JP4442533B2 - 含フッ素不飽和化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な含フッ素不飽和化合物に関する。
現在のマルチメディアの発達に伴ない、各種の表示機器において、その視野性(斜めから見たときの映り込みが少ない性質。「視認性」ともいう)の向上がますます重要となってきており、大型表示装置においても、より見易くすることが求められており、この特性が技術課題となっている。
従来、表示装置の視認性を向上させるためには、低屈折率の材料から構成される反射防止膜を表示装置の基板に被覆することが行なわれている。反射防止膜を形成する方法としては、たとえばフッ素化合物の薄膜を蒸着法により形成する方法が知られている。しかしながら蒸着法では大画面の基板に対して被膜を形成することが困難で、しかも真空装置を必要とするためにコスト高になってしまう。
こうした事情から、低屈折率の含フッ素重合体を有機溶媒に溶解した液状組成物を調製し、これを基材の表面に塗布することによって反射防止膜を形成する方法が検討されている(たとえば、特許文献1など)。
しかしながら、含フッ素重合体溶液を塗布する方法では塗膜硬度が不充分なため摩耗により塗膜に傷が付いたり、塗膜が剥がれたりし、表示画面の外観を損なってしまう。
そこで、低屈折率の含フッ素重合体に加えて、光硬化可能なアクリル系単量体、たとえば含フッ素アクリル単量体、含フッ素多官能アクリル化合物を混合した組成物を塗布後、アクリル系単量体を光硬化することが検討されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4など)。
しかしこれらは、主成分である含フッ素重合体自体は未架橋であるため硬度面でまだ不充分である。硬度をさらに向上させるためにはアクリル単量体や多官能アクリル化合物を増量させればよいが、そうすると硬化被膜の屈折率が高くなってしまい目的とする反射防止効果が低下してしまう。また、この方法では未反応のアクリル単量体や多官能アクリル化合物が塗膜中に残りやすく、硬化後の塗膜物性を悪化させる。
含フッ素重合体の側鎖に光反応性(重合性)の官能基を導入したものをアクリル単量体や多官能アクリル化合物と混合したものを塗布し光硬化することも検討されている(特許文献5、特許文献6)。しかしこれらに記載の含フッ素重合体はそれ自体屈折率が高いため反射防止膜用の性能としては不充分であり、しかも硬度を高くする目的で含フッ素重合体の硬化部位を増加するにしたがって高屈折率化するので、反射防止効果がさらに低下してしまう。
特開平6−115023号公報 特開平7−126552号公報 特開平7−188588号公報 特開平8−48935号公報 特許第2527186号明細書 特許第2543903号明細書
本発明は、低屈折率を維持しながら、光硬化によってポリマーに高硬度化を実現できる硬化性含フッ素ポリマーを製造することもできる新規な含フッ素不飽和化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を行なった結果、後述する式(4−1)で示される含フッ素不飽和化合物が、側鎖にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する新規な硬化性含フッ素ポリマーを与えることを見出し、これらを用いると低屈折率性を悪化させずに高硬度の硬化物が得られることを見出した。
またさらに、側鎖末端に炭素−炭素不飽和結合を有する特定の含フッ素ポリマーの硬化膜が低反射と高硬度を兼ね備えた反射防止膜として有用であることを見出した。
かかる知見に基づき、本発明者らは以下の本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、新規な含フッ素不飽和化合物に関する。該新規化合物は、式(4−1):
CX12=CX3−(CX45a−(O)c−Rf’ (4−1)
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rf’は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY3(Y3は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;cは0または1)で示される含フッ素不飽和化合物であって、Y3が式:
−(O)d−(C=O)−Y4
(式中、Y4は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基または含フッ素アルケニル基;dは0または1)で示される有機基である含フッ素不飽和化合物である。
本発明の含フッ素不飽和化合物を用いることにより、以下の発明を実現することができる。
実現できる発明の第1は側鎖にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する硬化性含フッ素ポリマーに関する。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーは、式(1):
Figure 0004442533
[式中、構造単位Mは式(M):
Figure 0004442533
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1(Y1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Aは該式(M)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である硬化性含フッ素ポリマーである(以下、便宜上「本発明の第1」ということもある)。
実現可能な発明の第2は硬化性含フッ素ポリマーの製法に関する。該製法は、式(2):
Figure 0004442533
[式中、構造単位Nは式(N):
Figure 0004442533
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rf1は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY5(Y5はヒドロキシル基またはヒドロキシル基を有する炭素数1〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来するヒドロキシル基含有構造単位、構造単位Bは該式(N)で示されるヒドロキシル基含有含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Nを0.1〜100モル%および構造単位Bを0〜99.9モル%含むヒドロキシル基含有含フッ素重合体と、
式:
Figure 0004442533
(式中、R1はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜7の2価の有機基;X6はH、F、CH3またはCF3;X7およびX8は同じかまたは異なり、HまたはF;fは0または1)で示される炭素数3〜10の不飽和カルボン酸またはその誘導体(ただし、Y3との合計炭素数は3〜10である)
とをエステル化反応させることを特徴とする式(1a):
Figure 0004442533
[式中、構造単位M4は式(M4):
Figure 0004442533
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rf2は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基に式:
Figure 0004442533
(式中、R1、X6、X7、X8およびfは前記と同じ;R2はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜7の2価の有機基;gは0または1)で示される炭素数3〜10のY6が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Aは該式(M4)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位M4を0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である硬化性含フッ素ポリマーの製法である(以下、便宜上「本発明の第2」ということもある)。
実現可能な発明の第3は、
(a)上記硬化性含フッ素ポリマーまたは請求の範囲第2項〜第14項のいずれかに記載の硬化性含フッ素ポリマー、
(b)活性エネルギー線硬化開始剤、さらに要すれば、
(c)溶剤
からなるコーティング用含フッ素樹脂組成物、その硬化物、特に光硬化物および硬化被膜に関する(以下、便宜上「本発明の第3」ということもある)。
実現可能な発明の第4は反射防止膜に関する。
反射防止膜としては、
含フッ素プレポリマーの硬化被膜からなる反射防止膜であって、該含フッ素プレポリマーが、
(i)側鎖末端に炭素−炭素不飽和結合を有し、かつ
(ii)屈折率が1.40以下であり、
硬化被膜の膜厚が0.03〜0.5μmである反射防止膜;
(d)上記含フッ素プレポリマー、
(e)活性エネルギー線硬化開始剤、および
(f)溶剤
からなるコーティング用組成物を塗布して形成される被膜を光硬化して得られる硬化被膜であって、
硬化被膜の膜厚が0.03〜0.5μmである反射防止膜;または
(d)上記含フッ素プレポリマー、
(e)活性エネルギー線硬化開始剤、
(f)溶剤、および
(g)硬化剤
からなるコーティング用組成物を塗布して形成される被膜を光硬化して得られる硬化被膜であって、
硬化被膜の膜厚が0.03〜0.5μmである反射防止膜
があげられる(以下、便宜上「本発明の第4」ということもある)。
実現可能な発明の第5は、これらの反射防止膜を基材に施した反射防止処理物品に関する(以下、便宜上「本発明の第5」ということもある)。
本発明の含フッ素不飽和化合物は、低屈折率を維持しながら、光硬化によってポリマーに高硬度化を実現できる硬化性含フッ素ポリマーを製造する原料として有用である。
この硬化性含フッ素ポリマーは、反射防止効果を維持しながら、耐擦傷性、耐摩耗性が改善された反射防止膜、およびそのような反射防止膜が被覆された反射防止物品を提供することができる。
本発明の第1である硬化性含フッ素ポリマーは、前記のとおり式(1):
Figure 0004442533
[式中、構造単位Mは式(M):
Figure 0004442533
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1(Y1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される構造単位、構造単位Aは該式(M)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である硬化性含フッ素ポリマーである。
構造式Mは、式(3):
CX12=CX3−(CX45a−(C=O)b−(O)c−Rf (3)
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、Rf、a、bおよびcは式(M)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
つまり、上記の側鎖に反応により硬化可能なエチレン性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素エチレン性単量体の単独重合体、またはその含フッ素エチレン性単量体を必須成分として有する共重合体である。
1の少なくとも1個はRfの末端に結合していることが好ましい。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて構造単位MはなかでもM1が好ましく、M1は
Figure 0004442533
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1(Y1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;cは0または1)で示される構造単位である。
構造単位M1は、式(4):
CX12=CX3−(CX45a−(O)c−Rf (4)
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、Rf、aおよびcは式(3)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
本発明は、式(4)で示される含フッ素不飽和化合物のなかで、式(4−1):
CX12=CX3−(CX45a−(O)c−Rf’ (4−1)
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、aおよびcは式(4)と同じ;Rf’は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY3(Y3は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基)で示される含フッ素不飽和化合物であって、Y3が式:
−(O)d−(C=O)−Y4
(式中、Y4は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基または含フッ素アルケニル基;dは0または1)で示される有機基である文献未記載の新規化合物である含フッ素不飽和化合物に関する。
上記構造単位M1を含む重合体は、特に屈折率が低く、特にM1のホモポリマーやM1を増やした組成の重合体においても屈折率を低くすることができ、好ましいものである。
さらにM1のより好ましい具体例は構造単位M2であり、構造単位M2は
Figure 0004442533
(式中、Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1(Y1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基)で示される構造単位である。
構造単位M2は、式(4−2):
CH2=CF−CF2−O−Rf (4−2)
(式中、Rfは式(3)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。なお、式(4−2)で示される含フッ素不飽和化合物のなかで、式(4−3):
CH2=CFCF2ORf’ (4−3)
(式中、Rf’は式(4−1)と同じ)で示される含フッ素不飽和化合物は、文献未記載の新規化合物である。
つまり、上記のM2はエチレン性炭素−炭素二重結合を末端に有する含フッ素アリルエーテルの構造単位であり、屈折率を低くできるだけでなく、重合性が良好であり、特にホモ重合性、含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好であるため好ましい。
また、M1のもう1つの好ましい具体例は構造単位M3であり、構造単位M3は
Figure 0004442533
(式中、Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1(Y1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基)で示される構造単位である。
構造単位M3は、式(4−4):
CF2=CF−O−Rf (4−4)
(式中、Rfは式(3)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。なお、式(4−4)で示される含フッ素不飽和化合物のうち、式(4−5):
CF2=CFORf’ (4−5)
(式中、Rf’は式(4−1)と同じ)で示される含フッ素不飽和化合物は、文献未記載の新規化合物である。
上記M3はエチレン性炭素−炭素二重結合を末端に有する含フッ素ビニルエーテルの構造単位であり、屈折率を低くでき、また含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好である点で好ましい。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて構造単位M、M1、M2およびM3に含まれるY1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の有機基である。
つまり、Y1中の炭素−炭素二重結合は重縮合反応や環化反応、付加反応などを起こす能力を有し、硬化(架橋)体を得ることができるものである。詳しくは、たとえばラジカルやカチオンの接触によって本発明の硬化性含フッ素ポリマー分子間で、または硬化性含フッ素ポリマーと必要に応じて加えられる硬化(架橋)剤との間で重合反応や縮合反応を起こし、硬化(架橋)物を得ることができるものである。
本発明の式(1)、(2)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて、Y1の好ましくは
Figure 0004442533
(式中、Y2は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基、または含フッ素アルケニル基、d、eは同じかまたは異なり0または1)であり、Y2の好ましくは
−CX6=CX78
(式中、X6はH、F、CH3またはCF3、X7、X8はHまたはF)であり、ラジカルやカチオンの接触による硬化反応性が高く好ましいものである。
本発明の(4−1)、(4−3)および(4−5)で示される新規含フッ素不飽和化合物におけるY4は、上記Y2と同様のものが好ましくあげられる。
2およびY4の好ましい具体例としては、
Figure 0004442533
またY1およびY3のより好ましくは、
−O(C=O)CX6=CX78
(式中、X6はH、F、CH3またはCF3、X7、X8はHまたはF)があげられ、特にラジカルの接触による硬化反応性がより高い点で好ましく、光硬化などにより容易に硬化物を得ることができる点で好ましい。
上記Y1およびY3のより具体例としては、
Figure 0004442533
などがあげられる。
その他Y1としては、
Figure 0004442533
などがあげられる。
その他Y3としては、
Figure 0004442533
があげられる。
なかでも、−O(C=O)CF=CH2の構造を有するものが屈折率を低くでき、さらに硬化(架橋)反応性が特に高く効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて構造単位M、M1、M2およびM3に含まれるRf、式(4−1)、(4−3)、(4−5)の新規含フッ素不飽和化合物に含まれるRf’、式(2)のヒドロキシル基含有含フッ素重合体の構造単位Nに含まれるRf1、さらには式(1−1)の硬化性含フッ素ポリマーの構造単位(A−1)、(A−2)に含まれるRRf4において、また官能基Y1、Y3、Y5、Z1、Z2を除く有機基の好ましいものは、特に官能基Y1、Y3、Y5が1個の場合、炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基、炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。これらの有機基は含まれる炭素原子にフッ素原子が結合していればよく、一般に、炭素原子にフッ素原子と水素原子または塩素原子が結合した含フッ素アルキレン基、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基であるが、フッ素原子をより多く含有する(フッ素含有率が高い)ものが好ましく、官能基を除く有機基の酸素原子を除く分子量に対し、フッ素含有率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくはパーフルオロアルキレン基またはエーテル結合を有するパーフルオロアルキレン基である。これらによって、硬化性含フッ素ポリマーの屈折率を低くすることが可能となり、特に硬化物の硬度を高くする目的で硬化度(架橋密度)を高くしても屈折率を低く維持できるため好ましい。
炭素数は大きすぎると、含フッ素アルキレン基の場合は溶剤への溶解性を低下させたり透明性が低下することがあるため、またエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の場合はポリマー自身やその硬化物の硬度や機械特性を低下させることがあるため好ましくない。含フッ素アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20である。
好ましい具体例としては
Figure 0004442533
(X9、X9'はFまたはCF3;X10、X10'はHまたはF;
o+p+qは1〜30;rは0または1;s、tは0または1)
である。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーを構成する構造単位Mの構造、新規含フッ素不飽和化合物の具体例について述べる。
構造単位M2を与える単量体として好ましい具体例としては、
Figure 0004442533
があげられ、より詳しくは、
Figure 0004442533
などがあげられる。
式(4−3)の新規含フッ素不飽和化合物としては、上記の構造単位M2を与える単量体の例示において、Y1をY3に置き換えたものが、好ましい具体例としてあげられる。
より詳しくは、
Figure 0004442533
などがあげられる。
構造単位M3を与える単量体として好ましい具体例としては、
Figure 0004442533
などがあげられる。
さらに詳しくは、
Figure 0004442533
などがあげられる。
式(4−5)の新規含フッ素不飽和化合物としては、上記の構造単位M3を与える単量体の例示において、Y1をY3に置き換えたものが、好ましい具体例としてあげられる。
より詳しくは、
Figure 0004442533
などがあげられる。
M2、M3以外に本発明の硬化性含フッ素ポリマーの構造単位Mを構成する単量体の好ましい具体例としては、たとえば
Figure 0004442533
などがあげられる。
より具体的には、
Figure 0004442533
などがあげられる。
本発明の式(4−1)の新規な含フッ素不飽和化合物において、前述の式(4−3)および式(4−5)以外の含フッ素不飽和化合物としては、上記構造単位M2およびM3以外の構造単位Mを与える単量体の好ましい具体例のY1をY3に置き換えたものが同様に好ましい具体例としてあげられる。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーにおいて構造単位Aは任意成分であり、構造単位M、M1、M2またはM3と共重合し得る単量体であれば特に限定されず、目的とする硬化性含フッ素ポリマーやその硬化物の用途、要求特性などに応じて適宜選択すればよい。
たとえば、つぎの構造単位が例示できる。
(i)官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位(A1)
これらは、硬化性含フッ素ポリマーおよびその硬化物の屈折率を低く維持しながら、基材への密着性や溶剤、特に汎用溶剤への溶解性を付与できる点で好ましく、そのほかYが関与する以外の架橋性などの機能を付与できる点で好ましい。官能基を有する好ましい含フッ素エチレン性単量体の構造単位は、一般式(A1):
Figure 0004442533
(式中、X11、X12、X13はHまたはF、X14はH、F、CF3、hは0〜2、iは0または1、Rf4は炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基、炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基、Z1は−OH、−CH2OH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基、シアノ基から選ばれるもの)で示される構造単位であり、なかでも式(A1−1):
Figure 0004442533
で示される構造単位が好ましい。
より具体的には、
Figure 0004442533
などの含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
また式(A1−2):
Figure 0004442533
で示される構造単位も好ましく例示でき、より具体的には、
Figure 0004442533
などの単量体から誘導される構造単位があげられる。
その他、官能基含有含フッ素エチレン性単量体としては、
CF2=CFCF2−O−Rf−Z1 、CF2=CF−Rf−Z1
CH2=CH−Rf−Z1 、CH2=CHO−Rf−Z1
(Rfは式(M)のRfと同じ)
などがあげられ、より具体的には、
Figure 0004442533
などがあげられる。
(ii)官能基を含まない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位(A2)
これらは硬化性含フッ素ポリマーまたはその硬化物の屈折率を低く維持できる点で、またさらに低屈折率化することができる点で好ましい。また単量体を選択することでポリマーの機械的特性やガラス転移点などを調整でき、特に構造単位Mと共重合してガラス転移点を高くすることができ、好ましいものである。
含フッ素エチレン性単量体の構造単位としては一般式(A2):
Figure 0004442533
(式中、X15、X16、X18はHまたはF、X17はH、FまたはCF3、h1、i1、jは0または1、Z2はH、FまたはCl、Rf5は炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基、炭素数2〜100のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基)で示されるものが好ましい。
具体例としては、
Figure 0004442533
などの単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
(iii)フッ素を有する脂肪族環状の構造単位(A3)
これらの構造単位を導入すると、透明性を高くでき、また、より低屈折率化が可能となり、さらに高ガラス転移点の硬化性含フッ素ポリマーが得られ、硬化物にさらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。
含フッ素脂肪族環状の構造単位としては式(A3):
Figure 0004442533
(式中、X19、X20、X23、X24、X25、X26は同じかまたは異なりHまたはF;X21、X22は同じかまたは異なりH、F、ClまたはCF3;Rf6は炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4、n5は同じかまたは異なり0または1の整数)で示されるものが好ましい。
たとえば、
Figure 0004442533
(式中、Rf6、X21、X22は前記と同じ)で示される構造単位があげられる。
具体的には、
Figure 0004442533
Figure 0004442533
などがあげられる。
(iv)フッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位
屈折率を悪化(高屈折率化)させない範囲でフッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位を導入してもよい。
それによって、汎用溶剤への溶解性が向上したり、添加剤、たとえば光触媒や必要に応じて添加する硬化剤との相溶性を改善できるので好ましい。
非フッ素系エチレン性単量体の具体例としては、
αオレフィン類:
エチレン、プロピレン、ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど
ビニルエーテル系またはビニルエステル系単量体:
CH2=CHOR、CH2=CHOCOR(R:炭素数1〜20の炭化水素基)など
アリル系単量体:
CH2=CHCH2Cl、CH2=CHCH2OH、CH2=CHCH2COOH、CH2=CHCH2Brなど
アリルエーテル系単量体:
CH2=CHCH2OR (R:炭素数1〜20の炭化水素基) 、
CH2=CHCH2OCH2CH2COOH 、
Figure 0004442533
など
アクリル系またはメタクリル系単量体:
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類のほか、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル類などがあげられる。
(v)脂環式単量体から誘導される構造単位
構造単位Mの共重合成分として、より好ましくは構造単位Mと前述の含フッ素エチレン性単量体または非フッ素エチレン性単量体(前述の(iii)、(iv))の構造単位に加えて、第3成分として脂環式単量体構造単位を導入してもよく、それによって高ガラス転移点化、高硬度化が図られるので好ましい。
脂環式単量体の具体例としては、
Figure 0004442533
(m:0〜3、A、B、C、Dは、H、F、Cl、COOH、CH2OH、炭素数1〜5のパーフルオロアルキルなど)で示されるノルボルネン誘導体、
Figure 0004442533
などの脂環式単量体や、これらに置換基を導入した誘導体などがあげられる。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーにおいて、構造単位M(M1、M2、M3)とAの組み合わせや組成比率は、上記の例示から目的とする用途、物性(特にガラス転移点、硬度など)、機能(透明性、屈折率)などによって種々選択できる。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーにおいては、構造単位M(M1、M2、M3)を必須成分として含むものであり、構造単位M自体で屈折率を低く維持し、透明性を付与する機能と硬化により硬化物に硬さ、耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性を付与できる機能をあわせもつという特徴をもつ。したがって本発明の硬化性含フッ素ポリマーは、構造単位Mを多く含む組成、極端には構造単位Mのみ(100モル%)からなる重合体であっても屈折率を低く維持できる。さらに同時に硬化(架橋)密度の高い硬化物が得られ、高硬度、耐摩耗性、耐擦傷性に優れた被膜が得られる点で好ましい。
またさらに、本発明の構造単位Mと共重合可能な単量体の構造単位Aとからなる共重合体の場合、構造単位Aを前述の例示から選択することによって、さらに高硬度(高ガラス転移点)や低屈折率の硬化物を与えるポリマーとすることができる。
構造単位Mと構造単位Aとの共重合体において、構造単位Mの含有比率は、硬化性含フッ素ポリマーを構成する全単量体に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた硬化物を得るためには2.0モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上とすることが好ましい。
特に耐擦傷性、耐傷付性に優れた硬化被膜の形成が必要な反射防止被膜の用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらには50モル%以上含有することが好ましい。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーは、構成単位Mの比率を増やしても(硬化部位を増やしても)反射防止効果は低下しないため、特に反射防止膜用途において好ましいものである。
またさらに反射防止膜用途など透明性を必要とする場合、構造単位Mと構造単位Aの組合せが非晶性となり得る組合せと組成を有する硬化性含フッ素ポリマーであることが好ましい。
なかでも、低屈折率と高硬度を狙いとするコーティング組成物用の含フッ素ポリマーの好ましい形態としては、式(1−1):
−(M)−(A1)−(A2)− (1−1)
からなる硬化性含フッ素ポリマーである。
式(1−1)中の構造単位Mは、前述のエチレン性炭素−炭素二重結合を側鎖に有する構造単位であり、式(M1)、(M2)、(M3)で示した前記の好ましい具体例と同様のものが適用できる。
構造単位A1は、側鎖に官能基を有する含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位であり、詳しくは式(A1):
Figure 0004442533
(式中、X11、X12、X13はHまたはF、X14はH、F、CF3、hは0〜2、iは0または1、Rf4は炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基、炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基、Z1は−OH、−CH2OH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基、シアノ基から選ばれるもの)で示される構造単位であり、前述の官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位A1の具体例が同様に好ましく適用できる。
構造単位A2は、官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位であり、詳しくは式(A2):
Figure 0004442533
(式中、X15、X16、X18はHまたはF、X17はH、FまたはCF3、h1、i1、jは0または1、Z2はH、FまたはCl、Rf5は炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基、炭素数2〜100のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基)で示される構造単位であり、前述の官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位A2の具体例が同様に好ましく適用できる。なかでも、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位が好ましい。
構造単位M、A1およびA2のそれぞれの存在比率は、M=0〜90モル%、A1=0〜99.9モル%およびA2=0〜99.9モル%であり、かつA1+A2=10〜99.9モル%であるのが好ましい。なかでも、M=10〜80モル%、A1=1〜60モル%およびA2=20〜85モル%であり、かつA1+A2=20〜90モル%であることが好ましい。構造単位Mが少なすぎると、硬化後の被膜の硬度が低くなったり、強度が不充分になる傾向にある。A1が少なすぎると、基材への密着性や塗布性、溶剤溶解性などが不足する傾向にある。A2が少なすぎると、基材への塗布性、レべリング性、溶剤溶解性が不足する傾向がある。
これら構造単位M、A1、A2からなる含フッ素ポリマーは、構造単位Mの硬化性部位により被膜などに硬さと機械的強度、耐溶解性を付与できる。また構造単位A1の官能基により、基材との密着性や溶剤溶解性、基材に対する良好な塗布性(濡れ性やレベリング性)を付与できる。さらに構造単位A2により、含フッ素ポリマーに機械的強度や溶剤溶解性、基材に対する良好な塗布性を付与できる。
さらに構造単位M、A1、A2はいずれもフッ素原子を数多く含むものであるため、屈折率を低く維持しながら上記の機能を付与することができる点で、特に反射防止用のコーティング剤として好ましい硬化性含フッ素ポリマーである。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーの分子量は、たとえば数平均分子量において500〜1000000の範囲から選択できるが、好ましくは1000〜500000、特に2000から200000の範囲から選ばれるものが好ましい。
分子量が低すぎると、硬化後であっても機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が悪くなったり、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすく、また硬化性含フッ素ポリマーの貯蔵安定性も不安定となりやすい。コーティング用途としては、最も好ましくは数平均分子量が5000から100000の範囲から選ばれるものである。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーは、構造単位Mの種類、含有率、必要に応じて用いられる共重合構造単位Aの種類によって種々決定できるが、硬化性含フッ素ポリマー自体(硬化前)の屈折率が1.45以下であることが好ましく、さらには1.40以下、特には1.38以下であることが好ましい。基材や下地の種類によって変化するが、これら低屈折率を維持し、硬化(架橋)が可能であることで、反射防止膜用のベースポリマーとして好ましいものとなり得る。
またさらに硬化性含フッ素ポリマーでは、汎用溶剤に可溶であることが好ましく、たとえばケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤の少なくとも1種に可溶または上記汎用溶剤を少なくとも1種含む混合溶剤に可溶であることが好ましい。
汎用溶剤に可溶であることは、コーティング用途、特に0.1μm程度の薄膜形成が必要な反射防止膜を各種透明フィルムやディスプレイ基板に形成する場合、成膜性、均質性に優れるため好ましく、反射防止膜形成における生産性の面でも有利である。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーを得るためには、一般には
(i)Y1を有する単量体を予め合成し、重合して得る方法
(ii)一旦、他の官能基を有する重合体を合成し、その重合体に高分子反応により官能基変換し、官能基Y1を導入する方法
のいずれの方法も採用できる。
ただし(i)の方法は、側鎖末端の炭素−炭素二重結合を反応(硬化)させずに側鎖に炭素−炭素二重結合を有する本発明の硬化性含フッ素ポリマーを得るためには、(共)重合性のモノマー中の2種の二重結合(主鎖となる二重結合と側鎖となる二重結合)の反応性を変えることにより、一方の二重結合のみ重合に関与させる必要があり、かかる方法では、本発明の側鎖に二重結合を有する硬化性含フッ素ポリマーを得る重合条件の選択が困難であり、また、得られる硬化性ポリマー中の側鎖の二重結合自体の硬化反応性もあまり高いものを使用しにくい。
それに対し(ii)の方法は、硬化反応させずに本発明の硬化性含フッ素ポリマーを得るのが容易であり、また、硬化反応性の高い炭素−炭素二重結合も側鎖に導入できる点で好ましい方法である。
(ii)の方法のなかでも、たとえば一旦ヒドロキシル基またはヒドロキシル基を有する有機基Y3を有する含フッ素単量体の構造単位Nと必要に応じてNと共重合可能な単量体の構造単位Bからなる含フッ素重合体を合成したのち、不飽和カルボン酸またはその誘導体を反応させて、炭素−炭素二重結合をポリマーの側鎖末端に導入し、本発明の硬化性含フッ素ポリマーを得る方法が好ましく採用できる。
したがって本発明の第2は、式(2):
Figure 0004442533
[式中、構造単位Nは式(N):
Figure 0004442533
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rf1は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY5(Y5はヒドロキシル基またはヒドロキシル基を有する炭素数1〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来するヒドロキシル基含有構造単位、構造単位Bは該式(N)で示されるヒドロキシル基含有含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Nを0.1〜100モル%および構造単位Bを0〜99.9モル%含むヒドロキシル基含有含フッ素重合体と、不飽和カルボン酸またはその誘導体をエステル化反応させて得ることを特徴とする硬化性含フッ素ポリマーの製造法に関する。
本発明の上記の硬化性含フッ素ポリマーの製造法において、式(2)に示した前駆体のヒドロキシル基含有含フッ素重合体において、構造単位Nは具体例としては、前に述べた硬化性含フッ素ポリマーの構造単位Mの具体例のそれぞれに対応する、炭素−炭素二重結合を含む部位Y1をOH基を含む部位Y5に入れかえた構造のものがそれぞれ好ましく利用でき、構造単位Bは、前述の構造単位Aと同様のものが好ましく利用できる。
ヒドロキシル基含有含フッ素重合体と反応させる不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、末端に炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸またはその誘導体であればよいが、なかでもα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体(f=0)が好ましい。
たとえば、
Figure 0004442533
で示されるカルボン酸またはこれらの無水物、または
Figure 0004442533
で示される酸ハライドのほか、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステルなどがあげられる。
なかでも不飽和カルボン酸ハライドを採用するときは反応を室温で行なうことができ、生成ポリマーのゲル化を防止することができるため好ましい。
具体的には、
Figure 0004442533
が特に好ましいものである。
ヒドロキシル基含有含フッ素重合体にα,β−不飽和カルボン酸ハライドを反応させる方法は特に限定されるものではないが、通常、ヒドロキシル基含有含フッ素重合体を溶剤に溶解し、それにα,β−不飽和カルボン酸ハライドを−20℃〜40℃程度の温度で撹拌混合し、反応させることによって得られる。
本反応においては、反応によってHClやHFが副生するがこれらを捕捉する目的で適当な塩基を加えることが望ましい。塩基としては、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、テトラメチル尿素、トリエチルアミンなどの3級アミン、金属マグネシウムなどがあげられる。また、反応の際に原料のα,β−不飽和カルボン酸や得られた硬化性含フッ素ポリマー中の炭素−炭素二重結合が重合反応を起こすことを禁止するための禁止剤を共存させてもよい。
禁止剤としては、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどがあげられる。
不飽和カルボン酸またはその誘導体を反応させる前のヒドロキシル基含有含フッ素重合体は、それぞれ構成単位に相当するヒドロキシル基を有するエチレン性単量体(N)、使用する場合共重合成分となる単量体(B)を公知の方法で(共)重合することで得られる。重合方法はラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法などが利用できる。なかでも本発明のヒドロキシル基を有する重合体を得るために例示した各単量体はラジカル重合性が良好で、さらに組成や分子量などの品質のコントロールがしやすい点、工業化しやすい点でラジカル重合法が好ましく用いられる。
ラジカル重合を開始するには、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限されないが、たとえば有機または無機ラジカル重合開始剤、熱、光、あるいは電離放射線などによって開始される。重合の形態も溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合などを用いることができる。また、分子量は重合に用いるモノマーの濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の濃度、温度などによって制御される。共重合体組成は仕込み単量体のモノマー組成により制御可能である。
本発明の第3は、硬化性含フッ素ポリマーを用いた組成物に関する。本発明の組成物の1つは、
(a)硬化性含フッ素ポリマー、および
(b)活性エネルギー線硬化開始剤
からなる硬化性含フッ素樹脂組成物である。
本発明の組成物における硬化性含フッ素ポリマー(a)は、前述の側鎖に炭素−炭素二重結合を有する硬化性含フッ素ポリマーであり、好ましい具体例についても前記と同様なものが好ましく利用できる。
活性エネルギー線硬化開始剤(b)は、たとえば350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外光線、電子線、X線、γ線などが照射されることによって初めてラジカルやカチオンなどを発生し、硬化性含フッ素ポリマーの炭素−炭素二重結合を硬化(架橋反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外光線でラジカルやカチオンを発生させるもの、特にラジカルを発生するものを使用する。
この硬化性含フッ素樹脂組成物によると、前記活性エネルギー線により容易に硬化反応が開始でき、高温での加熱の必要がなく、比較的低温で硬化反応が可能であるので、耐熱性が低く、熱で変形や分解、着色が起こりやすい基材、たとえば透明樹脂基材などにも適応できる点で好ましい。
本発明の組成物における活性エネルギー線硬化開始剤(b)は、硬化性含フッ素ポリマー(a)中の側鎖の炭素−炭素二重結合の種類(ラジカル反応性か、カチオン反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長域など)と照射強度などによって適宜選択されるが、一般に紫外線領域の活性エネルギー線を用いてラジカル反応性の炭素−炭素二重結合を有する硬化性含フッ素ポリマー(a)を硬化させる開始剤としては、たとえばつぎのものが例示できる。
アセトフェノン系
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、ヒドロキシプロピオフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリンプロパンー1−オンなど
ベンゾイン系
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
ベンゾフェノン系
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーズケトンなど
チオオキサンソン類
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
その他
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
含フッ素ポリマーの種類によっては、また上記の活性エネルギー線開始剤の種類のよっては、お互い相溶性がわるく、コーティング組成物自体が、または塗布後の被膜が白濁してしまい、透明性や硬化反応性が低下する場合がある(実験例21(1))。
本発明者らは、活性エネルギー線開始剤自体にフッ素原子、含フッ素有機基を導入することで含フッ素ポリマーとの相溶性が改善できることを見出した。
具体的には、含フッ素アルキル基、含フッ素アルキレン基、エーテル結合を有する含フッ素アルキル基、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基を開始剤中に含むものが好ましく、たとえばOH基を有する開始剤に上記含フッ素有機基を有する含フッ素カルボン酸(多価カルボン酸)などをエステル結合で導入した構造のもの(実験例18)、アミノ基を有する開始剤に含フッ素カルボン酸(多価カルボン酸)をアミド結合で導入した構造のものなどがあげられる。
開始剤に含フッ素有機基を導入することによって、高フッ素化率の含フッ素ポリマーにおいても、相溶性が良好で、硬化反応性や被膜の透明性を改善できる点で好ましい(実験例21(1))。
また、必要に応じてアミン類、スルホン類、スルフィン類などの光開始助剤を添加してもよい。
また、カチオン反応性の炭素−炭素二重結合を有する硬化性含フッ素ポリマー(a)を硬化させる開始剤としては、つぎのものが例示できる。
オニウム塩
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
スルホン化合物
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
スルホン酸エステル類
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
その他
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
これらのカチオン反応性の活性エネルギー線開始剤においても、フッ素原子や含フッ素有機基を導入することで上記と同様に含フッ素ポリマーとの相溶性が改善できる。
本発明の硬化性含フッ素樹脂組成物の別の態様は溶剤を使用する態様であり、溶剤に溶解または分散させることによって種々の基材にコーティングし、塗膜を形成することができ、塗膜形成後、活性エネルギー線などの照射によって効率よく硬化でき、硬化被膜が得られる点で好ましい。
つまり本発明のコーティング用含フッ素樹脂組成物は、
(a)硬化性含フッ素ポリマー
(b)活性エネルギー線硬化開始剤、および
(c)溶剤
からなる組成物である。
硬化性含フッ素ポリマー(a)および活性エネルギー線硬化開始剤(b)は前述の硬化性含フッ素樹脂組成物と同様のものが好ましく利用できる。
溶剤(c)は、硬化性含フッ素ポリマー(a)、活性エネルギー線硬化開始剤(b)および必要に応じて添加する硬化剤、レベリング剤、光安定剤などの添加剤が均一に溶解または分散するものであれば特に制限はないが、特に硬化性含フッ素ポリマー(a)を均一に溶解するものが好ましい。この溶剤を使用する態様は特に反射防止膜用途など薄層被膜(0.1μm前後)が要求される分野で透明性が高く、均質な被膜を生産性よく得られる点で好ましい。
かかる溶剤(c)としては、たとえばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶剤;2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類あるいはこれらの2種以上の混合溶剤などがあげられる。
またさらに、硬化性含フッ素ポリマー(a)の溶解性を向上させるために、必要に応じてフッ素系の溶剤を用いてもよい。
フッ素系の溶剤としては、たとえばCH3CCl2F(HCFC−141b)、CF3CF2CHCl2/CClF2CF2CHClF混合物(HCFC−225)、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシ−ノナフルオロブタン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼンなどのほか、
Figure 0004442533
などのフッ素系アルコール類、
ベンゾトリフルオライド、パーフルオロベンゼン、パーフルオロ(トリブチルアミン)、ClCF2CFClCF2CFCl2などがあげられる。
これらフッ素系溶剤は単独でも、またフッ素系溶剤同士、非フッ素系とフッ素系の1種以上との混合溶剤として用いてもよい。
これらのなかでもケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤などが、塗装性、塗布の生産性などの面で好ましいものである。
また本発明者らは、硬化性含フッ素ポリマーを溶解させる際、これら汎用溶剤とともに含フッ素アルコール系溶剤を混合することで、塗布乾燥後のポリマー被膜の基材に対するレベリング性が改善されることを見出した。
このレベリング性改善効果は、樹脂基材、特にアクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンに対して高く、なかでもポリエチレンテレフタレート基材に対して特に顕著である(実験例44、45)。
添加する含フッ素系アルコールとしては、沸点が50℃以上、好ましくは80℃以上のもので、硬化性含フッ素ポリマーを溶解させるものであればよい。
たとえば、
Figure 0004442533
などが好ましい具体例である。
含フッ素系アルコールは、それのみで溶剤として用いても良いが、前述のケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、非フッ素系アルコール溶剤、芳香族系溶剤などの汎用溶剤に加えて用いても効果的である。
混合して用いる場合の添加量は、溶剤全体に対して1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、特に10〜30重量%添加するのが好ましい。
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(a)と活性エネルギー線硬化開始剤(b)との硬化性含フッ素樹脂組成物、さらに溶剤(c)を含めたコーティング用含フッ素樹脂組成物に、さらに必要に応じて硬化剤を添加してもよい。
硬化剤としては、炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有しかつラジカルまたは酸で重合できるものが好ましく、具体的にはアクリル系モノマーなどのラジカル重合性の単量体、ビニルエーテル系モノマーなどのカチオン重合性の単量体があげられる。これら単量体は、炭素−炭素二重結合を1つ有する単官能であっても炭素−炭素二重結合を2つ以上有する多官能の単量体であってもよい。
これらの炭素−炭素不飽和結合を有するいわゆる硬化剤は、本発明の組成物中の活性エネルギー線硬化開始剤(b)と光などの活性エネルギー線との反応で生じるラジカルやカチオンで反応し、本発明の組成物中の硬化性含フッ素ポリマー(a)の側鎖の炭素−炭素二重結合と共重合によって架橋することができるものである。
単官能のアクリル系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸エステル類、α−フルオロアクリル酸、α−フルオロアクリル酸エステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル類のほか、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などを有する(メタ)アクリル酸エステル類などが例示される。
なかでも硬化物の屈折率を低く維持するために、フルオロアルキル基を有するアクリレート系単量体が好ましく、たとえば一般式:
Figure 0004442533
(XはH、CH3またはF、Rfは炭素数2〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表わされる化合物が好ましい。
具体的には、
Figure 0004442533
などがあげられる。
多官能アクリル系単量体としては、ジオール、トリオール、テトラオールなどの多価アルコール類のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた化合物が一般的に知られている。
具体的には、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのそれぞれの多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基がアクリレート基、メタクリレート基、α−フルオロアクリレート基のいずれかに置き換えられた化合物があげられる。
また、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含む含フッ素アルキル基、含フッ素アルキレン基またはエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基を有する多価アルコールの2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた多官能アクリル系単量体も利用でき、特に硬化物の屈折率を低く維持できる点で好ましい。
具体例としては
Figure 0004442533
(Rf’は炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基またはエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基、RはHまたは炭素数1〜3のアルキル基)
などの一般式で示される含フッ素多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基またはα−フルオロアクリレート基に置き換えた構造のものが好ましくあげられる。
また、これら例示の単官能、多官能アクリル系単量体を硬化剤として本発明の組成物に用いる場合、なかでも特にα−フルオロアクリレート化合物が硬化反応性が良好な点で好ましい。
本発明の組成物において、活性エネルギー線硬化開始剤(b)の添加量は、硬化性含フッ素ポリマー(a)中の炭素−炭素二重結合の含有量、上記硬化剤の使用の有無や硬化剤の使用量によって、さらには用いる開始剤、活性エネルギー線の種類や、照射エネルギー量(強さと時間など)によって適宜選択されるが、硬化剤を使用しない場合では、硬化性含フッ素ポリマー(a)100重量部に対して0.01〜30重量部、さらには0.05〜20重量部、最も好ましくは、0.1〜10重量部である。
詳しくは、硬化性含フッ素ポリマー(a)中に含まれる炭素−炭素二重結合の含有量(モル数)に対し、0.05〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは、0.5〜10モル%である。
硬化剤を使用する場合は、硬化性含フッ素ポリマー(a)中に含まれる炭素−炭素二重結合の含有量(モル数)と硬化剤の炭素−炭素不飽和結合のモル数の合計モル数に対して0.05〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは0.5〜10モル%である。
硬化剤を使用する場合、硬化剤の使用量は目的とする硬度や屈折率、硬化剤の種類、使用する硬化性含フッ素ポリマーの硬化性基の含有量などによって適宜選択され、望ましくは硬化性含フッ素ポリマーに対して、1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%である。硬化剤の添加量が多すぎると屈折率が高くなる傾向にあり、好ましくない。
本発明のコーティング用含フッ素樹脂組成物における溶剤(c)の含有量としては、溶解させる固形分の種類、硬化剤の使用の有無や使用割合、塗布する基材の種類や目標とする膜厚などによって適宜選択されるが、組成物中の全固形分濃度が0.5〜70重量%、好ましくは1〜50重量%となるように配合するのが好ましい。
本発明の組成物は、前述の化合物のほかに、必要に応じて種々の添加剤を配合してもよい。
そうした添加剤としては、たとえばレベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤などがあげられる。
また、本発明の組成物は、硬化物の硬度を高める目的で無機化合物の微粒子を配合することもできる。
無機化合物微粒子としては特に限定されないが、屈折率が1.5以下の化合物が好ましい。具体的にはフッ化マグネシウム(屈折率1.38)、酸化珪素(屈折率1.46)、フッ化アルミニウム(屈折率1.33〜1.39)、フッ化カルシウム(屈折率1.44)、フッ化リチウム(屈折率1.36〜1.37)、フッ化ナトリウム(屈折率1.32〜1.34)、フッ化トリウム(屈折率1.45〜1.50)などの微粒子が望ましい。微粒子の粒径については、低屈折率材料の透明性を確保するために可視光の波長に比べて充分に小さいことが望ましい。具体的には100nm以下、特に50nm以下が好ましい。
無機化合物微粒子を使用する際は、組成物中での分散安定性、低屈折率材料中での密着性などを低下させないために、予め有機分散媒中に分散した有機ゾルの形態で使用するのが望ましい。さらに、組成物中において、無機化合物微粒子の分散安定性、低屈折率材料中での密着性などを向上させるために、予め無機微粒子化合物の表面を各種カップリング剤などを用いて修飾することができる。各種カップリング剤としては、たとえば有機置換された珪素化合物;アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンまたはこれらの混合物などの金属アルコキシド;有機酸の塩;配位性化合物と結合した配位化合物などがあげられる。
本発明のコーティング用含フッ素樹脂組成物は、溶剤(c)に対して硬化性含フッ素ポリマー(a)または添加物がディスパージョン状のものでも、溶液状のものでもよいが、均一な薄膜を形成するため、また比較的低温で成膜が可能となる点で、均一な溶液状であることが好ましい。
塗装法としては、膜厚をコントロールできるのであれば公知の塗装法を採用することができる。
たとえば、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法などが採用でき、基材の種類、形状、生産性、膜厚のコントロール性などを考慮して選択できる。
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(a)と活性エネルギー線硬化開始剤(b)からなる硬化性樹脂組成物、および上記の方法などで本発明のコーティング用含フッ素樹脂組成物を基材に塗布したのち乾燥により得られる被膜は、紫外線、電子線または放射線などの活性エネルギー線を照射することによって光硬化させることができる。
光硬化すると本発明の硬化性含フッ素ポリマー(a)中の炭素-炭素二重結合が分子間で重合し、ポリマー中の炭素−炭素二重結合が減少または消失する。その結果、樹脂硬度が高くなり、機械的強度が向上したり、耐摩耗性、耐擦傷性が向上したり、さらには硬化前には溶解していた溶剤に対して不溶となるだけでなく、他の数多くの種類の溶剤に対して不溶となる。
本発明の第4は、反射防止膜に関する。
すなわち、含フッ素プレポリマーの膜厚0.03〜0.5μmの硬化被膜からなり、含フッ素プレポリマーが
(1)側鎖末端に炭素−炭素不飽和結合を有し、
(2)屈折率が1.40以下
であることを特徴とする反射防止膜に関する。
この発明は、含フッ素ポリマー自体が硬化(架橋)可能な炭素−炭素不飽和結合を有し、それ自体が低屈折率なものを用いることで、透明基材に所定の膜厚で塗布し、硬化させることによって反射防止効果と、高硬度、耐摩耗性、耐擦傷性を兼ね備えた反射防止膜が得られるという本発明者らの知見に基づき完成されたものである。かかるプレポリマーを使用するときは、さらに塗装性(平滑性、膜厚均一性)も良好で、かつ硬化後の被膜に低分子量の単量体成分なども残留しにくく、表面のタック感もなく塗膜性能に優れたものとなる。
硬化は、熱や光(開始剤を含む系において)などの手段を取り得るが、透明な樹脂基材に反射防止膜を施す場合、高い温度をかけることは、基材の熱劣化、熱変形をおこしやすいため好ましくない。したがって光硬化による硬化が好ましく、本発明に用いる含フッ素プレポリマーは、光硬化(たとえば光重合)可能な炭素−炭素不飽和結合であることが好ましい。
通常、含フッ素プレポリマーを光硬化して、反射防止膜を得る方法としては、
(d)前記の含フッ素プレポリマー、
(e)活性エネルギー線硬化開始剤、および
(f)溶剤
からなるコーティング用組成物を調製し、基材に塗布し、乾燥等により被膜(未硬化)を形成したのち、紫外線、電子線、放射線などの活性エネルギー線を照射することによって硬化被膜を得る方法が採用され、光照射は、空気中、窒素などの不活性ガス気流下のいずれの条件下で行なってもよい。なかでも、不活性ガス気流下で光照射する方法が、硬化反応性が良好な点で好ましく、より高い硬度の被膜が得られる。
本発明の反射防止膜に用いる含フッ素プレポリマー(d)は、反応性の側鎖炭素−炭素不飽和結合を有していればいかなるものでも利用できるが、反応性が良好な点で、エチレン性の炭素−炭素二重結合であることが好ましい。
なかでもラジカル重合性のエチレン性の炭素−炭素二重結合を有する含フッ素プレポリマー(d1)を、活性エネルギー線照射によりラジカルを発生させる開始剤(e)と組合わせて使用することが重合反応がすみやかに起こり、重合度も高く、容易に硬化が達成できる点で好ましい。
また、酸重合性の炭素−炭素二重結合を有する含フッ素プレポリマー(d2)を活性エネルギー線の照射により酸を発生する開始剤と組合わせて用いることもでき、光照射時において空気(酸素)などの影響を受けにくく、硬化反応が達成できる点で好ましい。
本発明の反射防止膜に用いる含フッ素プレポリマーは、前述の硬化性含フッ素ポリマーと同様のものが好ましく、前記した具体的例示の中から、硬化性ポリマー自体、透明性が高く、非晶性でかつ屈折率が1.40以下のもの、好ましくは1.38以下のものが選ばれる。さらにそのなかから、目標とする硬さ、基材の種類、塗装方法、条件、膜厚、均一性、基材との密着性などに応じて適宜選択して用いることが好ましい。
本発明の反射防止膜に用いる活性エネルギー線硬化開始剤(e)は、前述の硬化性含フッ素樹脂組成物で例示したものと同じものが利用でき、含フッ素プレポリマー中の炭素−炭素不飽和結合の種類(反応性、含有量)、硬化条件、塗料のポットライフなどを考慮して種類、使用量など、前述の範囲の中から適宜選択できる。
溶剤(f)は、前述のコーティング用硬化性樹脂組成物であげたものと同じものが利用でき、目標とする塗装性、成膜性、膜厚の均一性、塗装の生産性に応じて種類、使用量など前述の例示のなかから適宜選択されるが、なかでも透明樹脂基材を溶解させたり、膨潤させたりする溶剤は好ましくない。
特にケトン系、酢酸エステル系、アルコール系および芳香族炭化水素系溶剤から選ばれるものが好ましい。
本発明の反射防止膜において、当然ではあるが、硬化性含フッ素ポリマー(d)と共に、前述のものと同様の硬化剤(g)を併用してもよい。硬化剤を併用することにより、硬化被膜の硬度をより高くすることができる。
使用する硬化剤(g)の種類や量は、前述のコーティング用含フッ素樹脂組成物に関して記載した硬化剤が同様に好ましく使用できる。
これらのコーティング組成物を塗布後、含フッ素プレポリマーを硬化させたのちの硬化物(被膜)は、屈折率が1.49以下、好ましくは1.45以下であり、さらに1.40以下であることが好ましい。最も好ましくは1.38以下であり、低い方が反射防止効果としてより有利である。
各種基材に施される反射防止膜の好ましい膜厚は、膜の屈折率や下地の屈折率によって変わるが0.03〜0.5μmの範囲から選択され、好ましくは0.07〜0.2μm、より好ましくは0.08〜0.12μmである。膜厚が低すぎると可視光における光干渉による反射率の低減化が不充分となり、高すぎると反射率はほぼ空気と膜の界面の反射のみに依存するようになるので、可視光における光干渉による反射率の低減化が不充分となる傾向がある。なかでも適切な膜厚は反射防止膜を施したのちの物品の反射率の最小値を示す波長が通常420〜720nm、好ましくは520〜620nmとなるように膜厚を設定するのが好ましい。
本発明の第5は、この反射防止膜を基材に施した反射防止処理物品に関する。
本発明の反射防止膜を施す物品、すなわち基材の種類は特に限定されない。たとえば、ガラス、石材、コンクリート、タイルなどの無機材料;塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの合成樹脂;鉄、アルミ、銅などの金属;木、紙、印刷物、印画紙、絵画などをあげることができる。また、物品の特定部分以外の部分に反射防止膜を施し、その特定部分の形状を反射光によって浮かび上がらせることにより、物品の装飾性を向上することもできる。
基材の中でもアクリル系樹脂、ポリカーボネート、セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン樹脂などの透明樹脂基材に好ましく施され、効果的に反射防止効果を発揮できる。
本発明は、以下のような形態の物品に適用した場合に効果的である。
プリズム、レンズシート、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、背面投写型ディスプレイのスクリーン、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品;
ショーウインドーのガラス、ショーケースのガラス、広告用カバー、フォトスタンド用のカバーなどに代表される透明な保護版;
CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、背面投写型ディスプレイなどの保護板;
光磁気ディスク、CD・LD・DVDなどのリードオンリー型光ディスク、PDなどの相転移型光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体;
フォトレジスト、フォトマスク、ペリクル、レチクルなどの半導体製造時のフォトリソグラフィー関連部材;
ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱電灯などの発光体の保護カバー;
上記物品に貼り付けるためのシートまたはフィルム。
本発明の反射防止膜の形成は、含フッ素プレポリマー(d)の溶液を基材に直接塗布し、光照射し、0.1μm程度の厚みの硬化被膜としてもよいが、基材との間に1つまたは複数の層をアンダーコートとして形成し、その上にトップコートとして反射防止膜を形成してもよい。
アンダーコートの効果は大きく分けて3つあり、トップコートの耐擦傷性を高めたり、基材を保護したり、基材よりも高屈折率の層を加えることにより反射防止効果を高めることにある。トップコートの耐擦傷性を高めるためには特開平7−168005号公報に例示されるような自己修復性のアンダーコートを用いればよい。また、基材の保護のためにはハードコートと一般に呼ばれる塗料を用いればよい。ハードコート用には硬化型のアクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコンアルコキシド系化合物の硬化物、金属アルコキシド系化合物の硬化物などが例示できる。これらすべてに熱硬化法が適用できる。アクリル樹脂およびエポキシ樹脂については、光(紫外線)硬化法が生産性の面で好ましい。
CRTやプラズマディスプレイなどでは、装置の特性として表面に静電気がたまりやすい。そこで、上記のようなアンダーコート層および/またはトップコート層に導電性を付与する添加剤を混ぜることが好ましい。添加剤としては、−COO−、−NH2、−NH3 +、−NR111213(ここで、R11、R12およびR13は、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基など)、−SO3−などのイオン性基を含むポリマー、シリコーン化合物、無機電解質(たとえばNaF、CaF2など)などがあげられる。
また、ほこりの付着を防止する目的で、反射防止膜のアンダーコート層および/またはトップコート層に帯電防止剤を添加することが好ましい。添加剤としては上記の導電性を付与する添加剤に加え、金属酸化物の微粒子、フルオロアルコキシシラン、界面活性剤(アニオン系、カチオン系、両性系、ノニオン系など)などがあげられる。
アンダーコート層に添加する帯電防止剤としては、効果が永続すること、効果が湿度の影響を受けにくいこと、帯電防止効果が高いこと、透明性、屈折率が高いために基材の屈折率を調整できるので反射防止効果を高めることができることなどの理由から、金属酸化物の微粒子、具体的にはアンチモンをドープした酸化錫(ATO)、インジウムを含む酸化錫(ITO)が好ましい。透明性の面ではATOが好ましく、帯電防止効果もしくは導電性の面ではITOが好ましい。また、帯電防止効果が必要ない場合でも、容易に屈折率を調節できるため、これらの添加剤を用いて反射防止効果を高めることもできる。
また、ATO、ITOが光を散乱・吸収しやすいので、光の透過を妨げないためには、アンダーコート層の厚さはサブミクロン程度であることが好ましい。反射防止効果の波長依存性を小さくし、全波長にわたって反射防止効果を高めるためには、含フッ素プレポリマー硬化物の屈折率にもよるが、膜厚は0.05〜0.3μmが好ましい。最適な屈折率も、同様に含フッ素ポリマーの屈折率に依存するが、1.55〜1.95が好ましい。
含フッ素プレポリマー硬化被膜に帯電防止性を与えるのであれば、屈折率が高くなりにくく反射防止効果に悪影響が少ないという面から、アルコキシシラン系の帯電防止剤が好ましい。フルオロアルコキシシランは屈折率が高くなる作用がさらに小さく、加えて表面特性が改良される効果も期待できるので、さらに好ましい。
また、上記したような膜の一部を改質するという方法とは全く異なった方法として、特開平8−142280号公報に示されるように反射防止能に悪影響を及ぼさない膜厚で界面活性剤の層を形成する方法がある。本発明に適用した場合、ほこり付着防止など、防汚性を向上するという効果がある。ハードコート層を形成した場合も同様の効果がある。
ハードコート層は、アルコキシシランやポリシラザンの溶液を塗布後、加熱・硬化させる方法により形成することができる。また、紫外線硬化型アクリル塗料やメラミン架橋の硬化膜も使用可能である。
またさらに、艶消し剤として微粒子を混合したコーティング剤を下地に施したもの、すなわちアンチグレア(AG)処理した基材フィルム(たとえばTACフィルムなど)上に、本発明の反射防止膜を施してもよい。それによって、低グロス、低反射の反射防止フィルムが得られ、LCDなどに用いることにより、より一層鮮明な画像が得られるので好ましい。
本発明の反射防止膜は、フッ素含有率も高く、表面接触角も低く、それ自体、撥水性、非粘着性、防汚性を有しており、反射防止と防汚層を兼ね備えることができる。
さらに反射防止層に防汚性を付与するために、含フッ素ポリエーテル化合物を添加することができる。その場合、力学特性の劣化や、含フッ素ポリマーとの相分離による白濁を考慮して添加量を決める必要がある。末端をカルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルコキシシラン基、(メタ)アクリロイル基、α−フルオロアクリロイル基としておけば、被膜中に固定されやすくなる(実験例33、34、35)。また、同様のポリエーテル化合物を予め形成した反射防止膜表面(硬化前または硬化後の被膜)に塗布しても同様の効果がある。
硬化性含フッ素ポリマーの薄膜を形成する方法として、硬化性含フッ素ポリマーのディスパージョンを塗り、乾燥し、そののち必要に応じて焼成して造膜する方法と、溶液(均一溶液)を塗布し、乾燥する方法がある。薄膜の形成が容易であることから、溶液塗布が好ましい。その際、膜厚を充分にコントロールできるのであれば、公知の塗装法を採用することができる。たとえばロールコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法を採用することができる。このような方法の中から、生産性、膜厚コントロール性、歩留まりなどのバランスを考慮して、最適な塗装法を決定する。フィルム、シートなどに反射防止膜を形成したのち、これを基材に貼り付けてもよい。
本発明においても、反射防止膜の基材への密着性を高めるために、シラン化合物を添加してもよい。被膜中に添加するシラン化合物の量は数重量%程度でよい。また、基材表面をシラン化合物で処理しておくことも、密着性の改善のために効果がある。本発明においてはいずれの場合でも、シラン化合物は硬化膜の屈折率をほとんど増加させないため、反射防止効果への悪影響は非常に少ない。
つぎに本発明を実験例をあげて説明するが、本発明はかかる実験例のみに限定されるのもではない。
合成例1(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマーの合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)
Figure 0004442533
を20.4gと
Figure 0004442533
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を21.2g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体17.6gを得た。
この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は9000、重量平均分子量は22000であった。
実験例1(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、ジエチルエーテル80ml、合成例1で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体5.0gと、ピリジン1.0gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの1.0gをジエチルエーテル20mlに溶解したものを約30分間かけて滴下した。
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間撹拌を継続した。
反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥しついでエーテル溶液を濾過により分離した。
このエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、
Figure 0004442533
の共重合体であった。
NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測された。
実験例2(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
α−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFを0.65gとピリジンを1.0g用いた以外は実験例1と同様にして、含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)を合成した。
19F−NMRにより
Figure 0004442533
の共重合体であった。
IR分析において、炭素−炭素二重結合とC=O基の吸収がいずれも実験例1と同様の位置に確認された。
実験例3(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
α−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFを0.35gとピリジンを0.3g用いた以外は実験例1と同様にして含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)を合成した。
19F−NMRにより
Figure 0004442533
の共重合体であった。
IR分析において、炭素−炭素二重結合とC=O基の吸収がいずれも実験例1と同様の位置に観測された。
実験例4
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
実験例1で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー(エーテル溶液)にメチルエチルケトン(MEK)を加えたのち、エーテルをエヴァポレーターにより留去し、ポリマー濃度8.0重量%に調整した。
得られたポリマー溶液10gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをMEKに1重量%の濃度に溶かした溶液を1.7g加えた。
(2)反射防止膜の作製
上記コーティング組成物を未処理のアクリル板上にスピンコーターにより室温で1000〜2000回転でコートし、50℃で5分間乾燥した。この際、乾燥後の膜厚が90〜110nmとなるように、スピンコーターの回転数を調整した。
(光照射)
乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、室温にて3000mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射した。
(3)含フッ素硬化性ポリマーの屈折率の測定
含フッ素硬化性ポリマーの8%MEK溶液(前述の(1)において硬化触媒を添加する前のポリマー溶液)をアプリケータ−を用いPETフィルム上に乾燥後膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で10分間乾燥後、PETフィルムから得られたキャスト膜を剥離、アッベ屈折計を用いて25℃で550nmの波長の光について屈折率を測定した。結果を表1に示す。
(4)硬化膜の屈折率の測定
(1)で作成したコーティング用組成物をアルミ箔上にアプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で10分間乾燥した。(2)と同様にして光照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かし、サンプルフィルムとした。得られた硬化膜を上記(4)と同様にして屈折率を測定した。
(5)片面反射率の測定
(2)で得た反射防止膜を施したアクリル板を5°正反射ユニットを装着した可視紫外分光器にセットし、波長550nmの光について反射率を測定した。
(6)反射防止膜の物性評価
(2)で得た反射防止膜について以下の表面物性の評価を行なった。
(i)指触乾燥性
JIS K4500に従ってベトツキの有無を指触で評価した。
評価は、
○:ベトツキなし、
×:ベトツキあり
とした。
(ii)鉛筆硬度
JIS K5400に従って測定した。
(iii)耐溶剤性
酢酸エチルを含浸させた綿布で塗膜表面を擦った後の塗膜表面の状態(溶解または剥離)を評価した。
変化なしを○、溶解または剥離ありを×とした。
溶剤としてアセトンを用いた場合についても同様にして評価した。
(iv)耐摩耗性
ラビングテスターに綿布(アサヒケミカル社製のBEMCOT(登録商標)M−3)をとりつけ、100gf/cm2の荷重で100往復反射防止膜を擦った。そのときの膜の状態を観察した。
評価は、
○:変化なし、
△:一部傷がつく、
×:膜が剥離し、下地が見えている部分がある
とした。
実験例5〜6
実験例1で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマーに代えて実験例2(実験例5)、実験例3(実験例6)をそれぞれ用いた以外は実験例4と同様にしてコーティング組成物の調製、反射防止膜の作製、塗膜の評価を行なった。結果を表1に示す。
実験例7
実験例4の反射防止膜の作製において、光照射を実施しなかった以外は、実験例4と同様にして反射防止膜を作製し物性評価を行なった。結果を表1に示す。
実験例8
未塗装のアクリル板について片面反射率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004442533
実験例9〜12(IR分析による硬化反応性の確認)
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
実験例1で得た含フッ素硬化性ポリマーを用いて、実験例4と同様な操作を行ない、表2に示すポリマー濃度、活性エネルギー線硬化開始剤量となるようにコーティング組成物をそれぞれ調製した。
(2)IR分析用フィルムの作製
上記のコーティング組成物をアプリケーターを用いてPETフィルムに乾燥後膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で5分間乾燥後、PETフィルムから得られた被膜を剥離させ、キャストフィルムを得た。
(3)IR分析による硬化反応性の測定
上記フィルムのIR分析を行なうと1661cm-1にポリマー中の炭素−炭素二重結合の吸収が観測された。
この炭素−炭素二重結合の吸収に着目し、光照射後の吸収強度の変化を観測した。硬化反応率を下式にしたがって測定した。
Figure 0004442533
高圧水銀灯を用い室温にて、表2に示す照射量で紫外線照射を行ない、照射量を変化させて、上式で表わされる硬化反応率を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0004442533
実験例13(α−フルオロアクリル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
α−フルオロアクリル酸フルオライド(CH2=CFCOF)を2.0g、ピリジンを2.0g用いた以外は実験例1と同様にして含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)を合成した。
このエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、
Figure 0004442533
の共重合体であった。
IR分析において、炭素−炭素二重結合とC=O基の吸収がいずれも実験例1と同様の位置に確認された。
実験例14〜16(IR分析による硬化反応性の確認)
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
実験例13で得た含フッ素硬化性ポリマーを用いて、実験例4と同様な操作を行ない、表3に示すポリマー濃度、活性エネルギー線硬化開始剤の種類、活性エネルギー線硬化開始剤量となるようにコーティング組成物をそれぞれ調製した。
(2)IR分析用フィルムの作製
実験例9と同様にして作製した。
(3)IR分析による硬化反応性の測定
実験例9と同様にして、光照射量1500mJ/cm2照射したときの硬化反応率を算出した。結果を表3に示す。
実験例17
実験例14で得たコーティング組成物に、さらに硬化剤として
Figure 0004442533
をポリマーに対して20重量%となるように添加し、コーティング用含フッ素樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物を用いて実験例14と同様にしてIR分析用フィルムを作製し、硬化反応性の測定を行なった。結果を表3に示す。
Figure 0004442533
合成例2(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマーの合成)
合成例1において、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を20.0gと
Figure 0004442533
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を10.0gを用いた以外は合成例1と同様にして合成および得られたポリマーの精製を行ない、無色透明な重合体18.2gを得た。
この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は30000、重量平均分子量は59000であった。
合成例3(OH基を有する含フッ素アリルエーテルとフッ化ビニリデンの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた300ml内容量のステンレススチール製オートクレーブに、パーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネール)を34.2gとCH3CCl2F(HCFC−141b)を200g、ジノルマルプロピルパーオキシカーボネート(NPP)の50重量%メタノール溶液を0.16g入れ、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら系内をチッ素ガスで充分置換した。ついでバルブからフッ化ビニリデン(VdF)を5.8g仕込み、40℃にて振とうさせながら反応を行なった。反応の進行とともに、系内のゲージ圧が反応前の4.4MPaG(4.5kgf/cm2G)から12時間後に0.98MPaG(1.0kgf/cm2G)まで低下した。
この時点で未反応モノマーを放出し、析出した固形物を取り出し、アセトンに溶解させ、ついでヘキサンとトルエンの混合溶剤(50/50)で再沈殿させることにより共重合体を分離した。この共重合体を恒量になるまで真空乾燥し、共重合体31.2gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−MNR分析および19F−NMR分析により分析したところ、VdF/OH基含有含フッ素アリルエーテルが38/62(モル%)であった。また、THFを溶媒として用いるGPC分析により測定した数平均分子量は12000、重量平均分子量は18000であった。
実験例18(含フッ素活性エネルギー線硬化開始剤の合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを2.0g、ピリジンを1.0g、CF3CF2CHCl/CClF2CF2CHClF混合物(HCFC−225)を20g仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、
Figure 0004442533
の2.5gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに4.0時間撹拌を継続した。
反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄を行なって有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち蒸留により生成物2.6gを単離した(収率62%)。
得られた生成物を1H−NMR分析、19F−NMR分析およびIR分析により調べたところ、
Figure 0004442533
であった。
実験例19(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、メチルエチルケトン(MEK)40ml、合成例2で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体5.0gと、ピリジン2.0gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド1.2gを約30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間撹拌を継続した。
反応後のMEK溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返し、有機層を分取したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後のポリマー濃度は10.7重量%であった。
このMEK溶液を19F−NMR分析により調べたところ、
Figure 0004442533
であった。
また実験例1と同様にしてIR分析を行なったところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1660cm-1に,C=Oの吸収が1770cm-1に観測された。
実験例20(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
合成例3で得たOH基含有含フッ素アリルエーテルとVdFの共重合体を5.0gとピリジンを1.1g、α−フルオロアクリル酸フルオライドを1.0g用いた以外は実験例19と同様にして含フッ素硬化性ポリマー(MEK溶液)を合成した。ポリマー濃度は9.9重量%であった。
19F−NMRにより
Figure 0004442533
の共重合体であった。
実験例21
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
実験例19で得た硬化性含フッ素ポリマー(MEK溶液)にさらにMEKを加えてポリマー濃度を8重量%に調整した。
この硬化性含フッ素ポリマーのMEK溶液に活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをポリマーに対して2.0重量%となるように添加したところ、白濁して相溶しなかった。
そこで、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンに代えて実験例18で得た含フッ素活性エネルギー線硬化開始剤をポリマーに対して3.6重量%となるように添加したところ、無色透明の溶液になり相溶した。
(2)コーティング用組成物の評価
含フッ素活性エネルギー線硬化開始剤配合のコーティング用組成物を用いて実験例4の(2)〜(6)に記載(ただし、(2)において1500mJ/cm2の光を照射した)と同様にして評価し、実験例10と同様にして1500mJ/cm2の光照射時の硬化反応率を測定した。結果を表4に示す。
実験例22
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
実験例20で得た硬化性含フッ素ポリマー(MEK溶液)にさらにMEKを加えてポリマー濃度を8重量%に調整した。
この硬化性含フッ素ポリマーのMEK溶液に活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをポリマーに対して6.7重量%となるように添加したところ、無色透明の溶液となり相溶した。
(2)コーティング用組成物の評価
得られたコーティング用組成物を用いて実験例21と同様の評価を行なった。結果を表4に示す。
Figure 0004442533
合成例4(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマーの合成)
撹拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を20.8gと
Figure 0004442533
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を2.2g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体19.2gを得た。
この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は72000、重量平均分子量は118000であった。
実験例23(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、メチルエチルケトン(MEK)50ml、合成例4で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体5.0gと、ピリジン2.5gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの2.5gをMEK10mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに2.0時間撹拌を継続した。
反応後のMEK溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついで溶液を濾過により分離し、MEK溶液を得た。ポリマー濃度は13重量%であった。
このMEK溶液を19F−NMRにより分析した結果、
Figure 0004442533
の共重合体であった。
NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測された。
実験例24
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
実験例23で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー溶液にMEKを加え希釈し、ポリマー濃度を5.0重量%に調整した。
得られたポリマー溶液10gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをMEKに1重量%の濃度に溶かした溶液を1.2g加え、均一な溶液にした。
(2)反射防止膜の作製
上記コーティング組成物を未処理のアクリル板上にスピンコーターにより室温で1000〜2000回転でコートし、50℃で5分間乾燥した。この際、乾燥後の膜厚が90〜110nmとなるように、スピンコーターの回転数を調整した。
(光照射)
乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、室温にて1500mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射した。
(3)含フッ素硬化性ポリマーの屈折率の測定
実験例23で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー溶液を濃縮し、50%溶液としたものを、アプリケータ−を用いPETフィルム上に乾燥後の膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で10分間乾燥後、PETフィルムから得られたキャスト膜を剥離、アッベ屈折計を用いて25℃で550nmの波長の光について屈折率を測定した。結果を表5に示す。
(4)硬化膜の屈折率の測定
実験例23で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー溶液を濃縮し、50%溶液としたもの2gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを0.01g加え、これをアルミ箔上にアプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で10分間乾燥した。(2)と同様にして光照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かし、サンプルフィルムとした。得られた硬化膜を上記(3)と同様にして屈折率を測定した。結果を表5に示す。
(5)片面反射率の測定
(2)で得た反射防止膜を施したアクリル板を5°正反射ユニットを装着した可視紫外分光器にセットし、波長550nmの光について反射率を測定した。結果を表5に示す。
(6)反射防止膜の物性評価
(2)で得た反射防止膜について以下の表面物性の評価を行なった。結果を表5に示す。
(i)鉛筆硬度
JIS K5400に従って測定した。
(ii)耐溶剤性
酢酸エチルを含浸させた綿布で塗膜表面を擦った後の塗膜表面の状態(溶解または剥離)を評価した。
変化なしを○、溶解または剥離ありを×とした。
溶剤としてアセトンを用いた場合についても同様にして評価した。
(iii)耐摩耗性
ラビングテスターに綿布(アサヒケミカル社製のBEMCOT(登録商標)M−3)をとりつけ、100gf/cm2の荷重で100往復反射防止膜を擦った。そのときの膜の状態を観察した。
評価は、
○:変化なし、
△:一部傷がつく、
×:膜が剥離し、下地が見えている部分がある
とした。
(iv)耐擦傷性
スチールウール#0000で塗膜表面を擦った後の塗膜表面の状態を観察した。
評価は、
○:変化なし、
△:数箇所傷が見られる、
×:大きな傷が多数つく、または膜が剥離して下地が見えている。
とした。
実験例25〜27
実験例24の(1)で得たコーティング組成物に硬化剤として
Figure 0004442533
をポリマーに対して10重量%(実験例25)、30重量%(実験例26)、50重量%(実験例27)となるように添加した。それぞれのコーティング組成物を用いて、実験例24の(2)と同様に反射防止膜を作製し、(4)硬化膜の屈折率の測定、(5)片面反射率の測定(6)反射防止膜の物性評価、と同様にして、反射防止膜の物性評価を行なった。結果を表5に示す。
実験例28
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
実験例25で用いた硬化剤
Figure 0004442533
0.5gに、MEKを10g加え溶解させ、これに活性エネルギー線硬化開始剤として、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをMEKに1重量%の濃度に溶かした溶液を1.2g加え、均一な溶液にした。このコーティング組成物を用いて、実験例24の(2)と同様に反射防止膜を作製し、(4)硬化膜の屈折率の測定、(5)片面反射率の測定、(6)反射防止膜の物性評価、と同様にして、反射防止膜の物性評価を行なった。結果を表5に示す。
実験例29
硬化剤として
Figure 0004442533
をポリマーに対して30重量%加えた以外は、実験例17と同様にして得たコーティング用含フッ素樹脂組成物に、MEKを加え5重量%のMEK溶液とした。これを用いて実験例24の(2)と同様に反射防止膜を作製し、(4)硬化膜の屈折率の測定、(5)片面反射率の測定、(6)反射防止膜の物性評価、と同様にして、反射防止膜の物性評価を行なった。結果を表5に示す。
実験例30(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、MEK50ml、合成例3で得たOH基含有含フッ素アリルエーテルとVdFの共重合体を5.0gとピリジンを2.2g仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの2.0gをMEK10mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに3.0時間撹拌を継続した。
反応後のMEK溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥しついでMEK溶液を濾過により分離した。ポリマー濃度は13.0重量%であった。
このMEK溶液を19F−NMR分析により調べたところ
Figure 0004442533
の共重合体であった。
NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測された。
実験例31
実験例23で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマーに代えて、実験例30を用い、また活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンの代わりに、実験例18で得られた含フッ素エネルギー線硬化開始剤を用いた以外は実験例24と同様にして、(1)コーティング組成物の調製、(2)反射防止膜の作製、塗膜の評価を行なった。結果を表5に示す。
実験例32
実験例31の(1)で得たコーティング組成物に硬化剤として
Figure 0004442533
をポリマーに対して10重量%となるように添加し、コーティング用組成物を製造した。このコーティング組成物を用いて、実験例24の(2)と同様に反射防止膜を作製し、(4)硬化膜の屈折率の測定、(5)片面反射率の測定、(6)反射防止膜の物性評価を同様にして行なった。結果を表5に示す。
Figure 0004442533
1)架橋剤(4官能)
Figure 0004442533
2)含フッ素エネルギー線硬化開始剤
Figure 0004442533
3)架橋剤(2官能)
Figure 0004442533
実験例33(パーフルオロポリエーテルα−フルオロアクリレートの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた500ml四ツ口フラスコに、平均分子量3800の直鎖型パーフルオロポリエーテルアルコール
CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)nCF2CF2CH2OH(n≒20)
を18g、ピリジンを1.0g、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロメタキシレン125gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの0.84gを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロメタキシレン5mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに.4時間撹拌を継続した。
反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついで溶液を濾過により分離した。ろ液からエバポレータによって溶媒を溜去したのち、さらに70℃に加熱しながら真空に引いた状態で6時間乾燥させ、粘度の高い無色透明な液体を得た。
得られた生成物を1H−NMR分析、19F−NMR分析およびIR分析により調べたところ、
Figure 0004442533
であった。
実験例34および35(パーフルオロポリエーテル基(PFPE)含有化合物による表面物性の改善)
(1)コーティング用含フッ素樹脂組成物の調製
実験例23(実験例34)および実験例30(実験例35)で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマーのMEK溶液をそれぞれ濃縮し、濃度50重量%に調整したMEK溶液2gへ、CF3CF2CHCl/CClF2CF2CHClF混合物(HCFC−225)を3g、MIBK4gおよびClCF2CClFCF2CCl2F(CFC−316)を6g加えた。さらに、実験例33で得られたパーフルオロポリエーテルα−フルオロアクリレートをHCFC225に1.0重量%の濃度に溶かした溶液を1.0g加えた。
得られたポリマー溶液に、活性エネルギー線硬化開始剤として含フッ素活性エネルギー線硬化開始剤をHCFC225に10重量%の濃度に溶かした溶液を1g加え均一な溶液とした。
(2)反射防止膜の作製
上記コーティング組成物を未処理のアクリル板上にスピンコーターにより室温で2000〜5000回転でコートし、50℃で5分間乾燥した。この際、乾燥後の膜厚が90〜110nmとなるように、スピンコーターの回転数を調整した。
(光照射)
乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、室温にて1500mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射した。
(3)片面反射率の測定
(2)で得た反射防止膜を施したアクリル板を5°正反射ユニットを装着した可視紫外分光器にセットし、波長550nmの光について反射率を測定した。結果を表6に示す。
(4)反射防止膜の物性評価
(2)で得た反射防止膜について以下の表面物性の評価を行なった。結果は表6に示す。
(i)鉛筆硬度
JIS K5400に従って測定した。
(ii)接触角
接触角計を用いて、純水およびn-ヘキサデカンの接触角を測定した。
実験例36および37
実験例24の(2)(実験例36)および、実験例31の(2)(実験例37)で得た光照射後の反射防止膜について、実験例34の(4)と同様にして接触角を測定した。結果を表6に示す。
合成例5(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマー(長側鎖)の合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、
CH2=CFCF2(OCF(CF3)CF23OCF(CF3)CH2OH
を10.0gと
Figure 0004442533
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を6.2g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で15時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体7.3gを得た。
この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は24000、重量平均分子量は79000であった。
実験例38(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマー(長側鎖)の合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、メチルエチルケトン50ml、合成例5で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体3.0gと、ピリジン0.4gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの0.55gをメチルエチルケトン10mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに2.0時間撹拌を継続した。
反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥しついでメチルエチルケトン溶液を濾過により分離した。
このメチルエチルケトン溶液を19F−NMR分析により調べたところ、
Figure 0004442533
の共重合体であった。
IR分析において、炭素−炭素二重結合とC=O基の吸収がいずれも実験例23と同様の位置に確認された。
実験例39
実験例23で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマーに代えて実験例38を用いた以外は実験例24の(1)、(2)と同様にして反射防止膜を作成し、これについて実験例34の(3)、(4)と同様にして反射防止膜の物性評価を行なった。結果を表6に示す。
合成例6(OH基を有する含フッ素アリルエーテルと、末端にメチルエステル構造を持つ含フッ素アリルエーテルのコポリマーの合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を9.6gと
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOCH3
を9.6gを入れ、よく攪拌し、
Figure 0004442533
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を2.0g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で20時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をアセトンに溶解させたものを、HCFC225/n-ヘキサン=1/1溶液に注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体15.5gを得た。
この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記のヒドロキシル基を持つ含フッ素アリルエーテル/メチルエステル末端を持つ含フッ素アリルエーテルが42/58モル%であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は72000、重量平均分子量は117000であった。
実験例40(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、メチルエチルケトン50ml、合成例6で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルのコポリマー3.0gと、ピリジン0.6gを仕込み、実験例23と同様にして、α−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの1.0gをMEK10mlに溶解したものを滴下し、含フッ素硬化性ポリマー(MEK溶液)を合成した。
19F−NMRにより
Figure 0004442533
の共重合体であった。
IR分析において、炭素−炭素二重結合とC=O基の吸収がいずれも実験例23と同様の位置に確認された。
実験例41
実験例30で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマーに代えて実験例40を用いた以外は実験例31の(1)、(2)と同様にして反射防止膜を作成し、これを実験例34の(3)、(4)と同様にして反射防止膜の物性評価を行なった。結果を表6に示す。
Figure 0004442533
1)PFPE化合物
Figure 0004442533
2)含フッ素エネルギー線硬化開始剤
Figure 0004442533
実験例42および43(PETフィルムへの塗布性が改善された含フッ素樹脂組成物の調製)
実験例23(実験例42)および実験例30(実験例43)で得た、α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマーのMEK溶液を、それぞれ濃縮し濃度50重量%に調整した。これらのMEK溶液2gへ、それぞれMIBK14gおよび2,2,3,3,テトラフルオロプロパノール(HCF2CF2CH2OH)を4g加え、さらに活性エネルギー線硬化開始剤として、含フッ素活性エネルギー線硬化開始剤をHCFC225に10重量%の濃度に溶かした溶液を1.0g加え、均一な溶液とした。
実験例44および45(PETフィルムへの塗布性評価)
実験例42(実験例44)および実験例43(実験例45)で得られたコーティング組成物を、未処理のPETフィルム上にドクターブレードを用いて2μmの厚さに塗布し、室温で風乾させながら状態を観察した。
評価は、
○:膜厚が均一な状態で乾燥し、乾燥後干渉縞が見られない
△:膜厚が均一な状態で乾燥するが、乾燥後、若干干渉縞が見られる
×:塗布後に表面で溶液がはじかれ、乾燥後に多数の同心円状の干渉縞が見られる
とした。結果を表7に示す。
実験例46および47
実験例23(実験例46)および実験例30(実験例47)で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー溶液に、MEKを加えて希釈し、ポリマー濃度を5.0重量%に調整した。
得られたポリマー溶液20gに、活性エネルギー線硬化開始剤として、実験例18で得られた含フッ素エネルギー線硬化開始剤をMEKに10重量%の濃度に溶かした溶液を1.0g加え、均一な溶液にした。これらの溶液を用いて、実験例44と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
Figure 0004442533
1)含フッ素エネルギー線硬化開始剤
Figure 0004442533
合成例7(OH基を有する含フッ素アリルエーテルとテトラフルオロエチレンの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた100ml内容量のステンレススチール製オートクレーブに、パーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネール)を10.0gとCH3CCl2F(HCFC−141b)を50g、ジノルマルプロピルパーオキシカーボネート(NPP)の50重量%メタノール溶液を0.1g入れ、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら系内をチッ素ガスで充分置換した。ついでバルブからテトラフルオロエチレン(TFE)を8.0g仕込み、40℃にて振とうさせながら14時間反応を行なったのち、未反応モノマーを放出して反応を終了した。
析出した固形物を取り出し、アセトンに溶解させ、ついでヘキサンとHCFC−225の混合溶剤(20/80)で再沈殿させることにより共重合体を分離した。この共重合体を恒量になるまで真空乾燥し、共重合体9.3gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−MNR分析および19F−NMR分析により分析したところ、TFE/OH基含有含フッ素アリルエーテルが48/52(モル%)であった。また、THFを溶媒として用いるGPC分析により測定した数平均分子量は24000、重量平均分子量は36100であった。
合成例8(OH基を有する含フッ素アリルエーテルとクロロトリフルオロエチレンの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた100ml内容量のステンレススチール製オートクレーブに、パーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネール)を10.0gとCH3CCl2F(HCFC−141b)を50g、ジノルマルプロピルパーオキシカーボネート(NPP)の50重量%メタノール溶液を0.1g入れ、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら系内をチッ素ガスで充分置換した。ついでバルブからクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を5.8g仕込み、40℃にて振とうさせながら20時間反応を行なったのち、未反応モノマーを放出して反応を終了した。
析出した固形物を取り出し、アセトンに溶解させ、ついでヘキサンとHCFC−141bの混合溶剤(50/50)で再沈殿させることにより共重合体を分離した。この共重合体を恒量になるまで真空乾燥し、共重合体5.7gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−MNR分析および19F−NMR分析により分析したところ、CTFE/OH基含有含フッ素アリルエーテルが35/65(モル%)であった。また、THFを溶媒として用いるGPC分析により測定した数平均分子量は10500、重量平均分子量は7200であった。
実験例48(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、ジエチルエーテル50ml、合成例7で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルのコポリマー2.0gと、ピリジン0.9gを仕込み、実験例23と同様にして、α−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの0.9gをジエチルエーテル10mlに溶解したものを滴下し、含フッ素硬化性ポリマー(ジエチルエーテル溶液)を合成した。
19F−NMRにより
Figure 0004442533
の共重合体であった。
IR分析において、炭素−炭素二重結合とC=O基の吸収がいずれも実験例23と同様の位置に確認された。
実験例49(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、メチルイソブチルケトン30ml、合成例8で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルのコポリマー3.0gと、ピリジン0.7gを仕込み、実験例23と同様にして、α−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの0.8gをメチルイソブチルケトン10mlに溶解したものを滴下し、含フッ素硬化性ポリマー(メチルイソブチルケトン溶液)を合成した。
19F−NMRにより
Figure 0004442533
の共重合体であった。
IR分析において、炭素−炭素二重結合とC=O基の吸収がいずれも実験例23と同様の位置に確認された。
実験例50および51
実験例23で得た含フッ素硬化性ポリマーに代えて、実験例48(実験例50)および実験例49(実験例51)で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマーのそれぞれを使用した以外は実験例24の(3)と(4)と同様にして含フッ素硬化性ポリマーの硬化前と硬化後の屈折率を測定した。結果を表8に示す。
Figure 0004442533
実験例52(新規含フッ素不飽和化合物の合成)
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、パーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノール):
Figure 0004442533
20.4g、ジエチルエーテル80mlとピリジン4.3gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの5.1gをジエチルエーテル20mlに溶解したものを約30分間かけて滴下した。
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間撹拌を継続した。
反応後のエーテル溶液を大過剰の水に投入し、有機物をエーテル抽出し、エーテル層を水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水溶液洗浄、さらに水洗を繰り返した。エーテル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エーテルを留去し、有機物23gを得た。
得られた生成物は、1H−NMR分析、19F−NMR分析およびGC−Mass分析より、
Figure 0004442533
で示される新規な含フッ素ふそうわ化合物であることを確認した。また、IR分析したところ、2種の炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm-1、1695cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測された。
合成例9
還流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた300ml四ツ口フラスコに、2,3,3,5,6,6,8−ペンタフルオロ−4,7,10−トリオキサ−5,8−ビストリフルオロメチル−12,13−エポキシトリデカ−1−エン:
Figure 0004442533
46.4gと酢酸20g、トリエチルアミン1.0gを入れ95〜105℃で4時間加熱攪拌を行なった。
室温まで冷却後、室温にて滴下漏斗から85%水酸化カリウム10.0gとメタノール80mlを混合した溶液を約30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温にて5時間攪拌した。
反応終了後、17%塩酸水を44ml加えた後に混合物を大量の水に放ち、その水層が水性になるまで炭酸水素ナトリウムを加えた。
中和後、5%NaHCO3水洗浄、さらに水洗を繰り返した。エーテル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エーテルを留去し、有機物29gを得た。
得られた生成物は1H−NMR分析、19F−NMR分析、IR分析、Mass分析により、式:
Figure 0004442533
で示される2個のヒドロキシル基を有する含フッ素アリルエーテル化合物であった。
実験例53(新規含フッ素不飽和化合物の合成)
実験例52において、パーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノール)に代えて、合成例9で得たヒドロキシル基を2個有する含フッ素アリルエーテル化合物:
Figure 0004442533
の24.1gとピリジン8.3g、α−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの10.2gを用いた以外は実験例52と同様にして反応および単離操作を行ない、有機物19.0gを得た。
得られた生成物は1H−NMR分析、19F−NMR分析、GC−Mass分析により、式:
Figure 0004442533
で示される新規な含フッ素不飽和化合物であった。また、IR分析したところ、2種の炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm-1、1695cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測された。
合成例10(ヒドロキシル基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマーの合成)
合成例1において、パーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノール)に代えて、合成例9で得たヒドロキシル基を2個有する含フッ素アリルエーテル化合物:
Figure 0004442533
の24.1gを用いた以外は合成例1と同様にして重合、ポリマーの精製を行ない、無色透明な重合体13.5gを得た。
この重合体を1H−NMR分析、19F−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり、各側鎖にOH基を2個有する含フッ素重合体であった。
実験例54(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
実験例1において、合成例1で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテル重合体に代えて、合成例10で得た各側鎖にOH基を有する含フッ素アリルエーテルホモ重合体の4.8gを用い、ピリジン3.1g、α−フルオロアクリル酸フルオライドの2.0gを用いた以外は実験例1と同様にして含フッ素硬化性ポリマーの合成を行なった。
得られたポリマーの得てる溶液を19F−NMR分析により調べたところ、式:
Figure 0004442533
の含フッ素アリルエーテルより誘導される構造単位のみからなる重合体であった。
この重合体をNaCl板に塗布し、室温でキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1660cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測されたが、OH基の吸収は観測されなかった。

Claims (3)

  1. 式(4−1):
    CX12=CX3−(CX45a−(O)c−Rf' (4−1)
    (式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rf'は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY3(Y3は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;cは1)で示される含フッ素不飽和化合物であって、Y3が式:
    −(O)d−(C=O)−Y4
    (式中、Y4は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基または含フッ素アルケニル基;dは1)で示される有機基である含フッ素不飽和化合物。
  2. 式(4−3):
    CH2=CF−CF2−O−Rf' (4−3)
    (式中、Rf'は式(4−1)と同じ)で示される請求項1記載の含フッ素不飽和化合物。
  3. 3が式:
    −O(C=O)CX6=CX78
    (式中、X6はH、F、CH3またはCF3;X7およびX8は同じかまたは異なり、HまたはF)で示される請求項1または2記載の含フッ素不飽和化合物。
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