(無極性液体26)は、それらの下部電極群のうちの、一部の電極である、下部電極122乃至下部電極124上に配置される。各下部電極はそれぞれ接続選択部42に接続されている。
図7Aにおいては、全下部電極(少なくとも、下部電極121乃至下部電極127)は電源43と接続されておらず、それらには電圧が印加されていない。つまり、全ての下部電極の状態は「OFF」である。
図7Bに示されるように、図7Aの状態において、接続選択部42が下部電極122に電圧を印加すると、下部電極122が「ON」状態になり、下部電極122上付近に極性液体27が濡れ広がるので、可動部材30(無極性液体26)は、矢印131のように、図中右方向に押し出され、図7Cのように移動する。
図7Cの状態になると、接続選択部42は、さらに、下部電極122を電源43から切断して「OFF」の状態にし、下部電極123に電圧を印加して「ON」状態に切り替えると、可動部材30(無極性液体26)は、さらに、矢印132のように、図中右方向に押し出されて移動する。
以上の処理を繰り返し、接続選択部42は、可動部材30(無極性液体26)の図中左側に位置する電極を次々に印加することにより、可動部材30(無極性液体26)を図中右方向に連続的に移動させることができる。逆に、接続選択部42は、可動部材30(無極性液体26)の図中右側に位置する電極を次々に印加することにより、可動部材30(無極性液体26)を図中左方向に連続的に移動させることもできる。すなわち、接続選択部42は、印加する電極を可動部材30(無極性液体26)の動きに合わせて切り替えていくことにより、可動部材30(無極性液体26)を広い範囲で連続的に動かすことができる。
なお、各下部電極の配置を曲線状にすることにより、接続選択部42は、可動部材30(無極性液体26)を曲線状に連続的に移動させることができる。さらに、絶縁膜24の撥水コーティング25を、下部電極上のみにすることにより、無極性液体26(可動部材30)は、下部電極群上で安定しやすくなり、接続選択部42による、より急激な制御にも追従することができるようになる。
図8Aは、液体アクチュエータ11を上部電極側(上側)からみた図であり、下部電極の配置のさらに他の例を示している。図8Aにおいては、下部電極の配置と可動部材30のみが示されており、それ以外は省略されている。図8Aにおいては、複数の下部電極(下部電極141乃至下部電極165)が平面上にアレイ状に配置されている。可動部材30(無極性液体26)は、その中心が下部電極153上になるように、下部電極147乃至下部電極149、下部電極152乃至下部電極154、並びに、下部電極157乃至下部電極159に位置している。
図8Aの状態において、例えば、接続選択部42が、可動部材30(無極性液体26)の図中下側の下部電極157乃至下部電極159に電圧を印加すれば、極性液体27の濡れ広がりにより、可動部材30(無極性液体26)は、図中上方向に移動する。また、例えば、接続選択部42が、可動部材30(無極性液体26)の図中上側の下部電極147乃至下部電極149に電圧を印加すれば、極性液体27の濡れ広がりにより、可動部材30(無極性液体26)は、図中下方向に移動する。さらに、例えば、接続選択部42が、可動部材30(無極性液体26)の図中左側の下部電極147、下部電極152、および下部電極157に電圧を印加すれば、極性液体27の濡れ広がりにより、可動部材30(無極性液体26)は、図中右方向に移動し、接続選択部42が、可動部材30(無極性液体26)の図中右側の下部電極149、下部電極154、および下部電極159に電圧を印加すれば、極性液体27の濡れ広がりにより、可動部材30(無極性液体26)は、図中左方向に移動する。
このように、図8Aにおいて、印加する電極を可動部材30(無極性液体26)の動きに合わせて切り替えていくことにより、接続選択部42は、図8Bに示されるように、可動部材30(無極性液体26)を広い範囲で連続的に基板171に沿った任意の方向に動かすことができる。また、その可動部材30(無極性液体26)の移動方向を途中で任意の方向に切り替えることもできる。つまり、駆動制御装置1は、下部電極群を配置した任意の面上において、任意の方向に自在に、可動部材30(無極性液体26)を駆動させることができる。
なお、アレイ状に配置される下部電極の個数は任意である。
以上においては可動部材30の位置を移動させるように説明したが、これ以外にも、駆動制御装置1は、例えば、可動部材30を回転させるように制御することも可能である。
図9は、その場合についての駆動制御装置1の構成および動作について説明する図である。図9Aは、液体アクチュエータ11を上部電極側(上側)からみた図であり、下部電極の配置のさらに他の例を示している。図9Aにおいては、下部電極の配置、可動部材30、および無極性液体のみが示されており、それ以外は省略されている。図9Aにおいては、複数の下部電極211−1乃至下部電極211−12が平面上に円周状に配置されている。なお、以下において、これらの複数の下部電極211−1乃至下部電極211−12を互いに区別する必要の無い場合、下部電極211と称する。
この下部電極群上には、無極性液体の4つの液滴(無極性液体201乃至無極性液体204)が配置され、その無極性液体201乃至無極性液体204の上に、1つの可動部材30が戴置される。この可動部材30の下面には、図9Bに示されるように、図中下方向に向かって4つの凸部(凸部221乃至凸部224)が設けられている。これらの凸部の上面、すなわち、図中下側の面には、撥水コーティング31が施されており、上述した4つの液滴(無極性液体201乃至無極性液体204)が、それぞれ付着するようになされている。
このように、可動部材30の下面に撥水コーティングを施した凸部を設け、その凸部に無極性液体を付着させることにより、無極性液体の付着位置が周囲の面より物理的に乖離されるので、可動部材30における無極性液体(無極性液体201乃至無極性液体204)の付着位置を、より安定させることができる。
以上のように、可動部材30は、その凸部(凸部221乃至凸部224)において、無極性液体(無極性液体201乃至無極性液体204)上に戴置される。また、絶縁膜24も、接続選択部42に接続された下部電極211上の部分のみが撥水コーティングされており、無極性液体201乃至無極性液体204は、図9Aに示されるように、下部電極211上で安定するようになされている。
すなわち、4つの無極性液体(無極性液体201乃至無極性液体204)は、1つの可動部材30を、下部電極211上に図9Aに示されるような状態で安定させるように、絶縁膜24に対して駆動可能に固定する。
接続選択部42が、図9Cに示されるように、下部電極211−1乃至下部電極211−12のうち、所定の下部電極、例えば、下部電極211−3、下部電極211−6、下部電極211−9、および下部電極211−12を電源43に接続し、電圧を印加させると、極性液体27の濡れ広がりにより、無極性液体201乃至無極性液体204は、矢印231乃至矢印234に示されるように、それぞれ、下部電極211−1乃至下部電極211−12が形成する円周方向に押し出される。つまり、無極性液体201乃至無極性液体204は、下部電極211−1乃至下部電極211−12が形成する円周方向の、互いに同じ向きに、互いに同じ長さだけ移動する。
この無極性液体201乃至無極性液体204の動きに伴って、可動部材30も、矢印231乃至矢印234に示されるように、下部電極211−1乃至下部電極211−12が形成する円周の中心を回転軸として、その円周方向に回転する。
接続選択部42は、電圧を印加する下部電極を、可動部材30の回転(無極性液体201乃至無極性液体204の動き)に合わせて、タイミングよく、切り替えていくことにより、上述した可動部材30の回転制御を連続的に行い、可動部材30を継続的に回転させることができる。
図10は、図9に示されるような駆動制御装置1の応用例を示す図である。図10においては、駆動制御装置1の、説明に必要な部分のみが示されている。
図10において、無極性液体201乃至無極性液体204の上には、可動部材30の代わりに磁性体250が戴置されている。この磁性体250は、図9に示される可動部材30と同様に円盤状であり、その下面に4つの凸部(凸部251乃至凸部254)を有している。これらの凸部の上面、すなわち、図中下側の面には、図9の場合と同様に撥水コーティング31が施されており、そこに、無極性液体201乃至無極性液体204がそれぞれ付着されている。
つまり、1つの磁性体250も、図9の可動部材30と同様に、4つの無極性液体(無極性液体201乃至無極性液体204)により、下部電極上に、絶縁膜24に対して駆動可能に固定されている。従って、磁性体250は、上述した可動部材30と同様に、下部電極への電圧の印加が切り替えられることにより、無極性液体201乃至無極性液体204の動きに合わせて回転する。
封止材28の図中上には、軸261に回転可能に設けられた磁性体262が設置されている。この軸261の中心は、磁性体250の回転軸と一致するように設けられる。すなわち、磁性体250と磁性体262は、共通の回転軸263を軸として回転する。また、磁性体250と磁性体262は、互いの磁界の中に位置し、互いに影響を及ぼす。
図10において、例えば、図示せぬ接続選択部42により、下部電極への電圧の印加が切り替えられ、図9を参照して説明したように無極性液体201乃至無極性液体204が下部電極上を移動し、磁性体250が回転軸263を回転軸として、矢印271および矢印272に示されるように回転すると、その磁性体250の磁力により、磁性体262も回転軸263を軸として、矢印281および矢印282に示されるように回転する。
以上のように、駆動制御装置1は、可動部材30を駆動させることにより、封止材28の外部の回転機構をより簡単な構成でより正確に回転させることもでき、例えば、サーボモータ等に利用可能である。
駆動制御装置1の液体アクチュエータ11の形状は、上述した以外であってももちろんよく、球状や円筒状等であってもよい。また、可動部材30の移動する面は平面であっても曲面であってもよい。可動部材30の動作も上述した以外であってもよいし、複数の動作を組み合わせたものであってもよい。さらに、複数の可動部材30を同時に制御するようにしてもよく、その場合、各可動部材30の大きさ、形状、材質、および動作が互いに異なるようにしてもよい。
なお、液体アクチュエータ11は、可動部材30(無極性液体26)の周辺が、図1に示されるように極性液体27により常に満たされていればよく、実際に、極性液体27が封止材28により封止されていなくてもよい。例えば、フィン付き可動部材30を回転させて周囲の極性液体27を一方向に流動させるようにし、液体アクチュエータ11を、極性液体27のポンプとして動作させるようにしてもよい。この場合においても、常に可動部材30周辺が極性液体27に満たされていれば、図1のように封止されている状態と実質的に同じである。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。この場合、例えば、駆動制御部41は、図11に示されるようなパーソナルコンピュータとして構成されるようにしてもよい。
図11において、パーソナルコンピュータ300のCPU(Central Processing Unit)301は、ROM(Read Only Memory)302に記憶されているプログラム、または記憶部313からRAM(Random Access Memory)303にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM303にはまた、CPU301が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
CPU301、ROM302、およびRAM303は、バス304を介して相互に接続されている。このバス304にはまた、入出力インタフェース310も接続されている。
入出力インタフェース310には、キーボード、マウスなどよりなる入力部311、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部312、ハードディスクなどより構成される記憶部313、モデムなどより構成される通信部314が接続されている。通信部314は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
入出力インタフェース310にはまた、必要に応じてドライブ315が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア321が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部313にインストールされる。
上述した一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
この記録媒体は、例えば、図11に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)(登録商標)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア321により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM302や、記憶部313に含まれるハードディスクなどで構成される。
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムとは、複数のデバイス(装置)により構成される装置全体を表すものである。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
1 駆動位置制御装置, 11 液体アクチュエータ, 12 制御部, 21 基板, 22および23 下部電極, 24 絶縁膜, 25 撥水コーティング, 26 無極性液体, 27 極性液体, 28 封止材, 29 上部電極, 30 可動部材, 31 撥水コーティング, 41 駆動制御部, 42 接続選択部, 43 電源