JP2009276450A - 光学素子及びその製造方法 - Google Patents

光学素子及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2009276450A
JP2009276450A JP2008125994A JP2008125994A JP2009276450A JP 2009276450 A JP2009276450 A JP 2009276450A JP 2008125994 A JP2008125994 A JP 2008125994A JP 2008125994 A JP2008125994 A JP 2008125994A JP 2009276450 A JP2009276450 A JP 2009276450A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
liquid
optical element
hole
conductive layer
transparent substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2008125994A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5256843B2 (ja
Inventor
Yuichi Takai
雄一 高井
Chiaki Kanai
千明 金井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sony Corp filed Critical Sony Corp
Priority to JP2008125994A priority Critical patent/JP5256843B2/ja
Publication of JP2009276450A publication Critical patent/JP2009276450A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5256843B2 publication Critical patent/JP5256843B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】寄生容量を抑制することによって、消費電力が小さく、応答速度の速い光学素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学素子1は、第1の面7側から第2の面8側に向かって開口の大きさが漸次大きくなる貫通孔2が形成された絶縁性基板3と、絶縁性基板3の第1の面7側に接合された第1の透明基板4と、第2の面8側に接合され、第1の透明基板4と貫通孔2と共に液収容部6を形成する第2の透明基板5と、液収容部6の第1の面7側に収容される導電性の第1の液体12と、液収容部6の第2の面8側に収容される、第1の液体12と屈折率が異なり、かつ混合することのない絶縁性の第2の液体13と、貫通孔2の周面及び第2の面8に連続して形成される導電層9と、導電層9を被覆する絶縁層10とを具備する。
【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロウェッティング効果(電気毛細管現象)を利用した光学素子及びその製造方法に関する。
近年、エレクトロウェッティング効果を利用した光学素子の開発が進められている。エレクトロウェッティング効果は、絶縁体を介して導電性を有する液体と電極との間に電圧を印加すると、絶縁体が帯電することによって、絶縁体と液体との界面自由エネルギーが減少し、液体表面の形状(接触角)が変化する現象をいう。
この現象を利用して、電圧によって光学特性を変化させることが可能な光学素子が提案されている。例えば下記特許文献1には、この効果を利用し、印加電圧によって焦点距離を変化させることが可能な光学素子が記載されている。
この、特許文献1に記載の光学素子は、貫通孔が形成された電極層と、その一方の面に接合され、貫通孔の一端を閉塞する第1の透明基板と、電極層の他方の面に密閉層を介して対向配置される第2の透明基板によって、液体を収容するセルが形成されている。また、電極層の、貫通孔の内壁面及び第2の透明基板と対向する面は、撥水性の絶縁層によって被覆されている。そして、このセル内に、導電性の第1の液体と、屈折率を異にし、第1の液体と混和することのない絶縁性の第2の液体とが、上述の貫通孔の中に2液の界面が位置するように充填されている。
この構成によれば、電極層と第1の液体間に電圧を印加すると、電極層と第1の液体が絶縁層を介して対向しているため、電荷が蓄積し、すなわちキャパシタが構成される。この蓄積した電荷により、第1の液体が電極層に引かれて絶縁層上に濡れ広がり、貫通孔の内壁面に対する第1の液体の接触角が変化する(エレクトロウェッティング効果)。その結果、第1の液体と第2の液体の界面(すなわちレンズ)の形状が変化し、当該セルを透過する光の焦点距離を任意に調整することが可能になる。
特開2007−212943号公報([0087]、図9)
上記特許文献1に記載の光学素子は、電極層と第1の液体を絶縁するために、絶縁層が貫通孔以外の面、すなわち、第2の透明基板と対向する電極層の表面にも形成される必要がある。これにより、本来の液体の界面の形状変化に寄与する領域(貫通孔の内壁面)以外の領域、具体的には、電極層が絶縁層を介して第1の液体と対向する領域にキャパシタが構成される。この意図しないキャパシタにより発生する寄生容量によって、該光学素子に交流電圧を印加して焦点距離を変化させる際、消費電力が増大し、応答速度も低下するという問題が生じる。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、寄生容量を抑制することによって、消費電力が小さく、応答速度の速い光学素子及びその製造方法を提供することを課題とする。
上述の課題を解決するため、本発明の主たる観点に係る光学素子は、第1の面及びこれに対向する第2の面を有し、前記第1の面側から前記第2の面側に向かって開口の大きさが漸次大きくなる貫通孔が形成された絶縁性基板と、前記絶縁性基板の前記第1の面側に接合された第1の透明基板と、前記絶縁性基板の前記第2の面側に接合され、前記第1の透明基板と前記貫通孔と共に液収容部を形成する第2の透明基板と、前記液収容部の前記第1の面側に収容される導電性の第1の液体と、前記液収容部の前記第2の面側に収容される、前記第1の液体と屈折率が異なり、かつ混合することのない絶縁性の第2の液体と、前記貫通孔の周面及び前記第2の面に連続して形成される導電層と、前記導電層を被覆する絶縁層とを具備する。
この構成によれば、液収容部を形成する絶縁性基板は、絶縁性であり、その第1の面側に導電層は存在しない。よって、絶縁性基板の第1の面側に電極が絶縁層を介して導電性の第1の液体と対向する領域、すなわち意図しないキャパシタを構成する領域が存在せず、寄生容量が発生しない。その結果、消費電力が小さく、応答速度の速い光学素子を得ることができる。
本発明に係る光学素子において、前記貫通孔は、一方向の長さが他方向の長さより長い開口形状であるものとしてもよい。
この構成によれば、貫通孔の開口の長手方向に比べて短手方向に大きく入射光を屈折させることができる。また、上記一方向の長さが上記他方向の長さより十分長い開口形状とした場合、シリンドリカルレンズとして機能する光学素子を得ることができる。
本発明に係る光学素子において、前記貫通孔は、前記絶縁性基板の面内において一方向に複数配列されているものとしてもよい。
各々の液収容部を隔てる絶縁性基板の第1の面の面積は、前記第1の面側から前記第2の面側に向かって開口の大きさが漸次大きくなる形状(以下、本明細書において「逆テーパー形状」とも称する)である貫通孔が複数設けられている場合、当該貫通孔が単独で設けられている場合に比べ大きくなり、第1の面と第1の透明基板の間で寄生容量が発生すると、その影響もより大きいものとなる。しかし、この構成によれば、第1の面において寄生容量が発生しないため、貫通孔が複数形成されていても、寄生容量の影響が生じない光学素子を得ることができる。
本発明に係る光学素子において、前記絶縁性基板は、隣接する複数の前記貫通孔の間で前記第2の液体を相互に連通させる通液路を有するものとしてもよい。
この構成によれば、複数配列された貫通孔が形成する液収容部に収容された第2の液体を、各液収容部間において連通させることができ、各液収容部に収容されている第1の液体と第2の液体の体積比を所望の値に保つことができる。
本発明に係る光学素子において、前記貫通孔の前記周面と前記第2の面の境界部は、曲面であるものとしてもよい。
上記光学素子の構造において、液収容部の周面となる貫通孔が形成される絶縁性基板は絶縁体によって形成される。そのため、貫通孔表面には導電層が形成される必要があり、導電層は、外部の電圧印加手段と導通を得るため、絶縁性基板の第2の面にも形成される。この場合、導電層は、貫通孔の周面及び第2の面に連続して形成される必要がある。
この構成によれば、当該境界部が曲面であるため、当該境界部が鋭利である場合に比し、上記貫通孔の周面及び上記第2の面との間にわたって連続する導電層を安定して形成することができる。その結果、導電層の破損、断線等の発生が抑制された安定した導電層を得ることが可能となる。
本発明に係る光学素子であって前記導電層は、透明導電膜であるものとしてもよい。
この構成によれば、導電層によって、光学素子を通過する光が遮られないため、入射光の透過率が高い光学素子を得ることが可能である。
本発明に係る光学素子の製造方法は、第1の面及びこれに対向する第2の面を有する絶縁性基板に、前記第1の面側から前記第2の面側に向かって開口の大きさが漸次大きくなる貫通孔を形成し、前記第2の面及び前記貫通孔の周面に、連続する導電層を形成し、前記第2の面に第2の透明基板を取り付けて、前記貫通孔と前記第2の透明基板により凹部を形成し、前記導電層を被覆する絶縁層を形成し、前記凹部に、導電性の第1の液体と、前記第1の液体と屈折率が異なり、かつ混合することのない絶縁性の第2の液体を収容し、前記第1の面に第1の透明基板を液密に取り付ける。
この製造方法によれば、絶縁性基板の第1の面側に、導電体が絶縁体を介して対向する領域、すなわち意図しないキャパシタを構成する領域を形成しないことが可能である。また、導電層を形成した後に絶縁層を形成することによって、当該導電層を被覆し、導電層と第1の液体を絶縁することが可能である。
すなわち、上述の寄生容量が発生せず、消費電力が小さく、応答速度の速い光学素子を製造することができる。
本発明に係る光学素子の製造方法において、前記絶縁性基板に前記導電層を形成する工程は、前記導電層が、前記導電層の構成材料を含むスパッタリングターゲット(以下、ターゲット)に対向するように、前記絶縁性基板を真空槽内に配置し、スパッタリング法によって前記第2の面及び前記貫通孔の周面に前記導電層を選択的に形成するものとしてもよい。
この製造方法によれば、スパッタリング法は成膜方向に指向性を有することから、導電層を第1の面には形成しないことが可能となる。つまり、ターゲットから叩き出された粒子は直線的に飛散するため、成膜領域は成膜対象物とターゲットとの間の幾何学的配置関係に大きく依存する。したがって、絶縁性基板の第2の面をターゲットに対向配置させることによって、絶縁性基板の第1の面への膜形成を回避できる。
これにより、上述の寄生容量が発生せず、駆動電圧が低く、応答速度の速い光学素子を製造することができる。なお、真空蒸着法やイオンプレーティング法などの他の物理的気相成長法においても同様の効果が得られるので、これらの方法をスパッタ法に代えて適用してもよい。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る光学素子について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る光学素子の断面図、図2は当該光学素子の平面図である。図1は図2の[A]−[A]線方向断面図である。これらの図に示すように、光学素子1は貫通孔2を有する絶縁性基板3、第1の透明基板4及び第2の透明基板5を有する。第1の透明基板4と第2の透明基板5に絶縁性基板3が挟まれ、貫通孔2と第1の透明基板4及び第2の透明基板5で形成される空間が、導電性の第1の液体12と絶縁性の第2の液体13を収容する液収容部6となる。
絶縁性基板3は第1の面7と第2の面8を有し、第1の面7に封止部材14を介して第1の透明基板4が接合され、第2の面8に第2の透明基板5が接合される。絶縁性基板3の素材は、光透過性が高い絶縁性の合成樹脂材料(例えば、アクリル、PET(Polyethylene Terephthalate)、ポリカーボネート等)から適宜選択することができるが、光透過性が高い他の材料(例えばガラスなど)を用いることによって、光学素子1を通過する光の強度の損失を低減することができる。
絶縁性基板3に形成される貫通孔2は、絶縁性基板3の第1の面7と第2の面8を貫通し、第1の面7側から第2の面8側に開口の大きさが漸次大きくなる逆テーパー形状である。すなわち、貫通孔2の周面が、第1の面7及び第2の面8に対して傾斜しており、その傾斜角は特に限定されないが、例えば、1度〜20度程度とされる(図1では、傾斜角度を強調して示している)。なお、図示の例では、貫通孔の周面は直線的な傾斜面としたが、これに限らず、曲面形状の傾斜面であってもよい。また、貫通孔2の平面形状は、本実施形態では、X方向に比べてY方向の開口幅が大きい長円形状とされるが、これに限られず、円形、楕円形、長方形などの多角形であってもよい。
詳細は後述するが、貫通孔2の周面が第1の面7あるいは第2の面8となす傾斜角度は、2液の界面形状に影響を与える。また、この傾斜により絶縁性基板3と、第2の透明基板5を接着剤で接着する場合に、はみ出した接着剤が貫通孔2の最小径で決定される光学有効エリアにかかることを防止することが可能である。
また、貫通孔2の、第2の面8側の開口縁が曲面となる(貫通孔2の周面と第2の面8側が滑らかに連続する)ように形成してもよい。これによって、後述するように、貫通孔と第2の面8に連続する導電層9を安定して形成することが可能となる。
封止部材14はゴム、エラストマー樹脂等液体を封止できる素材によって形成され、絶縁性基板3の第1の面7に、貫通孔2の開口を一周するように設けられる。絶縁性基板3の第1の面7には、絶縁性基板3の凸部からなる封止部材ガイド部15が設けられており、この封止部材ガイド部15によって封止部材14が位置決めされている。
絶縁性基板3の貫通孔2の周面には、第2の面8側と連続する導電層9が設けられている。導電層9のうち、貫通孔2の周面に形成され、電極として機能する部分を電極部9aとし、第2の面8に形成され、電極部9aを図示しない外部電源に接続するための配線として機能する部分を配線部9bとする。導電層9は、導電性薄膜よりなり、絶縁性基板3の第2の面8側からスパッタリング法などにより形成することができる。導電性材料として酸化スズやITO(Indium Tin Oxide)のような透明導電性材料を使用することによって、導電層9による光強度の減少を抑えることが可能である。上述のように、貫通孔2は逆テーパー形状であるため、第2の面8側から、第2の面8及び貫通孔2の周面の全領域に対し、成膜方向に指向性を有するスパッタリング法によって導電層9を選択的に形成することができる。
なお、電極部9aは、貫通孔2の周面の全領域に形成される必要はなく、後述する、エレクトロウェッティング効果を利用した2液界面の形状変化を発生させるのに必要な領域に形成してもよい。例えば、光学素子1を後述するシリンドリカルレンズとして利用する際には、エレクトロウェッティング効果を発生させる必要がない貫通孔2の周面の領域が存在する場合があるからである。この場合、導通を得るために何れかの箇所において、配線部9bと接続している必要がある。また、配線部9bも、第2の面8の全領域に形成される必要はなく、外部の電源に接続可能なように形成されればよい。
本実施形態の光学素子1においては、導電層9は、絶縁性基板3の第1の面7には形成されず、第1の面7側において導電層が絶縁層を挟んで導電性の第1の液体12と対向することが回避されるため、意図しないキャパシタを構成する部分が存在しない。ここで、意図しないキャパシタとは、後述する2液界面の形状変化を発生させるために必要な、貫通孔2の周面に形成されるキャパシタとは異なり、それ以外の部分に形成され、寄生容量を発生させるキャパシタをいう。
導電層9が形成された貫通孔2の周面、絶縁性基板3の第1の面7及び第2の透明基板5の液収容部側の面には絶縁層10が形成される。絶縁層10は電極部9aと後述する液収容部6に収容される液体とが接触しないように、電極部9aを完全に覆う必要がある。
絶縁層10は、誘電率が高いものを用いることができる。後述するが、本実施形態では、当該絶縁層10を挟んで、電極部9aと第1の液体12の間に電圧が印加される。ここで、電極部9aと第1の液体12の間の静電容量が比較的大きいと、光学素子1の駆動に必要な印加電圧が低くてよく、もしくは絶縁層10の膜厚を薄くすることができるからである。
また、絶縁層10は、撥水性を有するものとする。この、絶縁層10の撥水性により、第2の液体より表面エネルギーの大きい液体である第1の液体12が、当該絶縁層10が設けられた面に接触しないように集合する。また、絶縁層10の撥水性により、後述する、2液界面の形状が影響を受ける。
以上のように、絶縁層10は絶縁と撥水の二つの機能を有するものである。このため、絶縁層10は、電極部9aを完全に覆うという条件を満たす必要があり、また、少なくとも2液界面の近傍(エレクトロウェティング効果による第1の液体12の移動に係る領域)に形成される必要がある。
撥水性、絶縁性を有する絶縁層10の素材としてパリレン(パラキシリレン系樹脂)、PVDF(PolyVinylidine DiFluoride)、等が挙げられる。これらはCVD(Chemical Vapor Deposition)法、コート法等によって形成される。また、誘電率が高い素材である、酸化タンタル、酸化チタン等を形成し、撥水性が高い素材であるPTFE(PolyTetraFlouroEthylene)等をその上層に形成する積層構造であってもよい。
なお、絶縁性基板3の第1の面7及び第2の透明基板5の液収容部側の面に形成される部分等の電極部9aが形成されていない領域に形成される絶縁層10は、電極部9aを覆うものではない(すなわち、誘電率が高いものである必要はない)ため、上記積層構造とする場合でも、誘電率が高い素材を下層として形成する必要はない。また、電極部9aと第1の液体12との間の電気的絶縁が確保されている限りにおいて、第1の透明基板4と対向する絶縁性基板3の表面全域に、絶縁層10が形成されていなくてもよい。
本実施形態では、絶縁層10として、パリレンをCVD法により成膜した。
第1の透明基板4及び第2の透明基板5は、ガラス基板や非導電性プラスチック等で形成される。後述するが、これらの基板は、透明度が高い素材で構成することができる。この場合、光強度の減少を抑えられるので、光学素子1の入射光あるいは透過光の経路上に存在させても影響が少ない。
第1の透明基板4の液収容部側の面には、配線11が設けられる。配線11は第1の液体12と導通を得る目的であるため、第1の透明基板4の液収容部側の全領域に設けられる構成に限らず、図1に示すように、外部の電源に接続可能なように所定の形状にパターニングされていてもよい。素材として酸化スズやITOのような透明導電性材料を使用することによって、前述のように光強度の減少を抑えることが可能である。
上述のようにして形成された液収容部6には第1の液体12と第2の液体13が収容される。ここで、この2液は、互いに混合せず、かつ絶対屈折率が異なるものである必要がある。2液が混合する場合、2液界面が生じず、屈折率が同じであれば、界面形状による光学特性が得られないからである。また、2液の比重を同等とすることによって、光学素子1の振動等の物理的挙動に対して2液界面が大きく変化し、光学特性に影響を与えることを防止することができる。さらに、後述するように、2液の界面を変形させて使用するため、第1の液体12と第2の液体13は共に、粘度が低いものとしてもよい。加えて、2液のうち少なくとも1液は、着色されていてもよい。
第1の液体12は、導電性あるいは有極性の液体である。光透過率が高いものが好適である。水、電解液(塩化ナトリウム水溶液、塩化リチウム水溶液等)、アルコール類(メタノール、エタノール等)、常温溶融塩等を用いることが可能である。本実施形態では、塩化リチウム水溶液(3.36wt%、絶対屈折率1.34)を第1の液体12とした。
第2の液体13は、絶縁性の非水系液体である。光透過率が高いものを使用することができ、例えば、炭化水素(デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ウンデカン等)、疎水性シリコーンオイル、フッ素系材料等を用いることが可能である。本実施形態では、シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TSF437、絶対屈折率1.49)を第2の液体13とした。
図1に示すように、液収容部6に第1の液体12、第2の液体13を収容すると、2液は混合しないため2層に分離する。本実施形態では、絶縁性基板3の貫通孔2の周面及び第2の透明基板5の液収容部側の面(以下、撥水領域)に撥水性を有する絶縁層10が形成されているので、第2の液体より表面エネルギーの大きい第1の液体12が弾かれて第1の透明基板4側に集合し、第2の液体13が第2の透明基板5側に集合する。
次に2液の界面の形状について説明する。
図3は、貫通孔2の周面と、2液の界面の接触の様子を示す模式図である。
同図に示すように、2液界面と周面は、接触角θを有して接触する。
ここで、接触角θは、第1の液体12と第2の液体13の間(γ)、第2の液体13と周面の間(γ)、周面と第1の液体12の間(γ)のそれぞれに生じる界面張力の相互作用により決定する。
界面張力γ、γは、周面の材質(すなわち絶縁層10の材質)による影響を受ける。
界面の形状は上述の接触角θの影響に加え、第1の液体12と第2の液体13の間(γ)の界面張力による作用を受ける。すなわち、界面張力γが小さいと、貫通孔2の周面近傍では上述の相互作用を受けるが、周面から遠い領域(バルク領域)ではフラットな2液界面となる。
また、2液界面の形状は、貫通孔2の周面の傾きと、貫通孔2の開口の形状による影響を受ける。
図1、図2に示すX、Y、Z方向に従って説明する。
界面の、Z−X平面(あるいはY−Z平面)上の形状、すなわち断面形状は、貫通孔2の周面の傾きによって影響を受ける。
周面がX−Y平面に対して垂直である場合、2液界面は、上述のように周面に対しある接触角θを有する。これに対し、周面がX−Y平面に対して傾いている場合、接触角θは周面が垂直である場合と同一であるため、2液界面の曲率は、両場合で異なるものとなる。
また、X−Y平面上の界面の形状は、貫通孔2の開口の形状と同一となる。貫通孔2の開口を円形とすると、界面形状も円形となり、かつ上述のように曲面であるため、非球面状、球面状あるいは球面に近似する形状となる。また、貫通孔2の形状を、X方向の長さに対してY方向に十分長い長円形状とすると、界面の形状は、Y方向の曲率がほぼ0となり、貫通孔2の周面から遠ざかるほど直線的となり、X方向にのみ湾曲するシリンドリカル(円筒状)形状となる。
以上のように、接触角θ、界面張力(γ)、貫通孔2の形状によって、2液界面の形状が決定される。
本実施形態の構成では、第1の液体12と第2の液体13が形成する2液界面は、第1の液体12が凸状、第2の液体13が凹状である曲面となる。貫通孔2は、X方向の長さがY方向の長さに比べ十分長く形成されているため、上記X方向にのみ湾曲するシリンドリカル形状となる。かつ、貫通孔2は逆テーパー形状に形成されている(すなわち周面が傾いている)ため、周面が垂直である場合に比べ、曲率が大きくなる。
次に、このように構成された光学素子1の動作を説明する。
電圧非印加時には、2液界面は、上述のように、貫通孔2の形状と、第1の液体12、第2の液体13、絶縁層10の物性値によって規定される曲面となる。この2液界面は、屈折率が異なる境界であるため、入射した光を収束あるいは発散させる、即ちレンズ面として機能する。屈折率の差が大きいほど、レンズパワーが大きくなる。Z方向から入射した光に対してのレンズ効果を以下で説明する。
図4は入射光及び透過光の経路を示す図である。(A)は電圧非印加時、(B)は電圧印加時である。
図4(A)に示すように、光学素子1へのZ方向、第1の透明基板4からの入射光は、第1の液体12の絶対屈折率が第2の液体13の絶対屈折率より小さいため、2液界面で屈折し、ある焦点距離において発散する。
後述する電圧印加時の光学素子1を示す図4(B)においては、電圧非印加時より2液界面の曲率が小さいため、より焦点距離が長くなる。
本実施形態においては、第1の液体12の絶対屈折率が第2の液体13の絶対屈折率より小さいため、屈折率の大小が逆の場合に比べ、2液界面での反射による光強度の損失が少ない。
上述したように、貫通孔2のX−Y平面上の形状により、2液界面のX−Y平面上における形状が規定される。2液界面の形状が球面形状(あるいは球面に近似する形状)である場合、Z方向からの入射光は、X方向、Y方向ともに光入射側に単一の焦点を有して発散する。2液界面の形状がX方向にのみ湾曲するシリンドリカル形状である場合、Z方向からの入射光は、Y方向に伸びる焦線(焦点の集合)を有してX方向にのみ発散し、Y方向には直進する。
本実施形態に係る光学素子1は、上述したように、貫通孔2が逆テーパー形状であるため、図4(A)に示す電圧非印加時における2液界面の曲率が大きい。これは入射光を屈折させる能力、すなわちレンズパワーがより大きいことを意味する。
なお、本実施形態とは異なり、第1の液体12の絶対屈折率が第2の液体13の絶対屈折率より大きい場合は、入射光は2液界面を通過することによって収束する。
電圧印加による2液界面の形状変化について、以下で説明する。
なお、電圧非印加時の第1の液体12の接触角をθ、電圧印加時の接触角をθとする。
ここで、電極部9aは貫通孔2の周面の全領域に形成されているものとして説明する。
上述したように、本実施形態に係る光学素子1では第1の液体12が凸状、第2の液体13が凹状となる2液界面が形成される。この光学素子1の第1の液体12と電極部9aの間に、外部電源によって電圧を印加することによって、エレクトロウェッティング効果による2液界面の変形が起こる。上記外部電源は、直流電源でもよいし、交流電源でもよい。
第1の液体12と電極部9aの間に電圧Vを印加すると、静電ポテンシャルが発生し、第1の液体12及び電極部9a中の電荷が移動する。その結果、第1の液体12の表面と、電極部9aに、絶縁層10及び第2の液体13を介して、異なる電荷が蓄積しキャパシタを構成する。この電荷が引きあうことによって、第1の液体12と貫通孔2の周面間の界面張力(γ)と逆向きの電荷による圧力(Π)が発生し、界面張力(γ)が打ち消されるため、第1の液体12の接触角は接触角θから接触角θまで増大する。第1の液体12と第2の液体13の体積は一定なため、当該接触角θを満たすために、第1の液体12が貫通孔2の周面に沿って、第2の透明基板5側に移動し(濡れ広がり)、第2の液体13はバルク領域に移動する。これによって、2液界面の曲率が減少する。
電圧の印加を停止すると、第1の液体12及び電極部9aに蓄積された電荷が解消され、電圧非印加時の2液界面の形状に戻る。
印加電圧の大小によって、電荷による圧力(Π)が増減するため2液界面の曲率をリニアに変化させることが可能である。
以上を式を用いて説明する。
γ=γ+γcosθ+Π ・・・(1)
cosθ=(γ−γ)/γ ・・・(2)
Π=ε・ε・V/2e ・・・(3)
cosθ=cosθ−ε・ε・V/(2e・γ) ・・・(4)
図3において、2液界面と周面の接触する点に作用する力の平衡は、式(1)で表される。ここで、電圧非印加時での接触角θは式(2)、電荷による圧力Πは、式(3)で表されるので、式(2)及び式(3)を式(1)に代入し、接触角θが電圧Vの関数として表される式(4)が得られる。なお、εは真空の誘電率、εは絶縁層の比誘電率、eは絶縁層の膜厚である。
上述のように、導電体(第1の液体12、電極部9a)中の電荷は絶縁体(絶縁層10、第2の液体13)を介して対向しており、電圧が印加された際にキャパシタとして機能する。このキャパシタとして機能する領域、即ち、電圧が印加される二つの導電体が、絶縁体を介して対抗する領域は必要最小限である方がよい。2液界面の形状変化に寄与しない(意図しない)キャパシタを構成する領域が存在することにより、当該領域にも電荷を蓄積させる必要があるため、2液界面の形状変化に必要な電荷量、すなわち消費電力が増大し、応答速度も低下するからである。
光学素子1においては、貫通孔2が設けられた基板は絶縁体からなり、電極部9aが設けられた領域のみがキャパシタとなるため、意図しないキャパシタ(寄生容量)は存在しない。よって消費電力が小さく、応答速度の速い光学素子を得ることができる。
なお、キャパシタ(2液界面の形状変化に寄与する部分に限る)は、静電容量が大きいほうが、低い電圧で多くの(2液界面の形状を変化させる)電荷を蓄積することが可能であり好適である。上述したように、絶縁層10を誘電率の高い材料で形成することによって、この大きな静電容量を得ることが可能である。
光学素子1を実際に使用する場合の動作についてここで説明する。カメラのストロボフラッシュの配光角調節に用いる場合を例とする。ここでは、ストロボフラッシュの光源及びリフレクターの前面に、第1の透明基板4が光源側となるように取り付けた例を説明するが、第2の透明基板5側が光源側となるように取り付けてもよい。
電圧非印加時において、ストロボフラッシュから発し、リフレクターで反射した光は光学素子1に第1の透明基板4側から入射する。この入射光は、前述のように2液界面において屈折し、拡散する。
例えば、より遠い焦点距離によって撮像が所望される場合、光学素子1に電圧が印加される。これによって、前述のように2液界面の形状が変化し、曲率が減少する。この場合において、光学素子1に第1の透明基板4側から入射した光は、2液界面において屈折するが、2液界面の曲率が減少しているため、その程度は小さい。すなわち電圧非印加時に比べてその配光角は減少し、より遠方に照射される。
本実施形態に係る光学素子1は、機械的構成を持たないため従来の配光角調整機構に比べて小型軽量化することが可能であり、応答速度も速い。また、電圧が印加される際に電流はほとんど流れないため消費電力は極めて小さい。
なお、電極部9aが、貫通孔2の周面の一部にのみ形成されている場合を説明する。これは例えば、2液界面を、上述のシリンドリカル形状とし、当該界面をY方向に湾曲させる必要はない場合である。この場合、貫通孔2の周面であってY方向の湾曲にのみ寄与する領域(X―Y平面に平行な領域)には電極部9aを形成する必要がない。このように、電極部9aを形成した領域のみでエレクトロウェッティング効果が発生するため、所望の方向にのみ2液界面を湾曲させることが可能である。なお、比較例として、本実施形態の絶縁性基板3に相当する部品を導電性の素材により形成した場合、本実施形態のように、任意の領域にのみエレクトロウェッティング効果を発生させる光学素子を得ることは不可能である。
次に、光学素子1の製造方法を説明する。
図5、図6、図7は、本実施形態に係る光学素子1の製造プロセスを示す。
これらの図では、図1、図2に示すX―Z平面を示し、貫通孔2の傾斜角度は強調されている。
図5は光学素子1の製造プロセスのうち、基板工程を示す図である。
合成樹脂等の素材を射出成形などの金型成型技術を用いることによって、図5(A)に示すように、貫通孔2、第1の面7及び第2の面8を有する絶縁性基板3を形成する。
貫通孔2は、開口の大きさが、第1の面7側から第2の面8側に向かって漸次大きくなる(逆テーパー)形状となるように形成される。この逆テーパー形状は、絶縁性基板3を金型から取り外す際の抜き勾配とすることが可能である。これは、例えば、第2の面8及び貫通孔2を形成する金型(金型a)と、第1の面7及び封止部材ガイド部15を形成する金型(金型b)の二つの金型を用いて絶縁性基板3を形成する場合、金型aを取り外す際に貫通孔2の周面から受ける摺動抵抗を軽減するものである。本実施形態における貫通孔2の周面は、第2の面8に向かって広がっているため、この周面の傾斜を金型(金型a)からの抜き勾配として利用することが可能である。
次に図5(B)に示すように、貫通孔2の周面及び第2の面8に、導電層9を形成する。
図8は、この導電層9のスパッタリング法による成膜の様子を示す図である。真空槽16中に、導電層9の原料からなるスパッタリングターゲット(以下、ターゲット)17と、ターゲット17に対向する位置に、絶縁性基板3が、第2の面8がターゲット17に対向するように配置されている。スパッタリングによりターゲット表面から生じたスパッタ粒子は、同図に矢印で示すように、ターゲット17から、絶縁性基板3に向かって直線的に飛散する。一般に高い指向性を有するスパッタ粒子は、ターゲットに対向する領域にのみ到達するが、本実施形態の貫通孔2の周面は、前述のように、逆テーパー形状であるため、周面の全領域に到達し、膜を形成する。つまり、第2の面8と貫通孔2の周面に導電層9を形成することが可能である。
ここで、予め、貫通孔2の周面あるいは第2の面8にマスキングを施しておくことによって、前述のように、任意の領域にのみ導電層9(電極部9a及び配線部9b)を形成することが可能である。
以上では導電層9をスパッタリング法により形成する方法を示したが、メッキ等の方法を使用することも可能である。例えば、上述のスパッタリング法により成膜し、その膜を電極として電解メッキをする方法も、スパッタリング法では比較的成膜速度が低いため効果的である。
次に図5(C)に示すように、絶縁性基板3の第2の面8に第2の透明基板5を取り付ける。これによって、貫通孔2を側面、第2の透明基板5を底面とする凹部が形成される。
また、第2の面8に接着剤を塗布し、第2の透明基板5を接着する方法、第2の面8にシールリングを設け、第2の透明基板5を螺子等により締結する方法等により、液収容部6内の液体が漏出しないように取り付ける必要がある。ここで、接着剤を用いて接着する場合、貫通孔2と第2の面8の境界部と、第2の透明基板5が接する箇所(同図に501で示す箇所)において、当該接着剤が食み出す場合がある。本実施形態に係る光学素子1においては、貫通孔2が逆テーパー形状であるため、食み出した接着剤は、(多量である場合を除き)貫通孔2の最小径で決定される光学有効エリアに係ることがない。なお、接着剤としては、UV(UltraViolet)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
次に図5(D)に示すように、絶縁性基板3の第1の面7、貫通孔2の周面、第2の透明基板5の液収容部6側の面に、絶縁層10を形成する。
これは例えばCVD法によって形成することができる。絶縁層10は、絶縁性基板3と、第2の透明基板5の、現段階における外面の全領域に形成されるため、成膜方法は、指向性を有するものに限られない。上述したように、絶縁性基板3の第1の面7、貫通孔2の周面、第2の透明基板5の液収容部6側の面、すなわち液収容部6の内面となる領域には絶縁層10を設ける必要があるが、それ以外の面には設けてもよいし、設けなくてもよい。また、上述したように、予め電極部9aの表面に、高い誘電性を有する材料からなる層を形成しておき、その上に撥水性の高い材料からなる層を形成してもよい。絶縁層10の成膜方法はここで示すCVD法に限られず、コート法その他の成膜方法を用いることができる。
図6は光学素子1の製造プロセスのうち、液入れ工程を示す図である。
図6(A)に示すように、基板工程で作製したものに、第1の液体12を所定量充填する。第1の液体12の体積によって、2液界面の形状も影響を受けるため、所定量を確実に充填することが必要である。
次に図6(B)に示すように、封止部材14を取り付ける。これは封止部材ガイド部15に嵌合等することによって取り付けられる。
次に図6(C)に示すように、第2の液体13を所定量充填する。これは例えばディスペンサー等によって、液収容部6に注入される。
以上の液入れ工程における、2液の充填の順序は特に限定されない。しかし、後述するように、液収容部6が複数形成され、第1の液体が各液収容部6間を通液することが可能な光学素子を製造する場合には、本実施形態に示した順序にすることによって、各液収容部6における2液の体積比を所望の割合にすることが容易になる。本実施形態に示した様に第1の液体12を先に充填することによって、後に注入される第2の液体13が、撥水性に弾かれる第1の液体12によって蓋をされた形になり、所定量が収容される。第1の液体12は、他の液収容部6と通液することが可能であるので、第2の液体13が所定量収容されれば自ずから所定量収容される。第2の液体13を第1の液体12より先に充填する場合、第2の液体13が他の液収容部6に通液し得るため、各液収容部6において、2液の体積比が所望の割合から逸脱する可能性がある。
図7は光学素子1の製造プロセスのうち、封止工程を示す図である。
図7(A)に示すように、上述の2液を充填したものに、第1の透明基板4を取り付ける。ここで、第1の透明基板4には予め配線11が設けられている。配線11は、金属等をスパッタリング法等によって成膜した後、エッチング処理して回路パターンを形成する方法や、あらかじめ成膜領域にレジストパターンを形成しておき、成膜後、当該レジストパターンを除去する方法(リフトオフ法)を用いることができる。
この第1の透明基板4を配置した後、同図に示すように、加圧装置23により、第1の透明基板4及び第2の透明基板5に圧力を加える。これによって、封止部材14が変形し、その弾性によって、液収容部6内の液体が封入される。次に、この圧力を加えた状態を保持することが可能なクランプ18を配置する。
次に図7(B)に示すように、このクランプ18に圧着装置19により、圧力を加えて変形させ、圧着する。このクランプ18は、特にある形状に限定されるものではないが、導電層9の配線部9b及び配線11が、外部の電源と導通を得ることが必要である。
以上の製造方法によって、図7(C)に示すように、光学素子1が製造される。なお、絶縁性基板3に対する第1の透明基板4の固定にはクランプ18を用いたが、接着剤を用いた接合などの他の手段により固定する構造とすることも可能である。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る光学素子について説明する。これ以降の説明では、第1の実施形態に係る光学素子が有する構成や機能等について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る光学素子20の断面図、図10は当該光学素子20の平面図である。図9は図10の[B]−[B]線方向断面図である。
これらの図に示すように、光学素子20は、逆テーパー形状である3つの長円形状の貫通孔2a、2b、2cがX方向に配列している絶縁性基板3と、第1の透明基板4と、第2の透明基板5を有する。貫通孔2a、2b、2cと第1の透明基板4と第2の透明基板5によって、液収容部6a、6b、6cが形成され、第1の液体12と第2の液体13が収容されている。
図9に示すように、液収容部6a、6b、6cは互いに絶縁性基板3の隔壁によって隔てられているが、これらの隔壁と第1の透明基板4との間には間隙が存在するため、第1の液体12は当該間隙を通り、各液収容部6a、6b、6c間を連通することができる。また、第1の実施形態に係る光学素子1と同様に、貫通孔2a、2b、2cの周面及び第2の面8には導電層9が形成され、その上を覆う絶縁層10が形成されている。ここで、貫通孔の数は3つに限られず、配列も適宜変更することが可能である。
また、各液収容部6a、6b、6c間に、第2の液体13を連通させるための通液路22を設けてもよい。この通液路22を設けることによって、光学素子21の物理的挙動等により、各液収容部6a、6b、6cにおける2液の体積比が所定の値から変動したとしても、第1の液体12が受ける撥水効果の均衡をとろうとして、第1の液体12は上記の間隙を通って、第2の液体13は通液路22を通って(従前の体積比を満たすように)移動し、すなわち自ずから所定の体積比に戻る光学素子21を得ることが可能である。また、上述の液入れ工程においても、第1の液体12と第2の液体13を充填すれば(充填する順序に係わらず)、各液収容部6a、6b、6cにおいて所定の体積比を得ることができる。
第1の実施形態と同様に、液収容部6a、6b、6cに収容された第1の液体12と第2の液体13のそれぞれの界面によってレンズ効果が得られ、導電層9の電極部9aと第1の液体12に印加された電圧によって、エレクトロウェティング効果によるそれぞれの2液界面の形状変化、すなわち、光学特性の変化が生じる。
この構成により、第1の実施形態に係る光学素子1と同様に、Z方向からの入射光を収束あるいは発散させることができる。ここで、液収容部6a、6b、6cはX方向に配列
しているため、入射光に対してX方向における発散の効果を得るために必要な貫通孔2a、2b、2cのX−Y平面における開口の面積は、液収容部6が単独で設けられている第1の実施形態の場合に比べ小さくてよい。開口の面積が小さいと、(電圧の印加時、非印加時共に)2液界面に同じ曲率を発生させるために必要な(Z方向の)開口の深さも浅くてよいので、光学素子のZ方向における長さ(厚み)を小さくすることができる。
また、導電層9の配線部9bを、上述のようにパターニングして液収容部ごとの回路を形成するように外部電源と接続させることによって、それぞれの液収容部において、独立にエレクトロウェッティング効果を発生させることも可能である。
本実施形態に係る光学素子21では、貫通孔2が単独で形成されている場合(第1の実施形態の場合)に比べ、絶縁性基板3の第1の面7の面積が大きい。各液収容部6a、6b、6cを隔てる隔壁上の領域(図に901で示す領域)が存在するからである。しかし、本実施形態に係る構成では、上述したように、第1の面7において寄生容量が発生しない構造となっているため、第1の面7の面積が大きいことは問題にならない。
本発明に係る実施の形態は、以上説明した実施の形態に限定されず、他の種々の実施形態が考えられる。
上述の実施形態では、絶縁性基板3に封止部材ガイド部15が設けられているが、これを設けないことも可能である。図11に封止部材ガイド部を有しない光学素子24を示す。
光学素子24においても、絶縁性基板3の第1の面7において意図しないキャパシタは存在しない。
第1の実施形態に係る光学素子の断面図である。 第1の実施形態に係る光学素子の平面図である。 貫通孔の周面と、2液の界面の接触の様子を示す模式図である。 入射光及び透過光の経路を示す図である。 本発明に係る光学素子の製造方法(基板工程)を示す図である。 本発明に係る光学素子の製造方法(液入れ工程)を示す図である。 本発明に係る光学素子の製造方法(封止工程)を示す図である。 スパッタリング法による導電層の作製の様子を示す図である。 第2の実施形態に係る光学素子の断面図である。 第2の実施形態に係る光学素子の平面図である。 第1の実施形態に係る光学素子の変形例の断面図である。
符号の説明
1 光学素子
2 貫通孔
3 絶縁性基板
4 第1の透明基板
5 第2の透明基板
6 液収容部
7 第1の面
8 第2の面
9 導電層
10 絶縁層
12 第1の液体
13 第2の液体
16 真空槽
17 スパッタリングターゲット

Claims (8)

  1. 第1の面及びこれに対向する第2の面を有し、前記第1の面側から前記第2の面側に向かって開口の大きさが漸次大きくなる貫通孔が形成された絶縁性基板と、
    前記絶縁性基板の前記第1の面側に接合された第1の透明基板と、
    前記絶縁性基板の前記第2の面側に接合され、前記第1の透明基板と前記貫通孔と共に液収容部を形成する第2の透明基板と、
    前記液収容部の前記第1の面側に収容される導電性の第1の液体と、
    前記液収容部の前記第2の面側に収容される、前記第1の液体と屈折率が異なり、かつ混合することのない絶縁性の第2の液体と、
    前記貫通孔の周面及び前記第2の面に連続して形成される導電層と、
    前記導電層を被覆する絶縁層と
    を具備する光学素子。
  2. 請求項1に記載の光学素子であって、
    前記貫通孔は、一方向の長さが他方向の長さより長い開口形状である
    光学素子。
  3. 請求項1又は2に記載の光学素子であって、
    前記貫通孔は、前記絶縁性基板の面内において一方向に複数配列されている
    光学素子。
  4. 請求項3に記載の光学素子であって、
    前記絶縁性基板は、隣接する複数の前記貫通孔の間で前記第2の液体を相互に連通させる通液路を有する
    光学素子。
  5. 請求項1に記載の光学素子であって、
    前記貫通孔の前記周面と前記第2の面の境界部は、曲面である
    光学素子。
  6. 請求項1に記載の光学素子であって
    前記導電層は、透明導電膜である
    光学素子。
  7. 第1の面及びこれに対向する第2の面を有する絶縁性基板に、前記第1の面側から前記第2の面側に向かって開口の大きさが漸次大きくなる貫通孔を形成し、
    前記第2の面及び前記貫通孔の周面に、連続する導電層を形成し、
    前記第2の面に第2の透明基板を取り付けて、前記貫通孔と前記第2の透明基板により凹部を形成し、
    前記導電層を被覆する絶縁層を形成し、
    前記凹部に、導電性の第1の液体と、前記第1の液体と屈折率が異なり、かつ混合することのない絶縁性の第2の液体を収容し、
    前記第1の面に第1の透明基板を液密に取り付ける
    光学素子の製造方法。
  8. 請求項7に記載の光学素子の製造方法であって、
    前記絶縁性基板に前記導電層を形成する工程は、
    前記第2の面が、前記導電層の構成材料を含むスパッタリングターゲットに対向するように、前記絶縁性基板を真空槽内に配置し、
    スパッタリング法によって前記第2の面及び前記貫通孔の周面に前記導電層を選択的に形成する
    光学素子の製造方法。
JP2008125994A 2008-05-13 2008-05-13 光学素子及びその製造方法 Expired - Fee Related JP5256843B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008125994A JP5256843B2 (ja) 2008-05-13 2008-05-13 光学素子及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008125994A JP5256843B2 (ja) 2008-05-13 2008-05-13 光学素子及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009276450A true JP2009276450A (ja) 2009-11-26
JP5256843B2 JP5256843B2 (ja) 2013-08-07

Family

ID=41441967

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008125994A Expired - Fee Related JP5256843B2 (ja) 2008-05-13 2008-05-13 光学素子及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5256843B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013538361A (ja) * 2010-06-29 2013-10-10 ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド 円錐台メニスカス壁を備えるレンズ
JP2013539077A (ja) * 2010-09-27 2013-10-17 ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド マルチセグメント化されたリニアメニスカス壁を有するレンズ
JP2013540285A (ja) * 2010-09-29 2013-10-31 ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド 非球状メニスカス壁を備える液体メニスカスレンズ
JP2013541734A (ja) * 2010-09-29 2013-11-14 ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド 可変電圧ゾーンを含む液体メニスカスレンズ
KR20130137165A (ko) * 2010-09-08 2013-12-16 존슨 앤드 존슨 비젼 케어, 인코포레이티드 다중-볼록 메니스커스 벽을 갖는 렌즈
KR101837929B1 (ko) * 2010-09-29 2018-04-26 존슨 앤드 존슨 비젼 케어, 인코포레이티드 마이크로채널을 갖는 메니스커스 벽을 포함하는 액체 메니스커스 렌즈
CN110291444A (zh) * 2017-02-09 2019-09-27 Lg伊诺特有限公司 包括液体透镜的相机模块以及光学装置

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11133210A (ja) * 1997-10-30 1999-05-21 Denso Corp 可変焦点レンズ
JP2001249282A (ja) * 2000-03-03 2001-09-14 Canon Inc 光学素子、可変パワー構造を有する光学素子等をレンズ素子に内蔵する光学系および撮影装置
JP2006323390A (ja) * 2005-05-16 2006-11-30 Samsung Electro-Mechanics Co Ltd 可変焦点レンズ
JP2007179053A (ja) * 2005-12-27 2007-07-12 Samsung Electro Mech Co Ltd 電気湿潤を用いた液体レンズの製造方法及びこの製造方法により製造される液体レンズ
JP2007293349A (ja) * 2006-04-25 2007-11-08 Samsung Electro-Mechanics Co Ltd 曲面の接触面を有する液体レンズ
JP2008040455A (ja) * 2006-07-10 2008-02-21 Sony Corp レンズアレイ

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11133210A (ja) * 1997-10-30 1999-05-21 Denso Corp 可変焦点レンズ
JP2001249282A (ja) * 2000-03-03 2001-09-14 Canon Inc 光学素子、可変パワー構造を有する光学素子等をレンズ素子に内蔵する光学系および撮影装置
JP2006323390A (ja) * 2005-05-16 2006-11-30 Samsung Electro-Mechanics Co Ltd 可変焦点レンズ
JP2007179053A (ja) * 2005-12-27 2007-07-12 Samsung Electro Mech Co Ltd 電気湿潤を用いた液体レンズの製造方法及びこの製造方法により製造される液体レンズ
JP2007293349A (ja) * 2006-04-25 2007-11-08 Samsung Electro-Mechanics Co Ltd 曲面の接触面を有する液体レンズ
JP2008040455A (ja) * 2006-07-10 2008-02-21 Sony Corp レンズアレイ

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9182521B2 (en) 2010-05-14 2015-11-10 Johnson & Johnson Vision Care, Inc. Liquid meniscus lens including variable voltage zones
JP2013538361A (ja) * 2010-06-29 2013-10-10 ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド 円錐台メニスカス壁を備えるレンズ
KR101884174B1 (ko) * 2010-09-08 2018-08-02 존슨 앤드 존슨 비젼 케어, 인코포레이티드 다중-볼록 메니스커스 벽을 갖는 렌즈
KR20130137165A (ko) * 2010-09-08 2013-12-16 존슨 앤드 존슨 비젼 케어, 인코포레이티드 다중-볼록 메니스커스 벽을 갖는 렌즈
JP2013539077A (ja) * 2010-09-27 2013-10-17 ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド マルチセグメント化されたリニアメニスカス壁を有するレンズ
US10520753B2 (en) 2010-09-27 2019-12-31 Johnson & Johnson Vision Care, Inc. Lens with multi-segmented linear meniscus wall
KR101837929B1 (ko) * 2010-09-29 2018-04-26 존슨 앤드 존슨 비젼 케어, 인코포레이티드 마이크로채널을 갖는 메니스커스 벽을 포함하는 액체 메니스커스 렌즈
KR101837932B1 (ko) * 2010-09-29 2018-04-26 존슨 앤드 존슨 비젼 케어, 인코포레이티드 비-구형 메니스커스 벽을 갖는 액체 메니스커스 렌즈
JP2013541734A (ja) * 2010-09-29 2013-11-14 ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド 可変電圧ゾーンを含む液体メニスカスレンズ
JP2013540285A (ja) * 2010-09-29 2013-10-31 ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド 非球状メニスカス壁を備える液体メニスカスレンズ
CN110291444A (zh) * 2017-02-09 2019-09-27 Lg伊诺特有限公司 包括液体透镜的相机模块以及光学装置
US11150534B2 (en) 2017-02-09 2021-10-19 Lg Innotek Co., Ltd. Camera module including liquid lens, and optical device
CN110291444B (zh) * 2017-02-09 2022-07-26 Lg伊诺特有限公司 包括液体透镜的相机模块以及光学装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP5256843B2 (ja) 2013-08-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5256843B2 (ja) 光学素子及びその製造方法
JP4310704B2 (ja) 光学素子
RU2570807C2 (ru) Дугообразная жидкостная менисковая линза
JP4760426B2 (ja) 光学素子およびレンズアレイ
US7701642B2 (en) Liquid lens
JP4332176B2 (ja) 流体チャンバーの一端に多重突起が形成された可変焦点レンズ
CN101556341B (zh) 光学装置、照明设备以及相机
US7245439B2 (en) Variable lens
US20070247724A1 (en) Liquid lens with curved contact surface
JP4369442B2 (ja) 可変焦点レンズ
JP4967290B2 (ja) 光学素子
JP2006250974A (ja) 光学素子
JP2007057807A (ja) 光学素子
JP2007086451A5 (ja)
JP2010243631A (ja) 液体レンズ装置の製造方法及び液体レンズ装置
KR101239151B1 (ko) 가변 초점 유체렌즈
KR20120018069A (ko) 액체 광학 소자 어레이 및 표시 장치
JP2007057843A (ja) 光学素子
KR101175929B1 (ko) 가변 초점 유체렌즈
KR100686018B1 (ko) 광학기기
WO2019169069A2 (en) Camera modules comprising liquid lenses
JP2011085787A (ja) 可変照明装置
KR20060129778A (ko) 액체렌즈

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110502

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120627

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120816

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121010

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130326

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130408

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160502

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees