JPWO2007052762A1 - 新規なエネルギー貯蔵手段を有するエネルギー貯蔵デバイス - Google Patents

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Abstract

エネルギー密度が大きく、出力密度にも優れたエネルギー貯蔵デバイスを提供することである。例えば電気二重層キャパシタ、レドックス型キャパシタ、リチウムイオン電解質型キャパシタ、及び、これらの応用デバイスにおいて、これらのもつ高い出力密度や、高い充放電効率、長寿命などの利点を損なうことなく、エネルギー密度を大幅に改善するという課題を解決する。正極、負極及び電解液を含むエネルギー貯蔵デバイスにおいて、前記電解液中にドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が存在することを特徴とするエネルギー貯蔵デバイス、によって解決する。【選択図】 なし

Description

本発明は、新規なエネルギー貯蔵手段を有するエネルギー貯蔵デバイスに関する。電解液に含有されるドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物のドープ/脱ドープ反応によりエネルギーを貯蔵する機構を備えたエネルギー貯蔵デバイスに関する発明であり、電気二重層キャパシタ、レドックス型キャパシタ、リチウムイオン電解質型キャパシタ、および、その応用デバイス等に適用可能である。
近年、エネルギー貯蔵デバイスとして、電気二重層キャパシタ等が注目されている。電気二重層キャパシタは、電圧を加えたときに電極と電解質との界面に生じる電気二重層容量を利用した蓄電用電気化学デバイスである。この電気二重層容量による蓄電のメカニズムは、電気化学反応を伴う二次電池に比較してより早い充放電が可能で、繰り返し寿命特性にも優れているという特徴を有している。電気二重層キャパシタは、この特徴を利用して、ハイブリッド自動車(HEV)や燃料電池自動車(FCEV)等の自動車用途での採用が期待されている。しかしながら、電気二重層キャパシタはエネルギー密度が小さいという欠点がある。電気二重層容量は電極の表面積に比例することから、表面積の大きな賦活した活性炭が一般に電極として用いられている。しかし、現状ではエネルギー密度が低く、そのため、大容量化が求められている。
そのような現状に鑑み、電気二重層キャパシタよりも容量密度を飛躍的に向上させるために、導電性高分子による擬似容量を用いた蓄電器が提案されている。擬似容量は、電気二重層容量とは異なり、電極界面での電子移動過程(ファラデー過程)を伴って蓄えられる。このような擬似容量は導電性高分子を用いる場合には導電性高分子のレドックス反応、すなわちドープ・脱ドープ反応によって発現する。特にポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン等のπ共役高分子は、理論容量密度が高く、電極として大きな期待が寄せられている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、これらの高パワー密度が期待できるキャパシタにリチウムイオン二次電池の高エネルギー密度をあわせ、ある程度のエネルギー密度を得ようとする試みとして、これらキャパシタの一方の電極にグラファイト等のリチウムイオンのインターカレーションを利用して蓄電するいわゆるリチウムイオン電解質型キャパシタが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
これらのキャパシタは、いずれもエネルギー貯蔵手段として、電極または電極近傍の電気二重層を利用している。すなわち、電気エネルギーの貯蔵放出は、電極材料の酸化還元、電極近傍の電気二重層における電荷の移動、電極表面でのイオンの吸脱着等の電極に関わる部位でのエネルギーの授受を利用しているものが大部分である。その結果、そこで得られるエネルギー密度には限界があった。
特開平6−104141号公報 特開2002−203742号公報 特開平8−107048号公報
本発明が解決しようとする課題は、エネルギー密度が大きく、出力密度にも優れたエネルギー貯蔵デバイスを提供することである。例えば電気二重層キャパシタ、レドックス型キャパシタ、リチウムイオン電解質型キャパシタ、及び、これらの応用デバイスにおいて、これらのもつ高い出力密度や、高い充放電効率、長寿命などの利点を損なうことなく、エネルギー密度を大幅に改善するという課題を解決する。
本発明者らは鋭意研究の結果、電解液中に存在するドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物がドープ/脱ドープ反応を行うことによりエネルギーを貯蔵することを発見し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明は、正極、負極及び電解液を含むエネルギー貯蔵デバイスにおいて、前記電解液中にドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が存在することを特徴とするエネルギー貯蔵デバイスに関する。
前記電解液に対する前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の濃度が、5重量%以上であることが望ましい。
また、少なくとも前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の一部が、電解液に溶解していることが好ましい。
また、前記電解液は、少なくともイオン性液体を含む液体であることが好ましい。
また、前記電解液は、さらにアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びγ−ブチルラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒を含む液体であることが好ましい。
また、前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物は、π共役化合物であることが好ましい。
また、前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が、π共役高分子であることが好ましい。
また、前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が、炭素原子数が14以上50以下であるπ共役化合物であることが好ましい。
また、前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が、ピレン、ナフタセン、クリセン、ペリレン、ベンゾピレン、コロネン、ヘリセン、ペンタセン及びセキシフェニル並びにそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
また、前記正極及び負極は対向して配置されており、正極と負極の間に前記電解液が存在し、正極と負極の間の電解液中に前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の自由拡散を抑制する電解液自由拡散抑制手段が存在することが好ましい。
また、前記電解液自由拡散抑制手段が、セパレーター及び/又は電解質膜であることが好ましい。
また、電解液中に存在するドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物がドープ/脱ドープ反応を行うことによりエネルギーを貯蔵する、第1のエネルギー貯蔵手段を有することが好ましい。
また、電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する、第2のエネルギー貯蔵手段を有することが好ましい。
また、電極のレドックス反応を利用してエネルギーを貯蔵する、第3のエネルギー貯蔵手段を有することが好ましい。
また、前記電解液にリチウムイオンを含み、負極である炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する、第4のエネルギー貯蔵手段を有することが好ましい。
また、正極の充放電可能電荷量/負極の充放電可能電荷量の比率が2.0以上の場合において、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、Nドープされたn型化合物、脱ドープされたp型化合物、脱ドープされたpn型化合物及びNドープされたpn型化合物の合計が、全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対して50モル%以上含むことが好ましい。
また、正極の充放電可能電荷量/負極の充放電可能電荷量の比率が0.5以下の場合において、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、Pドープされたp型化合物、脱ドープされた化合物、脱ドープされたpn型化合物、及びPドープされたpn型化合物の合計が、全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対して50モル%以上含むことが好ましい。
また、正極の充放電可能電荷量/負極の充放電可能電荷量の比率が0.5より大きく2.0より小さい場合において、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、Pドープされたp型化合物のモル数をA、脱ドープされたp型化合物のモル数をB、Nドープされたn型化合物のモル数をC、脱ドープされたn型化合物のモル数をD、Pドープされたpn型化合物のモル数をE、Nドープされたpn型化合物のモル数をF、脱ドープされたpn型化合物のモル数をG、とした時に、下記式
−0.2≦(A−B−C+D+E−F)/(A+B+C+D+E+F+G)≦0.2
の条件を満たすことが好ましい。
また別の発明は、正極、負極及び電解液を含むエネルギー貯蔵デバイスの製造方法でおいて、前記電解液にドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を混合する工程を有することを特徴とするエネルギー貯蔵デバイスの製造方法に関する。
前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を電解液に混合する際に、正極と負極の充放電可能電荷量の比率に応じて、全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対するドープされた状態のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の割合及びp型/n型/pn型の種別を選択することにより、エネルギー貯蔵デバイス全体の充放電可能電荷量を向上させることが好ましい。
本発明により、高い出力密度、高い充放電効率、長寿命に加えて、高いエネルギー密度を併せ持つエネルギー貯蔵デバイスを得ることが可能となる。例えば電気二重層キャパシタ、レドックス型キャパシタ、リチウムイオン電解質型キャパシタ、及び、これらの応用デバイスにおいてエネルギー密度を大幅に増大させることが可能である。
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート、または、ポリアニリンを溶解させた1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートのCVスペクトルである。 1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートを電解液とした2極セルの充放電曲線である。 ポリアニリンを1重量部溶解させた1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートを電解液とした2極セルの充放電曲線である。 ポリアニリンを10重量部溶解させた1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートを電解液とした2極セルの充放電曲線である。 ピレンを含むテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液のCVスペクトルである。 ピレンを含むテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液を電解液に用いた白金2極セルの充放電曲線である。 コロネンを含むテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのクロロホルム溶液のCVスペクトルである。 ヨードベンゼンを含むテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液のCVスペクトルである。 ベンズイミダゾールを含むテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液のCVスペクトルである。 キノリンを含むテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液のCVスペクトルである。 充放電測定に用いたビーカーセルを模式的に表す図である。 比較例5および実施例6の充放電曲線である。 実施例5−7および比較例5の充放電曲線である。 実施例5、8、9および比較例5、6のビーカーセルにおける電極表面積(片側電極の表面積)あたりの静電容量(F/m2)を示すグラフである。
符号の説明
1 1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートのCVスペクトル
2 ポリアニリンを1重量部溶解させた1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシ レートのCVスペクトル
3 ポリアニリンを10重量部溶解させた1−エチル−3−メチルイミダゾリウムト シレートのCVスペクトル
本発明は、従来、エネルギー貯蔵デバイスにおけるエネルギー貯蔵手段としては、電極あるいは、電極近傍の電気二重層における電荷の移動が主として利用されていたのに対して、これまでは、エネルギー貯蔵手段として利用されていなかった、電極間に存在する電解液領域をエネルギー貯蔵手段として利用できることを発見したものである。本発明は、電気二重層キャパシタ、レドックス型キャパシタ、リチウムイオン電解質型キャパシタ、及び、これらの応用デバイスにおいて従来から課題とされていたエネルギー密度が低いという問題を解決するものである。以下で本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
本発明の第1は、正極、負極及び電解液を含むエネルギー貯蔵デバイスにおいて、前記電解液中にドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が存在することを特徴とするエネルギー貯蔵デバイスである。
電解液中に存在するドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が、ドープ/脱ドープ反応を行うことでエネルギー貯蔵手段として作用することにより、これまでエネルギー貯蔵手段としては利用されていなかった電解液領域がエネルギーを貯蔵するため、従来の電極のエネルギー貯蔵手段に加えて、より多くのエネルギーを貯蔵することが可能となる。
<正極、負極>
充電の際に電極またはその近傍に正の電荷が蓄積される側の電極を正極と呼び、充電の際に電極またはその近傍に負の電荷が蓄積される側の電極を負極と呼ぶ。電気2重層キャパシタのように、デバイスによっては一つの電極が正極としても負極としても働くことが可能であるため、一つの電極がいつも正極或いは負極とは限らない場合もある。しかしこのような場合にも、ある瞬間に片方の電極が正極として働いていればもう一方の電極は負極として働くので、ここでは、このような場合も含めて「正極・負極」と呼ぶ。
<電解液>
本発明の電解液はドープ/脱ドープによるエネルギー貯蔵が可能な化合物が含まれることが特徴である。
後述するように、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物は電解液中に分散していても溶解していてもよいが、溶解していることが好ましい。従って、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として高分子量の化合物を用いる場合には、該ドープ/脱ドープ反応を行う化合物を溶解しうる溶媒を用いることが好ましい。
また、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を分散して用いる場合や、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、比較的分子量の小さい化合物を用いる場合には、電解液の溶媒としては通常の有機溶媒を使用することが可能であるが、高濃度で電解質(ドーパントとなるイオン)を溶解でき、電位窓が広いという観点から、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチルラクトンなどが好適に用いられる。
また、溶媒に電解質を溶解させる代わりに、溶媒を含まず常温でイオンのみから構成される液体であるイオン性液体(常温溶融塩)を利用することも可能である。イオン性液体はイオン濃度を通常の電解液よりも高くすることができ、蒸発せず、引火性も無いため、エネルギーデバイスに用いるのに好ましい性質を備えている。
イオン性液体を用いる場合には、高イオン濃度と高い電気伝導度を程よくバランスさせる観点からイオン性液体と有機溶媒との混合物が好ましく用いられる。
また、エネルギー貯蔵デバイスのエネルギー密度を向上させるためには電解液中のドープ/脱ドープ可能な化合物の濃度が高いほうが望ましい。ドープ/脱ドープ可能な化合物は電解液に溶解していても、分散していても良いが、多孔質電極を用いる際には、電極の細孔の奥まで入りやすくするために、電解液に溶解しているほうが望ましい。
<エネルギー貯蔵デバイス>
本発明でいうエネルギー貯蔵デバイスとは、電気化学反応や化学吸着、物理吸着等によってエネルギーを貯蔵することができるデバイスをいい、二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、酸化物やπ共役高分子、π共役分子によるレドックス型キャパシタ、リチウムイオン電解質型キャパシタ等が含まれる。
<ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物>
本発明で言うドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物とは、電解液中で電気化学的に可逆的なドープ/脱ドープ反応を起こしうる化合物である。例えば本発明に用いられるπ共役高分子やπ共役分子が挙げられる。
また、本発明の第2は、前記電解液に対する前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の濃度が、5重量%以上、95重量%以下であることを特徴とする上記第1の発明に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<電解液中のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の濃度>
電解液中のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の濃度は低すぎると電解液の領域に十分なエネルギー貯蔵が行えないので、ある程度以上の濃度であることが必要である。効果的にエネルギー貯蔵量を増やすためには、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の濃度が5重量%以上、95重量%以下であることが望ましい。
また、本発明の第3は、少なくとも前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の一部が、電解液に溶解していることを特徴とする上記第1または第2の発明に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<溶解>
ここで溶解とは、分子レベルで溶媒と均一な混合物になっていることを意味する。電解液に溶解しないで分散している状態でも、電圧の印加によって脱ドープ状態の化合物をドープ状態に変化させることも可能であり、ドープ状態の化合物を脱ドープ状態に変化させることも可能である。しかし、一般に長期に分散状態を維持することは困難であり、溶解している場合に比べて動作が不安定になることがあるため、電解液がドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を溶解していることが好ましい。また、多孔質の電極を用いる場合には、活物質であるドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を電極の細孔に入りやすいようにするために、やはり電解液に溶解させるのが好ましい。電解液中のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の濃度が高いほどエネルギー貯蔵可能量が増大するが、一般的に粘度が高くなるため、電解液の導電率が低下し素子の応答速度が小さくなるため、適当な濃度が存在する。素子の設計によるが、5重量%以上、70重量%以下が望ましい。
また、本発明の第4は、前記電解液は、少なくともイオン性液体を含む液体であることを特徴とする上記第1〜3の発明のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<イオン性液体>
イオン性液体は、常温で液体状態を保つ塩であって、様々な化合物が存在する。代表的なものは、カチオン成分が、イミダゾリウム誘導体、アンモニウム誘導体、ピリジニウム誘導体、フォスフォニウム誘導体等であり、アニオン成分が、BF4 -、PF6 -等のフッ素を含む原子団、スルホン酸アニオン(−SO3 -)を含む原子団、アニオン成分がカルボキシラト(−COO-)を含む原子団等が知られている。これらのイオン性液体は、すべてがイオン性の原子団から構成されているため、イオン伝導性を示し、イオン濃度を通常の電解液よりも高くすることができ、蒸発せず、引火性も無いため電解液として好適に用いることができる。
中でも、ドープ・脱ドープによる蓄積電荷が大きく、ドープ・脱ドープの繰り返し安定性に優れている理由から1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートなどのイオン性液体は本発明の電解液に好適に使用できる。
またイオン性液体は、ドープ/脱ドープ可能な化合物を溶解させる観点からも電解液として好ましい。例えばドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の一例であるπ共役高分子は一般に不溶不融で知られ、一般の溶媒に対する溶解度は低い。しかし、本発明者らによる検討の結果、イオン性液体は多くのπ共役高分子を溶解させることができることがわかった。電解液の溶媒としてイオン液体を用いることは高濃度のπ共役高分子電解液を形成するうえで有効である。
さらに、イオン性液体単独ではなく、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の他の支持電解質を溶解させて用いることもできるし、アセトニトリル等の他の溶媒を混合して用いることもできる。しかし、電解液にイオン性液体の混合物を用いた場合には、π共役高分子の溶解性が低下するため、電解液成分の少なくとも30%重量以上、好ましくは80重量%以上がイオン性液体であることが好ましい。
また、本発明の第5は、前記電解液は、さらにアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びγ−ブチルラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒を含む液体であることを特徴とする上記第4の発明に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<有機溶媒>
有機溶媒の中でもアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びγ−ブチルラクトンは電位窓が広く、低粘度であり、電解液に使用する溶媒として好ましい。また、これらの有機溶媒はイオン性液体と非常に広い混合比で均一な混合液を作り、耐電圧、電気伝導度が高い電解液を作製できるため、イオン性液体との混合液として電解液に用いる観点からも好ましい。
<イオン性液体と有機溶媒の混合物>
イオン性液体に有機溶媒を添加し、撹拌することでイオン性液体と有機溶媒の混合液を作製する。逆に、有機溶媒にイオン性液体を添加して撹拌して混合液を作製しても良い。イオン性液体と有機溶媒の組み合わせ及び混合比率によっては均一に混合するのに時間がかかる場合があるが、概ね1時間程度撹拌すれば殆どの場合、均一な混合液を得ることができる。高電圧で充放電を行うキャパシタ用の電解液など、電解液の用途によっては電解液への水分の混入を防ぐ必要があり、イオン性液体と有機溶媒の混合は窒素ガス、アルゴンガスなどの雰囲気中で行わなければならない場合もある。有機溶媒はイオン性液体の粘度を低くするために混合する必要があるが、混合液のイオン濃度を高くしたいので、過剰に有機溶媒を混合するのは好ましくない。イオン性液体と有機溶媒は、その混合液の電気伝導度が極大となる混合比率で混合することが一般に最も望ましいが、電気伝導度が最大となる混合比からイオン性液体の含有量が±50%以内の範囲の比率(体積比)であれば、任意の比率で混合しても十分な電気伝導度を持つ混合液を作製でき、本発明の目的に良好に使用可能である。この範囲内での比率で混合したイオン性液体と有機溶媒の混合液は広く電気化学素子の電解液として使用が可能であり、電気化学素子の応答速度を損なう心配もほとんど無い。この範囲から外れると、例えば電解液のイオン濃度を極めて高く出来たとしても、電気化学素子の応答速度に対して不利に働き、遅い応用側でも使用可能な素子でない限り実用性に乏しくなってしまう。例えば、電気2重層キャパシタ、レドックス型キャパシタの電解液として上記範囲内での混合比率で作製した混合液を用いると、従来の電解液を用いた場合よりも静電容量、充放電速度をともに向上させることが可能である。より望ましい混合比率としては、電気伝導度が最大となる混合比からイオン性液体の含有量が±20%以内の範囲の比率(体積比)であることであり、さらに望ましくは電気伝導度が最大となる混合比からイオン性液体の含有量が±10%以内の範囲の比率(体積比)であることである。以上のような好ましい混合比率は一般にイオン性液体:有機溶媒=1:5〜5:1(体積比)の範囲内である。アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びγ−ブチルラクトンはこのような混合物を作製するのに好適に用いることができる。
また、本発明の第6は、前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物は、π共役化合物であることを特徴とする上記第1〜5の発明いずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<π共役化合物>
本発明で用いるドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物は、特に制限は無いが、比較的安価に入手でき、電解液に溶解させるのが比較的容易である、π共役化合物であることが望ましい。π共役化合物としては例えば代表的な導電性高分子であるポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレンなどの導電性高分子およびその誘導体、これらの導電性高分子のオリゴマーおよびその誘導体、π共役分子であるナフタセン(テトラセン)、クリセン、ピレン、ペンタセン、ベンゾピレン、ペリレン、ヘリセン、p-セキシフェニル、コロネンなどが挙げられる。ここで言うオリゴマーとは、モノマー分子が2〜20個重合したものを指す。また、C60などのフラーレンやその誘導体も利用することが可能である。しかし、可逆的なドープ・脱ドープをするものであれば特に制限はされない。また、これらの化合物およびその誘導体を複数含む混合物も本発明に良好に使用することができる。
使用するπ共役化合物はより多くドーピングができるものがエネルギー貯蔵デバイスの容量を大きくする観点から好ましく、π共役化合物とドーパントの種類の組み合わせを適切に選ぶことにより大幅な容量増大が可能である。
本発明に用いるπ共役化合物は、自身がドープあるいは脱ドープすることによりエネルギーを貯蔵するが、後述するように、エネルギー貯蔵デバイス形成時のπ共役化合物は、ドープ状態であっても、脱ドープ状態であってもよく、必要によっては一部だけがドープされた状態であってもよい。
また、本発明の第7は、前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が、π共役高分子であることを特徴とする上記発明1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
本発明で用いるドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物は、特に制限は無い。しかし、安定かつ高速なドープ・脱ドープ挙動を示すπ共役高分子を用いれば、高速充放電が可能で、比較的長寿命なエネルギー貯蔵デバイスを作製できるため、π共役高分子を用いることが望ましい。
<π共役高分子>
ここで言うπ共役高分子とは、π共役の主鎖を持つ高分子であれば特に限定はされないが、数平均分子量が1000以上であるものが好ましい。さらに好ましくは数平均分子量が1500以上100000以下である。また、原料モノマーの結合数で表すと、原料モノマーが21個以上結合した化合物であることが好ましい。π共役高分子としては例えば代表的な導電性高分子であるポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレンなどの導電性高分子およびその誘導体を良好に利用することができるが、可逆的なドープ・脱ドープをするものであれば特に制限はされない。また、これらの導電性高分子およびその誘導体を複数含む混合物も良好に使用することができる。
多孔質の電極を用いる場合には、活物質であるπ共役高分子を電極の細孔に入りやすいようにするために、アルキル基、ニトロ基、スルホン酸基など置換基を導入して溶媒に溶解しやすいようにするのが好ましい場合がある。
また、本発明の第8は、前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が、炭素原子数が14以上50以下であるπ共役化合物であることを特徴とする上記発明1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<π共役高分子と、有機溶媒またはイオン性液体との組み合わせ>
一般にπ共役高分子は有機溶媒に分散あるいは溶解しにくいという性質があるが、適切にその組み合わせを選択することによって、電解質中にπ共役高分子がより均質に存在し、本発明の効果を顕著に奏する。好ましい組み合わせとしては、ポリ−3−アルキルチオフェン(アルキル基の炭素数は3〜12個が望ましい)とテトラヒドロフランおよびクロロホルム、またポリ−3−ニトロチオフェンとプロピレンカーボネート、等が挙げられる。π共役高分子と有機溶媒を適切に組み合わせた電解質を用いることにより、電位窓を広くする、電気伝導度を高くする、などの利点を有する。
また、イオン性液体との組み合わせを適切に選択することによっても、電解質中にπ共役高分子を存在させることが可能となる。好ましい組み合わせとしては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートおよび1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートと、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリパラフェニレンおよびその誘導体、等が挙げられる。イオン性液体を用いる場合には、イオン濃度が通常の電解液よりも高くなるという利点がある。この場合、目的とする電気伝導度を得るために有機溶媒と混合して用いることが好ましい。
有機溶媒を用いるか、イオン性液体を用いるか、イオン性液体と有機溶媒を混合して用いるかは、用いるπ共役高分子との種類や目的とする効果に応じて選択すればよい。
<炭素原子数が14以上50以下であるπ共役化合物>
本発明においては、π共役化合物として高分子だけでなく、比較的低分子量の化合物を用いることも可能である。特に、比較的分子量の低い化合物であっても、繰り返しドープ/脱ドープ反応をさせることによって蓄電に利用可能であるという知見はこれまで見出されておらず、これを利用することによって容量を増大させることは、当業者には予測しえないことである。しかも、低分子量の化合物を用いれば、後述のように多孔質電極の細孔に導入しやすいという利点も有する。低分子量のπ共役化合物としては、炭素原子数が14以上50以下であるものが好ましい。比較的嵩が小さいπ共役化合物は種類によってはドープ/脱ドープの安定性に劣る場合があるものの、電解液中に溶解した状態では高分子よりも活性炭などの多孔質電極の細孔に導入しやすいので、多孔質電極を用いる場合に活物質として非常に好ましい場合がある。ここで言うπ共役化合物とは、単一のπ共役分子のみを指すのではなく、π共役高分子のオリゴマーも含む。このようなオリゴマーの例としては、チオフェン、アニリン、ピロール、ベンゼンなどの低重合体(2量体、3量体、4量体、5量体、6量体、7量体等)およびその誘導体などを良好に利用することができる。また、これらの低重合体およびその誘導体を複数含む混合物も良好に使用することができる。
また、π共役化合物は、例えば、ナフタセン(テトラセン)の他、クリセン、ピレン等をπ共役化合物として用いることが可能である。さらに、ペンタセンや、ベンゾピレン、ペリレン等を用いることが可能であり、さらに大きなものとしてヘリセン、p-セキシフェニル、コロネン等も用いることができる。さらに、これらの誘導体であってもよく、また、これらおよびこれらの誘導体を複数含む混合物であってもよい。
これらの分子は、電極表面付近になるべく多数存在することが好ましいので、活性炭のような複雑な表面形状を有する電極の場合は、同じ分子量の直鎖状分子と比較して緻密な充填が可能であるピレンやコロネン等の方が有利と考えられる。
上述したπ共役化合物に様々な官能基を導入することはもちろん可能である。官能基を導入することにより、ドープ/脱ドープ反応のエネルギーや容量を変化させることができるばかりでなく、溶媒に対する溶解性を変化させることができる。たとえば、アルキル基やニトロ基、スルホン酸基を導入することにより極性溶媒に対する溶解性を高めることができる。さらに主骨格の炭素の一部を窒素やカルボニル基に置き換えることも可能である。例えばペンタセンの炭素2個を窒素に置き換え、カルボニル基2個を導入した形状のキナクリドンも本発明に使用可能である。
これらのπ共役化合物は、同じπ共役高分子を溶解させる場合と比較して溶解できる溶媒の選択肢が広がり、イオン液体以外にも、THFや、NMP、トリクロロメタン等に比較的容易に溶解させることができる。
これらのπ共役化合物の多くは紛体として比較的安価に市販されており、π共役高分子に比べて優れた溶媒溶解性を有する。前記π共役化合物は安定に可逆的なドープ・脱ドープを起こす観点から炭素原子数14以上であることが好ましい。分子内の炭素原子の数が、14未満の場合、一般的な電圧印加条件でドープ/脱ドープ反応を誘発することが困難である。一般的な電圧印加条件(Ag/Ag+電極で±2.5ボルト)を超えて電圧を印加すると電解液の分解が起こる。1分子に含まれる炭素原子の数が51個以上の場合、電解液に溶解させることが可能なπ共役化合物の量の制約が大きくなる。また、活物質を電極の細孔にスムーズに導入するという観点からは嵩が大きくない方が好ましく、この点からも炭素原子数50以下であることが好ましい。またπ共役高分子と同様の観点からアルキル基、ニトロ基、スルホン酸基など適当な置換基を導入して溶媒に溶解しやすいようにするのが望ましい。
また、本発明の第9は、前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が、ピレン、ナフタセン、クリセン、ペリレン、ベンゾピレン、コロネン、ヘリセン、ペンタセン及びセキシフェニル並びにそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする上記発明1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<好適に使用できるπ共役分子>
上記炭素原子数が14以上50以下であるπ共役化合物の中でも、ピレン、ナフタセン、クリセン、ペリレン、ベンゾピレン、コロネン、ヘリセン、ペンタセン及びセキシフェニルは電解液中でドープ/脱ドープ反応が可能であり、嵩も適度に小さいので活性炭などの多孔質電極の細孔中にも導入しやすく、本発明の目的に好適に使用できる。
また、本発明の第10は、前記正極及び負極は対向して配置されており、正極と負極の間に前記電解液が存在し、正極と負極の間の電解液中に前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の自由拡散を抑制する電解液自由拡散抑制手段が存在することを特徴とする上記発明1〜9のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<自由拡散を抑制する電解液自由拡散抑制手段>
本発明のエネルギー貯蔵デバイスは、2枚以上の電極を有しており、両電極間に電位差をもたせることによりエネルギーを貯蔵する。しかし、電解液中の化合物がドープ/脱ドープすることによる貯蔵エネルギーは、ドープ/脱ドープ可能な化合物が充電後に自由拡散によって電極近傍から離れてしまうと失われるため、液内の電荷の均一化を防止するための電解液自由拡散抑制手段が必要である。例えば電極を活性炭のような多孔質のものを使用することにより、電極近傍の電解液の自由拡散をある程度抑制することが可能である。
また、本発明の第11は、前記電解液自由拡散抑制手段が、セパレーター及び/又は電解質膜であることを特徴とする上記発明10に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<セパレーター>
本発明のエネルギー貯蔵デバイスは、2枚以上の電極を有しており、両電極間に電位差をもたせることによりエネルギーを貯蔵する。両電極間に電子伝導の手段が存在すると放電が起こり、蓄電効率が低下するため、電極どうしの接触を防止するために両電極間にはセパレーターを介在させるのが一般的である。この電極に接するように存在するセパレーターは、そのままで電極近傍の電解液の自由拡散を抑制する効果があるので、本発明のエネルギー貯蔵デバイスに使用するのが好ましい。
<電解質膜>
合成セルロース繊維など用いた一般の紙セパレーター以外にも、電解質膜も電解液の自由拡散を抑制する目的に利用できる。電解質膜はイオン移動が可能であり、かつ液内電荷の均一化防止効果があるので、本発明に良好に用いることができる。
また、本発明の第12は、電解液中に存在するドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物がドープ/脱ドープ反応を行うことによりエネルギーを貯蔵する、第1のエネルギー貯蔵手段を有することを特徴とする上記発明1〜11のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<第1のエネルギー貯蔵手段>
本発明者らは、電解液中に存在する化合物がドープ/脱ドープ反応を行うことによりエネルギーを貯蔵することが可能である事を見出した。これを第1のエネルギー貯蔵手段と呼ぶ。本発明のエネルギー貯蔵デバイスにおける、第1のエネルギー貯蔵手段は、電解液中に存在する少なくとも1つの化合物がドープ/脱ドープ反応を行うことによりエネルギーを貯蔵することを特徴とする。ここでいう化合物は、ドープ/脱ドープ反応を行うことによりエネルギーを貯蔵することが可能であれば、特に限定されることはないが、π共役分子やπ共役高分子などのπ共役化合物が好ましい。従来は利用されていなかった電解液の領域にエネルギーを貯蔵することが可能であり、エネルギー貯蔵量を大きくすることができる。以下に2つの例を示す。
<例1 電極に蓄電機能がなく、電解液に含まれる化合物がp−ドープ可能なもの>
この場合は、電解液の一部の化合物(おもに一方の電極近傍に存在する)がp−ドープされるとともに、一部のp−ドープされた状態の化合物(おもに該電極に対向する電極近傍に存在する)が脱ドープされることにより充電される。逆反応が起こることで放電が行なわれる。電解液中の化合物がn−ドープのみ可能な場合も原理的には同じシステムが構築できる。
<例2 電極に蓄電機能がなく、電解液に含まれるπ共役分子がpn両ドープ可能なもの>
この場合は、電解液の一部の化合物(おもに一方の電極近傍に存在する)がp−ドープされるとともに、一部の化合物(おもに該電極に対向する電極近傍に存在する)がn−ドープされることにより充電される。それぞれドープされた化合物が脱ドープされることで放電が行なわれる。
<p―ドープ>
化合物自体が酸化を受けて正に帯電し、その電荷を打ち消すようにアニオンが化合物の近傍に来て全体として中性となって安定化した状態のドーピング(p−ドープ)のことである。このタイプのドープ/脱ドープを起こす化合物をp型の化合物と呼ぶ。p型の化合物としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ−(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンなどを挙げることができる。
<n−ドープ>
化合物自体が還元を受けて負に帯電し、その電荷を打ち消すようにカチオンが化合物の近傍に来て全体として中性となって安定化した状態のドーピング(n−ドープ)のことである。このタイプのドープ/脱ドープを起こす化合物をn型の化合物と呼ぶ。
<pn両ドープ>
上記p−ドープおよびn−ドープの両方を合わせてpn両ドープと呼ぶ。pn両ドープが可能な化合物をpn型の化合物と呼ぶ。pn型の化合物としては、ポリ−3−(4−フルオロフェニル)チオフェン、ポリ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)チオフェン、ポリ−3−(2,4−ジフルオロフェニル)チオフェンなどを挙げることができる。
また、本発明の第13は、さらに電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する、第2のエネルギー貯蔵手段を有することを特徴とする上記発明12に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<第2のエネルギー貯蔵手段>
電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する方法を第2のエネルギー貯蔵手段と呼ぶ。本発明の一例は、この第2のエネルギー貯蔵手段と、電解液に含まれる化合物のドープ/脱ドープ反応(第1のエネルギー貯蔵手段)を有する電気二重層キャパシタである。この発明のデバイスに用いられる最も典型的な電極は、活性炭である。二重層容量は概ね表面積に比例して増加する。アセチレンブラック等のカーボンブラックを賦活処理し表面積を増大させたものをポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のバインダーで固形化する。電解液の一部にドープ/脱ドープ反応が可能な化合物を用いることで、通常の電気二重層容量によるエネルギー貯蔵に加えて、電解液中の化合物のドープ/脱ドープ反応によるエネルギー貯蔵が起こり、デバイスのエネルギー貯蔵量は増加する。電気二重層容量によるエネルギー貯蔵は充放電速度が速いため、これと電解液中の化合部のドープ/脱ドープ反応によるエネルギー貯蔵と組み合わせることにより、充放電速度に優れ、エネルギー貯蔵量も比較的大きいエネルギー貯蔵デバイスを作ることができる。以下に2つの例を示す。
<例3 電極に電気二重層としての蓄電能力があり、電解液に含まれる化合物がp−ドープ可能なもの>
この場合は、通常の電気二重層キャパシタとしての蓄電のほかに、電解液の一部の化合物(おもに一方の電極近傍に存在する)がp−ドープされるとともに、一部のp−ドープされた状態の化合物(おもに該電極に対向する電極近傍に存在する)が脱ドープされることにより充電される。放電も同様で、電解液に含まれる化合物の逆反応と電気二重層キャパシタの放電が行なわれる。電解液中の化合物がn−ドープのみ可能な場合も原理的には同じシステムが構築できる。
<例4 電極に電気二重層としての蓄電能力があり、電解液に含まれる化合物がpn両ドープ可能なもの>
この場合は、通常の電気二重層キャパシタとしての蓄電のほかに、電解液の一部の化合物(おもに一方の電極近傍に存在する)がp−ドープされるとともに、一部の化合物(おもに該電極に対向する電極近傍に存在する)がn−ドープされることにより充電される。放電の際はそれぞれドープされた化合物が脱ドープされる。
また、本発明の第14は、さらに電極のレドックス反応を利用してエネルギーを貯蔵する、第3のエネルギー貯蔵手段を有することを特徴とする上記発明12または13に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<第3のエネルギー貯蔵手段>
電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵することを第3のエネルギー貯蔵手段と呼ぶ。このための電極として、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化銅等の金属酸化物や、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体等のπ共役高分子があげられる。これらの電極を用いたキャパシタは、電極のドープ/脱ドープ反応にともなうエネルギー貯蔵が可能である。これにさらに電解液に含まれる化合物のドープ/脱ドープ反応をエネルギー貯蔵に用いることにより、通常のレドックス型キャパシタのエネルギー貯蔵に加えて、電解液中の化合物のドープ/脱ドープ反応によるエネルギー貯蔵が起こり、デバイスのエネルギー貯蔵量を増加させられる。電極のドープ/脱ドープ反応によるエネルギー貯蔵では比較的エネルギー貯蔵量を大きくできるので、これと電解液中の化合部のドープ/脱ドープ反応によるエネルギー貯蔵と組み合わせることにより、エネルギー貯蔵量が大きなエネルギー貯蔵デバイスを作ることができる。以下に2つの例を示す。
<例5 電極がレドックス型キャパシタの電極としての蓄電能力があり、電解液に含まれる化合物がp−ドープ可能なもの>
この場合は、通常のレドックス型キャパシタとしての蓄電のほかに、電解液の一部の化合物(おもに一方の電極近傍に存在する)がp−ドープされるとともに、一部のp−ドープされた状態の化合物(おもに該電極に対向する電極近傍に存在する)が脱ドープされることにより充電される。放電も同様で、電解液に含まれる化合物の逆反応とレドックス型キャパシタの放電が行なわれる。
<例6 電極がレドックス型キャパシタの電極としての蓄電能力があり、電解液に含まれるπ共役分子がpn両ドープ可能なもの>
電解液の一部の化合物(おもに一方の電極近傍に存在する)がp−ドープされるとともに、一部の化合物(おもに該電極に対向する電極近傍に存在する)がn−ドープされることにより充電される。放電の場合は電解液中のドープされた状態の化合物の脱ドープと、レドックス型キャパシタの放電が行なわれる。
また、本発明の第15は、さらに前記電解液にリチウムイオンを含み、負極である炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する、第4のエネルギー貯蔵手段を有することを特徴とする上記発明12〜14のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
<第4のエネルギー貯蔵手段>
負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵することを、第4のエネルギー貯蔵手段と呼ぶ。ここで正極側は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気2重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられるが、これらに限定はされない。少なくとも電解液にはリチウムイオン(例えばLiPF6を溶解させる)とドープ/脱ドープ反応が可能な化合物が含まれる。この場合も、通常のリチウムイオン電解質型キャパシタとしてのエネルギー貯蔵の他に、電解液中の化合物のドープ/脱ドープ反応によるエネルギー貯蔵が行えるので、エネルギー貯蔵量を増大させることができる。特にリチウムイオン電解質型キャパシタは負極の電位が低いために充放電電圧、エネルギー密度を高くできるので、電解液中の化合物のドープ/脱ドープ反応によるエネルギー貯蔵をさらに上乗せすることによって、高エネルギー密度型のエネルギー貯蔵デバイスを作製することが可能である。
例えば、正極を活性炭などの電気二重層容量による蓄電を行なう材料で構成し、負極をグラファイト等のリチウムイオンのインターカレーションによって蓄電可能な材料とする。このままであれば、正極の容量が負極に比べて小さいため、デバイス全体として蓄電量はあまり大きくできない。この場合、電解液に適切にドープ/脱ドープ反応が可能な化合物を添加することにより、圧倒的に大きな負極の容量に対して、正極の電気二重層容量を補うことができ、デバイス全体の蓄電量を増大させられる。
また、本発明の第16は、正極の充放電可能電荷量/負極の充放電可能電荷量の比率が2.0以上の場合において、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、n−ドープされたn型化合物、脱ドープされたp型化合物、脱ドープされたpn型化合物及びn−ドープされたpn型化合物の合計が、全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対して50モル%以上含むことを特徴とする上記発明1〜15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<ドープ状態>
化合物のドープ状態とは、化合物自体が酸化または還元を受けて正または負に帯電しており、その電荷を打ち消すようにアニオンまたはカチオンがπ共役化合物の近傍に存在し、全体として中性となって安定化しているものである。
上記アニオンおよびカチオンは電解液中のドープ・脱ドープ反応では電解液に含まれるアニオン、カチオンから供給される。電解液に含有されるアニオンとしては例えばBF4 -、PF6 -、ClO4 -、有機スルホン酸イオン、硫酸イオン、(CF3SO22-などを用いることができ、電解液に含有されるカチオンとしては各種4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、Li+、Na+などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
ドープ状態の化合物のドーパントとしては例えばBF4 -、PF6 -、ClO4 -、ヨウ素、有機スルホン酸イオン、硫酸イオン、(CF3SO22-、各種4級アンモニウムカチオン、各種ピリジニウムカチオン、各種イミダゾリウムカチオン、Li+、Na+、などを用いることができ、特に制限はされないが、使用する化合物に対してより多くドーピングができるものがエネルギー貯蔵デバイスの容量を大きくする観点から好ましく、電解液に含まれるイオン(ドーパント)もこれと共通にすることが望ましい。
ドープ状態の化合物としては、例えばp−トルエンスルホン酸アニオンをドーパントとして含む粉末状のポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。電解重合で得られる膜状のポリチオフェン(ドーパントにBF4 -、PF6 -などを含む)類なども例として挙げることができる。エネルギー貯蔵デバイスの容量を大きくする観点から、電解液に添加するドープ状態の化合物は、使用する電解液により高濃度で溶解するものや、より安定な分散液を作るものが好ましい。
一般には化合物に僅かでもドーパントがドープされた状態であればドープ状態(ドープされた状態)と呼ぶことが可能ではある。しかし、本発明の第16−20で言う「ドープされた」とは、エネルギー貯蔵デバイスの充放電電荷量を効果的に増大させる観点から、電気化学的に安定なドープ/脱ドープが繰り返し行える範囲内で最大限に近いドープが行われている状態であることが好ましく、ここでは安定なドープ/脱ドープが繰り返し行える範囲内で最大限に導入できるドーパント量に比べて100〜50%のドーパントが導入されている状態を「ドープされた」状態と呼ぶ。例えばここではポリチオフェンに関してはチオフェン単量体ユニット8個〜4個に対して1つ(電荷1つ分)のドーパントが導入された状態を「ドープされた」状態と言う。
<脱ドープ状態>
化合物の脱ドープ状態とは、化合物自体が酸化または還元を受けておらず、電気的に中性であるものを指す。電解液に添加するための脱ドープ状態の化合物としては、例えば粉末状のポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。また、電解重合で得られる膜状のポリチオフェン(ドーパントにBF4 -、PF6 -などを含む)類などを電気化学的に脱ドープしたものも例として挙げることができる。エネルギー貯蔵デバイスの容量を大きくする観点から、電解液中に含まれる脱ドープ状態の化合物は、使用する電解液により高濃度で溶解するものや、より安定な分散液を作るものが好ましい。
一般には化合物に僅かでもドーパントがドープされた状態であればドープ状態(ドープされた状態)と呼ぶことが可能ではある。しかし、本発明の第16−20で言う「脱ドープされた」とは、エネルギー貯蔵デバイスの充放電電荷量を効果的に増大させる観点からは、少しのドーパントがドープされた状態であっても構わない。無論完全に脱ドープされた状態であることが好ましいが、ここでは電気化学的に安定なドープ/脱ドープが繰り返し行える範囲内で最大限に導入できるドーパント量に比べて0〜30%のドーパントが導入されている状態を「脱ドープされた」状態と呼ぶ。例えばここではポリチオフェンに関してはチオフェン単量体ユニット12個以上に対して1つ(電荷1つ分)のドーパントが導入された状態を「脱ドープされた」状態と言う。
<充放電可能電荷量>
個々の電極、あるいはエネルギー貯蔵デバイスが繰り返し充電・放電可能な電荷量を充放電可能電荷量と呼ぶこととする。本発明のように電解液中の化合物のレドックスにより電荷を蓄積するのでは無い、従来のエネルギー貯蔵デバイスにおいては、エネルギー貯蔵デバイスの充放電可能電荷量は、2つの電極のうちの充放電可能電荷量が少ない方の電極の充放電可能電荷量によって規定される。
<電解液中のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物により負極側の充放電可能電荷量を補う>
例えば、上記発明の第16のように、正極と負極の充放電可能電荷量がそれぞれ100と50である場合には、エネルギー貯蔵デバイス全体としての充放電可能電荷量は50となる。エネルギー貯蔵デバイスのエネルギー密度を向上させるには様々な方法が考えられるが、一つには本発明のように充放電可能電荷量を増やすことが極めて効果的である。エネルギー貯蔵デバイスの充放電可能電荷量を効果的に向上させるためには、充放電可能電荷量が小さい電極側の容量を優先的に大きくするようにし、両方の電極の容量が同じになるように増大させれば良い。例えば上記の例では、負極側の容量を50増大させて100にさせれば、エネルギー貯蔵デバイス全体としての充放電可能電荷量を100にすることができる。また、上記の例で負極側の容量を80増大させて130とし、正極側の容量を30増大させて130とすれば、エネルギー貯蔵デバイス全体としての充放電可能電荷量を130にすることができ、これらは最も効率良くエネルギー貯蔵デバイス全体の充放電可能電荷量を増大させたことになる。
このような効率的なエネルギー貯蔵デバイスの充放電可能電荷量の増大は、電解液に添加する化合物のドープ状態、脱ドープ状態の比率および、化合物のタイプ(p型、n型、pn型)を上手く選択することにより、実現することができる。例えば上記発明の第16の場合には、負極の充放電可能電荷量を補うことでエネルギー貯蔵デバイスの充放電可能電荷量を効果的に増大させられるので、負極側の蓄電量を優先して増加させることが重要である。そのためには負極側の蓄電量を補い正極側の蓄電量は増やさない状態にあるドープ/脱ドープ反応が可能な化合物、すなわちn−ドープされたn型化合物、脱ドープされたp型化合物、脱ドープされたpn型化合物及びn−ドープされたpn型化合物、が多く(全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対して50モル%以上)電解液に含有されていることが望ましい。
また、本発明の第17は、正極の充放電可能電荷量/負極の充放電可能電荷量の比率が0.5以下の場合において、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、p−ドープされたp型化合物、脱ドープされたn型化合物、脱ドープされたpn型化合物、及びp−ドープされたpn型化合物の合計が、全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対して50モル%以上含むことを特徴とする上記発明1〜15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<電解液中のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物により正極側の充放電可能電荷量を補う>
例えば上記発明の第17の場合には、上記発明の第16の場合とは逆に、正極の充放電可能電荷量を補うことでエネルギー貯蔵デバイスの充放電可能電荷量を効果的に増大させられるので、正極側の蓄電量を優先して増加させることが重要である。そのためには正極側の蓄電量を補い負極側の蓄電量は増やさない状態にあるドープ/脱ドープ反応が可能な化合物、すなわちp−ドープされたp型化合物、脱ドープされたn型化合物、脱ドープされたpn型化合物、及びp−ドープされたpn型化合物、が多く(全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対して50モル%以上)電解液に含有されていることが望ましい。
また、本発明の第18は、正極の充放電可能電荷量/負極の充放電可能電荷量の比率が0.5より大きく2.0より小さい場合において、
ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、
Pドープされたp型化合物のモル数をA、
脱ドープされたp型化合物のモル数をB、
Nドープされたn型化合物のモル数をC、
脱ドープされたn型化合物のモル数をD、
Pドープされたpn型化合物のモル数をE、
Nドープされたpn型化合物のモル数をF、
脱ドープされたpn型化合物のモル数をG、
とした時に、下記式
−0.2≦(A−B−C+D+E−F)/(A+B+C+D+E+F+G)≦0.2
の条件を満たすことを特徴とする上記発明1〜15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス、である。
<電解液中のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物によりエネルギー貯蔵デバイスの充放電可能電荷量を増大させる>
例えば上記発明の第18の場合には、個々のエネルギー貯蔵デバイスによるが、電解液中のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物によりエネルギー貯蔵デバイスの充放電可能電荷量を大きくするためには、正極側、負極側の両方の充放電可能電荷量をともにバランスよく増大させるのが効果的である。したがって、負極側の蓄電量を補い正極側の蓄電量は増やさない状態にあるドープ/脱ドープ反応が可能な化合物(すなわちn−ドープされたn型化合物、脱ドープされたp型化合物、脱ドープされたpn型化合物及びn−ドープされたpn型化合物)あるいは正極側の蓄電量を補い負極側の蓄電量は増やさない状態にあるドープ/脱ドープ反応が可能な化合物(すなわちp−ドープされたp型化合物、脱ドープされたn型化合物、脱ドープされたpn型化合物、及びp−ドープされたpn型化合物)が偏って多く電解液に含まれていないこと
(すなわち、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、
Pドープされたp型化合物のモル数をA、
脱ドープされたp型化合物のモル数をB、
Nドープされたn型化合物のモル数をC、
脱ドープされたn型化合物のモル数をD、
Pドープされたpn型化合物のモル数をE、
Nドープされたpn型化合物のモル数をF、
脱ドープされたpn型化合物のモル数をG、
とした時に、下記式
−0.2≦(A−B−C+D+E−F)/(A+B+C+D+E+F+G)≦0.2
の条件を満たす範囲内で電解液に含有されていること)が重要である。
また、本発明の第19は、正極、負極及び電解液を含むエネルギー貯蔵デバイスの製造方法において、前記電解液にドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を混合する工程を有することを特徴とするエネルギー貯蔵デバイスの製造方法、である。
<電解液にドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を混合する工程>
電解液中にドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を含有させる方法としては、電解液中で該化合物を合成(重合)する方法なども考えられるが、単純に該化合物を電解液に混合することにより十分実現される。ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物(π共役高分子、π共役分子)は市販品として比較的安価に入手できるものが多く、これらを電解液に混合する工程は、ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を含有する電解液を製造する方法として極めて簡便で製造コストの観点からも都合が良い。ここで電解液に混合する化合物は、電解液に溶解しても良い。
また、本発明の第20は、前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を電解液に混合する際に、正極と負極の充放電可能電荷量の比率に応じて、全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対するドープされた状態のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の割合及びp型/n型/pn型の種別を選択することにより、エネルギー貯蔵デバイス全体の充放電可能電荷量を向上させることを特徴とする上記発明19に記載のエネルギー貯蔵デバイスの製造方法、である。
本発明の発明者らは、電解液中でドープ状態の化合物を存在させたい場合には、化合物を電解液と混合させた後でドーピングを行う必要が無く、予めドープ状態の化合物を電解液に混合するだけで良いことを見出した。また本発明の発明者らは、電解液中に含まれるドーパントとは異なる種類のドーパントが含まれた化合物を電解液に混合しても、該化合物がドープ状態でありさえずれば、化合物中に予め含まれるドーパントがその後の電解液中でのドープ/脱ドープ反応に悪影響を及ぼさないもので無い限り問題ないことを見出した。また、電解液中で脱ドープ状態の化合物を存在させたい場合には、化合物を電解液と混合させた後で脱ドープ処理を改めて行う必要は無く、予め脱ドープ状態の化合物を電解液に混合するだけで良いことを見出した。したがって上記発明16−19で説明したように、電解液中に存在させたい化合物の種類(p型、n型、pn型)とドープ状態/脱ドープ状態が分かれば、それらの化合物を望むドープ/脱ドープ状態で電解液に混合するだけで、簡易にエネルギー貯蔵デバイスのエネルギー貯蔵量を増大させられるので、「本発明の第20であるエネルギー貯蔵デバイスの製造方法」は高性能のエネルギー貯蔵デバイスの製造方法として極めて有用である。ここで電解液に混合する化合物は、電解液に溶解しても良い。
以下に「ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を電解液に混合する際に、正極と負極の充放電可能電荷量の比率に応じて、全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対するドープされた状態のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の割合及びp型/n型/pn型の種別を選択することにより、エネルギー貯蔵デバイス全体の充放電可能電荷量を向上させる」例を3つ示す。
<例7 電気二重層キャパシタの充放電可能電荷量向上>
電気2重層キャパシタは電解液との電極の界面に生じる電気二重層に電荷を蓄えるエネルギー貯蔵デバイスである。電気2重層キャパシタの容量は電極面積に比例するため、電極には高比表面積の活性炭などが用いられる。正極、負極の区別は無く、2つの電極の容量は概ね同じであると見て良い。充電の際には片方の電極側で酸化反応が起きるが、この際に電解液のこの電極近傍の領域で電解液中の化合物のp−ドープまたはn−脱ドープ反応が起これば、酸化反応による充電の蓄電量を増大させることができる。逆にもう一方の電極側では充電の際に還元反応が起きるので、この際に電解液のこの電極近傍の領域で電解液中の化合物のn−ドープまたはp−脱ドープ反応が起これば、還元反応による充電の蓄電量を増大させることができる。
したがって、例えば電解液にp−ドープ状態のp型化合物および脱ドープ状態のp型化合物を等モル混合すれば両方の電極側の容量を同程度増大させられ、電気2重層キャパシタ全体として効果的な充放電可能電荷量の増大、すなわち効果的なエネルギー密度増大ができる。
また、同様に電解液にnドープ状態のn型化合物および脱ドープ状態のn型化合物を等モル混合する場合も同様である。ここで混合するp型またはn型の化合物は1種類である必要は無く、2種類以上を一緒に電荷液に混合しても構わない。これらの2つの場合には、電解液のレドックスによる充放電の電圧は一般的にそれほど大きくない。p−ドープ/p−脱ドープまたはn−ドープ/n−脱ドープの一方が起こる電位は化合物の種類が変わっても一般にそれほど大きく違わず、2種類以上の化合物を用いてもp型またはn型の一方のみを使用する場合には充放電電圧は1.5V程度までである。
電解液に脱ドープ状態のp型化合物および脱ドープ状態のn型化合物を等モル混合した場合にも上記と同様に電気2重層キャパシタ全体として効果的な充放電可能電荷量の増大、すなわち効果的なエネルギー密度増大ができる。ただしこの場合には充放電の電圧を3V程度まで上げることができ、エネルギー密度を向上させる観点からより好ましい。p−ドープ/p−脱ドープが起こる電位とn−ドープ/n−脱ドープが起こる電位は一般に離れており、p型、n型の両方を充放電に利用する場合には、p型、n型の一方しか使わない場合に比べて高い充放電電圧を得られることが多い。ここでも混合するp型またはn型の化合物は1種類である必要は無く、2種類以上を一緒に電荷液に混合しても構わない。また、この場合には、一つの電極近傍ではp型、n型のうち一方の化合物のみが充放電に寄与でき、基本的にもう一方の化合物は充放電に関与しないことになる。
さらに、脱ドープ状態のpn型化合物を電解液に混合しても電気2重層キャパシタのエネルギー密度を効果的に向上させることができる。この場合にも充放電の電圧を3V程度まで上げることができ、エネルギー密度を向上させる観点から好ましい。さらに、それぞれの電極側で、電極近傍に存在する化合物がすべて充放電に寄与できるので、化合物を同じ量混合しても上の場合よりも多くの電荷を充放電させられ、より好ましい。ここでも混合するpn型の化合物は1種類である必要は無く、2種類以上を一緒に電荷液に混合しても構わない。
<例8 レドックスキャパシタの充放電可能電荷量向上>
電極の活物質の酸化還元反応を利用して電荷を蓄えるエネルギー貯蔵デバイスである。例えば両方の電極にともにpn型π共役高分子であるポリ−3−(4−フルオロフェニル)チオフェンを用いた導電性高分子レドックス型キャパシタが挙げられる。このような導電性高分子レドックス型キャパシタも基本的に2つの電極の容量は概ね同じであると見て良い。充電の際には片方の電極側で酸化反応が起きるが、この際に電解液のこの電極近傍の領域で電解液中の化合物のp−ドープまたはn−脱ドープ反応が起これば、酸化反応による充電の蓄電量を増大させることができる。逆にもう一方の電極側では充電の際に還元反応が起きるので、この際に電解液のこの電極近傍の領域で電解液中の化合物のn−ドープまたはp−脱ドープ反応が起これば、還元反応による充電の蓄電量を増大させることができる。基本的な考え方は同じなので、上記の電気二重層キャパシタと同様の方法でエネルギー密度を向上させることができる。それぞれの電極の充放電可能電荷量に差がある場合には、充放電可能電荷量が小さい方の電極側で電解液のレドックス容量が大きく発現するように、電解液に混合する化合物のドープ状態、脱ドープ状態の比率および、π共役化合物のタイプ(p型、n型、pn型)を選択すればキャパシタの効果的なエネルギー密度向上を実現できる。
<例9 リチウムイオン電解質型キャパシタの充放電可能電荷量向上>
リチウムイオン電解質型キャパシタはリチウムイオンを含む電解液を用い、正極側は活性炭電極と電解液の界面の電気二重層を利用して電荷を蓄積し、負極側はグラファイトへのリチウムイオンのインターカレーションを利用して電荷を蓄積する。正極と負極の電位差が大きいため高電圧での充放電が可能である。しかし正極の容量は負極に比べて小さいので、正極側の充放電可能電荷量を増大させることにより、エネルギー密度を向上させることができれば望ましい。したがって脱ドープ状態のp型化合物、ドープ状態のn型化合物、脱ドープ状態のpn型化合物の少なくとも1つを電解液に混合し、逆にドープ状態のp型化合物、脱ドープ状態のn型化合物、p−ドープ状態のpn型化合物は電解液に混合しないか、あるいは上の3つに比べて少量を混合すればリチウムイオン電解質型キャパシタのエネルギー密度を向上させられる。放電電圧を高くする観点から、ドープ状態のn型化合物よりも、脱ドープ状態のp型化合物および/または脱ドープ状態のpn型化合物を電解液に混合するのが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(実施例1)
<電解液の調整>
電解液の溶媒として10日間90℃で真空乾燥したイオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートを200gフラスコにとり、ポリアニリン(Aldrich、Mw=5000)を20g加えて撹拌した。撹拌しながら190℃まで徐々に加熱してすべてのポリアニリンを溶解させたのち、室温で放置冷却し、濾過して不溶物のないことを確認した。
<サイクリックボルタモグラム測定>
得られた電解液を、小型ビーカーにとり、作用極と対極に白金板、参照極にAg/Ag+電極を用いて、グローブボックス中でサイクリックボルタモグラム(CV)測定を行なった。0Vを起点に、−0.8Vまでスウィープ速度5mV/秒で変化させた後、0Vまで同じ速度で電圧を戻す操作を5回続けて行なった結果を図1(番号3)に示した。
<充放電測定>
同じ小型ビーカーに2枚の白金電極を挿入し、2極セルで充放電試験を行なった。電極間距離は1cm、液中の電極面積は1cm2であった。充電は0Vから上限を0.2Vとして、充電速度0.05mA/秒で充電し、0.2Vに達した時点で同じ放電速度で0Vになるまで放電した。放電が終了した瞬間に再度充電を開始する操作を合計5回繰り返して実施した。この間の電圧の変化を測定し、結果を図4に示した。
(実施例2)
<電解液の調整>
電解液の溶媒であるイオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート200gに対して、溶解させたポリアニリン(Aldrich、Mw=5000)の量を2gとした以外は、実施例1と同様の方法で電解液の調整を行なった。
<サイクリックボルタモグラム測定>
上記電解液の調整の項で得られた試料を電解液として用いた以外は全く実施例1と同じ方法でCV測定を行なった。結果を図1(番号2)に示した。
<充放電測定>
上記電解液の調整の項で得られた試料を電解液として用いた以外は全く実施例1と同じ方法で充放電測定を行なった。結果を図3に示した。
(比較例1)
<電解液の調整>
電解質として何も加えず10日間90℃で真空乾燥したイオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートを用意した。
<サイクリックボルタモグラム測定>
上記無添加のイオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートを電解液として用いた以外は全く実施例1と同じ方法でCV測定を行なった。結果を図1(番号1)に示した。
<充放電測定>
上記無添加のイオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートを電解液として用いた以外は全く実施例1と同じ方法で充放電測定を行なった。結果を図2に示した。
<結果の考察>
図1のサイクリックボルタモグラムで、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートの単独イオン性液体電解液(番号1)では−0.8V〜0.0Vの範囲の電位スウィープで電流信号は1μA以下である。観測が期待できる白金電極の電気二重層容量にともなう電流も表面積が小さすぎて観測できなかった。
これに対して、100重量部の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートにポリアニリンを1重量部溶解させた電解液(番号2)では、同じ電位スウィープ範囲で0.05mAから0.08mA程度の電解液のレドックス反応にともなうとみられる電流信号が観測された。−0.3〜−0.4V付近の正シグナルは、パラトルエンスルホン酸アニオンのドープ、−0.5〜−0.4V付近の負シグナルは脱ドープにともなう電流と考えられる。
100重量部の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートにポリアニリンを10重量部溶解させた電解液(番号3)では、同じ電位スウィープ範囲で0.1mAを超える電解液のレドックス反応にともなうとみられる電流信号が観測された。それぞれのピーク位置は番号2の電解液とほぼ同じである。濃度に完全には比例しないが、高濃度にするほど信号が大きくなることを示している。
図2〜図4は、実際に2極セルを作製して充放電試験を実施した結果を示している。定電流を流しつづけると両極間に電位差が生じる。1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートの単独イオン性液体電解液(図2)では、わずか0.5秒程度で0.2Vに達し充電が終了している。放電も同様で充放電は1秒程度で終了する。これに対して、100重量部の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートにポリアニリンを1重量部溶解させた電解液(図3)と10重量部溶解させた電解液(図4)では、それぞれ充電放電時間は12秒、40秒に増加しており、π共役高分子のドープ・脱ドープにともなう充放電が起こっていることを示している。
(実施例3)
<電解液の調整>
グローブボックス中、室温で、1モル/リットルのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(水分量4ppm)のプロピレンカーボネート(水分量6ppm以下)溶液30ccに下記式(1)で示すピレン1gを溶解させた。
Figure 2007052762
<サイクリックボルタモグラム測定>
得られた電解液を、小型ビーカーにとり、作用極と対極に白金板、参照極にAg/Ag+電極を用いて、グローブボックス中でサイクリックボルタモグラム(CV)測定を行った。+0.2Vを起点に、+0.8Vまでスウィープ速度5mV/秒で変化させた後、0.2Vまで同じ速度で電圧を戻し、電流値を読み取った。π共役分子を含まないスペクトルとして、ピレンを含まない1モル/リットルのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液30ccを用いて、同じ作用極、対極、参照極を用いてCV測定を行った。結果を図5に示した。念のため0.0Vから1.5Vの範囲で同様のスウィープ速度で変化させた結果を図5に示した。
<充放電測定>
同じ小型ビーカーに2枚の白金電極を挿入し、2極セルで充放電試験を行なった。電極間距離は1cm、液中の電極面積は1cm2であった。充電は0Vから上限を1.5Vとして、充電速度0.05mA/秒で充電し、1.5Vに達した時点で同じ放電速度で0Vになるまで放電した。なお、この試験では、繰り返しにより充放電量が増加する傾向が見られたので試験を500サイクル繰り返して行った。
1サイクル目、100サイクル目、200サイクル目、300サイクル目、400サイクル目、500サイクル目の結果を図6に示した。
(実施例4)
<電解液の調整>
グローブボックス中、室温で、0.2モル/リットルのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(水分量4ppm)のクロロホルム(水分量6ppm以下)溶液30ccに下記式(2)で示すコロネン3.75gを添加した。
Figure 2007052762
<サイクリックボルタモグラム測定>
上記電解液の調整の項で得られた試料を電解液として用いた以外は全く実施例3と同じ方法でCV測定を行なった。ただし、電圧のスウィープ範囲は0.0Vから1.5Vとした。コロネンを溶解させなかった以外は同様の測定を行なった結果を合わせて図7に示した。
(比較例2)
<電解液の調整>
グローブボックス中、室温で、1モル/リットルのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(水分量4ppm)のプロピレンカーボネート(水分量6ppm以下)溶液30ccに下記式(3)で示すヨードベンゼン15ccを溶解させた。
Figure 2007052762
<サイクリックボルタモグラム測定>
上記ヨードベンゼンを添加したテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネートを電解液として用いた以外は全く実施例4と同じ方法でCV測定を行った。ヨードベンゼンを添加しない場合の結果と合わせて図8に示した。
(比較例3)
<電解液の調整>
グローブボックス中、室温で、1モル/リットルのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(水分量4ppm)のプロピレンカーボネート(水分量6ppm以下)溶液30ccに下記式(4)で示すベンズイミダゾール1gを溶解させた。
Figure 2007052762
<サイクリックボルタモグラム測定>
上記ベンズイミダゾールを添加したテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネートを電解液として用いた以外は全く実施例4と同じ方法でCV測定を行なった。ベンズイミダゾールを添加しない場合の結果と合わせて図9に示した。
(比較例4)
<電解液の調整>
グローブボックス中、室温で、1モル/リットルのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(水分量4ppm)のプロピレンカーボネート(水分量6ppm以下)溶液30ccに下記式(5)で示すキノリン15ccを溶解させた。
Figure 2007052762
<サイクリックボルタモグラム測定>
上記キノリンを添加したテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネートを電解液として用いた以外は全く実施例4と同じ方法でCV測定を行なった。キノリンを添加しない場合の結果と合わせて図10に示した。
<結果の考察>
図5のサイクリックボルタモグラムで、ピレンを溶解させた電解液を用いた場合には、0.3Vから0.7Vまで電圧を高めていくと正方向の電流が観測される。ピレンを溶解させない電解液のスペクトルで観測される電流よりもはるかに大きな電流であり、ピレンが関与した電流であることが予想される。つづけて0.7Vから0.3Vまで電圧を低下させると正方向の電流が負方向の電流に変わり、蓄積された電荷が開放される。
この昇圧降圧のサイクルを繰り返してもほぼ可逆的なスペクトルが観測されつづけることから、この電流変化を利用してエネルギーを蓄積することが可能となる。
図6は2枚の白金電極を用いた2極セルの充放電試験の結果を示している。興味深いのは、1サイクル目からある程度の充放電特性を示すが、充放電サイクルを繰り返すにしたがってしだいに蓄積できる電荷量が増大することである。この充放電は、定電流で行っているので、放電時間が増大することは放電できる電荷量が増大したことを意味する。
詳しい原因は不明であるが、充放電を繰り返すことにより電解液中のピレン分子の濃度分布が、電荷を蓄積しやすいように変化したものと考えられる。
また、ある程度サイクルを繰り返した後電解液を撹拌するとほぼ1サイクル目の状態に戻る。このことは、エネルギーデバイスに応用して電荷を蓄積させるためには、電解液の拡散などによるエネルギー放出を抑制することが有効な手段であることを意味する。
これら比較的分子量の小さなπ共役分子は、π共役高分子よりも溶媒の選択幅が広く高濃度の溶解液を形成することが可能であるとともに、活性炭の微細孔にも侵入できる可能性がありエネルギーデバイスを形成するうえで有効である。
図7は、炭素数16のピレンの代わりに炭素数24のコロネンを用いた電解液のCV測定の結果を示している。ここでの電解液の溶媒はトリクロロメタンであり、電圧のスウィープ範囲は0.0Vから1.5Vとしている。コロネンを含まないトリクロロメタンを溶媒とする電解液のスペクトルと比べて、コロネンを含む電解液では正方向に大きな電流が流れている。コロネンを含まない電解液の場合には電圧を低下させても逆方向の電流は流れないので、昇圧時の電流は電解液の分解等による非可逆変化に伴う電流と考えられる。
これに対して、コロネンを含む電解液では降圧時、ピレンの場合と同様にエネルギー蓄積が可能となる逆方向の電流が観測される。この電流の流れは、複数回繰り返しても変わらないことからエネルギーデバイスへの適用が可能と考えられる。
図8、図9、図10は、それぞれ1分子に含まれる炭素数が、6、7、9で14以下のヨードベンゼン、ベンズイミダゾール、キノリンのCV測定結果を示している。いずれも昇圧時にこれらπ共役分子を含まない電解液のスペクトルより大きな電流が観測されるものの、降圧時の逆方向の電流は観測されなかった。したがって、これらのπ共役分子を含む電解液ではエネルギー蓄積をすることはできない。
(実施例5)
実験は大気中の水分の影響を排除するために全て高純度アルゴンで置換したグローブボックス中で行った。
ドープ状態のポリアニリン(有機スルホン酸がドープされたエメラルジン、数平均分子量15000以上、アルドリッチ製)1.5gおよび脱ドープ状態のポリアニリン(エメラルジン、重量平均分子量5000以上、アルドリッチ製)1.5gをイオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート27g(約18ml)に添加して20分間撹拌し、充放電測定用の電解液とした。この電解液をビーカーに入れ、4×3cmの1対のグラファイトシート電極を1cm離して向かい合わせ、電解液に1cm浸漬させ、これを充放電測定セルとした(図11)。0.05mAの一定電流で、2枚のグラファイトシート間の電圧が0〜1Vの範囲で充放電を5サイクル繰り返した。
(比較例5)
実験は大気中の水分の影響を排除するために全て高純度アルゴンで置換したグローブボックス中で行った。
イオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートを電解液としてビーカーに入れ、4×3cmの1対のグラファイトシート電極を1cm離して向かい合わせ、電解液に1cm浸漬させ、充放電測定セルとした(図11)。0.05mAの一定電流で、2枚のグラファイトシート間の電圧が0〜1Vの範囲で充放電を5サイクル繰り返した。
(実施例6)
実験は大気中の水分の影響を排除するために全て高純度アルゴンで置換したグローブボックス中で行った。
脱ドープ状態のポリアニリン(有機スルホン酸がドープされたエメラルジン、数平均分子量15000以上、アルドリッチ製)3.0gをイオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート27g(約18ml)に添加して20分間撹拌し、充放電測定用の電解液とした。この電解液をビーカーに入れ、4×3cmの1対のグラファイトシート電極を1cm離して向かい合わせ、電解液に1cm浸漬させ、これを充放電測定セルとした(図11)。0.05mAの一定電流で、2枚のグラファイトシート間の電圧が0〜1Vの範囲で充放電を5サイクル繰り返した。
(実施例7)
実験は大気中の水分の影響を排除するために全て高純度アルゴンで置換したグローブボックス中で行った。
ドープ状態のポリアニリン(エメラルジン、重量平均分子量5000以上、アルドリッチ製)3.0gをイオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート27g(約18ml)に添加して20分間撹拌し、充放電測定用の電解液とした。この電解液をビーカーに入れ、4×3cmの1対のグラファイトシート電極を1cm離して向かい合わせ、電解液に1cm浸漬させ、これを充放電測定セルとした(図11)。0.05mAの一定電流で、2枚のグラファイトシート間の電圧が0〜1Vの範囲で充放電を5サイクル繰り返した。
実施例5〜7および比較例5で行った充放電測定の結果を図12および図13に示す。図12から、電解液にイオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートのみを用いた場合(比較例5)は電気2重層容量による直線的な充放電曲線が得られ、充放電時間は短く、充放電可能電荷量は小さい。これに比べて電解液に脱ドープ状態のポリアニリンを10wt%添加した場合(実施例6)ではポリアニリンのレドックスによると考えられる充放電可能電荷量の増加(放電時の0V付近に見られる裾を引くようなグラフの曲がり)がある。本来完全に脱ドープ状態のポリアニリンのみを添加した場合には、正極側のみの充放電電荷量が増大するので、セル全体としての充放電可能電荷量に変化は無いはずである。この理由として、導電性高分子を完全に脱ドープ状態にするのは困難であり、脱ドープ状態とされている導電性高分子にも少しのドーパントが入っていることが考えられる。このため負極側の充放電電荷量も増大し、セル全体としての充放電可能電荷量も増大すると考えられる。電解液にドープ状態のポリアニリンを10wt%添加した場合(実施例7)には、脱ドープ状態のポリアニリンを10wt%添加した場合(実施例6)よりもずっと大きく静電容量が増大する。ドープ状態と脱ドープ状態のポリアニリンを5wt%ずつ添加した場合(実施例5)ではさらに静電容量が増加する。この実施例5のグラフではポリアニリンのレドックスによる静電容量の増加(充電、放電ともに0.5V以下の電圧範囲で大きく容量増加)と考えられる形状がきれいに現れている。チャージバランスの観点から、例えば片側電極近傍でポリアニリンがドープされる場合には、もう一方の電極近傍でポリアニリンが脱ドープされなければならないので、効果的に容量を発現させるには実施例5のグラフのようにドープ状態と脱ドープ状態のポリアニリンをモル比で1:1の割合で電解液に添加するのが理論的に最も好ましい。ドープ状態のポリアニリンを10wt%添加した場合(実施例7)でも大きな静電容量の増加が見られるが、これは使用した市販品のドープ状態のポリアニリンが完全に飽和したドープ状態ではなく一部に脱ドープ状態の部分も含まれているためと思われる。このように、電解液に添加する化合物のドープ状態のものと脱ドープ状態のものの比率を変えるだけで簡便に大幅な容量の増大を実現可能であり、これは電解液を有するエネルギー貯蔵デバイス一般に広く適用できる。
(実施例8)
実験は大気中の水分の影響を排除するために全て高純度アルゴンで置換したグローブボックス中で行った。
ドープ状態のポリアニリン(有機スルホン酸がドープされたエメラルジン、数平均分子量15000以上、アルドリッチ製)3.0gおよび脱ドープ状態のポリアニリン(エメラルジン、重量平均分子量5000以上、アルドリッチ製)3.0gを、イオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート27g(約18ml)に添加して20分間撹拌し、充放電測定用の電解液とした。この電解液をビーカーに入れ、4×3cmの1対の白金板電極を1cm離して向かい合わせ、電解液に1cm浸漬させ、これを充放電測定セルとした(図11)。0.05mAの一定電流で、2枚の白金板間の電圧が0〜1Vの範囲で充放電を5サイクル繰り返した。
(実施例9)
実験は大気中の水分の影響を排除するために全て高純度アルゴンで置換したグローブボックス中で行った。
ドープ状態のポリアニリン(有機スルホン酸がドープされたエメラルジン、数平均分子量15000以上、アルドリッチ製)1.5gおよび脱ドープ状態のポリアニリン(エメラルジン、重量平均分子量5000以上、アルドリッチ製)1.5gを、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液(1M、三和油化製)27gに添加して20分間撹拌し、充放電測定用の電解液とした。この電解液をビーカーに入れ、4×3cmの1対の白金板電極を1cm離して向かい合わせ、電解液に1cm浸漬させ、これを充放電測定セルとした(図11)。0.05mAの一定電流で、2枚の白金板間の電圧が0〜1Vの範囲で充放電を5サイクル繰り返した。
(比較例6)
実験は大気中の水分の影響を排除するために全て高純度アルゴンで置換したグローブボックス中で行った。
テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液(1M、三和油化製)を電解液としてビーカーに入れ、4X3cmの1対の白金板電極を1cm離して向かい合わせ、電解液に1cm浸漬させ、これを充放電測定セルとした(図11)。0.05mAの一定電流で、2枚の白金板間の電圧が0〜1Vの範囲で充放電を5サイクル繰り返した。
図14に実施例5、8、9および比較例5、6における電極表面積(片側電極の表面積)あたりの静電容量(F/m2)示す。静電容量(F)の値は、図12、13のような定電流の充放電曲線における5サイクル目の放電電荷量(C)を放電電圧(図12、13の場合1V)で割って求めた。両方の電極の充放電可能電荷量がほぼ等しい場合には、例えば脱ドープ状態およびドープ状態のp型のπ共役化合物をほぼ等しいモル比で電解液に添加すれば効果的にセル全体の充放電可能電荷量(エネルギー密度)を向上させられることがわかる。また、電解液に添加するπ共役化合物は、多いほうが充放電可能電荷量(エネルギー密度)向上の観点から望ましいことがわかる。
(実施例10)
実験は大気中の水分の影響を排除するために全て高純度アルゴンで置換したグローブボックス中で行った。
<電解液作製>
ドープ状態のポリアニリン(有機スルホン酸がドープされたエメラルジン、数平均分子量15000以上、アルドリッチ製)1.5gおよび脱ドープ状態のポリアニリン(エメラルジン、重量平均分子量5000以上、アルドリッチ製)1.5gをイオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート27g(約18ml)に添加して20分間撹拌し、キャパシタモデルセル用の電解液とした。
<電極作製>
電解銅箔上の片面にグラファイト粉末(大阪ガスケミカル製、MCMB25−28)を含むペースト(グラファイト粉末80wt%、ポリフッ化ビニリデン10%、導電助剤(カーボンブラック、CABOT社製VULCAN XC72R))を塗布し、100℃で30分乾燥させた後、さらに120℃で2時間乾燥させ、直径13mmのポンチで円形に打ち抜き、これをキャパシタモデルセルの電極とした。
<キャパシタモデルセルの作製>
宝泉社製HSセル、上記で作製した電極(直径13mmのポンチで円板状に打ち抜いたもの)、および絶縁性不織布をセパレーター(厚さ約90μm、直径約20mmに切り抜いたもの)を120℃で2時間真空乾燥させた。次に上で作製した電解液を上記で乾燥させた2枚の電極とセパレーターに10分間室温で真空含浸させた。含浸済みの電極を含浸済みのセパレーターを挟むようにグラファイト粉末を塗布した側の面を2枚合わせてHSセルに入れ、さらにHSセルに上記で作製した電解液0.2mlを入れ、蓋を閉めてキャパシタのモデルセルとした。
<充放電測定>
上で作製したキャパシタのモデルセルを、1mAの一定電流で充放電させた。充放電の電圧は0−1Vとし、5サイクル充放電を行った。5サイクル目の放電電荷より静電容量を評価した。実施例5、8、9および比較例5、6と同様にして電極表面積(片側電極の表面積)あたりの静電容量(F/m2)を求めたところ、0.232F/m2であった。
(比較例7)
イオン性液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレートのみをキャパシタモデルセルの電解液として使用した他は、実施例10と同様の実験を行った。実施例5、8、9および比較例5、6と同様にして電極表面積(片側電極の表面積)あたりの静電容量(F/m2)を求めたところ、0.052F/m2であった。
実施例10と比較例7の比較により、充放電可能電荷量がほぼ等しい2つの電極をもつキャパシタの電解液にドープ状態・脱ドープ状態のp型のπ共役化合物をほぼ等モルで添加することは、キャパシタの静電容量(充放電可能電荷量、エネルギー密度)を向上させる目的のために極めて効果的であることがわかる。

Claims (20)

  1. 正極、負極及び電解液を含むエネルギー貯蔵デバイスにおいて、前記電解液中にドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が存在することを特徴とするエネルギー貯蔵デバイス。
  2. 前記電解液に対する前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の濃度が、5重量%以上、95重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  3. 少なくとも前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の一部が、電解液に溶解していることを特徴とする請求項1または2に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  4. 前記電解液は、少なくともイオン性液体を含む液体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  5. 前記電解液は、さらにアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びγ−ブチルラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒を含む液体であることを特徴とする請求項4に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  6. 前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物は、π共役化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  7. 前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が、π共役高分子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  8. 前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が、炭素原子数が14以上50以下であるπ共役化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  9. 前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物が、ピレン、ナフタセン、クリセン、ペリレン、ベンゾピレン、コロネン、ヘリセン、ペンタセン及びセキシフェニル並びにそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項8に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  10. 前記正極及び負極は対向して配置されており、正極と負極の間に前記電解液が存在し、正極と負極の間の電解液中に前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の自由拡散を抑制する電解液自由拡散抑制手段が存在することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  11. 前記電解液自由拡散抑制手段が、セパレーター及び/又は電解質膜であることを特徴とする請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  12. 電解液中に存在するドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物がドープ/脱ドープ反応を行うことによりエネルギーを貯蔵する、第1のエネルギー貯蔵手段を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  13. さらに電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する、第2のエネルギー貯蔵手段を有することを特徴とする請求項12に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  14. さらに電極のレドックス反応を利用してエネルギーを貯蔵する、第3のエネルギー貯蔵手段を有することを特徴とする請求項12または13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  15. さらに前記電解液にリチウムイオンを含み、負極である炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する、第4のエネルギー貯蔵手段を有することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  16. 正極の充放電可能電荷量/負極の充放電可能電荷量の比率が2.0以上の場合において、
    ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、Nドープされたn型化合物、脱ドープされたp型化合物、脱ドープされたpn型化合物及びNドープされたpn型化合物の合計が、全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対して50モル%以上含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  17. 正極の充放電可能電荷量/負極の充放電可能電荷量の比率が0.5以下の場合において、
    ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、Pドープされたp型化合物、脱ドープされた化合物、脱ドープされたpn型化合物、及びPドープされたpn型化合物の合計が、全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対して50モル%以上含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  18. 正極の充放電可能電荷量/負極の充放電可能電荷量の比率が0.5より大きく2.0よ
    り小さい場合において、
    ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物として、
    Pドープされたp型化合物のモル数をA、
    脱ドープされたp型化合物のモル数をB、
    Nドープされたn型化合物のモル数をC、
    脱ドープされたn型化合物のモル数をD、
    Pドープされたpn型化合物のモル数をE、
    Nドープされたpn型化合物のモル数をF、
    脱ドープされたpn型化合物のモル数をG、
    とした時に、下記式
    −0.2≦(A−B−C+D+E−F)/(A+B+C+D+E+F+G)≦0.2
    の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
  19. 正極、負極及び電解液を含むエネルギー貯蔵デバイスの製造方法において、
    前記電解液にドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を混合する工程を有することを特徴とするエネルギー貯蔵デバイスの製造方法。
  20. 前記ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物を電解液に混合する際に、
    正極と負極の充放電可能電荷量の比率に応じて、全ドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物に対するドープされた状態のドープ/脱ドープ反応を行うことが可能な化合物の割合及びp型/n型/pn型の種別を選択することにより、エネルギー貯蔵デバイス全体の充放電可能電荷量を向上させることを特徴とする請求項19に記載のエネルギー貯蔵デバイスの製造方法。
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