JPWO2006126454A1 - ポリベンゾオキサゾール系基板材料およびそのフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】高ガラス転移温度、高透明性、低複屈折、低吸水率、かつ十分な靭性を併せ持つポリベンゾオキサゾール系基板材料およびそのフィルムを提供すること。【解決手段】式(1)(式中、Rは2価の脂環族基である)で表されるモノマー単位を反復単位の主成分とし、線熱膨張係数(荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分)が80ppm/K以下であり、固有粘度が0.4dL/g以上であるポリベンゾオキサゾールからなる基板材料。【選択図】なし
Description
本発明は高いガラス転移温度、高い透明性、低い複屈折、低い吸水率、及び十分な靭性を併せ持つ、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜および液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、特にフレキシブルフィルム液晶ディスプレー用プラスチック基板の材料として有用なポリベンゾオキサゾール系基板材料およびそのフィルムに関する。
現在、液晶ディスプレー用基板にはガラス基板が用いられているが、近年のディスプレーの大画面化の動向に伴い、軽量化および生産性向上の問題が顕在化している。また携帯電話、電子手帳、携帯用パーソナルコンピュータ等のモバイル用情報・通信機器では液晶ディスプレー中のガラス基板が小さな衝撃でも破損しやすいといった問題が指摘されている。最近、重くて割れやすいガラス基板の代替材料として、より軽量で成型加工性が高く、割れにくいプラスチック基板が注目されている。
しかしプラスチック基板はガラス基板に比べて耐熱性に劣るという欠点を持つ。特にTFT型液晶パネルでは製造工程上、190℃の高温に複数回曝されるため、プラスチック基板のガラス転移温度は少なくとも190℃より高いことが要求される。しかしながら現存する代表的な透明樹脂であるポリメタクリル酸メチルやポリカーボネートではガラス転移温度がそれぞれ100℃および150℃であり、耐熱性の点で全く不十分である。
ガラス転移温度が高い高分子材料として、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンズイミダゾールが挙げられる。中でもポリイミドは、その製造のための重合反応および膜の製造方法が比較的簡便であること、入手可能なモノマーが多く、物性改良に有利であることから、開発検討の対象となり、高ガラス転移温度、高透明性及び高靭性を同時に有するポリイミドが検討されている(非特許文献1)。
一方、液晶ディスプレーに使用される基板は吸水率ができるだけ低いことが望ましい。これは吸着水が基板上に形成されたITO電極に対して剥離の促進等の悪影響を及ぼす恐れがあるためである。
ポリイミドは分子内に分極率の高いイミド基を有するため、一般に吸水率が高く、上記観点からは一般に不利である。
ポリイミドフィルムは一般にテトラカルボン酸二無水物とジアミンとをジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒中で等モル反応させてポリイミド前駆体とし(前駆体重合)、その後、この溶液を基板上に流延して乾燥させ、300℃以上の高温で加熱硬化する2段階法で製造される。これは最終生成物であるポリイミドが溶媒に不溶で、熱可塑性も殆どない場合が多く、ポリイミド自体を成型加工することが困難なためである。
また、フレキシブルフィルム液晶ディスプレー用プラスチック基板として、しばしば膜厚100〜200μmといった厚いフィルムが要求されるが、そのように厚いポリイミドフィルムを2段階法で作製することは容易ではない。
更に深刻な問題はポリイミドフィルムの着色である。これはポリイミド鎖における芳香族基を通じた分子内共役および、分子内・分子間電荷移動相互作用によるものである(非特許文献2)。この点は、ポリイミド前駆体重合の際に用いるテトラカルボン酸二無水物とジアミンのどちらか一方あるいは両方に脂肪族モノマーを使用することによって、電荷移動相互作用を妨害し、ポリイミド膜の透明性の問題を克服することが可能である。
しかしながら、脂肪族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物からポリイミド前駆体重合を行なう際、重合反応初期に塩形成が起こり、重合終了まで長期間を要するか、場合によっては重合反応が全く進行しないという重大な問題が生じる(非特許文献3)。
一方、ポリベンゾオキサゾールはイミド基のような高分極性の構造単位を分子内に含んでおらず、低吸水性が期待される。更に分子内に脂環族構造を導入することで、膜の透明性が改善されると同時に、分子間相互作用が低下して最終生成物であるポリベンゾオキサゾールの有機溶媒に対する溶解性が高くなることが期待される。しかしながら、フレキシブルフィルム液晶ディスプレー用プラスチック基板に適した上記膜特性および加工性を全て満足するポリベンゾオキサゾールを製造する技術は知られていないのが現状である。
骨格中への脂環族構造の導入は透明化と同時に低誘電率化にも有利であることは、ポリイミド系ではよく知られている(非特許文献4)が、ポリベンゾオキサゾール系においても脂環族構造の導入により膜の透明性と同時に低誘電率の発現が期待される。
電気絶縁膜の低誘電率化はマイクロプロセッサーの演算速度の高速化やクロック信号の立ち上がり時間の短縮化を可能にするため、情報処理・通信分野で極めて重要な課題になってきている。
また上記の可溶性ポリベンゾオキサゾールを多層基板等における電気絶縁膜として利用する場合には、金属基板上に絶縁膜を形成するためにポリベンゾオキサゾール自体の有機溶媒溶液を塗布後、比較的低温で溶媒を蒸発、乾燥させるだけでよく、金属基板/絶縁膜積層体における熱応力低減に有利である。
一般に、ポリイミドやポリベンゾオキサゾール等の絶縁材料が有機溶媒に不溶な場合、それらの前駆体の有機溶媒溶液を基板上に塗布し乾燥させた後、300〜400℃の高温で脱水環化反応させることで、最終的に基板上に耐熱性絶縁膜を形成する方法がとられるが、この際、絶縁膜の線熱膨張係数が十分に低くないと(金属基板のそれに近くないと)、熱環化反応後の室温に戻す冷却過程で大きな熱応力が発生し、基板からの絶縁膜の剥れ、割れ、積層体の反り等が発生し、デバイスの信頼性の低下を招くことになる。
ポリマー主鎖中にエーテル結合を有するポリベンゾオキサゾールも知られている(特許文献1及び2)。しかし、上記のような要求特性を全て満たすポリベンゾオキサゾールは知られていない。
特開2003−185857号
特開2004−18594号
「高分子討論会予稿集」,53巻,2004年,p.3985〜3986。
「プログレス・イン・ポリマーサイエンス(Progress in Polymer Science)」,26巻,2001年,p.259〜335。
「ハイパフォーマンス・ポリマー(High Performance Polymers)」,15巻,2003年,p.47〜64。
「マクロモレキュール(Macromolecules)」,32巻,1999年,p.4933〜4939。
本発明の課題は、高ガラス転移温度、高透明性、低複屈折、低吸水率、かつ十分な靭性を併せ持つ、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜および液晶ディスプレー用基板、有機ELディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、特にフレキシブルフィルム液晶ディスプレー用プラスチック基板として有用なポリベンゾオキサゾール系基板材料およびそのフィルムを提供することである。
本発明者等は上記の課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、ビス(o−アミノフェノール)エーテル成分としての3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルと、ジカルボン酸成分としての脂環式ジカルボン酸とを、縮合剤の存在下に重縮合反応させて得られ、上記要求特性を全て満たすポリベンゾオキサゾールを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち本発明の要旨は、
(1)式(1)で表されるモノマー単位を反復単位の主成分とし、線熱膨張係数(荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分)が80ppm/K以下であり、固有粘度が0.4dL/g以上であるポリベンゾオキサゾールからなる基板材料、
(1)式(1)で表されるモノマー単位を反復単位の主成分とし、線熱膨張係数(荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分)が80ppm/K以下であり、固有粘度が0.4dL/g以上であるポリベンゾオキサゾールからなる基板材料、
(2)Rが炭素数3〜8のシクロアルキル残基である、前項(1)に記載の基板材料、
(3)ポリベンゾオキサゾールが、ビス(o−アミノフェノール)エーテルとジカルボン酸誘導体を縮合剤の存在下、重縮合反応させて得られたものである、前項(1)または(2)に記載の基板材料、
(4)有機溶媒を含有する、前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の基板材料、
(5)前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の基板材料からなるポリベンゾオキサゾールフィルム、
(6)ガラス転移温度が190℃以上、吸水率が1.0%以下、破断伸びが30%以上である、前項(5)に記載のポリベンゾオキサゾールフィルム、
に存する。
本発明に係るポリベンゾオキサゾール系基板材料は上記要求特性を全て満足しているため、上記のような各種用途に好適な材料である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリベンゾオキサゾール系基板材料は、上記式(1)で表されるモノマー単位を反復単位の主成分とするポリベンゾオキサゾールであり、ビス(o−アミノフェノール)エーテル成分としての3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルと、ジカルボン酸成分としての脂環式ジカルボン酸とを、縮合剤の存在下に重縮合反応させることによって製造される。
本発明のポリベンゾオキサゾール系基板材料は、上記式(1)で表されるモノマー単位を反復単位の主成分とするポリベンゾオキサゾールであり、ビス(o−アミノフェノール)エーテル成分としての3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルと、ジカルボン酸成分としての脂環式ジカルボン酸とを、縮合剤の存在下に重縮合反応させることによって製造される。
第1の原料である上記ビス(o−アミノフェノール)エーテル成分としての3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルは、式(2)で表される。
第2の原料である上記ジカルボン酸成分としての脂環式ジカルボン酸は、特に限定されないが、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸等の炭素数3〜8のシクロアルキルジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜8のシクロアルキルジカルボン酸、特に好ましくは1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(式(3))および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(式(4))が用いられる。これらを単独であるいは2種類以上組み合わせて使用することができる。ポリベンゾオキサゾールの重合反応性および有機溶媒に対する溶解性の観点から1,3−シクロヘキサンジカルボン酸を含有することが好ましい。
本発明のポリベンゾオキサゾール系基板材料の具体的な製造方法について詳細に説明する。
脂環式ジカルボン酸成分総量と等モル量の3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルを反応容器中に入れ、重合溶媒を加える。撹拌機で撹拌しながら窒素雰囲気中、100℃から10℃ずつ最終温度まで段階的に昇温(各温度で10分間保持)し、最後に200〜230℃で10分〜2時間保持する。室温まで冷却後、水中に沈殿させ、洗浄水が中性になるまで大量の水で洗浄後、更にメタノールで洗浄し、最後に100℃で真空乾燥して、ポリベンゾオキサゾールの白色沈殿を得る。
重合時のモノマー濃度は通常5〜30重量%、好ましくは7〜20重量%である。モノマー濃度が5重量%未満であると、ポリベンゾオキサゾールの重合度が十分高くならない場合があり、30重量%を越えると、モノマーが十分に溶解せず、均一な溶液が得られない恐れがある。
重合溶媒及び縮合剤に特に制限はない。縮合剤兼重合溶媒としてポリ燐酸あるいは五酸化燐−メタンスルホン酸混合物が用いられることが好ましい。
脂環式ジカルボン酸を使用する上記重合反応は、少なくとも200℃まで昇温することが好ましい。200℃以下で重合反応を行うと、重合度が十分高くならない恐れがある。他方で、重合温度は上記のように徐々に昇温して行うことが好ましく、急激に例えば200℃にまで昇温するべきではない。さもないと、脂環族構造が一部分解し、最終的に得られるポリベンゾオキサゾールが著しく着色し、更に重合度が十分高くならない恐れがある。
本発明に係るポリベンゾオキザゾールの要求特性および重合反応性を著しく損なわない範囲で式(2)の化合物以外の他のo−アミノフェノール化合物を部分的に使用することができる。このようなo−アミノフェノール化合物としては、例えば2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノハイドロキノン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等があげられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。これら他のo−アミノフェノール化合物は、全o−アミノフェノール化合物中で40モル%以下の割合で使用することができる。
また、本発明に係るポリベンゾオキザゾールの要求特性および重合反応性を著しく損なわない範囲で部分的に他のジカルボン酸を使用することができる。使用可能なジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,8−アントラセンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等があげられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
上記3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(以後、ADPEと略称する)は、本来は、白色結晶であるが、合成中、あるいは、保存中に、着色不純物で汚染されやすい。本発明においては、その目的からして着色不純物で汚染されていないADPEを使用することが好ましい。
このような着色の少ないADPEは、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルをニトロ化して得られる3,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルを、アルコール性有機溶剤中、触媒存在下、水素またはヒドラジン水和物で還元することによって、得ることができる。
上記触媒としては、通常、ラネーニッケル、活性炭に担持したパラジウム、活性炭に担持した白金が用いられる。
ADPEを、窒素気流下、ヒドラジン水和物を添加したアルコール性有機溶剤に加熱溶解し、活性炭を加え、熱時攪拌後、熱ろ過し、得られた濾液を、冷却、水を添加して、結晶を析出させる。ろ過して、得られたろ過ケーキを水洗、乾燥して、白色結晶ADPEを得る。
ヒドラジン水和物は、通常、60%ヒドラジン1水和物が用いられるが、特に限定されない。使用される60%ヒドラジン1水和物は、ADPEに対し、通常、0.1〜100wt%、好ましくは、1〜50wt%、更に、好ましくは、5〜40%、特に好ましくは、10〜30%である。60%ヒドラジン1水和物が、0.1%未満の場合、処理中、着色物の生成が活発になり、活性炭で、脱色できなくなる。100wt%を超えると、経済的でない。
アルコール性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メトキシエタノール等が挙げられるが、メタノールが好ましい。アルコール性有機溶剤の使用量は、溶剤の種類によって異なるが、ADPEに対し、通常、3〜30倍(v/w)、好ましくは、5〜20倍(v/w)、特に好ましくは、10〜15倍(v/w)である。
活性炭としては、通常の脱色用の活性炭が選択できるが、二村化学工業製の「太閤活性炭SA」が好ましい。使用量は、ADPEに対し、通常、1〜30wt%、好ましくは、2〜20wt%、特に、好ましくは、5〜10wt%である。
活性炭で処理する温度は、通常、20℃からアルコール性有機溶剤の沸点、好ましくは、30〜70℃、好ましくは、40〜60℃、特に好ましくは、50〜60℃である。活性炭で処理する時間は、特に限定されないが、通常、30分から3時間、好ましくは、1時間から2時間である。
熱ろ過して得られるろ液に加える水の量は、ADPEに対し、通常、5〜30倍(w/w)、好ましくは、10〜20倍(w/w)である。5倍未満の場合、収率が低くなり、30倍を超えると、生産性が低下し、経済的でない。
本発明に係るポリベンゾオキサゾールは、その前駆体、即ちポリヒドロキシアミドあるいはポリシリル化ヒドロキシアミドを経由して合成することも原理的には可能である。ポリヒドロキシアミドはビス(o−アミノフェノール)エーテルとジカルボン酸ジクロリドから重縮合反応により得られるが、酸クロリド基がアミノ基のみならずヒドロキシ基とも反応するため、官能基のモルバランスがくずれ、高重合体を得ることは困難である。
ポリシリル化ヒドロキシアミドは、まずビス(o−アミノフェノール)エーテルをN−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性有機溶媒中、シリル化試薬を用いてテトラシリル化体とした後、これとジカルボン酸ジクロリドを等モル重縮合反応せしめて、高重合体を得ることが可能である。しかしながらポリシリル化ヒドロキシアミドキャスト膜の熱環化反応には通常300℃以上の高温を必要とするため、脂環構造部位が部分的に熱分解してポリベンゾオキサゾール膜が著しく着色する恐れがある。
本発明に係るポリベンゾオキサゾールでは、前駆体を経由しないため上記のような高温脱水環化反応工程を必要としないため、得られるポリベンゾオキサゾール膜が着色する心配がない。また、前駆体重合に必要なジカルボン酸の塩素化やビス(o−アミノフェノール)エーテルのシリル化のような煩雑な工程を一切含まず、前駆体重合の際に用いる高価なシリル化試薬や、痕跡量でも残留すると電子デバイスに好ましくない塩素成分を含む酸クロリド化合物を一切使用する必要がない。
ポリベンゾオキサゾール前駆体重合の際にしばしば添加される高分子溶解促進剤、即ちリチウムブロマイドやリチウムクロライドの如き金属塩類は、本発明におけるポリベンゾオキサゾール一段階重合反応には一切使用する必要がない。これらの金属塩類はポリベンゾオキサゾール膜中に金属イオンが痕跡量でも残留すると、電子デバイスとしての信頼性を著しく低下させるため用いられるべきではない。
本発明に係るポリベンゾオキサゾールを有機溶媒に溶解させ、均一・透明で貯蔵安定性の高い溶液を得ることができる。この溶液をシリコン、銅、ガラス等の基板上に流延し、温風乾燥器中、50〜150℃の温度範囲で10分〜数時間乾燥される。この膜を更に100〜300℃、好ましくは150℃〜250℃で熱処理することにより、透明で強靭なポリベンゾオキサゾールフィルムが得られる。300℃以上での熱処理ではポリベンゾオキサゾールフィルムが著しく着色する恐れがある。またポリベンゾオキサゾールフィルムの着色を抑制するために、熱処理は真空中または窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましいが、あまり高温にしないかぎり空気中で行っても重大な問題は生じない。
ポリベンゾオキサゾール溶液を得る際に用いる有機溶媒としては特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ピコリン、ピリジン、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の非プロトン性溶媒および、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等のプロトン性溶媒が使用可能である。またこれらの溶媒は単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。
本発明に係るポリベンゾオキサゾールは脂環族構造を有するため、これを含まない全芳香族ポリベンゾオキサゾールに比べると長期熱安定性に若干劣るが、フレキシブル液晶ディスプレーや多層基板等の作製時に要求される短期耐熱性は充分高く、上記産業分野への応用には全く問題がない。
本発明の基板材料は、本発明で要求される特性を損なわない範囲で、式(1)で表されるモノマー単位を反復単位とするポリベンゾオキサゾール以外のものを含んでいても差し支えないが、式(1)のモノマー単位を反復単位の60mol%以上含有することが好ましい。
本発明に係るポリベンゾオキサゾールの線熱膨張係数(荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分)は80ppm/K以下である必要があり、好ましくは70ppm/K以下である。
本発明に係るポリベンゾオキサゾールの固有粘度はできるだけ高い方が膜靭性が増加する傾向があるため望ましく、0.4dL/g以上、好ましくは0.4〜5.0dL/g、特に好ましくは0.5〜2.0dL/gであることが好ましい。固有粘度が0.4dL/gを下回るとポリベンゾオキサゾールフィルムの靭性が急激に低下して、フレキシブル液晶ディスプレー用基板への適用が困難になる恐れがある。
本発明に係るポリベンゾオキサゾールのガラス転移温度はできるだけ高い方が望ましいが、TFT型フレキシブル液晶ディスプレー製造工程上の制約から、190℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。
本発明に係るポリベンゾオキサゾールの破断伸びは30%以上であることが好ましい。
本発明のポリベンゾオキサゾール系基板材料をフレキシブル液晶ディスプレー用基板に適用する場合、ポリベンゾオキサゾールフィルムが透明・無着色である必要がある。指標としてカットオフ波長が330nmより短波長であることが好ましく、更に400nmでの透過率が40%以上であることが好ましい。また、複屈折はできるだけ低い方が好ましいが、0.01以下であれば液晶ディスプレー用基板として大きな支障はない。
吸水率はできるだけ低い方が好ましいが、1.0%以下であれば液晶ディスプレー用基板として大きな支障はない。
本発明に係るポリベンゾオキサゾールは上記要求特性を全て満足しているため、上記用途に最適な材料である。
得られたポリベンゾオキサゾール中には必要に応じて酸化安定剤、末端封止剤、フィラー、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤および増感剤等の添加物が混合されていても差し支えない。
以下に本発明の具体的態様を実施例によりさらに詳細に説明するが、これは例示のためであり、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。なお、各例における分析値は以下の方法により求めた。
<固有粘度>
0.5重量%のポリベンゾオキサゾール溶液について、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
0.5重量%のポリベンゾオキサゾール溶液について、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
<ガラス転移温度:Tg>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークから求めた。
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークから求めた。
<線熱膨張係数:CTE>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値として線熱膨張係数を求めた。
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値として線熱膨張係数を求めた。
<5%重量減少速度:Td5>
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、サンプルの初期重量が5%減少した時の温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、サンプルの初期重量が5%減少した時の温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
<カットオフ波長(透明性)>
日本分光社製分光光度計(V−520)により200nmから900nmの可視・紫外線透過率を測定した。透過率が0.5%以下となる波長(カットオフ波長)を透明性の指標とした。カットオフ波長が短い程、透明性が良好であることを意味する。
日本分光社製分光光度計(V−520)により200nmから900nmの可視・紫外線透過率を測定した。透過率が0.5%以下となる波長(カットオフ波長)を透明性の指標とした。カットオフ波長が短い程、透明性が良好であることを意味する。
<光透過率(透明性)>
日本分光社製分光光度計(V−520)により400nmにおける光透過率を測定した。透過率が高い程、透明性が良好であることを意味する。
日本分光社製分光光度計(V−520)により400nmにおける光透過率を測定した。透過率が高い程、透明性が良好であることを意味する。
<複屈折>
ポリベンゾオキサゾール膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアタゴ社製アッベ屈折計(4T)(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。
ポリベンゾオキサゾール膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアタゴ社製アッベ屈折計(4T)(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。
<誘電率>
ポリベンゾオキサゾール膜の平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて、次式により1MHzにおける誘電率(ε)を算出した。ε=1.1×nav 2
<弾性率、破断伸び>
東洋ボールドウィン社製引張試験機(UTM−2)を用いて、ポリベンゾオキサゾール膜の試験片(3mm×30mm)について引張り試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力―歪曲線の初期の勾配から弾性率を、膜が破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。破断伸びが高いほど膜の靭性が高いことを意味する。
ポリベンゾオキサゾール膜の平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて、次式により1MHzにおける誘電率(ε)を算出した。ε=1.1×nav 2
<弾性率、破断伸び>
東洋ボールドウィン社製引張試験機(UTM−2)を用いて、ポリベンゾオキサゾール膜の試験片(3mm×30mm)について引張り試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力―歪曲線の初期の勾配から弾性率を、膜が破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。破断伸びが高いほど膜の靭性が高いことを意味する。
<吸水率>
50℃で24時間真空乾燥したポリベンゾオキサゾール膜(膜厚20〜30μm)を25℃の水に24時間浸漬した後、余分の水分を拭き取り、重量増加分から吸水率(%)を求めた。
50℃で24時間真空乾燥したポリベンゾオキサゾール膜(膜厚20〜30μm)を25℃の水に24時間浸漬した後、余分の水分を拭き取り、重量増加分から吸水率(%)を求めた。
(合成例1)
攪拌機、還流器を備えた500cc容量の4口フラスコに、窒素気流下、メタノール300cc、60%ヒドラジン1水和物6gを加え、次に、市販品の3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(ADPE)20g、「太閤活性炭SA」4gを加えて加熱した。60〜65℃で1時間保持した後、冷却した。45℃で熱ろ過した。熱メタノール20ccで、活性炭を洗浄した。ろ液を、1000ccフラスコに加え、窒素気流下、冷却した。内容液温度が5℃のとき、イオン交換水300ccを30分かけて、滴下した。2〜3℃で30分保持した後、ろ過した。ろ過ケーキを、200ccのイオン交換水で洗浄した。湿ケーキを、50〜60℃、減圧下で、乾燥し、19gの白色乾燥ADPEを得た。HPLCで精製して純度99.9%のADPEを得た。ADPE0.02gを、メタノール1g及びアセトニトリル4gの混合溶液に溶解した溶液の液色は、無色であった。
攪拌機、還流器を備えた500cc容量の4口フラスコに、窒素気流下、メタノール300cc、60%ヒドラジン1水和物6gを加え、次に、市販品の3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(ADPE)20g、「太閤活性炭SA」4gを加えて加熱した。60〜65℃で1時間保持した後、冷却した。45℃で熱ろ過した。熱メタノール20ccで、活性炭を洗浄した。ろ液を、1000ccフラスコに加え、窒素気流下、冷却した。内容液温度が5℃のとき、イオン交換水300ccを30分かけて、滴下した。2〜3℃で30分保持した後、ろ過した。ろ過ケーキを、200ccのイオン交換水で洗浄した。湿ケーキを、50〜60℃、減圧下で、乾燥し、19gの白色乾燥ADPEを得た。HPLCで精製して純度99.9%のADPEを得た。ADPE0.02gを、メタノール1g及びアセトニトリル4gの混合溶液に溶解した溶液の液色は、無色であった。
(実施例1)
攪拌機付密閉反応容器中に1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmolおよび合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル10mmolを入れ、モノマー濃度が10重量%になるようにポリ燐酸を加えた。撹拌機で撹拌しながら窒素気流中、オイルバスにて100℃から10℃ずつ段階的に昇温(各温度で10分間保持)し、最後に200℃で10分時間保持した。反応終了後、室温まで冷却し、水中に沈殿させ、洗浄水が中性になるまで大量の水で洗浄した。更にメタノールで洗浄し、最後に100℃で真空乾燥して、ポリベンゾオキサゾールの白色沈殿を得た。ヘキサメチルホスホルアミド中、30℃で測定した、ポリベンゾオキサゾールの固有粘度は1.30dL/gであり、高重合体であった。また様々な溶媒(N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、m−クレゾール等)に溶解性を示した。次にこのポリベンゾオキサゾールをヘキサメチルホスホルアミドに7重量%になるように溶解させ均一かつ透明な溶液を得た。この溶液をガラス基板上に流延し、120℃で2時間乾燥後、メタノールに浸漬後、更に真空中200℃で1時間熱処理し、透明で可撓性のポリベンゾオキサゾールフィルムを得た。膜物性はガラス転移温度195℃、カットオフ波長311nm、破断伸び84%、複屈折Δn=0.004、線熱膨張係数55.3ppm/K、5%重量減少温度(昇温速度10℃/min)は窒素中で470℃、空気中で443℃、誘電率は2.90、吸水率0.64%であり、要求特性を全て満足するポリベンゾオキサゾールが得られた(表1)。このポリベンゾオキサゾール薄膜の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
攪拌機付密閉反応容器中に1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmolおよび合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル10mmolを入れ、モノマー濃度が10重量%になるようにポリ燐酸を加えた。撹拌機で撹拌しながら窒素気流中、オイルバスにて100℃から10℃ずつ段階的に昇温(各温度で10分間保持)し、最後に200℃で10分時間保持した。反応終了後、室温まで冷却し、水中に沈殿させ、洗浄水が中性になるまで大量の水で洗浄した。更にメタノールで洗浄し、最後に100℃で真空乾燥して、ポリベンゾオキサゾールの白色沈殿を得た。ヘキサメチルホスホルアミド中、30℃で測定した、ポリベンゾオキサゾールの固有粘度は1.30dL/gであり、高重合体であった。また様々な溶媒(N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、m−クレゾール等)に溶解性を示した。次にこのポリベンゾオキサゾールをヘキサメチルホスホルアミドに7重量%になるように溶解させ均一かつ透明な溶液を得た。この溶液をガラス基板上に流延し、120℃で2時間乾燥後、メタノールに浸漬後、更に真空中200℃で1時間熱処理し、透明で可撓性のポリベンゾオキサゾールフィルムを得た。膜物性はガラス転移温度195℃、カットオフ波長311nm、破断伸び84%、複屈折Δn=0.004、線熱膨張係数55.3ppm/K、5%重量減少温度(昇温速度10℃/min)は窒素中で470℃、空気中で443℃、誘電率は2.90、吸水率0.64%であり、要求特性を全て満足するポリベンゾオキサゾールが得られた(表1)。このポリベンゾオキサゾール薄膜の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
(実施例2)
ジカルボン酸として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)を用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様にしてポリベンゾオキサゾールを合成し、フィルムを作製して物性評価を行った。表1に物性値を示す。1,3−シクロヘキサンジカルボン酸を用いた場合と比較して、限られた溶媒(m−クレゾール等)にしか溶解性を示さなかったが、実施例1と同様に要求特性をほぼ満足するポリベンゾオキサゾールが得られた。
ジカルボン酸として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)を用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様にしてポリベンゾオキサゾールを合成し、フィルムを作製して物性評価を行った。表1に物性値を示す。1,3−シクロヘキサンジカルボン酸を用いた場合と比較して、限られた溶媒(m−クレゾール等)にしか溶解性を示さなかったが、実施例1と同様に要求特性をほぼ満足するポリベンゾオキサゾールが得られた。
(実施例3)
実施例1の方法に準じて、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmol、合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル9mmolおよび2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン1mmolより、ポリベンゾオキサゾール共重合体を合成した。また実施例1と同様にポリベンゾオキサゾールフィルムを作製して、物性評価を行った。表1に物性値を示す。実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールと同様に様々な有機溶媒に可溶であった。また実施例1と同様に要求特性を全て満足した。
実施例1の方法に準じて、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmol、合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル9mmolおよび2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン1mmolより、ポリベンゾオキサゾール共重合体を合成した。また実施例1と同様にポリベンゾオキサゾールフィルムを作製して、物性評価を行った。表1に物性値を示す。実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールと同様に様々な有機溶媒に可溶であった。また実施例1と同様に要求特性を全て満足した。
(実施例4)
実施例1の方法に準じて、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmol、合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル8mmolおよび2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン2mmolよりポリベンゾオキサゾール共重合体を合成した。また実施例1と同様にポリベンゾオキサゾールフィルムを作製して、物性評価を行った。表1に物性値を示す。実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールと同様に様々な有機溶媒に可溶であった。また実施例1と同様に要求特性を全て満足した。
実施例1の方法に準じて、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmol、合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル8mmolおよび2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン2mmolよりポリベンゾオキサゾール共重合体を合成した。また実施例1と同様にポリベンゾオキサゾールフィルムを作製して、物性評価を行った。表1に物性値を示す。実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールと同様に様々な有機溶媒に可溶であった。また実施例1と同様に要求特性を全て満足した。
(実施例5)
実施例1の方法に準じて、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmol、合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル7mmolおよび2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3mmolよりポリベンゾオキサゾール共重合体を合成した。また実施例1と同様にポリベンゾオキサゾールフィルムを作製して、物性評価を行った。表1に物性値を示す。実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールと同様に様々な有機溶媒に可溶であった。また実施例1と同様に要求特性を全て満足した。
実施例1の方法に準じて、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmol、合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル7mmolおよび2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3mmolよりポリベンゾオキサゾール共重合体を合成した。また実施例1と同様にポリベンゾオキサゾールフィルムを作製して、物性評価を行った。表1に物性値を示す。実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールと同様に様々な有機溶媒に可溶であった。また実施例1と同様に要求特性を全て満足した。
(実施例6)
実施例1の方法に準じて、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmol、合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル6mmolおよび2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4mmolよりポリベンゾオキサゾール共重合体を合成した。また実施例1と同様にポリベンゾオキサゾールフィルムを作製して、物性評価を行った。表1に物性値を示す。実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールと同様に様々な有機溶媒に可溶であった。また実施例1と同様に要求特性を全て満足した。
実施例1の方法に準じて、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmol、合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル6mmolおよび2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4mmolよりポリベンゾオキサゾール共重合体を合成した。また実施例1と同様にポリベンゾオキサゾールフィルムを作製して、物性評価を行った。表1に物性値を示す。実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールと同様に様々な有機溶媒に可溶であった。また実施例1と同様に要求特性を全て満足した。
(実施例7)
実施例1の方法に準じて、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmol、合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル5mmolおよび2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5mmolよりポリベンゾオキサゾール共重合体を合成した。また実施例1と同様にポリベンゾオキサゾールフィルムを作製して、物性評価を行った。表1に物性値を示す。実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールと同様に様々な有機溶媒に可溶であった。また実施例1と同様に要求特性を全て満足した。
実施例1の方法に準じて、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(シス、トランス混合物)10mmol、合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル5mmolおよび2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5mmolよりポリベンゾオキサゾール共重合体を合成した。また実施例1と同様にポリベンゾオキサゾールフィルムを作製して、物性評価を行った。表1に物性値を示す。実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールと同様に様々な有機溶媒に可溶であった。また実施例1と同様に要求特性を全て満足した。
(比較例1)
ジカルボン酸として2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様にポリベンゾオキサゾールを合成し、フィルムを作製して物性評価を行った。表1に物性値を示す。N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒に可溶であったが、膜の着色を反映して、カットオフ波長は372nm、400nmでの透過率は13%と透明性の点で不十分であった。
ジカルボン酸として2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様にポリベンゾオキサゾールを合成し、フィルムを作製して物性評価を行った。表1に物性値を示す。N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒に可溶であったが、膜の着色を反映して、カットオフ波長は372nm、400nmでの透過率は13%と透明性の点で不十分であった。
(比較例2)
ジカルボン酸としてイソフタル酸を用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様にポリベンゾオキサゾールを合成した。しかし得られたポリベンゾオキサゾール有機溶媒に殆ど溶解性を示さなかった。溶液キャスト製膜をすることができなかったため、物性評価は実施しなかった。
ジカルボン酸としてイソフタル酸を用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様にポリベンゾオキサゾールを合成した。しかし得られたポリベンゾオキサゾール有機溶媒に殆ど溶解性を示さなかった。溶液キャスト製膜をすることができなかったため、物性評価は実施しなかった。
(比較例3)
攪拌機付密閉反応容器中に合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル5mmolを入れ、セプタムキャップで密閉した。シリンジにてN−メチル−2−ピロリドン22mLを加えてモノマーを溶解し、更にピリジン3mLを加えた。この溶液にトリメチルシリルクロリド3.2mL(25mmol)をシリンジでゆっくりと滴下し、滴下終了後室温で1時間攪拌してシリル化反応を行った。この溶液にトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸5mmolをゆっくり加え、室温で24時間重合反応を行なわせて透明で粘稠なポリベンゾオキサゾール前駆体溶液を得た。これをガラス基板に流延し、60℃、2時間で乾燥後、減圧下200℃で1時間、270℃で1時間、段階的に熱処理を行い熱脱水閉環反応を完結させ、膜厚約20μmの強靱なポリベンゾオキサゾール膜を得た。閉環反応の完結は薄膜の赤外線吸収スペクトルから確認した。物性値を表1に示す。得られたポリベンゾオキサゾール膜は実施例2に記載のポリベンゾオキサゾール膜と同等の物性を示したが、著しい着色が見られた。これは270℃での熱脱水閉環反応の際に脂環族構造単位がわずかに熱分解したためであると推定される。
攪拌機付密閉反応容器中に合成例1で製造された3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル5mmolを入れ、セプタムキャップで密閉した。シリンジにてN−メチル−2−ピロリドン22mLを加えてモノマーを溶解し、更にピリジン3mLを加えた。この溶液にトリメチルシリルクロリド3.2mL(25mmol)をシリンジでゆっくりと滴下し、滴下終了後室温で1時間攪拌してシリル化反応を行った。この溶液にトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸5mmolをゆっくり加え、室温で24時間重合反応を行なわせて透明で粘稠なポリベンゾオキサゾール前駆体溶液を得た。これをガラス基板に流延し、60℃、2時間で乾燥後、減圧下200℃で1時間、270℃で1時間、段階的に熱処理を行い熱脱水閉環反応を完結させ、膜厚約20μmの強靱なポリベンゾオキサゾール膜を得た。閉環反応の完結は薄膜の赤外線吸収スペクトルから確認した。物性値を表1に示す。得られたポリベンゾオキサゾール膜は実施例2に記載のポリベンゾオキサゾール膜と同等の物性を示したが、著しい着色が見られた。これは270℃での熱脱水閉環反応の際に脂環族構造単位がわずかに熱分解したためであると推定される。
(比較例4)
ジカルボン酸として1,3−シクロヘキサンジカルボン酸を用いた以外は、比較例3に記載の方法と同様にしてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成した。このポリベンゾオキサゾール前駆体溶液をガラス基板に流延し、60〜100℃で2時間乾燥したところ、全く製膜性を示さなかった。これはこのポリベンゾオキサゾール前駆体の分子量が低すぎるためである。ポリベンゾオキサゾール膜を作製することができなかったため、物性評価を実施しなかった。なお、ポリベンゾオキサゾール前駆体の固有粘度は、0.140dL/gであった。
ジカルボン酸として1,3−シクロヘキサンジカルボン酸を用いた以外は、比較例3に記載の方法と同様にしてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成した。このポリベンゾオキサゾール前駆体溶液をガラス基板に流延し、60〜100℃で2時間乾燥したところ、全く製膜性を示さなかった。これはこのポリベンゾオキサゾール前駆体の分子量が低すぎるためである。ポリベンゾオキサゾール膜を作製することができなかったため、物性評価を実施しなかった。なお、ポリベンゾオキサゾール前駆体の固有粘度は、0.140dL/gであった。
(比較例5)
実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールに対応するポリイミドを合成し、膜物性を比較した。反応容器中にトランス−1,4−シクロヘキサンジアミン10mmolを入れ、N,N−ジメチルアセトアミに溶解した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物粉末10mmolを徐々に加え、48時間撹拌し、透明で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。これをガラス基板上に流延し、60℃で2時間乾燥後、300℃で1時間、熱イミド化反応を行い、可撓性のポリイミド膜が得られた。膜の透明性は高かったが、有機溶媒に殆ど溶解性を示さなかった。また、実施例1に記載のポリベンゾオキサゾール膜に比べ、高い吸水率を示した。これは分子内に高分極性のイミド基を含んでいるためであると推定される。
実施例1に記載のポリベンゾオキサゾールに対応するポリイミドを合成し、膜物性を比較した。反応容器中にトランス−1,4−シクロヘキサンジアミン10mmolを入れ、N,N−ジメチルアセトアミに溶解した。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物粉末10mmolを徐々に加え、48時間撹拌し、透明で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。これをガラス基板上に流延し、60℃で2時間乾燥後、300℃で1時間、熱イミド化反応を行い、可撓性のポリイミド膜が得られた。膜の透明性は高かったが、有機溶媒に殆ど溶解性を示さなかった。また、実施例1に記載のポリベンゾオキサゾール膜に比べ、高い吸水率を示した。これは分子内に高分極性のイミド基を含んでいるためであると推定される。
本発明のポリベンゾオキサゾール系基板材料は、高ガラス転移温度、高透明性、低複屈折、低吸水率、かつ十分な靭性を併せ持っており、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜および液晶ディスプレー用基板、有機ELディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、特にフレキシブルフィルム液晶ディスプレー用プラスチック基板として有用である。
Claims (6)
- Rが炭素数3〜8のシクロアルキル残基である、請求項1に記載の基板材料。
- ポリベンゾオキサゾールが、ビス(o−アミノフェノール)エーテルとジカルボン酸誘導体を縮合剤の存在下、重縮合反応させて得られたものである、請求項1または2に記載の基板材料。
- 有機溶媒を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板材料。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板材料からなるポリベンゾオキサゾールフィルム。
- ガラス転移温度が190℃以上、吸水率が1.0%以下、破断伸びが30%以上である、請求項5に記載のポリベンゾオキサゾールフィルム。
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