JPWO2005082981A1 - 生分解性ラップフィルム - Google Patents
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Abstract
Description
通常の温度における包装適性の面からは、さらに20℃における損失正接(tanδ)の値が0.5以下、特に0.1〜0.5の範囲にあることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る生分解性ラップフィルムは、乳酸系樹脂組成物を主成分として含有する生分解性ラップフィルムであって、
A−1:JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜3GPaの範囲にあり、
A−2:100℃における貯蔵弾性率の値が30MPa〜500MPaの範囲にあり、
B−1:損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とするものである。
貯蔵弾性率の値に関しては、上述のように次の条件(A−1〜2)を備えていることが重要であり、さらに条件(A−3〜5)を備えているのが好ましい。
(A−1)
JIS K−7198 A法(ISO6721−4に相当)記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa以上であれば、ラップフィルムが適当な腰を備えるため、フィルムをカットする際に幅方向にうまく裂くことができる。また、変形に対する応力が小さ過ぎることもないため、容器等にオーバーラップする際にフィルムが局所的に伸びることがなくうまく包装することができる。他方、40℃における貯蔵弾性率の値が3GPa以下であれば、フィルムが硬過ぎることがなく適度に伸びるため、容器等の形状に沿ってうまく包装することができる。
(A−2)
JIS K−7198 A法記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した100℃における貯蔵弾性率の値が30MPa以上であれば、電子レンジで加熱した際、フィルムが加熱されて柔軟化し過ぎることがなく、容器や食品に密着し過ぎることもないし、また、フィルム自体が溶けて穴があくこともない。他方、100℃における貯蔵弾性率の値が500MPa以下であれば、常温での貯蔵弾性率が高過ぎることがないから、常温でラップする際に延びにくかったり、容器等の形状に沿ってうまく包装できないなど、常温での包装適性が問題になることがない。
(A−3)
JIS K−7198 A法記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率の値は1GPa〜4GPaであるのが好ましい。この値は、主にフィルムの腰に影響する指標である。柔軟性フィルムは、家庭用の小巻ラップフィルムと業務用の包装フィルムとに大別され、前者の場合には、室温(20℃付近)で柔らか過ぎると、フィルムをノコギリ刃で幅方向にうまく引き裂くことができず、伸びてしまったり、或いは斜め方向に引き裂けたりすることがあるため、室温(20℃付近)で適当な硬さ(腰)が要求される。20℃における貯蔵弾性率の値がかかる範囲内であれば、フィルムが硬すぎることがなく、適度に伸びるため、容器等の形状に沿ってうまく包装することができる。
(A−4)
JIS K−7198 A法記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した60℃における貯蔵弾性率の値は100MPa〜800MPaであるのが好ましい。この値は主にフィルムの剛性、腰、フィルムの形状維持に影響する指標であるから、60℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜800MPaにあれば、フィルムが柔軟化し過ぎることがなく、自重で垂れるような現象も起こらないので容器や食品に密着し過ぎることもない。このような観点から、この値は110MPa以上であるのがさらに好ましく、特に150MPa以上であるのが好ましい。また、400MPa以下であるのがさらに好ましく、特に300MPa以下であるのが好ましい。
(A−5)
JIS K−7198 A法記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した120℃における貯蔵弾性率の値は1MPa以上であるのが好ましい。貯蔵弾性率が1MPa以下になるとフィルムが柔軟化し過ぎて、容器等を包装した場合に静止した状態でおくとフィルムが容器に粘着することがある。120℃における貯蔵弾性率が1MPa以上であれば、フィルムが柔軟化し過ぎることがなく、例えば容器に入れた油物を電子レンジで温める際に該フィルムで容器を包装した場合でもフィルムが容器に粘着することがない。
損失正接に関しては、上述のように次の条件(B−1)を備えていることが重要であり、さらに条件(B−2)を備えているのが好ましい。
(B−1)
JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hzにて測定した損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にある必要がある。
(B−2)
JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hzにて測定した20℃における損失正接(tanδ)の値が0.5以下の範囲にあるのが好ましい。この値は主にフィルムの包装適性に影響する指標である。日本の家庭の平均気温は20℃付近であることが多く、20℃における損失正接の値が0.5以下であれば皺無く綺麗に包装することができる。
本実施形態の生分解性ラップフィルムは、さらに次の条件(C−1、D−1)を備えているのが好ましい。
(C−1)
フィルム中の乳酸系樹脂成分の結晶化熱量ΔHcと融解熱量ΔHmとの差(ΔHm−ΔHc)、詳しくはJIS K−7121(ISO3146に相当)に従って、示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分でフイルムを昇温したときの全結晶を融解するのに必要な融解熱量ΔHmと、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が10J/g以上、特に12J/g以上、なかでも特に15J/g以上であるのが好ましい。
(D−1)
ラップフィルムのMD方向(引取方向)に対するTD方向(MD方向の垂直方向)の引張応力比(σMD/TD)が、伸び率200%までの範囲において0.4〜2.5の範囲にあるのが好ましく、0.5〜2.0の範囲にあるのがさらによい。0.4〜2.5の範囲内であれば、生分解性フィルムで角張った包装体を包装してもコーナー付近に皺が入り難い。
(本実施形態の生分解ラップフィルムの組成)
本実施形態の生分解ラップフィルムは、乳酸系樹脂及び可塑剤を含有する乳酸系樹脂組成物を主成分として含有する。必要に応じて、さらに生分解性を備えたその他の樹脂成分を主成分として配合することもできる。
(乳酸系樹脂)
本実施形態に用いられる乳酸系樹脂は、構造単位がL−乳酸からなるホモポリマーであるポリ(L−乳酸)、D−乳酸からなるホモポリマーであるポリ(D−乳酸)、L−乳酸及びD−乳酸の両方を構造単位とする共重合体であるポリ(DL−乳酸)のいずれか、或いはこれらのポリマーブレンドを用いることができる。
なお、本発明においてホモポリマーとは、理想的にはL−乳酸又はD−乳酸が100%からなるポリマーであるが、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、本発明ではL−乳酸又はD−乳酸を98%以上含むものをホモポリマーと呼ぶ。
(乳酸系樹脂以外の樹脂成分)
本実施形態の生分解ラップフィルムに用いる乳酸系樹脂組成物には、上述のように、必要に応じて生分解性を備えた脂肪族ポリエステル、生分解性を備えた芳香族ポリエステル、或いは生分解性を備えた芳香族脂肪族ポリエステル等をポリマーブレンドしてもよい。
(生分解性を備えた脂肪族ポリエステル)
乳酸系樹脂以外の生分解性を備えた脂肪族ポリエステルとしては、例えば、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合して得られる脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル等を挙げることができる。
具体的な例としては、ダイセル化学工業社製セルグリーンシリーズが挙げられる。
(生分解性を備えた芳香族ポリエステル)
生分解性を備えた芳香族ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール成分からなる生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルを用いることができる。
(生分解性を備えた芳香族脂肪族ポリエステル)
生分解性を備えた芳香族脂肪族ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分、および脂肪族ジオール成分からなる生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルを挙げることができる。
(可塑剤)
可塑剤は、乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低下させ軟質化させる機能を備えたものであるが、本実施形態で用いる可塑剤として、乳酸系樹脂との相溶性や生分解性の観点から、下記(A)〜(I)に示す化合物の中から選ばれる1種或いは2種類以上の組合わせからなるものが好ましく、なかでも特に下記(F)が好ましい。
(A)H5C3(OH)3-n(OOCCH3)n (但し、0<n≦3)
これは、グリセリンのモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテ−トであり、これらの混合物でも構わないが、nは3に近い方が好ましい。
(B)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2〜20、水酸基の残基があってもよい)
例えば、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等が挙げられる。
(C)エチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜20であり、水酸基の残基があってもよい)。
(D)エチレン繰り返し単位が5以下のポリエチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜12、水酸基の残基があってもよい)。
(E)脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20)
例えば、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。
(F)脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい)、中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。具体的には、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート等が挙げられる。
(G)脂肪族トリカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい)。
(H)質量平均分子量2万以下の低分子量脂肪族ポリエステル
例えば、コハク酸とエチレングリコール/プロピレングリコール縮合体(大日本インキ(株)によって「ポリサイザ−」の商品名で販売されている)等が挙げられる。
(I)天然油脂及びそれらの誘導体
例えば、大豆油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油等が挙げられる。
(製造方法)
次に生分解性ラップフィルムの製造方法について説明するが、下記製造法に限定されるものではない。
ポリ(DL−乳酸)などの結晶化度の低い乳酸系樹脂を原料に用いた場合、フィルム成形後、所定の温度で6時間以上養生するのが好ましい。この際、養生温度は、JIS K−7121に従って示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分でフィルムを昇温したときのガラス転移温度と、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量のピーク温度との間とする必要がある。好ましくは、当該ガラス転移温度よりも30℃以上高い温度で12〜24時間、さらに好ましくは当該ガラス転移温度よりも35〜40℃高い温度で12〜24時間保管し養生する。すなわち、結晶化度の低い乳酸系樹脂の場合は、穏やかな条件で時間をかけて結晶化度を高める必要がある。
<動的粘弾性測定>
JIS K−7198 A法(ISO6721−4に相当)に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製粘弾性スペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃及び0℃で、シート状物のMD方向について測定した。
<ΔHm−ΔHc>
パーキンエルマー社製示差走査熱量測定(DSC−7)を用い、JIS K−7121(ISO3146に相当)に基づいて昇温速度10℃/分でフイルムを昇温したときの昇温測定を行い、得られたサーモグラムより結晶化に伴う発熱量(ΔHc:J/g)と結晶の融解に伴う吸熱量(ΔHm:J/g)の差より算出した。
<引っ張り応力比(σMD/TD)>
フィルムのMD方向とTD方向について、JIS K−7113に準じて引張速度200mm/分で引張試験を行い、MDの応力(Pa)をTDの応力(Pa)で除すことにより算出した。
<カット性>
フィルムを紙筒に巻いて市販のノコギリ刃付きのカートンケースに入れ、フィルムをカートンケースから引き出してノコギリ刃カット性を評価した。
<耐熱性>
陶磁器製の皿にエビの天ぷら(長さ160mm程度)2尾を入れ、フィルム包装し、500Wの電子レンジに入れて3分間加熱し、熱による破れ具合を観察し、以下の基準で評価した。
<包装適性>
陶磁器製の皿にフィルムを包装した場合の包装適性を、以下の基準で評価した。
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2(表中のTEC)、分子量270、SP値11.46[fedrs法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例2)
L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedrs法])を質量比で15wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例3)
L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例4)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例5)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で15wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例6)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で7wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例7)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20万)とを、4031D:4050=50wt%:50wt%でドライブレンドし、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedrs法])を質量比で40wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例8)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20)と、L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)とを、4031D:4050:4060=45wt%:45wt%:10wt%でドライブレンドし、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedrs法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
<ブリード促進試験>
上記実施例1〜8で得られたフィルムについて次のようなブリード促進試験を行った。すなわち、MD方向10cm、TD方向10cmのフィルムを、40℃、40%RH雰囲気中に30日間放置し、フィルム表面への可塑剤の浮き出しの有無を目視で確認した。
(比較例1)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedrs法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した。
(比較例2)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した。
(比較例3)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で15wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した。
(比較例4)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で7wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した。
不具合が生じることになる。
[0014] このため、家庭用小巻ラップフィルムには、透明性は勿論のこと、紙箱から引き出してカットする際のカット適性、包装する際の包装適性、電子レンジ加熱に耐える耐熱性等が要求される。
[0015] そこで本発明は、乳酸系樹脂が本来有している生分解性に加え、家庭用ラップフィルムの特性であるカット適性、包装適性、耐熱性を同時に具備した生分解性ラップフィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
[0016] かかる課題を解決するため、本発明の生分解性ラップフィルムは、L体とD体の比率が88:12〜85:15若しくは12:88〜15:85であるポリ(DL−乳酸)と可塑剤とを含有する乳酸系樹脂組成物を主成分として含有する生分解性ラップフィルムであって、JIS K−7198 A法(ISO6721−4に相当。なお、1991年11月1日制定のJIS K−7198 A法は、現在1999年10月20制定のJIS K−7244−4に置き換えられている。)の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜3GPaの範囲にあり、100℃における貯蔵弾性率の値が30MPa〜500MPaの範囲にあり、損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にある乳酸系樹脂組成物を主成分として含有することを特徴とするものである。
[0017] このような物性を備えた生分解性ラップフィルムであれば、家庭用ラップフィルムとしての使用用途に合った腰と柔らかさ、伸びと引張り強度のほか、電子レンジ加熱に耐える耐熱性を備えているため、家庭用ラップフィルムに求められるカット適性、包装適性、耐熱性を同時に具備した生分解性ラップフィルムとなる。
通常の温度における包装適性の面からは、さらに20℃における損失正接(tanδ)の値が0.5以下、特に0.1〜0.5の範囲にあることが好ましい。
[0018] また、本発明の生分解性ラップフィル厶は、所定以上の結晶化度を備えてるのが好ましい。すなわち、JIS K−7121(ISO3146に相当)に従って、示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分でフィルムを昇温したときの全結晶を融解するのに必要な融解熱量ΔHmと、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が10J/g以上であるのが好ましい。ΔHm−ΔHcが10J/g以上であれば、フィルムは所望の相対結晶化度に到達し、さらに好ましい包装適性や耐熱性を備えることになる。
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要な結晶融解熱量であり、ΔHcは、所定の昇温速度でフィルムを一次昇温したときの昇温過程で生じる結晶化の際に発生する熱量である。△Hm−△Hcは、フィルム中の乳酸系樹脂の結晶化度を示し、△Hm−△Hcが大きいほど中の乳酸系樹脂の結晶化度が高いことを示す。
(D−1)
ラップフィルムのMD方向(引取方向)に対するTD方向(MD方向の垂直方向)の引張応力比(σMD/TD)が、伸び率200%までの範囲において0.4〜2.5の範囲にあるのが好ましく、0.5〜2.0の範囲にあるのがさらによい。0.4〜2.5の範囲内であれば、生分解性フィルムで角張った包装体を包装してもコーナー付近に皺が入り難い。
(本実施形態の生分解ラップフィルムの組成)
本実施形態の生分解ラップフィルムは、乳酸系樹脂及び可塑剤を含有する乳酸系樹脂組成物を主成分として含有する。必要に応じて、さらに生分解性を備えたその他の樹脂成分を主成分として配合することもできる。
(乳酸系樹脂)
本実施形態に用いられる乳酸系樹脂は、構造単位がL−乳酸からなるホモポリマーであるポリ(L−乳酸)、D−乳酸からなるホモポリマーであるポリ(D−乳酸、L−乳酸及びD−乳酸の両方を構造単位とする共重合体であるポリ(DL−乳酸)のいずれか、或いはこれらのポリマーブレンドを用いることができる。
[0031] ただし、本実施形態の生分解ラップフィルムを製造する条件下では、ポリ(L−乳酸)のような結晶性の高いポリマーを原料に使用すると可塑剤のブリードアウトを生じ易いことが判明している。そこで、少なくともポリ(L−乳酸)よりも結晶性の低い乳酸系樹脂が好ましい。例えばポリ(DL−乳酸)、又は、ポリ(DL−乳酸)とポリ(L−乳酸)或いはポリ(D−乳酸)とのポリマーブレンド体などである。
[0032] ポリ(DL−乳酸)におけるDL構成比としては、例えばL体:D体=100:0〜85:15、若しくはL体:D体=0:100〜15:85であるのが好ましく、より好ましくは、可塑剤のブリードアウトの観点から、少なくとも後述する実施例4〜6で用いたL体:D体=88:12よりも結晶性が低い組成、すなわちL体:D体=88:12〜85:15、若しくはL体:D体=12:88〜15:85である。
なお、本発明においてホモポリマーとは、理想的にはL−乳酸又はD−乳酸が100
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陶磁器製の皿にエビの天ぷら(長さ16mm程度)2尾を入れ、フィルム包装し、500Wの電子レンジに入れて3分間加熱し、熱による破れ具合を観察し、以下の基準で評価した。
[0077] ○:穴があかなかった。
[0078] △:少し穴があいたり、変形したが、使用上問題の無いレベルであった。
[0079] ×:大きな穴があいたり、大きな変形をし、使用上問題となるレベルであった。
<包装適性>
陶磁器製の皿にフィルムを包装した場合の包装適性を、以下の基準で評価した。
[0080] ○:適度に包装できるレベル。
[0081] △:少し皺が入るが実用上問題の無いレベル。
[0082] ×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となるレベル。
[0083]【表1】
(参考例1)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2(表中のTEC)、分子量270、SP値11.46[fedrs法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
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(参考例2)
L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedrs法])を質量比で15wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例3)
L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
【実施例1】
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
【実施例2】
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で15wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
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【実施例3】
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で7wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例4)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20万)とを、4031D:4050=50wt%:50wt%でドライブレンドし、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phr混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedrs法])を質量比で40wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例5)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20)と、L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)とを、4031D:4050:4060=45wt%:45wt%:10wt%でドライブレンドし、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedrs法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
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<ブリード促進試験>
上記実施例1〜3及び参考例1〜5で得られたフィルムについて次のようなブリード促進試験を行った。すなわち、MD方向10cm、TD方向10cmのフィルムを、40℃、40%RH雰囲気中に30日間放置し、フィルム表面への可塑剤の浮き出しの有無を目視で確認した。
[0084] その結果、参考例1、2及び4に比べ、実施例1、2、3、参考例3及び5が優れていた。その中でも実施例1、2、3は全くブリードが確認されず特に優れていた。
(比較例1)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedrs法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した。
[0085] 結晶化度が低く、40℃での弾性率が20.8MPaと低く、カット性に劣り、耐熱性評価では少し穴が空いたが実用上問題ないレベルのフィルムとなった。
(比較例2)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した。
[0086] 本フィルムは40℃での弾性率が350MPaとなり、カット性はやや劣るものの実用上問題ないレベルであったが、全く結晶化してないため100℃での弾性率は1MPa以下となり、耐熱性評価では大きな穴があき、さらに陶磁器や天ぷらにフィルムが粘着する結果となった。
(比較例3)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂Natur
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(生分解性を備えた芳香族ポリエステル)
生分解性を備えた芳香族ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール成分からなる生分解性を有する芳香族ポリエステルを用いることができる。
(可塑剤)
可塑剤は、乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低下させ軟質化させる機能を備えたものであるが、本実施形態で用いる可塑剤として、乳酸系樹脂との相溶性や生分解性の観点から、下記(A)〜(I)に示す化合物の中から選ばれる1種或いは2種類以上の組み合わせからなるものが好ましく、なかでも特に下記(F)が好ましい。
(A)H5C3(OH)3−n(OOCCH3)n(但し、0<n≦3)
これは、グリセリンのモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテートであり、これらの混合物でも構わないが、nは3に近い方が好ましい。
(B)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2〜20、水酸基の残基があってもよい)
例えば、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等が挙げられる。
(C)エチレングリコールアルキレート(アルキル基は炭素数1〜20であり、水酸基の残基があってもよい)。
ポリ(DL−乳酸)などの結晶化度の低い乳酸系樹脂を原料に用いた場合、フィルム成形後、所定の温度で6時間以上養生するのが好ましい。この際、養生温度はJIS K−7121に従って示差走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分でフィルムを昇温したときのガラス転移温度と、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量のピーク温度との間とする必要がある。好ましくは、当該ガラス転移温度よりも30℃以上高い温度で12〜24時間、さらに好ましくは当該ガラス転移温度よりも35〜40℃高い温度で12〜24時間保管し養生する。すなわち、結晶化度の低い乳酸系樹脂の場合は、穏やかな条件で時間をかけて結晶化度を高める必要がある。
<動的粘弾性測定>
JIS K−7198 A法(ISO6721−4に相当)に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製粘弾性スペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃及び0℃で、シート状物のMD方向について測定した。
<ΔHm−ΔHc>
パーキンエルマー社製示差走査熱量測定装置(DSC−7)を用い、JIS K−7121(ISO3146に相当)に基づいて昇温速度10℃/分でフィルムを昇温したときの昇温測定を行い、得られたサーモグラムより結晶化に伴う発熱量(ΔHc:J/g)と結晶の融解に伴う吸熱量(ΔHm:J/g)の差より算出した。
<引っ張り応力比(σMD/TD)>
フィルムのMD方向とTD方向について、JIS K−7113に準じて引張速度200mm/分で引張試験を行い、MDの応力(Pa)をTDの応力(Pa)で除すことにより算出した。
<カット性>
フィルムを紙筒に巻いて市販のノコギリ刃付きのカートンケースに入れ、フィルムをカートンケースから引き出してノコギリ刃カット性を評価した。
(参考例1)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2(表中のTEC)、分子量270、SP値11.46[fedros法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例2)
L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedros法])を質量比で15wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例3)
L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedros法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例1)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedros法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例2)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedros法])を質量比で15wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例3)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedros法])を質量比で7wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例4)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20万)とを、4031D:4050=50wt%:50wt%でドライブレンドし、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedros法])を質量比で40wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例5)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20万)と、L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)とを、4031D:4050:4060=45wt%:45wt%:10wt%でドライブレンドし、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedros法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
<ブリード促進試験>
上記実施例1〜3及び参考例1〜5で得られたフィルムについて次のようなブリード促進試験を行った。すなわち、MD方向10cm、TD方向10cmのフィルムを、40℃、40%RH雰囲気中に30日間放置し、フィルム表面への可塑剤の浮き出しの有無を目視で確認した。
Claims (6)
- JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜3GPaの範囲にあり、
100℃における貯蔵弾性率の値が30MPa〜500MPaの範囲にあり、
損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にある乳酸系樹脂組成物を主成分として含有する生分解性ラップフィルム。 - JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率の値が1GPa〜4GPaの範囲にあり、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.5以下であることを特徴とする請求項1記載の生分解性ラップフィルム。
- JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した60℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜800MPaの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の生分解性ラップフィルム。
- 乳酸系樹脂組成物は、乳酸系樹脂と可塑剤とを60:1〜99:1の質量割合で含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性ラップフィルム。
- JIS K−7121に従って示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分でフイルムを昇温したときの全結晶を融解するのに必要な融解熱量ΔHmと、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が10J/g以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性ラップフィルム。
- フィルムをJIS K−7121に従って示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分で昇温したときのガラス転移温度と、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量のピーク温度との間の温度に、成形後のフィルムを加熱して6時間以上養生してなる請求項1〜5のいずれかに記載の生分解性ラップフィルム。
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