JPWO2006070858A1 - 金属の除去方法及びポリマーの製造方法 - Google Patents

金属の除去方法及びポリマーの製造方法 Download PDF

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Abstract

ポリマー中から除去の困難なルテニウム錯体を、簡単かつ効率的に除去する方法、及びかかる方法を用いたポリマーの精製方法を提供すること。ルテニウム錯体の配位子に置換して配位可能な化合物を添加して、ルテニウム錯体を析出させる金属の除去方法、及びかかる方法を用いたポリマーの精製方法である。

Description

本発明は、金属の除去方法及びポリマーの製造方法に係り、詳しくは、ルテニウム錯体の除去方法及びルテニウム錯体が除去されたポリマーの製造方法に関する。
本願は、2004年12月28日に、出願された日本国特許出願第2004−380476号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、より優れた性質や機能をもつ高付加価値材料あるいは高機能材料としての高分子を得るために、その重合法の研究が盛んに行われており、これら重合反応においては、金属触媒がしばしば用いられている。かかる金属触媒を用いた重合法においては、製造されたポリマー中に金属触媒が残存し、この金属触媒を回収する様々な方法が提案されている(特許文献1〜5参照。)。
上記重合法の一つとして、リビングラジカル重合法が提案されており(例えば、非特許文献1参照。)、かかるリビングラジカル重合法においては、主として、銅錯体又はルテニウム錯体が触媒として用いられている。そして、かかる銅錯体を用いて製造されたポリマーから銅錯体を除去する方法としては、有機酸を添加する方法が提案されている(特許文献6参照。)。
特開平8−141407号公報 特開平6−41652号公報 特開2000−239210号公報 特開2001−48824号公報 特開2002−249457号公報 特開2003−147015公報 現代化学 2001年6月 34〜42頁
金属触媒が用いられる重合法においては、製造されたポリマー中に、金属触媒が残存するという問題がある。このような金属触媒を除去する方法は上記のように数多く提案されており、特許文献6に記載の銅錯体を除去する方法においては、銅錯体がイオンとして存在することから、有機酸によってトラップする手法が用いられている。他方、銅錯体は水に溶解するので、単に水洗処理することによっても、かなりの銅錯体を除去することができる。
これに対して、ルテニウム錯体は、水に不溶又は難溶なため、水洗処理による除去が極めて困難であり、この極めて除去し難いルテニウム錯体の効率的な除去方法が望まれていた。
本発明の課題は、ポリマー中から除去の困難なルテニウム錯体を、簡単かつ効率的に除去する方法、及びかかる方法を用いたポリマーの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、重合触媒としてルテニウム錯体を用いて製造したポリマーから、カラム精製や吸着法のような非工業的な方法ではなく、工業的なルテニウム錯体を除去する方法の開発に取り組み、鋭意検討した結果、反応系に、ルテニウム錯体の配位子に置換して配位可能な化合物を添加することにより、例えば、以下に示すような反応によりルテニウム錯体を析出可能とし、これにより、簡単かつ効率的にルテニウム錯体を除去することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
Figure 2006070858
すなわち本発明は、(1)重合系からルテニウム錯体に含まれる金属ルテニウムを除去する方法であって、前記ルテニウム錯体の配位子に置換して配位可能な化合物を添加し、配位子が置換された他のルテニウム錯体を析出させる工程を有することを特徴とする金属ルテニウムの除去方法や、(2)重合系が、リビングラジカル重合の系であることを特徴とする前記(1)に記載の金属ルテニウムの除去方法や、(3)リビングラジカル重合の反応促進剤として、3級アミンが用いられることを特徴とする前記(2)に記載の金属ルテニウムの除去方法や、(4)ルテニウム錯体の配位子に置換して配位可能な化合物が、ニトリル化合物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属ルテニウムの除去方法や、(5)ルテニウム錯体が、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属ルテニウムの除去方法(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の金属ルテニウムの除去方法を用いて金属を除去して精製されたことを特徴とするポリマーの製造方法に関する。
本発明によれば、ポリマーやポリマー回収後の重合溶液中から簡単かつ効率的にルテニウム錯体を除去することができ、また、ルテニウム錯体が十分に除去され精製されたポリマーを得ることができる。
本発明の金属の除去方法としては、重合系からルテニウム錯体を除去する方法であって、前記ルテニウム錯体の配位子に置換して配位可能な化合物を添加し、配位子が置換された他のルテニウム錯体を析出させる工程を有する方法であれば特に制限されるものではなく、重合されたポリマーやポリマー回収後の重合溶液からの除去方法であり、具体的には、ルテニウム錯体を触媒とした種々の重合法、例えば、リビングラジカル重合法により重合されたポリマーやその重合溶液からの除去方法である。ルテニウム錯体の析出の態様としては、分散状態、沈殿状態等が挙げられ、その後、普通濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過、デカンテーション等によりルテニウム錯体を除去することができる。本発明の金属除去方法により、ルテニウム錯体残存率を10ppm以下にまで除去することが可能である。
本発明におけるルテニウム錯体としては、ルテニウム金属を中心としてその周囲に配位子を有してなる錯体であれば特に制限されるものではなく、錯体を形成する配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン等の炭素数18〜54のトリアリールホスフィン;トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン等の炭素数3〜18のトリアルキルホスフィン;トリフェニルホスファイト等のトリアリールホスファイト;ジフェニルホスフィノエタン;ヨウ素、臭素、塩素等のハロゲン原子;一酸化炭素;水素原子;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、シクロオクタテトラエン、インデン、ノルボルナジエン、ベンゼン、シメン、4−イソプロピルトルエン、シクロペンタジエニルトルエン、インデニルトルエン、2−メチルペンテン、2−ブテン、アレン等の炭化水素配位子;フラン、フェノール、サリシリデン、カルボン酸等の含酸素系配位子;他のカルコゲナイド;含窒素系配位子;等が挙げられる。
前記炭化水素配位子は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のC1〜C4アルキル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のC2〜C5アルケニル基等のアルケニル基;アルキニル基;メトキシ基等のC1〜C4アルコキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基等のC1〜C4アルコキシ−カルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセチル基等のC2〜C5アシル基等のアシル基;ホルミル基、アセチルオキシ基等のC2〜C5アシルオキシ基等のアシルオキシ基;カルボキシル基;ヒドロキシル基;アミノ基;アミド基;イミノ基;ニトロ基;シアノ基;チオエステル基;チオケトン基;チオエーテル基;塩素、臭素等のハロゲン原子;等が挙げられる。置換基を有する炭化水素配位子の具体例としては、例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニル等が挙げられる。
また、前記例示した配位子以外に、水酸基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基等のアルコキシ基;アセチル、プロピオニル基等のアシル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセチルアセトナート等のβ−ジケトン基;アセチルアセテート等のβ−ケトエステル基;CN、チオシアナート(SCN)、セレノシアナート(SeCN)、テルロシアナート(TeCN)、SCSN、OCN、ONC、アジド(N)等の擬ハロゲン基;酸素原子;HO;NH、NO、NO、NO、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリブチルアミン、1,3−ジイソプロピル−4,5−ジメチルイミダゾール−2−イリデン、ピリジン、フェナントロリン、ジフェナントロリン、置換フェナントロリン、2,2’:6’,2’’−ターピリジン、ピリジンイミン、架橋脂肪族ジアミン、4−4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン、チオシアネート、O,S,Se,Teの配位したビピリジン、アルキルイミノピリジン、アルキルビピリジニルアミン、アルキル置換トリピリジン、ジ(アルキルアミノ)アルキルピリジン、エチレンジアミンジピリジン、トリ(ピリジニルメチル)アミン等の窒素含有化合物;等を有していてもよい。
本発明におけるルテニウム錯体の具体例としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(トリアルキルホスフィン)p−シメンルテニウム、ジクロロビス(トリシメンホスフィン)スチリルルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロベンゼンルテニウム、ジクロロ p−シメンルテニウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム、ジクロロトリス(1,10−フェナントロリン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドロテトラ(トリフェニルホスフィン)ルテニウム;ジカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化ルテニウム(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニル臭化ルテニウム(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニル塩化ルテニウム(II)、ジカルボニルインデニルヨウ化ルテニウム(II)、ジカルボニルインデニル臭化ルテニウム(II)、ジカルボニルインデニル塩化ルテニウム(II)、ジカルボニルフルオレニルヨウ化ルテニウム(II)、ジカルボニルフルオレニル臭化ルテニウム(II)、ジカルボニルフルオレニル塩化ルテニウム(II)、ジクロロ−ジ−2、6−ビス[(ジメチルアミノ)−メチル](μ−N)ピリジンルテニウム(II)等が挙げられる。
これらの中でも、重合活性が優れるという観点から、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム;ジカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化ルテニウム(II)等が好ましく、さらにポリマー中からの除去の容易さを考慮すると、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムが特に好ましい。
ルテニウム錯体の配位子に置換して配位可能な化合物としては、ニトリル化合物、PPhのような(アルキル)リン系化合物、活性水素をもったアミン等が挙げられ、これらの中でもニトリル化合物が好ましい。かかるニトリル化合物としては、置換基を有していてもよいアルキルニトリル、置換基を有していてもよいアリールニトリルが挙げられ、アルキルニトリルとしては、C1〜C12アルキルニトリルが好ましく、具体的に、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、マロノニトリル、オキサロニトリル、スクシノニトリル、アクリロニトリル、フマロニトリル、マレイン酸ニトリル等が挙げられる。アリールニトリルとしては、C6〜C14アリールニトリルが好ましく、具体的には、ベンゾニトリル、2-ナフチルニトリル、1-ナフチルニトリル、テレフタロニトリル等が挙げられる。置換基としては、水酸基、アルコキシ基等、ルテニウム錯体の配位子に置換して配位することを阻害しないものであれば特に制限されない。
上記ルテニウム錯体の配位子に置換して配位可能な化合物の添加量としては、過剰量であれば特に問題なく、除去しようとするルテニウム錯体における配位子の置換の容易さや置換する配位子の数等にもよるが、一般に、ルテニウム錯体に対して、1〜100モル当量であり、好ましくは、2〜50モル当量である。例えば、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムに対しては、ニトリル化合物(アセトニトリル)を2〜50モル当量添加することが好ましく、10〜20モル当量添加することがより好ましい。
本発明のポリマーの製造方法としては、上記本発明の金属の除去方法を用いて金属を除去して精製する方法であれば特に制限されるものではなく、本発明のポリマーの製造方法により、ルテニウム錯体含有率が10ppm以下のポリマーを得ることが可能である。
本発明において、ルテニウム錯体の配位子に置換して配位可能な化合物を反応系に添加するタイミングとしては、原料モノマー等と共に重合反応開始当初から添加してもよいし、重合反応がある程度進んだ中期以降の段階で添加してもよいし、重合反応終了後に添加してもよいが、ポリマーの分子量を制御して分子量分布のより狭いポリマーを得ることができることから、中期以降に添加することが好ましく、重合反応終了後に添加することがより好ましい。中期以降の段階で添加するとは、重合反応が5割以上進んだ段階で添加することを意味し、重合反応が7割以上進んだ段階で添加することがより好ましく、重合反応が9割以上進んだ段階で添加することがさらに好ましい。また、重合反応終了後に添加する場合、冷却することなく(重合温度程度で)添加することもでき、冷却後に添加することも可能である。
本発明におけるリビングラジカル重合法としては、例えば、ハロゲン原子を分子内に1つ以上有する有機ハロゲン化合物を開始剤とし、ルテニウム錯体を触媒として重合反応を行うリビングラジカル重合法が挙げられる。用いる触媒の量は、求める分子量により適宜選択することができるが、一般に、使用する原料モノマーに対して1〜50モル%であることが好ましく、5〜45モル%であることがより好ましく、20〜40モル%であることがさらに好ましい。
本発明におけるリビングラジカル重合法においては、さらに、前記ルテニウム錯体に作用することによりラジカル重合を促進させる反応促進剤(活性化剤)として、ルイス酸及び/又はアミン類を使用することができる。ルイス酸を用いることにより、ルテニウム錯体の除去がより効果的に行われ、また、アミン類を用いることにより、アミン類は金属を含有しないので、製造されるポリマーの総金属含有量が低減される。
用いるルイス酸としては特に制限されないが、例えば、下記式(1)又は(2)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2006070858
Figure 2006070858
式中、Mは、Sc、Y等の周期表3族元素、又はB、Al、Ga、In等の周期表13族元素を示す。なかでも、MとしてはSc、B、Al等が好ましく、Sc、Alがより好ましい。Mは、Ti、Zr、Hf等の周期表4族元素、又はSi、Sn、Pb等の周期表14族元素を示す。なかでも、Mとしては、Ti、Zr、Sn等が好ましい。
30〜R33は、それぞれ独立してハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基を表す。R30〜R33のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基としては、前記R20〜R22の具体例として例示したものと同様のものが挙げられる。
30〜R33のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。アルコキシ基としては、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。シクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等のC4〜C12シクロアルキルオキシ基、好ましくはC4〜C8シクロアルキルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基等のC6〜C13アリールオキシ基等が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のC7〜C14アラルキルオキシ基等が挙げられる。
30〜R33のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。例えば、アリールオキシ基は、芳香環上に、例えばC1−C5アルキル基等を一つ又はそれ以上有していてもよい。具体的には、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−エチルフェノキシ基、3−エチルフェノキシ基、4−エチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジエチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジ−n−ブチルフェノキシ基、2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基等が挙げられる。これらの中でも、R30〜R33としては、ハロゲン原子又はアルコキシ基が好ましい。
前記式(1)で表される化合物としては、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリs−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトキシド、アルミニウムトリフェノキシド等のアルミニウムのC1〜C4アルコキシド又はアリールオキシド;メチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)、メチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)等のアルミニウムアルコキシド、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム等のアルミニウムトリハライド等のアルミニウムハライド等のアルミニウム系ルイス酸;スカンジウムトリイソプロポキシド等のスカンジウムアルコキシド、三塩化スカンジウム、三臭化スカンジウム、三ヨウ化スカンジウム等のスカンジウムハライド等のスカンジウム系ルイス酸;等が挙げられる。
前記式(2)で表される化合物としては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラt−ブトキシド、チタンテトラフェノキシド、クロロチタントリイソプロポキシド、ジクロロチタンジイソプロポキシド、トリクロロチタンイソプロポキシド等のチタンアルコキシド;四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等のチタンハライド等のチタン系ルイス酸;
ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラt−ブトキシド等のジルコニウムアルコキシド、四塩化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム等のジルコニウムハライド等のジルコニウム系ルイス酸;スズテトライソプロポキシド等のスズアルコキシド、四塩化スズ、四臭化スズ、四ヨウ化スズ等のスズハライド等のスズ系ルイス酸;等が挙げられる。
これらの中でも、ルイス酸としては、Al、Sc、Ti、Zr又はSnの化合物が好ましく、これらの金属の金属アルコキシドがより好ましい。具体例としては、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリs−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド;スカンジウムトリイソプロポキシド等のスカンジウムアルコキシド;チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラt−ブトキシド、チタンテトラフェノキシド等のチタンアルコキシド;ジルコニウムテトライソプロポキシド等のジルコニウムアルコキシド;スズテトライソプロポキシド等のスズアルコキシド;等が挙げられる。これらのルイス酸は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
アミン類としては、特に制限されないが、2級アミン、3級アミンが好ましく、ルテニウム錯体の除去率が高いことから、3級アミンが特に好ましい。
2級アミンとしては、具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−イソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、モルホリン等が挙げられる。
3級アミンとしては、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N',N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン等が挙げられる。
本発明においては、アミン類として、同一分子内に、1級アミン部分、2級アミン部分、及び3級アミン部分から選ばれる少なくとも2つ以上の部分を有する化合物を使用することもできる。その具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチルペンタミン、4−(2−アミノエチル)ピペリジン等が挙げられる。これらのアミン類は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
ルイス酸及び/又はアミン類の総使用量は、前記ルテニウム錯体1モルに対して、通常、0.1〜20モル、好ましくは0.2〜10モルである。
重合方法は、特に限定されず、慣用の方法、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳液重合等を挙げることができるが、溶液重合が特に好ましい。用いる有機溶媒としては特に制限されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、断続的にブロック重合を行う場合、各重合反応ごとに異なる溶媒を用いても構わない。
重合温度は、通常、室温から200℃、好ましくは40〜150℃である。また、重合時間は反応規模にもよるが、通常、0.5〜100時間である。重合反応の停止は、反応系の温度を下げることにより行うことができる。
重合反応終了後は、カラム精製、減圧精製、濾過等の通常の分離精製方法により、目的とするポリマーを単離することができる。なお、ポリマーを単離後、ポリマーを再溶解して、再沈澱処理を施すことが、よりポリマーが精製される点から好ましい。また、重合反応過程の追跡及び反応終了の確認は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、膜浸透圧法、NMR等により行うことができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
MMA(メチルメタクリレート 設定分子量20000) 10.0g(100mmol)、Al(Oi−Pr)0.20g(1mmol)、トルエン(モノマー濃度25wt%) 23.3gをフラスコに採取し、脱気した。この混合溶液にジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム 0.24g(0.25mmol)を加え、均一に混合した。さらに、反応開始剤としてのエチル 2−ブロモイソブチレート 0.098g(0.5mmol)を加え、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。
重合反応を開始して7時間後に、脱気したアセトニトリルを2g添加し、1時間撹拌した。反応液は5分程度で茶色から黄濁色に変化した。反応溶液を0℃に冷却した後、ろ過により沈殿物を除去した。ろ液を濃縮してTHFに溶媒置換した後、大量のメタノールで再沈した。この操作を三回繰り返し、得られたポリマーを60℃で5時間減圧乾燥した。白色結晶5.5g(単離収率55%)。GPC分析を行ったところ、Mn=15,600、Mw/Mn=1.19の単分散ポリマーであった。
[比較例1]
実施例1において、アセトニトリルを加えなかった。
実施例1において、再沈処理の前に10mlの水を用いた水洗処理を3回行った。
[比較例2]
実施例2において、アセトニトリルを加えなかった。
実施例1において、Al(Oi−Pr)の代えて、n−BuNを用いた。
[比較例3]
実施例3において、アセトニトリルを加えなかった。
実施例1において、RuCl(PPhの代えて、Ru(Cp)Cl(PPhを用いた。
[比較例4]
実施例4において、アセトニトリルを加えなかった。
実施例1において、アセトニトリルの代えて、3−ヒドロキシプロピオニトリルを用いた。
MMA(メチルメタクリレート 設定分子量20000) 10.0g(100mmol)、Al(Oi−Pr)0.20g(1mmol)、アセトニトリル 2g、トルエン 23.3gをフラスコに採取し、脱気した。この混合溶液に、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム 0.24g(0.25mmol)を加え、均一に混合した。さらに、エチル 2−ブロモイソブチレート 0.098g(0.5mmol)を加え、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。
重合反応を開始して20時間後に、反応溶液を0℃に冷却した。ろ過により沈殿物を除去し、ろ液を濃縮してTHFに溶媒置換した後、大量のメタノールで再沈した。この操作を三回繰り返し、得られたポリマーを60℃で5時間減圧乾燥した。白色結晶3.8g(単離収率38%)。GPC分析を行ったところ、Mw=103,000、Mw/Mn=1.52の単分散ポリマーであった。
[評価及び結果]
上記実施例1〜6及び比較例1〜4で製造したポリマーについて、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により、ルテニウム錯体の含有量を測定した。また、反応促進剤として、Al(Oi−Pr)を用いたものについては、ポリマー中のAl含有量についても測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2006070858
ルテニウム錯体としてRuCl(PPhを用いた反応系に、アセトニトリルを添加した実施例1〜3においては、いずれもルテニウム残存率が極めて低く、この除去効果は、それぞれ比較例1〜3と比べると明らかである。また、反応促進剤としてAl(Oi−Pr)を用いたものについては、水洗処理によりAlをほぼ除去することができることがわかった。また、用いる反応促進剤を比較した場合、いずれにおいてもルテニウム錯体は効果的に除去されたが、Al(Oi−Pr)(ルイス酸)を用いた場合の方が、ルテニウム除去率が高かった。
また、ルテニウム錯体としてRu(Cp)Cl(PPhを用いた反応系に、アセトニトリルを添加した実施例4においては、ルテニウム錯体としてRuCl(PPhを用いた実施例1〜3ほどではないものの、ルテニウム錯体が除去されていた。
実施例1におけるアセトニトリルに代えて、3−ヒドロキシプロピオニトリルを用いた実施例5においても、十分にルテニウム錯体が除去されていた。
また、重合開始時からアセトニトリルを加えた実施例6においても、十分にルテニウム錯体が除去されていた。
本発明によれば、ポリマーやポリマー回収後の重合溶液中から簡単かつ効率的にルテニウム錯体を除去することができ、また、ルテニウム錯体が十分に除去され精製されたポリマーを得ることができる。

Claims (6)

  1. 重合系からルテニウム錯体に含まれる金属ルテニウムを除去する方法であって、
    前記ルテニウム錯体の配位子に置換して配位可能な化合物を添加し、配位子が置換された他のルテニウム錯体を析出させる工程を有することを特徴とする金属ルテニウムの除去方法。
  2. 重合系が、リビングラジカル重合の系であることを特徴とする請求項1に記載の金属ルテニウムの除去方法。
  3. リビングラジカル重合の反応促進剤として、3級アミンが用いられることを特徴とする請求項2に記載の金属ルテニウムの除去方法。
  4. ルテニウム錯体の配位子に置換して配位可能な化合物が、ニトリル化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属ルテニウムの除去方法。
  5. ルテニウム錯体が、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムであることを特徴とする請求項1に記載の金属ルテニウムの除去方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の金属ルテニウムの除去方法を用いて金属を除去して精製されたことを特徴とするポリマーの製造方法。
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