JPWO2007055333A1 - 活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ - Google Patents
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Abstract
Description
通常、光重合開始剤は、開裂部は1個であることが多いが、本発明で用いる光重合開始剤は、開裂部を2個以上有するため、活性エネルギー照射による開裂後に、重合性モノマーと複数の部分で反応することができるため、硬化膜中の重合反応物の分子量を高くすることができる。ブロッキングとは、未反応モノマーや、低分子の状態で重合が終わってしまったダイマーやトリマーが硬化膜中に多く残ることが原因と考えられる。このため、光重合開始剤として、開裂部を2個以上有する光重合開始剤を用い、硬化膜中の重合反応物の分子量を高くすることで、ブロッキングフリーの印刷物を得ることができる。
光重合開始剤は、分子内結合開裂型と分子間水素引き抜き型に分類されるが、本発明の[式1]または[式2]で示される光重合開始剤は分子内結合開裂型の大部分を占めるアセトフェノン系に分類され、分子間水素引き抜き型と比較し、重合が早い、光酸化による黄変が少ない、貯蔵安定性がよい、などの特徴を有する。
[式1]または[式2]で表される光重合開始剤が吸収する光より、長波長側の光を利用することにより、照射光の浸入深さがより長くなることで、膜内部の硬化が促進される。中でも、上記波長範囲に吸収ピークを有する光重合開始剤を使用する結果、硬化速度が向上した。
このインキは、着色成分を含まない場合、コーティング用途として用いることができ、単独のコーティング層として、または後述の着色剤を含むインキとの積層コーティングを行うこともできる。また硬化膜の硬度、擦過性などの耐久性や成型加工性、あるいは艶の制御といった意匠性を付与するために、各種フィラーや樹脂成分を添加することもできる。フィラーとしては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、球状シリカ、中空シリカなどの体質顔料や樹脂ビーズなどを挙げることができ、樹脂成分としては、活性エネルギー線に不活性な樹脂であれば特に限定はないが、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリケトン樹脂、ポリビニル系樹脂(例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂)、セルロース系樹脂(例えば、CAB樹脂、CAP樹脂)などを挙げることができる。これらのフィラーや樹脂成分を添加する場合は、インクジェット適性を考慮して種類や配合組成を調製することが好ましい。コーティング用途として用いる際には、他の印刷方法、例えばシルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、あるいはスプレー塗工などによるコーティングを行ってもよい。なお、着色剤を含むインキとの積層コーティングにおいては、本発明のインキ以外の一般印刷用途、例えばシルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などで使用されているコーティング材を本発明の着色剤を含むインキ層の上に積層してもよいし、別途成型されたコーティング層(フィルムなど)をラミネート転写する、あるいはスプレー塗工材などによる積層を行うこともできる。
分散剤としては、高分子型分散剤、低分子型分散剤など多種の分散剤が存在するが、分散性に応じて選択することができる。分散補助剤として、顔料誘導体を用いることができる。また、添加剤としては、従来使用されている、ぬれ性調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、スリッピング剤、アンチブロッキング剤、紫外線防止剤などをもちいることができる。いずれの分散剤、分散補助剤、添加剤も目的とする用途に応じ選択可能であり、本発明においてはいずれも限定されるものではない。
本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型インキは延伸加工性に優れ、かつブロッキングフリーである結果、従来変形加工が困難であるとされてきたインクジェットUV印刷において、印刷物を様々な形状に加工でき、かつ、熱処理・トップコートなどの付加設備・付加印刷なしに、美しい印刷物を提供することができるので、従来の用途以外の、印刷後の加工性、美粧性が要求される銘板の印刷などにも用途を大きく広げることができた。特に、本発明のインクジェット用活性エネルギー線硬化型インキは、美粧性を求められる内装、外装印刷用途や、CD、DVDなどへの印刷用途や、フレキシブル基材への印刷などを中心とした非浸透性基材への印刷に適している。
・LIONOL BLUE FG−7400G(東洋インキ製造社製 フタロシアニン顔料) 30部
・ソルスパーズ32000(ルーブリソール社製 顔料分散剤) 9部
・フェノキシエチルアクリレート 61部
・Novoperm Yellow P−HG(クラリアント社製 Benzimidazolone顔料) 35部
・ソルスパーズ24000(ルーブリソール社製 顔料分散剤) 7部
・フェノキシエチルアクリレート 58部
・Hostaperm Red E5B02(クラリアント社製 キナクリドン顔料) 20部
・ソルスパーズ24000(ルーブリソール社製 顔料分散剤) 6部
・フェノキシエチルアクリレート 74部
また、下記のような配合で顔料分散体Dを作成した。分散体の製造方法は、分散体Aと同様の製造方法で作成した。
・Special Black 350(デグサ社製 カーボンブラック顔料) 30部
・ソルスパーズ32000(ルーブリソール社製 顔料分散剤) 6部
・フェノキシエチルアクリレート 64部
・タイペークPF740(石原産業社製 シリカ処理1.0%、アルミナ処理2.0%の白顔料) 40部
・アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製 顔料分散剤) 2部
・フェノキシエチルアクリレート 58部
表1の原料を表の上から順次撹拌しながら添加した。2時間の撹拌の後、溶解残りがないことを確認し、メンブランフィルターでろ過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し、インキを作成した。このインキをインクジェット吐出装置により、膜厚10μmになるようにポリカーボネート板上に吐出した。吐出の直後、ハリソン東芝ライティング社製120W/cm、高圧水銀ランプ1灯、コンベア速度5m/min、1Passで紫外線硬化させ、塗膜を得た。
表2の原料を表の上から順次撹拌しながら添加した。2時間の撹拌の後、溶解残りがないことを確認し、メンブランフィルターでろ過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し、インキを作成した。このインキをインクジェット吐出装置により、膜厚10μmになるようにポリカーボネート板上に吐出した。吐出の直後、ハリソン東芝ライティング社製120W/cm、高圧水銀ランプ1灯、コンベア速度5m/min、1Passで紫外線硬化させ、塗膜を得た。
得られたポリカーボネート上の塗膜は、打ち抜き機(Dumbbell社製)を用いて基材ごとダンベル形状に打ち抜かれ、得られたテストピースをテンシロン(UCT−1T:ORIENTEC社製)を用いて170℃に加温し、歪み速度2/minの条件下で、基材ごと引張り試験を行った。塗膜の破断点は、ロードセルから得られる張力変化からとらえることが困難であったため、目視で塗膜表面の破断を確認した時点での伸びを%に換算して表記した。
基材への密着性は、硬化後の塗膜を1mm間隔で100マスにクロスカットした部分にセロハンテープを貼り付け、上面から消しゴムでこすり、セロハンテープの塗工面への密着を充分に行った後、セロハンテープを90°で剥離させたときの塗膜の基材への密着の程度から判断した。評価基準は以下の通りである。
○:100マス中全く剥離が観察されない場合
○△:100マス中100マス残っているが、マスのエッジに破損が観察された場合
△:100マス中1〜50マス剥離した場合
△×:100マス中51〜99マス剥離した場合
×:100マス中100剥離した場合
ブロッキングは、上記硬化膜上にポリカーボネートを重ね、エアラミネーターにより線圧11.5kgf/cm2、速度0.3m/minで加圧した後、剥離し、ポリカーボネートの状態を目視観察した。
○:ポリカーボネートへの転写なし
△:ポリカーボネートへの転写少しあり
×:ポリカーボネートへの転写かなりあり
インキをインクジェット吐出装置により、膜厚10μmになるようにポリカーボネート板上に吐出し、吐出の直後、ハリソン東芝ライティング社製120W/cm、高圧水銀ランプ1灯、で紫外線照射させ、その後、硬化膜上を滑らせた指により、硬化膜に筋が残らず、膜が硬化したと判断されたときの、コンベア速度から硬化速度を評価した。評価基準は以下のとおりである。
>○:20m/min以上の硬化速度を有する場合
○:20m/min
○△:10m/min
△:5m/min
×:硬化しない
作成直後のインキの粘度を測定し、60℃雰囲気中2日間の促進試験後、再度粘度を測定する。評価基準は以下のとおりである。
○:促進試験後の粘度上昇が初期粘度と比較して20%以内
×:促進試験後の粘度上昇が初期粘度と比較して20%以上
なお、粘度測定にはE型粘度計を用い、25℃、20rpmの条件下にて行った。
実施例2〜13は、単官能モノマーの添加量を実施例1よりもさらに多くした例であり、延伸率が90%以上で、より延伸加工性が高いインキになっている。
実施例5は、ブロッキング性や、密着性、延伸率など優れている上、開始剤の組み合わせが優れているため、硬化速度が大幅に向上している。
実施例6では、[式1]で表される光重合開始剤と[式2]で示される光重合開始剤を併用することで、硬化速度が格段に速くなっている。
実施例7では、第2の光重合開始剤として、350nmより短波長側に吸収ピークを有する光重合開始剤を配合していることが原因し、膜内部まで紫外光が到達せず、密着性が若干低下している。
実施例8では、第2の光重合開始剤として、吸収スペクトルが、395nmより長波長側に吸収ピークを有する光重合開始剤を用いたことで、第2の光重合開始剤により紫外光が著しく阻害され、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)の効果が薄まり、硬化速度、密着性が低下している。
実施例9では、単官能モノマーが重合性モノマー中50重量%以上であるにもかかわらず2−フェノキシエチルアクリレートが30重量%以下である結果、密着性が低下している。
実施例10では、単官能モノマーが重合性モノマー中50重量%ではあるが、ビニルカプロラムタムを用いなかったことで、反応性が悪くなり、硬化速度、密着性、ブロッキングが低下している。
実施例11では、単官能モノマーが重合性モノマー中50重量%ではあるが、ビニルカプロラムタムを重合性モノマー中30重量%以上であることで、粘度の安定性が悪くなっている。
実施例12、13では、顔料が含まれていないことから紫外光の透過阻害が起こらないため硬化速度が非常に速くなっている。
比較例2では、特許文献3で報告されている開始剤を実施例の2倍もの添加量で配合しているにもかかわらず、ブロッキングの評価が悪い。
また、比較例3〜5では、光重合開始剤として、本発明で用いたものと同じアセトフェノン系光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンと、第2の開始剤として特に好ましい2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドとの組み合わせを実施例の2倍もの添加量で配合しているにもかかわらず、アセトフェノン系光重合開始剤が開裂部を1個しか持たない結果、開始剤ブロッキングの評価が悪い。
比較例2〜5の実験結果は、開裂部を1個しか持たない光重合開始剤を使用する時、その添加量を多くした場合でも、他の開始剤と組み合わせた場合でも、反応率が充分に上がらず、ブロッキングフリーのインキは作成できていないことを示唆している。
Claims (9)
- 光重合開始剤が、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)または2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチル−プロパン−1−オンであることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
- 光重合開始剤の含有量が重合性モノマーに対し、2〜20重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
- 更に、吸収ピークを350nm〜395nmの波長範囲に有する第2の光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
- 第2の光重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、またはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドであることを特徴とする請求項4記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
- 更に、インキ中に、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を含むことを特徴とする請求項5記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
- 重合性モノマーが、2−フェノキシエチルアクリレートを30重量%以上含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
- 重合性モノマーが、N−ビニル−2−カプロラクタムを5〜30重量%含有することを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
- 印刷基材に、請求項1〜8いずれか記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキで印刷してなる印刷物。
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