JPWO2005118803A1 - 核酸抽出用容器、固体マトリックスの洗浄方法および洗浄機構、ならびに核酸精製方法 - Google Patents

核酸抽出用容器、固体マトリックスの洗浄方法および洗浄機構、ならびに核酸精製方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、試料から目的核酸を抽出し、かつ抽出した核酸を付着させるための核酸抽出要素(20)と、核酸抽出要素(20)とは別体として形成され、かつ核酸抽出要素(20)を収容しておくための収容槽(27)を有する容器本体と、を備えた核酸抽出用容器(2)に関する。核酸抽出要素(20)は、たとえば目的核酸を担持させるための固体マトリックス(23)と、この固体マトリックス(23)を保持するための保持部材(20)と、を有するものとして構成される。好ましくは、固体マトリックス(23)は、保持部材(20)の垂直軸に対して傾斜した状態で保持させられる。

Description

本発明は、試料から目的核酸を精製するための技術に関する。
核酸の分析は、医療分野において、感染症や遺伝子疾患を遺伝子レベルで診断するために重要な役割を果たしているが、現在においては、医療分野に限らず、農業あるいは食品分野などの様々な分野において応用されている。一般に、核酸の分析は、試料からの核酸の精製、精製された核酸の増幅、および増幅された核酸の検出といったプロセスを経て行われている。各プロセスは、人的コスト、再現性、分析効率を考慮した場合、機械により自動で行えるようにするのが好ましく、理想的には、全てのプロセスを機械により自動で行えるようにするのが好ましい(たとえば特許文献1,2参照)。
核酸の精製の自動機械化を目指したものとして、核酸結合性担体を使用する方法がある。その一例として、核酸結合性シリカ粒子とカオトロピックイオンを用いた方法がある(たとえば特許文献3参照)。この方法は、核酸結合性シリカ粒子および試料中の核酸を遊離する能力をもつカオトロピックイオンを試料と混合して試料中の核酸を核酸結合性シリカ粒子に結合させてから固相と液相を分離した後に、核酸結合性シリカ粒子に結合した核酸を溶離するというものである。しかしながら、固相と液相を分離するためには、遠心分離またはフィルタなどを使用した濾過などの操作を行う必要があり、機械化を実現した際の操作および装置構成が複雑となる。
核酸結合性担体を使用する別の方法としては、磁性を持たせた担体を使用する方法がある(たとえば特許文献4,5参照)。この方法は、磁性を持たせたシリカ粒子に核酸を吸着させ後に磁石によってシリカ粒子を分離し、分離されたシリカ粒子から核酸を溶離させた後に溶離液を回収するものがある。この方法は、遠心分離操作などを行うことなく固相と液相を分離できるために機械による自動化において利点はある。
しかしながら、核酸の回収率が比較的に低い上、その回収率が検体の種類に影響されやすいといった問題がある。しかも、磁性シリカ粒子は、核酸の増幅方法としてPCR(Polymerase Chain Reaction)法を採用したときに、増幅反応の阻害剤となるといった問題が指摘されている。また、核酸を検出する代表的な方法としては、核酸に標識を施し、その標識を光学的手法により測定するものがあるが、この方法を採用した場合には、磁性シリカによって測定誤差が生じ、精製時における磁性シリカ粒子の含有量のバラツキによって再現性が悪化する。
また、核酸の精製方法としては、たとえば核酸を抽出するのに必要な試薬類を固体マトリックスに含浸させたものを利用する方法がある(たとえば特許文献6−8参照)。この方法では、固体マトリックスに対して試料を点着することで目的核酸が抽出される。その後、核酸を増幅させるときに阻害剤になりうる余剰成分が洗浄除去される。より具体的には。余剰成分の洗浄は、ポンチを用いて固体マトリックスの一部を円盤状に打ち抜いた後、打ち抜かれた円盤状の固体マトリックスをマイクロチューブに収容させ、マイクロチューブ内において、円盤状の固体マトリックスから余剰成分が溶離させることにより行われる。
この方法を適用する場合、固体マトリックスの一部を打ち抜く工程が必要となるばかりか、固体マトリックスを打ち抜くためには、固体マトリックスを乾燥させる必要が生じる。そのため、円盤状の固体マトリックスを洗浄する前において相当の時間を必要とする。また、円盤状の固体マトリックスの洗浄は、固体マトリックスから余剰成分を洗浄液中に拡散させる方法であるために、洗浄に相当の時間が必要となる。とくに、十分な洗浄効果を得るためには、マイクロチューブに保持させた洗浄液を繰り返し取り替える必要があるため、この点においても洗浄に要する時間が長くなる。そればかりか、洗浄に要する時間をできるだけ短くするためには、円盤状の固体マトリックスを小さくせざるを得ない。この場合、試料から回収できる目的核酸の量が少なくなる。その結果、核酸の検出感度が低くなり、また目的量の核酸を得るためには増幅時間を長く設定する必要が生じる。
また、円盤状の固体マトリックスを利用する方法では、核酸の増幅が核酸の洗浄を行うためのマイクロチューブにおいて行われるとともに、核酸の分析がマイクロチューブにおいて光学的手法を用いて行われる。そのため、円盤状の固体マトリックスが不当に大きな場合には、円盤状の固体マトリックスが測光路を塞いで核酸の分析を阻害しかねない。このような不具合を生じさせないようにするためには、円盤状の固体マトリックスは、一定以下の大きさ、たとえば2mm以下の大きさに打ち抜かざるを得ず、試料から回収できる目的核酸の量が少なるといったように、上述した不具合が生じる。また、ユーザとしては、2mm以下の大きさに固体マトリックスを打ち抜く作業の負担は大きく、作業効率のよい手法とはいえない。
ところで、PCR法を利用した核酸の増幅は、機械による自動化が進んでおり、既にPCR装置も市販されている。PCR装置としては、核酸の増幅とともに、増幅された核酸の検出を行えるようにしたものが一般的である。
しかしながら、市販のPCR装置を使用する場合には、それ専用の増幅キットを用いる必要がある。一般的な増幅キットは、蓋付きの容器に予めプライマーおよびポリメラーゼなどの試薬を仕込んだものである。そのため、ユーザは、容器の蓋を開けてから容器内に核酸溶液を分注した上で、容器内の反応液を攪拌して蓋を閉めた後、それをPCR装置にセットするといった操作を強いられる。すなわち、一般的な増幅キットは、ユーザによる手操作に依存する部分が大きいためにユーザの負担が大きい上に、ユーザによる手操作が大きく介在するために、分析効率が悪く、ユーザの技量の差に基づく再現性の悪化も懸念される。また、増幅キットにおいて採用されている容器は、通常、樹脂成型によって蓋が一体成型された汎用品であり、PCR装置において蓋を自動的に開閉させることは困難である。そのため、一般的な専用キットを用いる方法では、ユーザの手操作に委ねていた操作を、PCR装置において自動的に行うのは困難である。
核酸の増幅方法としては、PCR法の他に、たとえばICAN(Isothermal and Chimeric Primer-initiated Amplification of Nucleic acid)法あるいはLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法がある。これらの方法は、PCR法に比べ、核酸の精製度を十分に高めなければ、目的核酸を十分に増幅させることができない方法である。したがって、核酸の精製および増幅を機械により自動化する場合においては、PCR法以外に他の増幅方法を採用できるようにするためには、核酸の精製度を高める手法を確立する必要がある。
特開2001−149097号公報 特開2003−304899号公報 特許第2680462号公報 特開昭60−1564号公報 特開平9−19292 号公報 米国特許第5496562号明細書 米国特許第5939259号明細書 米国特許第6168922号明細書
本発明は、核酸の精製、核酸の増幅および核酸の測定といった核酸分析における一連の工程を、機械により自動で行えるようにし、ユーザの負担を軽減するとともに分析効率および再現性を改善することを目的としている。
本発明はさらに、核酸の精製および増幅を機械により自動化できるようにする場合に、種々の増幅方法を採用できる核酸の精製技術を提供することを目的としている。
本発明の第1の側面においては、試料から目的核酸を抽出し、かつ抽出した核酸を担持させるための核酸抽出要素と、上記核酸抽出要素とは別体として形成され、かつ上記核酸抽出要素を収容しておくための収容槽を有する容器本体と、を備えている、核酸抽出用容器が提供される。
好ましくは、核酸抽出要素は、目的核酸を担持させるための固体マトリックスと、この固体マトリックスを保持するための保持部材と、を有するものとして構成される。
固体マトリックスは、たとえば保持部材の垂直軸に対して傾斜した状態で保持部材に保持され、好ましくは、垂直軸に対して水平または略水平な状態で保持される。この場合、固体マトリックスは、円盤状に形成するのが好ましい。
上記垂直軸に対して固体マトリックスが傾斜した状態は、たとえば固体マトリックスに対して保持部材に突き刺すことにより達成することができる。この場合、保持部材は、たとえば端部に向かうほど縮径するテーパ部と、テーパ部から延出するとともに、固体マトリックスに貫通させるためのピン状部と、固体マトリックスがピン状部から離脱するのを抑制するための係止片と、を有するものとして構成される。
また、固体マトリックスは、保持部材の垂直軸に対して平行または略平行な状態で保持部材に保持させてもよい。この場合、固体マトリックスは、シート状に形成するのが好ましい。
上記垂直軸に対して固体マトリックスが平行または略平行な状態は、たとえば保持部材に対して固体マトリックスを吊持させることにより達成することができる。この場合、保持部材は、たとえば固体マトリックスの端部を挟持して固体マトリックスを吊持するための挟持部を有するものとして構成される。
容器本体は、固体マトリックスに付着した余剰な成分を除去するのに必要な洗浄液を保持するための1以上の洗浄槽を有するものとして構成するのが好ましい。この場合、容器本体には、固体マトリックスまたはその周囲に付着した余剰な洗浄液を除去するための余剰洗浄液除去手段を設けるのが好ましい。
余剰洗浄液除去手段は、たとえば吸水性部材を含んでいる。吸水性部材としては、たとえば発泡樹脂、あるいは布などの多孔質体を使用することができる。
本発明の核酸抽出用容器は、たとえば核酸分析装置にセットして使用するカートリッジとして構成される。
核酸分析装置が、収容槽から目的核酸を担持させた核酸抽出要素を取り出して、当該核酸抽出要素を他の部位に移送するための移送部材を備えている場合においては、核酸抽出要素は、たとえば移送部材に係合させるための係合部を有するものとして構成される。この場合、係合部は、たとえば移送部材の先端部を嵌合させるために筒状に形成され、好ましくは、移送部材の先端部を嵌合させたときに、移送部材に弾性力を作用させることを可能とするための1以上の欠落部を有するものとして構成される。1以上の欠落部は、たとえばスリット、切欠および貫通孔のうちの少なくとも1つを含むものとされる。
これに対して保持部材は、たとえば移送部材と係合部との嵌合状態を解除するために利用される突出部を有するものとされ、好ましくは、突出部は、外方側に向けて突出したフランジとして構成される。この場合、収容槽は、たとえば当該収容槽に核酸抽出要素を収容したときに、突出部を係止するための段部を有するものとして構成される。
本発明の第2の側面においては、目的核酸を担持させた固体マトリックスから、洗浄液を用いて目的核酸以外の余剰な成分を除去する方法であって、洗浄液に対して固体マトリックスを相対的に上下方向に移動させることによって、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬される状態と、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬されない状態と、を繰り返す、固体マトリックスの洗浄方法が提供される。
洗浄液に固体マトリックスが浸漬される状態と浸漬されない状態との繰り返しは、上下方向に対して固体マトリックスを傾斜させた状態で行われ、好ましくは、上下方向に対して固体マトリックスを直交または略直交させた姿勢で行われる。
本発明の第3の側面においては、目的核酸を担持させるための固体マトリックスと、この固体マトリックスを保持するための保持部材と、を有する核酸抽出要素を用いて目的核酸を精製する方法であって、上記固体マトリックスに対して試料を含浸させて試料中の目的核酸を上記固体マトリックスに担持させる核酸担持ステップと、上記固体マトリックスに付着した目的核酸以外の余剰な成分を、洗浄液を用いて除去する洗浄ステップと、を含み、かつ、上記洗浄ステップは、洗浄液に対して上記核酸抽出要素を相対的に上下方向に移動させることによって、上記核酸抽出要素が上記洗浄液に浸漬される状態と、上記核酸抽出要素が上記洗浄液に浸漬されない状態と、を繰り返すことにより行われる、目的核酸の精製方法が提供される。
本発明の核酸精製方法においては、核酸抽出要素として、たとえば保持部材の垂直軸に対して傾斜した状態で保持部材に固体マトリックスを保持させたものが用いられる。この場合、洗浄ステップは、たとえば上下方向に対して固体マトリックスを傾斜させた状態で、抽出要素を上下方向に移動させることにより行われる。好ましくは、洗浄ステップは、上下方向に対して、固体マトリックスを直交または略直交させた姿勢で核酸抽出要素を上下方向に移動させることにより行われる。
洗浄ステップは、洗浄液に対する固体マトリックスの繰り返しの浸漬が終了した後に、固体マトリックスに付着した余剰な洗浄液を吸水性部材により除去する作業を含んでいる。
本発明の第4の側面においては、目的核酸を担持させた固体マトリックスから、洗浄液を用いて目的核酸以外の余剰な成分を除去するための機構であって、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬される状態と、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬されない状態と、が繰り返されるように、洗浄液に対して固体マトリックスを相対的に上下方向に移動させるように構成されている、固体マトリックスの洗浄機構が提供される。
本発明の洗浄機構は、たとえば固体マトリックスを、上下方向に対して傾斜させた状態で上下方向に移動させるように構成され、好ましくは、固体マトリックスを、上下方向に対して直交または略直交させた姿勢で上下方向に移動させるように構成される。
ここで、本発明において「試料」とは、動物由来の生物試料(たとえば全血、血清、血漿、尿、唾液、あるいは体液)および動物以外の生物試料を含む概念であり、「核酸」とは、DNAあるいはRNAを意味し、2本鎖DNA、1本鎖DNA、プラスミドDNA、ゲノムDNA、cDNA、外来性寄生生物(ウイルス、細菌、真菌など)由来RNA、内在性RNAを含む概念である。
核酸分析装置の一例を説明するための全体斜視図である。 図1に示した核酸分析装置の内部構成を示す平面図である。 図2のIII−III線に沿う断面図である。 図1のIV−IV線に沿う断面図である。 核酸精製用カートリッジの一例を示す全体斜視図である。 図5のVI−VI線に沿う断面図である。 図7Aは核酸精製用カートリッジにおける核酸抽出要素の全体斜視図であり、図7Bは核酸抽出要素の断面図である。 核酸増幅用カートリッジの全体斜視図である。 図8のIX−IX線に沿う断面図である。 固体マトリックスの洗浄動作を説明するための要部断面図である。 核酸増幅用カートリッジからの蓋の取り外し動作を示す要部断面図である。 蓋を利用した拡散核酸抽出要素の取り出し動作を説明するための要部断面図である。 図13Aは核酸増幅用カートリッジの反応槽に核酸抽出要素を収容する動作を説明するための要部断面図であり、図13Bは反応槽から蓋を取り外す動作を説明するための要部断面図である。 図13BのXIV−XIV線に沿う断面図である。 温調機構および測定機構を説明するための、図2のXV−XV線に沿う断面に相当する断面図である。 核酸分析装置の一例を説明するための内部構成を示す平面図である。 図16のXVII−XVII線に沿う断面図である。 図16のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。 核酸精製用カートリッジの一例を示す全体斜視図である。 図20Aは核酸精製用カートリッジにおける核酸抽出要素を示す斜視図、図20Bはその平面図、図20Cは図20AのXXc−XXc線に沿う断面図である。 核酸精製用カートリッジの容器における図19のXXI−XXI線に沿った断面に相当する断面図である。 容器における収容槽から核酸抽出要素を取り出す操作を示す要部断面図である。 核酸増幅用カートリッジの全体斜視図である。 図24Aは図23のXXIVa−XXIVa線に沿う断面図であり、図24Bは図24Aにおいて蓋を分離した状態を示す断面図である。 ノズルに対するチップの取り付け動作を説明するための要部正面図である。 ノズルに対する核酸抽出要素の取り付け動作を説明するための要部正面図である。 ノズルからのチップの取り外し動作を説明するための要部正面図である。 ノズルからの核酸抽出要素の取り外し動作を説明するための要部正面図である。 核酸増幅用カートリッジの蓋に対する回転部材の挿入動作を示す要部断面図である。 核酸増幅用カートリッジの蓋を取り外す動作を説明するための要部断面図である。 核酸増幅用カートリッジの反応槽に核酸抽出要素を収容する操作を示す要部断面図である。 核酸増幅用カートリッジの蓋を再装着する動作を説明するための要部断面図である。 測定機構を説明するための、図16のXXXIII−XXXIII線に沿う断面に相当する断面図である。 実施例1(PCR法)における蛍光強度の測定結果を示すグラフであり、横軸を温度、縦軸を蛍光強度の微分値として示したものである。 実施例2(ICAN法)における蛍光強度の測定結果を示すグラフであり、横軸をサイクル数、縦軸を蛍光強度として示したものである。 実施例3(LAMP法)における蛍光強度の測定結果を示すグラフであり、横軸をサイクル数、縦軸を蛍光強度として示したものである。
以下においては、本発明について第1および第2の実施の形態として、図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態について、図1ないし図15を参照して説明する。
図1ないし図4に示した核酸分析装置1は、試料中の核酸の精製、抽出された核酸の増幅、および増幅された核酸の分析を自動で行えるように構成されたものであり、図1および図2に示したように、筐体10の内部に、複数の核酸精製用カートリッジ2および核酸増幅用カートリッジ3を同一数だけ装着して使用されるものである。
図5および図6に示したように、核酸精製用カートリッジ2は、核酸分析装置1における核酸の自動精製を可能ならしめるためのものであり、核酸抽出要素20およびカートリッジ本体21を有している。
核酸抽出要素20は、試料中から核酸を抽出するのに利用されるものであり、後述するカートリッジ本体21の収容槽27に収容されている。この核酸抽出要素20は、図7Aおよび図7Bに良く表れているように、保持部材22および固体マトリックス23を有している。
保持部材22は、筒状部24、フランジ部25、および保持部26を有するものであり、たとえば全体が樹脂成型によって形成されている。
筒状部24は、核酸抽出要素20を移動させるときに利用される部分であり(図4および図12参照)、凹部24Aおよび係止ヘッド24Bを有している。凹部24Aは、後述する核酸精製用機構5の挿入ピン50または核酸増幅用カートリッジ3の蓋31におけるピン36Bを嵌合させるためのものである(図4および図12参照)。係止ヘッド24Bは、後述する核酸増幅用カートリッジ3の蓋31における係止爪36Aを嵌合させるためのものであり、半径方向に突出している。
フランジ部25は、後述する核酸精製用カートリッジ2の収容槽27に核酸抽出要素20を収容するときに、収容槽27の段部27A係合させるためのものであり、半径方向の外方側に向けて突出した環状に形成されている(図12参照)。
保持部26は、固体マトリックス23を保持するための部分であり、テーパ部26A、ピン状部26Bおよび係止片26Cを有している。テーパ部26Aは、保持部26に付着した洗浄液を下方に移動させやすくする役割を果たすものである。ピン状部26Bは、固体マトリックス23に貫通させるための部分である。係止片26Cはピン状部26Bを固体マトリックス23に貫通させたときにピン状部26B(保持部26)から固体マトリックス23が離脱するのを防止するためのものである。
保持部材22には、保持部26の若干上方にOリング22Aが固定されている。このOリング22Aは、図13Bに良く表れているように、核酸抽出要素20を核酸増幅用カートリッジ3の反応槽34に収容したときに、反応槽34の内面に密着させるためのものである。すなわち、反応槽34に核酸抽出要素20を収容させた場合には、Oリング22Aが反応槽34の内面と密着する位置よりも下方に密閉空間が形成される。そして、Oリング22Aが保持部26よりも上方に配置されていることから、固体マトリックス23は密閉空間において収容される。
固体マトリックス23は、試料中の核酸を担持させるためのものであり、たとえば濾紙に対して核酸抽出用の試薬類を担持させたものとして構成されている。この固体マトリックス23は、円盤状に形成されている。すなわち、固体マトリックス23は、ピン状部26Bに突き刺された状態で、保持部材22の垂直軸に対して直交するように水平または略水平に支持されている。
ここで、核酸抽出用の試薬類としては、たとえば弱塩基、キレート試薬、陰イオン界面活性剤あるいは陰イオン洗剤および尿酸あるいは尿酸塩の組み合わせ、もしくは核酸吸着用担体および吸着促進剤の組み合わせを挙げることができる。核酸吸着用担体としては、公知の種々のものを使用することができ、典型的にはシリカビーズが使用される。吸着促進剤としては、細胞膜を破壊し、あるいは試料中のタンパク質を変性させ、核酸吸着用担体への核酸の結合に寄与する物質であればよく、たとえばカオトロピック物質(たとえばグアニジンチオシアン酸塩、グアニジン酸塩)を使用することができる。なお、固体マトリックス23は、試料中の核酸を効率良く吸着させることができる構成であればよく、その構成は上述した例には限定されない。
上述の核酸抽出要素20では、後述する核酸増幅用カートリッジ3の反応槽34に核酸抽出要素20を収容させたときに、固体マトリックス23を反応槽34の底から離間させた状態とすることができる。これにより、後述した測光機構8の測光経路上に固体マトリックス23が位置しないようにすることができるため、測光精度を向上させることができる。固体マトリックス23が測光経路上に位置しないため、固体マトリックス23として寸法の大きなものを使用することが可能となる。これにより、固体マトリックス23に対してより多くの核酸を担持させることが可能となり、より効率良く核酸の増幅を行い、また分析精度を向上させることが可能となる。
図5および図6に示したように、カートリッジ本体21は、収容槽27、3つの洗浄槽281〜283、試料保持槽29および余剰液除去槽21Aを有するものであり、たとえば樹脂成型により一体成型されている。
収容槽27は、核酸抽出要素20を収容するためのものであり、核酸抽出要素20のフランジ部25を係止するための段部27Aを有している。この収容槽27は、核酸精製用カートリッジ2の使用前において、上部開口27Bから核酸抽出要素20が離脱しないように、上部開口27Bをアルミニウム薄膜などのシール材により塞いでおくのが好ましい。シール材は、核酸精製用カートリッジ2を使用するときにユーザが剥がすようにしてもよいし、核酸分析装置1において自動的に剥がすようにしてもよい。
各洗浄槽281〜283は、固体マトリックス23に核酸を担持させた後、固体マトリックス23から夾雑物を除去するための洗浄液を保持するためのものである。洗浄液は、核酸精製用カートリッジ2として洗浄槽281〜283に予め仕込んでおくのが好ましいが、核酸分析装置1に仕込んでおいた洗浄液を分析時に洗浄槽281〜283に分注するようにしてもよい。洗浄液としては、たとえば固体マトリックス23からの核酸の溶離作用が少なく、夾雑物の結合を妨げるもの(たとえばグアニジン塩酸塩あるいはエタノール)を使用することができる。3つの洗浄槽281〜283には、同一の洗浄液を保持させてもよいが、異なる洗浄液を保持させてもよい。
なお、各洗浄槽281〜283に予め洗浄液を仕込んでおく場合には、各洗浄槽281〜283の上部開口28A1〜28A3をアルミニウム薄膜などのシール材により塞いでおく必要がある。この場合、各洗浄槽281〜283の上部開口28A1〜28A3を個別に塞いでもよいし、3つの洗浄槽281〜283の上部開口28A1〜28A3を一括して、あるいは3つの洗浄槽281〜283の上部開口28A1〜28A3および収容槽27の上部開口27Bを一括して塞いでもよい。
試料保持槽29は、分析対象(核酸を抽出する対象)となる試料を保持しておくためのものである。試料保持槽29に対する試料の保持は、核酸精製用カートリッジ2を核酸分析装置1にセットする前に行ってもよいし、核酸精製用カートリッジ2を核酸分析装置1にセットした後に行ってもよい。後者の場合、核酸分析装置1において自動的に試料保持槽29に試料が分注されるように構成するのが好ましい。試料としては、たとえば全血、血清、血漿、尿、唾液、あるいは体液を使用することができる。
余剰液除去槽21Aは、核酸抽出要素20における固体マトリックス23を洗浄した後において、核酸抽出要素20、固体マトリックス23および保持部材22の保持部26に付着した余剰な洗浄液を除去するためのものである。この余剰液除去槽21Aには、底壁21Aaおよび前後壁21Ab、21Acに密着して吸水性部材21Ad,21Aeが固定されている。吸水性部材21Ad,21Aeは、たとえば発泡樹脂あるいは布などの多孔質材料により構成されており、核酸抽出要素20を接触させることによって核酸抽出要素20から余剰な洗浄液を吸収除去できるように構成されている。
図8および図9に示したように、核酸増幅用カートリッジ3は、核酸分析装置1における核酸の自動増幅および測定を可能ならしめるためのものであり、カートリッジ本体30および蓋31を有している。
カートリッジ本体30は、4つの試薬類保持槽321〜324、混合槽33、および反応槽34を有するものであり、たとえば樹脂成型により一体成型されている。
各試薬類保持槽321〜324は、核酸の増幅および測定に必要な試薬類を水溶液あるいは懸濁液の状態で保持するためのものである。ここで、各試薬類保持槽321〜324に保持される試薬類の種類は、採用する増幅方法および測定方法に応じて選択される。増幅方法としては、たとえばPCR(Polymerase Chain Reaction)法、ICAN(Isothermal and Chimeric Primer-initiated Amplification of Nucleic acid)法、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法あるいはNASBA(Nucleic acid Sequence Basea Amplification)法を採用することができる。PCR法を採用する場合には、試薬類として、少なくとも2種類のプライマー、dNTP、およびDNAポリメラーゼが使用される。ICAN法を採用する場合には、試薬類として、キメラプライマー、DNAポリメラーゼ、およびRNaseHが使用される。LAMP法を採用する場合には、試薬類として、1種類以上のLAMP用プライマー、dNTP、鎖置換型DNA合成酵素、および逆転写酵素が使用される。NASBA法を採用する場合には、試薬類として、少なくとも2種類のプライマー、dNTP、rNTP、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNaseH、およびRNAポリメラーゼが使用される。一方、測定方法としては、蛍光測定、発色測定、放射性活性測定、あるいは電気泳動を採用することができる。ただし、核酸分析装置1においては蛍光測定が採用されているものとする。この場合、プライマーとしては、蛍光プライマーを使用するのが好ましい。
混合槽33は、試薬類保持槽321〜324に保持された2以上の試薬類を反応槽34に供給する前に混合する際に利用されるものである。
なお、試薬類保持槽321〜324には、試薬類を予め仕込んでおくのが好ましいが、核酸分析装置1に仕込んでおいたものを分析時に試薬類保持槽321〜324に分注するようにしてもよい。この場合、試薬類保持槽321〜324の上部開口32A1〜32A4は、アルミニウム薄膜などのシール材により塞いでおく必要があるが、各試薬類保持槽321〜324の上部開口32A1〜32A4を個別に塞いでもよいし、4つの試薬類保持槽321〜324の上部開口32A1〜32A4を一括して、あるいは4つの試薬類保持槽321〜324および混合槽33の上部開口32A1〜32A4,33Aを一括して塞いでもよい。
反応槽34は、混合試薬および核酸抽出要素20を収容するためのものであるとともに、核酸抽出要素20に担持させた核酸と混合槽33において調整された混合試薬とを反応させる場を提供するものである(図13および図14参照)。この反応槽34は、筒状部35および反応検出部37を有している。
筒状部35は、蓋31が装着される部分であり、その内周面にネジ溝35Aが設けられている。
反応検出部37は、核酸の増幅反応を起こさせる場を提供するとともに、蛍光測定を行うための検出容器としての役割を果たすものである。すなわち、反応検出部37は、後述する測光機構8の発光部80から出射された光が照射される部分である(図15参照)。
蓋31は、反応検出部37の内部を密閉状態とするか否かを選択するためのものであり、反応槽34(筒状部35)に対して着脱自在とされている。より具体的には、蓋31は、回転力を作用させることにより、筒状部35に装着される状態と筒状部35(反応槽34)から完全に分離した状態とを選択できるように構成されている。蓋31は、円筒状の本体部38、フランジ部39および保持部36を有している。
本体部38は、反応槽34における筒状部35のネジ溝35Aに螺合させるためのネジ山38Aと、後述する蓋着脱機構6における回転部材60(図11B参照)を挿入するための凹部38Bと、を有している。凹部38Bの内周面には、複数のリブ38Cが設けられている。複数のリブ38Cは、周方向に一定間隔隔てて上下方向に延びるように設けられている。各リブ38Cの上端部は、上方に向かうほど幅寸法が小さくなるテーパ状に形成されている。
フランジ部39は、反応槽34から取り外した蓋31を移動させるときに、後述する蓋着脱機構6における外套部材61の爪64を係止させるためのものである(図11B参照)。このフランジ部39は、本体部38の上端から半径方向の外方側に向けて突出する円環状に設けられている。
図7Bに示したように、保持部36は、核酸精製用カートリッジ2における核酸抽出要素20を保持するためのものであり、一対の係止爪36Aおよびピン36Bを有している。
一対の係止爪36Aは、核酸抽出要素20における係止ヘッド24Bに係止させるためのものであり、本体部38の底面38Dから下方に突出して設けられている。各係止爪36Aは、先端部にフック部36Aaが設けられており、このフック部36Aaが揺動可能とされている。すなわち、一対の係止爪36Aのフック部36Aa相互は、互いに近接離間可能とされている。
ピン36Bは、核酸抽出要素20における筒状部24の凹部24Aに挿入するためのものであり、本体部38の底面38Dから下方に突出して設けられている。このピン36Bは、核酸抽出要素20を蓋31に保持させるときにガイドとして機能するとともに、蓋31に核酸抽出要素20を保持させた後において蓋31に対する核酸抽出要素20のガタツキを抑制するためのものである。
図1に示したように、核酸分析装置1の筐体10には、蓋11、表示部12および操作部13が設けられている。蓋11は、筐体10の内部が露出する状態と露出しない状態とを選択するためのものであり、筐体10の内部にカートリッジ2,3を出し入れする際には蓋11が開放される一方で、核酸の分析時および装置の非使用時には蓋11は閉じた状態とされる。表示部12は、分析結果などを表示するためのものであり、たとえばLCDにより構成されている。操作部13は、各種の設定を行うために、あるいは分析開始のためなどに操作される部分である。
図2および図3に示したように、筐体10の内部には、後述するピペット装置4、核酸精製用動作機構5、蓋着脱機構6、温調機構7、および測光機構8が設けられている。
ピペット装置4は、主として核酸増幅用カートリッジ3における混合液の調整行うためのものであり、ノズル40を有している。このピペット装置4は、必要に応じて、核酸精製用カートリッジ2に対して試料もしくは洗浄液を供給するために利用される。
ノズル40は、液体を吸引・吐出可能なように、図外のポンプに接続されており、ノズル40の内部に吸引力を作用させる状態と吐出力を作用させる状態とが選択されるように構成されている。このノズル40は、ロボットアームなどの駆動機構(図示略)により上下方向および水平に移動可能とされており、その動作がCPUなどによって構成された制御部10によって制御される。ノズル40は、核酸増幅用カートリッジ3における試薬類保持槽321〜324、混合槽33、反応槽34、および核酸精製用カートリッジ2の収容槽27に移動することができる。ノズル40は、混合試料の調整および反応槽34(反応検出部37)への混合試料の分注を行う場合には、図3に示したように先端部42にチップ43が装着される。チップ43は、図2に示したようにノズル40(ピペット装置4)の待機位置の隣接した部位において、ラック44において保持されている。このラック44に隣接した部位には、使用済みのチップ43を廃棄するための廃棄ボックス45が配置されている。
図2〜図4および図10に示したように、核酸精製用動作機構5は、核酸精製用カートリッジ2の核酸抽出要素20を利用して試料中の核酸を抽出する際に、核酸抽出要素20の動作を制御するためのものである。この核酸精製用動作機構5は、複数の挿入ピン50、筒状体51および支持フレーム52を有している。
複数の挿入ピン50は、核酸抽出要素20の筒状部24に嵌合させるためのものであり、支持フレーム52に対して一体動可能に支持されている。
筒状体51は、挿入ピン50に装着された核酸抽出要素20を取り外すためのものであり、挿入ピン50とは独立して上下方向に移動可能なように挿入ピン50を外套している。すなわち、筒状体51は、挿入ピン50から核酸抽出要素20を取り外す動作を行うとき以外は、核酸抽出要素20よりも上方(待機位置)に位置する一方で、挿入ピン50から核酸抽出要素20を取り外す動作を行うときには、挿入ピン50に対して相対的に下方に移動させられる。
支持フレーム52は、複数の挿入ピン50を、複数の核酸精製用カートリッジ2の並び方向に一定間隔隔てて支持するとともに、それらの挿入ピン50を移動せるための媒体として機能するものである。この支持フレーム52は、図外の駆動機構によって上下方向および前後方向に移動可能とされており、その動作は、たとえば図2に示した制御部10によって制御される。そのため、複数の挿入ピン50ひいてはそれらに装着された核酸抽出要素20は、支持フレーム52とともに上下および前後方向に移動することができる。これにより、複数の核酸抽出要素20は、固体マトリックス23に対する試料の含浸および固体マトリックス23の洗浄および余剰液の除去を一括して同時に行うことができる(図10参照)。
図11および図13に示したように、蓋着脱機構6は、核酸増幅用カートリッジ3の反応槽34から蓋31を取り外し、あるいは反応槽34に蓋31を装着するためのものであり、回転部材60および外套部材61を有している。回転部材60および外套部材61は、図外の駆動機構によって上下および水平方向に移動可能とされており、制御部10(図2参照)によってその動作が制御されるように構成されている
回転部材60は、核酸増幅用カートリッジ3の蓋31に回転力を作用させるとともに、蓋31を保持して蓋31を移動させるためのものであり、略円柱状の先端部62を有している。回転部材60の先端部62には、複数のリブ63が形成されている。複数のリブ63は、先端部62の周方向において、一定間隔隔てて上下方向に延びるように設けられており、各リブ63の下端部は、下方に向かうほど幅寸法が小さくなるテーパ状に形成されている。これらのリブ63は、図14に示すように蓋31の複数のリブ38Cに係合させるためのものであり、蓋31の凹部38Bに先端部62を挿入したときに、凹部38Bにおける互いに隣接するリブ38Cの間に位置するようになされている。
この構成では、回転部材60の先端部62を回転させたときに、先端部61のリブ63と凹部38Bのリブ38Cとが相互に干渉しあうので、先端部62が蓋31の凹部38Bにおいて空回転することを抑制でき、回転部材60の回転力を、蓋31に対して適切に付与することができる。また、凹部38Bにおける複数のリブ38Cの上端部が上方向に向うほど幅が細くなるテーパ状とされている一方で、回転部材60の先端部61における複数のリブ63は下端部が下方向に向うほど幅が細くなるテーパ状とされている。そのため、蓋31の凹部38Bに対しては、容易かつ確実に回転部材60の先端部61を挿入することができる。
外套部材61は、回転部材60を外套するものであり、円筒状に形成されている。この外套部材61は、フランジ部39に係止させるための爪64を有している。この爪64は、先端部64にフック部65が設けられたものであり、フック部65が揺動可能とされている。爪64は、回転部材60の先端部62を蓋31の凹部38Bに挿入したときに、蓋31のフランジ部39に係止させられる。これにより、回転部材60に蓋31が一体化され、回転部材60および外套部材61を移動させることによって蓋31を移動させることができる。また、爪62は、回転部材60によって蓋31を反応槽34に再装着するときに、自動的に蓋31のフランジ部39との係止状態が解除されるように構成されている。
図15に示したように、温調機構7は、ヒートブロック70の温度制御をすることによって核酸増幅用カートリッジ3の反応検出部37に保持された液体の温度を制御するためのものである。ヒートブロック70の温度は、図外の温度センサによってモニタリングされており、温度センサでのモニタリング結果に応じて、ヒートブロック70の温度がフィードバック制御されるように構成されている。ヒートブロック70には、核酸増幅用カートリッジ3の反応検出部37の外観形状に対応した凹部71が形成されている。これにより、ヒートブロック7において反応槽34を選択的かつ効率的に温調することができる。ヒートブロック70にはさらに、凹部71に繋がる直線状の貫通孔72,73が設けられている。貫通孔72は後述する測光機構8の発光部80において出射された光を反応槽34の反応検出部37に導くためのものであり、貫通孔73は反応検出部37を透過した光を受光部81に導くためのものである。
測光機構8は、発光部80および受光部81を有している。発光部80は、貫通孔72を介して、反応検出部37に励起光を照射するためのものである。受光部81は、貫通孔73を介して、反応検出部37に励起光を照射したときの蛍光を受光するためのものである。測光機構8では、発光部80から連続的に励起光を照射する一方で、受光部81において連続的に蛍光の量をモニタリングすることにより、リアルタイムで核酸の増幅の程度を把握することができる。
次に、核酸分析装置1における動作を説明する。
核酸分析装置1において核酸の分析を行う場合には、まず図1ないし図4に示したように、核酸分析装置1に核酸精製用カートリッジ2および核酸増幅用カートリッジ3をセットする。セットするカートリッジ2,3の個数は、核酸精製用カートリッジ2の個数と核酸増幅用カートリッジ3の個数が同一であれば何個でもよい。なお、以下の説明においては、核酸精製用カートリッジ2として洗浄槽281〜283には予め洗浄液が保持されたものを使用し、試料保持槽29には核酸精製用カートリッジ2を核酸分析装置1にセットする前に試料を保持させておいたものとする。
次いで、核酸分析装置1にセットしたカートリッジ2,3の個数、およびカートリッジ2,3の種類(精製方法、増幅方法、測定方法)に応じた設定を、核酸分析装置1に設けられた表示部12を確認しつつ操作部13を操作することにより行う。上記設定が終了した場合には、核酸分析装置1において自動的に核酸の精製、増幅および測定が行われる。
図4に示したように、核酸の精製は、核酸精製用カートリッジ2において、核酸精製用動作機構5によって核酸抽出要素20を移動させることにより行われる。
より具体的には、まず、核酸精製用動作機構5の挿入ピン50を核酸精製用カートリッジ2における容器21の収容槽27の直上に位置させた状態とした上で、支持フレーム52を駆動して挿入ピン50を下動させた後に上動させる。挿入ピン50を下動させることにより、核酸抽出要素20の筒状部24に挿入ピン50が嵌合されて核酸精製用動作機構5に複数の核酸抽出要素20が一体化され、挿入ピン50を上動させることにより核酸抽出要素20が核酸精製用動作機構5によって持ち上げられる。
次いで、図10に示したように、支持フレーム52とともに挿入ピン50を移動させ、核酸精製用カートリッジ2における試料保持槽29に保持させた試料29Lに、核酸抽出要素20の固体マトリックス23を浸漬する。これにより、固体マトリックス23に試料29Lの核酸が担持する。
次いで、3つの洗浄槽281〜283に保持させた洗浄液28L1〜28L3に、固体マトリックス23を順次浸漬する。より具体的には、固体マトリックス23の洗浄は、核酸精製用動作機構5によって、各洗浄槽28において固体マトリックス23を繰り返し上下動させることにより行われる。このとき、核酸精製用動作機構5においては、固体マトリックス23が洗浄液28L1〜28L3に完全に浸漬する状態と、固体マトリックス23が洗浄液28L1〜28L3の液面よりも上方に位置する状態とが繰り返えされるように制御される。
このような洗浄方法では、固体マトリックス23が液面よりも上方に位置する状態から洗浄液28L1〜28L3に浸漬されるように下方に移動させられるときに、固体マトリックス23が液面に叩き付けられる。このとき、固体マトリックス23が水平または略水平に支持されているために、固体マトリックス23には大きな負荷が作用する。その一方で、固体マトリックス23が洗浄液28L1〜28L3の内部を移動させられるときには、固体マトリックス23が水平または略水平に支持されているために固体マトリックス23の大きな移動抵抗が作用し、これが洗浄液に対流を生じさせる負荷として作用する。これらの作用により、固体マトリックス23からは、夾雑物を効率良く除去することができる。これにより、後において行われる核酸の増幅工程において夾雑物が核酸の増幅を阻害することを効果的に抑制し、核酸の分析を精度良く行えるようになる。このような効果は、固体マトリックス23を水平状態で移動させる場合に限らず、垂直軸に対して固体マトリックス23を傾斜させた状態で移動させた場合に得ることができる。
最後に、核酸抽出要素20の先端部分を余剰液除去槽21Aに保持させた吸水性部材21Ad,21Aeに接触させる。吸水部材21Adは、余剰液除去槽21Aの底壁21Aaおよび前後壁21Ab,21Acに接触して配置されているため、それらの全ての吸水部材21Adに核酸抽出要素20の先端部を接触させた場合には、核酸抽出要素20の先端部、主として固体マトリックス23および保持部材22の保持部26から余剰な洗浄液が効率良く除去される。その結果、後において核酸抽出要素20を用いて核酸の増幅を行う際に、洗浄液に含まれる不純物が核酸増幅を阻害することを抑制することができる。
なお、洗浄の終了した固体マトリクス23は、核酸精製用動作機構5に保持された状態で送風乾燥させてもよい。固体マトリックス23の洗浄が終了(場合によって送風乾燥が終了)した場合には、挿入ピン50から核酸抽出要素20を取り外し、核酸抽出要素20を核酸精製用カートリッジ2の収容槽27に再収容させる。挿入ピン50からの核酸抽出要素20の取り外しは、上述したように、核酸精製用動作機構5の筒状体51を下動させ、係止ヘッド24Bに筒状部51を干渉させることにより行われる。
このように、核酸精製用カートリッジ2においては、核酸を固体(核酸抽出要素20)に担持させることによって、固体マトリックス23を核酸分析装置1において容易に移動させることができる。この点において、核酸精製用カートリッジ2は、核酸分析を自動で行うことに寄与しているといえる。
核酸の増幅は、核酸増幅用カートリッジ3において混合試薬を調整し、それを核酸増幅用カートリッジ3の反応槽34に分注した後、核酸を担持させた固体マトリックス23を、保持部材22とともに反応槽34に収容させることにより行われる。なお、反応槽34において混合試薬と固体マトリックス23が共存させられた場合には、採用する増幅方法の種類に応じて、ヒートブロック70(図15参照)の温度を制御して反応槽34の温調が行われる。
混合試薬の調整は、ピペット装置4におけるノズル40の先端部42にチップ43を装着した上で、核酸増幅用カートリッジ3における試薬類保持槽321〜324に保持された試薬類を順次、混合槽33に所定量ずつ分注した後、ピペット装置4によるピペッティング操作によって分注液を混合することにより行われる(図3参照)。
反応槽34に対する混合液の分注は、蓋着脱機構6によって反応槽34から蓋31を取り外しておいた上で、ピペット装置4によって行われる。図11Aおよび図11Bに示したように、蓋着脱機構6における蓋31の取り外しは、蓋着脱機構6の回転部材60の先端部62を蓋31の凹部38Bに挿入した後に、回転部材60を回転させつつ上動させることにより行われる。回転部材60を凹部38Bに挿入した場合には、外套部材61における爪64のフック部65が蓋31のフランジ部39に係止される。そのため、反応槽34から取り外された蓋31は、回転部材60および外套部材61とともに移動させることができる。このように、核酸分析装置1および核酸増幅用カートリッジ3においては、核酸の増幅ひいては核酸分析の全自動化を達成するために、核酸増幅用カートリッジ3から蓋31を容易かつ確実に取り外せるように工夫がなされている。
一方、反応槽34への固体マトリックス23の収容は、蓋着脱機構6および核酸増幅用カートリッジ3の蓋31を利用して行われる。より具体的には、固体マトリックス23の収容は、図12および図13に示したように、蓋31への核酸抽出要素20の保持、および反応槽34への蓋31の再装着といった一連の操作によって行われる。
図7Bおよび図12に示したように、蓋31への核酸抽出要素20の保持は、蓋着脱機構6によって蓋31を核酸精製用カートリッジ2における収容槽27の上方に位置させた後に蓋31を下動させることにより行われる。蓋31を下動させる過程においては、蓋31のピン36Bは、核酸抽出要素20における筒状部24の凹部24Aに挿入される。これにより、蓋31と核酸抽出要素20の筒状部24との位置関係が規制され、蓋31における一対の係止爪36Aは、筒状部24の係止ヘッド24Bに対応する位置に適切に導かれる。これにより、一対の係止爪36Aは、上方から係止ヘッド24Bに押し付けられる。その結果、一対の係止爪36Aは、それらのフック部36Aaが互いに離間するように変位させられる。さらに一対の係止爪36Aを下方に移動させた場合には、蓋31のピン36Bが筒状部24の凹部24Aにさらに深く挿入されるとともに、フック部36Aaが係止ヘッド24Bの下方に位置するときにフック部36Aaが互いに近づく。その結果、一対の係止爪36Aは、係止ヘッド24Bに係止させられ、蓋31に対して核酸抽出要素20が保持される。この状態は、蓋31のピン36Bが筒状部24の凹部24Aに挿入されていることにより強固に維持され、蓋31に対する核酸抽出要素20のガタツキを抑制することができる。
図13に示したように、蓋31の再装着は、蓋31を保持した回転部材60を、反応槽34に蓋31を位置合わせした状態において回転させることにより行われる。すなわち、位置合わせ状態において蓋31に対して回転力を付与することにより、蓋31は、反応槽34の筒状部35に螺合される。蓋31が筒状部35に螺合された場合には、外套部材61の爪64が蓋31のフランジ部39に係止した状態が解除される。これにより、回転部材60および外套部材61は、蓋31とは独立して移動することができる。一方、蓋31には核酸抽出要素20が保持されているために、反応槽34には核酸抽出要素20が収容される。上述のように、核酸抽出要素20には、保持部26の若干上方位置にOリング22Aが配置されているため、核酸抽出要素20の固体マトリックス23は、密閉空間において、反応槽34の底から一定距離離間した位置に固定される。反応検出部37には、先に混合試薬が収容されているので、反応検出部37においては、固体マトリックス23の全体が浸漬される。これにより、固体マトリックス23から核酸が溶出する一方で、溶出した核酸が試薬類と反応して増幅する。
このように、核酸分析装置1では、蓋31の着脱に必要な蓋着脱機構6を利用して、収容槽27の核酸抽出要素20を反応槽34に移送して収容させることができる。すなわち、核酸分析装置1では、核酸抽出要素20を移送させるために個別の機構を設ける必要はない。そのため、核酸の精製および核酸の増幅を1つの装置において行うに当たって、装置が複雑化することを回避して装置の大型化を抑制し、また制御すべき動作機構の数の増加を抑制することができるようになるため、この点においても有利である。
図15に示したように、核酸の測定は、反応槽34の上方を遮光部材9によって覆った状態とした後において、測光機構8によって行われる。
測光機構8においては、反応槽34における反応検出部37に対して発光部80によって励起光を照射する一方で、そのときの反応検出部37において生じる蛍光を、受光部81において受光する。上述したように、固体マトリックス23が測光機構8における測光を阻害しない位置にセットされるため、核酸分析装置1においては核酸の測定を精度良く行うことが可能となる。
以上に説明したように、核酸分析装置1においては、上述した構成の核酸精製用カートリッジ2および核酸増幅用カートリッジ3のセットを装着するだけで自動的に核酸の分析を行うことができる。核酸精製用カートリッジ2および核酸増幅用カートリッジ3においても、自動的に核酸の分析を行えるように様々な工夫がなされている。このため、核酸分析装置1、核酸精製用カートリッジ2および核酸増幅用カートリッジ3を用いた場合には、核酸の抽出操作および核酸の増幅操作において、カートリッジ2,3を核酸分析装置1にセットする以外に、ユーザの手操作に依存する部分がなくなる。そのため、核酸分析におけるユーザの負担が著しく軽減されるとともに、ユーザの技量差によって核酸の回収率がばらつくなどして測定再現性が悪化することもない。
本発明は、上述した実施の形態において説明した例には限定されない。たとえば核酸抽出要素の固体マトリックスは、必ずしも保持部材の垂直軸に対して水平または略水平な状態となるように保持させる必要はなく、固体マトリックスは必ずしも円盤状の形態に形成する必要もなく、また保持部材に固体マトリックスを保持させる構成も固体マトリックスを突き刺す構成には限定されない。さらには、核酸増幅用カートリッジにおける蓋は、必ずしもカートリッジ本体に対して完全に分離可能なように構成する必要はなく、カートリッジ本体に付属したまま反応槽の上部開口を開閉するものであってもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態について、図16ないし図33を参照して説明する。ただし、以下において参照する図面には、先に説明した本発明の第1の実施の形態と同様な要素について同一の符号を付してあり、それらについての重複説明は省略するものとする。
図16ないし図18に示した核酸分析装置1′は、先に説明した核酸分析装置1(図1など参照)と同様に、複数の核酸精製用カートリッジ2′および核酸増幅用カートリッジ3′を同一数だけ装着して使用するものであり、図17に示したようにピペット装置4′および核酸精製用動作機構5′を備えている。
図19に示したように、核酸精製用カートリッジ2′は、核酸分析装置1′における核酸の自動精製を可能ならしめるためのものであり、核酸抽出要素20′およびカートリッジ本体21′を有している。
核酸抽出要素20′は、試料中の核酸を担持させるためのものであり、図20A〜図20Cに良く表れているように、保持部材22′および固体マトリックス23′を有している。保持部材22′は、筒状部24′、フランジ部25′、および挟持部26′を有するものであり、たとえば全体が樹脂成型によって形成されている。
筒状部24′は、核酸抽出要素20′を移動させるときに利用されるものであり(図18および図22参照)、凹部24A′、欠落部24B′,24C′、および複数のリブ24D′を有している。凹部24A′は、後述するピペット装置4′におけるノズル40′の先端部42′(図26Aおよび図26B参照)あるいは核酸精製用機構5′の挿入ピン50′(図18参照)を嵌合させるためのものであり、円柱状に形成されている。欠落部24B′,24C′は、筒状部24′に弾性を付与するためのものであり、一対のV字状切欠24B′および矩形貫通孔24C′を含んでいる。すなわち、欠落部24B′,24C′は、凹部24A′にノズル40′の先端部42′あるいは挿入ピン50′を嵌合させたときに(図18および図22参照)、それらに弾性力を作用させて嵌合の確実化を図る役割を有している。複数のリブ24D′は、凹部24A′にノズル40′の先端部42′あるいは挿入ピン50′を嵌合させたときに、それらに摩擦力を作用させて嵌合の確実化を図るためのものであり、筒状部24′の内面において上下方向に延びるように形成されている。
フランジ部25′は、半径方向の外方側に向けて突出した環状に形成されている。このフランジ部25′は、核酸抽出要素20′を目的部位(核酸精製用カートリッジ2′の収容槽27および核酸増幅用カートリッジ3′の反応槽34′)に保持させておくときに、目的部位に設けられた段部27A,36′に係止するためのものである(図21および図33参照)。
挟持部26′は、固体マトリックス23′の端部を挟持して、保持部材22′に固体マトリックス23′を一体化させるためのものであり、一対の爪26a′により構成されている。一対の爪26a′は、核酸の回収効率を高めるために、固体マトリックス23′との接触面積が極力小さくなるように形成するのが好ましい。これは、固体マトリックス23′には、後述するように核酸が付着させられた後にその核酸が溶離・回収されるのであるが、一対の爪26a′が固体マトリックス23′と接触する部分に存在する核酸の溶離は容易ではないからである。
固体マトリックス23′は、試料中の核酸を担持させるためのものであり、たとえば濾紙に対して核酸抽出用の試薬類を担持させたものとして構成されている。この固体マトリックス23′は、短冊状に形成されており、挟持部26′に端部が挟持されることによって保持部材22′に吊持されている。
図19および図21に示したように、カートリッジ本体21′は、先に説明した核酸精製用カートリッジ2のカートリッジ本体21(図5および図6参照)と同様に、収容槽27、3つの洗浄槽281〜283、および試料保持槽29を有するものであるが、余剰液除去槽21A(図5および図6参照)は省略されている。もちろん、カートリッジ本体21′においても、余剰液除去槽を設けてもよい。
図23、図24Aおよび図24Bに示したように、核酸増幅用カートリッジ3′は、核酸分析装置1′における核酸の自動増幅および測定を可能ならしめるためのものであり、カートリッジ本体30′および蓋31′を有している。
カートリッジ本体30′は、5つの試薬類保持槽32′、混合槽33′、および反応槽34′を有するものであり、これらの槽32′,33′,34′は、たとえば樹脂成型により一体成型されている。
各試薬類保持槽32′は、核酸の増幅および測定に必要な試薬類を水溶液あるいは懸濁液の状態で保持するためのものである。各試薬類保持槽32′は、横断面が略矩形となっているが、正確には、4つの側面32A′の中央部が内方に向けて突出した形態となっている。すなわち、試薬類保持槽32′の四隅部は、90度以下の鋭角となっている。これにより、試薬類保持槽32′の側面32A′に試薬類が付着したままの状態となることを抑制でき、試薬類保持槽32′の底部に試薬類を保持させておくことができる。その結果、試薬類保持槽32′に保持された試薬類を有効に利用できるようになり、たとえ高価な試薬を使用する場合であっても、試薬類保持槽32′に保持させておくべき試薬の量を少なくして製造コストを低減することが可能となる。このような効果は、試薬類保持槽32′の側面32A′に溝やリブを設けることによっても得ることができる。
ここで、各試薬類保持槽32′に保持される試薬類の種類は、採用する増幅方法および測定方法に応じて選択される。増幅方法としては、たとえばPCR法、ICAN法、LAMP法あるいはNASBA法を採用することができる。
混合槽33′は、反応槽34′に供給する前に、試薬類保持槽32′に保持された2以上の試薬類を混合して混合試薬を調整する際に利用されるものである。この混合槽33′もまた、先に説明した試薬類保持槽32′と同様に、四隅部の角度が90度以下の鋭角とされている。もちろん、混合槽33′の側面33A′に溝やリブを設けてもよい。
反応槽34′は、混合試薬および核酸抽出要素20′を収容するためのものであるとともに、核酸抽出要素20′に担持させた核酸と混合槽33′において調整された混合試薬とを反応させる場を提供するものである(図33参照)。この反応槽34′は、筒状部35と反応検出部37を有しており、これらの間に段部36′が設けられている。この段部36′は、核酸抽出要素20′のフランジ部25′を係止させるための部分であり(図33参照)、反応検出部37の径を筒状部35の径よりも小さく設定することにより設けられている。
蓋31′は、反応検出部37の内部を密閉とするか否かを選択するためのものであり、反応槽34′(筒状部35)に対して着脱自在とされている。より具体的には、蓋31′は、回転力を作用させることにより、筒状部35に装着される状態と筒状部35(反応槽34)から完全に分離した状態とを選択できるように構成されている。蓋31′は、先に説明した核酸増幅用カートリッジ3の蓋31(図9参照)と同様に、円筒状の本体部38およびフランジ部39を有している。ただし、核酸分析装置1′では、ピペット装置4′のノズル40′を利用して核酸抽出要素20′を移動させるように構成されているため、蓋31′においては、先に説明した核酸増幅用カートリッジ3の蓋31に設けられていた保持部36(図7Bおよび図9参照)は省略されている。
図16および図17に示したピペット装置4′は、核酸増幅用カートリッジ3′での混合液調整、混合液の反応槽34′への移動を行うためのものである。このピペット装置4′は、図25ないし図28に示したように、ノズル40′および取り外し部材41′を有している。
ノズル40′は、液体を吸引・吐出可能であるとともに、上下方向および水平に移動可能とされており、核酸増幅用カートリッジ3′における試薬類保持槽32′、混合槽33′、反応槽34′、および核酸精製用カートリッジ2′の収容槽27に移動することができるようになされている(図16および図17参照)。ノズル40′は、混合試料の調整および反応槽34′(反応検出部37)への混合試料の分注を行う場合には、図25Aおよび図25Bに示したように先端部42′にチップ43が装着される。ノズル40′の先端部42′におけるチップ43を装着する部分には、Oリング42a′が嵌め込まれており、先端部42′にチップ43を装着したときに、先端部42′とチップ43との接触部分の密着性が高められるようになされている。
ピペット装置4′はさらに、図22に示したように、核酸精製用カートリッジ2′の収容槽27から核酸抽出要素20′を取り出し、この核酸抽出要素20′を、図31に示したように、核酸増幅用カートリッジ3′の反応槽34′に移動させる役割を有している。このような動作を行う場合には、図26Aおよび図26Bに示したように、ノズル40′の先端部42′に核酸抽出要素20′が装着される。
図27および図28に示したように、取り外し部材41′は、ノズル40′の先端部42′に装着されたチップ43あるいは核酸抽出要素20′を取り外すためのものである。この取り外し部材41′は、ノズル40′とは独立して上下方向に移動可能なように、ノズル40′を外套している。すなわち、取り外し部材41′は、ノズル40′の先端部42′からチップ43あるいは核酸抽出要素20′を取り外す動作を行うとき以外は、チップ43の端面43aあるいは核酸抽出要素20′のフランジ部25′よりも上方(待機位置)に位置する一方で、それらを取り外す動作を行うときには、ノズル40′に対して相対的に下方に移動させられる。取り外し部材41′を待機位置から下方に一定距離以上移動させた場合には、取り外し部材41′の端面41A′がチップ43の端面43aあるいは核酸抽出要素20′のフランジ部25′に干渉してチップ43あるいは核酸抽出要素20′に下方に向けた力が作用させられる。これにより、ノズル40′の先端部42′からチップ43あるいは核酸抽出要素20′が取り外される。
図16ないし図18に示したように、核酸精製用動作機構5′は、核酸抽出要素20′を利用して試料中の核酸を抽出する際に、核酸抽出要素20′の動作を制御するためのものである。この核酸精製用動作機構5′は、先に説明した核酸分析装置1の核酸精製用動作機構5(図2〜図4参照)と同様に、複数の挿入ピン50′、筒状体51および支持フレーム52を有している。ただし、各挿入ピン50′は、核酸抽出要素20′の筒状部24′に適切に嵌合できるように、ノズル40′の先端部42′と類似した形状とされている。
次に、核酸分析装置1′における動作を説明する。
核酸分析装置1′では、図16ないし図18に示したように、核酸分析装置1′に核酸精製用カートリッジ2′および核酸増幅用カートリッジ3′をセットした上で、カートリッジ2′,3′の個数および種類(精製方法、増幅方法、測定方法)に応じた設定を行うことにより自動的に核酸の精製、増幅および測定が行われる。
核酸の精製は、図18に示したように、核酸精製用カートリッジ2′において、核酸精製用動作機構5′によって核酸抽出要素20′を移動させることにより行われる。より具体的には、まず、核酸精製用動作機構5′の複数の挿入ピン50′を、対応する核酸抽出要素20′の筒状部24′に嵌合させ、複数の核酸抽出要素20′を一体化的に移動可能な状態とする。この状態において、核酸精製用動作機構5′によって複数の核酸抽出要素20′の固体マトリックス23′を試料に浸漬させて各固体マトリックス23′に試料中の核酸を付着させる。
最後に、3つの洗浄槽281〜283(図19参照)の洗浄液に、固体マトリックス23′を順次浸漬する。より具体的には、固体マトリックス23′の洗浄は、核酸精製用動作機構5′によって、各洗浄槽281〜283(図19参照)において固体マトリックス23′を繰り返し上下動させることにより行われる。このとき、核酸精製用動作機構5′は、固体マトリックス23′が洗浄液に完全に浸漬する状態と、固体マトリックス23′が洗浄液の液面よりも上方に位置する状態とが繰り返えされるように制御される。このような洗浄方法では、固体マトリックス23′からは、夾雑物を効率良く除去することができるため、後において行われる核酸の増幅工程において夾雑物が核酸の増幅を阻害することを効果的に抑制し、核酸の分析を精度良く行えるようになる。
なお、洗浄の終了した固体マトリクス23′は、核酸精製用動作機構5′に保持された状態で送風乾燥させてもよい。固体マトリックス23′の洗浄が終了(場合によって送風乾燥が終了)した場合には、挿入ピン50′から核酸抽出要素20′を取り外し、核酸抽出要素20′を核酸精製用カートリッジ2′の収容槽27に再収容させる(図19および図21参照)。
核酸精製用カートリッジ2′においては、目的核酸を固体(核酸抽出要素20′)に担持させることによって、目的核酸を核酸分析装置1′において容易に移動させることができる。この点において、核酸精製用カートリッジ2′は、核酸分析を自動で行うことに寄与しているといえる。
核酸の増幅は、核酸増幅用カートリッジ3′において混合試薬を調製し、それを核酸増幅用カートリッジ3′の反応槽34′に分注した後、核酸を担持させた固体マトリックス23′を、保持部材22′とともに反応槽34′に移送させることにより行われる。なお、図33に示したように、反応槽34′において混合試薬と固体マトリックス23′が共存させられた場合には、採用する増幅方法の種類に応じて、ヒートブロック70の温度を制御して反応槽34′の温調が行われる。
混合試薬の調製および反応槽34′に対する混合試薬の分注は、先に説明した核酸分析装置1(図1など参照)と同様にピペット装置4′の動作を制御することにより行われる。なお、反応槽34′に混合試薬を分注する場合には、図31に示したように、蓋着脱機構6によって反応槽34′から蓋31′を取り外しておく必要があるが、そのような蓋31′の取り外しは、図29および図30に示したように、蓋着脱機構6の回転部材60を蓋31′の凹部38B′に挿入した後に、回転部材60を回転させつつ上動させることにより行われる。回転部材60を凹部38B′に挿入した場合には、回転部材60の爪62が蓋31′のフランジ部39′に係止されるので反応槽34′から取り外された蓋31′は、回転部材60とともに移動させることができる。このように、核酸分析装置1′および核酸増幅用カートリッジ3′においては、核酸の増幅ひいては核酸分析の全自動化を達成するために、核酸増幅用カートリッジ3′から蓋31′を容易かつ確実に取り外せるように工夫がなされている。
一方、固体マトリックス23′の反応槽34′への移送は、核酸精製用カートリッジ2′の収容槽27からの核酸抽出要素20′の取り出し(図22参照)、核酸増幅用カートリッジ3′の反応層34′への核酸抽出要素20′の移動、およびノズル40′からの核酸抽出要素20′の取り外し(図28および図31参照)といった一連の操作によって行われる。
核酸抽出要素20′の取り出しは、図22に示したように、核酸精製用カートリッジ2′における収容槽27の直上にノズル40′を位置させた後にノズル40′を下動させてノズル40′の先端部42′を核酸抽出要素20′の筒状部24′に嵌合させた後に、ノズル40′を上動させることにより行われる。ここで、筒状部24′には、V字状切欠24B′および矩形貫通孔24C′といった欠落部24B′,24C′が形成されている(図20A〜図20C参照)。そのため、筒状部24′にノズル40′の先端部42′を嵌合させた場合には、先端部42′に対して適切な弾性力を付与することができる。これにより、核酸抽出要素20′は、筒状部24′において、ノズル40′の先端部42′に対して適切に保持される。
核酸抽出要素20′の移動は、ノズル40′の先端部42′に核酸抽出要素20′を保持させた状態において、ノズル40′を移動させることにより行われる。
核酸抽出要素20′の取り外しは、図28および図31に示したように、核酸抽出要素20′とともにノズル40′の先端部42′を反応槽34′の内部に位置させ、取り外し部材41′をノズル40′に対して相対的に下方に移動させることにより行われる。すなわち、取り外し部材41′を下方に移動させた場合には、核酸抽出要素20′のフランジ部25′に取り外し部材41′が干渉し、フランジ部25′ひいては核酸抽出要素20′に対して下方に向けた力が作用してノズル40′の先端部42′から核酸抽出要素20′が取り外される。
このように、核酸分析装置1′では、試料の調整に必要なノズル40′および取り外し部材41′を利用して核酸抽出要素20′の移動を行えるようになされている。そのため、核酸の精製および核酸の増幅を1つの装置において行うに当たって、本来必要な構成(ピペット装置4)を利用しているために、装置が複雑化することが抑制される。また、制御すべき動作機構の数の増加を抑制することができるようになるため、この点においても装置構成の複雑化および大型化を抑制する上で有利である。
図31に示したように、ノズル40′の先端部42′から取り外された核酸抽出要素20′は、保持部材22′のフランジ部25′において、反応槽34′の段部36′に係止される。このとき、固体マトリックス23′は、その下端が反応検出部37の底部から一定距離離間した状態において反応検出部37に収容される。反応検出部37には、先に混合試薬が収容されているので、反応検出部37においては、固体マトリックス23′の全体が浸漬される。これにより、固体マトリックス23′から核酸が溶出する一方で、溶出した核酸が試薬類と反応して増幅する。
上述したように、固体マトリックス23′の下端は、反応検出部37の底部から離間した状態となっている。より具体的には、固体マトリックス23′の下端位置は、測光機構8により反応検出部37への励起光の照射および蛍光の測定を阻害しない位置とされる(図33参照)。これにより、核酸を付着させるのに固体担体を使用する場合であっても、その固体担体が核酸の測定において、それを阻害することはない。
核酸の測定は、図32および図33に示したように、反応槽34′の蓋31′を再装着した状態とする一方で、反応槽34′の上方を遮光部材9によって覆った状態とした後において、測光機構8によって行われる。測光機構8により核酸の測定は、先に説明した核酸分析装置1(図1など参照)と同様にして行われる。
以上に説明したように、核酸分析装置1′においても、先に説明した核酸分析装置1(図1など参照)と同様に、上述した構成の核酸精製用カートリッジ2′および核酸増幅用カートリッジ3′をセットするだけで自動的に核酸の分析を行うことができ、核酸の抽出操作および核酸の増幅操作において、カートリッジ2′,3′を核酸分析装置1にセットする以外に、ユーザの手操作に依存する部分がなくなる。そのため、核酸分析におけるユーザの負担が著しく軽減されるとともに、ユーザの技量差によって核酸の回収率がばらつくなどして測定再現性が悪化することもない。
[実施例]
以下においては、上述した本発明の第1の実施の形態に係る核酸精製用カートリッジ、核酸増幅用カートリッジおよび核酸分析装置を利用して、目的核酸としてのヒトゲノムDNAを、適切に精製・増幅させることができるか否かSNP(Single Nucleotide Polymorphism)タイピングによりを検討した。
(核酸精製用カートリッジの形成)
核酸精製用カートリッジは、カートリッジ本体(図中の符号21参照)および核酸抽出要素(図中の符号20参照)を次に説明する方法により形成した後に、カートリッジ本体の収容槽(図中の符号27参照)に核酸抽出要素を収容させ、かつ余剰液除去槽(図中の符号21A参照)に吸水性部材(図中の符号21Ad,21Ae参照)としての発泡樹脂((株)イノアックコーポレイション製、発泡ウレタンSAQ)を固定することにより形成した。吸水性部材21Adの寸法は5mm×8mm×17mmとし、吸水性部材21Aeの寸法は5mm×11mm×14mmとした。
カートリッジ本体は、PETを用いた樹脂成型により図5および図6に示す形態に形成した。
一方、核酸抽出要素は、保持部材(図中の符号22参照)に固体マトリックス(図中の符号23参照)を保持させることにより形成した。固体マトリックスは、FTA Classic Card (Whatman社、Cat. No. WB120205)を、パンチを用いてφ2.5mmの円盤状に打ち抜くことにより形成した。ここで、FTA Classic Cardは、セルロースを主成分とする核酸収集用濾紙である。一方。保持部材は、PETを用いた樹脂成型により図7Aおよび図7Bに示す形態に形成した。ただし、樹脂成型直後の保持部材においては、係止片(図中の符号26C参照)は形成されておらず、係止片は、固体マトリックスの中心に穴を開けて保持部材のピン状部(図中の符号26B参照)に差し込んだ後に、ピン状部の先端部を熱処理することにより形成した。係止片は、上述のようにピン状部からの固体マトリックスの抜け落ちを防止するためのものである。
(核酸増幅用カートリッジの形成)
核酸精製用カートリッジは、カートリッジ本体(図中の符号30参照)および蓋(図中の符号31参照)を、PETを用いた樹脂形成により図8および図9に示した形態に形成した後に、カートリッジ本体の反応槽(図中の符号34参照)に蓋を螺号することにより形成した。
(核酸の精製)
核酸の精製は、核酸精製用カートリッジ本体の試料保持槽(図中の符号29参照)に試料(図中の符号29L参照)を、3つの洗浄槽(図中の符号281〜283参照)に洗浄液(図中の符号28L1〜28L3参照)をそれぞれ分注した上で、核酸分析装置(図中の符号1参照)に核酸精製用カートリッジをセットし、核酸分析装置において自動的に行った。
試料としては、全血(抗凝固剤:へパリンNa含有)を用い、その分注量は120μLとした。洗浄液28L1としては下記表1に示す洗浄液I(800μL)を用い、洗浄液28L2としては下記表1に示す洗浄液I(600μL)を用い、洗浄液28L3としては下記表1に示す洗浄液II(600μL)を用いた。
一方、核酸分析装置においては、核酸抽出要素(固体マトリックス)が次に説明する動作を行うように核酸精製用動作機構(図中の符号5参照)を駆動させた。
まず、核酸動作機構における挿入ピン(図中の符号50参照)を保持部材の筒状部(図中の符号24参照)に嵌合させた状態とし、固体マトリックスを試料保持槽中の全血に浸漬させた。次いで、3つの洗浄槽281〜283を利用して固体マトリックスを洗浄した。固体マトリックスの洗浄は、使用する洗浄槽281〜283を洗浄槽281→洗浄槽282→洗浄槽283の順で順次変えつつ行った。洗浄槽281を利用した固体マトリックスの洗浄は、固体マトリックス23の全体が洗浄液28L1の液面よりも上方に位置する状態と28L1に完全に浸漬する位置との間の20Hzで1分間上下動させることにより行った。一方、洗浄槽282,283を利用した固体マトリックスの洗浄においては、上下動させる時間を2分間とした以外は、洗浄槽281を利用する場合と同様にして行った。
次いで、後に行う核酸増幅反応を阻害する可能性のある余剰な成分の除去を行った。余剰な成分の除去は、固体マトリックスおよび保持部材の先端部分(係止片、ピン状部、テーパ部(図中の符号26参照)を吸水性部材(図中の符号21Ad,21Ae参照)に押し付けることにより行った。
(核酸の増幅確認)
核酸の増幅は、下記表2の試薬混合液A,Bを用いたPCR法により行い、核酸の増幅の程度は、薬剤代謝酵素をコードする塩基配列であるCYP2C19*2*3のSNP(Single Nucleotide Polymorphism)タイピングにより確認した。
より具体的には、核酸の増幅確認は、試薬混合液Aまたは試薬混合液Bを核酸増幅用カートリッジ本体の試薬類保持槽(図中の符号321,322参照)に個別に分注した上で、核酸分析装置(図中の符号1参照)に核酸増幅用カートリッジをセットし、核酸分析装置において自動的に行った。
核酸分析装置においては、核酸抽出要素(固体マトリックス)を次に説明する動作を行うようにピペット装置(図中の符号4)、蓋着脱機構(図中の符号6参照)および温調機構(図中の符号7)を駆動させた。
まず、ピペット装置のノズル(図中の符号40)にチップ(図中の符号43)を装着させた上で、試薬類保持槽33Aから試薬混合液Aを30μL、試薬類保持槽33Bから試薬混合液Bを30μL採取して混合槽(図中の符号33参照)分注した。次いで、ノズルの吸排活動により試薬混合液A,Bの攪拌・混合を行って反応液を調製した後、ノズルによって反応液を50μL採取して、それを反応槽(図中の符号34参照)に分注した。
その一方で、蓋着脱機構の回転部材(図中の符号60参照)により核酸増幅用カートリッジから蓋(図中の31参照)を取り外した上で、蓋を移動させて蓋の係止爪(図中の符号36A参照)を核酸抽出要素の係止ヘッド(図中の符号24B参照)に係合させ、それらを一体化させた。
次いで、蓋着脱機構により蓋とともに核酸抽出要素20を核酸増幅カートリッジの反応槽(図中の符号34参照)に収容させつつ、回転部材が回転させることで反応槽を蓋により閉鎖した。これにより、固体マトリックスは、反応液に完全に浸漬された状態で反応槽(図中34)に密閉保持された。
次いで、温調機構のヒートブロック(図中の符号70参照)を駆動させて、反応槽における反応液の温度を変化させて目的核酸の増幅を行った。温度変化は、95℃で120秒→(95℃で4秒+54℃で60秒)を50サイクル→95℃で60秒→45℃で90秒とした。
SNPタイピングにおいては、Tm解析を採用した。Tm解析に当たっては、核酸の増幅させた反応液の温度を45℃から95まで1℃/3秒の割合で上昇させていき、そのときの蛍光強度をリアルタイムで測定した。測定波長は515〜555nm(*2)、585〜750nm(*3)の2種類とし、それぞれの測定波長((*2),(*3))についてSNPタイピングを行った。それぞれの波長において蛍光強度を測定した結果については、横軸を温度、縦軸を蛍光強度の微分値(変化率)として図34に示した。
図34から分かるように、測定波長*2および*3のいずれの場合であっても、測定される蛍光強度の微分値(変化率)の変化曲線には、2つのピークが現れている。これらのピークは、SNPタイプ野生型と変異型に対応するものであり、それらを区別できる程度に目的核酸が十分に増幅されていることが確認できる。
本実施例においては、実施例1と同様にして核酸の精製を行った後、増幅法としてICNA法を採用してSNPタイピングを行った。増幅試薬としてTaKaRa社製 Cycleave ICAN human ALDH2 Typing Kit (Cat. No. CY101)を使用し、カートリッジ本体の試薬類保持槽(図中の符号321,322参照)に保持させるべき試薬混合液A,Bの組成は表3に示した通りとした。それらの試薬混合液A,Bの分注量、混合条件および反応液の分注量は実施例1の場合と同様とした。
(反応条件)
反応は、反応液に固体マトリックスを浸漬させた状態において、70℃で300秒インキュベートした後に60℃で一時間行った。この一時間の反応は、蛍光強度の測定を行わない第1ステップ30秒および蛍光強度の測定を行う第2ステップ30秒を1サイクルとする60サイクルからなり、蛍光強度は各サイクルの第2ステップにおいてリアルタイムで測定した。測定波長は515〜555nm(mt)、585〜750nm(wt)の2種類とし、SNPタイプ変異型および野生型のそれぞれについてSNPタイピングを行った。それぞれの波長において蛍光強度を測定した結果については、横軸をサイクル数、縦軸を蛍光強度として図35に示した。
図35から分かるように、一定のサイクル数が経過した後においてはSNPタイプ変異型に対応する蛍光強度が増加している一方で、SNPタイプ野生型に対応する蛍光強度についてはサイクル数を増加させても殆ど蛍光強度が増加していない。したがって、図35に示した結果からは、SNPタイプ野生型と変異型を区別できる程度に目的核酸(SNPタイプ野生型)が選択的かつ十分に増幅されていることが確認できる。
本実施例においては、実施例1と同様にして核酸の精製を行った後、増幅法としてLAMP法を採用してSNPタイピングを行った。増幅試薬としては栄研化学社製 Loopamp P450 タイピング試薬キット(CYP2C9*3)を使用し、カートリッジ本体の試薬類保持槽(図中の符号33A,33B参照)に保持させるべき試薬混合液A,Bの組成は表3に示した通りとした。それらの試薬混合液A,Bの分注量、混合条件および反応液の分注量は実施例1の場合と同様とした。
(反応条件)
反応は、反応液に固体マトリックスを浸漬させた状態において、95℃で5分処理した後に60℃で一時間反応させた。この一時間の反応は、蛍光強度の測定を行わない第1ステップ30秒および蛍光強度の測定を行う第2ステップ30秒を1サイクルとする60サイクルからなり、蛍光強度は各サイクルの第2ステップにおいて、測定波長を515〜555nmとしてリアルタイムで測定した。各サイクルの第2ステップにおいて蛍光強度を測定した結果については、横軸をサイクル数、縦軸を蛍光強度として図36に示した。
図36から分かるように、一定のサイクル数が経過した後においてはSNPタイプ変異型に対応する蛍光強度(図中のAアレル)が増加している一方で、SNPタイプ野生型に対応する蛍光強度(図中のGアレル)についてはサイクル数を増加させても殆ど蛍光強度が増加していない。したがって、図36に示した結果からは、SNPタイプ野生型と変異型を区別できる程度に目的核酸(SNPタイプ野生型)が選択的かつ十分に増幅されていることが確認できる。
実施例1〜3の結果から分かるように、本発明の第1の実施の形態において説明した核酸抽出要素を用いて核酸の精製を行った場合に、PCR法に限定されず、増幅方法としてICAN法あるいはLAMP法を採用した場合であっても、適切に目的核酸を増幅させることができる。上述のように、ICAN法およびLAMP法は、目的核酸の精製度が高くない場合には、十分な増幅反応を起こさせることができないのである。そのため、本発明の第1の実施の形態において説明した精製方法は、目的核酸を適切に精製できるものであるといえる。したがって、上述の精製方法は、PCR法ばかりでなく、それ以外の増幅方法の前処理として適切に適用することができ、また増幅時間の短縮化に寄与できるといえる。
また、実施例1〜3では、本発明の第1の実施の形態において説明した核酸精製用カートリッジ、核酸抽出用カートリッジおよび核酸分析装置を用いることにより、核酸の分析を自動で行えることが確認された。この場合において、核酸増幅方法としては、PCR法に限らず、PCR法を初めとする公知の種々の増幅方法を採用できることも確認された。
なお、実施例1〜3においては、本発明の第1の実施の形態において説明した例に基づいて核酸が適切に増幅されているかについて検討したが、本発明の第2の実施の形態において説明した構成を採用した場合であっても核酸を適切に増幅でき、上述した効果を享受できるものと考えられる。
本発明は、試料から目的核酸を精製するための技術に関する。
核酸の分析は、医療分野において、感染症や遺伝子疾患を遺伝子レベルで診断するために重要な役割を果たしているが、現在においては、医療分野に限らず、農業あるいは食品分野などの様々な分野において応用されている。一般に、核酸の分析は、試料からの核酸の精製、精製された核酸の増幅、および増幅された核酸の検出といったプロセスを経て行われている。各プロセスは、人的コスト、再現性、分析効率を考慮した場合、機械により自動で行えるようにするのが好ましく、理想的には、全てのプロセスを機械により自動で行えるようにするのが好ましい(たとえば特許文献1,2参照)。
核酸の精製の自動機械化を目指したものとして、核酸結合性担体を使用する方法がある。その一例として、核酸結合性シリカ粒子とカオトロピックイオンを用いた方法がある(たとえば特許文献3参照)。この方法は、核酸結合性シリカ粒子および試料中の核酸を遊離する能力をもつカオトロピックイオンを試料と混合して試料中の核酸を核酸結合性シリカ粒子に結合させてから固相と液相を分離した後に、核酸結合性シリカ粒子に結合した核酸を溶離するというものである。しかしながら、固相と液相を分離するためには、遠心分離またはフィルタなどを使用した濾過などの操作を行う必要があり、機械化を実現した際の操作および装置構成が複雑となる。
核酸結合性担体を使用する別の方法としては、磁性を持たせた担体を使用する方法がある(たとえば特許文献4,5参照)。この方法は、磁性を持たせたシリカ粒子に核酸を吸着させ後に磁石によってシリカ粒子を分離し、分離されたシリカ粒子から核酸を溶離させた後に溶離液を回収するものがある。この方法は、遠心分離操作などを行うことなく固相と液相を分離できるために機械による自動化において利点はある。
しかしながら、核酸の回収率が比較的に低い上、その回収率が検体の種類に影響されやすいといった問題がある。しかも、磁性シリカ粒子は、核酸の増幅方法としてPCR(Polymerase Chain Reaction)法を採用したときに、増幅反応の阻害剤となるといった問題が指摘されている。また、核酸を検出する代表的な方法としては、核酸に標識を施し、その標識を光学的手法により測定するものがあるが、この方法を採用した場合には、磁性シリカ粒子によって測定誤差が生じ、精製時における磁性シリカ粒子の含有量のバラツキによって再現性が悪化する。
また、核酸の精製方法としては、たとえば核酸を抽出するのに必要な試薬類を固体マトリックスに含浸させたものを利用する方法がある(たとえば特許文献6−8参照)。この方法では、固体マトリックスに対して試料を点着することで目的核酸が抽出される。その後、核酸を増幅させるときに阻害剤になりうる余剰成分が洗浄除去される。より具体的には余剰成分の洗浄は、ポンチを用いて固体マトリックスの一部を円盤状に打ち抜いた後、打ち抜かれた円盤状の固体マトリックスをマイクロチューブに収容させ、マイクロチューブ内において、円盤状の固体マトリックスから余剰成分が溶離させることにより行われる。
この方法を適用する場合、固体マトリックスの一部を打ち抜く工程が必要となるばかりか、固体マトリックスを打ち抜くためには、固体マトリックスを乾燥させる必要が生じる。そのため、円盤状の固体マトリックスを洗浄する前において相当の時間を必要とする。また、円盤状の固体マトリックスの洗浄は、固体マトリックスから余剰成分を洗浄液中に拡散させる方法であるために、洗浄に相当の時間が必要となる。とくに、十分な洗浄効果を得るためには、マイクロチューブに保持させた洗浄液を繰り返し取り替える必要があるため、この点においても洗浄に要する時間が長くなる。そればかりか、洗浄に要する時間をできるだけ短くするためには、円盤状の固体マトリックスを小さくせざるを得ない。この場合、試料から回収できる目的核酸の量が少なくなる。その結果、核酸の検出感度が低くなり、また目的量の核酸を得るためには増幅時間を長く設定する必要が生じる。
また、円盤状の固体マトリックスを利用する方法では、核酸の増幅が核酸の洗浄を行うためのマイクロチューブにおいて行われるとともに、核酸の分析がマイクロチューブにおいて光学的手法を用いて行われる。そのため、円盤状の固体マトリックスが不当に大きな場合には、円盤状の固体マトリックスが測光路を塞いで核酸の分析を阻害しかねない。このような不具合を生じさせないようにするためには、円盤状の固体マトリックスは、一定以下の大きさ、たとえば2mm以下の大きさに打ち抜かざるを得ず、試料から回収できる目的核酸の量が少なくなるといったように、上述した不具合が生じる。また、ユーザとしては、2mm以下の大きさに固体マトリックスを打ち抜く作業の負担は大きく、作業効率のよい手法とはいえない。
ところで、PCR法を利用した核酸の増幅は、機械による自動化が進んでおり、既にPCR装置も市販されている。PCR装置としては、核酸の増幅とともに、増幅された核酸の検出を行えるようにしたものが一般的である。
しかしながら、市販のPCR装置を使用する場合には、それ専用の増幅キットを用いる必要がある。一般的な増幅キットは、蓋付きの容器に予めプライマーおよびポリメラーゼなどの試薬を仕込んだものである。そのため、ユーザは、容器の蓋を開けてから容器内に核酸溶液を分注した上で、容器内の反応液を攪拌して蓋を閉めた後、それをPCR装置にセットするといった操作を強いられる。すなわち、一般的な増幅キットは、ユーザによる手操作に依存する部分が大きいためにユーザの負担が大きい上に、ユーザによる手操作が大きく介在するために、分析効率が悪く、ユーザの技量の差に基づく再現性の悪化も懸念される。また、増幅キットにおいて採用されている容器は、通常、樹脂成型によって蓋が一体成型された汎用品であり、PCR装置において蓋を自動的に開閉させることは困難である。そのため、一般的な専用キットを用いる方法では、ユーザの手操作に委ねていた操作を、PCR装置において自動的に行うのは困難である。
核酸の増幅方法としては、PCR法の他に、たとえばICAN(Isothermal and Chimeric Primer-initiated Amplification of Nucleic acid)法あるいはLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法がある。これらの方法は、PCR法に比べ、核酸の精製度を十分に高めなければ、目的核酸を十分に増幅させることができない方法である。したがって、核酸の精製および増幅を機械により自動化する場合においては、PCR法以外に他の増幅方法を採用できるようにするためには、核酸の精製度を高める手法を確立する必要がある。
特開2001−149097号公報 特開2003−304899号公報 特許第2680462号公報 特開昭60−1564号公報 特開平9−19292 号公報 米国特許第5496562号明細書 米国特許第5939259号明細書 米国特許第6168922号明細書
本発明は、核酸の精製、核酸の増幅および核酸の測定といった核酸分析における一連の工程を、機械により自動で行えるようにし、ユーザの負担を軽減するとともに分析効率および再現性を改善することを目的としている。
本発明はさらに、核酸の精製および増幅を機械により自動化できるようにする場合に、種々の増幅方法を採用できる核酸の精製技術を提供することを目的としている。
本発明の第1の側面においては、試料から目的核酸を抽出し、かつ抽出した核酸を担持させるための核酸抽出要素と、上記核酸抽出要素とは別体として形成され、かつ上記核酸抽出要素を収容しておくための収容槽を有する容器本体と、を備えている、核酸抽出用容器が提供される。
好ましくは、核酸抽出要素は、目的核酸を担持させるための固体マトリックスと、この固体マトリックスを保持するための保持部材と、を有するものとして構成される。
固体マトリックスは、たとえば保持部材の垂直軸に対して傾斜した状態で保持部材に保持され、好ましくは、垂直軸に対して水平または略水平な状態で保持される。この場合、固体マトリックスは、円盤状に形成するのが好ましい。
上記垂直軸に対して固体マトリックスが傾斜した状態は、たとえば固体マトリックスに対して保持部材に突き刺すことにより達成することができる。この場合、保持部材は、たとえば端部に向かうほど縮径するテーパ部と、テーパ部から延出するとともに、固体マトリックスに貫通させるためのピン状部と、固体マトリックスがピン状部から離脱するのを抑制するための係止片と、を有するものとして構成される。
また、固体マトリックスは、保持部材の垂直軸に対して平行または略平行な状態で保持部材に保持させてもよい。この場合、固体マトリックスは、シート状に形成するのが好ましい。
上記垂直軸に対して固体マトリックスが平行または略平行な状態は、たとえば保持部材に対して固体マトリックスを吊持させることにより達成することができる。この場合、保持部材は、たとえば固体マトリックスの端部を挟持して固体マトリックスを吊持するための挟持部を有するものとして構成される。
容器本体は、固体マトリックスに付着した余剰な成分を除去するのに必要な洗浄液を保持するための1以上の洗浄槽を有するものとして構成するのが好ましい。この場合、容器本体には、固体マトリックスまたはその周囲に付着した余剰な洗浄液を除去するための余剰洗浄液除去手段を設けるのが好ましい。
余剰洗浄液除去手段は、たとえば吸水性部材を含んでいる。吸水性部材としては、たとえば発泡樹脂、あるいは布などの多孔質体を使用することができる。
本発明の核酸抽出用容器は、たとえば核酸分析装置にセットして使用するカートリッジとして構成される。
核酸分析装置が、収容槽から目的核酸を担持させた核酸抽出要素を取り出して、当該核酸抽出要素を他の部位に移送するための移送部材を備えている場合においては、核酸抽出要素は、たとえば移送部材に係合させるための係合部を有するものとして構成される。この場合、係合部は、たとえば移送部材の先端部を嵌合させるために筒状に形成され、好ましくは、移送部材の先端部を嵌合させたときに、移送部材に弾性力を作用させることを可能とするための1以上の欠落部を有するものとして構成される。1以上の欠落部は、たとえばスリット、切欠および貫通孔のうちの少なくとも1つを含むものとされる。
これに対して保持部材は、たとえば移送部材と係合部との嵌合状態を解除するために利用される突出部を有するものとされ、好ましくは、突出部は、外方側に向けて突出したフランジとして構成される。この場合、収容槽は、たとえば当該収容槽に核酸抽出要素を収容したときに、突出部を係止するための段部を有するものとして構成される。
本発明の第2の側面においては、目的核酸を担持させた固体マトリックスから、洗浄液を用いて目的核酸以外の余剰な成分を除去する方法であって、洗浄液に対して固体マトリックスを相対的に上下方向に移動させることによって、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬される状態と、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬されない状態と、を繰り返す、固体マトリックスの洗浄方法が提供される。
洗浄液に固体マトリックスが浸漬される状態と浸漬されない状態との繰り返しは、上下方向に対して固体マトリックスを傾斜させた状態で行われ、好ましくは、上下方向に対して固体マトリックスを直交または略直交させた姿勢で行われる。
本発明の第3の側面においては、目的核酸を担持させるための固体マトリックスと、この固体マトリックスを保持するための保持部材と、を有する核酸抽出要素を用いて目的核酸を精製する方法であって、上記固体マトリックスに対して試料を含浸させて試料中の目的核酸を上記固体マトリックスに担持させる核酸担持ステップと、上記固体マトリックスに付着した目的核酸以外の余剰な成分を、洗浄液を用いて除去する洗浄ステップと、を含み、かつ、上記洗浄ステップは、洗浄液に対して上記核酸抽出要素を相対的に上下方向に移動させることによって、上記核酸抽出要素が上記洗浄液に浸漬される状態と、上記核酸抽出要素が上記洗浄液に浸漬されない状態と、を繰り返すことにより行われる、目的核酸の精製方法が提供される。
本発明の核酸精製方法においては、核酸抽出要素として、たとえば保持部材の垂直軸に対して傾斜した状態で保持部材に固体マトリックスを保持させたものが用いられる。この場合、洗浄ステップは、たとえば上下方向に対して固体マトリックスを傾斜させた状態で、核酸抽出要素を上下方向に移動させることにより行われる。好ましくは、洗浄ステップは、上下方向に対して、固体マトリックスを直交または略直交させた姿勢で核酸抽出要素を上下方向に移動させることにより行われる。
洗浄ステップは、洗浄液に対する固体マトリックスの繰り返しの浸漬が終了した後に、固体マトリックスに付着した余剰な洗浄液を吸水性部材により除去する作業を含んでいる。
本発明の第4の側面においては、目的核酸を担持させた固体マトリックスから、洗浄液を用いて目的核酸以外の余剰な成分を除去するための機構であって、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬される状態と、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬されない状態と、が繰り返されるように、洗浄液に対して固体マトリックスを相対的に上下方向に移動させるように構成されている、固体マトリックスの洗浄機構が提供される。
本発明の洗浄機構は、たとえば固体マトリックスを、上下方向に対して傾斜させた状態で上下方向に移動させるように構成され、好ましくは、固体マトリックスを、上下方向に対して直交または略直交させた姿勢で上下方向に移動させるように構成される。
ここで、本発明において「試料」とは、動物由来の生物試料(たとえば全血、血清、血漿、尿、唾液、あるいは体液)および動物以外の生物試料を含む概念であり、「核酸」とは、DNAあるいはRNAを意味し、2本鎖DNA、1本鎖DNA、プラスミドDNA、ゲノムDNA、cDNA、外来性寄生生物(ウイルス、細菌、真菌など)由来RNA、内在性RNAを含む概念である。
以下においては、本発明について第1および第2の実施の形態として、図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態について、図1ないし図15を参照して説明する。
図1ないし図4に示した核酸分析装置1は、試料中の核酸の精製、抽出された核酸の増幅、および増幅された核酸の分析を自動で行えるように構成されたものであり、図1および図2に示したように、筐体10の内部に、複数の核酸精製用カートリッジ2および核酸増幅用カートリッジ3を同一数だけ装着して使用されるものである。
図5および図6に示したように、核酸精製用カートリッジ2は、核酸分析装置1における核酸の自動精製を可能ならしめるためのものであり、核酸抽出要素20およびカートリッジ本体21を有している。
核酸抽出要素20は、試料中から核酸を抽出するのに利用されるものであり、後述するカートリッジ本体21の収容槽27に収容されている。この核酸抽出要素20は、図7Aおよび図7Bに良く表れているように、保持部材22および固体マトリックス23を有している。
保持部材22は、筒状部24、フランジ部25、および保持部26を有するものであり、たとえば全体が樹脂成型によって形成されている。
筒状部24は、核酸抽出要素20を移動させるときに利用される部分であり(図4および図12参照)、凹部24Aおよび係止ヘッド24Bを有している。凹部24Aは、後述する核酸精製用機構5の挿入ピン50または核酸増幅用カートリッジ3の蓋31におけるピン36Bを嵌合させるためのものである(図4および図12参照)。係止ヘッド24Bは、後述する核酸増幅用カートリッジ3の蓋31における係止爪36Aを嵌合させるためのものであり、半径方向に突出している。
フランジ部25は、後述する核酸精製用カートリッジ2の収容槽27に核酸抽出要素20を収容するときに、収容槽27の段部27A係合させるためのものであり、半径方向の外方側に向けて突出した環状に形成されている(図12参照)。
保持部26は、固体マトリックス23を保持するための部分であり、テーパ部26A、ピン状部26Bおよび係止片26Cを有している。テーパ部26Aは、保持部26に付着した洗浄液を下方に移動させやすくする役割を果たすものである。ピン状部26Bは、固体マトリックス23に貫通させるための部分である。係止片26Cはピン状部26Bを固体マトリックス23に貫通させたときにピン状部26B(保持部26)から固体マトリックス23が離脱するのを防止するためのものである。
保持部材22には、保持部26の若干上方にOリング22Aが固定されている。このOリング22Aは、図13Bに良く表れているように、核酸抽出要素20を核酸増幅用カートリッジ3の反応槽34に収容したときに、反応槽34の内面に密着させるためのものである。すなわち、反応槽34に核酸抽出要素20を収容させた場合には、Oリング22Aが反応槽34の内面と密着する位置よりも下方に密閉空間が形成される。そして、Oリング22Aが保持部26よりも上方に配置されていることから、固体マトリックス23は密閉空間において収容される。
固体マトリックス23は、試料中の核酸を担持させるためのものであり、たとえば濾紙に対して核酸抽出用の試薬類を担持させたものとして構成されている。この固体マトリックス23は、円盤状に形成されている。すなわち、固体マトリックス23は、ピン状部26Bに突き刺された状態で、保持部材22の垂直軸に対して直交するように水平または略水平に支持されている。
ここで、核酸抽出用の試薬類としては、たとえば弱塩基、キレート試薬、陰イオン界面活性剤あるいは陰イオン洗剤および尿酸あるいは尿酸塩の組み合わせ、もしくは核酸吸着用担体および吸着促進剤の組み合わせを挙げることができる。核酸吸着用担体としては、公知の種々のものを使用することができ、典型的にはシリカビーズが使用される。吸着促進剤としては、細胞膜を破壊し、あるいは試料中のタンパク質を変性させ、核酸吸着用担体への核酸の結合に寄与する物質であればよく、たとえばカオトロピック物質(たとえばグアニジンチオシアン酸塩、グアニジン酸塩)を使用することができる。なお、固体マトリックス23は、試料中の核酸を効率良く吸着させることができる構成であればよく、その構成は上述した例には限定されない。
上述の核酸抽出要素20では、後述する核酸増幅用カートリッジ3の反応槽34に核酸抽出要素20を収容させたときに、固体マトリックス23を反応槽34の底から離間させた状態とすることができる。これにより、後述する測光機構8の測光経路上に固体マトリックス23が位置しないようにすることができるため、測光精度を向上させることができる。固体マトリックス23が測光経路上に位置しないため、固体マトリックス23として寸法の大きなものを使用することが可能となる。これにより、固体マトリックス23に対してより多くの核酸を担持させることが可能となり、より効率良く核酸の増幅を行い、また分析精度を向上させることが可能となる。
図5および図6に示したように、カートリッジ本体21は、収容槽27、3つの洗浄槽281〜283、試料保持槽29および余剰液除去槽21Aを有するものであり、たとえば樹脂成型により一体成型されている。
収容槽27は、核酸抽出要素20を収容するためのものであり、核酸抽出要素20のフランジ部25を係止するための段部27Aを有している。この収容槽27は、核酸精製用カートリッジ2の使用前において、上部開口27Bから核酸抽出要素20が離脱しないように、上部開口27Bをアルミニウム薄膜などのシール材により塞いでおくのが好ましい。シール材は、核酸精製用カートリッジ2を使用するときにユーザが剥がすようにしてもよいし、核酸分析装置1において自動的に剥がすようにしてもよい。
各洗浄槽281〜283は、固体マトリックス23に核酸を担持させた後、固体マトリックス23から夾雑物を除去するための洗浄液を保持するためのものである。洗浄液は、核酸精製用カートリッジ2として洗浄槽281〜283に予め仕込んでおくのが好ましいが、核酸分析装置1に仕込んでおいた洗浄液を分析時に洗浄槽281〜283に分注するようにしてもよい。洗浄液としては、たとえば固体マトリックス23からの核酸の溶離作用が少なく、夾雑物の結合を妨げるもの(たとえばグアニジン塩酸塩あるいはエタノール)を使用することができる。3つの洗浄槽281〜283には、同一の洗浄液を保持させてもよいが、異なる洗浄液を保持させてもよい。
なお、各洗浄槽281〜283に予め洗浄液を仕込んでおく場合には、各洗浄槽281〜283の上部開口28A1〜28A3をアルミニウム薄膜などのシール材により塞いでおく必要がある。この場合、各洗浄槽281〜283の上部開口28A1〜28A3を個別に塞いでもよいし、3つの洗浄槽281〜283の上部開口28A1〜28A3を一括して、あるいは3つの洗浄槽281〜283の上部開口28A1〜28A3および収容槽27の上部開口27Bを一括して塞いでもよい。
試料保持槽29は、分析対象(核酸を抽出する対象)となる試料を保持しておくためのものである。試料保持槽29に対する試料の保持は、核酸精製用カートリッジ2を核酸分析装置1にセットする前に行ってもよいし、核酸精製用カートリッジ2を核酸分析装置1にセットした後に行ってもよい。後者の場合、核酸分析装置1において自動的に試料保持槽29に試料が分注されるように構成するのが好ましい。試料としては、たとえば全血、血清、血漿、尿、唾液、あるいは体液を使用することができる。
余剰液除去槽21Aは、核酸抽出要素20における固体マトリックス23を洗浄した後において、核酸抽出要素20、固体マトリックス23および保持部材22の保持部26に付着した余剰な洗浄液を除去するためのものである。この余剰液除去槽21Aには、底壁21Aaおよび前後壁21Ab、21Acに密着して吸水性部材21Ad,21Aeが固定されている。吸水性部材21Ad,21Aeは、たとえば発泡樹脂あるいは布などの多孔質材料により構成されており、核酸抽出要素20を接触させることによって核酸抽出要素20から余剰な洗浄液を吸収除去できるように構成されている。
図8および図9に示したように、核酸増幅用カートリッジ3は、核酸分析装置1における核酸の自動増幅および測定を可能ならしめるためのものであり、カートリッジ本体30および蓋31を有している。
カートリッジ本体30は、4つの試薬類保持槽321〜324、混合槽33、および反応槽34を有するものであり、たとえば樹脂成型により一体成型されている。
各試薬類保持槽321〜324は、核酸の増幅および測定に必要な試薬類を水溶液あるいは懸濁液の状態で保持するためのものである。ここで、各試薬類保持槽321〜324に保持される試薬類の種類は、採用する増幅方法および測定方法に応じて選択される。増幅方法としては、たとえばPCR(Polymerase Chain Reaction)法、ICAN(Isothermal and Chimeric Primer-initiated Amplification of Nucleic acid)法、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法あるいはNASBA(Nucleic acid Sequence Based Amplification)法を採用することができる。PCR法を採用する場合には、試薬類として、少なくとも2種類のプライマー、dNTP、およびDNAポリメラーゼが使用される。ICAN法を採用する場合には、試薬類として、キメラプライマー、DNAポリメラーゼ、およびRNaseHが使用される。LAMP法を採用する場合には、試薬類として、1種類以上のLAMP用プライマー、dNTP、鎖置換型DNA合成酵素、および逆転写酵素が使用される。NASBA法を採用する場合には、試薬類として、少なくとも2種類のプライマー、dNTP、rNTP、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNaseH、およびRNAポリメラーゼが使用される。一方、測定方法としては、蛍光測定、発色測定、放射性活性測定、あるいは電気泳動を採用することができる。ただし、核酸分析装置1においては蛍光測定が採用されているものとする。この場合、プライマーとしては、蛍光プライマーを使用するのが好ましい。
混合槽33は、試薬類保持槽321〜324に保持された2以上の試薬類を反応槽34に供給する前に混合する際に利用されるものである。
なお、試薬類保持槽321〜324には、試薬類を予め仕込んでおくのが好ましいが、核酸分析装置1に仕込んでおいたものを分析時に試薬類保持槽321〜324に分注するようにしてもよい。この場合、試薬類保持槽321〜324の上部開口32A1〜32A4は、アルミニウム薄膜などのシール材により塞いでおく必要があるが、各試薬類保持槽321〜324の上部開口32A1〜32A4を個別に塞いでもよいし、4つの試薬類保持槽321〜324の上部開口32A1〜32A4を一括して、あるいは4つの試薬類保持槽321〜324および混合槽33の上部開口32A1〜32A4,33Aを一括して塞いでもよい。
反応槽34は、混合試薬および核酸抽出要素20を収容するためのものであるとともに、核酸抽出要素20に担持させた核酸と混合槽33において調された混合試薬とを反応させる場を提供するものである(図13および参照)。この反応槽34は、筒状部35および反応検出部37を有している。
筒状部35は、蓋31が装着される部分であり、その内周面にネジ溝35Aが設けられている。
反応検出部37は、核酸の増幅反応を起こさせる場を提供するとともに、蛍光測定を行うための検出容器としての役割を果たすものである。すなわち、反応検出部37は、後述する測光機構8の発光部80から出射された光が照射される部分である(図15参照)。
蓋31は、反応検出部37の内部を密閉状態とするか否かを選択するためのものであり、反応槽34(筒状部35)に対して着脱自在とされている。より具体的には、蓋31は、回転力を作用させることにより、筒状部35に装着される状態と筒状部35(反応槽34)から完全に分離した状態とを選択できるように構成されている。蓋31は、円筒状の本体部38、フランジ部39および保持部36を有している。
本体部38は、反応槽34における筒状部35のネジ溝35Aに螺合させるためのネジ山38Aと、後述する蓋着脱機構6における回転部材60(図11B参照)を挿入するための凹部38Bと、を有している。凹部38Bの内周面には、複数のリブ38Cが設けられている。複数のリブ38Cは、周方向に一定間隔隔てて上下方向に延びるように設けられている。各リブ38Cの上端部は、上方に向かうほど幅寸法が小さくなるテーパ状に形成されている。
フランジ部39は、反応槽34から取り外した蓋31を移動させるときに、後述する蓋着脱機構6における外套部材61の爪64を係止させるためのものである(図11B参照)。このフランジ部39は、本体部38の上端から半径方向の外方側に向けて突出する円環状に設けられている。
図7Bに示したように、保持部36は、核酸精製用カートリッジ2における核酸抽出要素20を保持するためのものであり、一対の係止爪36Aおよびピン36Bを有している。
一対の係止爪36Aは、核酸抽出要素20における係止ヘッド24Bに係止させるためのものであり、本体部38の底面38Dから下方に突出して設けられている。各係止爪36Aは、先端部にフック部36Aaが設けられており、このフック部36Aaが揺動可能とされている。すなわち、一対の係止爪36Aのフック部36Aa相互は、互いに近接離間可能とされている。
ピン36Bは、核酸抽出要素20における筒状部24の凹部24Aに挿入するためのものであり、本体部38の底面38Dから下方に突出して設けられている。このピン36Bは、核酸抽出要素20を蓋31に保持させるときにガイドとして機能するとともに、蓋31に核酸抽出要素20を保持させた後において蓋31に対する核酸抽出要素20のガタツキを抑制するためのものである。
図1に示したように、核酸分析装置1の筐体10には、蓋11、表示部12および操作部13が設けられている。蓋11は、筐体10の内部が露出する状態と露出しない状態とを選択するためのものであり、筐体10の内部にカートリッジ2,3を出し入れする際には蓋11が開放される一方で、核酸の分析時および装置の非使用時には蓋11は閉じた状態とされる。表示部12は、分析結果などを表示するためのものであり、たとえばLCDにより構成されている。操作部13は、各種の設定を行うために、あるいは分析開始のためなどに操作される部分である。
図2および図3に示したように、筐体10の内部には、後述するピペット装置4、核酸精製用動作機構5、蓋着脱機構6、温調機構7、および測光機構8が設けられている。
ピペット装置4は、主として核酸増幅用カートリッジ3における混合液の調製を行うためのものであり、ノズル40を有している。このピペット装置4は、必要に応じて、核酸精製用カートリッジ2に対して試料もしくは洗浄液を供給するために利用される。
ノズル40は、液体を吸引・吐出可能なように、図外のポンプに接続されており、ノズル40の内部に吸引力を作用させる状態と吐出力を作用させる状態とが選択されるように構成されている。このノズル40は、ロボットアームなどの駆動機構(図示略)により上下方向および水平に移動可能とされており、その動作がCPUなどによって構成された制御部10によって制御される。ノズル40は、核酸増幅用カートリッジ3における試薬類保持槽321〜324、混合槽33、反応槽34、および核酸精製用カートリッジ2の収容槽27に移動することができる。ノズル40は、混合試料の調および反応槽34(反応検出部37)への混合試料の分注を行う場合には、図3に示したように先端部42にチップ43が装着される。チップ43は、図2に示したようにノズル40(ピペット装置4)の待機位置の隣接した部位において、ラック44において保持されている。このラック44に隣接した部位には、使用済みのチップ43を廃棄するための廃棄ボックス45が配置されている。
図2〜図4および図10に示したように、核酸精製用動作機構5は、核酸精製用カートリッジ2の核酸抽出要素20を利用して試料中の核酸を抽出する際に、核酸抽出要素20の動作を制御するためのものである。この核酸精製用動作機構5は、複数の挿入ピン50、筒状体51および支持フレーム52を有している。
複数の挿入ピン50は、核酸抽出要素20の筒状部24に嵌合させるためのものであり、支持フレーム52に対して一体動可能に支持されている。
筒状体51は、挿入ピン50に装着された核酸抽出要素20を取り外すためのものであり、挿入ピン50とは独立して上下方向に移動可能なように挿入ピン50を外套している。すなわち、筒状体51は、挿入ピン50から核酸抽出要素20を取り外す動作を行うとき以外は、核酸抽出要素20よりも上方(待機位置)に位置する一方で、挿入ピン50から核酸抽出要素20を取り外す動作を行うときには、挿入ピン50に対して相対的に下方に移動させられる。
支持フレーム52は、複数の挿入ピン50を、複数の核酸精製用カートリッジ2の並び方向に一定間隔隔てて支持するとともに、それらの挿入ピン50を移動せるための媒体として機能するものである。この支持フレーム52は、図外の駆動機構によって上下方向および前後方向に移動可能とされており、その動作は、たとえば図2に示した制御部10によって制御される。そのため、複数の挿入ピン50ひいてはそれらに装着された核酸抽出要素20は、支持フレーム52とともに上下および前後方向に移動することができる。これにより、複数の核酸抽出要素20は、固体マトリックス23に対する試料の含浸および固体マトリックス23の洗浄および余剰液の除去を一括して同時に行うことができる(図10参照)。
図11および図13に示したように、蓋着脱機構6は、核酸増幅用カートリッジ3の反応槽34から蓋31を取り外し、あるいは反応槽34に蓋31を装着するためのものであり、回転部材60および外套部材61を有している。回転部材60および外套部材61は、図外の駆動機構によって上下および水平方向に移動可能とされており、制御部10(図2参照)によってその動作が制御されるように構成されている
回転部材60は、核酸増幅用カートリッジ3の蓋31に回転力を作用させるとともに、蓋31を保持して蓋31を移動させるためのものであり、略円柱状の先端部62を有している。回転部材60の先端部62には、複数のリブ63が形成されている。複数のリブ63は、先端部62の周方向において、一定間隔隔てて上下方向に延びるように設けられており、各リブ63の下端部は、下方に向かうほど幅寸法が小さくなるテーパ状に形成されている。これらのリブ63は、図14に示すように蓋31の複数のリブ38Cに係合させるためのものであり、蓋31の凹部38Bに先端部62を挿入したときに、凹部38Bにおける互いに隣接するリブ38Cの間に位置するようになされている。
この構成では、回転部材60の先端部62を回転させたときに、先端部62のリブ63と凹部38Bのリブ38Cとが相互に干渉しあうので、先端部62が蓋31の凹部38Bにおいて空回転することを抑制でき、回転部材60の回転力を、蓋31に対して適切に付与することができる。また、凹部38Bにおける複数のリブ38Cの上端部が上方向に向うほど幅が細くなるテーパ状とされている一方で、回転部材60の先端部62における複数のリブ63は下端部が下方向に向うほど幅が細くなるテーパ状とされている。そのため、蓋31の凹部38Bに対しては、容易かつ確実に回転部材60の先端部62を挿入することができる。
外套部材61は、回転部材60を外套するものであり、円筒状に形成されている。この外套部材61は、フランジ部39に係止させるための爪64を有している。この爪64は、先端部にフック部65が設けられたものであり、フック部65が揺動可能とされている。爪64は、回転部材60の先端部62を蓋31の凹部38Bに挿入したときに、蓋31のフランジ部39に係止させられる。これにより、回転部材60に蓋31が一体化され、回転部材60および外套部材61を移動させることによって蓋31を移動させることができる。また、爪64は、回転部材60によって蓋31を反応槽34に再装着するときに、自動的に蓋31のフランジ部39との係止状態が解除されるように構成されている。
図15に示したように、温調機構7は、ヒートブロック70の温度制御をすることによって核酸増幅用カートリッジ3の反応検出部37に保持された液体の温度を制御するためのものである。ヒートブロック70の温度は、図外の温度センサによってモニタリングされており、温度センサでのモニタリング結果に応じて、ヒートブロック70の温度がフィードバック制御されるように構成されている。ヒートブロック70には、核酸増幅用カートリッジ3の反応検出部37の外観形状に対応した凹部71が形成されている。これにより、ヒートブロック7において反応槽34を選択的かつ効率的に温調することができる。ヒートブロック70にはさらに、凹部71に繋がる直線状の貫通孔72,73が設けられている。貫通孔72は後述する測光機構8の発光部80において出射された光を反応槽34の反応検出部37に導くためのものであり、貫通孔73は反応検出部37を透過した光を受光部81に導くためのものである。
測光機構8は、発光部80および受光部81を有している。発光部80は、貫通孔72を介して、反応検出部37に励起光を照射するためのものである。受光部81は、貫通孔73を介して、反応検出部37に励起光を照射したときの蛍光を受光するためのものである。測光機構8では、発光部80から連続的に励起光を照射する一方で、受光部81において連続的に蛍光の量をモニタリングすることにより、リアルタイムで核酸の増幅の程度を把握することができる。
次に、核酸分析装置1における動作を説明する。
核酸分析装置1において核酸の分析を行う場合には、まず図1ないし図4に示したように、核酸分析装置1に核酸精製用カートリッジ2および核酸増幅用カートリッジ3をセットする。セットするカートリッジ2,3の個数は、核酸精製用カートリッジ2の個数と核酸増幅用カートリッジ3の個数が同一であれば何個でもよい。なお、以下の説明においては、核酸精製用カートリッジ2として洗浄槽281〜283には予め洗浄液が保持されたものを使用し、試料保持槽29には核酸精製用カートリッジ2を核酸分析装置1にセットする前に試料を保持させておいたものとする。
次いで、核酸分析装置1にセットしたカートリッジ2,3の個数、およびカートリッジ2,3の種類(精製方法、増幅方法、測定方法)に応じた設定を、核酸分析装置1に設けられた表示部12を確認しつつ操作部13を操作することにより行う。上記設定が終了した場合には、核酸分析装置1において自動的に核酸の精製、増幅および測定が行われる。
図4に示したように、核酸の精製は、核酸精製用カートリッジ2において、核酸精製用動作機構5によって核酸抽出要素20を移動させることにより行われる。
より具体的には、まず、核酸精製用動作機構5の挿入ピン50を核酸精製用カートリッジ2におけるカートリッジ本体21の収容槽27の直上に位置させた状態とした上で、支持フレーム52を駆動して挿入ピン50を下動させた後に上動させる。挿入ピン50を下動させることにより、核酸抽出要素20の筒状部24に挿入ピン50が嵌合されて核酸精製用動作機構5に複数の核酸抽出要素20が一体化され、挿入ピン50を上動させることにより核酸抽出要素20が核酸精製用動作機構5によって持ち上げられる。
次いで、図10に示したように、支持フレーム52とともに挿入ピン50を移動させ、核酸精製用カートリッジ2における試料保持槽29に保持させた試料29Lに、核酸抽出要素20の固体マトリックス23を浸漬する。これにより、固体マトリックス23に試料29Lの核酸が担持する。
次いで、3つの洗浄槽281〜283に保持させた洗浄液28L1〜28L3に、固体マトリックス23を順次浸漬する。より具体的には、固体マトリックス23の洗浄は、核酸精製用動作機構5によって、各洗浄槽28 1 〜28 3 において固体マトリックス23を繰り返し上下動させることにより行われる。このとき、核酸精製用動作機構5においては、固体マトリックス23が洗浄液28L1〜28L3に完全に浸漬する状態と、固体マトリックス23が洗浄液28L1〜28L3の液面よりも上方に位置する状態とが繰り返えされるように制御される。
このような洗浄方法では、固体マトリックス23が液面よりも上方に位置する状態から洗浄液28L1〜28L3に浸漬されるように下方に移動させられるときに、固体マトリックス23が液面に叩き付けられる。このとき、固体マトリックス23が水平または略水平に支持されているために、固体マトリックス23には大きな負荷が作用する。その一方で、固体マトリックス23が洗浄液28L1〜28L3の内部を移動させられるときには、固体マトリックス23が水平または略水平に支持されているために固体マトリックス23の大きな移動抵抗が作用し、これが洗浄液28L 1 〜28L 3 に対流を生じさせる負荷として作用する。これらの作用により、固体マトリックス23からは、夾雑物を効率良く除去することができる。これにより、後において行われる核酸の増幅工程において夾雑物が核酸の増幅を阻害することを効果的に抑制し、核酸の分析を精度良く行えるようになる。このような効果は、固体マトリックス23を水平状態で移動させる場合に限らず、垂直軸に対して固体マトリックス23を傾斜させた状態で移動させた場合に得ることができる。
最後に、核酸抽出要素20の先端部分を余剰液除去槽21Aに保持させた吸水性部材21Ad,21Aeに接触させる。吸水部材21Ad,21Aeは、余剰液除去槽21Aの底壁21Aaおよび前後壁21Ab,21Acに接触して配置されているため、それらの全ての吸水部材21Ad,21Aeに核酸抽出要素20の先端部を接触させた場合には、核酸抽出要素20の先端部、主として固体マトリックス23および保持部材22の保持部26から余剰な洗浄液が効率良く除去される。その結果、後において核酸抽出要素20を用いて核酸の増幅を行う際に、洗浄液に含まれる不純物が核酸増幅を阻害することを抑制することができる。
なお、洗浄の終了した固体マトリクス23は、核酸精製用動作機構5に保持された状態で送風乾燥させてもよい。固体マトリックス23の洗浄が終了(場合によって送風乾燥が終了)した場合には、挿入ピン50から核酸抽出要素20を取り外し、核酸抽出要素20を核酸精製用カートリッジ2の収容槽27に再収容させる。挿入ピン50からの核酸抽出要素20の取り外しは、上述したように、核酸精製用動作機構5の筒状体51を下動させ、係止ヘッド24Bに筒状部51を干渉させることにより行われる。
このように、核酸精製用カートリッジ2においては、核酸を固体(核酸抽出要素20)に担持させることによって、固体マトリックス23を核酸分析装置1において容易に移動させることができる。この点において、核酸精製用カートリッジ2は、核酸分析を自動で行うことに寄与しているといえる。
核酸の増幅は、核酸増幅用カートリッジ3において混合試薬を調し、それを核酸増幅用カートリッジ3の反応槽34に分注した後、核酸を担持させた固体マトリックス23を、保持部材22とともに反応槽34に収容させることにより行われる。なお、反応槽34において混合試薬と固体マトリックス23が共存させられた場合には、採用する増幅方法の種類に応じて、ヒートブロック70(図15参照)の温度を制御して反応槽34の温調が行われる。
混合試薬の調整は、ピペット装置4におけるノズル40の先端部42にチップ43を装着した上で、核酸増幅用カートリッジ3における試薬類保持槽321〜324に保持された試薬類を順次、混合槽33に所定量ずつ分注した後、ピペット装置4によるピペッティング操作によって分注液を混合することにより行われる(図3参照)。
反応槽34に対する混合液の分注は、蓋着脱機構6によって反応槽34から蓋31を取り外しておいた上で、ピペット装置4によって行われる。図11Aおよび図11Bに示したように、蓋着脱機構6における蓋31の取り外しは、蓋着脱機構6の回転部材60の先端部62を蓋31の凹部38Bに挿入した後に、回転部材60を回転させつつ上動させることにより行われる。回転部材60を凹部38Bに挿入した場合には、外套部材61における爪64のフック部65が蓋31のフランジ部39に係止される。そのため、反応槽34から取り外された蓋31は、回転部材60および外套部材61とともに移動させることができる。このように、核酸分析装置1および核酸増幅用カートリッジ3においては、核酸の増幅ひいては核酸分析の全自動化を達成するために、核酸増幅用カートリッジ3から蓋31を容易かつ確実に取り外せるように工夫がなされている。
一方、反応槽34への固体マトリックス23の収容は、蓋着脱機構6および核酸増幅用カートリッジ3の蓋31を利用して行われる。より具体的には、固体マトリックス23の収容は、図12および図13に示したように、蓋31への核酸抽出要素20の保持、および反応槽34への蓋31の再装着といった一連の操作によって行われる。
図7Bおよび図12に示したように、蓋31への核酸抽出要素20の保持は、蓋着脱機構6によって蓋31を核酸精製用カートリッジ2における収容槽27の上方に位置させた後に蓋31を下動させることにより行われる。蓋31を下動させる過程においては、蓋31のピン36Bは、核酸抽出要素20における筒状部24の凹部24Aに挿入される。これにより、蓋31と核酸抽出要素20の筒状部24との位置関係が規制され、蓋31における一対の係止爪36Aは、筒状部24の係止ヘッド24Bに対応する位置に適切に導かれる。これにより、一対の係止爪36Aは、上方から係止ヘッド24Bに押し付けられる。その結果、一対の係止爪36Aは、それらのフック部36Aaが互いに離間するように変位させられる。さらに一対の係止爪36Aを下方に移動させた場合には、蓋31のピン36Bが筒状部24の凹部24Aにさらに深く挿入されるとともに、フック部36Aaが係止ヘッド24Bの下方に位置するときにフック部36Aaが互いに近づく。その結果、一対の係止爪36Aは、係止ヘッド24Bに係止させられ、蓋31に対して核酸抽出要素20が保持される。この状態は、蓋31のピン36Bが筒状部24の凹部24Aに挿入されていることにより強固に維持され、蓋31に対する核酸抽出要素20のガタツキを抑制することができる。
図13に示したように、蓋31の再装着は、蓋31を保持した回転部材60を、反応槽34に蓋31を位置合わせした状態において回転させることにより行われる。すなわち、位置合わせ状態において蓋31に対して回転力を付与することにより、蓋31は、反応槽34の筒状部35に螺合される。蓋31が筒状部35に螺合された場合には、外套部材61の爪64が蓋31のフランジ部39に係止した状態が解除される。これにより、回転部材60および外套部材61は、蓋31とは独立して移動することができる。一方、蓋31には核酸抽出要素20が保持されているために、反応槽34には核酸抽出要素20が収容される。上述のように、核酸抽出要素20には、保持部26の若干上方位置にOリング22Aが配置されているため、核酸抽出要素20の固体マトリックス23は、密閉空間において、反応槽34の底から一定距離離間した位置に固定される。反応検出部37には、先に混合試薬が収容されているので、反応検出部37においては、固体マトリックス23の全体が浸漬される。これにより、固体マトリックス23から核酸が溶出する一方で、溶出した核酸が試薬類と反応して増幅する。
このように、核酸分析装置1では、蓋31の着脱に必要な蓋着脱機構6を利用して、収容槽27の核酸抽出要素20を反応槽34に移送して収容させることができる。すなわち、核酸分析装置1では、核酸抽出要素20を移送させるために個別の機構を設ける必要はない。そのため、核酸の精製および核酸の増幅を1つの装置において行うに当たって、装置が複雑化することを回避して装置の大型化を抑制し、また制御すべき動作機構の数の増加を抑制することができるようになるため、この点においても有利である。
図15に示したように、核酸の測定は、反応槽34の上方を遮光部材9によって覆った状態とした後において、測光機構8によって行われる。
測光機構8においては、反応槽34における反応検出部37に対して発光部80によって励起光を照射する一方で、そのときの反応検出部37において生じる蛍光を、受光部81において受光する。上述したように、固体マトリックス23が測光機構8における測光を阻害しない位置にセットされるため、核酸分析装置1においては核酸の測定を精度良く行うことが可能となる。
以上に説明したように、核酸分析装置1においては、上述した構成の核酸精製用カートリッジ2および核酸増幅用カートリッジ3のセットを装着するだけで自動的に核酸の分析を行うことができる。核酸精製用カートリッジ2および核酸増幅用カートリッジ3においても、自動的に核酸の分析を行えるように様々な工夫がなされている。このため、核酸分析装置1、核酸精製用カートリッジ2および核酸増幅用カートリッジ3を用いた場合には、核酸の抽出操作および核酸の増幅操作において、カートリッジ2,3を核酸分析装置1にセットする以外に、ユーザの手操作に依存する部分がなくなる。そのため、核酸分析におけるユーザの負担が著しく軽減されるとともに、ユーザの技量差によって核酸の回収率がばらつくなどして測定再現性が悪化することもない。
本発明は、上述した実施の形態において説明した例には限定されない。たとえば核酸抽出要素の固体マトリックスは、必ずしも保持部材の垂直軸に対して水平または略水平な状態となるように保持させる必要はなく、固体マトリックスは必ずしも円盤状の形態に形成する必要もなく、また保持部材に固体マトリックスを保持させる構成も固体マトリックスを突き刺す構成には限定されない。さらには、核酸増幅用カートリッジにおける蓋は、必ずしもカートリッジ本体に対して完全に分離可能なように構成する必要はなく、カートリッジ本体に付属したまま反応槽の上部開口を開閉するものであってもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態について、図16ないし図33を参照して説明する。ただし、以下において参照する図面には、先に説明した本発明の第1の実施の形態と同様な要素について同一の符号を付してあり、それらについての重複説明は省略するものとする。
図16ないし図18に示した核酸分析装置1′は、先に説明した核酸分析装置1(図1など参照)と同様に、複数の核酸精製用カートリッジ2′および核酸増幅用カートリッジ3′を同一数だけ装着して使用するものであり、図17に示したようにピペット装置4′および核酸精製用動作機構5′を備えている。
図19に示したように、核酸精製用カートリッジ2′は、核酸分析装置1′における核酸の自動精製を可能ならしめるためのものであり、核酸抽出要素20′およびカートリッジ本体21′を有している。
核酸抽出要素20′は、試料中の核酸を担持させるためのものであり、図20A〜図20Cに良く表れているように、保持部材22′および固体マトリックス23′を有している。保持部材22′は、筒状部24′、フランジ部25′、および挟持部26′を有するものであり、たとえば全体が樹脂成型によって形成されている。
筒状部24′は、核酸抽出要素20′を移動させるときに利用されるものであり(図18および図22参照)、凹部24A′、欠落部24B′,24C′、および複数のリブ24D′を有している。凹部24A′は、後述するピペット装置4′におけるノズル40′の先端部42′(図26Aおよび図26B参照)あるいは核酸精製用動作機構5′の挿入ピン50′(図18参照)を嵌合させるためのものであり、円柱状に形成されている。欠落部24B′,24C′は、筒状部24′に弾性を付与するためのものであり、一対のV字状切欠24B′および矩形貫通孔24C′を含んでいる。すなわち、欠落部24B′,24C′は、凹部24A′にノズル40′の先端部42′あるいは挿入ピン50′を嵌合させたときに(図18および図22参照)、それらに弾性力を作用させて嵌合の確実化を図る役割を有している。複数のリブ24D′は、凹部24A′にノズル40′の先端部42′あるいは挿入ピン50′を嵌合させたときに、それらに摩擦力を作用させて嵌合の確実化を図るためのものであり、筒状部24′の内面において上下方向に延びるように形成されている。
フランジ部25′は、半径方向の外方側に向けて突出した環状に形成されている。このフランジ部25′は、核酸抽出要素20′を目的部位(核酸精製用カートリッジ2′の収容槽27および核酸増幅用カートリッジ3′の反応槽34′)に保持させておくときに、目的部位に設けられた段部27A,36′に係止するためのものである(図21および図33参照)。
挟持部26′は、固体マトリックス23′の端部を挟持して、保持部材22′に固体マトリックス23′を一体化させるためのものであり、一対の爪26a′により構成されている。一対の爪26a′は、核酸の回収効率を高めるために、固体マトリックス23′との接触面積が極力小さくなるように形成するのが好ましい。これは、固体マトリックス23′には、後述するように核酸が付着させられた後にその核酸が溶離・回収されるのであるが、一対の爪26a′が固体マトリックス23′と接触する部分に存在する核酸の溶離は容易ではないからである。
固体マトリックス23′は、試料中の核酸を担持させるためのものであり、たとえば濾紙に対して核酸抽出用の試薬類を担持させたものとして構成されている。この固体マトリックス23′は、短冊状に形成されており、挟持部26′に端部が挟持されることによって保持部材22′に吊持されている。
図19および図21に示したように、カートリッジ本体21′は、先に説明した核酸精製用カートリッジ2のカートリッジ本体21(図5および図6参照)と同様に、収容槽27、3つの洗浄槽281〜283、および試料保持槽29を有するものであるが、余剰液除去槽21A(図5および図6参照)は省略されている。もちろん、カートリッジ本体21′においても、余剰液除去槽を設けてもよい。
図23、図24Aおよび図24Bに示したように、核酸増幅用カートリッジ3′は、核酸分析装置1′における核酸の自動増幅および測定を可能ならしめるためのものであり、カートリッジ本体30′および蓋31′を有している。
カートリッジ本体30′は、5つの試薬類保持槽32′、混合槽33′、および反応槽34′を有するものであり、これらの槽32′,33′,34′は、たとえば樹脂成型により一体成型されている。
各試薬類保持槽32′は、核酸の増幅および測定に必要な試薬類を水溶液あるいは懸濁液の状態で保持するためのものである。各試薬類保持槽32′は、横断面が略矩形となっているが、正確には、4つの側面32A′の中央部が内方に向けて突出した形態となっている。すなわち、試薬類保持槽32′の四隅部は、90度以下の鋭角となっている。これにより、試薬類保持槽32′の側面32A′に試薬類が付着したままの状態となることを抑制でき、試薬類保持槽32′の底部に試薬類を保持させておくことができる。その結果、試薬類保持槽32′に保持された試薬類を有効に利用できるようになり、たとえ高価な試薬を使用する場合であっても、試薬類保持槽32′に保持させておくべき試薬の量を少なくして製造コストを低減することが可能となる。このような効果は、試薬類保持槽32′の側面32A′に溝やリブを設けることによっても得ることができる。
ここで、各試薬類保持槽32′に保持される試薬類の種類は、採用する増幅方法および測定方法に応じて選択される。増幅方法としては、たとえばPCR法、ICAN法、LAMP法あるいはNASBA法を採用することができる。
混合槽33′は、反応槽34′に供給する前に、試薬類保持槽32′に保持された2以上の試薬類を混合して混合試薬を調する際に利用されるものである。この混合槽33′もまた、先に説明した試薬類保持槽32′と同様に、四隅部の角度が90度以下の鋭角とされている。もちろん、混合槽33′の側面33A′に溝やリブを設けてもよい。
反応槽34′は、混合試薬および核酸抽出要素20′を収容するためのものであるとともに、核酸抽出要素20′に担持させた核酸と混合槽33′において調された混合試薬とを反応させる場を提供するものである(図33参照)。この反応槽34′は、筒状部35と反応検出部37を有しており、これらの間に段部36′が設けられている。この段部36′は、核酸抽出要素20′のフランジ部25′を係止させるための部分であり(図33参照)、反応検出部37の径を筒状部35の径よりも小さく設定することにより設けられている。
蓋31′は、反応検出部37の内部を密閉とするか否かを選択するためのものであり、反応槽34′(筒状部35)に対して着脱自在とされている。より具体的には、蓋31′は、回転力を作用させることにより、筒状部35に装着される状態と筒状部35(反応槽34′)から完全に分離した状態とを選択できるように構成されている。蓋31′は、先に説明した核酸増幅用カートリッジ3の蓋31(図9参照)と同様に、円筒状の本体部38およびフランジ部39を有している。ただし、核酸分析装置1′では、ピペット装置4′のノズル40′を利用して核酸抽出要素20′を移動させるように構成されているため、蓋31′においては、先に説明した核酸増幅用カートリッジ3の蓋31に設けられていた保持部36(図7Bおよび図9参照)は省略されている。
図16および図17に示したピペット装置4′は、核酸増幅用カートリッジ3′での混合液調、混合液の反応槽34′への移動を行うためのものである。このピペット装置4′は、図25ないし図28に示したように、ノズル40′および取り外し部材41′を有している。
ノズル40′は、液体を吸引・吐出可能であるとともに、上下方向および水平に移動可能とされており、核酸増幅用カートリッジ3′における試薬類保持槽32′、混合槽33′、反応槽34′、および核酸精製用カートリッジ2′の収容槽27に移動することができるようになされている(図16および図17参照)。ノズル40′は、混合試料の調整および反応槽34′(反応検出部37)への混合試料の分注を行う場合には、図25Aおよび図25Bに示したように先端部42′にチップ43が装着される。ノズル40′の先端部42′におけるチップ43を装着する部分には、Oリング42a′が嵌め込まれており、先端部42′にチップ43を装着したときに、先端部42′とチップ43との接触部分の密着性が高められるようになされている。
ピペット装置4′はさらに、図22に示したように、核酸精製用カートリッジ2′の収容槽27から核酸抽出要素20′を取り出し、この核酸抽出要素20′を、図31に示したように、核酸増幅用カートリッジ3′の反応槽34′に移動させる役割を有している。このような動作を行う場合には、図26Aおよび図26Bに示したように、ノズル40′の先端部42′に核酸抽出要素20′が装着される。
図27および図28に示したように、取り外し部材41′は、ノズル40′の先端部42′に装着されたチップ43あるいは核酸抽出要素20′を取り外すためのものである。この取り外し部材41′は、ノズル40′とは独立して上下方向に移動可能なように、ノズル40′を外套している。すなわち、取り外し部材41′は、ノズル40′の先端部42′からチップ43あるいは核酸抽出要素20′を取り外す動作を行うとき以外は、チップ43の端面43aあるいは核酸抽出要素20′のフランジ部25′よりも上方(待機位置)に位置する一方で、それらを取り外す動作を行うときには、ノズル40′に対して相対的に下方に移動させられる。取り外し部材41′を待機位置から下方に一定距離以上移動させた場合には、取り外し部材41′の端面41A′がチップ43の端面43aあるいは核酸抽出要素20′のフランジ部25′に干渉してチップ43あるいは核酸抽出要素20′に下方に向けた力が作用させられる。これにより、ノズル40′の先端部42′からチップ43あるいは核酸抽出要素20′が取り外される。
図16ないし図18に示したように、核酸精製用動作機構5′は、核酸抽出要素20′を利用して試料中の核酸を抽出する際に、核酸抽出要素20′の動作を制御するためのものである。この核酸精製用動作機構5′は、先に説明した核酸分析装置1の核酸精製用動作機構5(図2〜図4参照)と同様に、複数の挿入ピン50′、筒状体51および支持フレーム52を有している。ただし、各挿入ピン50′は、核酸抽出要素20′の筒状部24′に適切に嵌合できるように、ノズル40′の先端部42′と類似した形状とされている。
次に、核酸分析装置1′における動作を説明する。
核酸分析装置1′では、図16ないし図18に示したように、核酸分析装置1′に核酸精製用カートリッジ2′および核酸増幅用カートリッジ3′をセットした上で、カートリッジ2′,3′の個数および種類(精製方法、増幅方法、測定方法)に応じた設定を行うことにより自動的に核酸の精製、増幅および測定が行われる。
核酸の精製は、図18に示したように、核酸精製用カートリッジ2′において、核酸精製用動作機構5′によって核酸抽出要素20′を移動させることにより行われる。より具体的には、まず、核酸精製用動作機構5′の複数の挿入ピン50′を、対応する核酸抽出要素20′の筒状部24′に嵌合させ、複数の核酸抽出要素20′を一体化的に移動可能な状態とする。この状態において、核酸精製用動作機構5′によって複数の核酸抽出要素20′の固体マトリックス23′を試料に浸漬させて各固体マトリックス23′に試料中の核酸を付着させる。
最後に、3つの洗浄槽281〜283(図19参照)の洗浄液に、固体マトリックス23′を順次浸漬する。より具体的には、固体マトリックス23′の洗浄は、核酸精製用動作機構5′によって、各洗浄槽281〜283(図19参照)において固体マトリックス23′を繰り返し上下動させることにより行われる。このとき、核酸精製用動作機構5′は、固体マトリックス23′が洗浄液に完全に浸漬する状態と、固体マトリックス23′が洗浄液の液面よりも上方に位置する状態とが繰り返えされるように制御される。このような洗浄方法では、固体マトリックス23′からは、夾雑物を効率良く除去することができるため、後において行われる核酸の増幅工程において夾雑物が核酸の増幅を阻害することを効果的に抑制し、核酸の分析を精度良く行えるようになる。
なお、洗浄の終了した固体マトリクス23′は、核酸精製用動作機構5′に保持された状態で送風乾燥させてもよい。固体マトリックス23′の洗浄が終了(場合によって送風乾燥が終了)した場合には、挿入ピン50′から核酸抽出要素20′を取り外し、核酸抽出要素20′を核酸精製用カートリッジ2′の収容槽27に再収容させる(図19および図21参照)。
核酸精製用カートリッジ2′においては、目的核酸を固体(核酸抽出要素20′)に担持させることによって、目的核酸を核酸分析装置1′において容易に移動させることができる。この点において、核酸精製用カートリッジ2′は、核酸分析を自動で行うことに寄与しているといえる。
核酸の増幅は、核酸増幅用カートリッジ3′において混合試薬を調製し、それを核酸増幅用カートリッジ3′の反応槽34′に分注した後、核酸を担持させた固体マトリックス23′を、保持部材22′とともに反応槽34′に移送させることにより行われる。なお、図33に示したように、反応槽34′において混合試薬と固体マトリックス23′が共存させられた場合には、採用する増幅方法の種類に応じて、ヒートブロック70の温度を制御して反応槽34′の温調が行われる。
混合試薬の調製および反応槽34′に対する混合試薬の分注は、先に説明した核酸分析装置1(図1など参照)と同様にピペット装置4′の動作を制御することにより行われる。なお、反応槽34′に混合試薬を分注する場合には、図31に示したように、蓋着脱機構6によって反応槽34′から蓋31′を取り外しておく必要があるが、そのような蓋31′の取り外しは、図29および図30に示したように、蓋着脱機構6の回転部材60を蓋31′の凹部38B′に挿入した後に、回転部材60を回転させつつ上動させることにより行われる。回転部材60を凹部38B′に挿入した場合には、回転部材60の爪64′が蓋31′のフランジ部39′に係止されるので反応槽34′から取り外された蓋31′は、回転部材60とともに移動させることができる。このように、核酸分析装置1′および核酸増幅用カートリッジ3′においては、核酸の増幅ひいては核酸分析の全自動化を達成するために、核酸増幅用カートリッジ3′から蓋31′を容易かつ確実に取り外せるように工夫がなされている。
一方、固体マトリックス23′の反応槽34′への移送は、核酸精製用カートリッジ2′の収容槽27からの核酸抽出要素20′の取り出し(図22参照)、核酸増幅用カートリッジ3′の反応層34′への核酸抽出要素20′の移動、およびノズル40′からの核酸抽出要素20′の取り外し(図28および図31参照)といった一連の操作によって行われる。
核酸抽出要素20′の取り出しは、図22に示したように、核酸精製用カートリッジ2′における収容槽27の直上にノズル40′を位置させた後にノズル40′を下動させてノズル40′の先端部42′を核酸抽出要素20′の筒状部24′に嵌合させた後に、ノズル40′を上動させることにより行われる。ここで、筒状部24′には、V字状切欠24B′および矩形貫通孔24C′といった欠落部24B′,24C′が形成されている(図20A〜図20C参照)。そのため、筒状部24′にノズル40′の先端部42′を嵌合させた場合には、先端部42′に対して適切な弾性力を付与することができる。これにより、核酸抽出要素20′は、筒状部24′において、ノズル40′の先端部42′に対して適切に保持される。
核酸抽出要素20′の移動は、ノズル40′の先端部42′に核酸抽出要素20′を保持させた状態において、ノズル40′を移動させることにより行われる。
核酸抽出要素20′の取り外しは、図28および図31に示したように、核酸抽出要素20′とともにノズル40′の先端部42′を反応槽34′の内部に位置させ、取り外し部材41′をノズル40′に対して相対的に下方に移動させることにより行われる。すなわち、取り外し部材41′を下方に移動させた場合には、核酸抽出要素20′のフランジ部25′に取り外し部材41′が干渉し、フランジ部25′ひいては核酸抽出要素20′に対して下方に向けた力が作用してノズル40′の先端部42′から核酸抽出要素20′が取り外される。
このように、核酸分析装置1′では、試料の調整に必要なノズル40′および取り外し部材41′を利用して核酸抽出要素20′の移動を行えるようになされている。そのため、核酸の精製および核酸の増幅を1つの装置において行うに当たって、本来必要な構成(ピペット装置4′)を利用しているために、装置が複雑化することが抑制される。また、制御すべき動作機構の数の増加を抑制することができるようになるため、この点においても装置構成の複雑化および大型化を抑制する上で有利である。
図31に示したように、ノズル40′の先端部42′から取り外された核酸抽出要素20′は、保持部材22′のフランジ部25′において、反応槽34′の段部36′に係止される。このとき、固体マトリックス23′は、その下端が反応検出部37の底部から一定距離離間した状態において反応検出部37に収容される。反応検出部37には、先に混合試薬が収容されているので、反応検出部37においては、固体マトリックス23′の全体が浸漬される。これにより、固体マトリックス23′から核酸が溶出する一方で、溶出した核酸が試薬類と反応して増幅する。
上述したように、固体マトリックス23′の下端は、反応検出部37の底部から離間した状態となっている。より具体的には、固体マトリックス23′の下端位置は、測光機構8により反応検出部37への励起光の照射および蛍光の測定を阻害しない位置とされる(図33参照)。これにより、核酸を付着させるのに固体担体を使用する場合であっても、その固体担体が核酸の測定において、それを阻害することはない。
核酸の測定は、図32および図33に示したように、反応槽34′の蓋31′を再装着した状態とする一方で、反応槽34′の上方を遮光部材9によって覆った状態とした後において、測光機構8によって行われる。測光機構8により核酸の測定は、先に説明した核酸分析装置1(図1など参照)と同様にして行われる。
以上に説明したように、核酸分析装置1′においても、先に説明した核酸分析装置1(図1など参照)と同様に、上述した構成の核酸精製用カートリッジ2′および核酸増幅用カートリッジ3′をセットするだけで自動的に核酸の分析を行うことができ、核酸の抽出操作および核酸の増幅操作において、カートリッジ2′,3′を核酸分析装置1にセットする以外に、ユーザの手操作に依存する部分がなくなる。そのため、核酸分析におけるユーザの負担が著しく軽減されるとともに、ユーザの技量差によって核酸の回収率がばらつくなどして測定再現性が悪化することもない。
[実施例]
以下においては、上述した本発明の第1の実施の形態に係る核酸精製用カートリッジ、核酸増幅用カートリッジおよび核酸分析装置を利用して、目的核酸としてのヒトゲノムDNAを、適切に精製・増幅させることができるか否かSNP(Single Nucleotide Polymorphism)タイピングによりを検討した。
(核酸精製用カートリッジの形成)
核酸精製用カートリッジは、カートリッジ本体(図中の符号21参照)および核酸抽出要素(図中の符号20参照)を次に説明する方法により形成した後に、カートリッジ本体の収容槽(図中の符号27参照)に核酸抽出要素を収容させ、かつ余剰液除去槽(図中の符号21A参照)に吸水性部材(図中の符号21Ad,21Ae参照)としての発泡樹脂((株)イノアックコーポレイション製、発泡ウレタンSAQ)を固定することにより形成した。吸水性部材21Adの寸法は5mm×8mm×17mmとし、吸水性部材21Aeの寸法は5mm×11mm×14mmとした。
カートリッジ本体は、PETを用いた樹脂成型により図5および図6に示す形態に形成した。
一方、核酸抽出要素は、保持部材(図中の符号22参照)に固体マトリックス(図中の符号23参照)を保持させることにより形成した。固体マトリックスは、FTA Classic Card (Whatman社、Cat. No. WB120205)を、パンチを用いてφ2.5mmの円盤状に打ち抜くことにより形成した。ここで、FTA Classic Cardは、セルロースを主成分とする核酸収集用濾紙である。一方。保持部材は、PETを用いた樹脂成型により図7Aおよび図7Bに示す形態に形成した。ただし、樹脂成型直後の保持部材においては、係止片(図中の符号26C参照)は形成されておらず、係止片は、固体マトリックスの中心に穴を開けて保持部材のピン状部(図中の符号26B参照)に差し込んだ後に、ピン状部の先端部を熱処理することにより形成した。係止片は、上述のようにピン状部からの固体マトリックスの抜け落ちを防止するためのものである。
(核酸増幅用カートリッジの形成)
核酸精製用カートリッジは、カートリッジ本体(図中の符号30参照)および蓋(図中の符号31参照)を、PETを用いた樹脂形成により図8および図9に示した形態に形成した後に、カートリッジ本体の反応槽(図中の符号34参照)に蓋を螺号することにより形成した。
(核酸の精製)
核酸の精製は、核酸精製用カートリッジ本体の試料保持槽(図中の符号29参照)に試料(図中の符号29L参照)を、3つの洗浄槽(図中の符号281〜283参照)に洗浄液(図中の符号28L1〜28L3参照)をそれぞれ分注した上で、核酸分析装置(図中の符号1参照)に核酸精製用カートリッジをセットし、核酸分析装置において自動的に行った。
試料としては、全血(抗凝固剤:へパリンNa含有)を用い、その分注量は120μLとした。洗浄液28L1としては下記表1に示す洗浄液I(800μL)を用い、洗浄液28L2としては下記表1に示す洗浄液I(600μL)を用い、洗浄液28L3としては下記表1に示す洗浄液II(600μL)を用いた。
一方、核酸分析装置においては、核酸抽出要素(固体マトリックス)が次に説明する動作を行うように核酸精製用動作機構(図中の符号5参照)を駆動させた。
まず、核酸動作機構における挿入ピン(図中の符号50参照)を保持部材の筒状部(図中の符号24参照)に嵌合させた状態とし、固体マトリックスを試料保持槽中の全血に浸漬させた。次いで、3つの洗浄槽281〜283を利用して固体マトリックスを洗浄した。固体マトリックスの洗浄は、使用する洗浄槽281〜283を洗浄槽281→洗浄槽282→洗浄槽283の順で順次変えつつ行った。洗浄槽281を利用した固体マトリックスの洗浄は、固体マトリックス23の全体が洗浄液28L1の液面よりも上方に位置する状態と28L1に完全に浸漬する位置との間20Hzで1分間上下動させることにより行った。一方、洗浄槽282,283を利用した固体マトリックスの洗浄においては、上下動させる時間を2分間とした以外は、洗浄槽281を利用する場合と同様にして行った。
次いで、後に行う核酸増幅反応を阻害する可能性のある余剰な成分の除去を行った。余剰な成分の除去は、固体マトリックスおよび保持部材の先端部分(係止片、ピン状部、テーパ部(図中の符号26参照)を吸水性部材(図中の符号21Ad,21Ae参照)に押し付けることにより行った。
(核酸の増幅確認)
核酸の増幅は、下記表2の試薬混合液A,Bを用いたPCR法により行い、核酸の増幅の程度は、薬剤代謝酵素をコードする塩基配列であるCYP2C19*2*3のSNP(Single Nucleotide Polymorphism)タイピングにより確認した。
より具体的には、核酸の増幅確認は、試薬混合液Aまたは試薬混合液Bを核酸増幅用カートリッジ本体の試薬類保持槽(図中の符号321,322参照)に個別に分注した上で、核酸分析装置(図中の符号1参照)に核酸増幅用カートリッジをセットし、核酸分析装置において自動的に行った。
核酸分析装置においては、核酸抽出要素(固体マトリックス)を次に説明する動作を行うようにピペット装置(図中の符号4)、蓋着脱機構(図中の符号6参照)および温調機構(図中の符号7)を駆動させた。
まず、ピペット装置のノズル(図中の符号40)にチップ(図中の符号43)を装着させた上で、試薬類保持槽32 1 から試薬混合液Aを30μL、試薬類保持槽32 2 から試薬混合液Bを30μL採取して混合槽(図中の符号33参照)分注した。次いで、ノズルの吸排活動により試薬混合液A,Bの攪拌・混合を行って反応液を調製した後、ノズルによって反応液を50μL採取して、それを反応槽(図中の符号34参照)に分注した。
その一方で、蓋着脱機構の回転部材(図中の符号60参照)により核酸増幅用カートリッジから蓋(図中の31参照)を取り外した上で、蓋を移動させて蓋の係止爪(図中の符号36A参照)を核酸抽出要素の係止ヘッド(図中の符号24B参照)に係合させ、それらを一体化させた。
次いで、蓋着脱機構により蓋とともに核酸抽出要素20を核酸増幅カートリッジの反応槽(図中の符号34参照)に収容させつつ、回転部材回転させることで反応槽を蓋により閉鎖した。これにより、固体マトリックスは、反応液に完全に浸漬された状態で反応槽(図中34)に密閉保持された。
次いで、温調機構のヒートブロック(図中の符号70参照)を駆動させて、反応槽における反応液の温度を変化させて目的核酸の増幅を行った。温度変化は、95℃で120秒→(95℃で4秒+54℃で60秒)を50サイクル→95℃で60秒→45℃で90秒とした。
SNPタイピングにおいては、Tm解析を採用した。Tm解析に当たっては、核酸増幅させた反応液の温度を45℃から95まで1℃/3秒の割合で上昇させていき、そのときの蛍光強度をリアルタイムで測定した。測定波長は515〜555nm(*2)、585〜750nm(*3)の2種類とし、それぞれの測定波長((*2),(*3))についてSNPタイピングを行った。それぞれの波長において蛍光強度を測定した結果については、横軸を温度、縦軸を蛍光強度の微分値(変化率)として図34に示した。
図34から分かるように、測定波長*2および*3のいずれの場合であっても、測定される蛍光強度の微分値(変化率)の変化曲線には、2つのピークが現れている。これらのピークは、SNPタイプ野生型と変異型に対応するものであり、それらを区別できる程度に目的核酸が十分に増幅されていることが確認できる。
本実施例においては、実施例1と同様にして核酸の精製を行った後、増幅法としてICAN法を採用してSNPタイピングを行った。増幅試薬としてTaKaRa社製 Cycleave ICAN human ALDH2 Typing Kit (Cat. No. CY101)を使用し、カートリッジ本体の試薬類保持槽(図中の符号321,322参照)に保持させるべき試薬混合液A,Bの組成は表3に示した通りとした。それらの試薬混合液A,Bの分注量、混合条件および反応液の分注量は実施例1の場合と同様とした。
(反応条件)
反応は、反応液に固体マトリックスを浸漬させた状態において、70℃で300秒インキュベートした後に60℃で一時間行った。この一時間の反応は、蛍光強度の測定を行わない第1ステップ30秒および蛍光強度の測定を行う第2ステップ30秒を1サイクルとする60サイクルからなり、蛍光強度は各サイクルの第2ステップにおいてリアルタイムで測定した。測定波長は515〜555nm(mt)、585〜750nm(wt)の2種類とし、SNPタイプ変異型および野生型のそれぞれについてSNPタイピングを行った。それぞれの波長において蛍光強度を測定した結果については、横軸をサイクル数、縦軸を蛍光強度として図35に示した。
図35から分かるように、一定のサイクル数が経過した後においてはSNPタイプ変異型に対応する蛍光強度が増加している一方で、SNPタイプ野生型に対応する蛍光強度についてはサイクル数を増加させても殆ど蛍光強度が増加していない。したがって、図35に示した結果からは、SNPタイプ野生型と変異型を区別できる程度に目的核酸(SNPタイプ野生型)が選択的かつ十分に増幅されていることが確認できる。
本実施例においては、実施例1と同様にして核酸の精製を行った後、増幅法としてLAMP法を採用してSNPタイピングを行った。増幅試薬としては栄研化学社製 Loopamp P450 タイピング試薬キット(CYP2C9*3)を使用し、カートリッジ本体の試薬類保持槽(図中の符号32 1 ,32 2 参照)に保持させるべき試薬混合液A,Bの組成は表に示した通りとした。それらの試薬混合液A,Bの分注量、混合条件および反応液の分注量は実施例1の場合と同様とした。
(反応条件)
反応は、反応液に固体マトリックスを浸漬させた状態において、95℃で5分処理した後に60℃で一時間反応させた。この一時間の反応は、蛍光強度の測定を行わない第1ステップ30秒および蛍光強度の測定を行う第2ステップ30秒を1サイクルとする60サイクルからなり、蛍光強度は各サイクルの第2ステップにおいて、測定波長を515〜555nmとしてリアルタイムで測定した。各サイクルの第2ステップにおいて蛍光強度を測定した結果については、横軸をサイクル数、縦軸を蛍光強度として図36に示した。
図36から分かるように、一定のサイクル数が経過した後においてはSNPタイプ変異型に対応する蛍光強度(図中のAアレル)が増加している一方で、SNPタイプ野生型に対応する蛍光強度(図中のGアレル)についてはサイクル数を増加させても殆ど蛍光強度が増加していない。したがって、図36に示した結果からは、SNPタイプ野生型と変異型を区別できる程度に目的核酸(SNPタイプ野生型)が選択的かつ十分に増幅されていることが確認できる。
実施例1〜3の結果から分かるように、本発明の第1の実施の形態において説明した核酸抽出要素を用いて核酸の精製を行った場合に、PCR法に限定されず、増幅方法としてICAN法あるいはLAMP法を採用した場合であっても、適切に目的核酸を増幅させることができる。上述のように、ICAN法およびLAMP法は、目的核酸の精製度が高くない場合には、十分な増幅反応を起こさせることができないのである。そのため、本発明の第1の実施の形態において説明した精製方法は、目的核酸を適切に精製できるものであるといえる。したがって、上述の精製方法は、PCR法ばかりでなく、それ以外の増幅方法の前処理として適切に適用することができ、また増幅時間の短縮化に寄与できるといえる。
また、実施例1〜3では、本発明の第1の実施の形態において説明した核酸精製用カートリッジ、核酸抽出用カートリッジおよび核酸分析装置を用いることにより、核酸の分析を自動で行えることが確認された。この場合において、核酸増幅方法としては、PCR法に限らず、PCR法を初めとする公知の種々の増幅方法を採用できることも確認された。
なお、実施例1〜3においては、本発明の第1の実施の形態において説明した例に基づいて核酸が適切に増幅されているかについて検討したが、本発明の第2の実施の形態において説明した構成を採用した場合であっても核酸を適切に増幅でき、上述した効果を享受できるものと考えられる。
核酸分析装置の一例を説明するための全体斜視図である。 図1に示した核酸分析装置の内部構成を示す平面図である。 図2のIII−III線に沿う断面図である。 のIV−IV線に沿う断面図である。 核酸精製用カートリッジの一例を示す全体斜視図である。 図5のVI−VI線に沿う断面図である。 図7Aは核酸精製用カートリッジにおける核酸抽出要素の全体斜視図であり、図7Bは核酸抽出要素の断面図である。 核酸増幅用カートリッジの全体斜視図である。 図8のIX−IX線に沿う断面図である。 固体マトリックスの洗浄動作を説明するための要部断面図である。 核酸増幅用カートリッジからの蓋の取り外し動作を示す要部断面図である。 蓋を利用した核酸抽出要素の取り出し動作を説明するための要部断面図である。 図13Aは核酸増幅用カートリッジの反応槽に核酸抽出要素を収容する動作を説明するための要部断面図であり、図13Bは反応槽から蓋を取り外す動作を説明するための要部断面図である。 図13BのXIV−XIV線に沿う断面図である。 温調機構および測定機構を説明するための、図2のXV−XV線に沿う断面に相当する断面図である。 核酸分析装置の一例を説明するための内部構成を示す平面図である。 図16のXVII−XVII線に沿う断面図である。 図16のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。 核酸精製用カートリッジの一例を示す全体斜視図である。 図20Aは核酸精製用カートリッジにおける核酸抽出要素を示す斜視図、図20Bはその平面図、図20Cは図20AのXXc−XXc線に沿う断面図である。 核酸精製用カートリッジの容器における図19のXXI−XXI線に沿った断面に相当する断面図である。 容器における収容槽から核酸抽出要素を取り出す操作を示す要部断面図である。 核酸増幅用カートリッジの全体斜視図である。 図24Aは図23のXXIVa−XXIVa線に沿う断面図であり、図24Bは図24Aにおいて蓋を分離した状態を示す断面図である。 ノズルに対するチップの取り付け動作を説明するための要部正面図である。 ノズルに対する核酸抽出要素の取り付け動作を説明するための要部正面図である。 ノズルからのチップの取り外し動作を説明するための要部正面図である。 ノズルからの核酸抽出要素の取り外し動作を説明するための要部正面図である。 核酸増幅用カートリッジの蓋に対する回転部材の挿入動作を示す要部断面図である。 核酸増幅用カートリッジの蓋を取り外す動作を説明するための要部断面図である。 核酸増幅用カートリッジの反応槽に核酸抽出要素を収容する操作を示す要部断面図である。 核酸増幅用カートリッジの蓋を再装着する動作を説明するための要部断面図である。 測定機構を説明するための、図16のXXXIII−XXXIII線に沿う断面に相当する断面図である。 実施例1(PCR法)における蛍光強度の測定結果を示すグラフであり、横軸を温度、縦軸を蛍光強度の微分値として示したものである。 実施例2(ICAN法)における蛍光強度の測定結果を示すグラフであり、横軸をサイクル数、縦軸を蛍光強度として示したものである。 実施例3(LAMP法)における蛍光強度の測定結果を示すグラフであり、横軸をサイクル数、縦軸を蛍光強度として示したものである。

Claims (31)

  1. 試料から目的核酸を抽出し、かつ抽出した核酸を担持させるための核酸抽出要素と、
    上記核酸抽出要素とは別体として形成され、かつ上記核酸抽出要素を収容しておくための収容槽を有する容器本体と、
    を備えている、核酸抽出用容器。
  2. 上記核酸抽出要素は、目的核酸を担持させるための固体マトリックスと、この固体マトリックスを保持するための保持部材と、を有している、請求項1に記載の核酸抽出用容器。
  3. 上記固体マトリックスは、上記保持部材の垂直軸に対して傾斜した状態で保持されている、請求項2に記載の核酸抽出用容器。
  4. 上記固体マトリックスは、上記垂直軸に対して水平または略水平に支持されている、請求項3に記載の核酸抽出用容器。
  5. 上記固体マトリックスは、上記保持部材に突き刺された状態で上記保持部材に支持されている、請求項3に記載の核酸抽出用容器。
  6. 上記保持部材は、端部に向かうほど縮径するテーパ部と、上記テーパ部から延出するとともに、上記固体マトリックスに貫通させるためのピン状部と、上記固体マトリックスが上記ピン状部から離脱するのを抑制するための係止片と、を有している、請求項5に記載の核酸抽出用容器。
  7. 上記固体マトリックスは、円盤状に形成されている、請求項3に記載の核酸抽出用容器。
  8. 上記固体マトリックスは、シート状に形成されており、かつ上記保持部材に対して吊持された状態で保持されている、請求項2に記載の核酸抽出用容器。
  9. 上記保持部材は、上記固体マトリックスの端部を挟持して上記固体マトリックスを吊持するための挟持部を有している、請求項8に記載の核酸抽出用容器。
  10. 上記容器本体は、上記固体マトリックスに付着した余剰な成分を除去するのに必要な洗浄液を保持するための1以上の洗浄槽を有している、請求項2に記載の核酸抽出用容器。
  11. 上記容器本体には、上記固体マトリックスまたはその周囲に付着した余剰な洗浄液を除去するための余剰洗浄液除去手段が設けられている、請求項10に記載の核酸抽出用容器。
  12. 上記余剰洗浄液除去手段は、吸水性部材を含んでいる、請求項11に記載の核酸抽出用容器。
  13. 核酸分析装置にセットして使用するカートリッジとして構成されている、請求項1に記載の核酸抽出用容器。
  14. 上記核酸分析装置が、上記収容槽から目的核酸を担持させた核酸抽出要素を取り出して、当該核酸抽出要素を他の部位に移送するための移送部材を備えている場合において、
    上記核酸抽出要素は、上記移送部材に係合させるための係合部を有している、請求項13に記載の核酸抽出用容器。
  15. 上記係合部は、上記移送部材の先端部を嵌合させるために筒状に形成されている、請求項14に記載の核酸抽出用容器。
  16. 上記係合部は、上記移送部材の先端部を嵌合させたときに、上記移送部材に弾性力を作用させることを可能とするための1以上の欠落部を有している、請求項15に記載の核酸抽出用容器。
  17. 上記1以上の欠落部は、スリット、切欠および貫通孔のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項16に記載の核酸抽出用容器。
  18. 上記保持部材は、上記移送部材と上記係合部との嵌合状態を解除するために利用される突出部を有している、請求項14に記載の核酸抽出用容器。
  19. 上記突出部は、外方側に向けて突出したフランジである、請求項18に記載の核酸抽出用容器。
  20. 上記収容槽は、当該収容槽に上記核酸抽出要素を収容したときに、上記突出部を係止するための段部を有している、請求項18に記載の核酸抽出用容器。
  21. 目的核酸を担持させた固体マトリックスから、洗浄液を用いて目的核酸以外の余剰な成分を除去する方法であって、
    洗浄液に対して上記固体マトリックスを相対的に上下方向に移動させることによって、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬される状態と、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬されない状態と、を繰り返す、固体マトリックスの洗浄方法。
  22. 上記固体マトリックスが洗浄液に浸漬される状態と浸漬されない状態との繰り返しは、上下方向に対して上記固体マトリックスを傾斜させた状態で行われる、請求項21に記載の固体マトリックスの洗浄方法。
  23. 上記固体マトリックスが洗浄液に浸漬される状態と浸漬されない状態との繰り返しは、上記方向に対して上記固体マトリックスを水平または略水平な状態として行われる、請求項22に記載の固体マトリックスの洗浄方法。
  24. 上記洗浄液に対する浸漬が終了した後に、上記固体マトリックスに付着した余剰な洗浄液を吸水性部材により除去する、請求項21に記載の固体マトリックスの洗浄方法。
  25. 目的核酸を担持させるための固体マトリックスと、この固体マトリックスを保持するための保持部材と、を有する核酸抽出要素を用いて目的核酸を精製する方法であって、
    上記固体マトリックスに対して試料を含浸させて試料中の目的核酸を上記固体マトリックスに担持させる核酸担持ステップと、
    上記固体マトリックスに付着した目的核酸以外の余剰な成分を、洗浄液を用いて除去する洗浄ステップと、を含み、かつ、
    上記洗浄ステップは、洗浄液に対して上記核酸抽出要素を相対的に上下方向に移動させることによって、上記核酸抽出要素が上記洗浄液に浸漬される状態と、上記核酸抽出要素が上記洗浄液に浸漬されない状態と、を繰り返すことにより行われる、核酸精製方法。
  26. 上記核酸抽出要素として、上記保持部材の垂直軸に対して傾斜した状態で上記保持部材に上記固体マトリックスを保持させたものを用い、かつ、
    上記洗浄ステップは、上下方向に対して上記固体マトリックスを傾斜させた状態で、上記抽出要素を上下方向に移動させることにより行われる、請求項25に記載の核酸精製方法。
  27. 上記洗浄ステップは、上下方向に対して上記固体マトリックスを直交または略直交させた姿勢で、上記核酸抽出要素を上下方向に移動させることにより行われる、請求項26に記載の核酸精製方法。
  28. 上記洗浄ステップは、上記洗浄液に対する上記固体マトリックスの繰り返しの浸漬が終了した後に、上記固体マトリックスに付着した余剰な洗浄液を吸水性部材により除去する作業を含んでいる、請求項25に記載の核酸精製方法。
  29. 目的核酸を担持させた固体マトリックスから、洗浄液を用いて目的核酸以外の余剰な成分を除去するための機構であって、
    上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬される状態と、上記固体マトリックスが上記洗浄液に浸漬されない状態と、が繰り返されるように、洗浄液に対して固体マトリックスを相対的に上下方向に移動させるように構成されている、固体マトリックスの洗浄機構。
  30. 上記固体マトリックスを上下方向に対して傾斜させた状態で、上記固体マトリックスを上下方向に移動させるように構成されている、請求項29に記載の固体マトリックスの洗浄機構。
  31. 上記固体マトリックスを上下方向に対して直交または略直交させた姿勢で、上記固体マトリックスを上下方向に移動させるように構成されている、請求項30に記載の固体マトリックスの洗浄機構。
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