JPH10140438A - 布帛及びその製造方法 - Google Patents

布帛及びその製造方法

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JPH10140438A
JPH10140438A JP8296817A JP29681796A JPH10140438A JP H10140438 A JPH10140438 A JP H10140438A JP 8296817 A JP8296817 A JP 8296817A JP 29681796 A JP29681796 A JP 29681796A JP H10140438 A JPH10140438 A JP H10140438A
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JP
Japan
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polymer
melting point
fiber
sea
island
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Application number
JP8296817A
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English (en)
Inventor
Ichiro Hanamori
一郎 花森
Yoshiki Kuroki
良樹 黒木
Hisashi Nakahara
寿 中原
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Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プリ−ツ保持性、防皺性、洗濯収縮性等の諸
性能が改善された布帛を効率的に得る。 【構成】 海成分が融点220℃以上のポリビニルアル
コ−ル系ポリマ−、島成分が融点または融着温度210
℃未満の耐水性ポリマ−であって、両ポリマ−のブレン
ド比が98/2〜55/45である海島繊維を4重量%
含み、かつプリ−ツが付与された布帛であって、プリ−
ツ保持性が3級以上であることを特徴とする布帛。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリ−ツ保持性、防皺
性、洗濯収縮性等の諸性能が改善された布帛及びその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】実質的に非溶融性で親水性の繊維(具体
的には綿、ポリビニルアルコ−ル系繊維、レ−ヨン繊維
等)を主成分とする布帛は、良好な吸湿、吸汗、透湿を
有するため衣料用素材等として卓越した性能を保有して
おり、また高熱に晒されても溶融しないために火傷等の
事故発生の危険性が少ないという特長を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
繊維素材からなる布帛は洗濯収縮、皺が生じやすい問題
がある。たとえば綿製品の場合、湿潤しても繊維軸方向
にはほとんど膨潤しないものの、繊維半径方向に20〜
30%(面積で40〜42%)膨潤し、繊維間のゆとり
がなくなって布帛全体としての収縮を引き起こし、さら
に、その現象が細かな凹凸、小波状皺を生じさせる原因
となる。特に綿繊維の構造は不均質であり、未乾燥糸が
構造水を失う時に天然撚を伴いながら偏平な断面形状に
変化し、収縮、皺が一層生じやすい。その上、これら親
水性繊維は、水酸基による分子間相互作用が強いため、
加熱しても通常は熱溶融する前に熱分解してしまい繊維
自体が熱セット性を有さないため、アイロン等でプリ−
ツ加工しても洗濯等で簡単にプリ−ツが消失する問題が
あった。
【0004】以上のことから、構造が均質で熱セット性
を有するポリエステル等と混紡することが検討されてい
るが、ポリエステル繊維などの疎水性繊維はポリビニル
アルコ−ル(PVA)系やセルロース系などの親水性繊
維に対しては接着性が低く、プリ−ツ保持性の高い布帛
を得ることが困難であり、多量にポリエステル繊維を配
合すればプリ−ツ保持性は向上するが、この場合、吸湿
性、吸汗性等の諸性能が不十分となる。以上のことか
ら、アクリル系、メラミン系、PVA系等のポリマーの
エマルジョンまたは有機溶剤溶液を単独又は複合して塗
布するか含浸し、乾燥する方法が一般的に実施されてい
るが、エマルジョンの場合は、ポリマーの乾燥に時間を
要するため低速生産しかできず、特にローラーなどに接
着剤やその変質物が固着する問題もあり、有機溶剤溶液
の場合は揮発すると人間の健康には好ましくない。
【0005】また縫製後製品になった段階(アイロンで
皺を伸ばし、プリ−ツを付けた状態)でグリオキザ−ル
系樹脂処理等による分子間架橋導入により構造安定化す
るポストキュア方式技術があるが、かかる処理には特殊
な設備が必要であり、かつこれらの方法は製品段階での
処理のため非効率であり、過度の架橋は風合硬化と綿繊
維の強度低下に繋がる欠点を有する。
【0006】また、PVA系ポリマーにおいても、共重
合変性や後反応変性による内部可塑化及び可塑剤混合に
よる外部可塑化などにより、融点や軟化点を下げ溶融成
形を可能にしたり、ホットメルト接着剤として使用する
提案がなされている。例えば特開昭51−87542
号、特開昭51−96831号、特開昭53−5023
9号の各公報には、水溶性かつホットメルト性のあるP
VA系接着剤が開示されているが、これらホットメルト
性のPVA系ポリマーのみで繊維化しようとすると、ホ
ットメルト時の粘度を下げて接着性を大きくするため、
PVAの重合度を600以下と低くしており、低強度繊
維しか得られないばかりでなく、熱接着性繊維として使
用しようとすると、繊維化時配向していた分子が熱接着
時溶融して緩和するため、繊維が大きく収縮し、実用的
に使用することは困難である。本発明の目的は、以上の
問題を鑑み、特殊加工設備を用いることなく、極めて効
率的にプリ−ツ保持性、吸汗性、防皺性等の諸性能に優
れた布帛を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題に対し、本発明
者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成した。すな
わち本発明は、海成分が融点220℃以上のPVA系ポ
リマー、島成分が融点または融着温度210℃未満の耐
水性ポリマーであって、両ポリマーのブレンド比が98
/2〜55/45である海島繊維を4重量%以上含み、
かつプリ−ツが付与された布帛であって、プリ−ツ保持
性が3級以上であることを特徴とする布帛、および海成
分が融点220℃以上のPVA系ポリマー、島成分が融
点または融着温度210℃未満の耐水性ポリマーであっ
て、両ポリマーのブレンド比が98/2〜55/45で
ある海島繊維を4重量%以上含む布帛を熱圧着処理して
プリ−ツを付与するプリ−ツ保持性が3級以上の布帛の
製造方法に関する。
【0008】本発明は、特定の海島繊維に温度と圧力を
加え、海島繊維の低融点ポリマ−が表面に押し出されて
布帛の糸交点を不連続に拘束し、結果として何等特殊な
加工設備を用いることなく、かつ優れた布帛風合を劣化
させずに効率的に耐久性の高いプリ−ツを付与すると同
時に、皺、洗濯収縮の発生をも改善できることを見出だ
したものである。
【0009】本発明で使用する海島繊維は、海島構造を
有する多成分繊維であって、融点220℃以上、好まし
くは225℃以上であるPVA系ポリマーが海成分であ
る。マトリックスとなる海成分PVA系ポリマーの融点
が220℃未満では本発明繊維の耐熱性、耐水性が不十
分となり実用に耐える繊維を得ることが出来ない。海成
分ポリマーの融点の上限に特別な限定はないが、融点が
260℃以上であるPVAは一般的ではない。
【0010】海成分PVA系ポリマーの具体例をあげる
と、重合度500〜24,000で、ケン化度が99〜
100モル%の高ケン化度PVAである。重合度が15
00〜4000、ケン化度が99.5〜100モル%で
あると耐水性及び熱圧着性の点でさらに好ましい。また
エチレン、アリルアルコール、イタコン酸、アクリル
酸、無水マレイン酸とその開環物、アリールスルホン
酸、ピバリン酸ビニルの如く炭素数が4以上の脂肪酸ビ
ニルエステル、ビニルピロリドン及び上記イオン性基の
一部また全量中和物などの変性ユニットにより変性した
PVAも包含される。変性ユニットの量はPVAに対し
て1モル%未満、好ましくは0.5モル%以下である。
変性ユニットの導入法は、共重合でも後反応でも特別な
限定はない。変性ユニットの分布はランダムでも、ブロ
ックでも限定はない。ブロック的に分布させると結晶化
阻害効果が小さく、ランダムより多く変性しても高融点
を保ちうる。高ケン化度の高融点PVA系ポリマーを連
続相とすることにより高融点ポリマー単独繊維に近い性
能を得ることができ、また繊維の最表層を高融点ポリマ
ーとすることにより、繊維製造工程における膠着を防止
することが可能となる。
【0011】本発明で用いる海島繊維の島成分は融点ま
たは融着温度が210℃未満の耐水性ポリマーを用い
る。融点が210℃以上であると熱圧着温度が高くなり
過ぎ、熱圧着時海成分のPVA系ポリマーの配向性・結
晶性を破壊し易いので好ましくない。また融点を持たな
い耐水性の非晶ポリマーであっても、その非晶性ポリマ
ーチップを所定温度に加熱し、0.1kg/cm2 の圧
力を10分間印加した際チップ同志が融着する最低温度
を融着温度とした時、融着温度が210℃未満の耐水性
非晶ポリマーは本発明の耐水性ポリマーに包含され、島
成分耐水性ポリマーとして有効に用いることができる。
島成分耐水性ポリマーの融点、あるいは融着温度(以下
この温度も融点という語に含めて使用する)が200℃
以下であるとより好ましく、190℃以下であるとさら
に好ましい。さらに海成分と島成分の融点差が15℃以
上、特に30℃以上、さらに50℃以上であると、熱圧
着時の繊維寸法変化が小さくなるので好ましい。融点が
210℃未満の耐水性ポリマーは低配向、低結晶性であ
るため、繊維のマトリックスである海成分に用いると、
低強度、低耐熱性となるので不都合である。また低融点
ポリマーが繊維最表面に存在すると繊維製造工程におい
て膠着し易く、この点からも低融点ポリマーは島成分と
することが必要である。
【0012】なお、本発明でいう耐水性ポリマ−として
は、水または熱水に溶解することのない常温、好ましく
は100℃以下の温度条件下で固体のポリマ−のこと
で、耐水性を有していない場合には、布帛とした後、水
に触れると繊維間の固定が外れ、布帛形態が崩れること
となる。本発明にいう融点210℃未満の耐水性ポリマ
ーの具体例としては、エチレン/ビニルアルコールコポ
リマー(モル組成比=50/50〜20/80),エチ
レン/酢酸ビニルコポリマー(モル組成比=92/8〜
20/80),ポリビニルブチラール,ポリビニルホル
マール,炭素数3〜20の脂肪酸のビニルエステルで変
性されたPVA,変性アクリル樹脂,ポリイソプレンな
どの炭化水素系エラストマー,ポリウレタン系エラスト
マーなどがあげられる。とりわけ、セルロース系繊維や
PVA系繊維等の親水性繊維への優れた熱接着性、性能
再現性(安定性)、コストの点で、エチレン/ビニルア
ルコールコポリマー(モル組成比=50/50〜20/
80),エチレン/酢酸ビニルコポリマー(モル組成比
=92/8〜20/80)の酢酸ビニルまたはビニルア
ルコ−ル系コポリマーは本発明で用いる海島繊維の島成
分として有用である。島成分ポリマーの重合度に特別な
限定はないが、島成分は、繊維強度に寄与せず、接着性
に寄与することが重要であるから、熱圧着時流動性のよ
い低重合度、例えば100〜1000が好ましい。
【0013】本発明で使用する海島繊維の海成分/島成
分のブレンド比は重量比で98/2〜55/45の範囲
である。海成分の高融点PVA系ポリマーが55%より
少ないと高強度繊維が得られない。またこの高融点PV
A系ポリマーが55%より少なくなり、低融点耐水性ポ
リマーが45%より多くなると、低融点耐水性ポリマー
が海成分となる傾向になり、膠着の点で好ましくない。
一方、低融点耐水性ポリマーが2%より少ないと、実用
に耐える熱圧着性能を得ることができない。強度と熱圧
着性のバランスより、海/島ブレンド比が95/5〜6
0/40であるとより好ましく、92/8〜70/30
であるとさらに好ましい。
【0014】また本発明で使用する海島繊維における島
成分の低融点ポリマーは繊維の最表層に存在することは
好ましくないが、最表層近くに存在することが好まし
い。最表層近辺での海成分の最小厚み(島成分の低融点
ポリマーの繊維最表面までの最近接距離)は、熱圧着時
最表層の高融点PVA系ポリマーが破れ、島成分の低融
点耐水性ポリマーが表面に押し出され接着力を得るため
に重要である。最表層より0.01〜2μm内側に島成
分の少なくとも一部を存在させることが好ましい。島成
分は繊維断面方向に均一に分布させてもよいが、表面側
により集中して分布させることが好ましい。また島成分
は繊維軸方向に連続であってもよいが、必ずしも連続で
ある必要はなく、球状或いは断続した細長い棒状あるい
はラグビーボール状であってもよい。
【0015】繊維強度は5g/d以上、さらに7g/d
r以上、特に8g/d以上であるのが好ましい。繊維強
度が高ければ強度の高い布帛が得られ、また布帛を薄地
化することが可能となり、不織布が柔軟となり、取扱い
性やドレープ性を改善できる。さらに、本発明で使用す
る海島繊維は熱圧着することによりその機能を発揮する
ため、熱圧着により多少強度が低下しても十分な強度を
有することが重要であり、このためには熱圧着前の強度
が大きいことが好ましい。
【0016】以上のように、本発明で使用する海島繊維
は、従来の疎水性ポリマーにおける芯鞘複合熱接着性繊
維では芯を高融点ポリマーとして、鞘を低融点ポリマー
としているのとは逆に、海成分を高融点ポリマーとし、
島成分を低融点ポリマーとし、通常は高配向、高結晶性
の高融点PVA系ポリマーによる優れた繊維性能を発揮
し、熱圧着(高温かつ高圧印加)時繊維最表層の高融点
PVA系ポリマー相が破れ、表層近くの島を形成してい
る熱接着性の低融点耐水性ポリマーが、繊維表面に押し
出され、別の繊維の島成分の耐水性ポリマー同志と接着
したり、或いは海成分の高融点ポリマーと接着すること
により、熱圧着性を確保したものである。高配向、高結
晶化した高融点PVAポリマーがマトリックス相を形成
するため、島成分が低配向、低結晶の低融点耐水性ポリ
マーであっても強度や寸法安定性が優れており、皺や洗
濯時収縮の発生を効果的に抑制することができる。しか
も熱圧着時においてもマトリックス相は大きな影響を受
けないため、熱圧着時寸法変化が小さくかつ熱圧着後で
も高い強度を得ることができる特徴がある。
【0017】次に本発明で使用される海島繊維を製造す
る好適な方法を説明する。まず、上記の高融点PVA系
ポリマーと低融点耐水性ポリマーを98/2〜55/4
5の割合で溶媒に溶解して紡糸原液を得る。ここにいう
溶媒とは少なくとも高融点PVA系ポリマーを溶解する
溶媒でなければならない。低融点耐水性ポリマーをも溶
解する共通溶媒であることがより好ましいが、必ずしも
溶解しなくとも、高融点PVA系ポリマー溶液中で10
μm以下に分散するよう粉砕分散が可能であれば使用可
能である。分散粒径が5μm以下であると好ましく、1
μm以下であるとさらに好ましい。両ポリマーの共通溶
媒に溶解しても両ポリマーの相溶性如何によっては均一
透明溶液とはならない。むしろ紡糸原液状態で、高融点
PVA系ポリマーがマトリックス(海)相、低融点耐水
性ポリマーの液滴が島相に微分散したポリマーブレンド
溶液となって、濁りのある均一微分散相分離液となるこ
とが好ましい。勿論、両ポリマーの相溶性が良好である
場合は均一透明溶液となり、繊維化時、高融点ポリマー
が海成分となるよう原液・紡糸条件をとれば、本発明繊
維を製造しうる。
【0018】本発明で使用できる海島繊維の製造に用い
る溶媒の具体例として、ジメチルスルホキシド(以下D
MSOと略記)、ジメチルアセトアミド、N−メチルピ
ロリドン、ジメチルイミダゾリジノンなどの極性溶媒や
グリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール
類、硝酸、硫酸などの強酸、ロダン塩、塩化亜鉛などの
濃厚水溶液、及びこれらの溶媒の混合液などがあげられ
る。とりわけDMSOが低温溶解性、低毒性、低腐蝕性
などの点で好ましい。溶媒に両ポリマーを添加し、撹拌
溶解するか、特に相分離液となる場合溶解時微分散する
よう撹拌を強力に行なうとともに脱泡放置時凝集沈降し
ないよう泡が咬み込まぬ程度に低速撹拌を続けるなどの
配慮が好ましい。
【0019】次に、紡糸原液の粘度については、紡糸法
により異なるが、紡糸時ノズル近辺の温度で5〜500
0ポイズが好ましい。例えば乾式紡糸では500〜50
00ポイズ、乾湿式紡糸では80〜800ポイズ、湿式
紡糸では5〜200ポイズになるようにポリマー濃度及
び原液温度を調整する。両ポリマー以外に両ポリマーの
紡糸原液状態及び繊維状態での海島構造制御のため相溶
化剤や相分離促進剤などを適宜添加してもよい。原液に
はその他特定の目的のために種々の添加剤を添加しても
よい。例えば、ポリマーの劣化防止のための酸化防止
剤、光安定剤、紫外線吸収剤、繊維着色のための顔料や
染料、界面張力制御のための界面活性剤、pH調整のた
めの酸あるいはアルカリなどである。
【0020】次に得られた原液を乾式紡糸、乾湿式紡糸
あるいは湿式紡糸する。乾式紡糸においては、溶媒が蒸
発する間に高融点ポリマーがマトリックス(海成分)、
低融点ポリマーが島となるよう紡糸延伸条件を選定し、
得られた繊維を捲き取る。乾湿式紡糸においては、原液
をノズルより一旦不活性気体層(例えば空気層)に吐出
し、次いで固化液に通し、固化と原液溶媒の抽出を行
い、湿延伸、乾熱延伸を施こし捲き取る。または湿式紡
糸においては、原液をノズルより直接固化液に吐出し、
固化、抽出を行ない、湿延伸、乾熱延伸を施こし捲き取
る。いずれの紡糸法においても高融点ポリマーが海成分
に低融点ポリマーが島成分になるように原液及び紡糸条
件を配慮する必要がある。具体的には海成分となるべき
高融点ポリマーのブレンド比を多くすることが有効であ
る。また原液及び紡糸条件を相分離し易い方向にするこ
とが有効である。
【0021】また本発明においては、強度を高くするた
めに、固化過程において均一な固化糸篠とするのが好ま
しい。均一な固化が行なわれたことの確認は延伸後の繊
維断面を光学顕微鏡で観察し、ほぼ円型の断面の繊維が
得られた場合には、均一な固化が行なわれたと判断でき
る。従来、PVAの紡糸に一般的に用いられている濃厚
芒硝水溶液を固化浴に用いると、不均一固化となるた
め、断面がまゆ型となり、延伸配向が十分行えず7g/
d以上の強度を得ることが難しい。また原液に硼酸を添
加し、アルカリ性脱水塩類浴で固化する場合、濃厚芒硝
水溶液を固化浴に用いた場合に比べると、均一固化に近
付くため、断面が偏平となるが、円型とはならず不十分
である。一方メタノールやエタノールなどのアルコール
類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢
酸メチルや酢酸エチルなどの脂肪族エステル類、及びこ
れらと原液溶媒との混合溶媒などの海成分となる高融点
PVA系ポリマーに対して固化能を有する有機溶剤を固
化浴に用いると、均一な固化となるため、断面がほぼ円
型となり、その後の湿延伸及び乾熱延伸により十分な配
向結晶化を行なうことができる。
【0022】なお本発明で言う繊維の横断面形状は、通
常の光学顕微鏡を用いて観測されるものである。より均
一なゲル糸篠を得るためには、固化浴の温度を0〜10
℃の低温とすることが好ましい。なお、これら固化浴は
島成分となる低融点耐水性ポリマーに対しては必ずしも
固化能を有する必要はない。たとえば低融点ポリマーが
固化浴に対して可溶であっても、紡糸可能である。但し
この場合、高融点ポリマー/低融点ポリマーのブレンド
比が6/4より低融点ポリマーが多いと固化浴中に溶出
したり、繊維が膠着するので好ましくない。7/3より
低融点ポリマーが少ないとより好ましい。低融点ポリマ
ーが固化浴に可溶の場合、固化時低融点ポリマーが原液
溶媒とともに固化糸篠の表面方向に移動する傾向にあ
り、繊維中央部より表層部により多く分布する傾向にあ
るので、低融点ポリマーのブレンド量が少なくても本発
明の目的である熱圧着性の低下が少なくて好ましい。低
融点ポリマーのブレンド量が少ないと高強度繊維が得ら
れる利点もある。
【0023】かかる特定の海島繊維を用いて織物(平
織、綾織等)、編物、不織布などの布帛を製造するが、
このときの布帛の該海島繊維の配合割合は布帛全重量に
対して4重量%以上、特に8〜50重量%とするのが好
ましい。該海島繊維の使用割合が小さすぎると本発明の
効果が十分に得られない。該海島繊維を多量に使用して
も問題はないが、50重量%をこえて使用してもプリ−
ツ保持性等の諸性能はそれ以上改善されず、経済性の点
で好ましくない。風合の点では50〜95重量%程度他
の繊維を混合するのが好ましい。
【0024】当該海島繊維以外に用いる繊維は特に限定
されないが、本発明の特徴を一層発揮させるためには親
水性繊維を併用するのが好ましく、特に熱セット性を有
しない親水性繊維を用いた場合に優れた効果が得られ
る。熱セット性を有しない繊維としては、融点220℃
以上の繊維が挙げられる。具体的には、綿、麻、羊毛、
レ−ヨン、キュプラ、ポリノジック、溶剤系セルロース
繊維、PVA系繊維等が使用でき、海島繊維と他の構成
繊維を混紡して紡績糸とするか、または別々に紡績等に
より糸形成し、両糸を混撚して用いたり、タテ方向及び
/またはヨコ方向糸のすべて、または一部として打ち込
んで製編織する方法が挙げられる。タテ、ヨコ両方向あ
るいは一方向に0.5インチ間に1本以上の海島構造繊
維を10%以上の構成比率となるよう打ち込むのが好ま
しい。かかる布帛は、水或いは熱水に接触しても十分な
強度を有し、特に本発明で使用される海島繊維の島成分
ポリマーがエチレン/ビニルアルコールコポリマーやエ
チレン/酢酸ビニルコポリマーで代表されるコポリマー
は、ビニロン繊維やセルロース系繊維に対して極めて優
れた接着強度を発揮できる。
【0025】プリ−ツを付与する手段は特に限定され
ず、製編織された布帛にアイロン等で熱プレス、具体的
には80〜230℃以上の温度で1kg/cm以上の線
圧または2kg/cm2 以上の面圧を印加することによ
り繊維を接着してプリ−ツを付与するのが好ましい。プ
リ−ツの形態は特に限定されず適宜設定すればよい。衣
服等の製品とした後、またはその加工過程においてプリ
−ツを付与しても良く、このようなものも本発明に含ま
れる。プリ−ツ保持性は3級以上、好ましくは4級以上
であり、洗濯収縮率は併用する繊維素材や目的により異
なるが、2%以下、特に1.5%以下、さらに1%以下
とするのが好ましく、洗濯皺も3級以上とするのが好ま
しい。本願発明のように特定の海島繊維を使用した場合
には、綿等を多量に使用した場合であっても、プリ−ツ
保持性が高いのみでなく、洗濯皺及び洗濯収縮が生じに
くい優れた布帛を得ることができる。なお本発明にいう
プリ−ツとは、布帛に加工によって付与したひだまたは
折り目をいう。具体的には、ズボンの折り目、平型プリ
−ツ、アコ−デイオン型プリ−ツ、箱型プリ−ツ、シ−
ガレットプリ−ツ、カ−トリッジプリ−ツ、ハリケ−ン
プリ−ツ、マジョリカプリ−ツ、イレギュラ−プリ−
ツ、またはこれらを組み合わせたプリ−ツ等が挙げられ
る。これらは布帛の部位によって異なったプリ−ツを付
与してもよい。
【0026】熱カレンダーローラーなどによる線圧は5
00kg/cm以下が好ましい。線圧が200kg/c
m以下であるともっと好ましく、100kg/cm以下
であるとさらに好ましい。熱プレスなどによる面圧は1
000kg/cm2 以下が好ましい。面圧が400kg
/cm2 以下であるともっと好ましく、200kg/c
m2 以下であるとさらに好ましい。通常は5〜50kg
/cmの線圧あるいは10〜100kg/cm2 の面圧
が使用される。熱圧着時間は0.01〜10秒程度の短
い時間でも熱圧着可能である。本発明で使用する海島繊
維の場合、熱圧着時間を10分以上とすると却って接着
力が低下する傾向にある。この原因は不明であるが、ポ
リマーの結晶化に関係すると推測される。このため、処
理時間の長い面圧印加タイプの熱プレス法より処理時間
の短い線圧印加タイプの熱カレンダーロール法がより好
ましく熱圧着に使用しうる。
【0027】適正圧着温度は、海/島のポリマー仕様、
分布状態及び印加圧力などにより変わるが、100〜2
10℃が好ましく、120〜200℃であるともっと好
ましく、130〜190℃であるとさらに好ましい。な
お、本発明にいう熱圧着条件である温度や圧力はウェッ
ブに実際にかかる温度及び圧力であって、設定温度や設
定圧力ではない。実際の温度及び圧力はサーモラベルや
圧力インジケーターなどによって実測することができ
る。
【0028】耐水性繊維(たとえば耐水性ビニロン)と
当該海島繊維からなる布帛は、耐水性であり、かつ水に
濡れやすい親水性布帛として極めて有用である。本発明
によれば、アイロン等の極めて簡便な手段でプリ−ツ形
成が容易で、かつ洗濯等に対し高度なプリ−ツ保持性を
有し、さらに洗濯収縮、皺発生が低減された布帛が得ら
れ、親水性繊維とともに用いた場合には吸汗性、風合に
一層優れたものとなる。かかる布帛はあらゆる用途に使
用できるが、衣料用、特に制服、作業服等衣料外衣など
に特に好適にである。
【0029】以下実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明なこれらの実施例に何等限定されるもので
はない。また特に記載がない限り、%は重量%を示す。
【0030】
【実施例】
[融点 ℃]結晶性ポリマーの場合、メトラー社示差走
査熱量測定装置(DSC−20)を用い、試料ポリマー
を窒素下20℃/minの速度で昇温した際、吸熱ピー
クを示す温度を測定する。
【0031】[融着温度 ℃]非晶性ポリマーの場合、
ポリマーチップを所定温度の熱風乾燥機にいれ、0.1
kg/cm2 の圧力を10分間印加した際、チップ間の
境界が判定できない程度にチップ同志が融着する最低の
温度を測定する。
【0032】[繊維強度 g/d]JISL−1015
に準じ、単繊維強度を試長20mm、引張速度50%/
分で引張試験を行なう。 [洗濯収縮率 %]40cm×40cmの布帛にJIS
L1042に準じて布帛内部にマ−キング(20cm
×20cm)した。さらにJIS L1060(織物及
び編物のプリ−ツ性試験方法)C法に準じ、撹拌形洗濯
機および60〜70℃のタンブル乾燥により洗濯し、こ
の洗濯を10回繰り返した後にマ−キング間距離を測
定、洗濯前のマ−キング間距離に対する収縮した長さの
割合を%で求めた。 [プリ−ツ保持性 級]またプリ−ツ性は、JIS L
1060(織物及び編物のプリ−ツ性試験方法)C法に
準じ、撹拌形洗濯機および60〜70℃のタンブル乾燥
により洗濯した後に級判定した。 [防皺性 級]JIS L1096A法(タンブル乾
燥)に準じて級判定した。
【0033】[実施例1]重合度1750、ケン化度9
9.9モル%で融点が233℃のPVAと、エチレン/
ビニルアルコールコポリマー=32/68(モル比),
重合度870で融点が186℃のクラレ製EVAL−F
を各々15%と5%となるように90℃のDMSOに窒
素下混合撹拌し、溶解した。高融点PVA系ポリマー/
低融点耐水性ポリマーのブレンド比は75/25であっ
た。得られたブレンド溶液は曳糸性の良好な半濁溶液で
90℃で8時間放置しても2相に分離する傾向はなく、
安定な分散溶液であった。
【0034】この紡糸原液を孔径0.08mm、孔数5
00のノズルを通し、メタノール70%とDMSO30
%よりなる3℃の固化液中に湿式紡糸した。得られた固
化糸篠は白濁状であり、両PVAが相分離していること
が推定された。またこの時固化液には特別な濁りは発生
しなかった。この固化糸に5.0倍の湿延伸を施こし、
メタノール液に浸漬して固化糸篠中のDMSOを抽出洗
浄し、鉱物油系油剤を付与し、100℃で乾燥し、次い
で225℃で全延伸倍率が15倍となるよう乾熱延伸し
た。得られた1000dr/500fのフィラメントに
膠着はなく、水中溶断温度が125℃で耐水性は良好で
あった。単糸強度は12.3g/drであった。また断
面観察より、円型断面であり、高融点のPVAが海成分
で、低融点のEVAL−Fが島成分となっており、その
島数は少なくとも100個は存在しており、最表面より
1μ以内に島成分が多数存在していることがわかった。
この繊維を公知の捲縮機を用いて捲縮を付与し、38m
mの一定長にカットしてステープル繊維を得た。
【0035】また実質的に融点を有しない繊維素材とし
て、エジプト綿とクラレ製ホルマ−ル化度35モル%
(品番T−13)のビニロン綿を製造した。エジプト綿
とビニロン綿の混合比率を50/50に固定し、これら
繊維素材100重量部に対して、前述の海島繊維を表1
のように混紡し、撚数17t/インチ(Z撚)の30番
手及び撚数40t/インチ(Z撚)40番手の糸を得
た。この30番手2本を合撚し、S方向に12t/イン
チの上撚をくわえた。また40番手も2本合撚し、S方
向に12t/インチの上撚をくわえた。
【0036】この30番手/2本および40番手/2本
をそれぞれタテ及びヨコ糸として、スルザ−織機を用
い、タテ密度116本/インチ、ヨコ密度60本/イン
チの3/1綾組織の生機を得た。この生機を精練、漂
白、マ−セライズ加工、スレン系染色、サンホライズ加
工(オ−バ−フィ−ド率7%)の工程で処理して加工布
を得た。この加工布をタテ40cm×ヨコ40cmにカ
ットし、その周囲をオ−バ−ロック・ミシンでほつれ防
止したのち、表面温度195℃のアイロンにより皺延し
およびタテとヨコ糸方向に十文字プリ−ツを入れ、布帛
の性能を測定した。結果を表1に示す。
【0037】[実施例2〜6、対象例、比較例]実施例
1と同一の布帛織組織において、タテ及びヨコ糸の海島
繊維含有比率を変更した以外は、実施例1と同様に行っ
た。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、プリ−ツ保持性、防皺
性、洗濯収縮性等の諸性能が改善された布帛が得られ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 海成分が融点220℃以上のポリビニル
    アルコール系ポリマー、島成分が融点または融着温度2
    10℃未満の耐水性ポリマーであって、両ポリマーのブ
    レンド比が98/2〜55/45である海島繊維を4重
    量%以上含み、かつプリ−ツが付与された布帛であっ
    て、プリ−ツ保持性が3級以上であることを特徴とする
    布帛。
  2. 【請求項2】 海成分が融点220℃以上のポリビニル
    アルコール系ポリマー、島成分が融点または融着温度2
    10℃未満の耐水性ポリマーであって、両ポリマーのブ
    レンド比が98/2〜55/45である海島繊維を4重
    量%以上含む布帛を熱圧着処理してプリ−ツを付与する
    プリ−ツ保持性が3級以上の布帛の製造方法。
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