JPWO2005123242A1 - 構造体ならびにこれを用いたチップ、および親/疎液性の制御方法 - Google Patents

構造体ならびにこれを用いたチップ、および親/疎液性の制御方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2005123242A1
JPWO2005123242A1 JP2006514745A JP2006514745A JPWO2005123242A1 JP WO2005123242 A1 JPWO2005123242 A1 JP WO2005123242A1 JP 2006514745 A JP2006514745 A JP 2006514745A JP 2006514745 A JP2006514745 A JP 2006514745A JP WO2005123242 A1 JPWO2005123242 A1 JP WO2005123242A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
liquid
chip
lyophilic
concavo
lyophobic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2006514745A
Other languages
English (en)
Inventor
服部 渉
渉 服部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NEC Corp
Original Assignee
NEC Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NEC Corp filed Critical NEC Corp
Publication of JPWO2005123242A1 publication Critical patent/JPWO2005123242A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01LCHEMICAL OR PHYSICAL LABORATORY APPARATUS FOR GENERAL USE
    • B01L3/00Containers or dishes for laboratory use, e.g. laboratory glassware; Droppers
    • B01L3/50Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes
    • B01L3/502Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes with fluid transport, e.g. in multi-compartment structures
    • B01L3/5027Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes with fluid transport, e.g. in multi-compartment structures by integrated microfluidic structures, i.e. dimensions of channels and chambers are such that surface tension forces are important, e.g. lab-on-a-chip
    • B01L3/502746Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes with fluid transport, e.g. in multi-compartment structures by integrated microfluidic structures, i.e. dimensions of channels and chambers are such that surface tension forces are important, e.g. lab-on-a-chip characterised by the means for controlling flow resistance, e.g. flow controllers, baffles
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J19/00Chemical, physical or physico-chemical processes in general; Their relevant apparatus
    • B01J19/0093Microreactors, e.g. miniaturised or microfabricated reactors
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01LCHEMICAL OR PHYSICAL LABORATORY APPARATUS FOR GENERAL USE
    • B01L3/00Containers or dishes for laboratory use, e.g. laboratory glassware; Droppers
    • B01L3/50Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes
    • B01L3/508Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes rigid containers not provided for above
    • B01L3/5088Containers for the purpose of retaining a material to be analysed, e.g. test tubes rigid containers not provided for above confining liquids at a location by surface tension, e.g. virtual wells on plates, wires
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J2219/00Chemical, physical or physico-chemical processes in general; Their relevant apparatus
    • B01J2219/00781Aspects relating to microreactors
    • B01J2219/00783Laminate assemblies, i.e. the reactor comprising a stack of plates
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J2219/00Chemical, physical or physico-chemical processes in general; Their relevant apparatus
    • B01J2219/00781Aspects relating to microreactors
    • B01J2219/00819Materials of construction
    • B01J2219/00837Materials of construction comprising coatings other than catalytically active coatings
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01LCHEMICAL OR PHYSICAL LABORATORY APPARATUS FOR GENERAL USE
    • B01L2300/00Additional constructional details
    • B01L2300/08Geometry, shape and general structure
    • B01L2300/0809Geometry, shape and general structure rectangular shaped
    • B01L2300/0816Cards, e.g. flat sample carriers usually with flow in two horizontal directions
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01LCHEMICAL OR PHYSICAL LABORATORY APPARATUS FOR GENERAL USE
    • B01L2400/00Moving or stopping fluids
    • B01L2400/08Regulating or influencing the flow resistance
    • B01L2400/084Passive control of flow resistance
    • B01L2400/086Passive control of flow resistance using baffles or other fixed flow obstructions

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Clinical Laboratory Science (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Dispersion Chemistry (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Physical Or Chemical Processes And Apparatus (AREA)

Abstract

本発明は、簡素な構成で材料表面の親/疎液性を精密に制御する手法と、該手法を利用して、親/疎液性の制御がなされる材料表面において、その親液性または疎液性の強さに異方性を持たせる方法、さらには、かかる手法を応用して、材料表面の所定の領域に液体を保持させる方法を提供する。例えば、基板101の表面に、規則的な凹凸構造からなる保液部103と、保液部103の外周を取り囲む平坦面からなる外周部104とを設ける。保液部103の凹凸構造の表面積を保液部103の形成領域の面積よりも大きくするとともに、その表面積の増倍率を所望の値とするように規則的な凹凸構造の形成を行う。

Description

本発明は、構造体ならびにこれを用いたチップ、および親/疎液性の制御方法に関する。
近年、マイクロエレクトロ−メカニカルシステム(MEMS)技術の発展により、バイオチップやケミカルチップ、マイクロ流体チップ、また小型燃料電池の開発が盛んに行われている。このようなデバイスでは、液体を取り扱う場合が多く、デバイス内の液体が接触する表面の親液性または疎液性を制御することは極めて重要となっていた。たとえば、燃料電池の電極を高性能な状態で長寿命化するためには、その表面の撥液性の制御がきわめて重要であると認識されている。このような親液性または疎液性の制御は、従来表面処理や塗布膜によるコーティングにより行われてきた。
たとえば、特開2003−28836号公報には、親水性のガラス基板に形成したマイクロチャネルに対してトリクロロオクタデジルシラン等による表面処理を施すことにより一部のチャネルにおいて疎水性を得る方法が記載されている。また、特開2003−185628号公報によれば、テフロン(登録商標)系のインクを用いて基板上で疎水性領域を得るとともに、親水性領域においてはポリマーコーティング後にUV照射して親水性を得ている。
また、特開2001−159618号公報には、サンド・ブラストや放電処理等の方法により、バイオセンサにおいて液体試料が導入されるキャビティの側壁をなすカバーやスペーサの表面に微細な疎面を形成することが記載されている。
ところが、特開2003−28836号公報および特開2003−185628号公報に記載の技術では、基板上で親液性表面または疎液性表面を得るために、所望とするチップ内の液体が接触する基板表面に対して、化学修飾による表面処理や塗布膜によるコーティング等、表面の物質そのものを変化させる方法が用いられていた。このため、たとえば親液性または疎液性の強さを作り分ける場合、その各々の場合に必要とされる各々別々の強さの親液性または疎液性を各々独立に実現する各々別々の表面処理やコーティングを必要としていた。また、特開2001−159618号公報に記載の技術においても、親液性または疎液性の強さを作り分けるという点で、改善の余地があった。
なお、表面処理やコーティングを利用する手法では、その表面は、一般に、等方的な表面状態であり、等方的な表面状態を示す表面の親液性または疎液性の強さに異方性を持たせることは、技術的に不可能である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成で材料表面の親/疎液性を制御する技術を提供することにある。特には、簡素な構成で材料表面の親/疎液性の強さを精密に制御する技術を提供することにある。また、本発明の別の目的は、材料表面の所定の領域の親液性または疎液性の強さの制御に加えて、その親液性または疎液性の強さに異方性を持たせる技術を提供することにある。加えて、本発明のさらなる目的は、以上の技術を応用して、液体を安定に保持する技術を提供することにある。
本発明にかかる材料表面の親/疎液性の強さを精密に制御する手法を利用する構造体は、
液体をその表面で扱うチップの表面に設ける構造体であって、
該構造体は、
前記液体と接触する該チップの表面に設けられる規則的な凹凸構造で構成され、
前記規則的な凹凸構造を設けたことによる表面積の増倍率を、
前記規則的な凹凸構造を設けるチップの面積に対する、前記規則的な凹凸構造の表面とチップ表面との総表面積の比率と定義する時、
前記規則的な凹凸構造を設けたことによる表面積の増倍率は、
該チップ表面上において定義する二つの軸方向に沿って異っている
ことを特徴とする構造体である。
本発明にかかる構造体においては、チップの表面に凹凸構造を形成することにより、平坦な平面と較べて、該凹凸構造の表面積は、その側面部の面積に相当する増加を示すため、当該凹凸構造の形成されている領域の表面積は、当該領域の面積よりも増加する構成となっている。当該領域の面積に対する、当該凹凸構造の形成されている領域の表面積の比率は、この凹凸構造を形成することによる表面積の増加比率を表し、「表面積の増倍率」と呼ぶ。本発明においては、この表面積の増倍効果により、凹凸構造を構成する基板の表面が所望の液体に対して親液性であれば、その親液性の度合いをさらに高めることができる。一方、凹凸構造を構成する基板の表面が所望の液体に対して疎液性であれば、その疎液性の度合いをさらに高めることができる。また、本発明にかかる構造体は、規則的な凹凸構造により構成しており、凹凸構造の形状、配置等の規則性を精密に制御することにより、凹凸構造を形成した領域の親液性または疎液性の度合い(強さ)を確実に、かつ精密に調節することができる。さらに、本発明によれば、規則的な凹凸構造を設ける表面において、表面積の増倍率が二つの軸方向によって異なるようにすることで、面内において、親液性または疎液性に異方性を持たせることができる。この「軸方向の表面積の増倍率」とは、チップ表面に定義される二つの軸方向について、各軸方向に沿った狭い幅の微小な帯状領域における表面積の増倍率として定義される。すなわち、各軸方向に沿った表面に垂直な断面を考えた場合に、凹凸構造の形成により増加している、チップ表面が液体と接触する稜線の長さを、その凹凸構造は形成されているチップ表面の幅で除した値が、「軸方向の表面積の増倍率」に相当している。
なお、本発明にかかる構造体は、規則的な凹凸構造により構成されるものであり、単に、チップ表面を粗面化するだけでは得ることができない。この規則的な凹凸構造の形成方法については後述する。ここで、規則的な凹凸構造とは、凹凸構造の形状、配置等が、所定の規則性を持って形成されており、ランダムな構造ではないことを意味する。
本発明にかかる構造体においては、特には、該チップの表面に設けられる規則的な凹凸構造は、
該チップの表面上に形成されている、複数の柱状体を規則的に配置することで形成されている構成を選択することが好ましい。
本発明にかかる構造体は、前記の形態を選択する際、例えば、
該チップの表面に形成されている、前記複数の柱状体で構成される規則的な凹凸構造は、
略同一形状を有する複数の錐台形の柱状体が直線上に配置された列が、互いに平行に複数配置された構成を有し、
該チップ表面上において、該直線に平行な方向と垂直な方向に定義する二つの軸方向において、
前記規則的な凹凸構造を設けたことによる表面積の増倍率は、該二つの軸方向に沿って異っていることを特徴とする構造体とすることが好ましい。
なお、本発明において、複数の錘台形の柱状体を、略同一形状に形成する場合、その凹凸構造形成時の加工精度も勘案し、かかる構造体が親液性表面を有する場合には、凹凸構造が形成されている領域に確実に液体が保持され、かかる領域から液体が漏出してしまうことがない程度に柱状体の形状の同一性が保たれていることをいう。
本発明にかかる構造体において、略同一形状を有する複数の錐台形の柱状体が直線上に配置された列が互いに平行に複数配置された構成を有し、例えば前記列の直線方向における前記柱状体の上面の幅と、前記直線方向に垂直な方向における前記柱状体の上面の幅とが互いに異なる構成にすることができる。あるいは、前記柱状体の底面部の幅を直線と平行な方向と垂直な方向で異なる構成にすることもできる。さらに一般化するならば、前記列の直線と平行な方向と垂直な方向とで、単位幅あたり、複数の錘台形の柱状体で構成される凹凸構造の表面が構成する稜線の長さは、二つの軸方向により異なる構成を選択する。この選択によって、前記凹凸構造が形成されている領域の親液性または疎液性の強さに異方性を持たせることができる。また、略同一形状を有する複数の錐台形の柱状体を直線上に配置した列が互いに平行に複数配置された構成とすることにより、構造体が親液性表面を有する場合には、一層確実に液体を保持させ、前記凹凸構造が形成されている領域の外周を取り囲む領域への液体の漏出を抑制することができる。
本発明にかかる構造体では、複数の錐台形の柱状体が直線上に配置された列が、互いに平行に複数配置された構成において、前記柱状体が、この列の直線と垂直な方向にも、直線状に配置され、全体として、正方格子状に配置される形態を選択することができる。
さらには、本発明にかかる構造体では、
前記柱状体が直線上に配置された列が、互いに平行に複数配置された構成は、
隣接する列上に配置される前記柱状体は、
該直線に垂直な方向の軸方向において、直線状に並ぶことのないように、
各列上に配置される前記柱状体相互の相対的な位置が選択されている形態を選択することもできる。この柱状体相互の相対的な位置の選択では、柱状体複数で構成される前記凹凸構造を設ける領域内で、前記直線に垂直な軸方向の表面積の増倍率について、列の直線に平行な軸方向に沿って、その変動を考えると、大きく変化することがなくなる。例えば、前記柱状体が、この列の直線と垂直な方向にも、直線状に配置され、全体として正方格子状に配置される形態では、前記直線に垂直な軸方向の表面積の増倍率は、この列の直線と垂直な方向にも前記柱状体が直線上に配置されている行と行の間、すなわち、二つの行間領域では、その線上では規則的に配置される柱状体が存在していないため、この線上においては、「軸方向の表面積の増倍率」が1となり、親液性または疎液性を強めることができない。一方、隣接する列上に配置される前記柱状体は、該直線に垂直な方向の軸方向において、直線状に並ぶことのないように、各列上に配置される前記柱状体相互の相対的な位置が選択されている形態では、前記直線に垂直な軸方向の表面積の増倍率が、1となる確率は実質的に皆無となる。したがって、この相対的な位置を選択することにより、構造体が親液性表面を有する場合には、一層確実に液体を保持させ、柱状体複数で構成される前記凹凸構造を設ける領域の外周を取り囲む領域への液体の漏出を抑制することができる。
この隣接する列上に配置される前記柱状体は、該直線に垂直な方向の軸方向において、直線状に並ぶことのないように、各列上に配置される前記柱状体相互の相対的な位置が選択されている形態の典型として、
前記柱状体が直線上に配置された列が、互いに平行に複数配置された構成は、
隣接する列上に配置される前記柱状体について、
各列上に配置される前記柱状体相互の相対的な位置が、
市松格子配置を構成するように選択されている態様を挙げることができる。この市松格子配置を選択することにより、構造体が親液性表面を有する場合には、市松格子状に配置される柱状体複数で構成される前記凹凸構造を設ける領域からの液体の漏出を、さらに確実に抑制することができる。また、市松格子状に配置される柱状体複数で構成される前記凹凸構造を設ける領域内では、前記直線に垂直な軸方向の表面積の増倍率について、列の直線に平行な軸方向に沿って、その変動を考えると、その変動幅はより小さくなっている。本発明にかかる構造体において、前記複数の柱状体がジグザグ状に配置された構成とすることができる。
本発明によれば、上述する本発明にかかる構造体を利用して、液体をその表面で扱うチップ表面の所定領域の親/疎液性を制御することが可能となる。
例えば、本発明にかかるチップの形態の一つは、
液体をその表面で扱うチップであって、
該チップ表面に前記液体の流路を設け、
該液体流路の表面の少なくとも一部は、上記の構成を有する本発明にかかる構造体で構成されていることを特徴とするチップである。また、本発明にかかるチップの形態の一つは、
液体をその表面で扱うチップであって、
該チップ表面に前記液体の液だめを複数設け、
該液体の液だめ複数の表面の少なくとも一部は、上記の構成を有する本発明にかかる構造体で構成されていることを特徴とするチップである。
さらには、本発明によれば、前記構造体を用いて、チップ表面の親/疎液性を制御する方法が提供される。すなわち、本発明にかかる親/疎液性の制御方法は、
液体をその表面で扱うチップにおいて、前記チップ表面の少なくとも一部の領域に関して、該領域表面の前記液体に対する親/疎液性を制御する方法であって、
前記領域表面を、上記の構成を有する本発明にかかる構造体で構成することにより、
前記液体に対する親/疎液性を制御する
ことを特徴とする親/疎液性の制御方法である。
本発明の構造体においては、前記凹凸構造を形成する領域の面積に対する、前記凹凸構造を設ける領域の総表面積の比αを制御することにより、前記領域における親液化あるいは疎液化の程度を精密に制御することができる。この比αは、後述する下記式(1)を満たし、ラフネスファクターに相当する。
平滑な固体表面上に置かれた液滴の接触角θと、同一の化学物質で形成されており、表面に液滴よりも小さな凹凸構造を有する表面の液滴の接触角θrは、下記式(1):
cosθr=αcosθ (1)
で示されるウエンゼルの式で結ばれる(恩田智彦、石井淑夫 著、小石眞純、角田光雄 編集、「ぬれ技術ハンドブック」、テクノシステム、25ページ)。なお、上記式(1)において、αは、表面が平坦な場合と比較して、凹凸構造を有する表面の面積が何倍になったかを表す因子(ラフネスファクター)である。
上記(1)式に従うと、表面の物質が接触角θの親液性または疎液性を示す領域に凹凸構造を形成することにより、表面が平坦な場合の表面積に対する当該領域の表面積をα倍に増加させた場合、界面張力に比例する接触角θrの余弦の値はα倍になる。従って、チップ表面上の所望の領域に意図的に凹凸構造を形成することにより、表面が平坦な場合より親液性または疎液性を強くすることができる。ここで、親液性とは、接触角が0度以上90度未満の状態を指し、疎液性とは、接触角が90度より大きく180度以下である状態を指す。
また、上記式(1)に基づき、特定の表面処理やコーティングを用いて平滑な表面上に置かれた液滴の接触角が同一の値を示す状況において、所望の領域に意図的に形成される凹凸構造の増倍率αを種々に変更することにより、その領域の親液性または疎液性の強さを精密に制御することができる。あるいは、所望の領域に意図的に形成される凹凸構造の増倍率αを一定とする状況において、特定の表面処理やコーティングを用いて平滑な表面上に置かれた液滴の接触角θを変更することにより、その領域の親液性または疎液性の強さを精密に制御することもできる。
本発明においては、例えば、柱状体複数で構成される凹凸構造の表面全体に、目的とする液体が接することが必要である。その際、この柱状体複数で構成される凹凸構造の表面が疎液性を示す場合、この柱状体の形状は、底面部より上面部が狭まった錐台形とすることがより好ましい。この底面部より上面部が狭まった錐台形の側壁部の傾斜角ηは、底面部と側壁部のなす角であり、η<90°となる。この疎液性を示す表面においては、平滑な固体表面上に置かれた液滴の接触角θは、90°<θ<180°となっており、前記液滴の接触角θと錐台形の側壁部の傾斜角ηとの和(η+θ)は、θ<(η+θ)≦180°の範囲となるように、錐台形の側壁部の傾斜角ηを選択すると好ましい。
一方、この柱状体複数で構成される凹凸構造の表面が親液性を示す場合、この柱状体の形状は、底面部より上面部が狭まった錐台形は勿論のこと、底面部より上面部が拡がっている錐台形とすることもできる。この底面部より上面部が拡がっている錐台形の側壁部の傾斜角ηは、底面部と側壁部のなす角であり、90°<ηとなる。この親液性を示す表面においては、平滑な固体表面上に置かれた液滴の接触角θは、0°<θ<90°となっており、前記液滴の接触角θと、底面部より上面部が拡がっている錐台形の側壁部の傾斜角ηとの和(η+θ)は、θ<(η+θ)≦180°の範囲となるように、かかる錐台形の側壁部の傾斜角ηを選択すると好ましい。なお、底面部より上面部が狭まった錐台形を選択する際には、この底面部より上面部が狭まった錐台形の側壁部の傾斜角ηは、底面部と側壁部のなす角であり、η<90°となり、勿論、前記液滴の接触角θと、錐台形の側壁部の傾斜角ηとの和(η+θ)は、θ<(η+θ)≦180°の範囲となっている。
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明において、前記表面に、所定の方向に延在する流路が設けられ、前記流路の少なくとも一端の近傍に前記撥液部が形成されてもよい。また、本発明において、前記流路の一端の近傍から他端の近傍にわたって前記撥液部が形成されていてもよい。
さらには、本発明において、前記表面に、所定の方向に延在する親液性の液だめが設けられ、前記液だめの周囲に疎液性の領域が形成されてもよい。その際、例えば、平滑な表面上に置かれた液滴の接触角θを、親液性の液だめでは、θ<90゜とし、周囲の疎液性の領域では、θ>90゜となるように、それぞれ、凹凸構造にコーティングを施す等の方法もとることができる。
また、本発明において、前記凹凸構造の凹部と凸部との段差の大きさを変化させることにより、前記チップ表面の親/疎液性を制御することができる。また、本発明において、前記凹凸構造を設ける領域における前記柱状体の上面外周の長さの総和を制御することにより、前記領域の親/疎液性を制御することができる。これらはそれぞれ、凹凸構造による保液部、または撥液部の表面積の制御において、凹部と凸部の段差を変化させる場合と、保液部、または撥液部の単位面積あたりのチップ上面から見た凹部と凸部の境界の長さを変化させる場合に対応する。こうすれば、チップ表面の所望の領域の親/疎液性を確実に制御することができる。
また、本発明において、チップ表面上に形成した領域であって、当該領域表面の物質が親液性または疎液性を示す当該領域において、チップ表面に凹凸構造を形成し、かつチップ表面が平坦な場合の単位長さ当たりの凹凸構造の稜線の長さの増加率が、チップ表面上で方向により異なるように形成することによって、親液性または疎液性の強さを、チップ表面上で方向により異なるように制御することができる。この方向による異方性の制御は、凹凸構造を設けた表面に液体が接する際の界面張力を考慮すると、特定の方向に沿った凹凸構造の稜線の長さが、その方向によって差違を示すことに伴い、微視的には、液体が接する表面積は、方向によって異なる結果、上記ウエンゼルの式(1)のラフネスファクターαに関しても、局所的には、その方向によって実効的な差違が生じることを利用している。
微細加工技術を使用して凹凸構造を形成する場合、そのレイアウトは極めてフレキシブルであり、たとえば、異方性を持たせた柱状構造の配列や、放射状の凹凸構造を作製できる。これらの構造においては、基板表面が平坦な場合の単位長さ当たりの凹凸構造の稜線の長さの増加率は、方向により異なる。従って、界面張力も方向により異なり、親液性または疎液性の強さを、チップ表面上で方向により異なるように設定できる。
以上説明したように、本発明によれば、簡素な構成で材料表面の親/疎液性を制御する技術が実現される。その際、本発明によれば、材料表面の所定の領域の親液性または疎液性を制御する際、その親液性または疎液性に異方性を持たせる技術が実現される。さらには、本発明によれば、目的とする領域の材料表面の親/疎液性を制御する技術を応用して、材料表面の所定の領域に液体を保持させる技術が実現される。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る構造体の構成を模式的に示す図である。 図2は、図1の構造体を有するチップの構成を模式的に示す平面図である。 図3は、本発明の第二の実施形態に係る構造体の構成を模式的に示す平面図である。 図4は、本発明の第二の実施形態に係るチップの構成を模式的に示す平面図である。 図5は、本発明の第一の実施形態と第二の実施形態に係る構造体の構成を、対比さえて模式的に示す平面図である。 図6は、本発明による実施例1に係るチップの構成を模式的に示す平面図である。 図7は、本発明による実施例1に係るチップの流路の構成を拡大して示す図である。 図8は、本発明による実施例1に係る流路のエッチング深さを変化させて純水の流路への進入速度を比較した結果を示す図である。 図9は、本発明による実施例2に係るチップの流路の構成を示す平面図である。 図10は、図9中、四角枠内の部分の拡大図である。 図11は、図9の流路を拡大して示す斜視図である。 図12は、本発明の第三の実施形態に係る構造体の構成を模式的に示す断面図である。 図13は、本発明の第四の実施形態に係る燃料電池用電極の構成を模式的に示す平図である。 図14は、図13のA−A’断面を示す図である。 図15は、本発明の第四の実施形態に係る燃料電池の構成を模式的に示す断面図である。 図16は、表面に放射状パターンの凹凸構造を形成する一例を示し、その中心部と、その周囲の放射状パターンを顕微鏡観察した画像イメージのプリント・アウトである。
図中に付される符号は、下記の意味を有する。
100 構造体
101 基板
102 柱状体
103 保液部
104 外周部
110 チップ
111 流路
112 基板
120 構造体
123 凹凸構造
124 親液性膜
125 疎液性膜
130 チップ
200 電極
201 導電性カーボン基板
202 構造体
203 フッ素樹脂膜
204 触媒
205 流路
206 撥液部
207 平坦部
208 燃料供給孔
209 燃料導出孔
本発明は、上で述べた形態において、材料表面の親/疎液性の強さを精密に制御する手法として、
材料表面の親/疎液性の強さを、その面内において、異方性を示すように制御する上で有効な手段として、液体をその表面で扱うチップの表面に設ける構造体を利用し、その構造体を、
前記液体と接触する該チップの表面に設けられる規則的な凹凸構造で構成され、
前記規則的な凹凸構造を設けたことによる表面積の増倍率を、
前記規則的な凹凸構造を設けるチップの面積に対する、前記規則的な凹凸構造の表面とチップ表面との総表面積の比率と定義する時、
前記規則的な凹凸構造を設けたことによる表面積の増倍率は、
該チップ表面上において定義する二つの軸方向に沿って異ったものとしている。
上述する本発明の技術は、上記の形態の他に、下記する派生的な形態として、実施することも可能である。
「本発明の更なる形態」によれば、
基板と、該基板の表面に設けられた規則的な凹凸構造と、前記表面において前記凹凸構造の外周を取り囲む平坦面と、を有し、
前記凹凸構造の表面積は前記凹凸構造の面積よりも大きく、
前記凹凸構造は前記平坦面よりも、親液化または疎液化されている
ことを特徴とする構造体が提供される。
「本発明の更なる形態」の構造体においては、凹凸構造が形成された領域の単位面積当たりの当該領域の表面積が領域の面積よりも増加した構成となっている。このため、凹凸構造における基板の表面が所定の液体に対して親液性であれば、その親液性をさらに高めることができる。また、凹凸構造における基板の表面が所定の液体に対して疎液性であれば、その疎液性をさらに高めることができる。また、本発明の構造体は、規則的な凹凸構造を有するため、凹凸構造の形状、配置等の規則性を制御することにおり、凹凸構造の親液性または疎液性を確実に調節することができる。
「本発明の更なる形態」によれば、
基板と、該基板の表面に設けられた規則的な凹凸構造からなる保液部と、前記表面において前記保液部の外周を取り囲む平坦面と、を有し、
前記保液部の前記凹凸構造の表面積は前記保液部の面積よりも大きく、
前記保液部が前記平坦面よりも親液化されている
ことを特徴とする構造体が提供される。
「本発明の更なる形態」において、保液部は基板上に設けられた領域であって、規則的な凹凸構造からなる。凹凸構造により、保液部の表面積は保液部の面積よりも大きい。このように、領域の単位面積当たりの当該領域の表面積を増加させることによって、保液部が平坦面よりも所定の液体に対して親液化されている。このため、保液部に選択的に液体を保持させることができる。
なお、「本発明の更なる形態」に係る構造体は、保液部となる凹凸構造を有する構成であるため、単に基板の表面を粗面化するだけでは得ることができない。この点については後述する。
「本発明の更なる形態」の構造体において、前記表面に複数の前記保液部が設けられ、複数の前記保液部のそれぞれに液体が保持されるように構成されてもよい。
本発明の構造体において、前記保液部は、略同一形状を有する複数の錐台形の柱状体が一直線上に配置された列が互いに平行に複数配置された構成を有し、前記列の延在方向における前記柱状体の上面の幅と、前記延在方向に垂直な方向における前記柱状体の上面の幅とが互いに異なることができる。こうすることにより、保液部の親液性の強さに異方性を持たせることができる。また、略同一形状を有する複数の錐台形の柱状体が一直線上に配置された列が互いに平行に複数配置された構成とすることにより、保液部により一層確実に液体を保持させ、保液部の外周を取り囲む平坦面への漏出を抑制することができる。
なお、「本発明の更なる形態」において、複数の錘台形が略同一形状を有するとは、保液部に確実に液体が保持され、特定の場所から液体が漏出してしまうことがない程度に柱状体の形状の同一性が保たれていることをいう。
「本発明の更なる形態」の構造体において、前記平坦面に垂直な前記保液部の断面において、前記保液部の幅に対する前記保液部の前記凹凸構造の稜線の長さの比が複数の前記断面について異なる構成としてもよい。こうすることにより、大きい比を有する断面方向に保液部を親液化することができる。このため、保液部の親液性の強さに確実に異方性を持たせることができる。
「本発明の更なる形態」の構造体において、前記表面に、所定の方向に延在する流路が設けられ、前記流路の少なくとも一端の近傍に前記保液部が形成された構成とすることができる。こうすることにより、流路の一端から液体が確実に導入され、流路内に保持される構成とすることができる。
「本発明の更なる形態」の構造体において、前記流路の一端の近傍から他端の近傍にわたって前記保液部が設けられていてもよい。こうすることにより、流路全体において液体が確実に保持される構成とすることができる。
「本発明の更なる形態」の構造体において、前記保液部は、略同一形状を有する複数の錐台形の柱状体が前記流路の延在方向に沿って配置された列が互いに平行に複数配置された構成を有し、前記列の延在方向に平行で前記平坦面に垂直な一の断面における前記保液部の長さに対する前記一の断面における前記凹凸構造の稜線の長さが前記平坦面に垂直な他の断面における前記保液部の長さに対する前記他の断面における前記凹凸構造の稜線の長さよりも大きい構成とすることができる。こうすることにより、保液部の親液性が異方性を有する構成とすることができる。本明細書において、前記一の方向は、前記流路の延在方向に平行な方向とすることができる。こうすることにより、流路の延在方向により親液化された構成とすることができる。このため、流路内に液体を確実に保持し、側方からの漏出を抑制することができる。なお、「本発明の更なる形態」において、稜線の長さは、所定の断面における凹凸構造の断面輪郭の長さを指す。また、「本発明の更なる形態」において、前記列の延在方向における前記柱状体の上面の幅が、前記延在方向に垂直な方向における前記柱状体の上面の幅よりも大きい構成とすることができる。
「本発明の更なる形態」の構造体において、複数の前記柱状体が市松配置となっていることができる。こうすることにより、保液部からの液体の漏出をさらに確実に抑制することができる。「本発明の更なる形態」の構造体において、前記複数の柱状体がジグザグ状に配置された構成とすることができる。
「本発明の更なる形態」の構造体において、前記保液部の面積に対する前記保液部の前記凹凸構造の表面積の比αと、平坦面に対する所定の液体の接触角θとの積αcosθが、
|αcosθ|>1
を満たすように前記保液部が構成されてもよい。こうすることにより、超親液化された保液部を安定的に製造可能な構成とすることができる。なお、本発明において、平坦面は凹凸構造と同一材料とすることができる。
「本発明の更なる形態」において、前記垂直な方向における複数の前記柱状体の底面外周の間隔が、前記垂直な方向における前記柱状体の上面の幅よりも小さい構成とすることができる。こうすれば、保液部の表面積を平坦面である場合に比べて充分に大きくすることができる。
「本発明の更なる形態」によれば、
基板と、該基板の表面に設けられた規則的な凹凸構造からなる撥液部と、前記表面において前記撥液部の外周を取り囲む平坦面と、を有し、
前記撥液部の前記凹凸構造の表面積は前記撥液部の面積よりも大きく、前記撥液部が前記平坦面よりも疎液化されている
ことを特徴とする構造体が提供される。
撥液部は基板上に設けられた領域であって、規則的な凹凸構造からなる。凹凸構造により、撥液部の表面積は撥液部の面積よりも大きい。このように、領域の単位面積当たりの当該領域の表面積を増加させることによって、撥液部が所定の液体に対して平坦面よりも撥液化されている。このため、撥液部から液体を選択的に排除することができる。
なお、「本発明の更なる形態」に係る構造体は、撥液部となる凹凸構造を有する構成であるため、単に基板の表面を粗面化するだけでは得ることができない。この点については後述する。
「本発明の更なる形態」の構造体において、前記撥液部は、略同一形状を有する複数の柱状体が所定の方向に沿って配置された列が互いに平行に複数配置された構成を有し、前記列の延在方向に平行で前記平坦面に垂直な一の断面における前記撥液部の長さに対する前記一の断面における前記凹凸構造の稜線の長さが前記平坦面に垂直な他の断面における前記撥液部の長さに対する前記他の断面における前記凹凸構造の稜線の長さよりも大きい構成とすることができる。こうすることにより、撥液部の撥液性の強さに異方性を持たせることができる。また、略同一形状を有する複数の柱状体が一直線上に配置された列が互いに平行に複数配置された構成とすることにより、撥液部により一層確実に液体を保持させ、撥液部の外周を取り囲む平坦面への漏出を抑制することができる。
なお、「本発明の更なる形態」において、複数の柱状体が略同一形状を有するとは、特定の場所において平坦部から撥液部へと液体漏出してしまうことがない程度に柱状体の形状の同一性が保たれていることをいう。本発明において、柱状体は錘台形とすることができる。
「本発明の更なる形態」の構造体において、前記撥液部の面積に対する前記撥液部の前記凹凸構造の表面積の比αと、平坦面に対する所定の液体の接触角θとの積αcosθが、
|αcosθ|>1
を満たすように前記撥液部が構成されてもよい。こうすることにより、超撥液化された撥液部を安定的に製造可能な構成とすることができる。なお、「本発明の更なる形態」において、平坦面は凹凸構造と同一材料とすることができる。
「本発明の更なる形態」によれば、前記構造体からなる流路を備えることを特徴とするチップが提供される。
また、「本発明の更なる形態」によれば、前記構造体からなる液だめを複数備えることを特徴とするチップが提供される。
また、「本発明の更なる形態」によれば、前記構造体を用いて前記基板の前記表面の親疎液性を制御することを特徴とする親疎液性の制御方法が提供される。
本発明において、前記保液部の面積に対する前記保液部の前記凹凸構造の表面積の比αを制御することにより、前記保液部における親液化の程度を制御することができる。なお、この比αは、上で述べた式(1)を満たし、ラフネスファクターに相当する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、共通する構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態に係る構造体の構成を模式的に示す図である。図1(a)〜図1(c)は、構造体100の構成を模式的に示した図である。図1(a)は構造体100の平面図であり、図1(b)は、図1(a)中、一点鎖線b−b’部分の正断面図であり、図1(c)は、図1(a)中、一点鎖線c−c’部分の側断面図である。
図1(a)〜図1(c)に示したように、構造体100は、基板101の表面に保液部103と保液部103の外周を取り囲む平坦面からなる外周部104が設けられた構成となっている。
保液部103は、基板101の表面に設けられた規則的な凹凸構造からなる。構造体100では、基板101に四角柱状の柱状体102が複数設けられて規則的な凹凸構造となっている。複数の柱状体102は、略同一形状を有する複数の錘台形となっており、これらは同じ向きで格子配置されている。ここで、複数の錘台形が略同一形状を有するとは、保液部103の特定の領域から液体が漏出することなく液体が保持される程度の同一性を有する形状であることをいう。また、柱状体102の形状は、たとえば、角錐台形、円錐台形、楕円錐台形等とすることができる。また、角錐の角部が、R加工(round加工)されていてもよい。
保液部103の表面積は、保液部103の形成領域の面積よりも大きい。また、保液部103は、平坦面からなる外周部104よりも親液化されている。このため、構造体100は、製造容易性および製造安定性にすぐれた簡素な構成でありつつ、保液部103を選択的に親液化し、保液部103に確実に液体を保持することができる構成となっている。
保液部103が形成された領域の面積に対する当該保液部の凹凸構造の表面積の比αを制御することにより、保液部103における親液化または疎液化の程度を制御可能である。この比αを大きくすることにより、保液部103をより一層親液化することができる。このため、保液部103に選択的に液体を保持させることができる。なお、表面積の比αは、ウエンゼルの式、すなわち、上述した下記(1)式におけるラフネスファクターαであり、表面が平坦な場合と比較して、凹凸構造を有する表面の面積が何倍になったかを表す因子である。
cosθr=αcosθ (1)
なお、上記式(1)において、θは、保液部103の表面と同じ材料からなる平坦面に置かれた所定の液体の液滴の接触角である。また、θrは、凹凸構造からなる保液部103に置かれた当該液滴の接触角である。この場合、θは、外周部104における当該液滴の接触角である。
例えば、本発明においては、「超親液性」または「超疎液性」の表面とする手段として、
見掛けの表面積「S」と、凹凸構造を有する実際の表面の表面積「ΣSi」との比 α=ΣSi/Sと、
対象の液体の平坦表面上での接触角θ、凹凸構造を有する実際の表面における実効的な接触角θrとの関係式として、
S・cosθr=(ΣSi)・cosθ (0)の「近似的な」関係式から、演繹された式(1):
cosθr=αcosθ (1)
に基づき、
実効的な接触角θrに関して、
θr<10°、すなわち、cosθr>0.98となる「超親液性」を達成できる条件に相当する、
αcosθ>0.98、
θr>170°、すなわち、cosθr<−0.98となる「超疎液性」を達成できる条件に相当する、
αcosθ<−0.98、
をそれぞれ満足するように、対象の液体の平坦表面上での接触角θに対して、比 α=ΣSi/S を設定している。特には、前記境界条件:
αcosθ>0.98、
αcosθ<−0.98、
すなわち、|αcosθ|>0.98 を上回る基準として、
上述のαおよびθが、下記式(2):
|αcosθ|>1 (2)
を満たす構成とすることがより好ましい。
例えば、図1(a)〜図1(c)に示した構造体100で形成される凹凸構造においては、見掛けの表面積「S」は、{(L1+L2)×(M1+M2)}であり、
凹凸構造を有する実際の表面の表面積「ΣSi」は、{(L1+L2)×(M1+M2)+2×(M1+L1)×H}となっており、
その比 α=ΣSi/Sは、
α={(L1+L2)×(M1+M2)+2×(M1+L1)×H}/{(L1+L2)×(M1+M2)}
=1+{2×(M1+L1)×H}/{(L1+L2)×(M1+M2)}
となる。構造体100のサイズ;M1、L1、Hとその配置間隔;M2、L2を調節することで、この増倍率αを所望の値に調整することができる。その際、例えば、半導体微細加工技術を使用すれば、エッチング深さを深くすることにより、Hの値を精密且つ大きな値とすることができる。また、L1、L2、M1、M2の値は、リソグラフィー時に用いるマスク・レイアウトを変更することにより、精密に制御できる。
αcosθの絶対値が1を超える構成とすることにより、保液部103を超親液性または超疎液性とすることが可能である。このため、所定の液体に対して親液性の基板101の表面に設けられた保液部103において、上記式(2)を満たす構成とすることにより、保液部103を超親液性とすることができる。このため、凹凸構造からなる保液部103に液体を確実に保持しておくことができる。
なお、保液部103と外周部104とは通常同一の化学物質で形成されるが、たとえば、外周部104の表面は、疎液性とすることができる。また、外周部104の表面が撥液性を示す化学物質で構成されていてもよい。こうすれば、保液部103からの液体の漏出をさらに確実に抑制することができる。
次に、図1(a)〜図1(c)に示した構造体100の製造方法を説明する。基板101の材料として、シリコン、ガラス、石英、各種プラスチック材料、またはゴム等の弾性材料を用いることができる。構造体100は、基板101の微細加工の際に使用されるリソグラフィー技術とエッチング技術で同時に凹凸構造を形成することにより得ることができる。この場合、これらのプロセス技術と親和性がよいこと、および凹凸構造による保液部103の表面積およびその面積との比αを精度よく制御できることが必要とされる。
保液部103の凹部と凸部の段差を変化させることは、たとえば、フォトリソグラフィーや電子線リソグラフィー、またはナノインプリント等のレジストパターンを形成するリソグラフィー工程において、形成するパターンは同一でよく、その後のドライエッチング等のエッチング工程においてエッチング深さを制御すればよい。このため、構造体100はプロセス技術との親和性がよく、凹凸構造による表面積の増加率を精度よく制御可能である。また、この技術は、たとえば基板101ごとに親液性または疎液性の強さを制御する場合に適している。
また、リソグラフィー工程においては、形成するパターンを変化させて、単位基板面積あたりの基板上面から見た凹部と凸部の境界の長さを変化させることによって、保液部103の凹凸構造の表面積を精度よく制御できる。この場合、その後のドライエッチング等のエッチング工程においてエッチング深さを同一にしても、形成するパターンが異なるため、保液部103の形成領域の面積に対する保液部103の表面積の割合を変化させることができ、親液性または疎液性の強さを制御することができる。このため、一つのエッチング工程で同時に同一基板内の異なる領域ごとに表面積の増加率を変化させることができるため、この技術は、同一基板内の異なる領域ごとに親液性または疎液性の強さを制御する場合に好適に用いることができる。
また、構造体100の製造方法として、エンボッシングが挙げられる。この方法では、段差とパターンを同時に変化させたモールドを用いることにより、同じく同一の基板101内の異なる領域ごとに表面積の増加率を変化させることができる。このため、同一基板内の異なる領域ごとに親液性または疎液性の強さを制御する場合に好適に用いることができる。
構造体100は、具体的には、たとえば、基板101の表面に配置する柱状体102の構成に対応するレジストパターンを形成し、基板101の表面をエッチングすることにより得ることができる。また、基板101としてシリコン基板を用いる場合には、エッチング後、レジストを除去し、たとえば850℃以上の高温で表面を酸化し、基板101の表面全面にシリコン酸化膜を形成してもよい。シリコン酸化膜を形成することにより、基板101の表面を親水化することができる。このため、凹凸構造の形成による親液化をさらに顕著なものとすることができる。よって、確実に水を保持させておくことができる。
ただし、構造体100の保液部103は、液体を保持できる条件を満たす特殊な凹凸形状を有するため、このような凹凸構造を基板101上に形成する必要がある。このため、単に基板101の表面を粗面化したり、基板101上に複数の柱状体102を設けたりするだけでは、このような構造体100を得ることが困難である。
構造体100において、柱状体102を表面積の大きい形状とし、これを保液部103の領域内に密に配設することにより、凹凸構造からなる保液部103が充分に親液化し、確実に液体が保持される。具体的には、図1(a)に示す柱状体102の形態において、外周部104と平行な所定の方向において、複数の柱状体102の底面外周の間隔(M2、L2)が、柱状体102の底面の幅(M1、L1)よりも小さい構成とする。また、保液部103における柱状体102の上面外周の長さの総和(2×(M1+L1))を制御し、長さの総和(2×(M1+L1))を充分に大きくする。また、単位長さ当たりの凹凸構造の稜線の長さ((M1+M2+2×H)/(M1+M2)、ならびに(L1+L2+2×H)/(L1+L2))、すなわち所定の方向における保液部103の断面曲線の稜線の長さを制御し、該当する凹凸構造の幅((M1+M2)、ならびに(L1+L2))に対する、稜線の長さ((M1+M2+2×H)、ならびに(L1+L2+2×H))の比率を充分に大きくする。また、これらによって、前述したαcosθの絶対値が1を超えるように保液部103の面積に対する凹凸構造からなる保液部103の表面積の割合αを増加させる。
具体的には、柱状体102の構成および配置をたとえば以下のようにすることができる。図1(a)〜図1(c)において、柱状体102の長手方向の幅L1は、たとえば、0.01μm以上50μm以下とすることができる。また、長手方向における柱状体102底面の間隙幅L2は0.01μm以上50μm以下とすることができる。また、柱状体102の短手方向の幅M1は、たとえば、0.01μm以上50μm未満とすることができる。また、短手方向における柱状体102底面の間隙幅M2は、0.01μm以上50μm未満とすることができる。また、柱状体102の高さHは、0.01μm以上50μm以下とすることができる。
図1(a)〜図1(c)に示した構造体100では、柱状体102が設けられた面において、基板101の表面が平坦な場合の保液部103の表面積に対して、凹凸構造の形成により表面積が増加する。たとえば、保液部103を縦20μm、横45μmの領域内とし、柱状体102が、縦M1:2.5μm、横L1:7.5μm、高さH:5μmの直方体であり、柱状体102を当該領域内に4×3=12個配置した場合、保液部103における基板101の表面積は、α=1+{12×(2.5+7.5)×2×5}/(20×45)≒2.3であり、平坦面である場合の2.3倍に増加させることができる。この構成において、たとえば表面が平らな場合の接触角θが65度であるような物質で基板101表面ができていた場合には、この凹凸構造による表面積の増倍効果で当該液体に対する接触角θrは9.5度にまで低下し、極めて親液性の高い状態が実現されている。
また、このとき、表面が平らな場合の接触角θが30度であるような物質で基板101表面ができていた場合には、
αcosθ=2.02>1
となっている。このため、このように、図1(a)〜図1(c)に示した構造体100においては、αcosθの絶対値が1を超える構成とすることができるため、保液部103を超親液性、たとえば、超親水性とすることもできる。凹凸構造からなる保液部103に液体を確実に保持しておくことができるようになっている。構造体100は、保液部103を液だめとする構造体として好適に用いることができる。
また、保液部103において、親液性が方向により異なっていてもよい。たとえば、図1に示したように、保液部103に、略同一形状を有する複数の柱状体102が一直線上に配置された列が互いに平行に複数配置されており、列の延在方向における柱状体102の上面の幅と、延在方向に垂直な方向における柱状体102の上面の幅とが互いに異なっていてもよい。図1においては、図中左右方向すなわち列の延在方向における柱状体102の上面の幅が、図中上下方向における柱状体102の上面の幅よりも大きくなっている。
また、上述の断面曲線の稜線の長さが、柱状体102の列の延在方向と当該延在方向に垂直な方向とで異なるように柱状体102を配設することにより、保液部103の親液性に異方性を持たせることができる。
次に、図1に示した構造体100の効果を説明する。
図1に示した構造体100は、チップ等の作製における微細加工技術を用いて、所定の領域に形成することができる。このため、構造体100は、製造容易性および製造安定性に優れた構成となっている。また、チップ作製技術となじみがよい方法で、基板101表面の親液性または疎液性を精度よく制御することができる。そして、保液部103に、液体を安定的に保持させることができる。
また、構造体100を用いることにより、簡素な構成で基板101の表面の親液性または疎液性を高い精度で制御することができる。たとえば、基板101の表面全体に同一の表面処理やコーティングが行われている場合においても、構造体100で形成される凹凸構造の段差の高さやピッチ等を調節することにより、基板101に表面の親液性または疎液性の強さの異なる領域を設けることができる。
まず、構造体100で形成される凹凸構造において、図1(a)中に一点鎖線b−b’で示した断面上では、基板表面が平坦な場合の単位長さ当たりの凹凸構造の稜線の長さの増加率は、(L1+L2+2×H)/(L1+L2)であり、上記のサイズ:L1+L2=(45/3)μm、横L1:7.5μm、高さH:5μmを当てはめると、(L1+L2+2×H)/(L1+L2)=(15+10)/15=1.67倍となる。一方、図1(a)中に一点鎖線c−c’で示した断面上では、基板表面が平坦な場合の単位長さ当たりの凹凸構造の稜線の長さの増加率は、(M1+M2+2×H)/(M1+M2)であり、上記のサイズ:M1+M2=(20/4)μm、縦M1:2.5μm、高さH:5μmを当てはめると、(M1+M2+2×H)/(M1+M2)=(5+10)/5=3倍となる。従って、この構造体100で形成される凹凸構造において、その方向によって、基板表面が平坦な場合の単位長さ当たりの凹凸構造の稜線の長さの増加率が異なっている。対応して、構造体100で形成される凹凸構造を有する表面に液が接する際、その界面張力も、一点鎖線b−b’で示される上下方向では、約1.67倍、また、一点鎖線c−c’で示される左右方向では、3倍となり、親液性または疎液性の強さを、凹凸構造を有する基板表面上において、上下方向と左右方向により異なるように設定できる。
すなわち、図1(a)中に示す凹凸構造を有する表面において、この表面全体で平均した表面積の増倍率αは、α=1+{2×(M1+L1)×H}/{(L1+L2)×(M1+M2)}であるが、一点鎖線b−b’で示される上下方向(縦軸方向)の局所的な表面積の増倍率αは、その軸方向の局所的な稜線の長さの増加率を概ね等しく、α≒1+(2×H)/(M1+M2)と表すことができ、一点鎖線c−c’で示される左右方向(横軸方向)の局所的な表面積の増倍率αは、その軸方向の局所的な稜線の長さの増加率を概ね等しく、α≒1+(2×H)/(L1+L2)と表すことができる。例えば、規則的な凹凸構造を構成する柱状体102の高さHを一定とし、その配置パターンを、(L1+L2)>(M1+M2)と選択することで、α>αとなり、二つの軸方向に沿った実効的な表面積の増倍率:αとαとの間に差違を設けることができる。その際、表面全体で平均した表面積の増倍率αと、二つの軸方向に沿った実効的な表面積の増倍率:αとαが、α>α>αの関係を満足することが望ましく、(L1+L2)>(M1+M2)に選択する場合、(L1+L2)>(M1+L1)>(M1+M2)の条件、すなわち、L2>M1、L1>M2の条件を満足することが望ましい。また、上述するように、図1(a)に示す柱状体102の形態において、外周部104と平行な所定の方向において、複数の柱状体102の底面外周の間隔(M2、L2)が、柱状体102の底面の幅(M1、L1)よりも小さい構成とすること、すなわち、M1>M2、L1>L2とすることが好ましい。これら二つの要件を満足する上では、L1>L2>M1>M2の条件を満足するように、規則的な凹凸構造を構成する柱状体102の形状、配置を規定する、L1、L2、M1、M2を選択することが好ましい。
なお、L1>L2、M1>M2と選択する場合、比L1/L2、M1/M2は、通常、10≧(L1/L2)>1、10≧(M1/M2)>1の範囲、好ましくは、5≧(L1/L2)>1、5≧(M1/M2)>1の範囲に選択することが望ましい。また、L1>L2>M1>M2の条件を満足するように選択する場合、比L2/M2は、通常、通常、10≧(L2/M2)>1、好ましくは、5≧(L2/M2)>1の範囲に選択することが望ましい。
上述した特開2003−28836号公報、特開2003−185628号公報、特開2001−159618号公報に記載の従来の技術では、材料表面の親液性または疎液性は表面の物質の変化により一意的に決まるため、基板表面上で等方的であり、一方向に親液性が強いといった異方性を有した親液性または疎液性を実現することは困難であった。これに対し、本実施形態によれば、同一の表面処理やコーティングを用いてチップ内の基板表面の親液性または疎液性の強さの異なる領域を実現可能であるとともに、方向により親疎液性の異なる構成を容易に実現可能である。また、このような親疎液性の異方性を有する構成において、所定の方向における親液性または疎液性の強さを確実に制御することができる。このため、簡素な構成で親液性の強さに異方性が生じている保液部103を安定的に得ることができる。
また、構造体100では、柱状体102の長手方向(図中左右方向)の親液性が、短手方向の親液性(図中上下方向)よりも強く設計されているため、保液部103において、親液性の程度に異方性が存在し、柱状体102の短手方向からの溶液の漏出を確実に抑制することができる。よって、構造体100を一つの基板101上に複数設ける場合、短手方向の集積度を向上させることができる。
図1(a)〜図1(c)に示した構造体100は、たとえば、チップの基板上に設けることにより、たとえば、液だめや流路として用いることができる。なお、本実施形態では、構造体100を液だめに適用する例について以下説明する。構造体100を流路に適用する構成については、後述する実施例において詳細に説明する。
図2は、図1に示した構造体100を有するチップの構成を模式的に示す平面図である。図2に示したチップ110は、基板101の表面に、複数の構造体100のアレイが複数列設けられた構成である。構造体100は、図中に点線で示した領域である。
この構成において、各構造体100における保液部103は、当該保液部103の外周を取り囲む平坦な基板101表面からなる外周部104よりも親液性の高い領域となっており、保液部103およびその近傍に液体が保持される。このように、チップ110は、基板101の表面に複数の保液部103が設けられ、それぞれの保液部103に液体が保持されるように構成されている。
図2に示したチップ110の形成には、図1に示した構造体100の作製方法を用いることができる。具体的には、たとえば上述した微細加工技術を使用して形成される。
図2に示したチップ110は、たとえば、DNAチップ等の検査チップとして好適に利用可能である。このように、複数の構造体100を平面内に複数配置した構成においては、往々にして液だめ間のギャップ幅は、上下方向と左右方向で異なる。従って、液だめに滴下した液体が液だめの領域からはみ出して広がってもよいマージンは、上下方向と左右方向で異なる。このような場合に、図1に示した構造体100のように、左右方向と上下方向で親液性を変化させておくと、広がってもよいマージンを有効に使用することができ、滴下可能な液量を最大に設計することができる。
なお、図1に示した構造体100または図2に示したチップ110の保液部103に水や緩衝液等を保持させる場合、基板101の表面にDNAやタンパク質などの分子が粘着することを防ぐために、柱状体102が形成された基板101の表面をコーティングすることができる。コーティング材料としては、たとえば、細胞膜を構成するリン脂質に類似した構造を有する物質等が挙げられる。また、基板101の表面をフッ素系樹脂などの撥水性樹脂、あるいは牛血清アルブミンなどの親水性物質によりコーティングすることによって、DNAなどの分子が基板101の表面に粘着することを防止することもできる。また、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー等の親水性高分子材料や、親水性のシランカップリング剤により、基板101の表面をコーティングしてもよい。
MPCポリマーを用いて、基板101の表面の親水化を行う場合、具体的には、たとえば、リピジュア(登録商標、日本油脂社製)などを用いることができる。リピジュア(登録商標)を用いる場合、たとえば、これを0.5wt%となるようにTBE(トリスボレイト+EDTA)バッファーなどの緩衝液に溶解させ、この溶液を基板101における柱状体102の形成面に満たし、数分間放置することによってコーティングすることができる。
また、基板101の表面を親水化することにより、凹凸構造の形成による親/疎水性に加えて、毛細管現象を利用して保液部103に確実に液体を導入することができる。基板101の表面を親水化する方法として、前述したシリコン酸化膜等の親水性膜を形成する方法等が挙げられる。また、基板101の少なくとも表面を、PHEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)等の親水性高分子材料で構成してもよい。これにより、基板101の表面への試料成分の非特異的な吸着を抑制することができる。このため、試料が微量であっても、確実に分析等の所定の操作を行うことができる。また、基板101の表面を酸化チタンで構成し、この表面に紫外線照射を行うことにより、基板101の表面を親水化してもよい。また、基板101の表面を酸素プラズマによりアッシングしてもよい。
(第二の実施形態)
本実施形態では、第一の実施形態と異なる点を中心に説明する。図3は、本実施形態に係る構造体120の構成を模式的に示す平面図である。構造体120は、一直線上に配置された複数の柱状体102からなる列を有し、この列が複数並列配置された構成となっている。そして、隣接する二つの列において凹凸構造の凹部と凸部が互い違いに配置された市松配置となっている。柱状体102の短手方向においては、柱状体102間に形成される溝部が一直線上に配置されないように複数の柱状体102がジグザグ状に配置されている。
例えば、図1(a)の格子状の配置では、線分d−d’で示される位置に液の先端部が達すると、この液先端部は、柱状体102のいずれとも接しない状態となる。線分d−d’で示される位置に液の先端部が達すると、かかる状態で観測される接触角は、平坦部で観測される接触角θと実質的に等しくなる。一方、線分c−c’で示される位置に液の先端部が存在する際には、この液先端部は、一直線状に並んでいる柱状体102多数と接する状態となる。その際、線分c−c’で示される位置に存在する液の先端部で観測される接触角は、かかる凹凸構造における実効的な接触角θrに概ね等しくなる。すなわち、図1(a)の格子状の配置をとる柱状体102で構成される凹凸構造では、局所的に観測すると、液先端部が示す接触角に大きな差違が生じている。換言すると、格子状の配置をとることに由来して、局所的には、親液性にむらが生じることもある。
一方、図3に示す市松配置では、図1(a)中の線分d−d’で示される位置のように、液先端部が、柱状体102のいずれとも接しない状態となる頻度は格段に少なくなっている。従って、位置によっては、液先端部が接触する柱状体102の個数に若干の変動は存在するものの、局所的に観測される実効的な接触角は、かかる凹凸構造における実効的な接触角θrに概ね等しくなる。換言すると、図3に示す市松配置では、局所的に、親液性にむらが生じる可能性は大幅に少なくなっている。
このため、図3に示した構造体120は、第一の実施形態に記載の構造体100(図1)に加えて、以下の効果を有する。図5(a)および図5(b)は、図1に示した構造体100と図3に示した構造体120とを比較して説明する図である。図5(b)に示したように、柱状体102が市松配置された構造体120では、柱状体102の短手方向(図中上下方向)では隣接する柱状体102が重なるように配置してあり、短手方向に直線状の溝ができないように構成されている。このため、柱状体102が格子配置された図5(a)に示した構成に比べて、短手方向(図中上下方向)における保液部103からの液体の漏出がより一層確実に抑制された構成となっている。
図4は、図3に示した構造体120を有するチップの構成を模式的に示す平面図である。図4に示したチップ130は、基板101の表面に、複数の構造体120のアレイが複数列設けられた構成である。チップ130においては、平面内に配置された複数の構造体120の保液部103に所定の液体を確実に保持させることができる。
(第三の実施形態)
第一または第二の実施形態に記載の構造体において、平坦部104の外周を取り囲む疎液部をさらに設けてもよい。図12は、本実施形態に係る構造体の構成を模式的に示す断面図である。
図12に示した構造体において、保液部103の表面は、表面コーティング膜である親液性膜124により被覆されている。また、平坦部104の表面において、保液部108の側は親液性膜124により被覆されており、疎液部109の側は疎液性膜125により被覆されている。このため、保液部108に試料溶液を確実に保持し、親液性膜124が設けられた領域の外側に液体試料が漏出することを抑制できる。
また、疎液部109は、平坦部104の外周を取り囲むように設けられている。疎液部109は、凹凸構造123からなり、液体試料との親和性の低い領域である。疎液部109の表面は、表面コーティング膜である疎液性膜125により被覆されている。
図12に示した断面構成を有する構造体は、保液部103の外周に平坦面からなる外周部104および疎液部109がこの順に設けられているため、保液部103にさらに確実に液体を保持し、漏出が抑制される構成となっている。この構造体は、たとえば液だめや流路に好適に用いることができる。
なお、疎液部109についても、上記式(1)および上記式(2)が適用可能であり、凹凸構造123の表面積を制御することにより、疎液化の程度を調節することができる。また、|αcosθ|>1とすることにより、疎液部109の超疎液化が可能である。
以上の実施形態においては、凹凸構造の形成により平坦面より親液化された保液部を形成したが、所定の液体に対して疎液性の基板の表面に凹凸構造を設けることにより、凹凸構造からなる疎液部を有する構造体を得ることもできる。このとき、疎液部の外周を取り囲む平坦面に選択的に液体を保持させることができる。また、上述した式(2)を満たす構成とすれば、疎液部を超撥液性の表面とすることができる。以下の実施形態においては、基板101の表面に疎液部として撥液部が設けられた構造体について説明する。
(第四の実施形態)
本実施形態では、撥液部を有する構造体を、電解質として電解液を用いた燃料電池用の電極に適用する場合を例に説明する。
図13は、本実施形態に係る燃料電池用電極の構成を模式的に示す平面図である。図13に示した電極200は、多孔質の導電性カーボン基板201と、導電性カーボン基板201に設けられた溝状の流路205と、流路205の一端に設けられ、導電性カーボン基板201を貫通する燃料供給孔208と、流路205の他端に設けられ、導電性カーボン基板201を貫通する燃料導出孔209と、を有する。気体燃料は、燃料供給孔208から流路205に供給され、燃料導出孔209から電極200の外部に導出される。
図14は、図13のA−A’断面図である。図14に示したように、電極200の流路205における導電性カーボン基板201に、撥液部206および撥液部206の外側に設けられた平坦部207がこの順に配置されている。撥液部206において、導電性カーボン基板201上に凹凸構造として四角柱状の柱状体202が設けられている。柱状体202の上面は長方形であり、図14において奥行き方向に当たる、気体燃料が流れる流路205の延在方向に沿って長辺が配置された構造となっている。
また、柱状体202の上面を除く領域において、導電性カーボン基板201の表面はリン酸等の所定の電解液に対して撥液性を示す多孔質のフッ素樹脂膜203で覆われている。したがって、柱状体202とともに極めて強い撥液性を導電性カーボン基板201表面は示す。これにより、電解液が撥液部206に入り込むことによる気体の移動経路の閉塞を抑制し、効率の低下を防ぐことができる。
一方、流路205の深さよりも柱状体202の高さは低く、柱状体202の上面にはフッ素樹脂膜203が設けられていない。このため、図14において柱状体202の上方では、流路205の延在方向に沿った方向の撥液性が弱く、電解液が容易に流路205方向に流れ、循環できるようになっている。
柱状体202の上面には、触媒204が成膜されている。触媒204の材料は燃料中の燃料成分の種類に応じて適宜選択されるが、たとえば白金等の金属や白金ルテニウム合金等とすることができる。また、触媒204の表面に接触してリン酸等の所定の電解液(不図示)が配設されている。
図13および図14に示した電極200は、微細加工技術を使用して導電性カーボン基板201に流路205および柱状体202を形成することにより得られる。ただし、撥液部206は、液体を確実に排除できる条件を満たす特殊な凹凸形状を有するため、このような凹凸構造を導電性カーボン基板201上に形成する必要がある。このため、単に導電性カーボン基板201の表面を粗面化したり、導電性カーボン基板201上に複数の柱状体202を設けたりするだけではこのような構成を得ることが困難である。
電極200において、柱状体202を表面積の大きい形状とし、これを撥液部206の領域内に密に配設することにより、凹凸構造からなる撥液部206が充分に撥液化し、確実に液体が排除される。撥液部206における柱状体202の形状および配置は、たとえば、第一〜第三の実施形態および後述する実施例に係る態様を適用することができる。これにより、平坦部207から撥液部206への液体の漏出を確実に抑制することができる。
たとえば、撥液部206において、上述したように撥液性が方向により異なっていてもよい。たとえば、撥液部206に、略同一形状を有する複数の柱状体202が一直線上に配置された列が互いに平行に複数配置されており、列の延在方向における柱状体202の上面の幅と、延在方向に垂直な方向における柱状体202の上面の幅とが互いに異なっていてもよい。
また、撥液部206に柱状体202が格子状に配置されていてもよいし、千鳥等の斜格子状に配置されていてもよい。
また、撥液部206についても、上記式(1)および上記式(2)が適用可能であり、凹凸構造の表面積を制御することにより、疎液性または撥液性の程度を調節することができる。また、|αcosθ|>1とすることにより、撥液部206の超撥液化が可能である。
図13および図14に示した電極200は、たとえば、電解質として電解液を用いた燃料電池の燃料極として用いられる。このとき、流路205の形成面すなわち図14の上側に電解液、あるいは電解液を含むマトリックスが配設され、この電解質を介して電極200に対向する位置に酸化剤極が配設される。
このように構成された燃料電池の電極200において、流路205に、たとえば水素含有ガスが供給されると、柱状体202の上部において水素等の燃料成分が触媒204により分解されて水素イオンが生成される。水素イオンは電解液、または電解液を含むマトリックスへと移動する。また、ガスは撥液部206を経由して、電極200の外部に放出される。
図14に示した燃料電池用の電極は、気体燃料の移動経路を確保するとともに、気体の移動が液体によりふさがれることが抑制された構成となっている。このため、たとえばリン酸型燃料電池等の電極として好適に用いることができる。図15は、電極200が用いられる燃料電池の構成の一例を模式的に示す断面図である。
また、図13では、メアンダ状の流路205を例示したが、流路205の形状は、適宜選択できる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、第一および第二の実施形態においては、保液部を有する構造体を液だめとして用いる場合を例に説明したが、保液部をたとえば液体の流路とすることもできる。たとえば、構造体を、基板の表面に所定の方向に延在する流路が設けられ、流路の少なくとも一端の近傍に保液部が設けられた構成とすることができる。また、流路の一端の近傍から他端の近傍にわたって保液部が設けられている構成としてもよい。
また、基板上に液体の流路が形成されており、その端部に、流路に連通し、第一または第二の実施形態に記載の構造体からなる液だめが設けられていてもよい。このとき、以上の実施形態に係る構造体からなる液だめは、流路に液体試料を導入する試料導入部、流路を流れてきた液体を回収する液体回収部などに好適に用いることができる。
また、以上の実施形態に記載の構造体を用いて基板の表面の親/疎液性を制御することにより、保液部の面積に対する構造体からなる保液部の比表面積の比率を制御することができるため、簡素な構成で確実に親疎液性を制御することができる。
(実施例1)
図6は、本実施例に係るチップの構成を模式的に示す平面図である。図6に示したように、本実施例では、バイオチップで良く使用される100μm幅の流路111を基板112上に作製した。そして、流路111のエッチング深さを変化させて純水の流路111への進入速度を比較している。
基板112としてはシリコン基板および石英基板を用いている。なお、基板112としてシリコン基板と用いる場合は、エッチング後、基板112の表面を熱酸化してシリコン酸化膜を形成し、表面全面を親水化している。2.5μmのドットとギャップの並んだマスクパターンを用いて、流路111となる領域のエッチングとともに、図7に示される円錐台形からなる突起形状の凹凸構造を流路111の全体にわたって形成している。なお、図7は、流路111のSEM(走査型電子顕微鏡)像を示す図である。
図8は、純水の流路111への進入速度の結果を示す図である。図8において、横軸は凹凸構造の段差に当たるエッチング深さを示し、縦軸に親液性を代表する純水の流路への進入速度を示した。なお、この場合、凹凸構造が十分深く、αの値が大きく、αcosθの値が1を超える超親水性の状況ができている。このため、水滴が形成されず、接触角では親水性を評価できなかった。また、流路111の外周の平坦部における基板112表面の接触角は16度を示し、親水性であった。これは凹凸構造の形成により親水性が増加したことを示している。
また、シリコン基板の場合、エッチング深さを0.4μm、1.0μm、2.0μm、3.0μmの順に増加させるにつれて進入速度が高くなり、親水性が増加している。すなわち、段差の大きさにより親水性を制御することが可能であり、段差を大きくすることにより親水化の程度を増加させることができている。
また、石英ガラス基板の場合にも、1.0μmから2.0μmへと段差が大きくなるにつれて親水性が増加している。石英ガラスも物質としては酸化シリコンだが、作製条件の違いによりシリコン基板の場合より大きい親水性を示している。しかし、その増加の傾きは同じ構造による違いであることを反映して、ほぼ平行に推移している。
これらの結果は、流路の一端の近傍から他端の近傍にわたって凹凸構造からなる保液部を形成することにより、同一の表面処理やコーティングを用いた状況においても、チップ内の基板表面の親液性または疎液性の強さの異なる領域を制御し、流路内に選択的に液体を導入し、また導入された液体を保持させることができることを示している。
(実施例2)
本実施例では、図6において、柱状体の形状および表面配置を変えることにより、流路111の凹凸形状が異なる構成のチップを作製している。柱状体の流路111の延在方向(長手方向)における底面の幅は、流路111の延在方向に垂直な方向(短手方向)における底面の幅、マスク・レイアウト上で2.5μm、よりも大きい構成としている。また、短手方向における隣接する柱状体の底面における間隔は、マスク・レイアウト上で2.5μmである。隣接する柱状体の間隙は、短手方向の底面幅よりも充分小さい。
また、流路の延在方向における柱状体の上面の幅は、延在方向に垂直な方向における柱状体の上面の幅よりも大きい構成としている。また、流路の延在方向に平行で平坦面に垂直な断面における保液部の長さに対する当該断面における凹凸構造の稜線の長さが、平坦面に垂直な断面における保液部の長さに対する当該断面における凹凸構造の稜線の長さよりも大きい構成としている。また、短手方向に隣接する二つの柱状体の間の領域は、一直線上に形成されず、ジグザグ状に配置されるように、柱状体を市松配置されている。
このようなチップは、エッチングにより高い歩留まりで安定的に製造可能である。図9は、作製したチップのSEM像を示す上面図である。図10は、図9の四角枠内の部分を拡大して示す図である。また、図11は、図10と同じ領域のSEM像を示す斜視図である。得られたチップに純水を導入したところ、速やかに導入が行われるとともに、流路111の側方からの液体の漏出が好適に抑制されている。
(実施例3)
本実施例では、図16に示すとおり、規則的な凹凸構造として、放射状のパターンを形成した例を示す。本実施例では、ガラス基板上にドライエッチング技術を用いて段差が10ミクロンのパターンを形成した。放射状パターンの中心に位置する円の直径は適宜選ぶことができるが、この場合200ミクロンである。この放射状パターンの場合、中心角(2π/N)の間隔で配置される放射状パターンを横切る断面、例えば、a−a’断面に対して、凹凸構造の段差Δhが10ミクロンで一定となっている。その際、各放射状パターンにおいて、中心から半径rの周上、狭い幅δrの微小領域では、段差部の表面積は、δr×Δh、平坦部の表面積は、δr×r×(2π/N)と近似的に表せる。外周部から中心部へ向かう方向では、中心から半径rが減少するため、平坦部の表面積:δr×r×(2π/N)は減少するが、段差部の表面積:δr×Δhは一定となっている。換言すると、外周部から中心部へ向かう方向では、この一定高さの段差を有する凹凸構造による表面積の増倍率:α=1+(Δh/{r×(2π/N)})が高くなっている。
ガラス基板表面は親水性であるため、平坦な表面における、水の接触角θは、0<θ<90°であり、この放射状パターンでは、中心に位置する円に向かって、表面積の増倍率:αが増大すると、式(1)cosθr=αcosθで与えられるcosθrも増大する。すなわち、この見掛けの接触角θrは減少しており、放射状パターンの中心に位置する円に向かって、実効的な親水性の度合いが高くなることになる。
なお、表面に設ける凹凸構造として、かかる放射状パターンを利用する際には、凹凸構造は、中心軸に対して、一般に、回転対称性を有するため、一般に、この中心軸を起点として定義される二つの直線軸方向に沿った表面積の増倍率は、その回転対称性を満足するような対称性を示す。一方、中心軸より偏心した点、例えば、図16中、a−a’で示される線分上に、軸の起点を設定して、中心軸を通過する、正方向軸と、それと対向する外周方向に伸びる、負方向軸とを、表面上に定義する二つの軸方向とすると、この正方向軸と負方向軸とに沿った実効的な表面積の増倍率は、相違するものとなる。すなわち、中心軸に向かう正方向軸に沿った実効的な表面積の増倍率αと、外周方向に伸びる負方向軸に沿った実効的な表面積の増倍率αとを比較すると、α>αとなっている。また、中心軸より偏心した起点における実効的な表面積の増倍率αは、それぞれ、正・負二つの軸方向に離れる位置における、局所的な表面積の増倍率に相当する、α、αの値に対して、α>α>αの関係となる。加えて、二つの軸方向に離れる位置の距離が増すととも、その差(α−α)は増大していく。
この放射状パターンを設けた表面を利用することにより、かかる放射状パターンの中心部分への集中を行いつつ、水溶液試料の濃縮が可能となる。このパターン上に、濃縮したい水溶液試料、すなわち、水溶媒中に、試料が溶質として溶解さえている水溶液を一滴、滴下する。放射状パターンの中心を狙って滴下するが、多くの場合、その中心からいくらかの偏心した位置に液滴の中心が位置する状態で、パターン上に、概ね円形の外周部を示す液滴が形成される。例えば、この若干偏心した位置に形成された液滴から、水溶媒を乾燥させていくと、液量の減少により液滴外周部分の直径は小さくなっていく。その際、液量の減少に伴って変化する液滴の外周部分の形状は、かかる放射状パターンの表面の凹凸構造に由来する親水性の強さや異方性の影響を受ける。この場合、放射状パターンの表面では、その中心に向かって、実効的な親水性が高くなっているため、水溶液の液滴の外周部分は、実効的な親水性が高い放射状パターンの中心に向かって縮まろうとする。したがって、当初、放射状パターンの中心から偏心していた液滴は、乾燥するにしたがって、放射状パターンの中心に、液滴の中心が一致するように外周部分が小さくなる。乾燥がさらに進むと、最終的には、放射状パターンの中心に位置する円内を満たす形態の微小な液量の液滴となる。その際、液滴中に溶解していた溶質、すなわち試料は、この微小な液量の液滴が存在する放射状パターンの中心に位置する円内に、析出する。したがって、最初の大きな径の液滴形状は、中心から若干偏った位置を中心としていても、最終的に乾燥される時点では、液滴中に含有されている試料は、中心の円内に濃縮された上で、析出する。
実際、図16に示した放射状パターンで実験したところ、液滴の中心が若干偏心するように純水を滴下した後、水の蒸散に伴う液滴形状の変化を観察すると、蒸散が進むと、残る純水の微小液滴は放射状パターンの中心に位置する円内を満たす形となり、最終的に乾燥することが確認された。このような水溶媒の蒸散に伴う液滴形状の変化パターンは、例えば、ブルカーダルトニクス社で販売されているアンカーチップと同様の効果を有している。このアンカーチップとは、レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置のターゲットプレートとして用いられており、特に、チップ上に滴下したペプチドやたんぱく質等の水溶液試料の濃縮効果を有している。そのアンカーチップの試料溶液滴下部分は、中心に数百ミクロン径の親水性領域を有し、その周辺を疎水性の領域で囲んだ構造となっている。この滴下部分に滴下されたペプチドやたんぱく質を溶質として含む水溶液は、中央の数百ミクロン径の親水性領域を覆う形状で乾燥していき、最終的には、濃縮された溶液から、この親水性領域の表面に試料が析出する。この濃縮効果により、このアンカーチップを用いて質量分析を行うと、中央の数百ミクロン径の親水性領域にレーザー照射を行うことで、きわめて感度良く試料の検出を行うことできることが知られている。
本実施例の放射状パターンを用いても、中心の円内に集中した試料の析出がなされ、アンカーチップと同様の効果が実現される。一方、本実施例の放射状パターンでは、アンカーチップのように親水性領域と疎水性領域とを作り分けるコーティング処理をする必要がなくなる。一般に、表面コーティングは、強度的に弱く、複数回の使用により、その表面状態が劣化する。一方、本実施例の放射状パターンでは、表面に形成される凹凸パターンを利用して、表面コーティングを利用するアンカーチップと同様の効果が実現されている。また、表面コーティングと比較して、表面に形成される凹凸パターンは、その表面状態の劣化は少ない。さらに、放射状パターンを形成するチップ材料として、ガラス製のチップを利用すると、そのガラス材料自体は、ポリペプチドやタンパク質のN末端側からの気相エドマン分解、あるいはC末端側からの気相分解によるシーケンシングなどに用いられる薬品にも十分な耐性を有するという特徴を持つ。したがって、放射状パターンを形成したガラス製チップ上に、単離したポリペプチドやタンパク質のサンプル水溶液を滴下し、一旦、乾燥処理を行い、放射状パターンの中心にポリペプチドやタンパク質を濃縮、析出させる。この乾燥処理済みのポリペプチドやタンパク質を、その中心に保持するターゲットプレートごと、上記の気相分解処理を行った後、中心に存在する分解産物の質量分析を行って、N末側アミノ酸配列、あるいはC末側アミノ酸配列をシーケンシングするといった用途にも使用可能となる。
もちろん、本実施例の放射状パターンの場合でも、より高い濃縮効果を得るため、放射状パターン中心部の円内部を親水性とし、放射状パターン部分を弱い親水性としても良い。なお、放射状パターンの中心部は、円形形状に限らず、その面積サイズが同程度であれば、六角形や四角形など、凸多角形形状でも良い。また、円形形状、凸多角形形状と同等の面積/外周比率を示す限り、所望の形状とすることもできる。
一方、表面積の増加を図る目的で利用される、放射状パターンの凹凸構造は、扇型の放射状パターン以外に、例えば、パターン側壁は渦巻き状に拡がっている放射状パターンにおいても、同様に、周辺部から中心部へ向かう際、表面積の増加率αが増す形態を達成できる。
また、各放射状パターン自体の形状も、扇型のように、内周と外周とが同心円の円弧に相当するもの以外に、内周と外周とが同心の六角形の外周の一部に相当するもの、あるいは、パターン自体の形状が、台形に相当するものなど、種々の形状を選択することが可能である。

Claims (8)

  1. 液体をその表面で扱うチップの表面に設ける構造体であって、
    該構造体は、
    前記液体と接触する該チップの表面に設けられる規則的な凹凸構造で構成され、
    前記規則的な凹凸構造を設けたことによる表面積の増倍率を、
    前記規則的な凹凸構造を設けるチップの面積に対する、前記規則的な凹凸構造の表面とチップ表面との総表面積の比率と定義する時、
    前記規則的な凹凸構造を設けたことによる表面積の増倍率は、
    該チップ表面上において定義する二つの軸方向に沿って異っている
    ことを特徴とする構造体。
  2. 請求項1に記載の構造体において、
    該チップの表面に設けられる規則的な凹凸構造は、
    該チップの表面上に形成されている、複数の柱状体を規則的に配置することで形成されている
    ことを特徴とする構造体。
  3. 請求項2に記載の構造体において、
    該チップの表面に形成されている、前記複数の柱状体で構成される規則的な凹凸構造は、
    略同一形状を有する複数の錐台形の柱状体が直線上に配置された列が、互いに平行に複数配置された構成を有し、
    該チップ表面上において、該直線に平行な方向と垂直な方向に定義する二つの軸方向において、
    前記規則的な凹凸構造を設けたことによる表面積の増倍率は、該二つの軸方向に沿って異っている
    ことを特徴とする構造体。
  4. 請求項3に記載の構造体において、
    前記柱状体が直線上に配置された列が、互いに平行に複数配置された構成は、
    隣接する列上に配置される前記柱状体は、
    該直線に垂直な方向の軸方向において、直線状に並ぶことのないように、
    各列上に配置される前記柱状体相互の相対的な位置が選択されている
    ことを特徴とする構造体。
  5. 請求項4に記載の構造体において、
    前記柱状体が直線上に配置された列が、互いに平行に複数配置された構成は、
    隣接する列上に配置される前記柱状体について、
    各列上に配置される前記柱状体相互の相対的な位置が、
    市松格子配置を構成するように選択されている
    ことを特徴とする構造体。
  6. 液体をその表面で扱うチップであって、
    該チップ表面に前記液体の流路を設け、
    該液体流路の表面の少なくとも一部は、請求項1〜5のいずれかに記載の構造体で構成されている
    ことを特徴とするチップ。
  7. 液体をその表面で扱うチップであって、
    該チップ表面に前記液体の液だめを複数設け、
    該液体の液だめ複数の表面の少なくとも一部は、請求項1〜5のいずれかに記載の構造体で構成されている
    ことを特徴とするチップ。
  8. 液体をその表面で扱うチップにおいて、前記チップ表面の少なくとも一部の領域に関して、該領域表面の前記液体に対する親/疎液性を制御する方法であって、
    前記領域表面を、請求項1〜5のいずれかに記載の構造体で構成することにより、
    前記液体に対する親/疎液性を制御する
    ことを特徴とする親/疎液性の制御方法。
JP2006514745A 2004-06-15 2005-06-15 構造体ならびにこれを用いたチップ、および親/疎液性の制御方法 Pending JPWO2005123242A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004177573 2004-06-15
JP2004177573 2004-06-15
PCT/JP2005/010913 WO2005123242A1 (ja) 2004-06-15 2005-06-15 構造体ならびにこれを用いたチップ、および親/疎液性の制御方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2005123242A1 true JPWO2005123242A1 (ja) 2008-07-31

Family

ID=35509487

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006514745A Pending JPWO2005123242A1 (ja) 2004-06-15 2005-06-15 構造体ならびにこれを用いたチップ、および親/疎液性の制御方法

Country Status (3)

Country Link
US (1) US20080056945A1 (ja)
JP (1) JPWO2005123242A1 (ja)
WO (1) WO2005123242A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014124750A (ja) * 2012-12-27 2014-07-07 Dainippon Printing Co Ltd 濡れ性制御素子及びその製造方法

Families Citing this family (21)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4714805B2 (ja) * 2006-03-23 2011-06-29 富山県 マイクロチップ
JP2007278981A (ja) * 2006-04-11 2007-10-25 Japan Advanced Institute Of Science & Technology Hokuriku プレナー型電極及びこれを用いた電気化学検出センサー
US20100136289A1 (en) * 2007-05-23 2010-06-03 Extrand Charles W Articles comprising wettable structured surfaces
JP5026873B2 (ja) * 2007-07-04 2012-09-19 株式会社船井電機新応用技術研究所 酵素電極、酵素電極の製造方法及び酵素センサ
US8486336B2 (en) * 2008-04-18 2013-07-16 Rohm Co., Ltd. Microchip
JP5294200B2 (ja) * 2008-10-28 2013-09-18 ローム株式会社 マイクロチップ
JP5331798B2 (ja) * 2008-04-19 2013-10-30 ブラザー工業株式会社 検査対象受体及び当該検査対象受体を備えた検査装置
US7670894B2 (en) * 2008-04-30 2010-03-02 Intel Corporation Selective high-k dielectric film deposition for semiconductor device
WO2010082279A1 (ja) * 2009-01-15 2010-07-22 パナソニック株式会社 流路構造体およびその製造方法
JP5548925B2 (ja) * 2010-10-15 2014-07-16 学校法人立命館 液滴保持ツールの製造方法
JP5757515B2 (ja) * 2010-10-15 2015-07-29 学校法人立命館 撥水層を有する液滴保持ツールの製造方法
KR20130035479A (ko) * 2011-09-30 2013-04-09 삼성전기주식회사 바이오 칩
JP6017793B2 (ja) * 2012-02-09 2016-11-02 ローム株式会社 マイクロチップ
ITTO20120753A1 (it) * 2012-08-30 2014-03-01 St Microelectronics Srl Dispositivo incapsulato esposto all'aria ambiente e a liquidi e relativo processo di fabbricazione
JP2014239675A (ja) * 2013-03-29 2014-12-25 大日本印刷株式会社 構造体、マイクロ流路装置および構造体の使用方法
US20160032281A1 (en) * 2014-07-31 2016-02-04 Fei Company Functionalized grids for locating and imaging biological specimens and methods of using the same
JP6796371B2 (ja) 2014-11-28 2020-12-09 デクセリアルズ株式会社 マイクロ流路作製用原盤の製造方法
JP6987910B2 (ja) * 2014-11-28 2022-01-05 デクセリアルズ株式会社 マイクロ流路作製用原盤、転写物、およびマイクロ流路作製用原盤の製造方法
CN104882467B (zh) * 2015-06-04 2017-12-15 京东方科技集团股份有限公司 基板及其制造方法、显示装置
DE102017110476B4 (de) 2017-05-15 2019-03-07 Bruker Daltonik Gmbh Präparation biologischer Zellen auf massenspektrometrischen Probenträgern für eine desorbierende Ionisierung
CN111108357B (zh) * 2017-09-20 2021-12-21 旭化成株式会社 表面应力传感器、中空构造元件以及它们的制造方法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4789628A (en) * 1986-06-16 1988-12-06 Vxr, Inc. Devices for carrying out ligand/anti-ligand assays, methods of using such devices and diagnostic reagents and kits incorporating such devices
US5427663A (en) * 1993-06-08 1995-06-27 British Technology Group Usa Inc. Microlithographic array for macromolecule and cell fractionation
US5707799A (en) * 1994-09-30 1998-01-13 Abbott Laboratories Devices and methods utilizing arrays of structures for analyte capture
JP2001515216A (ja) * 1997-08-13 2001-09-18 シーフィード 流体試料を操作するための微小構造体
US6368871B1 (en) * 1997-08-13 2002-04-09 Cepheid Non-planar microstructures for manipulation of fluid samples
US6696022B1 (en) * 1999-08-13 2004-02-24 U.S. Genomics, Inc. Methods and apparatuses for stretching polymers

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014124750A (ja) * 2012-12-27 2014-07-07 Dainippon Printing Co Ltd 濡れ性制御素子及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2005123242A1 (ja) 2005-12-29
US20080056945A1 (en) 2008-03-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPWO2005123242A1 (ja) 構造体ならびにこれを用いたチップ、および親/疎液性の制御方法
JP4585119B2 (ja) 多孔性ケイ素を使用する材料の細胞への移送
JP5207334B2 (ja) マイクロパターン形成装置、マイクロパターン構造体、および、その製造方法
JP3603886B2 (ja) 分離装置およびその製造方法
WO2004081555A1 (ja) 質量分析システムおよび分析方法
US20080023331A1 (en) Electrophoretic Chip, Electrophoretic Device and Electrophoresis Method
CN108479871B (zh) 一种基于形状梯度与表面能梯度的液滴自驱动的功能层及其制备方法
CN1805807A (zh) 具有超憎液表面的燃料电池
US20070145268A1 (en) Ultra-thin liquid control plate and combination of box-like member and the control plate
US20100147794A1 (en) Substrate plasma treatment using magnetic mask device
CN1966393A (zh) 具有纳米尺寸孔的多比例悬臂结构及其制备方法
US20160326636A1 (en) Methods Of Affecting Material Properties And Applications Therefor
US20070077771A1 (en) Method for producing buried micro-channels and micro-device comprising such micro-channels
CN109652287B (zh) 一种微控基板及其制作方法和微流控芯片
JPWO2007066518A1 (ja) 接液構造、液体の移動制御構造、および液体の移動制御方法
JP3925439B2 (ja) 細胞外電位測定デバイスおよびその製造方法
JP2009162549A (ja) 電気泳動チップ
US20040108208A1 (en) Separation apparatus and process for fabricating separation apparatus
EP2106858A1 (en) Substrate and target plate
KR20120018688A (ko) 생물분자 고정화용 패턴화 기판, 이의 제조 방법 및 바이오칩용 마이크로어레이 센서
WO2021174471A1 (en) Microfluidic chip and fabricating method thereof
US20220194633A1 (en) Micro scalable thrusters for adaptive mission profiles in space - ustamps
US6328876B1 (en) Method for producting a filter
CN108490736B (zh) 一种基于形状梯度的实现液滴自驱动的功能层及其制备方法
JP2010285662A (ja) 微細構造体とその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080514

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110510

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110704

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20120207