JP2006167521A - Suv型リポソームの膜融合を利用した遺伝子等の新規封入技術 - Google Patents

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Abstract

【課題】 目的物質を含む被封入体を穏やかな条件下で脂質コーティングし、目的物質が封入されたリポソームを作製する方法を提供する。
【解決手段】 膜中に界面活性剤を含み全体として負に帯電するSUV型リポソームと、目的物質を含み全体として正に帯電する被封入体とを接触させた後、前記SUV型リポソームの膜中に含まれる前記界面活性剤を除去することを特徴とする、目的物質が封入されたリポソームの作製方法を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、目的物質が封入されたリポソームの作製方法に関する。
近年、薬物、核酸、ペプチド、タンパク質、糖等を標的部位に確実に送達するためのベクターの開発が盛んに行われている。例えば、遺伝子治療においては、目的の遺伝子を標的細胞へ導入するためのベクターとして、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス等のウイルスベクターが開発されている。しかしながら、ウイルスベクターは、大量生産の困難性、抗原性、毒性等の問題があるため、このような問題点が少ないリポソームベクターが注目を集めている。リポソームベクターは、その表面に抗体、タンパク質、糖鎖等の機能性分子を導入することにより、標的部位に対する指向性を向上させることができるという利点も有している。
遺伝子治療用の遺伝子を効率的に細胞内に送達するために、リポソームベクターは、細胞膜、エンドソーム膜、核膜等のいくつかのバリアを突破しなければならない。そのために、リポソームベクターには、特異的リガンド、pH感受性膜融合ペプチド、核移行シグナルペプチド等の様々な機能性素子を組み込む必要がある。しかしながら、従来の単純な混合法によっては、すべての機能性素子をナノサイズのリポソームに組み込むのは困難である。
このような状況の下、リポソームベクターの様々なアセンブリ方法が報告されている(非特許文献1〜5)。例えば、Cullis等は、界面活性剤透析法を開発し、安定化したプラスミド封入リポソーム(SPLP)を構築している(非特許文献2,4)。しかしながら、彼らのアセンブリ方法において、NLSのような核を標的化するための素子を組み込むのは困難である。一方、Huang等は、膜融合性脂質であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(dioleoylphosphatidylethanolamine, DOPE)を含むリポソームの自発的な膜融合によるDNA/プロタミン複合体のコーティングを利用した、リポソーム・プロタミンDNA複合体(LPD)を開発している(非特許文献1,5)。彼らの方法は非常に単純で容易である。しかしながら、脂質コーティングはDOPEの融合能にのみ依存しているため、彼らのシステムは大量のDOPEを必要とする。したがって、DOPEを用いずにLPDを構築するのは困難である。
そこで、必要条件をすべて満たす理想的なリポソームベクターを構築するために、「Programmed Packaging」という新しいパッケージングコンセプトが提案されている。このコンセプトは3つのステップから構成されている。すなわち、(1)バリアをすべて克服するための戦略に基づいたプログラムの立案、(2)バリアを突破するための機能性素子のデザインとナノサイズ構造体の設計、及び(3)ナノサイズ構造体にすべての機能性素子を組み込むためのナノ・テクノロジーである。
最近、Programmed Packagingに基づき、脂質膜水和法によって非ウイルスベクターである多機能性エンベロープ型ナノ構造体(MEND)の構築に成功したことが報告されている(非特許文献6)。このパッケージング方法は、3つのステップから構成されている。すなわち、(1)ポリカチオンによるDNAの凝縮、(2)凝縮化DNAと脂質薄膜との静電的結合及び水和、及び(3)超音波処理による凝縮化DNAの脂質コーティングである。MENDは凝縮化DNAコアと脂質エンベロープから構成されており、凝縮化DNA及び脂質エンベロープには、NLS、特異的リガンド等の様々な機能性素子をそのトポロジーを考慮して組み込むことが可能である。しかしながら、脂質膜水和法における超音波処理プロセスは、酵素のようなデリケートな機能性素子に悪影響を及ぼす危険性を有している。
Sorgi F.L.等, "Protamine sulfate enhances lipid-mediated gene transfer." Gene Ther. 4, 961-968, 1997. Wheeler J.J.等, "Stabilized plasmid-lipid particles: construction and characterization." Gene Ther. 6, 271-281, 1999. Mastrobattista E.等, "Lipid-coated polyplexes for targeted gene delivery to ovarian carcinoma cells." Cancer Gene Ther. 8, 405-413, 2001. Fenske D.B.等, "Stabilized plasmid-lipid particles: a systemic gene therapy vector." Methods Enzymol. 346, 36-71, 2002. Zhang J.S.等, "Cationic liposome-protamine-DNA complexes for gene delivery." Methods Enzymol. 373, 332-342, 2003. Kogure K.等, "Development of a non-viral multifunctional envelope-type nano device by a lipid film hydration method." J. Control. Release 98, 317-323, 2004.
そこで、本発明は、目的物質を含む被封入体を穏やかな条件下で脂質コーティングし、目的物質が封入されたリポソームを作製する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、膜中に界面活性剤を含み全体として負に帯電するSUV型リポソームと、目的物質を含み全体として正に帯電する被封入体とを接触させた後、前記SUV型リポソームの膜中に含まれる前記界面活性剤を除去することを特徴とする、目的物質が封入されたリポソームの作製方法を提供する(以下「本発明の第1の方法」という)。
また、本発明は、膜中に界面活性剤を含み全体として正に帯電するSUV型リポソームと、目的物質を含み全体として負に帯電する被封入体とを接触させた後、前記SUV型リポソームの膜中に含まれる界面活性剤を除去することを特徴とする、目的物質が封入されたリポソームの作製方法を提供する(以下「本発明の第2の方法」という)。
本発明の第1及び第2の方法によれば、膜中に界面活性剤を含むSUV型リポソームと被封入体とを接触させた後、SUV型リポソームの膜中に含まれる界面活性剤を除去することにより、被封入体を脂質コーティングし、目的物質が封入されたリポソームを作製することができる。すなわち、本発明の第1及び第2の方法によれば、被封入体を脂質コーティングする際に超音波処理プロセスを用いる必要がなく、被封入体を穏やかな条件下で脂質コーティングし、目的物質が封入されたリポソームを作製することができる。
本発明の第1又は第2の方法において、前記被封入体が、カチオン性物質又はアニオン性物質と、前記カチオン性物質又は前記アニオン性物質に静電的相互作用を介して結合した目的物質とを含むことが好ましい。目的物質が被封入体中に凝集化した状態で含まれることにより、目的物質が封入されたリポソームを効率よく作製することができる。
本発明の第1の方法において、前記被封入体のゼータ電位が10〜40mVであることが好ましく、本発明の第2の方法において、前記被封入体のゼータ電位が−40〜−10mVであることが好ましい。
本発明の第1又は第2の方法において、前記被封入体の粒径が50〜200nmであることが好ましい。被封入体の粒径が上記範囲にあることにより、被封入体を効率よく脂質コーティングすることができ、目的物質が封入されたリポソームを効率よく作製することができる。
本発明の第1又は第2の方法において、前記界面活性剤が結合可能なビーズを用いて、前記SUV型リポソームの膜中に含まれる前記界面活性剤を除去することが好ましい。これにより、被封入体を迅速に脂質コーティングすることができ、目的物質が封入されたリポソームを迅速に作製することができる。
本発明の第1又は第2の方法において、前記SUV型リポソームが、リポソーム構成物質と、臨界ミセル濃度の40%以上であって臨界ミセル濃度以下の界面活性剤とを混合することにより得られるものであることが好ましい。このようなSUV型リポソームを用いると、リポソーム膜中の界面活性剤の除去により、SUV型リポソーム同士の膜融合を効率よく誘起させることができ、目的物質が封入されたリポソームを効率よく作製することができる。
本発明の方法によれば、目的物質を含む被封入体を穏やかな条件下で脂質コーティングし、目的物質が封入されたリポソームを作製することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、「膜中に界面活性剤を含み全体として負に帯電するSUV型リポソーム」及び「膜中に界面活性剤を含み全体として正に帯電するSUV型リポソーム」について説明する。なお、本発明の方法によって作製される「目的物質が封入されたリポソーム」と区別するために、「膜中に界面活性剤を含み全体として負に帯電するSUV型リポソーム」を以下「負帯電SUV型リポソーム」と、「膜中に界面活性剤を含み全体として正に帯電するSUV型リポソーム」を以下「正帯電SUV型リポソーム」という場合がある。
SUV(small unilamellar vesicle)型リポソームは、粒径(直径)が100nm以下である一枚膜リポソームである。負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームの粒径(直径)は100nm以下である限り特に限定されるものではないが、通常30〜100nm、好ましくは30〜70nm、さらに好ましくは30〜50nmである。
多重膜リポソーム(MLV)、LUV(large unilamellar vesicle)、GUV(giant unilamellar vesicle)等の一枚膜リポソームは、粒子径が100nm以上であるため(一般的に100nm以上の粒子径を有するリポソーム膜は平面膜として考えられる)、膜の曲率及び表面エネルギーが小さく、リポソーム同士の凝集が生じ難い。これに対して、SUV型リポソームは、粒子径が100nm未満であるため、膜の曲率及び表面エネルギーが大きく、リポソーム同士の凝集が生じ易い。したがって、負帯電SUV型リポソーム又は正帯電SUV型リポソームとしてSUV型リポソームを用いると、膜中の界面活性剤を除去したときに効率よくリポソーム同士を膜融合させることができる。
負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームの膜中に含まれる界面活性剤は特に限定されるものではなく、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等のいずれであってもよい。
非イオン性界面活性剤は、親水基が非イオン性の界面活性剤である限り特に限定されるものではないが、例えば、疎水基として炭化水素基(例えば、オクチル基、ラウリル基等の炭化水素基)等を有し、親水基としてオキシエチレン基(−CHCHO−)、水酸基(−OH)、グルコース残基等を有する物質、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グルコース脂肪酸エステル(例えば、オクチルグルコシド)、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリド等が挙げられるが、これらのうち、オクチルグルコシドが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のように水和作用が大きい界面活性剤の場合、負帯電SUV型リポソーム同士又は正帯電SUV型リポソーム同士の凝集が生じ難いが、界面活性剤がオクチルグルコシドである場合、負帯電SUV型リポソーム同士又は正帯電SUV型リポソーム同士の凝集が生じ易いので、膜中の界面活性剤を除去したときに効率よく負帯電SUV型リポソーム同士又は正帯電SUV型リポソーム同士を膜融合させることができる。
カチオン性界面活性剤は、水中で電離して有機陽イオンとなる限り特に限定されるものではないが、例えば、RNHX、[RN]X(第四級アンモニウム塩)、(CN)RX(アルキルピリジニウム塩)[いずれの式においても、Rは炭化水素基等の疎水基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]、具体的には、[C1225(CHN]Cl(ドデシルトリメチルアンモニウム)、(CN)C1633Cl(セチルピリジニウム)等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤は、水中で電離して有機陰イオンとなる限り特に限定されるものではないが、例えば、RCOONa、RSONa、RSONa[いずれの式においても、Rは炭化水素基等の疎水基を表す。]、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、硫酸ドデシルナトリウム、胆汁酸ナトリウム等が挙げられる。
負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームのリポソーム膜構成物質の種類は、脂質二重層の形成を阻害しない限り特に限定されるものではなく、リポソーム膜構成物質としては、例えば、脂質、膜安定化剤、抗酸化剤、荷電物質、膜タンパク質等が挙げられる。
脂質は必須のリポソーム膜成分であり、その配合量はリポソーム膜構成物質の総配合量の通常30〜100%(モル比)、好ましくは50〜100%(モル比)、さらに好ましくは70〜100%(モル比)である。
脂質としては、例えば、リン脂質、糖脂質、ステロール、飽和又は不飽和の脂肪酸等が挙げられる。
リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジグリセロール等)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジエタノールアミン等)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、これらの水素添加物等が挙げられる。
糖脂質としては、例えば、グリセロ糖脂質(例えば、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド)、スフィンゴ糖脂質(例えば、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド)等が挙げられる。
ステロールとしては、例えば、動物由来のステロール(例えば、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール)、植物由来のステロール(フィトステロール)(例えば、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール)、微生物由来のステロール(例えば、チモステロール、エルゴステロール)等が挙げられる。
飽和又は不飽和の脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸等の炭素数12〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸が挙げられる。
脂質は、中性脂質、カチオン性脂質及びアニオン性脂質に分類され、中性脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、コレステロール、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、セレブロシド等が挙げられ、カチオン性脂質としては、例えば、例えば、DODAC(dioctadecyldimethylammonium chloride)、DOTMA(N-(2,3-dioleyloxy)propyl-N,N,N-trimethylammonium)、DDAB(didodecylammonium bromide)、DOTAP(1,2-dioleoyloxy-3-trimethylammonio propane)、DC−Chol(3β-N-(N',N',-dimethyl-aminoethane)-carbamol cholesterol)、DMRIE(1,2-dimyristoyloxypropyl-3-dimethylhydroxyethyl ammonium)、DOSPA(2,3-dioleyloxy-N-[2(sperminecarboxamido)ethyl]-N,N-dimethyl-1-propanaminum trifluoroacetate)等が挙げられ、アニオン性脂質としては、例えば、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン(N−スクシニルPE)、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエチレングリコール、コレステロールコハク酸等が挙げられる。
脂質としては、膜融合性が高い脂質を用いることが好ましい。膜融合性が高い脂質を用いると、目的物質が封入されたリポソームが細胞に取り込まれたときに、エンドソームからの脱出効率を向上させることができる。膜融合性が高い脂質としては、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、カルジオリピン、コレステロールコハク酸等が挙げられる。
なお、膜融合性が高い脂質を用いる場合、負帯電SUV型リポソーム同士又は正帯電SUV型リポソーム同士の自発的膜融合が生じる可能性があるが、負帯電SUV型リポソーム又は正帯電SUV型リポソームでは、膜中に界面活性剤が存在することにより安定な膜構造を維持しているため、膜融合性が高い脂質を用いる場合であっても、負帯電SUV型リポソーム同士又は正帯電SUV型リポソーム同士は自発的膜融合を生じ難いにくいと考えられる。実際、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンを含む負帯電SUV型リポソームを用いた場合であっても、界面活性剤を除去しなければ、負帯電SUV型リポソーム同士の膜融合効率は低いものであった(実施例3参照)。
膜融合性が高い脂質を用いる場合、負帯電SUV型リポソーム同士又は正帯電SUV型リポソームの自発的膜融合を効果的に防止する点から、負帯電SUV型リポソーム同士又は正帯電SUV型リポソーム同士の接触を物理的に妨げる物質(例えば、後述する親水性ポリマー)をリポソーム表面に導入することが好ましい。
膜安定化剤は、リポソーム膜を物理的又は化学的に安定させたり、リポソーム膜の流動性を調節したりするために添加できる任意のリポソーム膜成分であり、その配合量は、リポソーム膜構成物質の総配合量の通常10〜50%(モル比)、好ましくは20〜50%(モル比)、さらに好ましくは30〜50%(モル比)である。
膜安定化剤としては、例えば、ステロール、グリセリン又はその脂肪酸エステル等が挙げられる。
ステロールとしては、上記と同様の具体例が挙げられ、グリセリンの脂肪酸エステルとしては、例えば、トリオレイン、トリオクタノイン等が挙げられる。
抗酸化剤は、リポソーム膜の酸化を防止するために添加できる任意のリポソーム膜成分であり、その配合量は、リポソーム膜構成物質の総配合量の通常5〜30%(モル比)、好ましくは10〜30%(モル比)、さらに好ましくは20〜30%(モル比)である。
抗酸化剤としては、例えば、トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエン等が挙げられる。
荷電物質は、リポソーム膜に正荷電又は負荷電を付与するために添加できる任意のリポソーム膜成分であり、その配合量は、リポソーム膜構成物質の総配合量の通常5〜30%(モル比)、好ましくは10〜20%(モル比)、さらに好ましくは10〜15%(モル比)である。
正荷電を付与する荷電物質としては、例えば、ステアリルアミン、オレイルアミン等の飽和又は不飽和脂肪族アミン;ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン等の飽和又は不飽和カチオン性合成脂質等が挙げられ、負電荷を付与する荷電物質としては、例えば、ジセチルホスフェート、コレステリルヘミスクシネート、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等が挙げられる。
膜タンパク質は、リポソーム膜の構造を維持したり、リポソーム膜に機能性を付与したりするために添加できる任意のリポソーム膜成分であり、その配合量は、リポソーム膜構成物質の総配合量の通常0.1〜2%(モル比)、好ましくは0.5〜2%(モル比)、さらに好ましくは1〜2%(モル比)である。
膜タンパク質としては、例えば、膜表在性タンパク質、膜内在性タンパク質等が挙げられる。
負帯電SUV型リポソーム全体の電荷は、リポソーム膜構成物質の種類及び含有量を調節することにより負にすることができ、正帯電SUV型リポソーム全体の電荷は、リポソーム膜構成物質の種類及び含有量を調節することにより正にすることができる。
負の電荷を付与するリポソーム膜構成物質としては、例えば、アニオン性脂質、アニオン性界面活性剤、アニオン性膜安定化剤等が挙げられ、正の電荷を付与するリポソーム膜構成物質としては、カチオン性脂質、カチオン性界面活性剤、カチオン性膜安定化剤等が挙げられる。
負帯電SUV型リポソームが全体として負の電荷を有する限り、負帯電SUV型リポソームは、負の電荷を付与するリポソーム膜構成物質に加え、負及び正のいずれの電荷も付与しないリポソーム膜構成物質を含んでいてもよいし、正の電荷を付与するリポソーム膜構成物質を含んでいてもよい。
正帯電SUV型リポソームが全体として正の電荷を有する限り、正帯電SUV型リポソームは、正の電荷を付与するリポソーム膜構成物質に加え、負及び正のいずれの電荷も付与しないリポソーム膜構成物質を含んでいてもよいし、負の電荷を付与するリポソーム膜構成物質を含んでいてもよい。
負帯電SUV型リポソームが負の電荷を付与するリポソーム膜構成物質としてアニオン性脂質を含む場合、アニオン性脂質の配合量は脂質の総配合量の通常5〜30%(モル比)、好ましくは10〜20%(モル比)、さらに好ましくは10〜15%(モル比)である。
正帯電SUV型リポソームが正の電荷を付与するリポソーム膜構成物質としてカチオン性脂質を含む場合、カチオン性脂質の配合量は脂質の総配合量の通常5〜30%(モル比)、好ましくは10〜20%(モル比)、さらに好ましくは10〜15%(モル比)である。
負帯電SUV型リポソームにおいて、負の電荷を付与するリポソーム膜構成物質としてアニオン性脂質を用いる場合、界面活性剤として非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。アニオン性界面活性剤を用いると、負帯電SUV型リポソームの負電荷が大きくなり、負帯電SUV型リポソーム同士が反発しあって、負帯電SUV型リポソーム同士の膜融合の効率が低下するおそれがある。一方、カチオン性界面活性剤を用いると、アニオン性脂質の負電荷を打ち消してしまい、効率的な負電荷の付与が困難となる。
正帯電SUV型リポソームにおいて、正の電荷を付与するリポソーム膜構成物質としてカチオン性脂質を用いる場合、界面活性剤として非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。カチオン性界面活性剤を用いると、正帯電SUV型リポソームの正電荷が大きくなり、正帯電SUV型リポソーム同士が反発しあって、リポソーム同士の膜融合の効率が低下するおそれがある。また、アニオン性界面活性剤を用いると、カチオン性脂質の正電荷を打ち消してしまい、効率的な正電荷の付与が困難となる。
負帯電SUV型リポソームのゼータ電位は、通常−50〜−20mV、好ましくは−50〜−30mV、さらに好ましくは−50〜−40mVであり、正帯電SUV型リポソームのゼータ電位は、通常20〜50mV、好ましくは30〜50mV、さらに好ましくは40〜50mVである。ゼータ電位の測定条件は特に限定されるものはないが、温度条件は通常25℃である。
負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームは、脂質、界面活性剤、その他のリポソーム構成物質等を適当な溶媒(例えば、水、リン酸緩衝液、生理食塩水等)中で混合することにより調製することができる。この際、界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度の通常40%以上、好ましくは55%以上、さらに好ましくは70%以上であって臨界ミセル濃度以下である。なお、臨界ミセル濃度は、界面活性剤の種類に応じて異なる。
また、負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームは、リポソーム(SUVであってもよいし、SUV以外のリポソームであってもよい)を形成した後、外部から界面活性剤を加えて、リポソーム膜に分配させることにより調製することができる。この際、外部から加える界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度の通常40%以上、好ましくは55%以上、さらに好ましくは70%以上であって臨界ミセル濃度以下である。
また、負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームは、臨界ミセル濃度以上の界面活性剤で完全に可溶化した脂質(ミセル)を形成した後、界面活性剤の濃度を徐々に下げていくことにより調製することができる。この際、界面活性剤の最終濃度は、臨界ミセル濃度の通常40%以上、好ましくは55%以上、さらに好ましくは70%以上であって臨界ミセル濃度以下である。界面活性剤の濃度の下げ方としては、希釈する方法と除去する方法がある。
なお、「リポソーム構成物質と、臨界ミセル濃度の40%以上であって臨界ミセル濃度以下の界面活性剤とを混合することにより得られるSUV型リポソーム」には、上記いずれの方法により調製されたリポソームも含まれる。
負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームは、その表面に親水性ポリマーを有することが好ましい。負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームがその表面に親水性ポリマーを有していると、本発明の方法により作製されたリポソームもその表面に親水性ポリマーを有する。リポソームがその表面に親水性ポリマーを有することにより、in vivoにおけるリポソームの血中滞留性を調節することができる。また、膜融合性が高い脂質を用いる場合、負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームがその表面に親水性ポリマーを有することにより、負帯電SUV型リポソーム同士又は正帯電SUV型リポソームの自発的膜融合を効果的に防止することができ、膜中の界面活性剤を除去したときに効率よく負帯電SUV型リポソーム同士又は正帯電SUV型リポソーム同士を膜融合させることができる。
負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームのリポソーム膜構成物質に、親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成物質を配合することにより、負帯電SUV型リポソーム及び正帯電SUV型リポソームの表面に親水性ポリマーを導入することができる。親水性ポリマーに結合したリポソーム膜構成物質の配合量は特に限定されるものではないが、リポソーム膜構成物質の総配合量の通常1〜10%(モル比)、好ましくは5〜10%(モル比)、さらに好ましくは7〜10%(モル比)である。リポソーム膜構成物質は、親水性ポリマーの側鎖の末端に結合していてもよいが、主鎖の末端に結合していることが好ましい。
親水性ポリマーの種類は特に限定されるものではなく、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等)、デキストラン、プルラン、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナン等が挙げられるが、ポリアルキレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがさらに好ましい。
親水性ポリマーがポリアルキレングリコールである場合、その分子量は、通常300〜10000、好ましくは500〜10000、さらに好ましくは1000〜5000である。
親水性ポリマーには、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基等の置換基が導入されていてもよい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基等の炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられる。
リポソーム膜構成物質と親水性ポリマーとは、リポソーム膜構成物質が有する官能基(リポソーム膜構成物質に人為的に導入された官能基を含む。)と、親水性ポリマーが有する官能基(親水性ポリマーに人為的に導入された官能基を含む。)とを反応させることにより、共有結合を介して結合させることができる。共有結合を形成できる官能基の組み合わせとしては、例えば、アミノ基/カルボキシル基、アミノ基/ハロゲン化アシル基、アミノ基/N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、アミノ基/ベンゾトリアゾールカーボネート基、アミノ基/アルデヒド基、チオール基/マレイミド基、チオール基/ビニルスルホン基等が挙げられる。
次に、「目的物質を含み全体として正に帯電する被封入体」(以下「正帯電被封入体」という場合がある)及び「目的物質を含み全体として負に帯電する被封入体」(以下「負帯電被封入体」という場合がある)について説明する。
正帯電被封入体及び負帯電被封入体は、目的物質のみから構成されていてもよいし、目的物質以外の物質(例えば、目的物質を保持する担体)を含んでいてもよい。
正帯電被封入体が目的物質のみから構成される場合、目的物質は正に帯電している必要があるが、正帯電被封入体が目的物質以外の物質を含む場合、目的物質は正に帯電している必要はない。例えば、目的物質が負に帯電している場合、目的物質とカチオン性物質とを静電的相互作用により複合体化することにより、正帯電被封入体を調製することができる。また、目的物質が負及び正のいずれにも帯電していない場合、目的物質とカチオン性物質とを適当な様式(例えば、物理的吸着、疎水結合、化学結合等)で結合させて複合体化することにより、正帯電被封入体を調製することができる。このような複合体化により正帯電被封入体を調製すれば、目的物質を凝集化することができるので、目的物質が封入されたリポソームを効率よく作製することができる。複合体化の際、目的物質とカチオン性物質との構成比率を調整し、全体として正に帯電する複合体を調製する。目的物質の凝集化は目的物質が正に帯電している場合も可能である。例えば、目的物質とアニオン性物質とを静電的相互作用により複合体化することにより、正に帯電している目的物質を凝集化することができる。複合体化の際、目的物質とアニオン性物質との構成比率を調整し、全体として正に帯電する複合体を調製する。
負帯電被封入体が目的物質のみから構成される場合、目的物質は負に帯電している必要があるが、負帯電被封入体が目的物質以外の物質を含む場合、目的物質は負に帯電している必要はない。例えば、目的物質が正に帯電している場合、目的物質とアニオン性物質とを静電的相互作用により複合体化することにより、負帯電被封入体を調製することができる。また、目的物質が負及び正のいずれにも帯電していない場合、目的物質とアニオン性物質とを適当な様式(例えば、物理的吸着、疎水結合、化学結合等)で結合させて複合体化することにより、負帯電被封入体を調製することができる。このような複合体化により負帯電被封入体を調製すれば、目的物質を凝集化することができるので、目的物質が封入されたリポソームを効率よく作製することができる。複合体化の際、目的物質とアニオン性物質との構成比率を調整し、全体として負に帯電する複合体を調製する。目的物質の凝集化は目的物質が負に帯電している場合も可能である。例えば、目的物質とカチオン性物質とを静電的相互作用により複合体化することにより、負に帯電している目的物質を凝集化することができる。複合体化の際、目的物質とカチオン性物質との構成比率を調整し、全体として負に帯電する複合体を調製する。
目的物質は特に限定されるものではなく、例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、薬物、糖、これらの複合体等が挙げられる。なお、「核酸」には、DNA又はRNAに加え、これらの類似体又は誘導体(例えば、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエートDNA等)が含まれる。また、核酸は一本鎖又は二本鎖のいずれであってもよいし、線状又は環状のいずれであってもよい。
目的物質が核酸である場合、核酸とカチオン性物質と静電的相互作用を介して複合体化することにより、核酸を凝集化することができる。複合体化の際、核酸とカチオン性物質との構成比率を調整することにより、正帯電被封入体及び負帯電被封入体を調製することができる。
「カチオン性物質」とは、その分子中にカチオン性基を有する物質を意味する。カチオン性物質の種類は特に限定されるものではなく、例えば、カチオン性脂質(例えば、Lipofectamine(Invitrogen社製));カチオン性基を有する高分子;ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンの共重合体等の塩基性アミノ酸の単独重合体若しくは共重合体又はこれらの誘導体(例えばステアリル化誘導体);ポリエチレンイミン、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、グルコサミン等のポリカチオン性ポリマー;硫酸プロタミン等が挙げられる。カチオン性物質が有するカチオン性基の数は特に限定されるものではないが、好ましくは2個以上である。カチオン性基は正に荷電し得る限り特に限定されるものではなく、例えば、アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基等のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;イミノ基;グアニジノ基等が挙げられる。
「アニオン性物質」とは、その分子中にアニオン性基を有する物質を意味する。アニオン性物質の種類は特に限定されるものではなく、例えば、アニオン性脂質;アニオン性基を有する高分子;ポリアスパラギン酸等の酸性アミノ酸の単独重合体若しくは共重合体又はこれらの誘導体;キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースポリスチレンスルホン酸塩、ポリサッカライド、カラギーナン等のポリアニオン性ポリマー等が挙げられる。アニオン性物質が有するアニオン性基の数は特に限定されるものではないが、好ましくは2個以上である。アニオン性基は負に荷電し得る限り特に限定されるものではなく、例えば、末端カルボキシル基を有する官能基(例えば、コハク酸残基、マロン酸残基等)、リン酸基、硫酸基等が挙げられる。
目的物質を凝集化させる場合、凝集化した目的物質の粒径は通常50〜200nm、好ましくは50〜100nm、さらに好ましくは50〜70nmである。凝集化した目的物質の粒径が上記範囲にあると、凝集した目的物質をリポソームの内部に効率よく封入することができる。
負電荷被封入体のゼータ電位は、通常−40〜−10mV、好ましくは−40〜−20mV、さらに好ましくは−40〜−30mVであり、正電荷被封入体のゼータ電位は、通常10〜40mV、好ましくは20〜40mV、さらに好ましくは30〜40mVである。ゼータ電位の測定条件は特に限定されるものはないが、温度条件は通常25℃である。
次に、目的物質が封入されたリポソームを作製する工程について説明する。
目的物質が封入されたリポソームを作製するにあたり、まず、膜中に界面活性剤を含み全体として負に帯電するリポソームと、目的物質を含み全体として正に帯電する被封入体とを接触させるか、あるいは、膜中に界面活性剤を含み全体として正に帯電するリポソームと、目的物質を含み全体として負に帯電する被封入体とを接触させる。
負帯電SUV型リポソーム又は正帯電SUV型リポソームと正帯電被封入体又は負帯電被封入体とを接触させる条件は特に限定されるものではないが、温度は通常20〜35℃、好ましくは25〜30℃であり、pHは通常6.5〜7.5、好ましくは7.0〜7.5であり、時間は10〜30分間、好ましくは20〜30分間である。接触させる際に用いる溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、HEPES緩衝液、生理食塩水、ショ糖溶液等を用いることができる。溶媒中に分散させる負帯電SUV型リポソーム又は正帯電SUV型リポソームの量は、通常、正帯電被封入体又は負帯電被封入体に対して過剰量であり、例えば、正帯電被封入体又は負帯電被封入体の封入に理論上最低限必要なリポソーム量の10倍量である。
負帯電SUV型リポソームと正帯電被封入体とを接触させると、負帯電SUV型リポソームと正帯電被封入体とは静電的相互作用を介して結合し、正帯電被封入体の表面は多数の負帯電SUV型リポソームによって覆われる。正帯電SUV型リポソームと負帯電被封入体とを接触させると、正帯電SUV型リポソームと負帯電被封入体とは静電的相互作用を介して結合し、負帯電被封入体の表面は多数の正帯電SUV型リポソームによって覆われる。
接触後、負帯電SUV型リポソーム又は正帯電SUV型リポソームの膜中に含まれる界面活性剤を除去する。
リポソーム膜中に含まれる界面活性剤の除去は、界面活性剤が結合可能なビーズを用いた方法、ゲルろ過、透析等の常法に従って行うことができるが、目的物質が封入されたリポソームを迅速に作製する点から、界面活性剤が結合可能なビーズを用いた方法を採用することが好ましい。
界面活性剤が結合可能なビーズを用いて界面活性剤を除去する際、ビーズによる処理時間は通常1〜5分間、好ましくは1〜3分間であり、ビーズを用いることにより界面活性剤を迅速に除去することができる。
界面活性剤が結合可能なビーズとしては、例えば、疎水性多孔質ビーズを用いることができる。疎水性多孔質ビーズは、界面活性剤の疎水基が結合可能である限り特に限定されるものではなく、例えば、スチレン系、アクリル系等の合成樹脂(例えば、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体)からなる多孔質ビーズ等を用いることができる。疎水性多孔質ビーズの粒径は通常0.5〜1mm、好ましくは0.5〜0.7mmである。疎水性多孔質ビーズは通常球状であるが、不定形であってもよい。
リポソーム膜中の界面活性剤を除去すると、被封入体の表面を覆っていた負帯電SUV型リポソーム同士又は正帯電SUV型リポソーム同士が膜融合し、被封入体は脂質コーティングされ、目的物質が封入されたリポソームが作製される。
目的物質が封入されたリポソームは、目的物質の細胞内送達用ベクターとして使用することができる。
目的物質を送達すべき細胞が由来する生物種は特に限定されるものではなく、動物、植物、微生物等のいずれであってもよいが、動物であることが好ましく、哺乳動物であることがさらに好ましい。哺乳動物としては、例えば、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモット等が挙げられる。また、目的物質を送達すべき細胞の種類は特に限定されるものではなく、例えば、体細胞、生殖細胞、幹細胞又はこれらの培養細胞等が挙げられる。
目的物質が封入されたリポソームは、例えば、分散液の状態で使用することができる。分散溶媒としては、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液等の緩衝液を使用することができる。分散液には、例えば、糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、抗酸化剤、pH調節剤、水和促進剤等の添加剤を添加して使用してもよい。
目的物質が封入されたリポソームは、in vivo及びin vitroのいずれにおいても使用することもできる。in vivoにおいて使用する場合、投与経路としては、例えば、静脈、腹腔内、皮下、経鼻等の非経口投与が挙げられ、投与量及び投与回数は、リポソームに封入された目的物質の種類や量等に応じて適宜調節することができる。
目的物質が封入されたリポソームの表面には、細胞膜結合性物質を導入することが好ましい。これにより、リポソームのエンドサイトーシス効率を効果的に向上させることができる。
細胞膜結合性物質としては、例えば、細胞膜の表面上に存在する受容体又は抗原と結合できる物質、具体的には、トラスフェリン、インシュリン、葉酸、ヒアルロン酸、抗体又はその断片、糖鎖、成長因子、アポリポタンパク質等が挙げられる。
成長因子としては、例えば、上皮成長因子(EGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)等が挙げられる。アポリポタンパク質としては、例えば、アポA−1、アポB−48、アポB−100、アポE等が挙げられる。抗体の断片としては、例えば、Fab断片、F(ab)'2断片、単鎖抗体(scFv)等が挙げられる。
細胞膜結合性物質は、例えば、リポソーム表面の親水性ポリマーに結合させることにより、リポソーム表面に導入することができる。例えば、親水性ポリマーが有する官能基(親水性ポリマーに人為的に導入された官能基を含む。)と細胞膜結合性物質が有する官能基(細胞膜結合性物質に人為的に導入された官能基を含む。)を反応させることにより、細胞膜結合性物質を共有結合を介して親水性ポリマーに結合させることができる。共有結合を形成できる官能基の組み合わせとしては、例えば、アミノ基/カルボキシル基、アミノ基/ハロゲン化アシル基、アミノ基/N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、アミノ基/ベンゾトリアゾールカーボネート基、アミノ基/アルデヒド基、チオール基/マレイミド基、チオール基/ビニルスルホン基等が挙げられる。
〔実施例1〕
1.材料
ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(Dioleoylphosphatidylethanolamine,以下「DOPE」という)及びジステアリルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコース2000(distearylphsphatidylethanolamine-polyethylenglycol 2000,以下「DSPE-PEG2000」という)は、AVANTI社から購入した。
ポリ-L-リシン(Poly-L-lysine,以下「PLL」という)(分子量:27400)、ジセチルホスフェート(dicetylphosphate,以下「DCP」という)、holo-トランスフェリン(以下「Tf」という)、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(3-(2-pyridyldithio) propionic acid N-hydroxysuccinimide ester,以下「SPDP」という)及びジチオトレイトール(dithiothreitol,以下「DTT」という)は、SIGMA社から購入した。
疎水性多孔性ビーズであるアンバーライトXAD-2は、オルガノ社から購入した。
ルシフェラーゼをコードするプラスミドDNA pCMV-luc(8454bp)は、EndFreeプラスミド・メガ・キット(Qiagen社)を用いて調製した。
ヒトの慢性骨髄性白血病細胞であるK562細胞は、10% ウシ胎仔血清を含むRPMI1640培地を用いてインキュベータ(37℃,5% CO2)中で培養した。
2.SUV*融合法によるMENDの調製
「MEND」は、非ウイルス性ベクターである多機能性エンベロープ型ナノ構造体であり、凝縮化DNAコアと脂質エンベロープとから構成されている。
「SUV*」は、膜中に界面活性剤を豊富に含む小さなリポソームであり、膜中に界面活性剤を含まないSUV(small unilamellar vesicle)とは区別される。
SUV*法は、図1に示すように、以下の3つのステップから構成される。
(i)DNA/PLL複合体(DPC)の形成(DNAの凝縮化)
(ii)正電荷を有するDPCと負電荷を有するSUV*との静電的相互作用
(iii)界面活性剤除去によるSUV*の膜融合(DPCの脂質コーティング)
SUV*融合法は、いくつかの長所を有している。すなわち、迅速で、単純で、穏やかである点、DPCの脂質コーティングは、SUV*の融合能力にのみ依存するため、SUV*融合法に使用する脂質は制限されない点である。
(1)DNA/PLL複合体の形成条件の検討
DNA/PLL複合体(DPC)の粒子径及び電荷は、負電荷を有するSUV*との静電的相互作用及びMENDのサイズに影響を与えるので、SUV*融合法によるMENDの構築において重要な因子である。すなわち、エンドシトーシスによるMENDの細胞内への取り込みの点からは、MENDの粒子径は小さいことが望ましく、粒子径が小さいMENDを構築するためには、粒子径が小さく正に帯電したDPCを得る必要がある。
そこで、粒子径が小さく正に荷電したDPCを形成するための条件の最適化を行った。PLL溶液(0.1mg/ml)にプラスミドDNA溶液(0.1mg/ml)を種々のN/P比で添加することによってDPCを調製し、DPCの粒子径及びゼータ電位を測定した。結果を図2に示す。なお、図2中、○は粒子径、■はゼータ電位を表す。
図2に示すように、N/P比が2.3より大きいとき、DPCの粒子径は約100nmであり、ゼータ電位はプラスであった。N/P比が1.8〜2.3のとき、DPC同士の凝集が認められた。N/P比が1.8のとき、DPCのゼータ電位がゼロ付近であったことから、このN/P比がDPCの見かけの等電点であると示唆される。N/P比が1.8よりも小さいとき、DPCの粒子径は約130nmであり、ゼータ電位はマイナスであった。これらの結果から、N/P比が2.3より大きいとき、粒子径が小さく正電荷を有するDPCが形成されることが明らかになった。しかしながら、N/P比が2.4よりも大きいと、DPC懸濁液中に含まれる過剰のPLLがSUV*とDPCとの静電的相互作用を妨げるおそれがあるため、DPCをN/P比 2.4の条件で調製することに決定した。
(2)DNA/PLL複合体(DPC)の形成
DNA及びPLLをそれぞれ5mM HEPESバッファー(pH 7.4)に溶解した。なお、DNAとしては、プラスミドDNA(FITC又はローダミンでラベル化されたDNAを20%含む)を用いた。次いで、DNA溶液(0.1mg/ml)及びPLL溶液(0.1mg/ml)を混合し、室温下、ボルテックスを用いて攪拌した。こうして、DNA/PLL複合体(DNA濃度 0.05mg/ml)が調製された。
(3)正電荷DPCと負電荷SUV*との静電的相互作用
5mM HEPESバッファーで調製したDPC(0.25mg/ml)を、脂質(DOPE / NBD(又はローダミン)標識化DOPE / DCP /DSPE-PEG-2000 = 77:5:8:10(モル比))及び界面活性剤オクチルグルコシド(octylglucoside)の混合液に加えた。DNA、脂質及び界面活性剤の最終濃度はそれぞれ0.023mg/ml、49μM及び18mMであった。この条件においてSUV*が形成される(Kashiwagi H., Aizawa K., Ueno M. Chem. Lett. 2000, 134-135 (2000))。SUV*はDPCと静電的相互作用し、DPCに結合してDPC表面を覆うと考えられる。なお、SUV*形成の形成方法には2通りの方法があり、一つは、リポソーム(SUVであってもよいし、SUV以外のリポソームであってもよい)を形成した後、外部から界面活性剤を加えて、リポソーム膜に分配させる方法であり、もう一つは、CMC以上の界面活性剤で完全に可溶化した脂質(ミセル)を形成した後、界面活性剤の濃度を徐々に下げていくことにより、ミセルからベシクル(SUV*)を形成させる方法である。界面活性剤の濃度の下げ方としては、希釈する方法と除去する方法があり、本実施例では、脂質/界面活性剤ミセルを希釈することで、最終界面活性剤の濃度を調節し、SUV*を調製した。
(3)界面活性剤除去によるSUV*の膜融合(DPCの脂質コーティング)
DPC表面を覆っているSUV*から界面活性剤を取り除くために、0.12gの疎水性多孔性ビーズ(アンバーライトXAD-2)を5.27mlのSUV*/DPC懸濁液に加えた。さらに、界面活性剤を完全に除去するために1.2gのビーズを追加した。ビーズは、2400gで3分間の遠心分離によって除去した。MENDを単離・精製するために、得られたサンプルを不連続ショ糖密度勾配超遠心分離に供した。なお、ビーズによる処理時間は、1〜5分間とした。
(4)不連続ショ糖密度勾配超遠心分離によるMENDの単離・精製
MENDを含む懸濁液を不連続ショ糖密度勾配(0〜40%)上に重層し、20℃、160000gの条件で2時間、超遠心分離を行った。上部から1mlずつ画分を回収し、蛍光強度を測定した。その後、回収したMEND画分を、細胞内ロースチューブ(透過限界15,000ダルトン)を用いて、5mM HEPESバッファー(pH 7.4)に対する3時間以上の透析を3回行った。流体力学的直径は準弾性光散乱方法によって測定した。また、ゼータ電位は、電気泳動的光散乱分光測光器(ELS-8000)によって分析した。
不連続ショ糖密度勾配超遠心分離によるDNA及び脂質の分布解析結果を図3に示す。なお、図3中、●はDNA、□は脂質を示す。
図3に示すように、DNA含量の高い画分としてショ糖25〜40%の境界(画分#9)からMENDを回収することができた。一方、画分#1〜#3では、多量の脂質及び少量のDNAが認められた。おそらく、これらは空のリポソームと、封入されなかったDNAであると思われる。画分#9として単離されたMENDのDNA含有量は総DNAの30%であった。単離されたMENDの粒子径及びゼータ電位は、それぞれ155nm及び-24mVであった。MENDの電荷は負であり、DPCの電荷は正であったので、DPCが負電荷脂質によってコートされたことが明らかになった。
(5)フリーズフラクチャー電子顕微鏡観察
不連続ショ糖密度勾配超遠心分離で得られた画分を、凍結複製装置(FR-7000B、日立、日本)で-196℃で急速に凍結した。放電はPt/Cを用いて45°と90°の角度で行った。300メッシュのNiグリッド上にマウントされたレプリカは、走査型電子顕微鏡(JEM200 CX、JEOL)を用いて観察した。
不連続ショ糖密度勾配超遠心分離で単離されたMENDの電子顕微鏡写真を図4に示す。また、図4に示すように、MENDは球状粒子であることが明らかになるとともに、準弾性光散乱の結果と一致する粒子径(約150nm)を有することが確認された。
以上の結果から、MENDの構築に成功したことが明らかになった。
以前の報告(Ueno M.等, Chem. Lett. 1997, 217-218 (1997))では、SUV*同士の融合には時間(約6時間)が必要であることが示されているが、界面活性剤除去により短時間でSUV*同士の融合が誘起され、脂質コーティングが進行すると考えられる。おそらく、SUV*の脂質二重層の外層から界面活性剤が除去されることによって、SUV*の膜が不安定化するため、互いに密接してDPC表面に結合しているSUV*同士の膜融合が容易に誘起されると考えられる。また、PEG脂質が存在しない条件下ではMENDが構築できなかったことから、この系においてはPEG脂質は不可欠であった。
3.トランスフェリン修飾MENDの細胞への取り込み及び細胞内動態の観察
(1)トランスフェリン(Tf)によるMENDの修飾
TfによるMENDの修飾は、既知の方法(Kakudo T.等, Biochemistry 43, 5618-5628 (2004))に従って行なった。Tf(最終濃度62.5μM)を、室温で30分間、SPDP(最終濃度66μM)で処理した。得られた3-(2-pyridinedithio)propioyl(PDP)-Tfは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化されたSephadexG-25fineによるゲル濾過に供することによって、未反応のSPDPから分離した。さらに、3-mercaptopropyl-Tfを得るためにPDP-Tfを50mM DTTで室温、30分間処理することにより還元した後、SephadexG-25fineカラムで精製した。その後、1mol%のmaleimide化DSPE-PEG2000を含むMENDを3-mercaptopropyl-Tfと4℃で一晩インキュベートすることにより、MENDにTfを結合させた。未反応のTFは、反応混合物を160,000g、4℃で2時間遠心分離することにより除去した。Tf修飾MENDのTfをFe3+で再飽和させるため、Fe2(SO4)3EDTA(pH 7.4、Fe3+の最終濃度100μM)を添加し、平衡化した。
(2)Tf修飾MENDの細胞への取り込み及び細胞内動態の観察
Tf修飾MENDの懸濁液(0.5μg DNA)を、血清及び抗生物質を含まないRPMI1640培地(100mM Fe3+相当のFe2(SO4)3EDTA溶液を含む)に懸濁したヒト白血病細胞K562(5×104細胞/50μl)へ添加し、37℃で3時間インキュベートした。なお、K562細胞は、大量のTfレセプターを有している(Kakudo T.等, Biochemistry 43, 5618-5628 (2004))。3時間後、10% ウシ胎仔血清を含むRPMI1640培地 1mlを追加し、さらに15時間インキュベートした。Tf修飾MENDで処理した後、エンドソーム/リゾソーム染色色素Lysosensor(最終濃度1μM)で30分間細胞を染色した。その後、細胞をPBSで2度洗浄し、共焦点レーザー顕微鏡(LSM510、カール・ツァイス)によって観察した。
共焦点レーザー顕微鏡によるMENDの細胞内動態の観察結果を図5(A)に示す。図5(A)に示すように、ローダミンラベル化DNA(赤)とNBDラベル化脂質(緑)が細胞質中で黄色として観察され、共局在していることが確認された。この結果は、DNAが脂質でコートされていることを示唆するものである。
細胞への取り込みメカニズムがエンドサイトーシスであることを確認するために、ローダミンラベル化DNAを含むTf-MENDとインキュベートした細胞をエンドソーム/リソゾーム染色試薬であるLysosensorによって染色した結果を図5(B)に示す。図5(B)に示すように、ローダミンラベル化DNA(赤)を含むTf-MENDがエンドソーム画分(緑)と共局在していることから、MENDがエンドソーム内に存在していることが確認された。しかしながら、遺伝子発現は認められなかった。本研究で構築したMENDは、エンドソーム脱出のための機能性素子を組み込んでいないため、Tf-MENDはエンドソームから脱出することができなかったと思われる。
〔実施例2〕
DNA(又は凝縮化DNA)及び脂質/界面活性剤ミセルの混合液から界面活性剤を除去することによって非ウイルス性遺伝子ベクターを調製する方法が、これまでにCullis等(Cullis P.R.等, Gene Ther. 6, 271-281 (1999) ; Cullis P.R.等, Methods Enzymol. 346, 36-71 (2002))、Mastrobattista等([5] Mastrobattista E.等, Cancer Gene Ther. 8, 405-413 (2001))によって報告されており、MENDもミセルを用いて調製できる可能性がある。そこで、ミセルを用いてMENDを構築できるか否かを確認するために、MENDの構築における界面活性剤及び脂質の濃度の影響を検討した。なお、MENDの構築の成否は、ショ糖密度勾配遠心法によって評価した。結果を図6に示す。なお、図6中、○はMENDの構築成功を表し、×は失敗を表す。
図6に示すように、界面活性剤の濃度が25mM(OGPの臨界ミセル濃度(CMC))より高い条件では、MENDは構築できなかった。この条件では、これまでに報告されているように、脂質が完全に可溶化された状態であり、脂質/界面活性剤混合ミセルが形成されている(Ueno M.等, J. Membrane Science 41, 269-279 (1989) ; Ueno M.等, Chem. Lett. 1991, 1801-1804 (1991) ; Ueno M.等, Chem. Lett. 1997, 217-218 (1997) ; Kashiwagi H.等, Chem. Lett. 2000, 134-135 (2000))。ところが、界面活性剤濃度が25mMより低いという条件ではMENDの構築に成功した。特に、脂質濃度0.45μM、界面活性剤濃度18mM(図6(黒丸))の条件において、DNA封入率が最も高いMENDを得られた。以前に報告されたように、SUV*が形成される界面活性剤濃度はCMC付近であることと(Ueno M.等, J. Membrane Science 41, 269-279 (1989) ; Ueno M.等, Chem. Lett. 1991, 1801-1804 (1991) ; Ueno M.等, Chem. Lett. 1997, 217-218 (1997) ; Kashiwagi H.等, Chem. Lett. 2000, 134-135 (2000))、これらの結果から、ミセルではなくSUV*のみがMENDを構築できることが証明された。このため、SUV*融合法は、CullisらやMastrobattistaらの方法と大きく異なることが明らかとなった。なお、界面活性剤の物理化学的な性質は、SUV*融合法において非常に重要な因子の一つである。例えば、負電荷の界面活性剤コール酸ナトリウムを含んでいるSUV*は、それ自身の高い負電荷による反発作用のためSUV*同士の融合を引き起こすのには適切ではないと考えられる。また、非イオン性界面活性剤TritonX-100は、その非常に低いCMC(0.25 mM)によりSUV*の調製が困難であるため、SUV*融合法には適さないと考えられる。それゆえ、高いCMCを有する非イオン性界面活性剤octylglucosideがSUV*融合法のために最適であると考えられる。
〔実施例3〕
実施例1及び2で用いた脂質DOPEは膜融合性が高い脂質であるので、MENDの構築がSUV*の自発的膜融合によるものではないことを確認するために、界面活性剤を除去せずにサンプルを不連続ショ糖密度勾配超遠心分離に供した結果を図7に示す。図7中、●は界面活性剤を除去した場合のDNAの結果、■は界面活性剤を除去した場合の脂質の結果、○は界面活性剤を除去しない場合のDNAの結果、□は界面活性剤を除去しない場合の脂質の結果を示す。
図7に示すように、界面活性剤を除去した場合と比較して、目的のMEND(フラクション9)は1/3以下しか形成されず、DNAの多くは一番重い画分に移行してしまう(脂質でコートされていない)ことが明らかとなった。なお、界面活性剤を除去しなくても目的のMENDが形成されるのは、不連続ショ糖密度勾配超遠心分離に供する際、希釈されることで、界面活性剤がリポソーム膜から除去される(バルクへの分散)ためであると考えられる。この結果から、MENDの効率的な構築には界面活性剤の除去が必要であることが明らかとなった。
SUV*法の各ステップを表す図である。 DNA/PLL複合体(DPC)の粒子径及びゼータ電位の測定結果を示す図である。 不連続ショ糖密度勾配超遠心分離によるDNA及び脂質の分布解析結果を示す図である。 不連続ショ糖密度勾配超遠心分離で単離された多機能性エンベロープ型ナノ構造体(MEND)の電子顕微鏡写真を示す図である。 共焦点レーザー顕微鏡によるMENDの細胞内動態の観察結果を示す図である。 ショ糖密度勾配遠心法によるMENDの構築の成否評価を示す図である。 界面活性剤を除去せずにサンプルを不連続ショ糖密度勾配超遠心分離に供した結果を示す図である。

Claims (8)

  1. 膜中に界面活性剤を含み全体として負に帯電するSUV型リポソームと、目的物質を含み全体として正に帯電する被封入体とを接触させた後、前記SUV型リポソームの膜中に含まれる前記界面活性剤を除去することを特徴とする、目的物質が封入されたリポソームの作製方法。
  2. 膜中に界面活性剤を含み全体として正に帯電するSUV型リポソームと、目的物質を含み全体として負に帯電する被封入体とを接触させた後、前記SUV型リポソームの膜中に含まれる界面活性剤を除去することを特徴とする、目的物質が封入されたリポソームの作製方法。
  3. 前記被封入体が、カチオン性物質又はアニオン性物質と、前記カチオン性物質又は前記アニオン性物質に静電的相互作用を介して結合した目的物質とを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記被封入体のゼータ電位が10〜40mVであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 前記被封入体のゼータ電位が−40〜−10mVであることを特徴とする請求項2記載の方法。
  6. 前記被封入体の粒径が50〜200nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記界面活性剤が結合可能なビーズを用いて、前記SUV型リポソームの膜中に含まれる前記界面活性剤を除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記SUV型リポソームが、リポソーム構成物質と、臨界ミセル濃度の40%以上であって臨界ミセル濃度以下の界面活性剤とを混合することにより得られるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
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