JPWO2004108772A1 - 硬化性表面改質剤およびそれを用いた硬化性表面改質用組成物 - Google Patents

硬化性表面改質剤およびそれを用いた硬化性表面改質用組成物 Download PDF

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Abstract

長鎖ポリフルオロポリエーテル鎖含有部位Aおよび/または自己架橋性官能基含有部位Bを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマーからなり、樹脂として部位Aおよび部位Bの両方を含み、かつ汎用溶剤に可溶である樹脂からなる硬化性表面改質剤であって、各種の塗膜、特に反射防止膜の表面性状、特に表面滑り性(低摩擦係数化)、表面硬度、耐磨耗性、耐薬品性、汚染拭き取り性などを改善し、本来の塗膜の表面に改質された表面性状を付与することができる硬化性表面改質剤を提供する。

Description

本発明は、各種の塗膜の表面性状、特に表面滑り性(低摩擦係数化)、表面硬度、耐磨耗性、耐薬品性、汚染拭き取り性、撥水性、撥油性、耐溶剤性などを改善し、本来の塗膜の表面に改質された表面性状を付与する発明に関する。
特に反射防止膜の透明性を損なうことなく表面滑り性を改善し、長期に亘って反射防止能を維持させることができる発明に関する。
テレビやOA機器のモニターなどの画像表示装置において、光の映り込みを防止または軽減するために、画像表示装置の画面上に反射防止膜を設けることが行なわれている(たとえば国際特許公開WO 02/18457)。
しかし、反射防止膜は透明性を確保するためにも0.03〜0.5μmと極めて薄いものであり、また表面の滑り性も良好ではなく(摩擦係数が高い)、表面の汚れなどを繰り返し拭き取ることにより傷が付いたり、剥落したりする場合もある。
一般に、表面の滑り性を改良する方法として、低分子量のシリコーンオイルやフッ素オイルなどの液状の撥水撥油剤を塗布または内添することが知られているが、効果に持続性がない。
また、ポリマーの形態で適用し、表面の滑り性を改善する方法も提案されている(たとえば特開平10−287719号公報)。特開平10−287719号公報に提案されている方法によれば、式:
RfO(CFCFO)(CFO)CF−A−T
(式中、Rfは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、Aは−CF−末端に結合している架橋基(アルキレン基やオキシアルキレン基などの連結基であって、架橋性の官能基ではない)、Tは反応性官能基)で示されるパーフルオロポリエーテル構造を有するフッ素変性剤と水素含有単量体または重合体(たとえばポリウレタンやポリアクリレートなど)とを重縮合、重付加またはグラフト反応させて得られるフッ素化変性水素含有重合体をガラスなどの基材に塗布しUV架橋やパーオキサイド架橋することにより、表面の摩擦係数を低減し、耐磨耗性を付与でき、表面硬度を高め、対水接触角を高め、耐薬品性を向上できるとされている。
しかし、特開平10−287719号公報に記載のフッ素化変性水素含有重合体は、薄膜を作製する際にフッ素化変性剤と水素含有重合体を基材表面で反応させて合成されている。さらにこのフッ素化変性剤、特に防汚性や滑り性に優れる長鎖の高フッ素化フルオロポリエーテル構造を有するフッ素変性剤は含フッ素溶剤には溶解するが汎用溶剤への溶解性に乏しく、合成および塗工の過程において含フッ素溶剤が必要であるため、コストがかかるうえ、環境への負荷も大きい。
本発明者らは、表面の滑り性を改善し、かつ非フッ素系の汎用溶剤に可溶で、薄膜形成の容易な表面改質剤を開発するべく鋭意研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、部位Aおよび部位Bを同じかまたは異なる側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)、または部位Aを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IA)および部位Bを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IB)からなる汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)であって、
該部位Aが式(1):
Figure 2004108772
(式中、n1、n2、n3、n4は同じかまたは異なり0または1以上の整数で、かつn1+n2+n3+n4が7〜40の整数;Xは同じかまたは異なりH、FまたはCl;Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキル基)で示されるポリフルオロポリエーテル鎖Pが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、
該部位Bが自己架橋性官能基Yが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、かつ
該樹脂(I)を構成する含フッ素エチレン性ポリマーから部位Aおよび部位Bを除いたエチレン性ポリマー部位Mが、フッ素原子を含まないかまたはフッ素含有量が10重量%以下で水素原子の一部がフッ素原子に置換されているエチレン性ポリマー部位である
硬化性含フッ素樹脂(I)からなる硬化性表面改質剤に関する(第1の発明)。
かかる汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)のフッ素含有量は、0.1重量%以上で35重量%以下であることが、表面の滑り性の向上と汎用溶剤への溶解性をバランスよく達成できることから好ましい。
樹脂(I)を構成する含フッ素エチレン性ポリマーにおいて、部位Aおよび部位Bを除いたエチレン性ポリマー部位Mの構造単位は、式(2):
Figure 2004108772
または式(3):
Figure 2004108772
(式中、XはHまたは結合手;XはH、FまたはCH)で示される構造単位であることが、汎用溶剤への溶解性が優れる点で好ましい。
また、部位Bが有する自己架橋性官能基Yとしては、
Figure 2004108772
(XはH、CHまたはF;XはHまたはCH
などの1種が、架橋による硬化反応性が良好である点で好ましくあげられる。
この第1の発明の表面改質剤は、単独でまたは他の成分、添加剤を配合して表面滑り性の改善に用いることができる。
また本発明によれば、この第1の発明の硬化性表面改質剤を基材上、好ましくは反射防止膜上に塗装したのち硬化させる基材(反射防止膜で被覆された基材も含む)の表面改質方法を提供することができる(第2の発明)。
さらに本発明によれば、反射防止膜および該反射防止膜直上に形成された第1の発明の硬化性表面改質剤の連続または不連続の硬化膜からなる表面改質された多層構造の反射防止膜を提供することができる(第3の発明)。
本発明はまた、(a)前記汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)、および
(b)活性エネルギー線硬化開始剤
からなる活性エネルギー線硬化性の表面改質用組成物に関する(第4の発明)。
さらにまた本発明は、(a)前記汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)、
(b)活性エネルギー線硬化開始剤、および
(c)ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤およびアルコール系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の汎用溶剤または該汎用溶剤を含む混合溶剤
からなる活性エネルギー線架橋性の表面改質用組成物にも関する(第5の発明)。
これらの表面改質用組成物は、表面滑り性の改善に有用である。
また、この第4または第5の発明の活性エネルギー線架橋性表面改質用組成物を基材上、好ましくは反射防止膜上に塗装したのち活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、基材(反射防止膜)の表面特性を改質することができる。
本発明はさらに、(d)部位Aおよび部位Bを同じかまたは異なる側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)、または部位Aを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IA)からなる汎用溶剤可溶性でフッ素含有量が1重量%以上で35重量%以下である含フッ素樹脂(II)であって、
該部位Aが式(1):
Figure 2004108772
(式中、n1、n2、n3、n4は同じかまたは異なり0または1以上の整数で、かつn1+n2+n3+n4が7〜40の整数;Xは同じかまたは異なりH、FまたはCl;Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキル基)で示されるポリフルオロポリエーテル鎖Pが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、
該樹脂(II)を構成する含フッ素エチレン性ポリマーから部位Aおよび部位Bを除いたポリマー部位MAがフッ素原子を含まないかまたはフッ素含有量が10重量%以下で水素原子の一部がフッ素原子に置換されているエチレン性ポリマー部位である
含フッ素樹脂(II)、および
(e)反射防止膜材料
からなる反射防止膜形成用組成物を基材に塗布して得られる反射防止膜に関する(第6の発明)。
また本発明は、(1)式(4):
−(N)−(C)− (4)
[式中、構造単位Nは式(N):
Figure 2004108772
(式中、X15およびX16は同じかまたは異なり、HまたはF;X17はH、F、CHまたはCF;X18およびX19は同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にYまたはY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基、Yは水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい架橋性環状エーテル構造を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Cは構造単位Nを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Nを0.1〜100モル%および構造単位Cを0〜99.9モル%含む数平均分子量500〜1000000の含フッ素ポリマー(IIINC)を100モル%まで含む硬化性含フッ素樹脂(III)、および
(2)前記汎用溶剤可溶性の含フッ素樹脂(II)
からなる硬化性樹脂組成物にも関する(第7の発明)。
さらに本発明は、(i)前記第6の発明で使用する反射防止膜材料(e)または前記第7の発明で使用する硬化性含フッ素樹脂(III)、
(ii)前記第6の発明で使用する汎用溶剤可溶性の含フッ素樹脂(II)、および
(iii)溶剤
からなる液状組成物を用いて塗布、乾燥し、膜を形成したのち硬化させる硬化物、特に反射防止膜の形成方法にも関する(第8の発明)。
なお、本発明において、「汎用溶剤に可溶性」とは、フッ素原子を含有しない有機溶剤の少なくとも1つに可溶である(25℃にて濃度10重量%以上溶解する)性質をいう。フッ素原子を有しない有機溶剤としては、たとえばケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エーテル系溶剤、アセタール系溶剤、テレビン油、これらの同種または異種の混合溶剤、またはこれらの溶剤を含む非フッ素系混合溶剤などがあげられる。より具体的な代表例としては、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸プロピル、イソプロピルアルコール(IPA)、MIBKとジオキサンの1/1(重量比)混合溶剤が例示できる。
まず、第1〜5の発明で使用する汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)について説明する。
樹脂(I)は、部位Aおよび/または部位Bを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマーからなる樹脂であって、樹脂として部位Aおよび部位Bの両方を含んでいること、および汎用溶剤に可溶であることを特徴とする。
樹脂(I)が含んでいてもよい含フッ素エチレン性ポリマーとしては、部位Aおよび部位Bを同じかまたは異なる側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)、部位Aを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IA)、部位Bを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IB)である。
樹脂(I)はポリマー(IAB)単独で構成されていてもよいが、さらにポリマー(IAB)に加えてポリマー(IA)および/またはポリマー(IB)を含んでいてもよい。ただしポリマー(IAB)が存在しない場合は、ポリマー(IA)とポリマー(IB)が共存していることが必要である。また、樹脂(I)は、上記の要件を満たす限り、ポリマー(IAB)、(IA)および(IB)以外のポリマーMPを含んでいてもよい。
そして特定のエチレン性ポリマー部位M、特定の部位Aおよび部位Bを有する含フッ素エチレン性ポリマーからなる硬化性含フッ素樹脂(I)は、全体として、上記の特性のほか、耐薬品性、透明性、低屈折率を有する塗膜を与える。また、含フッ素エチレン性ポリマーは、エチレン性ポリマー部位Mに、目的に応じて要求される特性などを付与するために、部位Aおよび部位Bの他に、任意の官能基を有する部位を有する側鎖を有していてもよい。
つぎにポリマー(IAB)、ポリマー(IA)、ポリマー(IB)、さらにポリマーMPについて説明する。
自己架橋性官能基含有含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)は、部位Aおよび部位Bを側鎖の少なくとも一部分に有し、かつポリマー(IAB)から部位Aと部位Bを除いた部位であるエチレン性ポリマー部位Mを有するポリマーである。
本発明で用いる自己架橋性官能基含有含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)において、エチレン性ポリマー部位Mは汎用溶剤への溶解性を高め、かつ良好な塗工・成膜性を付与し、さらに改質すべき表面に形成される塗膜に靭性をも付与する。部位Aは改質すべき表面に滑り性を発現させ、さらに撥水撥油性、防汚性をも付与する構造である。部位Bはその構造中に有する自己架橋性官能基が未反応の状態においてはポリマー(IAB)、さらには樹脂(I)の物性に大きな影響を与えるものではないが、架橋反応後には、汎用溶剤を含め溶剤に不溶化させ、改質すべき表面に形成される塗膜が変形したり傷ついたりしない高い硬度を与え、さらに耐擦傷性や耐磨耗性を与える。
エチレン性ポリマー部位Mは含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)に汎用溶剤への溶解性を高め、かつ良好な塗工・成膜性を付与し、さらに改質すべき表面に形成される塗膜に靭性をも付与する働きをもち、エチレン性の単量体を重合することによって得られる。重合するエチレン性の単量体としては、部位AおよびBに相当する部分以外の部分(エチレン性ポリマー部位Mに相当)はフッ素原子を含んでいないか、またはフッ素含有量が10重量%以下である単量体を使用し、重合することにより、骨格構造にフッ素原子を有しないまたはフッ素含有量が10重量%以下であるエチレン性ポリマー部位Mを形成する。
エチレン性ポリマー部位Mの好ましい形態の第1としては、構造単位として式(2):
Figure 2004108772
の構造単位を有するものがあげられる。
なかでも、
Figure 2004108772
(R〜Rは同じかまたは異なり、水素原子、カルボキシル基または炭素数1〜10の有機基)の構造を有するものは、汎用溶剤への溶解性や、ポリマー同士または他の成分との相溶性が良好であり、さらに塗工性および成膜性が良好な点から好ましい。
の好ましい具体例としては、−H、−CH、−CHCH、−CHCOOH、−CH、−CHCHCN、
Figure 2004108772
−(CHCHO)nH (nは1〜4の整数)
などがあげられる。
の好ましい具体例としては、−H、−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CHCl、−C、−NHCHなどがあげられる。
の好ましい具体例としては、−CH、−C、−CHOH、−COOH、−CHCl、−COHなどがあげられる。
エチレン性ポリマー部位Mの形態として好ましい第2としては、構造単位として式(3):
Figure 2004108772
(式中、XはHまたは結合手;XはH、FまたはCH)で示される構造単位を有するものがあげられる。
なかでも、
Figure 2004108772
(R〜Rは同じかまたは異なり、水素原子、水酸基または炭素数1〜10の有機基)の構造を有するものは、汎用溶剤への溶解性や、ポリマー同士または他の成分との相溶性が良好であり、さらに塗工性および成膜性が良好な点から好ましい。
の好ましい具体例としては、−H、−CH、−CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHOH、
Figure 2004108772
などがあげられる。
の好ましい具体例としては、−H、−CHOH、−OHなどがあげられる。
の好ましい具体例としては、−CH、−CHCHなどがあげられる。
その他、上記のもの以外にも、−OH、−COOH、−NH、−COCl、−NCOなどを有するエチレン性ポリマーは、ポリマー部位Mとして好ましく、なかでもビニルアミン系構造単位、ビニルイソシアネート系構造単位、イソプロペニルイソシアネート系構造単位をもつものが好ましい。
エチレン性ポリマー部位Mは上記の構造単位を含むものであるが、共単量体に由来する他の構造単位を含んでいてもよい。
他の任意の構造単位としては、たとえば
Figure 2004108772
(Rは水素原子、水酸基、カルボキシル基または炭素数1〜10の有機基)などがあげられる。
これらの他の構造単位は要求される特性に応じて選べばよく、含フッ素ポリマー(IAB)、さらには硬化性含フッ素樹脂(I)にさらなる靭性、硬度、基材への密着性、塗工性および特定の溶剤に対する溶解性などを与える目的で使用される。
なかでもエチレン性ポリマー部位Mは、その側鎖にエステル基、環状アセタール構造または水酸基のいずれか、または複数種を含んでいるものが、汎用溶剤への溶解性や、塗工性、成膜性などが良好な点から好ましい。特に環状アセタール構造と水酸基の組合せ、またはエステル基とOH基の組み合せを有するものは特に汎用溶剤への溶解性が優れているため好ましい。
具体的には
Figure 2004108772
(R〜Rは前記と同じ)
などがあげられ、その水酸基を有する構造単位が0〜80モル%、さらには1〜70モル%、特に5〜60モル%であるものが汎用溶剤への溶解性に優れているため好ましい。
エチレン性ポリマー部位Mは汎用溶剤への溶解性の点からフッ素原子を含まないものが好ましい。しかし、特定の他のフッ素樹脂への相溶性の向上や、屈折率を下げるなどの目的で、水素原子の一部がフッ素原子により置換されていてもよく、その場合、溶解性が低下しないようにエチレン性ポリマー部位Mのフッ素含有量は10重量%以下、さらには5重量%以下であることが好ましい。
部位Aは改質すべき表面に滑り性を発現させ、さらに撥水撥油性、防汚性をも付与する構造であり、前記式(1)で示されるポリフルオロポリエーテル鎖Pを末端に1個または2個以上有する部位である。
ポリフルオロポリエーテル鎖Pは鎖中に、
−CFCFCFO−、
−CHFCFCFO−、
−CHClCFCFO−、
−CHCFCFO−、
−CF(CF)CFO−、
−CFCFO−、
−CFO−
のフルオロエーテル単位のいずれか1種または2種類以上を合計7個以上必須成分として有している。
式(1)の含フッ素ポリエーテル鎖Pは上記のフルオロエーテル単位を7個以上含んでいることが重要であり、それによって表面滑り性、撥水撥油性、防汚性を付与できる。
なかでも、上記のフルオロエーテル単位を10個以上、より好ましくは20個以上有することが好ましく、それによって、より優れた滑り性を発現し、さらに、防汚性、特に油成分を含む汚れに対する除去性を改善できる点で好ましい。
ポリフルオロポリエーテル鎖P中のフルオロエーテル単位が40個を越える場合は、汎用溶剤への溶解性が低下し、透明性が必要な用途においては、その透明性が低下する点で望ましくない。好ましくは35個以下、さらには30個以下である。
特に好ましいフルオロエーテル単位の連鎖は、−CFCFCFO−を単独で7〜40個有するものであり、特に滑り性および防汚性の点で顕著に表面を改質できる。
式(1)において、Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキル基である。炭素数は滑り性が良好である点から5以下、さらには3以下である。
Rfの具体例としては、たとえば
Figure 2004108772
(lは1〜10の整数;mは1〜10の整数;nは0〜5の整数。ただし、合計の炭素数は10を超えない)などが例示できる。
部位Aはポリフルオロポリエーテル鎖Pを2個以上含んでいてもよい。しかし、あまり多すぎると汎用溶剤への溶解性が低下するため、好ましくは1〜3個、特に1個である。
部位Aは、好ましくは式(1a):
(P)−(R−M (1a)
(式中、Pは式(1)のポリフルオロポリエーテル鎖;Rは2〜4価の有機基;Mはエチレン性ポリマー部位M;pは1〜3の整数、好ましくは1;qは0または1)で示される(P)−(R−の状態でエチレン性ポリマー部位Mに結合している。
はポリフルオロポリエーテル鎖Pとエチレン性ポリマー部位Mとを連結する2〜4価の有機基であればよく、好ましくは炭素数1〜20のヘテロ原子または塩素原子を含んでいてもよい2〜4価の炭化水素基が例示できる。
(P)−(R−の好ましい具体例としては、たとえば
Figure 2004108772
(式中、l、m、n、tはそれぞれ同じかまたは異なり0〜5の整数)
などがあげられる。
部位Bは、その構造中に有する自己架橋性官能基Yが未反応の状態においては硬化性含フッ素樹脂(I)全体の物性に大きな影響を与えるものではないが、架橋反応後には、汎用溶剤を含め溶剤に不溶化させ、改質すべき表面に形成される塗膜が変形したり傷ついたりしない高い硬度を与え、さらに耐擦傷性や耐磨耗性を与える働きを有する。
自己架橋性官能基とは、同じ官能基同士で架橋反応を生起し得る官能基のことをいい、官能基を機能・性質の面から特定するものである。
非自己架橋性官能基の場合は、硬化(架橋)反応を進めるためには硬化剤が必要であり、その場合、比較的低分子量の未反応硬化剤が塗膜表面に偏析しやすく、表面改質硬化が低下してしまうことがある。その点、自己架橋性官能基は硬化反応に硬化剤を必要としないので、表面改質効果を充分に発揮できる。
ただし本発明においては、1つの自己架橋性官能基が他種の自己架橋性官能基または非自己架橋性官能基と架橋反応を起こす場合を排除するものではなく、また架橋剤(硬化剤)を介しての架橋反応を排除するものでもない。
自己架橋性官能基Yとしては、たとえばラジカル重合反応性の自己架橋性官能基、カチオン重合反応性の自己架橋性官能基および光のみで架橋する自己架橋性官能基などがあげられる。
ラジカル重合反応性の自己架橋性官能基としては、たとえばラジカル重合反応性C=Cなど;カチオン重合反応性の自己架橋性官能基としてはたとえばカチオン重合反応性のC=C、エポキシ基、オキセタニル基、その他アルコキシシリル基、シラノール基などの架橋性ケイ素化合物など:光のみで架橋する自己架橋性官能基としてはたとえばビニルけい皮酸などの光二量化性官能基などがあげられる。本発明における自己架橋性官能基Yとして好ましいものは、ラジカル重合反応性のC=C、エポキシ基であり、なかでも
Figure 2004108772
(XはH、CHまたはF;XはHまたはCH
が好ましくあげられる。
自己架橋性官能基Yは、部位Bの末端に結合していればよく、また部位Bとしてエチレン性ポリマー部位Mに直接結合していてもよいし、たとえば2〜4価の有機基を介してエチレン性ポリマー部位Mと結合していてもよい。たとえば部位Bは、式(1b):
(Y)−(R−M (1b)
(式中、Yは自己架橋性官能基;Rは2〜4価の有機基;Mはエチレン性ポリマー部位M;rは1〜3の整数、好ましくは1;sは0または1)で示される(Y)−(R−の状態でエチレン性ポリマー部位Mに結合している。
は自己架橋性官能基Yとエチレン性ポリマー部位Mとを連結する2〜4価の有機基であればよく、好ましくは炭素数1〜20のヘテロ原子または塩素原子を含んでいてもよい2〜4価の炭化水素基である。好ましい(Y)−(R−としては、たとえば
Figure 2004108772
(R11は炭素数1〜20の2価の炭化水素基、mは0〜10の整数、nは0〜5の整数、sは0または1)
などがあげられる。
なかでも架橋反応性が高いことから、RとYとの組合せとして、たとえば
Figure 2004108772
(XはH、FまたはCH;mは0〜10の整数;nは0〜5の整数)
などが好ましく例示できる。
とYのより具体的な組合せとしては、
Figure 2004108772
(XはH、CHまたはF)
が好ましくあげられる。
なお、自己架橋性官能基含有含フッ素ポリマー(IAB)は、自己架橋性官能基Yに加えて、エチレン性ポリマー部位Mの説明で述べたようにエチレン性ポリマー部位Mに任意に他の官能基を有していてもよいし、さらに部位Aおよび/または部位Bにも、任意に他の官能基を有していてもよい。他の官能基としては、たとえば水酸基、カルボキシル基、ニトリル基、アミノ基、スルホン酸基、アルキルアミノ基、スルホン酸エステル基、イソシアネート基、カルボン酸無水物基などがあげられる。
自己架橋性官能基含有含フッ素ポリマー(IAB)において、エチレン性ポリマー部位Mと部位Aと部位Bの組合せは、たとえば溶剤溶解性、滑り性、硬化性、保存安定性などの特性のバランスを考慮して選択すればよい。
好ましい組合せとしては、限定的ではないが、たとえばつぎのものがあげられる。
(組合せ1)
Figure 2004108772
(組合せ2)
Figure 2004108772
(組合せ3)
Figure 2004108772
(組合せ4)
Figure 2004108772
(組合せ5)
Figure 2004108772
部位AおよびBをエチレン性ポリマー部位Mに導入する方法(側鎖部分の少なくとも一部が部位AおよびBで置換されている含フッ素ポリマー(IAB)を製造する方法)としては、たとえば(1)エチレン性ポリマー部位Mを含むエチレン性ポリマーMPを形成してから、このエチレン性ポリマーMPに部位Aを導入し、ついで部位Bを導入する方法、(2)エチレン性ポリマー部位Mを含むエチレン性ポリマーMPを形成してから、このエチレン性ポリマーMPに部位Bを導入し、ついで部位Aを導入する方法、(3)エチレン性ポリマー部位Mを含むエチレン性ポリマーMPを形成してから、このエチレン性ポリマーMPに部位Aと部位Bを同時に導入する方法、(4)部位Aを有するエチレン性単量体と部位Bを有するエチレン性単量体を共重合する方法などがあげられる。
エチレン性ポリマーMPを形成してから、このエチレン性ポリマーMPに部位AおよびBを導入する方法(1)〜(3)(高分子反応法)としては、エチレン性ポリマーMPに反応性官能基Tおよび反応性官能基Tを導入しておき、かかる反応性官能基Tと反応し得る反応性官能基Sを有する部位A導入用の化合物(A−a):
(P)−(R−S (A−a)
(式中、P、R、pおよびqは式(1a)と同じ。Sはエチレン性ポリマーMPの反応性官能基Tと反応し得る反応性官能基)および反応性官能基Tと反応し得る反応性官能基Sを有する部位B導入用の化合物(B−b):
(Y)−(R−S (B−b)
(式中、Y、R、rおよびsは式(1b)と同じ。Sはエチレン性ポリマーMPの反応性官能基Tと反応し得る反応性官能基)を用いて、エチレン性ポリマーMPの反応性官能基TおよびTと反応させて導入する方法が、部位の形成が容易である点で有利である。
反応性官能基TおよびSとTおよびSは互いに反応し得る官能基であればよく、同種でも異種でもよい。またTとT、SとSも同種でも異種でもよい。
部位Aおよび部位Bの導入用の反応性官能基の具体例としては、たとえば
Figure 2004108772
(XはF、ClまたはBr)
で示される官能基があげられ、これらの中から互いに反応し得るものを選択すればよい。
反応性官能基T(TおよびT)とS(SおよびS)の好ましい組合せとしては、たとえば
T=−OHのときS=−NCO、−COF、−COOH、−CHCl、−CHBr、−NH、−CHI、−CH=CH、−SOClまたは
Figure 2004108772

T=
Figure 2004108772
のときS=−OH、−COOHまたは−NH
T=−NHのときS=−SOCl、−NCOまたは−CHO;
T=−COClのときS=−OHまたは−NH
T=−CHClのときS=−COOHまたは−OH
などがあげられる。
エチレン性ポリマーMPのTが−OHである場合の、部位A導入用の化合物(A−a)の具体例としては、たとえば
Figure 2004108772
(n=7〜40)
などがあげられ、なかでも
Figure 2004108772
(n=7〜40)
が、ポリマー反応の反応性が良好な点で好ましい。
また、エチレン性ポリマーMPのTが−COXである場合の、部位A導入用の化合物(A−a)の具体例としては、たとえば
Figure 2004108772
(n=7〜40)
などがあげられ、なかでも
Figure 2004108772
(n=7〜40)
が、ポリマー反応の反応性が良好な点で好ましい。
エチレン性ポリマーMPのTが−OHである場合の、部位B導入用の化合物(B−b)の具体例としては、たとえば
Figure 2004108772
などがあげられ、なかでも
Figure 2004108772
が、ポリマー反応の反応性および硬化反応性が良好な点で好ましい。
また、エチレン性ポリマーMPのTが−COClである場合の、部位B導入用の化合物(B−b)の具体例としては、たとえば
Figure 2004108772
(X=H、F、CH
などがあげられ、なかでも
Figure 2004108772
が、硬化反応性が良好な点で好ましい。
部位AおよびBの導入のための高分子反応は、たとえばピリジン、トリエチルアミンなどのアミンの存在下、またはNaOHやKOHなどの強塩基の存在下に行なうことができる。
反応は溶媒が存在しても存在しなくても可能であるが、溶媒を用いた方がより均質な生成物が得られるため好ましく、溶媒を用いる場合、溶媒の種類は特に限定されないが、フッ素を含有しない溶媒が好ましい。このとき反応性が不十分である場合には、たとえばH−(CFCF−CHOH(式中、aは1〜3の整数)、CF−(CF−CHOH(式中、bは1〜5の整数)、CH(CFOHなどの含フッ素アルコール;CHCClF、CFCFCHCl、CClFCFCHClFなどのフルオロアルカン;1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン、ベンゾトリフルオライドといったフッ素系溶剤を全溶剤に対して10〜50%の割合で添加すると反応性を向上させることができるため好ましい。
エチレン性ポリマー部位Mの形成と同時に部位AとBを導入する方法(4)(共重合法)では、部位Aを有するエチレン性単量体(M−a)と部位Bを有するエチレン性単量体(M−b)を共重合する。
部位Aを有するエチレン性単量体(M−a)は、式(M−a):
(P)−(R−M (M−a)
(式中、P、R、pおよびqは式(1a)と同じ。Mはエチレン性ポリマー部位Mの構造単位を与えるエチレン性の反応基)で示される。
具体例としては、たとえば
Figure 2004108772
(X=H、F、CH;n=7〜40)
などがあげられる。
部位Bを有するエチレン性単量体(M−b)は、式(M−b):
(Y)−(R−M (M−b)
(式中、Y、R、rおよびsは式(1b)と同じ。Mはエチレン性ポリマー部位Mの構造単位を与えるエチレン性の反応基)で示される。
具体例としては、たとえば
Figure 2004108772
(X=H、F、CH
などがあげられる。
そのほか、エチレン性ポリマー部位Mを形成するために共重合してもよい共重合モノマーとしては、たとえば
Figure 2004108772
(X=H、F、CH;R10=灰素数1〜10のアルキル基)
などがあげられる。
この共重合法は、通常のラジカル重合法により行なうことができる。たとえば重合開始剤としてアゾイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ系重合開始剤または過酸化ベンゾイルなどの過酸化物系重合開始剤などを用いて共重合することにより、自己架橋性官能基含有含フッ素ポリマー(IAB)を得ることができる。
エチレン性単量体(M−a)および(M−b)に加えて、エチレン性ポリマー部位Mの説明で述べた他の共重合可能なエチレン性単量体を共重合してもよい。
本発明の第1の発明ほかで使用する硬化性含フッ素樹脂(I)では、部位Aおよび部位Bが存在していればよく、前述のとおり、自己架橋性官能基含有含フッ素ポリマー(JAB)単独でもよいし、ポリマー部位Mと部位Aからなる含フッ素ポリマー(JA)、ポリマー部位Mと部位Bからなるポリマー(IB)の混合物でもよい。さらに、ポリマー(IAB)とポリマー(IA)および/またはポリマー(IB)との混合物でもよい。さらにまた、ポリマー(IAB)、(IA)および(IB)以外の他のポリマーMPが含まれていてもよい。
含フッ素ポリマー(IA)は、部位Bを有しないほかは含フッ素ポリマー(IAB)と構造、製法も同じである。
ポリマー(IA)の好ましい具体例は、たとえばポリマー部位Mとして式(2):
Figure 2004108772
または式(3):
Figure 2004108772
(式中、XはHまたは結合手;XはHまたはCH)で示される構造単位を含み、部位Aが式(1a):
(P)−(R−M (1a)
(式中、Pは式(1)のポリフルオロポリエーテル鎖;Rは2価の有機基;Mはエチレン性ポリマー部位;pは1〜3の整数、好ましくは1;qは0または1)で示される(P)−(R−の状態でエチレン性ポリマー部位Mに結合している含フッ素エチレン性ポリマーがあげられるが、これのみに限定されるものではない。
特に好ましいポリマー(IA)は、たとえば
Figure 2004108772
などがあげられる。このポリマー(IA)は、表面の滑り性、溶剤溶解性に加えて低屈折率、透明性を樹脂(I)に与える点で有利である。
含フッ素ポリマー(IB)は、部位Aを有しないほかは含フッ素ポリマー(IAB)と構造、製法も同じである。
ポリマー(IB)の好ましい具体例は、たとえばポリマー部位Mとして式(2):
Figure 2004108772
または式(3):
Figure 2004108772
(式中、XはHまたは結合手;XはHまたはCH)で示される構造単位を含み、部位Bが式(1b):
(Y)−(R−M (1b)
(式中、Yは自己架橋性官能基;Rは2〜4価の有機基;Mはエチレン性ポリマー部位M;rは1〜3の整数、好ましくは1;sは0または1)で示される(Y)−(R−の状態でエチレン性ポリマー部位Mに結合している含フッ素エチレン性ポリマーがあげられるが、これのみに限定されるものではない。
特に好ましいポリマー(IB)は、たとえば
Figure 2004108772
または、
Figure 2004108772
Figure 2004108772
などがあげられる。このポリマー(IB)は、樹脂に自己硬化性を付与する。
他のポリマーMPは部位AとBの両方を有しないエチレン性ポリマーMPであり、汎用溶剤に可溶である必要がある。
他のポリマーMPとしては、汎用溶剤に可溶であれば特に限定されず、たとえばポリビニルアセタール、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシメタクリレートなどが例示できるが、これらに限定されるものではない。
ポリマー(IAB)とポリマー(IA)、ポリマー(IB)における部位A、部位Bおよびポリマー部位Mは同じでも異なっていてもよい。また、他のポリマーMPも部位AおよびBを有しないほかは、ポリマー(IAB)、(IA)および(IB)とポリマー部位Mの相当する部位は同じでも異なっていてもよい。同じ場合は、たとえば前述のポリマー(IAB)の製造法として高分子反応法を採用した場合、部分反応生成物や未反応ポリマーという形で樹脂(I)中に存在する。もちろん、部位A、部位Bおよびポリマー部位Mがポリマー(IAB)と同じかまたは異なる、または相互に同じかまたは異なるポリマーを特定の目的を達成するために樹脂(I)に積極的に配合してもよい。
エチレン性ポリマー部位Mが同じか同種である場合(たとえば透明性が要求される用途に使用する場合など)は、ポリマー(IAB)とその他のポリマー((IA)、(IB)、MP)との相溶性が良好であるため、均一な塗膜を形成でき、好ましい。
ただ、別異の特性を付与するために、1つのポリマーのエチレン性ポリマー部位M1とは異種のポリマー部位M2を有するポリマーを相溶性に悪影響を与えない範囲で含んでいてもよい。異種のポリマー部位M2の含有量は、全エチレン性ポリマー部位M(M1+M2)中に20重量%以下、さらには10重量%以下、特に5重量%以下であることが好ましい。
樹脂(I)におけるポリマー(IAB)、(IA)、(IB)、さらにはMPの含有量は、樹脂(I)に対する要求特性(フッ素含有量、鎖P含有量、屈折率など)と部位A、部位Bおよびポリマー部位Mの種類と量などによって適宜調整すればよい。
つぎに、樹脂(I)の物性と特性について説明する。
樹脂(I)の分子量は、数平均分子量として100以上、さらには300以上、特に500以上のものが、塗工性、滑り性が良好な点で好ましく、また1000000以下、さらには100000以下、特に10000以下のものが、溶剤溶解性、保存安定性が良好な点で好ましい。
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、東ソー(株)製のGPC HLC−8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF−801を1本、GPC KF−802を1本、GPC KF−806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定したデータより算出する。
樹脂(I)のフッ素含有量は、0.1重量%以上、さらには1重量%以上、特に5重量%以上であることが、滑り性、防汚性が良好な点で好ましく、35重量%以下、さらには25重量%以下、特に20重量%以下であることが、溶剤溶解性が良好な点で好ましい。
また、ポリフルオロポリエーテル鎖Pの含有量の観点からは、樹脂(I)中に鎖Pが1重量%以上、さらには5重量%以上、特に10重量%以上含まれていることが好ましい。また、上限は60重量%、さらには50重量%が好ましい。ポリフルオロエーテル鎖Pの含有量がこの1重量%より少ないと樹脂(I)の目的とする滑り性の向上効果が得られず、60重量%を超えると樹脂(I)の相溶性が低下し、溶剤や樹脂などと混合した場合に白濁が生じ、さらには分離したり沈殿が生じたりしてしまう。撥水性や防汚性の改善を目的とする場合では、ポリフルオロエーテル鎖Pの含有量は、含フッ素樹脂(I)中に10重量%以上、50重量%以下含まれていることが好ましい。
自己架橋性官能基Yの含有量は、樹脂(I)1kgあたり0.02モル以上、さらには0.1モル以上、特に0.2モル以上で、また100モル以下、さらには50モル以下、特に20モル以下であるのが好ましい。官能基Yの量が少なすぎると硬化反応性および硬化後の耐溶剤性、耐擦傷性、耐磨耗性が不足し、一方、多すぎるとポリマーや樹脂、さらには表面処理剤の保存安定性が低下する。
硬化性含フッ素樹脂(I)では屈折率を低くすることができ、たとえば屈折率を1.48以下、組成比によっては1.45以下にすることもできる。
本発明で用いる樹脂(I)は、後に詳しく述べる第4および第5の発明である硬化性表面改質用組成物以外に、単独で、または他の添加剤を配合して、そのまま、あるいは溶剤に溶解させて表面改質剤とし、基材に塗布してその基材表面を改質することができる(第2の発明)。
特に、汎用溶剤に溶解し得ることが樹脂(I)の特徴であり、したがって溶剤に溶解した溶剤型の表面改質剤が、塗工性が良好で、均一かつ均質な薄膜を形成でき、また生産性が高く、低コストで生産できる点で好ましい。
溶剤としては、樹脂(I)を均一に溶解することができるものであれば特に限定されず、たとえばケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤などのエステル系溶剤、アルコール系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エーテル系溶剤、アセタール系溶剤、テレビン油、またはこれらの同種または異種の混合溶剤、さらにはこれらを含む混合溶剤などの非フッ素系の汎用溶剤があげられる。
ケトン系溶剤としては、たとえばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルブチルケトン(MBK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノンなどがあげられ、特にMIBK、MEK、MBKが好ましい。
酢酸エステル系溶剤としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸アミルなどがあげられ、特に酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルが好ましい。
アルコール系溶剤としては、たとえばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコールなどがあげられ、特にイソプロピルアルコール、イソペンチルアルコールが好ましい。
酢酸エステル系溶剤以外のエステル系溶剤としては、たとえば酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテートなどがあげられる。
プロピレングリコール系溶剤としては、たとえばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどがあげられる。
セロソルブ系溶剤としては、たとえばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどがあげられる。
芳香族炭化水素類としては、たとえばトルエン、キシレンなどがあげられる。
脂肪族炭化水素類としては、たとえば工業ガソリン、ヘキサン、オクタンなどがあげられる。
エーテル系溶剤としては、たとえばテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、メチルブチルエーテルなどがあげられる。
アセタール系溶剤としては、たとえばジメトキシメタン、ジエトキシメタンなどがあげられる。
なかでも、ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤およびアルコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤またはこれらの溶剤の少なくとも1種を含む混合溶剤が、溶解性が良好であり、人体や環境への影響が比較的少ない点から特に好ましくあげられる。
本発明の第1における溶剤型表面改質剤においては、溶剤の含有量は樹脂(I)に含まれているポリマーの種類、溶解させる他の固形分の種類、硬化剤の使用の有無や使用割合、塗布する基材の種類や目標とする膜厚などによって適宜選択されるが、全固形分濃度が0.01重量%以上、さらには0.1重量%以上で、20重量%以下、さらには10重量%以下となるように配合するのが好ましい。
本発明の第1における表面改質剤には、本発明が目的とする効果を損なわない限り、必要に応じて種々の添加剤を配合してもよい。
そうした添加剤としては、たとえば後述する活性エネルギー線硬化開始剤以外の硬化剤(架橋剤)、レベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤、帯電防止剤などがあげられる。
活性エネルギー線硬化開始剤以外の硬化剤(架橋剤)としては、たとえばラジカルまたはカチオン反応性官能基を1つ以上有するものが好ましく、具体的にはアクリル系モノマーなどのラジカル重合性の単量体、エポキシまたはグリシジル系モノマーなどのカチオン重合性の単量体があげられる。これら単量体は、単官能であっても多官能の単量体であってもよい。
塗装法としては、溶剤型の表面改質剤の場合、たとえばロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法などが採用でき、また、粉体型(含フッ素樹脂(I)単独または他の樹脂との組成物)の表面改質剤の場合は、たとえば粉体塗装法、溶射法などが採用でき、これらの方法から基材の種類、形状、生産性などを考慮して選択すればよい。
硬化方法は特に限定されず、硬化剤(架橋剤)を使用した場合は硬化剤の開始温度または条件で硬化反応を起こさせるか、硬化剤を配合しない場合は自己架橋性官能基による自己架橋を生ぜしめる条件(50〜150℃に加熱または室温放置)で硬化させればよい。
基材の種類は特に限定されない。たとえばガラス、石材、コンクリート、タイルなどの無機材料;ポリエチレンやポリスチレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリアリレートやポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、塩酸ゴムなどのゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、イオノマー樹脂などの合成樹脂;鉄、アルミ、銅などの金属;木、紙、印刷物、印画紙、絵画など;またこれらの基材上にハードコート層などの保護膜や、帯電防止機能を有する膜、反射防止膜などを形成したもの;さらには光記録媒体や磁気記録媒体またはその上にハードコート層、反射防止膜、特定波長光の吸収膜などを形成したものなどがあげられ、これらの基材の上に本発明の表面改質剤を塗布することによって、表面の滑り性、耐擦傷性、撥水撥油性、防汚性を向上させることができる。
基材の中でもアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂(たとえばポリエチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン系樹脂などの樹脂基材、さらにはこれらの樹脂基材に反射防止膜が形成された基材に好ましく施される。
特に樹脂(I)は屈折率が低いので、反射防止膜上に直接塗工することにより、反射防止性能を低下させずに効果的に滑り性および防汚性を付与できる。
反射防止膜には、たとえばフッ化マグネシウム(MgF)や酸化ケイ素(SiO)などの無機物を蒸着してなる無機物蒸着系反射防止膜、シリコーンポリマー系反射防止膜(特開2000−17028号公報、特開2000−313709号公報など)、含フッ素ポリマー系反射防止膜(WO02/18457号パンフレット、特開平6−115023号公報、特開2000−194503号公報、特開平11−337706号公報など)、多孔質反射防止膜(特開平11−281802号公報、特開平4−163248号公報など)などが知られており、本発明においてもこれらの反射防止膜上に適用できる。特に、透明性に優れ、生産性が高く、反射防止効果も良好であるが、摩擦抵抗が比較的大きく耐擦り傷性や表面硬度の向上が望まれている薄い(約0.03〜0.5μm)含フッ素ポリマー系反射防止膜に適用するときに有利である。
すなわち、第1の発明の表面改質剤を用いて、反射防止膜および表面改質剤の硬化膜からなる多層構造の反射防止膜(第3の発明)を形成することができる。表面改質剤の硬化膜は反射防止膜直上に連続した膜を形成していてもよいし、島状に形成された不連続な膜であってもよい。膜厚は、単分子膜(約0.2〜0.3nm)から500nm以下、さらには50nm以下の範囲にすることが、光学特性への悪影響が少ない点で好ましい。塗工量は、樹脂(I)の重量で、0.5mg/m以上、好ましくは1mg/m以上で、100mg/m以下、好ましくは50mg/m以下である。少なすぎると滑り性や耐磨耗性などの効果が不充分となり、多すぎると反射防止効果に好ましくない影響が出る傾向がある。
本発明の表面改質剤は、薄膜にしたときの膜の滑り性に優れ、耐久性が高く、屈折率が低く、また透明であるため、ディスプレイなどのほか、後述する多種多様な物品などの表面改質剤として好ましいものである。
本発明の第4は、(a)前記汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)、および
(b)活性エネルギー線硬化開始剤
からなる活性エネルギー線硬化性の表面改質用組成物に関する。
この第4の発明の活性エネルギー線硬化性の表面改質用組成物によると、活性エネルギー線により容易に架橋(硬化)反応が開始でき、他の架橋系のように高温での加熱の必要がなく、比較的低温で短時間に架橋(硬化)反応が可能であるので、耐熱性が低く、熱で変形や分解、着色が起こりやすい基材、たとえば透明樹脂基材などにも適応できる点で好ましい。
第4の発明で(a)成分として使用する硬化性含フッ素樹脂(I)は、第1の発明で使用する樹脂(I)であり、また好ましいポリマー(IAB)、(IA)、(IB)、MP、さらには樹脂(I)についても前述の第1の発明におけるポリマーおよび樹脂(I)の説明および具体例と同じであり、したがってここでは説明を省略する。
(b)成分である活性エネルギー線硬化開始剤は、たとえば紫外線、X線、γ線などの波長が350nm以下の電磁波または電子線などの活性エネルギー線を照射することにより、ラジカルまたはカチオンを発生する化合物であり、発生したラジカルまたはカチオンが架橋性官能基Yの架橋(硬化)反応を開始させる働きをする。
活性エネルギー線硬化開始剤(b)は、(a)成分である硬化性含フッ素樹脂(I)中の架橋基の種類(ラジカル反応性か、カチオン反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長域など)と照射強度などによって適宜選択される。
第4の発明において、活性エネルギー線硬化開始剤(b)との関係において、ポリマー(IAB)および(IB)における好ましい架橋性官能基Yとしては、第1の発明と同じものがあげられ、たとえばラジカル重合反応性の自己架橋性官能基、カチオン重合反応性の自己架橋性官能基などがあげられる。
ラジカル重合反応性の自己架橋性官能基としては、たとえばラジカル重合反応性C=Cなど;カチオン重合反応性の自己架橋性官能基としてはたとえばカチオン重合反応性のC=C、エポキシ基、オキセタニル基、その他アルコキシシリル基、シラノール基などの架橋性ケイ素化合物などがあげられる。
本発明における自己架橋性官能基Yとして好ましいものは、ラジカル重合反応性のC=C、エポキシ基であり、なかでも
Figure 2004108772
(XはH、CHまたはF;XはHまたはCH
が好ましい。このものは、活性エネルギー線硬化開始剤(b)から発生したラジカルまたはカチオンにより容易に架橋反応を開始する。
紫外線領域の活性エネルギー線を用いて自己架橋性官能基Yとしてラジカル重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する含フッ素ポリマー(IAB)、(IB)を架橋(硬化)させる開始剤としては、たとえばつぎのものが例示できる。
アセトフェノン系
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、ヒドロキシプロピオフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリンプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなど
ベンゾイン系
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
ベンゾフェノン系
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーズケトンなど
チオキサンソン類
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
その他
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
また、紫外線領域の活性エネルギー線を用いて自己架橋性官能基Yとしてカチオン反応性の炭素−炭素二重結合、またはエポキシ基やオキサシクロプロパニル基を有する含フッ素ポリマー(IAB)、(IB)を架橋(硬化)させる開始剤としては、つぎのものが例示できる。
オニウム塩
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
メタロセン系化合物
鉄アレーン錯体など
スルホン化合物
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
スルホン酸エステル類
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
その他
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
これらの開始剤のなかでもヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、メタロセン系化合物が好ましく、さらに好ましくは芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩およびメタロセン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の芳香族化合物が好ましい。これらは光照射に対して量子効率よく、カチオン重合を開始するカチオン種を生じるため好ましいものである。
なお含フッ素樹脂(I)を構成するポリマーの種類によって、または活性エネルギー線硬化開始剤(b)の種類によっては互いの相溶性がわるく、組成物自体が、または塗布後の被膜が白濁してしまい透明性や硬化反応性が低下する場合があるので、この点を考慮して組合せを選定することが望ましい。
活性エネルギー線硬化開始剤(b)の配合量は、架橋性官能基Yの1当量に対して0.001当量以上、さらには0.005当量以上、特に0.01当量以上で、1当量以下、さらには0.5当量以下、特に0.1当量以下である。開始剤(b)の配合量が少なすぎると硬化性が低下し膜の強度や硬度が不足し、多すぎると滑り性が低下し、また屈折率が高くなる傾向にある。
本発明の第4の発明の組成物においては、さらに必要に応じて他の硬化剤や添加剤を配合してもよい。硬化剤および他の添加剤については、第1の発明で例示したものが使用できる。
第4の発明の組成物は、(a)成分と(b)成分を、他の硬化剤や添加剤と混合するか、さらには溶剤と混合し溶解または分散させることにより調製できる。樹脂(I)を溶解する溶剤を使用することが好ましいが、そうした樹脂(I)可溶性の溶剤を使用する組成物の発明はつぎの第5の発明として説明する。
後述する第5の発明で使用する溶剤以外の溶剤としては、第1の発明で例示した酢酸エステル系溶剤以外のエステル系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エーテル系溶剤、アセタール系溶剤、テレビン油またはこれらの同種または異種の混合溶剤、さらにはこれらを含む非フッ素系混合溶剤などがあげられる。溶剤の含有量は樹脂(I)を構成するポリマーの種類、溶解させる他の固形分の種類、硬化剤の使用の有無や使用割合、塗布する基材の種類や目標とする膜厚などによって適宜選択されるが、全固形分濃度が0.01重量%以上、さらには0.1重量%以上で、20重量%以下、さらには10重量%以下となるように配合するのが好ましい。
塗装方法については、第1の発明と同様の塗装方法が採用できる。
第4の発明の組成物を塗工して形成した塗膜の架橋(硬化)については、第5の発明の説明において記載する。
本発明の第5は、(a)前記汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)、
(b)活性エネルギー線硬化開始剤、および
(c)ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤およびアルコール系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の汎用溶剤または該汎用溶剤を含む混合溶剤
からなる活性エネルギー線架橋性の表面改質用組成物に関する。
このように第5の発明は、第4の発明の組成物において、さらに特定の溶剤(c)を配合した組成物である。
特定の溶剤(c)は、ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤およびアルコール系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の汎用溶剤または該汎用溶剤を含む混合溶剤であり、ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤およびアルコール系溶剤については、第1の発明で説明した溶剤が使用できる。
このケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤またはアルコール系溶剤と混合してもよい他の溶剤としては、第1および第4の発明で説明した酢酸エステル系溶剤以外のエステル系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エーテル系溶剤、アセタール系溶剤、テレビン油などが例示できる。混合溶剤の場合、ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤またはアルコール系溶剤は混合溶剤全体の10容量%以上、さらには30容量%以上、特に50容量%以上を占めるようにすることが、樹脂(I)の溶解性の向上の点から好ましい。
第5の発明の組成物は、樹脂成分(a)と活性エネルギー線硬化開始剤(b)を溶剤(c)に加え、少なくとも樹脂(I)を溶解させることによって調製できる。他の添加剤、濃度、塗装方法などについては、第4の発明と同様である。
第4の発明および第5の発明の硬化性表面改質用組成物を基材に塗装し乾燥して得られた塗膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化させることによって基材の表面の改質を行なうことができる。
活性エネルギー線の照射量は、たとえば高圧水銀灯による紫外線照射の場合、100mJ/cmU以上、好ましくは約500mJ/cmUである。
活性エネルギー線を照射すると活性エネルギー線硬化開始剤(b)がラジカルまたはカチオンを発生し、含フッ素ポリマー(IAB)、(IB)の自己架橋性官能基Yがポリマー分子間で重合し架橋する。その結果、膜硬度が高くなり、機械的強度が向上し、耐摩耗性、耐擦傷性が向上し、さらには硬化前には溶解していた溶剤に対して不溶となるだけでなく、他の数多くの種類の溶剤に対しても不溶となり、耐久性が向上する。しかも活性エネルギー線の照射後においても、硬化性含フッ素樹脂(I)が与える優れた滑り性は維持できる。
各種基材に施される表面改質剤を塗装し、硬化してなる膜の好ましい膜厚は特に制限されるものではないが、好ましくは0.5nm以上、さらには1nm以上、また500nm以下、さらには50nm以下である。膜厚が厚いと可視光の干渉による着色が見られる場合があるが、これを防ぐためには、基材の屈折率と表面改質剤組成物の屈折率を同等にすればよい。
基材の種類は特に限定されず、第1の発明で例示したものがあげられる。それらの基材の中でもアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂(たとえばポリエチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン系樹脂などの樹脂基材、さらにはこれらの樹脂基材に反射防止膜が形成された基材に好ましく施される。
特に樹脂(I)は屈折率が低いので、反射防止膜上に直接塗工することにより、反射防止性能を低下させずに効果的に滑り性および防汚性を付与できる。
反射防止膜は、前記のシリコーンポリマー系反射防止膜材料、含フッ素ポリマー系反射防止膜材料、多孔質系反射防止膜材料などから形成され、特に透明性に優れ、反射防止効果も良好であるが、摩擦抵抗が比較的大きく耐擦り傷性や表面硬度の向上が望まれている薄い(約0.03〜0.5μm)含フッ素ポリマー系反射防止膜に適用するときに有利である。
すなわち、第4の発明または第5の発明の硬化性表面改質用組成物を用いて、反射防止膜および表面改質剤または硬化性表面改質用組成物の塗膜からなる多層反射防止膜を形成することができる。表面改質剤の塗膜は反射防止膜上に連続した膜を形成していてもよいし、島状に形成された不連続な膜であってもよい。反射防止膜上に塗装する場合、光学特性に悪影響を与えないように、滑り性、防汚性などの効果が充分に得られる範囲で可能な限り膜厚を薄くすることが好ましく、具体的には硬化した後の膜厚を50nm以下にすることが好ましく、さらには20nm以下にすることが好ましい。下限は単分子膜(約0.2〜0.3nm)、さらには0.5nm、特に1nmである。
塗工量は、樹脂成分(a)の重量で、0.5mg/m以上、好ましくは1mg/m以上で、100mg/m以下、好ましくは50mg/m以下である。少なすぎると滑り性や耐磨耗性などの効果が不充分となり、多すぎると反射防止効果に好ましくない影響が出る傾向がある。
本発明の硬化性表面改質用組成物は、第1の発明の表面改質剤と同じく薄膜にしたときの膜の滑り性に優れ、耐久性が高く、屈折率が低く、また透明であるため、ディスプレイなど以下のような形態の物品上に適用した場合に効果的である。
1ディスプレイ関連
(1)ディスプレイ
CRT(TVやパソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、FED(Field Emission Display)などのディスプレイまたはそれらのディスプレイの保護板、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
(2)液晶ディスプレイの構成部材
フロントライト、拡散シートなどの液晶ディスプレイの構成部材、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
(3)各種フィルター
パソコンモニターへ視認性向上のため後付けする光学フィルター、PC、PDA、ATM装置などのタッチパネル(世界的にはタッチセンサー、タッチスクリーンなどともいわれる)、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
2光学部品・光デバイス
メガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、背面投写型ディスプレイのスクリーン、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品・光デバイス、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
3建材
ショーウインドー、ショーケース、広告用カバー、フォトスタンド用のカバー、自動車用フロントガラスなどに代表される透明なガラス製または透明なプラスチック製(アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂など)建材、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
4記録メディア関連
(1)光記録媒体
光磁気ディスク、CD・LD・DVDなどの光ディスク、PDなどの相転移型光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
(2)磁気記録媒体
磁気テープ、磁気ディスク、磁気ドラム、磁気フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
また、本発明の硬化性表面改質用組成物から形成されるシートまたはフィルムは、上記に列挙したような各種物品の上や最表面に貼り付けるためのシートまたはフィルムとして、好適に用いることもできる。この場合、容易に物品の表面改質を行なうことができ、また物品を廃棄またはリサイクルする際の処理が容易である。
なお、該シートまたはフィルムは、たとえば、第1の発明で説明した基材の上に前述したような各種塗装法により、本発明の硬化性表面改質用組成物を塗装したのち硬化させることで得られ、該基材がその表面が反射防止膜で被覆されたものであることが好ましい。
以上にポリフルオロポリエーテル鎖Pと自己架橋性官能基Yの両方を有する樹脂(I)を基材(反射防止膜)上に前述のような塗装法によりオーバーコートすることによって、高い滑り性に加え、防汚性、撥水撥油性などの性能を与えることができることを説明した。
しかしながら、特に廉価型の反射防止膜用では、オーバーコートを行なうことがコスト面で困難である場合もある。そのような場合には硬化性の反射防止膜材料に表面改質能をもつポリマーを添加し、ワンコートで反射防止膜の形成と表面改質を行なうことが有利である。
そして硬化性の反射防止膜材料に添加する(内添する)場合、表面改質用のポリマーは反射防止材料が硬化することによって、反射防止膜内部にある程度閉じ込められるため、必ずしも架橋性反応基を必要としないことを見出し、本発明の第6の発明を完成した。
すなわち第6の発明は、(d)前記含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)または前記含フッ素エチレン性ポリマー(IA)からなり、汎用溶剤可溶性でフッ素含有量が1重量%以上で35重量%以下である含フッ素樹脂(II)、および
(e)反射防止膜材料
からなる反射防止膜形成用組成物を基材に塗布して得られる反射防止膜に関する。
反射防止膜材料に内添する樹脂(II)は、部位B(自己架橋性官能基Y)を有していても有していなくてもよい点、すなわちポリマー(IB)を含んでいてもいなくてもよい点、およびフッ素含有量が1重量%以上で35重量%以下であるほかは樹脂(I)と同じである。
すなわち樹脂(II)は、ポリマー(IAB)またはポリマー(IA)を少なくとも含んでいる樹脂である。ポリマー(IB)および他のポリマーMPは含まれていてもいなくてもよい。
樹脂(II)のフッ素含有量は1重量%以上、さらには5重量%以上、特に10重量%以上とすることが、屈折率を低くする点、滑り性を高める点、さらには防汚性を向上させる点から好ましく、また35重量%以下、さらには25重量%以下、特に20重量%以下とすることが、溶剤溶解性が良好な点、透明性に優れる点から好ましい。
また樹脂(II)は、反射防止膜の光学特性に悪影響を与えないように屈折率が1.48以下のものが好ましく、より好ましくは1.45以下である。
(e)成分である反射防止膜材料としては、液状の形態で基材(フィルムなど)上に塗工できるものであればよい。具体的には、従来公知の反射防止膜材料、たとえば有機ケイ素化合物系材料、含フッ素有機ケイ素化合物系材料、架橋性シリコーン樹脂系材料、架橋性含フッ素シリコーン樹脂系材料、含フッ素アクリル化合物系材料、含フッ素エポキシ化合物系材料または硬化性含フッ素ポリマー系材料からなる反射防止膜材料があげられる。かかる反射防止膜材料(e)には、硬化剤、レベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤などが配合されていてもよい。
有機ケイ素化合物系材料の限定されない具体例としては、たとえば特開平10−147740号公報、特開2000−1648号公報などに記載されたシロキサン結合を含む硬化性樹脂組成物などがあげられる。
含フッ素有機ケイ素化合物系材料の限定されない具体例としては、たとえば特開平10−147739号公報、特開2000−10965号公報、特開2000−17028号公報などに記載されたシラン化合物からなる反射防止膜形成用組成物などがあげられる。
含フッ素アクリル化合物系材料の限定されない具体例としては、たとえば特開平9−203801号公報、特開2000−194503号公報などに記載された多官能含フッ素アクリルからなる組成物などがあげられる。
含フッ素エポキシ化合物系材料の限定されない具体例としては、たとえば特開平5−302058号公報、特開2000−17099号公報などに記載された多官能含フッ素エポキシ化合物からなる組成物などがあげられる。
硬化性含フッ素ポリマー系材料の限定されない具体例としては、後述する第7の発明で使用する含フッ素ポリマー(IIINC)のほか、たとえば特開平11−337706号公報などに記載されたものなどがあげられる。
第6の発明に使用する反射防止膜形成用組成物において、樹脂(II)成分(d)の添加量は使用する樹脂成分(d)や反射防止膜材料の種類、要求特性などによって異なるが、固形分全体の1重量%以上、さらには5重量%以上、特に10重量%以上である。少なすぎると表面改質効果が奏されない。
この反射防止膜形成用組成物は、各種の溶剤に溶解または分散させることによって種々の基材に塗工し、塗膜を形成することができ、塗膜形成後、活性エネルギー線などの照射によって効率よく架橋(硬化)でき、硬化被膜が得られる点で有利である。
溶剤としては第1の発明であげたものと同じ非フッ素系の溶剤のほか、フッ素系の溶剤も利用でき、目標とする塗装性、成膜性、膜厚の均一性、塗装の生産性などに応じ、種類、使用量などを前述の例示の中から適宜選択すればよい。特に、ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤から選ばれる溶剤が好ましい。フッ素系溶剤としては、たとえばH−(CFCF−CHOH(式中、aは1〜3の整数)、CF−(CF−CHOH(式中、bは1〜5の整数)、CH(CFOHなどの含フッ素アルコール;CHCClF、CFCFCHCl、CClFCFCHClFなどのフルオロアルカン;1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン、ベンゾトリフルオライドなどが好ましい。
第6の発明において溶剤を用いる場合、反射防止膜形成用組成物の好ましい固形分濃度は添加される樹脂成分(d)や反射防止膜材料の種類、要求特性などによって異なるが、0.01重量%以上、さらには0.1重量%以上、特に1重量%以上であり、20重量%以下、さらには10重量%以下であることが好ましい。
この反射防止膜形成用組成物を塗布後、硬化させた後の硬化物(塗膜)の屈折率は1.45以下、さらには1.42以下であり、特に1.40以下であることが好ましい。最も好ましくは1.38以下であり、低い方が優れた反射防止効果が奏される点で有利である。
第6の発明の反射防止膜の好ましい膜厚は、膜の屈折率や下地の屈折率などによって変わるが0.03μm以上、さらには0.07μm以上、特に0.08μm以上で、0.5μm以下、さらには0.2μm以下、特に0.12μm以下であることが好ましい。膜厚が薄すぎると可視光における光干渉による反射率の低下作用が不充分となり、一方、厚すぎると反射率はほぼ空気と膜の界面の反射のみに依存するようになるので、可視光における光干渉による反射率の低下作用が不充分となる傾向にある。なかでも、反射防止膜を施したのちの物品の反射率の最小値を示す波長が通常420〜720nm、さらには520〜620nmの範囲となるように膜厚を設定するのが好ましい。
反射防止膜形成用組成物を塗工する基材としては、第1の発明で説明した基材(ただし、反射防止膜が形成されたものは除く)が第6の発明においても使用できる。
なお、該基材が、ハードコート層、高屈折率層、帯電防止層等で被覆された基材であり、その上(最表面)に、該反射防止膜形成用組成物を塗工することが好ましい。
ハードコート層としては通常の光学用のアクリル系樹脂ハードコート、メラミン樹脂、アクリルシリコーンハイブリッドコート等に代表される無機とのハイブリッドが使用できるが、これらに限定されない。
高屈折率層としてはアクリルシリコーンハイブリッドコート以外にもアクリル系樹脂に無機物微粒子を分散させたものなどが挙げられるが、これらに限定されない。高屈折率層は屈折率1.58以上なら、最低反射率1%以下を実現しやすいので好ましい。
帯電防止層としてはスパッタ等による方法のほか、ハードコート層等と組合されたものであってもよい。
ハードコート層、高屈折率層、帯電防止層等は各々単独で基材の上を被覆するものであってもよいし、各々を複数組み合わせて基材の上を被覆するものであってもよい。またこれらの機能を一層でまかなえるものであっても、もちろんよい。
また、そのようにして形成される反射防止膜の上に、さらに0.05μm以下の最外層を設けてもよい。最外層として好ましいものは、油分の付着やホコリの付着を抑制、あるいはそれらを拭き取り易くすることが可能な防汚層や傷付き性を低減できる滑層、あるいはその組合せである。具体的にはパーフロロポリエーテル構造を有しかつ下地との密着が良好な官能基を保有している材料が好ましい。
第6の発明の反射防止膜は、第1の発明の表面改質剤と同じく薄膜にしたときの膜の滑り性に優れ、耐久性が高く、屈折率が低く、また透明であるため、ディスプレイなど以下のような形態の物品上に形成した場合に効果的である。
1ディスプレイ関連
(1)ディスプレイ
CRT(TVやパソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、FED(Field Emission Display)などのディスプレイまたは当該ディスプレイの保護板
(2)液晶ディスプレイの構成部材
フロントライト、拡散シートなどの液晶ディスプレイの構成部材
(3)各種フィルター
パソコンモニターへ視認性向上のため後付けする光学フィルター、PC、PDA、ATM装置などのタッチパネル(世界的にはタッチセンサー、タッチスクリーンなどともいわれる)
2光学部品・光デバイス
メガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、背面投写型ディスプレイのスクリーン、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品・光デバイス
3建材
ショーウインドー、ショーケース、広告用カバー、フォトスタンド用のカバー、自動車用フロントガラスなどに代表される透明なガラス製または透明なプラスチック製(アクリル、ポリカーボネートなど)建材
4記録メディア
(1)光記録媒体
光磁気ディスク、CD・LD・DVDなどの光ディスク、PDなどの相転移型光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体
(2)磁気記録媒体
磁気テープ、磁気ディスク、磁気ドラム、磁気フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体
また、本第6の発明で用いる反射防止膜形成用組成物から形成されるシートまたはフィルムは、上記に列挙したような各種物品の上や最表面に貼り付けるためのシートまたはフィルムとして、好適に用いることもできる。この場合、反射防止膜の形成が容易にでき、また物品を廃棄またはリサイクルする際の処理が容易である。
なお、該シートまたはフィルムは、たとえば、第1の発明で説明した基材の上に前述したような各種塗装法により、本第6の発明で用いる反射防止膜形成用組成物を塗装したのち硬化させることで得られる。
第6の発明の反射防止膜は、表面改質層を設ける工程が不要な点で作業性、生産性、コストなどの点で有利である。
本発明の第7は、第6の発明で用いる反射防止膜形成用組成物に好適な硬化性樹脂組成物に関する。
すなわち第7の発明は、(1)式(4):
−(N)−(C)− (4)
[式中、構造単位Nは式(N):
Figure 2004108772
(式中、X15およびX16は同じかまたは異なり、HまたはF;X17はH、F、CHまたはCF;X18およびX19は同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にYまたはY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基、Yは水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい架橋性環状エーテル構造を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Cは構造単位Nを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Nを0.1〜100モル%および構造単位Cを0〜99.9モル%含む数平均分子量500〜1000000の含フッ素ポリマー(IIINC)からなる硬化性含フッ素樹脂(III)、および
(2)前記含フッ素樹脂(II)
からなる硬化性樹脂組成物に関する。
含フッ素樹脂(II)としては、第6の発明で説明した樹脂(II)が好適な具体例も含めて第7の発明で使用できる。
含フッ素ポリマー(IIINC)は、式(N)で示される構造単位Nの側鎖末端基である有機基Rfとして、炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にYまたはY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基、Yは水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい架橋性環状エーテル構造を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基を有している点に特徴がある。
Rf中の有機基Yが有するエチレン性炭素−炭素二重結合およびYが有する架橋性環状エーテル構造はいずれも自己架橋性の官能基であり、また活性エネルギー線架橋性の官能基である。
ポリマー(IIINC)としては、好ましくは、たとえば式(N)において構造単位Nが式(N1):
Figure 2004108772
(式中、X15、X16、X17、X18、X19、Rf、aおよびcは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位N1である含フッ素ポリマー;
特に、式(N)において構造単位Nが式(N2):
Figure 2004108772
(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位N2である含フッ素ポリマー;または
式(N)において構造単位Nが式(N3):
Figure 2004108772
(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位N3である含フッ素ポリマー
が例示できる。
さらに好ましくは、前記式(N)、(N1)、(N2)および(N3)におけるRf中のYまたはYにおいて、それぞれYまたはYの少なくとも1つが、Rfの末端に結合しているものが好ましい。
末端にエチレン性炭素−炭素二重結合をもつ有機基Yを有する含フッ素ポリマー(IIINC)(以下、「ポリマー(IIINC−1)」という)は、本発明者らが開発したポリマーであって、既に公知になっている(たとえばWO02/018457号パンフレット、WO02/072706号パンフレット、WO02/093249号パンフレットなど)。これらのパンフレットに記載されている架橋性官能基含有含フッ素ポリマーが、第7の発明でも使用できる。
ポリマー(IIINC−1)の好ましい具体例は、たとえば
Figure 2004108772
(n=1〜30の整数)
などがあげられる。
なかでも
Figure 2004108772
(XはH、F、CHまたはCF、n=1〜4の整数)
が、低屈折率、硬化反応性、溶剤溶解性の点で有利なことから好ましい。
架橋性環状エーテル構造をもつ有機基Yを有する含フッ素ポリマー(IIINC)(以下、「ポリマー(IIINC−2)という」は、本願発明者らによって見出された新規なポリマーであり、既に出願しており(特願2002−235924)、該出願の明細書に記載されている架橋性官能基含有含フッ素ポリマーが、第7の発明でも使用できる。
ポリマー(IIINC−2)の好ましい具体例は、基本骨格はポリマー(IIINC−1)と同じであり、有機基Yが、エーテル結合を少なくとも1つ含む3〜6員環の架橋性環状エーテル構造(水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基であるポリマーが例示できる。
有機基Yとしては、たとえば
Figure 2004108772
(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数2〜100の有機基、式:
Figure 2004108772
(式中、Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子が上記Xで置換されていてもよい1価または2価の有機基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基、
さらには
Figure 2004108772
(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基
などが例示できる。
具体的なポリマー(IIINC−2)としては、たとえば
Figure 2004108772
(n=0〜30の整数)
などがあげられる。
なかでも
Figure 2004108772
(n=0〜4の整数)
が、低屈折率、硬化反応性、溶剤溶解性の点で有利なことから好ましい。
なお、有機基RfはYとYを両方有していてもよいし、ポリマー(IIINC)がYを有するRfとYを有するRfの両方を有していてもよい。
構造単位Cは構造単位Nを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位であり、任意成分である。
好ましい構造単位Cとしては、基本骨格が構造単位(N)と同じであり、有機基Yの代わりに有機基Z(Zは−OH、−CHOH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SOHまたはシアノ基)を有するものがあげられ、ポリマー(IIIa)の構造単位(N)の好ましい構造のYをZに置き換えたものが例示できる。
そのほか、
Figure 2004108772
などがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。
樹脂(III)はポリマー(IIINC)を単独で含んでいてもよいし、目的に応じて他のポリマーを含んでいてもよい。この樹脂(III)は、屈折率が1.45以下、さらには1.42以下、特に1.40以下の透明なポリマーであり、光学材料として優れた特性をもつ。
樹脂(III)と樹脂(II)との配合割合は、樹脂(III)100重量部に対して表面改質能を有する樹脂(II)を0.1重量部以上、さらには1重量部以上、特に10重量部以上、また50重量部以下、さらには30重量部以下が好ましい。樹脂(II)の配合量が多くなりすぎると屈折率や透明性などの光学特性に悪影響を及ぼすことがあり、また少なすぎると表面の滑り性、防汚性、撥水撥油性などの望ましい効果が奏されにくくなる。
混合方法としては、たとえば樹脂(II)と樹脂(III)を溶剤に溶解し均一な溶液とする方法;またそれぞれを水性分散液にしたのちその水性分散液同士を混合する方法;固形状の樹脂同士を混練する方法;さらには樹脂をそれぞれ粉体にしたのち粉体を混合する方法などが採用できる。
第7の発明の硬化性樹脂組成物は、第6の発明の反射防止膜の形成用組成物として有用なほか、プラスチックレンズ用のハードコート用組成物;繊維表面の深色加工用組成物;包装用フィルム、紙、樹脂、木材などの表面ハードコート用組成物、印刷物表面の保護膜用組成物などの材料としても有用である。
本発明はさらに、(i)前記第6の発明で使用する反射防止膜材料(e)または前記第7の発明で使用する硬化性含フッ素樹脂(III)、
(ii)前記第6の発明で使用する汎用溶剤可溶性の含フッ素樹脂(II)、および
(iii)溶剤
からなる液状組成物を用いて塗布、乾燥し、膜を形成したのち硬化させる硬化物、特に反射防止膜の形成方法にも関する(第8の発明)。
すなわち、第8の発明においては、第6の発明に用いる反射防止膜形成用組成物または第7の発明の硬化性樹脂組成物を溶剤を用いて液状組成物とする。使用する溶剤としては第1の発明で例示した非フッ素系の有機溶剤のほか、第6の発明で説明したフッ素系の有機溶剤も好ましく使用できる。液状組成物の固形分濃度は特に限定されないが、0.01重量%以上、さらには0.1重量%以上、特に1重量%以上であり、20重量%以下、さらには10重量%以下が好ましい。
この液状組成物を目的とする基材などに塗布する。塗布方法および基材の種類については前述した方法および例示が第8の発明においても採用できる。
ついで形成された塗膜から溶剤を除くために乾燥する。乾燥は、樹脂成分や他の配合剤が変性しない条件を適宜選定して行なう。
この乾燥した塗膜をついで硬化させて硬化物を形成する。硬化方法は硬化性樹脂の硬化反応性により従来の方法から、当業者が最適なものを採用すればよい。場合によっては活性エネルギー線の照射で硬化させてもよいし、各種の硬化剤を配合して公知の硬化方法(パーオキサイド架橋など)により硬化させてもよい。
かくして得られる硬化物は第6および第7の発明において説明した各種硬化物、たとえば反射防止膜として、さらにプラスチックレンズ用のハードコート;繊維表面の深色物;包装用フィルム、紙、樹脂、木材などの表面ハードコート、印刷物表面の保護膜として有用であり、特に反射防止膜として優れた機能を発揮することができる。
つぎに本発明を合成例および実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、以下の合成例および実施例、比較例において含有率などの物性の評価に使用した装置および測定条件は以下のとおりである。
(1)NMR:BRUKER社製
H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
H−NMRのデータより、アセタール化率(1.1〜1.3ppm(3H)、4.6〜5.1ppm(1H))およびCH=CF−C(=O)−(αFアクリロイル)化率(5.2〜5.8ppm(2H))が、19F−NMRのデータより、αFアクリロイル基(−116〜−118ppm(1F))と鎖P(−83ppm(107F)と−129ppm(54F))の比率が定法により算出できる。
(2)IR分析:PERKIN ELMER社製フーリエ変換赤外分光光度計
1760Xで室温にて測定する。
合成例1(PVAのアセタール化)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた200ml容量の四つ口フラスコにジオキサン50ml、水5ml、ポリビニルアルコール(PVA:数平均分子量500)10gおよび濃塩酸4gを加え攪拌しながらアセトアルデヒド3.3gを滴下した。室温で10時間攪拌した後、重曹水中に反応溶液を注ぎ、析出した固体を水洗した後、真空乾燥し、無色透明なアセタール化PVA9.3gを得た(アセタール化率66モル%)。
合成例2(PVAのアセタール化)
アセトアルデヒドを5.0g用いた以外は合成例1と同様にしてアセタール化PVAを合成した(アセタール化率95モル%)。
実施例1(樹脂(I)の製造)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた100ml容量の四つ口フラスコにジオキサン20ml、合成例1で得たアセタール化PVA2.0g、ピリジン1.0gを入れよく攪拌し溶解させた後、部位B導入用のCH=CFCOF0.5gをジエチルエーテル5mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに約3時間攪拌を継続した後、数平均分子量4600の部位A導入用のパーフルオロポリエーテルカルボン酸フロライド:
CFCFCFO(CFCFCFO)CFCFCOF
(n≒26)
0.2gを10mlのHCFC−225に溶解したものを約15分間かけて滴下した。滴下終了後さらに約3時間攪拌を継続した。反応後のジオキサン溶液に、ジエチルエーテル20mlを加え、溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、さらに水洗を繰り返した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで無水硫酸マグネシウムをろ過により取り除いた。このエーテル溶液からエーテルを溜去して反応生成物を取り出した。
得られた反応生成物をアセトン−dに溶解して19F−NMRおよびH−NMRの測定を行ない、それらの測定結果から表1に示す組成であり、樹脂(I)であることがわかった。算出した物性は、部位AとBの含有率(モル%)、OH含有率(モル%)、鎖Pの含有量(重量%)およびフッ素含有量(重量%)である。なお、ポリマーMPがPVAなので、ポリマー部位Mのフッ素含有量は0重量%である。
さらに、溶解性試験および屈折率をつぎの要領で行なった。結果を表1に示す。
(溶解性試験)
メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸プロピル、イソプロピルアルコール(IPA)およびMIBKとジオキサンの1/1(重量比)混合溶剤のそれぞれ3gに0.1gの反応生成物(溶質)をそれぞれ加え、完全に溶解する場合を溶解、一部でも溶解せずに残るものを不溶とする。
(屈折率)
反応生成物をシャーレ−にキャストすることによりフィルム化し、アタゴ社製のアッベ屈折率計2Tを用い、589nmでの屈折率(n)を測定する。
実施例2(樹脂(IA)の製造)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた100ml容量の四つ口フラスコにジオキサン20ml、合成例1で得たアセタール化PVA2.0g、ピリジン0.5gを入れよく攪拌し溶解させた後、数平均分子量4600の部位A導入用のパーフルオロポリエーテルカルボン酸フロライド:
CFCFCFO(CFCFCFO)CFCFCOF
(n≒26)
1.6gを10mlのHCFC−225に溶解したものを約15分間かけて滴下した。滴下終了後さらに約3時間攪拌を継続した。反応後のジオキサン溶液を水中に注ぎ、析出した固体を水洗した後、再度ジオキサンに溶解させた。このジオキサン溶液を水中に注ぎ、析出した固体を真空乾燥し、無色透明な反応生成物を得た。
得られた反応生成物をアセトン−dに溶解して19F−NMRおよびH−NMRの測定を行ない、それらの測定結果から表1に示す組成であり、樹脂(IA)であることがわかった。
また、実施例1と同様にして溶解性試験を行ない、また屈折率を測定した。結果を表1に示す。
実施例3(樹脂(I)の製造)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた50ml容量の四つ口フラスコにジエチルエーテル10ml、実施例2で得られたパーフルオロポリエーテル構造を有する含フッ素ポリマー1.0g、ピリジン0.5gを入れ良く攪拌し溶解させた後、部位B導入用のCH=CFCOF1.2gをジエチルエーテル5mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに約3時間攪拌を継続した。反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、さらに水洗を繰り返した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いでエーテル溶液をろ過により分離した。このエーテル溶液からエーテルを溜去して反応生成物を取り出した。
得られた反応生成物をアセトン−dに溶解して19F−NMRおよびH−NMRの測定を行ない、それらの測定結果から表1に示す組成であり、樹脂(I)であることがわかった。
また、実施例1と同様にして溶解性試験を行ない、また屈折率を測定した。結果を表1に示す。
実施例4(樹脂(I)の製造)
合成例1で得たアセタール化PVAに代えて、合成例2で得たアセタール化PVAを用い、部位A導入用のパーフルオロポリエーテルカルボン酸フロライド:
CFCFCFO(CFCFCFO)CFCFCOF
(n≒26)
0.8g用いた他は実施例1と同様にして反応生成物(ジエチルエーテル溶液)を得た。
得られた反応生成物をアセトン−dに溶解して19F−NMRおよびH−NMRの測定を行ない、それらの測定結果から表1に示す組成であり、樹脂(I)であることがわかった。
また、実施例1と同様にして溶解性試験を行ない、また屈折率を測定した。結果を表1に示す。
合成例3(PVAのホルマール化)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた200ml容量の四つ口フラスコに水30ml、メタノール5ml、PVA10gおよび濃硫酸4gを加え攪拌しながらホルムアルデヒドの35%水溶液29gを滴下した。室温で48時間攪拌した後、重曹水中に反応溶液を注ぎ、析出した固体を水洗した後、真空乾燥し、無色透明なホルマール化PVA8.9gを得た(ホルマール化率41%)。
合成例4(PVAのホルマール化)
溶媒にジオキサン20mlと水2mlの混合溶媒を用いた以外は合成例3と同様にしてホルマール化PVAを合成した(ホルマール化率80%)。
実施例5(樹脂(I)の製造)
合成例1で得たアセタール化PVAに代えて、合成例3で得たホルマール化PVAを用い、部位B導入用のCH=CFCOFを1.0g用いた他は実施例1と同様にして反応生成物(ジエチルエーテル溶液)を得た。
得られた反応生成物をアセトン−dに溶解して19F−NMRおよびH−NMRの測定を行ない、それらの測定結果から表1に示す組成であり、樹脂(I)であることがわかった。
また、実施例1と同様にして溶解性試験を行ない、また屈折率を測定した。結果を表1に示す。
実施例6(樹脂(IA)の製造)
合成例1で得たアセタール化PVAに代えて、合成例3で得たホルマール化PVAを用いた以外は実施例2と同様にして反応生成物を得た。
得られた反応生成物をアセトン−dに溶解して19F−NMRおよびH−NMRの測定を行ない、それらの測定結果から表1に示す組成であり、樹脂(IA)であることがわかった。
また、実施例1と同様にして溶解性試験を行ない、また屈折率を測定した。結果を表1に示す。
実施例7(樹脂(I)の製造)
実施例2で得られた樹脂(IA)に代えて実施例6で得られた樹脂(IA)を用い、部位B導入用のCH=CFCOFを1.0g用いた他は実施例3と同様にして反応生成物(ジエチルエーテル溶液)を得た。
得られた反応生成物をアセトン−dに溶解して19F−NMRおよびH−NMRの測定を行ない、それらの測定結果から表1に示す組成であり、樹脂(I)であることがわかった。
また、実施例1と同様にして溶解性試験を行ない、また屈折率を測定した。結果を表1に示す。
実施例8(樹脂(I)の製造)
合成例1で得られたアセタール化PVAに代えて、合成例4で得たホルマール化PVAを用いた他は実施例1と同様にして反応生成物(ジエチルエーテル溶液)を得た。
得られた反応生成物をアセトン−dに溶解して19F−NMRおよびH−NMRの測定を行ない、それらの測定結果から表1に示す組成であり、樹脂(I)であることがわかった。
また、実施例1と同様にして溶解性試験を行ない、また屈折率を測定した。結果を表1に示す。
比較試験例1
架橋基を有するパーフルオロポリエーテル:
Figure 2004108772
について実施例1と同様にして溶解性試験を行なった。結果を表1に示す。
Figure 2004108772
実施例9〜14
(1)表面改質用コーティング組成物の調製
実施例1、実施例3、実施例4、実施例5、実施例7、実施例8でそれぞれ得た含フッ素樹脂(I)0.2gに活性エネルギー線硬化開始剤(b)として2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン2.0mgおよびメチルエチルケトン20gを加え、均一な表面改質用コーティング組成物を調製した(実施例9〜14)。
(2)アクリル板の表面処理
上記(1)で得た表面改質用コーティング組成物を表面処理されていないアクリル板上にスピンコーターにより室温で塗布し、室温で30分間乾燥した。塗布は、スピンコーターの回転速度を300rpmで3秒間保持した後、1000rpmで20秒間保持することにより行なった。
ついで、乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、大気中にて1500mJ/cmの強度で紫外線を照射して光硬化させて硬化被膜を作製した。
(3)物性評価
上記(2)で得た表面が改質されたアクリル板について以下の表面物性の評価を行なった。結果を表2に示す。
(摩擦係数)
往復動摩擦係数測定器(東測精密工業(株)製のAFT−15−1S。商品名)を用い、接触面には綿布を使用して測定を行なう。各サンプルの摩擦係数の値は参考例1で作製した対照反射防止膜(コントロール)の摩擦係数を基準(100)としたときの相対値(指数)で評価する。
(鉛筆硬度)
JIS K5400に準じて測定する。
(接触角)
接触角計(協和界面化学(株)製のCA−DT)を用いて純水およびn−ヘキサデカンの3μlの液量での接触角を測定する。これらの純水とヘキサデカンの接触角から表面自由エネルギー(γ)を算出する。
(転落角)
硬化被膜上にn−ヘキサデカン(nHD)の3μlの液滴を形成し、試験台ごと傾けていき、液滴が下方へ動き出したときに、試料台が水平面となす角度を転落角とする。なお、90度でも転落しなかったものは、「転落せず」とする。
(指紋付着性)
上記アクリル板の塗布面に指を押し付け、指紋の付きやすさを目視で判定する。評価は、つぎの基準とする。
○:指紋が付きにくいか、付いても指紋が目立たない。
△:指紋の付着が少ないが、その指紋は充分に確認できる。
×:未処理のアクリル板と同程度に明確に指紋が付着する。
(指紋拭取り性)
上記の指紋付着性試験後、付着した指紋をキムワイプ(商品名。十條キンバリー(株)製)で3往復拭き取り、付着した指紋の拭取りやすさを目視で判定する。評価はつぎの基準とする。
○:指紋を完全に拭き取ることができる。
△:指紋の拭取り跡が残る。
×:指紋の拭取り跡が拡がり、除去することが困難である。
参考例1(対照反射防止膜の作製:WO02/018457号パンフレットの実験例24参照)
(1)ヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体の調製
撹拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を20.8gと[H(CFCFの8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を2.2g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体19.2gを得た。
この重合体を19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、GPC分析(溶媒THF)により測定した数平均分子量は72000、重量平均分子量は118000であった。
(2)α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー溶液の調製
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml容量の四ツ口フラスコに、メチルエチルケトン(MEK)50ml、上記(1)で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体5.0gと、ピリジン2.5gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH=CFCOFの2.5gをMEK10mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに2.0時間撹拌を継続した。
反応後のMEK溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついで溶液を濾過により分離し、MEK溶液を得た。ポリマー濃度は13重量%であった。
このMEK溶液を19F−NMRにより分析した結果、
Figure 2004108772
の共重合体であった。
NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm−1に、C=O基の吸収が1770cm−1に観測された。
(3)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
上記(2)で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー溶液にMEKを加え希釈し、ポリマー濃度を5.0重量%に調整した。
得られたポリマー溶液10gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをMEKに1重量%の濃度に溶かした溶液を1.2g加え、均一な溶液にした。
(4)反射防止膜の作製
上記コーティング組成物を未処理のアクリル板上にスピンコーターにより室温で1000〜2000回転でコートし、50℃で5分間乾燥した。この際、乾燥後の膜厚が90〜110nmとなるように、スピンコーターの回転数を調整した。
乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、室温にて1500mJ/cmUの強度で紫外線を照射し、反射防止膜を作製した。
比較例1
表面未処理のアクリル板について、実施例9と同様にして各種物性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2004108772
実施例15〜18(反射防止膜表面の物性改善)
(1)表面改質用コーティング組成物の調製
実施例1、実施例4、実施例7および実施例8でそれぞれ得た含フッ素樹脂を用いた他は実施例9と同様にして表面改質用コーティング組成物を調製した(実施例15〜18)。
(2)反射防止膜の表面改質
参考例1で作製した対照反射防止膜上に上記(1)で得た表面改質用コーティング組成物をスピンコーターにより室温でコートし、室温で30分間乾燥した。スピンコートは、回転速度300rpmで3秒間保持した後、1000rpmで20秒間保持して行なった。
ついで、乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、大気中にて1500mJ/cmの強度で紫外線を照射して光硬化させて反射防止膜を作製した。
(3)物性評価
上記(2)で得た表面改質された反射防止膜(アクリル板上)について実施例9と同様にして、摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、転落角、指紋付着性および指紋拭き取り性の評価を行ない、加えて反射率の測定を行なった。結果を表3に示す。
(反射率の測定)
反射率の測定は、5°正反射ユニットを装着した可視紫外分光器を用いて、波長550nmの光について反射率を測定する。
比較例2
参考例1で作製した対照反射防止膜(コントロール)について、実施例15と同様にして摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、転落角、指紋付着性、指紋拭き取り性および反射率の評価を行なった。結果を表3に示す。
Figure 2004108772
実施例19〜26および比較例3
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
参考例1の(3)に記載される方法で調製したコーティング用含フッ素樹脂組成物に、実施例3、実施例7、実施例2および実施例6でそれぞれ得られた含フッ素樹脂50mgをそれぞれ加え、均一な溶液として表面改質用コーティング組成物を調製した(実施例19〜22)。また同様に、参考例1の(3)に記載される方法で調製したコーティング用含フッ素樹脂組成物に、実施例3、実施例7、実施例2および実施例6でそれぞれ得られた含フッ素樹脂100mgをそれぞれ加え(実施例23〜26)均一な溶液として表面改質用コーティング組成物を調製した。さらに同様に、参考例1の(3)に記載される方法で調製したコーティング用含フッ素樹脂組成物に、実施例1で得られた含フッ素樹脂100mgを加え(比較例3)均一な溶液として表面改質用コーティング組成物を調製した。
得られた各表面改質用コーティング組成物について、実施例1と同様にして屈折率を測定した。結果を表4に示す。
(2)反射防止膜の作製
上記(1)で得た表面改質用コーティング組成物を表面処理されていないアクリル板上にスピンコーターにより室温でコートし、室温で30分間乾燥した。スピンコートの回転速度は300rpmで3秒間保持した後、1000〜1500rpmで20秒間保持した。この際、乾燥後の膜厚が90〜110nmとなるように、スピンコーターの回転数を調整した。
ついで、乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、大気中にて1500mJ/cmの強度で紫外線を照射して光硬化させて反射防止膜を作製した。
(3)物性評価
上記(2)で得た表面処理アクリル板について実施例15と同様にして、摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、転落角、指紋付着性、指紋拭き取り性および反射率の評価を行なった。結果を表4に示す。
Figure 2004108772
実施例27〜28および比較例4〜5(表面改質剤層の耐溶剤性)
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
実施例3および実施例7でそれぞれ得た含フッ素樹脂(I)を用いた他は実施例9と同様にして表面改質用コーティング組成物を調製した(実施例27〜28)。同じく実施例2および実施例6でそれぞれ得た含フッ素樹脂(IA)を用いた他は実施例9と同様にして表面改質用コーティング組成物を調製した(比較例4〜5)。
(2)アクリル板の表面処理
上記(1)で得た表面改質用コーティング組成物を用いた他は実施例9と同様にしてアクリル板上に硬化被膜を作製した。
(3)耐溶剤性評価
上記(2)で得た表面改質アクリル板について、つぎの拭き取り処理を施し、拭き取り前後の特性の変化を調べた。結果を表5に示す。
(拭き取り処理)
硬化被膜全体をエタノールに浸した綿布で軽く1往復拭き取る。
測定した項目は、摩擦係数の測定、n−ヘキサデカンの接触角、指紋付着性および指紋拭き取り性の測定であり、実施例9と同様の方法で行なった。
Figure 2004108772
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
参考例1の(2)に記載される方法で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー溶液にMEKを加え希釈し、ポリマー濃度を5.0重量%に調整した。このポリマー溶液560gに、実施例3で得られた含フッ素樹脂10gおよび酢酸プロピル200gを加え、攪拌した後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してコーティング用組成物を調製した。
(2)反射防止フィルムの作成
基材は厚さ100μmのPETフィルムの片面に、ハードコート処理(屈折率1.52、厚さ5μm)を施したものを用い、上記(1)のコーティング用組成物の塗工を行なった。塗工条件は、線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径230mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数13rpm、搬送速度5m/分の条件でハードコート処理面上に塗布し、70℃で乾燥の後、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射し硬化させ巻き取った。
(3)反射防止フィルムの評価
上記(2)で得た表面改質された反射防止フィルムについて実施例9と同様にして、摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、指紋付着性および指紋拭き取り性の評価を行ない、加えて下記の方法でヘイズ値、反射率の測定を行なった。結果を表6に示す。
(ヘイズ値の測定)
フィルムのヘイズ値は、東洋精機製作所製 直読式ヘイズメーターを用いて、JIS K6714に準じて測定する。
(反射率の測定)
フィルム裏面(コーティングしていない面)を#240の紙やすりでよく研磨し、黒色スプレーで塗装する。このフィルムの反射防止コーティング面の反射率を実施例15記載の反射率の測定法と同様にして測定する。
比較例6
反射防止コーティングを施していないフィルム(ハードコート処理面)について、実施例29の(3)と同様にして各種物性を測定した。結果を表6に示す。
Figure 2004108772
合成例5(樹脂(IB)の製造)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた100ml容量の四つ口フラスコにジオキサン20ml、合成例3で得たホルマール化PVA2.0g、ピリジン1.0gを入れよく攪拌し溶解させた後、部位B導入用のCH=CFCOF1.0gをジエチルエーテル5mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに約3時間攪拌を継続した。反応後のジオキサン溶液にジエチルエーテル20mlを加え、溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、さらに水洗を繰り返した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで無水硫酸マグネシウムをろ過により取り除いた。このエーテル溶液からエーテルを溜去して反応生成物を取り出した。
得られた反応生成物をアセトン−dに溶解して19F−NMRおよびH−NMRの測定を行ない、それらの測定結果から表7に示す組成であり、樹脂(IB)であることがわかった。
Figure 2004108772
(1)表面改質用コーティング組成物の調製
実施例6で得た含フッ素樹脂(IA)0.1gに、合成例5で得られた樹脂(IB)0.1gおよび活性エネルギー線硬化開始剤(b)として2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン2.0mg、メチルエチルケトン20gを加え、均一な表面改質用コーティング組成物を調製した。
(2)アクリル板の表面処理
実施例9と同様にしてアクリル板の表面処理を行った。
(3)物性評価
上記(2)で得た表面処理されたアクリル板について、実施例9と同様にして摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、転落角、指紋付着性および指紋拭き取り性の評価を行った。結果を表8に示す。
(4)耐溶剤性評価
上記(2)で得た表面処理されたアクリル板について、実施例27と同様にして耐溶剤性の評価を行った。結果を表9に示す。
比較例7
合成例5で得た樹脂(IB)を用いた他は、実施例9の(1)と同様にしてコーティング組成物の調製を行い、これを用いて実施例9の(2)と同様にしてアクリル板の表面処理を行った。この表面処理されたアクリル板について、実施例9の(3)と同様にして摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、転落角、指紋付着性および指紋拭き取り性の評価を行った。結果を表8に示す。
Figure 2004108772
Figure 2004108772
(1)反射防止膜の表面改質
実施例30で得た表面改質用コーティング組成物を用いた他は、実施例15の(2)と同様にして反射防止膜の表面改質を行った。
(2)物性評価
上記(2)で得た表面改質された反射防止膜(アクリル板上)について実施例9と同様にして、摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、転落角、指紋付着性および指紋拭き取り性の評価を行ない、加えて実施例15と同様にして反射率の測定を行なった。結果を表10に示す。
比較例8
(1)反射防止膜の表面改質
比較例7で得たコーティング組成物を用いた他は、実施例15の(2)と同様にして反射防止膜の表面改質を行った。
(2)物性評価
上記(1)で得た表面改質された反射防止膜(アクリル板上)について実施例9と同様にして、摩擦係数、鉛筆硬度、接触角、転落角、指紋付着性および指紋拭き取り性の評価を行ない、加えて実施例15と同様にして反射率の測定を行なった。結果を表10に示す。
Figure 2004108772
本発明によれば、各種の塗膜の表面性状、特に表面滑り性(低摩擦係数化)、表面硬度、耐磨耗性、耐擦傷性、耐薬品性、汚染拭き取り性、撥水性、撥油性などを改善し、本来の塗膜の表面に改質された表面性状を付与することができる。
特に反射防止膜の透明性を損なうことなく表面滑り性を改善し、長期に亘って反射防止能を維持させることができる。

Claims (13)

  1. 部位Aおよび部位Bを同じかまたは異なる側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)、または部位Aを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IA)および部位Bを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IB)からなる汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)であって、
    該部位Aが式(1):
    Figure 2004108772
    (式中、n1、n2、n3、n4は同じかまたは異なり0または1以上の整数で、かつn1+n2+n3+n4が7〜40の整数;Xは同じかまたは異なりH、FまたはCl;Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキル基)で示されるポリフルオロポリエーテル鎖Pが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、
    該部位Bが自己架橋性官能基Yが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、かつ
    該樹脂(I)を構成する含フッ素エチレン性ポリマーから部位Aおよび部位Bを除いたエチレン性ポリマー部位Mが、フッ素原子を含まないかまたはフッ素含有量が10重量%以下で水素原子の一部がフッ素原子に置換されているエチレン性ポリマー部位である
    硬化性含フッ素樹脂(I)からなる硬化性表面改質剤。
  2. 汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)のフッ素含有量が0.1重量%以上で35重量%以下である請求の範囲第1項記載の硬化性表面改質剤。
  3. 前記エチレン性ポリマー部位Mが、式(2):
    Figure 2004108772
    Figure 2004108772
    または式(3):
    Figure 2004108772
    (式中、XはHまたは結合手;XはH、FまたはCH)で示される構造単位を含む請求の範囲第1項または第2項記載の硬化性表面改質剤。
  4. 前記部位Bが有する自己架橋性官能基Yが、
    Figure 2004108772
    (XはH、CHまたはF;XはHまたはCH
    よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の硬化性表面改質剤。
  5. 請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の硬化性表面改質剤を基材上に塗装したのち硬化させる基材の表面改質方法。
  6. 基材が、表面が反射防止膜で被覆された基材である請求の範囲第5項記載の表面改質方法。
  7. 反射防止膜および該反射防止膜直上に形成された請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の硬化性表面改質剤の連続または不連続の硬化膜からなる表面改質された多層構造の反射防止膜。
  8. (a)部位Aおよび部位Bを同じかまたは異なる側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)、または部位Aを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IA)および部位Bを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IB)からなる汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)であって、
    該部位Aが式(1):
    Figure 2004108772
    (式中、n1、n2、n3、n4は同じかまたは異なり0または1以上の整数で、かつn1+n2+n3+n4が7〜40の整数;Xは同じかまたは異なりH、FまたはCl;Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキル基)で示されるポリフルオロポリエーテル鎖Pが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、
    該部位Bが自己架橋性官能基Yが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、かつ
    該樹脂(I)を構成する含フッ素エチレン性ポリマーから部位Aおよび部位Bを除いたエチレン性ポリマー部位Mが、フッ素原子を含まないかまたはフッ素含有量が10重量%以下で水素原子の一部がフッ素原子に置換されているエチレン性ポリマー部位である
    硬化性含フッ素樹脂(I)、および
    (b)活性エネルギー線硬化開始剤
    からなる活性エネルギー線架橋性の硬化性表面改質用組成物。
  9. (a)部位Aおよび部位Bを同じかまたは異なる側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)、または部位Aを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IA)および部位Bを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IB)からなる汎用溶剤可溶性の硬化性含フッ素樹脂(I)であって、
    該部位Aが式(1):
    Figure 2004108772
    (式中、n1、n2、n3、n4は同じかまたは異なり0または1以上の整数で、かつn1+n2+n3+n4が7〜40の整数;Xは同じかまたは異なりH、FまたはCl;Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキル基)で示されるポリフルオロポリエーテル鎖Pが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、
    該部位Bが自己架橋性官能基Yが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、かつ
    該樹脂(I)を構成する含フッ素エチレン性ポリマーから部位Aおよび部位Bを除いたエチレン性ポリマー部位Mが、フッ素原子を含まないかまたはフッ素含有量が10重量%以下で水素原子の一部がフッ素原子に置換されているエチレン性ポリマー部位である
    硬化性含フッ素樹脂(I)、
    (b)活性エネルギー線硬化開始剤、および
    (c)ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤およびアルコール系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の汎用溶剤または該汎用溶剤を含む混合溶剤
    からなる活性エネルギー線架橋性の硬化性表面改質用組成物。
  10. (d)部位Aおよび部位Bを同じかまたは異なる側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)、または部位Aを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IA)からなる汎用溶剤可溶性でフッ素含有量が1重量%以上で35重量%以下である含フッ素樹脂(II)であって、
    該部位Aが式(1):
    Figure 2004108772
    (式中、n1、n2、n3、n4は同じかまたは異なり0または1以上の整数で、かつn1+n2+n3+n4が7〜40の整数;Xは同じかまたは異なりH、FまたはCl;Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキル基)で示されるポリフルオロポリエーテル鎖Pが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、
    該樹脂(II)を構成する含フッ素エチレン性ポリマーから部位Aおよび部位Bを除いたポリマー部位MAがフッ素原子を含まないかまたはフッ素含有量が10重量%以下で水素原子の一部がフッ素原子に置換されているエチレン性ポリマー部位である
    含フッ素樹脂(II)、および
    (e)反射防止膜材料
    からなる反射防止膜形成用組成物を基材に塗布して得られる反射防止膜。
  11. (1)式(4):
    −(N)−(C)− (4)
    [式中、構造単位Nは式(N):
    Figure 2004108772
    (式中、X15およびX16は同じかまたは異なり、HまたはF;X17はH、F、CHまたはCF;X18およびX19は同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にYまたはY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基、Yは水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい架橋性環状エーテル構造を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Cは構造単位Nを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Nを0.1〜100モル%および構造単位Cを0〜99.9モル%含む数平均分子量500〜1000000の含フッ素ポリマー(IIINC)を100モル%まで含む硬化性含フッ素樹脂(III)、および
    (2)部位Aおよび部位Bを同じかまたは異なる側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IAB)、または部位Aを側鎖の少なくとも一部分に有する含フッ素エチレン性ポリマー(IA)からなる汎用溶剤可溶性でフッ素含有量が1重量%以上で35重量%以下である含フッ素樹脂(II)であって、
    該部位Aが式(1):
    Figure 2004108772
    (式中、n1、n2、n3、n4は同じかまたは異なり0または1以上の整数で、かつn1+n2+n3+n4が7〜40の整数;Xは同じかまたは異なりH、FまたはCl;Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキル基)で示されるポリフルオロポリエーテル鎖Pが末端に1個または2個以上結合してなる部位であり、
    該樹脂(II)を構成する含フッ素エチレン性ポリマーから部位Aおよび部位Bを除いたポリマー部位MAがフッ素原子を含まないかまたはフッ素含有量が10重量%以下で水素原子の一部がフッ素原子に置換されているエチレン性ポリマー部位である
    含フッ素樹脂(II)
    からなる硬化性樹脂組成物。
  12. (i)請求の範囲第10項記載の反射防止膜材料(e)または請求の範囲第11項記載の硬化性含フッ素樹脂(III)、
    (ii)請求の範囲第10項記載の含フッ素樹脂(II)、および
    (iii)溶剤
    からなる液状組成物を用いて塗布、乾燥し、膜を形成したのち硬化させる硬化物の形成方法。
  13. 硬化物が反射防止膜である請求の範囲第12項記載の形成方法。
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