JPWO2005049406A1 - 車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、これらの問題を解決するものとして、電動モータを動力源とする電動パワーステアリング装置(Electric Power Steering、以下EPSと記す)が近年注目されている。EPSには、電動モータの電源に車載バッテリを用いるために直接的なエンジンの駆動損失が無く、電動モータが操舵アシスト時にのみに起動されるために走行燃費の低下も抑えられる他、電子制御が極めて容易に行える等の特長がある。
EPSでは、ステアリングホイールに印加された操舵トルクに対応して、電動モータから補助操舵トルクを発生して、動力伝達機構(減速機)により減速して操舵機構の出力軸に伝達するようになっている。
図8は、従来に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の縦断面図である。
コラムアシスト式電動パワーステアリング装置では、ステアリングコラムのロアーコラム2に、アッパーコラム1がテレスコピック摺動自在に嵌合してある。
これら両コラム1,2内に、スプライン嵌合した中空のアッパーシャフト3と、中実のロアーシャフト4(入力軸)とが回転自在に支持してある。ロアーシャフト4に形成した雄スプライン部4aに、アッパーシャフト3に形成した雌スプライン部3aがテレスコピック摺動自在にスプライン嵌合してある。
ロアーシャフト4は、その雄スプライン部4aには、樹脂コートしてあってもよい。テレスコピック調整時の伸縮変位を両スプライン部3a,4aで吸収することができる。
ロアーシャフト4(入力軸)の車両前方側には、出力軸5が連結してある。この出力軸5の車両前方側には、自在継手(図示略)等を介して中間シャフト(図示略)が連結してある。
ロアーシャフト4(入力軸)の車両前方側には、トーションバー5aの基端が圧入固定してあり、このトーションバー5aは、中空に形成した出力軸5の内部を延在して、その先端が出力軸5の端部に固定ピン6により固定してある。
出力軸5の車両後方側には、トルクセンサー部TSが設けてある。即ち、出力軸5の車両後方側には、トルクセンサー部TSの検出用溝7が形成してあり、これらの溝7の径方向外方には、トルクセンサー部TSのスリーブ8が配置してある。このスリーブ8は、その車両後方側端部がロアーシャフト4(入力軸)の車両前方側端部に加締め等により固定してある。スリーブ8の径方向外方には、コイル9や基板等が設けてある。
出力軸5には、電動モータの駆動軸に連結したウォーム11に噛合したウォームホイール12が取付けてある。これらウォーム11及びウォームホイール12は、ロアーコラム2に一体的に形成された後方側ハウジング13と、別体の前方側ハウジング14とに収納してある。
従って、運転者がステアリングホイール(図示略)を操舵することにより発生した操舵力は、入力軸4、トーションバー5a、出力軸5、及びラックアンドピニオン式ステアリング装置を介して、図示しない転舵輪に伝達される。
また、電動モータの回転力は、そのウォーム11及びウォームホイール12を介して出力軸5に伝達されるようになっており、電動モータの回転力及び回転方向を適宜制御することにより、出力軸5に適切な操舵補助トルクを付与できるようになっている。
なお、図8に示すステアリング装置は、チルト・テレスコピック式であって、ハウジング14に設けたチルトピボットPの廻りにチルト傾動できると共に、ロアーコラム2に対して、アッパーコラム1を軸方向にテレスコピック摺動できるようになっている。ロアーコラム2の車両後方部には、車体に取付けるチルトブラケット20が配置してあり、チルト溝21が形成してある。ロアーコラム1には、このチルトブラケット20に圧接されるディスタンスブラケット22が一体的に設けてある。チルト溝21とディスタンスブラケット22の丸孔には、締付ボルト23が通挿してあり、締付ボルト23の端部に設けた操作レバー24を揺動することにより、チルト・テレスコピック締付又は解除できるようになっている。尚、符号25は、テレスコピック調整時のストッパー部材であり、符号26は、ステアリングロック装置の取付部である。
また、車両の二次衝突時、車両前方への衝撃エネルギーが作用すると、アッパーコラム1は、ロアーコラム1に対してコラプスして、車両前方へ移動しながら衝撃エネルギーを吸収するようになっている。また、この際、ロアーシャフト4の大径部4bの端縁に、中空のアッパーシャフト3の雌スプライン部3aが当接できるようになっている。
ところで、特開平9−101212号公報にも開示してあるように、ロアーコラム2の内周壁には、ロアーシャフト4(入力軸)の大径部4bの外周面に接触してトルクセンサー部TSを異物・塵芥等から保護する環状のダストシール30が装着してある。
ロアーコラム2の内周壁に於いて、このダストシール30の車両後方側には、突起部、肩部、又は段差部等からなる環状の位置決め部31が形成してある。これにより、電動パワーステアリング装置の組立時には、環状のダストシール30は、車両前方側から後方に向けて挿入され、環状の位置決め部31に密着するまで、圧入して固定される。
しかしながら、二次衝突時の衝撃エネルギー吸収時、上述した位置決め部31がダストシール30の車両後方側に設けてあることから、この位置決め部31が車両前方へのアッパーコラム1等の移動の妨げとなることがある。
衝突エネルギー吸収構造を考えた場合、以下の点が重要であるが、それぞれに課題がある。
(コラプス・ストロークの確保)
ダストシール30の位置決め部31があるため、この位置決め部31がアッパーコラム1やアッパーシャフト3と干渉して、ストローク・エンドとなり、十分なコラプス・ストロークが確保できない虞れがある。
(コラプス荷重のコントロール)
ダストシール30の位置決め部31があるため、ダストシール30が移動できず、ダストシール30による荷重のコントロールができない虞れがある。
(ストローク・エンドでの荷重上昇の抑制)
ダストシール30の位置決め部31があるため、アッパーコラム1やアッパーシャフト3が直接ダストシール30の位置決め部31に当接して、ストローク・エンドとなり、荷重上昇を十分抑制できない虞れがある。
上記の目的を達成するため、本発明に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールに印加された操舵トルクに応じて、電動モータから補助操舵トルクを発生し、減速機構により減速して操舵機構の出力軸に伝達し、
ステアリングコラムの内周壁に、入力軸の外周面に接触してトルクセンサー部を異物・塵芥から保護する環状のダストシールを備えた車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置において、
二次衝突時、前記ダストシールは前記ステアリングコラムの移動と共に移動可能に設けてあり、衝撃過重を吸収する。
本発明の一態様に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールに印加された操舵トルクに応じて、電動モータから補助操舵トルクを発生し、減速機構により減速して操舵機構の出力軸に伝達し、
ステアリングコラムの内周壁に、入力軸の外周面に接触してトルクセンサー部を異物・塵芥から保護する環状のダストシールを備えた車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置において、
前記ステアリングコラムの内周壁に、前記ダストシールを位置決めするための位置決め部を具備しないことを特徴とする。
本発明の別の態様に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールに印加された操舵トルクに応じて、電動モータから補助操舵トルクを発生し、減速機構により減速して操舵機構の出力軸に伝達し、
ステアリングコラムの内周壁に、入力軸の外周面に接触してトルクセンサー部を異物・塵芥から保護する環状のダストシールを備えた車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置において、
前記ステアリングコラムの内周壁に、前記ダストシールを位置決めするための位置決め部を具備し、
当該位置決め部は、前記ダストシールの車両前方側であって、所定間隔をおいて設けてあることを特徴とする。
本発明の第3の態様に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールに印加された操舵トルクに応じて、電動モータから補助操舵トルクを発生し、減速機構により減速して操舵機構の出力軸に伝達し、
ステアリングコラムの内周壁に、入力軸の外周面に接触してトルクセンサー部を異物・塵芥から保護する環状のダストシールを備えた車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置において、
前記ステアリングコラムの内周壁に、前記ダストシールを位置決めするための位置決め部を具備し、
当該位置決め部は、前記ダストシールの車両前方側に接触するように設けてあることを特徴とする。
本発明によれば、ダストシールの位置決め部を廃止しているため、二次衝突時に、コラムやシャフトがダストシールに接触した後にも、ダストシールは、衝撃エネルギーにより車両前方に移動することができる。これにより、コラプス・ストロークを確保して延長することができる。
ダストシールの位置決め部を廃止しているため、二次衝突時に、コラムやシャフトがダストシールに接触した後にも、ダストシールは、衝撃エネルギーにより車両前方に移動することができる。これにより、ダストシールの圧入荷重・位置等を適宜設定することにより、コラプス荷重をコントロールができる。
ダストシールの位置決め部を廃止しているため、二次衝突時に、コラムやシャフトがダストシールに接触した後にも、ダストシールは、衝撃エネルギーにより車両前方に移動することができ、この際、ダストシールの剛性により、衝撃エネルギーを吸収することができる。
また、位置決め部は、ダストシールの車両前方側であって所定間隔をおいて設けてあることから、この所定間隔を移動させるコラプス荷重によっても、衝撃エネルギーを吸収することができるため、底付き荷重(ダストシールが位置決め部に当接したときの荷重)の上昇を抑えることができる。
さらに、ダストシールの車両前方側に接触するように設けてあることから、二次衝突時に、コラムやシャフトがダストシールに接触した後、ダストシールの剛性により、衝撃エネルギーを吸収することができる。これにより、アッパーコラム又はアッパーシャフトのストローク・エンドでの荷重上昇を抑制することができる。
図2は、図1に示した車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の組立時の前段を示す図である。
図3は、図1に示した車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の組立時の後段を示す図である。
図4Aは、本発明の第1実施の形態の第1変形例に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の断面図であり、図4Bは、図4Aに示したアッパーコラムの部分側面図であり、図4Cは、本発明の第1実施の形態の第2変形例に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の断面図である。
図5は、本発明の第2実施の形態に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の断面図である。
図6は、本発明の第3実施の形態に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の断面図である。
図7Aは、比較例に係るコラプス荷重とストロークとの関係を示すグラフであり、図7Bは、本発明の実施例に係るコラプス荷重とストロークとの関係を示すグラフである。
図8は、従来に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の縦断面図である。
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の断面図である。
図2は、図1に示した車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の組立時の前段を示す図である。
図3は、図1に示した車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の組立時の後段を示す図である。
コラムアシスト式電動パワーステアリング装置では、ステアリングコラムのロアーコラム2に、アッパーコラム1がテレスコピック摺動自在に嵌合してある。
これら両コラ厶1,2内に、スプライン嵌合した中空のアッパーシャフト3と、中実のロアーシャフト4(入力軸)とが回転自在に支持してある。ロアーシャフト4に形成した雄スプライン部4aに、アッパーシャフト3に形成した雌スプライン部3aがテレスコピック摺動自在にスプライン嵌合してある。
ロアーシャフト4は、その雄スプライン部4aには、樹脂コートしてあってもよい。テレスコピック調整時の伸縮変位を両スプライン部3a,4aで吸収することができる。
入力軸となるロアーシャフト4の車両前方側には、出力軸5が連結してある。この出力軸5の車両前方側には、自在継手(図示略)等を介して中間シャフト(図示略)が連結してある。
ロアーシャフト4(入力軸)の車両前方側には、トーションバー5aの基端が圧入固定してあり、このトーションバー5aは、中空に形成した出力軸5の内部を延在して、その先端が出力軸5の端部に固定ピン6により固定してある。
出力軸5の車両後方側には、トルクセンサー部TSが設けてある。即ち、出力軸5の車両後方側には、トルクセンサー部TSの検出用溝7が形成してあり、これらの溝7の径方向外方には、トルクセンサー部TSのスリーブ8が配置してある。このスリーブ8は、その車両後方側端部がロアーシャフト4(入力軸)の車両前方側端部に加締め等により固定してある。スリーブ8の径方向外方には、コイル9や基板等が設けてある。
出力軸5には、電動モータの駆動軸に連結したウォーム11に噛合したウォームホイール12が取付けてある。これらウォーム11及びウォームホイール12は、ロアーコラム2に一体的に形成された後方側ハウジング13と、別体の前方側ハウジング14とに収納してある。
従って、運転者がステアリングホイール(図示略)を操舵することにより発生した操舵力は、入力軸4,トーションバー5a,出力軸5、及びラックアンドピニオン式ステアリング装置を介して、図示しない転舵輪に伝達される。
電動モータの回転力は、そのウォーム11及びウォームホイール12を介して出力軸5に伝達されるようになっており、電動モータの回転力及び回転方向を適宜制御することにより、出力軸5に適切な操舵補助トルクを付与できるようになっている。
図1に示すステアリング装置は、チルト・テレスコピック調整式であって、ハウジング14に設けたチルトピボットPの廻りにチルト傾動できると共に、ロアーコラム2に対して、アッパーコラム1を軸方向にテレスコピック摺動できるようになっている。ロアーコラム2の車両後方部には、車体に取付けるチルトブラケット20が配置してあり、チルト溝21が形成してある。ロアーコラム1には、このチルトブラケット20に圧接されるディスタンスブラケット22が一体的に設けてある。チルト溝21とディスタンスブラケット22の丸孔には、締付ボルト23が挿通してあり、締付ボルト23の端部に設けた操作レバー24を揺動することにより、チルト・テレスコピック締付又は解除できるようになっている。尚、符号25は、テレスコピック移動時のストッパー部材であり、符号26は、ステアリングロック装置の取付部である。
車両の二次衝突時、車両前方への衝撃エネルギーが作用すると、アッパーコラム1は、ロアーコラム2に対してコラプスして、車両前方へ移動しながら衝撃エネルギーを吸収するようになっている。この際、ロアーシャフト4の大径部4bの端縁に、中空のアッパーシャフト3の雌スプライン部3aが当接できるようになっている。
本実施の形態では、ロアーコラム2の内周壁には、ロアーシャフト4(入力軸)の大径部4bの外周面に接触してトルクセンサー部TSを異物・塵芥等から保護する環状のダストシール30が装着してある。
ダストシール30のシール材質は、一般的には、ニトリルゴム、アクリルゴム相当品を用いる。本発明では、ニトリルゴム相当品を用い、詳細条件は、JISB2402のB項を適用している。このシール材質は、以下の他の実施の形態・変形例に於いても同様である。
本実施の形態では、ロアーコラム2の内周壁には、図8に示した従来例におけるような、突起部、肩部、又は段差部等からなる環状の位置決め部31が形成していない。即ち、本実施形態では、位置決め部31は、廃止してあり、ロアーコラム2の内周壁は全長にわたり均一内径である。
電動パワーステアリング装置の組立時に於ける、ダストシール30の装着は、図2に示すように、ロアーコラム2にトルクセンサー部TS等を装着した第1組立体Xに於いて、ロアーコラム2内に、筒状の治具40が予め挿入内嵌してあり、この治具40の先端部に、環状ダストシール30が保持してある。
その後、図3に示すように、第1組立体Xのロアーコラム2に対して、ロアーシャフト4および出力軸5等から成る第2組立体Yを組みつけて、ロアーコラム先端側からロアーシャフト4および出力軸5を挿入して、治具40の先端部に保持された環状ダストシール30をロアーシャフト外周面に摺り可能に接触(本明細書中摺接とも記す)して位置決めする。これにより、ダストシール30の内周面がロアーシャフト4の大径部4bの外周面に摺り可能に接触され、ダストシール30の装着が終了し、治具40が除去される。
以上のように、ダストシール30の装着及び電動パワーステアリング装置の組立は、位置決め部31を廃止したとしても、極めて簡単・容易に行うことができる。
本実施の形態では、二次衝突時には、衝撃荷重により、アッパーコラム1がダストシール30に当接する。
その後、ダストシール30の位置決め部31を廃止していることから、アッパーコラム1やアッパーシャフト3がダストシール30に接触した後にも、ダストシール30は、衝撃エネルギーによりアッパーコラム1やアッパーシャフト3と共に車両前方に移動することができ、これにより、コラプス・ストロークを確保して延長することができる。また、この際、ダストシール30の剛性により、衝撃エネルギーを吸収することができる。
ロアーシャフト4の大径部4bの端縁に、中空のアッパーシャフト3の雌スプライン部3aの前端が当接すると、ストローク・エンドとなる。
ダストシール30の位置決め部31を廃止していることから、アッパーコラム1等がダストシール30に接触した後にも、ダストシール30は、アッパーコラム1等と共に車両前方に移動することができ、ダストシール30の剛性により、衝撃エネルギーを吸収することができる。これにより、ダストシール30の圧入荷重・位置等を適宜設定することにより、コラプス荷重をコントロールができる。
また、ダストシール30による荷重コントロールに関しては、ダストシール30の圧入荷重・位置等以外に、下記のように構成してもよい。
図4Aは、本発明の第1実施の形態の第1変形例に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の断面図であり、図4Bは、図4Aに示したアッパーコラムの部分側面図であり、図4Cは、本発明の第1実施の形態の第2変形例に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の断面図である。
図4A、図4Bに示す第1変形例に於いて、ハウジングとなるロアーコラム2の内径では、通常時ダストシール30が摺接する部分32に対して、ダストシール30の車両前方側には、テーパ部33が形成してあり、その車両前方側には、小径部34が形成してある。このテーパ部33は、ロアーコラム2の車両前方側ほど漸次小径になるようなテーパに形成してある。
ダストシール30が車両前方に移動する際、このテーパ部33によって、コラプス荷重を漸次高くすることができる。従って、限られたスペースで吸収できるコラプス荷重を大きくすることができる。
なお、図4Bに示すように、アッパーコラム1の車両前方端部には、径方向に対向してスリット1aが軸方向に形成してあり、アッパーコラム1が縮径・拡径できるようになっている。これにより、スリット1aの寸法等を変更して、アッパーコラム1の摺動荷重を調整することができる。
図4Cに示すの第2変形例に於いて、ハウジングであるロアーコラム2の内径では、通常時ダストシール30が摺接する部分32に対して、ダストシール30の車両前方側には、径が一段大きくなった大径部35が形成してある。
これにより、ダストシール30が車両前方に移動する際、ある位置まで移動すると、コラプス荷重を一気に低くすることができる。
(第2実施の形態)
図5は、本発明の第2実施の形態に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の断面図である。基本的構造は、上述した実施の形態と同様であり、異なる点についてのみ説明する。
本実施の形態では、ロアーコラム2の内周壁に、ダストシール30を位置決めするための位置決め部31が形成してある。この位置決め部31は、ダストシール30の車両前方側であって、ダストシール30より所定間隔(d)をおいて通常時、ダストシール30が摺接する内周壁部分32の径よりも小さな内径の小径部により形成されている。
本実施の形態では、二次衝突時には、衝撃荷重により、アッパーコラム1の前端がダストシール30に当接する。
アッパーコラム1やアッパーシャフト3がダストシール30に接触した後にも、ダストシール30は、位置決め部31までの所定間隔(d)だけ、衝撃エネルギーによりアッパーコラム1やアッパーシャフト3と共に車両前方に移動することができる。
これにより、コラプス・ストロークを確保して延長することができ、また、車両前方への移動の際、ダストシール30の剛性により、衝撃エネルギーを吸収することができる。
ダストシール30が位置決め部31に当接すると、アッパーコラム1とアッパーシャフト3とは移動を阻止されストローク・エンドとなる。
アッパーコラム1とアッパーシャフト3とを所定間隔(d)移動させるコラプス荷重によっても、衝撃エネルギーを吸収することができるため、ストローク・エンド荷重(ダストシール30が位置決め部31に当接したときの荷重)の上昇を抑えることができる。
(第3実施の形態)
図6は、本発明の第3実施の形態に係る車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置の断面図である。基本的構造は、上述した実施の形態と同様であり、異なる点についてのみ説明する。
本実施の形態では、ロアーコラム2の内周壁に、ダストシール30を位置決めするための位置決め部31が形成してある。位置決め部31は、通常時ダストシール30が摺接する内周壁部分32の径よりも小さな内径の小径部による段差として、ダストシール30の車両前方側に接触(密着)するように設けてある。
本実施の形態では、二次衝突時には、衝撃荷重により、アッパーコラム1がダストシール30に当接する。
アッパーコラム1やアッパーシャフト3がダストシール30の車両後方側に当接すると、アッパーコラム1とアパシャフト3とは移動を阻止され、ストローク・エンドとなる。位置決め部31は、ダストシール30の車両前方側に密着するように設けてあることから、ダストシール30の剛性により、衝撃エネルギーを吸収することができる。これにより、ダストシール30が位置決め部31に当接するストローク・エンドでの荷重上昇を抑制することができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。
図7Aは、比較例に係るコラプス荷重とストロークとの関係を示すグラフであり、図7Bは、本発明の各実施例に係るコラプス荷重とストロークとの関係を示すグラフである。
図7Bの実施例の場合には、図7Aの比較例に比べて、ストローク・エンドでの鋭敏なピーク荷重が現出することは、ほとんど見受けられなかった。また、その最大コラプス荷重は、ストロークはじめのピーク時より小さい値となる場合もあった。
以上から、本発明の第1実施形態では、ダストシールの位置決め部を廃止しているため、二次衝突時に、コラムやシャフトがダストシールに接触した後にも、ダストシールは、衝撃エネルギーにより車両前方に移動することができ、この際、ダストシールの剛性により、衝撃エネルギーを吸収することができる。
また、本発明の第2実施形態の位置決め部は、ダストシールの車両前方側であって所定間隔をおいて設けてあることから、この所定間隔を移動させるコラプス荷重によっても、衝撃エネルギーを吸収することができるため、底付き荷重(ダストシールが位置決め部に当接したときの荷重)の上昇を抑えることができる。
さらに、本発明の第3実施形態では、ダストシールの車両前方側に接触するように設けてあることから、二次衝突時に、コラムやシャフトがダストシールに接触した後、ダストシールの剛性により、衝撃エネルギーを吸収することができる。これにより、ストローク・エンドでの荷重上昇を抑制することができる。
Claims (6)
- ステアリングホイールに印加された操舵トルクに応じて、電動モータから補助操舵トルクを発生し、減速機構により減速して操舵機構の出力軸に伝達し、
ステアリングコラムの内周壁に、入力軸の外周面に接触してトルクセンサー部を異物・塵芥から保護する環状のダストシールを備えた車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置において、
二次衝突時前記ダストシールは、前記ステアリングの移動と共に移動可能に設けてあることを特徴とする車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置。 - ステアリングホイールに印加された操舵トルクに応じて、電動モータから補助操舵トルクを発生し、減速機構により減速して操舵機構の出力軸に伝達し、
ステアリングコラムの内周壁に、入力軸の外周面に接触してトルクセンサー部を異物・塵芥から保護する環状のダストシールを備えた車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置において、
前記ステアリングコラムの内周壁に、前記ダストシールを位置決めするための位置決め部を具備しないことを特徴とする車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置。 - 前記ステアリングコラムの内周壁は、全長にわたり均一内径から成ることを特徴とする請求項2に記載の車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置。
- ステアリングホイールに印加された操舵トルクに応じて、電動モータから補助操舵トルクを発生し、減速機構により減速して操舵機構の出力軸に伝達し、
ステアリングコラムの内周壁に、入力軸の外周面に接触してトルクセンサー部を異物・塵芥から保護する環状のダストシールを備えた車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置を製造するために、
均一な径の内周壁を有するロアーコラムと該ロアーコラム内に内嵌された筒状治具と該ロアーコラム内で該筒状治具の先端に内嵌された環状ダストシールから成る第1組立体を準備し、
該第1組立体の前記ロアーコラム先端側から出力軸およびロアーシャフトを含む第2組立体を挿入し、
これにより前記ダストシールを前記ロアーシャフト外周面に摺接して位置決めし、
次いで、前記筒状治具を取外すことを特徴とする車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置製造方法。 - ステアリングホイールに印加された操舵トルクに応じて、電動モータから補助操舵トルクを発生し、減速機構により減速して操舵機構の出力軸に伝達し、
ステアリングコラムの内周壁に、入力軸の外周面に接触してトルクセンサー部を異物・塵芥から保護する環状のダストシールを備えた車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置において、
前記ステアリングコラムの内周壁に、前記ダストシールを位置決めするための位置決め部を具備し、
当該位置決め部は、前記ダストシールの車両前方側であって、前記ダストシールから所定間隔をおいて設けてあることを特徴とする車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置。 - ステアリングホイールに印加された操舵トルクに応じて、電動モータから補助操舵トルクを発生し、減速機構により減速して操舵機構の出力軸に伝達し、
ステアリングコラムの内周壁に、入力軸の外周面に接触してトルクセンサー部を異物・塵芥から保護する環状のダストシールを備えた車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置において、
前記ステアリングコラムの内周壁に、前記ダストシールを位置決めするための位置決め部を具備し、
当該位置決め部は、前記ダストシールの車両前方側に接触するように設けてあることを特徴とする車両用衝撃吸収式電動パワーステアリング装置。
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