JPH07126918A - 熱圧着性および水溶性を有するポリビニルアルコール系繊維とその熱圧着法 - Google Patents

熱圧着性および水溶性を有するポリビニルアルコール系繊維とその熱圧着法

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JPH07126918A
JPH07126918A JP5274090A JP27409093A JPH07126918A JP H07126918 A JPH07126918 A JP H07126918A JP 5274090 A JP5274090 A JP 5274090A JP 27409093 A JP27409093 A JP 27409093A JP H07126918 A JPH07126918 A JP H07126918A
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JP
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fiber
core
sheath
melting point
water
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Application number
JP5274090A
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English (en)
Inventor
Akio Omori
昭夫 大森
Tomoyuki Sano
友之 佐野
Masahiro Sato
政弘 佐藤
Shunpei Naramura
俊平 楢村
Satoru Komura
悟 小村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱圧着性の高強度水溶性ポリビニルアルコー
ル繊維、特に、通常時は普通の繊維の取扱い性を有しな
がら、熱圧着すると、寸法変化少なく熱圧着可能な繊維
を得る。 【構成】 融点が210℃以上のポリビニルアルコール
系ポリマーを鞘成分とし、融点が210℃未満の水溶性
ポリマーを芯成分となるよう溶液紡糸法により芯の数が
1〜4ケの芯鞘複合繊維とし、かつ、芯鞘複合ノズルパ
ックにおいて芯成分原液吐出口の配置を調整して繊維表
面と芯部の最近接距離が0.01〜1μとした繊維であ
って、1芯芯鞘では偏心タイプであり、2〜4芯芯鞘で
は全芯とも繊維表面側に配した対称芯鞘か或いは1〜3
ケのみの芯部を繊維表面に配した非対称芯鞘繊維。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水溶性かつ熱圧着性の
ポリビニルアルコール系(以下PVA系と略記)繊維に
関するもので、従来困難とされてきた水溶性PVA系繊
維の水溶性を損うことなく熱圧着を可能とするととも
に、高強度でしかも熱圧着時の繊維の寸法変化が小さく
かつ熱圧着後も水溶性であるPVA系繊維とその熱圧着
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】溶融紡糸可能なポリエチレン、ポリエス
テルなどでは熱接着可能な繊維が市販されている。最近
では芯を高融点ポリマーとし、鞘を低融点ポリマーとす
る芯鞘複合繊維が開発され、熱接着時の収縮を抑えるこ
とが可能となり、この芯鞘複合熱接着性バインダー繊維
は、接着時の簡便性、高速性、無公害性のメリットを生
かして、ますます用途拡大しつつある。
【0003】しかし、これらの熱接着性バインダー繊維
は、PVA系やセルロース系などの親水性繊維に対して
はその接着効果が低く、強力を必要とする用途には使用
できない。そのため強力を出すためにアクリル系、メラ
ミン系、PVA系等のポリマーが化学接着剤として単独
又は複合して使用されている。例えば水溶性であること
が必須のケミカルレース基布を製造する時、水溶性ビニ
ロンを材料とする乾式不織布にPVA系樹脂の水溶液を
塗布するか含浸し、乾燥する方法が一般的に実施されて
いるが、水溶液により基布の水溶性繊維が膨潤し、ポリ
マーの乾燥に時間を要するため低速生産しかできない。
もし熱接着性かつ水溶性の繊維が開発できれば、高速生
産が可能となる。またウェットワイパー用基布としてセ
ルロース基材にオレフィン系熱接着性繊維で接着させた
場合、不良品が発生した時あるいはトリミングにより発
生した屑の回収ができないため、焼却処分されている。
もし熱接着性繊維が水溶性であれば不良品や屑の回収が
可能となる。
【0004】しかしながら、従来の熱接着性繊維は溶融
紡糸可能な疎水性ポリマーをベースとしており、水溶性
と熱接着性を兼備し、かつ実用に耐える他の繊維物性を
有する繊維は知られていない。水溶性ポリマーの代表例
であるPVA系ポリマーは、分子内に有する水酸基によ
る分子間相互作用が強く、融点が熱分解温度に近く、通
常は熱分解させずに溶融することが出来ず、熱接着性繊
維を得ることができない。
【0005】この背景下、PVA系ポリマーにおいて
も、共重合変性や後反応変性による内部可塑化及び可塑
剤混合による外部可塑化などにより、融点や軟化点を下
げ溶融成形を可能にしたり、ホットメルト接着剤として
使用する提案がなされている。例えば特開昭51−87
542号、特開昭51−96831号、特開昭53−5
0239号の各公報には、水溶性かつホットメルト性の
あるPVA系接着剤が開示されているが、これらホット
メルト性のPVA系ポリマーのみで繊維化しようとする
と、ホットメルト時の粘度を下げて接着性を大きくする
ため、PVAの重合度を600以下と低くしており、低
強度繊維しか得られないばかりでなく、熱接着性繊維と
して使用しようとすると、繊維化時配向していた分子が
熱接着時溶融して緩和するため、繊維が大きく収縮し、
実用的に使用することは困難である。
【0006】特公昭47−29579号や特公昭47−
42050号の各公報には、PVA溶液にエチレン−酢
ビコポリマーのエマルジョンを添加し、湿式紡糸して得
られる繊維はヒートシール性を有し、紙や不織布のバイ
ンダー繊維または主体繊維として使用できることが記載
されている。しかし、添加するポリマーは水不溶性ポリ
マーのエマルジョンに限定されている。水溶性ポリマー
は、エマルジョンとすることはできず、従って水溶性と
することはできない。
【0007】また特公昭41−6605号公報や特公昭
47−31376号公報には、完全ケン化PVAと部分
ケン化PVAを混合紡糸することにより、易フィブリル
化性繊維とすることが記載されている。しかしこれらの
技術は易フィブリル化繊維を目的としており、一方の成
分には耐水性のよい完全ケン化PVAを用い、延伸、熱
収縮さらには必要に応じてアセタール化を行なってお
り、水溶性繊維ではない。また、該公報で実施されてい
るビニロンの通常紡糸法である芒硝水溶液による脱水凝
固法ではケン化度が85モル%以下のPVAを紡糸する
ことが困難であり、芒硝を洗浄してソルトフリーにしよ
うとすると膠着するので、ケン化度85%以下のPVA
を添加し、混合紡糸することは実際上不可能である。こ
のため、実施例ではケン化度88モル%以上に限られて
いる。また脱水凝固法では固化時断面方向に斑ができ、
このため強度7g/dr以上のものを得ることは困難で
ある。
【0008】また特公昭51−28729号公報には、
PVAとポリアクリロニトリルとアクリルニトリルグラ
フト重合PVAを共通溶媒のジメチルスルホキシド(以
下DMSOと略記)に溶解し、湿式紡糸して得られたゲ
ル糸条を延伸し、そして叩解した自己接着性合成パルプ
が記載されているが、水溶性繊維を得ることができな
い。
【0009】また特開昭52−5318号公報には、低
重合度かつ低ケン化度PVAと繊維形成能を有するポリ
マーとを混合または複合紡糸し、水洗処理することによ
り低重合度かつ低ケン化度のPVAを除去して極細繊維
を製造することが提案されているが、繊維形成能を有す
るポリマーは水洗処理により影響を受けない非水溶性ポ
リマーであり、水溶性繊維は得られない。また低重合度
かつ低ケン化度のPVAを50%以上含有するので繊維
強度が低い。
【0010】また特開平1−260017号公報には、
ケン化度80〜95モル%のPVA系ポリマーを芯成
分、ケン化度96モル%以上のPVA系ポリマーを鞘成
分とした高強度水崩壊型PVA系複合繊維が提案されて
いる。この複合繊維は、本発明繊維とは目的が異なり、
芯が中心に存在する一芯芯鞘複合繊維であり、表層には
高融点ポリマーの厚い層が存在し、熱接着性繊維とはな
らない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記の如く、熱接着性
と水溶性を兼備し、高強度であるPVA系繊維の出現が
強く望まれているが、従来の技術では得られていない。
従って本発明の課題は、水溶性かつ熱接着性を有する高
強度PVA系繊維を得ることにある。またその繊維の熱
圧着法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題に対し、本発明
者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成した。すな
わち本発明は、融点が210℃以上であるPVA系ポリ
マーが鞘成分であり、融点が210℃未満である水溶性
ポリマーが芯成分である芯鞘複合繊維であって、芯/鞘
比率が5/95〜50/50であり、繊維表面と芯部と
の最近接距離が0.01〜1μとなるよう偏心した一芯
芯鞘であり、かつ強度が7g/dr以上であることを特
徴とする熱圧着性および水溶性を有するPVA系ポリマ
ー繊維であり、また融点が210℃以上であるPVA系
ポリマーが鞘成分であり、融点が210未満である水溶
性ポリマーが芯成分である芯鞘複合繊維であって、芯/
鞘比率が5/95〜50/50であり、芯が2〜4ケの
多芯であり、かつ少なくとも1ケの芯は最表面からの芯
部の最近接距離が0.01〜1μであり、かつ強度が7
g/dr以上であることを特徴とする熱圧着性および水
溶性を有するPVA系ポリマー繊維である。
【0013】本発明繊維は、芯鞘構造を有する複合繊維
であって、融点210℃以上であるPVA系ポリマーが
鞘成分である。鞘成分のPVA系ポリマーの融点が21
0℃未満では本発明繊維の耐熱性、高湿下での取扱い性
が不十分となり実用に耐える繊維を得ることが出来な
い。また高強度繊維を得ることが困難である。鞘成分P
VA系ポリマーの融点が215℃以上であるとさらに好
ましい。鞘成分ポリマーの融点の上限に特別な限定はな
いが、熱水溶解性及び熱圧着性の点で融点が230℃以
下であることが好ましく、225℃以下であると水溶解
温度が低下しさらに好ましい傾向にある。
【0014】鞘成分PVA系ポリマーの具体例をあげる
と、重合度500〜24,000で、ケン化度が94〜
100モル%の高ケン化度PVAである。重合度が15
00〜4000、ケン化度が95.0〜99.5モル%
であると熱水溶解性及び熱圧着性の点でさらに好まし
い。またエチレン、アリルアルコール、イタコン酸、ア
クリル酸、無水マレイン酸とその開環物、アリールスル
ホン酸、ピバリン酸ビニルの如く炭素数が4以上の脂肪
酸ビニルエステル、ビニルピロリドン及び上記イオン性
基の一部また全量中和物などの変性ユニットにより変性
したPVAも包含される。変性ユニットの量は2モル%
未満、好ましくは0.1〜1.5モル%である。変性ユ
ニットの導入法は、共重合でも後反応でも特別な限定は
ない。変性ユニットの分布はランダムでも、ブロックで
も限定はない。ブロック的に分布させると結晶化阻害効
果が小さく、ランダムより多く変性しても高融点を保ち
うる。高ケン化度の高融点PVA系ポリマーを鞘成分と
することにより高融点ポリマー単独繊維に近い性能を得
ることができ、また繊維の最表層を高融点ポリマーとす
ることにより、繊維製造工程においても硬着を防止する
ことが可能となる。
【0015】本発明複合繊維の芯成分は融点または融着
温度が210℃未満の水溶性ポリマーを用いる。融点ま
たは融着温度が210℃以上であると熱圧着温度が高く
なり過ぎ、熱圧着時鞘成分のPVA系ポリマーの配向性
・結晶性までも破壊し易いので好ましくない。なお融点
を持たない水溶性の非晶ポリマーであっても、その非晶
性ポリマーチップを所定温度に加熱し、0.1kg/c
2の圧力を10分間印加した際チップ同志が融着する
最低温度を融着温度とした時、融着温度が210℃未満
の水溶性非晶ポリマーは本発明の水溶性ポリマーに包含
され、芯成分水溶性ポリマーとして有効に用いることが
できる。芯成分水溶性ポリマーの融点、あるいは融着温
度(以下この温度も融点という語に含めて使用する)が
200℃以下であるとより好ましく、190℃以下であ
るとさらに好ましい。さらに鞘成分と芯成分の融点差が
10℃以上であると、熱圧着時の繊維寸法変化が小さく
なるので好ましい。融点差が20℃以上であるとより好
ましく、30℃以上であるとさらに好ましい。融点が2
10℃未満の水溶性ポリマーは低配向、低結晶性である
ため、低融点ポリマーが繊維最表面に存在すると繊維製
造工程や繊維を高湿下で放置した時硬着し易く、不都合
である。
【0016】本発明にいう融点210℃未満の水溶性ポ
リマーの具体例としては、低ケン化度PVA、高イオン
基変性PVA、高変性カルボキシメチルセルロースなど
のセルロース誘導体、アルギン酸やキトサンなどの天然
ポリマー、ポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリマ
ー、変性アクリル系ポリマーなどがあげられる。就中、
取扱い性(特に高湿時)、接着性、性能再現性(安定
性)、コストの点で、ケン化度が50〜92モル%、重
合度50〜4000の低ケン化度PVAやアリルアルコ
ール、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、無水
マレイン酸とその開環物、アリールスルホン酸、ビニル
ピロリドン及びそのイオン性基の一部また全量中和され
た変性ユニットにより、3モル%〜10モル%変性され
たPVAが好ましい。変性ユニットの導入法としては共
重合でも後反応でも特別な限定はない。変性ユニットの
分布はランダムでもブロックでも特別な限定はない。ケ
ン化度が65モル%以下では特に高温水溶性が低下する
ので上記変性ユニットで少量変性することを組合せたP
VA系ポリマーは本発明繊維の芯成分として有用であ
る。芯成分ポリマーの重合度に特別な限定はないが、芯
成分は、繊維強度に寄与する必要はなく、接着性に寄与
することが重要であるから、熱圧着時流動性のよい低重
合度、例えば100〜1000が好ましい。
【0017】本発明複合繊維の芯成分/鞘成分の比は重
量比で5/95〜50/50の範囲である。鞘成分の高
融点PVA系ポリマーが50%より少ないと高強度繊維
が得られない。一方、低融点水溶性ポリマーが5%より
少ないと、実用に耐える熱圧着性能を得ることができな
い。強度と熱圧着性のバランスより、芯/鞘比が8/9
2〜40/60であるとより好ましく、12/88〜3
0/70であるとさらに好ましい。
【0018】本発明複合繊維において、繊維最表面と芯
部との最近接距離が0.01〜1μとすることが、最表
面を形成する高融点のPVA系ポリマー相が熱圧着時破
れ、芯成分の低融点ポリマーが繊維最表面に押し出さ
れ、熱圧着性を確保する上で重要であり、本発明のポイ
ントの1つである。一芯芯鞘複合繊維の場合、同芯とし
て鞘部厚みを1μ以下としようとすると、1dr比重
1.3の場合で繊維直径約10μとなり、芯/鞘比が6
4/36となり、高融点PVA系ポリマーが50%より
少なく、繊維強度が低いものしか得られない。従って一
芯芯鞘複合繊維においては、繊維最表面と芯部の最近接
距離が0.01〜1μとなるよう偏芯芯鞘としなければ
ならない。また芯部が2〜4ケの多芯芯鞘繊維でも、少
なくとも1ケの芯は最表面との最近接距離を0.01〜
1μとする必要がある。1μ以下とすることにより、熱
圧着性とすることが可能である。0.01μ未満では高
融点ポリマー層が薄過ぎて、繊維製造工程(例えば延伸
工程や捲縮工程)及び後加工工程(例えばカード工程や
抄紙分散工程)など熱圧着する前の段階で高融点ポリマ
ー層が破壊し、芯部が表面に出て糸同志がくっつき、低
融点ポリマーが硬着するので不都合である。芯が5ケ以
上の多芯芯鞘複合繊維は製造工程におけるノズルパック
構造が複雑となり、安定な性能を再現性よく得ることは
困難である。
【0019】本発明繊維は7g/dr以上の強度を有す
る。7g/dr未満の強度では、例えば、本発明繊維の
用途の1つであるケミカルレース基布に用いる場合、繊
細なデザインのレースとするためには密度高く刺しゅう
針を刺す必要があり、単繊維の強度が弱いと目飛びし、
デザイン通りのレースが得られない。また基布を低目付
化することが可能となれば、基布が柔軟となり、取扱い
性やドレープ性がよくなるので、より高度なレースを効
率よく生産しうるが、繊維強度が低いと低目付化が困難
である。また繊維強度が高くなり、基布が強くなると基
布の生産速度、さらにレースの生産速度も向上する。ウ
ェットワイパー用基布としてセルロース基材にブレンド
する場合も、繊維強度が大きいとブレンド量を減少させ
うるなどの大きなメリットがある。本発明繊維は熱圧着
することによりその機能を発揮する。熱圧着により多少
強度が低下しても十分な強度を有することが重要であ
り、このためには熱圧着前の強度が大きいことが必要で
ある。好ましくは8g/dr以上の強度を有する場合で
あり、より好ましくは10g/dr以上の強度を有する
場合である。
【0020】以上のように、本発明繊維は、従来の疎水
性ポリマーにおける芯鞘複合熱接着性繊維では芯を高融
点ポリマーとして、鞘を低融点ポリマーとしているのと
は逆に、鞘成分を高融点ポリマーとし、芯成分を低融点
ポリマーとし、通常は高配向、高結晶性の高融点PVA
系ポリマーによる優れた繊維性能を発揮し、熱圧着(高
温かつ高圧印加)時繊維最表層の高融点PVA系ポリマ
ー相が破れ、表層近くの芯成分を形成している熱接着性
の低融点水溶性ポリマーが繊維表面に押し出され、別の
繊維の芯成分の水溶性ポリマー同志と接着したり、或い
は鞘成分の高融点ポリマーと接着することにより、熱圧
着性を確保したものである。高配向、高結晶化した高融
点PVAポリマーがマトリックス相を形成するため、芯
成分が低ケン化度で低耐水性の低融点水溶性ポリマーで
あっても高湿下でも強度や寸法安定性が優れており、し
かも熱圧着時においてもマトリックス相は大きな影響を
受けないため、寸法変化が小さくかつ熱圧着後でも高い
強度を得ることができる特徴がある。なお本発明の繊維
は1.5〜10デニールの範囲が好ましい。1.5デニ
ール未満のものはノズルの構造上製造が難しく、10デ
ニールを越えるものはケミカルレース等の細かいレース
には適さず、また風合も硬くなり好ましくない。
【0021】本発明繊維を熱圧着するには、80〜23
0℃の温度で1kg/cm以上の線圧または2kg/c
2以上の面圧を印加することにより繊維を接着するこ
とが必要である。温度が80℃未満、線圧1kg/cm
未満、あるいは面圧2kg/cm2未満では最表層の高
融点PVA系ポリマー相が破れず、芯成分の低融点水溶
性ポリマーが繊維表面に押し出されてこないので接着力
が不十分である。最表層の高融点ポリマーを昇温し柔ら
かくなった状態で圧力を加えることにより最表層のポリ
マー相を破り、接着成分の低融点ポリマーが押し出され
接着することが可能となる。熱圧着温度が高過ぎると、
鞘成分の分子配向や結晶までこわれる可能性があるの
で、220℃以上とすべきではない。芯/鞘のポリマー
仕様、分布状態及び印加圧力などにより、適正圧着温度
は変わるが、100〜210℃が好ましく、120〜2
00℃であるともっとも好ましく、130〜190℃で
あるとさらに好ましい。また印加圧力があまり高いと鞘
成分の繊維構造をこわしてしまい、熱圧着後の繊維強力
が低下するので好ましくない。熱カレンダーローラーな
どによる線圧は500kg/cm以下が好ましい。線圧
が200kg/cm以下であるともっと好ましく、10
0kg/cm以下であるとさらに好ましい。熱プレスな
どによる面圧は1000kg/cm2以下が好ましい。
面圧が400kg/cm2以下であるともっと好まし
く、200kg/cm2以下であるとさらに好ましい。
通常は5〜50kg/cmの線圧あるいは10〜100
kg/cm2の面圧が使用される。熱圧着時間は0.0
1〜10秒程度の短い時間でも熱圧着可能である。短時
間処理で接着しうることが熱圧着法の極めて重要な特性
である。本発明繊維の場合熱圧着時間を10分以上とす
ると却って接着力が低下する傾向にある。好ましくは1
分以下であり、さらに好ましくは10秒以下、もっとも
好ましくは0.05〜1秒である。この原因は不明であ
るが、ポリマーの結晶化に関係すると推測される。この
ため、処理時間の長い面圧タイプの熱プレス法より処理
時間の短かい線圧タイプの熱カレンダーロール法がより
好ましく熱圧着に使用しうる。
【0022】次に本発明繊維を製造する方法について記
載する。本発明繊維の鞘部を構成する融点210℃以上
のPVA系ポリマーは、溶融紡糸が困難であり、乾式、
湿式あるいは乾湿式などの溶液紡糸法により芯鞘複合紡
糸する。融点が210℃以上のPVA系ポリマーと融点
が210℃未満の水溶性ポリマーを各々の溶媒に溶解し
て得た紡糸原液を、別々の原液配管及びギアポンプを通
し、融点210℃以上のPVA系ポリマー原液が鞘に、
融点210℃未満の水溶性ポリマー原液が芯になるよう
セットした芯鞘ノズルパックを通して芯鞘ノズルより各
々定量的に吐出させる。この際、紡糸延伸後の最終繊維
形態において繊維最表面と芯部の最近接距離を0.01
〜1μとなるよう芯原液吐出孔の位置を配置することが
本発明繊維の製造方法におけるポイントである。一芯芯
鞘繊維の場合は偏心させる必要がある。また2〜4芯の
場合も、芯成分原液吐出孔の少なくとも1ケは繊維最表
面と芯部の最近接距離が0.01〜1μとなるよう外周
近くに配置する必要がある。このためには繊維断面の観
察をしながら0.01〜1μとなるよう芯部吐出孔を調
整する必要がある。安定な芯鞘紡糸を行なうためには、
鞘原液と芯原液の粘度をほぼ同一とすることが好まし
い。
【0023】紡糸原液の粘度は紡糸時ノズル近辺の温度
において、乾式紡糸では500〜20000ポイズ、乾
湿式紡糸では50〜1000ポイズ、湿式紡糸では5〜
200ポイズとなるようポリマー濃度及び原液温度を調
整する。鞘原液と芯原液の溶媒は必ずしも同一である必
要はないが、同じであることの方が好ましい。紡糸原液
には他の目的のために種々の添加剤を添加してもよい。
例えば、ポリマーの劣化防止のため酸化防止剤、光安定
剤、紫外線吸収剤、繊維着色のため顔料、染料、界面張
力制御のため界面活性剤、pH調整のため酸あるいはア
ルカリなどである。
【0024】両原液を芯鞘ノズルより、芯/鞘比率が5
/95〜50/50となるよう各々定量的に吐出させ
る。乾式紡糸においては溶媒を蒸発させ、乾燥後強度が
7g/dr以上となるよう熱延伸を行なって巻き取る。
乾湿式紡糸においては一旦不活性気体(例えば大気)層
に吐出し、次いで固化液中に通し、固化と原液溶媒の抽
出を行ない、強度が7g/dr以上となるよう湿延伸、
乾熱延伸を施こし捲き取る。また湿式紡糸においては原
液をノズルより直接固化液に吐出し、固化抽出を行な
い、強度が7g/dr以上となるよう湿延伸、乾熱延伸
を施こし捲き取る。
【0025】本発明繊維の製造に用いる溶媒は、鞘部ポ
リマー及び芯部ポリマーの溶媒ならば特に限定はない
が、極性有機溶媒であるジメチルスルホキシド(以下D
MSOと略記)、NN′−ジメチルホルムアミド、ジメ
チルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルイ
ミダゾリジノンなどがあげられる。就中、低温溶解性、
腐食性、毒性及び均一固化性の点でDMSOが好まし
い。また固化液としては鞘部ポリマーである融点210
℃以上のPVA系ポリマーに対して固化能力を有するも
のであれば特別な限定はなく、例えば、メチルアルコー
ルやエチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、
メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチルなどの
脂肪族エステル類、ヘキサンやデカリンなどの炭化水素
類などがあげられる。就中、均一固化性、腐食性の点で
メタノール、エタノール、アセトンが好ましい。さらに
これら固化溶媒(及び溶液)と原液溶媒(及び溶液)と
の混合液も固化液として用いることができる。ここで注
意すべきはこれら固化液は芯成分である水溶性ポリマー
に対しては固化能力を持っていなくとも、極端には芯部
水溶性ポリマーが固化液に対して可溶であっても、鞘成
分である高融点ポリマーに対してのみ固化能力があれ
ば、意外にも十分に使用しうることを見出した。
【0026】また本発明においては、強度を7g/d以
上とするため、固化過程において均一な固化糸篠とす
る。均一な固化が行なわれたことの確認は延伸後の繊維
断面を光学顕微鏡で観察し、ほぼ円型の断面の繊維が得
られた場合には、均一な固化が行なわれたと判断でき
る。従来、PVAの紡糸に一般的に用いられている濃厚
芒硝水溶液を固化浴に用いると、不均一固化となるた
め、断面がまゆ型となり、延伸配向が十分行なえず通常
7g/d以上の強度を得ることができない。また原液に
硼酸を添加し、アルカリ性脱水塩類浴に固化する場合、
部分ケン化PVAが紡糸中にケン化され、融点が上が
り、水溶性も低下するので好ましくない。一方メタノー
ルやエタノールなどのアルコール類、アセトン、メチル
エチルケトンなどのケトン類、酢酸メチルや酢酸エチル
などの脂肪族エステル類、及びこれらと原液溶媒との混
合溶媒などの鞘成分となる高融点PVA系ポリマーに対
して固化能を有する有機溶剤を固化浴に用いると、均一
な固化となるため、断面がほぼ円型となり、その後の湿
延伸及び乾熱延伸により十分な配向結晶化を行なうこと
ができ、強度7g/dr以上の達成が可能となる。なお
本発明で言う繊維の横断面形状は、通常の光学顕微鏡を
用いて観測されるものである。より均一なゲル糸篠を得
るためには、固化浴の温度を0〜10℃の低温とするこ
とが好ましい。
【0027】次に本発明繊維の有用性について、用途の
一つである不織布について説明する。本発明繊維を少な
くとも10%含有する乾式不織布あるいは湿式不織布
は、温度80〜230℃で線圧1kg/cm以上または
面圧2kg/cm2以上の条件で熱圧着することによ
り、熱接着可能な不織布となる。本発明繊維の含有量が
10%未満である不織布は上記熱圧着条件では実用に耐
える熱圧着性は得られない。本発明不織布を熱圧着させ
た時の熱接着力をさらに高めるためには、本発明繊維の
含有量を20%以上にすると好ましく、30%以上にす
ると一層好ましい。本発明繊維単独あるいは本発明繊維
と他の水溶性繊維、例えば水溶性ビニロンの混合で構成
すると、水溶性かつ熱圧着可能な不織布が得られる。こ
の不織布は袋物やポットなどの3次元構造体に成形加工
する際、熱圧着による接着が可能である。従来の化学接
着剤を用いた成形加工に比べて、高速、簡便、無公害、
安全なプロセスで成形加工しうるため、成形加工費を大
巾に節減することが可能である。この不織布は熱圧着に
よる成形加工により水溶性の3次元構造体を製造しうる
ことが大きな特徴である。従って、例えば洗濯袋、ラン
ドリーバッグ、水解性生理用品、水解性トイレタリー用
品、シードシート、シードテープ、肥料袋、ペーパーポ
ット、水溶性おもしろグッズなどに有効に使用しうる。
【0028】また、親水性であるが非水溶性のビニロン
繊維やレーヨン、キュプラ、ポリノシック、溶剤系セル
ロース繊維、綿などのセルロース繊維に本発明繊維を1
0%以上含有させた不織布は、熱圧着可能であり、3次
元構造体に成形加工する際、従来の化学接着剤を用いる
場合に比べ、上記メリットを有する熱圧着法を適用する
ことが可能である。また本発明繊維を用いた不織布の特
徴は、熱圧着された3次元構造体が水或いは熱水に接触
すると、熱圧着部の接着力がなくなり、元の不織布形状
になることである。さらに本発明繊維を用いた不織布
が、本発明繊維の熱圧着性を利用して接着されていた
り、水溶性のバインダー繊維や水溶性の化学接着剤を用
いて接着されていると、これを用いて熱圧着された3次
元構造体は、水或いは熱水に接触すると、不織布を構成
していたビニロン繊維やセルロース繊維にまでバラバラ
になるという性能を有する。例えばセルロース繊維は自
然崩壊性の地球にやさしい繊維として注目されている
が、セルロース繊維を含有した不織布を3次元構造体に
成形加工する際、従来は、化学接着剤を用いて、接着剤
調製→所定量塗布→乾燥・キュアリングといった複雑な
工程を経たり、疎水性の熱接着性繊維を用いて熱接着法
で接着していた(この場合、接着は高速・簡便・無公害
で行ないうるが、得られた3次元構造体は、セルロース
繊維の特長である自然崩壊性を活かすことができない)
が、本発明繊維の不織布を用いて熱圧着法(ヒートシー
ル法)により成形加工して得た3次元構造体は、高速・
簡便・無公害で自動化ラインにも容易に組み込んで製造
可能であるとともに、得られたペーパーポット、肥料
袋、シードシート、シードテープ、根巻き材などの3次
元構造体は、土中に埋設したり、地上に放置すると、水
分や雨により接着力がなくなるとともに、基材のセルロ
ース繊維が自然崩壊する。従って、本発明繊維を使用し
た不織布を用いると、地球にやさしい3次元構造体を安
価に、無公害で製造することが可能である。
【0029】また非水溶性ビニロン、レーヨンなどのセ
ルロース系繊維、ナイロン−6などポリアミド系繊維、
ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維あるいはそ
れらを混合したベース繊維素材に本発明繊維を10重量
%以上混合し、この混合素材を熱圧着法で不織布を製造
すると、不織布を製造する時発生する不良品、トリミン
グにより発生した屑、あるいは使用済品は水あるいは熱
水に接触させることにより、もとの繊維素材にバラバラ
となり、ベースの繊維素材を回収再生することができ、
リサイクル可能となる。従来熱圧着法で製造した不織布
は極めて合理的であるが、不良品やトリミング屑などの
屑(湿式法では損紙)の回収再生が出来ず、焼却せざる
をえないデメリットがあったが、本発明繊維を使用する
ことにより、熱接着法と回収再生使用可の両方を満足す
ることができるようになった。
【0030】本発明におけるバラメーターの定義とその
測定法は次の如くである。 1.融点 メトラー社示差走査熱量測定装置(DSC−20)を用
い、試料ポリマー10mgを窒素下20℃/minの速
度で昇温した際、吸熱ピークを示す温度を意味する。
【0031】2.繊維表面と芯部の最近接距離 繊維をパラフィンなど適当な樹脂に包埋し、ミクロトー
ムなどにより断面の超薄切片とし、必要に応じ適当な染
色を行ない、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡あるいは透過
型電子顕微鏡などの中で最も観察し易い方法で、芯を構
成するポリマーが繊維表面に最も近い部分を選んでその
距離を測定する。
【0032】3.繊維強度 JISL−1015に準じ、単繊維強度を試長20m
m、引張速度50%/分で引張試験を行なう。
【0033】
【実施例】以下実施例により、本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。実施例中、%は特にことわりがない限り重量にもと
ずく値である。
【0034】実施例1 重合度1750、ケン化度98.4モル%で融点が22
5℃のPVAと重合度600、ケン化度70モル%で融
点が172℃のPVAとを各々22%と35%となるよ
う別々に100℃のDMSOに窒素下混合撹拌溶解し
た。これらの原液を別々の配管を通して、2台のギアポ
ンプで計量し、低融点PVA溶液が芯に、高融点PVA
溶液が鞘になるようセットした芯鞘ノズルパックを通し
し、孔径0.12mm巾、孔数24の芯鞘ノズルより大
気に吐出し、8mmのエアギャップを通過させ、メタノ
ール75%とDMSO25%よりなる5℃の固化液中に
乾湿式紡糸した。この際芯/鞘比率がポリマーで30/
70となるよう各ギアポンプの回転数を設定し、なおか
つ紡糸延伸後の全ての繊維において最表面と芯部の最近
接距離が0.1〜0.4μの範囲に入るよう芯鞘ノズル
における芯原液吐出口位置を各ノズル孔について調整し
た。固化後のゲル糸篠は4.5倍の湿延伸を施こし、ゲ
ル糸篠中の残存DMSOをメタノールで抽出洗浄し、オ
イリング、乾燥後、220℃熱風中で全延伸倍率12倍
の乾熱延伸を行ない、偏心タイプの1芯芯鞘複合の74
d/24fのマルチフィラメントを得た。
【0035】このフィラメントの強度は10.5g/d
で断面形状は円形で、さらに繊維断面の最表面と芯部の
最近接距離は、いずれのフィラメントも上記0.1〜
0.4μの範囲内であった。またこのマルチフィラメン
トを十字状に交叉して、温度10℃、線圧10kg/c
m、処理時間1秒以下の熱圧着条件で熱カレンダーロー
ル処理を施こした。得られた交叉部を手で剥がそうとし
たが、明らかに接着していることが認められた。また熱
圧着部を沸騰水に投入した所形状がなくなり溶解した。
【0036】比較例1 実施例1において、芯部を同心円状に中央に配するよう
芯原液吐出口位置を各ノズル孔について調整する以外は
実施例1と同様に紡糸延伸して同心円タイプの芯鞘複合
の74d/24fのマルチフィラメントを得た。このフ
ィラメントの最表面と芯部との最近接距離は4μであ
り、単糸強度が11.1g/dであった。またこのマル
チフィラメントをを実施例1と同様の熱圧着条件で熱カ
レンダーロール処理を施こした。得られた交叉部を手で
剥がそうとした所、比較的簡単に剥がれ、実施例1より
接着力がかなり低いことが認められた。
【0037】比較例2 実施例1において、紡糸延伸後のフィラメントで最表面
と芯部の最近接距離を0.005〜0.009μ(50
〜90オングストローム)の範囲に入るよう芯原液吐出
口位置調整した。しかし、得られたフィラメントは硬着
がみられ、芯部ポリマーが部分的に最表面に露出してい
ると推定された。
【0038】実施例2 重合度1750、ケン化度97.5モル%で、融点が2
21℃のPVAと重合度800、ケン化度60モル%、
アリールスルホン酸ソーダを0.5モル%で共重合した
融点163℃の変性PVAとを各々濃度19%と28%
となるよう別々に90℃のDMSOに窒素下混合撹拌溶
解した。これらの原液を別々の配管を通して2台のギア
ポンプで計量し、低融点変性PVA溶液が芯に、高融点
PVA溶液が鞘になるようセットした芯鞘ノズルパック
を通して、孔径0.25mmφ、孔数6の3芯芯鞘ノズ
ルより、メタノール62%とDMSO38%よりなる1
0℃の固化液中に湿式紡糸した。この際、芯鞘比率がポ
リマーで25/75となるよう各ギアポンプの回転数を
設定し、紡糸延伸後の全ての繊維において、3芯のうち
少なくとも1芯は繊維最表面と芯部の最近接距離が0.
1〜0.7μの範囲に入るよう芯原液吐出口の位置を調
整した。固化後のゲル糸篠は5.0倍の湿延伸を施こ
し、ゲル糸篠中の残存DMSOをメタノールで抽出洗浄
し、オイリング、乾燥後、200℃熱風中で全延伸倍率
11倍の乾熱延伸を行ない、3芯芯鞘複合の36d/6
fのマルチフィラメントを得た。
【0039】このフィラメントの強度は8.1g/dで
断面形状は円形で、さらに繊維断面の最表面と芯部の最
近接距離はいずれのフィラメントも0.1〜0.7μの
範囲内であった。またこのマルチフィラメントを十字状
に交叉して、温度150℃、線圧20kg/cm、処理
時間1秒以下の熱圧着条件で熱カレンダーロール処理を
施こした。得られた交叉部を手で剥がそうとした所なか
なか剥がれず、カレンダー処理により熱圧着しているこ
とが認められた。また熱圧着後の交叉部を80℃の熱水
に投入した所溶解した。
【0040】
【発明の効果】本発明は、高融点の高ケン化度PVAと
低融点の水溶性ポリマーとを所定のブレンド比で混合
し、低温均一固化紡糸することにより、高融点PVA系
ポリマーを鞘成分とし、低融点水溶性ポリマーを芯成分
とし、芯の数を1〜4ケとし、低融点水溶性ポリマーを
繊維の最表面には存在しないか、表層に極近接して存在
せしめるよう、1芯では偏心させ、2〜4ケ芯でも場合
によって偏心させた芯鞘複合繊維であって、かつ高強度
としたものである。このような繊維とすることにより、
従来困難であった熱圧着性の高強度水溶性繊維を得た。
特に本発明繊維は、高融点の高ケン化度PVAをマトリ
ックスとして鞘成分に存在せしめて、高配向高結晶化せ
しめており、高湿度下でも寸法が安定しており、通常状
態においては普通の繊維として取り扱うことが可能であ
るが、熱圧着すると、最表面の鞘成分相が破れ、芯成分
の低融点ポリマーが繊維表面に押し出され、繊維同志が
接着されるものである。熱圧着時鞘成分の高融点PVA
ポリマー相は融解しないため、寸法変化が殆んどなく、
かつ熱圧着後も高強度を維持しうる。
【0041】以上の如く、本発明繊維は、水溶性と熱圧
着性と高強度を兼備したPVA繊維であり、不織布分野
に用いると、熱圧着による接着が可能であるため、簡便
なプロセスにより、無公害で高速生産が可能となる。例
えば、従来PVA系糊剤水溶液を塗布乾燥して生産して
いたケミカルレース基布などは大幅に生産の合理化が可
能である。また乾式法及び湿式法で得られた不織布は熱
圧着性を有するため、3次元構造体(例えば袋、ポッ
ト、箱)などに成形加工する際、熱圧着法を用いること
ができ、ヒートシールしうるため、成形加工が効率的に
高速生産しうる。さらにビニロンやレーヨンなど親水性
素材と混合して不織布化すると、熱圧着で接着が可能で
あり、かつ不良品、2次格品、トリミング片などの屑が
発生した際に水あるいは熱水と接触させるとビニロンや
レーヨンなどの素材が回収でき、再使用が可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 楢村 俊平 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (72)発明者 小村 悟 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 融点が210℃以上であるポリビニルア
    ルコール系ポリマーが鞘成分であり、融点が210℃未
    満である水溶性ポリマーが芯成分である芯鞘複合繊維で
    あって、芯/鞘比率が5/95〜50/50であり、繊
    維表面と芯部との最近接距離が0.01〜1μとなるよ
    う偏心した一芯芯鞘であり、かつ強度が7g/dr以上
    であることを特徴とする熱圧着性および水溶性を有する
    ポリビニルアルコール系繊維。
  2. 【請求項2】 融点が210℃以上であるポリビニルア
    ルコール系ポリマーが鞘成分であり、融点が210℃未
    満である水溶性ポリマーが芯成分である芯鞘複合繊維で
    あって、芯/鞘比率が5/95〜50/50であり、芯
    が2〜4ケの多芯であり、かつ少なくとも1ケの芯は最
    表面からの芯部の最近接距離が0.01〜1μであり、
    かつ強度が7g/dr以上であることを特徴とする熱圧
    着性および水溶性を有するポリビニルアルコール系繊
    維。
  3. 【請求項3】 請求項1または2の繊維を、温度80〜
    230℃、線圧1kg/cm以上または面圧2kg/c
    2以上の条件で熱圧着することを特徴とする熱圧着性
    および水溶性を有するポリビニルアルコール系繊維の熱
    圧着法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11508789A (ja) * 1995-06-30 1999-08-03 キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド 水分解性の多成分ファイバ及び不織布
KR101226851B1 (ko) * 2007-06-20 2013-01-25 (주)엘지하우시스 이중노즐을 이용한 나노섬유의 제조방법
CN108884617A (zh) * 2016-03-29 2018-11-23 庆北大学校产学协力团 亲水性聚氨酯纳米纤维及其制备方法

Cited By (4)

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CN108884617B (zh) * 2016-03-29 2021-05-28 庆北大学校产学协力团 亲水性聚氨酯纳米纤维及其制备方法

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