JPWO2006129744A1 - 刺繍部分の転写後染め法に用いるマスキング用基布 - Google Patents

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Abstract

水溶性繊維からなる支持体に水溶性フィルムを張り合わせた複合体からなるマスキング用基布。該マスキング用基布は、刺繍部分を転写紙により後染めする工程を含む刺繍布の製造において、転写染色時にミシン目部分から染料が移染するのを防止するために使用される。該マスキング用基布は水により容易に溶解除去することができ、複雑な色模様の刺繍であっても刺繍部分の色彩・輪郭が鮮明であり、風合いに優れた刺繍布の製造に好適に用いられる。

Description

本発明は、刺繍部分を転写紙を用いて着色・染色する際の刺繍部分以外への染料の移染防止性に優れたマスキング用基布およびこれを用いることで得られる刺繍布に関する。
従来、刺繍部分の色付けには、単色あるいは異なる色彩を有する複数の先染め刺繍糸が用いられていた。しかしながら、異なる色彩を有する複数の刺繍糸を用いて刺繍の配色パターンを作る場合、表現可能な色彩の数は刺繍糸の数により限定される。特に、工業的に刺繍を施す場合は、設備上、製造コスト上の制約や、高価な先染め刺繍糸を多種保有するリスク等から、使用される刺繍糸の色数は著しく制限されていた。その結果、布地に施される刺繍は複雑な色模様を表現することができなかった。
また複雑な色模様を表現するために、刺繍部分を転写紙により後染めの方法にて着色・染色する方法がある。特に、昇華性染料は色合いが良好で、洗濯堅牢度を有するために、昇華性染料タイプの転写紙が多用されている。しかし、転写紙は、通常、全面に染料が塗布されており、刺繍部分以外の布地にも色模様が転写され、刺繍の輪郭がぼやけるなど刺繍柄の表現を損なうという問題があった。さらに転写紙により着色・染色する前に刺繍部分以外をマスキング材によりマスキングする方法もあるが、中抜き部分を有する文字などの柄や隙間を有する複雑な刺繍柄などの場合はマスキングが困難であり、さらに、熱転写後のマスキング材の除去も困難であった。
刺繍以外の部分の着色・染色を防ぐ他の方法として、予め刺繍用基布とマスキング材とを一体化させて刺繍し、転写後に転写紙と共にマスキング材を剥がして除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1で用いられるマスキング材は、刺繍用基布に接する側に離型剤層、転写される側に熱溶融性接着剤層を有する上質紙や模造紙などの紙製支持体からなる。マスキング材の除去後でも、刺繍部分の下部に離型剤、紙製支持体、および熱溶融性接着剤が残存するため、刺繍部分の風合い・ソフト感に欠ける問題があった。また、マスキング材を剥がす際に刺繍糸を切断し刺繍部分を傷付けたり、きれいに除去できないといった問題があった。
更に、マスキング材として、上質紙や模造紙などの紙製支持体の代わりに、水溶性フィルムや水解性の薄模造紙・トイレットペーパー等を用いて、マスキング材除去後の刺繍部分の風合いを改善することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。水溶性フィルムを使用した場合、刺繍用基布を洗濯することで刺繍下部に残存しているマスキング材が容易に除去され、離型剤や熱溶融性接着剤も残存せず、刺繍部分の風合い・ソフト感が損なわれない。しかし、該水溶性フィルム単独では強度が弱いために刺繍のミシン目が割け易く、分散染料を用いる転写紙の場合に、割けた部分から揮発した染料が浸透し刺繍の輪郭部分周囲へ移染する問題があった。また、プレス機により熱転写する際、該水溶性フィルム単独では強度が低いためにフィルムが破れて熱源に付着し作業性が悪化する問題があった。水解性の薄模造紙・トイレットペーパー等を使用した場合、離型剤や熱溶融性接着剤が硬化し、風合い斑を生じる可能性があり、洗濯により離解した紙の繊維が刺繍目から外側にはみ出す恐れがあるなどの問題があった。
刺繍部分のマスキング材を刺繍前に予め除去する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法は、刺繍用基布とマスキング材とを一体化させて刺繍する際に、まず、輪郭刺繍を施し、刺繍する部分のマスキング材を除去し、除去した部分に刺繍をし、転写紙で刺繍を彩色した後、刺繍部分以外のマスキング材を除去するものである。しかしながら、輪郭刺繍する工程とマスキング材を予め除去する工程が増えて設備上・コスト上の制約を受け、更には、複雑な刺繍柄の場合に予め刺繍される部分のマスキング材だけを選択的に除去することは非常に困難であるなどの問題があった。
特開平7−133596号公報 特開平9−123695号公報 特開2000−64183号公報
本発明の目的は、刺繍部分を転写紙により後染めにて着色・染色する方法により刺繍布を製造する際に使用する、染料の移染防止性に優れるマスキング用基布を提供することである。本発明の他の目的は、転写紙による着色・染色後、水への溶解除去により容易に除去できるマスキング用基布を提供することである。本発明のさらに他の目的は、複雑な色模様の刺繍であっても刺繍部分の色彩・輪郭の鮮明性および風合いに優れた刺繍布を提供することである。
本発明者らは、上記したマスキング用基布および刺繍布を得るべく鋭意検討を重ねた結果、刺繍用基布の刺繍を施す面(以下、刺繍面ということがある。)の少なくとも一部に、水溶性繊維からなる支持体(紙または不織布)と水溶性フィルムを貼り合せた複合シートをマスキング用基布として被覆し、前記マスキング用基布を刺繍用基布と一体化させて刺繍縫いを施した後、転写紙を用いて熱転写により刺繍部分に染色を施し、その後、マスキング用基布を水に浸漬し溶解除去をすることにより、容易かつ完全にマスキング用基布を除去し、優れた風合い・ソフト感を有し刺繍部分の周囲に染料の移染のない刺繍布を製造できることを見出した。
すなわち本発明は、転写紙を用いた刺繍部分の後染め方法において使用され、水溶性繊維で構成される支持体に水溶性フィルムを貼り合せた複合シートからなり、刺繍を施す面の少なくとも一部を被覆して、刺繍以外の部分への染料の移染を防止するための水溶性マスキング用基布に関する。
さらに本発明は、上記のマスキング用基布を刺繍用基布と一体化させて刺繍縫いを施してから、熱転写または感圧転写により刺繍部分に染色を施した後、該マスキング用基布を水により溶解除去することにより得られる刺繍布に関するものである。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のマスキング用基布を使用して得られる刺繍布において、刺繍部分の染色方法は、転写紙による後染色方法である。まず、刺繍用基布の、少なくとも刺繍する部分を含む刺繍面に、水溶性繊維からなる支持体に水溶性フィルムを貼り合せた複合シートをマスキング用基布として該支持体を介して被覆する(重ね合わせる)。マスキング用基布を重ね合わせたまま刺繍を施した後、転写紙の色模様を刺繍部分に熱転写または感圧転写する。その後、転写紙を剥がし、更にマスキング用基布を水で溶解除去をする。仮に転写時にマスキング用基布が着色・染色されても、刺繍下部に存在するマスキング用基布も完全に除去されるので、刺繍部分のみが綺麗に彩色された刺繍布が得られる。
刺繍用基布および刺繍糸に使用する繊維は、特に限定されず、木綿、絹、羊毛等の天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維などが挙げられる。
刺繍部分に対応する形状にカットした転写紙を用いる場合、マスキング用基布は、刺繍部分およびその周辺を被覆する大きさでもよい。しかし、作業性等から一般的には刺繍用基布の全面を被覆する大きさであるのが好ましい。
転写紙としては、一般的に、熱転写によって色模様を刺繍に転写する、移染性の高い分散染料を使用した昇華性転写紙が挙げられるが、特に限定はなく、目的に応じて、顔料、染料などを使用した、感圧転写紙なども適宜使用することができる。
本発明のマスキング用基布は、水溶性支持体に水溶性フィルムを貼り合せた複合シートであることを特徴とする。かかるマスキング用基布を用いることにより、転写時に、染料がミシン目から刺繍部分周囲へ移染することが防止される。また、熱転写時にマスキング用基布が熱源に接着することがなく、作業性に優れる。マスキング用基布の除去は、マスキング用基布が水溶性繊維および水溶性フィルムで構成されているため、非刺繍部分のみならず刺繍部分の下部に残ったマスキング用基布も、水によって実質上完全に溶解除去することが可能である。その結果、複雑で多彩な転写模様であっても刺繍部分に綺麗に転写され、かつ刺繍部分の風合いも良好な刺繍布を得ることができる。
前記水溶性繊維及び水溶性フィルムは、繊維の強度が高いことや溶解する水温を調節できる等の理由から、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する。)系樹脂からなることが好ましい。本発明のPVA系マスキング用基布の水中溶解温度は0〜100℃であることが好ましく、昇華性転写紙に用いられる分散染料が80℃以上で一部水へ溶出し移染しやすいことから、0〜70℃であることが特に好ましい。
水中溶解温度が0〜70℃であるPVA系樹脂は、ビニルアルコールユニット以外のユニットが酢酸ビニルユニットのみからなり、ケン化度が98モル%以下である部分ケン化PVAであることが好ましい。しかし、ケン化度が80モル%以下であると、得られる水溶性繊維の結晶性が低く、また、繊維を製造する際に繊維間の膠着が生じ易く好ましくない。
水中溶解温度が70〜100℃であるPVA系樹脂としては、ケン化度が98〜99.5モル%の部分ケン化PVAが好ましいが、99.5モル%以上の完全ケン化PVAでも、乾熱延伸温度を200℃以下にすれば、沸騰水に溶解するマスキング用基布を製造に用いることができる。
水中溶解温度が0〜100℃である限り、変性ユニットを含有する変性PVAも使用することができる。水中溶解温度が0〜70℃のマスキング用基布を得る場合は、変性ユニットの含有量は、1〜20モル%が好ましく、2〜13モル%がより好ましい。水中溶解温度が70℃〜100℃のマスキング用基布を得る場合は、変性ユニットの含有量は、0.1〜1モル%であるのが好ましい。変性ユニットとしては、エチレン、アリルアルコール、イタコン酸、アクリル酸、ビニルアミン、無水マレイン酸、マレイン酸、スルホン酸含有ビニル化合物、ピバリン酸ビニルなどの炭素数が4以上の脂肪酸ビニルエステル、ビニルピロリドンに由来するユニット、および、上記化合物のイオン性基の一部または全量を中和した化合物に由来するユニットなどが例示できる。変性ユニットの導入法は共重合による方法でも、後反応による方法でもよい。また変性ユニットのポリマー鎖内での分布はランダムでもブロックでもグラフトでも特に限定はない。
PVA系樹脂の重合度は特に限定されないが、繊維の機械的物性、吸水性などの点からは1000以上、特に1500以上とするのが好ましく、紡糸性などの点からは4000以下であるのが好ましい。
本発明の水溶性マスキング用基布は、転写紙の色模様を形成する染料が分散染料などの昇華性染料である場合に特に適している。昇華性染料は、グラデーション等のより複雑で多彩な色模様に適しているが、転写紙を用いて染色する際に刺繍のミシン目から透過して刺繍以外の部分に移染したり、80℃以上の熱水でマスキング用基布を溶解除去する際に該染料が水へ溶出し、刺繍布の刺繍以外の部分に色移りしたりする。しかしながら、本発明の水溶性マスキング用基布は、前述のように水への溶解温度に応じてPVA系樹脂を選択でき、かつ、該PVA系水溶性支持体とPVA系水溶性フィルムを貼り合せることにより昇華性染料を保持できるため、上記の染色時あるいは溶解除去時の移染を防止することができる。従って、グラデーション等の複雑で多彩な色模様の刺繍を有し、刺繍部分の風合いも良好な刺繍布を得ることができる。
次に本発明で使用する水溶性PVA系繊維の製造方法について説明する。本発明においては、水溶性のPVA系樹脂を水あるいは有機溶剤に溶解した紡糸原液を用いて後述する方法で繊維を製造することにより、機械的物性に優れた繊維を効率的に得ることができる。もちろん、本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液中に添加剤や他のポリマーが含まれていてもかまわない。紡糸原液を構成する溶媒としては例えば水、ジメチルスルホキサイド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒、グリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類、および前記溶媒とロダン塩、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛などの膨潤性金属塩の混合物、前記有機溶媒どうしの混合物、あるいは前記有機溶媒と水との混合物などが挙げられるが、この中では水、DMSOおよびその混合物が低温溶解性、低毒性、低腐食性などの点で最も好適である。
紡糸原液中のPVA系樹脂濃度は組成、重合度、溶媒によって異なるが、8〜40質量%の範囲であることが好ましい。紡糸原液の吐出時の液温は、紡糸原液がゲル化したり分解、着色したりしない範囲であり、具体的には50〜150℃の範囲とすることが好ましい。かかる紡糸原液をノズルから吐出して湿式紡糸あるいは乾湿式紡糸を行えばよい。吐出された紡糸原液は、PVA系樹脂に対して固化能を有する固化浴により固化される。特に多孔紡糸口金を使用する場合には、吐出時の繊維同士の膠着を防止する点から乾湿式紡糸法よりも湿式紡糸法の方が好ましい。なお、湿式紡糸法とは、紡糸口金から直接固化浴に紡糸原液を吐出する方法のことであり、一方乾湿式紡糸法とは、紡糸口金から一旦、空気や不活性ガス中に紡糸原液を吐出し、それから固化浴に導入する方法のことである。
本発明において用いる固化浴は、原液溶媒が有機溶媒の場合と水の場合では異なる。有機溶媒を用いた原液の場合は、得られる繊維強度等の点から固化溶媒と原液溶媒からなる混合液を固化浴として用いることが好ましい。固化溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などのPVA系樹脂に対して固化能を有する有機溶媒が挙げられる。固化浴としては、特にメタノールとDMSOからなる混合液が好ましい。固化浴中での固化溶媒/原液溶媒の質量比は25/75〜95/5が好ましく、工程性および溶媒回収の点で55/45〜80/20がより好ましい。固化浴の温度は30℃以下が好ましく、特に均一な冷却ゲル化のためには20℃以下がより好ましく、15℃以下がさらに好ましい。一方、原液溶媒が水の場合には、固化浴を構成する固化溶媒としては、芒硝、塩化ナトリウム、炭酸ソーダなどのPVA系樹脂に対して固化能を有する無機塩類の水溶液が好適に挙げられる。固化浴は酸性、中性、アルカリ性のいずれであってもかまわない。
次に固化された糸篠から紡糸原液の溶媒を抽出除去する。抽出の際に糸篠を湿延伸することが、乾燥時の繊維間膠着を抑制するうえでも、さらに、得られる繊維の強度を高めるうえでも好ましい。湿延伸倍率としては2〜6倍であることが好ましい。抽出は、通常は複数の抽出浴を通すことにより行われる。抽出浴としては、固化溶媒単独あるいは固化溶媒と原液溶媒の混合液が用いられ、また抽出浴の温度は0〜50℃の範囲が好ましい。
次いで糸篠を乾燥して水溶性繊維を得る。このとき、必要に応じて油剤などを付与して乾燥してもよい。乾燥温度は、210℃以下が好ましく、特に乾燥初期は160℃以下の低温で乾燥し、乾燥後半は高温で乾燥する多段乾燥が好ましい。さらに乾熱延伸および必要に応じて乾熱収縮を施し、分子鎖を配向してPVA系樹脂を結晶化させ、繊維の強度を高めるのが好ましい。繊維の強度が低すぎると、例えば、不織布等の支持体を製造する場合、工程通過性が悪くなることが容易に予想されるためである。水溶性繊維の機械的性能を高めるためには、120〜250℃で1.1〜8.0倍乾熱延伸し、その強度を2.0〜15.0cN/dtexにするのが好ましい。
本発明で使用する水溶性繊維の繊度は特に限定されず、好ましくは0.1〜1000dtex、より好ましくは1〜400dtexである。繊度はノズル径や延伸倍率により適宜調整すればよい。
前記水溶性繊維から紙または不織布などの支持体を製造する方法は特に限定されず、従来公知の乾式または湿式の不織布または紙の製造方法が適用できる。例えば、乾式の不織布製造方法では、カード法やエアーレイド法などで水溶性繊維のウェブを作成し、加熱ロールによりエンボス接着あるいはカレンダー接着することで効率的に所望の不織布を製造できる。数種の水溶性繊維を混合してウェブを作成しても良いし、エンボス接着やカレンダー接着の際に、予め異なる数種の水溶性繊維から成るウェブを積層しても良い。地合斑の少ない均質な不織布が得られるので、クロスラップ法やクリスクロス法などで繊維配向をランダムにしてもよい。また、該水溶性繊維の水中溶解温度よりも低温の水を使用して、一般の湿式抄紙機を用いることにより、該水溶性繊維から所望の紙を効率的に製造することができる。用いる抄き網としては、円網、短網及び長網等が挙げられ、これらの抄き網を単独で用いて単層紙としても、また抄き網を組み合わせて複数層の抄き合せ紙としてもよい。水溶性繊維やバインダー繊維などの紙料を含むスラリーを抄き上げた後に、ヤンキー型乾燥機等で乾燥することにより所望の紙が得られる。必要に応じて熱プレス加工等を追加してもよい。
次にPVA系水溶性フィルムの製造方法について説明する。PVA系水溶性フィルムを得るための製膜原液は、前記PVA系樹脂に、可塑剤、界面活性剤および必要に応じて無機フィラーを配合し、所望の方法で混合することにより製造することができる。
一般に、水溶性フィルムは高温多湿の地域や寒冷地でも運搬、貯蔵、使用がなされるため、フィルムの強度やタフネスが要求される。特に低温での耐衝撃性が必要とされる。そのためフィルムのガラス転移点を下げるために、種々の可塑剤が用いられる。可塑剤としては、PVAの可塑剤として一般に用いられているものなら特に制限はなく、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテル類;ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのフェノール誘導体;N−メチルピロリドンなどのアミド化合物;および、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコールとエチレンオキサイドの付加物などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
可塑剤の配合割合は、PVA系樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜30質量部、より好ましくは8〜25質量部、さらに好ましくは10〜20質量部である。可塑剤の配合割合が5質量部未満の場合には、耐衝撃性が不充分である。一方、可塑剤の配合割合が30質量部を超える場合には、可塑剤のブリードアウトが大きくなり、フィルムがブロッキングし易いため好ましくない。また、得られるフィルムの腰が適度で、製袋機等の通過性が良好になるので、30質量部以下の割合で配合するのが好ましい。得られるフィルムの水溶性を向上させる点からは、可塑剤の配合量が多いほど好ましい。
前記界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性あるいはノニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸型、オクチルサルフェートなどの硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネートなどのスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好適である。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルやポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどのアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミドなどのアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などのノニオン性界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤の1種あるいは2種以上の組み合わせで使用することができる。ブロッキング防止性の点からアルキルエーテル系界面活性剤が好ましく、中でもポリオキシエチレンオレイルエーテルが特に好ましい。
界面活性剤の添加量は、PVA系樹脂100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましく、0.2〜0.5質量部がさらに好ましい。0.01質量部より少ないと、製膜したフィルムや製膜原液が製膜装置のダイスやドラムなどの金属表面から剥離し難くなり、水溶性フィルムの製造が困難となるために好ましくない。添加量が2質量部より多いとフィルム表面に溶出しブロッキングの原因になり取り扱い性が低下する場合があるため好ましくない。
前記無機フィラーとしては、例えば、シリカ、重質、軽質又は表面処理された炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ゼオライト、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、マイカ、炭酸マグネシウム、カオリン、ハロサイト、パイロフェライト、セリサイト等のクレー、タルク等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、特にPVA系樹脂への分散性の点から、シリカあるいはタルクを用いるのが好ましい。無機フィラーの粒子径は、ブロッキング防止性の点から1μm以上が好ましく、PVA系樹脂への分散性の点から10μm以下が好ましい。その両者の性能を両立させるには、粒径は1〜7μm程度であるのがより好ましい。無機フィラーを使用する場合、その配合割合は、PVA系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.005〜3.0質量部、さらに好ましくは0.01〜1.0質量部である。
また、PVA系水溶性フィルムを作成する際、必要に応じて、着色剤、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤などの通常の添加剤を適宜配合しても差し支えない。また必要に応じて、本発明の効果を失わない範囲内で、前記PVA系樹脂とは異なる種類のPVA、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を配合しても良い。
上記のPVA系樹脂、可塑剤、界面活性剤および必要に応じて無機フィラーや他の成分からなる組成物を水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、フェノールなどの溶媒に溶解して製膜原液を調製する。均一な製膜原液を得るためには、上記成分を予め全て混合した後に溶媒に溶解しても、あるいは、上記成分を別々に溶媒に溶解し、得られた溶液を混合しても構わない。上記の製膜原液を用いて、一般的な製膜方法、例えば、流延製膜法、湿式製膜法、乾式製膜法、押出製膜法、溶融製膜法などにより、PVA系水溶性フィルムを製膜することができる。
PVA系水溶性フィルムは流延製膜法により製造するのが好ましい。製膜原液がキャストされる金属表面の温度は80〜230℃が好ましい。80℃より低いと乾燥後、キャストフィルムの金属表面から剥離が不充分になり易く、また得られたフィルムがブロッキングし易くなることがあるため好ましくない。230℃より高いと製膜原液が発泡してフィルムに孔が開くことがあるため好ましくない。
水溶性支持体と水溶性フィルムとの貼りあわせ方法は特に限定されるものではなく、バインダーによる接着、熱融着、圧着などを適用できる。バインダーとしてはマスキング用基布を溶解除去する際に固形分として残存しないように水溶性バインダーであることが望ましい。しかし、バインダーによる接着は他の方法に比べて生産性に劣り、またコストも高くなることがあるので、加熱ロールによるエンボス接着あるいはカレンダー接着などの熱融着(熱圧着)や、水を不織布またはフィルム表面に噴霧した後に圧着する方法が好ましい。
熱圧着温度は特に限定されるものではないが、100〜230℃が好ましい。100℃より低いと水溶性フィルムと水溶性支持体が十分に接合されず、運搬時や刺繍を施す際に水溶性フィルムと水溶性支持体が剥離してしまい外観を損なうだけでなくマスキング性能が得られなくなる可能性がある。また、230℃より高い温度では、水溶性支持体と水溶性フィルムの結晶性が高くなり、水への溶解性が低下しマスキング用基布の溶解除去が困難になる。熱圧着圧力(線圧)は10〜100kgf/cm、処理速度は
5〜50m/分であるのが好ましい。
一方、水噴霧による接着において、水の種類、温度は特に規定されるものではない。例えば、水を噴霧して水溶性支持体や水溶性フィルムの表面の融点を低下させた後、低温(60〜200℃)の加熱ロールで熱圧着することができる。また、水溶性支持体や水溶性フィルムの水中溶解温度より高温の水を噴霧して表面の一部を溶解させた後、加熱せずに水溶性支持体や水溶性フィルムを圧着することもできる。
本発明の水溶性支持体は、地合斑が少なく均一な目付け量であることが好ましい。目付け量は、10〜300g/m2であることが好ましく、20〜100g/m2であることがより好ましい。また、水溶性フィルムは、昇華性染料が繊維の隙間を透過するのを防止するものであり、刺繍時に容易に破れないものであれば目付け量、厚みは特に限定されるものではないが、目付け量は、10〜200g/m2であることが好ましく、20〜100g/m2であることがより好ましい。刺繍時の破れを防止するためには、水溶性フィルムの強度は1.0〜50N/cmであることが好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何等限定されるものではない。なお以下の実施例において、各物性値の測定及び転写染色は下記の方法により実施した。
(1)不織布の目付(g/m2
5cm×17cmの面積に切り出した12枚の不織布の各重量を測定し、それらの平均値を面積で除して算出した。
(2)紙の坪量(g/m2
JIS P8124「紙及び板紙−坪量測定方法」に準じて測定した。
(3)水中溶解温度(℃)
水溶性繊維から得られた不織布又は紙に水溶性フィルムを貼り付けてマスキング用基布を製造した。400mlの水に、2cm平方にカットしたマスキング用基布3枚を投入し、昇温速度3℃/分、攪拌速度280rpmの条件で攪拌しながら昇温して、マスキング用基布が完全に溶解したときの温度を水中溶解温度として測定した。
(4)転写染色方法
刺繍用基布として、フェルトの布地(サンフェルトGR、サンフェルト株式会社製)、または市販の綿ブロード生地を用いた。10cm×10cmの刺繍用基布とマスキング用基布を重ねて刺繍した後、転写紙(分散染料使用の転写紙、山上縫糸株式会社仕様)を用いて200℃で20秒間熱転写し、刺繍部分を染色した。
(5)水溶性繊維の強度(cN/dtex)
水溶性繊維の強度はJIS L1015「化学繊維ステープル試験方法」に準じて測定した。
(6)水溶性フィルムの強度(N/cm)
水溶性フィルムの強度はJIS P8113「紙及び板紙の引張強さ試験方法」に準じて測定した。
実施例1
水溶性繊維として、重合度1750、ケン化度88モル%のPVAからなる、単糸繊度2.2dtex、強度5.0cN/dtexの捲縮したPVA繊維を用いて、該PVA繊維100質量部からなる目付60.8g/m2のランダムウェブ(不織布)を作成した。この不織布上に、重合度1750、ケン化度88モル%のPVAからなる、強度8N/cm、目付け量25g/m2のPVAフィルムを重ね、加熱したエンボスロールとスチールロールとの間を通過させて熱融着し、マスキング用基布を製造した。エンボス条件は、接着面積率12%、温度160℃、線圧40kgf/cm、処理速度10m/分であった。
該マスキング用基布を刺繍用基布に被覆して刺繍を施した後、転写紙を用いて刺繍部分を染色した。転写染色する間、刺繍部分以外の刺繍用基布への染料の滲み出しや移染はみられなかった。その後、40℃の温水でマスキング用基布を完全に溶解除去した。溶解除去の際に該マスキング用基布からの染料の溶出による刺繍布への移染もみられず、優れたマスキング効果が得られた。得られた刺繍布は、風合いもソフトで良好であり、刺繍部分の色彩・輪郭も鮮明であった。
実施例2
水溶性繊維として、重合度1750、ケン化度96モル%のPVAからなる、単糸繊度1.7dtex、強度5.5cN/dtexの捲縮したPVA繊維を用いて、該PVA繊維100質量部からなる目付49.6g/m2のランダムウェブ(不織布)を作成した。この不織布上に、重合度1750、ケン化度96モル%のPVAからなる、強度8N/cm、目付け量25g/m2のPVAフィルムを重ね、加熱したエンボスロールとスチールロールとの間を通過させて熱融着し、マスキング用基布を製造した。エンボス条件は、接着面積率12%、温度180℃、線圧40kgf/cm、処理速度10m/分であった。
該マスキング用基布を刺繍用基布に被覆して刺繍を施した後、転写紙を用いて刺繍部分を染色した。転写染色する間、刺繍部分以外の刺繍用基布への染料の滲み出しや移染はみられなかった。その後、75℃の温水でマスキング用基布を完全に溶解除去した。溶解除去の際に該マスキング用基布からの染料の溶出による刺繍布への移染もみられず、優れたマスキング効果が得られた。得られた刺繍布は、風合いもソフトで良好であり、刺繍部分の色彩・輪郭も鮮明なものであった。
実施例3
重合度1750、ケン化度96モル%のPVAからなる単糸繊度1.7dtex、繊維長3mmのPVA短繊維90質量部と、単糸繊度1.1dtex、繊維長3mmのバインダー繊維(ビニロンバインダー)10質量部を水に分散してスラリーを調製した。該スラリーを用いて短網―円網抄紙機にて2層抄きあわせ湿紙を得、これをヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量41.6g/m2、水中溶解温度70℃の2層紙を得た。該水溶性紙の上に重合度1750、ケン化度96モル%のPVAからなり、強度8N/cm、目付け量25g/m2のPVAフィルムを重ね、加熱したエンボスロールとスチールロールとの間を通過させて熱融着し、マスキング用基布を製造した。エンボス条件は、接着面積率12%、温度180℃、線圧40kgf/cm、処理速度10m/分であった。
該マスキング用基布を刺繍用基布に被覆して刺繍を施した後、転写紙を用いて刺繍部分を染色した。転写染色する間、刺繍部分以外の刺繍用基布への染料の移染はみられなかった。その後、75℃の温水でマスキング用基布を完全に溶解除去した。溶解除去の際に染料の溶出による刺繍布への移染もみられず、優れたマスキング効果が得られた。得られた刺繍布は、風合いもソフトで良好であり、刺繍部分の色彩・輪郭も鮮明なものであった。
比較例1
水溶性繊維として、重合度1750、ケン化度96モル%のPVAからなる、単糸繊度1.7dtex、強度5.5cN/dtexの捲縮したPVA繊維を用い、該PVA繊維100質量部からなるランダムウェブを作成した。該ランダムウェブを加熱したエンボスロールとスチールロールとの間を通過させて、目付25.5g/m2、水中溶解温度70℃の不織布を得た。エンボス条件は、接着面積率12%、温度180℃、線圧40kgf/cm、処理速度10m/分であった。該不織布のみを刺繍用基布に被覆して刺繍を施した後、転写紙を用いて刺繍部分を染色した。転写染色する間、刺繍部分以外への刺繍用基布への染料の滲み出しが確認され、不織布のみでは実用上有効なマスキング効果が得られなかった。
比較例2
市販の薄手のPVA系水溶性フィルムのみを刺繍用基布に被覆して刺繍を施した後、転写紙を用いて刺繍部分を染色した。転写染色する間、刺繍のミシン目から刺繍用基布への移染がみられ、刺繍部分の輪郭がぼやけた。その後、80℃の温水で水溶性フィルムを完全に溶解除去した。溶解除去の際に、染料の溶出による刺繍用基布への移染はなかったが、得られた刺繍布の刺繍柄は不明瞭であり、商品価値が著しく劣るものであった。
比較例3
市販の厚手の模造紙を刺繍用基布に被覆して刺繍を施した後、転写紙を用いて刺繍部分を染色した。転写染色する間、刺繍のミシン目から刺繍用基布への移染はみられなかった。その後、温水で模造紙を部分的に水解除去したが、刺繍部分の下部に残存する模造紙は大部分除去することができなかった。得られた刺繍布は部分的に風合いが硬く、残存する離解した繊維の一部が刺繍目から外側にはみ出し、商品価値が著しく劣るものであった。
本発明のマスキング用基布は、水溶性支持体と水溶性フィルムを貼り合せた複合シートであるので、転写染色時に熱源に付着せず、作業性に優れる。該マスキング用基布を用いることにより、転写染色時のミシン目から刺繍部分周囲への染料の移染が防止され、複雑な色模様であっても刺繍部分の色彩が鮮明な刺繍布が得られる。また、該マスキング用基布は水への溶解により容易、かつ、ほぼ完全に除去できるので、風合い・ソフト感の良好な刺繍布を得ることができる。本発明のマスキング用基布を用いて得られた刺繍布は、帽子・鞄等の装身具や靴下・Tシャツ・肌着等の衣料のワンポイント、その他の広範な用途に適用できる。


Claims (6)

  1. 水溶性繊維からなる支持体と水溶性フィルムを貼り合せた複合シートであり、刺繍部分を転写により後染色する方法において、刺繍部分以外への染料の移染を防止するために使用される水溶性マスキング用基布。
  2. 前記水溶性繊維がポリビニルアルコール系繊維である請求項1記載のマスキング用基布。
  3. 前記水溶性フィルムがポリビニルアルコール系フィルムである請求項1または2に記載のマスキング用基布。
  4. 前記水溶性繊維からなる支持体の目付が10g/m2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマスキング用基布。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のマスキング用基布を該支持体を介して刺繍用基布に重ねる工程、
    該マスキング用基布と該刺繍用基布を重ねたまま刺繍を施す工程、
    熱転写または感圧転写により刺繍部分を後染色する工程、および
    該マスキング用基布を水に溶解し除去する工程
    を含む刺繍布の製造方法。
  6. 請求項5記載の製造方法により得られる刺繍布。

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