本発明は、安定して高出力を得ることができるレーザ光源装置及び、このレーザ光源装置を用いた画像表示装置に関する。
近年、発振効率が高く、優れたビーム品質を持ち、なおかつ空冷が可能で構造が単純という特徴を持つファイバレーザ光源が、従来使用されてきた固体レーザ光源に変わる近赤外レーザ光源として注目されている。
図13に典型的なファイバレーザ光源の構成模式図を示す。励起用(ポンプ用)LD(Laser
Diode)101から出射されるレーザ光をレーザ媒質である希土類ドープクラッドポンプファイバ103に入射し、反射ミラーであるファイバグレーティング102及び104で構成されたレーザ共振器内で共振させることによりレーザ光が発振する。
ポラライザ105は発振したレーザ光の偏光方向を単一にするために挿入されている。
このファイバレーザ光源は、ビーム品質が良く、なおかつ発振波長スペクトルを出口側のファイバグレーティング104における反射スペクトルの線幅で規定することが可能である。そのため、ファイバレーザ光源を基本波光源とし、非線形光学結晶を用いた高調波発生(波長変換光源と呼ぶ)に非常に適している。
図13の第2高調波発生(Second-Harmonic Generation:
SHG)モジュール108は第2高調波発生を行うための機構で、この機構を用いることで、最終的に2倍の第2高調波107が出射される。
なおかつ、従来の固体レーザでは、レーザの発振波長は、用いるレーザ結晶により規定されていたが、このファイバレーザにおいては、発振波長も一組のファイバグレーティング102及び104によって規定されるため、波長により利得は異なるものの、発振波長を任意に変化することができるという特徴を持っている。
一方、このようなレーザ光の高調波を光源(波長変換光源)としたアプリケーションとして、レーザディスプレイが注目されている(非特許文献1)。
これまでに使用していた白色ランプと比較して、不要な赤外線、紫外線の発生が低く抑えられるため、消費電力を低く抑えることができる上、レーザを用いることで光を効率集光することが可能となり光の利用効率を向上させることができる。
また、発光ダイオードを用いた場合と比較して、レーザは単色光であり、色純度が高いため、ディスプレイ装置の色再現性を向上させることができる。特に緑色光の波長を520〜535nmにすることにより、より深い緑色を表現することが可能となる。
図14に、色度図上の青色光の波長が460nm、赤色光の波長が635nmの場合における、使用する緑色光の色再現範囲を波長別に示す。このような波長は、固体レーザを用いた場合、Nd:YAGやNd:YVO4等を用いた場合の532nmか、Nd:YLFを用いた場合の527nmの2波長しか発生できなかった、特に、YLFはフッ化物結晶で製造が困難であるため、蛍光スペクトルがブロードで(非特許文献2)、自由に発振波長を選択できるファイバレーザが有望となっていた。
ファイバレーザあるいはファイバアンプにおいては、励起光と発振光が同一ファイバ上を伝搬するため特許文献1に示したように、発振した光の一部が不用意な戻り光となって、励起光源に損傷を与えることがある。このため、図15に示すように、レンズ系とミラーを用いて発振光を取り除く回避方法等が検討されてきた。
レーザディスプレイの緑色光源としては、色再現範囲の点で波長が530nmから520nmの範囲であることが望ましいが、ファイバレーザを基本波光源として使用した波長変換光源を使用する場合、前述の波長範囲における基本波である1075nm以下の光では、レーザ媒質である希土類添加ファイバに吸収が存在し、レーザ共振器の(発振)動作が不安定となる。このため、相互作用長であるファイバ長を長くすることができない。この現象は、波長変換光源の場合必須である直線偏光を得るために使用するPANDA(Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)ファイバ等の偏波保持ファイバで顕著となる。
一方、レーザ光の出力を増加させるには励起光を増加させる必要があるが、励起光の波長によってはレーザ媒質である希土類添加ファイバで吸収されなかった励起光が原因となり、ファイバが劣化するという問題があった。図16を用いて劣化のメカニズムを示す。
図16に、希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバと一般的なシングルモード偏波保持ファイバとの融着接続部410を示している。ダブルクラッド偏波保持ファイバではアウタークラッド402に残存励起光408が閉じこめられた状態でインナークラッド403を光が伝搬する構造となっている。
一方、シングルモード偏波保持ファイバと接続した後では、シングルモード偏波保持ファイバの被覆407がない部分において、空気がクラッドとなり残存励起光408が閉じこめられる。しかしながら、被覆407を有する部分でポンプ光がしみ出し、そのエネルギーによってシングルモード偏波保持ファイバが部分的に発熱(たとえば発熱部409)し、劣化する。
例えば、励起光が10Wであるとすると、希土類としてYbを添加したダブルクラッド偏波保持ファイバの吸収量は0.6dB/mであるため、10mのファイバ長で7.5Wの励起光を吸収する。それにより、残存励起光として2.5Wの915nmの光が放射され、シングルモード偏波保持ファイバのクラッドを伝搬することになる。
図13に記載した従来構成の場合、15Wの励起光(915nm)でポンプし、発振した1064nmの出力が6.8Wとなるような場合、連続運転を行ってから20分経過後に融着接続部110、シングルモード偏波保持ファイバ112のプライマリコート(被覆)が過熱し、ファイバが劣化した。
図17に励起光のパワーをパラメータとしたレーザ媒質となるYbドープダブルクラッドファイバのファイバ長と残存励起光との関係を示すプロット図を示す。残存励起光が3.5W〜4Wを超えるとファイバが劣化することが、これまでの調査により分かっている。図17より、ファイバの持つ損失のためにファイバ長を短くせねばならないような場合には、励起光を小さくする必要がある事が分かる。つまり、ファイバの損失が大きな1050nmや1030nmといった波長では、自ずと発生可能な出力は制限を受けることになる。
発振した光がファイバにより吸収されない1070nm以上の光を発振させる場合においては、希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバを長くすることによりファイバの過熱を防止することができる。しかしながら、1060nmや1050nm等の波長変換により緑色を発生させることができるような波長では、希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバの長さを長くすることにより、ファイバ吸収による損失が大きく、発振が不安定になったり、所望の波長で発振したりしないなどの問題点が発生する事が分かっている。また、そのためにファイバが過熱しないような励起光の強度が自ずと決まり、最大出力において制限を受けていた。
このような現象を解決する方法の一例として図18に希土類としてYbを1000ppm程度添加した希土類添加ダブルクラッドファイバの吸収スペクトルを示し、説明する。
励起光としては915nm近辺のレーザダイオード(LD)あるいは976nm付近のレーザダイオードを使用することができる。このとき、このファイバの915nm光の吸収量は0.6dB/m程度であるのに対し、976nm光の吸収量は約1.8dB/mと3倍ほど大きいため、976nm光を使用することでファイバの劣化は解決できると考えられる。
しかしながら、吸収ピークの形状は976nm近辺で急峻であるのに対し、915nm近辺でブロードであるため、励起光LDの温度変化等で発生する励起光の波長変動に対しては、915nm帯(900−950nm)を用いた方がより安定であり、LDの冷却機構を簡素化することができる。そのため装置コスト・消費電力を低減させることができる。以上のように、ファイバレーザ装置の温度安定性と、ファイバレーザで直線偏光かつ6W以上の1075nm以下の光を得る事とを両立させることは従来困難であった。
特許第3012034号公報
Japanese Journal of Applied Physics Vol. 43, No. 8B, 2004, pp. 5904−5906
Rare−earth−doped Fiber lasers and amplifiers, (Marcel Dekker, Inc. 2001年) 145ページ figure10.
本発明の目的は、残存励起光によるファイバ劣化に対する高い信頼性を有し、発振光の出力を増大させることができるレーザ光源装置を提供することである。
本発明の一局面に従うレーザ光源装置は、レーザ活性物質として希土類が添加されたダブルクラッドファイバと、前記ダブルクラッドファイバに励起光を出射し、前記ダブルクラッドファイバを励起するレーザ光源と、前記ダブルクラッドファイバの発振光の波長を決定する一組のファイバグレーティングと、前記ダブルクラッドファイバの発振光を伝搬させるシングルモードファイバと、前記ダブルクラッドファイバの発振光を高調波に変換する波長変換モジュールとを備え、前記レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光が、前記シングルモードファイバに出射されることを阻止する。
本発明は、レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光をシングルモードファイバに出射されることを阻止することにより、高出力光発生時に問題となっていた、ファイバの劣化を防止することが可能となる。この結果、本発明のレーザ光源装置を用いた画像表示装置において、従来の固体レーザと比較して色再現範囲を広げることが可能となる。
さらに、励起光として、希土類ファイバの吸収スペクトルがブロードな915nm帯のレーザ光を使用することができる。このため、励起用レーザの温度を精密に制御する必要がなくなり、ペルチェ素子が不要で消費電力を低減できる。
また、本発明のレーザ光源装置は高効率であることからさらに消費電力を低減することができる。
本発明の実施の形態1のファイバレーザ光源の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態2のファイバレーザ光源の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態3のファイバレーザ光源の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態3のファイバレーザ光源の残存励起光吸収機構の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態4のファイバレーザ光源の残存励起光反射機構の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態5のファイバレーザ光源の残存励起光反射機構の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態6のファイバレーザ光源の残存励起光反射機構の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態7のファイバレーザ光源の残存励起光反射機構の構成を示す模式図である。
図9A及び図9Bは、本発明の実施の形態1〜実施の形態7のファイバレーザ光源の筐体内への各部品の配置方法を示す模式図である。
本発明におけるファイバレーザ光源の波長安定性を示したプロット図である。
本発明におけるファイバレーザ光源を用いた2次元画像表示装置の一例を示す模式図である。
図12Aは、本発明におけるファイバレーザ光源を用いた液晶ディスプレイ装置の一例を示す模式図であり、図12Bは、本発明におけるファイバレーザ光源を用いた装飾用照明装置用光源の一例を示す模式図である。
従来の第2高調波発生装置と組みあわせたファイバレーザ光源の模式構成図である。
S−RGB規格の色再現範囲と緑色光として使用する波長別の色再現範囲との関係を示す色度図である。
従来の光ファイバ増幅器における、発振光の取り出し方法に関する図である。
ダブルクラッド偏波保持ファイバとシングルモード偏波保持ファイバとの接続部分の模式図である。
励起光パワーをパラメータとする、Ybドープファイバ長と残存励起光との関係を示す図である。
Yb添加ダブルクラッドファイバの吸収スペクトルを示すプロット図である。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一部分には同一符号を付し、図面で同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1においては、残存励起光発散・吸収機構として、ファイバの曲率による損失を利用した方法を示している。
図1に、本実施の形態1におけるレーザ光源装置の構成について示す。図1において、本実施の形態におけるレーザ光源装置は、ポンプ用LD(Laser Diode)101、ファイバグレーティング102、Ybドープダブルクラッド偏波保持ファイバ103、ファイバグレーティング104、残存励起光発散・吸収機構(ポンプ光発散・吸収機構)601を備える。本実施の形態のレーザ光源装置は、発振光伝搬ファイバ106を介して、第2高調波発生(Second-Harmonic Generation: SHG)モジュール108に接続する。
ポンプ用LD101で、ダブルクラッド偏波保持ファイバ111のコア部分に希土類としてYbをドープしたダブルクラッド偏波保持ファイバ103(本実施の形態の場合、ファイバ長10m)を励起する。そして、一組のファイバグレーティング102及びファイバグレーティング104で構成された共振器内で、レーザ光を発振させる。本実施の形態の場合、ポンプ用LD101として、発振波長915nmのシングルエミッターレーザダイオード(最大出力10W)を使用している。
ファイバグレーティング102は、ダブルクラッド偏波保持ファイバ111のコア部分にゲルマニウムが添加されており、紫外光に対する感度を向上させ、グレーティングを形成させたものである。ファイバグレーティング102は、中心波長1064.0nm、反射スペクトル半値幅1nm、反射率98%という特性を持っている。
また、ファイバグレーティング104は、一般的なシングルモード偏波保持ファイバ(コア径6μm、クラッド外形125μm)112のコア部分に同じくゲルマニウムが添加されたものに形成しており、中心波長は1064.1nmで反射スペクトル半値幅は0.09nm、反射率10%のものを使用している。ファイバグレーティング104の反射率を大きくすることで、希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ103を長くし、残存励起光の吸収量を大きくすることは可能であるが、特性の改善には限界があり、有効な対策とは言えない。また波長変換用途では狭帯域化が重要だが、ファイバグレーティング104の反射率を大きくすることで、逆に、ファイバグレーティング104の狭帯域化が困難になるという問題がある。
発振した1064nm付近の光を伝搬させる発振光伝搬ファイバ106により、SHGモジュール108に導入し、第2高調波発生により532nmの光を発生させる。
次に、本実施の形態におけるレーザ光源装置の残存励起光発散・吸収機構601について説明する。
図1に示すように、Ybドープダブルクラッド偏波保持ファイバ103とファイバグレーティング104との間にダブルクラッド偏波保持ファイバ111とシングルモード偏波保持ファイバ112との接続部分(融着接続部)110が存在する。この接続部分110の存在は、ファイバ劣化の要因となるため、本実施の形態では、残存励起光発散・吸収機構601を設けている。
残存励起光発散・吸収機構601は、シングルモード偏波保持ファイバ112のプライマリーコート(樹脂被覆)を10cm程度除去し、その除去された部分を用いて直径30mm程度のコイル形状部602を形成することにより実現される。このコイル形状部602を通してシングルモード偏波保持ファイバ112のクラッド部分を伝搬する残存基本波(波長915nm)を放射させる。
例えば、励起光が10Wであるとすると、希土類としてYbを添加したダブルクラッド偏波保持ファイバ103の吸収量は0.6dB/mであるため、10mのファイバ長で7.5Wの励起光を吸収する。そして、残存励起光として2.5Wの915nmの光がコイル形状部602を通して放射され、シングルモード偏波保持ファイバ112のクラッドを伝搬することになる。
ここでシングルモード偏波保持ファイバ112のコイル形状部602は、吸収板603に固定されており、この吸収板603はコイル形状部602が放射した赤外光を吸収して熱に変換する。この吸収板603としては、アルマイト加工したアルミニウム板を使用した。
図13に記載した従来構成の場合、15Wの励起光(915nm)でポンプし、発振した1064nmの出力が6.8Wとなるような場合、連続運転を行ってから20分経過後に図13の接続部分(融着接続部)110及びシングルモード偏波保持ファイバ112のプライマリコート(被覆)が過熱し、ファイバ112が劣化したが、本実施の形態のレーザ光源装置により、20時間以上連続運転を行っても前記被覆が過熱することがなく、信頼性を向上させることが可能であることが分かった。
その上、より大きなパワーの励起光をポンプできるため、1064nmの出力を増大させることが出来、なおかつ、そこから波長変換される緑色光の出力も増大させることができる。
本実施の形態において、コイル形状部602からの発散効率の向上の点から、残存励起光発散・吸収機構601のコイル形状部602を形成するシングルモード偏波保持ファイバ112のコア径を4.5μm〜5.5μmとし、コイル形状部602の直径を35mm〜70mmとし、コイル形状部602のターン数を5ターン以上とすることが望ましい。
さらに、残存励起光発散・吸収機構601のコイル形状部602を形成するシングルモード偏波保持ファイバ112の直径は、小さくしすぎた場合、発生した1064nm光の損失が大きくなる上、ファイバ素線(プライマリコートのないファイバを指す)が劣化する可能性があるため20mmより大きい方がより望ましく、40mm以上になると、残存基本波の放射が小さくなるため、20〜40mm程度であることがより望ましい。
また、本実施の形態において、残存励起光発散・吸収機構601の被覆剥離部109は、接合部110からコイル形状部602までの直線部及び、コイル形状部602にあるのが望ましい。さらに、コイル形状部602から見てファイバグレーティング104側の直線部分109aにもあればより望ましい。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2におけるレーザ光源装置の構成について説明する。本実施の形態は、ファイバ素線部を高屈折材料に埋め込むものである。
図2に、本実施の形態2におけるレーザ光源装置の構成について示す。上記の実施の形態1においては、コイル形状部602を屈折率1の空気中に配置し、シングルモードモード偏波保持ファイバ112のコイル形状部602を含む被覆剥離部109を励起光にとってのマルチモードファイバとして作用させ、コイル形状部602の曲げ曲率を大きくすることにより、不要な励起光を発散させていた。
しかしながら、シングルモード偏波保持ファイバ112のクラッドと空気との屈折率差が1.4程度存在する。したがって、励起光の発散効率をさらに向上させるためには、屈折率差の低減化が必要である。
そこで、本実施の形態では、シングルモード偏波保持ファイバ112のコイル形状部702の周囲を屈折率が1.5以上の材料703で覆い、積極的に励起光を抜く作用を起こさせることに特徴を持っている。
屈折率1.5以上の材料としては、屈折率整合液として使用されるシリコーンオイル(あるいはシリコーンジェル)などが従来から使用されているが、液体であることから保持が難しかった。そこで、本実施の形態では、シリコーン系の紫外線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂(たとえば信越化学Opticlear(n=1.52程度)など)を使用した。このほかにも、屈折率が1.5以上であればエポキシ系紫外線硬化樹脂も使用可能である。
上述したように、図2は、本実施の形態における、ファイバレーザ波長変換緑色光源の構成図を示しているが、上記の実施の形態1と異なっている部分は、ダブルクラッド偏波保持ファイバ111とシングルモード偏波保持ファイバ112との接続部分110と、シングルモード偏波保持ファイバ112の被覆を剥がした素線部分から成るコイル形状部702が、屈折率1.5以上の材料に埋め込まれていることである。通常、シングルモード偏波保持ファイバ112を被覆しているプライマリコートも屈折率1.5以上の材料が使用されている場合があるが、被覆膜の厚さが70μm程度であり、この部分にエネルギーが集中して過熱する。
一方、本実施の形態の場合は、コイル形状部702を、その外周から1mm以上の厚みを持つ樹脂で覆うことにより過熱を防止している。ファイバ112のコイル形状部702を覆う樹脂703はアルマイト加工されたアルミニウム製の容器704に流し込まれ、接続部110及びシングルモード偏波保持ファイバ112のコイル形状部702を埋め込んだ後、固化させる。樹脂703を流し込んだ領域の寸法は、長さ×奥行×深さ=35mm×35mm×2mmの領域であった。長さ×奥行に関してはできるだけ大きな面積にすることが望ましいが、装置の大型化に繋がるため30mm×30mm〜50mm×50mmでの範囲内であることが望ましい。
このように屈折率がファイバ112のクラッドに近い物質で満たすことで効率よく、残存励起光を引き抜くことが可能となる上、広い領域に残存励起光を広げることにより、過熱を防止し、熱として発散しやすくする役目を持っている。
本実施の形態において、屈折率1.5以上の材料としてガラス材料を採用することも可能ではある。しかしながら、ガラス材料を採用した場合、シングルモード偏波保持ファイバ112のコイル形状部702をはめ込むことができる形状を持つ部材の加工が必要になってしまう。このため、上記の樹脂を用いてモールドする場合と比べて、製造コスト、製造に要する工数の増大を招くことになる。したがって、本実施の形態では、屈折率1.5以上の材料としてシリコーン系の紫外線硬化樹脂や、熱硬化樹脂、エポキシ系紫外線硬化樹脂等の樹脂を採用することにより、部材の加工を不要とし、製造コスト、製造工数の削減を図っている。
なお、本実施の形態において、残存励起光のエネルギーを熱に変換するため、ファイバレーザの筐体内温度が3−5度上昇する。そのため、出射側に設けられた、発振波長を決定するファイバグレーティング104の反射波長が温度上昇に伴い、代表的な値の場合0.01nm/℃の割合で長波長側にシフトする。この波長シフトは波長変換で緑色光発生を行う場合、緑色光出力低下の原因になる。そのため、ファイバグレーティング104自体を、温度上昇に伴って熱収縮するような基板に保持させること(温度補償パッケージを使用すること)や、ファイバグレーティング104を筐体の外に配置することが望ましい。また、筐体内にファイバグレーティング104を配置する場合においても、熱源となる本発明の残存励起光発散・吸収機構701よりも下部に配置し、なおかつ熱的に分離されていることが望ましい。
より効果を上げるためには、残存励起光発散・吸収機構701を、放熱フィン等に配置し、冷却ファンなどを用いて冷却することが望ましい。
本実施の形態の残存励起光発散・吸収機構701において、コイル形状部701を、被覆(プライマリーコート)を除去した直線形状部に代えても構わない。屈折率がファイバ112のクラッドに近い物質で満たすことで効率よく、残存励起光を発散させることが可能だからである。もちろん、より効率良く残存励起光を発散させる必要がある場合には、直線形状をコイル形状にするのが望ましい。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3として、希土類ドープダブルクラッド偏波保持ファイバとシングルモード偏波保持ファイバとの間にレンズ系を用い、レーザビームをいったん空間に放出し、励起光と発振光の収束ビーム径の差を利用して、励起光を低減する方法を提案する。
図3に、本実施の形態3におけるファイバレーザを用いた波長変換型光源の構成を示す。図3において、本実施の形態におけるレーザ光源装置は、ポンプ用LD101、ファイバグレーティング102、Ybドープダブルクラッド偏波保持ファイバ103、ファイバグレーティング104、励起光吸収機構801を備える。本実施の形態のレーザ光源装置は、発振光伝搬ファイバ106を介して、SHG(Second-Harmonic Generation)モジュール108に接続する。そして、ポラライザ105が、発振したレーザ光の偏光方向を単一にするために、挿入されている。
レーザ共振器は、一組のファイバグレーティング102、ファイバグレーティング104と、レーザ活性物質である希土類ドープダブルクラッド偏波保持ファイバ103とで構成されており、励起用レーザダイオード101でポンプする構成は上記の実施の形態1及び2と全く同じである。
本実施の形態においては、上記実施の形態1及び2の残存励起光発散・吸収機構601及び701に代えて、ダブルクラッド偏波保持ファイバ111からシングルモード偏波保持ファイバ112へファイバの種類が切り替わる部分にレンズ系と励起光吸収部で構成された残存励起光吸収機構801を設ける。
本実施の形態における残存励起光吸収機構801について図4を用いて説明する。
図4において、残存励起光吸収機構801は、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802、コリメート用組レンズ803、励起光吸収体804、ファイバ結合用組レンズ805、シングルモード偏波保持ファイバ806で構成されている。
本実施の形態の場合、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802のコア径は6μmであり、励起光が伝搬するインナークラッドの径は105μm、アウタークラッドの径は125μmであった。また、シングルモード偏波保持ファイバ806のコア径は6μmで、クラッド径は125μmとなっていた。
この際、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802のコア径6μmの部分を通過する発振光(本実施の形態の場合1060nm帯)と105μmのインナークラッド部分を通過する励起光(915nm帯)とで、コリメート用組レンズ803を通過して平行光になったときのビーム径の差を利用して、不要な励起光901を励起光吸収部804に吸収させ、除去する仕組みとなっている。
具体的には、発振光902における平行光(コリメートビーム)のビーム径は200μmとなっていたが、励起光901のビーム径は430μmとなるため250μm程度のピンホールが形成された励起光吸収部804を設けることにより、励起光901のみを吸収し、熱エネルギーへ変換することができる。変換された熱エネルギーは、レンズ803、レンズ805を保持している筐体807へ発散され、放熱される。
励起光吸収部804のピンホールを通過した発振光902は再び結合レンズ805によりシングルモード偏波保持ファイバ806に結合され、同ファイバ806のコア部分を導波する。
以上に説明した構造を取ることにより、残存基本波を遮蔽することが可能となり、ファイバ劣化の問題を回避することができる。
ここで説明した残存励起光吸収機構801を組み立てる際には、シングルモードファイバ806のコアを伝搬する発振光の透過量が最大となるように位置あわせをする必要がある。本実施の形態では、従来の分離ミラーを挿入する場合と比較して、調整の指針として透過光量を観察するだけでよいので、調整コストが低減できるという特徴を持つ。
また、残存励起光吸収機構801の使用に際して、10Wの励起光でポンプした場合、本体筐体807が2.5Wの発熱をするため、放熱フィンなど放熱機構を設ける必要がある。10W励起時ではCPU用の放熱フィンだけでかまわないが、励起光量が20W以上となるような場合、残存励起光吸収機構801を固定した放熱フィンをファンモーターなどで冷却するのが望ましい。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4として、希土類ドープダブルクラッド偏波保持ファイバとシングルモード偏波保持ファイバとの間にレンズ系を用い、レーザビームを一旦空間に放出し、誘電体多層膜ミラーへ垂直に入射させ、励起光と発振光を分離し、励起光を再び希土類ドープダブルクラッド偏波保持ファイバへ戻す構成について説明する。
本実施の形態のレーザ光源装置は、図3の実施の形態3のレーザ光源装置と同様、レーザ共振器が一組のファイバグレーティング102、ファイバグレーティング104と、レーザ活性物質である希土類ドープダブルクラッド偏波保持ファイバ103とで構成されており、励起用レーザダイオード101でポンプする構成である。本実施の形態においては、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802からシングルモード偏波保持ファイバ806へファイバの種類が切り替わる部分に、レンズ系と誘電体多層膜ミラーで構成された残存励起光反射機構を設ける。
本実施の形態における残存励起光反射機構について図5を用いて説明する。
残存励起光反射機構1001は、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802、コリメート用組レンズ803、励起光反射用誘電体多層膜ミラー1002、ファイバ結合用組レンズ805、シングルモード偏波保持ファイバ806で構成されている。
本実施の形態の場合、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802のコア径は6μmであり、励起光が伝搬するインナークラッドの径は105μm、アウタークラッドの径は125μmであった。また、シングルモード偏波保持ファイバ806のコア径は6μmで、クラッド径は125μmとなっていた。
この際、コリメート用組レンズ803とファイバ結合用組レンズ805の間に存在する発振光902が平行光となる領域に、915nm帯の光は反射し、1064nm帯の光は透過する誘電体多層膜ミラー1002を配置することにより1064nm帯の光のみ、シングルモード偏波保持ファイバ806に結合することが可能となる。
一方、反射された915nm帯の光は再びコリメート用組レンズ803より入射され、希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ802に再び結合・導波する。これにより、残留励起光となっていた915nmの光が再び希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ802によって吸収され、ファイバ802を往復するうちに励起光の94%(10W励起の場合9.4W)が吸収される。
本実施の形態の場合、一度希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ802を通過してきた光を再び希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ802に戻して再吸収させることから励起光のロスを低減することができ、励起光から発振光を得る場合の効率(光−光変換効率)を向上させることができる。
(実施の形態5)
図6に、本発明の実施の形態5における残存励起光反射機構の構成を示す。
上記の実施の形態4では、コリメート用組レンズ803とシングルモード偏波保持ファイバ806へ再び発振光902を結合させるファイバ結合用組レンズ805との間に誘電体多層膜ミラー1002を挿入した残存励起光反射機構1001を用いた。本実施の形態では、図6に示すように、コリメート用組レンズ803の表面に915nm帯の光を反射させる誘電体多層膜コーティングミラー1102を施すことにより、図5の誘電体多層膜ミラー1002を配置する必要がなくなる。
本実施の形態によれば、レンズのアライメントを行うだけで、自動的に残存励起光のアライメントまで完了でき、ミラー角度の調整が不要となる。そのため調整工程を簡略化できるという長所がある。
(実施の形態6)
図7に、本発明の実施の形態6の残存励起光反射機構の構成を示す。
本実施の形態6の残存励起光反射機構1201では、光ファイバコネクタ等に使用されるガラスあるいはジルコニア製フェルール1202に希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ802の先端を保持させ、保持した端面を研磨加工した上で、その部分に915nm帯の光を反射し、1064nm帯の光を透過する誘電体多層膜ミラー1203を形成する。
この場合も、上記の実施の形態5と同様に、ミラーをファイバ出射端面に設けているため、ミラーのアライメントが不要となり、基本波光源の光軸調整のみアライメントすれば自動的に残存励起光のアライメント無しに調整完了できるため調整工程を大幅に簡略化できるという特徴がある。
(実施の形態7)
図8に、本発明の実施の形態7における残存励起光反射機構の構成を示す。
本実施の形態では、残存励起光反射機構1310のダブルクラッド偏波保持ファイバの部分に915nm帯の光を反射するファイバグレーティングを形成する。図8に、915nm帯の光を反射するように形成したファイバグレーティング1309を形成した場合の形成位置を示す。
このダブルクラッド偏波保持ファイバは通常紫外線による屈折率変化の感度を向上させるために添加されるゲルマニウムが、インナークラッド1303のみか、あるいは、インナークラッド1303とコア1304とに添加されている。ファイバグレーティング1309の周期はファイバの実効屈折率と、反射波長から、Λ[周期]=λ[反射波長]/(2・neff[実効屈折率])で計算することができる。反射波長915nmとしたとき、ファイバの実効屈折率1.43からグレーティング1309の形成周期は320nm程度と算出される。このファイバグレーティング1309を使用することにより、光を一旦空間に出すことなく、残留励起光を反射させることができる。
上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置は、高出力光を要するレーザディスプレイ装置等の緑色光源として適している。例えば、3Wの緑色光を発生させる場合、レーザ光源装置からの発振波長を1070nmとすると、必要とする励起光パワーは20Wであり、発生する緑色光の波長は535nmとなる。このとき必要とするファイバ長は15mである。図17に示すように、さらに多くの緑色光を得ようとした場合、ファイバ劣化のレベルを超えるため、上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置を適用することで、ファイバ劣化を防止できる。
レーザ光源装置からの発振波長を1030nmとした場合、励起光パワーを25W必要とし、515nmの波長の緑色光が発生する。このとき必要とするファイバ長は10mである。この場合、図17に示すように、ファイバ劣化のレベルを超えてしまう。したがって、上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置を適用し、ファイバ劣化の防止が必要となる。
なお、発振波長を1050nmとした場合、必要とするファイバ長は12mであり、1Wレベルの緑色光で、ファイバ劣化のレベルを超えてしまう。また、発振波長を1060nmとした場合、必要とするファイバ長は14mであり、2Wレベルの緑色光で、ファイバ劣化のレベルを超えてしまう。したがって、上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置の適用が必須である。
ここで、本願発明におけるファイバレーザ光源部材の筐体への配置方法について述べる。上記の実施の形態1〜実施の形態7の残存励起光発散・吸収機構、残存励起光吸収機構及び残存励起光反射機構は筐体内の発熱源となり、特に、実施の形態1、2及び3では、熱へ変化した残存励起光のエネルギーが放出されることになる。
図9A及び図9Bにおいて、ファイバレーザ光源の筐体1403内には、励起用レーザダイオード101と、実施の形態1の残存励起光発散・吸収機構1401とが、発熱源として配置されている。もちろん、残存励起光発散・吸収機構1401が実施の形態2の残存励起光発散・吸収機構や、実施形態3の残存励起光吸収機構や、実施の形態4〜7の残存励起光反射機構の場合でも良い。
図9A及び図9Bに示すように、残存励起光発散・吸収機構1401は、筐体1404内のできるだけ上部に配置することが望ましい。
特に、発振光の出射側に配置されるファイバグレーティング104は、発熱源となるレーザダイオード101あるいは残存励起光発散・吸収機構1401よりも下部に配置することが望ましく、熱的に分離することが望ましい。その理由として、以上二つの発熱源から発せられた熱より、筐体内の温度は10℃程度上昇する。そのためファイバグレーティング104の反射中心波長は徐々に長波長へシフトすることとなる。この長波長シフトを避けるために熱源から話すことが望ましい。
特に、図9Aでは、ファイバグレーティング104に温度補償機構1402を取り付け、筐体1404内に配置した例を示している。
また、図9Bでは、ファイバグレーティング104を筐体1403内の温度上昇から熱分離するために筐体1403外に配置した例を示している。
また、発熱源付近には、放熱フィンと冷却ファン1404を設けることが望ましい。
以上、図9A及び図9Bに示したような部材配置を取ることにより、波長変動に対する要求が厳しい(0.01nm以下)波長変換用途にも使用可能な完全空冷ファイバレーザ基本波光源が実現できる。
図9Bの配置構成のファイバレーザ光源における出力6W時の基本波1064nm光の波長変動をプロットしたグラフを図10に示す。この場合、波長変動幅は0.005nm以下で波長変換用途で求められる仕様を十分満たしたものとなっている。
なお、図9Aの温度補償機構1402は有効であるが、コスト面を考えた場合、図9Bのファイバグレーティング104を筐体1403外に配置する構成がより望ましい。
(実施の形態8)
上記の実施の形態1〜実施の形態7で説明したレーザ光源装置は、レーザディスプレイ(画像表示装置)の表示用光源や、液晶ディスプレイ装置のバックライト用光源、又は、装飾用照明装置用光源として用いられる。
上記の実施の形態1〜実施の形態7で説明したレーザ光源装置の用途の一例として、前記レーザ光源装置を適用したレーザディスプレイ(画像表示装置)の構成の一例について図11を用いて説明する。
レーザ光源装置には、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のレーザ光源1601a〜1601cを用いた。赤色レーザ光源1601aには波長638nmのGaAs系半導体レーザを用い、青色レーザ光源1601cには波長465nmのGaN系半導体レーザを用いている。また、緑色レーザ光源1601bには、赤外レーザの波長を1/2にする波長変換素子を具備した波長変換緑色光源装置を用いており、この波長変換緑色光源装置として、上記実施の形態1〜実施の形態7で説明したレーザ光源装置を用いている。
各光源1601a、1601b、1601cより発せられたレーザビームは、反射型2次元ビーム走査手段1602a〜1602cにより2次元的に走査され、拡散板1603a〜1603cを照射する。拡散板1603a〜1603c上を2次元的に走査される各色のレーザビームは、フィールドレンズ1604a〜1604cを通過した後、2次元空間光変調素子1605a〜1605cへ導かれる。
ここで、画像データは、R、G、Bそれぞれに分割されており、各信号が2次元空間光変調素子1605a〜1605cに入力され、ダイクロイックプリズム1606で合波されることにより、カラー画像が形成される。このように合波された画像は、投射レンズ1607によりスクリーン1608に投影される。このとき、拡散板1603a〜1603cがスペックルノイズ除去部として2次元空間変調素子1605a〜1605cの手前に配置されており、拡散板1603a〜1603cを揺動することにより、スペックルノイズを低減することができる。スペックルノイズ除去部としては、レンチキュラーレンズ等を用いてもよい。
また、本実施形態では、色毎に1つの半導体レーザを使用しているが、バンドルファイバにより2〜8個の半導体レーザの出力を1本のファイバ出力で得られるような構造をとってもよい。その場合、波長スペクトル幅は数nmと非常にブロードになり、この広いスペクトルによりスペックルノイズの発生を抑制することができる。
上記の画像表示装置の構成としては、スクリーンの背後から投影する形態(リアプロジェクションディスプレイ)もとることができる。
2次元空間変調素子1605a〜1605cとしては、超小型ミラーが集積された反射型空間変調素子(DMDミラー)を用いることができるが、液晶パネルを用いた2次元空間変調素子や、ガルバノミラー、メカニカルマイクロスイッチ(MEMS)を用いた2次元空間変調素子を用いてもよい。
なお、反射型空間変調素子やMEMS、ガルバノミラーといった光変調特性に対する偏光成分の影響が少ない光変調素子の場合、高調波を伝搬する光ファイバはPANDAファイバなどの偏波保持ファイバである必要はないが、液晶パネルを用いた2次元空間変調素子を用いる場合には、変調特性と偏光特性が大いに関係するため、偏波保持ファイバを使用することが望ましい。
次に、上記の実施の形態1〜実施の形態7で説明したレーザ光源装置の用途の他の一例として、前記レーザ光源装置を適用した液晶ディスプレイ装置のバックライト用光源、装飾用照明装置用光源の構成について図12A及び図12Bを用いて説明する。
図12Aに、上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置を用いた液晶ディスプレイ装置の構成を示す。
上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置1801より発生されたレーザビーム1802は、導光板・拡散板1803により一様に液晶パネル1804を照明するようになっている。
このとき、レーザ光源装置1801から発生できる光は単一偏光(直線偏光)であるため、液晶パネル1804を照明する光を単一偏光とすることが出来、従来の蛍光管や発光ダイオードを光源とした場合に必要だった入射側の偏光子が不要となる。これにより、材料コストが低減できる上、透過光量を10−20%程度増大させることができるため、より明るい液晶ディスプレイ装置を作製することができる。
図12Bに、上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置を用いた装飾用照明装置用光源の構成を示す。
上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置1806から発せられたレーザビームは可視光伝搬用ファイバ1807を通して、建物や樹木などの照明対象物1808まで運ばれる。照明対象物1808に取り付けられているファイバ1809には、光散乱機構が設けられており、光を外部に放射することができる。ファイバグレーティングを作製する、あるいはファイバ被覆の屈折率を1.43程度とすることで光散乱機構を構成することが可能となる。また、このファイバに複数の波長の直線偏光の光を入射させることで、色の制御なども可能となる。
なお、本実施の形態に例示したレーザディスプレイ(画像表示装置)の表示用光源や、液晶ディスプレイ装置のバックライト用光源、装飾用照明装置用光源は、あくまでも一例であり、他の態様を取ることが可能であることは言うまでもない。
上記の各実施の形態から本発明を要約すると、以下のようになる。すなわち、本発明のレーザ光源装置は、レーザ活性物質として希土類が添加されたダブルクラッドファイバと、前記ダブルクラッドファイバに励起光を出射し、前記ダブルクラッドファイバを励起するレーザ光源と、前記ダブルクラッドファイバの発振光の波長を決定する一組のファイバグレーティングと、前記ダブルクラッドファイバの発振光を伝搬させるシングルモードファイバと、前記ダブルクラッドファイバの発振光を高調波に変換する波長変換モジュールとを備え、前記レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光が、前記シングルモードファイバに出射されることを阻止する。
上記のレーザ光源装置では、レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光をシングルモードファイバに出射されることを阻止することにより、高出力光発生時に問題となっていた、ファイバの劣化を防止することが可能となる。この結果、上記のレーザ光源装置を用いた画像表示装置において、従来の固体レーザと比較して色再現範囲を広げることが可能となる。
さらに、上記のレーザ光源装置の励起光として、希土類ファイバの吸収スペクトルがブロードな915nm帯のレーザ光を使用することができる。このため、励起用レーザの温度を精密に制御する必要がなくなり、ペルチェ素子が不要で消費電力を低減できる。
また、上記のレーザ光源装置は高効率であることからさらに消費電力を低減することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光の光エネルギーは、熱エネルギーに変換されることが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光の光エネルギーを熱エネルギーに変換して、残存励起光のエネルギーを熱として発散することができる。それにより、発散光による周囲の部品の劣化を防止することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光は、前記シングルモードファイバに出射されることなく、反射されることが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を再びダブルクラッドファイバに戻すことができる。このため、ダブルクラッドファイバにおける励起光から発振光を得る場合の効率(光−光変換効率)を向上させることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記レーザ光源の発振波長は、900−950nmの範囲内であることが望ましい。
この構成によれば、温度変化によってレーザ光源の励起光に波長変動が生じても、ダブルクラッドファイバの励起光の吸収量の変動を小さくすることができる。このため、レーザ光源の温度管理を高精度に行う必要はなく、したがって、レーザ光源の冷却機構を簡素化することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバは、偏波保持ファイバであることが望ましい。
この構成によれば、特定の偏光方向のレーザ光を発生することができるので、単一偏光を必要とする画像表示装置に適したレーザ光を与えることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記シングルモードファイバは、被覆が除去された所定の曲率半径を有するコイル形状部を含み、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光は、前記コイル形状部から発散されることが望ましい。
この構成によれば、コイル形状部からの光放射を利用して、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を効率よく発散させることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記コイル形状部は、屈折率1.5以上の材料から構成された被覆部材でモールドされることが望ましい。
この構成によれば、コイル形状部とその周囲との屈折率差を小さくすることで、コイル形状部からの残存励起光の発散効率を向上させることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記被覆部材は、樹脂で構成されることが望ましい。
この構成によれば、コイル形状部をモールドし、コイル形状部を被覆部材に埋め込んだ構造を容易に実現することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバと前記シングルモードファイバとの間に配置され、前記レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光が、前記シングルモードファイバに出射されることを阻止するように構成された残存励起光処理部をさらに備えることが望ましい。
この構成によれば、レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光が、シングルモードファイバに出射されることを阻止する残存励起光処理部を別体で設けることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記残存励起光処理部は、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光と前記ダブルクラッドファイバの発振光との色収差に基づいて、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光を吸収することが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を除去し、ダブルクラッドファイバの発振光のみをシングルモードファイバに出射することが可能となる。
上記のレーザ光源装置において、前記残存励起光処理部は、前記ダブルクラッドファイバから出射されたレーザ光を前記シングルモードファイバに結合する光学系を含み、前記光学系は、前記ダブルクラッドファイバから出射されたレーザ光の経路上に、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射させ、前記ダブルクラッドファイバの発振光を透過させる反射部材を配置することが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射し、ダブルクラッドファイバの発振光のみを透過させることが可能となる。このため、ダブルクラッドファイバの発振光のみをシングルモードファイバに出射することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記残存励起光処理部は、前記ダブルクラッドファイバから出射されたレーザ光を前記シングルモードファイバに結合する光学系を含み、前記光学系は、前記ダブルクラッドファイバから出射されたレーザ光の経路上に配置されたレンズに、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射させ、前記ダブルクラッドファイバの発振光を透過させる反射部材を設けたことが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射し、ダブルクラッドファイバの発振光のみを透過させることが可能となる。このため、ダブルクラッドファイバの発振光のみをシングルモードファイバに出射することができる。また、レンズに反射部材を設けているので、反射される残存励起光とダブルクラッドファイバとの位置合わせを容易にすることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記残存励起光処理部は、前記ダブルクラッドファイバから出射されたレーザ光を前記シングルモードファイバに結合する光学系を含み、前記ダブルクラッドファイバの前記光学系側の先端に、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射させ、前記ダブルクラッドファイバの発振光を透過させる反射部材を設けたことが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射し、ダブルクラッドファイバの発振光のみを透過させることが可能となる。このため、ダブルクラッドファイバの発振光のみをシングルモードファイバに出射することができる。また、ダブルクラッドファイバの先端に反射部材を備えているので、反射される残存励起光とダブルクラッドファイバとの位置合わせを容易にすることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバには、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射させ、前記ダブルクラッドファイバの発振光を透過させるファイバグレーティングが形成されることが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を一旦空間に出すことなく反射させることができ、反射の際の残存励起光の出力の損失を抑えることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ファイバグレーティングは、前記レーザ光源側の広帯域ファイバグレーティングと、前記波長変換モジュール側の狭帯域ファイバグレーティングと、を含み、前記レーザ光源、前記コイル形状部及び前記残存励起光処理部が、前記レーザ光源装置を格納する筐体内部で、前記狭帯域ファイバグレーティングよりも上部に配置されていることが望ましい。
この構成によれば、狭帯域ファイバグレーティングを、熱源であるレーザ光源、コイル形状部、残存励起光処理部から遠ざけることができるので、温度変化による狭帯域ファイバグレーティングの波長変動を抑制することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ファイバグレーティングは、前記レーザ光源側の広帯域ファイバグレーティングと、前記波長変換モジュール側の狭帯域ファイバグレーティングと、を含み、前記狭帯域ファイバグレーティングが、前記レーザ光源装置を格納する筐体外部に配置されていることが望ましい。
この構成によれば、狭帯域ファイバグレーティングを、熱源であるレーザ光源、コイル形状部、残存励起光処理部から大幅に遠ざけることができるので、温度変化による狭帯域ファイバグレーティングの波長変動を大きく抑制することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ファイバグレーティングは、前記レーザ光源側の広帯域ファイバグレーティングと、前記波長変換モジュール側の狭帯域ファイバグレーティングと、を含み、前記狭帯域ファイバグレーティングが、前記レーザ光源装置を格納する筐体内部に配置されており、かつ前記狭帯域ファイバグレーティングは、前記狭帯域ファイバグレーティングの温度を補償する温度補償部を有していることが望ましい。
この構成によれば、狭帯域ファイバグレーティングの温度管理を高精度に行うことができ、それにより、温度変化による狭帯域ファイバグレーティングの波長変動を防止することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記波長変換モジュールは、前記ダブルクラッドファイバの発振光の波長の1/2の波長の光を出力する第2高調波発生モジュールを含むことが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバの発振光から、さらに、1/2の波長の高調波を得ることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバの発振光の波長が1030〜1070nmであり、前記波長変換モジュールの高調波の波長が515nm〜535nmであることが望ましい。
この構成によれば、レーザディスプレイ装置等の画像表示装置の緑色光源として望ましい515nm〜535nmの波長の光を得ることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記レーザ光源の励起光の出力が20W〜25Wであり、前記ダブルクラッドファイバの発振光の波長が1030〜1070nmであることが望ましい。
この構成によれば、レーザディスプレイ装置等の画像表示装置の緑色光源として望ましい515nm〜535nmの波長の光を得ることができる。
本発明の画像表示装置は、上記のいずれかのレーザ光源装置と、前記レーザ光源装置から出射されるレーザ光を用いて画像を表示する表示部と、を備える。
上記の画像表示装置では、広い色再現範囲を実現することができる。
本発明によれば、ファイバレーザ光源、特に1070nm以下の直線偏光のファイバレーザ光源で問題となっていた、残存励起光によるファイバ劣化を防止することが可能となり、信頼性が向上し、励起光出力の制限を受けないため、発振光出力を増大させることができる。なおかつ、このファイバレーザ光源と波長変換モジュールとを組みあわせた光源を用いることにより、これまで以上の明るさ・大きさを持ち、なおかつ高い色再現性を持つ、レーザディスプレイ装置などに応用することが可能となる。
本発明は、安定して高出力を得ることができるレーザ光源装置及び、このレーザ光源装置を用いた画像表示装置に関する。
近年、発振効率が高く、優れたビーム品質を持ち、なおかつ空冷が可能で構造が単純という特徴を持つファイバレーザ光源が、従来使用されてきた固体レーザ光源に変わる近赤外レーザ光源として注目されている。
図13に典型的なファイバレーザ光源の構成模式図を示す。励起用(ポンプ用)LD(Laser Diode)101から出射されるレーザ光をレーザ媒質である希土類ドープクラッドポンプファイバ103に入射し、反射ミラーであるファイバグレーティング102及び104で構成されたレーザ共振器内で共振させることによりレーザ光が発振する。
ポラライザ105は発振したレーザ光の偏光方向を単一にするために挿入されている。
このファイバレーザ光源は、ビーム品質が良く、なおかつ発振波長スペクトルを出口側のファイバグレーティング104における反射スペクトルの線幅で規定することが可能である。そのため、ファイバレーザ光源を基本波光源とし、非線形光学結晶を用いた高調波発生(波長変換光源と呼ぶ)に非常に適している。
図13の第2高調波発生(Second-Harmonic Generation: SHG)モジュール108は第2高調波発生を行うための機構で、この機構を用いることで、最終的に2倍の第2高調波107が出射される。
なおかつ、従来の固体レーザでは、レーザの発振波長は、用いるレーザ結晶により規定されていたが、このファイバレーザにおいては、発振波長も一組のファイバグレーティング102及び104によって規定されるため、波長により利得は異なるものの、発振波長を任意に変化することができるという特徴を持っている。
一方、このようなレーザ光の高調波を光源(波長変換光源)としたアプリケーションとして、レーザディスプレイが注目されている(非特許文献1)。
これまでに使用していた白色ランプと比較して、不要な赤外線、紫外線の発生が低く抑えられるため、消費電力を低く抑えることができる上、レーザを用いることで光を効率集光することが可能となり光の利用効率を向上させることができる。
また、発光ダイオードを用いた場合と比較して、レーザは単色光であり、色純度が高いため、ディスプレイ装置の色再現性を向上させることができる。特に緑色光の波長を520〜535nmにすることにより、より深い緑色を表現することが可能となる。
図14に、色度図上の青色光の波長が460nm、赤色光の波長が635nmの場合における、使用する緑色光の色再現範囲を波長別に示す。このような波長は、固体レーザを用いた場合、Nd:YAGやNd:YVO4等を用いた場合の532nmか、Nd:YLFを用いた場合の527nmの2波長しか発生できなかった、特に、YLFはフッ化物結晶で製造が困難であるため、蛍光スペクトルがブロードで(非特許文献2)、自由に発振波長を選択できるファイバレーザが有望となっていた。
ファイバレーザあるいはファイバアンプにおいては、励起光と発振光が同一ファイバ上を伝搬するため特許文献1に示したように、発振した光の一部が不用意な戻り光となって、励起光源に損傷を与えることがある。このため、図15に示すように、レンズ系とミラーを用いて発振光を取り除く回避方法等が検討されてきた。
レーザディスプレイの緑色光源としては、色再現範囲の点で波長が530nmから520nmの範囲であることが望ましいが、ファイバレーザを基本波光源として使用した波長変換光源を使用する場合、前述の波長範囲における基本波である1075nm以下の光では、レーザ媒質である希土類添加ファイバに吸収が存在し、レーザ共振器の(発振)動作が不安定となる。このため、相互作用長であるファイバ長を長くすることができない。この現象は、波長変換光源の場合必須である直線偏光を得るために使用するPANDA(Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)ファイバ等の偏波保持ファイバで顕著となる。
一方、レーザ光の出力を増加させるには励起光を増加させる必要があるが、励起光の波長によってはレーザ媒質である希土類添加ファイバで吸収されなかった励起光が原因となり、ファイバが劣化するという問題があった。図16を用いて劣化のメカニズムを示す。
図16に、希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバと一般的なシングルモード偏波保持ファイバとの融着接続部410を示している。ダブルクラッド偏波保持ファイバではアウタークラッド402に残存励起光408が閉じこめられた状態でインナークラッド403を光が伝搬する構造となっている。
一方、シングルモード偏波保持ファイバと接続した後では、シングルモード偏波保持ファイバの被覆407がない部分において、空気がクラッドとなり残存励起光408が閉じこめられる。しかしながら、被覆407を有する部分でポンプ光がしみ出し、そのエネルギーによってシングルモード偏波保持ファイバが部分的に発熱(たとえば発熱部409)し、劣化する。
例えば、励起光が10Wであるとすると、希土類としてYbを添加したダブルクラッド偏波保持ファイバの吸収量は0.6dB/mであるため、10mのファイバ長で7.5Wの励起光を吸収する。それにより、残存励起光として2.5Wの915nmの光が放射され、シングルモード偏波保持ファイバのクラッドを伝搬することになる。
図13に記載した従来構成の場合、15Wの励起光(915nm)でポンプし、発振した1064nmの出力が6.8Wとなるような場合、連続運転を行ってから20分経過後に融着接続部110、シングルモード偏波保持ファイバ112のプライマリコート(被覆)が過熱し、ファイバが劣化した。
図17に励起光のパワーをパラメータとしたレーザ媒質となるYbドープダブルクラッドファイバのファイバ長と残存励起光との関係を示すプロット図を示す。残存励起光が3.5W〜4Wを超えるとファイバが劣化することが、これまでの調査により分かっている。図17より、ファイバの持つ損失のためにファイバ長を短くせねばならないような場合には、励起光を小さくする必要がある事が分かる。つまり、ファイバの損失が大きな1050nmや1030nmといった波長では、自ずと発生可能な出力は制限を受けることになる。
発振した光がファイバにより吸収されない1070nm以上の光を発振させる場合においては、希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバを長くすることによりファイバの過熱を防止することができる。しかしながら、1060nmや1050nm等の波長変換により緑色を発生させることができるような波長では、希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバの長さを長くすることにより、ファイバ吸収による損失が大きく、発振が不安定になったり、所望の波長で発振したりしないなどの問題点が発生する事が分かっている。また、そのためにファイバが過熱しないような励起光の強度が自ずと決まり、最大出力において制限を受けていた。
このような現象を解決する方法の一例として図18に希土類としてYbを1000ppm程度添加した希土類添加ダブルクラッドファイバの吸収スペクトルを示し、説明する。
励起光としては915nm近辺のレーザダイオード(LD)あるいは976nm付近のレーザダイオードを使用することができる。このとき、このファイバの915nm光の吸収量は0.6dB/m程度であるのに対し、976nm光の吸収量は約1.8dB/mと3倍ほど大きいため、976nm光を使用することでファイバの劣化は解決できると考えられる。
しかしながら、吸収ピークの形状は976nm近辺で急峻であるのに対し、915nm近辺でブロードであるため、励起光LDの温度変化等で発生する励起光の波長変動に対しては、915nm帯(900−950nm)を用いた方がより安定であり、LDの冷却機構を簡素化することができる。そのため装置コスト・消費電力を低減させることができる。以上のように、ファイバレーザ装置の温度安定性と、ファイバレーザで直線偏光かつ6W以上の1075nm以下の光を得る事とを両立させることは従来困難であった。
特許第3012034号公報
Japanese Journal of Applied Physics Vol. 43, No. 8B, 2004, pp. 5904−5906
Rare−earth−doped Fiber lasers and amplifiers, (Marcel Dekker, Inc. 2001年) 145ページ figure10.
本発明の目的は、残存励起光によるファイバ劣化に対する高い信頼性を有し、発振光の出力を増大させることができるレーザ光源装置を提供することである。
本発明の一局面に従うレーザ光源装置は、レーザ活性物質として希土類が添加されたダブルクラッドファイバと、前記ダブルクラッドファイバに励起光を出射し、前記ダブルクラッドファイバを励起するレーザ光源と、前記ダブルクラッドファイバの発振光の波長を決定する一組のファイバグレーティングと、前記ダブルクラッドファイバの発振光を伝搬させるシングルモードファイバと、前記ダブルクラッドファイバの発振光を高調波に変換する波長変換モジュールとを備え、前記レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光が、前記シングルモードファイバに出射されることを阻止する。
本発明は、レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光をシングルモードファイバに出射されることを阻止することにより、高出力光発生時に問題となっていた、ファイバの劣化を防止することが可能となる。この結果、本発明のレーザ光源装置を用いた画像表示装置において、従来の固体レーザと比較して色再現範囲を広げることが可能となる。
さらに、励起光として、希土類ファイバの吸収スペクトルがブロードな915nm帯のレーザ光を使用することができる。このため、励起用レーザの温度を精密に制御する必要がなくなり、ペルチェ素子が不要で消費電力を低減できる。
また、本発明のレーザ光源装置は高効率であることからさらに消費電力を低減することができる。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一部分には同一符号を付し、図面で同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1においては、残存励起光発散・吸収機構として、ファイバの曲率による損失を利用した方法を示している。
図1に、本実施の形態1におけるレーザ光源装置の構成について示す。図1において、本実施の形態におけるレーザ光源装置は、ポンプ用LD(Laser Diode)101、ファイバグレーティング102、Ybドープダブルクラッド偏波保持ファイバ103、ファイバグレーティング104、残存励起光発散・吸収機構(ポンプ光発散・吸収機構)601を備える。本実施の形態のレーザ光源装置は、発振光伝搬ファイバ106を介して、第2高調波発生(Second-Harmonic Generation: SHG)モジュール108に接続する。
ポンプ用LD101で、ダブルクラッド偏波保持ファイバ111のコア部分に希土類としてYbをドープしたダブルクラッド偏波保持ファイバ103(本実施の形態の場合、ファイバ長10m)を励起する。そして、一組のファイバグレーティング102及びファイバグレーティング104で構成された共振器内で、レーザ光を発振させる。本実施の形態の場合、ポンプ用LD101として、発振波長915nmのシングルエミッターレーザダイオード(最大出力10W)を使用している。
ファイバグレーティング102は、ダブルクラッド偏波保持ファイバ111のコア部分にゲルマニウムが添加されており、紫外光に対する感度を向上させ、グレーティングを形成させたものである。ファイバグレーティング102は、中心波長1064.0nm、反射スペクトル半値幅1nm、反射率98%という特性を持っている。
また、ファイバグレーティング104は、一般的なシングルモード偏波保持ファイバ(コア径6μm、クラッド外形125μm)112のコア部分に同じくゲルマニウムが添加されたものに形成しており、中心波長は1064.1nmで反射スペクトル半値幅は0.09nm、反射率10%のものを使用している。ファイバグレーティング104の反射率を大きくすることで、希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ103を長くし、残存励起光の吸収量を大きくすることは可能であるが、特性の改善には限界があり、有効な対策とは言えない。また波長変換用途では狭帯域化が重要だが、ファイバグレーティング104の反射率を大きくすることで、逆に、ファイバグレーティング104の狭帯域化が困難になるという問題がある。
発振した1064nm付近の光を伝搬させる発振光伝搬ファイバ106により、SHGモジュール108に導入し、第2高調波発生により532nmの光を発生させる。
次に、本実施の形態におけるレーザ光源装置の残存励起光発散・吸収機構601について説明する。
図1に示すように、Ybドープダブルクラッド偏波保持ファイバ103とファイバグレーティング104との間にダブルクラッド偏波保持ファイバ111とシングルモード偏波保持ファイバ112との接続部分(融着接続部)110が存在する。この接続部分110の存在は、ファイバ劣化の要因となるため、本実施の形態では、残存励起光発散・吸収機構601を設けている。
残存励起光発散・吸収機構601は、シングルモード偏波保持ファイバ112のプライマリーコート(樹脂被覆)を10cm程度除去し、その除去された部分を用いて直径30mm程度のコイル形状部602を形成することにより実現される。このコイル形状部602を通してシングルモード偏波保持ファイバ112のクラッド部分を伝搬する残存基本波(波長915nm)を放射させる。
例えば、励起光が10Wであるとすると、希土類としてYbを添加したダブルクラッド偏波保持ファイバ103の吸収量は0.6dB/mであるため、10mのファイバ長で7.5Wの励起光を吸収する。そして、残存励起光として2.5Wの915nmの光がコイル形状部602を通して放射され、シングルモード偏波保持ファイバ112のクラッドを伝搬することになる。
ここでシングルモード偏波保持ファイバ112のコイル形状部602は、吸収板603に固定されており、この吸収板603はコイル形状部602が放射した赤外光を吸収して熱に変換する。この吸収板603としては、アルマイト加工したアルミニウム板を使用した。
図13に記載した従来構成の場合、15Wの励起光(915nm)でポンプし、発振した1064nmの出力が6.8Wとなるような場合、連続運転を行ってから20分経過後に図13の接続部分(融着接続部)110及びシングルモード偏波保持ファイバ112のプライマリコート(被覆)が過熱し、ファイバ112が劣化したが、本実施の形態のレーザ光源装置により、20時間以上連続運転を行っても前記被覆が過熱することがなく、信頼性を向上させることが可能であることが分かった。
その上、より大きなパワーの励起光をポンプできるため、1064nmの出力を増大させることが出来、なおかつ、そこから波長変換される緑色光の出力も増大させることができる。
本実施の形態において、コイル形状部602からの発散効率の向上の点から、残存励起光発散・吸収機構601のコイル形状部602を形成するシングルモード偏波保持ファイバ112のコア径を4.5μm〜5.5μmとし、コイル形状部602の直径を35mm〜70mmとし、コイル形状部602のターン数を5ターン以上とすることが望ましい。
さらに、残存励起光発散・吸収機構601のコイル形状部602を形成するシングルモード偏波保持ファイバ112の直径は、小さくしすぎた場合、発生した1064nm光の損失が大きくなる上、ファイバ素線(プライマリコートのないファイバを指す)が劣化する可能性があるため20mmより大きい方がより望ましく、40mm以上になると、残存基本波の放射が小さくなるため、20〜40mm程度であることがより望ましい。
また、本実施の形態において、残存励起光発散・吸収機構601の被覆剥離部109は、接合部110からコイル形状部602までの直線部及び、コイル形状部602にあるのが望ましい。さらに、コイル形状部602から見てファイバグレーティング104側の直線部分109aにもあればより望ましい。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2におけるレーザ光源装置の構成について説明する。本実施の形態は、ファイバ素線部を高屈折材料に埋め込むものである。
図2に、本実施の形態2におけるレーザ光源装置の構成について示す。上記の実施の形態1においては、コイル形状部602を屈折率1の空気中に配置し、シングルモードモード偏波保持ファイバ112のコイル形状部602を含む被覆剥離部109を励起光にとってのマルチモードファイバとして作用させ、コイル形状部602の曲げ曲率を大きくすることにより、不要な励起光を発散させていた。
しかしながら、シングルモード偏波保持ファイバ112のクラッドと空気との屈折率差が1.4程度存在する。したがって、励起光の発散効率をさらに向上させるためには、屈折率差の低減化が必要である。
そこで、本実施の形態では、シングルモード偏波保持ファイバ112のコイル形状部702の周囲を屈折率が1.5以上の材料703で覆い、積極的に励起光を抜く作用を起こさせることに特徴を持っている。
屈折率1.5以上の材料としては、屈折率整合液として使用されるシリコーンオイル(あるいはシリコーンジェル)などが従来から使用されているが、液体であることから保持が難しかった。そこで、本実施の形態では、シリコーン系の紫外線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂(たとえば信越化学Opticlear(n=1.52程度)など)を使用した。このほかにも、屈折率が1.5以上であればエポキシ系紫外線硬化樹脂も使用可能である。
上述したように、図2は、本実施の形態における、ファイバレーザ波長変換緑色光源の構成図を示しているが、上記の実施の形態1と異なっている部分は、ダブルクラッド偏波保持ファイバ111とシングルモード偏波保持ファイバ112との接続部分110と、シングルモード偏波保持ファイバ112の被覆を剥がした素線部分から成るコイル形状部702が、屈折率1.5以上の材料に埋め込まれていることである。通常、シングルモード偏波保持ファイバ112を被覆しているプライマリコートも屈折率1.5以上の材料が使用されている場合があるが、被覆膜の厚さが70μm程度であり、この部分にエネルギーが集中して過熱する。
一方、本実施の形態の場合は、コイル形状部702を、その外周から1mm以上の厚みを持つ樹脂で覆うことにより過熱を防止している。ファイバ112のコイル形状部702を覆う樹脂703はアルマイト加工されたアルミニウム製の容器704に流し込まれ、接続部110及びシングルモード偏波保持ファイバ112のコイル形状部702を埋め込んだ後、固化させる。樹脂703を流し込んだ領域の寸法は、長さ×奥行×深さ=35mm×35mm×2mmの領域であった。長さ×奥行に関してはできるだけ大きな面積にすることが望ましいが、装置の大型化に繋がるため30mm×30mm〜50mm×50mmでの範囲内であることが望ましい。
このように屈折率がファイバ112のクラッドに近い物質で満たすことで効率よく、残存励起光を引き抜くことが可能となる上、広い領域に残存励起光を広げることにより、過熱を防止し、熱として発散しやすくする役目を持っている。
本実施の形態において、屈折率1.5以上の材料としてガラス材料を採用することも可能ではある。しかしながら、ガラス材料を採用した場合、シングルモード偏波保持ファイバ112のコイル形状部702をはめ込むことができる形状を持つ部材の加工が必要になってしまう。このため、上記の樹脂を用いてモールドする場合と比べて、製造コスト、製造に要する工数の増大を招くことになる。したがって、本実施の形態では、屈折率1.5以上の材料としてシリコーン系の紫外線硬化樹脂や、熱硬化樹脂、エポキシ系紫外線硬化樹脂等の樹脂を採用することにより、部材の加工を不要とし、製造コスト、製造工数の削減を図っている。
なお、本実施の形態において、残存励起光のエネルギーを熱に変換するため、ファイバレーザの筐体内温度が3−5度上昇する。そのため、出射側に設けられた、発振波長を決定するファイバグレーティング104の反射波長が温度上昇に伴い、代表的な値の場合0.01nm/℃の割合で長波長側にシフトする。この波長シフトは波長変換で緑色光発生を行う場合、緑色光出力低下の原因になる。そのため、ファイバグレーティング104自体を、温度上昇に伴って熱収縮するような基板に保持させること(温度補償パッケージを使用すること)や、ファイバグレーティング104を筐体の外に配置することが望ましい。また、筐体内にファイバグレーティング104を配置する場合においても、熱源となる本発明の残存励起光発散・吸収機構701よりも下部に配置し、なおかつ熱的に分離されていることが望ましい。
より効果を上げるためには、残存励起光発散・吸収機構701を、放熱フィン等に配置し、冷却ファンなどを用いて冷却することが望ましい。
本実施の形態の残存励起光発散・吸収機構701において、コイル形状部701を、被覆(プライマリーコート)を除去した直線形状部に代えても構わない。屈折率がファイバ112のクラッドに近い物質で満たすことで効率よく、残存励起光を発散させることが可能だからである。もちろん、より効率良く残存励起光を発散させる必要がある場合には、直線形状をコイル形状にするのが望ましい。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3として、希土類ドープダブルクラッド偏波保持ファイバとシングルモード偏波保持ファイバとの間にレンズ系を用い、レーザビームをいったん空間に放出し、励起光と発振光の収束ビーム径の差を利用して、励起光を低減する方法を提案する。
図3に、本実施の形態3におけるファイバレーザを用いた波長変換型光源の構成を示す。図3において、本実施の形態におけるレーザ光源装置は、ポンプ用LD101、ファイバグレーティング102、Ybドープダブルクラッド偏波保持ファイバ103、ファイバグレーティング104、励起光吸収機構801を備える。本実施の形態のレーザ光源装置は、発振光伝搬ファイバ106を介して、SHG(Second-Harmonic Generation)モジュール108に接続する。そして、ポラライザ105が、発振したレーザ光の偏光方向を単一にするために、挿入されている。
レーザ共振器は、一組のファイバグレーティング102、ファイバグレーティング104と、レーザ活性物質である希土類ドープダブルクラッド偏波保持ファイバ103とで構成されており、励起用レーザダイオード101でポンプする構成は上記の実施の形態1及び2と全く同じである。
本実施の形態においては、上記実施の形態1及び2の残存励起光発散・吸収機構601及び701に代えて、ダブルクラッド偏波保持ファイバ111からシングルモード偏波保持ファイバ112へファイバの種類が切り替わる部分にレンズ系と励起光吸収部で構成された残存励起光吸収機構801を設ける。
本実施の形態における残存励起光吸収機構801について図4を用いて説明する。
図4において、残存励起光吸収機構801は、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802、コリメート用組レンズ803、励起光吸収体804、ファイバ結合用組レンズ805、シングルモード偏波保持ファイバ806で構成されている。
本実施の形態の場合、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802のコア径は6μmであり、励起光が伝搬するインナークラッドの径は105μm、アウタークラッドの径は125μmであった。また、シングルモード偏波保持ファイバ806のコア径は6μmで、クラッド径は125μmとなっていた。
この際、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802のコア径6μmの部分を通過する発振光(本実施の形態の場合1060nm帯)と105μmのインナークラッド部分を通過する励起光(915nm帯)とで、コリメート用組レンズ803を通過して平行光になったときのビーム径の差を利用して、不要な励起光901を励起光吸収部804に吸収させ、除去する仕組みとなっている。
具体的には、発振光902における平行光(コリメートビーム)のビーム径は200μmとなっていたが、励起光901のビーム径は430μmとなるため250μm程度のピンホールが形成された励起光吸収部804を設けることにより、励起光901のみを吸収し、熱エネルギーへ変換することができる。変換された熱エネルギーは、レンズ803、レンズ805を保持している筐体807へ発散され、放熱される。
励起光吸収部804のピンホールを通過した発振光902は再び結合レンズ805によりシングルモード偏波保持ファイバ806に結合され、同ファイバ806のコア部分を導波する。
以上に説明した構造を取ることにより、残存基本波を遮蔽することが可能となり、ファイバ劣化の問題を回避することができる。
ここで説明した残存励起光吸収機構801を組み立てる際には、シングルモードファイバ806のコアを伝搬する発振光の透過量が最大となるように位置あわせをする必要がある。本実施の形態では、従来の分離ミラーを挿入する場合と比較して、調整の指針として透過光量を観察するだけでよいので、調整コストが低減できるという特徴を持つ。
また、残存励起光吸収機構801の使用に際して、10Wの励起光でポンプした場合、本体筐体807が2.5Wの発熱をするため、放熱フィンなど放熱機構を設ける必要がある。10W励起時ではCPU用の放熱フィンだけでかまわないが、励起光量が20W以上となるような場合、残存励起光吸収機構801を固定した放熱フィンをファンモーターなどで冷却するのが望ましい。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4として、希土類ドープダブルクラッド偏波保持ファイバとシングルモード偏波保持ファイバとの間にレンズ系を用い、レーザビームを一旦空間に放出し、誘電体多層膜ミラーへ垂直に入射させ、励起光と発振光を分離し、励起光を再び希土類ドープダブルクラッド偏波保持ファイバへ戻す構成について説明する。
本実施の形態のレーザ光源装置は、図3の実施の形態3のレーザ光源装置と同様、レーザ共振器が一組のファイバグレーティング102、ファイバグレーティング104と、レーザ活性物質である希土類ドープダブルクラッド偏波保持ファイバ103とで構成されており、励起用レーザダイオード101でポンプする構成である。本実施の形態においては、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802からシングルモード偏波保持ファイバ806へファイバの種類が切り替わる部分に、レンズ系と誘電体多層膜ミラーで構成された残存励起光反射機構を設ける。
本実施の形態における残存励起光反射機構について図5を用いて説明する。
残存励起光反射機構1001は、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802、コリメート用組レンズ803、励起光反射用誘電体多層膜ミラー1002、ファイバ結合用組レンズ805、シングルモード偏波保持ファイバ806で構成されている。
本実施の形態の場合、ダブルクラッド偏波保持ファイバ802のコア径は6μmであり、励起光が伝搬するインナークラッドの径は105μm、アウタークラッドの径は125μmであった。また、シングルモード偏波保持ファイバ806のコア径は6μmで、クラッド径は125μmとなっていた。
この際、コリメート用組レンズ803とファイバ結合用組レンズ805の間に存在する発振光902が平行光となる領域に、915nm帯の光は反射し、1064nm帯の光は透過する誘電体多層膜ミラー1002を配置することにより1064nm帯の光のみ、シングルモード偏波保持ファイバ806に結合することが可能となる。
一方、反射された915nm帯の光は再びコリメート用組レンズ803より入射され、希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ802に再び結合・導波する。これにより、残留励起光となっていた915nmの光が再び希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ802によって吸収され、ファイバ802を往復するうちに励起光の94%(10W励起の場合9.4W)が吸収される。
本実施の形態の場合、一度希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ802を通過してきた光を再び希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ802に戻して再吸収させることから励起光のロスを低減することができ、励起光から発振光を得る場合の効率(光−光変換効率)を向上させることができる。
(実施の形態5)
図6に、本発明の実施の形態5における残存励起光反射機構の構成を示す。
上記の実施の形態4では、コリメート用組レンズ803とシングルモード偏波保持ファイバ806へ再び発振光902を結合させるファイバ結合用組レンズ805との間に誘電体多層膜ミラー1002を挿入した残存励起光反射機構1001を用いた。本実施の形態では、図6に示すように、コリメート用組レンズ803の表面に915nm帯の光を反射させる誘電体多層膜コーティングミラー1102を施すことにより、図5の誘電体多層膜ミラー1002を配置する必要がなくなる。
本実施の形態によれば、レンズのアライメントを行うだけで、自動的に残存励起光のアライメントまで完了でき、ミラー角度の調整が不要となる。そのため調整工程を簡略化できるという長所がある。
(実施の形態6)
図7に、本発明の実施の形態6の残存励起光反射機構の構成を示す。
本実施の形態6の残存励起光反射機構1201では、光ファイバコネクタ等に使用されるガラスあるいはジルコニア製フェルール1202に希土類添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ802の先端を保持させ、保持した端面を研磨加工した上で、その部分に915nm帯の光を反射し、1064nm帯の光を透過する誘電体多層膜ミラー1203を形成する。
この場合も、上記の実施の形態5と同様に、ミラーをファイバ出射端面に設けているため、ミラーのアライメントが不要となり、基本波光源の光軸調整のみアライメントすれば自動的に残存励起光のアライメント無しに調整完了できるため調整工程を大幅に簡略化できるという特徴がある。
(実施の形態7)
図8に、本発明の実施の形態7における残存励起光反射機構の構成を示す。
本実施の形態では、残存励起光反射機構1310のダブルクラッド偏波保持ファイバの部分に915nm帯の光を反射するファイバグレーティングを形成する。図8に、915nm帯の光を反射するように形成したファイバグレーティング1309を形成した場合の形成位置を示す。
このダブルクラッド偏波保持ファイバは通常紫外線による屈折率変化の感度を向上させるために添加されるゲルマニウムが、インナークラッド1303のみか、あるいは、インナークラッド1303とコア1304とに添加されている。ファイバグレーティング1309の周期はファイバの実効屈折率と、反射波長から、Λ[周期]=λ[反射波長]/(2・neff[実効屈折率])で計算することができる。反射波長915nmとしたとき、ファイバの実効屈折率1.43からグレーティング1309の形成周期は320nm程度と算出される。このファイバグレーティング1309を使用することにより、光を一旦空間に出すことなく、残留励起光を反射させることができる。
上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置は、高出力光を要するレーザディスプレイ装置等の緑色光源として適している。例えば、3Wの緑色光を発生させる場合、レーザ光源装置からの発振波長を1070nmとすると、必要とする励起光パワーは20Wであり、発生する緑色光の波長は535nmとなる。このとき必要とするファイバ長は15mである。図17に示すように、さらに多くの緑色光を得ようとした場合、ファイバ劣化のレベルを超えるため、上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置を適用することで、ファイバ劣化を防止できる。
レーザ光源装置からの発振波長を1030nmとした場合、励起光パワーを25W必要とし、515nmの波長の緑色光が発生する。このとき必要とするファイバ長は10mである。この場合、図17に示すように、ファイバ劣化のレベルを超えてしまう。したがって、上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置を適用し、ファイバ劣化の防止が必要となる。
なお、発振波長を1050nmとした場合、必要とするファイバ長は12mであり、1Wレベルの緑色光で、ファイバ劣化のレベルを超えてしまう。また、発振波長を1060nmとした場合、必要とするファイバ長は14mであり、2Wレベルの緑色光で、ファイバ劣化のレベルを超えてしまう。したがって、上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置の適用が必須である。
ここで、本願発明におけるファイバレーザ光源部材の筐体への配置方法について述べる。上記の実施の形態1〜実施の形態7の残存励起光発散・吸収機構、残存励起光吸収機構及び残存励起光反射機構は筐体内の発熱源となり、特に、実施の形態1、2及び3では、熱へ変化した残存励起光のエネルギーが放出されることになる。
図9A及び図9Bにおいて、ファイバレーザ光源の筐体1403内には、励起用レーザダイオード101と、実施の形態1の残存励起光発散・吸収機構1401とが、発熱源として配置されている。もちろん、残存励起光発散・吸収機構1401が実施の形態2の残存励起光発散・吸収機構や、実施形態3の残存励起光吸収機構や、実施の形態4〜7の残存励起光反射機構の場合でも良い。
図9A及び図9Bに示すように、残存励起光発散・吸収機構1401は、筐体1404内のできるだけ上部に配置することが望ましい。
特に、発振光の出射側に配置されるファイバグレーティング104は、発熱源となるレーザダイオード101あるいは残存励起光発散・吸収機構1401よりも下部に配置することが望ましく、熱的に分離することが望ましい。その理由として、以上二つの発熱源から発せられた熱より、筐体内の温度は10℃程度上昇する。そのためファイバグレーティング104の反射中心波長は徐々に長波長へシフトすることとなる。この長波長シフトを避けるために熱源から話すことが望ましい。
特に、図9Aでは、ファイバグレーティング104に温度補償機構1402を取り付け、筐体1404内に配置した例を示している。
また、図9Bでは、ファイバグレーティング104を筐体1403内の温度上昇から熱分離するために筐体1403外に配置した例を示している。
また、発熱源付近には、放熱フィンと冷却ファン1404を設けることが望ましい。
以上、図9A及び図9Bに示したような部材配置を取ることにより、波長変動に対する要求が厳しい(0.01nm以下)波長変換用途にも使用可能な完全空冷ファイバレーザ基本波光源が実現できる。
図9Bの配置構成のファイバレーザ光源における出力6W時の基本波1064nm光の波長変動をプロットしたグラフを図10に示す。この場合、波長変動幅は0.005nm以下で波長変換用途で求められる仕様を十分満たしたものとなっている。
なお、図9Aの温度補償機構1402は有効であるが、コスト面を考えた場合、図9Bのファイバグレーティング104を筐体1403外に配置する構成がより望ましい。
(実施の形態8)
上記の実施の形態1〜実施の形態7で説明したレーザ光源装置は、レーザディスプレイ(画像表示装置)の表示用光源や、液晶ディスプレイ装置のバックライト用光源、又は、装飾用照明装置用光源として用いられる。
上記の実施の形態1〜実施の形態7で説明したレーザ光源装置の用途の一例として、前記レーザ光源装置を適用したレーザディスプレイ(画像表示装置)の構成の一例について図11を用いて説明する。
レーザ光源装置には、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のレーザ光源1601a〜1601cを用いた。赤色レーザ光源1601aには波長638nmのGaAs系半導体レーザを用い、青色レーザ光源1601cには波長465nmのGaN系半導体レーザを用いている。また、緑色レーザ光源1601bには、赤外レーザの波長を1/2にする波長変換素子を具備した波長変換緑色光源装置を用いており、この波長変換緑色光源装置として、上記実施の形態1〜実施の形態7で説明したレーザ光源装置を用いている。
各光源1601a、1601b、1601cより発せられたレーザビームは、反射型2次元ビーム走査手段1602a〜1602cにより2次元的に走査され、拡散板1603a〜1603cを照射する。拡散板1603a〜1603c上を2次元的に走査される各色のレーザビームは、フィールドレンズ1604a〜1604cを通過した後、2次元空間光変調素子1605a〜1605cへ導かれる。
ここで、画像データは、R、G、Bそれぞれに分割されており、各信号が2次元空間光変調素子1605a〜1605cに入力され、ダイクロイックプリズム1606で合波されることにより、カラー画像が形成される。このように合波された画像は、投射レンズ1607によりスクリーン1608に投影される。このとき、拡散板1603a〜1603cがスペックルノイズ除去部として2次元空間変調素子1605a〜1605cの手前に配置されており、拡散板1603a〜1603cを揺動することにより、スペックルノイズを低減することができる。スペックルノイズ除去部としては、レンチキュラーレンズ等を用いてもよい。
また、本実施形態では、色毎に1つの半導体レーザを使用しているが、バンドルファイバにより2〜8個の半導体レーザの出力を1本のファイバ出力で得られるような構造をとってもよい。その場合、波長スペクトル幅は数nmと非常にブロードになり、この広いスペクトルによりスペックルノイズの発生を抑制することができる。
上記の画像表示装置の構成としては、スクリーンの背後から投影する形態(リアプロジェクションディスプレイ)もとることができる。
2次元空間変調素子1605a〜1605cとしては、超小型ミラーが集積された反射型空間変調素子(DMDミラー)を用いることができるが、液晶パネルを用いた2次元空間変調素子や、ガルバノミラー、メカニカルマイクロスイッチ(MEMS)を用いた2次元空間変調素子を用いてもよい。
なお、反射型空間変調素子やMEMS、ガルバノミラーといった光変調特性に対する偏光成分の影響が少ない光変調素子の場合、高調波を伝搬する光ファイバはPANDAファイバなどの偏波保持ファイバである必要はないが、液晶パネルを用いた2次元空間変調素子を用いる場合には、変調特性と偏光特性が大いに関係するため、偏波保持ファイバを使用することが望ましい。
次に、上記の実施の形態1〜実施の形態7で説明したレーザ光源装置の用途の他の一例として、前記レーザ光源装置を適用した液晶ディスプレイ装置のバックライト用光源、装飾用照明装置用光源の構成について図12A及び図12Bを用いて説明する。
図12Aに、上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置を用いた液晶ディスプレイ装置の構成を示す。
上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置1801より発生されたレーザビーム1802は、導光板・拡散板1803により一様に液晶パネル1804を照明するようになっている。
このとき、レーザ光源装置1801から発生できる光は単一偏光(直線偏光)であるため、液晶パネル1804を照明する光を単一偏光とすることが出来、従来の蛍光管や発光ダイオードを光源とした場合に必要だった入射側の偏光子が不要となる。これにより、材料コストが低減できる上、透過光量を10−20%程度増大させることができるため、より明るい液晶ディスプレイ装置を作製することができる。
図12Bに、上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置を用いた装飾用照明装置用光源の構成を示す。
上記の実施の形態1〜実施の形態7のレーザ光源装置1806から発せられたレーザビームは可視光伝搬用ファイバ1807を通して、建物や樹木などの照明対象物1808まで運ばれる。照明対象物1808に取り付けられているファイバ1809には、光散乱機構が設けられており、光を外部に放射することができる。ファイバグレーティングを作製する、あるいはファイバ被覆の屈折率を1.43程度とすることで光散乱機構を構成することが可能となる。また、このファイバに複数の波長の直線偏光の光を入射させることで、色の制御なども可能となる。
なお、本実施の形態に例示したレーザディスプレイ(画像表示装置)の表示用光源や、液晶ディスプレイ装置のバックライト用光源、装飾用照明装置用光源は、あくまでも一例であり、他の態様を取ることが可能であることは言うまでもない。
上記の各実施の形態から本発明を要約すると、以下のようになる。すなわち、本発明のレーザ光源装置は、レーザ活性物質として希土類が添加されたダブルクラッドファイバと、前記ダブルクラッドファイバに励起光を出射し、前記ダブルクラッドファイバを励起するレーザ光源と、前記ダブルクラッドファイバの発振光の波長を決定する一組のファイバグレーティングと、前記ダブルクラッドファイバの発振光を伝搬させるシングルモードファイバと、前記ダブルクラッドファイバの発振光を高調波に変換する波長変換モジュールとを備え、前記レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光が、前記シングルモードファイバに出射されることを阻止する。
上記のレーザ光源装置では、レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光をシングルモードファイバに出射されることを阻止することにより、高出力光発生時に問題となっていた、ファイバの劣化を防止することが可能となる。この結果、上記のレーザ光源装置を用いた画像表示装置において、従来の固体レーザと比較して色再現範囲を広げることが可能となる。
さらに、上記のレーザ光源装置の励起光として、希土類ファイバの吸収スペクトルがブロードな915nm帯のレーザ光を使用することができる。このため、励起用レーザの温度を精密に制御する必要がなくなり、ペルチェ素子が不要で消費電力を低減できる。
また、上記のレーザ光源装置は高効率であることからさらに消費電力を低減することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光の光エネルギーは、熱エネルギーに変換されることが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光の光エネルギーを熱エネルギーに変換して、残存励起光のエネルギーを熱として発散することができる。それにより、発散光による周囲の部品の劣化を防止することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光は、前記シングルモードファイバに出射されることなく、反射されることが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を再びダブルクラッドファイバに戻すことができる。このため、ダブルクラッドファイバにおける励起光から発振光を得る場合の効率(光−光変換効率)を向上させることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記レーザ光源の発振波長は、900−950nmの範囲内であることが望ましい。
この構成によれば、温度変化によってレーザ光源の励起光に波長変動が生じても、ダブルクラッドファイバの励起光の吸収量の変動を小さくすることができる。このため、レーザ光源の温度管理を高精度に行う必要はなく、したがって、レーザ光源の冷却機構を簡素化することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバは、偏波保持ファイバであることが望ましい。
この構成によれば、特定の偏光方向のレーザ光を発生することができるので、単一偏光を必要とする画像表示装置に適したレーザ光を与えることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記シングルモードファイバは、被覆が除去された所定の曲率半径を有するコイル形状部を含み、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光は、前記コイル形状部から発散されることが望ましい。
この構成によれば、コイル形状部からの光放射を利用して、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を効率よく発散させることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記コイル形状部は、屈折率1.5以上の材料から構成された被覆部材でモールドされることが望ましい。
この構成によれば、コイル形状部とその周囲との屈折率差を小さくすることで、コイル形状部からの残存励起光の発散効率を向上させることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記被覆部材は、樹脂で構成されることが望ましい。
この構成によれば、コイル形状部をモールドし、コイル形状部を被覆部材に埋め込んだ構造を容易に実現することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバと前記シングルモードファイバとの間に配置され、前記レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光が、前記シングルモードファイバに出射されることを阻止するように構成された残存励起光処理部をさらに備えることが望ましい。
この構成によれば、レーザ光源の励起光が入射されたダブルクラッドファイバに残存する励起光が、シングルモードファイバに出射されることを阻止する残存励起光処理部を別体で設けることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記残存励起光処理部は、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光と前記ダブルクラッドファイバの発振光との色収差に基づいて、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光を吸収することが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を除去し、ダブルクラッドファイバの発振光のみをシングルモードファイバに出射することが可能となる。
上記のレーザ光源装置において、前記残存励起光処理部は、前記ダブルクラッドファイバから出射されたレーザ光を前記シングルモードファイバに結合する光学系を含み、前記光学系は、前記ダブルクラッドファイバから出射されたレーザ光の経路上に、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射させ、前記ダブルクラッドファイバの発振光を透過させる反射部材を配置することが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射し、ダブルクラッドファイバの発振光のみを透過させることが可能となる。このため、ダブルクラッドファイバの発振光のみをシングルモードファイバに出射することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記残存励起光処理部は、前記ダブルクラッドファイバから出射されたレーザ光を前記シングルモードファイバに結合する光学系を含み、前記光学系は、前記ダブルクラッドファイバから出射されたレーザ光の経路上に配置されたレンズに、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射させ、前記ダブルクラッドファイバの発振光を透過させる反射部材を設けたことが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射し、ダブルクラッドファイバの発振光のみを透過させることが可能となる。このため、ダブルクラッドファイバの発振光のみをシングルモードファイバに出射することができる。また、レンズに反射部材を設けているので、反射される残存励起光とダブルクラッドファイバとの位置合わせを容易にすることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記残存励起光処理部は、前記ダブルクラッドファイバから出射されたレーザ光を前記シングルモードファイバに結合する光学系を含み、前記ダブルクラッドファイバの前記光学系側の先端に、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射させ、前記ダブルクラッドファイバの発振光を透過させる反射部材を設けたことが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射し、ダブルクラッドファイバの発振光のみを透過させることが可能となる。このため、ダブルクラッドファイバの発振光のみをシングルモードファイバに出射することができる。また、ダブルクラッドファイバの先端に反射部材を備えているので、反射される残存励起光とダブルクラッドファイバとの位置合わせを容易にすることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバには、前記ダブルクラッドファイバに残存する励起光を反射させ、前記ダブルクラッドファイバの発振光を透過させるファイバグレーティングが形成されることが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバに残存する励起光を一旦空間に出すことなく反射させることができ、反射の際の残存励起光の出力の損失を抑えることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ファイバグレーティングは、前記レーザ光源側の広帯域ファイバグレーティングと、前記波長変換モジュール側の狭帯域ファイバグレーティングと、を含み、前記レーザ光源、前記コイル形状部及び前記残存励起光処理部が、前記レーザ光源装置を格納する筐体内部で、前記狭帯域ファイバグレーティングよりも上部に配置されていることが望ましい。
この構成によれば、狭帯域ファイバグレーティングを、熱源であるレーザ光源、コイル形状部、残存励起光処理部から遠ざけることができるので、温度変化による狭帯域ファイバグレーティングの波長変動を抑制することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ファイバグレーティングは、前記レーザ光源側の広帯域ファイバグレーティングと、前記波長変換モジュール側の狭帯域ファイバグレーティングと、を含み、前記狭帯域ファイバグレーティングが、前記レーザ光源装置を格納する筐体外部に配置されていることが望ましい。
この構成によれば、狭帯域ファイバグレーティングを、熱源であるレーザ光源、コイル形状部、残存励起光処理部から大幅に遠ざけることができるので、温度変化による狭帯域ファイバグレーティングの波長変動を大きく抑制することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ファイバグレーティングは、前記レーザ光源側の広帯域ファイバグレーティングと、前記波長変換モジュール側の狭帯域ファイバグレーティングと、を含み、前記狭帯域ファイバグレーティングが、前記レーザ光源装置を格納する筐体内部に配置されており、かつ前記狭帯域ファイバグレーティングは、前記狭帯域ファイバグレーティングの温度を補償する温度補償部を有していることが望ましい。
この構成によれば、狭帯域ファイバグレーティングの温度管理を高精度に行うことができ、それにより、温度変化による狭帯域ファイバグレーティングの波長変動を防止することができる。
上記のレーザ光源装置において、前記波長変換モジュールは、前記ダブルクラッドファイバの発振光の波長の1/2の波長の光を出力する第2高調波発生モジュールを含むことが望ましい。
この構成によれば、ダブルクラッドファイバの発振光から、さらに、1/2の波長の高調波を得ることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記ダブルクラッドファイバの発振光の波長が1030〜1070nmであり、前記波長変換モジュールの高調波の波長が515nm〜535nmであることが望ましい。
この構成によれば、レーザディスプレイ装置等の画像表示装置の緑色光源として望ましい515nm〜535nmの波長の光を得ることができる。
上記のレーザ光源装置において、前記レーザ光源の励起光の出力が20W〜25Wであり、前記ダブルクラッドファイバの発振光の波長が1030〜1070nmであることが望ましい。
この構成によれば、レーザディスプレイ装置等の画像表示装置の緑色光源として望ましい515nm〜535nmの波長の光を得ることができる。
本発明の画像表示装置は、上記のいずれかのレーザ光源装置と、前記レーザ光源装置から出射されるレーザ光を用いて画像を表示する表示部と、を備える。
上記の画像表示装置では、広い色再現範囲を実現することができる。
本発明によれば、ファイバレーザ光源、特に1070nm以下の直線偏光のファイバレーザ光源で問題となっていた、残存励起光によるファイバ劣化を防止することが可能となり、信頼性が向上し、励起光出力の制限を受けないため、発振光出力を増大させることができる。なおかつ、このファイバレーザ光源と波長変換モジュールとを組みあわせた光源を用いることにより、これまで以上の明るさ・大きさを持ち、なおかつ高い色再現性を持つ、レーザディスプレイ装置などに応用することが可能となる。
本発明の実施の形態1のファイバレーザ光源の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態2のファイバレーザ光源の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態3のファイバレーザ光源の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態3のファイバレーザ光源の残存励起光吸収機構の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態4のファイバレーザ光源の残存励起光反射機構の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態5のファイバレーザ光源の残存励起光反射機構の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態6のファイバレーザ光源の残存励起光反射機構の構成を示す模式図である。
本発明の実施の形態7のファイバレーザ光源の残存励起光反射機構の構成を示す模式図である。
図9A及び図9Bは、本発明の実施の形態1〜実施の形態7のファイバレーザ光源の筐体内への各部品の配置方法を示す模式図である。
本発明におけるファイバレーザ光源の波長安定性を示したプロット図である。
本発明におけるファイバレーザ光源を用いた2次元画像表示装置の一例を示す模式図である。
図12Aは、本発明におけるファイバレーザ光源を用いた液晶ディスプレイ装置の一例を示す模式図であり、図12Bは、本発明におけるファイバレーザ光源を用いた装飾用照明装置用光源の一例を示す模式図である。
従来の第2高調波発生装置と組みあわせたファイバレーザ光源の模式構成図である。
S−RGB規格の色再現範囲と緑色光として使用する波長別の色再現範囲との関係を示す色度図である。
従来の光ファイバ増幅器における、発振光の取り出し方法に関する図である。
ダブルクラッド偏波保持ファイバとシングルモード偏波保持ファイバとの接続部分の模式図である。
励起光パワーをパラメータとする、Ybドープファイバ長と残存励起光との関係を示す図である。
Yb添加ダブルクラッドファイバの吸収スペクトルを示すプロット図である。