JPWO2005113002A1 - ムスカリン受容体作動薬を含有する眼科用経皮吸収型製剤 - Google Patents
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Abstract
Description
涙液分泌を促進させる薬物のひとつに、例えばピロカルピン等のムスカリン受容体作動薬が知られている。ムスカリン受容体は、ムスカリン性アセチルコリン受容体とも呼ばれ、副交感神経支配器官における神経伝達や刺激作用に関与しており、自律神経節や神経節接合部のニコチン受容体(ニコチン性アセチルコリン受容体ともいう)と区別される。また、ムスカリン受容体は、7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体であり、M1からM5の5種類のサブタイプに分類される。ムスカリン受容体は眼組織中にも広く分布し、涙液分泌作用、水晶体曲率変化、房水流出動態等さまざまな機能に関与している。しかし、ムスカリン受容体作動薬を点眼すると涙液は分泌されるが、縮瞳するという副作用を引き起こす。
また、ニコチン・アセチルコリン受容体アゴニストを投与することによるドライアイの治療方法(国際公開第01/080844号パンフレット、米国特許No.6,277,855参照)、PAR−2を活性化させる成分を含有する涙液分泌促進組成物(特開2001−181208号公報、米国公開公報No.2003203849参照)が報告されている。これら報告には、経皮吸収製剤として使用できることが記載されている。
眼疾患治療用経皮吸収製剤として、例えば水晶体、硝子体、脈絡膜および網膜を含む後眼部に対して到達させようとする薬物と経皮吸収促進剤を基剤マトリクス中に含有してなる薬物含有層を有する眼科用経皮吸収貼付剤も報告されている(国際公開第01/26648号パンフレット、EP1221315参照)。
さらに、ムスカリン受容体作動薬であるピロカルピン塩基またはその塩を含有する、眼内圧を低下させるための経皮吸収システムが報告されている(特表平8−509716号公報、米国特許No.5,869,086参照)。しかし、この報告には涙液分泌を促進させることの記載はない。
すなわち、上記の文献にはムスカリン受容体作動薬を含有する涙液促進製剤であって、経皮吸収型のものについては何ら記載されていない。
また、本願の基礎出願後である2004年8月5日に国際公開された国際公開第04/064817号パンフレットには、眼瞼の前表面を含む皮膚表面に貼付して、眼疾患治療薬を全身血流を介さずに、皮膚透過により眼の局所組織に投与するための眼疾患治療用経皮吸収型製剤が報告されているが、この報告には涙液分泌を促進させる経皮吸収型製剤の記載はなく、また縮瞳などの副作用を抑制することに関しても記載されていない。
また、本発明は、眼瞼皮膚表面に投与することにより、ムスカリン受容体作動薬が全身循環を介しての眼局所組織への移行よりも実質的に眼瞼皮膚から経皮的に直接眼局所組織へ移行することで、眼瞼皮膚表面以外の部位に投与するよりも持続的な涙液分泌の促進効果に優れた眼科用経皮吸収型製剤を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ムスカリン受容体作動薬を含有する眼科用経皮吸収型製剤を眼瞼皮膚表面に投与することにより、涙液分泌を促進させる方法を提供することにある。
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、ムスカリン受容体作動薬を含有する眼科用経皮吸収型製剤を眼瞼皮膚表面に投与することにより、持続的に涙液分泌を促進させることができ、かつ、縮瞳等の副作用が少ないことを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進めて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)眼瞼皮膚表面に投与して涙液分泌を促進させることを特徴とする、ムスカリン受容体作動薬を含有する眼科用経皮吸収型製剤。
(2)点眼する場合に比べて縮瞳が抑制されることを特徴とする、(1)に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
(3)ムスカリン受容体作動薬の配合量が0.1〜40重量%である(1)または(2)に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
(4)さらに吸収促進剤を含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の眼科用経皮吸収型製剤。
(5)吸収促進剤の配合量が1〜60重量%である(4)に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
(6)吸収促進剤がミリスチン酸イソプロピルである(4)または(5)に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
(7)ムスカリン受容体作動薬がピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である、(1)〜(6)のいずれかに記載の眼科用経皮吸収型製剤。
(8)貼付剤である、(1)〜(7)のいずれかに記載の眼科用経皮吸収型製剤。
(9)軟膏剤である、(1)〜(7)のいずれかに記載の眼科用経皮吸収型製剤。
(10)ゲル剤である、(1)〜(7)のいずれかに記載の眼科用経皮吸収型製剤。
(11)ムスカリン受容体作動薬を含有する眼科用経皮吸収型製剤を眼瞼皮膚表面に投与することにより、涙液分泌を促進させる方法。
(12)ムスカリン受容体作動薬を含有する、眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤。
(13)点眼する場合に比べて縮瞳が抑制されることを特徴とする、(12)に記載の涙液分泌促進剤。
(14)ムスカリン受容体作動薬の配合量が0.1〜40重量%である(12)または(13)に記載の涙液分泌促進剤。
(15)さらに吸収促進剤を含有する(12)〜(14)のいずれかに記載の涙液分泌促進剤。
(16)吸収促進剤の配合量が1〜60重量%である(15)に記載の涙液分泌促進剤。
(17)吸収促進剤がミリスチン酸イソプロピルである(15)または(16)に記載の経皮吸収型涙液分泌促進剤。
(18)ムスカリン受容体作動薬がピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である、(12)〜(17)のいずれかに記載の涙液分泌促進剤。
(19)ピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩を1〜40重量%、およびミリスチン酸イソプロピルを5〜60重量%含有する、眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤。
(20)貼付剤である(12)〜(19)のいずれかに記載の涙液分泌促進剤。
(21)軟膏剤である(12)〜(19)のいずれかに記載の涙液分泌促進剤。
(22)ゲル剤である(12)〜(19)のいずれかに記載の涙液分泌促進剤。
(23)ムスカリン受容体作動薬の、涙液分泌を促進させるために有効な量を患者の眼瞼皮膚表面に投与することを含む、涙液分泌を促進させる方法。
(24)点眼する場合に比べて縮瞳が抑制されることを特徴とする、(23)に記載の方法。
(25)さらに吸収促進剤を投与することを含む、(23)または(24)に記載の方法。
(26)吸収促進剤がミリスチン酸イソプロピルである(25)に記載の方法。
(27)ムスカリン受容体作動薬がピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である、(23)〜(26)のいずれかに記載の方法。
(28)貼付剤として投与することを含む、(23)〜(27)のいずれかに記載の方法。
(29)軟膏剤として投与することを含む、(23)〜(27)のいずれかに記載の方法。
(30)ゲル剤として投与することを含む、(23)〜(27)のいずれかに記載の方法。
(31)眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤を製造するためのムスカリン受容体作動薬の使用。
(32)眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤を製造するためのムスカリン受容体作動薬および吸収促進剤の使用。
(33)吸収促進剤がミリスチン酸イソプロピルである(32)に記載の使用。
(34)ムスカリン受容体作動薬がピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である、(31)〜(33)のいずれかに記載の使用。
(35)眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤が貼付剤である、(31)〜(34)のいずれかに記載の使用。
(36)眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤が軟膏剤である、(31)〜(34)のいずれかに記載の使用。
(37)眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤がゲル剤である、(31)〜(34)のいずれかに記載の使用。
(38)ムスカリン受容体作動薬を含有する、涙液分泌を促進するための眼瞼皮膚表面投与用医薬組成物。
(39)点眼する場合に比べて縮瞳が抑制されることを特徴とする、(38)に記載の医薬組成物。
(40)さらに吸収促進剤を含有する、(38)または(39)に記載の医薬組成物。
(41)吸収促進剤がミリスチン酸イソプロピルである、(40)に記載の医薬組成物。
(42)ムスカリン受容体作動薬がピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である、(38)〜(41)のいずれかに記載の医薬組成物。
(43)貼付剤に用いる、(38)〜(42)のいずれかに記載の医薬組成物。
(44)軟膏剤に用いる、(38)〜(42)のいずれかに記載の医薬組成物。
(45)ゲル剤に用いる、(38)〜(42)のいずれかに記載の医薬組成物。
(46)ムスカリン受容体作動薬を含有する眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤、および該医薬用途への使用に関する説明を記載した記載物を含む商業的パッケージ。
(47)ムスカリン受容体作動薬を含有する眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤、吸収促進剤、および該医薬用途への使用に関する説明を記載した記載物を含む商業的パッケージ。
図2は、試験例2における塩酸ピロカルピン含有軟膏剤(塗布後10分後n=1;1時間後n=2;2〜6時間後n=3)、および塩酸ピロカルピン含有点眼剤(点眼後10分〜2時間後:n=8)投与時の瞳孔径の変化を示すグラフである。各値は平均±標準誤差を示す。
図3は、試験例3における塩酸ピロカルピン含有貼付剤(実施例13)上下眼瞼皮膚投与時貼付眼(n=3)、塩酸ピロカルピン含有貼付剤(実施例13)上下眼瞼皮膚投与時反対眼(非貼付、n=3)、塩酸ピロカルピン含有貼付剤(実施例13)背部投与時両眼(n=6)、塩酸ピロカルピン含有点眼剤(比較例3)投与時(n=3)および基剤貼付剤(比較例2)上下眼瞼皮膚投与時貼付眼(n=3)の涙液分泌量の増加量を示すグラフである。各値は平均±標準誤差を示す。
図4は、試験例4における塩酸ピロカルピン含有貼付剤(実施例13)上下眼瞼皮膚投与時貼付眼(n=3)、塩酸ピロカルピン含有点眼剤(比較例3)投与時(n=3)および基剤貼付剤(比較例2)上下眼瞼皮膚投与時貼付眼(n=3)の瞳孔径の変化を示すグラフである。各値は平均±標準誤差を示す。
本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、優れた涙液分泌促進効果を有している。すなわち、本発明はムスカリン受容体作動薬を含有する経皮吸収型涙液分泌促進剤を提供するものである。
本発明において、眼瞼皮膚表面とは、上眼瞼および下眼瞼ならびにその近傍の皮膚表面を意味する。
本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、その製剤中に含有させるムスカリン受容体作動薬の種類や量等を調整することで、持続的に涙液分泌を促進させることができる。また、本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、涙液分泌を促進させるのに有効なムスカリン受容体作動薬の投与量を調整することが容易である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明で用いるムスカリン受容体作動薬としては、ムスカリン受容体に作用してムスカリン受容体を活性化させる能力を有する物質であればよく、天然に存在するか、または人工的に合成されたものを包含する。例えばピロカルピン、セビメリン、カルバコール、ムスカリン等または製薬学的に許容されるそれらの塩等が挙げられる。好ましくは、ピロカルピン、セビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である。ピロカルピンの製薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等との塩が挙げられるが、好ましくは、塩酸塩である。また、セビメリンの製薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酒石酸等との塩が挙げられるが、好ましくは塩酸塩である。
本発明の眼科用経皮吸収型製剤には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品の製造に通常用いられる任意の成分を適宜添加することもできる。例えば軟膏基剤、ゲル基剤、貼付剤の基剤マトリックス、溶媒、油剤、界面活性剤、粘剤、樹脂、吸収促進剤、湿潤剤等が挙げられる。
軟膏基剤としては、例えばワセリン、パラフィン、プラスチベース、シリコン、植物油、豚油、ろう類、単軟膏等の油脂性基剤;親水軟膏(バニシングクリーム)、親水ワセリン、精製ラノリン、吸水軟膏、加水ラノリン、精製ラノリン、親水プラスチベース(コールドクリーム)等の乳剤性基剤等が挙げられる。
ゲル基剤としては、例えばカルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、アラビアゴム、トラガントゴム、グァーガム、キサンタンガム、寒天等の増粘高分子類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸プロピレングリコール等の脂肪酸エステル類;乳酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸類;ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族アルコール類;スクワレン、スクワラン等の炭化水素類等が挙げられる。
溶媒としては、例えば精製水、エタノール、低級アルコール、エーテル類、ピロリドン類、酢酸エチル等が挙げられる。
油剤としては、通常皮膚外用剤に用いられる揮発性および不揮発性の油剤、溶剤、樹脂等が挙げられ、常温で液体、ペースト、固体のいずれも用いることができる。例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール;イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸;グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、モノステアリン酸グリセリン等のエステル類等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
アニオン界面活性剤としては、例えば脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えばアミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、例えばポリオキシチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン、ジメチルアルキルグリシン、レシチン等が挙げられる。
粘剤、樹脂としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン−アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール−ビニルピロリドン共重合体、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化ガーガム等のカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸メタクリル酸アクリル共重合体、ポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリビニルアルコール、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、ガーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコール、カチオン化シリコン重合体、合成ラテックス、アクリルシリコン、トリメチルシロキシケイ酸、フッ素化シリコン樹脂等が挙げられる。
吸収促進剤としては、例えば1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、ピロチオデカン、オレイルアルコール、ラウリン酸、オレイン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、d−リモネン、1−メントール、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、デシルメチルスルホキサイト、N−ラウロイルサルコシン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、フマル酸、マレイン酸、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ラウリン酸ジエタノールアミド、多価アルコール類、グリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、ミリスチン酸イソプロピルである。
貼付剤の基剤マトリクスとしては、例えばアクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられ、これらから適宜選択して使用すればよい。またマトリクスは、テープ製剤、パッチ剤、パップ剤、プラスター剤等の皮膚に貼り付けられる製剤に通常用いられている支持体や、その他本発明の使用に不都合のない材質の支持体の片面に保持させて用いてよい。
アクリル系粘着剤としては、例えばアクリル酸−アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル−酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル−ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸−アクリル酸ブチルコポリマー等が挙げられる。
シリコン系粘着剤としては、例えばポリメチルフェニルシロキサン共重合体、アクリル酸・ジメチルシロキサン共重合体等が挙げられる。
ゴム系粘着剤としては、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリブデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等に、必要に応じて粘着付与樹脂、軟化剤等を添加してなるもの等が挙げられる。
湿潤剤としては、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、還元麦芽糖水飴等が挙げられる。
本発明のムスカリン受容体作動薬を含有する眼科用経皮吸収型製剤は、常法により製造することができる。例えば軟膏剤の場合、ムスカリン受容体作動薬および軟膏基剤ならびに必要に応じて溶媒、油剤、界面活性剤、粘剤、樹脂、吸収促進剤、湿潤剤等を加え、よく混合することにより製造することができる。ゲル剤の場合、ゲル基剤に溶媒を加えてpH調整剤で中性とし、必要に応じて溶媒、油剤、界面活性剤、粘剤、樹脂、吸収促進剤、湿潤剤等を加えて混和し、これにムスカリン受容体作動薬を加えてよく練合することにより製造することができる。貼付剤(パップ剤、パッチ剤、テープ剤、プラスター剤)の場合、ムスカリン受容体作動薬に基剤マトリクスおよび/または粘剤、ならびに必要に応じて溶媒、油剤、界面活性剤、樹脂、吸収促進剤、湿潤剤等を加えてよく混合し、この膏体を不織布、織布、プラスチックフィルム(シートを含む)またはそれらを複合したフィルム等の支持体上に展延し、剥離ライナーで被覆するか、もしくは剥離ライナー上に展延し、前記支持体上に圧着転写することにより製造することができる。前記支持体は、眼瞼皮膚表面に貼付することができる柔軟性を持つことが好ましく、厚さについては、剤型により適宜選択されるが、製剤の強度、貼付時の違和感および密着性を考慮して、10〜3000μmの範囲で設定するのが好ましい。本発明のムスカリン受容体作動薬を含有する眼科用経皮吸収型製剤は、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、安定化剤、抗酸化剤、防腐剤、架橋剤、pH調整剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
ムスカリン受容体作動薬は、基剤100重量部に対して、通常、0.1〜60重量部、好ましくは0.2〜20重量部の割合で用いられる。
好ましくは、本発明の眼科用経皮吸収型製剤におけるムスカリン受容体作動薬の配合量は、通常、0.1〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。本発明の眼科用経皮吸収型製剤を貼付剤として用いる場合には、ムスカリン受容体作動薬の配合量は、1〜40重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは15〜30重量%である。軟膏剤またはゲル剤として用いる場合には、ムスカリン受容体作動薬の配合量は、0.1〜40重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
本発明の眼科用経皮吸収型製剤における吸収促進剤の配合量は、通常、1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。本発明の眼科用経皮吸収型製剤を貼付剤として用いる場合には、吸収促進剤の配合量は、5〜60重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%である。軟膏剤またはゲル剤として用いる場合には、吸収促進剤の配合量は、1〜60重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。
本発明の眼科用経皮吸収型製剤におけるムスカリン受容体作動薬と吸収促進剤の配合比率は、通常、ムスカリン受容体作動薬1重量部に対して、吸収促進剤が1〜20重量部の範囲であり、好ましくはムスカリン受容体作動薬1重量部に対して、吸収促進剤が1〜10重量部、さらに好ましくはムスカリン受容体作動薬1重量部に対して、吸収促進剤が1〜5重量部である。本発明の眼科用経皮吸収型製剤を貼付剤として用いる場合には、ムスカリン受容体作動薬と吸収促進剤の配合比率は、ムスカリン受容体作動薬1重量部に対して、吸収促進剤が1〜20重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくはムスカリン受容体作動薬1重量部に対して、吸収促進剤が1.5〜10重量部、特に好ましくはムスカリン受容体作動薬1重量部に対して、吸収促進剤が2〜10重量部である。軟膏剤またはゲル剤として用いる場合には、ムスカリン受容体作動薬と吸収促進剤の配合比率は、ムスカリン受容体作動薬1重量部に対して、吸収促進剤が1〜20重量部の範囲が好ましく、さらにムスカリン受容体作動薬1重量部に対して、吸収促進剤が1〜10重量部、特に好ましくはムスカリン受容体作動薬1重量部に対して、吸収促進剤が1〜5重量部である。
また、本発明の眼科用経皮吸収型製剤には、本発明の目的に反しない限り、ムスカリン受容体作動薬以外の医薬成分、例えばステロイド性または非ステロイド性抗炎症剤、抗菌剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、抗ウイルス剤、血管収縮剤、白内障治療剤、緑内障治療剤、散瞳剤等を配合して製剤してもよい。
本発明の眼科用経皮吸収型製剤および医薬組成物において、ムスカリン受容体作動薬の投与量は患者の病態、年齢、投与形態などによって異なるが、成人の1日量として通常0.01mg〜10g/日程度、好ましくは0.1mg〜1g/日程度、より好ましくは1mg〜0.2g/日程度とし、これを必要に応じて1〜5回に分割して投与する。
本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、持続的に涙液分泌を促進させることができ、かつ、点眼薬と比べて縮瞳等の副作用が少なく軽微であるので、ドライアイ、例えば涙液減少症、眼乾燥症、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、スティーブンス−ジョンソン症候群、眼瞼炎、マイボーム腺炎等の眼疾患に伴うドライアイ、VDT(Visual Display Terminal)作業、コンタクトレンズ装用によるドライアイ等の予防・治療剤として有用である。
本発明の眼科用経皮吸収型製剤および医薬組成物の投与対象は特に限定されず、ヒトをはじめサル、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、ウマ、ウシ等種々の哺乳動物におけるドライアイ治療などに有用である。
[実施例1]塩酸ピロカルピン含有軟膏剤
塩酸ピロカルピン(ナカライテスク株式会社製) 0.3g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
白色ワセリン 1.5g
全量 3g
上記処方に従い、白色ワセリンおよびミリスチン酸イソプロピルをよく混合し、その混合した軟膏基剤に塩酸ピロカルピンを加えてよく練合し、塩酸ピロカルピン含有軟膏剤とした。
[実施例2]塩酸ピロカルピン含有ゲル剤
塩酸ピロカルピン(ナカライテスク株式会社製) 0.3g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
2%カルボキシビニルポリマーゲル 1.5g
全量 3g
精製水49mLにカルボキシビニルポリマー1gを少量ずつ加えて、充分分散、膨潤させた後、8N−NaOH 1mLを加えて中性とし、透明な2%カルボキシビニルポリマーゲル基剤とする。このゲル基剤1.5gにミリスチン酸イソプロピルを加えて混和する。さらに、塩酸ピロカルピンを加えてよく練合し、塩酸ピロカルピン含有ゲル剤とする。
[実施例3]塩酸ピロカルピン含有パップ剤
塩酸ピロカルピン(ナカライテスク株式会社製) 0.3g
ポリアクリル酸ナトリウム 0.45g
グリセリン 0.3g
ハッカ油 0.01g
精製水 適量
全量 3g
ポリアクリル酸ナトリウムおよびグリセリンに精製水をよく混合し含水性膏体とする。さらに、ハッカ油および塩酸ピロカルピンを加えてよく練合する。その混合膏体を支持体(ポリエステル不織布等)に展延成型し、剥離ライナーを施し、塩酸ピロカルピン含有パップ剤とする。
[実施例4]塩酸ピロカルピン含有テープ剤
塩酸ピロカルピン(ナカライテスク株式会社製) 0.3g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
アクリル系共重合体 1.485g
ポリイソシアネート化合物 0.0015g
酢酸エチル 適量
全量 3g
塩酸ピロカルピンに酢酸エチル約2mLを加えて混合し、ディスポーザブルカップ中で約30秒間超音波処理して塩酸ピロカルピンを溶解または分散させた後、ミリスチン酸イソプロピルを加え、十分に混合する。次いで、粘着剤基剤であるアクリル系共重合体、架橋剤であるポリイソシアネート化合物を順次加え、十分に混合する。混合物を脱気後、ドクターナイフまたはベーカー・アプリケーターを用い、剥離ライナー上に展延し、有機溶媒が揮発するまで静置する。続いて支持体を被せてローラーで圧着し、約40℃の恒温槽中で8〜12時間架橋させ、塩酸ピロカルピン含有テープ剤とする。
[実施例5]塩酸セビメリン含有軟膏剤
塩酸セビメリン 0.3g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
白色ワセリン 1.5g
全量 3g
実施例1の塩酸ピロカルピンの代わりに塩酸セビメリンを用いて実施例1と同様に調製し、塩酸セビメリン含有軟膏剤とする。
[実施例6]塩酸セビメリン含有ゲル剤
塩酸セビメリン 0.3g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
2%カルボキシビニルポリマーゲル 1.5g
全量 3g
実施例2の塩酸ピロカルピンの代わりに塩酸セビメリンを用いて実施例2と同様に調製し、塩酸セビメリン含有ゲル剤とする。
[実施例7]塩酸セビメリン含有パップ剤
塩酸セビメリン 0.3g
ポリアクリル酸ナトリウム 0.45g
グリセリン 0.3g
ハッカ油 0.01g
精製水 適量
全量 3g
実施例3の塩酸ピロカルピンの代わりに塩酸セビメリンを用いて実施例3と同様に調製し、塩酸セビメリン含有パップ剤とする。
[実施例8]塩酸セビメリン含有テープ剤
塩酸セビメリン 0.3g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
アクリル系共重合体 1.485g
ポリイソシアネート化合物 0.0015g
酢酸エチル 適量
全量 3g
実施例4の塩酸ピロカルピンの代わりに塩酸セビメリンを用いて実施例4と同様に調製し、塩酸セビメリン含有テープ剤とする。
[実施例9]カルバコール含有軟膏剤
カルバコール 0.3g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
白色ワセリン 1.5g
全量 3g
実施例1の塩酸ピロカルピンの代わりにカルバコールを用いて実施例1と同様に調製し、カルバコール含有軟膏剤とする。
[実施例10]カルバコール含有ゲル剤
カルバコール 0.3g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
2%カルボキシビニルポリマーゲル 1.5g
全量 3g
実施例2の塩酸ピロカルピンの代わりにカルバコールを用いて実施例2と同様に調製し、カルバコール含有ゲル剤とする。
[実施例11]カルバコール含有パップ剤
カルバコール 0.3g
ポリアクリル酸ナトリウム 0.45g
グリセリン 0.3g
ハッカ油 0.01g
精製水 適量
全量 3g
実施例3の塩酸ピロカルピンの代わりにカルバコールを用いて実施例3と同様に調製し、カルバコール含有パップ剤とする。
[実施例12]カルバコール含有テープ剤
カルバコール 0.3g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
アクリル系共重合体 1.485g
ポリイソシアネート化合物 0.0015g
酢酸エチル 適量
全量 3g
実施例4の塩酸ピロカルピンの代わりにカルバコールを用いて実施例4と同様に調製し、カルバコール含有テープ剤とする。
[実施例13]塩酸ピロカルピン含有貼付剤
塩酸ピロカルピン(ナカライテスク株式会社製) 0.6g
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
アクリル系共重合体(PE−300) 1.188g(固形分)
ポリイソシアネート化合物(CK401) 0.0012g(固形分)
酢酸エチル 適量
全量 3g
上記組成に従って実施例4と同様に調製し、塩酸ピロカルピン含有貼付剤とした。
[実施例14]塩酸セビメリン含有軟膏剤
塩酸セビメリン(エボザック(登録商標)カプセルから抽出) 1g
ミリスチン酸イソプロピル 2g
白色ワセリン 2g
全量 5g
上記処方に従って実施例1の塩酸ピロカルピンの代わりに塩酸セビメリンを用いて実施例1と同様に調製し、塩酸セビメリン含有軟膏剤とした。
なお、塩酸セビメリンの抽出は以下の方法に従って行った。
(塩酸セビメリンの抽出・精製操作)
エボザック(登録商標)カプセル30mg(製造番号XAAAE20、1カプセル中に塩酸セビメリン30mg含有)200カプセル(約42g)の内容物を精製水(500mL)に懸濁させ、室温で激しく攪拌した。不溶物を濾別した後、1N水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整し、クロロホルム(100mL×4)で抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後、室温にて20時間減圧乾燥し、淡黄色オイルを得た。得られたオイルをジエチルエーテルに溶解し、等モルの4N塩酸/ジオキサンを加えて結晶化した。結晶を濾去し、ジエチルエーテルで洗浄した後、室温で風乾、次いで室温で20時間減圧乾燥し、塩酸セビメリン(5.78g)を得た。得られた塩酸セビメリンの化学構造、物性、純度は核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)および融点測定により確認した。
[比較例1]塩酸ピロカルピン含有点眼剤
塩酸ピロカルピン(ナカライテスク株式会社製) 1g
リン酸ニ水素ナトリウムニ水和物 0.01g
塩化ナトリウム 0.09g
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
全量 10mL(pH5)
精製水約7mLにリン酸ニ水素ナトリウムニ水和物および塩化ナトリウムを加えて溶解させた。この液に塩酸ピロカルピンを加えて溶解させ、水酸化ナトリウムを加えてpH5に調整した。精製水を加えて全量10mLとし、塩酸ピロカルピン含有点眼剤とした。
[比較例2]基剤貼付剤
ミリスチン酸イソプロピル 1.2g
アクリル系共重合体(PE−300) 1.782g(固形分)
ポリイソシアネート化合物(CK401) 0.0018g(固形分)
酢酸エチル 適量
全量 3g
ディスポーザブルカップにミリスチン酸イソプロピルを量りとった。次いで、粘着剤基剤であるアクリル系共重合体、架橋剤であるポリイソシアネート化合物を順次加え、十分に混合した。混合物を脱気後、ドクターナイフまたはベーカー・アプリケーターを用い、剥離ライナー上に展延し、有機溶媒が揮発するまで静置した。続いて支持体を被せてローラーで圧着し、約40℃の恒温槽中で8〜12時間架橋させ、基剤貼付剤とした。
[比較例3]塩酸ピロカルピン含有点眼剤
塩酸ピロカルピン(ナカライテスク株式会社製) 2g
リン酸ニ水素ナトリウムニ水和物 0.01g
塩化ナトリウム 0.09g
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
全量 10mL(pH5)
上記処方に従って比較例1と同様に調製し、塩酸ピロカルピン含有点眼剤とした。
[比較例4]塩酸セビメリン含有点眼剤
塩酸セビメリン(エボザック(登録商標)カプセルから抽出)2g
リン酸二水素ナトリウム二水和物 0.01g
塩化ナトリウム 0.09g
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
全量 10mL(pH6)
上記処方に従って比較例1の塩酸ピロカルピンの代わりに塩酸セビメリンを用いて比較例1と同様に調製し、塩酸セビメリン含有点眼剤とした。
[試験例1]涙液分泌試験(シルマー試験)
(試験方法)
試験には、ウサギ(日本白色種、雄性、9〜10週齢、2.0〜2.8kg、北山ラベス株式会社より購入)を用いた。軟膏剤塗布のため予め除毛処理した。ケタミン/キシラジン併用により全身麻酔を施し、バリカンおよびシェーバーを用いて皮膚を傷つけないようウサギ眼瞼周辺部を除毛処理した。テープストリッピング処理した範囲内のウサギ片眼の上眼瞼および下眼瞼皮膚に、実施例1で調製した塩酸ピロカルピン含有軟膏剤をそれぞれ約7.4mg(面積にして、約2cm×約4cm=約8cm2)ずつ塗布し、反対眼は無処置とした。塗布前および塗布後、経時的に涙液量をシルメル紙(Whatman No.41ろ紙を使用、昭和薬品化工株式会社製)で測定した。涙液量測定5分前に0.4%塩酸オキシブプロカイン(ベノキシール(登録商標)点眼液0.4%、参天製薬株式会社製)10μLを点眼して局所麻酔を施し、ろ紙で下眼瞼結膜嚢内の涙液を拭き取った後、シルメル紙を用いて1分間の涙液分泌量を測定した(塗布後10分後:n=1;1時間後:n=2;2〜6時間後:n=3)。
また、比較例1で調製した塩酸ピロカルピン含有点眼剤についても片眼に50μLを点眼後、同様の操作を行った(点眼後10分〜2時間後:n=8)。
塗布および点眼前の涙液分泌量を基準(0mm/min)とし、塗布および点眼後の涙液分泌量の増加量を測定した。
(試験結果)
結果を図1に示す。
図1に示すように、実施例1投与群では、多量の涙液分泌が認められ、かつ、持続的な効果が認められた。一方、比較例1投与群では、本発明の眼科用経皮吸収型製剤である実施例1投与群と比較して、涙液分泌量が少なかった。
このことから、本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、眼に直接投与される点眼剤よりも涙液分泌の促進作用に優れ、かつ、持続的な効果があることがわかる。
[試験例2]瞳孔径に及ぼす影響
(試験方法)
試験例1と同時に、瞳孔径を測定した。塗布および点眼前の瞳孔径を基準(0mm)とし、塗布および点眼後の瞳孔径の変化を測定した。測定は、電子デジタルノギス(MAX−CAL、日本測定工業社製)を用いた。
(試験結果)
結果を図2に示す。
図2に示すように、実施例1投与群では、縮瞳の度合いは軽微であり、比較的速やかに収まった。一方、比較例1投与群では、重度の縮瞳が認められた。
このことから、本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、眼に直接投与される点眼剤よりも、縮瞳およびそれに伴う暗黒感等の副作用が少ないことがわかる。
以上の試験例1および試験例2の結果から、本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、眼瞼皮膚表面に投与することで、その製剤中に含有するムスカリン受容体作動薬による涙液分泌が持続的に促進され、かつ、縮瞳等の副作用が少ない安全性の高い優れた製剤である。
[試験例3]涙液分泌試験(シルマー試験)
(試験方法)
試験には、ウサギ(日本白色種、雄性、2.3〜3.0kg、福崎養兎組合より購入)を用いた。経皮吸収製剤貼付のため予め除毛処理した。ケタミン/キシラジン併用により全身麻酔を施し、バリカンおよびシェーバーを用いて皮膚を傷つけないようウサギ眼瞼周辺部および背部を除毛処理した。テープストリッピングにより角質層を剥離したウサギ片眼の上眼瞼および下眼瞼皮膚に、実施例13で調製した塩酸ピロカルピン含有貼付剤をそれぞれ約8cm2(約2cm×約4cm)ずつ(計約16cm2)貼付し、反対眼は無処置とした。背部皮膚もテープストリッピングにより角質層を剥離し、実施例13で調製した塩酸ピロカルピン含有貼付剤を約16cm2(約4cm×約4cm)貼付した。また、対照群として比較例2で調製した基剤貼付剤も実施例13の塩酸ピロカルピン含有貼付剤と同様に上下眼瞼皮膚に貼付した。貼付前および貼付後、経時的に涙液量をシルメル紙(Whatman No.41ろ紙を使用、昭和薬品化工株式会社製)で測定した。涙液量測定5分前に0.4%塩酸オキシブプロカイン(ベノキシール(登録商標)点眼液0.4%、参天製薬株式会社製)10μLを点眼して局所麻酔を施し、ろ紙で下眼瞼結膜嚢内の涙液を拭き取った後、シルメル紙を用いて、実施例13の塩酸ピロカルピン含有貼付剤の上下眼瞼皮膚投与群貼付眼(n=3)、反対眼(非貼付、n=3)および背部投与群両眼(n=6)ならびに比較例2の基剤貼付剤の上下眼瞼皮膚投与群貼付眼(n=3)について、1分間の涙液分泌量を測定した。
また、比較例3で調製した塩酸ピロカルピン含有点眼剤についても片眼に50μLを点眼後、同様の操作を行った(n=3)。
投与前の涙液分泌量を基準(0mm/min)とし、投与後の涙液分泌量の増加量を測定した。
(試験結果)
結果を図3に示す。
図3に示すように、実施例13上下眼瞼投与群貼付眼では、比較例3投与群点眼眼と比較して持続的な涙液分泌が認められた。また、実施例13上下眼瞼投与群貼付眼では、背部投与群よりも多量の涙液分泌が認められた。さらに、実施例13上下眼瞼投与群貼付眼では、反対眼(非貼付)よりも多量の涙液分泌が認められた。
このことから、本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、眼に直接投与される点眼剤よりも持続的な涙液分泌の促進効果があることがわかる。また、眼瞼皮膚表面に投与することにより他の部位に投与したときよりも涙液分泌の促進作用が優れていることがわかる。これは、眼瞼皮膚表面に投与することで、ムスカリン受容体作動薬が全身循環を介しての眼局所組織への移行よりも眼瞼皮膚から直接眼局所組織へ移行することによって、涙液分泌促進効果を発揮したものと考えられる。
[試験例4]瞳孔径に及ぼす影響
(試験方法)
試験例3と同時に、瞳孔径を測定した。投与前の瞳孔径を基準(0mm)とし、投与後の瞳孔径の変化を測定した。測定は、電子デジタルノギス(MAX−CAL、日本測定工業社製)を用いた。
投与前の涙液分泌量を基準(0mm/min)とし、投与後の涙液分泌量の増加量を測定した。
(試験結果)
結果を図4に示す。
図4に示すように、実施例13上下眼瞼投与群貼付眼では、縮瞳はほとんど見られなかった。一方、比較例3投与群点眼眼では、重度の縮瞳が認められた。
このことから、本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、眼に直接投与される点眼剤よりも、縮瞳およびそれに伴う暗黒感等の副作用が少ないことがわかる。
[試験例5]涙液分泌試験(シルマー試験)
(試験方法)
試験には、ウサギ(日本白色種、雄性、2.3〜2.7kg、福崎養兎組合より購入)を用いた。軟膏剤塗布のため予め除毛処理した。ケタミン/キシラジン併用により全身麻酔を施し、バリカンおよびシェーバーを用いて皮膚を傷つけないようウサギ眼瞼周辺部を除毛処理した。テープストリッピング処理した範囲内のウサギ片眼の上眼瞼および下眼瞼皮膚に、実施例14で調製した塩酸セビメリン含有軟膏剤をそれぞれ7〜8mg(面積にして、約2cm×約4cm=約8cm2)ずつ塗布し、反対眼は無処置とした。塗布前および塗布後1時間後の涙液量をシルメル紙(Whatman No.41ろ紙を使用、昭和薬品化工株式会社製)で測定した。涙液量測定5分前に0.4%塩酸オキシブプロカイン(ベノキシール(登録商標)点眼液0.4%、参天製薬株式会社製)10μLを点眼して局所麻酔を施し、ろ紙で下眼瞼結膜嚢内の涙液を拭き取った後、シルメル紙を用いて1分間の涙液分泌量を測定した(n=3)。
また、比較例4で調製した塩酸セビメリン含有点眼剤についても片眼に50μLを点眼後、同様の操作を行った(n=3)。
(試験結果)
結果を表に示す。
各値は平均±標準誤差を示す。
表1に示すように、実施例14投与群では比較例4投与群と比較して多量の涙液分泌が認められた。このことから、本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、眼に直接投与される点眼剤よりも涙液分泌の促進作用に優れていることがわかる。
以上の試験例1〜5の結果から、本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、眼瞼皮膚表面に投与することで、その製剤中に含有するムスカリン受容体作動薬による涙液分泌が持続的に促進され、かつ、縮瞳等の副作用が少ない安全性の高い優れた製剤である。
また、本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、眼瞼皮膚表面に投与することにより、ムスカリン受容体作動薬が全身循環を介しての眼局所組織への移行よりも実質的に眼瞼皮膚から経皮的に直接眼局所組織へ移行することで、眼瞼皮膚表面以外の部位に投与するよりも持続的な涙液分泌の促進効果に優れた製剤である。
本発明の眼科用経皮吸収型製剤は、持続的に涙液分泌を促進させることができ、かつ、縮瞳等の副作用が少ないので、ドライアイ、例えば涙液減少症、眼乾燥症、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、スティーブンス−ジョンソン症候群、眼瞼炎、マイボーム腺炎等の眼疾患に伴うドライアイ、VDT(Visual Display Terminal)作業、コンタクトレンズ装用によるドライアイ等の予防・治療剤として有用である。
本出願は、日本で出願された特願2004−151248を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
Claims (47)
- 眼瞼皮膚表面に投与して涙液分泌を促進させることを特徴とする、ムスカリン受容体作動薬を含有する眼科用経皮吸収型製剤。
- 点眼する場合に比べて縮瞳が抑制されることを特徴とする、請求項1に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
- ムスカリン受容体作動薬の配合量が0.1〜40重量%である請求項1または2に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
- さらに吸収促進剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
- 吸収促進剤の配合量が1〜60重量%である請求項4に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
- 吸収促進剤がミリスチン酸イソプロピルである請求項4または5に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
- ムスカリン受容体作動薬がピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
- 貼付剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
- 軟膏剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
- ゲル剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の眼科用経皮吸収型製剤。
- ムスカリン受容体作動薬を含有する眼科用経皮吸収型製剤を眼瞼皮膚表面に投与することにより、涙液分泌を促進させる方法。
- ムスカリン受容体作動薬を含有する、眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤。
- 点眼する場合に比べて縮瞳が抑制されることを特徴とする、請求項12に記載の涙液分泌促進剤。
- ムスカリン受容体作動薬の配合量が0.1〜40重量%である請求項12または13に記載の涙液分泌促進剤。
- さらに吸収促進剤を含有する請求項12〜14のいずれか1項に記載の涙液分泌促進剤。
- 吸収促進剤の配合量が1〜60重量%である請求項15に記載の涙液分泌促進剤。
- 吸収促進剤がミリスチン酸イソプロピルである請求項15または16に記載の経皮吸収型涙液分泌促進剤。
- ムスカリン受容体作動薬がピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項12〜17のいずれか1項に記載の涙液分促進剤。
- ピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩を1〜40重量%、およびミリスチン酸イソプロピルを5〜60重量%含有する、眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤。
- 貼付剤である請求項12〜19のいずれか1項に記載の涙液分泌促進剤。
- 軟膏剤である請求項12〜19のいずれか1項に記載の涙液分泌促進剤。
- ゲル剤である請求項12〜19のいずれか1項に記載の涙液分泌促進剤。
- ムスカリン受容体作動薬の、涙液分泌を促進させるために有効な量を患者の眼瞼皮膚表面に投与することを含む、涙液分泌を促進させる方法。
- 点眼する場合に比べて縮瞳が抑制されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
- さらに吸収促進剤を投与することを含む、請求項23または24に記載の方法。
- 吸収促進剤がミリスチン酸イソプロピルである請求項25に記載の方法。
- ムスカリン受容体作動薬がピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
- 貼付剤として投与することを含む、請求項23〜27のいずれか1項に記載の方法。
- 軟膏剤として投与することを含む、請求項23〜27のいずれか1項に記載の方法。
- ゲル剤として投与することを含む、請求項23〜27のいずれか1項に記載の方法。
- 眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤を製造するためのムスカリン受容体作動薬の使用。
- 眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤を製造するためのムスカリン受容体作動薬および吸収促進剤の使用。
- 吸収促進剤がミリスチン酸イソプロピルである請求項32に記載の使用。
- ムスカリン受容体作動薬がピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項31〜33のいずれか1項に記載の使用。
- 眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤が貼付剤である、請求項31〜34のいずれか1項に記載の使用。
- 眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤が軟膏剤である、請求項31〜34のいずれか1項に記載の使用。
- 眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤がゲル剤である、請求項31〜34のいずれか1項に記載の使用。
- ムスカリン受容体作動薬を含有する、涙液分泌を促進するための眼瞼皮膚表面投与用医薬組成物。
- 点眼する場合に比べて縮瞳が抑制されることを特徴とする、請求項38に記載の医薬組成物。
- さらに吸収促進剤を含有する、請求項38または39に記載の医薬組成物。
- 吸収促進剤がミリスチン酸イソプロピルである、請求項40に記載の医薬組成物。
- ムスカリン受容体作動薬がピロカルピンもしくはセビメリン、または製薬学的に許容されるそれらの塩である、請求項38〜41のいずれか1項に記載の医薬組成物。
- 貼付剤に用いる、請求項38〜42のいずれか1項に記載の医薬組成物。
- 軟膏剤に用いる、請求項38〜42のいずれか1項に記載の医薬組成物。
- ゲル剤に用いる、請求項38〜42のいずれか1項に記載の医薬組成物。
- ムスカリン受容体作動薬を含有する眼瞼皮膚表面投与用涙液分泌促進剤、および該医薬用途への使用に関する説明を記載した記載物を含む商業的パッケージ。
- ムスカリン受容体作動薬を含有する眼臉皮膚表面投与用涙液分泌促進剤、吸収促進剤、および該医薬用途への使用に関する説明を記載した記載物を含む商業的パッケージ。
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