JP2019043070A - 転写シート - Google Patents

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Takuya Arase
琢也 荒瀬
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Abstract

【課題】防汚性、例えば指紋付着防止性、および離型性に優れた転写シートを提供する。【解決手段】基材シート(a)、防汚層(b)、コーティング層(c)および要すれば接着剤層(d)を有し、防汚層(b)は、(A)硬化性含フッ素ポリマーおよび(B)含フッ素表面改質剤を含んでなる含フッ素組成物であり、硬化性含フッ素ポリマー(A)は、式(1):−(M)−(A)− (1)で示され、 含フッ素表面改質剤(B)は、式(2):3の整数)で示される転写シート。【選択図】図2

Description

本発明は、光学製品、自動車部品又は事務機器等の樹脂成形品の製造に用いられる転写シートに関する。
光学製品、自動車内装部品又は事務機器等の樹脂成形品の外表面への種々の機能付与を目的として、所望の機能を備えた転写シートが用いられる。それらの機能としては、防汚性付与、帯電防止性付与、硬度付与又は美観付与等である。これらの機能のうち、特に光学製品に関しては、例えば画像表示表面への指紋付着等を防止するための防汚性付与機能が求められる。転写シートは、基材シート上に防汚剤を塗布・乾燥して形成した防汚層を有している。
特開2006−048026号公報(特許文献1)は、離型性を有する支持フィルム上に反射防止層が設けられ、該反射防止層上に活性エネルギー線硬化性成分が硬化されたハードコート性及び加熱接着性を有する層が設けられている転写用反射防止フィルムを開示している。
特開2008−151930号公報(特許文献2)は、離型性を有する支持フィルム上に、少なくとも含フッ素化合物と無機微粒子とを含む混合物により形成された1層からなる反射防止層、ハードコート性を有する層及び転写対象物に接着するための接着層が順次設けられている転写用反射防止フィルムを開示している。
特開2006−048026号公報 特開2008−151930号公報
本発明の課題は、防汚性、例えば指紋付着防止性、および離型性に優れた転写シートを提供することである。
本発明は、基材シート(a)、防汚層(b)、コーティング層(c)および要すれば接着剤層(d)を有し、防汚層(b)は、(A)硬化性含フッ素ポリマーおよび(B)含フッ素表面改質剤を含んでなる含フッ素組成物である転写シートを提供する。
本発明は、基材シート(a)と防汚層(b)との間に、離型層を有してよい。
本発明は、基材シート(a)上に含フッ素組成物を塗布する工程、防汚層(b)の上に重合性コーティング剤組成物を塗布する工程、および含フッ素組成物および重合性コーティング剤組成物を硬化する工程を含んでなる、転写シートの製造方法を提供する。
ここで、硬化は、含フッ素組成物を塗布後および重合性コーティング剤組成物を塗布後にそれぞれ実施されてよい。
本発明は、コーティング層(c)の硬化の前または後に、コーティング層(c)上に接着剤組成物を塗布し、接着剤層(d)を形成する工程を含んでよい。
本発明によれば、防汚性、特に指紋付着性に優れ、且つ離型性に優れた転写シートが得られる。
本発明の転写シートの1つの態様の模式断面図である。 本発明の転写シートの他の態様の模式断面図である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明は、基材シート(a)、防汚層(b)、コーティング層(c)および要すれば接着剤層(d)をこの順に有する。
図1は、本発明の転写シートの1つの態様の模式断面図である。転写シート10は、基材シート11、防汚層12、コーティング層13および接着剤層14を有する。基材シート11は離型性を有しており、防汚層12から容易に剥離可能である。防汚層12は、屈折率が低い反射防止層として機能する。コーティング層13は、ハードコートを形成することができることが好ましい。コーティング層13は、防汚層12よりも高い屈折率を有することが好ましい。
図2は、本発明の転写シートの他の態様の模式断面図である。この態様は、転写シート10’がコーティング層13と接着剤層14’の間に図柄層15を有する以外は、図1の態様と同様である。
<(a)基材シート>
基材シート(a)は、転写シートに強度とフレキシビリティを付与する。基材シート表面に上記各層を構成する組成物の溶液を浸漬、スプレー、スピンコート等の方法で均一に塗布することによって、本発明の転写シートが得られる。基材シートは転写シートを樹脂成形品に転写した後に、転写シートから剥離されて、防汚層が樹脂成形品の最外表面に現れて、樹脂成形品に防汚性を付与する。すなわち、基材シートは、剥離シートとして機能する。
基材シートには、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等の合成樹脂フィルムを用いることができる。これらの中でも、成形性、耐熱性等を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)又はポリプロピレンフィルム、特に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)又はポリプロピレンフィルムが最も好ましい。
基材シートの厚さは3〜1000μm、好ましくは5〜200μm程度で、より好ましくは16〜100μmである。
<(b)防汚層>
防汚層(b)は、(A)硬化性含フッ素ポリマーおよび(B)含フッ素表面改質剤を含んでなる含フッ素組成物を硬化して得られる層である。
(A)硬化性含フッ素ポリマー:
硬化性含フッ素ポリマー(A)は、国際公開第02/18457号パンフレットに式(1)で示されている硬化性含フッ素ポリマーである。
すなわち、式(1):
−(M)−(A)− (1)
[式中、構造単位Mは、式(M):
Figure 2019043070

(式中、XaおよびXbは同じかまたは異なり、HまたはF;XcはH、F、CH3またはCF3;XdおよびXeは同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;m1は0〜3の整数;m2およびm3は同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位;
構造単位Aは、構造単位Mを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含む含フッ素ポリマーである。一般に、含フッ素ポリマーの数平均分子量は500〜1000000である。
構造式Mは、式(m):
CXab=CXc−(CXdem1−(C=O)m2−(O)m3−Rf (m)
(式中、Xa、Xb、Xc、Xd、Xe、Rf、m1、m2およびm3は式(M)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
つまり、上記の側鎖に反応により硬化可能なエチレン性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素エチレン性単量体の単独重合体、またはその含フッ素エチレン性単量体を必須成分として有する共重合体である。
Yの少なくとも1個はRfの末端に結合していることが好ましい。なお、以下の構造式において使用するYは、特記しない限り式(M)で定義したYである。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて構造単位MはなかでもM1が好ましく、M1は式(M1):
Figure 2019043070

(式中、Xa、Xb、Xc、Xd、Xe、Rf、m1およびm3は式(M)と同じ)で示される構造単位である。
構造単位M1は、式(m1):
CXab=CXc−(CXdem1−(O)m3−Rf (m1)
(式中、Xa、Xb、Xc、Xd、Xe、Rf、m1およびm3は式(M)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
上記構造単位M1を含む重合体は、特に屈折率が低く、特にM1のホモポリマーやM1を増やした組成の重合体においても屈折率を低くすることができ、好ましいものである。
さらにM1のより好ましい具体例は構造単位M2であり、構造単位M2は式(M2):
Figure 2019043070

(式中、Rfは式(M)と同じ)で示される構造単位である。
構造単位M2は、式(m2):
CH2=CF−CF2−O−Rf (m2)
(式中、Rfは式(M)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
つまり、上記のM2はエチレン性炭素−炭素二重結合を末端に有する含フッ素アリルエーテルの構造単位であり、屈折率を低くできるだけでなく、重合性が良好であり、特にホモ重合性、含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好であるため好ましい。
また、M1のもう1つの好ましい具体例は構造単位M3であり、構造単位M3は式(M3):
Figure 2019043070

(式中、Rfは式(M)と同じ)で示される構造単位である。
構造単位M3は、式(m3):
CF2=CF−O−Rf (m3)
(式中、Rfは式(M)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
上記M3はエチレン性炭素−炭素二重結合を末端に有する含フッ素ビニルエーテルの構造単位であり、屈折率を低くでき、また含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好である点で好ましい。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて構造単位M、M1、M2およびM3に含まれるYは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の有機基である。
つまり、Y中の炭素−炭素二重結合は重縮合反応や環化反応、付加反応などを起こす能力を有し、硬化(架橋)体を得ることができるものである。詳しくは、たとえばラジカルやカチオンの接触によって本発明の硬化性含フッ素ポリマー分子間で、または硬化性含フッ素ポリマーと必要に応じて加えられる硬化(架橋)剤との間で重合反応や縮合反応を起こし、硬化(架橋)物を得ることができるものである。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて、Yは好ましくは
Figure 2019043070

(式中、Y1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基、または含フッ素アルケニル基、m4およびm5は同じかまたは異なり0または1)であり、Y1は好ましくは
−CXf=CXgXh
(式中、XfはH、F、CH3またはCF3;XgおよびXhはHまたはF)であり、ラジカルやカチオンの接触による硬化反応性が高く好ましいものである。
1の好ましい具体例としては、
Figure 2019043070

などがあげられる。
またYのより好ましくは、
−O(C=O)CXf=CXgh
(式中、Xf、XgおよびXhは上記と同じ)
で示されるY2があげられ、特にラジカルの接触による硬化反応性がより高い点で好ましく、光硬化などにより容易に硬化物を得ることができる点で好ましい。
上記Y2のより好ましい具体例としては、
Figure 2019043070

などがあげられる。
その他のYとしては、
Figure 2019043070

があげられる。
なかでも、−O(C=O)CF=CH2の構造を有するものが屈折率を低くでき、さらに硬化(架橋)反応性が特に高く効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて、構造単位M、M1、M2およびM3に含まれるRfの好ましいものは、特に官能基Yが1個の場合、炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基、炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。これらの有機基は含まれる炭素原子にフッ素原子が結合していればよく、一般に、炭素原子にフッ素原子と水素原子または塩素原子が結合した含フッ素アルキレン基、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基であるが、フッ素原子をより多く含有する(フッ素含有率が高い)ものが好ましく、官能基を除く有機基の酸素原子を除く分子量に対し、フッ素含有率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくはパーフルオロアルキレン基またはエーテル結合を有するパーフルオロアルキレン基である。これらによって、硬化性含フッ素ポリマーの屈折率を低くすることが可能となり、特に硬化物の硬度を高くする目的で硬化度(架橋密度)を高くしても屈折率を低く維持できるため好ましい。
炭素数は大きすぎると、含フッ素アルキレン基の場合は溶剤への溶解性を低下させたり透明性が低下することがあるため、またエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の場合はポリマー自身やその硬化物の硬度や機械特性を低下させることがあるため好ましくない。含フッ素アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20である。
好ましい具体例としては
Figure 2019043070

(XiおよびXjは同じかまたは異なりFまたはCF3;Xk、Xlは同じかまたは異なりHまたはF;o+p+qは1〜30;rは0または1;s、tは0または1)
である。
構造単位M2を与える単量体として好ましい具体例としては、
Figure 2019043070

があげられ、より詳しくは、
Figure 2019043070
Figure 2019043070
Figure 2019043070
Figure 2019043070

などがあげられる。
構造単位M3を与える単量体(m3)の好ましい具体例としては、
Figure 2019043070

などがあげられる。
さらに詳しくは、
Figure 2019043070

などがあげられる。
構造単位M2、M3以外の本発明の硬化性含フッ素ポリマーの構造単位Mを構成する単量体の好ましい具体例としては、たとえば
Figure 2019043070

などがあげられる。
より具体的には、
Figure 2019043070

などがあげられる。
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(A)において構造単位Aは任意成分であり、構造単位M、M1、M2またはM3を与える単量体(m)、(m1)、(m2)および(m3)と共重合し得る単量体であれば特に限定されず、目的とする硬化性含フッ素ポリマーやその硬化物の用途、要求特性などに応じて適宜選択すればよい。
たとえば、つぎの構造単位が例示できる。
(1)官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位(A1)
これらは、硬化性含フッ素ポリマーおよびその硬化物の屈折率を低く維持しながら、基材への密着性や溶剤、特に汎用溶剤への溶解性を付与できる点で好ましく、そのほかYが関与する以外の架橋性などの機能を付与できる点で好ましい。官能基を有する好ましい含フッ素エチレン性単量体の構造単位は、一般式(A1):
Figure 2019043070

(式中、Xm、Xn、XoはHまたはF;XpはH、FまたはCF3;hは0〜2;iは0または1;Rf3aは炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;D1は−OH、−CH2OH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基またはシアノ基から選ばれるもの)で示される構造単位であり、なかでも式(A1−1):
Figure 2019043070

(式中、Rf3aおよびD1は式(A1)と同じ)
で示される構造単位が好ましい。
より具体的には、
Figure 2019043070

などの含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
また式(A1−2):
Figure 2019043070

(式中、Rf3aおよびD1は式(A1)と同じ)
で示される構造単位も好ましく例示でき、より具体的には、
Figure 2019043070

などの単量体から誘導される構造単位があげられる。
その他、官能基含有含フッ素エチレン性単量体としては、
CF2=CFCF2−O−Rf−D1、CF2=CF−Rf−D1
CH2=CH−Rf−D1、CH2=CHO−Rf−D1
(これらの式においてRfは式(M)のRfからYを除いた基)
などがあげられ、より具体的には、
Figure 2019043070

などがあげられる。
(2)官能基を含まない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位(A2)
これらは硬化性含フッ素ポリマーまたはその硬化物の屈折率を低く維持できる点で、またさらに低屈折率化することができる点で好ましい。また単量体を選択することでポリマーの機械的特性やガラス転移点などを調整でき、特に構造単位Mと共重合してガラス転移点を高くすることができ、好ましいものである。
含フッ素エチレン性単量体の構造単位としては一般式(A2):
Figure 2019043070

(式中、Xq、Xr、XsはHまたはF;XtはH、FまたはCF3;h1、i1、jは0または1;D2はH、FまたはCl;Rf4aは炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基)で示されるものが好ましい。
具体例としては、
Figure 2019043070
などの単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
(3)フッ素原子を有する脂肪族環状の構造単位(A3)
これらの構造単位を導入すると、透明性を高くでき、また、より低屈折率化が可能となり、さらに高ガラス転移点の硬化性含フッ素ポリマーが得られ、硬化物にさらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。
含フッ素脂肪族環状の構造単位としては式(A3):
Figure 2019043070

(式中、Xa1、Xa2、Xa4、Xa5、Xa7、Xa8は同じかまたは異なりHまたはF;Xa3、Xa6は同じかまたは異なりH、F、ClまたはCF3;Rf5aは炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;p2は0〜3の整数;p1、p3、p4、p5は同じかまたは異なり0または1の整数)で示されるものが好ましい。
たとえば、
Figure 2019043070

(式中、Rf5a、Xa3、Xa6は前記と同じ)で示される構造単位があげられる。
具体的には、
Figure 2019043070
Figure 2019043070

(式中、Xa4、Xa5は前記と同じ)などがあげられる。
(4)フッ素原子を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位
屈折率を悪化(高屈折率化)させない範囲でフッ素原子を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位を導入してもよい。
それによって、汎用溶剤への溶解性が向上したり、添加剤、たとえば光触媒や必要に応じて添加する硬化剤との相溶性を改善できるので好ましい。
非フッ素系エチレン性単量体の具体例としては、
αオレフィン類:
エチレン、プロピレン、ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど
ビニルエーテル系またはビニルエステル系単量体:
CH2=CHOR、CH2=CHOCOR(R:炭素数1〜20の炭化水素基)など
アリル系単量体:
CH2=CHCH2Cl、CH2=CHCH2OH、CH2=CHCH2COOH、CH2=CHCH2Brなど
アリルエーテル系単量体:
CH2=CHCH2OR(R:炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH2=CHCH2OCH2CH2COOH、
Figure 2019043070

など
アクリル系またはメタクリル系単量体:
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類のほか、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル類などがあげられる。
(5)脂環式単量体から誘導される構造単位
構造単位Mの共重合成分として、より好ましくは構造単位Mと前述の含フッ素エチレン性単量体または非フッ素エチレン性単量体(前述の(3)、(4))の構造単位に加えて、第3成分として脂環式単量体構造単位を導入してもよく、それによって高ガラス転移点化、高硬度化が図られるので好ましい。
脂環式単量体の具体例としては、
Figure 2019043070

(m:0〜3、A、B、C、Dは、H、F、Cl、COOH、CH2OH、炭素数1〜5のパーフルオロアルキルなど)で示されるノルボルネン誘導体、
Figure 2019043070

などの脂環式単量体や、これらに置換基を導入した誘導体などがあげられる。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーにおいて、構造単位M(M1、M2、M3)とAの組み合わせや組成比率は、上記の例示から目的とする用途、物性(特にガラス転移点、硬度など)、機能(透明性、屈折率)などによって種々選択できる。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーにおいては、構造単位M(M1、M2、M3)を必須成分として含むものであり、構造単位M自体で屈折率を低く維持し、透明性を付与する機能と硬化により硬化物に硬さ、耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性を付与できる機能をあわせもつという特徴をもつ。したがって本発明の硬化性含フッ素ポリマーは、構造単位Mを多く含む組成、極端には構造単位Mのみ(100モル%)からなる重合体であっても屈折率を低く維持できる。さらに同時に硬化(架橋)密度の高い硬化物が得られ、高硬度、耐摩耗性、耐擦傷性に優れた被膜が得られる点で好ましい。
またさらに、本発明の構造単位Mと共重合可能な単量体の構造単位Aとからなる共重合体の場合、構造単位Aを前述の例示から選択することによって、さらに高硬度(高ガラス転移点)や低屈折率の硬化物を与えるポリマーとすることができる。
構造単位Mと構造単位Aとの共重合体において、構造単位Mの含有比率は、硬化性含フッ素ポリマーを構成する全単量体に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた硬化物を得るためには2.0モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上とすることが好ましい。
特に耐擦傷性、耐傷付性に優れた硬化被膜の形成が必要な反射防止被膜の用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらには50モル%以上含有することが好ましい。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーは、構成単位Mの比率を増やしても(硬化部位を増やしても)反射防止効果は低下しないため、特に反射防止の用途において好ましいものである。
またさらに反射防止の用途など透明性を必要とする場合、構造単位Mと構造単位Aの組合せが非晶性となり得る組合せと組成を有する硬化性含フッ素ポリマーであることが好ましい。
なかでも、低屈折率と高硬度を狙いとするコーティング組成物用の含フッ素ポリマーの好ましい形態としては、式(1−1):
−(M)−(A1)−(A2)− (1−1)
からなる硬化性含フッ素ポリマーである。
式(1−1)中の構造単位Mは、式(1)のエチレン性炭素−炭素二重結合を側鎖に有する構造単位Mであり、式(M1)、(M2)、(M3)で示した前記の好ましい具体例と同様のものが適用できる。
構造単位A1は、側鎖に官能基を有する含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位であり、詳しくは前記式(A1)で示される構造単位であり、前述の官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位A1の具体例が同様に好ましく適用できる。
構造単位A2は、官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位であり、詳しくは前記式(A2)で示される構造単位であり、前述の官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位A2の具体例が同様に好ましく適用できる。なかでも、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位が好ましい。
構造単位M、A1およびA2のそれぞれの存在比率は、M=0〜90モル%、A1=0〜99.9モル%およびA2=0〜99.9モル%であり、かつA1+A2=10〜99.9モル%であるのが好ましい。なかでも、M=10〜80モル%、A1=1〜60モル%およびA2=20〜85モル%であり、かつA1+A2=20〜90モル%であることが好ましい。構造単位Mが少なすぎると、硬化後の被膜の硬度が低くなったり、強度が不充分になる傾向にある。A1が少なすぎると、基材への密着性や塗布性、溶剤溶解性などが不足する傾向にある。A2が少なすぎると、基材への塗布性、レべリング性、溶剤溶解性が不足する傾向がある。
これら構造単位M、A1、A2からなる含フッ素ポリマーは、構造単位Mの硬化性部位により被膜などに硬さと機械的強度、耐溶解性を付与できる。また構造単位A1の官能基により、基材との密着性や溶剤溶解性、基材に対する良好な塗布性(濡れ性やレベリング性)を付与できる。さらに構造単位A2により、含フッ素ポリマーに機械的強度や溶剤溶解性、基材に対する良好な塗布性を付与できる。
さらに構造単位M、A1、A2はいずれもフッ素原子を数多く含むものであるため、屈折率を低く維持しながら上記の機能を付与することができる点で、特に反射防止用のコーティング剤として好ましい硬化性含フッ素ポリマーである。
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(A)の分子量は、たとえば数平均分子量において500〜1000000の範囲から選択できるが、好ましくは1000〜500000、特に2000から200000の範囲から選ばれるものが好ましい。
分子量が低すぎると、硬化後であっても機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が悪くなったり、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすく、また硬化性含フッ素ポリマーの貯蔵安定性も不安定となりやすい。コーティング用途としては、最も好ましくは数平均分子量が5000から100000の範囲から選ばれるものである。
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(A)は、構造単位Mの種類、含有率、必要に応じて用いられる共重合構造単位Aの種類によって種々決定できるが、硬化性含フッ素ポリマー自体(硬化前)の屈折率が1.45以下であることが好ましく、さらには1.40以下、特には1.38以下であることが好ましい。基材や下地の種類によって変化するが、これら低屈折率を維持し、硬化(架橋)が可能であることで、反射防止用のベースポリマーとして好ましいものとなり得る。
またさらに硬化性含フッ素ポリマーでは、汎用溶剤に可溶であることが好ましく、たとえばケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤の少なくとも1種に可溶または上記汎用溶剤を少なくとも1種含む混合溶剤に可溶であることが好ましい。
汎用溶剤に可溶であることは、コーティング用途、特に0.1μm程度の薄膜形成が必要な防汚層を各種透明フィルムやディスプレイ基板に形成する場合、成膜性、均質性に優れるため好ましく、防汚層形成における生産性の面でも有利である。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーを得るためには、一般にはYを有する単量体を予め合成し、重合して得る方法;一旦、他の官能基を有する重合体を合成し、その重合体に高分子反応により官能基変換し、官能基Yを導入する方法など、国際公開第02/18457号パンフレットに記載の方法が採用できる。
(B)含フッ素表面改質剤
含フッ素表面改質剤(B)は、防汚層の表面に防汚性を付与する役割を主として有する成分であり、式(2):
Figure 2019043070

(式中、X1はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基;R1はケイ素原子を有しないが、環構造、ヘテロ原子および/または官能基は有していてもよい(n1+n4)価の有機基;Rf1はパーフルオロポリエーテル基;R2はアルキル基、フルオロアルキル基、またはCH2=CX2COO−(X2はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基);n1は1〜3の整数;n2は0または1;n3は0〜50;n4は1〜3の整数)で示され、かつフッ素原子を含む含フッ素化合物である。一般に、含フッ素化合物の数平均分子量は100〜6000である。
この含フッ素表面改質剤(B)は、シロキサン結合を含まない点で特許文献2に記載のパーフルオロポリエーテル基含有有機ケイ素化合物と異なり、耐薬品性に優れる点で有利である。
本発明で使用する含フッ素表面改質剤(B)は防汚層の自由表面に偏析しやすい特性を有しており、少ない量でも防汚層の表面に優れた防汚性を付与することができる。また、CH2=CX1COO−を有しており、硬化性含フッ素ポリマーの炭素−炭素二重結合と反応して、ポリマーに化学的に固定されるためブリードアウトしにくく、長期間防汚性を維持することができる。
式(2)において、X1はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基であり、合成が容易である点および低屈折率化が良好な点から、特にH、CH3、F、CF3が好ましい。
Rf1はパーフルオロポリエーテル基であり、好ましくは炭素数1〜10のパーフルオロエーテル単位の1種または2種以上が組み合わされた基である。パーフルオロエーテル単位の具体例としては、たとえば−OCF2−、−CF2O−、−OCF2CF2−、−CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2−、−CF2CF2CF2O−、−OCF(CF3)−、−CF(CF3)O−、−OCF2CF(CF3)−、−CF(CF3)CF2O−、−OCF(CF3)CF2−、−CF2CF(CF3)O−などが例示できる。
パーフルオロエーテル単位の繰り返し数n3は0〜50であり、好ましくは1〜40、さらに好ましくは5〜30である。n3が0の場合、R2はフルオロアルキル基、特にパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
2はアルキル基、フルオロアルキル基、またはCH2=CX2COO−(X2はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基)である。
アルキル基としては炭素数1〜20、さらには1〜8の直鎖状または分子鎖状のアルキル基が例示できる。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などである。
フルオロアルキル基としては炭素数1〜20、さらには1〜8の直鎖状または分子鎖状のフルオロアルキル基が例示できる。特に低屈折率化が良好な点からパーフルオロアルキル基が好ましい。具体的にはCF3、C25、C37、C49、C613、C817などがあげられる。
2はCH2=CX2COO−でもよい。R2におけるX2はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基であり、特に合成が容易である点および低屈折率化が良好な点からH、CH3、F、CF3が好ましい。
n1は1〜3であり、好ましくは1または2である。
式(2)で示される含フッ素表面改質剤(B)としては、より具体的にはつぎのものが例示できる。
(B1)国際公開公報WO03/002628号パンフレットおよび特開2006−37024号公報に記載されている反応性表面改質剤であって、反応性基としてCH2=CX1COO−を有する化合物:
すなわち、ジイソシアネートを3量化させたトリイソシアネート(B1a)および少なくとも2種の活性水素含有化合物(B1b)の組合せからなる反応性基含有組成物であり、成分(B1b)は、少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル(B1b−1)と、活性水素と自己反応性基を有するモノマー(B1b−2)を必須の組合せとして含んでなる組成物である。
自己反応性基としては、ラジカル重合性の自己反応性基があげられる。
たとえばトリイソシアネート(B1a)と成分(B1b)とを反応させることによって、すなわちトリイソシアネート(B1a)に存在するNCO基と成分(B1b)に存在する活性水素を反応させることによって、少なくとも1つの自己反応性基を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物(B1A)の形で得ることができる。トリイソシアネート(B1a)に存在するNCO基と成分(B1b)に存在する活性水素の当量比は、NCO基1当量に対して活性水素が少なくとも1当量、特に1:1であることが好ましい。
トリイソシアネート(B1a)に存在するNCO基と成分(B1b−1)および(B1b−2)を同時に反応させてもよいし、あるいは成分(B1b−1)および(B1b−2)を順次反応させてもよい。
トリイソシアネート(B1a)1モルに対して、成分(B1b−1)の有する活性水素と成分(B1b−2)の有する活性水素の総和が2.5〜3.5モル、さらには少なくとも3モルであることが好ましい。
成分(B1b−1)の適当な量はトリイソシアネート(B1a)1モルに対して、下限が0.0001モル、さらには0.01モル、特に0.1モルであり、上限が2モル、さらには1.5モル、特に1.0モルである。
成分(B1b−2)の適当な量はトリイソシアネート(B1a)1モルに対して、下限が1モル、さらには1.2モル、特に1.5モルであり、上限が2.5モル、さらには2モル、特に1.8モルである。
成分(B1b)は、さらに(B1b−1)および(B1b−2)以外の活性水素を有する化合物(B1b−3)を含んでもよい。成分(B1b−3)を含む場合、化合物(B1A)は成分(B1a)と、成分(B1b−1)、(B1b−2)および(B1b−3)とを反応させることにより得られる。トリイソシアネート(B1a)に成分(B1b−1)、(B1b−2)および(B1b−3)を同時に反応させてもよいし、あるいは成分(B1b−1)、(B1b−2)および(B1b−3)を順次(添加は記載の順序に限定されない)添加して反応させてもよい。
トリイソシアネート(B1a)に存在するNCO基に成分(B1b−2)を1モル以上反応させ、残りのNCO基を成分(B1b−1)および(B1b−3)と反応させることが好ましい。トリイソシアネート(B1a)1モルに対して、成分(B1b−1)、(B1b−2)および(B1b−3)が有する活性水素の総和が2.5〜3.5モル、少なくとも3モル、特に3モルであることが好ましい。
トリイソシアネート(B1a)を得るために使用するジイソシアネートとしては、たとえばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート基が脂肪族的に結合したジイソシアネート;たとえばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイシシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート基が芳香族的に結合したジイソシアネートなどがあげられる。
トリイソシアネート(B1a)の例としては、たとえば
Figure 2019043070

などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
少なくとも2種の活性水素含有化合物の組み合わせである(B1b)は、前記のとおり、少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル(B1b−1)および活性水素と自己反応性官能基を有するモノマー(B1b−2)の組合せを含んでいるが、必要に応じて、前記(B1b−1)および(B1b−2)以外の活性水素を有する化合物(B1b−3)をさらに組み合わせてもよい。なお、活性水素を有する基としては、たとえば活性水酸基などの活性水素含有基が例示できる。
パーフルオロポリエーテル(B1b−1)としては、パーフルオロポリエーテル基に加えて、1つの分子末端に1つの水酸基を有するか、あるいは両末端のそれぞれに1つの水酸基を有する化合物が好ましい。
パーフルオロポリエーテル(B1b−1)は、一般式:
Figure 2019043070

(式中、X4はFまたは−CH2OH基;Y4およびZ4は同じかまたは異なりFまたは−CF3;aは1〜16の整数、cは0〜5の整数、b、d、eおよびgは同じかまたは異なり、0〜100の整数、hは0〜16の整数)で示される化合物であることが特に好ましい。
具体例としては、国際公開公報WO03/002628号パンフレットに記載されているものが例示でき、それらのうちでも、パーフルオロポリエーテル(PEPE)部分の数平均分子量が1000以上、特に1500以上で、10000以下、特に5000以下、さらには3000以下のものが好ましい。分子量が小さくなると防汚性や潤滑性が低下する傾向にあり、大きくなりすぎると溶剤に溶けにくくなる傾向にある。また、末端部分も適正な架橋密度が得られる点から片末端アルコール変性体が好ましい。
活性水素と自己反応性官能基を有するモノマー(B1b−2)は、活性水素、特に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよびビニルモノマーであることが好ましい。
モノマー(B1b−2)としては、たとえばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、HO(CH2CH2O)iCOC(R3)C=CH2(R3:H、CH3、i=2〜10)、CH3CH(OH)CH2OCOC(R3)C=CH2(R3:H、CH3;2−ヒドロキシジブチル(メタ)アクリレート)、CH3CH2CH(OH)CH2OCOC(R3)C=CH2(R3:H、CH3;2−ヒドロキシジブチル(メタ)アクリレート)、C6H5OCH2CH(OH)CH2OCOC(R3)C=CH2(R3:H、CH3;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート)、アリルアルコール、HO(CH2)kCH=CH2(k=2〜20)などがあげられる。特に反応生成物の溶剤溶解性に優れる点から2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
任意の成分である活性水素を有する化合物(B1b−3)は、パーフルオロポリエーテル基および自己反応性官能基の両方を有さず、少なくとも1つの活性水素を有する化合物であることが好ましい、化合物(B1b−3)の好ましい例をつぎにあげる。
(B1b−3−1)炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐鎖状炭化水素からなる1価のアルコール、
(B1b−3−2)
Figure 2019043070

(B1b−3−3)炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐鎖状炭化水素からなる2級アミン、
(B1b−3−4)芳香族基を有する2級アミン、
(B1b−3−5)フルオロアルキルアルコール:
Q(CF2)l(CH=CH)m(CH2)oOH
(式中、Qは水素原子、フッ素原子、(CF32CF−基;lは1〜10の整数;mは同じかまたは異なり0または1;oは1〜10の整数)、
(B1b−3−6)ポリアルキレングリコールモノエステル、たとえば式:
4(OCH2CH2pOH、R4(OCH2CH2CH2qOH
(式中、R4は炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素、アセチル基またはアルキルフェノキシ基;pおよびqは1〜20の整数)、
(B1b−3−7)芳香族アルコール
などがあげられる。
このうち特に好ましいものとしては、たとえば
Figure 2019043070

を含み、反応副生成物として
Figure 2019043070

などを含んでもよい。
(B2)特開2005−29743号公報に記載されている含フッ素グラフト重合体または含フッ素ブロック重合体のうちで、CH2=CX1COO−を有する化合物:
すなわち枝ポリマーおよび幹ポリマーを有してなり、枝ポリマーおよび幹ポリマーの少なくとも一方が炭素数1〜8のフルオロアルキル基を有する繰り返し単位からなるブロックを有し、他方がオキシアルキレン基を有する繰り返し単位を有する含フッ素グラフト重合体である。
フルオロアルキル基を有するモノマーとしては、フルオロアルキル基含有ビニルモノマーなどがあげられる。
フルオロアルキル基含有ビニルモノマーは、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートや、フルオロアクリル基を有するα位がハロゲン原子、CF3、CF2HまたはCFH2に置換されたアクリレートであってよい。
フルオロアクリレート基含有アクリレートとしては、たとえばつぎのものが例示できる。
Figure 2019043070

(式中、Rfは炭素数1〜21のフルオロアルキル基;R5は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基;R6は炭素数1〜10のアルキレン基;R7は水素原子、フッ素原子、塩素原子、CF3、CFH2またはメチル基;Arは置換基を有していてもよいアリーレン基;nは1〜10の整数)
フルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの具体例としてはつぎのものが例示できる。
CF3(CF2p(CH2qOCOCH=CH2
CF3(CF2pCH=CH(CH2qOCOCH=CH2
(CF32CF(CF2p(CH2qOCOCH=CH2
H(CF2p(CH2qOCOCH=CH2
CF3CHFCF2(CH2qOCOCH=CH2
CF3(CF2p(CH2qOCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2pCH=CH(CH2qOCOC(CH3)=CH2
(CF32CF(CF2p(CH2qOCOC(CH3)=CH2
H(CF2p(CH2qOCOC(CH3)=CH2
CF3CHFCF2(CH2pOCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2pSO2N(Cs2s+1)(CH2qOCOCH=CH2
CF3(CF2pSO2N(Cs2s+1)(CH2qOCOC(CH3)=CH2
CF3C6F10(CF2pSO2N(CH3)(CH2qOCOCH=CH2
CF3C6F10(CF2pSO2N(CH3)(CH2qOCOC(CH3)=CH2
(CF32CF(CF2pCH2CH(OCOCH3)CH2OCOCH=CH2
(CF32CF(CF2pCH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2
(CF32CF(CF2pCH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
(CF32CF(CF2pCH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2
[p=0〜20、q=1〜10、s=1または2]
Figure 2019043070
上記のフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートは2種以上を混合して用いることももちろん可能である。
オキシアルキレン基を有する繰り返し単位は、オキシアルキレン基を有するビニルモノマーから誘導することができる。オキシアルキレン基を有するビニルモノマーが、枝ポリマーまたは幹ポリマー、例えば、幹ポリマーを構成する。
オキシアルキレン基を有するビニルモノマーは、オキシアルキレン基および炭素−炭素二重結合を有するモノマーである。オキシアルキレン基の炭素数は、2〜6であってよく、オキシアルキレン基はオキシエチレン基またはオキシプロピレン基であることが好ましい。
ポリオキシアルキレン基を有するビニルモノマーの例としては、次のものが挙げられる。
HO(C24O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、n=1〜100]、
HO(C36O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、n=1〜100]、
HO(C24O)m−(C36O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、m=1〜20、n=1〜20]、
H(CH2pO(C24O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、p=1〜20、n=1〜100]、
H(CH2pO(C36O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、p=1〜20、n=1〜100]、
H(CH2pO(C24O)m−(C36O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、p=1〜20、m=1〜20、n=1〜20]、
H(CH2pO(C24O)m−(C36O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、p=1〜20、m=1〜20、n=1〜20]、
Figure 2019043070
Figure 2019043070
Figure 2019043070
Figure 2019043070
[R8:HまたはCH3、m=1〜20、n=1〜20]
枝ポリマーおよび幹ポリマーは、フルオロアルキル基含有ビニルモノマーおよびオキシアルキレン基含有ビニルモノマーに加えて、他の共重合可能なモノマーを含有してもよい。他の共重合可能なモノマーは、付加重合性モノマー(すなわち、炭素−炭素二重結合を有する化合物)であれば何でも良い、他の共重合可能なモノマーは、非フッ素系モノマーまたはフッ素系モノマーのいずれであってもよい。
非フッ素系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレートエステルが挙げられる。(メタ)アクリレートエステルは、(メタ)アクリル酸と、脂肪族アルコール、例えば、一価アルコールまたは多価アルコール(例えば、2価アルコール)とのエステルであってもよい。
非フッ素系モノマーとしては、例えば以下のものを例示できる。
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、アルコキシポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートグリシジルメタクリレート、ヒドロキシプロピルモノメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、グルコシルエチルメタクリレート、メタクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等の(メタ)アクリレート類;スチレン、p−イソプロピルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類。
さらに、エチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、クロロプレン、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルアルキルケトン、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
フッ素系モノマーとしては、
フッ素化オレフィン(炭素数、例えば2〜20)、例えば、CF3(CF2)7CH=CH2
Figure 2019043070

(R9は、H、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基)
などが挙げられる。
本発明において、グラフト重合体は、幹ポリマーのイソシアネート基部分に、枝ポリマーがグラフト化されたグラフト重合体であってよい。
1つの態様において、幹ポリマーは、イソシアネート基含有ビニルモノマーから誘導された繰り返し単位および他の共重合可能なモノマー(例えば、フルオロアルキル基を有するビニルモノマーおよび/またはオキシアルキレン基を有するビニルモノマー、特にオキシアルキレン基を有するビニルモノマー)から誘導された繰り返し単位を有する。イソシアネート基含有ビニルモノマーから誘導された繰り返し単位に存在するイソシアネート基が枝ポリマーの活性水素基と反応して、枝ポリマーと結合することができる。
本明細書において、イソシアネート基含有ビニルモノマーとは、炭素−炭素二重結合およびイソシアネート基を有する重合性化合物を意味する。一般に、イソシアネート基含有ビニルモノマーにおいて、炭素−炭素二重結合およびイソシアネート基のそれぞれの数は1である。通常、イソシアネート基含有ビニルモノマーの分子は、分子の一末端に炭素−炭素二重結合、他末端にイソシアネート基を有する。
イソシアネート基含有ビニルモノマーの例は、
(i)イソシアネート基含有(メタ)アクリレートエステル、
(ii)式:H2C=C(R10)−A1−NCO[R10:Hまたは炭素数1〜20(例えば、1〜10)の直鎖状、分岐状もしくは環状炭化水素基(例えば、アルキル基)、A1:直接結合または炭素数1〜20の炭化水素基]で示されるビニルイソシアネート、または
(iii)イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)と、炭素−炭素二重結合および活性水素を有する化合物(一般に、1つの炭素−炭素二重結合および1つの活性水素含有基を有する化合物)(iii−2)との反応物
である。
イソシアネート基含有(メタ)アクリレートエステル(i)としては、
H2C=C(R11)COO(CH2CH2O)n(CH2m−NCO
[R11:HまたはCH3、n:0〜20、m:1〜20]
(例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート)
が挙げられる。
ビニルイソシアネート(ii)としては、
2C=C(R12)−NCO
[R12:炭素数1〜20(例えば、1〜10)の直鎖状、分枝状もしくは環状炭化水素基(例えば、アルキル基、またはシクロヘキシル基)]、
2C=C(R13)−(CH2n−NCO
[R13:Hまたは炭素数1〜20(例えば、1〜10)の直鎖状、分枝状もしくは環状炭化水素基(例えば、アルキル基、またはシクロヘキシル基)、n:2〜20]、
2C=C(R14)−Ph−C(R152−NCO
[R14:HまたはCH3、R15:HまたはCH3、Ph:フェニレン基]
が挙げられる。
イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネートが挙げられる。
炭素−炭素二重結合および活性水素を有する化合物(iii−2)(以下、「活性水素を有するモノマー」ともいう)としては、
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
HO(CH2CH2O)nCOC(R16)C=CH2
[R16:HまたはCH3、n=2〜20]、
アミノエチル(メタ)アクリレート
が挙げられる。
イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)と、活性水素を有するモノマー(iii−2)の反応は、溶剤(特に、非プロトン性溶剤、例えばエステル系溶剤)中で、要すればジブチルスズジラウレート等の触媒を用いて行ってよい。反応において、活性水素を有するモノマー(iii−2)の量は、イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)に対して1.0〜2.0当量、好ましくは1.0〜1.7当量であってよい。
イソシアネート基含有ビニルモノマーの量は、幹ポリマーに対して、下限が1重量%、さらには2重量%、特に6重量%であってよく、上限が30重量%、さらには20重量%、特に10重量%であってよい。
幹ポリマーは、イソシアネート基含有ビニルモノマーに加えて、フルオロアルキル基含有ビニルモノマーまたはオキシアルキレン基含有ビニルモノマーの少なくとも一方(特に、オキシアルキレン基含有ビニルモノマー)、ならびに要すれば他のモノマー(非フッ素モノマーおよび/またはフッ素モノマー)から構成される。
枝ポリマーは、連鎖移動剤、フルオロアルキル基含有ビニルモノマーまたはオキシアルキレン基含有ビニルモノマーの少なくとも一方(特に、フルオロアルキル基含有ビニルモノマー)、ならびに要すれば他のモノマー(非フッ素モノマーおよび/またはフッ素モノマー)を用いて形成できる。
連鎖移動剤は、両末端に活性水素基を有する連鎖移動剤、例えば活性水素基を有するアルキレンチオール連鎖移動剤または活性水素基を有するアリール連鎖移動剤であってよい。活性水素基としては、OH、NH2、SO3H、NHOH、COOH、SHが挙げられる。アルキレンチオールのアルキレン基の炭素数は、1〜20であってよい。
アルキレンチオール連鎖移動剤の例は次のとおりである。
HS(CH2nOH[nは1〜20、特に2、4、6、11]、
HSCH2COOH、
HSCH2CH(CH3)COOH、
HSCH2CH2SO3Na、
HSCH2CH2SO3H、
Figure 2019043070
アリール連鎖移動剤の例は次のとおりである。
Figure 2019043070
Figure 2019043070
連鎖移動剤の活性水素基は、幹ポリマーのイソシアネート基と反応して−NH−C(=O)−結合(アミド結合)を形成する。活性水素基がOH基である場合は、ウレタン結合(−NH−C(=O)−O−)を形成する。活性水素基がNH2基である場合は、ウレア結合(−NH−C(=O)−NH−)を形成する。連鎖移動剤1.0当量に対して、幹ポリマーのイソシアネート基の量が1.0〜2.5当量、さらには1.0〜2.0当量であることが好ましい。
連鎖移動剤の量は、枝モノマーの量に対してモル比で、0.05〜0.7、好ましくは0.1〜0.6であってよい。枝モノマーを重合して得られた枝ポリマーの1つの末端には、連鎖移動剤が結合している。連鎖移動剤は、枝ポリマーの鎖の長さを調節できる。枝ポリマーの分子の数は、連鎖移動剤1分子に対し3〜25分子、好ましくは4〜20分子のモノマーであってよい。
このうち特に好ましいものとしては、たとえばフルオロアクリル基含有アクリレートとして、C4F9CH2CH2OCOCH=CH2、ポリオキシアルキレン基を有するビニルモノマーとしてポリプロピレングリコールメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコールメタクリレートからなる含フッ素グラフト重合体などがあげられる。
これらの含フッ素表面改質剤(B)のうち、防汚性の点から、特に(B1)が好ましい。
この含フッ素表面改質剤(B)に加えて、防汚性を付与する他の防汚剤を配合してもよい。他の防汚剤としては、含フッ素表面改質剤(B)に含まれない含フッ素ポリエーテル化合物などがあげられる。その場合、力学特性の劣化や、含フッ素ポリマーとの相分離による白濁を考慮して添加量を決める必要がある。具体的には含フッ素ポリエーテル化合物の末端をカルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルコキシシラン基としておけば、被膜中に固定されやすくなる。また、同様のポリエーテル化合物を予め形成した防汚層表面(硬化前または硬化後の被膜)に塗布しても同様の効果がある。
含フッ素組成物は、硬化性含フッ素ポリマー(A)および含フッ素表面改質剤(B)に加えて、
(C)シリカ微粒子、
(D)2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む硬化剤、
(E)活性エネルギー線硬化開始剤、および
(F)溶剤
の少なくとも1種を含んでよい。
シリカ微粒子(C)は屈折率を低下させるために配合される成分である。シリカ微粒子(C)は中空シリカ微粒子であることが好ましい。
好ましいシリカ微粒子として、触媒化成工業(株)製のELCOMが例示できる。
シリカ微粒子の好ましい平均粒子径として転写シートの光学特性が特に良好な点から1〜100nm、さらには10〜80nmである。
含フッ素組成物における配合割合は、(A)成分100質量部に対し、(B)成分は1〜15質量部、さらには1〜10質量部であることが好ましい。この範囲で配合するときに防汚性および耐擦傷性などの特性が特に優れたものになる。(C)成分は、(A)成分100質量部に対し、0〜200質量部、さらに1〜150質量部、特に1〜100質量部であることが好ましい。この範囲で配合するときに防汚性および耐薬品性などの特性が特に優れたものになる。
含フッ素組成物はさらに、(D)2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む硬化剤を含んでいてもよい。
(D)成分は硬化剤としての役割をもつものであり、また2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む化合物であって式(2)に含まれるものは、この(D)成分には含まれない。
硬化剤(D)としては、2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む公知の硬化剤が使用できる。
2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む公知の硬化剤(D1)としては、たとえばジオール、トリオール、テトラオールなどの多価アルコール類のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた多官能アクリル系単量体が一般的に知られている。
具体的には、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのそれぞれの多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基がアクリレート基、メタクリレート基、α−フルオロアクリレート基のいずれかに置き換えられた化合物があげられる。
また、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含む含フッ素アルキル基、含フッ素アルキレン基またはエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基を有する多価アルコールの2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた多官能アクリル系単量体も利用でき、特に硬化物の屈折率を低く維持できる点で好ましい。
具体例としては
Figure 2019043070

(Rfdは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基またはエーテル結合を含む含フッ素アルキル基;RhはHまたは炭素数1〜3のアルキル基)、
Figure 2019043070

(Rfeは炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基またはエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基;RiはHまたは炭素数1〜3のアルキル基)
などの一般式で示される含フッ素多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基またはα−フルオロアクリレート基に置き換えた構造のものが好ましくあげられる。
これらのうち耐擦傷性が良好な点からペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのそれぞれの多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基がアクリレート基、メタクリレート基、α−フルオロアクリレート基のいずれかに置き換えられた化合物、
Figure 2019043070

(RfeおよびRiは前記と同じ)
などで示される含フッ素多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基またはα−フルオロアクリレート基に置き換えた構造のものが好ましい。
硬化剤(D)を配合する場合は、硬化性含フッ素ポリマー(A)100質量部に対して、40質量部以下、好ましくは1〜40質量部、特に1〜30質量部である。多くなりすぎると屈折率が高くなる傾向にある。
含フッ素組成物の硬化方法としては、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、熱により硬化させる方法などが採用できる。これらのうち、耐熱性が低く、熱で変形や分解、着色が起こりやすい基材、たとえば透明樹脂基材などにも適応できる点から、活性エネルギー線硬化開始剤(E)を用いる活性エネルギー線硬化方法が好ましい。
活性エネルギー線硬化開始剤(E)としては、たとえば350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外光線、電子線、X線、γ線などが照射されることによって初めてラジカルやカチオンなどを発生し、硬化性含フッ素ポリマーの炭素−炭素二重結合の硬化(架橋反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外光線でラジカルやカチオンを発生させるもの、特にラジカルを発生するものを使用する。
本発明の組成物における活性エネルギー線硬化開始剤(E)は、硬化性含フッ素ポリマー(A)中の側鎖の炭素−炭素二重結合の種類(ラジカル反応性か、カチオン反応性か)、含フッ素表面改質剤(B)、配合する場合は硬化剤(D)中のα,β−不飽和結合の種類(ラジカル反応性か、カチオン反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長域など)と照射強度などによって適宜選択されるが、一般に紫外線領域の活性エネルギー線を用いてラジカル反応性の炭素−炭素二重結合を有する硬化性含フッ素ポリマー(A)を硬化させる開始剤としては、たとえばつぎのものが例示できる。
アセトフェノン系
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、ヒドロキシプロピオフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパンー1−オンなど
ベンゾイン系
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
ベンゾフェノン系
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーズケトンなど
チオキサンソン類
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
その他
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
含フッ素ポリマーの種類によっては、また上記の活性エネルギー線硬化開始剤の種類によっては、お互い相溶性がわるく、コーティング組成物自体が、または塗布後の被膜が白濁してしまい、透明性や硬化反応性が低下する場合がある。
本発明者らは、活性エネルギー線硬化開始剤(E)自体にフッ素原子、含フッ素有機基を導入することで含フッ素ポリマーとの相溶性が改善できることを見出した。
具体的には、含フッ素アルキル基、含フッ素アルキレン基、エーテル結合を有する含フッ素アルキル基、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基を開始剤中に含むものが好ましく、たとえばOH基を有する開始剤に上記含フッ素有機基を有する含フッ素カルボン酸(多価カルボン酸)などをエステル結合で導入した構造のもの、アミノ基を有する開始剤に含フッ素カルボン酸(多価カルボン酸)をアミド結合で導入した構造のものなどがあげられる。
硬化開始剤(E)に含フッ素有機基を導入することによって、高フッ素化率の含フッ素ポリマーにおいても、相溶性が良好で、硬化反応性や被膜の透明性を改善できる点で好ましい。
また、必要に応じてアミン類、スルホン類、スルフィン類などの光開始助剤を添加してもよい。
また、カチオン反応性の炭素−炭素二重結合を有する場合、硬化開始剤としては、つぎのものが例示できる。
オニウム塩
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
スルホン化合物
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
スルホン酸エステル類
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
その他
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
これらのカチオン反応性の活性エネルギー線硬化開始剤においても、フッ素原子や含フッ素有機基を導入することで上記と同様に含フッ素ポリマーとの相溶性が改善できる。
防汚層(b)を製造するための含フッ素組成物には溶剤(F)を使用してもよく、溶剤に溶解または分散させることによって種々の基材にコーティングし、塗膜を形成することができ、塗膜形成後、活性エネルギー線などの照射によって効率よく硬化でき、硬化被膜が得られる点で好ましい。
溶剤(F)は、硬化性含フッ素ポリマー(A)、含フッ素表面改質剤(B)、硬化剤(D)、活性エネルギー線硬化開始剤(E)および必要に応じて添加する他の硬化剤、レベリング剤、光安定剤などの添加剤が均一に溶解または分散するものであれば特に制限はないが、特に硬化性含フッ素ポリマー(A)、含フッ素表面改質剤(B)および硬化剤(D)を均一に溶解するものが好ましい。この溶剤を使用する態様は特に反射防止の用途など薄層被膜(0.1μm前後)が要求される分野で透明性が高く、均質な被膜を生産性よく得られる点で好ましい。
かかる溶剤(F)としては、たとえばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶剤;2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類あるいはこれらの2種以上の混合溶剤などがあげられる。
またさらに、硬化性含フッ素ポリマー(A)、含フッ素表面改質剤(B)、要すれば硬化剤(D)の溶解性を向上させるために、必要に応じてフッ素系の溶剤を用いてもよい。
フッ素系の溶剤としては、たとえばCH3CCl2F(HCFC−141b)、CF3CF2CHCl2/CClF2CF2CHClF混合物(HCFC−225)、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシ−ノナフルオロブタン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼンなどのほか、
Figure 2019043070

などのフッ素系アルコール類、
ベンゾトリフルオライド、パーフルオロベンゼン、パーフルオロ(トリブチルアミン)、ClCF2CFClCF2CFCl2などがあげられる。
これらフッ素系溶剤は単独でも、またフッ素系溶剤同士、非フッ素系とフッ素系の1種以上との混合溶剤として用いてもよい。
これらのなかでもケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤などが、塗装性、塗布の生産性などの面で好ましいものである。
また、硬化性含フッ素ポリマーを溶解させる際、これら汎用溶剤とともに含フッ素アルコール系溶剤を混合することで、塗布乾燥後のポリマー被膜の基材に対するレベリング性が改善される。
このレベリング性改善効果は、樹脂基材、特にアクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンに対して高く、なかでもポリエチレンテレフタレート基材に対して特に顕著である。
添加する含フッ素系アルコールとしては、沸点が50℃以上、好ましくは80℃以上のもので、硬化性含フッ素ポリマーを溶解させるものであればよい。
たとえば、
Figure 2019043070

などが好ましい具体例である。
含フッ素系アルコールは、それのみで溶剤として用いてもよいが、前述のケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、非フッ素系アルコール溶剤、芳香族系溶剤などの汎用溶剤に加えて用いても効果的である。
混合して用いる場合の添加量は、溶剤全体に対して1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、特に10〜30質量%添加するのが好ましい。
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(A)と含フッ素表面改質剤(B)とシリカ微粒子(C)、要すれば硬化剤(D)と活性エネルギー線硬化開始剤(E)との硬化性含フッ素樹脂組成物、さらに溶剤(F)を含めた含フッ素組成物に、さらに必要に応じて他の硬化剤(G)を添加してもよい。
併用可能な他の硬化剤(G)としては、炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有しかつラジカルまたは酸で重合できるものが好ましく、具体的には前記含フッ素表面改質剤(B)および硬化剤(D)以外のアクリル系モノマーなどのラジカル重合性の単量体、ビニルエーテル系モノマーなどのカチオン重合性の単量体があげられる。これら単量体は、炭素−炭素二重結合を1つ有する単官能であってもよい。
これらの炭素−炭素不飽和結合を有する他の硬化剤(G)は、本発明の組成物中の活性エネルギー線硬化開始剤(E)と光などの活性エネルギー線との反応で生じるラジカルやカチオンで反応し、本発明の組成物中の硬化性含フッ素ポリマー(A)の側鎖の炭素−炭素二重結合や前記含フッ素表面改質剤(B)および硬化剤(D)のα,β−不飽和結合と共重合によって架橋することができるものである。
単官能のアクリル系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸エステル類、α−フルオロアクリル酸、α−フルオロアクリル酸エステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル類のほか、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などを有する(メタ)アクリル酸エステル類などが例示される。
なかでも硬化物の屈折率を低く維持するために、フルオロアルキル基を有するアクリレート系単量体が好ましく、たとえば一般式:
Figure 2019043070

(Xb1はH、CH3またはF;Rfは炭素数2〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表わされる化合物が好ましい。
具体的には、
Figure 2019043070

(Xb1は前記と同じ)
などがあげられる。
また、これら例示の単官能アクリル系単量体を硬化剤として本発明の組成物に用いる場合、なかでも特にα−フルオロアクリレート化合物が硬化反応性が良好な点で好ましい。
本発明の組成物において、活性エネルギー線硬化開始剤(E)の添加量は、硬化性含フッ素ポリマー(A)中の炭素−炭素二重結合の含有量、含フッ素表面改質剤(B)、硬化剤(D)の含有量、上記他の硬化剤(G)の使用の有無や硬化剤の使用量によって、さらには用いる開始剤(E)、活性エネルギー線の種類や、照射エネルギー量(強さと時間など)によって適宜選択されるが、他の硬化剤(G)を使用しない場合では、硬化性含フッ素ポリマー(A)と含フッ素表面改質剤(B)と硬化剤(D)の合計量100質量部に対して0.01〜30質量部、さらには0.05〜20質量部、最も好ましくは、0.1〜10質量部である。
詳しくは、硬化性含フッ素ポリマー(A)中に含まれる炭素−炭素二重結合と含フッ素表面改質剤(B)と硬化剤(D)中のα,β−不飽和結合の合計量の含有量(モル数)に対し、0.05〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは、0.5〜10モル%である。
溶剤(F)の含有量としては、溶解させる固形分の種類、他の硬化剤(G)の使用の有無や使用割合、塗布する基材の種類や目標とする膜厚などによって適宜選択されるが、組成物中の全固形分濃度が0.5〜70質量%、好ましくは1〜50質量%となるように配合するのが好ましい。
本発明の組成物は、前述の化合物のほかに、必要に応じて種々の添加剤を配合してもよい。
そうした添加剤としては、たとえばレベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、防汚剤(シリコーン系、フッ素系)、補強剤などがあげられる。
また、含フッ素組成物は、硬化物の硬度を高める目的で無機化合物の微粒子を配合することもできる。
無機化合物微粒子としては特に限定されないが、屈折率が1.5以下の化合物が好ましい。具体的にはフッ化マグネシウム(屈折率1.38)、オルガノシリカゾル(屈折率1.46)、フッ化アルミニウム(屈折率1.33〜1.39)、フッ化カルシウム(屈折率1.44)、フッ化リチウム(屈折率1.36〜1.37)、フッ化ナトリウム(屈折率1.32〜1.34)、フッ化トリウム(屈折率1.45〜1.50)などの微粒子が望ましい。微粒子の粒径については、低屈折率材料の透明性を確保するために可視光の波長に比べて充分に小さいことが望ましい。具体的には100nm以下、特に50nm以下が好ましい。
無機化合物微粒子を使用する際は、組成物中での分散安定性、低屈折率材料中での密着性などを低下させないために、予め有機分散媒中に分散した有機ゾルの形態で使用するのが望ましい。さらに、組成物中において、無機化合物微粒子の分散安定性、低屈折率材料中での密着性などを向上させるために、予め無機微粒子化合物の表面を各種カップリング剤などを用いて修飾することができる。各種カップリング剤としては、たとえば有機置換された珪素化合物;アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンまたはこれらの混合物などの金属アルコキシド;有機酸の塩;配位性化合物と結合した配位化合物などがあげられる。
防汚層(b)を製造するための含フッ素組成物は、溶剤(F)に対して硬化性含フッ素ポリマー(A)または添加物がディスパージョン状のものでも、溶液状のものでもよいが、均一な薄膜を形成するため、また比較的低温で成膜が可能となる点で、均一な溶液状であることが好ましい。
含フッ素組成物は、硬化性樹脂組成物を基材に塗布したのち乾燥し、紫外線、電子線または放射線などの活性エネルギー線を照射することによって光硬化させることができる。
光硬化すると本発明の硬化性含フッ素ポリマー(A)中の炭素−炭素二重結合が分子間および含フッ素表面改質剤(B)と、硬化剤(D)、(G)が存在すればこれらの硬化剤を介して重合し、ポリマー中の炭素−炭素二重結合が減少または消失する。その結果、樹脂硬度が高くなり、機械的強度が向上したり、耐摩耗性、耐擦傷性が向上したり、さらには硬化前には溶解していた溶剤に対して不溶となるだけでなく、他の数多くの種類の溶剤に対して不溶となる。
防汚層(b)を製造するための含フッ素組成物の各成分のより好ましい組合せとしては、たとえばつぎのものが例示できるが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(例I)
(A)成分:M1のホモポリマーおよび/または−(M1)−(A1)−(A2)−
(B)成分:B1
(C)成分:平均粒子径10〜80nm、屈折率1.25〜1.35
(D)成分:多官能アクリレート化合物、α―フルオロアクリレート化合物
(E)成分:アセトフェノンおよび/またはフッ素を導入したもの
(F)成分:ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、含フッ素アルコール系溶剤、芳香族系溶剤
組成割合((A)成分100質量部(固形分)に対する量)
(B)成分:1〜10質量部
(C)成分:1〜100質量部
(D)成分:0〜30質量部
(E)成分:0〜10質量部
(F)成分:適量
発明の防汚層(b)は、防汚効果のみならず、膜厚が0.03〜0.5μmの反射防止膜としても機能する。
本発明は、硬化性含フッ素ポリマー(A)自体が硬化(架橋)可能な炭素−炭素不飽和結合を有し、それ自体が低屈折率なものであるうえ、さらにシリカ微粒子(C)を配合して屈折率をさらに低下させることができ、さらにまた含フッ素表面改質剤(B)が表面に偏析することによって、透明基材に所定の膜厚で塗布し、要すれば硬化剤を用いて硬化させることによって反射防止効果と、長期間の防汚性が達成でき、しかも高硬度、耐摩耗性、耐擦傷性がさらに改善された防汚層が得られる。かかる含フッ素ポリマー(A)を使用するときは、さらに塗装性(平滑性、膜厚均一性)も良好で、かつ硬化後の被膜に低分子量の単量体成分なども残留しにくく、表面のタック感もなく塗膜性能に優れたものとなる。
硬化は、熱や光(開始剤を含む系において)などの手段を取り得るが、透明な樹脂基材に防汚層を施す場合、高い温度をかけることは、基材の熱劣化、熱変形をおこしやすいため好ましくない。したがって光硬化による硬化が好ましい。
含フッ素組成物を光硬化して、防汚層を得る方法としては、含フッ素組成物を基材に塗布し、乾燥等により被膜(未硬化)を形成したのち、紫外線、電子線、放射線などの活性エネルギー線を照射することによって硬化被膜を得る方法が採用され、光照射は、空気中、窒素などの不活性ガス気流下のいずれの条件下で行なってもよい。なかでも、不活性ガス気流下で光照射する方法が、硬化反応性が良好な点で好ましく、より高い硬度の被膜が得られる。
また、酸重合性の炭素−炭素二重結合を有する硬化性含フッ素ポリマー(A)を活性エネルギー線の照射により酸を発生する開始剤と組合わせて用いることもでき、光照射時において空気(酸素)などの影響を受けにくく、硬化反応が達成できる点で好ましい。
含フッ素組成物に用いる硬化性含フッ素ポリマーは、前記した具体的例示の中から、硬化性含フッ素ポリマー自体、透明性が高く、非晶性でかつ屈折率が1.40以下のもの、好ましくは1.38以下のものが選ばれる。さらにそのなかから、目標とする硬さ、基材の種類、塗装方法、条件、膜厚、均一性、基材との密着性などに応じて適宜選択して用いることが好ましい。
含フッ素組成物に用いる活性エネルギー線硬化開始剤(E)は、前述の硬化性含フッ素樹脂組成物で例示したものと同じものが利用でき、硬化性含フッ素ポリマー中の炭素−炭素不飽和結合の種類(反応性、含有量)、含フッ素表面改質剤(B)、硬化剤(D)の種類(反応性、含有量)、硬化条件、塗料のポットライフなどを考慮して種類、使用量など、前述の範囲の中から適宜選択できる。
溶剤(F)は、目標とする塗装性、成膜性、膜厚の均一性、塗装の生産性に応じて種類、使用量など前述の例示のなかから適宜選択されるが、透明樹脂基材を溶解させたり、膨潤させたりする溶剤は好ましくない。特にケトン系、酢酸エステル系、アルコール系および芳香族炭化水素系溶剤から選ばれるものが好ましい。
防汚層において、要すれば硬化剤(D)と前述のものと同様の他の硬化剤(G)を併用してもよい。他の硬化剤(G)を併用することにより、硬化被膜の硬度をより高くすることができる。
これらのコーティング組成物を塗布後、含フッ素ポリマーを硬化させたのちの硬化物(被膜)は、屈折率が1.49以下、好ましくは1.45以下であり、さらに1.40以下であることが好ましい。最も好ましくは1.38以下であり、低い方が反射防止効果としてより有利である。
防汚層の屈折率(n1)とコーティング層との屈折率(n2)が|n1―n2|≦0.4の関係を満たすことが好ましい。このような関係を満たすことにより、防汚層12aの反射防止性を高めることができ、反射色を穏やかなものにすることができる。
防汚層の好ましい膜厚は、膜の屈折率や下地の屈折率によって変わるが、0.03〜0.5μmの範囲から選択され、好ましくは0.07〜0.2μm、より好ましくは0.08〜0.12μmである。膜厚が低すぎると可視光における光干渉による反射率の低減化が不充分となり、高すぎると反射率はほぼ空気と膜の界面の反射のみに依存するようになるので、可視光における光干渉による反射率の低減化が不充分となる傾向がある。なかでも適切な膜厚は防汚層を施したのちの物品の反射率の最小値を示す波長が通常420〜720nm、好ましくは520〜620nmとなるように膜厚を設定するのが好ましい。
防汚層(b)を形成する方法として、硬化性含フッ素ポリマーのディスパージョンを塗り、乾燥し、そののち必要に応じて焼成して造膜する方法と、溶液(均一溶液)を塗布し、乾燥する方法がある。薄膜の形成が容易であることから、溶液塗布が好ましい。その際、膜厚を充分にコントロールできるのであれば、公知の塗装法を採用することができる。たとえばロールコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法を採用することができる。このような方法の中から、生産性、膜厚コントロール性、歩留まりなどのバランスを考慮して、最適な塗装法を決定する。フィルム、シートなどに防汚層を形成したのち、これを基材に貼り付けてもよい。
本発明においても、防汚層の基材への密着性を高めるために、シラン化合物を添加してもよい。被膜中に添加するシラン化合物の量は数質量%程度でよい。また、基材表面をシラン化合物で処理しておくことも、密着性の改善のために効果がある。本発明においてはいずれの場合でも、シラン化合物は硬化膜の屈折率をほとんど増加させないため、反射防止効果への悪影響は非常に少ない。
<(c)コーティング層>
コーティング層は、硬化性の化合物を硬化して得られる硬化物である。光などの活性エネルギー線を使用して硬化性の化合物を硬化することが好ましい。硬化性の化合物の例は、モノマー、およびオリゴマーなどのポリマーである。硬化性の化合物の例は、重合性コーティング剤モノマー、または重合性コーティング剤モノマーが重合している樹脂である。樹脂は、一般に液状であり、さらに重合して、硬化できる。
重合性コーティング剤モノマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。重合性コーティングモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系モノマー;ビニルアルコール、酢酸ビニル、ビニルエーテル(例えば、C1−12アルキルビニルエーテル)などのビニルモノマーであってよい。重合性コーティング剤モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってよい。(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、2〜5価アルコール(例えば、C〜C10アルキレンジオールのようなジオール)と(メタ)アクリル酸とのエステル化によって得られる化合物であってよい。
重合性コーティング剤モノマーは、含フッ素化合物または非フッ素化合物である。重合性コーティング剤モノマーは、含ケイ素化合物または非ケイ素化合物である。
重合性コーティング剤モノマーは、1つのエチレン性不飽和二重結合を有する単官能性モノマー、または2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する多官能性モノマーであってよい。
重合性コーティングモノマーは単官能性モノマーであってよい。単官能性モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリオキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヒキサヒドロフタル酸、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、および下記式(i)〜(iii):
Figure 2019043070

[ここで、R11は水素原子またはメチル基を表わし、R12は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基であり、R13は水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基であり、Ar1はフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等の2価の芳香族基であり、sは0〜12、好ましくは1〜8の数である。]
Figure 2019043070

[ここで、R21は水素原子またはメチル基を表し、R22は炭素原子数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基であり、tは1〜8、好ましくは1〜4の数である。]
Figure 2019043070

[ここで、R31は水素原子またはメチル基を表し、R32は炭素原子数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基であり、R33は水素原子またはメチル基を表わし、tは1〜8、好ましくは1〜4の数である、但し、それぞれのR33は同一でも異なっていてもよい。]
で表される化合物等の(メタ)アクリロイル基含有モノマーを挙げることができる。
フッ素原子を有する単官能性モノマーの例は、トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、パーフルオロオクチルブチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレートである。
ケイ素原子を有する単官能性モノマーの例は、
式(iv):
Figure 2019043070

[R41は水素原子またはメチル基であり、R42は炭素数1〜10の分岐もしくは直鎖のアルキレン基であり、R43は炭素数1〜10の分岐もしくは直鎖のアルキル基であり、kは1〜10であり、lは1〜200である。]
で表される末端反応性のポリジメチルシロキサンである。
重合性コーティング剤モノマーは多官能性モノマーであってよい。多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、および下記式(v):
Figure 2019043070

[ここで、R51およびR52は水素原子またはメチル基を表わし、Xは炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等の2価の基であり、p、qは、それぞれ独立に1〜10、好ましくは1〜5の数である。]
で表される化合物等の(メタ)アクリロイル基含有モノマー等の(メタ)アクリロイル基含有モノマーを挙げることができる。
フッ素原子およびケイ素原子を含有しない多官能性モノマーの1つの具体例は、式(vi):
Figure 2019043070

[nは1〜3の数である。]
で表されるビスフェノールAジグリシジルエーテル重合体のアクリル酸エステルである。
ケイ素原子を含有する多官能性モノマーの例は、一般式(vii):
Figure 2019043070

[式中、mは1〜10の数を示し、nは6〜36の数を示し、R61およびR64は、少なくとも2つのアクリレート基(CH2=CHCOO-)を有する基、R62およびR63は二価の有機基を示す。]
で示されるジメチルシロキサン化合物である。
式中、R61およびR64は、
Figure 2019043070

または
Figure 2019043070

であってよく、
62およびR63は、
Figure 2019043070
Figure 2019043070

であってよい。
重合性コーティング剤モノマーは、エポキシ(メタ)アクレリレートまたはウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。エポキシ(メタ)アクレリレートまたはウレタン(メタ)アクリレートは、1つまたは2つ以上のアクリル基を有する。
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応物である。ここで使用されるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、脂肪族又は脂環状オレフィンのエポキシ化物、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ロジン等があげられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール化合物(a)と有機ポリイソシアネート(b)と水酸基含有(メタ)アクリレート(c)との反応物であってよい。
ウレタン(メタ)アクリレートを生成するポリオール化合物(a)としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールベンゼン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類、これらジオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、ダイマー酸等の二塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ジオール類と前記二塩基酸又はこれらの酸無水物類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、ポリカーボネートポリオール類等を挙げることができる。
ウレタン(メタ)アクリレートを生成する有機ポリイソシアネート(b)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
ウレタン(メタ)アクリレートを生成する水酸基含有(メタ)アクリレート(c)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの反応物、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
含フッ素組成物を基材シート(または金型)の上に塗布し、硬化して防汚層を形成した後、コーティング層用の樹脂層をさらに積層してよい。または、防汚性組成物を塗布し、コーティング層用の樹脂を塗布後に、硬化してよい。このコーティング層は好ましくは透明層である。樹脂成形品表面の硬度を保ちつつ、光学製品の場合には透光性を維持するためである。コーティング用樹脂には硬化型樹脂を用いる。硬化型樹脂としては電離放射線硬化型樹脂、熱硬化性樹脂のいずれもが使用できる。コーティング層の厚さは、1〜100μmであってよい。
コーティング層用の電離放射線硬化型樹脂としては、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、および/又は単量体を適宜混合した組成物を用いる。前記プレポリマー、オリゴマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等がある。前記単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ブトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N、N−ジベンジルアミノ)エチル、メタクリル酸(N、N−ジメチルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N、N−ジジエチルアミノ)プロピル等の不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、および/又は、分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等がある。
以上の化合物を必要に応じ1種もしくは2種以上混合して用いるが、樹脂組成物に通常の塗工適性を付与するために、前記プレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、前記単量体および/又はポリチオールを95重量%以下とすることが好ましい。
単量体の選定に際しては、硬化物の可撓性が要求される場合は塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を少なめにしたり、1官能又は2官能アクリレート単量体を用い、比較的低架橋密度の構造とする。また、硬化物の耐熱性、硬度、耐溶剤性等を要求される場合には、塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を多めにしたり、3官能以上のアクリレート系単量体を用い高架橋密度の構造とするのが好ましい。1、2官能単量体と3官能以上の単量体を混合し塗工適性と硬化物の物性とを調整することもできる。以上のような1官能アクリレート系単量体としては、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。2官能アクリレート系単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等が、3官能以上のアクリレート系単量体としてはトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
また、硬化物の可撓性、表面硬度等の物性を調節するために前記プレポリマー、オリゴマー、単量体の少なくとも1種に対して、次のような電離放射線非硬化性樹脂を1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%混合して用いることができる。電離放射線非硬化性樹脂としては、ウレタン系、繊維素系、ポリエステル系、アクリル系、ブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等の熱硬化性樹脂を用いることができ、特に可撓性の点から繊維素系、ウレタン系、ブチラールが好ましい。
特に紫外線で硬化させる場合には前記電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾヘェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルメラウムモノサルファイド、チオキサントン類、および/又は光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることもできる。光重合開始剤の量は、硬化性樹脂組成物100重量部に対して0.1〜5重量部であってよい。
なお、ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線、電子線などが用いられる。紫外線源としては超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等の光源を使用する。電子線源としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を使用し、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを持つ電子を照射する。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン/尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等があり、これらに必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤、体質顔料等を添加する。硬化剤として、通常、イソシアネートが不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂に、アミンがエポキシ樹脂に、メチルエチルケトンパーオキサイド、等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル系樹脂に良く使用される。イソシアネートとしては、2価以上の脂肪族又は芳香族イソシアネートを使用できるが、熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートが望ましい。具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
また、硬化反応を促進するために、必要に応じて塗布後に加熱してもよい。例えば、イソシアネート硬化ウレタン硬化型不飽和ポリエステル系樹脂又はポリウレタン系樹脂の場合は通常40〜80℃で1〜100時間程度、またポリシロキサン樹脂の場合は通常60〜150℃で1〜300分程度である。
コーティング層の厚さは1〜100μmであってよい。
コーティング層(c)の効果は大きく分けて3つあり、防汚層(b)の耐擦傷性を高めたり、基材を保護したり、基材よりも高屈折率の層を加えることにより反射防止効果を高めることにある。防汚層の耐擦傷性を高めるためには特開平7−168005号公報に例示されるような自己修復性のコーティング層を用いればよい。また、基材の保護のためにはハードコートと一般に呼ばれる塗料を用いればよい。ハードコート用には硬化型のアクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコンアルコキシド系化合物の硬化物、金属アルコキシド系化合物の硬化物などが例示できる。これらすべてに熱硬化法が適用できる。アクリル樹脂およびエポキシ樹脂については、光(紫外線)硬化法が生産性の面で好ましい。
CRTやプラズマディスプレイなどでは、装置の特性として表面に静電気がたまりやすい。そこで、上記のようなコーティング層および/または防汚層に導電性を付与する添加剤を混ぜることが好ましい。添加剤としては、−COO−、−NH2、−NH3 +、−NR11a12a13a(ここで、R11a、R12aおよびR13aは、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基など)、−SO3−などのイオン性基を含むポリマー、シリコーン化合物、無機電解質(たとえばNaF、CaF2など)などがあげられる。
また、ほこりの付着を防止する目的で、コーティング層および/または防汚層に帯電防止剤を添加することが好ましい。添加剤としては上記の導電性を付与する添加剤に加え、金属酸化物の微粒子、フルオロアルコキシシラン、界面活性剤(アニオン系、カチオン系、両性系、ノニオン系など)、有機高分子(パイ共役系、固体電解質型、4級アンモニウム型、スルホン酸型など)などがあげられる。
コーティング層に添加する帯電防止剤としては、効果が永続すること、効果が湿度の影響を受けにくいこと、帯電防止効果が高いこと、透明性、屈折率が高いために基材の屈折率を調整できるので反射防止効果を高めることができることなどの理由から、固体電解質型有機高分子、4級アンモニウム型有機高分子、金属酸化物の微粒子(具体的にはアンチモンをドープした酸化錫(ATO)、インジウムを含む酸化錫(ITO)など)などが好ましい。透明性の面ではATOが好ましく、帯電防止効果もしくは導電性の面ではITOが好ましい。また、帯電防止効果が必要ない場合でも、容易に屈折率を調節できるため、これらの添加剤を用いて反射防止効果を高めることもできる。
また、ATO、ITOが光を散乱・吸収しやすいので、光の透過を妨げないためには、コーティング層の厚さはサブミクロン程度であることが好ましい。反射防止効果の波長依存性を小さくし、全波長にわたって反射防止効果を高めるためには、含フッ素ポリマー硬化物の屈折率にもよるが、膜厚は0.05〜0.3μmが好ましい。最適な屈折率も、同様に含フッ素ポリマーの屈折率に依存するが、1.55〜1.95が好ましい。
含フッ素ポリマー硬化被膜に帯電防止性を与えるのであれば、屈折率が高くなりにくく反射防止効果に悪影響が少ないという面から、アルコキシシラン系の帯電防止剤が好ましい。フルオロアルコキシシランは屈折率が高くなる作用がさらに小さく、加えて表面特性が改良される効果も期待できるので、さらに好ましい。
<(d)接着剤層>
本発明の転写シートには、上記コーティング用の透明樹脂層の上に、要すれば、さらに接着剤層(d)が積層される。この接着剤層は、転写シートと樹脂成形品との接着性を向上する機能を有する。接着剤層に用いる樹脂としては、特に制限はなく、通常の転写シートに用いられる樹脂から適宜選択して用いることができる。例えば、ポリエステル−イソシアネート系、ウレタン系、アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、スチレンーブタジエン系、塩化ビニル酢酸ビニル系、エチレンー酢酸ビニル系、ポリエステル系、塩化ゴム系、塩素化ポリプロピレン系など有機溶剤型樹脂、エマルジョン系樹脂の単独またはそれらの2種以上の混合物を主成分とする樹脂から基材に対して適宜選択して採用される。接着剤層は、前記樹脂を有機溶剤や水で希釈して得た塗布液を、浸漬法、スピンコート法、スプレー法等により、前記コーティング層上に塗布し、乾燥して形成される。接着剤層の厚さは、特に制限はなく、通常0.3〜20μm程度の範囲から基材の表面状態などに応じて適宜選択して採用される。
コーティング層の屈折率(n2)と、接着剤層の屈折率(n3)と、転写対象物の屈折率(n4)とが|n2−n3|<0.1及び|n3−n4|<0.1を満たすように、それぞれの層の屈折率差を小さくすることが好ましい。コーティング層の屈折率と接着剤層の屈折率及び転写対象物の屈折率との屈折率差が大きくなると、コーティング層と接着剤層又はコーティング層と転写対象物との界面で生じる反射光の干渉が強くなるため、転写対象物の表面が油染みのようになることがある。
<(e)他の層>
本発明の転写シートには、上記層以外に、要すれば、機能性層を積層してよい。機能性層の例は、離型層、装飾層(図柄層)、帯電防止層などである。
<転写シートの製法>
転写シートは、基材シート(a)上に含フッ素組成物を塗布して、防汚層(b)を形成する工程、
防汚層(b)の上に重合性コーティング剤組成物を塗布して、コーティング層(c)を形成する工程、および
含フッ素組成物および重合性コーティング剤組成物を硬化する工程
を含んでなる、転写シートの製造方法によって製造できる。
塗装法としては、膜厚をコントロールできるのであれば公知の塗装法を採用することができる。
たとえば、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法などが採用でき、基材の種類、形状、生産性、膜厚のコントロール性などを考慮して選択できる。
転写シートは、基材シート(a)上に含フッ素組成物を塗布および硬化して、防汚層(b)を形成する工程、
防汚層(b)の上に重合性コーティング剤組成物を塗布および硬化して、コーティング層(c)を形成する工程、
を含んでなる、転写シートの製造方法によっても製造できる。
塗布は、基材シートの上に含フッ素組成物を0.001〜1μmの厚さ、コーティング剤組成物を1〜100μmの厚さで塗布することが好ましい。
本発明には、コーティング層(c)の硬化の前または後に、コーティング層(c)上に接着剤組成物を塗布し、接着剤層(d)を形成する工程を含む、転写シートの製造方法が含まれる。
本発明の転写シートの製造方法で用いる含フッ素組成物については、先に説明したとおりであるが、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート含有組成物が特に好ましい。
本発明の転写シートは、種々の方法、例えば、インモールド成形、貼付、ロールコートなどによって物品に転写できる。本発明には、転写シートを用いる防汚性樹脂成形品の製造方法が含まれる。成形方法としては、インモールド成形、インサート成形、ロール成形等がある。
本発明の反射防止膜転写加工を施す物品、すなわち基材の種類は特に限定されない。たとえば、ガラス、石材、コンクリート、タイルなどの無機材料;塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの合成樹脂;鉄、アルミ、銅などの金属;木、紙、印刷物、印画紙、絵画などをあげることができる。また、物品の特定部分以外の部分に反射防止膜を施し、その特定部分の形状を反射光によって浮かび上がらせることにより、物品の装飾性を向上することもできる。
基材の中でもアクリル系樹脂、ポリカーボネート、セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン樹脂などの透明樹脂基材、効果的に防汚効果と反射防止効果を発揮できる。
本発明は、以下のような形態の物品に適用した場合に効果的である。
プリズム、レンズシート、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、背面投写型ディスプレイのスクリーン、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品;
ショーウインドーのガラス、ショーケースのガラス、広告用カバー、フォトスタンド用のカバーなどに代表される透明な保護版;
CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、背面投写型ディスプレイなどの保護板;
光磁気ディスク、CD・LD・DVDなどのリードオンリー型光ディスク、PDなどの相転移型光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体;
フォトレジスト、フォトマスク、ペリクル、レチクルなどの半導体製造時のフォトリソグラフィー関連部材;
ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱電灯などの発光体の保護カバー;
上記物品に貼り付けるためのシートまたはフィルム。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。「%」及び「部」は、それぞれ、「重量%」及び「重量部」である。
合成例1(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマーの合成)
反応器に、パーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)
Figure 2019043070
を20g、
[H−(CF2CF23−COO−]2を1.7g入れ、20℃で24時間攪拌を行ったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものを精製し、重合体17.6gを得た。
この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は9000、重量平均分子量は22000であった。
製造例1(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
反応器に、ジエチルエーテル80mL、合成例1で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの5.0gと、ピリジン1.0gを仕込み氷冷し、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの1.2gを滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間攪拌を継続した。反応後、精製した。
このエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、−OOCCF=CH2基含有含フッ素アリルエーテル/OH基含有含フッ素アリルエーテル=50/50モル%の共重合体を含んでいた。
また、NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測された。
得られたα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)にメチルイソブチルケトン(MIBK)を加えた後、エーテルをエバポレーターにより留去し、固形分濃度15.0質量%に調整した(この含フッ素ポリマー溶液を「AR1」と略す)。
得られたポリマー溶液10gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをMIBKに1質量%の濃度に溶かした溶液を1.7g加えて、硬化性フッ素ポリマー組成物を調製した。
製造例2(パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物の合成)
反応器にSUMIDUR N3300(商品名。ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体。住友バイエルウレタン製。NCO基含有率21.9%)144gをHCFC−225の200gに溶解させ、ジブチルスズジラウレート0.2gを加え、空気中室温で攪拌しながら4.5時間かけてDEMNUM[商品名。ダイキン工業(株)製。CF3CF2O−(CF2CF2CF2O)n−CF2CF2CH2OH、n=10.9]
202gをHCF−225の300gに溶かした溶液を滴下し、室温で6時間攪拌した。
30℃〜40℃に加温し、ヒドロキシエチルアクリレート96gを30分間で滴下し6時間攪拌した。IRによってNCOの吸収が完全に消失したのを確認後(生成物の19F−NMR分析からも−CF2CH2OHの消失を確認)、50℃以下の減圧蒸留によりHCFC−225を留去し、つぎの2種類のパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート:
Figure 2019043070
を含む組成物442gを得た(この組成物を「PFPE1」と略す)。
製造例3
製造例1で得たAR1に活性エネルギー線硬化開始剤を入れた硬化性フッ素ポリマー組成物、製造例2で得たPFPE1、充分に攪拌して含フッ素組成物を得た。
実施例1
図2に示すような転写シートを作成した。
含フッ素組成物を厚さ38μmの離型性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材シート11上に塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ約0.10μmの防汚層12を形成した。コーティング層13の形成時も表面にタックの発生がなく、取扱いが容易であった。
紫外線硬化性ハードコート剤(シリカ50部、ウレタンアクリレート50部)のメチルエチルケトン溶液(固形分50%)100部に、ポリメチルメタクリレート50部とメチルエチルケトン450部とを加えて、塗布液とした。この塗布液を防汚層12の上に塗布、乾燥後、紫外線を直接照射することにより硬化し、屈折率1.50及び厚さ3μmのコーティング層13を形成した。
アクリル系樹脂からなる接着剤を、コーティング層13及び図柄層15の上に塗布し、硬化させることにより接着剤層14’を形成した。
以上のようにして、転写シート10’を製作した。
転写シート10’の接着剤層14’がアクリル樹脂板(転写対象物)に接するようにして表面が鏡面状のステンレス鋼板で挟み込んだ。ステンレス鋼板の上から加圧加熱した。加熱後常温に戻し、離型性を有する基材シート11を剥がした。このようにして、転写対象物上に図柄層15及びコーティング層13を介して防汚層12が形成された転写シート10’が転写された。
本発明は、光学製品、自動車部品又は事務機器等の樹脂成形品表面の防汚性を必要とする物品にさまざまに使用できる。物品の例としては、下記のものなどが挙げられる。
プリズム、レンズシート、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、背面投写型ディスプレイのスクリーン、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品;
ショーウインドーのガラス、ショーケースのガラス、広告用カバー、フォトスタンド用のカバーなどに代表される透明な保護版;
CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、背面投写型ディスプレイなどの保護板;
光磁気ディスク、CD・LD・DVDなどのリードオンリー型光ディスク、PDなどの相転移型光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体;
フォトレジスト、フォトマスク、ペリクル、レチクルなどの半導体製造時のフォトリソグラフィー関連部材;
ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱電灯などの発光体の保護カバー;
上記物品に貼り付けるためのシートまたはフィルム。

Claims (8)

  1. 基材シート(a)、防汚層(b)、コーティング層(c)および要すれば接着剤層(d)を有し、
    防汚層(b)は、(A)硬化性含フッ素ポリマーおよび(B)含フッ素表面改質剤を含んでなる含フッ素組成物であり、
    硬化性含フッ素ポリマー(A)は、式(1):
    −(M)−(A)− (1)
    [式中、構造単位Mは、式(M):
    Figure 2019043070

    (式中、XaおよびXbは同じかまたは異なり、HまたはF;XcはH、F、CH3またはCF3;XdおよびXeは同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;m1は0〜3の整数;m2およびm3は同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位;
    構造単位Aは、構造単位Mを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含む含フッ素ポリマーであり、
    含フッ素表面改質剤(B)は、式(2):
    Figure 2019043070

    (式中、X1はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基;R1はケイ素原子を有しないが、環構造、ヘテロ原子および/または官能基は有していてもよい(n1+n4)価の有機基;Rf1はパーフルオロポリエーテル基;R2はアルキル基、フルオロアルキル基、またはCH2=CX2COO−(X2はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基);n1は1〜3の整数;n2は0または1;n3は0〜50;n4は1〜3の整数)で示され、かつフッ素原子を含む含フッ素化合物である転写シート。
  2. 防汚層(b)において、硬化性含フッ素ポリマー(A)におけるMが、式:
    Figure 2019043070
    から誘導される請求項1記載の転写シート。
  3. 防汚層(b)において、含フッ素表面改質剤(B)が、式:
    Figure 2019043070
    で示される化合物を含む請求項1または2に記載の転写シート。
  4. 防汚層(b)において、硬化性含フッ素ポリマー(A)100質量部、含フッ素表面改質剤(B)1〜15質量部である請求項1〜3のいずれか1つに記載の転写シート。
  5. 基材シート(a)上に含フッ素組成物を塗布して、防汚層(b)を形成する工程、
    防汚層(b)の上に重合性コーティング剤組成物を塗布して、コーティング層(c)を形成する工程、および
    含フッ素組成物および重合性コーティング剤組成物を硬化する工程
    を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の転写シートの製造方法。
  6. 基材シート(a)上に含フッ素組成物を塗布および硬化して、防汚層(b)を形成する工程、
    防汚層(b)の上に重合性コーティング剤組成物を塗布および硬化して、コーティング層(c)を形成する工程、
    を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の転写シートの製造方法。
  7. コーティング層(c)の硬化の前または後に、コーティング層(c)上に接着剤組成物を塗布し、接着剤層(d)を形成する工程を含む、請求項5または6に記載の方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の転写シートを用いる、防汚性樹脂成形品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2022122019A (ja) * 2021-02-09 2022-08-22 株式会社ネオス 離型フィルム用コーティング剤、離型フィルム、物品及び離型フィルムの製造方法
WO2022244675A1 (ja) * 2021-05-18 2022-11-24 信越化学工業株式会社 含フッ素アクリル組成物、含フッ素活性エネルギー線硬化性組成物及び物品
CN116194225A (zh) * 2020-09-16 2023-05-30 Agc株式会社 组合物、带表面层的基材、带表面层的基材的制造方法、化合物和化合物的制造方法

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