JP4216941B2 - シクロアルカノンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化触媒存在下、シクロアルカンと分子状酸素とによりシクロアルカノンを製造する方法において、副生するシクロアルカノールを効率よく、シクロアルカノンに変換させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シクロアルカノンのうちシクロヘキサノンは、ナイロンの原料であるε−アミノカプロラクタムを製造する上で有用な化合物である。シクロヘキサノンの製造において、液相中、触媒として可溶性コバルト塩(例えば、コバルト0.1〜100ppm)の存在下、分子状酸素または分子状酸素を含有するガスを用いて、シクロヘキサンを酸化することによりシクロヘキサノンとシクロヘキサノールとを生成させ、さらに、副生したシクロヘキサノールを、脱水素反応器を用いて脱水素反応に供することにより、シクロヘキサノンに変換することが知られている(「化学便覧応用化学編」536頁、昭61.10.15版、日本化学会編、丸善)。 しかし、従来の方法では、副生物の生成量が多く、シクロヘキサノンの生成割合が低い上に、副生するシクロヘキサノールをさらに脱水素処理しなければならない。そのため、工程が煩雑になるばかりか、シクロヘキサノンを高い効率で得ることができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、シクロアルカノンを高い生成割合で製造できる方法を提供することにある。
【0004】
本発明の他の目的は、副生するシクロアルカノールを脱水素工程に供することなく、酸化反応系でシクロアルカノンを高い選択率で効率よく生成できる方法を提供することにある。
【0005】
本発明のさらに他の目的は、蒸留塔を使用してシクロアルカノールを分離してリサイクルするという簡単な構成で、シクロアルカノンを高い効率で変換できる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討の結果、シクロアルカンの酸化反応において、副生するシクロアルカノールを酸化反応系へリサイクルすることにより、効率よくシクロアルカノンに変換できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、酸化触媒の存在下、シクロアルカンと分子状酸素とを反応させる反応系において、副生するシクロアルカノールを前記反応系へリサイクルさせることにより、高効率でシクロアルカノンを製造する。
【0008】
シクロアルカンとしては、シクロヘキサンなどが利用でき、酸化触媒としては、下記式(I)で表されるイミド単位を有する化合物(特に、N−ヒドロキシフタル酸イミド)が利用できる。さらに酸化触媒は共酸化剤と併用してもよい。
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。)
なお、本発明には、酸化触媒の存在下、シクロアルカンと分子状酸素とを反応させる反応系において、副生するシクロアルカノールを蒸留器を用いて分離し、前記反応系へリサイクルさせるシクロアルカノンの製造方法も含まれる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、必要に応じて添付図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
本発明の方法においては、反応混合物からシクロアルカノンと、シクロアルカノールとを分離する工程と、分離したシクロアルカノールを酸化反応系にリサイクルする工程とを備えていればよい。
【0012】
図1は、本発明の製造方法を説明するためのフロー図である。この例では、混合槽1において、酸化触媒を含む触媒溶液を調製する工程と、(A)酸化反応装置2において、前記触媒溶液を用いてシクロアルカンと分子状酸素とを接触させてシクロアルカノンを生成させる工程と、(B1)得られた反応混合物から触媒を分離するための工程と、(B2)反応混合物から酸成分を分離する工程と、(C1)触媒及び酸成分が分離された反応混合物から低沸点成分を分離する工程と、(B3)シクロアルカンや水などの低沸点成分が分離された反応混合物から、カルボン酸エステルなどの不純物を分離する工程と、(C2)低沸点成分と不純物とが分離された反応混合物から、高沸点成分を分離する工程とを備えており、高沸点成分の分離工程(C2)において、シクロアルカノンとシクロアルカノールとを分離している。そして、分離、回収されたシクロアルカノールを前記反応装置2へリサイクルすることにより、シクロアルカノンを製造している。なお、酸化反応は、反応蒸留により行ってもよく、例えば、水及びシクロアルカンを共沸により留出させ、シクロアルカン相は、全還流させ、水相を抜き取る反応蒸留で進行させてもよい。また、反応混合物から分離された触媒は、必要により触媒再生工程を経て、混合槽1又は反応装置2へリサイクルしてもよい。
【0013】
また、触媒、酸成分又はその誘導体を分離する工程(B)は、反応混合物から前記触媒を分離する工程(B1)、酸成分を分離する工程(B2)およびカルボン酸エステルなどの不純物を分離する工程(B3)で構成され、シクロアルカンと、シクロアルカノールと、シクロアルカノンとを分離する工程(C)は、反応混合物から低沸点成分を分離する工程(C1)と、高沸点成分を分離する工程(C2)とで構成されている。
【0014】
(酸化触媒)
シクロアルカンと分子状酸素との酸化反応を触媒する酸化触媒としては、式(I)で表されるイミド単位を有する化合物(以下、単にイミド化合物という場合がある)が挙げられる。
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。)
好ましい酸化触媒は、下記式(II)で表される。
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、R1 及びR2 は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1 及びR2 は、互いに結合して二重結合、あるいは芳香族性又は非芳香族性環を形成してもよく、R1 及びR2 により形成される芳香族性又は非芳香族性環は、前記式(I)で示されるイミド単位を少なくとも1つ有していてもよい。Xは前記に同じ)
前記式(II)の化合物において、置換基R1 及びR2 のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素及びフッ素が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(好ましくは、C1-6 アルキル基、特にC1-4 アルキル基)が含まれる。
【0019】
アリール基には、フェニル基、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などのC3-10のシクロアルキル基が含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程度のアルコキシ基、好ましくはC1-6 アルコキシ基、特にC1-4 アルコキシ基が含まれる。
【0020】
アルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度のアルコキシカルボニル基(好ましくは、C1-6 アルコキシ−カルボニル基、C1-4 アルコキシ−カルボニル基)が含まれる。
【0021】
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6程度のアシル基が例示できる。
【0022】
前記置換基R1 及びR2 は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(II)において、R1 及びR2 は互いに結合して、二重結合、あるいは芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。芳香族性又は非芳香族性環は、前記式(I)で表されるイミド単位を少なくとも1つ(通常、1又は2)有していてもよい。このような環には、例えば、非芳香族性脂環族環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環が含まれる。前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。
【0023】
好ましいイミド化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。
【0024】
【化6】
【0025】
(式中、R3 〜R6 は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R1 、R2 及びXは前記に同じ)。
【0026】
置換基R3 〜R6 において、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン原子としては、前記と同様の基又は原子が例示できる。置換基R3 〜R6 は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。
【0027】
酸化触媒としてのイミド化合物は、酸化反応において一種又は二種以上使用できる。
前記式(I)で表されるイミド化合物に対応する酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸 1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環族多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環族多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。
【0028】
好ましいイミド化合物としては、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなどが挙げられる。特に好ましい化合物には、脂環族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミドなどが含まれる。
【0029】
[ 酸化触媒の製造工程]
前記イミド化合物は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH2 OHとを反応させて酸無水物基を開環した後、閉環してイミド化することにより調製できる。より具体的には、酸化触媒がN−ヒドロキシフタルイミドの場合、触媒原料として無水フタル酸とヒドロキシルアミンを使用し、反応で生成する水を除去しながら、反応蒸留により酸化触媒を製造してもよい。酸化触媒の製造は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。
【0030】
得られた酸化触媒は、そのまま触媒として後述の触媒溶液調製工程に供することができる。なお、後述のように、酸化触媒や共酸化剤は、反応混合液から分離し、必要に応じて再生し、反応系へリサイクルしてもよい。
【0031】
[ ヒドロキシルアミンの製造工程]
なお、酸化触媒原料のヒドロキシルアミンは、例えば、次のようにして製造できる。
【0032】
アンモニア(後述の触媒再生工程で副生されるアンモニアであってもよい)を分子状酸素により酸化し、窒素酸化物を生成させる。この酸化反応での触媒としては、白金系触媒が一般に使用される。この窒素酸化物を抽出溶媒(例えば、水など)により抽出してもよく、抽出に水を使用する場合には、後述の低沸点成分分離工程で分離した水を使用してもよい。抽出された窒素酸化物を、水素による水素添加反応に供し、ヒドロキシルアミンを製造できる。アンモニアを酸化する反応装置としては、特に制限されないが、チューブ反応器を使用する場合が多い。窒素酸化物の抽出装置としては、慣用の装置が使用できる。水素添加反応装置は、慣用の装置、例えば、攪拌槽型装置などが使用できる。前記反応は、連続式、回分式または半回分式などの慣用の方法により行うことができる。得られたヒドロキシルアミンは、そのまま酸化触媒製造工程、触媒再生工程に再使用してもよい。
【0033】
(共酸化剤)
前記イミド化合物を用いると、塩化銅などの共酸化剤を併用しなくても、酸化活性を高めることができ、穏和な条件であっても、酸化反応を触媒的に促進できる。そのため、シクロアルカンを効率よく高い選択率で酸化でき、シクロアルカノンを生成させることができる。さらに、前記一般式(I)で表される単位を有するイミド化合物と共酸化剤との共存下でシクロアルカンを酸化すると、転化率及び/又は選択率をさらに向上できる。
【0034】
助触媒としての共酸化剤には、金属化合物、例えば、遷移金属化合物や、ホウ素化合物などのように周期表13族元素(ホウ素B、アルミニウムAlなど)を含む化合物が含まれる。共酸化剤は、一種又は二種以上組合わせて使用できる。
【0035】
前記遷移金属の元素としては、例えば、周期表3族元素(例えば、スカンジウムSc、イットリウムYの外、ランタンLa、セリウムCe、サマリウムSmなどのランタノイド元素、アクチニウムAcなどのアクチノイド元素)、周期表4族元素(チタンTi、ジルコニウムZr、ハフニウムHfなど)、5族元素(バナジウムV、ニオブNb、タンタルTaなど)、6族元素(クロムCr、モリブデンMo、タングステンWなど)、7族元素(マンガンMnなど)、8族元素(鉄Fe、ルテニウムRu、オスミウムOsなど)、9族元素(コバルトCo、ロジウムRh、イリジウムIrなど)、10族元素(ニッケルNi、パラジウムPd、白金Ptなど)、11族元素(銅Cu、銀Ag、金Auなど)などが挙げられる。
【0036】
特に、前記式(I)で表されるイミド化合物と組合せたとき、Ceなどのランタノイド元素、Tiなどの4族元素、Vなどの5族元素、Mo、Wなどの6族元素、Mnなどの7族元素、Fe、Ruなどの8族元素、Co、Rhなどの9族元素、Niなどの10族元素、Cuなどの11族元素を含む化合物は、高い酸化活性を示す。
【0037】
共酸化剤(助触媒)は、前記元素を含み、かつ酸化能を有する限り特に制限されず、水酸化物などであってもよいが、通常、前記元素を含む金属酸化物、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、前記金属元素を含む配位化合物(錯体)やヘテロポリ酸又はその塩などである場合が多い。また、ホウ素化合物としては、例えば、水素化ホウ素(例えば、ボラン、ジボラン、テトラボラン、ペンタボラン、デカボランなど)、ホウ酸(オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸など)、ホウ酸塩(例えば、ホウ酸ニッケル、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガンなど)、B2 O3 などのホウ素酸化物、ボラザン、ボラゼン、ボラジン、ホウ素アミド、ホウ素イミドなどの窒素化合物、BF3 、BCl3 、テトラフルオロホウ酸塩などのハロゲン化物、ホウ酸エステル(例えば、ホウ酸メチル、ホウ酸フェニルなど)などが挙げられる。
【0038】
有機酸塩としては、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩などが例示され、無機酸塩としては、例えば、硝酸塩、硫酸塩又はリン酸塩などが挙げられる。また、ハロゲン化物としては、例えば、塩化物や臭化物などが例示できる。
【0039】
錯体を形成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基などのアルコキシ基、アセチル、プロピオニルなどのアシル基、メトキシカルボニル(アセタト)、エトキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル基、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、塩素、臭素などハロゲン原子、CO、CN、酸素原子、H2 O(アコ)、ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン)などのリン化合物、NH3 (アンミン)、NO、NO2 (ニトロ)、NO3 (ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。錯体又は錯塩において、同種又は異種の配位子は一種又は二種以上配位していてもよい。
【0040】
好ましい錯体には、前記遷移金属元素を含む錯体が含まれる。前記遷移金属元素と配位子とは適当に組合せて錯体を構成することができ、例えば、セリウムアセチルアセトナト、コバルトアセチルアセトナト、ルテニウムアセチルアセトナト、銅アセチルアセトナトなどであってもよい。
【0041】
ヘテロポリ酸を形成するポリ酸は、例えば、周期表5族又は6族元素、例えば、V(バナジン酸),Mo(モリブデン酸)及びW(タングステン酸)の少なくとも一種である場合が多く、中心原子は特に制限されない。ヘテロポリ酸の具体例としては、例えば、コバルトモリブデン酸塩、コバルトタングステン酸塩、モリブデンタングステン酸塩、バナジウムモリブデン酸塩、バナドモリブドリン酸塩などが挙げられる。
【0042】
なお、酸化触媒においてヘテロポリ酸は水素引抜き反応に関与すると予測され、コバルト化合物やホウ素化合物などは過酸化物分解に関与すると予測される。前記式(I)で表されるイミド化合物、又はこのイミド化合物(I)と前記共酸化剤とで構成される触媒系は、均一系であってもよく、不均一系であってもよい。また、触媒系は、担体に触媒成分が担持された固体触媒であってもよい。担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用いる場合が多い。固体触媒における触媒成分の担持量は、担体100重量部に対して、前記式(I)のイミド化合物0.1〜50重量部程度である。また、共酸化剤の担持量は、担体100重量部に対して、0.1〜30重量部程度である。
【0043】
[ 触媒溶液調製工程]
触媒溶液調製工程では、所定の触媒濃度に調整するため、前記酸化触媒を、他の成分(例えば、シクロアルカン、共酸化剤、溶媒など)と混合槽1で混合することにより、触媒溶液を調製している。
【0044】
なお、式(I)のイミド化合物と共酸化剤との割合は、例えば、イミド化合物/共酸化剤=95/5〜5/95(モル比)、好ましくは90/10〜20/80(モル比)、さらに好ましくは85/15〜50/50(モル比)程度である。また、触媒濃度は、触媒溶液の供給量に応じて、後述する酸化工程での触媒濃度となるように調整される。
【0045】
このように調整された触媒溶液は、酸化反応装置2へ供給される。
[ 酸化工程(A)]
酸化反応装置2において、酸化触媒又は共酸化剤の存在下、シクロアルカンを分子状酸素と反応させることにより、シクロアルカノンを生成させる。
【0046】
(シクロアルカン)
シクロアルカンとしては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、クロロシクロヘキサン、メトキシシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロドデカン、シクロペンタデカン、シクロオクタデカンなどのC4-20シクロアルカンなどが挙げられる。これらのシクロアルカンは、一種又は二種以上組合わせて使用してもよい。
【0047】
好ましいシクロアルカンには、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタンなどのC6-12シクロアルカンが挙げられる。通常、シクロヘキサンが使用される。
【0048】
なお、シクロヘキサンなどのシクロアルカンの酸化反応での転化率が10%以上であれば、相当優れた酸化方法であるとされていたが、このような酸化触媒を使用すると、例えば、酸素雰囲気下、シクロヘキサンと撹拌するだけで、シクロヘキサノンを高い選択率及び収率(約20〜60%またはそれ以上)で得ることができる。そのため、前記酸化方法は、シクロアルカンを酸化する上で有用である。
【0049】
(酸素源)
シクロアルカンの酸化に利用される分子状酸素は、特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素を使用してもよい。操作性及び安全性のみならず経済性などの点から、空気を使用するのが好ましい。
【0050】
分子状酸素の使用量は、通常、シクロアルカン1モルに対して、0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。シクロアルカンに対して過剰モルの分子状酸素を使用する場合が多い。
【0051】
分子状酸素を反応容器内に供給する場合、予め十分な分子状酸素を供給した後、密閉系で反応を行ってもよく、連続的に分子状酸素を流通させて行ってもよい。連続的に流通させる場合、酸素の流通速度は、例えば、単位容積1L当たり0.0001〜10Nm3 /分(例えば、0.1〜10Nm3 /分)、好ましくは0.01〜5Nm3 /分(例えば、0.1〜5Nm3 /分)程度である。
【0052】
(反応溶媒)
本発明の酸化方法は、反応に不活性な有機溶媒の存在下又は非存在下で行なうことができる。有機溶媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、これらの混合溶媒などが挙げられる。溶媒としては、有機酸、ニトリル類、アミド類を用いる場合が多い。なお、過剰量のシクロアルカンを用いることにより、シクロアルカンを反応溶媒として利用してもよい。
【0053】
特に、シクロヘキサンを基質及び溶媒として使用した場合には、溶媒を使用することなく酸化反応に供することができ、溶媒回収工程を省略できる。
酸化触媒(特に、式(I)のイミド化合物)の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、シクロアルカン1モルに対して0.001モル(0.1モル%)〜1モル(100モル%)、好ましくは0.01モル(1モル%)〜0.5モル(50モル%)、さらに好ましくは0.05モル〜0.30モル程度であり、0.05モル〜0.25モル程度である場合が多い。
【0054】
また、助触媒(共酸化剤)の使用量も、例えば、シクロアルカン1モルに対して0.001モル(0.1モル%)〜0.7モル(70モル%)、好ましくは0.005〜0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.3モル程度であり、0.005〜0.1モル程度である場合が多い。
【0055】
ヘテロポリ酸又はその塩を共酸化剤として使用する場合、シクロアルカン100重量部に対して0.1〜25重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部程度である。
【0056】
本発明の酸化反応では、比較的温和な条件であっても酸化反応が円滑に進行するという特色がある。反応温度は、例えば、0〜300℃、好ましくは30〜250℃、さらに好ましくは50〜200℃程度であり、通常、70〜180℃程度で反応する場合が多い。また、反応は、常圧または加圧下で行なうことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、1〜100atm(例えば、1.5〜80atm)、好ましくは2〜70atm、さらに好ましくは5〜50atm程度である場合が多い。反応時間(流通式反応においては滞留時間)は、反応温度及び圧力に応じて、例えば、1分〜48時間、好ましくは1〜36時間、さらに好ましくは2〜24時間程度の範囲から適当に選択できる。
【0057】
なお、反応温度及び/又は反応圧力が高い場合には、酸化反応速度を増加させることができるが、カルボン酸類や過酸化物が副生する場合もある。
酸化反応は、分子状酸素の存在下又は流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。反応は、水を除去しながら行う反応蒸留で行ってもよく、後述の低沸点成分の分離工程におけるデカンター5aなどの水分離装置と組み合わせて水を除去する反応蒸留で行ってもよい。装置としては、慣用の装置が使用でき、連続式又は半回分式反応装置では、シクロアルカンと分子状酸素(または分子状酸素を含有するガス)の一方の成分又は各成分とを1又は複数個所から供給してもよい。さらに、混合効率を高めるために、反応成分の供給口をノズル状に形成してもよい。各成分の添加順序は、特に制限されない。反応装置は、1槽でも2槽以上連続的に接続してもよい。
【0058】
[ 触媒分離工程(B1)]
酸化反応装置2の反応混合物は、必要により反応混合物を冷却して、1又は複数の濾過装置3を用いて濾過し、析出する触媒(例えば、N−ヒドロキシフタルイミド)を濾別している。冷却温度又は濾過温度は、0〜100℃、好ましくは5〜70℃、さらに好ましくは10〜50℃程度である。この工程の処理操作は、連続式、回分式又は半回分式で行うことができ、濾過装置としては、慣用の装置、例えば、遠心濾過、フィルタープレスなどが利用できる。
【0059】
また、分離された触媒(共酸化剤を含む)は、反応系へリサイクルしてもよく、焼却処理に供し、共酸化剤(例えば、コバルトなどの遷移金属)を回収して、再使用してもよい。この例では、濾過装置3により触媒成分が分離された反応混合物は、酸成分の分離工程(B2)を経て低沸点成分の分離工程(C1)に供される。
【0060】
なお、触媒分離工程では、慣用の方法(例えば、濾過、蒸留、晶析など)により触媒を分離できる。
[ 酸成分の分離工程(B2)]
反応混合物は、副生した高沸点の酸成分又はその誘導体(例えば、エステルなど)を含有する場合がある。そのため、通常、反応混合物は、抽出塔4における抽出や蒸留により高沸点の酸成分を除去して低沸点成分の分離工程に供される。抽出溶媒として水などを使用した場合、抽出された高沸点の酸及び水を含む成分は、後述する加水分解などによる不純物除去工程に再使用してもよい。
【0061】
また、抽出は、蒸留(抽出蒸留)により行ってもよい。抽出装置としては、慣用の装置が使用でき、これらの装置は、単独で又は二種以上組合わせて使用してもよい。
【0062】
[ 低沸点成分の分離工程(C1)]
酸化反応装置2の反応混合物には、低沸点成分(未反応のシクロアルカン、水、溶媒、低沸点不純物など)、高沸点成分(シクロアルカノン、シクロアルカノール、高沸点不純物など)が含まれている。図1において、酸成分が除去された反応混合物からの低沸点成分(低沸点不純物成分を含む)の分離は、1又は複数の蒸留塔(蒸留塔5、6)を用いて行われる。この蒸留操作により、第1の蒸留塔5の塔底からシクロアルカノンおよびシクロアルカノールを含む成分(高沸点成分)が留出し、塔頂からシクロアルカン、水などの低沸点成分を含む留出液が留出する。第2の蒸留塔6では、第1の蒸留塔5の塔頂からの留出液を、塔底から留出するシクロアルカンと、塔頂から留出する低沸点不純物とに分離している。なお、第1の蒸留塔5の塔頂からの留出液は、水を分離するため、デカンター5aを経て第2の蒸留塔6に供給されている。
【0063】
さらに、第2の蒸留塔6で分離されたシクロアルカンは、混合槽1又は酸化反応装置2へリサイクルしている。なお、デカンター5aで分離された水は、排水処理してもよいが、触媒原料(ヒドロキシルアミン)の製造工程において窒素酸化物を回収するための抽出水として使用してもよい。
【0064】
蒸留塔(回収塔)の段数は、例えば、5〜80段、好ましくは20〜60段程度であってもよい。蒸留操作は、シクロアルカンの種類に応じて、塔頂温度5〜180℃(好ましくは40〜120℃)程度、塔底温度50〜250℃(好ましくは70〜150℃)程度、圧力1mmHg〜20atm(好ましくは100mmHg〜5atm)程度であってもよく、慣用の方法、例えば、適当な還流比(例えば、0.1〜50、好ましくは1〜20程度)で留出分を還流させながら行うことができる。
【0065】
なお、低沸点成分の分離は、慣用の分離手段、例えば、濃縮、蒸留、蒸発、抽出などの分離手段、又はこれらを組合わせた分離手段が使用できる。低沸点成分の分離は、例えば、反応混合物から共沸により低沸点成分を分離してもよい。また、反応混合物から低沸点成分を分離するためには蒸留だけでもよいが、シクロアルカンを分離するために、1つの分離工程で行ってもよいが、複数の分離工程を組合わせるのが有利である。必要により蒸留塔5で蒸留された留分(低沸点成分)の冷却、及び留分中の水を除去するための分液(デカンターなど)とを組合わせて、水とシクロアルカン留分とを分離してもよい。さらに、シクロアルカン留分は、精製することなく、酸化反応系に反応原料として再使用してもよいが、不純物を分離して、高純度のシクロアルカンとし、反応の原料として再使用してもよい。
【0066】
[ 不純物分離工程(酸成分の誘導体を分離する工程)(B3)]
第1の蒸留塔5により低沸点成分を分離した混合物は、酸化反応において副生した高沸点の酸成分(例えば、カルボン酸など)の誘導体(例えば、エステルなど)などを含有する場合がある。これら不純物を分離するため、低沸点成分が分離された反応混合物を不純物分離工程に供するのが好ましい。この操作により、より高純度のシクロアルカノン、シクロアルカノールを得ることができる。
【0067】
図1において、低沸点成分が分離された反応混合物は、加水分解塔7に供給されて加水分解処理され、この処理液は、中和及び/又はけん化塔8において、混合物中の水を還流させながら、アルカリ(又はその塩)を用いて中和及び/又はけん化している。なお、加水分解塔7の水相は、高沸点不純物(触媒成分など)を含む場合があるため、触媒回収装置11に供給され、中和及び/又はけん化塔8の有機相(不純物が除去された反応混合物)は、分液器(デカンター8a)により水分を分離した後、高沸点成分分離工程に供される。
【0068】
なお、加水分解や中和及び/又はけん化による不純物の除去は、蒸留などにより行ってもよく、反応蒸留により行ってもよい。また、水、アルカリ又はその塩などを使用して、蒸発、抽出、抽出蒸留、中和、けん化などにより行うことができる。より効率的に不純物を除去するためには、これらの操作を組合わせて行うのが有利である。蒸発、抽出、抽出蒸留、中和、けん化の方法は、水、アルカリ又はその塩を用いて、連続式、回分式、又は半回分式で行ってもよい。さらに、1又は複数の分離工程で行ってもよい。
【0069】
この工程でのけん化温度は、50〜200℃、好ましくは80〜150℃程度である。圧力は0.001〜20atm、0.1〜15atm程度ある。
アルカリ又は塩としては、特に制限されないが、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)又はアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム)の水酸化物又は塩、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ土類金属炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)などが挙げられる。また、必要であれば、アンモニア又は有機塩基(アミン類など)を用いてもよい。好ましいアルカリは、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)である。
【0070】
アルカリ水溶液(又はスラリー)としては、通常、pHが7以上(好ましくは7〜10)程度の水溶液を用いることができる。
アルカリ水溶液(又はスラリー)の濃度は、幅広い範囲から選択できるが、通常、操作性がよい範囲から選択でき、例えば、1〜90重量%程度、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは10〜30重量%程度である。
【0071】
[ 高沸点成分の分離工程(シクロアルカノンの分離工程)(C2)]
低沸点成分および不純物が除去された反応混合物には、シクロアルカノン及びシクロアルカノールが含まれ、副生物、触媒(助触媒を含む)などの高沸点不純物が残存する場合がある。そのため、反応混合物を、高沸点成分の分離工程(蒸留塔9、10による分離工程)に供し、シクロアルカノンとシクロアルカノールとをそれぞれ分離するとともに、高沸点不純物(副生物、酸化触媒、共酸化剤など)も分離している。
【0072】
すなわち、図1において、高沸点成分の分離は、第1の蒸留塔9の塔底からの留出液を第2の蒸留塔10に供給し、塔頂からシクロアルカノン、塔底から高沸点不純物を留出させている。また、蒸留塔10において、シクロアルカノールをサイドカット(例えば、段数のうち、下から10〜80%の高さの段から)により分離している。この例では、蒸留塔10で分離されたシクロアルカノールを、前記反応装置2の反応系にリサイクルして、シクロアルカノールをシクロアルカノンに変換している。そのため、脱水素工程を経ることなく、効率よくシクロアルカノンを生成できる。なお、第1の蒸留塔9の塔頂からは、けん化工程の有機相に含まれている低沸点不純物が留出する。
【0073】
第1の蒸留塔9を利用すると、上記のように、反応混合物に前記不純物除去工程で、抽出、加水分解、けん化又は中和処理された処理物(中沸点不純物)が残存する場合、シクロアルカノンとシクロアルカノールとの分離に先立って、蒸留操作により中沸点不純物を除去できる。
蒸留塔(回収塔)の段数は、例えば、5〜80段、好ましくは20〜60段程度であってもよい。蒸留操作は、シクロアルカノンの種類に応じて、塔頂温度5〜200℃(好ましくは40〜120℃)程度、塔底温度50〜250℃(好ましくは70〜150℃)程度、圧力1mmHg〜20atm(好ましくは100mmHg〜5atm)程度であってもよく、慣用の方法、例えば、適当な還流比(例えば、0.1〜50、好ましくは1〜20程度)で留出分を還流させながら行うことができる。
【0074】
蒸留塔10の塔底から分離した高沸点不純物は、そのまま焼却処理してもよいが、共酸化剤(例えば、コバルトなどの遷移金属)を含む場合、触媒回収装置11に供給し、それらを分離し、触媒酸化反応系へ再使用してもよい。
【0075】
なお、高沸点成分の分離は、前記蒸留手段に限らず、慣用の分離手段、例えば、濃縮、蒸留、蒸発、抽出などの分離手段又はこれらを組合わせた分離手段が採用できる。好ましい分離手段は、少なくとも蒸留手段を含む。また、蒸留塔9の塔頂から中沸点不純物を留出させ、塔底からシクロアルカノールを留出させるとともに、シクロアルカノンをサイドカットにより分離することができる。
【0076】
さらに、高沸点成分の分離は、1又は複数の蒸留又は分離工程で行ってもよい。高純度のシクロアルカン及びシクロアルカノールを得るために、高沸点不純物及び中沸点不純物の分離を組合わせて行うのが有利である。
【0077】
[ リサイクル工程]
本発明では、蒸留塔10で分離されたシクロアルカノールを、前記反応装置2の反応系にリサイクルし、シクロアルカノールをシクロアルカノンに変換している。そのため、脱水素工程を経ることなく、リサイクルという簡単な操作で、シクロアルカノンを高い効率で生成させることができる。
【0078】
[ 触媒再生工程]
反応混合物中の触媒成分は、前記触媒分離工程(B1)、不純物除去工程(B1及びB2)及び高沸点成分分離工程(C2)により分離される。分離された酸化触媒は、触媒再生装置13に供給され、再生できる。反応により変質又は活性が低下した酸化触媒の再生は、変質した酸化触媒が、主に、イミド化合物に対応する多価カルボン酸又はその酸無水物(例えば、フタル酸イミド、無水フタル酸など)で構成されていることに着目して、ヒドロキシルアミンで処理又は反応させることにより酸化触媒を再生できる。ヒドロキシルアミンは、前記ヒドロキシルアミン製造工程で製造したヒドロキシルアミンを使用してもよい。また、再生反応は、生成するアンモニアなどを除去しながら行う反応蒸留により行ってもよい。
【0079】
反応は、前記酸化触媒製造工程と同様に、回分式、半回分式、連続式により慣用の方法で行うことができる。反応装置は、前記と同様の装置が使用でき、それら装置は一槽又は二槽以上使用してもよい。また、反応装置は、慣用の装置が使用でき、これらの装置は、前記触媒製造工程で使用した装置をそのまま使用してもよい。
【0080】
得られた酸化触媒(N−ヒドロキシフタルイミドなど)は、そのまま触媒として触媒溶液調製工程に使用してもよい。
共酸化剤は、前記のように金属成分を回収して、そのまま触媒として触媒溶液調製工程に使用してもよい。
【0081】
図2は、本発明の他の例を示すフロー図である。この例のプロセスは、反応により変質又は活性が低下した触媒を再生するための触媒再生プロセスを除いて、前記図1に示すプロセスと基本的に共通している。すなわち、濾過装置などの触媒分離装置3などにより反応混合物から分離された触媒成分は触媒再生装置13に供給される。この触媒再生装置13では、活性が低下又は変質した触媒成分(イミド化合物に対応する多価カルボン酸又はその酸無水物(例えば、フタル酸イミド、無水フタル酸など))をヒドロキシルアミンで処理又は反応させることにより再生している。再生反応は、酸素又は空気を供給するとともに、生成するアンモニアなどを除去しながら行われる。
【0082】
前記ヒドロキシルアミンは、次のようにして得ることができる。すなわち、アンモニア酸化器14においてアンモニア(前記触媒再生装置13から生成するアンモニアであってもよい)を分子状酸素により酸化し、窒素酸化物NOxを生成させる。この酸化反応での触媒としては、白金系触媒が一般に使用される。生成した窒素酸化物NOxは、回収塔15で回収される。NOxの回収は、抽出溶媒(例えば、水など)による抽出操作、晶析操作、蒸留操作などを利用して行うことができる。反応器16において、回収された窒素酸化物NOxを水素添加することによりヒドロキシルアミンを製造できる。このようにして得られたヒドロキシルアミンは、前記触媒再生装置13に供給される。
【0083】
前記触媒再生装置13で再生された触媒(イミド化合物)は、濾過装置などの分離器17により分離され、必要によりシクロアルカンなどと混合してタンク18に貯留される。このタンク18内の触媒は、使用に際して脱水塔19に供給され、脱水された後、前記触媒調製のための混合槽1へ供給される。一方、前記分離器17で分離された非触媒成分は、蒸留塔20に供給され、塔頂からの留出分(低沸点成分)は、前記低沸点成分の分離工程に供することができる。
[ 溶媒除去又は回収工程]
本発明の酸化反応に溶媒を使用する場合、溶媒を、その沸点に応じて、適当な工程(例えば、前記低沸点又は高沸点成分分離工程)で分離、回収してもよく、、溶媒回収装置をさらに付加して溶媒を分離、回収してもよい。分離した溶媒は、反応系にリサイクルしてもよく、前記触媒溶液の調製溶媒に使用してもよい。
【0084】
図3は本発明のさらに他の例を示すフロー図である。この例では、シクロアルカンなどの低沸点留出分よりも高い沸点を有する溶媒(例えば、酢酸など)を用いた方法において、溶媒を分離回収するためのプロセスが示されている。
【0085】
すなわち、反応装置2からの反応混合物は、蒸発器21に供給され、この蒸発器21の塔頂からの低沸点留出分は、前記と同様の低沸点成分の分離工程に供給される。一方、蒸発器21の塔底から留出する留出分(触媒成分、高沸点成分、溶媒など)は脱溶媒塔22に供給され、脱溶媒塔22の塔底からの留出分は、触媒分離装置3に供給され、分離装置3で分離された触媒成分は前記と同様な触媒再生装置13に供給される。触媒分離装置13により触媒成分が分離された高沸点成分は、前記酸成分分離工程に供することなく、加水分解塔7およびけん化塔8を経て、上記と同様の高沸点成分の分離工程に供給されている。
【0086】
一方、脱溶媒塔22の塔頂からの留出分は、溶媒として反応系にリサイクルされるとともに、混合タンク23において、前記触媒再生装置13で再生された触媒、前記低沸点成分の分離工程における第1の蒸留塔5の塔底からの留出分と混合され、混合タンク23の混合液は、触媒成分を回収及び脱水するための蒸留塔24に供給される。この蒸留塔24の塔頂からの留出分は、前記低沸点成分の分離工程に供され、蒸留塔24の塔底からの留出分は、前記触媒溶液を調製するための混合槽に供給される。
【0087】
なお、溶媒として、シクロアルカンなどの低沸点成分と同等又は低い沸点を有する溶媒を用いる場合には、低沸点成分の分離工程(例えば、第1の蒸留塔など)で溶媒を回収し、反応溶媒としてリサイクルすることができる。また、シクロアルカノン及びシクロアルカノールより高い沸点を有する溶媒を用いる場合には、シクロアルカノン及びシクロアルカノールを分離した後、溶媒を含む成分を酸化工程や触媒溶液調製工程に供してもよい。
【0088】
本発明において、酸化反応装置2の反応混合物は、触媒分離工程に供することなく、シクロアルカンを含む低沸点成分と、シクロアルカノン及びシクロルカノールを含む高沸点成分とに分離してもよい。
【0089】
図4は本発明の別の例を示すフロー図である。この例では、酸化反応装置2の反応混合物は、低沸点成分と高沸点成分とに分離するため、蒸留塔32に供給される。この蒸留塔32の塔頂からの低沸点留分は、前記と同様にシクロアルカンと低沸点不純物とを分離するため、第1の蒸留塔5及び第2の蒸留塔6に供給され、低沸点の分離工程(C1)に供される。
【0090】
一方、蒸留塔32の塔底からの高沸点留分(触媒成分、高沸点成分など)は、必要により反応混合物を冷却して、1又は複数の濾過装置33を用いて濾過し、析出する触媒を濾別している。触媒成分を分離した反応混合物は、高沸点成分と高沸点不純物とを分離するため、蒸留塔39に供給される。この蒸留塔39の塔頂からの留出分は、蒸留塔40に供給され、前記と同様にシクロアルカノンとシクロアルカノールとを分離するための高沸点成分の分離工程(C2)に供され、シクロアルカノールは反応装置2へリサイクルされる。また、蒸留塔39の塔底からの高沸点不純物は、触媒と高沸点酸成分又はその誘導体を含んでいる。そのため、この例では、蒸留塔39の塔底からの高沸点留出分は、触媒回収装置41に供給される。なお、高沸点不純物は、前記のように触媒、酸成分又はその誘導体の分離工程に供し、各成分を分離してもよい。
【0091】
なお、本発明において、前記触媒製造工程、ヒドロキシルアミン製造工程、触媒溶液調製工程、触媒分離工程、不純物分離工程、低沸点成分の分離工程、触媒再生工程、溶媒除去又は回収工程などは、必ずしも行う必要はないが、シクロアルカノンを高効率で得るためには、酸化工程、高沸点成分の分離工程及びリサイクル工程に加えて、低沸点成分の分離工程、および不純物分離工程を組み合わせて行うのが有利であり、触媒溶液調製工程を使用すると、安定してシクロアルカノンを得ることができる。
【0092】
また、各工程の順序は、特に制限されず、前記の方法と異なっていてもよい。例えば、反応混合物から低沸点成分を分離した後、低沸点成分が分離された反応混合物から触媒、酸成分又はその誘導体と高沸点成分とを分離し、高沸点成分からシクロアルカノンと、シクロアルカノールとを分離してもよく、反応混合物から触媒、酸成分又はその誘導体を分離し、これら不純物が分離された反応混合物から低沸点成分と高沸点成分とを分離してもよい。さらに、触媒、副生する酸成分又はその誘導体の分離操作は個別に行う必要はなく、1つの工程で行ってもよい。
【0093】
なお、酸化反応、加水分解やけん化工程において、反応装置としては、慣用の装置が使用でき、装置の形状は球形、円形などであってもよい。反応装置内部には、特別な装置を必要としないが、ドラフトのような内部の混合を制御するような装置や、多孔板のような内部を多室に分割するような装置を備えていてもよい。また、攪拌効率を高めるために、攪拌羽根のような機械的攪拌装置を有していてもよい。反応には、1又は複数の反応槽を用いてもよい。さらに、蒸留塔及び抽出蒸留塔としては、タナ段塔、多孔板塔、充填塔(規則充填塔、不規則充填塔)、泡鐘塔、バルブ塔などが使用できる。抽出装置としては、慣用の装置、例えば、ミキサーセトラー、多孔板塔、スプレー塔、充填塔、リング&プレート塔、回転円板抽出塔、カールカラムなどが例示できる。蒸発器としては、慣用の装置、例えば、自然循環式、水平管型蒸発器、自然循環式垂直短管型蒸発器、水平管下降膜型蒸発器、垂直長管下降膜型蒸発器、強制循環式水平管型蒸発器、強制循環式垂直管型蒸発器、攪拌膜型蒸発器などが例示できる。これらの装置は、1又は複数で使用してもよく、単独で又は二種以上組合わせて使用してもよい。
【0094】
【発明の効果】
本発明では、シクロアルカンの酸化反応により副生するシクロアルカノールを、酸化反応系にリサイクルさせることにより、脱水素工程を経ることなく、高効率でシクロアルカノンを得ることができる。さらに、分離(蒸留)装置を使用することにより、シクロヘキサノールを分離でき、シクロアルカノンに有効に変換できる
【0095】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0096】
実施例1
(1)触媒溶液調製工程
シクロヘキサン10000g/H、N−ヒドロキシフタルイミド10g/H、コバルトアセトナート64g/Hの割合で触媒溶液を調製した。
(2)酸化工程
触媒溶液の割合、シクロヘキサン840g/H、空気1.3Nm3 /Hの供給速度で反応装置2へ供給し、160℃、40atm、滞留時間2時間で、反応させたところ、シクロヘキサンの転化率11%で、シクロヘキサノンが選択率40%、シクロヘキサノールが選択率49%で得られた。
(3)触媒分離工程
反応粗液を、20℃まで冷却し、濾過にて触媒を分離し、分離した触媒は焼却処理し、コバルトを回収して反応系へリサイクルし、再使用した。抽出塔4において、濾液はリング&プレートを用いて、20℃、水による抽出工程に供し、高沸酸などを抽出した。
(4)低沸点成分分離工程
有機相は、30段の多孔板塔5にて、水とシクロヘキサンとの共沸によりシクロヘキサン/シクロヘキサノール(KAオイル)及び高沸点成分とを分離させ、留出液はデカンターにて水相とシクロヘキサン相に分離し、水を除去した。シクロヘキサン相は30段の多孔板塔6にて、低沸点成分を分離し、缶出から得たシクロヘキサンは反応系へリサイクルし、再使用した。
(5)不純物除去工程
KAオイル及び高沸点成分液は、上記で得られた高沸酸の酸性水溶液により、30段の多孔板塔7を用いて、高沸点のエステルを加水分解させ、高沸酸の一部を分離し、焼却処理した。留出液は、さらに5重量%の水酸化ナトリウム水溶液及び5重量%炭酸ナトリウム水溶液を1:1で混合した液にて、40段の多孔板塔8を用いて、高沸点の酸および高沸点のエステルをけん化又は中和し、除去した。留出液は、デンカンターにて水相とKAオイル相に分離し、水は還流させた。
(6)高沸点成分分離工程
KAオイル相は、20段の泡鐘塔9を用いて、中沸点成分を分離した。KAオイルおよび高沸点成分は、60段の多孔板塔10を用いて、製品シクロヘキサンを採取した。この方法での精製効率は90%、製品純度は99%であた。
(7)リサイクル工程
また、上から50段目からシクロヘキサノールを採取し、反応系へリサイクルしたところ、98%収率でシクロヘキサノンを容易に変換させることができた。脱水素反応器を用いることなく、多孔板塔10の塔底からの高沸点成分は、焼却処理した。
【0097】
実施例2
(1)触媒溶液調製工程
シクロヘキサノン1000g/H、N−ヒドロキシフタルイミド160g/H、コバルトアセトナート64g/Hの割合で触媒液を調製した。
(2)酸化工程
触媒溶液割合、シクロヘキサン840g/H、空気1.3Nm3 /Hの供給速度で反応装置22に供給し、160℃、40atmで滞留時間4時間で反応させたところ、シクロヘキサンの転化率32%で、シクロヘキサノンが選択率89%、シクロヘキサノールが選択率5%で得られた。
(3)触媒分離工程
この反応粗液を20℃まで冷却し、濾過にて触媒を分離した。抽出塔24において、濾液はリング&プレートを用いて、20℃水にて抽出工程に供し、高沸酸などを抽出した。
(4)低沸点分離工程
有機相は30段の多孔板塔25にて、水とシクロヘキサンの共沸によりKAオイル及び高沸点成分と分離させ、留出液はデカンターにて、水相とシクロヘキサン相に分離した。シクロヘキサン相は30段の多孔板塔26にて、低沸点成分を分離し、缶出から得たシクロヘキサンは反応系へリサイクルし、再使用した。
(5)不純物除去工程
KAオイルおよび高沸点成分液は、上記で得られた高沸酸の酸性水溶液により、30段の多孔板塔を用いて高沸エステルを加水分解させ、高沸酸の一部を分離し、焼却処理した。留出液は、さらに5重量%の水酸化ナトリウム水溶液及び5重量%炭酸ナトリウム水溶液を1:1で混合した液にて、40段の多孔板塔を用いて、高沸酸および高沸エステルをけん化又は中和し、除去させた。留出液はデカンターにて、水相とKAオイル相に分離し、水は還流させた。
(6)高沸点分離工程
KAオイル相は、20段の泡鐘塔29を用いて、中沸点成分を分離した。KAオイルおよび高沸点成分は、60段の多孔板塔210を用いて、製品を採取した。この製造方法での、精製収率は91%、製品純度は99%であった。
(7)リサイクル工程
また、上から50段目からシクロヘキサノールを採取し、反応系へリサイクルしたところ、97%収率でシクロヘキサノンを容易に変換することができた。従来必要であった脱水素反応器を省略できた。高沸点成分は、焼却処理し、コバルトを回収して反応系へリサイクルし、再使用した。
(8)触媒再生工程及び触媒原料製造工程
触媒は、ヒドロキシルアミンと30段の多孔板塔を用いて、触媒を再生した。再生された触媒は、30段の多孔板塔を用いて、水分を除去した後、反応系へリサイクルし再使用した。また、触媒中のシクロヘキサンも反応系へリサイクルし、再使用した。触媒再生および触媒製造に用いられるヒドロキシルアミンは、触媒再生時に副生されるアンモニアをチューブリアクターで白金触媒を用いて、酸化反応を行い、NOx (NO2 、N2 O3 、N2 O5 など)を生成し、前記低沸点成分分離工程で分離した水を用いて、リング&プレートにて吸収し、水素添加反応により、ヒドロキシルアミンを製造した。
【0098】
実施例3
(1)触媒溶液調製工程
酢酸10000g/H、N−ヒドロキシフタルイミド160g/H、コバルトアセトナート64g/Hの割合で触媒液を調製した。
(2)酸化工程
触媒溶液割合とシクロヘキサン840g/H、空気1.3Nm3 /Hの供給速度で反応装置32へ供給し、75℃、40atmで滞留時間4時間で反応させたところ、シクロヘキサンの転化率31%で、シクロヘキサノンが選択率90%、シクロヘキサノールが選択率5%で得られた。
(3)低沸点成分分離工程
この反応粗液を強制循環式蒸発器により、シクロヘキサン、水などの低沸点成分と酢酸、KAオイル、触媒などの高沸点成分に分離した。シクロヘキサン、水などの低沸点成分から、30段の多孔板塔を用いて、水とシクロヘキサンの共沸により分離させ、デカンターにて、水相とシクロヘキサン相に分離した。シクロヘキサン相は30段の多孔板塔にて、低沸点成分を分離し、缶出から得たシクロヘキサンは反応系へリサイクルし、再使用した。
(4)溶媒分離工程
酢酸、KAオイル、触媒などの高沸点成分から、30段の多孔板塔を用いて、酢酸を分離させ、反応系へリサイクルし、再使用した。
(5)不純物除去工程
KAオイル、触媒などの高沸点成分は20℃まで冷却し、濾過により触媒を分離した。濾液は酸性の水溶液により、30段の多孔段塔を用いて、高沸エステルを加水分解させ、高沸酸の一部を分離し、焼却処理した。留出液は、5重量%水酸化ナトリウム水溶液及び5重量%炭酸ナトリウム水溶液1:1で混合した液にて、40段の多孔板塔を用いて、高沸酸および高沸酸エステルをけん化又は中和し、除去させた。
(6)高沸点分離工程
留出液はデカンターにて、水相とKAオイル相に分離し、水は還流させた。KAオイル相は、20段の泡鐘塔を用いて、中沸点成分を分離した。KAオイルおよび高沸点成分は、60段の多孔板塔を用いて、製品を採取した。この製造方法での、精製収率は91%、製品純度は99%であった。
(7)リサイクル工程
また、上から50段目からシクロヘキサノールを採取し、反応系へリサイクルしたところ、97%収率でシクロヘキサノンを容易に変換することができた。従来必要であった脱水素反応器を省略できた。高沸点成分は、焼却処理し、コバルトを回収して反応系へリサイクルし、再使用した。
(8)触媒再生工程
触媒は、ヒドロキシルアミンと30段の多孔板塔を用いて、触媒を再生した。再生された触媒は、30段の多孔板塔を用いて、水分を除去した後、反応系へリサイクルし再使用した。また、触媒中のシクロヘキサンも反応系へリサイクルし、再使用した。触媒再生および触媒製造に用いられるヒドロキシルアミンは、触媒再生時に副生されるアンモニアをチューブリアクターで白金触媒を用いて、酸化反応を行い、NOx (NO2 、N2 O3 、N2 O5 など)を生成し、水を用いて、リング&プレートにて吸収し、水素添加反応により、ヒドロキシルアミンを製造した。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の方法を説明するためのフロー図である。
【図2】図2は、本発明の他の方法を説明するためのフロー図である。
【図3】図3は、本発明のさらに他の方法を説明するためのフロー図である。
【図4】図4は、本発明の別の方法を説明するためのフロー図である。
【符合の説明】
1…混合槽
2…酸化反応装置
3…触媒分離装置(濾過装置)
4…酸成分分離装置(抽出塔)
5…低沸点成分分離装置(蒸留塔)
5a…分液装置
6…シクロアルカン分離装置(蒸留塔)
7…加水分解装置
8…けん化装置
8a…分液装置
9…中沸点分離装置(蒸留塔)
10…高沸点分離装置(蒸留塔)
11…触媒回収装置
21…分離装置(蒸発器)
22…分離装置(脱溶剤塔)
32…分離装置(蒸留塔)
33…分離装置(濾過装置)
39…分離装置(蒸留塔)
40…分離装置(蒸留塔)
Claims (10)
- 酸化触媒の存在下、シクロアルカンと分子状酸素とを反応させる反応系によりシクロアルカノンを製造する方法であって、副生するシクロアルカノールを前記反応系へリサイクルさせるシクロアルカノンの製造方法。
- シクロアルカンがシクロヘキサンである請求項1記載の製造方法。
- 酸化触媒が、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミドおよびN,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドからなる群から選択された少なくとも一種の化合物である請求項1記載の製造方法。
- 酸化触媒の使用量が、シクロアルカン1モルに対して0.001〜1モルである請求項1記載の製造方法。
- さらに共酸化剤を用いる請求項1記載の製造方法。
- 共酸化剤が遷移金属化合物又はホウ素化合物である請求項7記載の製造方法。
- 温度0〜300℃、圧力1〜100atmで反応させる請求項1記載の製造方法。
- 酸化触媒の存在下、シクロアルカンと分子状酸素とを反応させる反応系によりシクロアルカノンを製造する方法であって、シクロアルカンと副生するシクロアルカノールとを蒸留塔により分離し、シクロアルカノールを前記反応系へリサイクルさせるシクロアルカノンの製造方法。
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