本発明は、基板の長さ方向一端側に対して他端側を該基板の幅方向に変位させる駆動部を有するアクチュエータ及び該アクチュエータを備え物体を微小量だけ移動させるようにした微動機構並びに該微動機構を備えたカメラモジュールに関する技術分野に属する。
一般に、圧電材料で構成された圧電アクチュエータは、応答速度が速く、高精度な制御が可能である。この圧電アクチュエータの応用の一つに、或る平面内で物体を高速に微動させるようにした微動機構がある(例えば特許文献1参照)。このような微動機構を構成するためには、例えば図22に示すような圧電アクチュエータ600を用いる。この圧電アクチュエータ600は、厚み方向(図22に示すZ軸方向)に分極処理された板状圧電材料からなる圧電体層400と、この圧電体層400の厚み方向一方の面に設けられた第1の電極層401と、圧電体層400の厚み方向他方の面に設けられた第2の電極層402とを備えている。上記第1の電極層401は、圧電体層400の幅方向(X軸方向)に並んで圧電体層400の長さ方向(Y軸方向)に延びる2つの個別電極401a,401bに分割されている。そして、第1及び第2の電極層401,402を介して圧電体層400に電圧を印加すると、圧電体層400に電界が加えられる。このとき、第1の電極層の一方の個別電極401aと第2の電極層402との間の電界403a(図22では、下向き)と、第1の電極層の他方の個別電極401bと第2の電極層402との間の電界403b(図22では、上向き)とでは、大きさは同じであるが、向きが互いに逆になるようになされており、この結果、圧電体層400の幅方向一方側が長さ方向に伸長するときには、他方側が長さ方向に収縮し、これにより、圧電体層400の長さ方向一端側に対して他端側が圧電体層400の幅方向(収縮している側)に変位することになる。
図23は、上記圧電アクチュエータ600を用いて構成した微動機構を示す。つまり、圧電アクチュエータ600の圧電体層400における長さ方向の一端部を固定部材601に固定する一方、他端部に可動部材602を固定することで微動機構を構成する。この微動機構では、上記2つの個別電極401a,401bに対し上記のような電圧を印加して圧電アクチュエータ600を駆動することにより、可動部材602を所定の平面内で固定部材601に対して圧電体層400の幅方向に微小量だけ移動させることが可能になる。
そして、上記のような微動機構は、例えば図24に示すような、撮像素子500と光学レンズ501とを備えたカメラモジュールにおいて、撮像素子500を光学レンズ501に対して、光学レンズ501の光軸Oと垂直な面内で相対移動させることで撮像素子の解像度よりも高い解像度の画像を得るようにする技術(いわゆる画素ずらし)に用いられる(例えば特許文献2参照)。ここで、図24において、502は、撮像素子を保持する可動部材としてのホルダ−502であり、503は、このホルダ−502(撮像素子)を図中のY軸方向に移動させる圧電アクチュエータであり、504は、ホルダ−502(撮像素子)を図24の紙面と垂直な方向に移動させる圧電アクチュエータである。
また、上記のような微動機構は、特許文献3に示されているようなカメラの手ブレ補正機構に用いることもでき、この手ブレ補正機構では、微動機構によって、角速度センサにより検出された手ブレを打ち消すように、撮像素子や光学レンズ等を移動させるようにする。
特開2001−339967号公報 特開2004−96673号公報 特開2004−348147号公報
しかしながら、上記従来の微動機構では、圧電体層の剛性により、撮像素子や光学レンズ等を含む可動部材を支持することになるので、圧電体層の厚みが小さいと、可動部材の支持剛性が不足して、可動部材の重量により圧電アクチュエータ(圧電体層)が圧電体層の厚み方向にたわんでしまい、この結果、可動部材を、本来移動させるべき平面内で移動させることができなくなってしまうという問題がある。そこで、可動部材の支持剛性を高めるために圧電体層の厚みを大きくすることが考えられるが、圧電体層の厚みを大きくすると、可動部材の移動量を或る程度確保するためには圧電体層の駆動電圧を大きくするか、又は圧電体層の長さを長くする必要がある。また、圧電体層の厚みを大きくすることには限界があり、このため、重量がかなり大きい可動部材の場合には、可動部材を確実に支持することは困難となる。
特に、上記のような微動機構を上記カメラモジュールにおける画素ずらしや手ブレ補正に適用した場合においては、圧電アクチュエータが圧電体層の厚み方向にたわむと、撮像素子と光学レンズとの間の距離が変化するため、像がぼやけて鮮明な画像が得られなくなるという問題がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記撮像素子や光学レンズ等を含む可動部材を所定の平面内で微動させるようにするためのアクチュエータに対して、その構成を改良することによって、可動部材を確実に支持して、可動部材が本来の移動平面内からずれるのを抑制しようとすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、可動部材を移動させる機能と、可動部材を支持する機能とを分離する、すなわち、可動部材を支持する機能を、基板及び補強部に持たせ、可動部材を移動させる機能を、圧電素子等のような、基板の長さ方向一端側に対して他端側を基板の幅方向に変位させる変位手段に持たせるとともに、上記補強部を、該補強部の基板幅方向の曲げ剛性が基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状に形成して、補強部を基板厚み方向よりも基板幅方向に曲がり易くした。
具体的には、第1の発明では、厚み方向から見て所定の幅及び長さを有する基板と、該基板の厚み方向一方の面に設けられた補強部と、上記基板の厚み方向他方の面に設けられ、該基板の長さ方向一端側に対して他端側を基板の幅方向に変位させる変位手段とを有する駆動部を備えたアクチュエータを対象とする。
そして、上記補強部は、該補強部の上記基板幅方向の曲げ剛性が上記基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状に形成されているものとする。
上記の構成により、補強部の形状を変えることにより、補強部を含む基板の厚み方向の曲げ剛性と幅方向の曲げ剛性とを自在に変えることができる。そして、補強部を、該補強部の基板幅方向の曲げ剛性が基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状に形成することにより、補強部を含む基板の幅方向の曲げ剛性を補強部がないときと殆ど変わらないようにして、変位手段による基板の幅方向の変位を妨げないようにすることができる。一方、補強部を含む基板の厚み方向の曲げ剛性を補強部がないときよりも高くして、基板が厚み方向にたわむのを抑制することができる。この結果、基板は、その幅方向には変位手段によりスムーズに変位することができるとともに、可動部材を支持しても、基板の厚み方向には変形しにくく(曲がりにくく)することができる。したがって、駆動部の基板長さ方向の一端部を固定部材に固定しかつ他端部に可動部材を固定することで、該可動部材を移動(微動)させる微動機構を構成した場合に、その可動部材が本来の平面内からずれるのを抑制することができ、可動部材を所定の平面内で確実に移動(微動)させるようにすることができる。
第2の発明では、第1の発明において、補強部は,基板の厚み方向一方の面において該基板の長さ方向に連続して設けられているものとする。
このことにより、基板の厚み方向の変形を抑制する効果がより大きくなる。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、より重量のある可動部材を移動させるようにすることが可能となる。
第3の発明では、第1の発明において、補強部は、基板の厚み方向一方の面における幅方向略中央に設けられているものとする。
このことで,補強部を含む基板の幅方向一方側への曲げ剛性と他方側への曲げ剛性とを略同じにすることができ、これにより、基板を幅方向に変形させる手段の配置が容易になり、アクチュエータの制御を高精度に行えるようになる。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材のより精密な移動制御が可能となる。
第4の発明では、第1の発明において、補強部は、金属材料で構成されているものとする。
こうすることで、延性に富む金属材料を用いて補強部を構成することにより、アクチュエータの耐衝撃特性が向上する。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材の支持剛性の向上に加えて、アクチュエータの耐衝撃特性が向上する。
第5の発明では、第4の発明において、補強部は、めっき材からなるものとする。
このことにより、基板上に、非金属材料からなる型を形成し、この型を用いて補強部をめっきにより形成することで、微細構造を有する補強部を容易に形成することができる。また、この形成方法により、補強部の形状精度や取付精度を高めることができるとともに、基板との密着力も向上する。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材のより精密な移動制御が可能になるとともに、長期間駆動したときの信頼性を向上させることができる。
第6の発明では、第5の発明において、補強部と基板との間に、該基板上に該補強部をめっきにより形成するときにおける該めっき成長のための核形成を補助する材料が含有された核形成補助材料含有層が形成されているものとする。
このことで、基板が非金属材料からなっていても、基板上にめっき材からなる補強部を容易に形成することができ、これにより、基板と補強部とを強固に接続することが可能となり、アクチュエータの長期駆動特性や耐衝撃特性等が向上する。特に、核形成を補助する材料として、無電界めっき液に対して触媒作用を持つFe、Ni、Pd等を用いることで、非金属基板上に無電界めっき材からなる補強部を容易に形成することができる。
第7の発明では、第4の発明において、補強部を除く駆動部の周囲が非金属材料によって覆われているものとする。
こうすることで、補強部をめっきにより形成する際に、不要な部分にめっきが形成されるのを防止することができ、補強部をめっきにより効率良く作製することができる。また、アクチュエータの駆動部を非金属材料によって保護することが可能になる。
第8の発明では、第1の発明において、基板は、金属材料で構成されているものとする。
このことにより、延性に富む金属材料を用いて基板を構成することにより、アクチュエータの耐衝撃特性が向上する。また、金属材料は導電性を持つことから、補強部を基板に直接電気めっきにより形成することができる。さらに、基板及び補強部の両方を金属材料で構成すれば、金属同士の密着性は優れているので、アクチュエータの信頼性をも向上させることができる。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材の移動精度が向上するととともに、アクチュエータの耐衝撃特性を向上させることができる。
第9の発明では、第1の発明において、補強部は,基板に一体形成されたものであるとする。
こうすることで、補強部の基板に対する位置精度が向上するとともに、補強部が基板から外れることがない。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材の位置決め精度及び長期間駆動したときの信頼性が向上する。
第10の発明では、第1の発明において、補強部の基板幅方向の長さの平均値を基板の幅の平均値のα倍とし、該補強部の基板厚み方向の長さの平均値を基板の厚みの平均値のβ倍としたとき、上記α及びβの値は、
0.05<α<0.45、
1<β<10、及び
0.001<α3β<0.1
を全て満たすものとする。
このことで、変位手段による基板の幅方向の変位を妨げないようにしつつ、基板の厚み方向の変形を確実に抑制することが可能な最適な補強部が得られる。
第11の発明では、第1の発明において、基板の幅は、該基板の厚みに対して1倍を越え20倍以下に設定され、上記基板の長さは、該基板の幅に対して4倍以上に設定されているものとする。
このことにより、変位手段からエネルギーを最も効果的に取り出して、基板の幅方向への変位を効率良く行わせることができるとともに、その変位量を十分に確保することができる。
第12の発明では、第1の発明において、変位手段は、圧電体層と、該圧電体層の厚み方向一方の面に設けられた第1の電極層と、圧電体層の厚み方向他方の面に設けられた第2の電極層とで構成されており、上記第1及び第2の電極層の少なくとも一方は、上記圧電体層に、基板の長さ方向一端側に対して他端側を該基板の幅方向に変位させるための電界を加えることが可能なように2つ以上の個別電極に分割されているものとする。
このことで、変形手段を容易に構成することができる。また、従来のアクチュエータでは、圧電体層により可動部材を支持する必要があったが、本アクチュエータでは、そうする必要はないので、圧電体層を薄くすることができ、低電圧で圧電素子を駆動することが可能となる。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、基板の厚み方向の変形を抑制し、低電圧で可動部材を基板の幅方向に移動させるようにすることができる。
第13の発明では、第12の発明において、第1及び第2の電極層の少なくとも一方は、4つ以上の個別電極に分割されているものとする。
このことにより、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、低電圧で可動部材を移動させることができることに加えて、基板を幅方向に木目細かく変形させることができるようになり、可動部材の動きの自由度を増大させることができる。
第14の発明では、第12の発明において、全ての個別電極の表面積が略同じであるとする。
このことで、各個別電極に加えた電圧が等しければ、圧電体層における各個別電極に対応する部分に加えられる電界の大きさが等しくなる。これにより、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材の移動制御が容易になるとともに、各個別電極に電圧を加える駆動回路の構成が簡素になる。
第15の発明では、第12の発明において、第1及び第2の電極層の少なくとも一方は、基板幅方向に並ぶ2つの個別電極に分割されており、圧電体層において上記2つの個別電極のうち一方に対応する部分に加えられる電界の大きさと、他方に対応する部分に加えられる電界の大きさとが互いに異なるものとする。
こうすることで、基板を幅方向だけでなく、厚み方向にも変形させるようにすることができる。これにより、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材の重量により基板が厚み方向にたわんだとしても、そのたわみを打ち消すように変位手段を作動させて、可動部材が本来の平面内からずれるのを抑制することができるようになる。このように、基板の厚み方向に生じるたわみを補正できることから、より重い可動部材であっても問題はなく、また、可動部材を基板幅方向だけでなく、基板厚み方向に移動させる微動機構を構成することもできる。
第16の発明では、第12の発明において、第1及び第2の電極層の少なくとも一方は、基板の厚み方向から見て四角形の頂点にそれぞれ位置するように基板幅方向及び基板長さ方向に2つずつ並ぶ4つの個別電極に分割されており、圧電体層において、上記四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極に対応する部分に加えられる電界の大きさが共に同じであり、残り2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極に対応する部分に加えられる電界の大きさが共に同じであるものとする。
このことにより、可動部材の移動軌跡を直線にすることができ、可動部材を厳密に直線に沿って移動させる必要がある場合に有用である。
第17の発明では、第16の発明において、圧電体層において、四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極に対応する部分に加えられる電界の大きさと、残り2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極に対応する部分に加えられる電界の大きさとが互いに異なるものとする。
このことで、可動部材を直線に沿って移動させることができることに加えて、第15の発明と同様に、基板を幅方向だけでなく、厚み方向にも変形させるようにすることができる。
第18の発明では、第1の発明において、基板における補強部が設けられた面が同じ方向を向きかつ基板幅方向に互いに平行に並ぶ複数の駆動部を備え、上記複数の駆動部同士が、該駆動部の基板長さ方向の両端部にて互いに並列に連結されているものとする。
すなわち、駆動部が1つである場合には、可動部材の移動量を大きくするには、基板の幅を小さくして基板の幅方向の変位量を大きくする必要があるが、基板の幅を小さくすると、基板の幅方向の曲げ剛性が小さくなりすぎて、基板の幅方向の共振特性が低下し、これにより、印加する電圧を高速で変化させる等して駆動部を高速で駆動しようとしても、その電圧の変化等に基板の変形が即座に追従しなくなって、可動部材を高速で移動させることが困難になる。しかし、本発明の構成では、可動部材の支持特性及び基板の幅方向の共振特性を、駆動部が1つである場合と同等にしつつ、基板の幅方向の変位量を大きくすることができるようになる。この結果、少なくとも1つの駆動部の基板長さ方向の一端部を固定部材に固定し、少なくとも1つの駆動部の基板長さ方向の他端部に可動部材を固定して微動機構を構成した場合、駆動部が1つである場合に比べて、可動部材を高速で移動させるようにすることができるとともに、可動部材の移動量を増やすことができる。また、複数の駆動部の変形特性を同じにすることで、可動部材を直線に沿って移動させることができるようになる。
第19の発明では、第1の発明において、基板における補強部が設けられた面が同じ方向を向く複数の駆動部を備え、上記複数の駆動部同士が、該駆動部の基板長さ方向の端部にて互いに直列に連結されているものとする。
すなわち、互いに直列に連結された複数の駆動部のうち一方の端に位置する駆動部における他の駆動部と連結されていない端部を固定部材に固定し、他方の端に位置する駆動部における他の駆動部と連結されていない端部に可動部材を固定して微動機構を構成した場合、駆動部が1つである場合に比べて、可動部材の動きの自由度及び移動量を増すことは可能であるが、可動部材が本来の平面内からずれ易くなるという問題がある。しかし、この発明では、補強部により基板の厚み方向の曲げ剛性を大きくすることができるので、可動部材が本来の平面内からずれるのを有効に抑制することができる。よって、可動部材を所定の平面内で確実に移動させるようにしつつ、可動部材の動きの自由度及び移動量を増大することができる。
第20の発明では、第19の発明において、相隣接する2つの駆動部同士が、基板厚み方向から見て互いに直交する方向に延びているものとする。
この構成により、可動部材を、その移動させる平面内において互いに直交する2軸方向に自在に移動させるようにすることができるとともに、第1軸方向に延びる駆動部により可動部材の第2軸方向の移動を制御することができ、第2軸方向に延びる駆動部により可動部材の第1軸方向の移動を制御することができ、可動部材の位置決め制御が容易になる。
第21の発明では、第19の発明において、複数の駆動部同士が、基板幅方向に互いに平行に並んだ状態で、該駆動部の基板長さ方向の端部にて連結部材を介して互いに直列に連結されているものとする。
こうすることで、可動部材の移動量を、全駆動部の基板幅方向の変位量の総和と同じ量にすることができ、駆動部が1つである場合に比べて、格段に増大させることができる。この結果、本アクチュエータを、可動部材を大きく移動させる必要がある微動機構、例えば手ブレ補正機構に好適に用いることができるようになる。
第22の発明は、可動部材を固定部材に対して移動させる駆動部を有するアクチュエータを備えた微動機構の発明であり、この発明では、上記アクチュエータの駆動部は、厚み方向から見て所定の幅及び長さを有する基板と、該基板の厚み方向一方の面に設けられた補強部と、上記基板の厚み方向他方の面に設けられ、該基板の長さ方向一端側に対して他端側を基板の幅方向に変位させる変位手段とを有し、上記補強部は、該補強部の上記基板幅方向の曲げ剛性が上記基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状に形成され、上記駆動部の基板長さ方向の一端部が上記固定部材に固定され、他端部に上記可動部材が固定されており、更に上記駆動部は、上記変位手段の作動により上記可動部材を上記固定部材に対して上記基板幅方向に移動させるように構成されているものとする。
この発明により、可動部材の重量によって、駆動部が本来変形すべき方向(基板の幅方向)とは異なる方向(基板の厚み方向)に変形するのを抑制することができ、可動部材を所定の平面内で確実に移動させることができる。また、2つ以上の駆動部により可動部材を支持するようにすれば、基板の厚み方向の変形をさらに抑制することができる.
第23の発明は、撮像素子と、該撮像素子に光を導く光学レンズと、該撮像素子又は光学レンズを、該光学レンズの光軸と垂直な方向に移動させる駆動部を有するアクチュエータとを備えたカメラモジュールの発明である。
そして、この発明では、上記アクチュエータの駆動部は、厚み方向から見て所定の幅及び長さを有する基板と、該基板の厚み方向一方の面に設けられた補強部と、上記基板の厚み方向他方の面に設けられ、該基板の長さ方向一端側に対して他端側を基板の幅方向に変位させる変位手段とを有し、上記補強部は、該補強部の上記基板幅方向の曲げ剛性が上記基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状に形成され、上記駆動部の基板長さ方向の一端部が固定部材に固定され、他端部に上記撮像素子又は光学レンズが固定されており、更に上記駆動部は、上記変位手段の作動により上記撮像素子又は光学レンズを上記固定部材に対して該光学レンズの光軸と垂直な方向に移動させるように構成されているものとする。
この発明のカメラモジュールは、第22の発明と同様の微動機構を備えていることになるので、小型・軽量で高品質・高解像度のカメラモジュールを実現することができる。
本発明のアクチュエータによると、可動部材を支持する機能を、変位手段とは別の基板及び補強部に持たせるとともに、この補強部を、該補強部の基板幅方向の曲げ剛性が基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状にすることにより、変位手段による基板の幅方向の変位を妨げないようにしつつ、基板(駆動部)が該基板の厚み方向に変形するのを抑制することができる。したがって、本発明のアクチュエータを用いて微動機構を構成した場合に、可動部材を所定の平面内で確実に移動させることができるようになる。また、変位手段が圧電素子等で構成されている場合には、圧電体層の厚みを薄くして圧電素子の駆動電圧を低下させることができるとともに、圧電体層の厚みを薄くしても、基板及び補強部により可動部材を確実に支持することができ、駆動電圧の低下と可動部材支持との両立を図ることができる。よって、アクチュエータ(延いては微動機構やこの微動機構を用いたカメラモジュール等)の小型化及び駆動電圧の低下を実現することができる。
[図1]図1は、本発明の実施形態1に係るアクチュエータを示す斜視図である。
[図2]図2は、上記アクチュエータの製造方法を示す概略図である。
[図3]図3は、α及びβの値について本発明の効果が得られる範囲を示す図である。
[図4]図4は、実施例5に係るアクチュエータの駆動部の断面図である。
[図5]図5は、実施例6に係るアクチュエータの駆動部における補強部の形成方法を示す概略図である。
[図6]図6は、本発明の実施形態3に係るアクチュエータを示す斜視図である。
[図7]図7は、本発明の実施形態4に係る微動機構を示す平面図である。
[図8]図8は、アクチュエータを駆動したときの変形状態を示す平面図であり、図8(a)は、第1の電極層を2分割した場合を示し、図8(b)は、第1の電極層を4分割した場合を示す。
[図9]図9(a)は、撮像素子の拡大平面図であり、図9(b)は、撮像素子を1軸方向に移動させる微動機構を用いて、2倍の画素数の高解像度画像を得る場合の受光部の位置の変化を模式的に示す図である。
[図10]図10は、実施例10に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す図である。
[図11]図11は、実施例10に係る撮像素子微動機構におけるアクチュエータの駆動部の個別電極に印加する電圧波形を示す図である。
[図12]図12は、実施形態5に係るアクチュエータを示す図であり、図12(a)は、2つの駆動部を並列に連結した場合を示し、図12(b)は、2つの駆動部を直列に連結した場合を示す。
[図13]図13(a)は、実施例11に係るアクチュエータを示す図であり、(b)は、そのアクチュエータの駆動部を駆動したときの駆動部の変形状態を示す図である。
[図14]図14は、実施例12に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す図である。
[図15]図15は、実施形態6に係る微動機構を示す図である。
[図16]図16は、撮像素子を互いに直交する2軸方向に移動させる微動機構を用いて、4倍の画素数の高解像度画像を得る場合の受光部の位置の変化を模式的に示す図である。
[図17]図17は、撮像素子を互いに直交する2軸方向に移動させることが可能なカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す図である。
[図18]図18は、実施例14に係るカメラモジュールの光学レンズ微動機構を示す図である。
[図19]図19は、実施例15に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す図である。
[図20]図20は、実施形態7に係る微動機構の構成を示す図である。
[図21]図21は、図20の微動機構のアクチュエータにより構成されたカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す図である。
[図22]従来のアクチュエータを示す斜視図である。
[図23]上記従来のアクチュエータにより構成された微動機構を示す概略図である。
[図24]画素ずらし機能を有する従来のカメラモジュールを示す概略図である。
符号の説明
1 基板
2 補強部
3 圧電素子(変位手段)
4 圧電体層
5 第1の電極層
6 第2の電極層
7 光学レンズ
10 駆動部
11 アクチュエータ
12 固定部材
13 可動部材
15 撮像素子
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るアクチュエータ11を示し、このアクチュエータ11は、厚み方向(図1に示すZ軸方向(ここでは、上下方向))から見て所定の幅及び長さを有する矩形状の基板1を有する駆動部10を備えている。この基板1の幅(X軸方向の長さ)は、該基板1の厚みに対して1倍を越え20倍以下に設定されていることが好ましく、基板1の長さ(Y軸方向の長さ)は、上記幅に対して4倍以上に設定されていることが好ましい。この幅及び長さにより、後述の如く基板1を幅方向に変位させる際に、該基板1をねじれさせないで幅方向へ効率良く変位させることができるとともに、その変位量を十分に確保することができる。
尚、本実施形態では、基板1の幅及び厚みは、長さ方向全体に亘って一定であるが、長さ方向の位置に応じて変化させてもよく、基板1がその幅方向に湾曲したものであってもよい。また、上記基板1としては、ガラス基板、シリコン基板、金属基板、セラミックス基板等が挙げられ、その材料の特性によって、アクチュエータ11の動作特性や耐衝撃特性が変化する。特に金属基板は、アクチュエータ11の耐衝撃特性を向上させることができて好ましい。
上記駆動部10は、上記基板1の厚み方向一方の面(本実施形態では、下面)に設けられた補強部2と、基板1の厚み方向他方の面(本実施形態では、上面)に設けられ、基板1の長さ方向一端側に対して他端側を基板1の幅方向に変位させる変位手段としての圧電素子3とを更に有している。
上記圧電素子3は、上記基板1の厚み方向から見て該基板1と略同じ形状をなしかつ厚み方向に分極している圧電体層4と、この圧電体層4の厚み方向一方の面(本実施形態では、基板1と反対側の面(上面))に設けられた第1の電極層5と、圧電体層4の厚み方向他方の面(本実施形態では、基板1側の面(下面))に設けられた第2の電極層6とで構成されており、第1及び第2の電極層5,6を介して圧電体層4に電圧を印加することが可能に構成されている。上記圧電体層4は、本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(ZrとTiとの組成比Zr/Ti=53/47)からなっているが、圧電材料や組成は、これに限るものではなく、第1及び第2の電極層5,6への電圧の印加により圧電体層4に電界が加えられたときに、圧電効果により該電界の向きに対し垂直な方向(圧電体層4の長さ方向)に伸縮するものであればよい。
上記第1の電極層5は、圧電体層4の幅方向(X軸方向)に並んで圧電体層4の長さ方向(Y軸方向)に延びる2つの個別電極5a,5bに分割されている。これら2つの個別電極5a,5bは、圧電体層4の幅方向中央線に対して互いに対称な位置に配設されていて、同じ表面積を有している。一方、上記第2の電極層6は、上記基板1の厚み方向から見て該基板1及び上記圧電体層4と略同じ形状をなしていて、共通電極とされている。そして、上記圧電体層4に、上記基板1の長さ方向一端側に対して他端側を該基板1の幅方向に変位させるための電界が加わるように、第1及び第2の電極層5,6に電圧が印加されるようになっている。すなわち、圧電体層4において一方の個別電極5aに対応する部分(個別電極5aと第2の電極層6との間の部分)に加えられる電界と、他方の個別電極5bに対応する部分(個別電極5bと第2の電極層6との間の部分)に加えられる電界とでは、大きさは同じであるが、向きが互いに逆になるように、第1及び第2の電極層5,6に電圧が印加される。
上記のような電圧の印加により、圧電体層4において上記一方の個別電極5aと第2の電極層6との間の部分と、他方の個別電極5bと第2の電極層6との間の部分とでは、圧電体層4における長さ方向の伸縮が逆になる。つまり、圧電体層4の幅方向一方側が長さ方向に伸長するときには、他方側が長さ方向に収縮する。このとき、基板1は伸縮しないので、基板1を厚み方向に曲げる力が生じるが、この力は、圧電体層4が伸張する部分では下向きであり、収縮する部分では上向きであるので、駆動部10全体としてはそれらの力が上下方向において打ち消しあって、基板1は上下方向に変形しない。その結果、圧電体層4の長さ方向に伸張する力と収縮する力とにより、基板1(駆動部10全体)が基板1の幅方向に屈曲し(弾性変形し)、基板1の長さ方向一端側に対して他端側が基板1の幅方向(収縮している側)に変位する。厳密には、後の実施形態4で説明するように、基板1の長さ方向一端側に対して他端側が円弧状の軌跡を描いて変位する(上下方向に延びる軸周りに回転する)ために、基板1の幅方向の変位に加えて長さ方向の変位も生じることになるが、この長さ方向の変位量は、幅方向の変位量に比べて非常に小さく、特定の場合以外、問題とはならない。
尚、上記第2の電極層6は、圧電体層4の下面全体に設けられている必要はなく、第1の電極層5と同様に2つの個別電極に分割して、これら個別電極を圧電体層4の下面における上記第1の電極層5の2つの個別電極5a,5bにそれぞれ対応する部分に配置してもよい。この第2の電極層6が複数の個別電極に分割された場合には、それら個別電極の間の部分は、後述の製造方法では圧電体層4で満たされることになる。また、第2の電極層6のみを2つの個別電極に分割するようにしてもよい。さらに、第1及び第2の電極層5,6の少なくとも一方の分割数は、2つに限らず、それよりも多くてもよい。
上記補強部2は、該補強部2の基板幅方向(X軸方向)の曲げ剛性が基板厚み方向(Z軸方向)の曲げ剛性よりも小さくなるような形状に形成されている。つまり、補強部2は、基板1の厚み方向よりも基板1の幅方向に曲がり易くなっている。本アクチュエータ11においては、補強部2を含む基板1の幅方向の曲げ剛性が小さい方が、基板1の幅方向の変位量が大きくなるので、基板1の厚みが薄くかつ補強部2がない方が、基板1の幅方向の変位量が大きくなる。しかし、後述の如く、本アクチュエータ11を微動機構に用いる場合には、可動部材を支持する機能が求められる。このため、基板1の幅方向の曲げ剛性を出来る限り大きくしないで、基板1の厚み方向の曲げ剛性を大きくする必要がある。そのために、基板1の厚み方向一方の面(圧電素子3とは反対側の面)における幅方向略中央に補強部2を設け、この補強部2の基板幅方向の曲げ剛性を基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さくなるようにしている。このような補強部2の一例として、図1に示すように、基板厚み方向(Z軸方向)の長さが基板幅方向(X軸方向)よりも長い形状のものが考えられる。このような補強部2を基板1に取り付けることにより、基板1の幅方向の変位量の減少を最小限にとどめる一方、可動部材を支持しても、基板1の厚み方向のたわみを効果的に抑制することができるようになる。
上記補強部2の形状としては、該補強部2の基板幅方向(X軸方向)の長さの平均値を基板1の幅の平均値のα倍とし、補強部2の基板厚み方向(Z軸方向)の長さの平均値を基板1の厚みの平均値のβ倍としたとき、これらα及びβの値は、
0.05<α<0.45、
1<β<10、及び
0.001<α3β<0.1
を全て満たすことが好ましい。こうすれば、圧電素子3による基板1の幅方向の変位を妨げないようにしつつ、基板1の厚み方向の変形を確実に抑制することが可能な最適な補強部2が得られる。
上記補強部2の材料は、上記基板1と同様の材料、つまりガラス、シリコン、金属、セラミックス等が好ましく、特に基板1と同じ材料にすれば、基板1との接合強度を向上させることができて非常に好ましく、また、基板1及び補強部2を共に金属材料で構成すれば、より一層好ましい。
尚、本実施形態では、補強部2は,基板1の下面において該基板1の長さ方向全体に亘って連続して設けられているが、基板1の長さ方向の一部に連続的に設けられていてもよく、分割状態で設けられていてもよい。
また、本実施形態では、補強部2の断面は、基板1の長さ方向全体に亘って一定であるが、基板1の長さ方向の位置に応じて変化させるようにしてもよい。例えば、後述の如く微動機構を構成したときに、補強部2の上下方向の長さを、固定部材側ほど長くし、可動部材側ほど短くするようにする。こうすれば、可動部材の重量によって生じる基板1のたわみの曲率を基板1の長さ方向全体に亘って一定にすることができる。この結果、圧電体層4のひずみ状態が一定になるように制御して、安定した駆動が行えるようになる。
さらに、本実施形態では、補強部2は、基板1の幅方向中央線に対して対称な形状をなして基板1の幅方向略中央に取り付けられているが、該中央線からずらした位置に補強部2を配置するようにしてもよい。すなわち、圧電体層4の材料組成や製造方法によっては、該圧電体層4の厚み方向に電界を加えた場合の圧電特性が該電界の向き(上向き又は下向き)により著しく異なる場合がある。つまり、圧電体層4において第1の電極層5の一方の個別電極5aと第2の電極層6との間の部分と、他方の個別電極5bと第2の電極層6との間の部分とで圧電特性が異なる場合がある。このような場合に、補強部2を、基板1の幅方向中央からずらした位置に配置して、基板1が幅方向に曲がるように調整することができる。
また、本実施形態では、第1電極層5の2つの個別電極5a,5bの表面積を等しくしたが、上述のように圧電体層4において分極方向とその反対方向とで圧電特性が著しく異なる場合には、圧電体層4の圧電特性に合わせて、2つの個別電極5a,5bの表面積比を変化させたり、個別電極5a,5b毎に印加する電圧の大きさを変えたりしても、本発明の効果に変わりはない。
次に、上記アクチュエータ11を製造する方法を図2により説明する。
先ず、図2(a)に示すように、厚み方向から見て所定の幅及び長さを有する基板1を用意し、図2(b)に示すように、この基板1上に、第2の電極層6をスパッタ法等の方法により形成する。
続いて、図2(c)に示すように、上記第2の電極層6上に圧電体層4をスパッタ法により形成する。この圧電体層4の形成方法は、スパッタ法に限らず、他の形成方法(例えばゾル−ゲル法や水熱法等)を用いてもよい。
次いで、図2(d)に示すように、上記圧電体層4上に第1の電極層5をスパッタ法等の方法により形成し、その後、図2(e)に示すように、その第1の電極層5を、2つの所定形状の個別電極5a,5bに分割されるようにパターニングする。こうして基板1の上面に圧電素子3が形成されることになる。
次に、上記基板1の下面における幅方向中央位置に、予め作製しておいた補強部2となる部材を接着固定することで、アクチュエータ11(駆動部10)が完成する(尚、接着剤は図示していない)。
ここで、上記製造方法において、第2の電極層6を形成した後でかつ圧電体層4を形成する前に、該第2の電極層6をパターニングすれば、第2の電極層6も、第1の電極層5と同様に複数の個別電極に分割することができる。この分割した第2の電極層6上に圧電体層4をスパッタ法により形成すれば、それら複数の個別電極間の部分が圧電体層4で満たされることになる。
また、上記製造方法では,補強部2となる部材を基板1に対し接着固定することにより取り付けたが、基板1と補強部材2とが共に金属材料からなる場合には、拡散接合や溶接により取り付けるようにしてもよい。また、基板1上にレジスト等の非導電性の材料からなる型を形成し、その型を使ってめっき(電気めっき又は無電解めっき)を行うことによっても、金属材料からなる基板1上に、めっき材からなる補強部2を形成することができる。さらに、基板1が非導電性材料からなる場合においても、基板1上に、補強部2をめっきにより形成するときにおける該めっき成長のための核形成を補助する材料が含有された核形成補助材料含有層を形成し、この核形成補助材料含有層上にめっき材からなる補強部2を形成するようにすることができる。特に、核形成を補助する材料として、無電界めっき液に対して触媒作用を持つFe、Ni、Pd等を用いることで、非金属基板上に、Ni等の無電界めっき材からなる補強部を形成することができる。
上記アクチュエータ11を用いて可動部材を移動(微動)させる微動機構を構成するには、図23に示した従来の微動機構におけるアクチュエータ600を、上記アクチュエータ11に置き換えればよい。すなわち、アクチュエータ11の駆動部10(基板1又は補強部2)の基板長さ方向の一端部を固定部材に固定し、駆動部10(基板1又は補強部2)の基板長さ方向の他端部に可動部材を取付固定する。こうすることで、圧電素子3の作動により、可動部材を所定の平面(ここでは、水平面)内において固定部材に対して基板幅方向に往復移動させることができるようになる。
この微動機構においては、可動部材が基板1(及び補強部2)により支持されることになる。そして、基板1は、補強部2により該基板1の厚み方向には曲がり難くなっているので、可動部材を支持しても、その可動部材の重量による基板1の厚み方向のたわみ量は小さくて済む。一方、補強部2は、基板1の幅方向には曲がりやすくなっているので、圧電素子3による基板1の幅方向の変位を妨げるようなことはない。しかも、可動部材を圧電素子3で支持する必要がないので、圧電素子3の圧電体層4の厚みを薄くすることができ、圧電素子3の駆動電圧を低下させることができる。よって、可動部材を所定の平面内からずれないように低電圧で高速かつスムーズに移動させることができるとともに、可動部材の移動量を大きくすることができる。
尚、1つのアクチュエータ11によって可動部材を支持し移動させる必要はなく、複数のアクチュエータ11を、それらの動作が互いに干渉しないように設けて、これら複数のアクチュエータ11によって可動部材を支持し移動させる構成であってもよい。また、後の実施形態5で説明するように、1つのアクチュエータ11において駆動部10を複数設けて、これら複数の駆動部10を、互いに並列に連結したり直列に連結したりするようにしてもよい。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
本実施例では、アクチュエータの駆動部における基板として、幅500μm、厚み100μm、長さ10mmの結晶化ガラスの板材を用い、第2の電極層としては、成膜温度300℃、高周波電力100W、プロセス圧力1PaのAr雰囲気中でスパッタリングにより形成してなる、厚み0.1μmのPt薄膜とした。圧電体層としては、成膜温度600℃、高周波電力600W、プロセス圧力1PaのArとO2との混合雰囲気中でスパッタリングにより形成してなる、厚み2μmのPZT薄膜(Zr/Ti=53/47)とした。第1の電極層としては、上記第2の電極層と同じ条件でスパッタリングにより成膜してなるPt薄膜とし、これをドライエッチングによりパターニングして、幅220μm、長さ9.5mmの2つの個別電極を形成した。
また、補強部としては、高さ(基板厚み方向の長さ)200μm、幅(基板幅方向の長さ)100μm、長さ5mmの結晶化ガラスとし、これを上記基板の厚み方向一方の面の幅方向中央及び長さ方向中央に接着固定した。
上記基板の長さ方向の一端部を固定部材に固定し、他端部に重量200mgの可動部材を固定して微動機構を構成した。この可動部材の重量による基板の厚み方向の最大たわみ量は41μmであった。
そして、第2の電極層を接地し、第1の電極層の2つの個別電極のそれぞれに、位相が互いに180度異なる、周波数500Hz及び振幅5Vの正弦波電圧を印加してアクチュエータの駆動部を駆動した。このとき、可動部材は基板の幅方向に±1.5μm移動し、100nm以下の精度で位置決めを行うことができた。また、連続して1000時間駆動したところ、位置決め精度が200nmに低下した。さらに、アクチュエータを、駆動部が固着しないように樹脂ケースでパッケージングした状態で、高さ50cmから落下させる試験をおこなったところ、アクチュエータに破損は見られなかったが、高さ1mから落下させる試験を行うと、駆動部(基板又は補強部)の固定部材側の端部にクラックが発生した。
本実施例では、アクチュエータの駆動部における基板の厚み及び補強部の長さを上記実施例1とは異ならせた。すなわち、補強部の長さを基板の長さと等しくなるようにして、基板の長さ方向全体に亘って連続するようにし、基板の厚みは上記実施例1のものに対して1/2にした。具体的には、基板を、幅500μm、厚み50μm、長さ10mmの結晶化ガラスの板材とし、補強部を、高さ200μm、幅100μm、長さ10mmとした。その他の材料やアクチュエータの製造方法は上記実施例1と同様とした。
そして、上記アクチュエータを用いて、上記実施例1と同様の微動機構を構成したところ、可動部材の重量による基板の厚み方向の最大たわみ量は25μmであった。また、第1及び第2の電極層に、上記実施例1と同様の正弦波電圧(但し、周波数400Hz)を印加して駆動を行ったところ、可動部材は基板の幅方向に±2.5μm往復移動し、100nm以下の精度で位置決めを行うことができた。上記正弦波電圧の周波数を400Hzとしたのは、これ以上速くすると動作が不安定になったからである。また、連続して1000時間駆動したところ、位置決め精度が200nmに低下した。さらに、アクチュエータを実施例1と同様にパッケージングした状態で、高さ50cmから落下させる試験をおこなったところ、アクチュエータに破損は見られなかったが、高さ1mから落下させる試験を行うと、駆動部(基板又は補強部)の固定部材側の端部にクラックが発生した。
本実施例では、基板と補強部との大きさの割合を変化させて、本発明の効果が得られる範囲を明らかにした。
すなわち、実施例2において補強部として用いた結晶化ガラスのサイズを変化させて、基板の厚み方向の最大たわみ量及び可動部材の最大移動量を調べた。このとき、基板の大きさは、幅500μm、厚み50μm、長さ10mmとし、これに対して、補強部の大きさを変化させた。つまり、上記実施形態1で説明したα及びβの値を変化させた複数種のアクチュエータを用意した。
図3に、本発明の効果が得られる範囲を示す。図中の斜線を施した部分が本発明の効果が得られる範囲である。ここで、本発明の効果が得られる範囲とは、可動部材の重量を10mg〜500mgとして、その重量による基板の厚み方向の最大たわみ量が50μm以下で、かつ可動部材の最大移動量が1μm以上となる範囲である。この範囲外では、本発明の効果が十分に得られないことになる。すなわち、上記αの値が小さすぎたり(0.05以下)、βの値が大きすぎたり(10以上)すると、補強部の剛性が低くなって、可動部材の支持性が不十分となる。一方、αの値が大きすぎたり(0.45以上)、βの値が小さすぎたり(1以下)すると、可動部材の支持性は問題ないが、可動部材の移動量が小さくなりすぎて微動機構として適さなくなる。
本実施例では、上記実施例2において基板(結晶化ガラス)の幅を変化させて、可動部材の移動量との関係を調べた。
この結果、基板の幅が大きくなると、可動部材の移動量が減少するとともに、基板の幅が、該基板の厚みの20倍よりも大きくなると、基板にねじれが生じる。このため、可動部材が平面内で移動しなくなって、平面内で移動する微動機構として機能しなくなった。一方、基板の幅が、該基板の厚み以下となると、基板の幅方向の曲げ剛性よりも厚み方向の曲げ剛性が大きくなり、補強部を設ける意味がなくなる。また、基板の長さが幅の4倍よりも小さいと、可動部材の移動量が小さくなりすぎて微動機構として適さないことが分かった。
(実施形態2)
本実施形態は、基板1及び補強部2の材質を金属に変更したものである。すなわち、アクチュエータ11の駆動精度や耐衝撃特性は、基板1及び補強部2の材質及び取付け方法によるところが大きく、延性に富む金属を用いることにより、アクチュエータ11(駆動部10)の耐衝撃特性を向上させることができる。このように基板1及び補強部2を金属材料で構成した場合には、補強部2の基板1への取付け方法としては、溶接する方法や、上述しためっきによる方法等がある。補強部2をめっきにより形成すれば、補強部2の基板1への取付精度を向上させることができるとともに、長期駆動した場合の信頼性を向上させることができる。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
図4は、実施例5に係るアクチュエータの駆動部10を示し、本実施例では、上記実施例2に対して、基板1及び補強部2の材質、補強部2の取付位置及び取付方法を異ならせた。
すなわち、基板1を、幅500μm、厚み50μm、長さ10mmのステンレス鋼(SUS304)の板材で構成し、補強部2を、高さ200μm、幅100μm、長さ10mmのステンレス鋼(SUS304)で構成した。そして、実施例1と同様に、第2の電極層6としてPt膜を成膜し、このPt膜上に、圧電体層4としてPZT薄膜を形成し、このPZT薄膜上に、第1の電極層5としてPt膜を成膜して、この第1の電極層5のPt膜をドライエッチングにより、幅220μm、長さ9.5mmの2つの個別電極5a,5bに分割した。こうして基板1の上面に圧電素子3を設けた。しかし、本実施例では、上記PZT薄膜の圧電特性が、基板1の表面状態の影響により、該PZT薄膜の厚み方向の上向きと下向きとで互いに異なって、上向きの方が、下向きに比べて30%大きくなってしまった。そこで、この圧電特性の違いを調整するために、基板1の下面における補強部2の取り付ける位置を、基板1の幅方向中央線Cに対し40μmだけX軸方向にずらした位置になるように、基板1と補強部2とをアライメントし、それらの接続部分をレーザー溶接することによって固定した。
上記基板1の長さ方向の一端部を固定部材に固定し、他端部に重量200mgの可動部材を固定して微動機構を構成した。この可動部材の重量による基板1の厚み方向の最大たわみ量は20μmであった。
そして、上記第2の電極層6を接地し、上記第1の電極層5の一方の個別電極5aに、振幅が2.5Vでかつ正方向に2.5Vオフセットした(つまり0Vから5Vまで変化する)周波数400Hzの駆動電圧を印加し、他方の個別電極5bに、上記一方の個別電極5aとは位相が180度異なるとともに振幅が2.5Vでかつ負方向に2.5Vオフセットした(0Vから−5Vまで変化する)周波数400Hzの駆動電圧を印加してアクチュエータの駆動部を駆動した。
このとき、可動部材は基板1の幅方向に2.0μm移動し、100nm以下の精度で位置決めを行うことができた。また、連続して1000時間駆動したところ、位置決め精度が200nmに低下した。さらに、アクチュエータを実施例1と同様にパッケージングした状態で、高さ1mから落下させる試験をおこなったところ、アクチュエータに破損は見られず、このことから、基板1及び補強部2の材質を金属材料に変更することにより、耐衝撃特性が向上することが分かった。
尚、基板1の表面状態に合わせて、圧電体層4の成膜条件を最適化することにより、上向きと下向きとで圧電特性をほぼ同じにすることは可能であり、実施例1及び実施例2と同様に基板1の下面の幅方向中央に補強部2を配置することも可能である。
図5は、実施例6に係るアクチュエータの駆動部10における補強部2の形成方法を示し、本実施例では、補強部2を電気めっきにより形成した点が、上記実施例5とは異なる。すなわち、まず、圧電素子3を設けた基板1の外周囲に、厚み5μmのポリイミド16を塗布し、基板1の下面における補強部2を取り付ける部分をパターニングして取り除く(図5(a)参照)。
上記塗布したポリイミド16を硬化させた後、補強部2を形成するための型となるドライフィルムレジスト18を貼り付け、このドライフィルムレジスト18における補強部2を形成する部分をパターニングして取り除くことにより、深さが200μm、幅50μmの空洞部を有する型を作製した(図5(b)参照)。
次に、全体を50℃のNiの電気めっき液に浸し、基板1とめっき用電極との間に30分間電圧を印加することにより、型の空洞部に高さ200μm、幅100μm、長さ10mmのNiの電気めっき材からなる補強部2を形成した(図5(c)参照)。
上記めっき終了後、ドライフィルムレジスト18を剥離液により取り除いた。このようにして、金属材料からなる基板1に直接接合されためっき材からなる補強部2を形成した(図5(d)参照)。
尚、基板1及び圧電素子3の各層の材料や、補強部2を除くアクチュエータの製造方法は、上記実施例5と同様である。
上記基板1の長さ方向の一端部を固定部材に固定し、他端部に重量200mgの可動部材を固定して微動機構を構成した。この可動部材の重量による基板1の厚み方向の最大たわみ量は20μmであった。
上記第2の電極層6を接地し、上記第1の電極層5の一方の個別電極5aに、振幅が2.5Vでかつ正方向に2.5Vオフセットした(つまり0Vから5Vまで変化する)周波数400Hzの駆動電圧を印加し、他方の個別電極5bに、上記一方の個別電極5aとは位相が180度異なるとともに振幅が2.5Vでかつ負方向に2.5Vオフセットした(つまり−5Vから0Vまで変化する)周波数400Hzの駆動電圧を印加してアクチュエータを駆動した。
このとき、可動部材は基板1の幅方向に2.0μm移動し、80nm以下の精度で位置決めを行うことができた。また、連続して1000時間駆動したところ、位置決め精度は80nmであり、位置決め特性は劣化していなかった。さらに、アクチュエータを、実施例1と同様に、パッケージングした状態で、高さ1mから落下させる試験をおこなったところ、アクチュエータに破損は見られなかった。したがって、金属材料からなる基板1に直接、めっき材からなる補強部2を形成することにより、耐衝撃特性が向上するとともに、長期間の駆動による位置決め精度の劣化がなくなり、信頼性が向上することが分かった。
また、上記塗布したポリイミド16が、アクチュエータの駆動部10の外周囲を覆うことにより駆動部10の保護層を兼ねるため、組立て等の後工程でのアクチュエータの不良が減少した。
本実施例では、アクチュエータの駆動部の基板としてシリコン基板を用い、補強部を無電界めっきにより形成した点と、アクチュエータを同時に700個作製した点とが、上記実施例2とは異なる。
すなわち、厚みが525μmの4インチシリコン基板に、第2の電極層としてIrとTiとの合金膜を成膜し、この合金膜上に、圧電体層としてPZT薄膜を成膜し、このPZT薄膜上に、第1の電極層としてPt膜を成膜した。そして、このPt膜を、幅220μm、長さ9.5mmの2つの個別電極が、700組得られるように分割する。
続いて、上記基板を、上記成膜した面とは反対側の面から、基板の厚みが50μmになるまで研磨し、その後、この研磨した面上に、補強部を無電解めっきにより形成するときにおける該めっき成長のための核形成を補助する材料が含有された核形成補助材料含有層をスパッタリングにより形成する。本実施例では、核形成を補助する材料をPdとして、厚み0.1μmのPd膜を形成した。
次いで、上記核形成補助材料含有層上にドライフィルムレジストを貼り付けてパターニングすることにより、深さが200μm、幅50μmの空洞部を有する型を作製した。
次に、全体を無電界めっき液に浸し、90℃で3時間処理することにより、型の空洞部に高さ200μm、幅100μm、長さ10mmのNiの無電界めっき材からなる補強部を形成した。そして、上記ドライフィルムレジストを剥離した後、レーザーダイシングにより、700個のアクチュエータに分離した。
このようにして作製した1つのアクチュエータを用いて、基板の長さ方向の一端部を固定部材に固定し、他端部に重量200mgの可動部材を固定することで微動機構を構成した。この可動部材の重量による基板の厚み方向の最大たわみ量は22μmであった。
そして、上記第1及び第2の電極層に、上記実施例2と同様の電圧を印加して駆動を行ったところ、可動部材は基板の幅方向に±2.2μm往復移動し、80nm以下の精度で位置決めを行うことができた。また、連続して1000時間駆動したところ、位置決め精度は80nmであり、位置決め特性は劣化していなかった。さらに、アクチュエータを、実施例1と同様に、パッケージングした状態で、高さ80cmから落下させる試験をおこなったところ、アクチュエータに破損は見られなかったが、高さ1mから落下させる試験を行うと、駆動部(基板又は補強部)の固定部材側の端部にクラックが発生した。
尚、本実施例では、核形成補助材料含有層(Pd膜)を成膜した後にドライフィルムレジストにより型を作製したが、核形成補助材料含有層は、少なくとも基板と補強部との間にあればよく、ドライフィルムレジストを形成する前に、核形成補助材料含有層の不必要な部分をエッチングにより除去しておいてもかまわない。また、基板と補強部との間の層はPd膜一層である必要はなく、基板とPd膜との間にTiやCr等からなる密着層を形成してもよい。さらに、核形成補助材料含有層はPd単体からなる必要はなく、他の金属との合金で形成してもよい。
(比較例)
ここで、比較例として、図22に示す従来のアクチュエータと同様のものを作製し、このアクチュエータによって、上記実施例1と同じ重量200mgの可動部材を動かすこととした。つまり、この比較例のものは、可動部材を圧電体層により支持するものである。この圧電体層の圧電材料としては、PZTの焼結体とし、第1及び第2の電極層としては、スパッタリングにより形成してなるPt薄膜とした。
そして、上記第1及び第2の電極層に、上記実施例1と同様の電圧を印加して駆動を行ったときに、上記実施例2のように可動部材を圧電体層(焼結体)の幅方向に±2.5μm往復移動させかつ可動部材による圧電体層の厚み方向の最大たわみ量を25μmとするためには、PZT焼結体を、幅800μm、厚み400μm、長さ25mmとする必要があり、実施例2に比べて8倍の厚み及び2.5倍の長さが必要であった。
また、PZT焼結体の幅を大きくすることで、焼結体の厚みを薄くすることは可能であるが、こうすると、焼結体の幅方向の曲げ剛性が増えるため、可動部材の移動量が減少する。これを防止するためには、駆動電圧を大きくするか、又は焼結体の長さを更に長くする必要があった。
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3に係るアクチュエータ11を示し、補強部2を基板1に一体形成したものである。このような基板1及び補強部2は、例えば、シリコン基板1に対してドライエッチング等の加工を施すことによって容易に得られる。尚、その他の部分は、上記実施形態1(図1)と同様であり、その詳細な説明は省略する。
本実施形態では、補強部2の基板1に対する位置精度が向上するとともに、補強部2が基板1から外れることがなく、このことから、本実施形態のアクチュエータ11を用いた微動機構により可動部材を駆動するときの位置決め精度及び信頼性が向上する。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
本実施例では、基板及び補強部として、厚み250μmのシリコン基板をドライエッチングすることにより、一体形成したものを作製した。この基板及び補強部の全体寸法は、上記実施例2と同じである。また、その他の材料については、上記実施例1と同様とした。
上記アクチュエータを用いて微動機構を構成したところ、可動部材の重量による基板の厚み方向の最大たわみ量は23μmであった。また、上記実施例1と同様の方法で駆動を行うと、可動部材は基板の幅方向に±2.3μm往復移動し、50nm以下の精度で位置決めを行うことができた。また、連続して1000時間駆動を行ったが、位置決め精度の劣化は見られなかった。
したがって、補強部2を基板1に一体形成することで、可動部材の位置決め精度及び信頼性が向上することが分かった。
(実施形態4)
図7は、本発明の実施形態4に係る微動機構を示し、この微動機構は、撮像素子と、該撮像素子に光を導く光学レンズとを備えたカメラモジュールの画素ずらし(撮像素子を光学レンズに対し、該光学レンズの光軸と垂直な方向に相対移動させて高解像度画像を得る技術)に適用するのに最適なものである。
すなわち、この微動機構は、2つのアクチュエータ11(図7では、一方のアクチュエータの符号を11aとし、他方のアクチュエータの符号を11bとしている)を備えていて、これら両アクチュエータ11の駆動部10により可動部材13を支持し駆動するように構成されている。各アクチュエータ11は、上記実施形態1〜3のアクチュエータ11と同様に構成されているが、後述の如く第1の電極層5が異なる。
具体的には、各アクチュエータ11における駆動部10の基板1における長さ方向の一端部が、固定部材12にそれぞれ固定されている。この固定部材12は水平状に延びる板状のものであり、その中央部には、該固定部材12の厚み方向(つまり上下方向)に貫通する四角形の貫通孔12aが形成されている。そして、この貫通孔12aの内側面における四角形の対角にある2つの頂点の近傍位置に、両アクチュエータ11がそれぞれ固定されて、両アクチュエータ11の駆動部10は、上記貫通孔12a内において、図7に示すX軸方向に所定間隔をあけて該X軸方向と垂直なY軸方向に互いに平行に延びている。
上記両アクチュエータ11間には、四角形の可動部材13が配設され、この可動部材13が、上記各アクチュエータ11の駆動部10の基板1における長さ方向の他端部(先端部)に取付固定されている。尚、可動部材13におけるアクチュエータ11への取付部13aは、該可動部材13の側面からX軸方向に突出形成されてなっている。
上記各アクチュエータ11の駆動部10の第1の電極層5は、上記実施形態1〜3とは異なり4つの個別電極(図7では、これら4つの個別電極の符号を、一方のアクチュエータ11aでは5a〜5dとし、他方のアクチュエータ11bでは5e〜5hとしている)に分割されている。これら個別電極5a〜5hの表面積は全て等しい。そして、一方のアクチュエータ11aにおいては、個別電極5a〜5dが、基板1の厚み方向から見て四角形の頂点にそれぞれ位置するように基板幅方向及び基板長さ方向に2つずつ並んでおり、アクチュエータ11aの駆動部10の駆動時には、上記四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極5a,5cに印加される電圧が等しくなるようにするとともに、残り2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極5b,5dに印加される電圧も等しくなるようにする。また、個別電極5a,5cに印加する電圧と個別電極5b,5dに印加する電圧とは、大きさは同じであるが正負を互いに逆にする。これにより、圧電体層4において、2つの個別電極5a,5cに対応する部分に加えられる電界の大きさが共に同じとなり、残り2つの個別電極5b,5dに対応する部分に加えられる電界の大きさも共に同じとなる。また、圧電体層4において、個別電極5a,5cに対応する部分に加えられる電界と、個別電極5b,5dに対応する部分に加えられる電界とでは、同じ大きさで向きが互いに逆になる。第2の電極層6は接地する。
尚、上記実施形態1で説明したように、圧電体層4の厚み方向に電界を加えた場合の圧電特性が該電界の向きにより著しく異なる場合には、個別電極5a,5cに印加する電圧の大きさと個別電極5b,5dに印加する電圧の大きさとを互いに異ならせるようにしてもよい。つまり、圧電体層4の圧電特性に合わせて、圧電体層4において、個別電極5a,5cに対応する部分に加えられる電界の大きさと、個別電極5b,5dに対応する部分に加えられる電界の大きさとを互いに異ならせる。
上記他方のアクチュエータ11bにおいても、アクチュエータ11aと同様に、個別電極5e〜5hが、基板1の厚み方向から見て四角形の頂点にそれぞれ位置するように基板幅方向及び基板長さ方向に2つずつ並んでおり、アクチュエータ11bの駆動部10の駆動時には、上記四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極5f,5hに印加される電圧が等しくなるようにするとともに、残り2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極5e,5gに印加される電圧も等しくなるようにする。また、個別電極5f,5hと個別電極5e,5gとの電圧の正負は互いに逆で大きさは同じになるようにする。
上記のように構成する理由は、以下の通りである。
すなわち、図8(a)に示すように、上記実施形態1〜3の如く第1の電極層5を2つの個別電極5a,5bに分割した構成では、基板1の長さ方向一端側が他端側に対して基板1の幅方向(図8(a)に示すX軸方向)に円弧状の軌跡を描いて変位する。このため、基板1の他端部(駆動部10の先端部)に取り付けた可動部材13も円弧状の軌跡を描いて移動する(上下方向に延びる軸周りに回動する)こととなり、基板1の幅方向の移動に加えて長さ方向(Y軸方向)にも移動することになる。この移動量は微小であるため、通常は、問題になることはない。しかし、本実施形態のように、複数のアクチュエータ11で可動部材13を支持する場合には、各アクチュエータ11による、上下方向に延びる軸周りの回転が互いに干渉し合い、可動部材13の移動量が低下するという問題がある。この問題を解決するためには、可動部材13の移動軌跡を円弧ではなく直線にする必要がある。
そこで、本実施形態では、上記のようにアクチュエータ11aでは、第1の電極層5を4つの個別電極5a〜5dに分割しておき、第2の電極層6を接地し、個別電極5a,5cと個別電極5b,5dとに互いに正負逆の電圧を印加する。例えば、個別電極5a,5cに負の電圧を印加する一方、個別電極5b,5dに正の電圧を印加すると、図8(b)に示すように、アクチュエータ11aは、基板1の厚み方向から見て、基板1が、その長さ方向中間部の2箇所に変曲点が生じるように幅方向に屈曲して、アクチュエータ11aの駆動部10の先端部は基板1の幅方向に直線に沿って移動することとなる。また、アクチュエータ11bの駆動部10も、アクチュエータ11aの駆動部10と同様に駆動させるが、アクチュエータ11aの駆動部10と協調動作させる(可動部材13を同じ向きに移動させる)ために、アクチュエータ11aの個別電極5a,5cに負の電圧を印加しかつ個別電極5b,5dに正の電圧を印加しているときには、アクチュエータ11bの個別電極5e,5gに正の電圧を印加しかつ個別電極5f,5hに負の電圧を印加し、逆に、個別電極5a,5cに正の電圧を印加しかつ個別電極5b,5dに負の電圧を印加しているときには、個別電極5e,5gに負の電圧を印加しかつ個別電極5f,5hに正の電圧を印加するようにする。これにより、可動部材13が、スムーズに移動するとともに、移動量の低下を抑制することができる。
尚、第1の電極層5の分割数は、4つに限らず、それよりも多くても(偶数が好ましい)、アクチュエータ11の駆動部10の先端部を基板1の幅方向に直線に沿って移動させるようにすることができる。
上記微動機構の可動部材13に撮像素子を設け、この撮像素子を、固定部材12(つまり光学レンズ)に対して光学レンズの光軸と垂直な方向(図7のX軸方向)に移動させて高解像度画像が得ることができる。図9(a)は、その撮像素子の拡大図である。この撮像素子15においては、多数の受光部15aが複数列に並んで配設されている。これら受光部15aの周辺には、電気回路(図示せず)等が配設されており、このため、撮像素子15全域に受光部15aが配置されているわけでない。そこで、受光部15aが配置されていない部分に該受光部15aが移動するように微動機構により撮像素子15を移動させるようにすれば、高解像度の画像を得ることができる。この手法は画素ずらしと呼ばれ、高解像度の撮像素子で画像を取得した場合と同様の画像を得ることができ、擬似的に高解像度の撮像素子があるものと考えることができる。
上記微動機構を用いることにより、アクチュエータ11を薄型及び小型にすることができるので、画素ずらし機能付きのカメラモジュールの薄型化及び小型化を図ることができるようになる。
図9(b)は、可動部材13(撮像素子15)を1軸方向に移動(微動)させる上記微動機構を用いて、2倍の画素数を持つ高解像度画像を得る場合の受光部15aの位置の変化を模式的に示すものである。先ず、最初に同図中の「1」で示される位置に受光部15aがあり、該「1」の位置にある受光部15aで画像を取り込む。その後に、受光部15aが同図中の「2」の位置になるように、同図中の矢印A方向に撮像素子15を微動させて、該「2」の位置にある受光部15aで画像を取り込む。そして、これら2つの画像を合成することにより、2倍の画素数の高解像度画像を得ることができる。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
本実施例では、上記実施例8のアクチュエータの駆動部の電極構成を上記実施形態4で示した4つに分割したものに変更し、このアクチュエータを2つ用いて、図7で示す微動機構を構成した。すなわち、各アクチュエータにおいて、補強部は、シリコン基板をエッチングすることで該シリコン基板に一体形成したものである。また、固定部材及び可動部材も、補強部と共に基板に一体形成した。これら基板、補強部、固定部材及び可動部材は、シリコン基板に対してフッ素系のガスを主体としたドライエッチングを施すことにより一体形成した。各アクチュエータの駆動部の基板は、幅700μm、厚み50μm、長さ12mmの大きさとし、補強部は、高さ250μm、幅70μm、長さ12mmの大きさとした。また、圧電素子の第1及び第2の電極層並びに圧電体層は、上記実施例1と同様にスパッタリングによりそれぞれ形成し、圧電体層は、厚み3μmのPZT薄膜(Zr/Ti=53/47)とした。第1の電極層は、上記実施形態4のアクチュエータと同様に4つの個別電極に分割し、この各分割電極は、幅320μm、長さ5.5mmの大きさとした。
上記2つのアクチュエータの駆動部に取り付ける可動部材の重量が200mgとなるようにして微動機構を構成した。このとき、可動部材の重量による基板の厚み方向の最大たわみ量は15μmであった。そして、各アクチュエータにおいて、四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極に5Vの電圧を印加する一方、残り2つの個別電極に−5Vの電圧を印加すると、可動部材は基板幅方向に直線に沿って1.4μm移動した。このように2つのアクチュエータにより可動部材を支持することにより、基板の厚み方向(上下方向)のたわみをより一層効果的に抑制することができた。
図10は、実施例10に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示し、上記実施例9の微動機構の可動部材13に撮像素子15を設け、この撮像素子15を固定部材12(光学レンズ)に対して光学レンズの光軸と垂直な1軸方向(図10のX軸方向)に移動させることによって、2倍の画素数の高解像度画像を得るように構成したものである。
上記撮像素子15は、図9(a)に示したものと同様であり、画素ピッチ(相隣接する受光部15aの間隔)を2μmとしたものである。この撮像素子15を、画素の対角方向(図9(b)のA方向)が微動機構の動く方向(図10のX軸方向)に一致するように、可動部材13に取り付けた。また、上記撮像素子15に光を導く光学レンズを、撮像素子15の図10の紙面手前側に配置して固定部材12に対し間接的に固定した。この光学レンズは、その光軸が図10の紙面に垂直な方向に延びるように配置した。
1枚の画像を撮影中に微動機構が作動すると、画像にブレが生じて画質が劣化するので、個別電極に印加する電圧は、図11に示すような台形波を用いて行った。同図において横軸は時間であり、縦軸は電圧である。撮像素子は画素の対角方向に1.4μm移動すればよいので、個別電極5a,5c(5f,5h)に波形19の−2.5Vから2.5Vの間で変化する電圧を加え、個別電極5b,5d(5e,5g)に波形19と位相が180度ことなる波形20を加えた。これにより、撮像素子全域に亘って均一に画素をずらすことが可能となり、高品質で高解像度の画像を得ることができた。
尚、撮影中にアクチュエータが移動すると画質が悪化するために、1枚目の画像は、図11中の撮影期間T1(電圧が一定であり、可動部材が静止した状態にある期間)で撮影し、2枚目の画像は撮影期間T2(撮影期間T1と同様に、電圧が一定であり、可動部材が静止した状態にある期間)で撮影した。画像を撮影できる間隔は、微動機構の動作速度に依存し、本実施例では、2.5ms(400Hz)が限界であった。
(実施形態5)
本実施形態は、複数の駆動部10を設けて、より高機能なアクチュエータ11としたものである。具体的には、例えば図12(a)に示すように、基板1における補強部2が設けられた面が同じ方向を向きかつ基板幅方向に互いに平行に並ぶ複数(図12(a)では2つ)の駆動部10を設けて、これら駆動部10同士を、該駆動部10(基板1又は補強部2)の基板長さ方向の両端部にて連結部材23a,23bを介して互いに並列に連結する。或いは、例えば図12(b)に示すように、基板1における補強部2が設けられた面が同じ方向を向く複数(図12(b)では2つ)の駆動部10を設けて、これら駆動部10同士を、該駆動部10(基板1又は補強部2)の基板長さ方向の端部にて連結部材23cを介して互いに直列に連結する。尚、3つ以上の駆動部10を設けて、これら駆動部10同士を並列又は直列に連結するようにしてもよい。また、連結部材23a,23b,23cは必ずしも必要なく、複数の駆動部10の基板1同士又は補強部2同士を直接連結するようにしてもよい。
本発明のアクチュエータ11では、基板1の幅を小さくするほど、基板1の幅方向の曲げ剛性が小さくなり、変位量が多くなる。しかし、基板1の幅を小さくしすぎると基板1の幅方向の曲げ剛性が小さくなりすぎて、基板1の幅方向の共振特性が低下し、これにより、第1及び第2電極層5,6に印加する電圧を高速で変化させて駆動部を高速で駆動しようとしても、その電圧の変化に基板の変形が即座に追従しなくなって、高速で駆動することはできなくなる。アクチュエータ11を適用するデバイスによって、駆動速度の要求される程度が異なるが、変位量が大きくかつ高速駆動できるほうが好ましいのはいうまでもない。そこで、上記のように複数の駆動部10同士を並列に連結することにより、変位量は基板1の幅を小さくした場合と同等の特性を維持しつつ、基板1の幅方向の曲げ剛性を増やすことができるようになり、この結果、高速移動が可能となる。
また、上述のように第1の電極層5を2つの個別電極5a,5bに分割した場合においては、アクチュエータ11の駆動部10の先端部は円弧状の軌跡を描いて動き、微動機構の構成によっては、動作に不具合が生じる。しかし、本実施形態のように、複数の駆動部10同士を並列に連結するとともに、これら駆動部10の変形特性を同じにすることで、駆動部10は長さ方向に変形し難くなり、変形方向を基板幅方向のみに限定することができる。
尚、複数の駆動部10を直列に連結した場合については、後の実施形態6において詳しく説明する。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
図13(a)は実施例11に係るアクチュエータ11を示す。このアクチュエータ11は、基板1における補強部2が設けられた面が同じ方向を向きかつ基板幅方向に互いに平行に200μmの間隔を空けて並ぶ2つの駆動部10を備えており、この各駆動部10の形状は,上記実施例9のアクチュエータの駆動部と同様である。そして、これら2つの駆動部10を、該駆動部10の基板長さ方向の両端部にて連結部材23a,23bを介して互いに並列に連結した。連結部材23aは、2つの駆動部10の基板1に一体形成したものであり、連結部材23bは、2つの駆動部10の補強部2を連結部材23b側へ延長した部分に固定したものである。
そして、連結部材23aは固定部材を兼ねることができ、連結部材23bは可動部材を兼ねることができるので、このまま微動機構としてアクチュエータ11の駆動部10を駆動した。すなわち、2つの駆動部10の個別電極5aに同じ大きさの電圧を印加し、2つの駆動部10の個別電極5bにも同じ大きさの電圧(個別電極5aとは大きさが同じで正負が逆の電圧)を印加すると、図13(b)に示すように、基板1の連結部材23b側の端部は円弧状の軌跡を描くが、上記補強部2の延長部分の変形により、連結部材23bは基板幅方向に直線に沿って移動した。
上記連結部材23bの重量は200mgであり、各駆動部10の基板厚み方向のたわみ量は13μmであった。そして、上記実施例1と同様の駆動電圧で、駆動周波数を変えながら駆動試験を行ったところ、連結部材23bの移動量は±2.0μmであり,駆動周波数700Hzまで安定して動作を行うことができた。また、位置決め精度、長期駆動特性及び耐衝撃特性は、上記実施例2のものと変わらなかった。
したがって、複数の駆動部10を並列に連結したアクチュエータ11では、駆動周波数を高くできることが分かった。また、このアクチュエータ11を微動機構に用いた場合、可動部材を直線に沿って移動させ得ることが分かった。
図14は実施例12に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示し、本実施例では、上記実施例10(図10参照)の2つのアクチュエータ11(11a,11b)を、各々、図12(a)のように互いに並列に連結された2つの駆動部10を有するものに変更したものである。各アクチュエータ11の2つの駆動部10の間隔は300μmとし、その他の各アクチュエータ11の駆動部10のサイズや電極構成、駆動電圧等は、実施例10と同様にした。
本実施例では、固定部材12が、固定部材側の連結部材を兼ねている。また、可動部材側の連結部材23aは、2つの駆動部10の基板1における長さ方向の端部において相対向する側面同士を連結している。これにより、可動部材13は、該可動部材13に対し近い側に位置する駆動部10の基板1に直接固定されているとともに、可動部材13に対し遠い側に位置する駆動部10の基板1には、間接的に固定されていることになる。尚、可動部材13は、連結部材23aに固定するようにしてもよく、要するに、2つの駆動部10に直接又は間接的に固定すればよい。
上記の構成にすることにより、撮影時間間隔が1ms(1000Hz)に短縮し、より短い時間間隔で撮影が行えるようになり、さらに高画質の高解像度画像を得ることができるようになった。
(実施形態6)
図15は、本発明の実施形態6に係る微動機構を示し、図12(b)のように、基板長さ方向の端部にて互いに直列に連結した2つの駆動部10(図15では、一方の駆動部の符号10aとし、他方の駆動部の符号を10bとしている)を有するアクチュエータ11により構成したものである。
本実施形態では、2つの駆動部10同士は、基板厚み方向から見て互いに直交する方向に延びており、一方の駆動部10aにおける連結部材23cと反対側の端部が固定部材12に固定され、他方の駆動部10bにおける連結部材23cと反対側の端部に可動部材13が固定されている。
基板長さ方向の端部にて互いに直列に連結した2つの駆動部10同士が互いに平行に並んでいなければ、各駆動部10で発生する変位を組み合わせて、可動部材13を所定の平面内で2次元的に動かすことができるようになる。そして、本実施形態のように2つの駆動部10同士を互いに直交するように連結すると、可動部材13を互いに直交する2軸方向に容易に駆動制御できるようになる。すなわち、可動部材13のX軸方向の移動は、Y軸方向に延びる駆動部10(固定部材側の駆動部10a)のみの制御で行い、Y軸方向の移動は、X軸方向に延びる駆動部10(可動部材側の駆動部10b)のみの制御で行うことができる。
このように2つの駆動部10を直列に連結した場合、固定部材12から可動部材13までの駆動部10に沿った長さがかなり長くなり、このため、各駆動部10に補強部2が設けられていないと、可動部材13の基板厚み方向のたわみ量が非常に大きくなるが、本実施形態では、補強部2により基板1の厚み方向の曲げ剛性が高くなっているので、可動部材13が本来の平面内からずれるのを有効に抑制することができる。
尚、3つ以上の駆動部10を直列に連結した場合には、相隣接する2つの駆動部10同士を、基板厚み方向から見て互いに直交する方向に延びるようにすればよい。
上記のように可動部材13を互いに直交する2軸方向に移動させる微動機構をカメラモジュールに用いて、撮像素子13を移動させるようにすれば、より一層高解像度の画像が得られるようになる。
図16は、可動部材13(撮像素子)を互いに直交する2軸方向に移動させる微動機構を用いて、4倍の画素数の高解像度画像を得る場合の受光部15aの位置の変化を模式的に示すものである。先ず、最初に同図中の「1」で示される位置に受光部15aがあるときに画像の取り込みを行い、続いて、微動機構により、受光部15aを、X軸方向に動かして同図中の「2」の位置に移動させ、該「2」の位置にある受光部15aで第2の画像を取り込む。次いで、微動機構により、受光部15aを上記X軸方向と垂直なY軸方向に動かして図中の「3」の位置に移動させ、該「3」の位置にある受光部15aで第3の画像を取り込み、その後、微動機構により、受光部15aをX軸方向(「1」から「2」への移動とは反対側)に動かして図中の「4」の位置に移動させ、該「4」の位置にある受光部15aで第4の画像を取り込む。そして、これら4つの画像を合成することにより、4倍の画素数の高解像度画像を得ることができる。尚、より細かく撮像素子の位置制御を行うことで、更に高解像度の画像を得ることができるようになる。
図17は、可動部材13の上面に設けた撮像素子15を固定部材12(つまり光学レンズ)に対して光学レンズの光軸と垂直な2軸方向に移動させることが可能なカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す。この微動機構は、上記実施例10と同様に、可動部材13を2つのアクチュエータ11により支持しかつ駆動するようにしたものである。この各アクチュエータ11は、図15のアクチュエータ11と同様に、互いに直交する方向に延びるように直列に連結された(本実施形態では、基板1同士が連結部材を介さずに直接連結されている)2つの駆動部10(10a,10b)を有している。また、各駆動部10の第1の電極層5は、上記実施例10と同様に4つの個別電極5a〜5dに分割されている。
上記各アクチュエータ11において、一方の駆動部10aの基板1における長さ方向の一端部が、上記実施例10と同様の固定部材12に固定され、他端部に、他方の駆動部10bの基板1における長さ方向の一端部が固定されており、この他方の駆動部10bの基板1における長さ方向の他端部に、可動部材13の取付部13aが取付固定されている。また、各アクチュエータ11において、上記一方の駆動部10aは、図17に示すX軸方向に延びている一方、上記他方の駆動部10bは、一方の駆動部10aとは垂直なY軸方向に延びている。そして、上記一方の駆動部10aを駆動することで、可動部材13(撮像素子15)をY軸方向に移動させ、上記他方の駆動部10bを駆動することで、可動部材13をX軸方向に移動させるようになっている。このことで、可動部材13を、X軸方向及びY軸方向の2軸方向に移動させることが可能になる。
尚、上記各アクチュエータ11において2つの駆動部10a,10b同士を互いに垂直な方向に延びるようにする必要は必ずしもない。2つの駆動部10a,10b間のなす角度が直角でない場合であっても、2つの駆動部10a,10bを協調して駆動することにより、可動部材13を所定の平面内で任意の方向に動かすことができる。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
本実施例では、図17と同様のカメラモジュールの撮像素子微動機構を作製した。基板、補強部、固定部材及び可動部材は、上記実施例10と同様に、シリコン基板に対しドライエッチングを施すことにより一体形成した。また、各アクチュエータの駆動部は、上記実施例10と同様のものとした。この微動機構の可動部材(撮像素子)を、図16で説明したように移動させることで4つの画像を取り込み、これらを合成することにより、4倍の画素数の高解像度画像を得ることができた。
図18は、実施例14に係るカメラモジュールの光学レンズ微動機構を示す。本実施例では、撮像素子を移動させるのではなくて、光学レンズを移動させるようにしたものである。
すなわち、可動部材13は光を透過する材質からなり、この可動部材13上に光学レンズ7を固定した。この光学レンズ7の光軸は、図18の紙面に垂直な方向に延びている。そして、この光学レンズ7を通った光を受ける受光部を有する撮像素子を、光学レンズ7の図18の紙面裏側に配置して固定部材12に対し間接的に固定した。その他の構成は上記実施例12と同様であり、光学レンズ7を、固定部材12(つまり撮像素子)に対して光学レンズ7の光軸と垂直な2軸方向(図18のX軸方向及びY軸方向)に移動させることで、4倍の画素数の高解像度画像を得るように構成した。光学レンズ7の重量は撮像素子の約1/10であるため、撮像素子を移動させる場合に比べて、アクチュエータの駆動電力が少なくて済み、光学レンズ7をより高速で動作させることができ、画質をさらに高めることができた。
図19は、実施例15に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す。本実施例では、上記実施形態6のアクチュエータ11と同様のアクチュエータ11を4つ用いて微動機構を構成している。すなわち、この微動機構は、X軸方向に延びる固定部材側の駆動部10aとY軸方向に延びる可動部材側の駆動部10bとを有する2つのアクチュエータ11aと、Y軸方向に延びる固定部材側の駆動部10cとX軸方向に延びる可動部材側の駆動部10dとを有する2つのアクチュエータ11bとを備えている。そして、可動部材13(撮像素子)をX軸方向に移動させる場合には、2つのアクチュエータ11aの駆動部10b及び2つのアクチュエータ11bの駆動部10cを協調して動かし、Y軸方向に移動させる場合には、2つのアクチュエータ11aの駆動部10a及び2つのアクチュエータ11bの駆動部10dを協調して動かすようにする。
本実施例では、固定部材12の貫通孔12aの面積を出来る限り小さくして、微動機構全体を小さくするために、固定部材側の駆動部10a,10cと、可動部材側の駆動部10b,10dとで、基板1の長さ及び幅を異ならせている。具体的には、駆動部11a,11cでは、基板1の長さは10mm、幅は800μmであり、駆動部11b,11dでは、基板1の長さは9mm、幅は400μmである。
上記の構成により、可動部材13をX軸方向及びY軸方向にそれぞれ±1.0μmづつ移動させることができた。また、撮像素子の画素ピッチを4μmとして、微動機構を動かしながら、4枚の画像を撮影することにより、4倍の画素数の高解像度化像を得ることができた。
(実施形態7)
図20は、本発明の実施形態7に係る微動機構の構成を示す。この微動機構のアクチュエータ11は、角速度センサにより検出された手ブレを打ち消すように撮像素子や光学レンズ等を移動させる手ブレ補正機構に特に好適に用いることができる。
すなわち、上記のような画素ずらしを行う場合には、可動部材13の移動量としては±2.5μmあれば十分であったが、手ブレ補正機構では、撮像素子の10画素に相当する移動量(画素ピッチ2μmの撮像素子を用いる場合は、20μm)が必要となる。そこで、本実施形態では、可動部材13の移動量を増大させるべく、アクチュエータ11が複数(図20では4つ)の駆動部10を備えるようにするとともに、これら複数の駆動部10同士を、基板1における補強部2が設けられた面が同じ方向を向きかつ基板幅方向に互いに平行に並んだ状態で、上記実施形態5で説明した如く、該駆動部10の基板長さ方向の端部にて連結部材23cを介して互いに直列に連結するようにする。そして、一方の端に位置する駆動部10における隣接の駆動部10と連結されていない端部が固定部材12に固定され、他方の端に位置する駆動部10における隣接の駆動部10と連結されていない端部に可動部材13が固定されている。尚、本実施形態では、上記一方の端に位置する駆動部10及び固定部材12は、2つの相隣接する駆動部10同士を連結する連結部材23cと同様の連結部材23dを介して互いに連結固定され、上記他方の端に位置する駆動部10及び可動部材13も、連結部材23eを介して互いに連結固定されている。
上記の構成により、各駆動部10を蛇腹の如く伸縮するようにそれぞれ協調駆動することで、可動部材13のX軸方向の移動量を、全駆動部10の基板幅方向の変位量の総和と同じ量にすることができ、可動部材13の移動量をかなり増やすことが可能になる。
尚、駆動部10の幅が全駆動部10の長さの総和に比して小さくなるため、上記実施形態5で説明したように、可動部材13を高速動作させることが困難になるが、手ブレ補正では、一般的に、画素ずらしの場合にくらべて動作が遅くてもよく、100Hz程度の周波数の電圧で駆動できれば十分である。
図21は、上記図20の微動機構のアクチュエータ11を6つ用いて構成したカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す。この微動機構は、固定部材12の貫通孔12a内に配設された可動部材13及び中間部材14並びに6つの上記アクチュエータ11を備えている。上記可動部材13は、図17の微動機構と同様の撮像素子15を備えているとともに、中間部材14の中央部に設けた貫通孔14a内に配置されている。上記6つのアクチュエータ11のうち2つ(図21では、これら2つのアクチュエータの符号を11aとしている)は、可動部材13を図21のX軸方向に移動させるために用いられている。また、残り4つ(図21では、これら4つのアクチュエータの符号を11bとしている)は、可動部材13を図21のY軸方向に移動させるために用いられている。
具体的には、上記アクチュエータ11aは、上記貫通孔14a内において上記可動部材13のX軸方向両側に1つずつ配置されており、該各アクチュエータ11aにおける一方の端に位置する駆動部10が中間部材14の貫通孔14aの内周面に固定され、他方の端に位置する駆動部10に上記可動部材13が固定されている。これにより、中間部材14は、アクチュエータ11aに対しては、図20の微動機構の固定部材12に相当する。
また、上記アクチュエータ11bは、上記貫通孔12a内において上記中間部材14のY軸方向両外側に2つずつ配置されており、該各アクチュエータ11bにおける一方の端に位置する駆動部10が固定部材12の貫通孔12aの内周面に固定され、他方の端に位置する駆動部10に上記中間部材14が固定されている。これにより、中間部材14は、アクチュエータ11bに対しては、図20の微動機構の可動部材13に相当する。
そして、2つのアクチュエータ11aの各駆動部10の駆動により、可動部材13を中間部材14に対しX軸方向に移動させ、4つのアクチュエータ11bの各駆動部10の駆動により、中間部材14を固定部材12に対しY軸方向に移動させるようにする。これにより、6つのアクチュエータ11の各駆動部10を協調駆動することによって、可動部材13(撮像素子15)を固定部材12(つまり光学レンズ)に対し、光学レンズの光軸と垂直な2軸方向(X軸方向及びY軸方向)に移動させることができるようになる。この可動部材13(撮像素子15)の移動量は、上記の如くかなり大きくなるので、角速度センサにより検出した手ブレを打ち消すように可動部材13を移動させることにより,手ブレを補正することが可能となる。
本実施例では、図20と同様の微動機構のアクチュエータを作製した。このとき、各アクチュエータにおける各駆動部の基板は、長さ10mm、幅500μm、厚み50μmの大きさとした。また、補強部は、高さ200μm、幅50μm、長さ10mmの大きさとし、第1の電極層の4つの個別電極のそれぞれを、長さ4.5mm、幅220μmの大きさとした。さらに、各駆動部のその他の部分は上記実施例2と同様にした。
そして、上記1つの駆動部において四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つ個別電極に−5Vを印加し、残る2つの個別電極に+5Vを印加すると、基板の長さ方向一端側に対して他端側が基板の幅方向に2.5μm変位した。また、印加する電圧を逆にすると、逆向きに2.5μm変位した。すなわち、1つの駆動部で可動部材を5μm移動させることが可能であり、この駆動部を図20のように4つ連結したアクチュエータを用いて微動機構を構成すれば、各駆動部の4つの個別電極に+5V又は−5Vの電圧を印加することにより、可動部材を所定の平面内で20μm四方の範囲で自由に位置決めをすることができるようになる。
さらに、上記アクチュエータを6つ用いて、図21と同様のカメラモジュールの微動機構を構成し、角速度センサにより手ブレの移動量を検出して、手ブレ補正動作を行ったところ、手ブレが良好に補正されて高品質の画像を得ることができた。
本発明のアクチュエータは、カメラモジュールにおいて画素ずらしや手ブレ補正を行うために撮像素子又は光学レンズを移動させる微動機構に有用であるとともに、ハードディスクや光ディスクの読み取りヘッドの微小な位置決め機構、或いはマイクロミラーやマイクロシャッターの駆動機構等にも有用である。
本発明は、基板の長さ方向一端側に対して他端側を該基板の幅方向に変位させる駆動部を有するアクチュエータ及び該アクチュエータを備え物体を微小量だけ移動させるようにした微動機構並びに該微動機構を備えたカメラモジュ−ルに関する技術分野に属する。
一般に、圧電材料で構成された圧電アクチュエータは、応答速度が速く、高精度な制御が可能である。この圧電アクチュエータの応用の一つに、或る平面内で物体を高速に微動させるようにした微動機構がある(例えば特許文献1参照)。このような微動機構を構成するためには、例えば図22に示すような圧電アクチュエータ600を用いる。この圧電アクチュエータ600は、厚み方向(図22に示すZ軸方向)に分極処理された板状圧電材料からなる圧電体層400と、この圧電体層400の厚み方向一方の面に設けられた第1の電極層401と、圧電体層400の厚み方向他方の面に設けられた第2の電極層402とを備えている。上記第1の電極層401は、圧電体層400の幅方向(X軸方向)に並んで圧電体層400の長さ方向(Y軸方向)に延びる2つの個別電極401a,401bに分割されている。そして、第1及び第2の電極層401,402を介して圧電体層400に電圧を印加すると、圧電体層400に電界が加えられる。このとき、第1の電極層の一方の個別電極401aと第2の電極層402との間の電界403a(図22では、下向き)と、第1の電極層の他方の個別電極401bと第2の電極層402との間の電界403b(図22では、上向き)とでは、大きさは同じであるが、向きが互いに逆になるようになされており、この結果、圧電体層400の幅方向一方側が長さ方向に伸長するときには、他方側が長さ方向に収縮し、これにより、圧電体層400の長さ方向一端側に対して他端側が圧電体層400の幅方向(収縮している側)に変位することになる。
図23は、上記圧電アクチュエータ600を用いて構成した微動機構を示す。つまり、圧電アクチュエータ600の圧電体層400における長さ方向の一端部を固定部材601に固定する一方、他端部に可動部材602を固定することで微動機構を構成する。この微動機構では、上記2つの個別電極401a,401bに対し上記のような電圧を印加して圧電アクチュエータ600を駆動することにより、可動部材602を所定の平面内で固定部材601に対して圧電体層400の幅方向に微小量だけ移動させることが可能になる。
そして、上記のような微動機構は、例えば図24に示すような、撮像素子500と光学レンズ501とを備えたカメラモジュールにおいて、撮像素子500を光学レンズ501に対して、光学レンズ501の光軸Oと垂直な面内で相対移動させることで撮像素子の解像度よりも高い解像度の画像を得るようにする技術(いわゆる画素ずらし)に用いられる(例えば特許文献2参照)。ここで、図24において、502は、撮像素子を保持する可動部材としてのホルダ−502であり、503は、このホルダ−502(撮像素子)を図中のY軸方向に移動させる圧電アクチュエータであり、504は、ホルダ−502(撮像素子)を図24の紙面と垂直な方向に移動させる圧電アクチュエータである。
また、上記のような微動機構は、特許文献3に示されているようなカメラの手ブレ補正機構に用いることもでき、この手ブレ補正機構では、微動機構によって、角速度センサにより検出された手ブレを打ち消すように、撮像素子や光学レンズ等を移動させるようにする。
特開2001−339967号公報
特開2004−96673号公報
特開2004−348147号公報
しかしながら、上記従来の微動機構では、圧電体層の剛性により、撮像素子や光学レンズ等を含む可動部材を支持することになるので、圧電体層の厚みが小さいと、可動部材の支持剛性が不足して、可動部材の重量により圧電アクチュエータ(圧電体層)が圧電体層の厚み方向にたわんでしまい、この結果、可動部材を、本来移動させるべき平面内で移動させることができなくなってしまうという問題がある。そこで、可動部材の支持剛性を高めるために圧電体層の厚みを大きくすることが考えられるが、圧電体層の厚みを大きくすると、可動部材の移動量を或る程度確保するためには圧電体層の駆動電圧を大きくするか、又は圧電体層の長さを長くする必要がある。また、圧電体層の厚みを大きくすることには限界があり、このため、重量がかなり大きい可動部材の場合には、可動部材を確実に支持することは困難となる。
特に、上記のような微動機構を上記カメラモジュールにおける画素ずらしや手ブレ補正に適用した場合においては、圧電アクチュエータが圧電体層の厚み方向にたわむと、撮像素子と光学レンズとの間の距離が変化するため、像がぼやけて鮮明な画像が得られなくなるという問題がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記撮像素子や光学レンズ等を含む可動部材を所定の平面内で微動させるようにするためのアクチュエータに対して、その構成を改良することによって、可動部材を確実に支持して、可動部材が本来の移動平面内からずれるのを抑制しようとすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、可動部材を移動させる機能と、可動部材を支持する機能とを分離する、すなわち、可動部材を支持する機能を、基板及び補強部に持たせ、可動部材を移動させる機能を、圧電素子等のような、基板の長さ方向一端側に対して他端側を基板の幅方向に変位させる変位手段に持たせるとともに、上記補強部を、該補強部の基板幅方向の曲げ剛性が基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状に形成して、補強部を基板厚み方向よりも基板幅方向に曲がり易くした。
具体的には、第1の発明では、厚み方向から見て所定の幅及び長さを有する基板と、該基板の厚み方向一方の面に設けられた補強部と、上記基板の厚み方向他方の面に設けられ、該基板の長さ方向一端側に対して他端側を基板の幅方向に変位させる変位手段とを有する駆動部を備えたアクチュエータを対象とする。
そして、上記補強部は、該補強部の上記基板幅方向の曲げ剛性が上記基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状に形成されているものとする。
上記の構成により、補強部の形状を変えることにより、補強部を含む基板の厚み方向の曲げ剛性と幅方向の曲げ剛性とを自在に変えることができる。そして、補強部を、該補強部の基板幅方向の曲げ剛性が基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状に形成することにより、補強部を含む基板の幅方向の曲げ剛性を補強部がないときと殆ど変わらないようにして、変位手段による基板の幅方向の変位を妨げないようにすることができる。一方、補強部を含む基板の厚み方向の曲げ剛性を補強部がないときよりも高くして、基板が厚み方向にたわむのを抑制することができる。この結果、基板は、その幅方向には変位手段によりスムーズに変位することができるとともに、可動部材を支持しても、基板の厚み方向には変形しにくく(曲がりにくく)することができる。したがって、駆動部の基板長さ方向の一端部を固定部材に固定しかつ他端部に可動部材を固定することで、該可動部材を移動(微動)させる微動機構を構成した場合に、その可動部材が本来の平面内からずれるのを抑制することができ、可動部材を所定の平面内で確実に移動(微動)させるようにすることができる。
第2の発明では、第1の発明において、補強部は,基板の厚み方向一方の面において該基板の長さ方向に連続して設けられているものとする。
このことにより、基板の厚み方向の変形を抑制する効果がより大きくなる。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、より重量のある可動部材を移動させるようにすることが可能となる。
第3の発明では、第1の発明において、補強部は、基板の厚み方向一方の面における幅方向略中央に設けられているものとする。
このことで,補強部を含む基板の幅方向一方側への曲げ剛性と他方側への曲げ剛性とを略同じにすることができ、これにより、基板を幅方向に変形させる手段の配置が容易になり、アクチュエータの制御を高精度に行えるようになる。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材のより精密な移動制御が可能となる。
第4の発明では、第1の発明において、補強部は、金属材料で構成されているものとする。
こうすることで、延性に富む金属材料を用いて補強部を構成することにより、アクチュエータの耐衝撃特性が向上する。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材の支持剛性の向上に加えて、アクチュエータの耐衝撃特性が向上する。
第5の発明では、第4の発明において、補強部は、めっき材からなるものとする。
このことにより、基板上に、非金属材料からなる型を形成し、この型を用いて補強部をめっきにより形成することで、微細構造を有する補強部を容易に形成することができる。また、この形成方法により、補強部の形状精度や取付精度を高めることができるとともに、基板との密着力も向上する。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材のより精密な移動制御が可能になるとともに、長期間駆動したときの信頼性を向上させることができる。
第6の発明では、第5の発明において、補強部と基板との間に、該基板上に該補強部をめっきにより形成するときにおける該めっき成長のための核形成を補助する材料が含有された核形成補助材料含有層が形成されているものとする。
このことで、基板が非金属材料からなっていても、基板上にめっき材からなる補強部を容易に形成することができ、これにより、基板と補強部とを強固に接続することが可能となり、アクチュエータの長期駆動特性や耐衝撃特性等が向上する。特に、核形成を補助する材料として、無電界めっき液に対して触媒作用を持つFe、Ni、Pd等を用いることで、非金属基板上に無電界めっき材からなる補強部を容易に形成することができる。
第7の発明では、第4の発明において、補強部を除く駆動部の周囲が非金属材料によって覆われているものとする。
こうすることで、補強部をめっきにより形成する際に、不要な部分にめっきが形成されるのを防止することができ、補強部をめっきにより効率良く作製することができる。また、アクチュエータの駆動部を非金属材料によって保護することが可能になる。
第8の発明では、第1の発明において、基板は、金属材料で構成されているものとする。
このことにより、延性に富む金属材料を用いて基板を構成することにより、アクチュエータの耐衝撃特性が向上する。また、金属材料は導電性を持つことから、補強部を基板に直接電気めっきにより形成することができる。さらに、基板及び補強部の両方を金属材料で構成すれば、金属同士の密着性は優れているので、アクチュエータの信頼性をも向上させることができる。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材の移動精度が向上するととともに、アクチュエータの耐衝撃特性を向上させることができる。
第9の発明では、第1の発明において、補強部は,基板に一体形成されたものであるとする。
こうすることで、補強部の基板に対する位置精度が向上するとともに、補強部が基板から外れることがない。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材の位置決め精度及び長期間駆動したときの信頼性が向上する。
第10の発明では、第1の発明において、補強部の基板幅方向の長さの平均値を基板の幅の平均値のα倍とし、該補強部の基板厚み方向の長さの平均値を基板の厚みの平均値のβ倍としたとき、上記α及びβの値は、
0.05<α<0.45、
1<β<10、及び
0.001<α3β<0.1
を全て満たすものとする。
このことで、変位手段による基板の幅方向の変位を妨げないようにしつつ、基板の厚み方向の変形を確実に抑制することが可能な最適な補強部が得られる。
第11の発明では、第1の発明において、基板の幅は、該基板の厚みに対して1倍を越え20倍以下に設定され、上記基板の長さは、該基板の幅に対して4倍以上に設定されているものとする。
このことにより、変位手段からエネルギーを最も効果的に取り出して、基板の幅方向への変位を効率良く行わせることができるとともに、その変位量を十分に確保することができる。
第12の発明では、第1の発明において、変位手段は、圧電体層と、該圧電体層の厚み方向一方の面に設けられた第1の電極層と、圧電体層の厚み方向他方の面に設けられた第2の電極層とで構成されており、上記第1及び第2の電極層の少なくとも一方は、上記圧電体層に、基板の長さ方向一端側に対して他端側を該基板の幅方向に変位させるための電界を加えることが可能なように2つ以上の個別電極に分割されているものとする。
このことで、変形手段を容易に構成することができる。また、従来のアクチュエータでは、圧電体層により可動部材を支持する必要があったが、本アクチュエータでは、そうする必要はないので、圧電体層を薄くすることができ、低電圧で圧電素子を駆動することが可能となる。したがって、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、基板の厚み方向の変形を抑制し、低電圧で可動部材を基板の幅方向に移動させるようにすることができる。
第13の発明では、第12の発明において、第1及び第2の電極層の少なくとも一方は、4つ以上の個別電極に分割されているものとする。
このことにより、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、低電圧で可動部材を移動させることができることに加えて、基板を幅方向に木目細かく変形させることができるようになり、可動部材の動きの自由度を増大させることができる。
第14の発明では、第12の発明において、全ての個別電極の表面積が略同じであるとする。
このことで、各個別電極に加えた電圧が等しければ、圧電体層における各個別電極に対応する部分に加えられる電界の大きさが等しくなる。これにより、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材の移動制御が容易になるとともに、各個別電極に電圧を加える駆動回路の構成が簡素になる。
第15の発明では、第12の発明において、第1及び第2の電極層の少なくとも一方は、基板幅方向に並ぶ2つの個別電極に分割されており、圧電体層において上記2つの個別電極のうち一方に対応する部分に加えられる電界の大きさと、他方に対応する部分に加えられる電界の大きさとが互いに異なるものとする。
こうすることで、基板を幅方向だけでなく、厚み方向にも変形させるようにすることができる。これにより、本アクチュエータにより微動機構を構成した場合に、可動部材の重量により基板が厚み方向にたわんだとしても、そのたわみを打ち消すように変位手段を作動させて、可動部材が本来の平面内からずれるのを抑制することができるようになる。このように、基板の厚み方向に生じるたわみを補正できることから、より重い可動部材であっても問題はなく、また、可動部材を基板幅方向だけでなく、基板厚み方向に移動させる微動機構を構成することもできる。
第16の発明では、第12の発明において、第1及び第2の電極層の少なくとも一方は、基板の厚み方向から見て四角形の頂点にそれぞれ位置するように基板幅方向及び基板長さ方向に2つずつ並ぶ4つの個別電極に分割されており、圧電体層において、上記四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極に対応する部分に加えられる電界の大きさが共に同じであり、残り2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極に対応する部分に加えられる電界の大きさが共に同じであるものとする。
このことにより、可動部材の移動軌跡を直線にすることができ、可動部材を厳密に直線に沿って移動させる必要がある場合に有用である。
第17の発明では、第16の発明において、圧電体層において、四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極に対応する部分に加えられる電界の大きさと、残り2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極に対応する部分に加えられる電界の大きさとが互いに異なるものとする。
このことで、可動部材を直線に沿って移動させることができることに加えて、第15の発明と同様に、基板を幅方向だけでなく、厚み方向にも変形させるようにすることができる。
第18の発明では、第1の発明において、基板における補強部が設けられた面が同じ方向を向きかつ基板幅方向に互いに平行に並ぶ複数の駆動部を備え、上記複数の駆動部同士が、該駆動部の基板長さ方向の両端部にて互いに並列に連結されているものとする。
すなわち、駆動部が1つである場合には、可動部材の移動量を大きくするには、基板の幅を小さくして基板の幅方向の変位量を大きくする必要があるが、基板の幅を小さくすると、基板の幅方向の曲げ剛性が小さくなりすぎて、基板の幅方向の共振特性が低下し、これにより、印加する電圧を高速で変化させる等して駆動部を高速で駆動しようとしても、その電圧の変化等に基板の変形が即座に追従しなくなって、可動部材を高速で移動させることが困難になる。しかし、本発明の構成では、可動部材の支持特性及び基板の幅方向の共振特性を、駆動部が1つである場合と同等にしつつ、基板の幅方向の変位量を大きくすることができるようになる。この結果、少なくとも1つの駆動部の基板長さ方向の一端部を固定部材に固定し、少なくとも1つの駆動部の基板長さ方向の他端部に可動部材を固定して微動機構を構成した場合、駆動部が1つである場合に比べて、可動部材を高速で移動させるようにすることができるとともに、可動部材の移動量を増やすことができる。また、複数の駆動部の変形特性を同じにすることで、可動部材を直線に沿って移動させることができるようになる。
第19の発明では、第1の発明において、基板における補強部が設けられた面が同じ方向を向く複数の駆動部を備え、上記複数の駆動部同士が、該駆動部の基板長さ方向の端部にて互いに直列に連結されているものとする。
すなわち、互いに直列に連結された複数の駆動部のうち一方の端に位置する駆動部における他の駆動部と連結されていない端部を固定部材に固定し、他方の端に位置する駆動部における他の駆動部と連結されていない端部に可動部材を固定して微動機構を構成した場合、駆動部が1つである場合に比べて、可動部材の動きの自由度及び移動量を増すことは可能であるが、可動部材が本来の平面内からずれ易くなるという問題がある。しかし、この発明では、補強部により基板の厚み方向の曲げ剛性を大きくすることができるので、可動部材が本来の平面内からずれるのを有効に抑制することができる。よって、可動部材を所定の平面内で確実に移動させるようにしつつ、可動部材の動きの自由度及び移動量を増大することができる。
第20の発明では、第19の発明において、相隣接する2つの駆動部同士が、基板厚み方向から見て互いに直交する方向に延びているものとする。
この構成により、可動部材を、その移動させる平面内において互いに直交する2軸方向に自在に移動させるようにすることができるとともに、第1軸方向に延びる駆動部により可動部材の第2軸方向の移動を制御することができ、第2軸方向に延びる駆動部により可動部材の第1軸方向の移動を制御することができ、可動部材の位置決め制御が容易になる。
第21の発明では、第19の発明において、複数の駆動部同士が、基板幅方向に互いに平行に並んだ状態で、該駆動部の基板長さ方向の端部にて連結部材を介して互いに直列に連結されているものとする。
こうすることで、可動部材の移動量を、全駆動部の基板幅方向の変位量の総和と同じ量にすることができ、駆動部が1つである場合に比べて、格段に増大させることができる。この結果、本アクチュエータを、可動部材を大きく移動させる必要がある微動機構、例えば手ブレ補正機構に好適に用いることができるようになる。
第22の発明は、可動部材を固定部材に対して移動させる駆動部を有するアクチュエータを備えた微動機構の発明であり、この発明では、上記アクチュエータの駆動部は、厚み方向から見て所定の幅及び長さを有する基板と、該基板の厚み方向一方の面に設けられた補強部と、上記基板の厚み方向他方の面に設けられ、該基板の長さ方向一端側に対して他端側を基板の幅方向に変位させる変位手段とを有し、上記補強部は、該補強部の上記基板幅方向の曲げ剛性が上記基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状に形成され、上記駆動部の基板長さ方向の一端部が上記固定部材に固定され、他端部に上記可動部材が固定されており、更に上記駆動部は、上記変位手段の作動により上記可動部材を上記固定部材に対して上記基板幅方向に移動させるように構成されているものとする。
この発明により、可動部材の重量によって、駆動部が本来変形すべき方向(基板の幅方向)とは異なる方向(基板の厚み方向)に変形するのを抑制することができ、可動部材を所定の平面内で確実に移動させることができる。また、2つ以上の駆動部により可動部材を支持するようにすれば、基板の厚み方向の変形をさらに抑制することができる。
第23の発明は、撮像素子と、該撮像素子に光を導く光学レンズと、該撮像素子又は光学レンズを、該光学レンズの光軸と垂直な方向に移動させる駆動部を有するアクチュエータとを備えたカメラモジュールの発明である。
そして、この発明では、上記アクチュエータの駆動部は、厚み方向から見て所定の幅及び長さを有する基板と、該基板の厚み方向一方の面に設けられた補強部と、上記基板の厚み方向他方の面に設けられ、該基板の長さ方向一端側に対して他端側を基板の幅方向に変位させる変位手段とを有し、上記補強部は、該補強部の上記基板幅方向の曲げ剛性が上記基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状に形成され、上記駆動部の基板長さ方向の一端部が固定部材に固定され、他端部に上記撮像素子又は光学レンズが固定されており、更に上記駆動部は、上記変位手段の作動により上記撮像素子又は光学レンズを上記固定部材に対して該光学レンズの光軸と垂直な方向に移動させるように構成されているものとする。
この発明のカメラモジュ−ルは、第22の発明と同様の微動機構を備えていることになるので、小型・軽量で高品質・高解像度のカメラモジュ−ルを実現することができる。
本発明のアクチュエータによると、可動部材を支持する機能を、変位手段とは別の基板及び補強部に持たせるとともに、この補強部を、該補強部の基板幅方向の曲げ剛性が基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さい形状にすることにより、変位手段による基板の幅方向の変位を妨げないようにしつつ、基板(駆動部)が該基板の厚み方向に変形するのを抑制することができる。したがって、本発明のアクチュエータを用いて微動機構を構成した場合に、可動部材を所定の平面内で確実に移動させることができるようになる。また、変位手段が圧電素子等で構成されている場合には、圧電体層の厚みを薄くして圧電素子の駆動電圧を低下させることができるとともに、圧電体層の厚みを薄くしても、基板及び補強部により可動部材を確実に支持することができ、駆動電圧の低下と可動部材支持との両立を図ることができる。よって、アクチュエータ(延いては微動機構やこの微動機構を用いたカメラモジュール等)の小型化及び駆動電圧の低下を実現することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るアクチュエータ11を示し、このアクチュエータ11は、厚み方向(図1に示すZ軸方向(ここでは、上下方向))から見て所定の幅及び長さを有する矩形状の基板1を有する駆動部10を備えている。この基板1の幅(X軸方向の長さ)は、該基板1の厚みに対して1倍を越え20倍以下に設定されていることが好ましく、基板1の長さ(Y軸方向の長さ)は、上記幅に対して4倍以上に設定されていることが好ましい。この幅及び長さにより、後述の如く基板1を幅方向に変位させる際に、該基板1をねじれさせないで幅方向へ効率良く変位させることができるとともに、その変位量を十分に確保することができる。
尚、本実施形態では、基板1の幅及び厚みは、長さ方向全体に亘って一定であるが、長さ方向の位置に応じて変化させてもよく、基板1がその幅方向に湾曲したものであってもよい。また、上記基板1としては、ガラス基板、シリコン基板、金属基板、セラミックス基板等が挙げられ、その材料の特性によって、アクチュエータ11の動作特性や耐衝撃特性が変化する。特に金属基板は、アクチュエータ11の耐衝撃特性を向上させることができて好ましい。
上記駆動部10は、上記基板1の厚み方向一方の面(本実施形態では、下面)に設けられた補強部2と、基板1の厚み方向他方の面(本実施形態では、上面)に設けられ、基板1の長さ方向一端側に対して他端側を基板1の幅方向に変位させる変位手段としての圧電素子3とを更に有している。
上記圧電素子3は、上記基板1の厚み方向から見て該基板1と略同じ形状をなしかつ厚み方向に分極している圧電体層4と、この圧電体層4の厚み方向一方の面(本実施形態では、基板1と反対側の面(上面))に設けられた第1の電極層5と、圧電体層4の厚み方向他方の面(本実施形態では、基板1側の面(下面))に設けられた第2の電極層6とで構成されており、第1及び第2の電極層5,6を介して圧電体層4に電圧を印加することが可能に構成されている。上記圧電体層4は、本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(ZrとTiとの組成比Zr/Ti=53/47)からなっているが、圧電材料や組成は、これに限るものではなく、第1及び第2の電極層5,6への電圧の印加により圧電体層4に電界が加えられたときに、圧電効果により該電界の向きに対し垂直な方向(圧電体層4の長さ方向)に伸縮するものであればよい。
上記第1の電極層5は、圧電体層4の幅方向(X軸方向)に並んで圧電体層4の長さ方向(Y軸方向)に延びる2つの個別電極5a,5bに分割されている。これら2つの個別電極5a,5bは、圧電体層4の幅方向中央線に対して互いに対称な位置に配設されていて、同じ表面積を有している。一方、上記第2の電極層6は、上記基板1の厚み方向から見て該基板1及び上記圧電体層4と略同じ形状をなしていて、共通電極とされている。そして、上記圧電体層4に、上記基板1の長さ方向一端側に対して他端側を該基板1の幅方向に変位させるための電界が加わるように、第1及び第2の電極層5,6に電圧が印加されるようになっている。すなわち、圧電体層4において一方の個別電極5aに対応する部分(個別電極5aと第2の電極層6との間の部分)に加えられる電界と、他方の個別電極5bに対応する部分(個別電極5bと第2の電極層6との間の部分)に加えられる電界とでは、大きさは同じであるが、向きが互いに逆になるように、第1及び第2の電極層5,6に電圧が印加される。
上記のような電圧の印加により、圧電体層4において上記一方の個別電極5aと第2の電極層6との間の部分と、他方の個別電極5bと第2の電極層6との間の部分とでは、圧電体層4における長さ方向の伸縮が逆になる。つまり、圧電体層4の幅方向一方側が長さ方向に伸長するときには、他方側が長さ方向に収縮する。このとき、基板1は伸縮しないので、基板1を厚み方向に曲げる力が生じるが、この力は、圧電体層4が伸張する部分では下向きであり、収縮する部分では上向きであるので、駆動部10全体としてはそれらの力が上下方向において打ち消しあって、基板1は上下方向に変形しない。その結果、圧電体層4の長さ方向に伸張する力と収縮する力とにより、基板1(駆動部10全体)が基板1の幅方向に屈曲し(弾性変形し)、基板1の長さ方向一端側に対して他端側が基板1の幅方向(収縮している側)に変位する。厳密には、後の実施形態4で説明するように、基板1の長さ方向一端側に対して他端側が円弧状の軌跡を描いて変位する(上下方向に延びる軸周りに回転する)ために、基板1の幅方向の変位に加えて長さ方向の変位も生じることになるが、この長さ方向の変位量は、幅方向の変位量に比べて非常に小さく、特定の場合以外、問題とはならない。
尚、上記第2の電極層6は、圧電体層4の下面全体に設けられている必要はなく、第1の電極層5と同様に2つの個別電極に分割して、これら個別電極を圧電体層4の下面における上記第1の電極層5の2つの個別電極5a,5bにそれぞれ対応する部分に配置してもよい。この第2の電極層6が複数の個別電極に分割された場合には、それら個別電極の間の部分は、後述の製造方法では圧電体層4で満たされることになる。また、第2の電極層6のみを2つの個別電極に分割するようにしてもよい。さらに、第1及び第2の電極層5,6の少なくとも一方の分割数は、2つに限らず、それよりも多くてもよい。
上記補強部2は、該補強部2の基板幅方向(X軸方向)の曲げ剛性が基板厚み方向(Z軸方向)の曲げ剛性よりも小さくなるような形状に形成されている。つまり、補強部2は、基板1の厚み方向よりも基板1の幅方向に曲がり易くなっている。本アクチュエータ11においては、補強部2を含む基板1の幅方向の曲げ剛性が小さい方が、基板1の幅方向の変位量が大きくなるので、基板1の厚みが薄くかつ補強部2がない方が、基板1の幅方向の変位量が大きくなる。しかし、後述の如く、本アクチュエータ11を微動機構に用いる場合には、可動部材を支持する機能が求められる。このため、基板1の幅方向の曲げ剛性を出来る限り大きくしないで、基板1の厚み方向の曲げ剛性を大きくする必要がある。そのために、基板1の厚み方向一方の面(圧電素子3とは反対側の面)における幅方向略中央に補強部2を設け、この補強部2の基板幅方向の曲げ剛性を基板厚み方向の曲げ剛性よりも小さくなるようにしている。このような補強部2の一例として、図1に示すように、基板厚み方向(Z軸方向)の長さが基板幅方向(X軸方向)よりも長い形状のものが考えられる。このような補強部2を基板1に取り付けることにより、基板1の幅方向の変位量の減少を最小限にとどめる一方、可動部材を支持しても、基板1の厚み方向のたわみを効果的に抑制することができるようになる。
上記補強部2の形状としては、該補強部2の基板幅方向(X軸方向)の長さの平均値を基板1の幅の平均値のα倍とし、補強部2の基板厚み方向(Z軸方向)の長さの平均値を基板1の厚みの平均値のβ倍としたとき、これらα及びβの値は、
0.05<α<0.45、
1<β<10、及び
0.001<α3β<0.1
を全て満たすことが好ましい。こうすれば、圧電素子3による基板1の幅方向の変位を妨げないようにしつつ、基板1の厚み方向の変形を確実に抑制することが可能な最適な補強部2が得られる。
上記補強部2の材料は、上記基板1と同様の材料、つまりガラス、シリコン、金属、セラミックス等が好ましく、特に基板1と同じ材料にすれば、基板1との接合強度を向上させることができて非常に好ましく、また、基板1及び補強部2を共に金属材料で構成すれば、より一層好ましい。
尚、本実施形態では、補強部2は,基板1の下面において該基板1の長さ方向全体に亘って連続して設けられているが、基板1の長さ方向の一部に連続的に設けられていてもよく、分割状態で設けられていてもよい。
また、本実施形態では、補強部2の断面は、基板1の長さ方向全体に亘って一定であるが、基板1の長さ方向の位置に応じて変化させるようにしてもよい。例えば、後述の如く微動機構を構成したときに、補強部2の上下方向の長さを、固定部材側ほど長くし、可動部材側ほど短くするようにする。こうすれば、可動部材の重量によって生じる基板1のたわみの曲率を基板1の長さ方向全体に亘って一定にすることができる。この結果、圧電体層4のひずみ状態が一定になるように制御して、安定した駆動が行えるようになる。
さらに、本実施形態では、補強部2は、基板1の幅方向中央線に対して対称な形状をなして基板1の幅方向略中央に取り付けられているが、該中央線からずらした位置に補強部2を配置するようにしてもよい。すなわち、圧電体層4の材料組成や製造方法によっては、該圧電体層4の厚み方向に電界を加えた場合の圧電特性が該電界の向き(上向き又は下向き)により著しく異なる場合がある。つまり、圧電体層4において第1の電極層5の一方の個別電極5aと第2の電極層6との間の部分と、他方の個別電極5bと第2の電極層6との間の部分とで圧電特性が異なる場合がある。このような場合に、補強部2を、基板1の幅方向中央からずらした位置に配置して、基板1が幅方向に曲がるように調整することができる。
また、本実施形態では、第1電極層5の2つの個別電極5a,5bの表面積を等しくしたが、上述のように圧電体層4において分極方向とその反対方向とで圧電特性が著しく異なる場合には、圧電体層4の圧電特性に合わせて、2つの個別電極5a,5bの表面積比を変化させたり、個別電極5a,5b毎に印加する電圧の大きさを変えたりしても、本発明の効果に変わりはない。
次に、上記アクチュエータ11を製造する方法を図2により説明する。
先ず、図2(a)に示すように、厚み方向から見て所定の幅及び長さを有する基板1を用意し、図2(b)に示すように、この基板1上に、第2の電極層6をスパッタ法等の方法により形成する。
続いて、図2(c)に示すように、上記第2の電極層6上に圧電体層4をスパッタ法により形成する。この圧電体層4の形成方法は、スパッタ法に限らず、他の形成方法(例えばゾル−ゲル法や水熱法等)を用いてもよい。
次いで、図2(d)に示すように、上記圧電体層4上に第1の電極層5をスパッタ法等の方法により形成し、その後、図2(e)に示すように、その第1の電極層5を、2つの所定形状の個別電極5a,5bに分割されるようにパターニングする。こうして基板1の上面に圧電素子3が形成されることになる。
次に、上記基板1の下面における幅方向中央位置に、予め作製しておいた補強部2となる部材を接着固定することで、アクチュエータ11(駆動部10)が完成する(尚、接着剤は図示していない)。
ここで、上記製造方法において、第2の電極層6を形成した後でかつ圧電体層4を形成する前に、該第2の電極層6をパターニングすれば、第2の電極層6も、第1の電極層5と同様に複数の個別電極に分割することができる。この分割した第2の電極層6上に圧電体層4をスパッタ法により形成すれば、それら複数の個別電極間の部分が圧電体層4で満たされることになる。
また、上記製造方法では,補強部2となる部材を基板1に対し接着固定することにより取り付けたが、基板1と補強部材2とが共に金属材料からなる場合には、拡散接合や溶接により取り付けるようにしてもよい。また、基板1上にレジスト等の非導電性の材料からなる型を形成し、その型を使ってめっき(電気めっき又は無電解めっき)を行うことによっても、金属材料からなる基板1上に、めっき材からなる補強部2を形成することができる。さらに、基板1が非導電性材料からなる場合においても、基板1上に、補強部2をめっきにより形成するときにおける該めっき成長のための核形成を補助する材料が含有された核形成補助材料含有層を形成し、この核形成補助材料含有層上にめっき材からなる補強部2を形成するようにすることができる。特に、核形成を補助する材料として、無電界めっき液に対して触媒作用を持つFe、Ni、Pd等を用いることで、非金属基板上に、Ni等の無電界めっき材からなる補強部を形成することができる。
上記アクチュエータ11を用いて可動部材を移動(微動)させる微動機構を構成するには、図23に示した従来の微動機構におけるアクチュエータ600を、上記アクチュエータ11に置き換えればよい。すなわち、アクチュエータ11の駆動部10(基板1又は補強部2)の基板長さ方向の一端部を固定部材に固定し、駆動部10(基板1又は補強部2)の基板長さ方向の他端部に可動部材を取付固定する。こうすることで、圧電素子3の作動により、可動部材を所定の平面(ここでは、水平面)内において固定部材に対して基板幅方向に往復移動させることができるようになる。
この微動機構においては、可動部材が基板1(及び補強部2)により支持されることになる。そして、基板1は、補強部2により該基板1の厚み方向には曲がり難くなっているので、可動部材を支持しても、その可動部材の重量による基板1の厚み方向のたわみ量は小さくて済む。一方、補強部2は、基板1の幅方向には曲がりやすくなっているので、圧電素子3による基板1の幅方向の変位を妨げるようなことはない。しかも、可動部材を圧電素子3で支持する必要がないので、圧電素子3の圧電体層4の厚みを薄くすることができ、圧電素子3の駆動電圧を低下させることができる。よって、可動部材を所定の平面内からずれないように低電圧で高速かつスムーズに移動させることができるとともに、可動部材の移動量を大きくすることができる。
尚、1つのアクチュエータ11によって可動部材を支持し移動させる必要はなく、複数のアクチュエータ11を、それらの動作が互いに干渉しないように設けて、これら複数のアクチュエータ11によって可動部材を支持し移動させる構成であってもよい。また、後の実施形態5で説明するように、1つのアクチュエータ11において駆動部10を複数設けて、これら複数の駆動部10を、互いに並列に連結したり直列に連結したりするようにしてもよい。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例では、アクチュエータの駆動部における基板として、幅500μm、厚み100μm、長さ10mmの結晶化ガラスの板材を用い、第2の電極層としては、成膜温度300℃、高周波電力100W、プロセス圧力1PaのAr雰囲気中でスパッタリングにより形成してなる、厚み0.1μmのPt薄膜とした。圧電体層としては、成膜温度600℃、高周波電力600W、プロセス圧力1PaのArとO2との混合雰囲気中でスパッタリングにより形成してなる、厚み2μmのPZT薄膜(Zr/Ti=53/47)とした。第1の電極層としては、上記第2の電極層と同じ条件でスパッタリングにより成膜してなるPt薄膜とし、これをドライエッチングによりパターニングして、幅220μm、長さ9.5mmの2つの個別電極を形成した。
また、補強部としては、高さ(基板厚み方向の長さ)200μm、幅(基板幅方向の長さ)100μm、長さ5mmの結晶化ガラスとし、これを上記基板の厚み方向一方の面の幅方向中央及び長さ方向中央に接着固定した。
上記基板の長さ方向の一端部を固定部材に固定し、他端部に重量200mgの可動部材を固定して微動機構を構成した。この可動部材の重量による基板の厚み方向の最大たわみ量は41μmであった。
そして、第2の電極層を接地し、第1の電極層の2つの個別電極のそれぞれに、位相が互いに180度異なる、周波数500Hz及び振幅5Vの正弦波電圧を印加してアクチュエータの駆動部を駆動した。このとき、可動部材は基板の幅方向に±1.5μm移動し、100nm以下の精度で位置決めを行うことができた。また、連続して1000時間駆動したところ、位置決め精度が200nmに低下した。さらに、アクチュエータを、駆動部が固着しないように樹脂ケースでパッケージングした状態で、高さ50cmから落下させる試験をおこなったところ、アクチュエータに破損は見られなかったが、高さ1mから落下させる試験を行うと、駆動部(基板又は補強部)の固定部材側の端部にクラックが発生した。
(実施例2)
本実施例では、アクチュエータの駆動部における基板の厚み及び補強部の長さを上記実施例1とは異ならせた。すなわち、補強部の長さを基板の長さと等しくなるようにして、基板の長さ方向全体に亘って連続するようにし、基板の厚みは上記実施例1のものに対して1/2にした。具体的には、基板を、幅500μm、厚み50μm、長さ10mmの結晶化ガラスの板材とし、補強部を、高さ200μm、幅100μm、長さ10mmとした。その他の材料やアクチュエータの製造方法は上記実施例1と同様とした。
そして、上記アクチュエータを用いて、上記実施例1と同様の微動機構を構成したところ、可動部材の重量による基板の厚み方向の最大たわみ量は25μmであった。また、第1及び第2の電極層に、上記実施例1と同様の正弦波電圧(但し、周波数400Hz)を印加して駆動を行ったところ、可動部材は基板の幅方向に±2.5μm往復移動し、100nm以下の精度で位置決めを行うことができた。上記正弦波電圧の周波数を400Hzとしたのは、これ以上速くすると動作が不安定になったからである。また、連続して1000時間駆動したところ、位置決め精度が200nmに低下した。さらに、アクチュエータを実施例1と同様にパッケージングした状態で、高さ50cmから落下させる試験をおこなったところ、アクチュエータに破損は見られなかったが、高さ1mから落下させる試験を行うと、駆動部(基板又は補強部)の固定部材側の端部にクラックが発生した。
(実施例3)
本実施例では、基板と補強部との大きさの割合を変化させて、本発明の効果が得られる範囲を明らかにした。
すなわち、実施例2において補強部として用いた結晶化ガラスのサイズを変化させて、基板の厚み方向の最大たわみ量及び可動部材の最大移動量を調べた。このとき、基板の大きさは、幅500μm、厚み50μm、長さ10mmとし、これに対して、補強部の大きさを変化させた。つまり、上記実施形態1で説明したα及びβの値を変化させた複数種のアクチュエータを用意した。
図3に、本発明の効果が得られる範囲を示す。図中の斜線を施した部分が本発明の効果が得られる範囲である。ここで、本発明の効果が得られる範囲とは、可動部材の重量を10mg〜500mgとして、その重量による基板の厚み方向の最大たわみ量が50μm以下で、かつ可動部材の最大移動量が1μm以上となる範囲である。この範囲外では、本発明の効果が十分に得られないことになる。すなわち、上記αの値が小さすぎたり(0.05以下)、βの値が大きすぎたり(10以上)すると、補強部の剛性が低くなって、可動部材の支持性が不十分となる。一方、αの値が大きすぎたり(0.45以上)、βの値が小さすぎたり(1以下)すると、可動部材の支持性は問題ないが、可動部材の移動量が小さくなりすぎて微動機構として適さなくなる。
(実施例4)
本実施例では、上記実施例2において基板(結晶化ガラス)の幅を変化させて、可動部材の移動量との関係を調べた。
この結果、基板の幅が大きくなると、可動部材の移動量が減少するとともに、基板の幅が、該基板の厚みの20倍よりも大きくなると、基板にねじれが生じる。このため、可動部材が平面内で移動しなくなって、平面内で移動する微動機構として機能しなくなった。一方、基板の幅が、該基板の厚み以下となると、基板の幅方向の曲げ剛性よりも厚み方向の曲げ剛性が大きくなり、補強部を設ける意味がなくなる。また、基板の長さが幅の4倍よりも小さいと、可動部材の移動量が小さくなりすぎて微動機構として適さないことが分かった。
(実施形態2)
本実施形態は、基板1及び補強部2の材質を金属に変更したものである。すなわち、アクチュエータ11の駆動精度や耐衝撃特性は、基板1及び補強部2の材質及び取付け方法によるところが大きく、延性に富む金属を用いることにより、アクチュエータ11(駆動部10)の耐衝撃特性を向上させることができる。このように基板1及び補強部2を金属材料で構成した場合には、補強部2の基板1への取付け方法としては、溶接する方法や、上述しためっきによる方法等がある。補強部2をめっきにより形成すれば、補強部2の基板1への取付精度を向上させることができるとともに、長期駆動した場合の信頼性を向上させることができる。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
(実施例5)
図4は、実施例5に係るアクチュエータの駆動部10を示し、本実施例では、上記実施例2に対して、基板1及び補強部2の材質、補強部2の取付位置及び取付方法を異ならせた。
すなわち、基板1を、幅500μm、厚み50μm、長さ10mmのステンレス鋼(SUS304)の板材で構成し、補強部2を、高さ200μm、幅100μm、長さ10mmのステンレス鋼(SUS304)で構成した。そして、実施例1と同様に、第2の電極層6としてPt膜を成膜し、このPt膜上に、圧電体層4としてPZT薄膜を形成し、このPZT薄膜上に、第1の電極層5としてPt膜を成膜して、この第1の電極層5のPt膜をドライエッチングにより、幅220μm、長さ9.5mmの2つの個別電極5a,5bに分割した。こうして基板1の上面に圧電素子3を設けた。しかし、本実施例では、上記PZT薄膜の圧電特性が、基板1の表面状態の影響により、該PZT薄膜の厚み方向の上向きと下向きとで互いに異なって、上向きの方が、下向きに比べて30%大きくなってしまった。そこで、この圧電特性の違いを調整するために、基板1の下面における補強部2の取り付ける位置を、基板1の幅方向中央線Cに対し40μmだけX軸方向にずらした位置になるように、基板1と補強部2とをアライメントし、それらの接続部分をレーザー溶接することによって固定した。
上記基板1の長さ方向の一端部を固定部材に固定し、他端部に重量200mgの可動部材を固定して微動機構を構成した。この可動部材の重量による基板1の厚み方向の最大たわみ量は20μmであった。
そして、上記第2の電極層6を接地し、上記第1の電極層5の一方の個別電極5aに、振幅が2.5Vでかつ正方向に2.5Vオフセットした(つまり0Vから5Vまで変化する)周波数400Hzの駆動電圧を印加し、他方の個別電極5bに、上記一方の個別電極5aとは位相が180度異なるとともに振幅が2.5Vでかつ負方向に2.5Vオフセットした(0Vから−5Vまで変化する)周波数400Hzの駆動電圧を印加してアクチュエータの駆動部を駆動した。
このとき、可動部材は基板1の幅方向に2.0μm移動し、100nm以下の精度で位置決めを行うことができた。また、連続して1000時間駆動したところ、位置決め精度が200nmに低下した。さらに、アクチュエータを実施例1と同様にパッケージングした状態で、高さ1mから落下させる試験をおこなったところ、アクチュエータに破損は見られず、このことから、基板1及び補強部2の材質を金属材料に変更することにより、耐衝撃特性が向上することが分かった。
尚、基板1の表面状態に合わせて、圧電体層4の成膜条件を最適化することにより、上向きと下向きとで圧電特性をほぼ同じにすることは可能であり、実施例1及び実施例2と同様に基板1の下面の幅方向中央に補強部2を配置することも可能である。
(実施例6)
図5は、実施例6に係るアクチュエータの駆動部10における補強部2の形成方法を示し、本実施例では、補強部2を電気めっきにより形成した点が、上記実施例5とは異なる。すなわち、まず、圧電素子3を設けた基板1の外周囲に、厚み5μmのポリイミド16を塗布し、基板1の下面における補強部2を取り付ける部分をパターニングして取り除く(図5(a)参照)。
上記塗布したポリイミド16を硬化させた後、補強部2を形成するための型となるドライフィルムレジスト18を貼り付け、このドライフィルムレジスト18における補強部2を形成する部分をパターニングして取り除くことにより、深さが200μm、幅50μmの空洞部を有する型を作製した(図5(b)参照)。
次に、全体を50℃のNiの電気めっき液に浸し、基板1とめっき用電極との間に30分間電圧を印加することにより、型の空洞部に高さ200μm、幅100μm、長さ10mmのNiの電気めっき材からなる補強部2を形成した(図5(c)参照)。
上記めっき終了後、ドライフィルムレジスト18を剥離液により取り除いた。このようにして、金属材料からなる基板1に直接接合されためっき材からなる補強部2を形成した(図5(d)参照)。
尚、基板1及び圧電素子3の各層の材料や、補強部2を除くアクチュエータの製造方法は、上記実施例5と同様である。
上記基板1の長さ方向の一端部を固定部材に固定し、他端部に重量200mgの可動部材を固定して微動機構を構成した。この可動部材の重量による基板1の厚み方向の最大たわみ量は20μmであった。
上記第2の電極層6を接地し、上記第1の電極層5の一方の個別電極5aに、振幅が2.5Vでかつ正方向に2.5Vオフセットした(つまり0Vから5Vまで変化する)周波数400Hzの駆動電圧を印加し、他方の個別電極5bに、上記一方の個別電極5aとは位相が180度異なるとともに振幅が2.5Vでかつ負方向に2.5Vオフセットした(つまり−5Vから0Vまで変化する)周波数400Hzの駆動電圧を印加してアクチュエータを駆動した。
このとき、可動部材は基板1の幅方向に2.0μm移動し、80nm以下の精度で位置決めを行うことができた。また、連続して1000時間駆動したところ、位置決め精度は80nmであり、位置決め特性は劣化していなかった。さらに、アクチュエータを、実施例1と同様に、パッケージングした状態で、高さ1mから落下させる試験をおこなったところ、アクチュエータに破損は見られなかった。したがって、金属材料からなる基板1に直接、めっき材からなる補強部2を形成することにより、耐衝撃特性が向上するとともに、長期間の駆動による位置決め精度の劣化がなくなり、信頼性が向上することが分かった。
また、上記塗布したポリイミド16が、アクチュエータの駆動部10の外周囲を覆うことにより駆動部10の保護層を兼ねるため、組立て等の後工程でのアクチュエータの不良が減少した。
(実施例7)
本実施例では、アクチュエータの駆動部の基板としてシリコン基板を用い、補強部を無電界めっきにより形成した点と、アクチュエータを同時に700個作製した点とが、上記実施例2とは異なる。
すなわち、厚みが525μmの4インチシリコン基板に、第2の電極層としてIrとTiとの合金膜を成膜し、この合金膜上に、圧電体層としてPZT薄膜を成膜し、このPZT薄膜上に、第1の電極層としてPt膜を成膜した。そして、このPt膜を、幅220μm、長さ9.5mmの2つの個別電極が、700組得られるように分割する。
続いて、上記基板を、上記成膜した面とは反対側の面から、基板の厚みが50μmになるまで研磨し、その後、この研磨した面上に、補強部を無電解めっきにより形成するときにおける該めっき成長のための核形成を補助する材料が含有された核形成補助材料含有層をスパッタリングにより形成する。本実施例では、核形成を補助する材料をPdとして、厚み0.1μmのPd膜を形成した。
次いで、上記核形成補助材料含有層上にドライフィルムレジストを貼り付けてパターニングすることにより、深さが200μm、幅50μmの空洞部を有する型を作製した。
次に、全体を無電界めっき液に浸し、90℃で3時間処理することにより、型の空洞部に高さ200μm、幅100μm、長さ10mmのNiの無電界めっき材からなる補強部を形成した。そして、上記ドライフィルムレジストを剥離した後、レーザーダイシングにより、700個のアクチュエータに分離した。
このようにして作製した1つのアクチュエータを用いて、基板の長さ方向の一端部を固定部材に固定し、他端部に重量200mgの可動部材を固定することで微動機構を構成した。この可動部材の重量による基板の厚み方向の最大たわみ量は22μmであった。
そして、上記第1及び第2の電極層に、上記実施例2と同様の電圧を印加して駆動を行ったところ、可動部材は基板の幅方向に±2.2μm往復移動し、80nm以下の精度で位置決めを行うことができた。また、連続して1000時間駆動したところ、位置決め精度は80nmであり、位置決め特性は劣化していなかった。さらに、アクチュエータを、実施例1と同様に、パッケージングした状態で、高さ80cmから落下させる試験をおこなったところ、アクチュエータに破損は見られなかったが、高さ1mから落下させる試験を行うと、駆動部(基板又は補強部)の固定部材側の端部にクラックが発生した。
尚、本実施例では、核形成補助材料含有層(Pd膜)を成膜した後にドライフィルムレジストにより型を作製したが、核形成補助材料含有層は、少なくとも基板と補強部との間にあればよく、ドライフィルムレジストを形成する前に、核形成補助材料含有層の不必要な部分をエッチングにより除去しておいてもかまわない。また、基板と補強部との間の層はPd膜一層である必要はなく、基板とPd膜との間にTiやCr等からなる密着層を形成してもよい。さらに、核形成補助材料含有層はPd単体からなる必要はなく、他の金属との合金で形成してもよい。
(比較例)
ここで、比較例として、図22に示す従来のアクチュエータと同様のものを作製し、このアクチュエータによって、上記実施例1と同じ重量200mgの可動部材を動かすこととした。つまり、この比較例のものは、可動部材を圧電体層により支持するものである。この圧電体層の圧電材料としては、PZTの焼結体とし、第1及び第2の電極層としては、スパッタリングにより形成してなるPt薄膜とした。
そして、上記第1及び第2の電極層に、上記実施例1と同様の電圧を印加して駆動を行ったときに、上記実施例2のように可動部材を圧電体層(焼結体)の幅方向に±2.5μm往復移動させかつ可動部材による圧電体層の厚み方向の最大たわみ量を25μmとするためには、PZT焼結体を、幅800μm、厚み400μm、長さ25mmとする必要があり、実施例2に比べて8倍の厚み及び2.5倍の長さが必要であった。
また、PZT焼結体の幅を大きくすることで、焼結体の厚みを薄くすることは可能であるが、こうすると、焼結体の幅方向の曲げ剛性が増えるため、可動部材の移動量が減少する。これを防止するためには、駆動電圧を大きくするか、又は焼結体の長さを更に長くする必要があった。
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3に係るアクチュエータ11を示し、補強部2を基板1に一体形成したものである。このような基板1及び補強部2は、例えば、シリコン基板1に対してドライエッチング等の加工を施すことによって容易に得られる。尚、その他の部分は、上記実施形態1(図1)と同様であり、その詳細な説明は省略する。
本実施形態では、補強部2の基板1に対する位置精度が向上するとともに、補強部2が基板1から外れることがなく、このことから、本実施形態のアクチュエータ11を用いた微動機構により可動部材を駆動するときの位置決め精度及び信頼性が向上する。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
(実施例8)
本実施例では、基板及び補強部として、厚み250μmのシリコン基板をドライエッチングすることにより、一体形成したものを作製した。この基板及び補強部の全体寸法は、上記実施例2と同じである。また、その他の材料については、上記実施例1と同様とした。
上記アクチュエータを用いて微動機構を構成したところ、可動部材の重量による基板の厚み方向の最大たわみ量は23μmであった。また、上記実施例1と同様の方法で駆動を行うと、可動部材は基板の幅方向に±2.3μm往復移動し、50nm以下の精度で位置決めを行うことができた。また、連続して1000時間駆動を行ったが、位置決め精度の劣化は見られなかった。
したがって、補強部2を基板1に一体形成することで、可動部材の位置決め精度及び信頼性が向上することが分かった。
(実施形態4)
図7は、本発明の実施形態4に係る微動機構を示し、この微動機構は、撮像素子と、該撮像素子に光を導く光学レンズとを備えたカメラモジュールの画素ずらし(撮像素子を光学レンズに対し、該光学レンズの光軸と垂直な方向に相対移動させて高解像度画像を得る技術)に適用するのに最適なものである。
すなわち、この微動機構は、2つのアクチュエータ11(図7では、一方のアクチュエータの符号を11aとし、他方のアクチュエータの符号を11bとしている)を備えていて、これら両アクチュエータ11の駆動部10により可動部材13を支持し駆動するように構成されている。各アクチュエータ11は、上記実施形態1〜3のアクチュエータ11と同様に構成されているが、後述の如く第1の電極層5が異なる。
具体的には、各アクチュエータ11における駆動部10の基板1における長さ方向の一端部が、固定部材12にそれぞれ固定されている。この固定部材12は水平状に延びる板状のものであり、その中央部には、該固定部材12の厚み方向(つまり上下方向)に貫通する四角形の貫通孔12aが形成されている。そして、この貫通孔12aの内側面における四角形の対角にある2つの頂点の近傍位置に、両アクチュエータ11がそれぞれ固定されて、両アクチュエータ11の駆動部10は、上記貫通孔12a内において、図7に示すX軸方向に所定間隔をあけて該X軸方向と垂直なY軸方向に互いに平行に延びている。
上記両アクチュエータ11間には、四角形の可動部材13が配設され、この可動部材13が、上記各アクチュエータ11の駆動部10の基板1における長さ方向の他端部(先端部)に取付固定されている。尚、可動部材13におけるアクチュエータ11への取付部13aは、該可動部材13の側面からX軸方向に突出形成されてなっている。
上記各アクチュエータ11の駆動部10の第1の電極層5は、上記実施形態1〜3とは異なり4つの個別電極(図7では、これら4つの個別電極の符号を、一方のアクチュエータ11aでは5a〜5dとし、他方のアクチュエータ11bでは5e〜5hとしている)に分割されている。これら個別電極5a〜5hの表面積は全て等しい。そして、一方のアクチュエータ11aにおいては、個別電極5a〜5dが、基板1の厚み方向から見て四角形の頂点にそれぞれ位置するように基板幅方向及び基板長さ方向に2つずつ並んでおり、アクチュエータ11aの駆動部10の駆動時には、上記四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極5a,5cに印加される電圧が等しくなるようにするとともに、残り2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極5b,5dに印加される電圧も等しくなるようにする。また、個別電極5a,5cに印加する電圧と個別電極5b,5dに印加する電圧とは、大きさは同じであるが正負を互いに逆にする。これにより、圧電体層4において、2つの個別電極5a,5cに対応する部分に加えられる電界の大きさが共に同じとなり、残り2つの個別電極5b,5dに対応する部分に加えられる電界の大きさも共に同じとなる。また、圧電体層4において、個別電極5a,5cに対応する部分に加えられる電界と、個別電極5b,5dに対応する部分に加えられる電界とでは、同じ大きさで向きが互いに逆になる。第2の電極層6は接地する。
尚、上記実施形態1で説明したように、圧電体層4の厚み方向に電界を加えた場合の圧電特性が該電界の向きにより著しく異なる場合には、個別電極5a,5cに印加する電圧の大きさと個別電極5b,5dに印加する電圧の大きさとを互いに異ならせるようにしてもよい。つまり、圧電体層4の圧電特性に合わせて、圧電体層4において、個別電極5a,5cに対応する部分に加えられる電界の大きさと、個別電極5b,5dに対応する部分に加えられる電界の大きさとを互いに異ならせる。
上記他方のアクチュエータ11bにおいても、アクチュエータ11aと同様に、個別電極5e〜5hが、基板1の厚み方向から見て四角形の頂点にそれぞれ位置するように基板幅方向及び基板長さ方向に2つずつ並んでおり、アクチュエータ11bの駆動部10の駆動時には、上記四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極5f,5hに印加される電圧が等しくなるようにするとともに、残り2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極5e,5gに印加される電圧も等しくなるようにする。また、個別電極5f,5hと個別電極5e,5gとの電圧の正負は互いに逆で大きさは同じになるようにする。
上記のように構成する理由は、以下の通りである。
すなわち、図8(a)に示すように、上記実施形態1〜3の如く第1の電極層5を2つの個別電極5a,5bに分割した構成では、基板1の長さ方向一端側が他端側に対して基板1の幅方向(図8(a)に示すX軸方向)に円弧状の軌跡を描いて変位する。このため、基板1の他端部(駆動部10の先端部)に取り付けた可動部材13も円弧状の軌跡を描いて移動する(上下方向に延びる軸周りに回動する)こととなり、基板1の幅方向の移動に加えて長さ方向(Y軸方向)にも移動することになる。この移動量は微小であるため、通常は、問題になることはない。しかし、本実施形態のように、複数のアクチュエータ11で可動部材13を支持する場合には、各アクチュエータ11による、上下方向に延びる軸周りの回転が互いに干渉し合い、可動部材13の移動量が低下するという問題がある。この問題を解決するためには、可動部材13の移動軌跡を円弧ではなく直線にする必要がある。
そこで、本実施形態では、上記のようにアクチュエータ11aでは、第1の電極層5を4つの個別電極5a〜5dに分割しておき、第2の電極層6を接地し、個別電極5a,5cと個別電極5b,5dとに互いに正負逆の電圧を印加する。例えば、個別電極5a,5cに負の電圧を印加する一方、個別電極5b,5dに正の電圧を印加すると、図8(b)に示すように、アクチュエータ11aは、基板1の厚み方向から見て、基板1が、その長さ方向中間部の1箇所に変曲点が生じるように幅方向に屈曲して、アクチュエータ11aの駆動部10の先端部は基板1の幅方向に直線に沿って移動することとなる。また、アクチュエータ11bの駆動部10も、アクチュエータ11aの駆動部10と同様に駆動させるが、アクチュエータ11aの駆動部10と協調動作させる(可動部材13を同じ向きに移動させる)ために、アクチュエータ11aの個別電極5a,5cに負の電圧を印加しかつ個別電極5b,5dに正の電圧を印加しているときには、アクチュエータ11bの個別電極5e,5gに正の電圧を印加しかつ個別電極5f,5hに負の電圧を印加し、逆に、個別電極5a,5cに正の電圧を印加しかつ個別電極5b,5dに負の電圧を印加しているときには、個別電極5e,5gに負の電圧を印加しかつ個別電極5f,5hに正の電圧を印加するようにする。これにより、可動部材13が、スムーズに移動するとともに、移動量の低下を抑制することができる。
尚、第1の電極層5の分割数は、4つに限らず、それよりも多くても(偶数が好ましい)、アクチュエータ11の駆動部10の先端部を基板1の幅方向に直線に沿って移動させるようにすることができる。
上記微動機構の可動部材13に撮像素子を設け、この撮像素子を、固定部材12(つまり光学レンズ)に対して光学レンズの光軸と垂直な方向(図7のX軸方向)に移動させて高解像度画像が得ることができる。図9(a)は、その撮像素子の拡大図である。この撮像素子15においては、多数の受光部15aが複数列に並んで配設されている。これら受光部15aの周辺には、電気回路(図示せず)等が配設されており、このため、撮像素子15全域に受光部15aが配置されているわけでない。そこで、受光部15aが配置されていない部分に該受光部15aが移動するように微動機構により撮像素子15を移動させるようにすれば、高解像度の画像を得ることができる。この手法は画素ずらしと呼ばれ、高解像度の撮像素子で画像を取得した場合と同様の画像を得ることができ、擬似的に高解像度の撮像素子があるものと考えることができる。
上記微動機構を用いることにより、アクチュエータ11を薄型及び小型にすることができるので、画素ずらし機能付きのカメラモジュールの薄型化及び小型化を図ることができるようになる。
図9(b)は、可動部材13(撮像素子15)を1軸方向に移動(微動)させる上記微動機構を用いて、2倍の画素数を持つ高解像度画像を得る場合の受光部15aの位置の変化を模式的に示すものである。先ず、最初に同図中の「1」で示される位置に受光部15aがあり、該「1」の位置にある受光部15aで画像を取り込む。その後に、受光部15aが同図中の「2」の位置になるように、同図中の矢印A方向に撮像素子15を微動させて、該「2」の位置にある受光部15aで画像を取り込む。そして、これら2つの画像を合成することにより、2倍の画素数の高解像度画像を得ることができる。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
(実施例9)
本実施例では、上記実施例8のアクチュエータの駆動部の電極構成を上記実施形態4で示した4つに分割したものに変更し、このアクチュエータを2つ用いて、図7で示す微動機構を構成した。すなわち、各アクチュエータにおいて、補強部は、シリコン基板をエッチングすることで該シリコン基板に一体形成したものである。また、固定部材及び可動部材も、補強部と共に基板に一体形成した。これら基板、補強部、固定部材及び可動部材は、シリコン基板に対してフッ素系のガスを主体としたドライエッチングを施すことにより一体形成した。各アクチュエータの駆動部の基板は、幅700μm、厚み50μm、長さ12mmの大きさとし、補強部は、高さ250μm、幅70μm、長さ12mmの大きさとした。また、圧電素子の第1及び第2の電極層並びに圧電体層は、上記実施例1と同様にスパッタリングによりそれぞれ形成し、圧電体層は、厚み3μmのPZT薄膜(Zr/Ti=53/47)とした。第1の電極層は、上記実施形態4のアクチュエータと同様に4つの個別電極に分割し、この各分割電極は、幅320μm、長さ5.5mmの大きさとした。
上記2つのアクチュエータの駆動部に取り付ける可動部材の重量が200mgとなるようにして微動機構を構成した。このとき、可動部材の重量による基板の厚み方向の最大たわみ量は15μmであった。そして、各アクチュエータにおいて、四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つの個別電極に5Vの電圧を印加する一方、残り2つの個別電極に−5Vの電圧を印加すると、可動部材は基板幅方向に直線に沿って1.4μm移動した。このように2つのアクチュエータにより可動部材を支持することにより、基板の厚み方向(上下方向)のたわみをより一層効果的に抑制することができた。
(実施例10)
図10は、実施例10に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示し、上記実施例9の微動機構の可動部材13に撮像素子15を設け、この撮像素子15を固定部材12(光学レンズ)に対して光学レンズの光軸と垂直な1軸方向(図10のX軸方向)に移動させることによって、2倍の画素数の高解像度画像を得るように構成したものである。
上記撮像素子15は、図9(a)に示したものと同様であり、画素ピッチ(相隣接する受光部15aの間隔)を2μmとしたものである。この撮像素子15を、画素の対角方向(図9(b)のA方向)が微動機構の動く方向(図10のX軸方向)に一致するように、可動部材13に取り付けた。また、上記撮像素子15に光を導く光学レンズを、撮像素子15の図10の紙面手前側に配置して固定部材12に対し間接的に固定した。この光学レンズは、その光軸が図10の紙面に垂直な方向に延びるように配置した。
1枚の画像を撮影中に微動機構が作動すると、画像にブレが生じて画質が劣化するので、個別電極に印加する電圧は、図11に示すような台形波を用いて行った。同図において横軸は時間であり、縦軸は電圧である。撮像素子は画素の対角方向に1.4μm移動すればよいので、個別電極5a,5c(5f,5h)に波形19の−2.5Vから2.5Vの間で変化する電圧を加え、個別電極5b,5d(5e,5g)に波形19と位相が180度ことなる波形20を加えた。これにより、撮像素子全域に亘って均一に画素をずらすことが可能となり、高品質で高解像度の画像を得ることができた。
尚、撮影中にアクチュエータが移動すると画質が悪化するために、1枚目の画像は、図11中の撮影期間T1(電圧が一定であり、可動部材が静止した状態にある期間)で撮影し、2枚目の画像は撮影期間T2(撮影期間T1と同様に、電圧が一定であり、可動部材が静止した状態にある期間)で撮影した。画像を撮影できる間隔は、微動機構の動作速度に依存し、本実施例では、2.5ms(400Hz)が限界であった。
(実施形態5)
本実施形態は、複数の駆動部10を設けて、より高機能なアクチュエータ11としたものである。具体的には、例えば図12(a)に示すように、基板1における補強部2が設けられた面が同じ方向を向きかつ基板幅方向に互いに平行に並ぶ複数(図12(a)では2つ)の駆動部10を設けて、これら駆動部10同士を、該駆動部10(基板1又は補強部2)の基板長さ方向の両端部にて連結部材23a,23bを介して互いに並列に連結する。或いは、例えば図12(b)に示すように、基板1における補強部2が設けられた面が同じ方向を向く複数(図12(b)では2つ)の駆動部10を設けて、これら駆動部10同士を、該駆動部10(基板1又は補強部2)の基板長さ方向の端部にて連結部材23cを介して互いに直列に連結する。尚、3つ以上の駆動部10を設けて、これら駆動部10同士を並列又は直列に連結するようにしてもよい。また、連結部材23a,23b,23cは必ずしも必要なく、複数の駆動部10の基板1同士又は補強部2同士を直接連結するようにしてもよい。
本発明のアクチュエータ11では、基板1の幅を小さくするほど、基板1の幅方向の曲げ剛性が小さくなり、変位量が多くなる。しかし、基板1の幅を小さくしすぎると基板1の幅方向の曲げ剛性が小さくなりすぎて、基板1の幅方向の共振特性が低下し、これにより、第1及び第2電極層5,6に印加する電圧を高速で変化させて駆動部を高速で駆動しようとしても、その電圧の変化に基板の変形が即座に追従しなくなって、高速で駆動することはできなくなる。アクチュエータ11を適用するデバイスによって、駆動速度の要求される程度が異なるが、変位量が大きくかつ高速駆動できるほうが好ましいのはいうまでもない。そこで、上記のように複数の駆動部10同士を並列に連結することにより、変位量は基板1の幅を小さくした場合と同等の特性を維持しつつ、基板1の幅方向の曲げ剛性を増やすことができるようになり、この結果、高速移動が可能となる。
また、上述のように第1の電極層5を2つの個別電極5a,5bに分割した場合においては、アクチュエータ11の駆動部10の先端部は円弧状の軌跡を描いて動き、微動機構の構成によっては、動作に不具合が生じる。しかし、本実施形態のように、複数の駆動部10同士を並列に連結するとともに、これら駆動部10の変形特性を同じにすることで、駆動部10は長さ方向に変形し難くなり、変形方向を基板幅方向のみに限定することができる。
尚、複数の駆動部10を直列に連結した場合については、後の実施形態6において詳しく説明する。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
(実施例11)
図13(a)は実施例11に係るアクチュエータ11を示す。このアクチュエータ11は、基板1における補強部2が設けられた面が同じ方向を向きかつ基板幅方向に互いに平行に200μmの間隔を空けて並ぶ2つの駆動部10を備えており、この各駆動部10の形状は,上記実施例9のアクチュエータの駆動部と同様である。そして、これら2つの駆動部10を、該駆動部10の基板長さ方向の両端部にて連結部材23a,23bを介して互いに並列に連結した。連結部材23aは、2つの駆動部10の基板1に一体形成したものであり、連結部材23bは、2つの駆動部10の補強部2を連結部材23b側へ延長した部分に固定したものである。
そして、連結部材23aは固定部材を兼ねることができ、連結部材23bは可動部材を兼ねることができるので、このまま微動機構としてアクチュエータ11の駆動部10を駆動した。すなわち、2つの駆動部10の個別電極5aに同じ大きさの電圧を印加し、2つの駆動部10の個別電極5bにも同じ大きさの電圧(個別電極5aとは大きさが同じで正負が逆の電圧)を印加すると、図13(b)に示すように、基板1の連結部材23b側の端部は円弧状の軌跡を描くが、上記補強部2の延長部分の変形により、連結部材23bは基板幅方向に直線に沿って移動した。
上記連結部材23bの重量は200mgであり、各駆動部10の基板厚み方向のたわみ量は13μmであった。そして、上記実施例1と同様の駆動電圧で、駆動周波数を変えながら駆動試験を行ったところ、連結部材23bの移動量は±2.0μmであり,駆動周波数700Hzまで安定して動作を行うことができた。また、位置決め精度、長期駆動特性及び耐衝撃特性は、上記実施例2のものと変わらなかった。
したがって、複数の駆動部10を並列に連結したアクチュエータ11では、駆動周波数を高くできることが分かった。また、このアクチュエータ11を微動機構に用いた場合、可動部材を直線に沿って移動させ得ることが分かった。
(実施例12)
図14は実施例12に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示し、本実施例では、上記実施例10(図10参照)の2つのアクチュエータ11(11a,11b)を、各々、図12(a)のように互いに並列に連結された2つの駆動部10を有するものに変更したものである。各アクチュエータ11の2つの駆動部10の間隔は300μmとし、その他の各アクチュエータ11の駆動部10のサイズや電極構成、駆動電圧等は、実施例10と同様にした。
本実施例では、固定部材12が、固定部材側の連結部材を兼ねている。また、可動部材側の連結部材23aは、2つの駆動部10の基板1における長さ方向の端部において相対向する側面同士を連結している。これにより、可動部材13は、該可動部材13に対し近い側に位置する駆動部10の基板1に直接固定されているとともに、可動部材13に対し遠い側に位置する駆動部10の基板1には、間接的に固定されていることになる。尚、可動部材13は、連結部材23aに固定するようにしてもよく、要するに、2つの駆動部10に直接又は間接的に固定すればよい。
上記の構成にすることにより、撮影時間間隔が1ms(1000Hz)に短縮し、より短い時間間隔で撮影が行えるようになり、さらに高画質の高解像度画像を得ることができるようになった。
(実施形態6)
図15は、本発明の実施形態6に係る微動機構を示し、図12(b)のように、基板長さ方向の端部にて互いに直列に連結した2つの駆動部10(図15では、一方の駆動部の符号10aとし、他方の駆動部の符号を10bとしている)を有するアクチュエータ11により構成したものである。
本実施形態では、2つの駆動部10同士は、基板厚み方向から見て互いに直交する方向に延びており、一方の駆動部10aにおける連結部材23cと反対側の端部が固定部材12に固定され、他方の駆動部10bにおける連結部材23cと反対側の端部に可動部材13が固定されている。
基板長さ方向の端部にて互いに直列に連結した2つの駆動部10同士が互いに平行に並んでいなければ、各駆動部10で発生する変位を組み合わせて、可動部材13を所定の平面内で2次元的に動かすことができるようになる。そして、本実施形態のように2つの駆動部10同士を互いに直交するように連結すると、可動部材13を互いに直交する2軸方向に容易に駆動制御できるようになる。すなわち、可動部材13のX軸方向の移動は、Y軸方向に延びる駆動部10(固定部材側の駆動部10a)のみの制御で行い、Y軸方向の移動は、X軸方向に延びる駆動部10(可動部材側の駆動部10b)のみの制御で行うことができる。
このように2つの駆動部10を直列に連結した場合、固定部材12から可動部材13までの駆動部10に沿った長さがかなり長くなり、このため、各駆動部10に補強部2が設けられていないと、可動部材13の基板厚み方向のたわみ量が非常に大きくなるが、本実施形態では、補強部2により基板1の厚み方向の曲げ剛性が高くなっているので、可動部材13が本来の平面内からずれるのを有効に抑制することができる。
尚、3つ以上の駆動部10を直列に連結した場合には、相隣接する2つの駆動部10同士を、基板厚み方向から見て互いに直交する方向に延びるようにすればよい。
上記のように可動部材13を互いに直交する2軸方向に移動させる微動機構をカメラモジュールに用いて、撮像素子15を移動させるようにすれば、より一層高解像度の画像が得られるようになる。
図16は、可動部材13(撮像素子)を互いに直交する2軸方向に移動させる微動機構を用いて、4倍の画素数の高解像度画像を得る場合の受光部15aの位置の変化を模式的に示すものである。先ず、最初に同図中の「1」で示される位置に受光部15aがあるときに画像の取り込みを行い、続いて、微動機構により、受光部15aを、X軸方向に動かして同図中の「2」の位置に移動させ、該「2」の位置にある受光部15aで第2の画像を取り込む。次いで、微動機構により、受光部15aを上記X軸方向と垂直なY軸方向に動かして図中の「3」の位置に移動させ、該「3」の位置にある受光部15aで第3の画像を取り込み、その後、微動機構により、受光部15aをX軸方向(「1」から「2」への移動とは反対側)に動かして図中の「4」の位置に移動させ、該「4」の位置にある受光部15aで第4の画像を取り込む。そして、これら4つの画像を合成することにより、4倍の画素数の高解像度画像を得ることができる。尚、より細かく撮像素子の位置制御を行うことで、更に高解像度の画像を得ることができるようになる。
図17は、可動部材13の上面に設けた撮像素子15を固定部材12(つまり光学レンズ)に対して光学レンズの光軸と垂直な2軸方向に移動させることが可能なカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す。この微動機構は、上記実施例10と同様に、可動部材13を2つのアクチュエータ11により支持しかつ駆動するようにしたものである。この各アクチュエータ11は、図15のアクチュエータ11と同様に、互いに直交する方向に延びるように直列に連結された(本実施形態では、基板1同士が連結部材を介さずに直接連結されている)2つの駆動部10(10a,10b)を有している。また、各駆動部10の第1の電極層5は、上記実施例10と同様に4つの個別電極5a〜5dに分割されている。
上記各アクチュエータ11において、一方の駆動部10aの基板1における長さ方向の一端部が、上記実施例10と同様の固定部材12に固定され、他端部に、他方の駆動部10bの基板1における長さ方向の一端部が固定されており、この他方の駆動部10bの基板1における長さ方向の他端部に、可動部材13の取付部13aが取付固定されている。また、各アクチュエータ11において、上記一方の駆動部10aは、図17に示すX軸方向に延びている一方、上記他方の駆動部10bは、一方の駆動部10aとは垂直なY軸方向に延びている。そして、上記一方の駆動部10aを駆動することで、可動部材13(撮像素子15)をY軸方向に移動させ、上記他方の駆動部10bを駆動することで、可動部材13をX軸方向に移動させるようになっている。このことで、可動部材13を、X軸方向及びY軸方向の2軸方向に移動させることが可能になる。
尚、上記各アクチュエータ11において2つの駆動部10a,10b同士を互いに垂直な方向に延びるようにする必要は必ずしもない。2つの駆動部10a,10b間のなす角度が直角でない場合であっても、2つの駆動部10a,10bを協調して駆動することにより、可動部材13を所定の平面内で任意の方向に動かすことができる。
ここで、具体的に実施した実施例について説明する。
(実施例13)
本実施例では、図17と同様のカメラモジュールの撮像素子微動機構を作製した。基板、補強部、固定部材及び可動部材は、上記実施例10と同様に、シリコン基板に対しドライエッチングを施すことにより一体形成した。また、各アクチュエータの駆動部は、上記実施例10と同様のものとした。この微動機構の可動部材(撮像素子)を、図16で説明したように移動させることで4つの画像を取り込み、これらを合成することにより、4倍の画素数の高解像度画像を得ることができた。
(実施例14)
図18は、実施例14に係るカメラモジュールの光学レンズ微動機構を示す。本実施例では、撮像素子を移動させるのではなくて、光学レンズを移動させるようにしたものである。
すなわち、可動部材13は光を透過する材質からなり、この可動部材13上に光学レンズ7を固定した。この光学レンズ7の光軸は、図18の紙面に垂直な方向に延びている。そして、この光学レンズ7を通った光を受ける受光部を有する撮像素子を、光学レンズ7の図18の紙面裏側に配置して固定部材12に対し間接的に固定した。その他の構成は上記実施例12と同様であり、光学レンズ7を、固定部材12(つまり撮像素子)に対して光学レンズ7の光軸と垂直な2軸方向(図18のX軸方向及びY軸方向)に移動させることで、4倍の画素数の高解像度画像を得るように構成した。光学レンズ7の重量は撮像素子の約1/10であるため、撮像素子を移動させる場合に比べて、アクチュエータの駆動電力が少なくて済み、光学レンズ7をより高速で動作させることができ、画質をさらに高めることができた。
(実施例15)
図19は、実施例15に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す。本実施例では、上記実施形態6のアクチュエータ11と同様のアクチュエータ11を4つ用いて微動機構を構成している。すなわち、この微動機構は、X軸方向に延びる固定部材側の駆動部10aとY軸方向に延びる可動部材側の駆動部10bとを有する2つのアクチュエータ11aと、Y軸方向に延びる固定部材側の駆動部10cとX軸方向に延びる可動部材側の駆動部10dとを有する2つのアクチュエータ11bとを備えている。そして、可動部材13(撮像素子)をX軸方向に移動させる場合には、2つのアクチュエータ11aの駆動部10b及び2つのアクチュエータ11bの駆動部10cを協調して動かし、Y軸方向に移動させる場合には、2つのアクチュエータ11aの駆動部10a及び2つのアクチュエータ11bの駆動部10dを協調して動かすようにする。
本実施例では、固定部材12の貫通孔12aの面積を出来る限り小さくして、微動機構全体を小さくするために、固定部材側の駆動部10a,10cと、可動部材側の駆動部10b,10dとで、基板1の長さ及び幅を異ならせている。具体的には、駆動部11a,11cでは、基板1の長さは10mm、幅は800μmであり、駆動部11b,11dでは、基板1の長さは9mm、幅は400μmである。
上記の構成により、可動部材13をX軸方向及びY軸方向にそれぞれ±1.0μmづつ移動させることができた。また、撮像素子の画素ピッチを4μmとして、微動機構を動かしながら、4枚の画像を撮影することにより、4倍の画素数の高解像度化像を得ることができた。
(実施形態7)
図20は、本発明の実施形態7に係る微動機構の構成を示す。この微動機構のアクチュエータ11は、角速度センサにより検出された手ブレを打ち消すように撮像素子や光学レンズ等を移動させる手ブレ補正機構に特に好適に用いることができる。
すなわち、上記のような画素ずらしを行う場合には、可動部材13の移動量としては±2.5μmあれば十分であったが、手ブレ補正機構では、撮像素子の10画素に相当する移動量(画素ピッチ2μmの撮像素子を用いる場合は、20μm)が必要となる。そこで、本実施形態では、可動部材13の移動量を増大させるべく、アクチュエータ11が複数(図20では4つ)の駆動部10を備えるようにするとともに、これら複数の駆動部10同士を、基板1における補強部2が設けられた面が同じ方向を向きかつ基板幅方向に互いに平行に並んだ状態で、上記実施形態5で説明した如く、該駆動部10の基板長さ方向の端部にて連結部材23cを介して互いに直列に連結するようにする。そして、一方の端に位置する駆動部10における隣接の駆動部10と連結されていない端部が固定部材12に固定され、他方の端に位置する駆動部10における隣接の駆動部10と連結されていない端部に可動部材13が固定されている。尚、本実施形態では、上記一方の端に位置する駆動部10及び固定部材12は、2つの相隣接する駆動部10同士を連結する連結部材23cと同様の連結部材23dを介して互いに連結固定され、上記他方の端に位置する駆動部10及び可動部材13も、連結部材23eを介して互いに連結固定されている。
上記の構成により、各駆動部10を蛇腹の如く伸縮するようにそれぞれ協調駆動することで、可動部材13のX軸方向の移動量を、全駆動部10の基板幅方向の変位量の総和と同じ量にすることができ、可動部材13の移動量をかなり増やすことが可能になる。
尚、駆動部10の幅が全駆動部10の長さの総和に比して小さくなるため、上記実施形態5で説明したように、可動部材13を高速動作させることが困難になるが、手ブレ補正では、一般的に、画素ずらしの場合にくらべて動作が遅くてもよく、100Hz程度の周波数の電圧で駆動できれば十分である。
図21は、上記図20の微動機構のアクチュエータ11を6つ用いて構成したカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す。この微動機構は、固定部材12の貫通孔12a内に配設された可動部材13及び中間部材14並びに6つの上記アクチュエータ11を備えている。上記可動部材13は、図17の微動機構と同様の撮像素子15を備えているとともに、中間部材14の中央部に設けた貫通孔14a内に配置されている。上記6つのアクチュエータ11のうち2つ(図21では、これら2つのアクチュエータの符号を11aとしている)は、可動部材13を図21のX軸方向に移動させるために用いられている。また、残り4つ(図21では、これら4つのアクチュエータの符号を11bとしている)は、可動部材13を図21のY軸方向に移動させるために用いられている。
具体的には、上記アクチュエータ11aは、上記貫通孔14a内において上記可動部材13のX軸方向両側に1つずつ配置されており、該各アクチュエータ11aにおける一方の端に位置する駆動部10が中間部材14の貫通孔14aの内周面に固定され、他方の端に位置する駆動部10に上記可動部材13が固定されている。これにより、中間部材14は、アクチュエータ11aに対しては、図20の微動機構の固定部材12に相当する。
また、上記アクチュエータ11bは、上記貫通孔12a内において上記中間部材14のY軸方向両外側に2つずつ配置されており、該各アクチュエータ11bにおける一方の端に位置する駆動部10が固定部材12の貫通孔12aの内周面に固定され、他方の端に位置する駆動部10に上記中間部材14が固定されている。これにより、中間部材14は、アクチュエータ11bに対しては、図20の微動機構の可動部材13に相当する。
そして、2つのアクチュエータ11aの各駆動部10の駆動により、可動部材13を中間部材14に対しX軸方向に移動させ、4つのアクチュエータ11bの各駆動部10の駆動により、中間部材14を固定部材12に対しY軸方向に移動させるようにする。これにより、6つのアクチュエータ11の各駆動部10を協調駆動することによって、可動部材13(撮像素子15)を固定部材12(つまり光学レンズ)に対し、光学レンズの光軸と垂直な2軸方向(X軸方向及びY軸方向)に移動させることができるようになる。この可動部材13(撮像素子15)の移動量は、上記の如くかなり大きくなるので、角速度センサにより検出した手ブレを打ち消すように可動部材13を移動させることにより,手ブレを補正することが可能となる。
(実施例16)
本実施例では、図20と同様の微動機構のアクチュエータを作製した。このとき、各アクチュエータにおける各駆動部の基板は、長さ10mm、幅500μm、厚み50μmの大きさとした。また、補強部は、高さ200μm、幅50μm、長さ10mmの大きさとし、第1の電極層の4つの個別電極のそれぞれを、長さ4.5mm、幅220μmの大きさとした。さらに、各駆動部のその他の部分は上記実施例2と同様にした。
そして、上記1つの駆動部において四角形の対角にある2つの頂点にそれぞれ位置する2つ個別電極に−5Vを印加し、残る2つの個別電極に+5Vを印加すると、基板の長さ方向一端側に対して他端側が基板の幅方向に2.5μm変位した。また、印加する電圧を逆にすると、逆向きに2.5μm変位した。すなわち、1つの駆動部で可動部材を5μm移動させることが可能であり、この駆動部を図20のように4つ連結したアクチュエータを用いて微動機構を構成すれば、各駆動部の4つの個別電極に+5V又は−5Vの電圧を印加することにより、可動部材を所定の平面内で20μm四方の範囲で自由に位置決めをすることができるようになる。
さらに、上記アクチュエータを6つ用いて、図21と同様のカメラモジュールの微動機構を構成し、角速度センサにより手ブレの移動量を検出して、手ブレ補正動作を行ったところ、手ブレが良好に補正されて高品質の画像を得ることができた。
本発明のアクチュエータは、カメラモジュールにおいて画素ずらしや手ブレ補正を行うために撮像素子又は光学レンズを移動させる微動機構に有用であるとともに、ハードディスクや光ディスクの読み取りヘッドの微小な位置決め機構、或いはマイクロミラーやマイクロシャッターの駆動機構等にも有用である。
図1は、本発明の実施形態1に係るアクチュエータを示す斜視図である。
図2は、上記アクチュエータの製造方法を示す概略図である。
図3は、α及びβの値について本発明の効果が得られる範囲を示す図である。
図4は、実施例5に係るアクチュエータの駆動部の断面図である。
図5は、実施例6に係るアクチュエータの駆動部における補強部の形成方法を示す概略図である。
図6は、本発明の実施形態3に係るアクチュエータを示す斜視図である。
図7は、本発明の実施形態4に係る微動機構を示す平面図である。
図8は、アクチュエータを駆動したときの変形状態を示す平面図であり、図8(a)は、第1の電極層を2分割した場合を示し、図8(b)は、第1の電極層を4分割した場合を示す。
図9(a)は、撮像素子の拡大平面図であり、図9(b)は、撮像素子を1軸方向に移動させる微動機構を用いて、2倍の画素数の高解像度画像を得る場合の受光部の位置の変化を模式的に示す図である。
図10は、実施例10に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す図である。
図11は、実施例10に係る撮像素子微動機構におけるアクチュエータの駆動部の個別電極に印加する電圧波形を示す図である。
図12は、実施形態5に係るアクチュエータを示す図であり、図12(a)は、2つの駆動部を並列に連結した場合を示し、図12(b)は、2つの駆動部を直列に連結した場合を示す。
図13(a)は、実施例11に係るアクチュエータを示す図であり、(b)は、そのアクチュエータの駆動部を駆動したときの駆動部の変形状態を示す図である。
図14は、実施例12に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す図である。
図15は、実施形態6に係る微動機構を示す図である。
図16は、撮像素子を互いに直交する2軸方向に移動させる微動機構を用いて、4倍の画素数の高解像度画像を得る場合の受光部の位置の変化を模式的に示す図である。
図17は、撮像素子を互いに直交する2軸方向に移動させることが可能なカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す図である。
図18は、実施例14に係るカメラモジュールの光学レンズ微動機構を示す図である。
図19は、実施例15に係るカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す図である。
図20は、実施形態7に係る微動機構の構成を示す図である。
図21は、図20の微動機構のアクチュエータにより構成されたカメラモジュールの撮像素子微動機構を示す図である。
従来のアクチュエータを示す斜視図である。
上記従来のアクチュエータにより構成された微動機構を示す概略図である。
画素ずらし機能を有する従来のカメラモジュールを示す概略図である。
符号の説明
1 基板
2 補強部
3 圧電素子(変位手段)
4 圧電体層
5 第1の電極層
6 第2の電極層
7 光学レンズ
10 駆動部
11 アクチュエータ
12 固定部材
13 可動部材
15 撮像素子