JPWO2004106521A1 - イヌcyp1a2遺伝子多型 - Google Patents

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Abstract

イヌからDNA試料を得、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基に該当する塩基を決定することにより、薬物代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザーであるか、又は、プアー・メタボライザーであるかを検出する方法を開示する。 前記方法によれば、イヌ(特にはビーグル犬)における薬理効果試験及び毒性試験の実施に先立ち、使用される個体のCYP1A2の遺伝子診断を迅速に実施し、正常な代謝能力を持つ群(エクステンスィブ・メタボライザー群)、又は、薬物代謝能力が低い群(プアー・メタボライザー群)に、簡便に群分けすることができる。

Description

本発明は、医薬品の試験に用いるイヌ(特にはビーグル犬)のCYP1A2遺伝子の一塩基多型(single nucleotide polymorphism;以下、SNPと称する)決定に基づく薬剤代謝における個体間変動の検出,医薬品の試験に用いるイヌの選別方法,及び多型領域の配列決定のためのDNAに関する。
薬物代謝とは生体内における酵素による化合物の化学構造の変化である。これら薬物代謝に関与する酵素を薬物代謝酵素という。薬物代謝酵素は、元来、生体内物質(ステロイド、脂肪酸、及び胆汁酸など)の合成又は分解反応を触媒していたものと考えられるが、体内に摂取される薬物又は侵入してくる薬物(異物)を代謝して体外に排出させる役目を持つ。
薬物代謝反応は第I相反応と第II相反応に大別される。第I相反応では、酸化、還元、及び/又は加水分解により、薬物に極性官能基が導入される。第II相反応では、第I相反応で生成した極性官能基にグルクロン酸、硫酸、又はグルタチオンなどの生体成分を結合させる。これらの反応により薬物はより高度な水溶性を獲得し、体外に排泄されやすくなる。
第I相薬物代謝反応の約8割に関与するともいわれる代謝酵素は、チトクロームP450(以下CYP;cytochrome P450の略)と呼ばれている。CYPは分子量約50000(1個のアミノ酸の分子量を平均100とすると約500個のアミノ酸から成る)で、補欠分子族として1個のプロトヘムを有する。CYPの分類と命名法は、CYPの後にファミリー(アラビア数字)及びサブファミリー(アルファベッド)を付けた系統的名称を用いる。すなわち、アミノ酸配列の相同性が40%を超える分子種を一つのファミリーとする。また、55%を超えるグループをサブファミリーとして小分類する。一つのファミリーに、二つ以上のサブファミリーがあるときはアルファベット順にする(例えば、CYP2A、CYP2B、及びCYP2C)。更に、一つのサブファミリー内の複数の分子種は、表示の最後にアラビア数字を入れる(例えば、CYP1A1)。現在のところ、哺乳類の薬物代謝型CYPは1から4ファミリーまでがある(非特許文献1)。
実験用大動物として望まれるイヌの条件としては、(1)形態又は生理反応等が均一であること、(2)遺伝的な欠落を持たないこと、及び(3)両親や生年月日の明らかであること等が挙げられる。現在ある品種でこれらの条件を最もよく満たしてくれるのはビーグル犬であるといえる(非特許文献2)。そのため、ビーグル犬は、探索段階の化合物スクリーニング時において安全毒性及び薬物動態大動物試験で繁用される動物種である。近年、ビーグル犬薬物代謝機構を担うイヌCYPに関しても次第に明らかにされつつある。いくつかのイヌCYPファミリーは多彩なクローニング技術により同定されている。CYP1A1及びCYP1A2(非特許文献3)、CYP2B11(非特許文献4)、CYP2C21及びCYP2C41(非特許文献3及び非特許文献5)、CYP2D15(非特許文献6)、CYP2E1(非特許文献7)、並びにCYP3A12及びCYP3A26(非特許文献8及び非特許文献9)をコードする全又は部分遺伝子は既にクローニングされている。これらCYPの殆どはオープン・リーディング・フレーム(open reading frame;以下、ORFと称する)を含む全配列が明らかにされているが、CYP1A2に関しては部分配列しか明らかになっていない。ヒトにおいてCYP1ファミリーはAとBの二つのサブファミリーがある。3−メチルコラントレンなどの多環式芳香族炭化水素や2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシン(TCDD,ダイオキシン)などで誘導される分子種である。CYP1ファミリーはCYPの中で最もその機構が保存されており、ヒトと実験動物の基質特異性もよく類似している。がん原性多環式芳香族炭化水素又はマイコトキシン類の酸化、又は、芳香族アミン又は複素環式アミンの窒素原子の水酸化などが代表的な反応であり、がん原物質の代謝的活性化との関係がきわめて深い(非特許文献10)。
ビーグル犬においてCYP1A1は肺に微量ながら発現が確認されているが、肝臓には発現していない。CYP1A2は肝臓のみに発現しており、全肝臓CYPの約4%を占める(非特許文献3及び非特許文献11)。
薬物応答性の個体差は薬物代謝能力の差によるものが大きい。薬物代謝能力の差は、最近までは体内動態の違いから見出されてきた。トルブタマイド、デブリソキン、又はスパルテインが典型例として知られている。これらの薬物体内動態の差は、それぞれを代謝するCYP遺伝子の一塩基多型(SNP)による代謝酵素活性の違いに起因することが明らかにされている。すなわち、DNAを構成する4つの塩基の置換により酵素タンパク質のアミノ酸の置換、ストップコドンの導入、又はフレームシフトの形成が生じる。アミノ酸置換では、酵素活性の低下を伴い、ストップコドンの導入及びフレームシフトの形成では、未成熟タンパク質の生成を伴う。そのため、薬物代謝酵素のSNPにより体内動態に大きな個体差が認められる薬物が知られている(非特許文献12)。
ヒトCYP1A2遺伝子のSNPでは、遺伝子上流領域にある−3858G>A SNPを生じるCYP1A2*1C及び−164C>A SNPを生じるCYP1A2*1Fにおいて、CYP1A2の発現量が低下するという報告がある。しかしながら、−164C>Aにおいては、遺伝的要因よりも喫煙による環境的要因により発現量が増加するという報告もある。また、他のヒトCYP1A2遺伝子のSNPに関してはその機能的な意義についてはまだ不明である(非特許文献13、非特許文献14、及び非特許文献15)。
SNPは、CYPにおいて最も広範に検討されているが、CYP以外の酵素又は薬物輸送担体での知見も多い。チオプリンメチル転移酵素(thiopurine S−methyltransferase;以下、TPMTと称する)はいくつかのチオプリン系薬物のメチル化反応を触媒する酵素である。TPMTは、主に肝臓に存在するが、赤血球にも存在が認められることから、赤血球を用いたヒトにおける表現型解析が行われてきた。赤血球中の活性を指標とした場合、白人種の活性は三相性を示し、活性の高い者が88.6%、中間の者が11.1%、及び低い者が0.3%存在する。エバンス(Evans)らは、6−メルカプトプリンにより急性の汎血球減少を起こした白血病患者のTMPTの遺伝子を解析し、酵素活性を消失させるようなアミノ酸置換を伴う点突然変異が3つ(TPMT*2,TPMT*3A及びTPMT*3C)存在することを明らかとした(非特許文献16)。サラバジオン(Salavaggione)らは、同様にイヌTPMTに関しても多型性を検討した。表現型解析の結果は、ヒトと同様の個体差が存在することを示したが、遺伝子診断の結果では有意なTPMTのSNPを発見するには至らなかった(非特許文献17)。
また、薬物輸送担体であるP糖タンパク質(P−glycoprotein;以下、P−gpと称する)をコードするMDR1(multi drug resistance)遺伝子では、ヒトにおいていくつかのSNPが報告されている。ホフマイヤー(Hoffmeyer)らは、白人被験者を対象として、P−gpをコードするMDR1遺伝子の第26エキソン3435番目の塩基がCからTに置換する遺伝子変異に伴い、消化管におけるMDR1発現量が低下し、ジゴキシンの経口投与後の血漿中濃度が高くなることを報告した(非特許文献18)。ミレイ(Mealey)らは,中枢神経系におけるマクロライド系抗生物質アイバメクチンのコリー犬感受性の違いは,mdr1遺伝子に生じるフレームシフト変異によって引き起こされる未成熟P−gpによることを明らかとした(非特許文献19)。
薬物代謝酵素に関与するイヌ関連のSNPでは、ポールソン(Paulson)らが、ビーグル犬においてシクロオキシゲナーゼII阻害剤であるセレコキシブの代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザー(extensive metabolizer;以下、EMと称する)群及びプアー・メタボライザー(poor metabolizer;以下、PMと称する)群に分類することができることを報告している。この多型性にはCYP2Dサブファミリーの関与が示唆されているが、詳細については不明である(非特許文献20)。
宮下(Miyashita)らは、フォスフォジエステラーゼIV阻害薬である4−シクロヘキシル−1−エチル−7−メチルピリド[2,3−d]ピリミジン−2(1H)−オンの血漿中代謝物パターンが異なる2群のビーグル犬が存在することを明らかとしている(非特許文献21)。
東(Azuma)らは、α7−ニコチンアセチルコリンレセプターアゴニストであるGTS−21のビーグル犬における代謝物血漿中濃度に個体差が生じることを報告している。この個体差にCYP1Aの発現量の違いが関与していることを示唆している(非特許文献22)。
三瀬(Mise)らも、東(Azuma)らと同様に、CYP1Aの発現量差によって抗ベンゾジアゼピン系アンタゴニストであるAC−3933のビーグル犬血漿中濃度に個体間でのバラツキが生じることを報告している(非特許文献23)。
しかしながら、ビーグル犬薬物代謝能力の表現型解析の個体差を明らかとするイヌCYPのSNPに関する遺伝子診断での解明はまだなされていない。
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化合物の薬理効果及び毒性の発現が依存する体内動態に大きな影響を与える、代謝能力の個体差が大きいイヌを用いて、医薬品候補である化合物の薬理効果試験及び毒性試験を行っているため、薬理効果及び毒性評価において個体差が大きく、データがばらつくという問題が生じている。
本発明の課題は、イヌ(特にはビーグル犬)における薬理効果試験及び毒性試験の実施に先立ち、使用される個体のCYP1A2遺伝子の遺伝子診断を迅速に実施し、正常な代謝能力を持つ群(EM群)、又は、薬物代謝能力が低い群(PM群)に、群分けすることができる簡便な方法を提供し、遺伝的に均質な個体により薬理効果試験及び毒性試験を実現することができ、正確な薬理効果及び毒性評価を可能とすることにある。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、CYP1A2の特異的基質である試験化合物として4−シクロヘキシル−1−エチル−7−メチルピリド[2,3−D]ピリミジン−2(1H)−オンを選択し、そのEM型及びPM型を決定するイヌCYP1A2遺伝子のSNPを決定し、PM型では、塩基置換により、CYP1A2遺伝子のORFの途中でストップコドンが生じていることを見出した。次いで、血液サンプルより前記SNPの位置の配列を検出する簡便な方法(ASP−PCR法及びダイレクトシークエンス法)を確立し、4−シクロヘキシル−1−エチル−7−メチルピリド[2,3−D]ピリミジン−2(1H)−オンを投与したEM群及びPM群各5例について前記SNP領域の配列を決定し、PM群ではいずれも塩基置換によりストップコドンが生じていること、EM群では、ヘテロ又はホモでストップコドンを生じずにCYP1A2をコードする遺伝子を有していることを確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1]イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を決定することを特徴とするイヌCYP1A2遺伝子多型の検出方法;
[2]イヌから核酸試料を得、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基に該当する塩基を決定する工程を含む、薬物代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザーであるか、又は、プアー・メタボライザーであるかを検出する方法;
[3][2]記載の方法により薬物代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザーであるか、又は、プアー・メタボライザーであるかを検出する工程を含む、医薬品の試験に用いるイヌを選別する方法;
[4][3]記載の方法で選別したエクステンスィブ・メタボライザー群又はプアー・メタボライザー群に被験薬を投与する工程を含む、被験薬の薬理効果及び/又は毒性を試験する方法;
[5]ストリンジェントな条件で、配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号22で表される塩基配列における63番目〜1601番目の塩基からなる配列又はその遺伝子多型を有するイヌCYP1A2遺伝子のセンス鎖若しくはアンチセンス鎖にハイブリダイズし、
(1)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がCである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA、
(2)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がTである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA、及び
(3)(1)若しくは(2)の相補鎖である、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNAからなる群から選択される15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA;
[6]配列番号14又は16で表される塩基配列からなる、[5]記載の一本鎖DNA;並びに
[7]イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を検出するための試薬を有効成分として含有する、イヌCYP1A2の特異的基質である薬物の代謝活性多型の診断剤に関する。
本発明においては、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基に該当する塩基がCからTへと置換するSNPを見い出した。このSNPによりCYP1A2の373番目のアルギニンに対応するコドンがストップコドンへと変化する。従って、T/T遺伝子型を有するイヌではCYP1A2が発現しないため、C/C遺伝子型又はC/T遺伝子型を有するイヌと比較して、CYP1A2で代謝される薬物の血漿中濃度が極めて高くなることが予測される。このことは、本発明の実施例で述べたように、フォスフォジエステラーゼIV阻害剤である化合物Aの体内動態から証明されている。また、本発明においては、このSNPを簡便に検出する方法としてASP−PCR法及びダイレクトシークエンス法を確立した。これらの方法を用いてイヌ65例のCYP1A2の遺伝子診断を実施することによりアレル頻度を明らかにした。
本発明で明らかにしたように、イヌCYP1A2には1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)に該当する塩基にストップコドンを生じるSNPが存在し、約15%のイヌがこのSNPをホモで有している。このSNPは化合物Aで認められたように、CYP1A2で代謝される薬物のイヌにおける体内動態の個体差の大きな要因となっている。化合物の薬理効果及び毒性の発現は体内動態に依存している。そのため、前記化合物がCYP1A2で代謝される場合には、薬理効果及び毒性評価においても大きな個体差が生じるものと考えられる。本発明によれば、イヌにおける薬理効果試験及び毒性試験の実施に先立ち、使用される個体のCYP1A2の遺伝子診断を迅速に実施することができる。これにより、遺伝的に均質な個体により薬理効果試験及び毒性試験を実現することができ、本発明以前より正確な薬理効果及び毒性評価が可能となる。
[A]本発明の検出方法及びイヌ選別方法
本発明の検出方法では、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を決定することによりイヌCYP1A2遺伝子多型を検出する。本明細書において「イヌCYP1A2遺伝子の1117番目の塩基に該当する塩基」とは、イヌCYP1A2遺伝子において、「配列番号22で表される塩基配列の1179番目の塩基」に該当する塩基を意味する。イヌCYP1A2の塩基配列としては、種々の塩基配列、例えば、Molecular pharmacology,1990年,第38巻,p.644−651に記載のCYP1A2遺伝子の部分塩基配列、本発明者が本発明において初めて決定した配列番号22で表される塩基配列における63番目〜1601番目の塩基からなる配列、又はそのアレル変異体の塩基配列などが存在する。従って、本発明においては、「配列番号22で表される塩基配列の1179番目の塩基」に該当する塩基とは、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目であれば、前後の配列が配列番号22で表される塩基配列と完全に一致する必要はないことを意味する。
また、本発明の検出方法では、イヌから核酸試料を得、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目、すなわち、第4エキソン87番目の塩基に該当する塩基を決定することにより、薬物代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザー(EM)であるか、又は、プアー・メタボライザー(PM)であるかを検出する。前記塩基が、C/C遺伝子型又はC/T遺伝子型である場合には、EMであると判定することができ、T/T遺伝子型である場合には、PMであると判定することができる。EMとしては、C/C遺伝子型がより好ましい。
また、本発明のイヌ選別方法では、本発明の検出方法によりEM又はPMのいずれであるかを検出し、医薬品の試験に用いるイヌを選別する。
1.イヌの核酸を含む試料の調製
本発明の方法で用いられる核酸試料、好ましくはイヌゲノムDNAを含む試料は、イヌ(特にはビーグル犬)から単離されたあらゆる細胞(但し、生殖細胞を除く)、組織、又は臓器等を材料として調製することができる。前記材料としては,末梢血から分離した白血球又は単核球が好ましく、特に白血球が最も好適である。これらの材料は、生化学検査において通常用いられる方法に従って単離することができる。
例えば、白血球を材料とする場合、まずイヌ(例えば、ビーグル犬)より単離した末梢血から常法に従って白血球を分離する。次いで,得られた白血球にプロテイナーゼKとドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えてタンパク質を分解及び変性させた後、フェノール/クロロホルム抽出を行うことによりゲノムDNA(RNAを含む)を得る。RNAは、必要に応じてRNアーゼにより除去することができる。但し、ゲノムDNAの抽出は、前記方法に限定されず、当該技術分野で周知の方法[例えば、Sambrook,J.et al.(1989):“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Ed.)”Cold Spring Harbor Laboratory,NY]や、市販のDNA抽出キット等を利用して行うこともできる。また、常法で抽出したイヌmRNAからcDNAを製造し、遺伝子多型の検出に用いることもできる。
2.遺伝子多型の検出
次に、得られたイヌ核酸を含む試料から、本発明者らによって解明された、CYP1A2遺伝子1117番目(すなわち、第4エキソンの87番目)の塩基に該当する塩基がCからTへと置換するSNPの遺伝子型を診断する。以下、本発明方法で用いることができる代表的な遺伝子多型検出方法について説明する。
(1)RFLP(制限酵素切断断片長多型)法
遺伝子多型部位が制限酵素認識部位に含まれる場合、その制限酵素の消化により生じるDNA断片の長さの違いから、前記遺伝子多型の検出が可能である。この場合、(a)DNAを制限酵素で分解後、サザンブロットを行う方法と、(b)多型部位を含むDNA断片をPCR増幅後、制限酵素で切断し、電気泳動により切断されるDNA断片の大きさを解析する方法とが挙げられる。
(a)の方法で用いられるプローブとしては、目的の多型部位を含んで、且つその多型部位から5’末端側及び3’末端側にそれぞれ約0.5〜2kbにわたる配列に相当するDNA断片(アイソトープ、ビオチン、又は蛍光色素等で標識されたもの)が好ましい。また、(b)の方法で用いられるPCRプライマーとしては、多型部位を含む約0.05〜4kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
(2)PCR−SSCP(一本鎖DNA高次構造多型解析)法
PCR−SSCP法は、遺伝子多型部位を含むDNA断片をPCRで増幅後、熱変性し、電気泳動により、高次構造の異なる1本鎖DNAを分離する方法[「バイオテクニックス(Biotechniques)」,1994年,第16巻,p.296−297;及び「バイオテクニックス(Biotechniques)」,1996年,第21巻,p.510−514]である。遺伝子多型の有無により、1本鎖DNAの泳動距離が異なるため、そのパターンを解析することにより、多型のタイピングが可能である。タイピングの標準とするために、予め多型部位の塩基配列が確認されているDNA試料を、PCRの際の鋳型DNAとして、被験試料と同時に用いることが好ましい。PCR増幅用プライマーとしては,5’末端を蛍光標識した、多型部位を含む約50〜500bpのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
(3)ASO(Allele specific oligonucleotide)ハイブリダイゼーション法
ASOハイブリダイゼーション法は、遺伝子多型部位を含むDNA断片を支持体(例えば、ナイロンフィルター等)にドットブロットし、それぞれの遺伝子多型に対応したプローブとのハイブリダイゼーション後、そのプローブのTm値(溶解温度:melting temperature)に準じた洗浄操作を行い、多型を検出(ミスマッチがあればハイブリッドが外れる)する方法[「クリニカ・ケミカ・アクタ;インターナショナル・ジャーナル・オブ・クリニカル・ケミストリー(Clinica chimica acta;international journal of clinical chemistry)」,1990年,第189巻,p.153−157]である。プローブとしては、15〜25塩基程度の合成オリゴヌクレオチド(シグナルを得るためには、ラジオアイソトープ、ビオチン、又は蛍光色素による標識が必要)が好ましい。
(4)ダイレクトシークエンス法
ダイレクトシークエンス法は、遺伝子多型部位を含むDNA断片をPCR増幅した後、増幅されたDNAの塩基配列を直接ダイデオキシ法により解析する方法[「バイオテクニックス(Biotechniques)」,1991年,第11巻,p.246−249]である。この方法で用いられるPCRプライマーは、好ましくは、多型部位を含む約0.05〜4kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドである。また、シークエンスプライマーとしては、好ましくは、多型部位から50〜300ヌクレオチド程度5’末端側の位置に相当する15〜30塩基のオリゴヌクレオチドを用いる。
(5)ASP−PCR(Allele specific primer−PCR)法
PCRでは、鋳型DNAにプライマーがアニールした後、DNAポリメラーゼにより5’末端側から3’末端側に相補鎖DNAが合成される。プライマーの3’末端塩基にミスマッチがあると、PCRの効率が低下し、電気泳動による検出が不可能になる。ASP−PCR法は、その3’末端塩基が検出しようとする変異塩基に相補的になるように設計されたプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物の有無で遺伝子多型を検出する方法[「ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic acids research)」,1991年,第19巻,p.3561−3567;及び「ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic acids research)」,1992年,第20巻,p.4831−4837]である。この方法で用いられるPCRプライマーは、一方は、3’末端に多型部位が位置するように設計された、好ましくは、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドであり、もう一方は、好ましくは、多型部位から0.05〜2kb程度離れた部分の15〜30塩基のオリゴヌクレオチドである。
(6)変性剤濃度勾配ゲル電気泳動[Denaturing gradient gel electrophoresis(DGGE)]法
DGGE法は、DNA断片中の、ミスマッチを有するヘテロデュプレックスが、ホモデュプレックスよりも解離が容易であることを利用して遺伝子多型を検出する方法[「バイオテクニックス(Biotechniques)」,1999年,第27巻,p.1016−1018]である。ヘテロデュプレックスは、解離が進むにつれ、ゲル電気泳動における移動度が低下するので、使用するポリアクリルアミドゲル中に尿素及びホルムアミドの密度勾配を設定しておくと、ホモデュプレックスとの移動度の差が更に強調され、ミスマッチを含む2本鎖DNAの存在、すなわち、変異の存在が検出される。この方法で用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜0.5kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
(7)RNアーゼA切断法
RNアーゼA(RNA分解酵素)は、2本鎖RNA又はRNA/DNAコンプレックスを分解せず、1本鎖のRNAのみを分解する特性を有する。従って、多型部位を含むDNA断片をPCR増幅した後、アイソトープ標識したRNAプローブを、変性して1本鎖にしたDNA断片とハイブリダイズさせ、RNアーゼA処理後、電気泳動により分解すれば、変異型とハイブリダイズしたRNAプローブはミスマッチ部位で切断されるため、2本のバンドとして検出することができる[「ディエヌエー・アンド・セル・バイオロジー(DNA and cell biology)」,1995年,第14巻,p.87−94]。この方法で用いられるRNAプローブとしては、多型部位を含む通常15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
(8)化学切断法
多型部位を含むDNA断片をPCRにより増幅後、2本鎖DNAのミスマッチ部位の「C(シトシン)」に対してはヒドロキシルアミン、「T(チミン)」に対してはオスミウムテトラオキシドで別個に修飾し、ピペリジン処理をすると、糖が切断される。標識プローブを用いて2本鎖を形成させ、前記処理を行った後、電気泳動し、プローブのサイズが短くなっていれば変異が検出されたことになる[バイオテクニックス(Biotechniques)」,1996年,第21巻,p.216−218]。この方法で用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜4kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
(9)DOL(Dye−labeled oligonucleotide ligation)法
DOL法は、遺伝子多型を含むDNA断片をPCR増幅した後、蛍光標識された多型部位の直前の塩基まで含むダイプライマーと、それぞれのアレルに特異的な蛍光色素で標識されたダイターミネーターを耐熱性DNAリガーゼで連結させる方法[「ゲノム・リサーチ(Genome research),1998年,第8巻,p.549−556」]である。この方法で用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜2kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
(10)TaqMan PCR法
TaqMan PCR法は、蛍光標識したアレル特異的オリゴヌクレオチド(TaqManプローブ)とTaqDNAポリメラーゼによるPCRを利用した方法[「ジェネティック・アナリシス:バイオモルキュラー・エンジニアリング(Genetic analysis:biomolecular engineering)」,1999年,第14巻,p.143−149;及び「ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー(Journal of clinical microbiology)」,1996年,第34巻,p.2933−2936]である。この方法で用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜2kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。また、TaqManプローブは、多型部位を含む15〜30塩基程度のオリゴヌクレオチドが好ましく、5’末端は蛍光レポーター色素によって標識されており、3’末端はクエンチャー(消光物質)によって標識されている。このプローブを用いることにより、野生型と変異型の塩基変化の検出が可能である。
(11)インベーダー法
インベーダー法では、2種類の非蛍光標識オリゴヌクレオチドと1種類の蛍光標識オリゴヌクレオチドが使用される。非蛍光標識オリゴヌクレオチドの一つは、その5’末端側に、検出しようとする多型部位の存在するゲノム配列(以下、「鋳型」と称する)とは無関係な配列(以下、「フラップ」と称する)を有しており、フラップより3’末端側は、鋳型の多型部位から5’末端側の配列に特異的な相補配列となっている(以下、「アレルプローブ」と称する)。すなわち、アレルプローブの鋳型に特異的な相補配列部位の5’末端は鋳型の多型部位に相当する。もう一つの非蛍光標識オリゴヌクレオチドは、鋳型の多型部位から3’末端側の配列に特異的な相補配列を有する(以下、「インベーダープローブ」と称する)。インベーダープローブの3’末端も鋳型の多型部位に相当するが、鋳型の多型部位の塩基とは相補的ではなくてもよい。蛍光標識オリゴヌクレオチド[以下、「FRET(fluorescence resonance energy transfer)プローブ」と称する]は、3’末端側部分がフラップと相補的な配列であり、5’末端側はパリンドローム配列になっているため、自ら二本鎖を形成している。また、FRETプローブの5’末端近傍は蛍光色素で標識され、5’末端にはその蛍光を打ち消すクエンチャーが結合している。
まず、鋳型にアレルプローブとインベーダープローブをハイブリダイズさせると、アレルプローブと鋳型とが多型部位において相補的である場合は、その多型部位において、鋳型、アレルプローブの5’末端、及びインベーダープローブの3’末端が特殊な構造を形成する。この構造を特異的に認識してエンドヌクレアーゼ活性を表す酵素(以下、「クリベース」と称する)が、アレルプローブからフラップ部分を切り離す。遊離したフラップはFRETプローブの3’末端側とハイブリダイズする。このとき、フラップとFRETプローブとが、FRETプローブのクエンチャーが結合している5’末端の位置において、クリベースに特異的に認識される構造を形成するため、クエンチャーが結合している5’末端ヌクレオチドがクリベースによりFRETプローブから切り離されて、FRETプローブに残った蛍光色素が蛍光を発する。
一方、鋳型配列に変異が存在し、アレルプローブと鋳型とが多型部位において相補的でなく、ミスマッチとなっている場合は、クリベースに特異的に認識される構造が形成されないため、フラップはアレルプローブから切り離されない。このとき、切り離されずにアレルプローブに残ったままのフラップもFRETプローブの3’末端側とハイブリダイズ可能であるが、アレルプローブから切り離されたフラップがハイブリダイズした場合と比較すると、クエンチャーが結合している5’末端ヌクレオチドがクリベースによってFRETプローブから切り離される反応効率が低いため、FRETプローブが発する蛍光強度も低い。以上の原理により、多型の検出が可能となる[「サイエンス(Science)」,1993年,第5109巻,778−783;「ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The journal of biological chemistry)」,1999年,第30巻,p.21387−21394;及び「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature biotechnology)」,1999年,第17巻,p.292−296]。
(12)MALDI−TOF/MS(Matrix assisted laser desorption−time of flight/mass spectrometry)法
MALDI−TOF/MS法は、遺伝子多型のアレルに対応して異なる塩基配列を含む1本鎖オリゴヌクレオチドを合成してその質量を測定し、その差異を質量分析器により検出することによりタイピングする方法[「ゲノム・リサーチ(Genome research),1997年,第7巻,p.378−388」;「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ケミストリー・アンド・クリニカル・バイオケミストリー:ジャーナル・オブ・ザ・フォーラム・オブ・ヨーロピアン・クリニカル・ケミストリー・ソサイエティ(European journal of clinical chemistry and clinical biochemistry:journal of the forum of European clinical chemistry societies)」,1997年,第35巻,p.545−548]である。MALDI−TOF/MS法では、はじめに多型部位を含むDNA断片をPCR増幅し、その後、多型部位に隣接するプライマーを用いた伸張反応により、それぞれのアレルに特異的なDNA伸張反応物をマススペクトルに基づき解析する。このときに用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜0.5kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。また、多型を検出するためのプライマーは、多型部位に隣接した15〜30塩基のオリゴヌクレオチドを用いることが好ましい。
(13)TDI(Template−directed dye−terminator incorporation)法
TDI法は、遺伝子多型を含むDNA断片をPCRで増幅させた後、多型部位の直前に設計されたプライマーを用いて、プライマー伸張反応により、それぞれのアレルに対応する異なる蛍光色素で標識されたダイデオキシヌクレオチドを多型部位に取り込ませる方法で[「プロシィーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイティッド・ステェィト・オブ・アメリカ(Proceedings of the national academy of sciences of the United States of America)」,1997年,第94巻,p.10756−10761]である。プライマー伸張産物は、DNAシークエンサー(ABIプリズム377,アプライドバイオシステム社)などを用いて解析する。このときに用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜1kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
(14)モレキュラー・ビーコン(Molecular beacons)法
モレキュラー・ビーコンは、両末端に発光抑制体(Quencher)と蛍光体(Fluorophore)を持ったオリゴヌクレオチドである。ステム部分が5〜7塩基でループ構造が15〜30塩基のシステムループ構造が好ましい。従って、蛍光体は発光抑制体の働きにより、励起光照射下でも発光しない。一方、ループ構造内の塩基配列と相同なターゲットのDNAとループ構造内の塩基配列がハイブリダイズすると、発光抑制体と蛍光体の距離が離れるために、蛍光体が励起光下で励起し蛍光を発する[「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature biotechnology)」,1998年,第1巻,p.49−53;及び「遺伝子医学」2000年,第4巻,p.46−48]。モレキュラー・ビーコンのステム部分の塩基配列は、ターゲットDNAとは相補的ではない。モレキュラー・ビーコンのステム構造のTm値は、ターゲット領域をPCRで増幅させるときにモレキュラー・ビーコンを反応液にいれて、PCRのアニーリング温度で励起光を当て蛍光を測定すると、モレキュラー・ビーコンがターゲット遺伝子に完全に相同な配列であれば、ハイブリダイズするため蛍光を発する。逆にミスマッチがあれば、モレキュラー・ビーコンはターゲットにハイブリダイズできず、蛍光を発することができない。この方法により遺伝子多型を検出することができる。
(15)ダイナミック・アレル−スペシフィック・ハイブリダイゼーション[Dynamic allele−specific hybridization(DASH)]法
ターゲットDNA(60〜90塩基対)をゲノムDNAからPCRで増幅する際に、末端をビオチン化したプライマーを用いて行う方法[「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature biotechnology)」,1998年,第1巻,p.87−88;及び「遺伝子医学」2000年,第4巻,p.47−48]である。PCR終了後、ビオチン化したプライマー側のストランド(strand)は、ストレプトアビジン(streptavidin)でコーティングされたマイクロタイターウェルに結合する。これに対して、未修飾のプライマー側のストランドは結合することができず、アルカリ溶液でリンスすると除去される。その後、このビオチン化したプライマーのストランドに対して、プローブDNA(好ましくは15〜21塩基)をハイブリダイズさせる。この時に2本鎖DNAに特異的に結合し、蛍光を発する蛍光物質(syber green I dye)を一緒に取り込ませる。その後、この蛍光強度を観察しながら変性(denature)させる。ターゲットDNAとプローブDNAが完全に相補的でなくミスマッチが有ったときには、完全に相補的である場合に比べ、変性し、発光しなくなる温度が低くなる。この温度の違いを観察することにより、遺伝子多型を検出することができる。
(16)パドロック・プローブ(Padlock probe)法
リザルジィ(Lizardi)らによって開発された方法[「ネイチャー・ジェネティックス(Nature genetics)」,1998年,第3巻,p.225−232;及び「遺伝子医学」,2000年,第4巻,p.50−51]である。一本鎖ターゲットDNAにハイブリダイズするとプローブが環状になるように設計したプローブを用い、ターゲットDNAにハイブリダイズした後にDNAリガーゼで結合させて完全な環状にし、その後アルカリホスファターゼ[Calf intestinal alkaline phosphatase(CIAP)]の脱リン酸化酵素でリン酸基を除去する。末端にミスマッチがあり環状になれなかった場合、リン酸基がなくなり環状化できなくなる。この環状DNAに対してプライマー(1)を設計し、DNAポリメラーゼで複製してレプリコン多量体を得る。このレプリコンに対してもプライマー(2)を設計し、この2種類のプライマーを一緒に混ぜてDNAポリメラーゼで反応し、2本鎖DNAを増幅する。プライマー(1)は、ターゲットDNAとは相補的でない部分に設計し、プライマー(2)は、環状になったプローブ(パドロック・プローブ:padlock probe)の末端部分(ターゲットDNA)と相補的な配列(3’末端に遺伝子多型を含む)に設計し、多型検出には3’末端の一塩基置換させたプライマーを用いる。パドロック・プローブに対してローリング・サイクル反応(Rolling circle−reaction:RCA)を改良したハイパーブランチド・ローリング−サークル増幅法(Hyperbranched rolling−circle amplification:HRCA)法を用いて増幅させた後に、パドロック・プローブ内にある制限酵素認識サイトの制限酵素で処理し、電気泳動でバンドの有無を確認する。
(17)UCAN法
UCAN法[タカラ酒造株式会社ホームページ(http://www.takara.co.jp)参照]は、RNAをDNAが両側からはさんだ型のDNA−RNA−DNAプライマー(DRDプライマー)の3’末端のDNAを化学変化させておき、DNAポリメラーゼによる鋳型DNAの複製が起こらないようにしておく。次に、一塩基変換が起こっている可能性のある塩基部位に、RNA部分が結合するように設計したDRDプライマーと鋳型DNAを対合させる。DRDプライマーと鋳型が完全にマッチしている場合のみRNアーゼHにより、対合したDRDプライマーのRNA部分が切断される。この切断によって3’末端が新しく出現するので、DNAポリメラーゼによる伸長反応が進み、鋳型DNAが増幅される。一方,DRDプライマーと鋳型DNAがその場所でマッチしていない場合、つまり、SNPが存在するときは、RNアーゼHがDRDプライマーを切断しないので、DNA増幅が起こらない。この遺伝子増幅の有無を検出することで遺伝子多型を検出することができる。
(18)DNAチップ又はDNAマイクロアレイ
DNAチップ又はDNAマイクロアレイは、多種類の多型部位を含むDNAプローブをガラス基盤上に固定したもので、これに標識した核酸試料をハイブリダイゼーションして、蛍光シグナルによって多型の有無を検出する。一般に、DNAをガラス基盤上で合成していくものをDNAチップ(オリゴDNAチップ)と称し、ガラス基盤上にcDNAを乗せていくものをDNAマイクロアレイと称する。基盤上に固定(又は合成)されるプローブは、オリゴDNAチップであれば、多型部位を含む20塩基程度のオリゴヌクレオチドが好ましく、cDNAマイクロアレイであれば、100〜1500塩基程度の2本鎖DNAが好ましい。
(19)ECA(Electrochemical array)法
ECA法は、DNAの2本鎖に結合するインターカレーターの電気化学的性質を利用した遺伝子タイピング法である。すなわち、多型を含む領域をPCR法により増幅し、基盤に固定化したそれぞれのアレルと相補するプローブとハイブリダイズ後にインターカレーターを作用させる。このとき,プローブに対して完全相補と不完全相補の場合で結合するインターカレーターの量が異なる。ECA法で用いるインターカレーターは、電気化学的性質を有するフェロセンという物質を含有するため、結合したインターカレーターの量に比例して電気的シグナルが異なる.ECA法は、この違いを利用して遺伝子多型を検出する方法[「アナリティカル・ケミストリー(Analytical chemistry)」,2000年,第72巻,p.1334−1341]である。
以上は、本発明で用いることができる代表的な遺伝子多型検出方法であるが、これらに限定されず、他の遺伝子多型検出方法も本発明方法のために利用することができる。また、本発明方法においては、これらの遺伝子多型検出方法を単独で用いても、又は、二つ以上を組み合わせて用いてもよい。後述する実施例では、ASP−PCR法又はダイレクトシークエンス法を用いた本発明方法の具体的実施態様を示す。
[B]本発明の試験方法
本発明の試験方法では、本発明の検出方法により薬物代謝速度がEMか、PMかを検出し、医薬品の試験に用いるイヌを選別し、次いでEM群又はPM群のイヌに被験薬を投与し、被験薬の薬理効果及び/又は毒性を試験する。この際EM群、特にC/C遺伝子型のイヌを用いることがより好ましい。
被験薬の薬理効果を試験する方法は、被験薬の適応症により適宜選択することができる。
毒性を試験する方法としては常法を用いることができ、例えば、ビーグル犬における単回経口投与毒性試験、ビーグル犬における2週間経口投与毒性試験、ビーグル犬における単回静脈内投与毒性試験、ビーグル犬における1週間静脈内投与毒性試験、ビーグル犬における4週間静脈内投与毒性試験、ビーグル犬における1週間静脈内持続投与毒性試験、ビーグル犬における4週間静脈内持続投与毒性試験、ビーグル犬における単回静脈内増量方式投与試験、ビーグル犬における2週間反復静脈内投与毒性試験、ビーグル犬における4週間反復経口投与毒性試験、ビーグル犬における13週間反復経口投与毒性試験、又はビーグル犬における52週間反復経口投与毒性試験等が挙げられる[マーヒン・メイナス(Mahin・Maines)主著「カレント プロトコールズ イン トキシコロジー ボリューム1,2(Current protocols in toxicology volume1,2)」,ジョンウィリィ&ソンズ社(JohnWiley & Sons.Inc.),2001年,p.1.0.1−16.6.5;及び白須泰彦,吐山豊秋編「毒性試験ハンドブック」,株式会社サイエンスフォーラム,1980年5月,p.81−282]。
本発明の試験方法は、イヌの選別と、被験薬の薬理効果及び/又は毒性の試験とを分担して行うこともでき、本発明の方法によりEM群又はPM群に選別されたイヌを入手し、EM群又はPM群のみを用いて被験薬の薬理効果及び/又は毒性を試験する方法も、本発明に含まれる。
[C]本発明の一本鎖DNA及び代謝活性多型の診断剤
本発明の一本鎖DNAは、ストリンジェントな条件で、配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号22で表される塩基配列における63番目〜1601番目の塩基からなる配列又はその遺伝子多型を有するイヌCYP1A2遺伝子のセンス鎖若しくはアンチセンス鎖にハイブリダイズし、
(1)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がCである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA[好ましくは、配列番号14で表される塩基配列からなる一本鎖DNA(すなわち、実施例4で使用したプライマーS07wild)]、
(2)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がTである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA[好ましくは、配列番号16で表される塩基配列からなる一本鎖DNA(すなわち、実施例4で使用したプライマーS07mutant)]、及び
(3)(1)若しくは(2)の相補鎖である、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNAからなる群から選択される、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNAである。
「配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基」とは、配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基であれば、前後の配列が配列番号1又は配列番号22で表される塩基配列と完全に一致する必要はないことを意味する。
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、特に限定されるものではないが、好ましくは、実施例4に記載した反応系(KOD用PCRバッファー最終濃度1X、dNTPミックス最終濃度各0.2mmol/L、硫酸マグネシウム最終濃度1mmol/L、PCRプライマーセット最終濃度各0.3μmol/L、及びKOD−plus−最終濃度0.02Unit)及びPCR反応条件(94℃2分の後、94℃15秒、56℃30秒、及び68℃30秒からなるサイクルを35サイクル行い、更に68℃1.5分)である。
本発明の一本鎖DNAは、本発明方法における、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソンの87番目)の塩基に該当する塩基(つまり、配列番号22で表される塩基配列における1179番目又は配列番号1で表される塩基配列における405番目に該当する塩基)の遺伝子多型の検出において、前記塩基がC又はTのいずれであるかを決定するのに用いることができる。
本発明の一本鎖DNAとして、配列番号14又は16で表される塩基配列からなるDNAが特に好ましい。
また、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目における塩基に該当する塩基を検出するための試薬を有効成分として含有する、イヌCYP1A2の特異的基質である薬物の代謝活性多型の診断剤も本発明に含まれる。検出するための試薬としては、例えば、本発明の一本鎖DNAが含まれる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1:ビーグル犬CYP1A2遺伝子のSNP決定》
本実施例では、以下に示す手順に従って、ビーグル犬肝臓より単離したトータルRNAを鋳型として、RT−PCR(Reverse transcription−polymerase chain reaction)法により、ビーグル犬CYP1A2cDNAの部分塩基配列を同定し、更には一部のビーグル犬CYP1A2遺伝子のSNPを決定した。
すなわち、予備検討試験(後述する実施例7を参照)において群分けされたEM型ビーグル犬A及びPM型ビーグル犬Bの各1例ずつ(計2例)をペントバルビタール50mg/mL/kg静脈内投与麻酔下において安楽死させ、動物解剖後、それぞれの肝臓を摘出した。摘出後、急速凍結させた肝臓よりRNeasy Mini kit(QIAGEN社)を用いて付随のプロトコールに従い、トータルRNAを回収した。
回収したトータルRNAを用いて、500ngトータルRNAを鋳型に逆転写酵素によってRNAからcDNA合成を、RNA LA PCR kit Ver.1.1(宝酒造株式会社)で実施した。逆転写反応における条件を表1に示す。なお、「RNアーゼフリー滅菌水」の容量「XμL」は、RNアーゼフリー滅菌水の量を調整することにより、反応系の総容量を40.0μLにすることを意味する。
Figure 2004106521
続いて、逆転写反応において合成された一本鎖cDNAを鋳型に、DNAポリメラーゼ酵素としてKOD−plus−(東洋紡社)を用いてPCRを実施した。イヌCYP1A2cDNA部分塩基配列を認識するPCRプライマーとしては、プライマーS01(配列番号2)及びプライマーA01(配列番号3)のセット、プライマーS02(配列番号4)及びプライマーA02(配列番号5)のセット、プライマーS03(配列番号6)及びプライマーA03(配列番号7)のセット、並びにプライマーS04(配列番号8)及びプライマーA04(配列番号9)のセットからなる、計4つのPCRプライマーセットを用いた。なお、プライマーは、Easy Oligos(プロリゴ・ジャパン株式会社)を使用した。
PCR反応条件を表2に示す。
Figure 2004106521
PCRの結果、増幅されたDNA断片の大きさは、S01及びA01のプライマーセットからは798bpであり、S02及びA02のプライマーセットからは951bpであり、S03及びA03のプライマーセットからは551bpであり、S04及びA04のプライマーセットからは658bpであった。増幅された各DNA断片は、ExoSAP−IT(USB社)を用いて付随のプロトコールに従い精製した。CYP1A2遺伝子の各多型部位を同定するための塩基配列の決定は、精製したDNA断片をDNAシーケンサー(ABI PRISM 377:アプライドバイオシステムズ社)を用いて常法により解析した。シークエンス解析に用いたプライマーとして、PCRプライマーS01、S02、S03、S04、A01、A02、A03、及びA04を用いた。
その結果、存在することが確認された遺伝子多型を表3にまとめた。なお、塩基配列の番号は、ビーグル犬CYP1A2遺伝子に関する既知の部分塩基配列(Molecular pharmacology,1990年,第38巻,p.644−651)の最初の塩基を1番とする番号とし、前述の既知配列を公知塩基配列とした。
Figure 2004106521
Figure 2004106521
これらSNPの中で、特に既知CYP1A2遺伝子の1087番目の塩基がCからTへと置換されており、アミノ酸がアルギニンからストップコドンに変換するSNPがビーグル犬Bより見いだされたことが、最もPM型ビーグル犬BのCYP1A2の代謝活性能を著しく変化させていると推察された。
《実施例2:5’RACE法を用いたビーグル犬CYP1A2遺伝子5’末端領域の塩基配列同定試験》
本実施例では、以下に示す手順に従って、ビーグル犬肝臓より単離したトータルRNAを鋳型として、5’RACE(5’rapid amplification of cDNA ends)法により、ビーグル犬CYP1A2遺伝子5’末端未同定領域の塩基配列を同定し、開始コドンであるメチオニンからストップコドンまでを含むビーグル犬CYP1A2cDNA全塩基配列を同定した。
すなわち、実施例1において摘出したEM型ビーグル犬Aの肝臓組織の約0.1gを用いて、Invitrogen TRIzol Reagent(Invitrogen社)を用いて付随のプロトコールに従いトータルRNAを抽出した。
摘出後速やかに急速凍結されたビーグル犬肝臓組織約0.1gをすり鉢で細かく粉砕し、Invitrogen TRIzol Reagent(Invitrogen社)1mLに懸濁した。その懸濁液にクロロホルム0.2mLを加え、振とう後、遠心分離し、水層のみ回収し、イソプロパノール沈殿法により、RNAをペレット状にし、RNアーゼフリー水100μLにてペレットを溶解した。
抽出したトータルRNA溶液6.5μL(10μg量)に、10×DNアーゼIリアクションバッファー1μL、1U/μL−DNアーゼI1μL、及びRNアーゼフリー水1.5μLをそれぞれ加え、室温15分間インキュベートした。次に、25mmol/L−EDTA1μLを加え、65℃にて10分間インキュベートした。
Invitrogen GeneRacer Kit(Invitrogen社)のマニュアルに記載されているプロトコールに従い、抽出したトータルRNA3μg量を用いて5’RACE法を実施した。
すなわち、トータルRNAを仔ウシ小腸アルカリホスファターゼ(CIP;Calf Intestine Alkaline Phosphatase)で処理した。CIP処理後、タバコ酸性ピロホスファターゼ(TAP;tobacco acid pyrophosphatase)で処理し、キャップ化されたmRNAからキャップ構造を取り除き、5’末端のリン酸を露出させた。TAPで処理したRNAにGeneRacer RNA Oligo(配列番号19)をT4RNAリガーゼを用いて結合させた。Invitrogen SuperScript III RT(Invitrogen社)を用いて50℃にて60分間処理した。得られたcDNAを鋳型とし、GeneRacer 5’プライマー(配列番号20)と遺伝子特異的プライマー(GSP;gene specific primer)(配列番号21)でPCRを行い、5’末端を増幅した。反応条件を表4に示す。
Figure 2004106521
PCR反応物を電気泳動により分析した結果、大きさが約250bpの増幅されたDNA断片を確認した。確認されたDNA断片をInvitorgen S.N.A.P.Gel Purification Kit(Invitrogen社)を用いて精製した。精製されたDNA断片をInvitrogen TOPO Cloning KitによりベクターpCR4−TOPOにクローニングした。
ベクターpCR4−TOPOにクローニングしたDNA断片のシークエンス解析を行った。その結果、既知のビーグル犬CYP1A2部分塩基配列(Molecular pharmacology,1990年,第38巻,p.644−651)とのオーバーラップが確認された。5’RACE法によって得られた6クローンのコンセンス配列は、配列番号22で表される塩基配列における1番目から170番目までの塩基配列である。
また、ビーグル犬CYP1A2遺伝子に関する既知の部分塩基配列と今回我々が得たCYP1A2部分配列とのオーバーラップにより得られた、実施例1のEM型ビーグル犬AのCYP1A2cDNA全塩基配列は、配列番号22で表される塩基配列であり、オープンリーディングフレーム(ORF)は63番目〜1601番目である。
なお、9例のEM型ビーグル犬についても同様にCYP1A2cDNA全塩基配列を決定した。ビーグル犬Aでは、配列番号22で表される塩基配列における1305、1361、1365、及び1615番目は、それぞれ、C/G、C/T、G/A、及びC/Tとヘテロであったが、他のビーグル犬においてはC、C、G、及びCであった
以上の結果より、実施例1において同定されたストップコドンを生じる既知CYP1A2遺伝子部分塩基配列の1087番目のSNPは、ビーグル犬CYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基がCからTへと置換されており、373番目のアミノ酸がアルギニンからストップコドンに変換するSNPであることが明らかとなった。
《実施例3:CYP1A2遺伝子第4エキソンの87番目の塩基がCからTへと置換するSNP》
続いて、このビーグル犬CYP1A2遺伝子の1117番目の塩基がCからTへと置換するSNPを容易に検出するために、ゲノムDNA上でのSNPの位置を探索した。
本実施例では、以下に示す手順に従って、他の哺乳類CYP1ファミリーのゲノム情報を参考に目的SNPの位置を予測し、ビーグル犬白血球中のゲノムDNAを単離し、PCRを実施後、ダイレクトシークエンス法により目的SNP周辺のゲノムDNA塩基配列を決定した。
すなわち、ヒトCYP1A1(NCBIアクセッション・ナンバー:AF253322)、ヒトCYP1A2(NCBIアクセッション・ナンバー:AF253322)、マウスCYP1A1(NCBIアクセッション・ナンバー:X01681)、マウスCYP1A2(NCBIアクセッション・ナンバー:X01682)、ラットCYP1A2(NCBIアクセッション・ナンバー:K02246)、及びラットCYP1A2(NCBIアクセッション・ナンバー:K03241)のエキソン及びイントロンの大きさを比較すると、イントロンの大きさは各分子種で異なっていたが、エキソンの大きさはそれぞれのエキソンで種を超えて保存されていた。つまり、これらの哺乳類CYP1ファミリーの第1エキソンの大きさは約830bpであり、第2エキソンの大きさは約120bpであり、第3エキソンの大きさは約89bpであり、第4エキソンの大きさは約123bpであり、第5エキソンの大きさは約86bpであり、第6エキソンの大きさは約285bpであった。この情報を踏まえて目的SNPの位置を第4エキソン内に存在すると予測した。
イヌゲノムDNAは、ビーグル犬より無処理注射針で採血した全血をEDTA・2K入り滅菌済みバキュティナ採血管(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)にて確保した。全血よりGenとるくんTM(血液用)(宝酒造株式会社)を用いて付随しているプロトコールに従い、イヌゲノムDNAを抽出した。
抽出したゲノムDNAを鋳型に用いて目的のSNPを含有するゲノムDNA領域を増幅させるために、DNAポリメラーゼ酵素としてKOD−plus−(東洋紡社)を用いてPCRを実施した。プライマーセットとして、第4エキソン前後の第3イントロン及び第4イントロンの塩基配列を明らかにするために、予想される第3エキソン内にセンス方向のプライマーS05(配列番号10)を、第5エキソン内にアンチセンス方向のプライマーA05(配列番号11)を設計した。プライマーはEasy Oligos(プロリゴ・ジャパン株式会社)を使用した。
PCR反応条件を表5に示す。
Figure 2004106521
PCRの結果、S05及びA05のプライマーセットにより増幅されたDNA断片の大きさは1380bpであった。増幅されたDNA断片は、ExoSAP−IT(USB社)を用いて付随のプロトコールに従い精製した。CYP1A2遺伝子の多型部位を同定するための塩基配列の決定は、精製したDNA断片をDNAシーケンサー(ABI PRISM 377:アプライドバイオシステムズ社)を用いて常法により解析した。シークエンス解析に用いたプライマーとして、PCRプライマーS05、A05、S06(配列番号12)、及びA06(配列番号13)を用いた。
その結果、配列番号1で表される塩基配列が決定された。配列番号1で表される塩基配列における405番目のTが目的SNP箇所(すなわち、ビーグル犬CYP1A2遺伝子の1117番目)である。
CYP1A2cDNA塩基配列及び高等真核生物のイントロンの両端には、GT及びAGというコンセサス配列が存在する。「GT−AG」ルールに従って、CYP1A2ゲノムDNAにおける第3イントロン、第4エキソン、及び第4イントロンの塩基配列を同定した。その結果、配列番号1で表される塩基配列において、63番目〜318番目が第3イントロンであり、319番目〜442番目が第4エキソンであり、443番目〜1338番目が第4イントロンであると考えられる。
以上の結果より、目的SNPは、CYP1A2遺伝子の第4エキソン87番目の塩基におけるCからTへの置換であることが判明した。
《実施例4:ASP−PCR法によるSNP検出》
本実施例では、以下に示す手順に従って、ビーグル犬CYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基がCからTへと置換するSNPを検出するため、ビーグル犬白血球中のゲノムDNAを単離し、ASP−PCRを実施後、アガロースゲル電気泳動パターンによってSNPの存在を判定した。
すなわち、イヌゲノムDNAは、実施例3で述べた方法と同一の方法で抽出した。
抽出したゲノムDNAを鋳型に用いてDNAポリメラーゼ酵素としてKOD−plus−(東洋紡社)を用いてPCRを実施した。アレル特異的に反応するPCRプライマーセットとしては、プライマーS07wild(配列番号14)及びプライマーA07(配列番号15)のセット、並びにプライマーS07mutant(配列番号16)及びプライマーA07のセットの、2つのPCRプライマーセットを用いた。配列番号14で表される塩基配列における19番目(C)及び配列番号16で表される塩基配列における19番目(T)が目的SNPを認識する箇所である。プライマーは、Easy Oligos(プロリゴ・ジャパン株式会社)を使用した。
PCR反応条件を表6に示す。
Figure 2004106521
Figure 2004106521
PCRの結果、増幅されたDNA断片の大きさは、S07 wild及びA07プライマーセット、並びにS07 mutant及びA07プライマーセットからはいずれも365bpであった。アガロースゲル電気泳動の結果、CYP1A2遺伝子の第4エキソン87番目の塩基がCからTへと変異するSNPにおいて、Cアレルをホモで持つ場合は、S07 wild及びA07プライマーセットでのみ、DNA断片が増幅された。両アレルをヘテロで持つ場合は、S07 wild及びA07プライマーセット、並びにS07 mutant及びA07プライマーセットのいずれにおいても、DNA断片が増幅された。Tアレルをホモで持つ場合は、S07 mutant及びA07プライマーセットでのみ、DNA断片が増幅された。
《実施例5:ダイレクトシークエンス法によるSNP検出》
本実施例では、以下に示す手順に従って、CYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基がCからTへと置換するSNPを検出するため、ビーグル犬白血球中のゲノムDNAを単離し、PCRを実施後、ダイレクトシークエンスによってSNPの存在を判定した。
すなわち、イヌゲノムDNAは、実施例3で述べた方法と同一の方法で抽出した。
抽出したゲノムDNAを鋳型に用いてDNAポリメラーゼ酵素としてKOD−plus−(東洋紡社)を用いてPCRを実施した。PCRプライマーとして、プライマーS05及びプライマーA07がセットのPCRプライマーセットを用いた。プライマーはEasy Oligos(プロリゴ・ジャパン株式会社)を使用した。
PCR反応条件を表7に示す。
Figure 2004106521
Figure 2004106521
PCRの結果、増幅されたDNA断片の大きさは、S05及びA07プライマーセットからは752bpであった。増幅されたDNA断片は、ExoSAP−IT(USB社)を用いて付随のプロトコールに従い精製した。CYP1A2遺伝子の各多型部位を同定するための塩基配列の決定は、精製したDNA断片をDNAシーケンサー(ABI PRISM 377:アプライドバイオシステムズ社)を用いて常法により解析した。シークエンス解析に用いたプライマーとして、PCRプライマーS08(配列番号17)及びA08(配列番号18)を用いた。
その結果、シークエンス波形によりCYP1A2遺伝子の1117番目の塩基がCからTへと置換するSNPの塩基配列を同定した。Cアレルをホモで持つ場合は、Cの波形のみが検出された。両アレルをヘテロで持つ場合は、C及びT両方の波形が検出された。Tアレルをホモで持つ場合は、Tの波形のみが検出された。
《実施例6:アレル頻度解析》
本実施例では、以下に示す手順に従って、CYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基がCからTへと置換するSNPのアレル頻度を解析するため、実施例4及び実施例5の試験結果を採用した。
ビーグル犬65例のCYP1A2遺伝子1117番目の塩基がCからTへと置換するSNP遺伝子診断結果を、表8に示す。
Figure 2004106521
表8において、CYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソンの87番目)がCである遺伝子をホモで有するものは「C/C」、前記部位がTである遺伝子をホモで有するものは「T/T」、そして、両遺伝子をヘテロで有するものは「C/T」として表記する。表8に示すとおり、C/Cが25例(38%)であり、C/Tが29例(45%)であり、T/Tが11例(17%)であった。アレル頻度は、Cアレルが0.61であり、Tアレルが0.39であった。
《実施例7:ビーグル犬を用いた薬物動態試験》
フォスフォジエステラーゼIV阻害薬である4−シクロヘキシル−1−エチル−7−メチルピリド[2,3−D]ピリミジン−2(1H)−オン(国際公開WO97/19078号パンフレット又は特許第3110765号明細書の実施例7参照;以下、化合物Aと称する)は、ビーグル犬において、MM−1からMM−5までの5種の代謝物に代謝されることが知られている。これらはいずれも一水酸化体であり、第一相薬物代謝反応による生成物と考えられている。宮下(Miyashita)らは、ビーグル犬をMM−2が血漿中主代謝物である群及びMM−1ならびにMM−5が主代謝物である群に大別できることを報告している[「第17回日本薬物動態学会年会ポスター発表」,(日本),2002年,20PE−46]。
本実施例では、以下に示す手順に従って、化合物Aを経口投与後、未変化体及び代謝物の濃度推移を測定する薬物動態試験を実施した。
すなわち、雄性ビーグル犬10例に、0.5%メチルセルロース溶液に懸濁させた化合物A投与液を経口投与(0.3mg/kg)後、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、及び8.0時間後に採血を実施した。血漿を液−液抽出後、未変化体及び代謝物の高性能液体クロマトグラフィーを用いた蛍光検出器による同時測定法(以下、HPLC−FL法と称する)に従い血漿中濃度推移を測定した。
化合物A及び代謝物同時測定HPLC−FL法の条件を表9に、移動相濃度勾配を表10に、それぞれ示す。
Figure 2004106521
Figure 2004106521
Figure 2004106521
本実施例に用いた薬物動態試験用ビーグル犬は、表現型解析の予備検討を行なうことにより選択し、MM−2が主代謝物であるイヌ(I型)を5例、MM−1及びMM−5が主代謝物であるイヌ(II型)を5例用いた。化合物A及び代謝物の血漿中濃度推移について、I型の結果を図1に、II型の結果を図2にそれぞれ示す。
薬物動力学パラメータである最高血漿中濃度到達時間(Tmax)、最高血中薬物濃度(Cmax)、無限大時間までの血中濃度下面積(AUCinf)、及び血中半減期(T1/2)を算出した。結果を表11に示す。
Figure 2004106521
Figure 2004106521
未変化体に関する薬物動力学パラメータは、CmaxではII型はI型の7.5倍であり、AUCinfではII型はI型の9.7倍であった。以上より、I型がEM型であり、II型がPM型であることがわかる。
また、実施例6におけるCYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基がCからTへと置換するSNP遺伝子診断の結果、EM群のビーグル犬はC/C遺伝子型が2例で、C/T遺伝子型が3例であり、一方、PM群のビーグル犬においては5例全てがT/T遺伝子型であった。
本発明によれば、例えば、薬理効果試験又は毒性試験などに使用するイヌの薬剤代謝能力の個体差を、前記試験に先立って検出することができ、化合物の薬理効果又は毒性の評価の用途に適用することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
[図1]I型ビーグル犬における、4−シクロヘキシル−1−エチル−7−メチルピリド[2,3−D]ピリミジン−2(1H)−オン及び代謝物の血漿中濃度推移を示すグラフである。横軸は時間(hr)を、縦軸は血漿中濃度(ng/mL)を示す。また、記号「A」は化合物Aを意味する。
[図2]II型ビーグル犬における、4−シクロヘキシル−1−エチル−7−メチルピリド[2,3−D]ピリミジン−2(1H)−オン及び代謝物の血漿中濃度推移を示すグラフである。横軸は時間(hr)を、縦軸は血漿中濃度(ng/mL)を示す。また、記号「A」は化合物Aを意味する。
配列番号19の配列で表される塩基配列は、人工的に合成したGeneRacer RNA Oligoである。
配列番号20の配列で表される塩基配列は、人工的に合成したGeneRacer 5’primerである。
配列番号23の配列で表されるアミノ酸配列において、415番の位置の記号「Xaa」はGlu又はGlnを意味し、433番の位置の記号「Xaa」はGlyを意味し、435番の位置の記号「Xaa」はAla又はThrを意味する。
(13)TDI(Template-directed dye-terminator incorporation)法
TDI法は、遺伝子多型を含むDNA断片をPCRで増幅させた後、多型部位の直前に設計されたプライマーを用いて、プライマー伸張反応により、それぞれのアレルに対応する異なる蛍光色素で標識されたダイデオキシヌクレオチドを多型部位に取り込ませる方法[「プロシィーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイティッド・ステェィト・オブ・アメリカ(Proceedings of the national academy of sciences of the United States of America)」,1997年,第94巻,p.10756-10761]である。プライマー伸張産物は、DNAシークエンサー(ABIプリズム377,アプライドバイオシステム社)などを用いて解析する。このときに用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜1kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
(14)モレキュラー・ビーコン(Molecular beacons)法
モレキュラー・ビーコンは、両末端に発光抑制体(Quencher)と蛍光体(Fluorophore)を持ったオリゴヌクレオチドである。ステム部分が5〜7塩基でループ構造が15〜30塩基のステムループ構造が好ましい。従って、蛍光体は発光抑制体の働きにより、励起光照射下でも発光しない。一方、ループ構造内の塩基配列と相同なターゲットのDNAとループ構造内の塩基配列がハイブリダイズすると、発光抑制体と蛍光体の距離が離れるために、蛍光体が励起光下で励起し蛍光を発する[「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature biotechnology)」,1998年,第1巻,p.49-53;及び「遺伝子医学」2000年,第4巻,p.46-48]。モレキュラー・ビーコンのステム部分の塩基配列は、ターゲットDNAとは相補的ではない。モレキュラー・ビーコンのステム構造のTm値は、ターゲット領域をPCRで増幅させるときにモレキュラー・ビーコンを反応液にいれて、PCRのアニーリング温度で励起光を当て蛍光を測定すると、モレキュラー・ビーコンがターゲット遺伝子に完全に相同な配列であれば、ハイブリダイズするため蛍光を発する。逆にミスマッチがあれば、モレキュラー・ビーコンはターゲットにハイブリダイズできず、蛍光を発することができない。この方法により遺伝子多型を検出することができる。

Claims (7)

  1. イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を決定することを特徴とする、イヌCYP1A2遺伝子多型の検出方法。
  2. イヌから核酸試料を得、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を決定する工程を含む、薬物代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザーであるか、又は、プアー・メタボライザーであるかを検出する方法。
  3. 請求項2に記載の方法により薬物代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザーであるか、又は、プアー・メタボライザーであるかを検出する工程を含む、医薬品の試験に用いるイヌを選別する方法。
  4. 請求項3に記載の方法で選別したエクステンスィブ・メタボライザー群又はプアー・メタボライザー群に被験薬を投与する工程を含む、被験薬の薬理効果及び/又は毒性を試験する方法。
  5. ストリンジェントな条件で、配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号22で表される塩基配列における63番目〜1601番目の塩基からなる配列又はその遺伝子多型を有するイヌCYP1A2遺伝子のセンス鎖若しくはアンチセンス鎖にハイブリダイズし、
    (1)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がCである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA、
    (2)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がTである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA、及び
    (3)(1)若しくは(2)の相補鎖である、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNAからなる群から選択される、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA。
  6. 配列番号14又は16で表される塩基配列からなる、請求項5に記載の一本鎖DNA。
  7. イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を検出するための試薬を有効成分として含有する、イヌCYP1A2の特異的基質である薬物の代謝活性多型の診断剤。
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