本発明は、光ディスクに信号を記録し、又は光ディスクに記録された信号を再生するために用いられる光ディスク装置に関する。
従来、この種の光ディスク装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。ここでは、この先行例を原型とし、若干の修正を加えた形で、図8〜図10を参照しながら説明する。
図8(a)は、従来技術における光ディスク装置を示す側面図、図8(b)は、当該光ディスク装置に用いられるグレーティング面に形成されたグレーティングパターンと、当該グレーティング面上での光分布の様子とを示す図、図8(c)は、光ディスクの信号面の構成と、当該信号面上での光分布の様子とを示す図である。
図8に示すように、半導体レーザ等の放射光源1から出射されたレーザ光2は、透明基板3、偏光ビームスプリッタ4のスプリット面4aを順次透過した後、コリメートレンズ5によって集光されて平行光となる。この平行光は、1/4波長板6によって直線偏光(P波)から円偏光に変換された後、対物レンズ7によって集光されて、光ディスク8の信号面8a上に集束する(光スポットを結ぶ)。光ディスク8の信号面8aには、光ディスク8の回転方向(以下「光ディスク回転方向」という)に沿う案内溝8gが光ディスク8の径方向(以下「光ディスク径方向」という)に等ピッチで形成されている。光ディスク8の信号面8aで反射した光は、対物レンズ7を透過し、1/4波長板6によって直線偏光(S波)に変換された後、コリメートレンズ5を経由して集束性の光となる。この集束性の光は、偏光ビームスプリッタ4のスプリット面4aで反射した後、円柱面の中心軸を紙面に平行な面に対して45度傾斜させて配置したシリンドリカルレンズ9を透過し、最小錯乱円の近傍(縦焦線と横焦線の中間位置)に位置する光検出基板10上の光検出面10aに入射する。
透明基板3の表面(グレーティング面3a)には、光ディスク回転方向に対応した軸3Yを境として、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cとが形成されている。そして、放射光源1から出射され透明基板3を透過する光(透過光)の、グレーティング面3a上での光スポットの形状は、グレーティング面3aの中心30を中心とした円2aとなる。それぞれのグレーティングの方位は軸3Yに直交し、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cのグレーティングの位相はπだけずれている(シフトしている)。透明基板3を透過する光(透過光)は、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cとによって回折され、0次回折光(そのまま透過する光)以外に±1次回折光が発生する(以下、グレーティングによる回折光を「Gr回折光」という)。0次Gr回折光の波面は、グレーティングの影響を受けないので、位相の変化はないが、±1次Gr回折光の波面は、軸3Yを境として左右で位相がπだけシフトしている。これらのGr回折光は、光ディスク8の信号面8a上に光スポットを結ぶ。そして、トラッキング制御時において、0次Gr回折光に対応した光スポット2bは案内溝8gの真上に位置し、±1次Gr回折光に対応した光スポット2b’、2b”は、それぞれ案内溝8gを中心として光ディスク径方向に分離した2つの光スポットとなる。光スポット2b’、2b”がそれぞれ2つとなるのは、±1次Gr回折光の波面が中心軸3Yを境として左右で位相がπだけシフトしていることによる。尚、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cの回折効率は、光スポット2b’、2b”の光量がそれぞれ光スポット2bの光量の1/10程度となるように設定されている。
図9(a)は、従来技術における光ディスク装置に用いられる光検出面の構成と、当該光検出面上での光分布の様子とを示す図、図9(b)は、当該光ディスク装置に用いられるシリンドリカルレンズに入射する前の光束を示す図である。シリンドリカルレンズ9に入射する前の光束2c、2c’、2c”は、それぞれ光ディスク8の信号面8a上の光スポット2b、2b’、2b”に対応している。0次Gr回折光2cには、光ディスク径方向に対応した軸9Xに沿ってシフトする形で、光ディスク8の案内溝8gによる回折光2cp、2cmが重畳している(以下、案内溝による回折光を「溝回折光」という)。±1次Gr回折光2c’、2c”の0次溝回折光は、光ディスク回転方向に平行な軸9Yを境として位相がπだけシフトしており、±1次溝回折光は、このπシフトの状態を保ったまま、軸9Xに沿ってシフトする形で0次溝回折光に重畳している。光検出面10a上の光スポット2d、2d’、2d”は、それぞれシリンドリカルレンズ9に入射する前の光束2c、2c’、2c”に対応している。光束2c、2c’、2c” は、シリンドリカルレンズ9を透過することにより、光分布がシリンドリカルレンズ9の円柱面の中心軸に対して反転するので、光検出面10a上の光スポット2d、2d’、2d”は、光束2c、2c’、2c”に対し全体として90度回転した光分布となる(光分布のみならず、対物レンズ7のレンズシフト(以下、対物レンズのレンズシフトを単に「レンズシフト」ともいう)時の光スポットの移動方向も90度回転する)。光検出面10a上には、光検出器11、11’、11”がそれぞれ光スポット2d、2d’、2d”とほぼ同軸となるように配置されている。光検出器11、11’、11”は、軸9X、9Yと平行な直線(但し、軸9Yと平行な直線を10Xとする)によってそれぞれ4つの検出セルに分割されており(それぞれ、検出セル11a、11b、11c、11d、及び、検出セル11a’、11b’、11c’、11d’、及び、検出セル11a”、11b”、11c”、11d”)、分割線の交点は各光スポット2d、2d’、2d”の中心にほぼ一致している。
図9において、各検出セルにより、以下の12個の信号(検出信号)が得られる。
T1=検出セル11aで得られる信号
T2=検出セル11bで得られる信号
T3=検出セル11cで得られる信号
T4=検出セル11dで得られる信号
T1’=検出セル11a’で得られる信号
T2’=検出セル11b’で得られる信号
T3’=検出セル11c’で得られる信号
T4’=検出セル11d’で得られる信号
T1”=検出セル11a”で得られる信号
T2”=検出セル11b”で得られる信号
T3”=検出セル11c”で得られる信号
T4”=検出セル11d”で得られる信号
これらの検出信号を用いて、光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号TE、光ディスクの信号面へのフォーカスエラー信号FE、光ディスクの信号面の再生信号RFが、下記式(1)〜(3)により演算される。
TE=T1+T2−T3−T4
−k×(T1’+T2’−T3’−T4’
+T1”+T2”−T3”−T4”) 式(1)
FE=T1+T3−T2−T4 式(2)
RF=T1+T2+T3+T4 式(3)
ここで、係数kは、トラッキング制御時におけるレンズシフトによって発生するトラッキングエラー信号のオフセットをキャンセルする大きさに設定される。例えば、光スポット2d’、2d”の光量がそれぞれ光スポット2dの光量の1/10程度であるとき、係数kは5程度の大きさである。
図10は、従来技術における光ディスク装置の、レンズシフトによって発生するトラッキングエラー信号のオフセットを説明するための図である(シリンドリカルレンズによる90度の回転を元に戻して説明)。
図10に示すように、対物レンズ7が光軸Lから光ディスク径方向(軸10Xの方向)にεだけシフトすると、光軸Lに沿って対物レンズ7に回転対称に入射するガウシアン分布の光2Aは、光ディスク8の信号面8aで反射した後には2εだけシフト(対物レンズ7の中心軸7cに対してはεだけシフト)した分布の光2Bとなる。従って、光検出器11上の光スポット2dも、2εに比例した量(厳密には、2εに(シリンドリカルレンズ9の非点隔差の半分)/(コリメートレンズ5の焦点距離)を掛けた値)だけシフトした位置2Dを中心とする光分布となり、かつ、対物レンズ7の開口の、光検出面10a上への光線に沿って投影した図形である円7a(εに比例した量だけシフト)の外側は遮光されている。その結果、検出セル11c、11dで検出される光量は検出セル11a、11bで検出される光量よりも大きくなり、検出器11だけで得られるトラッキングエラー信号(TE=T1+T2−T3−T4)ではオフセットが発生する。このオフセットの発生は光検出器11’、11”でも全く同じであり、光検出器11’だけで得られるトラッキングエラー信号(TE=T1’+T2’−T3’−T4’)、光検出器11”だけで得られるトラッキングエラー信号(TE=T1”+T2”−T3”−T4”)でも、検出光量で規格化すると、同じ極性で同じ量のオフセットが発生する。一方、光ディスク8の信号面8a上の光スポットがオフトラックするときに発生するトラッキングエラー信号は、光検出器11だけで得られるトラッキングエラー信号と光検出器11’、11”だけで得られるトラッキングエラー信号とで極性が逆になる。これは、光検出器11’、11”上の光スポットの溝回折光の位相が光ディスク回転方向に平行な軸を境としてπだけシフトしているために、溝回折光の間の干渉関係が反転するからである。従って、上記式(1)によって得られるトラッキングエラー信号は、光検出器11だけで得られるトラッキングエラー信号(T1+T2−T3−T4)に比べ、検出感度を損なうことなく(むしろ検出出力を高めつつ)、レンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルできている。
特開平9−81942号公報
上記のような従来の光ディスク装置には、以下のような問題がある。すなわち、図8において、光スポット2b’、2b”の位置がずれて、当該光スポット2b’、2b”のそれぞれの2つの光スポットの中心が案内溝8gの中間部8lの近傍に位置すると、光検出器11’、11”だけで得られるトラッキングエラー信号の極性が、光検出器11だけで得られるトラッキングエラー信号の極性と同じになる。そして、光スポット2b’、2b”の位置が変わっても、レンズシフトによるトラッキングエラーオフセットの発生の仕方は変わらないので、レンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルするように係数kを決定すると、上記式(1)によって得られるトラッキングエラー信号の検出出力は小さくなり、検出出力がゼロとなることもある。従って、上記のような従来の光ディスク装置においては、光スポット2b’、2b” のそれぞれの2つの光スポットが案内溝8gを中心として対称となるように、直線グレーティング3b、3cが形成されている透明基板3を精度よく回転調整する必要があり、これが光ディスク装置の組み立てを困難にしている。
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、直線グレーティングを回転調整しなくても、トラッキングエラー信号の検出出力を損なうことなくレンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルすることのできる光ディスク装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明に係る光ディスク装置の構成は、放射光源と、回折格子面上に形成された回折格子と、対物レンズと、光分岐手段と、光検出器とを備え、前記放射光源から出射された光は、前記回折格子を透過して、透過光aと+1次回折光bと−1次回折光cとに分離され、前記透過光aと前記+1次回折光bと前記−1次回折光cは、その一部が重なったまま前記対物レンズを経由して光ディスクの信号面上のトラックに集光され、前記信号面上のトラックで反射した光は、前記対物レンズを経由して前記光分岐手段に入射し、前記光分岐手段に入射した光は、その入射位置に応じて、前記透過光aに対応する光が光a1、a2の2つに分岐してそれぞれ前記光検出器上の光検出領域A1、A2に入射し、前記+1次回折光bに対応する光が光b1、b2の2つに分岐してそれぞれ前記光検出器上の光検出領域B1、B2に入射し、前記−1次回折光cに対応する光が光c1、c2の2つに分岐してそれぞれ前記光検出器上の光検出領域C1、C2に入射し、前記光検出領域A1、A2、B1、B2、C1、C2からの検出信号を組み合わせることにより、前記光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号が生成されることを特徴とする。
前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記対物レンズと前記光分岐手段とが一体的に固定されているのが好ましい。
また、前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記光検出領域A1に前記光検出領域B2が定数kを掛けた状態で電気的に導通されており、かつ、前記光検出領域A2に前記光検出領域C1が係数kを掛けた状態で電気的に導通されているのが好ましい。
また、前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記光検出領域A1と前記光検出領域C2が電気的に導通されているか又は同一の光検出領域であり、かつ、前記光検出領域A2と前記光検出領域B1が電気的に導通されているか又は同一の光検出領域であるのが好ましい。また、この場合には、前記光検出領域A1、A2での検出信号の差分をΔT1、前記光検出領域B2、C1での検出信号の差分をΔT4としたとき、前記光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号が、係数kを用いて、ΔT1−k×ΔT4により演算されるのが好ましい。
また、前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記+1次回折光bに対応する前記光分岐手段上の投影領域は、前記対物レンズの半径を超えない幅を有し、かつ、前記対物レンズの中心を通り光ディスク回転方向に対応する直線に沿うのが好ましい。また、この場合には、前記対物レンズの開口を往路の光線に沿って前記回折格子面上に投影したとき、前記回折格子面上の前記回折格子の領域は、前記開口の投影図形の半径を超えない幅を有し、かつ、前記開口の投影図形の中心を通り光ディスク回転方向に対応する直線に沿うのが好ましい。この場合にはさらに、前記回折格子は、光ディスク径方向に沿った直線グレーティングであるのが好ましい。この場合にはさらに、前記回折格子の領域は、前記開口の投影図形の外側に位置しているのが好ましい。この場合にはさらに、前記回折格子は、光ディスク回転方向に対応する直線に沿って複数の短冊状領域に区切られ、一つ置きの短冊状領域では前記回折格子の凹凸が同期しており、隣り合う短冊状領域では前記回折格子の凹凸が1/5〜1/2ピッチだけシフトしているのが好ましい。
また、前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記光分岐手段は、前記対物レンズの中心を通り光ディスク回転方向と平行な直線によって2つの領域に分割され、それぞれの領域で、前記光a1と前記光a2、前記光b1と前記光b2、前記光c1と前記光c2がそれぞれ分岐されるのが好ましい。
また、前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記光検出領域A1、A2での検出信号の差分をΔT1、前記光検出領域B1、B2での検出信号の差分をΔT2、前記光検出領域C1、C2での検出信号の差分をΔT3としたとき、前記光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号が、係数kを用いて、ΔT1−k×(ΔT2+ΔT3)により演算されるのが好ましい。
本発明によれば、直線グレーティングを回転調整しなくても、トラッキングエラー信号の検出出力を損なうことなくレンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルすることのできる光ディスク装置を提供することができる。
図1(a)は、本発明の実施の形態における光ディスク装置を示す側面図、図1(b)は、当該光ディスク装置の光源部分を示す平面図、図1(c)は、当該光ディスク装置に用いられるグレーティング面に形成されたグレーティングパターンと、当該グレーティング面上での光分布の様子とを示す図、図1(d)は、光ディスクの信号面の構成と、当該信号面上での光分布の様子とを示す図、図1(e)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラム面での、グレーティングパターンのピッチが大きい場合の光分布の様子を示す図、図1(f)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラム面での、グレーティングパターンのピッチが小さい場合の光分布の様子を示す図である。
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置に用いられる光検出器に形成された光検出パターンと、放射光源から出射されたレーザ光に対する戻り光の当該光検出器上での光分布の様子とを示す図、図2(b)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラムの構成を示す図である。
図3は、本発明の第1の実施の形態において、光ディスクの信号面に対して集束光がディフォーカスするときの光検出面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は光ディスクの信号面が対物レンズから遠ざかる側にある場合、(b)は光ディスクの信号面が対物レンズに近づく側にある場合である。
図4は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置の、光ディスクからの戻り光のホログラム面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は0次Gr回折光の場合、(b)は±1次Gr回折光の場合である。
図5は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置の、対物レンズのレンズシフトによって発生するトラッキングエラー信号のオフセットを説明するための図であり、(a)は0次Gr回折光のホログラム面上での光分布の様子、(b)は±1次Gr回折光のホログラム面上での光分布の様子、(c)は溝回折光のホログラム面上での光分布の様子をそれぞれ示している。
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態における光ディスク装置に用いられる光検出器に形成された光検出パターンと、放射光源から出射されたレーザ光に対する戻り光の当該光検出器上での光分布の様子とを示す図、図6(b)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラムの構成を示す図である。
図7は、本発明の第2の実施の形態において、光ディスクの信号面に対して集束光がディフォーカスするときの光検出面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は光ディスクの信号面が対物レンズに近づく側にある場合、(b)は光ディスクの信号面が対物レンズから遠ざかる側にある場合である。
図8(a)は、従来技術における光ディスク装置を示す側面図、図8(b)は、当該光ディスク装置に用いられるグレーティング面に形成されたグレーティングパターンと、当該グレーティング面上での光分布の様子とを示す図、図8(c)は、光ディスクの信号面の構成と、当該信号面上での光分布の様子とを示す図である。
図9(a)は、従来技術における光ディスク装置に用いられる光検出面の構成と、当該光検出面上での光分布の様子とを示す図、図9(b)は、当該光ディスク装置に用いられるシリンドリカルレンズに入射する前の光束を示す図である。
図10は、従来技術における光ディスク装置の、レンズシフトによって発生するトラッキングエラー信号のオフセットを説明するための図である。
以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。尚、従来技術における光ディスク装置と共通の構成部材については、同一の参照符号を付して説明する。
[第1の実施の形態]
図1(a)は、本発明の実施の形態における光ディスク装置を示す側面図、図1(b)は、当該光ディスク装置の光源部分を示す平面図、図1(c)は、当該光ディスク装置に用いられるグレーティング面に形成されたグレーティングパターンと、当該グレーティング面上での光分布の様子とを示す図、図1(d)は、光ディスクの信号面の構成と、当該信号面上での光分布の様子とを示す図、図1(e)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラム面での、グレーティングパターンのピッチが大きい場合の光分布の様子を示す図、図1(f)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラム面での、グレーティングパターンのピッチが小さい場合の光分布の様子を示す図である。
図1(a)に示すように、本実施の形態における光ディスク装置は、半導体レーザ等からなる放射光源1と、放射光源1から出射された光を回折する回折格子と、回折格子によって回折された光を平行光に変換するコリメートレンズ5と、直線偏光を円偏光に、円偏光を直線偏光に変換する1/4波長板6と、前記平行光を光ディスク8の信号面8a上のトラックに集光する対物レンズ7と、光ディスク8の信号面8aで反射した光(戻り光)を回折するホログラムと、ホログラムによって回折された戻り光が集光する光検出器とを備えている。
図1(a)、(b)に示すように、光検出器は、光検出基板10と、光検出基板10上に形成された光検出面10aとを備えている。光検出面10aは、コリメートレンズ5の焦平面位置(すなわち、図1(b)に示した放射光源1の発光点1aの仮想発光点位置)にほぼ位置している。放射光源1は、光検出基板10上に取り付けられている。また、光検出基板10上には、放射光源1に近接して、放射光源1から出射されたレーザ光を反射してその光路を折り曲げる反射ミラー12が取り付けられている。
図1(a)、(c)に示すように、回折格子は、透明基板3と、透明基板3の表面(グレーティング面3a)に形成された直線グレーティング3b、3cとを備えている。ここで、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cは、グレーティング面3aの中心30を通る軸3Yに沿って分離して形成されている。より具体的には、対物レンズ7の開口を入射光線(往路の光線)に沿ってグレーティング面3a上に投影した図形を円2aとすると、直線グレーティング3b、3cの領域は円2aの外側に位置している。それぞれのグレーティングは、等ピッチであり、その方位は軸3Yに直交している(すなわち、軸3Yと直交する軸3Xに平行である)。また、直線グレーティング3b、3cは、それぞれ、軸3Yに沿って20μm(又は20μm〜40μm)置きに2つの領域に分けられており、2つの領域間でグレーティングの位相が1/4ピッチ(すなわち、π/2)だけシフトしている(位相シフトは、1/5〜1/2ピッチ程度であるのが好ましい)。直線グレーティング3bと直線グレーティング3cの軸3Xの方向の幅は円2aの直径の1/3程度である(少なくとも円2aの直径の1/2を超えることはない)。また、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cは、軸3Yに沿った断面がブレーズ形状(鋸歯状)か鋸歯状に内接した階段形状であり、その回折効率は、光スポット2b’、2b”の光量がそれぞれ光スポット2bの光量の1/10程度となるように設定されている(本実施の形態においては、従来技術と異なり、グレーティングの領域が限定されているので、回折光の光量が少なく、これを補うために、ブレーズ形状等の高回折効率の断面が採用されている)。
図1(a)、(e)、(f)に示すように、ホログラムは、偏光性ホログラム基板13と、偏光性ホログラム基板13上に形成された、光分岐手段としてのホログラム面13aとを備えている。1/4波長板6は、ホログラム面13aが形成された偏光性ホログラム基板13上に設けられており(1/4波長板6は偏光性ホログラム基板13に貼り合わされており)、これらは、対物レンズ7と同一筐体内に固定され、当該対物レンズ7と一体で移動するように構成されている。
図1に示すように、放射光源1の発光点1aから出射されたレーザ光2は、反射ミラー12で反射し、透明基板3を透過した後、コリメートレンズ5によって集光されて平行光となる。この平行光は、偏光性ホログラム基板13を透過し、1/4波長板6によって直線偏光(S波又はP波)から円偏光に変換された後、対物レンズ7によって集光されて、光ディスク8の信号面8a上に集束する(光スポットを結ぶ)。放射光源1から出射され透明基板3を透過する光(透過光)の、グレーティング面3a上での光スポットの形状は、グレーティング面3aの中心30を中心とした円2aとなる。透明基板3を透過するレーザ光2の、グレーティング面3aでの光分布は円2aの外側にも広がっており、この広がった成分が、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cを通過することによって回折され、±1次回折光が発生する(以下、グレーティングによる回折光を「Gr回折光」という)。そして、これらの回折光のうち、対物レンズ7の開口内に入射できるのは、光軸側に回折する成分(直線グレーティング3bでの−1次Gr回折光、直線グレーティング3cでの+1次Gr回折光)であり、それらの成分は、円2aの内側を透過する成分(回折はしないが、便宜上、「0次Gr回折光」と呼ぶ)と合わさって、光ディスク8の信号面8a上に光スポットを結ぶ。
光ディスク8の信号面8aで反射した光は、対物レンズ7を透過し、1/4波長板6によって直線偏光(P波又はS波)に変換された後、ホログラム面13aに入射する。ホログラム面13aに入射した前記直線偏光は、当該ホログラム面13aによって回折されて、光軸Lを対称軸とする+1次回折光2’及び−1次回折光2”に分岐される(以下、ホログラムによる回折光を「ホロ回折光」という)。そして、各ホロ回折光は、コリメートレンズ5を経由して集束性の光となり、光検出基板10上の光検出面10aに入射する。
トラッキング制御時において、0次Gr回折光に対応した光スポット2bは案内溝8gの真上に位置するが、±1次Gr回折光に対応した光スポット2b’、2b”(それぞれ、直線グレーティング3cでの+1次Gr回折光、直線グレーティング3bでの−1次Gr回折光に対応)は案内溝8gの真上に位置しなくてもよい。尚、±1次Gr回折光の波面は、それぞれ、軸3Yに沿って20μm置きに2つの領域に分けられ、2つの領域間で位相がπ/2だけシフトするので、それらの集束光は、案内溝8gの方位(光ディスク回転方向)に分離した3つの光スポットとなる(2つの領域間で位相がπだけシフトしているときは、2つの光スポットとなる)。光ディスク8の信号面8aで反射し、対物レンズ7を透過してホログラム面13aに入射する光は、0次Gr回折光2eに±1次Gr回折光2e’、2e”が重畳したものとなっており(Gr回折光2e、2e’、2e”は、それぞれ光スポット2b、2b’、2b”に対応)、±1次Gr回折光2e’、2e”の光ディスク径方向(軸13Xの方向)に沿った幅は0次Gr回折光2eの直径(対物レンズ7の開口直径)の1/3程度である。直線グレーティング3b、3cのピッチが大きい場合には、±1次Gr回折光2e’、2e”は分離して重ならないが(図1(e)参照)、直線グレーティング3b、3cのピッチが小さくなると、±1次Gr回折光2e’、2e”はともに軸13Xを乗り越えて重なった分布となる(図1(f)参照)。
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置に用いられる光検出器に形成された光検出パターンと、放射光源から出射されたレーザ光に対する戻り光の当該光検出器上での光分布の様子とを示す図、図2(b)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラムの構成を示す図である。ここで、図2(a)、(b)には、光ディスク側から見た光検出面、ホログラム面が示されている。尚、ホログラム面13a上の±1次Gr回折光2e’、2e”は、図1(e)の状態である。
図2(b)に示すように、ホログラム面13aは、光軸Lとホログラム面13aとの交点130で直交する2直線(13X、13Y)により、4つの象限131、132、133、134に分割されている。軸13Xは光ディスク径方向に平行であり、ホログラム面13a上の戻り光(0次Gr回折光2e)には、光ディスク径方向に対応した軸13Xに沿ってシフトする形で、光ディスク8の信号面8a上に形成された案内溝8gによる回折光2ep、2emが重畳している(以下、案内溝による回折光を「溝回折光」という)。図2(b)においては、DVD−RやDVD−RW等の狭ピッチフォーマットの光ディスクからの戻り光を例にとって、溝回折光のアウトラインを破線で示している。そして、この光がホログラム面13aを通過することにより、±1次の回折光が発生し、象限131、132、133、134ごとに分割されて光検出基板10上の光検出面10aに入射する。
一方、図2(a)に示すように、光検出面10aには、光軸Lと光検出面10aとの交点100で直交し、軸13X、軸13Yに平行な2直線を軸10X、軸10Yとして、軸10Xのマイナス側に軸10Xに沿った櫛歯状のフォーカス検出セル95、96が交互に配置され(同一参照符合を付した検出セルは電気的に導通されている)、軸10Xのプラス側に方形状のトラッキング検出セル91、92、92’、93、94、94’が配置されている(光検出パターン)。これらのトラッキング検出セル91、92、92’、93、94、94’は、トラッキング検出セル92、94の境界線の中心を中心として180°回転対称な形状をなし、トラッキング検出セル92、92’、94、94’は軸10Yの方向に一列に並び、トラッキング検出セル91、93はこの軸10Yの方向の並びから軸10Xに沿って互いに逆方向にずれている。尚、放射光源1の発光点1aから出射されたレーザ光2は、紙面と平行な面内を軸10Yと平行に進み、反射ミラー12によって光軸Lの方向(点100を通り紙面に直交する方向)に反射する。
ホログラム面13a上の0次Gr回折光2eのうち、ホログラム面13aの象限131によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル91の内部に収まる光スポット2d1に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D1に、ホログラム面13aの象限132によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル92の内部に収まる光スポット2d2に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D2に、ホログラム面13aの象限133によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル93の内部に収まる光スポット2d3に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D3に、ホログラム面13aの象限134によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル94の内部に収まる光スポット2d4に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D4にそれぞれ集光する。
また、ホログラム面13a上の+1次Gr回折光2e’のうち、ホログラム面13aの象限131によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d1’に、ホログラム面13aの象限132によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル92’の内部に収まる光スポット2d2’にそれぞれ集光する。また、ホログラム面13a上の−1次Gr回折光2e”のうち、ホログラム面13aの象限133によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d3”に、ホログラム面13aの象限134によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル94’の内部に収まる光スポット2d4”にそれぞれ集光する。
0次Gr回折光2eに関しては、ホログラム面13aの各象限131、132、133、134によって回折される−1次ホロ回折光が集光する光スポット2D1、2D2、2D3、2D4は、それぞれ、+1次ホロ回折光が集光する光スポット2d1、2d2、2d3、2d4の、点100に関するほぼ点対称な位置となる。
これに対して、±1次Gr回折光2e’、2e”のホロ回折光は、0次Gr回折光2eのホロ回折光の集光位置を基点として、+1次Gr回折光2e’のホロ回折光が軸10Yのプラス側に、−1次Gr回折光2e” のホロ回折光が軸10Yのマイナス側にシフトした位置に集光する。
尚、光スポット2D1、2D2、2D3、2D4の軸10Xの方向の焦線は、光検出面10aのどちら側(奥(ホログラム面13aから遠ざかる側)あるいは手前(ホログラム面13aに近づく側))にあってもよいが、光スポット2D1、2D3の軸10Yの方向の焦線は、光検出面10aの奥(又は手前)に、光スポット2D2、2D4の軸10Yの方向の焦線は、光検出面10aの手前(又は奥)に位置する。また、ホログラム面13aの各象限131、132、133、134を、それぞれ、軸13Yに沿った短冊状領域に分割し、一つ置きの短冊状領域によって回折されたホロ回折光を光検出面10aの奥に、残りの短冊状領域によって回折されたホロ回折光を光検出面10aの手前に集光させる方式も考えられる。
図2において、各検出セルにより、以下の8個の信号(検出信号)が得られる。
T1=検出セル91で得られる信号
T2=検出セル92で得られる信号
T3=検出セル93で得られる信号
T4=検出セル94で得られる信号
T2’=検出セル92’で得られる信号
T4’=検出セル94’で得られる信号
F1=検出セル95で得られる信号
F2=検出セル96で得られる信号
これらの検出信号を用いて、記録型光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号TE1、DVD−ROM等の再生専用光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号TE2、光ディスクの信号面へのフォーカスエラー信号FE、光ディスクの信号面の再生信号RFが、下記式(4)〜(7)により演算される。
TE1=T4−T2−k×(T4’−T2’) 式(4)
TE2=T1+T3−T2−T4 式(5)
FE=F1−F2 式(6)
RF=T1+T2+T3+T4 式(7)
ここで、係数kは、トラッキング制御時における、対物レンズ7のレンズシフト(以下、対物レンズのレンズシフトを単に「レンズシフト」ともいう)に伴うオフトラックの影響をキャンセルする大きさに設定される。
図3は、本発明の第1の実施の形態において、光ディスクの信号面に対して集束光がディフォーカスするときの光検出面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は光ディスクの信号面が対物レンズから遠ざかる側にある場合、(b)は光ディスクの信号面が対物レンズに近づく側にある場合である。尚、図3においては、+1次ホロ回折光側の光スポットだけが示されているが、−1次ホロ回折光側の光スポットは、+1次ホロ回折光側の光スポットの、点100に関するほぼ点対称な位置となる。図3(a)、(b)において、光分布2d1、2d3は検出セル92、92’、94、94’の上に掛かっていない。これは、光分布2d1、2d3の基点2d1S、2d3Sが他の検出セルに比べて軸10Xに沿って互いに逆方向にずれた検出セル91、93の上に位置していることに起因する。
2層ディスク(DVD−Rやブルーレイ(Blu−ray)ディスク等として商品化された、2つの信号面が数十μmの厚さの接着層(厚さd、屈折率n)を挟んで2層構造になっている光ディスク)の場合、一方の信号面にフォーカシングすると、他方の信号面で反射した光は、往路と復路でそれぞれd/n、往復で2d/nだけディフォーカスした状態で光検出面上に戻ってくる。そして、光検出器の構成によっては、他方の信号面で反射した光が迷光として混入し、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号に大きな影響を及ぼしてしまう。しかし、本実施の形態においては、上記式(4)に基づくトラッキングエラー検出に、検出セル92、92’、94、94’しか使用されていないので、光スポットの半分(2d1、2d3)はトラッキングエラー検出における迷光とはならず、残りの光スポット(2d2、2d4)も対称関係を維持したままトラッキング検出セルに被さるので、トラッキングエラー信号TE1への外乱がキャンセルされる。その結果、2層ディスクにおけるトラッキング制御を安定化させて、トラッキング制御時におけるオフトラックやトラック飛びをなくすことができる。
図4は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置の、光ディスクからの戻り光のホログラム面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は0次Gr回折光の場合、(b)は±1次Gr回折光の場合である(実際には、これらのGr回折光が重なって戻ってくる)。図4(a)に示すように、ホログラム面13aに入射する前の光束(0次Gr回折光2e)には、光ディスク径方向に対応した軸13Xに沿ってシフトする形で、光ディスク8の信号面8a上に形成された案内溝8gによる回折光2ep、2emが重畳している。シフト量は、対物レンズ7の焦点距離をf、光の波長をλ、案内溝8gの光ディスク径方向のピッチをΛとしたとき、fλ/Λで与えられる。当然、ホログラム面13a上での戻り光は、対物レンズ7の開口の外側がカットされるので、対物レンズ7の開口をホログラム面13a上に光線に沿って投影した図形である円7aの内側だけが戻り光になる。0次Gr回折光2eには、その±1次溝回折光2ep、2emと重なる領域(重畳領域)がある。従って、光スポット2bが案内溝8gからオフトラックすると、溝回折光の位相情報が変化し、重畳領域の間で光強度差が発生し、これがトラッキングエラー信号として作用する。図4(b)において、ホログラム面13aには、±1次Gr回折光2e’、2e”とそれらの+1次溝回折光2ep’、2ep”、−1次溝回折光2em’、2em”が戻り光として入射する。±1次溝回折光2ep’、2ep”、2em’、2em”は、0次溝回折光に対し軸13Xに沿ってfλ/Λだけシフトしている。±1次Gr回折光2e’、2e”とそれらの+1次溝回折光2ep’、2ep”、−1次溝回折光2em’、2em”は、軸13Xの方向の幅がwであり、wの大きさを、円7aの半径(開口半径)aの1/3程度に設定すれば、どのようなフォーマットの光ディスクであっても、wがfλ/Λの1/2を超えることはない。従って、±1次Gr回折光2e’、2e”は、それらの±1次溝回折光2ep’、2ep”、2em’、2em”とは重ならず、光スポット2b’、2b”が案内溝8gからオフトラックして溝回折光の位相情報が変化しても、これがトラッキングエラー信号として作用することはない。すなわち、信号面8a上の光スポット2b’、2b”は、案内溝8gに対し、どの位置にあってもよく、従来技術のように案内溝8gに対して位置を調整する必要はないので、直線グレーティング3b、3cの回転調整が不要となる。
図5は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置の、対物レンズのレンズシフトによって発生するトラッキングエラー信号のオフセットを説明するための図であり、(a)は0次Gr回折光のホログラム面上での光分布の様子、(b)は±1次Gr回折光のホログラム面上での光分布の様子、(c)は溝回折光のホログラム面上での光分布の様子をそれぞれ示している。
図5(a)に示すように、対物レンズ7が光軸Lから光ディスク径方向(軸13Xの方向)にεだけシフトすると、光軸Lに沿って対物レンズ7に回転対称に入射するガウシアン分布の光2Aは、光ディスク8の信号面8aで反射した後には2εだけシフト(対物レンズ7の中心軸7cに対してはεだけシフト)した分布の光2Bとなる。従って、ホログラム面13a上の0次Gr回折光2eも2εだけシフトした位置2Eを中心とする光分布となり、かつ、対物レンズ7の開口の、ホログラム面13a上への光線に沿った投影図形である円7aの外側は遮光されている。また、対物レンズ7とホログラム面13aとは一体的に固定されているので、位置2Eはホログラム面13aの分割線13Yからはεだけシフトしている。従って、検出セル92で検出される光量は検出セル94で検出される光量よりも大きくなり、検出セル92、94で得られる信号(T4−T2)だけではオフセットが発生する。しかし、ホログラム面13aの分割線13Yが対物レンズ7と一緒に動くために、そのオフセット量は従来技術の1/3程度である。一方、図5(b)に示すように、ホログラム面13a上の±1次Gr回折光2e’、2e”も2εだけシフトした位置2Eを中心とする光分布となり、かつ、対物レンズ7の開口の、ホログラム面13a上への光線に沿った投影図形である円7aの外側は遮光される。従って、検出セル92’で検出される光量は検出セル94’で検出される光量よりも大きくなり、検出セル92’、94’で得られる信号(T4’−T2’)にもオフセットが発生する。しかし、円7aによる遮光の影響が図5(a)のものよりも遙かに小さくなることが、オフセット量を増大させる作用をなし、検出光量で規格化すると、図5(a)のものの3.5倍程度、従来技術に比べても1.1〜1.2倍程度のオフセットが発生する。そして、上記式(4)によって得られるトラッキングエラー信号TE1は、光スポット2b’、2b”の光量をそれぞれ光スポット2bの光量の1/10とすると、k=5/3.5=1.43の大きさの係数kでレンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルできており、信号(T4’−T2’)にはトラッキングエラー信号が含まれないので、演算に伴う検出感度の劣化もない。
尚、0次Gr回折光2eによるトラッキングエラー信号(T4−T2)にレンズシフトに伴うオフトラックの影響が発生するのは、DVD−RやDVD−RW等の案内溝の深さが浅く、溝ピッチが小さい光ディスクに限られ、DVD−RAM等の案内溝の深さが深く、溝ピッチが大きい光ディスクではほとんど影響が出ない。この現象は±1次Gr回折光2e’、2e”についても同様である。図5(c)に、DVD−RAM装置における±1次Gr回折光2e’、2e”、及びその溝回折光の様子を示す。図5(c)に示すように、±1次Gr回折光2e’、2e”とそれらの+1次溝回折光2ep’、2ep”、−1次溝回折光2em’、2em”は、わずかな間隙を挟むだけで、軸13Xの方向に並んでほぼ開口(円7a)の全面を覆っている。これらの溝回折光2ep’、2ep”、2em’、2em”は、深さが深く、溝ピッチが大きい案内溝8gによる回折によって強度が揃い、結果として、軸13Xの方向の光強度がほぼ一様となるので、信号(T4’−T2’)にも、レンズシフトによって発生するオフトラック出力はほとんどない。従って、上記式(4)は、DVD−RAM等の溝ピッチの大きい光ディスクにも適用できる演算式である。
また、本実施の形態においては、ホログラム面13a上の2つの象限132、134から派生した回折光を元にトラッキングエラー信号を検出しているが、検出セルの配置を工夫すれば、残りの2つの象限においても同様の扱いをすることができ、全ての象限を用いたトラッキングエラー信号の検出が可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態における光ディスク装置について、図1、図6、図7を参照しながら説明する。尚、本実施の形態は、上記第1の実施の形態と比べてホログラムによる光の回折のさせ方が異なるだけで、その他の構成は上記第1の実施の形態と同様であるため、上記第1の実施の形態と同一の部材には同一の参照符号を付し、それらの説明は省略する(図1は、本実施の形態と上記第1の実施の形態で重複するので、その説明は省略する)。
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態における光ディスク装置に用いられる光検出器に形成された光検出パターンと、放射光源から出射されたレーザ光に対する戻り光の当該光検出器上での光分布の様子とを示す図、図6(b)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラムの構成を示す図である。ここで、図6(a)、(b)には、光ディスク側から見た光検出面、ホログラム面が示されている。尚、ホログラム面13a上の±1次Gr回折光2e’、2e”は、図1(f)の状態である。
図6(b)に示すように、ホログラム面13aは、光軸Lとホログラム面13aとの交点130で直交する2直線(13X、13Y)により、4つの象限131、132、133、134に分割されている。軸13Xは光ディスク径方向に平行であり、ホログラム面13a上の戻り光(0次Gr回折光2e)には、光ディスク径方向に対応した軸13Xに沿ってシフトする形で、光ディスク8の信号面8a上に形成された案内溝8gによる溝回折光2ep、2emが重畳している。図6(b)においては、DVD−RやDVD−RW等の狭ピッチフォーマットの光ディスクからの戻り光を例にとって、溝回折光のアウトラインを破線で示している。そして、この光がホログラム面13aを通過することにより、±1次の回折光が発生し、象限131、132、133、134ごとに分割されて光検出基板10上の光検出面10aに入射する。
一方、図6(a)に示すように、光検出面10aには、光軸Lと光検出面10aとの交点100で直交し、軸13X、軸13Yに平行な2直線を軸10X、軸10Yとして、軸10Xのマイナス側に軸10Xに沿った櫛歯状のフォーカス検出セル95、96が交互に配置され(同一参照符合を付した検出セルは電気的に導通されている)、軸10Xのプラス側に方形状のトラッキング検出セル91、92、92’、93、94、94’が配置されている(光検出パターン)。これらのトラッキング検出セル91、92、92’、93、94、94’は、トラッキング検出セル92、94の境界線の中心を中心として180°回転対称な形状をなし、トラッキング検出セル92、92’、94、94’は軸10Yの方向に一列に並び、トラッキング検出セル91、93はこの軸10Yの方向の並びから軸10Xに沿って互いに逆方向にずれている。尚、放射光源1の発光点1aから出射されたレーザ光2は、紙面と平行な面内を軸10Yと平行に進み、反射ミラー12によって光軸Lの方向(点100を通り紙面に直交する方向)に反射する。
ホログラム面13a上の0次Gr回折光2eのうち、ホログラム面13aの象限131によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル91の内部に収まる光スポット2d1に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D1に、ホログラム面13aの象限132によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル92の内部に収まる光スポット2d2に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D2に、ホログラム面13aの象限133によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル93の内部に収まる光スポット2d3に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D3に、ホログラム面13aの象限134によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル94の内部に収まる光スポット2d4に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D4にそれぞれ集光する。
また、ホログラム面13a上の+1次Gr回折光2e’のうち、ホログラム面13aの象限131によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d1’に、ホログラム面13aの象限132によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル94の内部に収まる光スポット2d2’に、ホログラム面13aの象限133によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d3’に、ホログラム面13aの象限134によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル94’の内部に収まる光スポット2d4’にそれぞれ集光する。また、ホログラム面13a上の−1次Gr回折光2e”のうち、ホログラム面13aの象限131によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d1”に、ホログラム面13aの象限132によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル92’の内部に収まる光スポット2d2” に、ホログラム面13aの象限133によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d3”に、ホログラム面13aの象限134によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル92の内部に収まる光スポット2d4”にそれぞれ集光する。
0次Gr回折光2eに関しては、ホログラム面13aの各象限131、132、133、134によって回折される−1次ホロ回折光が集光する光スポット2D1、2D2、2D3、2D4は、それぞれ、+1次ホロ回折光が集光する光スポット2d1、2d2、2d3、2d4の、点100に関するほぼ点対称な位置となる。
これに対して、±1次Gr回折光2e’、2e”のホロ回折光は、0次Gr回折光2eのホロ回折光の集光位置を基点として、+1次Gr回折光2e’のホロ回折光が軸10Yのプラス側に、−1次Gr回折光2e” のホロ回折光が軸10Yのマイナス側にシフトした位置に集光する。
尚、光スポット2D1、2D2、2D3、2D4の軸10Xの方向の焦線は、光検出面10aのどちら側(奥(ホログラム面13aから遠ざかる側)あるいは手前(ホログラム面13aに近づく側))にあってもよいが、光スポット2D1、2D3の軸10Yの方向の焦線は、光検出面10aの奥(又は手前)に、光スポット2D2、2D4の軸10Yの方向の焦線は、光検出面10aの手前(又は奥)に位置する。また、ホログラム面13aの各象限131、132、133、134を、それぞれ、軸13Yに沿った短冊状領域に分割し、一つ置きの短冊状領域によって回折されたホロ回折光を光検出面10aの奥に、残りの短冊状領域によって回折されたホロ回折光を光検出面10aの手前に集光させる方式も考えられる。
本実施の形態における検出セルの名称の定義や信号の検出式は、上記第1の実施の形態と同様であるため、それらの説明は省略する。
また、本実施の形態は、±1次Gr回折光2e’、2e”が軸13Xを乗り越えていること、及び、ホログラムによる光の回折のさせ方が異なる以外は、上記第1の実施の形態と同様であるので、±1次Gr回折光2e’、2e”による検出信号には、レンズシフトの影響によって0次Gr回折光2eの3.5倍程度(検出光量で規格化した場合)のオフセットが発生する一方、オフトラックに関してはオフセットが発生しない。トラッキング検出セル92の内部には光スポット2d2、2d4”が存在し、トラッキング検出セル94の内部には光スポット2d4、2d2’が存在するが、光スポット2d2、2d2’はホログラム面13a上の軸13Xのマイナス側の領域である象限132から発生し、光スポット2d4、2d4”はホログラム面13a上の軸13Xのプラス側の領域である象限134から発生する回折光であるので、レンズシフトによるオフセットは互いに逆極性となる。従って、トラッキング検出セル92、94では、既にレンズシフトに関するキャンセル作用がなされており、トラッキング検出セル92、94で得られる信号(T4−T2)だけでも、レンズシフトに伴うオフトラックの影響をある程度キャンセルできている。残ったオフトラックの影響を補正するのが検出セル92’、94’で得られる信号(T4’−T2’)の項である。信号(T4’−T2’)は、その検出量が小さく、補正量も少ないので、上記第1の実施の形態と同様の大きさの係数k(k=1〜2程度)でオフトラックの影響を完全にキャンセルすることができ、演算に伴うトラッキングエラー信号出力の劣化もない。このように、本実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができ、また、信号面8a上の光スポット2b’、2b”は、案内溝8gに対し、どの位置にあってもよく、従来技術のように案内溝8gに対して位置を調整する必要がないので、直線グレーティング3b、3cの回転調整が不要となる。
尚、上記第1の実施の形態1と異なり、本実施の形態の光ディスク装置によって検出される再生信号には、光スポット2b’、2b”が読み取った信号成分が含まれており、これが再生信号(光スポット2bが読み取った信号)の品質を劣化させることになる。しかし、信号面8a上の光スポット2b’、2b”は、それぞれ、光ディスク回転方向に広がった3つの光スポットからなり、光スポット2b’、2b”によって再生される信号のAC成分はほとんど除去されている。従って、光スポット2b’、2b”が読み取った信号成分の、光スポット2bが読み取った再生信号に与える影響も十分小さく抑えられている。
図7は、本発明の第2の実施の形態において、光ディスクの信号面に対して集束光がディフォーカスするときの光検出面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は光ディスクの信号面が対物レンズに近づく側にある場合、(b)は光ディスクの信号面が対物レンズから遠ざかる側にある場合である。尚、図7においては、+1次ホロ回折光側の光スポットだけが示されているが、−1次ホロ回折光側の光スポットは、+1次ホロ回折光側の光スポットの、点100に関するほぼ点対称な位置となる。図7(a)、(b)において、光分布2d1、2d3は検出セル92、92’、94、94’の上に掛かっていない。これは、光分布2d1、2d3の基点2d1S、2d3Sが他の検出セルに比べて軸10Xに沿って互いに逆方向にずれた検出セル91、93の上に位置していることに起因する。従って、上記第1の実施の形態と同様に、光スポットの半分(2d1、2d3)はトラッキングエラー検出における迷光とはならず、残りの光スポット(2d2、2d4)も対称関係を維持したままトラッキング検出セルに被さるので、トラッキングエラー信号TE1への外乱がキャンセルされる。その結果、2層ディスクにおけるトラッキング制御を安定化させて、トラッキング制御時におけるオフトラックやトラック飛びをなくすことができる。
以上のように、本発明の光ディスク装置は、直線グレーティングの回転調整をしなくても、トラッキングエラー信号の検出出力を損なうことなくレンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルすることができ、各種の光ディスクの記録再生に供される光ディスク装置として有用である。
本発明は、光ディスクに信号を記録し、又は光ディスクに記録された信号を再生するために用いられる光ディスク装置に関する。
従来、この種の光ディスク装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。ここでは、この先行例を原型とし、若干の修正を加えた形で、図8〜図10を参照しながら説明する。
図8(a)は、従来技術における光ディスク装置を示す側面図、図8(b)は、当該光ディスク装置に用いられるグレーティング面に形成されたグレーティングパターンと、当該グレーティング面上での光分布の様子とを示す図、図8(c)は、光ディスクの信号面の構成と、当該信号面上での光分布の様子とを示す図である。
図8に示すように、半導体レーザ等の放射光源1から出射されたレーザ光2は、透明基板3、偏光ビームスプリッタ4のスプリット面4aを順次透過した後、コリメートレンズ5によって集光されて平行光となる。この平行光は、1/4波長板6によって直線偏光(P波)から円偏光に変換された後、対物レンズ7によって集光されて、光ディスク8の信号面8a上に集束する(光スポットを結ぶ)。光ディスク8の信号面8aには、光ディスク8の回転方向(以下「光ディスク回転方向」という)に沿う案内溝8gが光ディスク8の径方向(以下「光ディスク径方向」という)に等ピッチで形成されている。光ディスク8の信号面8aで反射した光は、対物レンズ7を透過し、1/4波長板6によって直線偏光(S波)に変換された後、コリメートレンズ5を経由して集束性の光となる。この集束性の光は、偏光ビームスプリッタ4のスプリット面4aで反射した後、円柱面の中心軸を紙面に平行な面に対して45度傾斜させて配置したシリンドリカルレンズ9を透過し、最小錯乱円の近傍(縦焦線と横焦線の中間位置)に位置する光検出基板10上の光検出面10aに入射する。
透明基板3の表面(グレーティング面3a)には、光ディスク回転方向に対応した軸3Yを境として、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cとが形成されている。そして、放射光源1から出射され透明基板3を透過する光(透過光)の、グレーティング面3a上での光スポットの形状は、グレーティング面3aの中心30を中心とした円2aとなる。それぞれのグレーティングの方位は軸3Yに直交し、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cのグレーティングの位相はπだけずれている(シフトしている)。透明基板3を透過する光(透過光)は、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cとによって回折され、0次回折光(そのまま透過する光)以外に±1次回折光が発生する(以下、グレーティングによる回折光を「Gr回折光」という)。0次Gr回折光の波面は、グレーティングの影響を受けないので、位相の変化はないが、±1次Gr回折光の波面は、軸3Yを境として左右で位相がπだけシフトしている。これらのGr回折光は、光ディスク8の信号面8a上に光スポットを結ぶ。そして、トラッキング制御時において、0次Gr回折光に対応した光スポット2bは案内溝8gの真上に位置し、±1次Gr回折光に対応した光スポット2b’、2b”は、それぞれ案内溝8gを中心として光ディスク径方向に分離した2つの光スポットとなる。光スポット2b’、2b”がそれぞれ2つとなるのは、±1次Gr回折光の波面が中心軸3Yを境として左右で位相がπだけシフトしていることによる。尚、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cの回折効率は、光スポット2b’、2b”の光量がそれぞれ光スポット2bの光量の1/10程度となるように設定されている。
図9(a)は、従来技術における光ディスク装置に用いられる光検出面の構成と、当該光検出面上での光分布の様子とを示す図、図9(b)は、当該光ディスク装置に用いられるシリンドリカルレンズに入射する前の光束を示す図である。シリンドリカルレンズ9に入射する前の光束2c、2c’、2c”は、それぞれ光ディスク8の信号面8a上の光スポット2b、2b’、2b”に対応している。0次Gr回折光2cには、光ディスク径方向に対応した軸9Xに沿ってシフトする形で、光ディスク8の案内溝8gによる回折光2cp、2cmが重畳している(以下、案内溝による回折光を「溝回折光」という)。±1次Gr回折光2c’、2c”の0次溝回折光は、光ディスク回転方向に平行な軸9Yを境として位相がπだけシフトしており、±1次溝回折光は、このπシフトの状態を保ったまま、軸9Xに沿ってシフトする形で0次溝回折光に重畳している。光検出面10a上の光スポット2d、2d’、2d”は、それぞれシリンドリカルレンズ9に入射する前の光束2c、2c’、2c”に対応している。光束2c、2c’、2c” は、シリンドリカルレンズ9を透過することにより、光分布がシリンドリカルレンズ9の円柱面の中心軸に対して反転するので、光検出面10a上の光スポット2d、2d’、2d”は、光束2c、2c’、2c”に対し全体として90度回転した光分布となる(光分布のみならず、対物レンズ7のレンズシフト(以下、対物レンズのレンズシフトを単に「レンズシフト」ともいう)時の光スポットの移動方向も90度回転する)。光検出面10a上には、光検出器11、11’、11”がそれぞれ光スポット2d、2d’、2d”とほぼ同軸となるように配置されている。光検出器11、11’、11”は、軸9X、9Yと平行な直線(但し、軸9Yと平行な直線を10Xとする)によってそれぞれ4つの検出セルに分割されており(それぞれ、検出セル11a、11b、11c、11d、及び、検出セル11a’、11b’、11c’、11d’、及び、検出セル11a”、11b”、11c”、11d”)、分割線の交点は各光スポット2d、2d’、2d”の中心にほぼ一致している。
図9において、各検出セルにより、以下の12個の信号(検出信号)が得られる。
T1=検出セル11aで得られる信号
T2=検出セル11bで得られる信号
T3=検出セル11cで得られる信号
T4=検出セル11dで得られる信号
T1’=検出セル11a’で得られる信号
T2’=検出セル11b’で得られる信号
T3’=検出セル11c’で得られる信号
T4’=検出セル11d’で得られる信号
T1”=検出セル11a”で得られる信号
T2”=検出セル11b”で得られる信号
T3”=検出セル11c”で得られる信号
T4”=検出セル11d”で得られる信号
これらの検出信号を用いて、光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号TE、光ディスクの信号面へのフォーカスエラー信号FE、光ディスクの信号面の再生信号RFが、下記式(1)〜(3)により演算される。
TE=T1+T2−T3−T4
−k×(T1’+T2’−T3’−T4’
+T1”+T2”−T3”−T4”) 式(1)
FE=T1+T3−T2−T4 式(2)
RF=T1+T2+T3+T4 式(3)
ここで、係数kは、トラッキング制御時におけるレンズシフトによって発生するトラッキングエラー信号のオフセットをキャンセルする大きさに設定される。例えば、光スポット2d’、2d”の光量がそれぞれ光スポット2dの光量の1/10程度であるとき、係数kは5程度の大きさである。
図10は、従来技術における光ディスク装置の、レンズシフトによって発生するトラッキングエラー信号のオフセットを説明するための図である(シリンドリカルレンズによる90度の回転を元に戻して説明)。
図10に示すように、対物レンズ7が光軸Lから光ディスク径方向(軸10Xの方向)にεだけシフトすると、光軸Lに沿って対物レンズ7に回転対称に入射するガウシアン分布の光2Aは、光ディスク8の信号面8aで反射した後には2εだけシフト(対物レンズ7の中心軸7cに対してはεだけシフト)した分布の光2Bとなる。従って、光検出器11上の光スポット2dも、2εに比例した量(厳密には、2εに(シリンドリカルレンズ9の非点隔差の半分)/(コリメートレンズ5の焦点距離)を掛けた値)だけシフトした位置2Dを中心とする光分布となり、かつ、対物レンズ7の開口の、光検出面10a上への光線に沿って投影した図形である円7a(εに比例した量だけシフト)の外側は遮光されている。その結果、検出セル11c、11dで検出される光量は検出セル11a、11bで検出される光量よりも大きくなり、検出器11だけで得られるトラッキングエラー信号(TE=T1+T2−T3−T4)ではオフセットが発生する。このオフセットの発生は光検出器11’、11”でも全く同じであり、光検出器11’だけで得られるトラッキングエラー信号(TE=T1’+T2’−T3’−T4’)、光検出器11”だけで得られるトラッキングエラー信号(TE=T1”+T2”−T3”−T4”)でも、検出光量で規格化すると、同じ極性で同じ量のオフセットが発生する。一方、光ディスク8の信号面8a上の光スポットがオフトラックするときに発生するトラッキングエラー信号は、光検出器11だけで得られるトラッキングエラー信号と光検出器11’、11”だけで得られるトラッキングエラー信号とで極性が逆になる。これは、光検出器11’、11”上の光スポットの溝回折光の位相が光ディスク回転方向に平行な軸を境としてπだけシフトしているために、溝回折光の間の干渉関係が反転するからである。従って、上記式(1)によって得られるトラッキングエラー信号は、光検出器11だけで得られるトラッキングエラー信号(T1+T2−T3−T4)に比べ、検出感度を損なうことなく(むしろ検出出力を高めつつ)、レンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルできている。
特開平9−81942号公報
上記のような従来の光ディスク装置には、以下のような問題がある。すなわち、図8において、光スポット2b’、2b”の位置がずれて、当該光スポット2b’、2b”のそれぞれの2つの光スポットの中心が案内溝8gの中間部8lの近傍に位置すると、光検出器11’、11”だけで得られるトラッキングエラー信号の極性が、光検出器11だけで得られるトラッキングエラー信号の極性と同じになる。そして、光スポット2b’、2b”の位置が変わっても、レンズシフトによるトラッキングエラーオフセットの発生の仕方は変わらないので、レンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルするように係数kを決定すると、上記式(1)によって得られるトラッキングエラー信号の検出出力は小さくなり、検出出力がゼロとなることもある。従って、上記のような従来の光ディスク装置においては、光スポット2b’、2b” のそれぞれの2つの光スポットが案内溝8gを中心として対称となるように、直線グレーティング3b、3cが形成されている透明基板3を精度よく回転調整する必要があり、これが光ディスク装置の組み立てを困難にしている。
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、直線グレーティングを回転調整しなくても、トラッキングエラー信号の検出出力を損なうことなくレンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルすることのできる光ディスク装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明に係る光ディスク装置の構成は、放射光源と、回折格子面上に形成された回折格子と、対物レンズと、光分岐手段と、光検出器とを備え、前記放射光源から出射された光は、前記回折格子を透過して、透過光aと+1次回折光bと−1次回折光cとに分離され、前記透過光aと前記+1次回折光bと前記−1次回折光cは、その一部が重なったまま前記対物レンズを経由して光ディスクの信号面上のトラックに集光され、前記信号面上のトラックで反射した光は、前記対物レンズを経由して前記光分岐手段に入射し、前記光分岐手段に入射した光は、その入射位置に応じて、前記透過光aに対応する光が光a1、a2の2つに分岐してそれぞれ前記光検出器上の光検出領域A1、A2に入射し、前記+1次回折光bに対応する光が光b1、b2の2つに分岐してそれぞれ前記光検出器上の光検出領域B1、B2に入射し、前記−1次回折光cに対応する光が光c1、c2の2つに分岐してそれぞれ前記光検出器上の光検出領域C1、C2に入射し、前記光検出領域A1、A2、B1、B2、C1、C2からの検出信号を組み合わせることにより、前記光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号が生成されることを特徴とする。
前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記対物レンズと前記光分岐手段とが一体的に固定されているのが好ましい。
また、前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記光検出領域A1に前記光検出領域B2が定数kを掛けた状態で電気的に導通されており、かつ、前記光検出領域A2に前記光検出領域C1が係数kを掛けた状態で電気的に導通されているのが好ましい。
また、前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記光検出領域A1と前記光検出領域C2が電気的に導通されているか又は同一の光検出領域であり、かつ、前記光検出領域A2と前記光検出領域B1が電気的に導通されているか又は同一の光検出領域であるのが好ましい。また、この場合には、前記光検出領域A1、A2での検出信号の差分をΔT1、前記光検出領域B2、C1での検出信号の差分をΔT4としたとき、前記光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号が、係数kを用いて、ΔT1−k×ΔT4により演算されるのが好ましい。
また、前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記+1次回折光bに対応する前記光分岐手段上の投影領域は、前記対物レンズの半径を超えない幅を有し、かつ、前記対物レンズの中心を通り光ディスク回転方向に対応する直線に沿うのが好ましい。また、この場合には、前記対物レンズの開口を往路の光線に沿って前記回折格子面上に投影したとき、前記回折格子面上の前記回折格子の領域は、前記開口の投影図形の半径を超えない幅を有し、かつ、前記開口の投影図形の中心を通り光ディスク回転方向に対応する直線に沿うのが好ましい。この場合にはさらに、前記回折格子は、光ディスク径方向に沿った直線グレーティングであるのが好ましい。この場合にはさらに、前記回折格子の領域は、前記開口の投影図形の外側に位置しているのが好ましい。この場合にはさらに、前記回折格子は、光ディスク回転方向に対応する直線に沿って複数の短冊状領域に区切られ、一つ置きの短冊状領域では前記回折格子の凹凸が同期しており、隣り合う短冊状領域では前記回折格子の凹凸が1/5〜1/2ピッチだけシフトしているのが好ましい。
また、前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記光分岐手段は、前記対物レンズの中心を通り光ディスク回転方向と平行な直線によって2つの領域に分割され、それぞれの領域で、前記光a1と前記光a2、前記光b1と前記光b2、前記光c1と前記光c2がそれぞれ分岐されるのが好ましい。
また、前記本発明の光ディスク装置の構成においては、前記光検出領域A1、A2での検出信号の差分をΔT1、前記光検出領域B1、B2での検出信号の差分をΔT2、前記光検出領域C1、C2での検出信号の差分をΔT3としたとき、前記光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号が、係数kを用いて、ΔT1−k×(ΔT2+ΔT3)により演算されるのが好ましい。
本発明によれば、直線グレーティングを回転調整しなくても、トラッキングエラー信号の検出出力を損なうことなくレンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルすることのできる光ディスク装置を提供することができる。
以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。尚、従来技術における光ディスク装置と共通の構成部材については、同一の参照符号を付して説明する。
[第1の実施の形態]
図1(a)は、本発明の実施の形態における光ディスク装置を示す側面図、図1(b)は、当該光ディスク装置の光源部分を示す平面図、図1(c)は、当該光ディスク装置に用いられるグレーティング面に形成されたグレーティングパターンと、当該グレーティング面上での光分布の様子とを示す図、図1(d)は、光ディスクの信号面の構成と、当該信号面上での光分布の様子とを示す図、図1(e)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラム面での、グレーティングパターンのピッチが大きい場合の光分布の様子を示す図、図1(f)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラム面での、グレーティングパターンのピッチが小さい場合の光分布の様子を示す図である。
図1(a)に示すように、本実施の形態における光ディスク装置は、半導体レーザ等からなる放射光源1と、放射光源1から出射された光を回折する回折格子と、回折格子によって回折された光を平行光に変換するコリメートレンズ5と、直線偏光を円偏光に、円偏光を直線偏光に変換する1/4波長板6と、前記平行光を光ディスク8の信号面8a上のトラックに集光する対物レンズ7と、光ディスク8の信号面8aで反射した光(戻り光)を回折するホログラムと、ホログラムによって回折された戻り光が集光する光検出器とを備えている。
図1(a)、(b)に示すように、光検出器は、光検出基板10と、光検出基板10上に形成された光検出面10aとを備えている。光検出面10aは、コリメートレンズ5の焦平面位置(すなわち、図1(b)に示した放射光源1の発光点1aの仮想発光点位置)にほぼ位置している。放射光源1は、光検出基板10上に取り付けられている。また、光検出基板10上には、放射光源1に近接して、放射光源1から出射されたレーザ光を反射してその光路を折り曲げる反射ミラー12が取り付けられている。
図1(a)、(c)に示すように、回折格子は、透明基板3と、透明基板3の表面(グレーティング面3a)に形成された直線グレーティング3b、3cとを備えている。ここで、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cは、グレーティング面3aの中心30を通る軸3Yに沿って分離して形成されている。より具体的には、対物レンズ7の開口を入射光線(往路の光線)に沿ってグレーティング面3a上に投影した図形を円2aとすると、直線グレーティング3b、3cの領域は円2aの外側に位置している。それぞれのグレーティングは、等ピッチであり、その方位は軸3Yに直交している(すなわち、軸3Yと直交する軸3Xに平行である)。また、直線グレーティング3b、3cは、それぞれ、軸3Yに沿って20μm(又は20μm〜40μm)置きに2つの領域に分けられており、2つの領域間でグレーティングの位相が1/4ピッチ(すなわち、π/2)だけシフトしている(位相シフトは、1/5〜1/2ピッチ程度であるのが好ましい)。直線グレーティング3bと直線グレーティング3cの軸3Xの方向の幅は円2aの直径の1/3程度である(少なくとも円2aの直径の1/2を超えることはない)。また、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cは、軸3Yに沿った断面がブレーズ形状(鋸歯状)か鋸歯状に内接した階段形状であり、その回折効率は、光スポット2b’、2b”の光量がそれぞれ光スポット2bの光量の1/10程度となるように設定されている(本実施の形態においては、従来技術と異なり、グレーティングの領域が限定されているので、回折光の光量が少なく、これを補うために、ブレーズ形状等の高回折効率の断面が採用されている)。
図1(a)、(e)、(f)に示すように、ホログラムは、偏光性ホログラム基板13と、偏光性ホログラム基板13上に形成された、光分岐手段としてのホログラム面13aとを備えている。1/4波長板6は、ホログラム面13aが形成された偏光性ホログラム基板13上に設けられており(1/4波長板6は偏光性ホログラム基板13に貼り合わされており)、これらは、対物レンズ7と同一筐体内に固定され、当該対物レンズ7と一体で移動するように構成されている。
図1に示すように、放射光源1の発光点1aから出射されたレーザ光2は、反射ミラー12で反射し、透明基板3を透過した後、コリメートレンズ5によって集光されて平行光となる。この平行光は、偏光性ホログラム基板13を透過し、1/4波長板6によって直線偏光(S波又はP波)から円偏光に変換された後、対物レンズ7によって集光されて、光ディスク8の信号面8a上に集束する(光スポットを結ぶ)。放射光源1から出射され透明基板3を透過する光(透過光)の、グレーティング面3a上での光スポットの形状は、グレーティング面3aの中心30を中心とした円2aとなる。透明基板3を透過するレーザ光2の、グレーティング面3aでの光分布は円2aの外側にも広がっており、この広がった成分が、直線グレーティング3bと直線グレーティング3cを通過することによって回折され、±1次回折光が発生する(以下、グレーティングによる回折光を「Gr回折光」という)。そして、これらの回折光のうち、対物レンズ7の開口内に入射できるのは、光軸側に回折する成分(直線グレーティング3bでの−1次Gr回折光、直線グレーティング3cでの+1次Gr回折光)であり、それらの成分は、円2aの内側を透過する成分(回折はしないが、便宜上、「0次Gr回折光」と呼ぶ)と合わさって、光ディスク8の信号面8a上に光スポットを結ぶ。
光ディスク8の信号面8aで反射した光は、対物レンズ7を透過し、1/4波長板6によって直線偏光(P波又はS波)に変換された後、ホログラム面13aに入射する。ホログラム面13aに入射した前記直線偏光は、当該ホログラム面13aによって回折されて、光軸Lを対称軸とする+1次回折光2’及び−1次回折光2”に分岐される(以下、ホログラムによる回折光を「ホロ回折光」という)。そして、各ホロ回折光は、コリメートレンズ5を経由して集束性の光となり、光検出基板10上の光検出面10aに入射する。
トラッキング制御時において、0次Gr回折光に対応した光スポット2bは案内溝8gの真上に位置するが、±1次Gr回折光に対応した光スポット2b’、2b”(それぞれ、直線グレーティング3cでの+1次Gr回折光、直線グレーティング3bでの−1次Gr回折光に対応)は案内溝8gの真上に位置しなくてもよい。尚、±1次Gr回折光の波面は、それぞれ、軸3Yに沿って20μm置きに2つの領域に分けられ、2つの領域間で位相がπ/2だけシフトするので、それらの集束光は、案内溝8gの方位(光ディスク回転方向)に分離した3つの光スポットとなる(2つの領域間で位相がπだけシフトしているときは、2つの光スポットとなる)。光ディスク8の信号面8aで反射し、対物レンズ7を透過してホログラム面13aに入射する光は、0次Gr回折光2eに±1次Gr回折光2e’、2e”が重畳したものとなっており(Gr回折光2e、2e’、2e”は、それぞれ光スポット2b、2b’、2b”に対応)、±1次Gr回折光2e’、2e”の光ディスク径方向(軸13Xの方向)に沿った幅は0次Gr回折光2eの直径(対物レンズ7の開口直径)の1/3程度である。直線グレーティング3b、3cのピッチが大きい場合には、±1次Gr回折光2e’、2e”は分離して重ならないが(図1(e)参照)、直線グレーティング3b、3cのピッチが小さくなると、±1次Gr回折光2e’、2e”はともに軸13Xを乗り越えて重なった分布となる(図1(f)参照)。
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置に用いられる光検出器に形成された光検出パターンと、放射光源から出射されたレーザ光に対する戻り光の当該光検出器上での光分布の様子とを示す図、図2(b)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラムの構成を示す図である。ここで、図2(a)、(b)には、光ディスク側から見た光検出面、ホログラム面が示されている。尚、ホログラム面13a上の±1次Gr回折光2e’、2e”は、図1(e)の状態である。
図2(b)に示すように、ホログラム面13aは、光軸Lとホログラム面13aとの交点130で直交する2直線(13X、13Y)により、4つの象限131、132、133、134に分割されている。軸13Xは光ディスク径方向に平行であり、ホログラム面13a上の戻り光(0次Gr回折光2e)には、光ディスク径方向に対応した軸13Xに沿ってシフトする形で、光ディスク8の信号面8a上に形成された案内溝8gによる回折光2ep、2emが重畳している(以下、案内溝による回折光を「溝回折光」という)。図2(b)においては、DVD−RやDVD−RW等の狭ピッチフォーマットの光ディスクからの戻り光を例にとって、溝回折光のアウトラインを破線で示している。そして、この光がホログラム面13aを通過することにより、±1次の回折光が発生し、象限131、132、133、134ごとに分割されて光検出基板10上の光検出面10aに入射する。
一方、図2(a)に示すように、光検出面10aには、光軸Lと光検出面10aとの交点100で直交し、軸13X、軸13Yに平行な2直線を軸10X、軸10Yとして、軸10Xのマイナス側に軸10Xに沿った櫛歯状のフォーカス検出セル95、96が交互に配置され(同一参照符合を付した検出セルは電気的に導通されている)、軸10Xのプラス側に方形状のトラッキング検出セル91、92、92’、93、94、94’が配置されている(光検出パターン)。これらのトラッキング検出セル91、92、92’、93、94、94’は、トラッキング検出セル92、94の境界線の中心を中心として180°回転対称な形状をなし、トラッキング検出セル92、92’、94、94’は軸10Yの方向に一列に並び、トラッキング検出セル91、93はこの軸10Yの方向の並びから軸10Xに沿って互いに逆方向にずれている。尚、放射光源1の発光点1aから出射されたレーザ光2は、紙面と平行な面内を軸10Yと平行に進み、反射ミラー12によって光軸Lの方向(点100を通り紙面に直交する方向)に反射する。
ホログラム面13a上の0次Gr回折光2eのうち、ホログラム面13aの象限131によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル91の内部に収まる光スポット2d1に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D1に、ホログラム面13aの象限132によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル92の内部に収まる光スポット2d2に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D2に、ホログラム面13aの象限133によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル93の内部に収まる光スポット2d3に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D3に、ホログラム面13aの象限134によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル94の内部に収まる光スポット2d4に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D4にそれぞれ集光する。
また、ホログラム面13a上の+1次Gr回折光2e’のうち、ホログラム面13aの象限131によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d1’に、ホログラム面13aの象限132によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル92’の内部に収まる光スポット2d2’にそれぞれ集光する。また、ホログラム面13a上の−1次Gr回折光2e”のうち、ホログラム面13aの象限133によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d3”に、ホログラム面13aの象限134によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル94’の内部に収まる光スポット2d4”にそれぞれ集光する。
0次Gr回折光2eに関しては、ホログラム面13aの各象限131、132、133、134によって回折される−1次ホロ回折光が集光する光スポット2D1、2D2、2D3、2D4は、それぞれ、+1次ホロ回折光が集光する光スポット2d1、2d2、2d3、2d4の、点100に関するほぼ点対称な位置となる。
これに対して、±1次Gr回折光2e’、2e”のホロ回折光は、0次Gr回折光2eのホロ回折光の集光位置を基点として、+1次Gr回折光2e’のホロ回折光が軸10Yのプラス側に、−1次Gr回折光2e” のホロ回折光が軸10Yのマイナス側にシフトした位置に集光する。
尚、光スポット2D1、2D2、2D3、2D4の軸10Xの方向の焦線は、光検出面10aのどちら側(奥(ホログラム面13aから遠ざかる側)あるいは手前(ホログラム面13aに近づく側))にあってもよいが、光スポット2D1、2D3の軸10Yの方向の焦線は、光検出面10aの奥(又は手前)に、光スポット2D2、2D4の軸10Yの方向の焦線は、光検出面10aの手前(又は奥)に位置する。また、ホログラム面13aの各象限131、132、133、134を、それぞれ、軸13Yに沿った短冊状領域に分割し、一つ置きの短冊状領域によって回折されたホロ回折光を光検出面10aの奥に、残りの短冊状領域によって回折されたホロ回折光を光検出面10aの手前に集光させる方式も考えられる。
図2において、各検出セルにより、以下の8個の信号(検出信号)が得られる。
T1=検出セル91で得られる信号
T2=検出セル92で得られる信号
T3=検出セル93で得られる信号
T4=検出セル94で得られる信号
T2’=検出セル92’で得られる信号
T4’=検出セル94’で得られる信号
F1=検出セル95で得られる信号
F2=検出セル96で得られる信号
これらの検出信号を用いて、記録型光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号TE1、DVD−ROM等の再生専用光ディスクのトラックへのトラッキングエラー信号TE2、光ディスクの信号面へのフォーカスエラー信号FE、光ディスクの信号面の再生信号RFが、下記式(4)〜(7)により演算される。
TE1=T4−T2−k×(T4’−T2’) 式(4)
TE2=T1+T3−T2−T4 式(5)
FE=F1−F2 式(6)
RF=T1+T2+T3+T4 式(7)
ここで、係数kは、トラッキング制御時における、対物レンズ7のレンズシフト(以下、対物レンズのレンズシフトを単に「レンズシフト」ともいう)に伴うオフトラックの影響をキャンセルする大きさに設定される。
図3は、本発明の第1の実施の形態において、光ディスクの信号面に対して集束光がディフォーカスするときの光検出面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は光ディスクの信号面が対物レンズから遠ざかる側にある場合、(b)は光ディスクの信号面が対物レンズに近づく側にある場合である。尚、図3においては、+1次ホロ回折光側の光スポットだけが示されているが、−1次ホロ回折光側の光スポットは、+1次ホロ回折光側の光スポットの、点100に関するほぼ点対称な位置となる。図3(a)、(b)において、光分布2d1、2d3は検出セル92、92’、94、94’の上に掛かっていない。これは、光分布2d1、2d3の基点2d1S、2d3Sが他の検出セルに比べて軸10Xに沿って互いに逆方向にずれた検出セル91、93の上に位置していることに起因する。
2層ディスク(DVD−Rやブルーレイ(Blu−ray)ディスク等として商品化された、2つの信号面が数十μmの厚さの接着層(厚さd、屈折率n)を挟んで2層構造になっている光ディスク)の場合、一方の信号面にフォーカシングすると、他方の信号面で反射した光は、往路と復路でそれぞれd/n、往復で2d/nだけディフォーカスした状態で光検出面上に戻ってくる。そして、光検出器の構成によっては、他方の信号面で反射した光が迷光として混入し、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号に大きな影響を及ぼしてしまう。しかし、本実施の形態においては、上記式(4)に基づくトラッキングエラー検出に、検出セル92、92’、94、94’しか使用されていないので、光スポットの半分(2d1、2d3)はトラッキングエラー検出における迷光とはならず、残りの光スポット(2d2、2d4)も対称関係を維持したままトラッキング検出セルに被さるので、トラッキングエラー信号TE1への外乱がキャンセルされる。その結果、2層ディスクにおけるトラッキング制御を安定化させて、トラッキング制御時におけるオフトラックやトラック飛びをなくすことができる。
図4は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置の、光ディスクからの戻り光のホログラム面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は0次Gr回折光の場合、(b)は±1次Gr回折光の場合である(実際には、これらのGr回折光が重なって戻ってくる)。図4(a)に示すように、ホログラム面13aに入射する前の光束(0次Gr回折光2e)には、光ディスク径方向に対応した軸13Xに沿ってシフトする形で、光ディスク8の信号面8a上に形成された案内溝8gによる回折光2ep、2emが重畳している。シフト量は、対物レンズ7の焦点距離をf、光の波長をλ、案内溝8gの光ディスク径方向のピッチをΛとしたとき、fλ/Λで与えられる。当然、ホログラム面13a上での戻り光は、対物レンズ7の開口の外側がカットされるので、対物レンズ7の開口をホログラム面13a上に光線に沿って投影した図形である円7aの内側だけが戻り光になる。0次Gr回折光2eには、その±1次溝回折光2ep、2emと重なる領域(重畳領域)がある。従って、光スポット2bが案内溝8gからオフトラックすると、溝回折光の位相情報が変化し、重畳領域の間で光強度差が発生し、これがトラッキングエラー信号として作用する。図4(b)において、ホログラム面13aには、±1次Gr回折光2e’、2e”とそれらの+1次溝回折光2ep’、2ep”、−1次溝回折光2em’、2em”が戻り光として入射する。±1次溝回折光2ep’、2ep”、2em’、2em”は、0次溝回折光に対し軸13Xに沿ってfλ/Λだけシフトしている。±1次Gr回折光2e’、2e”とそれらの+1次溝回折光2ep’、2ep”、−1次溝回折光2em’、2em”は、軸13Xの方向の幅がwであり、wの大きさを、円7aの半径(開口半径)aの1/3程度に設定すれば、どのようなフォーマットの光ディスクであっても、wがfλ/Λの1/2を超えることはない。従って、±1次Gr回折光2e’、2e”は、それらの±1次溝回折光2ep’、2ep”、2em’、2em”とは重ならず、光スポット2b’、2b”が案内溝8gからオフトラックして溝回折光の位相情報が変化しても、これがトラッキングエラー信号として作用することはない。すなわち、信号面8a上の光スポット2b’、2b”は、案内溝8gに対し、どの位置にあってもよく、従来技術のように案内溝8gに対して位置を調整する必要はないので、直線グレーティング3b、3cの回転調整が不要となる。
図5は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置の、対物レンズのレンズシフトによって発生するトラッキングエラー信号のオフセットを説明するための図であり、(a)は0次Gr回折光のホログラム面上での光分布の様子、(b)は±1次Gr回折光のホログラム面上での光分布の様子、(c)は溝回折光のホログラム面上での光分布の様子をそれぞれ示している。
図5(a)に示すように、対物レンズ7が光軸Lから光ディスク径方向(軸13Xの方向)にεだけシフトすると、光軸Lに沿って対物レンズ7に回転対称に入射するガウシアン分布の光2Aは、光ディスク8の信号面8aで反射した後には2εだけシフト(対物レンズ7の中心軸7cに対してはεだけシフト)した分布の光2Bとなる。従って、ホログラム面13a上の0次Gr回折光2eも2εだけシフトした位置2Eを中心とする光分布となり、かつ、対物レンズ7の開口の、ホログラム面13a上への光線に沿った投影図形である円7aの外側は遮光されている。また、対物レンズ7とホログラム面13aとは一体的に固定されているので、位置2Eはホログラム面13aの分割線13Yからはεだけシフトしている。従って、検出セル92で検出される光量は検出セル94で検出される光量よりも大きくなり、検出セル92、94で得られる信号(T4−T2)だけではオフセットが発生する。しかし、ホログラム面13aの分割線13Yが対物レンズ7と一緒に動くために、そのオフセット量は従来技術の1/3程度である。一方、図5(b)に示すように、ホログラム面13a上の±1次Gr回折光2e’、2e”も2εだけシフトした位置2Eを中心とする光分布となり、かつ、対物レンズ7の開口の、ホログラム面13a上への光線に沿った投影図形である円7aの外側は遮光される。従って、検出セル92’で検出される光量は検出セル94’で検出される光量よりも大きくなり、検出セル92’、94’で得られる信号(T4’−T2’)にもオフセットが発生する。しかし、円7aによる遮光の影響が図5(a)のものよりも遙かに小さくなることが、オフセット量を増大させる作用をなし、検出光量で規格化すると、図5(a)のものの3.5倍程度、従来技術に比べても1.1〜1.2倍程度のオフセットが発生する。そして、上記式(4)によって得られるトラッキングエラー信号TE1は、光スポット2b’、2b”の光量をそれぞれ光スポット2bの光量の1/10とすると、k=5/3.5=1.43の大きさの係数kでレンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルできており、信号(T4’−T2’)にはトラッキングエラー信号が含まれないので、演算に伴う検出感度の劣化もない。
尚、0次Gr回折光2eによるトラッキングエラー信号(T4−T2)にレンズシフトに伴うオフトラックの影響が発生するのは、DVD−RやDVD−RW等の案内溝の深さが浅く、溝ピッチが小さい光ディスクに限られ、DVD−RAM等の案内溝の深さが深く、溝ピッチが大きい光ディスクではほとんど影響が出ない。この現象は±1次Gr回折光2e’、2e”についても同様である。図5(c)に、DVD−RAM装置における±1次Gr回折光2e’、2e”、及びその溝回折光の様子を示す。図5(c)に示すように、±1次Gr回折光2e’、2e”とそれらの+1次溝回折光2ep’、2ep”、−1次溝回折光2em’、2em”は、わずかな間隙を挟むだけで、軸13Xの方向に並んでほぼ開口(円7a)の全面を覆っている。これらの溝回折光2ep’、2ep”、2em’、2em”は、深さが深く、溝ピッチが大きい案内溝8gによる回折によって強度が揃い、結果として、軸13Xの方向の光強度がほぼ一様となるので、信号(T4’−T2’)にも、レンズシフトによって発生するオフトラック出力はほとんどない。従って、上記式(4)は、DVD−RAM等の溝ピッチの大きい光ディスクにも適用できる演算式である。
また、本実施の形態においては、ホログラム面13a上の2つの象限132、134から派生した回折光を元にトラッキングエラー信号を検出しているが、検出セルの配置を工夫すれば、残りの2つの象限においても同様の扱いをすることができ、全ての象限を用いたトラッキングエラー信号の検出が可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態における光ディスク装置について、図1、図6、図7を参照しながら説明する。尚、本実施の形態は、上記第1の実施の形態と比べてホログラムによる光の回折のさせ方が異なるだけで、その他の構成は上記第1の実施の形態と同様であるため、上記第1の実施の形態と同一の部材には同一の参照符号を付し、それらの説明は省略する(図1は、本実施の形態と上記第1の実施の形態で重複するので、その説明は省略する)。
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態における光ディスク装置に用いられる光検出器に形成された光検出パターンと、放射光源から出射されたレーザ光に対する戻り光の当該光検出器上での光分布の様子とを示す図、図6(b)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラムの構成を示す図である。ここで、図6(a)、(b)には、光ディスク側から見た光検出面、ホログラム面が示されている。尚、ホログラム面13a上の±1次Gr回折光2e’、2e”は、図1(f)の状態である。
図6(b)に示すように、ホログラム面13aは、光軸Lとホログラム面13aとの交点130で直交する2直線(13X、13Y)により、4つの象限131、132、133、134に分割されている。軸13Xは光ディスク径方向に平行であり、ホログラム面13a上の戻り光(0次Gr回折光2e)には、光ディスク径方向に対応した軸13Xに沿ってシフトする形で、光ディスク8の信号面8a上に形成された案内溝8gによる溝回折光2ep、2emが重畳している。図6(b)においては、DVD−RやDVD−RW等の狭ピッチフォーマットの光ディスクからの戻り光を例にとって、溝回折光のアウトラインを破線で示している。そして、この光がホログラム面13aを通過することにより、±1次の回折光が発生し、象限131、132、133、134ごとに分割されて光検出基板10上の光検出面10aに入射する。
一方、図6(a)に示すように、光検出面10aには、光軸Lと光検出面10aとの交点100で直交し、軸13X、軸13Yに平行な2直線を軸10X、軸10Yとして、軸10Xのマイナス側に軸10Xに沿った櫛歯状のフォーカス検出セル95、96が交互に配置され(同一参照符合を付した検出セルは電気的に導通されている)、軸10Xのプラス側に方形状のトラッキング検出セル91、92、92’、93、94、94’が配置されている(光検出パターン)。これらのトラッキング検出セル91、92、92’、93、94、94’は、トラッキング検出セル92、94の境界線の中心を中心として180°回転対称な形状をなし、トラッキング検出セル92、92’、94、94’は軸10Yの方向に一列に並び、トラッキング検出セル91、93はこの軸10Yの方向の並びから軸10Xに沿って互いに逆方向にずれている。尚、放射光源1の発光点1aから出射されたレーザ光2は、紙面と平行な面内を軸10Yと平行に進み、反射ミラー12によって光軸Lの方向(点100を通り紙面に直交する方向)に反射する。
ホログラム面13a上の0次Gr回折光2eのうち、ホログラム面13aの象限131によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル91の内部に収まる光スポット2d1に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D1に、ホログラム面13aの象限132によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル92の内部に収まる光スポット2d2に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D2に、ホログラム面13aの象限133によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル93の内部に収まる光スポット2d3に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D3に、ホログラム面13aの象限134によって回折された+1次ホロ回折光は、トラッキング検出セル94の内部に収まる光スポット2d4に、−1次ホロ回折光は、フォーカス検出セル95、96の境界を跨る光スポット2D4にそれぞれ集光する。
また、ホログラム面13a上の+1次Gr回折光2e’のうち、ホログラム面13aの象限131によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d1’に、ホログラム面13aの象限132によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル94の内部に収まる光スポット2d2’に、ホログラム面13aの象限133によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d3’に、ホログラム面13aの象限134によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル94’の内部に収まる光スポット2d4’にそれぞれ集光する。また、ホログラム面13a上の−1次Gr回折光2e”のうち、ホログラム面13aの象限131によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d1”に、ホログラム面13aの象限132によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル92’の内部に収まる光スポット2d2” に、ホログラム面13aの象限133によって回折されたホロ回折光は、検出セルの外部の光スポット2d3”に、ホログラム面13aの象限134によって回折されたホロ回折光は、トラッキング検出セル92の内部に収まる光スポット2d4”にそれぞれ集光する。
0次Gr回折光2eに関しては、ホログラム面13aの各象限131、132、133、134によって回折される−1次ホロ回折光が集光する光スポット2D1、2D2、2D3、2D4は、それぞれ、+1次ホロ回折光が集光する光スポット2d1、2d2、2d3、2d4の、点100に関するほぼ点対称な位置となる。
これに対して、±1次Gr回折光2e’、2e”のホロ回折光は、0次Gr回折光2eのホロ回折光の集光位置を基点として、+1次Gr回折光2e’のホロ回折光が軸10Yのプラス側に、−1次Gr回折光2e” のホロ回折光が軸10Yのマイナス側にシフトした位置に集光する。
尚、光スポット2D1、2D2、2D3、2D4の軸10Xの方向の焦線は、光検出面10aのどちら側(奥(ホログラム面13aから遠ざかる側)あるいは手前(ホログラム面13aに近づく側))にあってもよいが、光スポット2D1、2D3の軸10Yの方向の焦線は、光検出面10aの奥(又は手前)に、光スポット2D2、2D4の軸10Yの方向の焦線は、光検出面10aの手前(又は奥)に位置する。また、ホログラム面13aの各象限131、132、133、134を、それぞれ、軸13Yに沿った短冊状領域に分割し、一つ置きの短冊状領域によって回折されたホロ回折光を光検出面10aの奥に、残りの短冊状領域によって回折されたホロ回折光を光検出面10aの手前に集光させる方式も考えられる。
本実施の形態における検出セルの名称の定義や信号の検出式は、上記第1の実施の形態と同様であるため、それらの説明は省略する。
また、本実施の形態は、±1次Gr回折光2e’、2e”が軸13Xを乗り越えていること、及び、ホログラムによる光の回折のさせ方が異なる以外は、上記第1の実施の形態と同様であるので、±1次Gr回折光2e’、2e”による検出信号には、レンズシフトの影響によって0次Gr回折光2eの3.5倍程度(検出光量で規格化した場合)のオフセットが発生する一方、オフトラックに関してはオフセットが発生しない。トラッキング検出セル92の内部には光スポット2d2、2d4”が存在し、トラッキング検出セル94の内部には光スポット2d4、2d2’が存在するが、光スポット2d2、2d2’はホログラム面13a上の軸13Xのマイナス側の領域である象限132から発生し、光スポット2d4、2d4”はホログラム面13a上の軸13Xのプラス側の領域である象限134から発生する回折光であるので、レンズシフトによるオフセットは互いに逆極性となる。従って、トラッキング検出セル92、94では、既にレンズシフトに関するキャンセル作用がなされており、トラッキング検出セル92、94で得られる信号(T4−T2)だけでも、レンズシフトに伴うオフトラックの影響をある程度キャンセルできている。残ったオフトラックの影響を補正するのが検出セル92’、94’で得られる信号(T4’−T2’)の項である。信号(T4’−T2’)は、その検出量が小さく、補正量も少ないので、上記第1の実施の形態と同様の大きさの係数k(k=1〜2程度)でオフトラックの影響を完全にキャンセルすることができ、演算に伴うトラッキングエラー信号出力の劣化もない。このように、本実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができ、また、信号面8a上の光スポット2b’、2b”は、案内溝8gに対し、どの位置にあってもよく、従来技術のように案内溝8gに対して位置を調整する必要がないので、直線グレーティング3b、3cの回転調整が不要となる。
尚、上記第1の実施の形態1と異なり、本実施の形態の光ディスク装置によって検出される再生信号には、光スポット2b’、2b”が読み取った信号成分が含まれており、これが再生信号(光スポット2bが読み取った信号)の品質を劣化させることになる。しかし、信号面8a上の光スポット2b’、2b”は、それぞれ、光ディスク回転方向に広がった3つの光スポットからなり、光スポット2b’、2b”によって再生される信号のAC成分はほとんど除去されている。従って、光スポット2b’、2b”が読み取った信号成分の、光スポット2bが読み取った再生信号に与える影響も十分小さく抑えられている。
図7は、本発明の第2の実施の形態において、光ディスクの信号面に対して集束光がディフォーカスするときの光検出面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は光ディスクの信号面が対物レンズに近づく側にある場合、(b)は光ディスクの信号面が対物レンズから遠ざかる側にある場合である。尚、図7においては、+1次ホロ回折光側の光スポットだけが示されているが、−1次ホロ回折光側の光スポットは、+1次ホロ回折光側の光スポットの、点100に関するほぼ点対称な位置となる。図7(a)、(b)において、光分布2d1、2d3は検出セル92、92’、94、94’の上に掛かっていない。これは、光分布2d1、2d3の基点2d1S、2d3Sが他の検出セルに比べて軸10Xに沿って互いに逆方向にずれた検出セル91、93の上に位置していることに起因する。従って、上記第1の実施の形態と同様に、光スポットの半分(2d1、2d3)はトラッキングエラー検出における迷光とはならず、残りの光スポット(2d2、2d4)も対称関係を維持したままトラッキング検出セルに被さるので、トラッキングエラー信号TE1への外乱がキャンセルされる。その結果、2層ディスクにおけるトラッキング制御を安定化させて、トラッキング制御時におけるオフトラックやトラック飛びをなくすことができる。
以上のように、本発明の光ディスク装置は、直線グレーティングの回転調整をしなくても、トラッキングエラー信号の検出出力を損なうことなくレンズシフトに伴うオフトラックの影響をキャンセルすることができ、各種の光ディスクの記録再生に供される光ディスク装置として有用である。
図1(a)は、本発明の実施の形態における光ディスク装置を示す側面図、図1(b)は、当該光ディスク装置の光源部分を示す平面図、図1(c)は、当該光ディスク装置に用いられるグレーティング面に形成されたグレーティングパターンと、当該グレーティング面上での光分布の様子とを示す図、図1(d)は、光ディスクの信号面の構成と、当該信号面上での光分布の様子とを示す図、図1(e)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラム面での、グレーティングパターンのピッチが大きい場合の光分布の様子を示す図、図1(f)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラム面での、グレーティングパターンのピッチが小さい場合の光分布の様子を示す図である。
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置に用いられる光検出器に形成された光検出パターンと、放射光源から出射されたレーザ光に対する戻り光の当該光検出器上での光分布の様子とを示す図、図2(b)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラムの構成を示す図である。
図3は、本発明の第1の実施の形態において、光ディスクの信号面に対して集束光がディフォーカスするときの光検出面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は光ディスクの信号面が対物レンズから遠ざかる側にある場合、(b)は光ディスクの信号面が対物レンズに近づく側にある場合である。
図4は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置の、光ディスクからの戻り光のホログラム面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は0次Gr回折光の場合、(b)は±1次Gr回折光の場合である。
図5は、本発明の第1の実施の形態における光ディスク装置の、対物レンズのレンズシフトによって発生するトラッキングエラー信号のオフセットを説明するための図であり、(a)は0次Gr回折光のホログラム面上での光分布の様子、(b)は±1次Gr回折光のホログラム面上での光分布の様子、(c)は溝回折光のホログラム面上での光分布の様子をそれぞれ示している。
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態における光ディスク装置に用いられる光検出器に形成された光検出パターンと、放射光源から出射されたレーザ光に対する戻り光の当該光検出器上での光分布の様子とを示す図、図6(b)は、当該光ディスク装置に用いられるホログラムの構成を示す図である。
図7は、本発明の第2の実施の形態において、光ディスクの信号面に対して集束光がディフォーカスするときの光検出面上での光分布の様子を示す図であり、(a)は光ディスクの信号面が対物レンズに近づく側にある場合、(b)は光ディスクの信号面が対物レンズから遠ざかる側にある場合である。
図8(a)は、従来技術における光ディスク装置を示す側面図、図8(b)は、当該光ディスク装置に用いられるグレーティング面に形成されたグレーティングパターンと、当該グレーティング面上での光分布の様子とを示す図、図8(c)は、光ディスクの信号面の構成と、当該信号面上での光分布の様子とを示す図である。
図9(a)は、従来技術における光ディスク装置に用いられる光検出面の構成と、当該光検出面上での光分布の様子とを示す図、図9(b)は、当該光ディスク装置に用いられるシリンドリカルレンズに入射する前の光束を示す図である。
図10は、従来技術における光ディスク装置の、レンズシフトによって発生するトラッキングエラー信号のオフセットを説明するための図である。