JPWO2006137195A1 - スルホナート触媒及びそれを利用したアルコール化合物の製法 - Google Patents

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Abstract

下記式で表されるスルホナート触媒とケトン化合物とを溶媒に入れ、水素存在下で混合することによりケトン化合物を水素化して光学活性アルコールを製造する。

Description

本発明は、スルホナート触媒及びそれを利用したアルコール化合物の製法に関する。
これまで、金属錯体を触媒とする光学活性アルコールの様々な製法が報告されている。特に、塩基の存在下、ルテニウム錯体を触媒として用いて、還元的手法によりケトン化合物から光学活性アルコールを合成する方法は、極めて精力的に検討されている。
水素を還元剤として使用し、ケトン類を不斉水素化し光学活性アルコールを得る不斉水素化及び触媒に関しては、例えば、特開平8‐225466号公報に、BINAP(2,2’‐ビス(ジフェニルホスフィノ)‐1,1’‐ビナフチル)とDMFがルテニウムに配位した錯体とジフェニルエチレンジアミンを触媒として用いて、塩基存在下、ケトン化合物を水素化して光学活性アルコールを製造した例が報告されている。
しかし、ケトン化合物の構造によっては、効率良く水素化反応が進行しなかったり、鏡像体過剰率が不十分な場合があり、また、上記触媒系では、塩基性条件下で反応を実施するため、塩基に不安定なケトン化合物や酸性水素をもつケトン類を水素化することはできなかった。このような問題点を解決するために幾つかの試みがなされている。
例えば、特開2003‐104993号公報には、BINAP等のジホスフィン化合物とジアミン化合物とがルテニウムに配位した不斉ルテニウム金属錯体のテトラハイドロボレートを触媒として用いて、加圧水素下、塩基を加えることなく2‐プロパノール中で、塩基に不安定なケトン化合物を水素化して光学活性アルコールを製造した例が幾つか報告されている。具体的には、4‐アセチル安息香酸エチル、3‐ノネン‐2‐オンなどから対応する光学活性アルコールを製造している。
しかしながら、特開2003‐104993号公報に記載された触媒では、反応基質によっては収率や鏡像体過剰率が低いことがあり、適用可能なケトン化合物の構造が限られていた。
触媒的不斉水素化に対して、アルコールやギ酸を還元剤とする方法、すなわち触媒的な不斉還元反応も多く報告されている。特に、スルホニルアミド基をアンカーにもつアミン配位子を有する不斉ルテニウム触媒(特開平11‐322649号公報)の性能は特筆すべきものである。これ以外にも、ルテニウム‐アミン錯体を基本骨格とする類似の触媒システム(Chem. Commun. 1996, 223. Organometallics 1996, 15, 1087.)が報告されている。また、同様に、金属―アミン結合を持つロジウムやイリジウム触媒(J. Org. Chem. 1999, 64, 2186.)も報告されている。これらの不斉金属触媒は、前記水素化触媒に比べて、より多くの種類のケトン基質を不斉還元できるが、水素の活性化能力が低く、水素源としては2‐プロパノールやギ酸などの有機化合物しか使用できない。水素を使用する不斉水素化に比べてより多くの触媒が必要であり、加えて、ギ酸を使用する場合には、反応釜の腐食の問題などが派生するなどの問題があった。ロジウムを中心金属にもつ触媒存在下、ギ酸を還元剤としてフェナシルクロリドの不斉還元が報告(WO2002/051781)されているが、この場合にも、触媒活性の点や、腐食性のあるギ酸を使用するなどの問題がある。
従って、水素を還元剤として種々のケトン基質の不斉水素化を高エナンチオ選択的に、かつ高効率的に実施することが望まれていた。
前述の如く、従来の水素化触媒による方法では、適用可能なケトン化合物の構造が限られており、産業上有用であるにも拘わらず、2‐クロロ‐1‐フェニルエタノールや4‐クロマノールのような構造のアルコールやそれらの光学活性アルコールを効率良く製造することができず、大きな課題となっていた。一方、ギ酸等を還元剤として用いて、これらのケトン類を不斉還元する方法は知られているものの、使用する触媒の量が多いため効率の点で、また、腐食性のあるギ酸を使用するなどの問題があった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、今まで得にくかったアルコール化合物を製造する際に有用な水素化触媒を提供すること、及びその水素化触媒を利用したアルコール化合物の製法を提供することを目的とする。
このような目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、アミン配位子をもつ8族又は9族の遷移金属スルホナート錯体がこれまでの水素化触媒では困難なケトン基質の水素化、特に高エナンチオ選択的な水素化を効率的に進行させることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、一般式(1)で表され、水素化反応に用いられるスルホナート触媒を提供するものである。
一般式(1)
Figure 2006137195
(一般式(1)中、R1及びR2は、同一であっても互いに異なっていてもよく、置換基を有していてもよい、アルキル基、フェニル基、ナフチル基若しくはシクロアルキル基、又は互いに結合して脂環式環を形成したときの該環の一部であり、
3は、置換基を有していてもよい、アルキル基、フェニル基、ナフチル基又はカンファーであり、
4は、水素原子又はアルキル基であり、
5は、置換基を有していてもよい、アルキル基、フェニル基、ナフチル基又はカンファーであり、
Arは、M1とπ結合を介して結合している、置換基を有していてもよいベンゼン又は置換基を有してもよいシクロペンタジエニル基であり、
M1は、ルテニウム、ロジウム又はイリジウムであり、
*は、キラル炭素を示す。)
また、本発明のアルコール化合物の製法は、このスルホナート触媒によりケトン化合物を水素化してアルコール化合物を得るものである。そして、本発明のスルホナート触媒を利用すれば、今まで得にくかったアルコール化合物を製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のスルホナート触媒において、一般式(1)中のR1及びR2としては、例えばメチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。また、フェニル基、4‐メチルフェニル基、3,5‐ジメチルフェニル基等の炭素数1〜5のアルキル基を有するフェニル基、4‐フルオロフェニル基、4‐クロロフェニル基等のハロゲン置換基を有するフェニル基、4‐メトキシフェニル基等のアルコキシ基を有するフェニル基などが挙げられる。また、ナフチル基、5,6,7,8‐テトラヒドロ‐1‐ナフチル基、5,6,7,8‐テトラヒドロ‐2‐ナフチル基などが挙げられる。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、R1とR2とが結合して環を形成した非置換若しくは置換基を有する脂環式環も挙げられ、例えばR1とR2とが結合して環を形成したシクロペンタン環やシクロヘキサン環などが挙げられる。このうち、R1及びR2としては、共にフェニル基であるか、R1とR2とが結合して環を形成したシクロヘキサン環であることが好ましい。
一般式(1)中のR3におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、例えば置換基としてフッ素原子を1つ以上有していてもよい。フッ素原子を1つ以上含むアルキル基としては、例えば、フロオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが挙げられる。また、置換基を有していてもよいナフチル基としては、例えば無置換のナフチル基、5,6,7,8‐テトラヒドロ‐1‐ナフチル基、5,6,7,8‐テトラヒドロ‐2‐ナフチル基などが挙げられる。また、置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば無置換のフェニル基、4‐メチルフェニル基や3,5‐ジメチルフェニル基や2,4,6‐トリメチルフェニル基や2,4,6‐トリイソプロピルフェニル基等のアルキル基を有するフェニル基、4‐フルオロフェニル基や4‐クロロフェニル基等のハロゲン置換基を有するフェニル基、4‐メトキシフェニル基等のアルコキシ基を有するフェニル基などが挙げられる。
一般式(1)中のR4の具体例としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜5のアルキル基、及び水素原子などが挙げられるが、好ましいのは水素である。
一般式(1)中のArとしては、例えば無置換のベンゼンのほか、トルエン、o‐,m‐及びp‐キシレン、o‐,m‐及びp‐シメン、1,2,3‐、1,2,4‐及び1,3,5‐トリメチルベンゼン、1,2,4,5‐テトラメチルベンゼン、1,2,3,4‐テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ならびにヘキサメチルベンゼン等のアルキル基を有するベンゼンなどが挙げられる。さらに、置換基を有してもよいシクロペンタジエニル基としては、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、1,2−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,2、3−トリメチルシクロペンタジエニル基、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル基及び1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル基(Cp*)などが挙げられる。
一般式(1)中のM1は、ルテニウム、ロジウム及びイリジウムのいずれかである。
一般式(1)中のR5におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、例えば置換基としてフッ素原子を1つ以上有していてもよい。フッ素原子を1つ以上含むアルキル基としては、例えば、フロオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが挙げられる。また、置換基を有していてもよいナフチル基としては、例えば無置換のナフチル基、5,6,7,8‐テトラヒドロ‐1‐ナフチル基、5,6,7,8‐テトラヒドロ‐2‐ナフチル基などが挙げられる。また、置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば無置換のフェニル基、4‐メチルフェニル基、3,5‐ジメチルフェニル基、2,4,6‐トリメチルフェニル基、2,4,6‐トリイソプロピルフェニル基等のアルキル基を有するフェニル基、4‐フルオロフェニル基、4‐クロロフェニル基等のハロゲン置換基を有するフェニル基、4‐メトキシフェニル基等のアルコキシ基を有するフェニル基などが挙げられる。このうち、フッ素原子を1つ以上含むアルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
一般式(1)で表されるスルホナート触媒は、金属に2座配位子であるエチレンジアミン化合物(R3SO2NHCHR1CHR2NHR4)が結合している構造とみなすことができ、一般式(1)で表されるスルホナート触媒をより具体的に開示するため、エチレンジアミン化合物の具体例を列挙すると下記の如くである。即ち、N‐(p‐トルエンスルホニル)‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン(TsDPEN)、N‐メタンスルホニル‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン(MsDPEN)、N‐メチル‐N′‐(p‐トルエンスルホニル)‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン、N‐(p‐メトキシフェニルスルホニル)‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン、N‐(p‐クロロフェニルスルホニル)‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン、N‐トリフルオロメタンスルホニル‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン、N‐(2,4,6‐トリメチルベンゼンスルホニル)‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン、N‐(2,4,6‐トリイソプロピルベンゼンスルホニル)‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン、N‐(4‐tert‐ブチルベンゼンスルホニル)‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン、N‐(2‐ナフチルスルホニル)‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン、N‐(3,5‐ジメチルベンゼンスルホニル)‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン、N‐ペンタメチルベンゼンスルホニル‐1,2‐ジフェニルエチレンジアミン、1,2‐N‐トシルシクロヘキサンジアミン(TsCYDN)などが例示される。このうち、TsDPEN及びTsCYDNが好ましい。
一般式(1)で表されるスルホナート触媒は、金属アミド錯体とトリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸との反応により調製できる。又、金属アミド錯体とイッテルビウムスルホナートなどの金属スルホナートとの反応によっても調製できる。あるいは、金属上に配位子X2(X2はアニオン性基であり、例えば、ヒドリド基、水酸基、架橋したオキソ基、フッ素基、塩素基、臭素基及びヨウ素基などが挙げられる)をもつ金属アミン錯体とトリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸との反応によっても調製できる。又、金属上に配位子X2をもつ金属アミン錯体とイットリビウムスルホナートなどの金属スルホナートとの反応によっても調製できる。アミン錯体を出発原料に用いる場合には、塩基を添加すると反応が良好に進行する場合がある。
原料となる金属アミド錯体及びアミン配位子をもつ金属アミン錯体の調製方法は、Angew. Chem., Int. Ed. Engl. Vol.36, p285(1997)やJ.Org. Chem. Vol.64, p2186(1999)等に記載されている。具体的には、ルテニウムアレーン錯体、ペンタメチルシクロペンタジエニルロジウム錯体、ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム錯体などの遷移金属錯体とスルホニルジアミン配位子との反応により合成可能である。
本発明におけるアルコールの製法は、例えば、一般式(1)で表されるスルホナート触媒とケトン化合物とを溶媒に入れ、水素存在下で混合しケトン化合物を水素化することによって行われる。このとき使用される触媒の量は、スルホナート触媒に対するケトン化合物のモル比をS/C(Sは基質、Cは触媒)と表すとすると、S/Cには特に制限はないが、実用性を考慮すると10〜100,000の範囲で用いることができ、50〜10,000の範囲で用いることが好ましい。
水素化反応の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2‐プロパノール、2‐メチル‐2‐プロパノール、2‐メチル‐2‐ブタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、DMSO、DMF、アセトニトリル等のヘテロ原子含有溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、水などを単独で又は併用して用いることができる。また、上記で例示した溶媒とそれ以外の溶媒との混合溶媒を用いることもできる。これらの溶媒のうち、反応を効率的に進めるためには、アルコール系溶媒が好ましく、メタノール及びエタノールがより好ましい。溶媒の量は反応基質の溶解度及び経済性により判断され、例えばメタノールの場合、水素化反応の濃度は、1重量%以下の低濃度から99重量%以上の殆ど無溶媒に近い高濃度の状態で反応を実施することができ、5〜80重量%の濃度で反応を実施することが好ましい。このような高濃度な条件で、高い反応性で水素化反応が進行した例は殆ど知られておらず、水素化反応のバッチ当たりの生産量を高めることができ、本法は工業的に極めて有利である。
水素の圧力は、特に制限はないが、1〜200気圧の範囲で実施することができ、経済性を考慮すると5〜150気圧の範囲が好ましい。反応温度は、特に制限はないが、経済性を考慮すると−50〜100℃の範囲で行うことができ、−30〜60℃の範囲で行うことが好ましく、20〜60℃の範囲で行うことがより好ましい。反応時間は反応基質の種類、濃度、S/C、温度及び圧力等の反応条件や、触媒の種類によって異なるため、数分〜数日で反応が終了するように諸条件を設定すればよく、特に5〜24時間で反応が終了するように諸条件を設定することが好ましい。また、反応生成物の精製は、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の公知の方法により任意に行うことができる。
また、本発明におけるアルコール化合物の製法では、反応系内に塩基を添加することは必須ではないから、塩基を添加しなくてもケトン化合物の水素化反応が速やかに進行する。ただし、塩基を添加することを排除するものではなく、例えば反応基質の構造や、使用試剤の純度に応じて少量の塩基を任意に添加してもよい。
本発明の一般式(1)で表されるスルホナート錯体中の2個所あるキラル炭素は、光学活性アルコールを得るためには、いずれも(R)体であるか、又はいずれも(S)体である必要がある。これらの(R)体又は(S)体のいずれかを選択することにより、所望する絶対配置の光学活性アルコールを高選択的に得ることができる。なお、ラセミ体アルコール又はアキラルなアルコールの製造を所望する場合には、これらのキラル炭素は双方共に(R)体、又は(S)体である必要はなく、各々独立してどちらでもよい。
前述のように、本発明のアルコール化合物の製法は、塩基を添加せずにケトン化合物の水素化を行うものであるから、塩基に不安定なケトン化合物であっても水素化して対応するアルコール化合物を得ることができる。従って、本発明のアルコール化合物の製法によれば、従来知られていた塩基を含まない水素化触媒による方法と比較して、より幅広い構造のケトン化合物に対して適用可能であり、水素化反応が不純物の影響を受けにくく再現良く進行し、目的物質を高い光学純度で、且つ高収率で得ることができる。また、本発明のスルホナート錯体によれば、これまでの水素化触媒では効率的に還元することができなかった環状ケトンを水素化して光学活性環状アルコールを製造したり、オレフィン部位又はアセチレン部位を有するケトン(特にα,β‐結合がオレフィン部位又はアセチレン部位であるケトン)を水素化してオレフィン部位又はアセチレン部位を有する光学活性アルコールを製造したり、水酸基を有するケトンを水素化して水酸基を有する光学活性アルコールを製造したり、ハロゲン置換基を有するケトン(特にα位にハロゲン置換基を有するケトン)を水素化してハロゲン置換基を有する光学活性アルコールを製造したり、クロマノン誘導体などの環状ケトン類を水素化して対応する光学活性アルコールを製造したり、ジケトンを水素化して光学活性ジオールを製造したり、ケトエステルを水素化して光学活性ヒドロキシエステルを製造したり、ケトアミドを水素化して光学活性ヒドロキシアミドを製造することができ、本発明記載の方法は極めて有用である。本発明の光学活性アルコールの製法に適用可能なケトン化合物の代表例を以下に列挙する。
Figure 2006137195
本発明のアルコール化合物の製法において、ヒドロキシケトン類やケトエステル類、シアノケトン類などのようにカルボニル炭素の近傍(例えばα位やβ位)に酸素官能基又はシアノ基をもつケトン化合物を反応基質とする場合には、イリジウム触媒がルテニウム触媒に比べて極めて高い触媒性能を示すため、イリジウム触媒を使用することが好ましい。
以下、実施例を示し、さらに詳しく本発明について説明する。もちろん、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。本発明におけるケトン化合物の水素化反応は、反応形式が、バッチ式においても連続式においても実施することができる。
下記の実施例において、反応に使用した溶媒は、乾燥、脱気したものを用いた。また、NMRは、JNM‐LA400(400MHz,日本電子社製)及びJNM‐LA500(500MHz,日本電子社製)を用いて測定した。1HNMR、13CNMRはテトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質に用い、その信号をδ=0(δは化学シフト)とした。光学純度は、ガスクロマトグラフィー(GC)又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。GCはChirasil‐DEX CB(0.25mm×25m、DF=0.25μm)(CHROMPACK社製)を用いて測定し、HPLCはCHIRALCEL OD(0.46cm×25cm)、CHIRALCEL OB(0.46cm×25cm)、CHIRALCEL OJ‐H(0.46cm×25cm)(ダイセル社製)を用いて測定した。比旋光度はDIP‐370(日本分光社製)を用いて測定した。
[実施例1]
スルホナート錯体であるRu(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)の調製
まず、アルゴン置換した20mlシュレンク型反応管に、Ru[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(200mg,0.34mmol)、TfOH(30μl,0.34mmol)(関東化学社製)、THF3mlを仕込んだ。続いて、室温で1時間攪拌した。生じた沈殿をろ集し、THF5mlで洗浄した後、減圧下(1mmHg)で乾燥して、Ru(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)200mgを得た。得られたスルホナート錯体のスペクトルデータは以下のとおり:1HNMR(400MHz,THF‐d8)δ1.37,1.43(each d,J=7Hz,3H,CH(C 3 2),2.18(s,3H,C 3 ),2.29(s,3H,C 3 ),2.98(m,1H,C(CH32),3.55(m,1H,CNH),3.85(br.dd,J=11Hz,12Hz,1H,CHNH),3.94(d,J=11Hz,1H,CNTs),5.78(d,J=6Hz,1H,aromatic H),5.92−5.93(m,2H,aromatic H),6.15(d,J=6Hz,1H,aromatic H),6.53‐7.13(m,14H,aromatic H),7.16(br.d,1H,CHNH);13CNMR(100.4MHz,THF‐d8)δ18.6,21.1,22.6,22.8,31.4,70.3,73.2,82.4,82.9,84.2,84.3,97.0,101.2,127.0,127.8,128.1,128.6,128.7,128.8,129.2,130.0,139.7,139.9,140.3,143.6。
なお、Ru[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)は前出の公知文献に記載された手法に準じて合成したが、具体的な手順を以下に示す。まず、アルゴン置換したシュレンク型反応管に、[RuCl2(p‐cymene)]2(310mg,0.5mmol)(関東化学社製)、(S,S)‐TsDPEN(370mg,1mmol)、KOH(400mg,7mmol)、塩化メチレン7mlを仕込んだ。続いて、室温で5分間攪拌した。水7mlを加えて、室温で5分間攪拌した。その後、分層し、塩化メチレン層を水7mlで洗浄した。CaH2を加え、乾燥した後、CaH2をろ過により除去した。塩化メチレンを減圧下(1mmHg)で留去し、乾燥して,Ru[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)520mgを得た。
[実施例2]
スルホナート錯体であるRu(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)の調製
まず、アルゴン置換した20mlシュレンク型反応管に、Ru[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(180mg,0.3mmol)、Yb(OTf)3(183mg,0.3mmol)(Aldrich社製)、CH3OH3mlを仕込んだ。続いて、脱気後、室温で10分間攪拌した。CH3OHを減圧下(1mmHg)で留去した後、THF2mlを加えて生じた沈殿をろ集した。THF1ml、次いでトルエン5mlで洗浄した後、減圧下(1mmHg)で乾燥して、Ru(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)130mgを得た。
[実施例3]
スルホナート錯体であるRu(OTf)[(R,R)‐Tsdpen](mesitylene)の調製
まず、アルゴン置換した20mlシュレンク型反応管に、RuCl[(R,R)‐Tsdpen](mesitylene)(210mg,0.34mmol)、KOH(27mg,0.48mmol)、塩化メチレン6ml、水1mlを仕込んだ。室温で10分間攪拌した。反応液にNa2SO4を加えて乾燥した後、Na2SO4をろ過により除去した。ろ液にCaHを加えて、室温で30分間攪拌した。CaHをろ過により除去した後、減圧下(1mmHg)で溶媒を留去した。THF6ml、TfOH(30μl,0.34mmol)(関東化学社製)を加えて、室温で20分間攪拌した。生じた沈殿をろ集し、THF2mlで洗浄した後、減圧下(1mmHg)で乾燥して、Ru(OTf)[(R,R)‐Tsdpen](mesitylene)140mgを得た。得られたスルホナート錯体のスペクトルデータは以下のとおり:1HNMR(400MHz,CD3OD)δ2.22(s,3H,C 3 ),2.38(s,9H,C 3 ),3.74(d,J=11Hz,1H,CNH2),4.06(d,J=11Hz,1H,CNTs),5.74(s,3H,aromatic H),6.63‐7.18(m,14H,aromatic H)。
なお、RuCl[(R,R)‐Tsdpen](mesitylene)は前出の公知文献に記載された手法に準じて合成したが、具体的な手順を以下に示す。まず、アルゴン置換したシュレンク型反応管に、[RuCl2(mesitylene)]2(1.5g,2.5mmol)、(R,R)‐TsDPEN(1.8g,5mmol)、トリエチルアミン(1.4ml,10mmol)、2‐プロパノール30mlを仕込んだ。続いて、80℃で1時間攪拌した。減圧下(1mmHg)で濃縮して、析出した結晶をろ集し、水5mlで洗浄した。減圧下(1mmHg)で乾燥して,RuCl[(R,R)‐Tsdpen](mesitylene)3gを得た。
[実施例4]
スルホナート錯体であるRu[OSO2(p‐NO2Ph)][(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)の調製
まず、アルゴン置換した20mlシュレンク型反応管に、Ru[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(251mg,0.42mmol)、(p‐NO2Ph)SO3H(100mg,0.42mmol)(ACROS社製)、THF4mlを仕込んだ。続いて、室温で2時間攪拌した。減圧下(1mmHg)でTHFを留去した後、トルエン15mlを加えて生じた沈殿をろ集した。トルエン10mlで洗浄した後、減圧下(1mmHg)で乾燥して、Ru(OSO2(p‐NO2Ph))[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)230mgを得た。得られたスルホナート錯体のスペクトルデータは以下のとおり:1HNMR(400MHz,CD3OD)δ1.39,1.43(each d,J=7Hz,3H,CH(C 3 2),2.23(s,3H,C 3 ),2.36(s,3H,C 3 ),3.02(m,1H,C(CH32),3.65(d,J=11Hz,1H,CNH2),4.00(d,J=11Hz,1H,CNTs),5.68(d,J=6Hz,1H,aromatic H),6.03−6.07(m,3H,aromatic H),6.58‐7.17(m,14H,aromatic H),8.00(d,J=9Hz,2H,aromatic H),8.26(d,J=9Hz,2H,aromatic H)。
[実施例5]
スルホナート触媒であるRu(OSO2CH3)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)の調製
まず、アルゴン置換した20mlシュレンク型反応管に、Ru[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(180mg,0.3mmol)、CH3SO3H(20μl,0.3mmol)(関東化学社製)、THF3mlを仕込んだ。続いて、室温で1時間攪拌した。減圧下(1mmHg)でTHFを留去した後、トルエン5mlを加えた。減圧下(1mmHg)で全量2mlまで濃縮し、生じた沈殿をろ集した。トルエン2mlで洗浄した後、減圧下(1mmHg)で乾燥して、Ru(OSO2CH3)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)130mgを得た。得られたスルホナート錯体のスペクトルデータは以下のとおり:1HNMR(400MHz,CD3OD)δ1.39,1.43(each d,J=7Hz,3H,CH(CH32),2.24(s,3H,CH3),2.35(s,3H,CH3),2.70(s,3H,CH3),3.02(m,1H,CH(CH32),3.62(d,J=11Hz,1H,CHNH2),3.99(d,J=11Hz,1H,CHNTs),5.68(d,J=6Hz,1H,aromatic H),6.01−6.04(m,3H,aromatic H),6.59‐7.18(m,14H,aromatic H)。
[実施例6]
スルホナート触媒であるCp*Ir(OTf)[(S,S)‐Tsdpen]の調製
まず、アルゴン置換した20mlシュレンク型反応管に、Cp*Ir[(S,S)‐Tsdpen](78mg,0.11mmol)、TfOH(10μl,0.11mmol)(関東化学社製)、THF5mlを仕込んだ。続いて、室温で1時間攪拌した。減圧下(1mmHg)でTHFを留去した後、乾燥して、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Tsdpen]93mgを得た。得られたスルホナート錯体のスペクトルデータは以下のとおり:1HNMR(400MHz,CD3OD)δ1.94(s,15H,C 3),2.29(s,3H,C 3)4.25(br,1H,CNH2),4.65(br,1H,CNTs),6.92‐7.39(m,14H,aromatic H)
なお、Cp*Ir[(S,S)‐Tsdpen]は前出の公知文献に記載された手法に準じて合成したが、具体的な手順を以下に示す。まず、アルゴン置換したシュレンク型反応管に[Cp*IrCl22(660mg,1mmol)(Aldrich社製)、(S,S)‐TsDPEN(800mg,2.2mmol)、トリエチルアミン(0.6ml,4.2mmol)、2‐プロパノール30mlを仕込んだ。続いて、室温で12時間攪拌した。減圧下(1mmHg)で10mlまで濃縮し、析出した結晶をろ集、2‐プロパノール5mlで洗浄した。減圧下(1mmHg)で乾燥して、Cp*IrCl[(S,S)‐Tsdpen]1.2gを得た。続いて、アルゴン置換したシュレンク型反応管にCp*IrCl[(S,S)‐Tsdpen](21mg,0.032mmol)、0.1M NaOHaq(32μl,0.032mmol)、塩化メチレン5mlを仕込んだ。続いて、室温で3時間攪拌した。減圧下(1mmHg)で溶媒を留去した後、乾燥して、Cp*Ir[(S,S)‐Tsdpen]22mgを得た。
[実施例7]
α‐クロロアセトフェノンの水素化反応による(R)‐2‐クロロ‐1‐フェニルエタノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Ru(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(2.4mg,3.3μmol)、α‐クロロアセトフェノン(0.3g,2mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール4mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。水素を20気圧まで仕込み、反応を開始した。そして、30℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとGC分析から、95%eeの(R)‐2‐クロロ‐1‐フェニルエタノールが100%収率で生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ2.61(d,J=3Hz,1H,CHO),3.65(dd,J=9Hz,11Hz,1H,CHCl),3.75(dd,J=3Hz,11Hz,1H,CHCl),4.91(ddd,J=3Hz,3Hz,9Hz,1H,COH),7.27‐7.39(m,5H,aromatic H);GC(Chirasil‐DEX CB;カラム温度、130℃;インジェクション温度、250℃;ディテクション温度、275℃;ヘリウム圧、100kPa);(R)‐2‐クロロ‐1‐フェニルエタノールのtR、17.0分;(S)‐2‐クロロ‐1‐フェニルエタノールのtR、15.7分;α‐クロロアセトフェノンのtR、9.0分;比旋光度[α]20 D−46°(c2.8,C612);文献値、[α]20 D−48°(c2.8,C612),(R),Aldrich。
[実施例8‐9]
基質触媒比、水素圧、溶媒の種類を変えた以外は、実施例7と同じ条件で反応を実施して、(R)‐2‐クロロ‐1‐フェニルエタノールを合成した。結果を表1にまとめて示す。
表1
Figure 2006137195
[実施例10‐14]
水素圧、基質触媒比、基質濃度を変えた以外は、実施例7と同じ条件で反応を実施して、(R)‐2‐クロロ‐1‐フェニルエタノールを合成した。結果を表2にまとめて示す。実施例14では、基質が完全に溶解していないような高濃度でも水素化反応が進行することが示された。
表2
Figure 2006137195
[実施例15]
4‐クロマノンの水素化反応による(S)‐4‐クロマノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Ru(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(2.4mg,3.3μmol)、4‐クロマノン(1.48g,10mmol)を仕込み、アルゴン置換した。メタノール0.5mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。水素を15気圧まで仕込み、反応を開始した。50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、91%eeの(S)‐4‐クロマノールが100%収率で生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ1.99(m,1H,CHCHOH),2.08(m,1H,CHCHOH),2.31(br,1H,O),4.23(m,2H,C 2OC),4.74(m,1H,COH),6.81‐6.92(m,2H,aromatic H),7.17‐7.30(m,2H,aromatic H);HPLC(CHIRALCEL OJ‐H;溶媒、ヘキサン/2‐プロパノール=99/1;流量、1.5ml/min;温度、35℃;UV波長、220nm);(S)‐4‐クロマノールのtR、26.7分;(R)‐4‐クロマノールのtR、30.8分;4‐クロマノンのtR、11.8分;比旋光度[α]25 D−72°(c0.5,C25OH);文献値、[α]25 D+80.4°(c0.5,C25OH),100%ee(R),J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 3318。
[比較例1]
ステンレス製オートクレーブに、Ru[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(1.2mg,2μmol)、4‐クロマノン(0.3g,2mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール2mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。その後、水素を30気圧まで仕込み、反応を開始した。50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、86%eeの(S)‐4‐クロマノールが7%収率で生成していた。このように、従来より知られているルテニウム錯体と比較して、本発明のスルホナート触媒は優れた活性を示すことがわかった。
[実施例16]
4‐クロマノンの水素化反応による(S)‐4‐クロマノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Ru(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(2.4mg,3.3μmol)、4‐クロマノン(1.48g,10mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール0.7mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。その後、水素を15気圧まで仕込み、反応を開始した。50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、93%eeの(S)‐4‐クロマノールが100%収率で生成していた。
[実施例17]
4‐クロマノンの水素化反応による(S)‐4‐クロマノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Ru(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(2.4mg,3.3μmol)、Yb(OTf)3(0.62mg,1μmol)、4‐クロマノン(1.48g,10mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール0.7mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。その後、水素を15気圧まで仕込み、反応を開始した。50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、97%eeの(S)‐4‐クロマノールが98%収率で生成していた。
[実施例18‐20]
基質触媒比、水素圧を変えた以外は、実施例15と同じ条件で反応を実施して、(S)‐4‐クロマノールを合成した。結果を表3にまとめて示す。
表3
Figure 2006137195
[実施例21]
4‐クロマノンの水素化反応による(R)‐4‐クロマノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Ru(OTf)[(R,R)‐Tsdpen](mesitylene)(2.4mg,3.3μmol)、4‐クロマノン(1.48g,10mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール0.5mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。その後、水素を15気圧まで仕込み、反応を開始した。50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、83%eeの(R)‐4‐クロマノールが54%収率で生成していた。
[実施例22]
4‐クロマノンの水素化反応による(S)‐4‐クロマノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Ru[OSO2(p‐NO2Ph)][(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(2.6mg,3.3μmol)、4‐クロマノン(1.48g,10mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール0.5mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。その後、水素を15気圧まで仕込み、反応を開始した。50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、91%eeの(S)‐4‐クロマノールが77%収率で生成していた。
[実施例23]
4‐クロマノンの水素化反応による(S)‐4‐クロマノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Ru(OSO2CH3)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(1.4mg,2μmol)、4‐クロマノン(300mg,2mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール0.1mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。その後、水素を15気圧まで仕込み、反応を開始した。50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、95%eeの(S)‐4‐クロマノールが98%収率で生成していた。
[実施例24]
4‐クロマノンの水素化反応による(S)‐4‐クロマノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](1.6mg,2μmol)、4‐クロマノン(300mg,2mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール0.4mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。その後、水素を30気圧まで仕込み、反応を開始した。50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、95%eeの(S)‐4‐クロマノールが95%収率で生成していた。
[実施例25]
2,4´‐ジクロロアセトフェノンの水素化反応による2‐クロロ‐1‐(p‐クロロフェニル)エタノールの合成
オートクレーブに、Ru(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(2.4mg,3.3μmol)、2,4´‐ジクロロアセトフェノン(1.1g,6mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール0.75mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。水素を100気圧まで仕込み、反応を開始した。30℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとGC分析から、92%eeの2‐クロロ‐1‐(p‐クロロフェニル)エタノールが100%収率で生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ2.88(br,1H,O),3.58(m,1H,CHCHOH),3.68(m,1H,CHCHOH),4.85(m,1H,COH),7.26(m,4H,aromatic H);GC(Chirasil‐DEX CB;カラム温度、140℃;インジェクション温度、250℃;ディテクション温度、275℃;ヘリウム圧、100kPa);2‐クロロ‐1‐(p‐クロロフェニル)エタノールの光学異性体のtR、31.4分、34.7分;R,Sは同定していない。
[実施例26]
m‐ヒドロキシアセトフェノンの水素化反応による1‐(m‐ヒドロキシフェニル)エタノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Ru(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(2.4mg,3.3μmol)、m‐ヒドロキシアセトフェノン(1.1g,8mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール1mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。その後、水素を100気圧まで仕込み、反応を開始した。30℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、94%eeの1‐(m‐ヒドロキシフェニル)エタノールが100%収率で生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,acetone‐d6)δ1.37(d,J=6Hz,3H,C 3),4.07(d,J=4Hz,1H,CHO),4.77(m,1H,COH),6.67‐7.13(m,4H,aromatic H),8.15(s,1H,O);HPLC(CHIRALCEL OB;溶媒、ヘキサン/2‐プロパノール=95/5;流量、1.0ml/分;温度、35℃;UV波長、254nm);1‐(m‐ヒドロキシフェニル)エタノールの光学異性体のtR、17.2分、31.5分;R,Sは同定していない。
[実施例27]
1‐インダノンの水素化反応による1‐インダノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Ru(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(2.4mg,3.3μmol)、1‐インダノン(0.8g,6mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール0.75mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。その後、水素を100気圧まで仕込み、反応を開始した。30℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、97%eeの1‐インダノールが95%収率で生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ1.92(m,1H,CHC),2.40(s,1H,O),2.45(m,1H,CHC),2.79(m,1H,CHCHOH),3.03(m,1H,CHCHOH),5.20(m,1H,COH),7.20‐7.40(m,4H,aromatic H);HPLC(CHIRALCEL OB‐H;溶媒、ヘキサン/2‐プロパノール=9/1;流量、0.5ml/分;温度、35℃;UV波長、254nm);1‐インダノールの光学異性体のtR、10.9分、16.0分;R,Sは同定していない。
[実施例28]
4‐メトキシフェナシルクロライドの水素化反応による2‐クロロ‐1‐(p‐メトキシフェニル)エタノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Ru(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](p‐cymene)(1.2mg,1.6μmol)、4‐メトキシフェナシルクロライド(1.1g,6mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール0.75mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。その後、水素を100気圧まで仕込み、反応を開始した。30℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、94%eeの2‐クロロ‐1‐(p‐メトキシフェニル)エタノールが73%収率で生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CDCl3)σ3.36(br,1H,CHO),3.57‐3.66(m,2H,C 2CHOH),3.76(s,3H,OC 3),4.80(m,1H,COH),6.86(d,J=9Hz,2H,aromatic H),7.27(d,J=9Hz,2H,aromatic H);GC(Chirasil‐DEX CB;カラム温度、140℃;インジェクション温度、250℃;ディテクション温度、275℃;ヘリウム圧、100kPa);2‐クロロ‐1‐(p‐メトキシフェニル)エタノールの光学異性体のtR、30.1分,31.7分;R,Sは同定していない。
[実施例29]
スルホナート触媒であるCp*Ir(OTf)[(S,S)‐Msdpen]の調製
まず、アルゴン置換した20mlシュレンク型反応管に、Cp*Ir[(S,S)‐Msdpen](200mg,0.325mmol)、塩化メチレン10mlを仕込んだ。これに塩化メチレン5mlに溶解したTfOH(26μl,0.295mmol)(関東化学社製)を滴下した。続いて、室温で1時間攪拌した。減圧下(1mmHg)で塩化メチレンを留去した。トルエンとヘキサンの混合溶媒で洗浄した後、乾燥して、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Msdpen]93mgを得た。得られたスルホナート錯体のスペクトルデータは以下のとおり:1HNMR(400MHz,CD3OD)δ1.89(s,15H,C 3),2.26(s,3H,C 3)4.37(br,1H,CNH2),5.05(br,1H,CNMs),7.23‐7.43(m,10H,aromatic H)
なお、Cp*Ir[(S,S)‐Msdpen]は前出の公知文献に記載された手法に準じて合成したが、具体的な手順を以下に示す。まず、アルゴン置換したシュレンク型反応管に[Cp*IrCl22(500mg,0.63mmol)、(S,S)‐MsDPEN(364mg,1.26mmol)、水酸化カリウム(関東化学社製 86%含量)(409mg,6.28mmol)、塩化メチレン12ml、および水12mlを仕込んだ。続いて、室温で1時間攪拌した後、注射筒を用いて水層を抜き取った。水5mlを添加し攪拌、静置後、水層を抜き取った。この操作を8回行った後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液部を別のシュレンクフラスコに抜き取り、溶媒を留去してCp*Ir[(S,S)‐Msdpen]696mgを得た。
[実施例30]
α‐ヒドロキシアセトフェノンの水素化反応による光学活性1‐フェニル‐1、2‐エタンジオールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](1.7mg,2.0μmol)、α‐ヒドロキシアセトフェノン(0.136g,1.0mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール1mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。水素を100気圧まで仕込み、反応を開始した。そして、50℃で16時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、82%eeの光学活性1‐フェニル‐1、2‐エタンジオールが100%収率で生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CD3COCD3)δ3.53(dd,J=2Hz,4Hz,1H,CHOH),3.64(dd,J=2Hz,10Hz,1H,CHOH),4.04(br,1H,O),4.43(br,1H,O),4.73(dd,J=4Hz,10Hz,1H,COH),7.21‐7.40(m,5H,aromatic H);HPLC(CHIRALCEL OB;溶媒、ヘキサン/2‐プロパノール=98/2;流量、1.0ml/min;温度、35℃;UV波長、220nm);1‐フェニル‐1、2‐エタンジオールの両光学異性体のtR、26.0分、36.2分、今回の反応では、26.0分に検出される光学異性体が主成分であったが、R,Sは同定していない。
なお、スルホナート触媒をRu(OTf)[(S,S)-Tsdpen](p−cymene)に変更した以外は実施例30と同様にしてα‐ヒドロキシアセトフェノンの水素化反応を試みたところ、67%eeの光学活性1‐フェニル‐1、2‐エタンジオールが3%収率で生成したに過ぎなかった。
[実施例31]
α‐ヒドロキシアセトフェノンの水素化反応による光学活性1‐フェニル‐1、2‐エタンジオールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Msdpen](1.5mg,2.0μmol)、α‐ヒドロキシアセトフェノン(0.272g,2.0mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール2mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。水素を100気圧まで仕込み、反応を開始した。そして、50℃で16時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、98%eeの光学活性1‐フェニル‐1、2‐エタンジオールが100%収率で生成していた。生成物のR,Sは同定していない。
[実施例32]
α‐ヒドロキシアセトフェノンの水素化反応による光学活性1‐フェニル‐1、2‐エタンジオールの合成
水素圧10気圧で反応を実施した以外は実施例3と同様にα‐ヒドロキシアセトフェノンを反応したところ、97%eeの光学活性1‐フェニル‐1、2‐エタンジオールが98%収率で生成していた。生成物のR,Sは同定していない。
[実施例33]
α‐ヒドロキシアセトフェノンの水素化反応による光学活性1‐フェニル‐1、2‐エタンジオールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Msdpen](1.5mg,2.0μmol)、α‐ヒドロキシアセトフェノン(0.545g,4.0mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール4mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。水素を10気圧まで仕込み、反応を開始した。そして、50℃で24時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、97%eeの光学活性1‐フェニル‐1、2‐エタンジオールが100%収率で生成していた。生成物のR,Sは同定していない。
[実施例34]
ベンゾイルギ酸メチルエステルの水素化反応による(R)‐マンデル酸メチルエステルの合成
ステンレス製オートクレーブに、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](1.7mg,2.0μmol)を仕込みアルゴン置換した。ついで、メタノール1ml、ベンゾイルギ酸メチルエステル(0.28ml,2.0mmol)を仕込んだ。続いて、水素で加圧後、10回置換した。水素を30気圧まで仕込み、反応を開始した。そして、50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、66%eeの(R)‐マンデル酸メチルエステルが定量的に生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ3.75(s,3H,C 3),5.18(s,1H,COH),7.26‐7.43(m,5H,aromatic H);HPLC(CHIRALCEL OJ-H;溶媒、ヘキサン/2‐プロパノール=98/2;流量、1.0ml/min;温度、35℃;UV波長、254nm);(R)-マンデル酸メチルエステルのtR、29.0分、(S)-マンデル酸メチルエステルのtR、30.8分。
[実施例35]
ベンゾイルギ酸メチルエステルの水素化反応による(R)‐マンデル酸メチルエステルの合成
触媒としてCp*Ir(OTf)[(S,S)‐Msdpen](1.5mg,2.0μmol)を使用した以外は実施例34と同様にベンゾイルギ酸メチルエステルを反応したところ、44%eeの(R)‐マンデル酸メチルエステルが定量的に生成していた。
[実施例36]
ベンゾイル酢酸エチルエステルの水素化反応による光学活性3‐ヒドロキシ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステルの合成
ステンレス製オートクレーブに、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](1.7mg,2.0μmol)を仕込みアルゴン置換した。ついで、メタノール1ml、ベンゾイル酢酸エチルエステル(0.34ml,2.0mmol)を仕込んだ。続いて、水素で加圧後、10回置換した。水素を30気圧まで仕込み、反応を開始した。そして、50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、91%eeの光学活性3‐ヒドロキシ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステルが収率36%で生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ1.27(t,J=2Hz,3H,C 3),2.73(m,2H,CHH),4.16(m,2H,C 2CH3),5.12(m,1H,COH),7.26‐7.39(m,5H,aromatic H);HPLC(CHIRALCEL OD-H;溶媒、ヘキサン/2‐プロパノール=99/1;流量、1.0ml/min;温度、35℃;UV波長、220nm);3‐ヒドロキシ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステルの両光学異性体のtR、34.2分、45.3分。今回の反応では、34.2分に検出される光学異性体が主成分であった。生成物のR,Sは同定していない。
[実施例37]
ベンゾイル酢酸エチルエステルの水素化反応による光学活性3‐ヒドロキシ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステルの合成
ステンレス製オートクレーブに、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Msdpen](1.5mg,2.0μmol)を仕込みアルゴン置換した。ついで、メタノール0.5ml、ベンゾイル酢酸エチルエステル(0.17ml,1.0mmol)を仕込んだ。続いて、水素で加圧後、10回置換した。水素を30気圧まで仕込み、反応を開始した。そして、50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、93%eeの光学活性3‐ヒドロキシ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステルが収率92%で生成していた。生成物のR,Sは同定していない。
[実施例38]
ピルビン酸メチルエステルの水素化反応による(S)‐乳酸メチルエステルの合成
ステンレス製オートクレーブに、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](1.7mg,2.0μmol)を仕込みアルゴン置換した。ついで、メタノール1ml、ピルビン酸メチルエステル(0.18ml,2.0mmol)を仕込んだ。続いて、水素で加圧後、10回置換した。水素を30気圧まで仕込み、反応を開始した。そして、50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとGC分析から、76%eeの(S)‐乳酸メチルエステルが定量的に生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ1.42(d,J=7Hz,3H,C 3),3.10(br,1H,O),3.79(s,3H,OC 3),4.30(q,J=7Hz,1H,COH);GC(Chirasil‐DEX CB;カラム温度、80℃;インジェクション温度、250℃;ディテクション温度、275℃;ヘリウム圧、100kPa);(R)‐乳酸メチルエステルのtR、3.11分;(S)‐乳酸メチルエステルのtR、3.49分。
なお、スルホナート触媒をRu(OTf)[(S,S)-Tsdpen](p−cymene)に変更した以外は実施例38と同様にしてピルビン酸メチルエステルの水素化反応を試みたところ、33%eeの(S)−乳酸メチルエステルが25%収率で生成したに過ぎなかった。
[実施例39]
ピルビン酸メチルエステルの水素化反応による(S)‐乳酸メチルエステルの合成
Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Msdpen](1.5mg,2.0μmol)を使用した以外は実施例10と同様にピルビン酸メチルエステルを反応したところ、78%eeの(S)‐乳酸メチルエステルが定量的に生成していた。
[実施例40]
3‘,4’‐ビス(ベンジルオキシ)‐2‐クロロアセトフェノンの水素化反応による光学活性1‐[3‘,4’‐ビス(ベンジルオキシ)フェニル]‐2‐クロロエタノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Tsdpen](1.5mg,2.0μmol)、3‘,4’‐ビス(ベンジルオキシ)‐2‐クロロアセトフェノン(0.367g,1.0mmol)を仕込み、アルゴン置換した。続いて、メタノール1.1ml、およびジメチルホルムアミド0.36mlを添加し、水素で加圧後、10回置換した。水素を100気圧まで仕込み、反応を開始した。そして、50℃で18時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から、82%eeの光学活性1‐[3‘,4’‐ビス(ベンジルオキシ)フェニル]‐2‐クロロエタノールが100%収率で生成していた。得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CD3Cl3)δ3.55(dd,J=9Hz,11Hz,1H,CHCl),3.64(dd,J=3Hz,11Hz,1H,CHCl),4.78(dd,J=3Hz,9Hz,1H,COH),5.15(s,2H,OC 2Ph),5.16(s,2H,OC 2Ph),6.86‐7.45(m,13H,aromatic H);得られたアルコールの光学純度は、2‐プロパノール中、4N水酸化ナトリウム水溶液と0度で1時間反応し、1‐[3‘,4’‐ビス(ベンジルオキシ)フェニル]‐エタン‐1,2‐オキシドに変換したのち、HPLCにより分析した。HPLC(CHIRALPAK AS‐H;溶媒、ヘキサン/2‐プロパノール=98/2;流量、0.5ml/min;温度、35℃;UV波長、215nm);1‐[3‘,4’‐ビス(ベンジルオキシ)フェニル]‐エタン‐1,2‐オキシドの両光学異性体のtR、26.2分、30.0分、今回の反応では、26.2分に検出される光学異性体が主成分であった。生成物のR,Sは同定していない。
[実施例41]
α‐シアノアセトフェノンの水素化反応による2‐シアノ‐1‐フェニルエタノールの合成
ステンレス製オートクレーブに、Cp*Ir(OTf)[(S,S)‐Msdpen](1.5mg,2.0μmol)、α‐シアノアセトフェノン(0.15g,1.0mmol)を仕込みアルゴン置換した。ついで、メタノール5ml、を仕込んだ。続いて、水素で加圧後、10回置換した。水素を30気圧まで仕込み、反応を開始した。そして、50℃で15時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻した。生成物の1HNMRとHPLC分析から96%eeの(S)‐2‐シアノ‐1‐フェニルエタノールが定量的に生成していた。
得られたアルコール化合物のスペクトルデータは以下のとおり。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ2.51(brs,1H,O),2.76(m,2H,CHHCN),5.04(t,J=6.0Hz,H,COH),7.35‐7.50(m,5H,aromatic H);HPLC(CHIRALCEL OJ‐H;溶媒、ヘキサン/2‐プロパノール=95/5;流量、1.0ml/分;温度、35℃;UV波長、254nm);(S)‐2‐シアノ‐1‐フェニルエタノールのtR、42.5.分、(R)‐2‐シアノ‐1‐フェニルエタノールのtR、47.7分。
なお、スルホナート触媒をRu(OTf)[(S,S)-Tsdpen](p−cymene)に変更した以外は実施例41と同様にしてα‐シアノアセトフェノンの水素化反応を試みたところ、反応は進行しなかった。
産業上の利用の可能性
本発明は、医薬、農薬、あるいは多くの汎用化学品の合成中間体等としての光学活性アルコールを製造するのに利用される。

Claims (9)

  1. 一般式(1)で表され、水素化反応に用いられるスルホナート触媒。
    一般式(1)
    Figure 2006137195
    (一般式(1)中、R1及びR2は、同一であっても互いに異なっていてもよく、置換基を有していてもよい、アルキル基、フェニル基、ナフチル基若しくはシクロアルキル基、又は互いに結合して脂環式環を形成したときの該環の一部であり、
    3は、置換基を有していてもよい、アルキル基、フェニル基、ナフチル基又はカンファーであり、
    4は、水素原子又はアルキル基であり、
    5は、置換基を有していてもよい、アルキル基、フェニル基、ナフチル基又はカンファーであり、
    Arは、M1とπ結合を介して結合している、置換基を有していてもよいベンゼン又は置換基を有してもよいシクロペンタジエニル基であり、
    M1は、ルテニウム、ロジウム又はイリジウムであり、
    *は、キラル炭素を示す。)
  2. 前記一般式(1)中、R1及びR2は、同一であっても互いに異なっていてもよい、フェニル基、炭素数1〜5のアルキル基を有するフェニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基を有するフェニル基若しくはハロゲン置換基を有するフェニル基、又は互いに結合して5員環又は6員環を形成していてもよいアルキル基である、請求項1に記載のスルホナート触媒。
  3. 前記一般式(1)中、R5は、フッ素原子を1つ以上含むアルキル基である、請求項1又は2に記載のスルホナート触媒。
  4. 水素又は水素を供与する化合物の存在下、請求項1〜3のいずれかに記載のスルホナート触媒によりケトン化合物を水素化してアルコール化合物を得る、アルコール化合物の製法。
  5. 水素又は水素を供与する化合物の存在下、請求項1〜3のいずれかに記載のスルホナート触媒であって2箇所のキラル炭素がいずれもR体のもの又はいずれもS体であるものを用いることによりケトン化合物を水素化して光学活性アルコール化合物を得る、アルコール化合物の製法。
  6. メタノール、エタノール及び2‐プロパノールからなる群より選ばれる1種又は2種以上を溶媒としてケトン化合物を水素化する、請求項4又は5に記載のアルコール化合物の製法。
  7. 水素又は水素を供与する化合物の存在下、前記一般式(1)におけるM1がイリジウムである請求項1〜3のいずれかに記載のスルホナート触媒により、カルボニル炭素の近傍に酸素官能基又はシアノ基を有するケトン化合物を水素化してアルコール化合物を得る、アルコール化合物の製法。
  8. 水素又は水素を供与する化合物の存在下、前記一般式(1)におけるM1がイリジウムである請求項1〜3のいずれかに記載のスルホナート触媒であって2箇所のキラル炭素がいずれもR体のもの又はいずれもS体のものを用いることにより、カルボニル炭素の近傍に酸素官能基又はシアノ基を有するケトン化合物を水素化して光学活性アルコール化合物を得る、アルコール化合物の製法。
  9. 前記ケトン化合物は、α−若しくはβ−ヒドロキシケトン類、α−若しくはβ―ケトエステル類又はα−若しくはβ−シアノケトン類である、請求項7又は8に記載のアルコール化合物の製法。

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