JPWO2006030907A1 - 網膜保護剤 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、網膜の保護作用に優れ、安全に使用できる網膜保護剤を提供することである。網膜保護剤の有効成分としてスルフォラファンを使用して、網膜保護用の医薬組成物や、網膜保護作用を有する食品を提供する。

Description

本発明は、網膜の保護作用に優れ、安全に使用できる網膜保護剤に関する。また、本発明は、網膜保護のために使用される医薬組成物及び飲食品に関する。更に、本発明は、網膜の保護方法に関する。
日光あるいは室内照明からの慢性的な光曝露が、網膜視細胞の傷害及び細胞死を引き起こし、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症等の発症および増悪に関与することが知られている(例えば非特許文献1及び2)。また、眼科治療において用いられる手術用顕微鏡からの光によって、光線黄斑症を発症することも知られている(例えば非特許文献3)。また、日常生活においても、直射日光、紫外線等の影響により、軽度ではあっても網膜に何らかの損傷を受けている可能性が高く、網膜が継続して損傷を受け続けると、視力低下等の網膜傷害を引き起こす危険性がある。網膜の損傷の原因となる光として、紫外線(特にUV-A)、可視光線等が含まれ、中でも、波長が400〜500nmの光は、最も傷害度が高いとされている。また、白色光(波長が400〜800nmの光を含む)では、白色マウスで、1000lux, 2時間の照射で不可逆的な網膜障害を生じることが知られている。
この様な背景から、安全且つ効果的に使用される網膜保護剤が必要とされている。
Cruickshanks KJ. et al., Arch Ophthalmol. 1993;111:514-8. Cideciyan AV. et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1998;95:7103-8. Byrnes GA. et al., Am J Ophthalmol. 1995;119:231-2.
本発明は、網膜の保護作用に優れ、安全に使用できる網膜保護剤を提供することを目的とする。また、本発明は、網膜保護のために使用される医薬組成物及び飲食品を提供することを目的とする。更に、本発明は、網膜の保護方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、スルフォラファンの経口又は腹腔内投与によって過剰な光照射による網膜の損傷が軽減されることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。本発明において過剰な光照射とは、照度1000lux程度以上の光照射を指す。なお、本発明の限定的な解釈を望むものではないが、スルフォラファンによる網膜保護は、スルフォラファン投与によってチオレドキシンの発現が誘導され、光照射による網膜の損傷が抑制されるためであると考えられる。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する:
項1. スルフォラファンを有効成分して含有する網膜保護剤。
項2. スルフォラファンを含有する、網膜保護用の医薬組成物。
項3. 項1に記載の網膜保護剤を含有する、医薬組成物。
項4. 網膜障害の予防又は治療剤である、項2に記載の医薬組成物。
項5. 該網膜障害が、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症及び光線黄斑症からなる群から選択されるいずれか1種である、項4に記載の医薬組成物。
項6. スルフォラファンの成人1人1日当たりの投与量がスルフォラファンとして0.001〜200mg/kgである、項2に記載の医薬組成物。
項7. スルフォラファンを含有する、網膜保護作用を有する食品。
項8. 項1に記載の網膜保護剤を含有する、網膜保護作用を有する食品。
項9. 網膜保護用である、項7に記載の食品
項10. 網膜障害の予防または治療用である、項7に記載の食品。
項11. 網膜を保護するために使用される旨が表示されている、項7に記載の食品。
項12. 網膜障害の予防または治療のために使用される旨が表示されている、項7に記載の食品。
項13. 該網膜障害が、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症及び光線黄斑症からなる群から選択されるいずれか1種である、項12に記載の食品。
項14. 粉末、顆粒、カプセル、又は錠剤の形態である、項7に記載の食品。
項15. ほ乳動物に、スルフォラファンを投与又は摂取させることを特徴とする、ほ乳動物の網膜保護方法。
項16. 網膜障害の予防乃至治療方法である、項15に記載の方法。
項17. 該網膜障害が、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症及び光線黄斑症からなる群から選択されるいずれか1種である、項16に記載の方法。
項18. スルフォラファンの、網膜保護剤の製造のための使用。
項19. スルフォラファンの、網膜保護用の医薬組成物の製造のための使用。
項20. スルフォラファンの、網膜保護作用を有する食品の製造のための使用。
SFを腹腔内投与したマウスのRPE画分(RPE fraction:上部)及び神経網膜層(Neural Retina:下部)におけるTRXのウェスタンブロッティング解析の結果を示す。 ウェスタンブロッティング解析におけるTRXのバンドに関する比重分析の結果を示す。図1Aに示される各群における2つのTRXのバンドから平均値を算出し、棒グラフに表したものである。 生理食塩水の腹腔内投与で処置されたコントロールマウス(Control:左パネル)及びSF(3日間0.5mg/日;腹腔内投与)処置マウス(SF(+):右パネル)から得られた網膜におけるTRXの免疫組織化学の代表例を示す。矢印:SF処置マウスのRPE層において、TRXが強く発現している場所を示す。GCL:神経細胞層(ganglion cell layer)、INL:内顆粒層(innner nuclear layer)、ONL:外顆粒層(outer nuclear layer)、RPE:網膜色素上皮(retinal pigment epithelial layer) SFを経口投与したマウスのRPE画分(RPE fraction:上部)及び神経網膜層(Neural Retina:下部)におけるTRXのウェスタンブロッティング解析の結果を示す。 ウェスタンブロッティング解析におけるTRXのバンドに関する比重分析の結果を示す。図2Aに示される各群における2つのTRXのバンドから平均値を算出し、棒グラフに表したものである。 光照射をしていないマウス(Light(−):左パネル)ならびに光照射後24時間(中央パネル)及び96時間(右パネル)から得られた網膜のヘマトキシリン−エオシン(H-E)染色の結果を示す。上パネルは、光照射前に生理食塩水を腹腔内投与(3日間)したコントロールマウス(Control)の網膜であり、下パネルは、光照射前にSF(3日間0.5mg/日)を腹腔内投与したマウス(SF(+))の網膜である。ONL:外顆粒層(outer nuclear layer)、RPE:網膜色素上皮(retinal pigment epithelial layer) ONL(outer nuclear layer:左)及びRPE(retinal pigment epithelial layer:右)における細胞核の数の定量結果を示す。各棒グラフは、平均値±SDを表す。P値は、unpaired t-testによって算出した。 光照射をしていないマウス(Light(−):左パネル)ならびに光照射後24時間(中央パネル)及び96時間(右パネル)から得られた網膜のTUNEL染色を示す。上パネルは、光照射前に生理食塩水を腹腔内投与(3日間)したコントロールマウス(Control)の網膜であり、下パネルは、光照射前にSF(3日間0.5mg/日)を腹腔内投与したマウス(SF(+))の網膜である。矢印:ONL(outer nuclear layer)及びRPE(retinal pigment epithelial layer)におけるTUNEL陽性細胞を示す。 ONL(outer nuclear layer:左)及びRPE(retinal pigment epithelial layer:右)におけるTUNEL陽性細胞核の定量結果をパーセンテージで示す。各棒グラフは、平均値±SDを表す。P値は、unpaired t-testによって算出した。 光照射前に生理食塩水を腹腔内投与したマウス(Control)及び光照射前にSF(3日間0.5mg/日)を腹腔内投与したマウス(SF(+))の光照射前及び光照射後のERG記録の代表例を示す。 a-波(a-wave:左)及びb-波(b-wave:右)の振幅の定量結果を示す。各棒グラフは、平均値±SDを表す。P値は、unpaired t-testによって算出した。 K-1034細胞RPE細胞におけるウェスタンブロッティング解析結果の代表例を示す。 SFで処置されたK-1034細胞におけるLDH 放出アッセイの結果を示す。各棒グラフは、平均値±SD(各群n=6)を表す。*、#及び†は、SF(-)、1μM及び10μMに対してp<0.01であることを示す(unpaired t-testによる)。 細胞内ペルオキシダーゼ産生の計測結果を示す。図中DCFH(-)は、過酸化物感受性蛍光プローブを処理していない細胞を表す。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.網膜保護剤
本発明において網膜保護とは、網膜障害、特に光照射誘導性の網膜変性による視力低下、視野狭窄、失明等の網膜障害を抑制することを意味する。
本発明の網膜保護剤は、スルフォラファンを有効成分として含有することを特徴とするものである。
本発明において、スルフォラファンとしては、単離されたスルフォラファンのみならず、スルフォラファンを含み網膜保護作用を有することを限度として、スルフォラファンを含有する植物、該植物の粉砕物、該植物の凍結乾燥物、該植物の搾汁、該植物の抽出物等(以下、これらを「スルフォラファン含有物」と表記することもある)を使用することができる。
スルフォラファンを含有する植物としては、アブラナ科(Brassicaceae)植物のアブラナ属(Brassica)、キバナスズシロ属(Eruca)イベリス属(Iberis)、大根属(Raphanus)等の植物が例示される。該植物として、具体的には、キャベツ、ムラサキキャベツ、ブロッコリー、ケール、ロケット菜、カリフラワー、ダイコン、ハクサイ、カブ、コマツナ、チンゲンサイ等が例示される。特に、これらの植物の新芽は、スルフォラファンの含有量が高く、本発明に好適に使用される。また、これらの植物において、スルフォラファンの含有量が高い部位としては、前記植物の種子;ダイコン、カブ等の根;キャベツ、ケール、ハクサイ等の葉;ブロッコリー、カリフラワー等の花蕾等が挙げられ、これらの植物部位を使用することが望ましい。
上記した植物の新芽からスルフォラファンを得る場合、新芽のスルフォラファン含有量は、発芽後の日数によって大幅に変化するため、スルフォラファン含有量が高い時期の新芽を使用することが望ましい。例えば、ブロッコリースプラウトであれば、発芽後1〜5日程度、好ましくは発芽後1〜3日程度の新芽を使用することが望ましい。
スルフォラファンを含有する植物の粉砕物、凍結乾燥物、及び搾汁は、当業者によって通常用いられる処理方法で、上記植物を処理することにより得ることができる。
また、スルフォラファンを含有する植物抽出物は、上記の植物から当業者によって通常用いられる抽出処理方法によって得ることができる。抽出処理方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ブロッコリー等のスルフォラファンを含む原料を粉砕し、必要に応じて凍結乾燥を行い、水又は含水溶媒で含浸又は抽出する方法が挙げられる。抽出に使用する溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、エタノール、メタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等の1級アルコール、酢酸エチル等の低級アルキルエステル;ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素;アセトン;塩化メチレン等の従来公知の溶媒、またはそれらの混合溶液が例示される。中でも好ましい溶媒としては、水、エタノール又はエタノール及び水の混合溶液があげられる。また、超臨界CO2等の超臨界溶媒で抽出してもよい。これらの方法を用いて抽出を行う場合、抽出回数は単回でもよく、収率を上げるために複数回行ってもよい。抽出を行う際、植物内に含まれる酵素によってグルコシノレートを加水分解してスルフォラファンを効率的に得ることを目的として、原料を粉砕した後に自己消化を行ってもよい。自己消化は、当業者によって通常用いられる条件にて行えばよいが、例えば、約10〜50℃にて15〜60分程度行うことが望ましい。
この様にして得られた抽出物は、スルフォラファン含有植物抽出物としてそのまま使用することもできるが、更に、本発明の効果を失わない範囲内で脱臭、脱色等の精製工程に供してもよい。また、該抽出物は、必要に応じて、合成吸着剤による処理、ろ過処理、濃縮処理等の分離・精製工程に供することにより、スルフォラファン含有割合を高めておいてもよい。合成吸着剤による処理方法は特に限定されず、従来公知の方法でよいが、具体的には、合成吸着剤を充填したカラムに通し、水、エタノール、又はこれらの混合溶液等の溶出液等で溶出する方法があげられる。合成吸着剤としては、例えば、芳香族系(架橋スチレン系)合成吸着剤、置換芳香族系合成吸着剤、アクリル系合成吸着剤等があげられる。また、上記抽出処理後、スルフォラファン含有植物抽出物は液状形態で得られるが、該抽出物にペクチン、デキストリン等の水溶性食物繊維を賦形剤として加え、スプレードライ法等の公知の方法により乾燥させることにより、スルフォラファン含有植物抽出物を粉末形態に調製してもよい。更に、この粉末状にした抽出物を水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の溶媒に再溶解して用いることもできる。
また、本発明においては、スルフォラファン含有植物抽出物、特にその乾燥物を使用することにより、スルフォラファンの安定性を高めることが期待される。
本発明の網膜保護剤において、スルフォラファンとして、スルフォラファン含有物を使用する場合、網膜保護作用を有効に発揮させるという観点から、該スルフォラファン含有物はスルフォラファンを0.001〜200mg/g程度、好ましくは0.005〜80mg/g程度、より好ましくは0.01〜50mg/g程度含んでいることが望ましい。
また、スルフォラファン自体は、スルフォラファンを含有する上記植物から公知の方法で単離精製することにより取得することができる。また、単離精製されたスルフォラファンは市販されており、市販品を使用することもできる。
本発明の網膜保護剤は、上記のスルフォラファンそのものであってもよく、また適当な基材や担体等を適宜配合して製剤化したものであってもよい。
本発明の網膜保護剤は、内服、摂取、注射、点滴、経粘膜投与等の各種形態で、網膜の保護が求められているほ乳動物(ヒトを含む)に適用されることにより、該ほ乳動物において網膜の保護作用を効果的に発揮する。
本発明の網膜保護剤の適用量(摂取又は投与)については、網膜の保護作用を発揮する有効量であればよく、その適用形態に応じて適宜設定することができる。例えば、本発明の網膜保護剤を内服、摂取、注射、又は点滴形態で適用する場合、その適用量としては、その用法、対象者の年齢、性別、体重、健康状態、その他の条件、症状の程度等により適宜選択されるが、通常、有効成分であるスルフォラファンの量が、成人1人1日当たりスルフォラファンとして0.001〜200mg/kg程度、好ましくは0.1〜50mg/kg程度、より好ましくは2〜20mg/kg程度となるように設定することが望ましい。また、1日当たりの適用量を満たす限り、毎日適用するのではなく、例えば2〜3日おきに適用してもよく、1週間おきに適用してもよい。但し、網膜保護効果を維持するために継続的に投与又は摂取ことが好ましい。また、1日当たりの適用量を単回で適用してもよく、数回に分けて適用してもよい。
また、例えば、本発明の網膜保護剤を経粘膜投与形態で適用する場合、その適用量としては、その用法、対象者の年齢、性別、健康状態、その他の条件、症状の程度等により適宜選択されるが、通常、有効成分であるスルフォラファンの量が、成人1人1日当たりスルフォラファンとして0.05〜2000mg程度、好ましくは0.5〜500mg程度、より好ましくは2〜100mg程度となるように設定することが望ましい。また、1日当たりの適用量を満たす限り、毎日適用するのではなく、例えば2〜3日おきに適用してもよく、1週間おきに適用してもよい。また、1日当たりの適用量を単回で適用してもよく、1日2〜6回程度に分けて適用してもよい。
本発明の網膜保護剤は、医薬や食品等の分野で使用される。即ち、本発明の網膜保護剤を用いて医薬組成物や食品を調製することにより、網膜保護効果を奏する医薬組成物や食品が提供される。以下、医薬及び食品分野での具体的使用形態について、詳細に説明する。
網膜保護用医薬組成物
具体的には、医薬の分野では、網膜保護に有効な量のスルフォラファンと共に、薬学的に許容される担体を配合することにより、網膜保護用医薬組成物が提供される。
当該網膜保護用医薬組成物に配合される担体としては、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤、滑沢剤、充填剤、増量剤、付湿剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩、緩衝剤等の希釈剤又は賦形剤を例示でき、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。また、当該網膜保護用医薬組成物には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等の添加剤や他の薬理活性成分を含有させてもよい。
当該網膜保護用医薬組成物は、内服剤;静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射及び腹腔内注射等の注射剤;点滴剤;点眼剤及び点鼻剤等の経粘膜剤等の製剤形態で使用される。
当該網膜保護用医薬組成物の剤型としては、適用形態に応じて適宜設定されるが、一例として、錠剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤;液剤、乳剤、懸濁剤等の液状製剤が挙げられる。
当該網膜保護用医薬組成物が、液剤、乳剤、懸濁剤等の注射剤である場合、これらは殺菌され且つ血液と等張であるのが好ましく、これらの剤型に製剤化するに際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用できる。なお、この場合、等張性の溶液を調整するに充分な量の食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを本発明薬剤中に含有させてもよい。また、通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。
また、当該網膜保護用医薬組成物が液状製剤である場合は、凍結保存または凍結乾燥等の状態で保存されていてもよい。凍結乾燥製状態である場合には、使用時に注射用蒸留水等を加え、再度溶解して使用される。
当該網膜保護用医薬組成物におけるスルフォラファンの含有割合については、上記の網膜保護剤の1日当たりの適用量や組成物の剤型や投与形態等に応じて適宜調節することができる。例えば、当該網膜保護用医薬組成物が、点眼剤や点鼻剤等の経粘膜製剤の場合であれば、該製剤中にスルフォラファンを0.001〜重量%、好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.05〜2.5重量%の割合が例示される。
当該網膜保護用医薬組成物は、優れた網膜保護効果を奏するので、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、光線黄斑症等の網膜障害に起因する眼疾患の予防又は治療剤として有用である。また、当該網膜保護用医薬組成物は、有効成分のスルフォラファンがチオレドキシンを誘導し、光誘導性の網膜障害を抑制すると考えられることから、眼科手術治療に伴う過剰な光照射から網膜を保護する目的で使用することも可能である。この場合には、当該網膜保護用医薬組成物を、手術の前1〜10日間程度、好ましくは2〜6日程度、より好ましくは3〜4日程度前から継続的に投与しておくことが好ましい。
また、当該網膜保護用医薬組成物は、光照射による眼精疲労の予防又は軽減剤としても有用である。眼精疲労としては、眼のかすみ、眼痛、ピント調節能の低下等が挙げられる。中でも、パソコン等の使用、読書、炎天下での作業などの、光に曝されることによる眼精疲労に対して有効である。
食品
また、食品の分野では、スルフォラファンを一成分として食品に配合することにより、網膜保護作用を有する食品を提供することができる。
当該食品としては、例えば、栄養補助食品、バランス栄養食品、健康食品、栄養機能食品、特定保健用食品、病者用食品等の飲食品が挙げられる。これらの食品の製造方法は、網膜保護効果が得られるものであれば特に限定されない。当該食品の好適な具体例として、粉末、顆粒、カプセル、錠剤等の形態を有するサプリメントが例示される。この様な形態の食品には、スルフォラファンとして、好ましくは、スルフォラファンを含有する植物の粉砕物、該植物の凍結乾燥物、該植物の搾汁、又は該植物の抽出物、更に好ましくは該植物の抽出物が使用される。また、上記形態以外にも、当該食品としては、ガム、キャンディー、グミ、錠菓、クッキー、ケーキ、チョコレート、アイスクリーム、ゼリー、ムース、プリン、ビスケット、コーンフレーク、チュアブルタブレット、ウエハース、煎餅等の菓子類;炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、果汁飲料、栄養飲料、アルコール飲料、ミネラルウォーター等の飲料類;粉末ジュース,粉末スープ等の粉末飲料;ドレッシング、ソース等の調味料;パン類;麺類;かまぼこ等の練り製品;ふりかけ等があげられる。また、経口摂取用の形態以外に、経管摂取用(流動食等)の形態としてもよい。
当該食品におけるスルフォラファンの含有割合については、上記の網膜保護剤の1日当たりの適用量や食品の形態等に応じて適宜調節することができるが、通常、該食品の総量に対して、スルフォラファンが0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜2.5重量%、更に好ましくは0.05〜1重量%となる割合が例示される。
また、網膜保護作用をより効果的に発現させるために、高スルフォラファン含量の食品として提供しても良い。このように高スルフォラファン含量の食品とする場合、食品の総量に対して、スルフォラファンが、例えば20重量%以上、好ましくは30〜70重量%となる割合が挙げられる。
当該食品は、網膜保護作用を有しており、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、光線黄斑症等の網膜障害に起因する眼疾患の予防又は治療のための食品として有用である。また、当該食品は、前記医薬組成物の場合と同様に、眼科手術治療に伴う過剰な光照射から網膜を保護する目的で使用することもできる。この場合の該食品の摂取方法についても、前記医薬組成物の場合と同様である。
また、当該食品は、網膜保護作用を備えており、光照射による眼精疲労の予防又は軽減するための食品としても有用である。対象となる眼精疲労については、前記医薬組成物の場合と同様である。
2.網膜保護方法
本発明は、更に、有効量のスルフォラファンを、網膜の保護が望まれるほ乳動物に投与又は摂取させることを特徴とする、ほ乳動物の網膜保護方法を提供する。
当該方法において、ほ乳動物にはヒトが含まれる。また、当該改善方法において、使用するスルフォラファン、これらの投与又は摂取有効量、1日当たりの投与又は適用回数等については、前述する通りである。また、当該方法は、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、光線黄斑症等の網膜障害の予防又は治療方法として有用である。更に、当該方法は、光照射による眼精疲労の予防又は軽減方法としても有用である。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1
[抗体]
ウェスタンブロッティング解析及び免疫組織化学染色に用いたウサギ抗マウスTRX抗体及びマウス抗ヒト抗体は、Tanito M. et al., Neurosci Lett. 2002;326:142-6に記載のものを使用した。
[実験動物]
本発明の実施例は、ARVO(The Association for Research in Vision and Ophthalmology)による眼科及び視覚研究における動物の使用に関する規定に従って行われた。4週齢の雄性BALB/CマウスをJapan SLCから購入し、試験実施の前5〜7日間、飼育室にて飼育した。飼育室の光強度は、300 luxであり、飼育ケージ内の光強度は20〜40 luxであった。全てのマウスを、12時間(午前8時〜午後8時)の明/暗サイクルで飼育した。
[SF(スルフォラファン)の腹腔内及び経口投与]
本発明の実施例に用いたSF(スルフォラファン)をLTK laboratories Inc.(製品番号:S8046)から購入した。腹腔内投与は、SF0.1又は0.5mgを100μlの生理食塩水に溶解したものを、1mlシリンジを用いてマウスに注射し、この作業を1日1回、5日まで行った。経口投与は、SF0.5mgを25μlの生理食塩水に溶解したものをマイクロピペットを用いて投与し、この作業を1日1回、7日まで行った。薬物投与は、全て午前10時に行われた。
マウス網膜においてSFがTRXを誘導するかどうかを、試験するため、以下のウェスタンブロッティング解析を行った。
[マウス網膜試料中のマウスTRXのウェスタンブロッティング解析]
最終のSF投与から24時間後、眼球を摘出した。網膜試料(神経網膜(neural retina)及びRPE(retinal pigmented epithelium:網膜色素上皮)細胞画分)の調製ならびにウェスタンブロッティングの方法は、Tanito M. et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002;43:1162-7に記載の通りである。各マウスの両眼を保存し、解析に使用した。等量の網膜タンパク質(5μg)を用い、15%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳働を行った。バンド画像は、NIHイメージソフトウェアを使用して解析した。解析には、各群の2匹のマウスから得られた試料を用いた。
このウェスタンブロッティング解析の結果、SFの腹腔内投与によってRPE画分及び神経網膜層の両方にTRXの誘導が観察された。また、この誘導は、RPE画分及び神経網膜層のいずれにおいても、3日間0.5mg/日のSF注射を行った場合に最も強いことがわかった(図1A及び1B)。
実施例2
[網膜組織切片の作製]
マウスを、左心室からPBSで灌流し、その後、新しく調製0.25%のグルタルアルデヒド(PBS)を含む4%パラホルムアルデヒドで灌流した。絹の縫合糸(A7-0)を、右眼の側頭部に目印として置き、その後、右眼を除去した。眼球をパラフィン包埋し、視神経円板を含む全網膜の矢状断面切片(厚さ1μm)を作製した。
[網膜切片におけるマウスTRXの免疫組織化学解析]
3日間のSF(0.5mg/日)又は生理食塩水の腹腔内投与の最後の処置から24時間後に、眼球を摘出した。網膜切片におけるTRXの発現を、Tanito M. et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002;43:1162-7に記載される免疫ペルオキシダーゼ法によって解析した。内因性ペルオキシダーゼ活性を、0.6%H2O2で不活性化した。
免疫組織化学解析(図1C)より、3日間0.5mg/日のSFで処置されたマウスのRPE層において、TRX発現が明らかに増加していることがわかった。また、3日以上0.5mg/日のSFを経口投与されたマウスから得られた網膜においても、TRXの誘導が観察された(図2A及び2B)。
実施例3
SFを用いた前処置が、網膜光傷害に対して効果があるかどうかを試験した。
[マウスの光照射]
光照射の方法は、Tanito M. et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002;43:1162-7に記載の通りである。マウスをSF(0.5mg/日)又は生理食塩水で3日間処置し、最後のSF又は生理食塩水投与の24時間後に光照射を行った。全ての光照射は、午前10時に行われた。この実験の24時間前に、マウスを暗同調させ、1%塩酸シクロペントラート点眼液(参天製薬株式会社製)を光照射の1時間前に投与して散瞳させた。麻酔をしていないマウスに6000 lux(400〜800nmの光を含む)の蛍光白色光(松下電器産業株式会社製)を内部が光を反射する飼育ケージ内で2時間照射した。光照射中の室温を、25±1.5℃に保ち、網膜電図(electroretinogram: ERGと記載することがある)の記録及び眼球摘出までの間、マウスを暗条件下においた。
[形態計測]
光照射から24時間又は96時間後に右眼を摘出し、得られた網膜切片をヘマトキシリン−エオシン(H-E)で染色した。各切片において、視神経円板の上100〜800μmの網膜から2カ所、視神経乳頭の下100〜800μmの網膜から2カ所の計4カ所のデジタル化したカラーイメージを、PDMC le digital imaging system(オリンパス株式会社製)を用いて得た。各イメージ中のヘマトキシリン陽性光受容細胞核及びRPE細胞核の数を数え、生理食塩水処置マウスとSF処置マウス間で比較した。
その結果、光照射から96時間後、外顆粒層(outer nuclear layer:以下ONLと記載することがある;光受容細胞核)及びRPE層の細胞核の数は、光照射前に生理食塩水を注射したマウスに比べ、SFを注射したマウスの方が顕著に多いことがわかった(図3A及び3B)。
[TUNEL染色]
光照射から96時間後、右眼を摘出し、in situ Apoptosis Detection Kit(タカラバイオ株式会社製)を用いて、得られた切片上でTUNELアッセイを行った。3',3'-ジアミノベンジジン(DAKO,カナダ)を色原体(chromogen)として使用した。TUNEL陽性の光受容細胞核(ONL)及びRPE細胞核のパーセンテージを、形態計測における部位と同一の場所で測定し、生理食塩水処置マウスとSF処置マウス間で比較した。
その結果、TUNEL陽性細胞は、生理食塩水を注射したマウスに比べ光照射前にSFを注射したマウスの方が、ONLでは光照射から24時間及び96時間後、RPE層では光照射から96時間後において、顕著に少ないことがわかった(図4A及び4B)。
実施例4
光照射から96時間後の網膜の機能を計測するため、ERGを記録した。
[ERG]
光照射から96時間後、Tanito M. et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002;43:2392-400.に記載の方法に従って左眼のフラッシュERGを記録した(PE-300,株式会社トーメー製)。生理食塩水処置マウス(control)及びSF処置マウスから得られたa-波及びb-波の振幅の平均を比較した。a-波は、光受容細胞(錐体細胞及び悍体細胞)の活性を示し、b-波は双極細胞及びミュラー細胞の活性を表す。a-波及びb-波の振幅は網膜機能を反映し、網膜の機能障害が強いほど、これらの振幅は低下する。
その結果、a-波及びb-波の振幅は、光照射前にSF処置されたマウスの方が、生理食塩水で処置されたマウスに比べ、顕著に大きいことがわかった(図5A及び5B)。
以上の実施例1〜4の結果は、光照射前にSFで処置すると、マウスにおける光誘導性の網膜傷害が緩和されることを示している。
実施例5
K-1034細胞を用いて、SFによるTRX誘導のメカニズムを解析した。
[細胞培養]
ヒトK-1034RPE細胞を、10%胎児ウシ血清、100単位/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを含むHam's F-12培地で、5%CO2、37℃で維持した。
[SF処置K-1034RPE細胞におけるヒトTRXのウェスタンブロッティング]
K-1034細胞(5×105細胞)を、10cm培養ディッシュ上で10mlの培地で培養し、48時間までSF(1μM)処置した。Takagi Y. et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1999;96:4131-6.の記載に従い、全細胞の溶解液を調製した。等量の全細胞溶解液(5μg)について、15%SDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動を行った。その後、Tanito M. et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002;43:1162-7.に記載の方法に従って、特異的なバンドを検出した。
結果より、K-1034細胞において1μMのSF処置後、24時間及び48時間後にTRXを誘導することがわかった(図6)。
実施例6
TRXは、酸化ストレス等の様々なタイプのストレスによって誘導されることが知られていることから、SF処置後の細胞傷害度及び細胞内過酸化物量を測定した。
[SFで処置したK-1034細胞におけるLDH放出アッセイ]
K-1034細胞(1×104細胞)を、96ウェル培養プレート上で0.2mlの培地で培養し、SF(1又は10μM)又はH2O2(200μM)で処置した。インキュベーション後、50μlの培養培地を採取し、細胞傷害を計測するためにLDH releasing assay kit(Roche Biochemicals社製)を用いて解析した。使用説明書に従い、0%細胞死(培地のみ)から100%細胞死(2% Triton Xで処置した細胞)までの細胞死(cell death)のパーセンテージを計算した。LDH(lactate dehydrogenase:乳酸脱水素酵素)は、NADH(reduced nicotinamide adeninedinucleotide)を補酵素としてピルビン酸から乳酸を生成する反応を触媒する酵素であり、細胞破壊によって放出される。
その結果、48時間の1又は10μM のSFを用いた処置において、K-1034細胞では細胞死がほとんど観察されなかったのに対し、H2O2処置は、顕著な細胞死を引き起こした(図7)。
[SFで処置したK-1034細胞における細胞内過酸化物の産生の計測]
K-1034細胞(5×105細胞)を10cm培養ディッシュ上で10ml培地を用いて培養し、SF(1又は10μM)で24時間又はH2O2(200μM)で3時間処置した。その後、細胞を5μMの2',7'-二酢酸ジクロロフルオレセイン(DCFH-DA,Molecular Probe社製;過酸化物感受性蛍光プローブ)で15分間処置した。各試料を、FACSCalibur(BD Bioscience社製)を用いて、Kondo N. et al., J Immunol. 2004;172:442-8.に記載の方法に従い解析した。
SF(1又は10μM)での24時間の処置では、DCFH-DAによってプローブされる細胞性ペルオキシダーゼは誘導されなかったのに対し、H2O2処置では、細胞性ペルオキシダーゼの増加が見られた(図8)。
欧米において成人の失明原因第1位である加齢性黄斑変性症は、近年我が国においても増加の傾向を見せている。加齢性黄斑変性症は中〜高齢者に好発する疾患であるが、その発症には、長年にわたる網膜への光曝露による網膜障害の蓄積が関係すると考えられている。従って、日常生活における光による軽度な網膜障害の予防を続けることが、将来的な加齢性黄斑変性症の発症予防につながる可能性が高いと考えられる。本発明の網膜保護剤はは、日常的に簡易に摂取できることから、日常生活における網膜傷害の予防又は軽減に有用である。
更に、本発明の網膜保護剤は、食用植物由来のスルフォラファン類を有効成分とし、投与された/摂取した人の体内においてチオレドキシンを誘導することから、極めて安全性の高いものである。

Claims (12)

  1. スルフォラファンを有効成分して含有する網膜保護剤。
  2. スルフォラファンを含有する、網膜保護用の医薬組成物。
  3. 網膜障害の予防又は治療剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 該網膜障害が、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症及び光線黄斑症からなる群から選択されるいずれか1種である、請求項3に記載の医薬組成物。
  5. スルフォラファンの成人1人1日当たりの投与量がスルフォラファンとして0.001〜200mg/kgである、請求項2に記載の医薬組成物。
  6. スルフォラファンを含有する、網膜保護作用を有する食品。
  7. ほ乳動物に、スルフォラファンを投与又は摂取させることを特徴とする、ほ乳動物の網膜保護方法。
  8. 網膜障害の予防乃至治療方法である、請求項7に記載の方法。
  9. 該網膜障害が、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症及び光線黄斑症からなる群から選択されるいずれか1種である、請求項8に記載の方法。
  10. スルフォラファンの、網膜保護剤の製造のための使用。
  11. スルフォラファンの、網膜保護用の医薬組成物の製造のための使用。
  12. スルフォラファンの、網膜保護作用を有する食品の製造のための使用。
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