JPWO2006103974A1 - ケミカルレース用基布及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、ケミカルレースの市場はアジアを中心とする諸外国の需要拡大に伴い、着実に成長を続けている。その需要傾向は、後染め刺繍糸が主体のものから、カラフルな先染めレーヨンや先染めポリエステル等の先染め刺繍糸へと移行している。中でも分散染料を使用した先染めポリエステル刺繍糸は、再生ポリエステルが使用できることから環境に優しく、また光沢、耐久性、洗濯耐久性が優れることから、その使用が増加の傾向にある。
今後は先染めポリエステル刺繍糸からの移染防止として80℃以下の温度で溶解除去でき、かつ安価で作業性がよく、柔らかで寸法安定性が高く、刺繍柄がずれ難い基布の需要が益々高まると予想される。
本発明は、柔らかで作業性がよく、寸法安定性が高く、刺繍柄の飛び・ズレが生じ難く、溶解温度が低い、安価なケミカルレース用基布及びその製造方法を提供することである。
(1)不織布に付着させるバインダーがPVA系樹脂を含む水溶液をフォーム状としたものであり、かつ全不織布質量に対する該バインダーの付着量が2〜20質量%であること、
(2)不織布のヨコ方向の10%モジュラス強度が15〜80N/50mm幅であること、
(3)不織布の剛軟度が40〜150mmであること。
本発明においては水溶性のPVA系ポリマーを水もしくは有機溶剤に溶解した紡糸原液を用いて繊維を製造することにより、機械的性能および水溶性に優れた繊維を効率的に得ることができる。もちろん、本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液中に上記以外の添加剤やポリマーが含まれていてもかまわない。紡糸原液を構成する溶媒としては、例えば、水や、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒、グリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類およびこれら溶媒とロダン塩、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛などの膨潤性金属塩の混合物、さらにはこれら溶媒どうしの混合物、又はこれら溶媒と水との混合物などが挙げられるが、これらの中では水やDMSOが低温溶解性、低毒性、低腐食性などの点で最も好適である。
紡糸原液中のポリマー濃度は、組成、重合度、溶媒によって異なるが、8〜40質量%の範囲であることが好ましい。紡糸原液の吐出時の液温は、紡糸原液がゲル化したり、分解、着色したりしない範囲であり、具体的には50〜150℃の範囲とすることが好ましい。
一方、紡糸原液が水溶液の場合には、固化液を構成する固化溶媒としては、芒硝、塩化ナトリウム、炭酸ソーダなどの、PVA系ポリマーに対して固化能を有する無機塩類の水溶液が好適に挙げられる。本固化浴は当然、酸性、アルカリ性のいずれであってもかまわない。
本発明のランダムウェブ不織布としては、不織布を構成する繊維の配向がランダムである乾式不織布が好ましく、従来公知のカード法やエアーレイド法などで作成されたウェブが用いられる。また、繊維配向をランダムにする方法としては、従来公知のクロスラップ法やクリスクロス法などが用いられるが、ケミカルレース基布の場合、特に刺繍時にヨコ方向への張力が掛かるため、刺繍柄の飛びやズレを抑制するためにも繊維配向がランダムであることが好適である。
さらに前記フォーム状のバインダーにて処理した不織布に先染め刺繍糸を用いて刺繍を施した時に、刺繍柄の飛び、ズレが少ないケミカルレース用基布を得ることができる。
ここで、先染め刺繍糸の種類は特に限定はないが、ポリエステル系、レーヨン系の刺繍糸などが好適に用いられる。
また、基布の膨潤・収縮が抑制されることにより、基布を構成する繊維の強伸度物性を損なわず、基布は低伸度でも高強力を得ることができるため、後述する10%モジュラス強度が得やすくなる。
このような乾熱処理を行うことにより、柔軟かつ寸法安定性が良好で、色彩の鮮やかな、高級感のある刺繍柄を有するケミカルレース用基布を得ることができる。
不織布のタテ方向の10%モジュラス強度はヨコ方向ほど重要でないが、10%モジュラス強度が10N/50mm幅以上であることが好ましい。タテ方向の10%モジュラス強度が低すぎると、刺繍展張時にタテ方向に断布したり、刺繍後のシャーリング工程でトラブルが起こったりしやすくなる。
100cm3の水に、長さ1〜2mmにカットした水溶性繊維を数10mg投入し、攪拌下、昇温速度1℃/分の条件で昇温して、繊維が完全に溶解したときの温度を水中溶解温度Aとして測定した。
400cm3の水に、2cm平方に切り分けた不織布片又は紙を3枚投入し、昇温速度1℃/分、攪拌速度280rpmの条件で攪拌しながら昇温して、繊維が完全に溶解したときの温度を水中溶解温度Bとして測定した。
不織布をタテ、ヨコ方向にそれぞれ50mm×170mmに切り分けて試料とし、試料掴み間隔100mm、掴み幅25mm、引張速度100mm/分の条件で、インストロン引張試験機を用いて引張強度を測定し、10%伸度時の強度を読み取った。
JIS カンチレバー40.5度法で測定した。
JIS L1013に準拠して測定した。
(1)重合度1750、ケン化度99モル%のPVAをジメチルスルホキシド(DMSO)中に投入し、90℃で10時間窒素気流下にて240rpmで攪拌し、溶解して、ポリマー濃度20質量%の紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を孔数15000ホール、孔径0.16mmの紡糸口金を通して、メタノール/DMSOの質量比が70/30、温度が10℃の固化浴中に湿式紡糸した。ついで、25℃のメタノールからなる抽出液でDMSOを抽出しながら3.0倍の湿延伸を行った。その後、窒素雰囲気下で150℃、8分間乾燥し、170℃で2.0倍乾熱延伸し、捲縮・切断を行って、繊度3.3万dtex、強度7.2cN/dtex、水中溶解温度Aが72℃のPVA系捲縮繊維を得た。該繊維の性能を表1に示す。
(2)得られたPVA系繊維100質量部からなるランダムウェブを作成し、繊維と同じ5質量%のPVA、界面活性剤として「BEROL−48」(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩系)からなる水溶液をハンドミキサーにて発泡させ、該ランダムウェブに含浸し、70℃で乾燥して不織布を得た。該不織布の性能は表2に示すように、剛軟度が118mmと柔らかで作業性がよく、さらに10%モジュラス強度が27.8(N/50mm幅)と高いものであった。
(3)上記(2)で得られた不織布に市販の先染めポリエステル繊維からなる刺繍糸を用いて刺繍を施したところ、刺繍柄の飛び・ズレがなく、ケミカルレース用基布として好適なものであった。また刺繍後の基布の水中溶解温度Bが74℃で、B−Aが2.0℃であり、移染の生じやすい市販の先染めポリエステル刺繍糸を用いた場合においても、基布の溶解除去後に刺繍糸から染料の脱落、再付着が生じず、刺繍柄が鮮明な高級感を有する刺繍布が得られた。
重合度1750、ケン化度96モル%のPVAを使用する以外は実施例1と同様の方法で紡糸し、繊度8.5万dtex、強度6.2cN/dtex、水中溶解温度Aが65℃のPVA系捲縮繊維を得た。該繊維の性能を表1に示す。また、該繊維を用いて、実施例1と同様の条件にて不織布を作製した。該不織布の性能は表2に示すように、剛軟度が86mmと柔らかで作業性がよく、さらに10%モジュラス強度が19.4(N/50mm)と高いため、該不織布に実施例1と同じ刺繍糸を用いて刺繍を施したところ、刺繍柄の飛び・ズレがなく、ケミカルレース用基布として好適なものであった。また刺繍後の基布の水中溶解温度Bが68.5℃で、B−Aが3.5℃であるので、基布の溶解除去後に刺繍糸から染料の脱落、再付着が生じず、刺繍柄が鮮明な高級感を有する刺繍布が得られた。
(1)繊維原料として重合度1750、ケン化度98.5モル%のPVAを水に投入し、90℃で10時間、240rpmで攪拌して溶解し、ポリマー濃度17質量%の紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を孔数15000ホール、孔径0.16mmの紡糸口金を通して、飽和芒硝水溶液からなる40℃の酸性凝固浴中に紡出し、凝固を行った。さらに、得られた糸篠をローラードラフト3.0倍で湿熱延伸した後、水洗し、さらに130℃にて乾燥した後、170℃にて延伸倍率2.0倍の乾熱延伸し、捲縮・切断を行って、繊度3.3万dtex、強度3.1cN/dtex、水中溶解温度Aが76℃のPVA系捲縮繊維を得た。該繊維の性能を表1に示す。
(2)さらに、実施例1と同様の条件にて不織布を作製した。該不織布の性能は表2に示すように、剛軟度が139mmと柔らかで作業性がよく、さらに10%モジュラス強度が35.3(N/50mm)と高いものであった。
(3)上記(2)で得られた不織布に実施例1と同じ刺繍糸を用いて刺繍を施したところ、刺繍柄の飛び・ズレがなく、ケミカルレース用基布として好適なものであった。また刺繍後の基布の水中溶解温度Bが78℃で、B−Aが2.0℃であるので、基布の溶解除去後に刺繍糸から染料の脱落、再付着が生じず、刺繍柄が鮮明な高級感を有する刺繍布が得られた。
不織布原料として、実施例1と同様のランダムウェブを作成し、繊維原料と同じPVAからなる1質量%水溶液を該ランダムウェブに含浸し、搾液して、70℃で乾燥し、不織布を得た。該不織布の性能は表2に示すように、10%モジュラス強度は54.8(N/50mm幅)と高いものの、剛軟度が162mmと高すぎるため風合いが硬いものとなり、実施例1と同じ刺繍糸を用いて刺繍を施そうとしたが、刺繍時に針が折れる等作業性が悪く、ケミカルレース用基布としては適さないものであった。
不織布原料として、実施例1と同様のランダムウェブを作成し、繊維原料と同じPVAからなる1質量%水溶液を発泡させて、該ランダムウェブに含浸し、70℃で乾燥して不織布を得た。該不織布の性能は表2に示すように、10%モジュラス強度が7.8(N/50mm幅)と低いため、実施例1と同じ刺繍糸を用いて刺繍を施したところ、刺繍柄の飛び・ズレが生じ、ケミカルレース用基布としては適さないものであった。
不織布原料として、実施例1と同様のランダムウェブを作成し、加熱したエンボスロールとスチールロールとの間を通過させることで不織布を得た。このときのエンボス条件は接着面積率12%、温度195℃、線圧329N/cm、処理速度5m/分であった。該不織布の性能は表2に示すように刺繍性はまずまずであったが、刺繍後の基布の水中溶解温度が86.5℃で、繊維の水中溶解温度との差が14.5℃となったため、刺繍後の基布を溶解除去する際に染料の脱落、再付着が生じ、ケミカルレース用基布としては適さないものであった。
Claims (4)
- 水溶性ポリビニルアルコール系繊維のランダムウェブ不織布と先染め刺繍糸からなり、以下の条件を全て満足することを特徴とするケミカルレース用基布。
(1)不織布に付着させるバインダーがポリビニルアルコール系樹脂を含む水溶液をフォーム状としたものであり、かつ、全不織布質量に対する該バインダーの付着量が2〜20質量%であること、
(2)不織布のヨコ方向の10%モジュラス強度が15〜80N/50mm幅であること、
(3)不織布の剛軟度が40〜150mmであること。 - 不織布を構成する水溶性ビニルアルコール系繊維の水中溶解温度をA℃、ポリビニルアルコール系繊維のランダムウェブ不織布の水中溶解温度をB℃とするとき、B−A≦5℃であることを特徴とする請求項1に記載のケミカルレース用基布。
- 不織布を構成する水溶性ポリビニルアルコール系繊維の水中溶解温度が50〜80℃である請求項1又は2に記載のケミカルレース用基布。
- 水溶性ポリビニルアルコール系繊維のランダムウェブ不織布と先染め刺繍糸からなる基布に、ポリビニルアルコール系樹脂を含むフォーム状とした水溶液を付着させた後、乾熱処理を施すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のケミカルレース用基布の製造方法。
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