JPWO2007129465A1 - 補酵素合成強化によるヒドロキシカルボン酸類の生産方法 - Google Patents

補酵素合成強化によるヒドロキシカルボン酸類の生産方法 Download PDF

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Abstract

微生物内のnadR遺伝子を欠失、変異、若しくは置換させる、または、ニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を導入することにより、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を向上させた微生物を用いてヒドロキシカルボン酸を生産する。

Description

本発明は、グリコール酸を始めとするヒドロキシカルボン酸を生産する微生物と、微生物を用いたグリコール酸を始めとするヒドロキシカルボン酸の生産方法に関するものである。
ヒドロキシカルボン酸類はポリマー原料や医薬中間体として有用で、その効率的な生産方法が求められている。
その一例としてグリコール酸(α―ヒドロキシ酢酸)が挙げられる。グリコール酸は、洗浄剤や化粧品原料として利用されてきたが、近年、ガスバリア性ポリマーや医療用ポリマーとして有用なポリグリコール酸の原料として注目されている。ガスバリア性材料として注目されている理由はポリグリコール酸層が高い酸素ガスバリア性を有しており、酸素の存在下で変質しやすい食品や炭酸飲料を包装するための材料としての性能を備えているからである。
現行市販されている化学合成品のグリコール酸は少なからず夾雑物を含んでおり、ポリマー原料としては純度的に問題がある。なぜならこれらの夾雑物はグリコール酸の脱水縮合反応を阻害するのみならず、夾雑物の一つであるメトキシ酢酸が発癌性の疑いのある化合物であり、食品や飲料の包材中に含まれることが望ましくないからである。無論、精製によって夾雑物を除くことは技術的には可能であるが、実際にそのような精製品は価格が高くなり、安価な包材原料としては現実的でない。
化学合成品のグリコール酸に見られる上記の問題点を回避するため、エチレングリコールを原料としたバイオ法によるグリコール酸製造の試みが行われている。
特許文献1及び特許文献2において、エチレングリコール含有培地に、ピシア(Pichia)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、トルロプシス(Torulopsis)属に属する酵母、ノカルディア(Nocardia)属に属する菌株、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する菌株、またはエシェリヒア・コリB(Escherichia coli B)株を培養し、培養液中からグリコール酸を分離・採取することを特徴とする微生物によるグリコール酸の生産方法が開示されている。
特許文献1及び特許文献2の実施例に記載されているグリコール酸生産方法の中でグリコール酸蓄積濃度が最も高いものは、ピシア・ナガニシイ(Pichia naganishii)を用いた方法であり、30時間の反応で35.3g/Lのグリコール酸が得られている。ピシア・ナガニシイを用いたグリコール酸生産については更に、反応条件の改善がなされ、120時間の反応で105g/Lのグリコール酸が得られることが非特許文献1で報告されている。
特許文献3においてはラクトアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子とラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子をプラスミドの形態で導入することでこれらの酵素活性が付与又は強化された微生物を用いることにより、エチレングリコールをはじめとする末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールを原料として、グリコール酸をはじめとするヒドロキシカルボン酸を生産することが可能であること、さらには微生物が有しているグリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子を破壊し該酵素活性を不活性化させることによりグリコール酸の生産性が向上することが開示されている。
上記した従来の方法によるグリコール酸をはじめとするヒドロキシカルボン酸の生産反応においては反応に供する菌体量が多いがために、それに伴う製造コストの上昇や菌体に由来する不純物の夾雑、さらにはヒドロキシカルボン酸類の製造後に菌体を廃棄するのに多大な労力とコストがかかるという問題点があげられる。
微生物におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの生合成経路は、アスパラギン酸からキノリン酸を経由して生合成される経路(de novo経路)と、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド等の代謝により生じるニコチンアミドをリサイクルする経路(リサイクル経路)とが存在し、エシェリヒア(Escherichia)属、シゲラ(Shigella)属、サルモネラ(Salmonella)属、エルビニア(Erwinia)属、エルシニア(Yersinia)属、フォトラブドゥス(Photorhabdus)属をはじめとする腸内細菌科におけるこれらの生合成経路は、nadR(文献によってはnadIと呼ばれることもある)遺伝子がコードするタンパク質(以降NadRと記す)により制御されていることが知られている。すなわち、NadRはアスパラギン酸からのde novo経路上のL−アスパラギン酸オキシダーゼ遺伝子とキノリン酸シンターゼ遺伝子、およびリサイクル経路上のニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(以下pncBという)の発現を抑制することが知られている。
一方、NadRは多機能タンパク質であり、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生合成にとって重要な以下の機能をも有している。すなわち、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの前駆体となるニコチンアミドモノヌクレオチドの輸送、さらにはATPとニコチン酸リボヌクレオチドからニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの前駆体であるデアミドニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する反応を触媒する酵素、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼとしての機能も有していることが明らかとなっている。
遺伝子nadRを破壊した微生物は、非特許文献2において既に報告されているが、こうした微生物によるヒドロキシカルボン酸の生産は報告されていない。
非特許文献3においては、エシェリヒア・コリにpncBの発現ベクターを導入することでニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの含量が向上することが報告されている。
特開平10−174593号公報 特開平10−174594号公報 国際公開第2005/106005号パンフレット Biosci.Biotechnol.Biochem.,Vol.65(10),pp.2265−2270,(2001) J.Bacteriol.,Vol.187(8), pp.2774−2784,(2005) Metabolic Engineering,Vol.4,pp.238−247,(2002)
本発明が解決しようとする課題は、ヒドロキシカルボン酸類を少ない菌体量で効率よく生産することができる、微生物によるヒドロキシカルボン酸類の生産方法、および該生産方法に適した微生物を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、微生物を用いて末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールからヒドロキシカルボン酸を生産する方法において、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化した微生物を用いることによりヒドロキシカルボン酸類を効率よく生産できることを見出した。
即ち、本発明は以下の〔1〕から〔19〕に記載のとおりである。
〔1〕 微生物を用いて末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールからヒドロキシカルボン酸を製造する方法において、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化した微生物を用いることを特徴とするヒドロキシカルボン酸の生産方法。
〔2〕 微生物が、下記(1)および(2)の少なくとも一つの遺伝子操作を行うことによりニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化した微生物であることを特徴とする〔1〕の生産方法。
(1) 微生物内のnadR遺伝子を欠失、変異、又は置換させること。
(2) 微生物内のニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを微生物に導入すること。
〔3〕 微生物が、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド再生能を強化した微生物であることを特徴とする〔1〕記載の生産方法。
〔4〕 微生物が、NADHデヒドロゲナーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを導入することにより酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド再生能を強化した微生物であることを特徴とする〔3〕の生産方法。
〔5〕 微生物が、ラクトアルデヒドレダクターゼおよびラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの少なくとも1つの酵素活性を強化した微生物であることを特徴とする〔1〕記載の生産方法。
〔6〕 微生物が、ラクトアルデヒドレダクターゼおよびラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの少なくとも1つの酵素活性を強化した微生物であることを特徴とする〔3〕記載の生産方法。
〔7〕 微生物が、グリコール酸オキシダーゼ活性を不活性化または微生物本来の活性よりも低減した微生物であることを特徴とする〔1〕、〔3〕、〔5〕又は〔6〕記載の生産方法。
〔8〕 末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールがエチレングリコールであり、ヒドロキシカルボン酸がグリコール酸であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の生産方法。
〔9〕 ラクトアルデヒドレダクターゼおよびラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの少なくとも1つの酵素活性を強化し、かつ、下記(1)および(2)の少なくとも一つの遺伝子操作を行うことによりニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化した微生物。
(1) 微生物内のnadR遺伝子を欠失、変異、又は置換させること。
(2) 微生物内のニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを微生物に導入すること。
〔10〕 酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド再生能を強化したことを特徴とする〔9〕記載の微生物。
〔11〕 NADHデヒドロゲナーゼの活性を強化し、かつ、下記(1)および(2)の少なくとも一つの遺伝子操作を行うことによりニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化した微生物。
(1) 微生物内のnadR遺伝子を欠失、変異、又は置換させること。
(2) 微生物内のニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを微生物に導入すること。
〔12〕 グリコール酸オキシダーゼ活性を不活性化または微生物本来の活性よりも低減したことを特徴とする〔9〕または〔10〕に記載の微生物。
〔13〕 グリコール酸オキシダーゼ活性を不活性化または微生物本来の活性よりも低減したことを特徴とする〔11〕に記載の微生物。
〔14〕 微生物がエシェリヒア属、シゲラ属、サルモネラ属、エルビニア属、エルシニア属、フォトラブドゥス属のいずれかである〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の生産方法。
〔15〕 微生物がエシェリヒア・コリである〔14〕に記載の生産方法。
〔16〕 微生物がエシェリヒア属、シゲラ属、サルモネラ属、エルビニア属、エルシニア属、フォトラブドゥス属のいずれかである〔9〕、〔10〕、〔12〕のいずれかに記載の微生物。
〔17〕 微生物がエシェリヒア属、シゲラ属、サルモネラ属、エルビニア属、エルシニア属、フォトラブドゥス属のいずれかである〔11〕または〔13〕に記載の微生物。
〔18〕 微生物がエシェリヒア・コリである〔16〕に記載の微生物。
〔19〕 微生物がエシェリヒア・コリである〔17〕に記載の微生物。
本発明によりヒドロキシカルボン酸類を少ない菌体量で効率よく生産することができる。また、本発明によればヒドロキシカルボン酸類の生産に適した微生物を提供することができる。
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
参考例3における細胞内のNADH/NAD比(NADH含量/NAD含量)の経時変化を示したグラフである。 図中の□は、△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株のNADH/NAD比を示す。 図中の○は、△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株のNADH/NAD比を示す。 実施例9におけるグリコール酸蓄積量の経時変化を示したグラフである。 図中の○は30℃での反応結果を示す。 図中の□は35℃での反応結果を示す。 図中の△は37℃での反応結果を示す。 図中の×は40℃での反応結果を示す。 実施例10におけるグリコール酸蓄積量の経時変化を示したグラフである。 図中○はpH7.7での反応結果を示す。 図中△はpH7.2での反応結果を示す。 図中□はpH6.5での反応結果を示す。 図中×はpH6.0での反応結果を示す。 図中◇はpH4.3での反応結果を示す。
以下に本発明を詳しく説明する。
本実施形態は、ヒドロキシカルボン酸の生産方法である。この方法は、微生物を用いて末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールからヒドロキシカルボン酸を製造する方法において、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化した微生物を用いるものである。
微生物とは、末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールからヒドロキシカルボン酸を生産する能力を本来有するか否かに関わらず、何らかの手段を用いることにより末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールからヒドロキシカルボン酸を生産する能力を有し得る微生物であればいずれの微生物であってよい。好ましくはエシェリヒア(Escherichia)属、シゲラ(Shigella)属、サルモネラ(Salmonella)属、エルビニア(Erwinia)属、エルシニア(Yersinia)属、フォトラブドゥス(Photorhabdus)属に属する微生物などが例示され、より好ましくはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が例示される。
また、末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールとは、炭素鎖の末端に水酸基を有し、かつ分子内に2つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物であればその構造に特に制限はないが、そのような化合物としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオールなどが例示できる。
また、ヒドロキシカルボン酸とは、上記した末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコール分子内の水酸基を有する末端炭素の一つが酸化されてカルボン酸になっているものである。そのような化合物としてグリコール酸、ヒドロキシエトキシ酢酸、グリセリン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、2,4−ジヒドロキシブタン酸などが例示できる。
本実施形態では、末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールとして、エチレングリコールを好適に用いることができる。また、ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸を好適に用いることができる。
本実施形態に係る微生物は、下記(1)および(2)の少なくとも一つの遺伝子操作を行うことによりニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化される。
(1) 微生物内のnadR遺伝子を欠失、変異、又は置換させること。
(2) 微生物内のニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを微生物に導入すること。
ここで、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドとは、酸化型および還元型の明記がない限りそのどちらをも指す。
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能が強化されたとは、微生物内の酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以降NADと略することがある)および還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以降NADHと略することがある)の含量の合計が、微生物の野生株(又は組換え前の微生物)に対して有意に向上している状態を指し、好ましくはNAD、NADHの合計含量が、強化前の微生物の1.2倍乃至10倍である。
また、nadR遺伝子とは、エシェリヒア・コリMG1655株を例とすると、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列(GenBank accession number U00096)中、4625317番目の塩基から4626570番目の塩基においてnadR遺伝子がコードされている。またサルモネラ・ティフィムリウムのnadR遺伝子は、GenBank accession number M85181により明らかとされている。上記微生物以外にもシゲラ属、エルビニア属、エルシニア属、フォトラブドゥス属をはじめとする腸内細菌科においてnadR遺伝子が存在していることが示されている(Gerasimova,AV.,et.al.,Journal of Bioinformatics and Computational Biology,Vol.3,pp.1007−1019(2005))。
nadR遺伝子について欠失若しくは変異させ、又は置換させた微生物は、当業者によく知られている通常の方法で得ることができる。nadR遺伝子について欠失若しくは変異させ、又は置換させた微生物の一例としてエシェリヒア・コリMT−11032株が例示できる。
ヒドロキシカルボン酸の生産方法においては、エシェリヒア・コリMT−11032株を用いることが可能である。エシェリヒア・コリMT−11032株は、nadR遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子に置換されており、かつ、後述するグリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子であるglcDEFがテトラサイクリン耐性遺伝子に置換されることによりグリコール酸オキシダーゼ活性が不活性化している。本菌株は、FERM BP−10773の寄託番号で、茨城県つくば市東1丁目1番1号中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、特許手続き上の微生物の寄託等の国際承認に関するブタペスト条約に基づいて寄託されている。なお、本寄託は、平成18年(2006年)2月14日に寄託されたFERM P−20797より移管されたものである。
ここで、ニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼとは、国際生化学連合(以下、「I.U.B.」という)酵素委員会報告に準拠した酵素番号2.4.2.11に分類され、ニコチン酸と5−ホスホリボシル−1α−二リン酸から、ニコチン酸モノヌクレオチドを生成する反応を可逆的に触媒する酵素の総称を指す。
ニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの遺伝子(以下、pncBと略することがある)を組み込んだプラスミドを導入した微生物を用いて、末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールからヒドロキシカルボン酸を生産することができる。微生物への遺伝子の導入に用いられるゲノムDNAの調製、プラスミドの調製、DNAの切断および連結、形質転換、PCR(Polymerase Chain Reaction)、プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの設計、合成等の方法は、当業者によく知られている通常の方法で行うことができる。これらの方法は、Sambrook, J.,et.al.,"Molecular Cloning A Laboratory Manual,Second Edition",Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1989)等に記載されている。
また、本実施形態に係る微生物は、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド再生能を強化される。ここで、NAD再生能を強化するとは、末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールの酸化反応によりヒドロキシカルボン酸を生産する際に生じたNADHをNADに変換する反応を触媒する酵素の活性が、強化前に比べ有意に向上している状態を意味する。そのような酵素としてグルタミン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、NADHオキシダーゼ、NADHデヒドロゲナーゼが例示される。NAD再生能を強化する場合、その後の精製等の工程において負荷となるような化合物が増加しないことが好ましい。NADHをNADに変換する反応を触媒する酵素として、NADHデヒドロゲナーゼが好ましい。NADHをNADに変換する反応を触媒する酵素がエシェリヒア・コリ由来NADHデヒドロゲナーゼである場合を例とすると、その活性が野生株(又は組換え前の微生物)に比べ2倍以上向上していることが好ましい。
こうした酵素活性が向上した微生物は、例えば、該酵素をコードする遺伝子を遺伝子組換え技術を用いて野生型の微生物(又は組換え前の微生物)に導入する方法や、ゲノム内において該酵素をコードする遺伝子のプロモーターに変異を導入するなどの方法を用いて作出することができる。野生型の微生物(又は組換え前の微生物)に該遺伝子を導入する方法としては、該遺伝子をプラスミドの形態で微生物に導入することが例示できる。微生物への遺伝子の導入に用いられるゲノムDNAの調製、プラスミドの調製、DNAの切断および連結、形質転換、PCR、プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの設計、合成等の方法は、当業者によく知られている通常の方法で行うことができる。これらの方法は、前記Sambrook,J.らの文献に記載されている。
また、本実施形態に係る微生物は、NADHデヒドロゲナーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを導入されることにより酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド再生能を強化される。ここで、NADHデヒドロゲナーゼとは、I.U.B.酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.6.5.3、1.6.99.3、または1.6.99.5に分類され、ユビキノン、ジメチルメナキノン、メナキノン等のキノン類を電子受容体としてNADHからNADを生成する反応を可逆的に触媒する酵素の総称を指す。好ましくはI.U.B.酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.6.99.3に分類されるNADHデヒドロゲナーゼであり、エシェリヒア・コリを例とするとGenBank accession number V00306によって報告されているndh遺伝子にコードされているNADHデヒドロゲナーゼが例示される。
本実施形態においては、NADHデヒドロゲナーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを導入した微生物を用いて、末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールからヒドロキシカルボン酸を生産することができる。必要となるプラスミドの構築や微生物への導入は当業者によく知られている通常の方法で行うことができる。
また、本実施形態に係る微生物は、ラクトアルデヒドレダクターゼおよびラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの少なくとも1つの酵素活性が強化される。ここで、ラクトアルデヒドレダクターゼとは、I.U.B.酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.1.77に分類され、1.2−プロパンジオールから、補酵素であるNADの存在下でラクトアルデヒドを生成する反応を可逆的に触媒する酵素の総称を指す。
また、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼとは、I.U.B.酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.2.1.22に分類され、ラクトアルデヒドから、補酵素であるNADの存在下で乳酸を生成する反応を触媒する酵素の総称を指し、且つI.U.B.酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.2.1.21に分類され、グリコールアルデヒドから、補酵素であるNADの存在下でグリコール酸を生成する反応を触媒する酵素グリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼの総称も併せて指すものである。なぜならば大腸菌を用いた先行文献で、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼとグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼは同一の酵素であることが報告されているからである(Caballero, E.,et.al.,J.Biol.Chem.,Vol.258,pp.7788−7792(1983))。
また、ラクトアルデヒドレダクターゼおよびラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの少なくとも1つの酵素活性を強化したとは、大腸菌を例にすると、これらの酵素の少なくとも1つの酵素活性が、野生株(又は組換え前の微生物)の20倍以上であることが好ましく、より好ましくは100倍以上である。こうした酵素活性が向上した微生物は、例えば、該酵素をコードする遺伝子を遺伝子組換え技術を用いて野生型の微生物(又は組換え前の微生物)に導入する方法や、ゲノム内において該酵素をコードする遺伝子のプロモーターに変異を導入するなどの方法を用いて作出することができる。野生型の微生物(又は組換え前の微生物)に該遺伝子を導入する方法としては、該遺伝子をプラスミドの形態で微生物に導入することが例示できる。微生物への遺伝子の導入に用いられるゲノムDNAの調製、プラスミドの調製、DNAの切断および連結、形質転換、PCR、プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの設計、合成等の方法は、当業者によく知られている通常の方法で行うことができる。これらの方法は、前記Sambrook,J.らの文献に記載されている。
たとえば、ラクトアルデヒドレダクターゼおよびラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの酵素活性が向上したエシェリヒア・コリは、以下のように作製することができる。
エシェリヒア・コリのラクトアルデヒドレダクターゼの遺伝子(以下、fucOと略することがある)の塩基配列はすでに報告されている(GenBank accession number M31059)。またエシェリヒア・コリのラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの遺伝子(以下、aldAと略することがある)の塩基配列もすでに報告されている(GenBank accession number M64541)。
fucOを取得するためにエシェリヒア・コリのゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーとなるオリゴヌクレオチドを用いてPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素で消化することでfucOフラグメントを得る。
また、aldAを取得するためにエシェリヒア・コリのゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーとなるオリゴヌクレオチドを用いてPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素で消化することでaldAフラグメントを得る。
さらに、グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターを取得するためエシェリヒア・コリのゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーとなるオリゴヌクレオチドを用いてPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素で消化することでGAPDHプロモーターをコードするDNAフラグメントを得る。
上記の3つのDNAフラグメントと、プラスミドを制限酵素で消化することで得られるフラグメントを結合した後、エシェリヒア・コリに形質転換し、LB寒天プレートに生育する形質転換体を得る。得られたコロニーをLB液体培地で培養し、得られた菌体からプラスミドを回収する。本プラスミドを任意の宿主エシェリヒア・コリに導入することでラクトアルデヒドレダクターゼおよびラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの酵素活性が向上したエシェリヒア・コリを作製できる。
本実施形態に係る微生物は、グリコール酸オキシダーゼ活性を不活性化または微生物本来の活性よりも低減される。
ここで、グリコール酸オキシダーゼとは、I.U.B.酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.3.15に分類され、グリコール酸からグリオキシル酸を生成する反応を可逆的に触媒する酵素の総称を指す。
グリコール酸オキシダーゼ活性の不活性化とは、その酵素活性が完全に消失することを意味する。また、グリコール酸オキシダーゼ活性の低減とは、その酵素活性の一部が消失することを意味し、野生株(又は組換え前の微生物)が有する微生物本来のグリコール酸オキシダーゼ活性に対して、2分の1以下であることが好ましく、より好ましくは10分の1以下である。グリコール酸オキシダーゼ活性を不活性化、或いは低減するには、そのタンパク質をコードする遺伝子(以降glcDEF遺伝子と略することがある)に変異を導入するか、欠失させる、あるいはそのタンパク質を特異的に不活性化する薬剤を添加する、紫外線を照射する、などの方法がある。遺伝子への変異導入や欠失といった遺伝子操作については、当業者によく知られている通常の方法で行うことができる。具体的には、エシェリヒア・コリMT−11032株が、glcDEF遺伝子をテトラサイクリン耐性遺伝子に置換することで、そのグリコール酸オキシダーゼ活性が不活性化した微生物として例示できる。
本実施形態において、ある標的酵素をコードする遺伝子を微生物に導入するにあたっての「プラスミドの形態で」とは、該遺伝子をベクターに連結し組換えプラスミドを作成し、これを形質転換等の方法で該微生物に導入する事を意味する。
また、恒常的に微生物内で機能する強力なプロモーターと目的遺伝子を機能的に連結した際には、プラスミドが有するレプリコンの性質により、微生物細胞当たりのコピー数が一般的に少ないといわれるプラスミドを利用することでも本発明の目的を達し得る。そのようなレプリコンを有するプラスミドとしてpACYC184(GenBank accession number X06403)などが例示できる。
本実施形態の生産方法を実施するに際しては、通常、培地を用いて微生物を培養して増殖させて必要量の微生物菌体を得る。
培養に使用される培地は、炭素源、窒素源、無機イオンおよび必要に応じてその他の有機微量成分を含有する培地であれば特に制限は無い。炭素源としては、グルコース、フルクトース、糖蜜などの糖類、フマル酸、クエン酸、コハク酸などの有機酸、メタノール、エタノール、グリセロールなどのアルコール類、その他が適宜使用される。窒素源としては、有機アンモニウム塩、無機アンモニウム塩、アンモニアガス、アンモニア水、蛋白質加水分解物等の無機及び有機の窒素源、その他が適宜使用される。無機イオンとしては、マグネシウムイオン、リン酸イオン、カリウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、硫酸イオン、その他が必要に応じて適宜使用される。有機微量成分としては、ビタミン、アミノ酸等及びこれらを含有する酵母エキス、ペプトン、コーンスティープリカー、カゼイン分解物、その他が適宜使用される。
培養に使用される培地としては、工業的生産に供する点を考慮すれば液体培地が好ましい。
また、培地組成は、ポリペプトン 0.5g/L以上10g/L以下、FeSO0.02g/L以上0.3g/L以下、KHPO0.5g/L以上5g/L以下、KHPO0.5g/L以上5g/L以下、MgSO・7HO0.5g/L以上5g/L以下、(NHSO0.3g/L以上15g/以下(溶媒は水)とすると好ましい。
本実施形態に係る微生物の培養に際して、培養条件は特別の制限はなく、pHと温度を適切に制御しながら培養する。好気条件であっても、嫌気条件であってもよいが、好ましくは、好気条件とする。通気量は、培地1Lあたり0.2L/min以上3L/min以下とすると好ましく、0.5L/min以上2L/min以下とするとより好ましい。また、攪拌速度は、200rpm以上1000rpm以下とすると好ましく、500rpm以上800rpm以下とするとより好ましい。こうすることにより、菌体重量あたりのヒドロキシカルボン酸生産量が多い菌体を得ることができる。また、上記の通気、攪拌条件と相当する溶存酸素供給を実現できる気泡塔などを用いることでも培養が可能である。
pHは5以上8以下とすることが好ましく、pH7.0以上7.4以下とするとより好ましく、pH7.2とすると最も好ましい。こうすることにより、菌体重量あたりのヒドロキシカルボン酸生産量が多い菌体を得ることができる。
また、温度は、25℃以上40℃以下とすることが好ましく、33℃以上37℃以下とするとより好ましく、35℃とすると最も好ましい。こうすることにより、菌体重量あたりのヒドロキシカルボン酸生産量が多い菌体を得ることができる。
培養に必要な時間は12時間以上50時間以下とする。これにより、菌体重量あたりのヒドロキシカルボン酸生産量が多い菌体を得ることができる。
本実施形態の生産方法に使用される溶媒としては、リン酸カリウム緩衝液などの緩衝液や、前述の微生物の培養に用いた培地、及び純水を例示することができる。また、原料の脂肪族多価アルコールと溶媒との混合液に、先に培養により得られた微生物菌体を接触させて反応を行うことができる。微生物菌体は、培養が終わった培養液そのものを使用する方法や、培養液から菌体のみを回収して使用する方法が例示できる。
本実施形態の生産方法における反応に際して、反応条件は特別の制限はなく、pHと温度を適切に制御しながら反応する。
例えば、pHは6以上9以下とすると好ましく、pH7.0以上8.0以下とするとより好ましく、pH7.2とすると最も好ましい。こうすることにより、反応液に添加した菌体量あたりのヒドロキシカルボン酸生産量を高められるという効果が得られる。
また、温度は、20℃以上45℃以下の範囲内が好ましく、30℃以上40℃以下とすると特に好ましく、35℃が最も好ましい。こうすることにより、反応液に添加した菌体量あたりのヒドロキシカルボン酸生産量を高められるという効果が得られる。
また、反応は、好ましくは、好気条件とする。通気量は、反応液1Lあたり0.1L/min以上2.0L/min以下とすると好ましく、0.2L/min以上1.0L/min以下とするとより好ましい。また、攪拌速度は、200rpm以上1000rpm以下とすると好ましく、400rpm以上800rpm以下とするとより好ましい。こうすることにより、反応液に添加した菌体量あたりのヒドロキシカルボン酸生産量を高められるという効果が得られる。また、上記の通気、攪拌条件と相当する溶存酸素供給を実現できる気泡塔などを用いることでも反応が可能である。
また、反応時間は12時間以上96時間以下とすることにより、収率80%以上でヒドロキシカルボン酸を得ることができる。
以上のようにして得られた反応液中に蓄積した生産物であるヒドロキシカルボン酸を回収する方法としては、特に制限はないが、例えば反応液から菌体を遠心分離などで除去した後、合成吸着樹脂を用いる方法や沈殿剤を用いる方法、その他通常の採取分離方法で分離する方法が採用できる。
(製造例1)エシェリヒア・コリMG1655nadR欠失株の作製
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は、GenBank accession number U00096において公知であり、該塩基配列において4625317番目の塩基から4626570番目の塩基にnadR遺伝子がコードされている。エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAのnadR遺伝子近傍領域の遺伝子情報に基づいて作成された、配列番号1(AGGAAGTGCCATTCTGATTGG)及び配列番号2(GGAATTCGTATATCTCATTATAAGTCGTCG)並びに配列番号3(GGAATTCGTGATGAAACTGCTCAAAGG)及び配列番号4(TTGGTACCTGATGACCTGAGCTTCTCG)に示すオリゴヌクレオチドを用いて、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートとしてPCRを行った。得られたDNAフラグメントをそれぞれ、制限酵素NdeIとEcoRI、EcoRIとKpnIで消化することにより、それぞれ約850bp、970bpのフラグメントを得た。
このDNAフラグメントを、温度感受性クローニングベクターpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)(Hashimoto−Gotoh,T.,Gene,241,185−191(2000))をNdeI、KpnIで消化して得られるフラグメントと混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株(東洋紡績社製)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地で、30℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収した。回収したプラスミドをEcoRIで消化し、pUC4Kプラスミド(GenBank accession number X06404)(Pharmacia)をEcoRIで消化することで得られるカナマイシン耐性遺伝子とリガーゼを用いて連結した。
こうして得られたプラスミドをエシェリヒア・コリMG1655株に30℃で形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlとカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をカナマイシン50μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体が得られるようにカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをカナマイシン50μg/mlを含むLB液体培地で、30℃で一晩培養し、更にカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、カナマイシンを含むLB寒天プレートにのみ生育するクロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、野生株MG1655においてはnadR遺伝子を含むnadR遺伝子近傍領域の約3.3kbp断片を増幅させ、増幅した断片について、nadR遺伝子にはその認識配列が存在せず、カナマイシン耐性遺伝子にはその認識配列が存在する制限酵素HindIIIで処理することで、nadR遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子に置換されている株を選抜し、得られた株をMG1655nadR遺伝子欠失株(以下△nadR株と略することがある)と命名した。
なおエシェリヒア・コリMG1655株はアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
(製造例2)エシェリヒア・コリMG1655glcDEF欠失株の作製
エシェリヒア・コリのゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBanak accession number U00096)、エシェリヒア・コリのグリコール酸オキシダーゼの遺伝子(以下、glcDEFと略することがある)の塩基配列もすでに報告されている(GenBank accession number L43490)。
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAのglcDEF近傍領域の遺伝子情報に基づいて作成された、配列番号5(TTGGTACCGTTCTGCCAGCAACTGACG)及び配列番号6(TGTCTAGAGTACCTCTGTGCGTCACTGG)並びに配列番号7(GCTCTAGACGCTTTGTTGTGTTGTGTGG)及び配列番号8(AACTGCAGGATCGGTCAATGATTGCAGC)のオリゴヌクレオチドを用いてPCRを行った。得られたDNAフラグメントをそれぞれ、制限酵素KpnIとXbaI、XbaIとPstIで消化することにより、それぞれ約670bp、790bpのフラグメントを得た。このDNAフラグメントを、温度感受性クローニングベクターpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)(Hashimoto−Gotoh,T.,Gene,241,185−191(2000))をKpnI、PstIで消化して得られるフラグメントと混合し、リガーゼを用いて結合した後、DH5α株に30℃で形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。
得られたコロニーを、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地で、30℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収した。回収したプラスミドをXbaIで消化し、T4DNAポリメラーゼで平滑末端処理を行った。トランスポゾンTn10(GenBank accession number J01830)をテンプレートとして、配列番号9(CAGCTGACTCGACATCTTGGTTACCG)と配列番号10(CAGCTGCAAGAGGGTCATTATATTTCG)のオリゴヌクレオチドを用いてPCRを行いテトラサイクリン耐性遺伝子を得、このDNA断片をT4DNAポリヌクレオチドキナーゼ処理し、先の平滑末端処理したプラスミドと連結した。
得られたプラスミドをエシェリヒア・コリMG1655株に30℃で形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlとテトラサイクリン30μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をテトラサイクリン30μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこれらの培養菌体が得られるようにテトラサイクリン30μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをテトラサイクリン30μg/mlを含むLB液体培地で、30℃で一晩培養し、更にテトラサイクリン30μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをテトラサイクリン30μg/mlを含むLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、テトラサイクリンを含むLB寒天プレートにのみ生育するクロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、glcDEFを含むglcDEF近傍領域を増幅させた。
このPCRによって、野生株MG1655株をはじめとするglcDEFがテトラサイクリン耐性遺伝子に置換されていない株においては約4.0kbp断片が増幅される一方、glcDEF領域がテトラサイクリン耐性遺伝子に置換された株においては約2.2kbp断片が増幅される。PCRによって約2.2kbp断片が増幅された株を選抜しMG1655glcDEF欠失株(以下△glcDEF株と略することがある)と命名した。
(製造例3)エシェリヒア・コリMG1655nadR&glcDEF欠失株の作製
製造例1で得られた△nadR株に対して、製造例2と同様にしてglcDEFを欠失させた。得られた株をMG1655nadR&glcDEF欠失株(以下△nadR△glcDEF株と略することがある)と命名した。
(製造例4)ラクトアルデヒドレダクターゼ、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ同時発現ベクターの構築
エシェリヒア・コリのラクトアルデヒドレダクターゼの遺伝子(以下、fucOと略することがある)の塩基配列はすでに報告されている(GenBank accession number M31059)。またエシェリヒア・コリのラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの遺伝子(以下、aldAと略することがある)の塩基配列もすでに報告されている(GenBank accession number M64541)。
fucOを取得するために、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いて、配列番号11(GCTCTAGACGGAGAAAGTCTTATGATGGCTAACAGAATGATTCTG)と配列番号12(GTGAAGCTTGCATTTACCAGGCGGTATGG)に示すオリゴヌクレオチドを用いてPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素XbaI及びHindIIIで消化することで約1.2kbpのfucOフラグメントを得た。
aldAを取得するためにエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いて、配列番号13(CGAATTCCGGAGAAAGTCTTATGTCAGTACCCGTTCAACATCC)と配列番号14(GCTCTAGACTCTTTCACTCATTAAGACTG)に示すオリゴヌクレオチドを用いてPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素EcoRI及びXbaIで消化することで約1.5kbpのaldAフラグメントを得た。
さらに、グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いて、配列番号15(AACGAATTCTCGCAATGATTGACACGATTC)と配列番号16(ACAGAATTCGCTATTTGTTAGTGAATAAAAGG)に示すオリゴヌクレオチドを用いてPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素EcoRIで消化することで約100bpのGAPDHプロモーターをコードするDNAフラグメントを得た。
上記の3つのDNAフラグメントと、プラスミドpUC18(東洋紡績社製)を制限酵素EcoRI及びHindIIIで消化することで得られるフラグメントを、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株(東洋紡績社製)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で、37℃で一晩培養した。得られた菌体からプラスミドを回収し、このプラスミドをpGAPfucO−aldAと命名した。
(実施例1)ラクトアルデヒドレダクターゼ、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ同時発現ベクターによる△nadR△glcDEF株形質転換体の構築
製造例4で得られたプラスミドpGAPfucO−aldAを製造例3で得られた△nadR△glcDEF株に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートで、37℃で一晩培養することにより△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株を得た。
(製造例5)ラクトアルデヒドレダクターゼ、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ同時発現ベクターによる△glcDEF株形質転換体の構築
製造例4で得られたプラスミドpGAPfucO−aldAを製造例2で得られた△glcDEF株に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートで、37℃で一晩培養することにより△glcDEF/pGAPfucO−aldA株を得た。
(実施例2)△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株によるグリコール酸生産
実施例1において得られた△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株を前培養として三角フラスコに入れたLB Broth, Miller培養液(Difco244620)25mLに植菌し、一晩、培養温度35℃、120rpmで攪拌培養を行った。前培養液全量を、以下に示す組成の培地475gの入った1L容の培養槽(ABLE社製培養装置BMJ−01)に移し、培養を行った。培養は大気圧下、通気量0.5L/min、撹拌速度800rpm、培養温度35℃、pH7.2(NH水溶液で調整)で行った。前記の条件で最初のグルコースが完全に枯渇した後、残りの時間を培地中のグルコース濃度0.1g/L未満となるような可変速度でグルコースを全量で40g供給した。
<培地組成>
ポリペプトン:7g/L
グルコース:30g/L
FeSO:0.09g/L
HPO:2g/L
KHPO:2g/L
MgSO・7HO:2g/L
(NHSO:5g/L
溶媒:水
培養開始後24時間の菌体を遠心分離(8000rpm、20分間)により集菌した。集菌後の湿菌体を4.5g秤量し、エチレングリコール65gと共に蒸留水に懸濁し最終液量を500mlとした。懸濁液をABLE社製培養装置BMJ−01の培養槽に移し70時間反応を行った。反応は大気圧下、通気量0.25L/min、撹拌速度550rpm、反応温度35℃、pH7.2(NH水溶液で調整)で行った。得られた反応液中のグリコール酸蓄積量を、日立製作所製高速液体クロマトグラフィーを用い、以下の設定にて定量した。
カラム:ULTRON PS−80H(信和化工社製)
溶離液:過塩素酸水溶液(pH2.1)
流速:1.0mL/min
検出器:UV検出器
測定波長:280nm
また、湿菌体の一部を50℃で乾燥させた後の乾燥重量から、反応に使用した菌体の乾燥菌体重量を求めた。
△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株の乾燥菌体1gあたりのグリコール酸生産量は27.1gであった。
また、△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株の生育速度は、比較例1における△glcDEF/pGAPfucO−aldA株と同様のものであり、nadR遺伝子の破壊による生育の遅延が起きていないことが確認された。
(比較例1)△glcDEF/pGAPfucO−aldA株によるグリコール酸生産
製造例5で得られた△glcDEF/pGAPfucO−aldA株について実施例2と同様に培養およびグリコール酸生産を行った。△glcDEF/pGAPfucO−ald株の乾燥菌体1gあたりのグリコール酸生産量は20.2gであった。
(参考例1)△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株、△glcDEF/pGAPfucO−aldA株における細胞内ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド含量の測定
△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株、および△glcDEF/pGAPfucO−aldA株を実施例2と同様に培養した。
培養開始後24時間の△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株および△glcDEF/pGAPfucO−aldA株それぞれを2本の微量遠沈管に1mLずつサンプリングし、4℃で遠心、集菌した。2本の遠沈管のうち1本をNAD測定、1本をNADH測定に使用し、それぞれ以下の処理を行った。
NAD測定用のサンプルには、集菌した湿菌体1.5mgあたり400μLの0.04mol/Lの塩酸水溶液を加え懸濁した。懸濁液を90℃で3分加熱の後、氷上で急冷した。この処理液の上清を用い、以下に示す組成の反応液を作成した。なお1mol/LTris−HClとしてpH9.0のものを用いた。またアルコールデヒドロゲナーゼとしてSIGMA社製アルコールデヒドロゲナーゼ(A3263)を10mmol/LのTris−HCl(pH8.8)で溶解し、400ユニット/mL(ただし1ユニットはpH8.8、25℃の条件下、1分間に1μmolのエタノールをアセトアルデヒドに変換するのに必要な酵素量)としたものを使用した。反応液の450nmにおける吸光度をテトラカラーワン(生化学工業社製)のプロトコールに従って測定した。なおSIGMA社製NADの溶液について同様の処理を施したものを測定することにより検量線を作成し、サンプルのNAD濃度を求めた。
NADH測定用のサンプルには、集菌した湿菌体1.5mgあたり400μLの0.04mol/Lの水酸化カリウム水溶液を加え懸濁した。懸濁液を90℃で3分加熱の後、氷上で急冷した。この処理液の上清を用い、以下に示す組成の反応液を作成した。なお1mol/LTris−HClとしてpH8.8のものを用いた。またアルコールデヒドロゲナーゼとしてSIGMA社製アルコールデヒドロゲナーゼ(A3263)を10mmol/LのTris−HCl(pH8.8)で溶解し、400ユニット/mL(ただし1ユニットはpH8.8、25℃の条件下、1分間に1μmolのエタノールをアセトアルデヒドに変換するのに必要な酵素量)としたものを使用した。
反応液の450nmにおける吸光度をテトラカラーワン(生化学工業社製)のプロトコールに従って測定した。なおSIGMA社製NADHの溶液について、同様の処理を施したものを測定することにより検量線を作成し、サンプルのNADH濃度を求めた。
その結果、△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株のNAD量、NADH量は、△glcDEF/pGAPfucO−aldA株と比較して、それぞれ1.7倍、1.6倍増加していた。これによりnadR遺伝子を欠失させた△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株では、NADおよびNADH、すなわちニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの生産能が強化されていることが確認された。
<反応液組成>
サンプル上清:25μL
1mol/LTris−HCl:25μL
25%エタノール:10μL
純水:20μL
テトラカラーワン(生化学工業社製):10μL
アルコールデヒドロゲナーゼ:10μL
(製造例6)ラクトアルデヒドレダクターゼ、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、NADHデヒドロゲナーゼ同時発現ベクターの構築
エシェリヒア・コリのNADHデヒドロゲナーゼの遺伝子(以下、ndhと略することがある)の塩基配列はすでに報告されている(GenBank accession number V00306)。
ndhを取得するためにエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いて、配列番号17(CGAATTCCGGAGAAAGTCTTATGACTACGGCATTGAAAAAGATTGTG)と配列番号18(GGTCTAGACGATTAATGCAACTTCAAACG)に示すオリゴヌクレオチドを用いてPCR法で増幅することで約1.3kbpのndhフラグメントを得た。得られたndhフラグメントをT4DNAポリヌクレオチドキナーゼ処理した。このDNAフラグメントと、製造例4で作成したpGAPfucO−aldAプラスミドをHindIIIで消化し平滑末端処理、脱リン酸化処理を行ったフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株(東洋紡績社製)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で、37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収し、得られたプラスミドをpGAPfucO−aldA−ndhと命名した。
(実施例3)ラクトアルデヒドレダクターゼ、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、NADHデヒドロゲナーゼ同時発現ベクターによる△nadR△glcDEF株形質転換体の構築
製造例6で得られたプラスミドpGAPfucO−aldA−ndhを製造例3で得られた△nadR△glcDEF株に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートで、37℃で一晩培養することにより△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株を得た。
(実施例4)△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株によるグリコール酸生産
実施例3で得られた△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株について実施例2と同様に培養およびグリコール酸生産を行った。なお、この菌株について、実施例2で培養した結果と比較してndhを強化することによる生育の遅延は観察されなかった。△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株の乾燥菌体1gあたりのグリコール酸生産量を、比較例1および実施例2の結果とあわせて表1に示した。
比較例1と実施例2の比較から、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能の強化により、グリコール酸の生産性は1.3倍に向上した。
また、比較例1と実施例4の比較から、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能の強化および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド再生能の強化によりグリコール酸の生産性は3.6倍に向上した。
Figure 2007129465
(製造例7)ラクトアルデヒドレダクターゼ、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ同時発現ベクターの構築
エシェリヒア・コリのニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの遺伝子(pncB)の塩基配列はすでに報告されている(GenBank accession number J05568)。
pncBを取得するために、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いて、配列番号19(CGTGCAATTGCCGGAGAAAGTCTTATGACACAATTCGCTTCTC)及び配列番号20(CGCTCTAGATTAACTGGCTTTTTTAATATGCG)に示すオリゴヌクレオチドを用いてPCR法で増幅することで約1.2kbpのpncBフラグメントを得た。さらに得られたpncBフラグメントをT4DNAポリヌクレオチドキナーゼ処理した。このDNAフラグメントと、製造例4で作成したpGAPfucO−aldAプラスミドをHindIIIで消化し、平滑末端処理、脱リン酸化処理を行ったフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株(東洋紡績社製)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で、37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収し、該プラスミドをpGAPfucO−aldA−pncBと命名した。
(実施例5)ラクトアルデヒドレダクターゼ、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ同時発現ベクターによる△glcDEF形質転換体の構築
製造例7で得られたプラスミドpGAPfucO−aldA−pncBを製造例2で得られた△glcDEF株に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートで、37℃で一晩培養することにより△glcDEF/pGAPfucO−aldA−pncB株を得た。
(実施例6)△glcDEF/pGAPfucO−aldA−pncB株によるグリコール酸生産
実施例5で得られた△glcDEF/pGAPfucO−aldA−pncB株について実施例2と同様に培養およびグリコール酸生産を行った。△glcDEF/pGAPfucO−aldA−pncB株における乾燥菌体1gあたりのグリコール酸生産量は26.7gであった。比較例1の△glcDEF/pGAPfucO−aldA株における乾燥菌体1gあたりのグリコール酸量(20.2g)と比較して、pncBの強化により、生産性が1.3倍に向上していた。
(参考例2)△glcDEF/pGAPfucO−aldA−pncB株における細胞内ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド含量の測定
実施例5で得られた△glcDEF/pGAPfucO−aldA−pncB株および対照となる△glcDEF/pGAPfucO−aldAについて、参考例1と同様に培養および細胞内NAD量、NADH量の測定を行った。その結果、△glcDEF/pGAPfucO−aldA−pncB株において、NAD量、NADH量は、それぞれ△glcDEF/pGAPfucO−aldA株の2.6倍、2.1倍であった。これによりpncBを強化した△glcDEF/pGAPfucO−aldA−pncB株では、NADおよびNADH、すなわちニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの生産能が強化されていることが確認された。
(参考例3)△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株、△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株における細胞内NADおよびNADH含量測定
△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株、および△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株について、実施例2と同様に培養およびグリコール生産を行った。グリコール酸生産時の△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株、および△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株について一定時間においてサンプリングを行い、参考例1と同様に細胞内NAD量、NADH量を測定した。図1は、この時のNADH/NAD比(NADH含量/NAD含量)を示す。横軸は反応時間(hr)、縦軸はNADH/NAD比(NADH含量/NAD含量)を示している。
△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株において常にNADH/NAD比の値が小さく、NADHからNADを再生していることが示された。
(製造例8)NADHデヒドロゲナーゼ発現ベクターの構築
エシェリヒア・コリのNADHデヒドロゲナーゼの遺伝子(以下、ndhと略することがある)の塩基配列はすでに報告されている(GenBank accession number V00306)。ndhを取得するためにエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いて配列番号17と配列番号21(AAAATAAGCTTCGATTAATGCAACTTCAAACG)に示すオリゴヌクレオチドを用いてPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素EcoRI及びHindIIIで消化することで約1.3kbpのndhフラグメントを得た。
上記のDNAフラグメントと、プラスミドpUC18(東洋紡績社製)を制限酵素EcoRI及びHindIIIで消化することで得られるフラグメントを、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株(東洋紡績社製)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で、37℃で一晩培養した。得られた菌体からプラスミドを回収し、ndhのDNAフラグメントが正しく挿入されていることを確認したのち、制限酵素EcoRIで処理し、さらに脱リン酸化処理した。
また、GAPDHプロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いて配列番号15と配列番号16に示すオリゴヌクレオチドを用いてPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素EcoRIで消化することで約100bpのGAPDHプロモーターをコードするDNAフラグメントを得た。このDNAフラグメントを先述のEcoRI処理、脱リン酸化処理したプラスミドと、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株(東洋紡績社製)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で、37℃で一晩培養した。得られた菌体からプラスミドを回収し、GAPDHプロモーターのフラグメントが正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpGAPndhと命名した。
(実施例7)NADHデヒドロゲナーゼ発現ベクターによる△nadR株形質転換体および△nadR△glcDEF株形質転換体の構築
製造例1で得られた△nadR株および製造例3で得られた△nadR△glcDEFを製造例8で得られたプラスミドpGAPndhで形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートで、37℃で一晩培養することにより△nadR/pGAPndh株および△nadR△glcDEF/pGAPndh株を得た。
(製造例9)NADHデヒドロゲナーゼ発現ベクターによるMG1655株形質転換体の構築
製造例8で得られたプラスミドpGAPndhにより大腸菌野生株MG1655株を形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートで、37℃で一晩培養することによりMG1655/pGAPndh株を得た。
(実施例8)△nadR/pGAPndh株、△nadR△glcDEF/pGAPndh株によるグリコール酸生産
LB Broth,Miller培養液(Difco244620)に終濃度0.2%となるようグルコースを添加した培地5mLを入れた試験管に実施例7で得られた△nadR/pGAPndh株、△nadR△glcDEF/pGAPndh株および対照として△nadR株、MG1655/pGAPndh、野生株MG1655株をそれぞれ植菌し、一晩、培養温度37℃、200rpmで攪拌培養を行った。培養液全量を遠心分離し、得られた湿菌体の重量を測定したのち、以下に示す反応液1mlを作成し、試験管を用いて30℃、200rpmで攪拌し、48時間グリコール酸生産を行った。
<反応液組成>
1mol/L燐酸カリウム緩衝液(pH8.0):250μL
エチレングリコール:50μL
菌体:培養液より回収した全菌体
純水で1mlに調整
菌株それぞれの湿菌体1gあたりのグリコール酸生産量を表2に示した。△nadR/pGAPndh株、△nadR△glcDEF/pGAPndh株において顕著にグリコール酸の生産性が向上していることが示された。
Figure 2007129465
(実施例9)△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株によるグリコール酸生産反応の温度条件検討
実施例3で得られた△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株について実施例2と同様に培養を行った。ただし、培地中ポリペプトンの濃度を1g/Lとした。得られた菌体について、実施例2と同様にグリコール酸生産反応を実施した。ただし反応に加える湿菌体量を7g、攪拌速度を750rpm、反応時間を24時間とし、反応温度は30℃、35℃、37℃、および40℃のそれぞれの条件で実施した。図2はこの時のグリコール酸蓄積量を示す。横軸は反応時間(hr)、縦軸はグリコール酸蓄積量(g/L)を示している。
△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株により上記条件においても十分量のグリコール酸を生産できることが示された。
(実施例10)△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株によるグリコール酸生産反応のpH条件検討
実施例3で得られた△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株について実施例2と同様に培養を行った。ただし、培地中ポリペプトンの濃度を1g/Lとした。得られた菌体について、実施例2と同様にグリコール酸生産反応を実施した。ただし、反応液のpHをpH7.7、pH7.2、pH6.5、pH6.0、pH4.3のそれぞれの条件で制御し実施した。図3はこの時のグリコール酸蓄積量を示す。横軸は反応時間(hr)、縦軸はグリコール酸蓄積濃度(g/L)を示している。
△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株によるグリコール酸生産はpH6.0以上で可能であることが示された。
本発明のヒドロキシカルボン酸の生産方法および微生物は、ポリマー原料や医薬中間体として有用なグリコール酸等のヒドロキシカルボン酸類の製造に用いることができる。
非特許文献3においては、エシェリヒア・コリにpncBの発現ベクターを導入することでニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの含量が向上することが報告されている。
特開平10−174593号公報 特開平10−174594号公報 国際公開第2005/106005号パンフレット Biosci.Biotechnol.Biochem.,Vol.65(10),pp.2265−2270,(2001) J.Bacteriol.,Vol.187(8), pp.2774−2782,(2005) Metabolic Engineering,Vol.4,pp.238−247,(2002)
培養に使用される培地としては、工業的生産に供する点を考慮すれば液体培地が好ましい。
また、培地組成は、ポリペプトン0.5g/L以上10g/L以下、FeSO0.02g/L以上0.3g/L以下、KHPO0.5g/L以上5g/L以下、KHPO0.5g/L以上5g/L以下、MgSO・7HO0.5g/L以上5g/L以下、(NHSO0.3g/L以上15g/L以下(溶媒は水)とすると好ましい。
(比較例1)△glcDEF/pGAPfucO−aldA株によるグリコール酸生産
製造例5で得られた△glcDEF/pGAPfucO−aldA株について実施例2と同様に培養およびグリコール酸生産を行った。△glcDEF/pGAPfucO−aldA株の乾燥菌体1gあたりのグリコール酸生産量は20.2gであった。
(参考例3)△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株、△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株における細胞内NADおよびNADH含量測定
△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株、および△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株について、実施例2と同様に培養およびグリコール酸生産を行った。グリコール酸生産時の△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株、および△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA株について一定時間においてサンプリングを行い、参考例1と同様に細胞内NAD量、NADH量を測定した。図1は、この時のNADH/NAD比(NADH含量/NAD含量)を示す。横軸は反応時間(hr)、縦軸はNADH/NAD比(NADH含量/NAD含量)を示している。
△nadR△glcDEF/pGAPfucO−aldA−ndh株において常にNADH/NAD比の値が小さく、NADHからNADを再生していることが示された。

Claims (19)

  1. 微生物を用いて末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールからヒドロキシカルボン酸を生産する方法において、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化した微生物を用いることを特徴とするヒドロキシカルボン酸の生産方法。
  2. 微生物が、下記(1)および(2)の少なくとも一つの遺伝子操作を行うことによりニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化した微生物であることを特徴とする請求項1記載の生産方法。
    (1) 微生物内のnadR遺伝子を欠失、変異、又は置換させること。
    (2) 微生物内のニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを微生物に導入すること。
  3. 微生物が、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド再生能を強化した微生物であることを特徴とする請求項1記載の生産方法。
  4. 微生物が、NADHデヒドロゲナーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを導入することにより酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド再生能を強化した微生物であることを特徴とする請求項3記載の生産方法。
  5. 微生物が、ラクトアルデヒドレダクターゼおよびラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの少なくとも1つの酵素活性を強化した微生物であることを特徴とする請求項1記載の生産方法。
  6. 微生物が、ラクトアルデヒドレダクターゼおよびラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの少なくとも1つの酵素活性を強化した微生物であることを特徴とする請求項3記載の生産方法。
  7. 微生物が、グリコール酸オキシダーゼ活性を不活性化または微生物本来の活性よりも低減した微生物であることを特徴とする請求項1、3、5又は6記載の生産方法。
  8. 末端に水酸基を有する脂肪族多価アルコールがエチレングリコールであり、ヒドロキシカルボン酸がグリコール酸であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の生産方法。
  9. ラクトアルデヒドレダクターゼおよびラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼの少なくとも1つの酵素活性を強化し、かつ、下記(1)および(2)の少なくとも一つの遺伝子操作を行うことによりニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化した微生物。
    (1) 微生物内のnadR遺伝子を欠失、変異、又は置換させること。
    (2) 微生物内のニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを微生物に導入すること。
  10. 酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド再生能を強化したことを特徴とする請求項9記載の微生物。
  11. NADHデヒドロゲナーゼの活性を強化し、かつ、下記(1)および(2)の少なくとも一つの遺伝子操作を行うことによりニコチンアミドアデニンジヌクレオチド生産能を強化した微生物。
    (1) 微生物内のnadR遺伝子を欠失、変異、又は置換させること。
    (2) 微生物内のニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを微生物に導入すること。
  12. グリコール酸オキシダーゼ活性を不活性化または微生物本来の活性よりも低減したことを特徴とする請求項9または10に記載の微生物。
  13. グリコール酸オキシダーゼ活性を不活性化または微生物本来の活性よりも低減したことを特徴とする請求項11に記載の微生物。
  14. 微生物がエシェリヒア属、シゲラ属、サルモネラ属、エルビニア属、エルシニア属、フォトラブドゥス属のいずれかである請求項1〜8のいずれか1項に記載の生産方法。
  15. 微生物がエシェリヒア・コリである請求項14に記載の生産方法。
  16. 微生物がエシェリヒア属、シゲラ属、サルモネラ属、エルビニア属、エルシニア属、フォトラブドゥス属のいずれかである請求項9、10、12のいずれか1項に記載の微生物。
  17. 微生物がエシェリヒア属、シゲラ属、サルモネラ属、エルビニア属、エルシニア属、フォトラブドゥス属のいずれかである請求項11または13に記載の微生物。
  18. 微生物がエシェリヒア・コリである請求項16に記載の微生物。
  19. 微生物がエシェリヒア・コリである請求項17に記載の微生物。
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