JPWO2006101201A1 - 目的物質を効率的に核内に送達可能なリポソーム - Google Patents

目的物質を効率的に核内に送達可能なリポソーム Download PDF

Info

Publication number
JPWO2006101201A1
JPWO2006101201A1 JP2007509350A JP2007509350A JPWO2006101201A1 JP WO2006101201 A1 JPWO2006101201 A1 JP WO2006101201A1 JP 2007509350 A JP2007509350 A JP 2007509350A JP 2007509350 A JP2007509350 A JP 2007509350A JP WO2006101201 A1 JPWO2006101201 A1 JP WO2006101201A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
membrane
lipid
lipid membrane
liposome
nucleus
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2007509350A
Other languages
English (en)
Inventor
健太朗 小暮
健太朗 小暮
孝司 中村
孝司 中村
英万 秋田
英万 秋田
原島 秀吉
秀吉 原島
史朗 二木
史朗 二木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hokkaido University NUC
Kyoto University
Shionogi and Co Ltd
Original Assignee
Hokkaido University NUC
Kyoto University
Shionogi and Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hokkaido University NUC, Kyoto University, Shionogi and Co Ltd filed Critical Hokkaido University NUC
Publication of JPWO2006101201A1 publication Critical patent/JPWO2006101201A1/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/87Introduction of foreign genetic material using processes not otherwise provided for, e.g. co-transformation
    • C12N15/88Introduction of foreign genetic material using processes not otherwise provided for, e.g. co-transformation using microencapsulation, e.g. using amphiphile liposome vesicle
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K48/00Medicinal preparations containing genetic material which is inserted into cells of the living body to treat genetic diseases; Gene therapy

Abstract

標的細胞が樹状細胞等の非分裂性細胞である場合であっても、目的物質を標的細胞の核内に効率よく送達することができる非ウイルス性ベクターを提供することを目的とし、この目的を達成するために、本発明は、外側から順に第1の脂質膜及び第2の脂質膜を有する2枚膜リポソームであって、前記第1の脂質膜が膜融合能を有し、前記第2の脂質膜がその表面に核移行性ペプチドを有する前記2枚膜リポソームを提供する。

Description

本発明は、非ウイルス性ベクター、特にリポソームに関する。
近年、薬物、核酸、ペプチド、タンパク質、糖等の目的物質を標的部位に確実に送達するためのベクターの開発が盛んに行われている。例えば、目的の遺伝子を標的細胞へ導入するためのベクターとして、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス等のウイルス性ベクターが開発されている。しかしながら、ウイルス性ベクターは、大量生産の困難性、抗原性、毒性等の問題があるため、このような問題点が少ない非ウイルス性ベクター(例えば、リポソームベクター)が注目を集めており、目的物質の細胞内送達効率を向上させるために、様々な機能性分子が導入された非ウイルス性ベクターの開発が盛んに行われている。
例えば、リポソーム膜の外表面に親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール)が導入されたリポソームが開発されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4参照)。このリポソームによれば、リポソームの血中滞留性を向上させることにより、腫瘍細胞に対するリポソームの指向性を向上させることができる。
また、リポソーム膜の外表面に、細胞膜の表面上に存在する受容体又は抗原と結合できる物質(例えば、トラスフェリン、インシュリン、葉酸、ヒアルロン酸、抗体又はその断片、糖鎖)が導入されたリポソームが開発されている(特許文献3及び特許文献4参照)。このリポソームによれば、リポソームのエンドサイトーシス効率を向上させることができる。
また、リポソーム膜の外表面にステアリル化オクタアルギニンが導入されたリポソームが開発されている(非特許文献1)。このリポソームによれば、リポソームに封入された目的物質の細胞内送達効率を向上させることができる。
特開平1−249717号公報 特開平2−149512号公報 特開平4−346918号公報 特開2004−10481号公報 Kogure,K.等.,「Journal of Controlled Release」,2004年,第98巻,p.317−323
本発明者は、従来の非ウイルス性ベクターを使用した目的物質の標的細胞内へのデリバリーシステムにおいて、標的細胞が樹状細胞等の非分裂性細胞である場合、標的細胞が分裂性細胞である場合と比較して、目的物質の核内送達効率(目的物質が核酸である場合には核酸の細胞内発現効率)が著しく低下することを見出した(参考例1参照)。
そこで、本発明は、標的細胞が樹状細胞等の非分裂性細胞である場合であっても、目的物質を標的細胞の核内に効率よく送達することができる非ウイルス性ベクターを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、下記(1)〜(11)の2枚膜リポソームを提供する。
(1)外側から順に第1の脂質膜及び第2の脂質膜を有する2枚膜リポソームであって、前記第1の脂質膜が膜融合能を有し、前記第2の脂質膜がその表面に核移行性ペプチドを有する前記2枚膜リポソーム。
(2)前記第1の脂質膜がその構成成分として膜融合性脂質を含有する前記(1)記載の2枚膜リポソーム。
(3)前記第1の脂質膜に含有される膜融合性脂質量が、前記第1の脂質膜に含有される総脂質量の50%(モル比)以上である前記(2)記載の2枚膜リポソーム。
(4)前記第1の脂質膜に含有される膜融合性脂質のうち、アニオン性脂質の割合が5〜50%(モル比)である前記(2)又は(3)記載の2枚膜リポソーム。
(5)標的細胞の核内に送達すべき目的物質が、前記第2の脂質膜の内側に封入されている前記(1)〜(4)のいずれかに記載の2枚膜リポソーム。
(6)前記目的物質を前記標的細胞の核内に送達するためのベクターである前記(5)記載の2枚膜リポソーム。
(7)前記標的細胞が非分裂性細胞である前記(6)記載の2枚膜リポソーム。
(8)脂質膜の構成成分として膜融合性脂質を含有し、脂質膜の表面に核移行性ペプチドを有する複数の負帯電性SUV型リポソームを正帯電性粒子に接触させ、正帯電性粒子に静電的に結合した負帯電性SUV型リポソーム同士を膜融合させることにより得られる前記(1)〜(7)のいずれかに記載の2枚膜リポソーム。
(9)前記正帯電性粒子が、標的細胞の核内に送達すべき目的物質の凝集体である前記(8)記載の2枚膜リポソーム。
(10)脂質膜の構成成分として膜融合性脂質を含有し、脂質膜の表面に核移行性ペプチドを有する複数の正帯電性SUV型リポソームを負帯電性粒子に接触させ、負帯電性粒子に静電的に結合した正帯電性SUV型リポソーム同士を膜融合させることにより得られる前記(1)〜(7)のいずれかに記載の2枚膜リポソーム。
(11)前記負帯電性粒子が、標的細胞の核内に送達すべき目的物質の凝集体である前記(10)記載の2枚膜リポソーム。
本発明により、標的細胞が樹状細胞等の非分裂性細胞である場合であっても、目的物質を標的細胞の核内に効率よく送達することができる2枚膜リポソームが提供される。
ルシフェラーゼ遺伝子発現活性(RLU/mgタンパク質)の測定結果を示す図である。 共焦点レーザー顕微鏡観察結果を示す図である。 共焦点レーザー顕微鏡観察結果を示す図である。 (a)は、各フラクションにおけるDNA含量の測定結果を示す図であり、(b)は、各フラクションにおけるローダミン含量の測定結果を示す図である。 (a)は、本発明の2枚膜リポソームの電子顕微鏡観察結果を示す図であり、(b)は、本発明の2枚膜リポソームの模式図である。 CTL活性の測定結果を示す図である。 ルシフェラーゼ遺伝子発現活性(RLU/mgタンパク質)の測定結果を示す図である。 共焦点レーザー顕微鏡観察結果を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリポソームは、外側から順に第1の脂質膜及び第2の脂質膜を有する2枚膜リポソームである。
本発明のリポソームのサイズは特に限定されるものではないが、通常は直径50〜500nm、好ましくは直径100〜300nm、さらに好ましくは直径100〜200nmである。
本発明のリポソームにおいて、第1及び第2の脂質膜はそれぞれ脂質二重層構造を有する。第1及び第2の脂質膜の構成成分は、脂質二重層構造の形成を阻害しない限り特に限定されるものではなく、例えば、脂質、膜安定化剤、抗酸化剤、荷電物質、膜タンパク質等が挙げられる。
脂質は脂質膜の必須の構成成分であり、各脂質膜に含有される脂質量は、各脂質膜に含有される総物質量の通常30〜100%(モル比)、好ましくは50〜100%(モル比)、さらに好ましくは70〜100%(モル比)である。
脂質としては、例えば、リン脂質、糖脂質、ステロール、飽和又は不飽和の脂肪酸等が挙げられる。
リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジグリセロール等)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジエタノールアミン等)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、これらの水素添加物等が挙げられる。
糖脂質としては、例えば、グリセロ糖脂質(例えば、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド)、スフィンゴ糖脂質(例えば、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド)等が挙げられる。
ステロールとしては、例えば、動物由来のステロール(例えば、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール)、植物由来のステロール(フィトステロール)(例えば、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール)、微生物由来のステロール(例えば、チモステロール、エルゴステロール)等が挙げられる。
飽和又は不飽和の脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸等の炭素数12〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸が挙げられる。
脂質は、中性脂質、カチオン性脂質(塩基性脂質)及びアニオン性脂質(酸性脂質)に分類され、中性脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、コレステロール、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、セレブロシド等が挙げられ、カチオン性脂質としては、例えば、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(dioctadecyldimethylammonium chloride:DODAC)、N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム(N−(2,3−dioleyloxy)propyl−N,N,N−trimethylammonium:DOTMA)、ジドデシルアンモニウムブロミド(didodecylammonium bromide:DDAB)、1,2−ジオレオイルオキシ−3−トリメチルアンモニオプロパン(1,2−dioleoyloxy−3−trimethylammonio propane:DOTAP)、3β−N−(N’,N’,−ジメチル−アミノエタン)−カルバモルコレステロール(3β−N−(N’,N’,−dimethyl−aminoethane)−carbamol cholesterol:DC−Chol)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロオキシエチルアンモニウム(1,2−dimyristoyloxypropyl−3−dimethylhydroxyethyl ammonium:DMRIE)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミネカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパナミウムトリフルオロアセテート(2,3−dioleyloxy−N−[2(sperminecarboxamido)ethyl]−N,N−dimethyl−1−propanaminum trifluoroacetate:DOSPA)等が挙げられ、アニオン性脂質としては、例えば、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン(N−スクシニルPE)、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエチレングリコール、コレステロールコハク酸等が挙げられる。
膜安定化剤は、脂質膜を物理的又は化学的に安定させたり、脂質膜の流動性を調節したりするために含有させることができる、脂質膜の任意の構成成分であり、各脂質膜に含有される膜安定化剤量は、各脂質膜に含有される総物質量の通常10〜50%(モル比)、好ましくは20〜50%(モル比)、さらに好ましくは30〜50%(モル比)である。
膜安定化剤としては、例えば、ステロール、グリセリン又はその脂肪酸エステル等が挙げられる。ステロールとしては、上記と同様の具体例が挙げられ、グリセリンの脂肪酸エステルとしては、例えば、トリオレイン、トリオクタノイン等が挙げられる。
抗酸化剤は、脂質膜の酸化を防止するために含有させることができる、脂質膜の任意の構成成分であり、各脂質膜に含有される抗酸化剤量は、各脂質膜に含有される総物質量の通常5〜30%(モル比)、好ましくは10〜30%(モル比)、さらに好ましくは20〜30%(モル比)である。
抗酸化剤としては、例えば、トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエン等が挙げられる。
荷電物質は、脂質膜に正荷電又は負荷電を付与するために含有させることができる、脂質膜の任意の構成成分であり、各脂質膜に含有される荷電物質量は、各脂質膜に含有される総物質量の通常5〜30%(モル比)、好ましくは10〜20%(モル比)、さらに好ましくは10〜15%(モル比)である。
正荷電を付与する荷電物質としては、例えば、ステアリルアミン、オレイルアミン等の飽和又は不飽和脂肪族アミン;ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン等の飽和又は不飽和カチオン性合成脂質等が挙げられ、負電荷を付与する荷電物質としては、例えば、ジセチルホスフェート、コレステリルヘミスクシネート、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等が挙げられる。
膜タンパク質は、脂質膜の構造を維持したり、脂質膜に機能性を付与したりするために含有させることができる、脂質膜の任意の構成成分であり、各脂質膜に含有される膜タンパク質量は、各脂質膜に含有される総物質量の通常0.1〜2%(モル比)、好ましくは0.5〜2%(モル比)、さらに好ましくは1〜2%(モル比)である。
膜タンパク質としては、例えば、膜表在性タンパク質、膜内在性タンパク質等が挙げられる。
本発明のリポソームにおいて、第1の脂質膜は膜融合能を有する。
第1の脂質膜が膜融合可能な脂質膜は、脂質二重層構造を有する限り特に限定されるものではない。第1の脂質膜が膜融合可能な脂質膜としては、例えば、細胞膜、エンドソーム膜等の生体膜が挙げられる。
第1の脂質膜に膜融合能を付与する方法は特に限定されるものではない。
例えば、第1の脂質膜に、その構成成分として膜融合性脂質を含有させることにより、第1の脂質膜に膜融合能を付与することができる。膜融合性脂質としては、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン等の中性脂質;コレステロールコハク酸、カルジオリピン等のアニオン性脂質(酸性脂質);ジアルキルアンモニウムブロミド等のカチオン性脂質(塩基性脂質)が挙げられる。
中性脂質が膜融合能を発揮できるpHは、通常6.0〜7.5、好ましくは6.0〜7.0であり、アニオン性脂質が膜融合能を発揮できるpHは、通常5.0〜6.5、好ましくは5.5〜6.0であり、カチオン性脂質が膜融合能を発揮できるpHは、通常7.5〜8.5、好ましくは8.0〜8.5である。酸性環境下に置かれると膜融合能を発揮できるアニオン性脂質及びアルカリ性環境下に置かれると膜融合能を発揮できるカチオン性脂質は、pH感受性脂質とも呼ばれる。
第1の脂質膜に含有される膜融合性脂質量は、第1の脂質膜に膜融合能を付与できる限り特に限定されるものではない。第1の脂質膜に含有される膜融合性脂質量は、第1の脂質膜に含有される総脂質量の通常50〜100%(モル比)、好ましくは60〜100%(モル比)、さらに好ましくは70〜100%(モル比)である。第1の脂質膜に含有される膜融合性脂質量が上記範囲にあると、第1の脂質膜は細胞膜、エンドソーム膜等の生体膜と効率よく膜融合することができるので、本発明のリポソームを細胞内に効率よく導入することができる。
第1の脂質膜に含有される膜融合性脂質のうち、アニオン性脂質の割合が5〜50%(モル比)であることが好ましく、10〜30%(モル比)であることがさらに好ましい。アニオン性脂質の割合が上記範囲にあると、本発明のリポソームが酸性環境下に置かれたときに、第1の脂質膜が細胞膜、エンドソーム膜等の生体膜と効率よく膜融合することができる。第1の脂質膜に含有されるアニオン性脂質以外の膜融合性脂質は、中性脂質及びカチオン性脂質のうちのいずれか一方であってもよいし両方であってもよい。
また、第1の脂質膜表面を膜融合性分子で修飾することにより、第1の脂質膜に膜融合能を付与することができる。第1の脂質膜表面を修飾する膜融合性分子としては、例えば、スクシニル化ポリグリシドール、膜融合性ペプチド(例えば、H2ペプチド、GM225.1)等が挙げられる。
第1の脂質膜には、その構成成分として、血中滞留性機能、温度変化感受性機能等を有する脂質又は脂質誘導体を含有させてもよい。これにより、上記機能のうち1種又は2種以上の機能を本発明のリポソームに付与することができる。本発明のリポソームに血中滞留性機能を付与することにより、本発明のリポソームの血液中での滞留性を向上させ、肝臓、脾臓等の細網内皮系組織による捕捉率を低下させることができる。また、本発明のリポソームに温度変化感受性機能を付与することにより、本発明のリポソームに封入された目的物質の放出性を高めることができる。
血中滞留性機能を付与することができる血中滞留性脂質又は脂質誘導体としては、例えば、グリコフォリン、ガングリオシドGM1、ホスファチジルイノシトール、ガングリオシドGM3、グルクロン酸誘導体、グルタミン酸誘導体、ポリグリセリンリン脂質誘導体、N−{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000}−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン、N−{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−5000}−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン、N−{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−750}−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン、N−{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000}−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン、N−{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−5000}−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン等のポリエチレングリコール誘導体等が挙げられ、温度変化感受性機能を付与することができる温度変化感受性脂質又は脂質誘導体としては、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン等が挙げられる。
本発明のリポソームにおいて、第2の脂質膜は、その表面に核移行性ペプチドを有する。
核移行性ペプチドは、細胞質から核内への移行能を有する限り特に限定されるものではなく、例えば、核移行シグナルを有するペプチド等が挙げられる。核移行シグナルは、核内に選択的に輸送されるタンパク質又はペプチドが有する特異的なアミノ酸配列であり、例えば、シミアンウイルス40由来核移行シグナル(SV40−NLS)(配列番号2)、アデノウイルス由来コアペプチドmu(配列番号3)、シミアンウイルス40のラージT(Large T)抗原由来核移行シグナル(配列番号4)、これらの繰り返し配列(例えば、配列番号1(シミアンウイルス40のラージT抗原由来核移行シグナルの繰り返し配列))等が挙げられる。核移行性ペプチドは、核移行シグナルを有する天然型のペプチドであってもよいし、核移行シグナルを融合させた変異型のペプチドであってもよい。核移行性ペプチドを構成するアミノ酸残基の総数は特に限定されるものではないが、通常5〜30個、好ましくは5〜25個、さらに好ましくは5〜20個である。
第2の脂質膜表面に存在する核移行性ペプチド量は特に限定されるものではないが、第2の脂質膜に含有される総物質量の通常1〜5%(モル比)、好ましくは1〜3%(モル比)、さらに好ましくは1〜2%(モル比)である。第2の脂質膜表面に存在する核移行性ペプチド量が上記範囲にあると、本発明のリポソームに封入された目的物質を効率よく核内に送達することができる。
核移行性ペプチドは第2の脂質膜の外表面に存在する限り、第2の脂質膜の内表面に存在していてもよい。なお、第2の脂質膜の表面のうち、第1の脂質膜側の表面が外表面であり、それと反対側の表面が内表面である。また、核移行性ペプチドは第1の脂質膜の外表面及び/又は内表面に存在していてもよい。
第2の脂質膜表面における核移行性ペプチドの存在態様としては、例えば、核移行性ペプチドが脂質膜の構成成分となり得る官能基又は化合物(例えば、疎水性基、疎水性化合物等)で修飾されており、当該官能基又は化合物が第2の脂質膜内に挿入され、核移行性ペプチドが第2の脂質膜から露出した態様が挙げられる。この態様において、核移行性ペプチドが細胞質から核内への移行能を発揮できる限り、核移行性ペプチドの全体が第2の脂質膜から露出していてもよいし、核移行性ペプチドの一部が第2の脂質膜から露出していてもよい。
核移行性ペプチドを修飾する、脂質膜の構成成分となり得る官能基又は化合物は特に限定されるものではなく、例えば、ステアリル基等の飽和又は不飽和の脂肪酸基;コレステロール基又はその誘導体;リン脂質、糖脂質又はステロール;長鎖脂肪族アルコール(例えば、ホスファチジルエタノールアミン、コレステロール等);ポリオキシプロピレンアルキル;グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられるが、これらのうち特に、炭素数10〜20の脂肪酸基(例えば、パルミトイル基、オレイル基、ステアリル基、アラキドイル基等)が好ましい。
本発明のリポソームの作製方法は特に限定されるものではないが、例えば、脂質膜の構成成分として膜融合性脂質を含有し、脂質膜の表面に核移行性ペプチドを有する複数の負帯電性SUV型リポソームを正帯電性粒子に接触させ、正帯電性粒子に静電的に結合した負帯電性SUV型リポソーム同士を膜融合させることにより、本発明のリポソームを作製することができる。また、脂質膜の構成成分として膜融合性脂質を含有し、脂質膜の表面に核移行性ペプチドを有する複数の正帯電性SUV型リポソームを負帯電性粒子に接触させ、負帯電性粒子に静電的に結合した正帯電性SUV型リポソーム同士を膜融合させることにより、本発明のリポソームを作製することができる。
正帯電性粒子のゼータ電位は正である限り特に限定されるものではないが、通常10〜60mV、好ましくは20〜50mV、さらに好ましくは20〜40mVである。負帯電性粒子のゼータ電位は負である限り特に限定されるものではないが、通常−10〜−60mV、好ましくは−20〜−50mV、さらに好ましくは−20〜−40mVである。正帯電性粒子及び負帯電性粒子のゼータ電位が上記範囲にあると、本発明のリポソームを効率よく作製することができる。なお、ゼータ電位の測定条件は特に限定されるものはないが、温度条件は通常25℃である。
正帯電性粒子及び負帯電性粒子の粒径は特に限定されるものではないが、粒径の下限値は、好ましくは50nm、さらに好ましくは70nmであり、粒径の上限値は、好ましくは500nm、さらに好ましくは200nmである。正帯電性粒子及び負帯電性粒子の粒径が上記範囲にあると、本発明のリポソームを効率よく作製することができる。
正帯電性粒子は、全体として正に帯電する限り、カチオン性物質に加え、中性物質及び/又はアニオン性物質を含んでいてもよい。負帯電性粒子は、全体として負に帯電する限り、アニオン性物質に加え、中性物質及び/又はカチオン性物質を含んでいてもよい。
正帯電性又は負帯電性粒子としては、例えば、標的細胞の核内に送達すべき目的物質の凝集体を使用することができる。正帯電性又は負帯電性粒子として目的物質の凝集体を使用すれば、第2の脂質膜の内側に目的物質が封入された2枚膜リポソームを作製することができる。目的物質の凝集体は、目的物質のみから構成されていてもよいし、目的物質以外の物質(例えば、目的物質を保持する担体)を含んでいてもよい。
目的物質が正に帯電している場合、例えば、目的物質とアニオン性物質とを静電的に結合させて複合体化することにより、目的物質の凝集体を調製することができる。目的物質が負に帯電している場合、例えば、目的物質とカチオン性物質とを静電的に結合させて複合体化することにより、目的物質の凝集体を調製することができる。目的物質が負及び正のいずれにも帯電していない場合、目的物質とカチオン性物質とを適当な様式(例えば、物理的吸着、疎水結合、化学結合等)で結合させて複合体化することにより、目的物質の凝集体を調製することができる。複合体化の際、目的物質とカチオン性物質又はアニオン性物質との混合比率を調整することにより、全体として正又は負に帯電する目的物質の凝集体を調製することができる。
目的物質は特に限定されるものではなく、例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、薬物、糖、これらの複合体等が挙げられる。なお、「核酸」には、DNA又はRNAに加え、これらの類似体又は誘導体(例えば、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエートDNA等)が含まれる。また、核酸は一本鎖又は二本鎖のいずれであってもよいし、線状又は環状のいずれであってもよい。
目的物質が核酸である場合、核酸とカチオン性物質と静電的に結合させて複合体化することにより、核酸の凝集体を調製することができる。複合体化の際、核酸とカチオン性物質との混合比率を調整することにより、全体として正又は負に帯電する核酸の凝集体を調製することができる。
目的物質の凝集体を調製する際に使用するカチオン性物質は、分子中にカチオン性基を有する物質である限り特に限定されるものではない。カチオン性物質としては、例えば、カチオン性脂質(例えば、Lipofectamine(Invitrogen社製));カチオン性基を有する高分子;ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンの共重合体等の塩基性アミノ酸の単独重合体若しくは共重合体又はこれらの誘導体(例えばステアリル化誘導体);ポリエチレンイミン、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、グルコサミン等のポリカチオン性ポリマー;プロタミン又はその誘導体(例えば硫酸プロタミン)等が挙げられるが、この中でも特にプロタミン又はその誘導体が好ましい。プロタミン又はその誘導体を使用して調製した目的物質の凝集体は非常に柔らかな構造を有しているため、目的物質の凝集体は核膜孔を効率よく通過することができる。カチオン性物質が有するカチオン性基の数は特に限定されるものではないが、好ましくは2個以上である。カチオン性基は正に荷電し得る限り特に限定されるものではなく、例えば、アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基等のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;イミノ基;グアニジノ基等が挙げられる。
目的物質の凝集体を調製する際に使用するアニオン性物質は、分子中にアニオン性基を有する物質である限り特に限定されるものではない。アニオン性物質としては、例えば、アニオン性脂質;アニオン性基を有する高分子;ポリアスパラギン酸等の酸性アミノ酸の単独重合体若しくは共重合体又はこれらの誘導体;キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースポリスチレンスルホン酸塩、ポリサッカライド、カラギーナン等のポリアニオン性ポリマー等を使用することができる。アニオン性物質が有するアニオン性基の数は特に限定されるものではないが、好ましくは2個以上である。アニオン性基は負に荷電し得る限り特に限定されるものではなく、例えば、末端カルボキシル基を有する官能基(例えば、コハク酸残基、マロン酸残基等)、リン酸基、硫酸基等が挙げられる。
SUV(small unilamellar vesicle)型リポソームは、粒径(直径)が100nm以下である1枚膜リポソームである。SUV型リポソームの粒径(直径)は100nm以下である限り特に限定されるものではないが、通常30〜100nm、好ましくは30〜80nm、さらに好ましくは30〜60nmである。
多重膜リポソーム(MLV)、SUV以外の1枚膜リポソーム(例えばLUV(large unilamellar vesicle)、GUV(giant unilamellar vesicle)等)は、粒子径が100nm以上であるため(一般的に100nm以上の粒子径を有する脂質膜は平面膜として考えられる)、脂質膜の曲率及び表面エネルギーが小さく、リポソーム同士の凝集が生じ難い。これに対して、SUV型リポソームは、粒子径が100nm未満であるため、脂質膜の曲率及び表面エネルギーが大きく、リポソーム同士の凝集が生じ易い。したがって、脂質膜の構成成分として膜融合性脂質を含有するSUV型リポソーム同士は効率よく膜融合することができる。
脂質膜の構成成分として膜融合性脂質を含有し、脂質膜の表面に核移行性ペプチドを有するSUV型リポソームは、例えば、次のようにして作製することができる。脂質膜の構成成分(膜融合性脂質を含む)と、脂質膜の構成成分となり得る官能基又は化合物で修飾された核移行性ペプチドとを有機溶剤に溶解した後、有機溶剤を蒸発除去することにより脂質膜を得る。この際、有機溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール等の低級アルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン等のケトン類等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。次いで、脂質膜を水和させ、攪拌又は超音波槽を用いた超音波処理により多重膜リポソームを作製する。次いで、多重膜リポソームをさらにプローブ型超音波装置によって超音波処理し、小さい1枚膜リポソームであるSUV型リポソームを調製する。こうして、脂質膜の構成成分となり得る官能基又は化合物が脂質膜内に挿入され、核移行性ペプチドが脂質膜表面から露出したSUV型リポソームを作製することができる。
また、脂質膜の表面に核移行性ペプチドを有しないSUV型リポソームを作製した後、その外液に、脂質膜の構成成分となり得る官能基又は化合物で修飾された核移行性ペプチドを添加することにより、脂質膜の構成成分となり得る官能基又は化合物が脂質膜内に挿入され、核移行性ペプチドが脂質膜表面から露出したSUV型リポソームを作製することができる。
正帯電性SUV型リポソームの脂質膜構成成分の種類及び量は、SUV型リポソームが全体として正に帯電するように調節され、負帯電性SUV型リポソームの脂質膜構成成分の種類及び量は、SUV型リポソームが全体として負に帯電するように調節される。正の電荷を付与する脂質膜構成成分としては、例えば、カチオン性脂質、カチオン性膜安定化剤等が挙げられ、負の電荷を付与する脂質膜構成成分としては、アニオン性脂質、アニオン性膜安定化剤等が挙げられる。正帯電性SUV型リポソームは、全体として正に帯電する限り、正の電荷を付与する脂質膜構成成分に加え、負の電荷を付与する脂質膜構成成分及び/又は中性の脂質膜構成成分を含んでいてもよく、負帯電性SUV型リポソームは、全体として負に帯電する限り、負の電荷を付与する脂質膜構成成分に加え、正の電荷を付与する脂質膜構成成分及び/又は中性の脂質膜構成成分を含んでいてもよい。正帯電性SUV型リポソームが正の電荷を付与する脂質膜構成成分としてカチオン性脂質を含む場合、カチオン性脂質の含有量は総脂質量の通常5〜30%(モル比)、好ましくは10〜25%(モル比)、さらに好ましくは10〜20%(モル比)である。負帯電性SUV型リポソームが負の電荷を付与する脂質膜構成成分としてアニオン性脂質を含む場合、アニオン性脂質の含有量は総脂質量の通常5〜30%(モル比)、好ましくは10〜25%(モル比)、さらに好ましくは10〜20%(モル比)である。
SUV型リポソームにおいて脂質膜に含有される膜融合性脂質の種類及び量は、本発明のリポソームにおいて第2の脂質膜に含有される膜融合性脂質の種類及び量と同様である。SUV型リポソームにおいて脂質膜表面に存在する核移行シグナルの種類及び量は、本発明のリポソームにおいて第2の脂質膜表面に存在する核移行シグナルの種類及び量と同様である。
正帯電性SUV型リポソームのゼータ電位は正である限り特に限定されるものではないが、通常10〜60mV、好ましくは20〜50mV、さらに好ましくは20〜30mVであり、負帯電性SUV型リポソームのゼータ電位は負である限り特に限定されるものではないが、通常−10〜−60mV、好ましくは−20〜−50mV、さらに好ましくは−20〜−30mVである。正帯電性SUV型リポソーム及び負帯電性SUV型リポソームのゼータ電位が上記範囲にあると、本発明のリポソームを効率よく作製することができる。なお、ゼータ電位の測定条件は特に限定されるものはないが、温度条件は通常25℃である。
正帯電性又は負帯電性粒子にそれぞれ負帯電性又は正帯電性SUV型リポソームを接触させる条件は特に限定されるものではないが、温度は通常10〜40℃、好ましくは20〜30℃であり、pHは通常6.5〜8.0、好ましくは7.0〜7.5であり、時間は通常1〜20分間、好ましくは5〜10分間である。接触させる際に用いる溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、HEPES緩衝液、生理食塩水、ショ糖溶液等を用いることができる。溶媒中に分散させる負帯電性又は正帯電性SUV型リポソームの量は、通常、正帯電性又は負帯電性粒子に対して過剰量であり、例えば、正帯電性又は負帯電性粒子の封入に理論上最低限必要な負帯電性又は正帯電性SUV型リポソーム量の2〜4倍量である。
正帯電性粒子に負帯電性SUV型リポソームを接触させると、負帯電性SUV型リポソームが正帯電性粒子に静電的に結合し、正帯電性粒子に静電的に結合した負帯電性SUV型リポソーム同士が膜融合し、正帯電性粒子が2枚の脂質膜で被覆される。また、負帯電性粒子に正帯電性SUV型リポソームを接触させると、正帯電性SUV型リポソームが負帯電性粒子に静電的に結合し、負帯電性粒子に静電的に結合した正帯電性SUV型リポソーム同士が膜融合し、負帯電性粒子が2枚の脂質膜で被覆される。これにより、正帯電性又は負帯電性粒子の外側には、正帯電性又は負帯電性粒子を被覆する2枚の脂質膜が形成され、本発明のリポソームが作製される。こうして作製された本発明のリポソームにおいて、第1及び第2の脂質膜は、その構成成分として膜融合性脂質を含有し、その表面に核移行シグナルを有する。正帯電性又は負帯電性粒子として目的物質の凝集体を使用した場合、目的物質の凝集体が第2の脂質膜の内側に封入された2枚膜リポソームが作製される。
負帯電性SUV型リポソームの脂質膜に含有される膜融合性脂質のうち、中性脂質の割合が50%(モル比)以上、好ましくは70%(モル比)以上であると、正帯電性粒子に負帯電性SUV型リポソームを接触させた後、正帯電性粒子に静電的に結合した負帯電性SUV型リポソーム同士の膜融合を迅速かつ効率よく誘起させることができる。正帯電性SUV型リポソームについても同様である。
第2の脂質膜の内側に目的物質が封入された2枚膜リポソームは、目的物質を標的細胞の核内に送達するためのベクターとして使用することができる。
標的細胞は、分裂性細胞及び非分裂性細胞のいずれであってもよいが、第2の脂質膜の内側に目的物質が封入された2枚膜リポソームは、標的細胞が非分裂性細胞である場合に特に有用である。分裂性細胞としては、例えば、NIH3T3細胞、HeLa細胞、COS7細胞等が挙げられ、非分裂性細胞としては、例えば、樹状細胞、脳神経細胞等が挙げられる。
本発明のリポソームは、エンドサイトーシスを介して標的細胞内に移行することができる。エンドサイトーシスを介して標的細胞内に移行した本発明のリポソームは、エンドソーム内に取り込まれるが、エンドソーム膜と第1の脂質膜とが膜融合することにより、エンドソームから脱出することができる。第1の脂質膜に含有される膜融合性脂質のうち、アニオン性脂質の割合が5〜50%(モル比)である場合、エンドソーム内が酸性(pH5.5〜6.5)に変化することにより、第1の脂質膜とエンドソーム膜とは効率よく膜融合することができる。エンドソームから脱出したリポソームにおいて、第1の脂質膜は消失しているが、第2の脂質膜は保持されている。エンドソームから脱出したリポソームが第2の脂質膜表面に有する核移行性ペプチドは、インポーチンα,βとともに核膜孔ターゲッティング複合体を形成し、核内に運搬される。この際、第2の脂質膜が壊れて、第2の脂質膜の内側に封入されていた目的物質は放出され、核内に送達される。第2の脂質膜の内側に目的物質の凝集体が封入されている場合、目的物質の核内送達効率は向上する。プロタミン又はその誘導体を使用して調製された目的物質の凝集体が封入されている場合、目的物質の凝集体は核膜孔を効率よく通過することができるので、目的物質の核内送達効率は特に向上する。
また、本発明のリポソームは、第1の脂質膜と細胞膜との膜融合を介して標的細胞内に移行することができる。第1の脂質膜に含有される膜融合性脂質のうち、アニオン性脂質の割合が5〜50%(モル比)である場合、酸性条件下で本発明のリポソームと標的細胞とを接触させることにより、第1の脂質膜と細胞膜とは効率よく膜融合することができる。標的細胞内に移行したリポソームにおいて、第1の脂質膜は消失しているが、第2の脂質膜は保持されている。標的細胞内に移行したリポソームが第2の脂質膜表面に有する核移行性ペプチドは、インポーチンα,βとともに核膜孔ターゲッティング複合体を形成し、核内に運搬される。これに伴って、第2の脂質膜が壊れ、第2の脂質膜の内側に封入されていた目的物質は放出され、核内に送達される。第2の脂質膜の内側に目的物質の凝集体が封入されている場合、目的物質の核内送達効率は向上する。プロタミン又はその誘導体を使用して調製された目的物質の凝集体が封入されている場合、目的物質の凝集体は核膜孔を効率よく通過することができるので、目的物質の核内送達効率は特に向上する。
目的物質を送達すべき細胞が由来する生物種は特に限定されるものではなく、動物、植物、微生物等のいずれであってもよいが、動物であることが好ましく、哺乳動物であることがさらに好ましい。哺乳動物としては、例えば、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモット等が挙げられる。また、目的物質を送達すべき細胞の種類は特に限定されるものではなく、例えば、体細胞、生殖細胞、幹細胞又はこれらの培養細胞等が挙げられる。
本発明のリポソームは、常法に従って製剤化し、医薬組成物として使用することができる。本発明のリポソームは、例えば、分散液の状態で使用することができる。分散溶媒としては、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液等の緩衝液を使用することができる。分散液には、例えば、糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、抗酸化剤、pH調節剤、水和促進剤等の添加剤を添加して使用してもよい。
本発明のリポソームは、in vivo及びin vitroのいずれにおいても使用することもできる。in vivoにおいて使用する場合、投与経路としては、例えば、静脈、腹腔内、皮下、経鼻等の非経口投与が挙げられ、投与量及び投与回数は、リポソームに封入された目的物質の種類や量等に応じて適宜調節することができる。
〔実施例1〜2,比較例1〜11〕
1.各種ベクターの調製
プラスミドDNAとして、ルシフェラーゼ遺伝子発現プラスミドpcDNA3.1(+)lucを使用して、プラスミドDNAを含有する各種ベクターを調製した。なお、プラスミドpcDNA3.1(+)lucは、CMVプロモーター及びその下流に連結されたルシフェラーゼ遺伝子を含有する全長約7kbpのプラスミドDNAであり、pGL3プラスミド(Promega社製)から制限酵素によって切り出したルシフェラーゼ遺伝子をプラスミドpcDNA3.1(+)(Invitrogen社製)に挿入することによって作製した。
(1)ベクター1(従来の1枚膜リポソーム)
硫酸プロタミン溶液0.15mL(硫酸プロタミン濃度:0.1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))に、プラスミドDNA溶液0.1mL(プラスミドDNA濃度:0.1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))をボルテックス条件下で滴下し、硫酸プロタミンとプラスミドDNAとを静電的に相互作用させ、プラスミドDNAを凝縮化させた。凝集化プラスミドDNAの粒子径は約106nmであり、ゼータ電位は約39mVであった。なお、流体力学的直径は準弾性光散乱方法によって測定し、ゼータ電位は、電気泳動的光散乱分光測光器(ELS−8000)によって分析した(以下同様)。
脂質混合物(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(dioleoyl phosphatidyl ethanolamine:DOPE):コレステロールコハク酸(cholesteryl hemisuccinate:CHEMS)=9:2(モル比))をクロロホルムに溶解した後、クロロホルムを蒸発除去することにより脂質膜を得た。脂質膜(137.5nモル)に、凝縮化プラスミドDNA懸濁液0.25mL(凝集化プラスミドDNA濃度:0.04mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))を添加して水和することにより、脂質膜表面に凝縮化プラスミドを静電的に結合させた。次いで、穏やかな超音波で処理し、凝縮化プラスミドDNAを脂質膜で被覆することにより、プラスミドDNAが内部に封入された1枚膜リポソーム(以下「ベクター1」という)を調製した。
(2)ベクター2(従来のキャリアペプチド)
ステアリル化オクタアルギニン溶液0.09mL(ステアリル化オクタアルギニン濃度:0.1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))に、プラスミドDNA溶液0.18mL(プラスミドDNA濃度:0.1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))をボルテックス条件下で滴下し、ステアリル化オクタアルギニンとプラスミドDNAとを静電的に相互作用させ、凝集化プラスミドDNA(以下「ベクター2」という)を調製した。
(3)ベクター3(従来の1枚膜リポソーム)
ステアリル化オクタアルギニン溶液0.09mL(ステアリル化オクタアルギニン濃度:0.1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))に、プラスミドDNA溶液0.18mL(プラスミドDNA濃度:0.1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))をボルテックス条件下で滴下し、ステアリル化オクタアルギニンとプラスミドDNAとを静電的に相互作用させ、プラスミドDNAを凝縮化させた。こうして調製した凝集化プラスミドDNAを上記(1)と同様にして脂質膜で被覆することにより、プラスミドDNAが内部に封入された1枚膜リポソーム(以下「ベクター3」という)を調製した。
(4)ベクター4(従来の1枚膜リポソーム)
脂質混合物(DOPE:コレステロール=7:3(モル比))をクロロホルムに溶解した後、クロロホルムを蒸発除去することにより脂質膜を得た。こうして得た脂質膜を使用し、上記(1)と同様にして凝縮化プラスミドDNAを脂質膜で被覆し、プラスミドDNA封入リポソームを調製した。プラスミドDNA封入リポソーム懸濁液に、ステアリル化核移行性ペプチド(N末端をステアリル化した核移行性ペプチド(配列番号1)溶液0.05mL(ステアリル化核移行性ペプチド濃度:1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))を添加し、室温で一定時間インキュベートすることにより、リポソーム表面にステアリル化オクタアルギニンを分配させた(ステアリル化オクタアルギニンの分配量:脂質量の2モル%)。このようにして、オクタアルギニンを表面に有し、プラスミドDNAが内部に封入された1枚膜リポソーム(以下「ベクター4」という)を調製した。
(5)ベクター5(従来の1枚膜リポソーム)
ステアリル化核移行性ペプチド(N末端をステアリル化した核移行性ペプチド(配列番号1))溶液0.09mL(ステアリル化核移行性ペプチド濃度:0.1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))に、プラスミドDNA溶液0.18mL(プラスミドDNA濃度:0.1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))をボルテックス条件下で滴下し、ステアリル化核移行性ペプチドとプラスミドDNAとを静電的に相互作用させ、凝集化プラスミドDNAを調製した。こうして調製した凝集化プラスミドDNAを上記(1)と同様にして脂質膜で被覆することにより、プラスミドDNAが内部に封入された1枚膜リポソーム(以下「ベクター5」という)を調製した。
(6)ベクター6(従来の1枚膜リポソーム)
脂質混合物(DOTAP:DOPE=1:1(モル比))をクロロホルムに溶解した後、クロロホルムを蒸発除去することにより脂質膜を得た。脂質膜を10mM HEPES緩衝液(pH7.4)で水和した後、超音波槽で超音波処理することにより、リポソームを調製した。リポソーム懸濁液(脂質量137.5nモル)に、プラスミドDNA溶液0.125mL(プラスミドDNA濃度:0.1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))を添加することにより、プラスミドDNAと複合体形成した1枚膜リポソーム(以下「ベクター6」という)を調製した。
(7)ベクター7(従来の1枚膜リポソーム)
脂質混合物(DOPE:CHEMS=9:2(モル比))をクロロホルムに溶解した後、クロロホルムを蒸発除去することにより脂質膜を得た。こうして得た脂質膜を使用し、上記(1)と同様にして凝縮化プラスミドDNAを脂質膜で被覆し、プラスミドDNA封入リポソームを調製した。プラスミドDNA封入リポソーム懸濁液に、ステアリル化オクタアルギニン溶液0.12mL(ステアリル化オクタアルギニン濃度:1mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))を添加し、室温で一定時間インキュベートすることにより、リポソーム表面にステアリル化オクタアルギニンを分配させた(ステアリル化オクタアルギニンの分配量:脂質量の5モル%)。このようにして、オクタアルギニンを表面に有し、プラスミドDNAが内部に封入された1枚膜リポソーム(以下「ベクター7」という)を調製した。
(8)リポソーム8(本発明の2枚膜リポソーム)
脂質混合物(DOPE:CHEMS=9:2(モル比))に、ステアリル化核移行性ペプチド(N末端をステアリル化した核移行性ペプチド(配列番号1))を添加し(添加量:脂質量の2モル%)、クロロホルム0.25mLに溶解した後、溶解液をガラス試験管に収容した。窒素ガスの吹き付けにより溶媒を除去した後、デシケーター内に1時間収納して乾燥させた。得られた脂質膜(275nモル)を、予め25℃まで温めておいたHEPES緩衝液0.25mLを用いて水和させ、超音波槽で超音波処理することにより脂質膜を剥離した。さらにプローブ型超音波装置により10分間超音波処理を行うことによって、脂質膜に膜融合性脂質を含有し、脂質膜表面に核移行性ペプチドを有するSUV型リポソームを調製した。こうして調製されたSUV型リポソームの粒径は約58nmであり、ゼータ電位は約−2mV(この測定値は不正確である可能性が高い。脂質膜表面に核移行性ペプチドを有しない場合、SUV型リポソームのゼータ電位は約−40mVであることから、脂質膜表面に核移行性ペプチドを有する場合、SUV型リポソームのゼータ電位は約−10〜−20mVであると考えられる。)であった。
上記(1)と同様にして調製した凝集化プラスミドDNA溶液0.25mL(凝集化プラスミドDNA濃度:0.04mg/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))に、SUV型リポソーム溶液0.25mL(SUV型リポソーム濃度:1.1μモル/mL,溶媒:10mM HEPES緩衝液(pH7.4))を添加し、室温(約25℃)で10分間放置した。この過程において、複数のSUV型リポソームが凝集化プラスミドDNAに静電的に結合し、SUV型リポソーム同士が膜融合し、凝集化プラスミドが脂質膜で被覆されることにより、凝集化プラスミドが内部に封入されたリポソームが調製される。こうして調製したプラスミドDNA封入リポソーム(以下「リポソーム8」という)の粒径は約160nmであり、ゼータ電位は約4mVであった。
(9)リポソーム9
脂質混合物にステアリル化核移行性ペプチドを添加しない点を除き、上記(8)と同様にしてプラスミドDNA封入リポソーム(以下「リポソーム9」という)を調製した。
2.樹状細胞へのトランスフェクション
C57BL/6雄マウスの骨髄前駆体細胞をGM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)存在下で6〜7日間培養し、未成熟樹状細胞を誘導した。48ウェルプレートに未成熟樹状細胞を2×10細胞/ウェルの密度で播き、0.8μgDNA相当のベクターを添加し、無血清培地(RPMI1640培地)0.2mL又は弱酸性緩衝液(10mM HEPES/2.5%グルコース(pH6.0)0.2mL中、37℃で1時間培養した後、血清含有培地0.5mLを添加し、さらに37℃で23時間培養した。培養後、細胞を回収して溶解し、細胞溶解液にルシフェラーゼ活性測定試薬(luciferase assay system,Promega社製)を加え、ルシフェラーゼ活性をルミノメーター(LuminescencerPSN、ATTO)を用いて測定した。細胞溶解液中のタンパク質量はBCAタンパク質定量キット(PIERCE、ロックフォード(IL))を使用して測定した。
実施例1では、ベクターとしてベクター8を使用し、培養には弱酸性緩衝液を使用した。実施例2では、ベクターとしてベクター8を使用し、培養には無血清培地を使用した。なお、実施例1では、コレステロールコハク酸が細胞膜と膜融合することにより、ベクター8が細胞内に導入され、実施例2では、エンドサイトーシスによりベクター8が細胞内に導入される。
比較例1では、ベクターとしてベクター1を使用し、培養には弱酸性緩衝液を使用した。比較例2では、ベクターとしてベクター1を使用し、培養にはリポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)を添加した弱酸性緩衝液を使用した。比較例3では、ベクターとしてベクター2を使用し、培養には無血清培地を使用した。比較例4では、ベクターとしてベクター3を使用し、培養には無血清培地を使用した。比較例5では、ベクターとしてベクター3を使用し、培養には弱酸性緩衝液を使用した。比較例6では、ベクターとしてベクター4を使用し、培養には無血清培地を使用した。比較例7では、ベクターとしてベクター5を使用し、培養には弱酸性緩衝液を使用した。比較例8では、ベクターとしてベクター6を使用し、培養には無血清培地を使用した。比較例9では、ベクターとしてベクター7を使用し、培養には無血清培地を使用した。比較例10では、ベクターとしてベクター9を使用し、培養には弱酸性緩衝液を使用した。比較例11では、ベクターとしてベクター9を使用し、培養には無血清培地を使用した。
実施例1〜2及び比較例1〜10におけるルシフェラーゼ遺伝子発現活性(RLU/mgタンパク質)の測定結果を図1に示す。図1に示すように、実施例1における遺伝子発現活性(すなわち、遺伝子の核内送達効率)は、比較例1〜10における遺伝子発現活性よりも約100倍以上高かった。なお、実施例2における遺伝子発現活性は、実施例1における遺伝子発現活性よりも低かったが、これは、リポソーム8のエンドサイトーシス効率が低いことが原因であると考えられる。したがって、リポソーム8の脂質膜表面を適当な機能性分子で修飾してエンドサイトーシス効率を向上させれば、遺伝子発現活性(すなわち、遺伝子の核内送達効率)を向上させることができると考えられる。
〔実施例3,比較例12〕
ローダミン(赤色)標識化プラスミドDNAを使用してベクターを調製し、核をCYTO24(緑色)で染色した未成熟樹状細胞にトランスフェクションし、3時間後に共焦点レーザー顕微鏡による観察を行った。
実施例3では、ベクター8を実施例1と同様にして未成熟樹状細胞にトランスフェクションした。比較例12では、ベクター7を比較例9と同様にして未成熟樹状細胞にトランスフェクションした。
実施例3における共焦点レーザー顕微鏡観察結果を図2及び図3に示す。図2に示すように、核内(緑色)にプラスミドDNA(赤色)が粒子として存在する細胞が確認された。また、図3に示すように、核内(緑色)にプラスミドDNA(赤色)が分散した細胞も確認された。一方、比較例12では、細胞質内にプラスミドDNA(赤色)が存在する細胞は確認されたが、核内(緑色)にプラスミドDNA(赤色)が存在する細胞は確認されなかった。
〔実施例4〕
NBD(4−nitrobenzo−2−oxa−1,3−diazole)標識化プラスミドDNAを使用した点、ポリL−リジンを使用して凝集化プラスミドDNAを調製した点、及び、SUV型リポソームを調製する際、脂質膜の水和に使用するHEPES緩衝液に水相マーカーとしてローダミンを添加した(すなわち、ローダミンを含有する内水相を保持するSUV型リポソームを調製した)点を除き、上記(8)と同様にしてリポソーム8を調製した。
リポソーム懸濁液を不連続ショ糖密度勾配(0〜60%)上に重層し、20℃、160,000gの条件で2時間、超遠心分離を行った。上部から1mLずつ画分を回収した。各フラクションにおけるDNA含量をアガロースゲル電気泳動によって測定するとともに、各フラクションにおけるローダミンの蛍光強度を測定してローダミン含量(%)を算出した。
各フラクションにおけるDNA含量の測定結果を図4(a)に示し、各フラクションにおけるローダミン含量の測定結果を図4(b)に示す。
リポソーム8を含有するフラクションと考えられる、DNA含量が多いフラクション6〜9には、DNAとともにローダミンが共存していた。このことから、凝集化プラスミドDNAに静電的に結合したSUV型リポソーム同士が、ローダミンを含有する内水相を保持したまま融合することによりリポソーム8が調製され、リポソーム8の内部には、ローダミンを含有する内水相が保持する空間が存在することが示された。
また、フラクション6〜9において、NBDとローダミンとの間の蛍光エネルギー移動は観察されなかった。このことから、リポソーム8において、NBD標識化プラスミドDNAとローダミンを含有する内水相とは接触していないこと、すなわち、リポソーム8において、ローダミンを含有する内水相が保持されている空間と、凝集化プラスミドDNAが保持されている空間とは脂質膜を介して隔離されていることが示された。したがって、リポソーム8は、1枚膜リポソームではないと考えられる。仮に、リポソーム8が1枚膜リポソームであるとすれば、ローダミンを含有する内水相及び凝集化プラスミドDNAは同一の空間に保持され、NBDとローダミンとの間に蛍光エネルギー移動が観察されるはずである。
さらに、ベクター8を電子顕微鏡で観察した結果、図5(a)に示すように、コアとして存在する凝集化プラスミドDNAを取り巻く2枚の脂質膜が観察された。
以上の結果から、凝集化プラスミドDNAに静電的に結合したSUV型リポソーム同士の膜融合により、凝集化プラスミドDNAは2枚の脂質膜で被覆され、ローダミンを含有する内水相は、凝集化プラスミドDNAの外側に新たに形成された2枚の脂質膜の間の空間に保持されることが示された(図5(b)参照)。
〔実施例5〕
実施例1と同様にして、未成熟樹状細胞にベクター8を導入し、導入6時間後にリポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)で1時間処理し、同系列マウスの皮下に投与した(投与量:1×10細胞)。同一のマウスに毎週投与を繰り返し、5週間後に細胞傷害(CTL)活性を測定した。
また、比較例9と同様にして、未成熟樹状細胞にベクター7を導入し、上記と同様にしてCTL活性を測定した。
CTL活性の測定は次のようにして行った。免疫5週間後、C57BL/6雄マウスから脾臓を摘出し、脾細胞を採取した。採取した細胞の濃度を5×10細胞/mLに調整して12wellプレートに播き、抗原タンパク質(ルシフェラーゼ)50μg/mLを添加し、4日間37℃で培養し、脾細胞中に存在するT細胞を活性化した(エフェクター細胞)。予め抗原タンパク質(ルシフェラーゼ)を発現させたマウス由来P815細胞に放射性同位元素51Crを取り込ませたものを標的細胞として、種々の比率でエフェクター細胞を添加し、エフェクター細胞による抗原特異的な標的細胞からの51Cr漏出をカウントすることによって、特異的殺細胞活性(CTL活性)を評価した。
CTL活性の測定結果を図6に示す。図6に示すように、ベクター8を導入した場合には、ベクター7を導入した場合よりも有意に高いCTL活性が誘導された。
〔実施例6〕
脂質混合物にNBD(4−nitrobenzo−2−oxa−1,3−diazole)(緑色)標識化DOPEを添加した点(添加量:総脂質の0.45%モル)、及びローダミン(赤色)標識化プラスミドDNAを使用した点を除き、上記(8)と同様にしてリポソーム8を調製した。
未成熟樹状細胞をエネルギー代謝阻害剤(Antimycine A、NaN及びNaFをそれぞれ最終濃度が1μg/mL、0.1%及び10mMになるように添加)存在下で30分間インキュベートした後、エネルギー代謝阻害剤で処理した未成熟樹状細胞(核をヘキスト(青色)で染色)にベクター8をトランスフェクションし(実施例1参照)、共焦点レーザー顕微鏡による観察を行った。また、エネルギー代謝阻害剤で処理していない未成熟樹状細胞にも同様にベクター8をトランスフェクションし、共焦点レーザー顕微鏡による観察を行った。
共焦点レーザー顕微鏡観察結果を図8に示す。なお、図8中、(a)はエネルギー代謝阻害剤で処理していない未成熟樹状細胞の結果を、(b)はエネルギー代謝阻害剤で処理した未成熟樹状細胞の結果を示す。また、図8中、白枠は核の外縁を表し、白色矢印はプラスミドDNA(赤色)を表す。
図8に示すように、エネルギー代謝阻害剤で処理していない未成熟樹状細胞においては、核内(青色)にプラスミドDNA(赤色)が存在していた。但し、核内(青色)に脂質(緑色)は存在しなかった。一方、エネルギー代謝阻害剤で処理した未成熟樹状細胞においては、核内(青色)にプラスミドDNA(赤色)も脂質(緑色)も存在しておらず、プラスミドDNA(赤色)及び脂質(緑色)は細胞質に存在していた。この結果から、ベクター8による遺伝子の核内送達は、エネルギーに依存した現象であること、すなわち、核膜に存在する核膜孔複合体を介した能動的な現象であることが示唆された。
〔参考例1〕
比較例9と同様にして、ベクター7を未成熟樹状細胞、NIH3T3細胞又はHeLa細胞にトランスフェクションし、ルシフェラーゼ遺伝子発現活性(RLU/mgタンパク質)を測定した。結果を図7に示す。図7に示すように、非分裂性細胞である樹状細胞における遺伝子発現活性(すなわち、遺伝子の核内送達効率)は、分裂性細胞であるNIH3T3細胞又はHeLa細胞における遺伝子発現活性(すなわち、遺伝子の核内送達効率)よりも著しく低かった。

Claims (11)

  1. 外側から順に第1の脂質膜及び第2の脂質膜を有する2枚膜リポソームであって、前記第1の脂質膜が膜融合能を有し、前記第2の脂質膜がその表面に核移行性ペプチドを有する前記2枚膜リポソーム。
  2. 前記第1の脂質膜がその構成成分として膜融合性脂質を含有する請求項1記載の2枚膜リポソーム。
  3. 前記第1の脂質膜に含有される膜融合性脂質量が、前記第1の脂質膜に含有される総脂質量の50%(モル比)以上である請求項2記載の2枚膜リポソーム。
  4. 前記第1の脂質膜に含有される膜融合性脂質のうち、アニオン性脂質の割合が5〜50%(モル比)である請求項2又は3記載の2枚膜リポソーム。
  5. 標的細胞の核内に送達すべき目的物質が、前記第2の脂質膜の内側に封入されている請求項1〜4のいずれかに記載の2枚膜リポソーム。
  6. 前記目的物質を前記標的細胞の核内に送達するためのベクターである請求項5記載の2枚膜リポソーム。
  7. 前記標的細胞が非分裂性細胞である請求項6記載の2枚膜リポソーム。
  8. 脂質膜の構成成分として膜融合性脂質を含有し、脂質膜の表面に核移行性ペプチドを有する複数の負帯電性SUV型リポソームを正帯電性粒子に接触させ、正帯電性粒子に静電的に結合した負帯電性SUV型リポソーム同士を膜融合させることにより得られる請求項1〜7のいずれかに記載の2枚膜リポソーム。
  9. 前記正帯電性粒子が、標的細胞の核内に送達すべき目的物質の凝集体である請求項8記載の2枚膜リポソーム。
  10. 脂質膜の構成成分として膜融合性脂質を含有し、脂質膜の表面に核移行性ペプチドを有する複数の正帯電性SUV型リポソームを負帯電性粒子に接触させ、負帯電性粒子に静電的に結合した正帯電性SUV型リポソーム同士を膜融合させることにより得られる請求項1〜7のいずれかに記載の2枚膜リポソーム。
  11. 前記負帯電性粒子が、標的細胞の核内に送達すべき目的物質の凝集体である請求項10記載の2枚膜リポソーム。
JP2007509350A 2005-03-24 2006-03-24 目的物質を効率的に核内に送達可能なリポソーム Withdrawn JPWO2006101201A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005086890 2005-03-24
JP2005086890 2005-03-24
PCT/JP2006/305994 WO2006101201A1 (ja) 2005-03-24 2006-03-24 目的物質を効率的に核内に送達可能なリポソーム

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2006101201A1 true JPWO2006101201A1 (ja) 2008-09-04

Family

ID=37023854

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007509350A Withdrawn JPWO2006101201A1 (ja) 2005-03-24 2006-03-24 目的物質を効率的に核内に送達可能なリポソーム

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20090305409A1 (ja)
EP (1) EP1867726A4 (ja)
JP (1) JPWO2006101201A1 (ja)
WO (1) WO2006101201A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10765761B2 (en) 2016-11-22 2020-09-08 Kabushiki Kaisha Toshiba Nucleic acid condensing peptide, nucleic acid condensing peptide set, nucleic acid delivery carrier, nucleic acid delivery method, cell production method, cell detection method and kit

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007102481A1 (ja) * 2006-03-07 2007-09-13 National University Corporation Hokkaido University 目的物質の核内送達用ベクター
WO2010110471A1 (ja) * 2009-03-23 2010-09-30 国立大学法人北海道大学 脂質膜構造体
GB0913442D0 (en) * 2009-07-31 2009-09-16 Univ Ramot Cell-targeting nanoparticles comprising polynucleotide agents and uses thereof
US8981044B2 (en) 2010-04-21 2015-03-17 National University Corporation Hokkaido University Lipid membrane structure having intranuclear migrating property
US10182987B2 (en) 2014-05-20 2019-01-22 National University Corporation Hokkaido University Lipid membrane structure for intracellular delivery of siRNA
CN104174033A (zh) * 2014-08-14 2014-12-03 武汉大学 一种骨靶向rna干扰复合物及其合成方法
US20180344641A1 (en) * 2015-09-04 2018-12-06 C. Jeffrey Brinker Mesoporous silica nanoparticles and supported lipid bi-layer nanoparticles for biomedical applications
US11672866B2 (en) 2016-01-08 2023-06-13 Paul N. DURFEE Osteotropic nanoparticles for prevention or treatment of bone metastases
US11344629B2 (en) 2017-03-01 2022-05-31 Charles Jeffrey Brinker Active targeting of cells by monosized protocells
CN110740985B (zh) 2017-06-15 2022-08-02 国立大学法人北海道大学 用于siRNA细胞内递送的脂质膜结构体
GB202004254D0 (en) 2020-03-24 2020-05-06 Puridify Ltd Characterization of gene therapy vectors
CN114288250B (zh) * 2022-03-10 2022-06-03 北京同柏宸科生物技术开发有限公司 一种脂肪细胞靶向的跨膜转运脂质体药物载体及其制备方法和用途

Family Cites Families (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20040063652A1 (en) * 1988-03-21 2004-04-01 Jolly Douglas J. Combination gene delivery vehicles
JPH01249717A (ja) 1988-03-30 1989-10-05 Fuji Photo Film Co Ltd リポソームの製造方法
JPH0720857B2 (ja) 1988-08-11 1995-03-08 テルモ株式会社 リポソームおよびその製法
JP3220180B2 (ja) 1991-05-23 2001-10-22 三菱化学株式会社 薬剤含有タンパク質結合リポソーム
FR2751222B1 (fr) * 1996-07-16 1998-10-09 Capsulis Compositions contenant au moins un acide nucleique et leurs applications dans le domaine biomedical, en particulier en therapie genique
EP0955999B1 (en) * 1996-08-19 2001-12-05 THE GOVERNMENT OF THE UNITED STATES OF AMERICA, as represented by THE SECRETARY, DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES Novel liposome complexes for increased systemic delivery
JP2000010481A (ja) 1998-06-19 2000-01-14 Ge Yokogawa Medical Systems Ltd 隠し情報処理方法および装置並びに記録媒体
BR0008711A (pt) * 1999-03-02 2002-10-01 Liposome Co Inc Encapsulação de complexos bioativos em lipossomas
JP2003535832A (ja) * 2000-06-09 2003-12-02 ブリカス,テニ ポリヌクレオチドおよび薬物の標的化リポソームへのカプセル化
CA2429138C (en) * 2000-11-15 2010-10-19 The Government Of The United States Of America, Represented By The Secretary, Department Of Health And Human Services Sol-fusin: use of gp64-6his to catalyze membrane fusion
CA2445947A1 (en) * 2001-04-30 2002-11-07 Targeted Genetics Corporation Lipid-comprising drug delivery complexes and methods for their production
US8153141B2 (en) * 2002-04-04 2012-04-10 Coley Pharmaceutical Gmbh Immunostimulatory G, U-containing oligoribonucleotides
CA2540917C (en) * 2003-10-01 2012-03-27 Japan Science And Technology Agency Polyarginine-modified liposome having nuclear entry ability
JPWO2007037444A1 (ja) * 2005-09-30 2009-04-16 国立大学法人 北海道大学 目的物質を核内又は細胞内に送達するためのベクター

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10765761B2 (en) 2016-11-22 2020-09-08 Kabushiki Kaisha Toshiba Nucleic acid condensing peptide, nucleic acid condensing peptide set, nucleic acid delivery carrier, nucleic acid delivery method, cell production method, cell detection method and kit

Also Published As

Publication number Publication date
EP1867726A1 (en) 2007-12-19
EP1867726A4 (en) 2008-09-24
WO2006101201A1 (ja) 2006-09-28
US20090305409A1 (en) 2009-12-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPWO2006101201A1 (ja) 目的物質を効率的に核内に送達可能なリポソーム
JP4628955B2 (ja) 核移行能を有するポリアルギニン修飾リポソーム
Aronsohn et al. Nuclear localization signal peptides enhance cationic liposome-mediated gene therapy
Zhang et al. Macropinocytosis is the major pathway responsible for DNA transfection in CHO cells by a charge-reversal amphiphile
WO2007037444A1 (ja) 目的物質を核内又は細胞内に送達するためのベクター
JP2002538096A (ja) 生理活性複合体のリポソームへのカプセル化
WO2007102481A1 (ja) 目的物質の核内送達用ベクター
CZ299809B6 (cs) Lipidový vácek mající kladne nabitou membránu z lipidové dvojvrstvy pro prenos genetického materiálu a zpusob jeho prípravy
US20100166840A1 (en) Liposome having lipid membrane containing bacterial cell component
JPWO2008105178A1 (ja) リポソーム用生体成分抵抗性増強剤及びこれにより修飾されたリポソーム
WO2013140643A1 (ja) 機能性タンパク質を細胞内に送達するためのキャリア
KR20140048404A (ko) 저밀도 지단백질 유사 나노입자 및 이를 포함하는 간 표적 진단 및 치료용 조성물
US8097276B2 (en) Method for coating particle with lipid film
JP2006238839A (ja) 核酸の細胞内送達効率又は細胞内発現効率を向上させた組成物
JP2006167521A (ja) Suv型リポソームの膜融合を利用した遺伝子等の新規封入技術
US20130195962A1 (en) Lipid membrane structure
JP2007166946A (ja) 標的遺伝子の発現を抑制するための組成物
JP2009221165A (ja) 一遺伝子ナノ粒子のパッケージング法
WO2012117971A1 (ja) 脂質膜構造体、脂質膜構造体の製造方法および1の目的物質を1枚の脂質膜で封入する方法
WO2009131216A1 (ja) オリゴアルキレングリコールで修飾された脂質膜構造体
JP2014031349A (ja) 結合剤及びその利用
JP2014114267A (ja) 脂質膜構造体に対して肝臓血管内皮細胞への移行能を付与および/または増強するペプチド、肝臓血管内皮細胞への移行能を有するまたは肝臓血管内皮細胞への移行能が増強された脂質膜構造体、ならびに脂質膜構造体に対して肝臓血管内皮細胞への移行能を付与および/または増強する剤
AU7785000A (en) Cationic dosper virosomes
Vadrucci Influenza virus hemagglutinin-mediated membrane fusion: mechanistic studies and potential applications

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20090225

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20090309

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20090224

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090319

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20110725