JPWO2004106521A1 - イヌcyp1a2遺伝子多型 - Google Patents
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Abstract
Description
薬物代謝反応は第I相反応と第II相反応に大別される。第I相反応では、酸化、還元、及び/又は加水分解により、薬物に極性官能基が導入される。第II相反応では、第I相反応で生成した極性官能基にグルクロン酸、硫酸、又はグルタチオンなどの生体成分を結合させる。これらの反応により薬物はより高度な水溶性を獲得し、体外に排泄されやすくなる。
ビーグル犬においてCYP1A1は肺に微量ながら発現が確認されているが、肝臓には発現していない。CYP1A2は肝臓のみに発現しており、全肝臓CYPの約4%を占める(非特許文献3及び非特許文献11)。
東(Azuma)らは、α7−ニコチンアセチルコリンレセプターアゴニストであるGTS−21のビーグル犬における代謝物血漿中濃度に個体差が生じることを報告している。この個体差にCYP1Aの発現量の違いが関与していることを示唆している(非特許文献22)。
三瀬(Mise)らも、東(Azuma)らと同様に、CYP1Aの発現量差によって抗ベンゾジアゼピン系アンタゴニストであるAC−3933のビーグル犬血漿中濃度に個体間でのバラツキが生じることを報告している(非特許文献23)。
しかしながら、ビーグル犬薬物代謝能力の表現型解析の個体差を明らかとするイヌCYPのSNPに関する遺伝子診断での解明はまだなされていない。
本発明の課題は、イヌ(特にはビーグル犬)における薬理効果試験及び毒性試験の実施に先立ち、使用される個体のCYP1A2遺伝子の遺伝子診断を迅速に実施し、正常な代謝能力を持つ群(EM群)、又は、薬物代謝能力が低い群(PM群)に、群分けすることができる簡便な方法を提供し、遺伝的に均質な個体により薬理効果試験及び毒性試験を実現することができ、正確な薬理効果及び毒性評価を可能とすることにある。
[1]イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を決定することを特徴とするイヌCYP1A2遺伝子多型の検出方法;
[2]イヌから核酸試料を得、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基に該当する塩基を決定する工程を含む、薬物代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザーであるか、又は、プアー・メタボライザーであるかを検出する方法;
[3][2]記載の方法により薬物代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザーであるか、又は、プアー・メタボライザーであるかを検出する工程を含む、医薬品の試験に用いるイヌを選別する方法;
[4][3]記載の方法で選別したエクステンスィブ・メタボライザー群又はプアー・メタボライザー群に被験薬を投与する工程を含む、被験薬の薬理効果及び/又は毒性を試験する方法;
[5]ストリンジェントな条件で、配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号22で表される塩基配列における63番目〜1601番目の塩基からなる配列又はその遺伝子多型を有するイヌCYP1A2遺伝子のセンス鎖若しくはアンチセンス鎖にハイブリダイズし、
(1)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がCである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA、
(2)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がTである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA、及び
(3)(1)若しくは(2)の相補鎖である、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNAからなる群から選択される15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA;
[6]配列番号14又は16で表される塩基配列からなる、[5]記載の一本鎖DNA;並びに
[7]イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を検出するための試薬を有効成分として含有する、イヌCYP1A2の特異的基質である薬物の代謝活性多型の診断剤に関する。
本発明の検出方法では、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を決定することによりイヌCYP1A2遺伝子多型を検出する。本明細書において「イヌCYP1A2遺伝子の1117番目の塩基に該当する塩基」とは、イヌCYP1A2遺伝子において、「配列番号22で表される塩基配列の1179番目の塩基」に該当する塩基を意味する。イヌCYP1A2の塩基配列としては、種々の塩基配列、例えば、Molecular pharmacology,1990年,第38巻,p.644−651に記載のCYP1A2遺伝子の部分塩基配列、本発明者が本発明において初めて決定した配列番号22で表される塩基配列における63番目〜1601番目の塩基からなる配列、又はそのアレル変異体の塩基配列などが存在する。従って、本発明においては、「配列番号22で表される塩基配列の1179番目の塩基」に該当する塩基とは、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目であれば、前後の配列が配列番号22で表される塩基配列と完全に一致する必要はないことを意味する。
また、本発明のイヌ選別方法では、本発明の検出方法によりEM又はPMのいずれであるかを検出し、医薬品の試験に用いるイヌを選別する。
本発明の方法で用いられる核酸試料、好ましくはイヌゲノムDNAを含む試料は、イヌ(特にはビーグル犬)から単離されたあらゆる細胞(但し、生殖細胞を除く)、組織、又は臓器等を材料として調製することができる。前記材料としては,末梢血から分離した白血球又は単核球が好ましく、特に白血球が最も好適である。これらの材料は、生化学検査において通常用いられる方法に従って単離することができる。
次に、得られたイヌ核酸を含む試料から、本発明者らによって解明された、CYP1A2遺伝子1117番目(すなわち、第4エキソンの87番目)の塩基に該当する塩基がCからTへと置換するSNPの遺伝子型を診断する。以下、本発明方法で用いることができる代表的な遺伝子多型検出方法について説明する。
遺伝子多型部位が制限酵素認識部位に含まれる場合、その制限酵素の消化により生じるDNA断片の長さの違いから、前記遺伝子多型の検出が可能である。この場合、(a)DNAを制限酵素で分解後、サザンブロットを行う方法と、(b)多型部位を含むDNA断片をPCR増幅後、制限酵素で切断し、電気泳動により切断されるDNA断片の大きさを解析する方法とが挙げられる。
(a)の方法で用いられるプローブとしては、目的の多型部位を含んで、且つその多型部位から5’末端側及び3’末端側にそれぞれ約0.5〜2kbにわたる配列に相当するDNA断片(アイソトープ、ビオチン、又は蛍光色素等で標識されたもの)が好ましい。また、(b)の方法で用いられるPCRプライマーとしては、多型部位を含む約0.05〜4kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
PCR−SSCP法は、遺伝子多型部位を含むDNA断片をPCRで増幅後、熱変性し、電気泳動により、高次構造の異なる1本鎖DNAを分離する方法[「バイオテクニックス(Biotechniques)」,1994年,第16巻,p.296−297;及び「バイオテクニックス(Biotechniques)」,1996年,第21巻,p.510−514]である。遺伝子多型の有無により、1本鎖DNAの泳動距離が異なるため、そのパターンを解析することにより、多型のタイピングが可能である。タイピングの標準とするために、予め多型部位の塩基配列が確認されているDNA試料を、PCRの際の鋳型DNAとして、被験試料と同時に用いることが好ましい。PCR増幅用プライマーとしては,5’末端を蛍光標識した、多型部位を含む約50〜500bpのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
ASOハイブリダイゼーション法は、遺伝子多型部位を含むDNA断片を支持体(例えば、ナイロンフィルター等)にドットブロットし、それぞれの遺伝子多型に対応したプローブとのハイブリダイゼーション後、そのプローブのTm値(溶解温度:melting temperature)に準じた洗浄操作を行い、多型を検出(ミスマッチがあればハイブリッドが外れる)する方法[「クリニカ・ケミカ・アクタ;インターナショナル・ジャーナル・オブ・クリニカル・ケミストリー(Clinica chimica acta;international journal of clinical chemistry)」,1990年,第189巻,p.153−157]である。プローブとしては、15〜25塩基程度の合成オリゴヌクレオチド(シグナルを得るためには、ラジオアイソトープ、ビオチン、又は蛍光色素による標識が必要)が好ましい。
ダイレクトシークエンス法は、遺伝子多型部位を含むDNA断片をPCR増幅した後、増幅されたDNAの塩基配列を直接ダイデオキシ法により解析する方法[「バイオテクニックス(Biotechniques)」,1991年,第11巻,p.246−249]である。この方法で用いられるPCRプライマーは、好ましくは、多型部位を含む約0.05〜4kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドである。また、シークエンスプライマーとしては、好ましくは、多型部位から50〜300ヌクレオチド程度5’末端側の位置に相当する15〜30塩基のオリゴヌクレオチドを用いる。
PCRでは、鋳型DNAにプライマーがアニールした後、DNAポリメラーゼにより5’末端側から3’末端側に相補鎖DNAが合成される。プライマーの3’末端塩基にミスマッチがあると、PCRの効率が低下し、電気泳動による検出が不可能になる。ASP−PCR法は、その3’末端塩基が検出しようとする変異塩基に相補的になるように設計されたプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物の有無で遺伝子多型を検出する方法[「ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic acids research)」,1991年,第19巻,p.3561−3567;及び「ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic acids research)」,1992年,第20巻,p.4831−4837]である。この方法で用いられるPCRプライマーは、一方は、3’末端に多型部位が位置するように設計された、好ましくは、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドであり、もう一方は、好ましくは、多型部位から0.05〜2kb程度離れた部分の15〜30塩基のオリゴヌクレオチドである。
DGGE法は、DNA断片中の、ミスマッチを有するヘテロデュプレックスが、ホモデュプレックスよりも解離が容易であることを利用して遺伝子多型を検出する方法[「バイオテクニックス(Biotechniques)」,1999年,第27巻,p.1016−1018]である。ヘテロデュプレックスは、解離が進むにつれ、ゲル電気泳動における移動度が低下するので、使用するポリアクリルアミドゲル中に尿素及びホルムアミドの密度勾配を設定しておくと、ホモデュプレックスとの移動度の差が更に強調され、ミスマッチを含む2本鎖DNAの存在、すなわち、変異の存在が検出される。この方法で用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜0.5kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
RNアーゼA(RNA分解酵素)は、2本鎖RNA又はRNA/DNAコンプレックスを分解せず、1本鎖のRNAのみを分解する特性を有する。従って、多型部位を含むDNA断片をPCR増幅した後、アイソトープ標識したRNAプローブを、変性して1本鎖にしたDNA断片とハイブリダイズさせ、RNアーゼA処理後、電気泳動により分解すれば、変異型とハイブリダイズしたRNAプローブはミスマッチ部位で切断されるため、2本のバンドとして検出することができる[「ディエヌエー・アンド・セル・バイオロジー(DNA and cell biology)」,1995年,第14巻,p.87−94]。この方法で用いられるRNAプローブとしては、多型部位を含む通常15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
多型部位を含むDNA断片をPCRにより増幅後、2本鎖DNAのミスマッチ部位の「C(シトシン)」に対してはヒドロキシルアミン、「T(チミン)」に対してはオスミウムテトラオキシドで別個に修飾し、ピペリジン処理をすると、糖が切断される。標識プローブを用いて2本鎖を形成させ、前記処理を行った後、電気泳動し、プローブのサイズが短くなっていれば変異が検出されたことになる[バイオテクニックス(Biotechniques)」,1996年,第21巻,p.216−218]。この方法で用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜4kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
DOL法は、遺伝子多型を含むDNA断片をPCR増幅した後、蛍光標識された多型部位の直前の塩基まで含むダイプライマーと、それぞれのアレルに特異的な蛍光色素で標識されたダイターミネーターを耐熱性DNAリガーゼで連結させる方法[「ゲノム・リサーチ(Genome research),1998年,第8巻,p.549−556」]である。この方法で用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜2kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
TaqMan PCR法は、蛍光標識したアレル特異的オリゴヌクレオチド(TaqManプローブ)とTaqDNAポリメラーゼによるPCRを利用した方法[「ジェネティック・アナリシス:バイオモルキュラー・エンジニアリング(Genetic analysis:biomolecular engineering)」,1999年,第14巻,p.143−149;及び「ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー(Journal of clinical microbiology)」,1996年,第34巻,p.2933−2936]である。この方法で用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜2kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。また、TaqManプローブは、多型部位を含む15〜30塩基程度のオリゴヌクレオチドが好ましく、5’末端は蛍光レポーター色素によって標識されており、3’末端はクエンチャー(消光物質)によって標識されている。このプローブを用いることにより、野生型と変異型の塩基変化の検出が可能である。
インベーダー法では、2種類の非蛍光標識オリゴヌクレオチドと1種類の蛍光標識オリゴヌクレオチドが使用される。非蛍光標識オリゴヌクレオチドの一つは、その5’末端側に、検出しようとする多型部位の存在するゲノム配列(以下、「鋳型」と称する)とは無関係な配列(以下、「フラップ」と称する)を有しており、フラップより3’末端側は、鋳型の多型部位から5’末端側の配列に特異的な相補配列となっている(以下、「アレルプローブ」と称する)。すなわち、アレルプローブの鋳型に特異的な相補配列部位の5’末端は鋳型の多型部位に相当する。もう一つの非蛍光標識オリゴヌクレオチドは、鋳型の多型部位から3’末端側の配列に特異的な相補配列を有する(以下、「インベーダープローブ」と称する)。インベーダープローブの3’末端も鋳型の多型部位に相当するが、鋳型の多型部位の塩基とは相補的ではなくてもよい。蛍光標識オリゴヌクレオチド[以下、「FRET(fluorescence resonance energy transfer)プローブ」と称する]は、3’末端側部分がフラップと相補的な配列であり、5’末端側はパリンドローム配列になっているため、自ら二本鎖を形成している。また、FRETプローブの5’末端近傍は蛍光色素で標識され、5’末端にはその蛍光を打ち消すクエンチャーが結合している。
MALDI−TOF/MS法は、遺伝子多型のアレルに対応して異なる塩基配列を含む1本鎖オリゴヌクレオチドを合成してその質量を測定し、その差異を質量分析器により検出することによりタイピングする方法[「ゲノム・リサーチ(Genome research),1997年,第7巻,p.378−388」;「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ケミストリー・アンド・クリニカル・バイオケミストリー:ジャーナル・オブ・ザ・フォーラム・オブ・ヨーロピアン・クリニカル・ケミストリー・ソサイエティ(European journal of clinical chemistry and clinical biochemistry:journal of the forum of European clinical chemistry societies)」,1997年,第35巻,p.545−548]である。MALDI−TOF/MS法では、はじめに多型部位を含むDNA断片をPCR増幅し、その後、多型部位に隣接するプライマーを用いた伸張反応により、それぞれのアレルに特異的なDNA伸張反応物をマススペクトルに基づき解析する。このときに用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜0.5kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。また、多型を検出するためのプライマーは、多型部位に隣接した15〜30塩基のオリゴヌクレオチドを用いることが好ましい。
TDI法は、遺伝子多型を含むDNA断片をPCRで増幅させた後、多型部位の直前に設計されたプライマーを用いて、プライマー伸張反応により、それぞれのアレルに対応する異なる蛍光色素で標識されたダイデオキシヌクレオチドを多型部位に取り込ませる方法で[「プロシィーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイティッド・ステェィト・オブ・アメリカ(Proceedings of the national academy of sciences of the United States of America)」,1997年,第94巻,p.10756−10761]である。プライマー伸張産物は、DNAシークエンサー(ABIプリズム377,アプライドバイオシステム社)などを用いて解析する。このときに用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜1kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
モレキュラー・ビーコンは、両末端に発光抑制体(Quencher)と蛍光体(Fluorophore)を持ったオリゴヌクレオチドである。ステム部分が5〜7塩基でループ構造が15〜30塩基のシステムループ構造が好ましい。従って、蛍光体は発光抑制体の働きにより、励起光照射下でも発光しない。一方、ループ構造内の塩基配列と相同なターゲットのDNAとループ構造内の塩基配列がハイブリダイズすると、発光抑制体と蛍光体の距離が離れるために、蛍光体が励起光下で励起し蛍光を発する[「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature biotechnology)」,1998年,第1巻,p.49−53;及び「遺伝子医学」2000年,第4巻,p.46−48]。モレキュラー・ビーコンのステム部分の塩基配列は、ターゲットDNAとは相補的ではない。モレキュラー・ビーコンのステム構造のTm値は、ターゲット領域をPCRで増幅させるときにモレキュラー・ビーコンを反応液にいれて、PCRのアニーリング温度で励起光を当て蛍光を測定すると、モレキュラー・ビーコンがターゲット遺伝子に完全に相同な配列であれば、ハイブリダイズするため蛍光を発する。逆にミスマッチがあれば、モレキュラー・ビーコンはターゲットにハイブリダイズできず、蛍光を発することができない。この方法により遺伝子多型を検出することができる。
ターゲットDNA(60〜90塩基対)をゲノムDNAからPCRで増幅する際に、末端をビオチン化したプライマーを用いて行う方法[「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature biotechnology)」,1998年,第1巻,p.87−88;及び「遺伝子医学」2000年,第4巻,p.47−48]である。PCR終了後、ビオチン化したプライマー側のストランド(strand)は、ストレプトアビジン(streptavidin)でコーティングされたマイクロタイターウェルに結合する。これに対して、未修飾のプライマー側のストランドは結合することができず、アルカリ溶液でリンスすると除去される。その後、このビオチン化したプライマーのストランドに対して、プローブDNA(好ましくは15〜21塩基)をハイブリダイズさせる。この時に2本鎖DNAに特異的に結合し、蛍光を発する蛍光物質(syber green I dye)を一緒に取り込ませる。その後、この蛍光強度を観察しながら変性(denature)させる。ターゲットDNAとプローブDNAが完全に相補的でなくミスマッチが有ったときには、完全に相補的である場合に比べ、変性し、発光しなくなる温度が低くなる。この温度の違いを観察することにより、遺伝子多型を検出することができる。
リザルジィ(Lizardi)らによって開発された方法[「ネイチャー・ジェネティックス(Nature genetics)」,1998年,第3巻,p.225−232;及び「遺伝子医学」,2000年,第4巻,p.50−51]である。一本鎖ターゲットDNAにハイブリダイズするとプローブが環状になるように設計したプローブを用い、ターゲットDNAにハイブリダイズした後にDNAリガーゼで結合させて完全な環状にし、その後アルカリホスファターゼ[Calf intestinal alkaline phosphatase(CIAP)]の脱リン酸化酵素でリン酸基を除去する。末端にミスマッチがあり環状になれなかった場合、リン酸基がなくなり環状化できなくなる。この環状DNAに対してプライマー(1)を設計し、DNAポリメラーゼで複製してレプリコン多量体を得る。このレプリコンに対してもプライマー(2)を設計し、この2種類のプライマーを一緒に混ぜてDNAポリメラーゼで反応し、2本鎖DNAを増幅する。プライマー(1)は、ターゲットDNAとは相補的でない部分に設計し、プライマー(2)は、環状になったプローブ(パドロック・プローブ:padlock probe)の末端部分(ターゲットDNA)と相補的な配列(3’末端に遺伝子多型を含む)に設計し、多型検出には3’末端の一塩基置換させたプライマーを用いる。パドロック・プローブに対してローリング・サイクル反応(Rolling circle−reaction:RCA)を改良したハイパーブランチド・ローリング−サークル増幅法(Hyperbranched rolling−circle amplification:HRCA)法を用いて増幅させた後に、パドロック・プローブ内にある制限酵素認識サイトの制限酵素で処理し、電気泳動でバンドの有無を確認する。
UCAN法[タカラ酒造株式会社ホームページ(http://www.takara.co.jp)参照]は、RNAをDNAが両側からはさんだ型のDNA−RNA−DNAプライマー(DRDプライマー)の3’末端のDNAを化学変化させておき、DNAポリメラーゼによる鋳型DNAの複製が起こらないようにしておく。次に、一塩基変換が起こっている可能性のある塩基部位に、RNA部分が結合するように設計したDRDプライマーと鋳型DNAを対合させる。DRDプライマーと鋳型が完全にマッチしている場合のみRNアーゼHにより、対合したDRDプライマーのRNA部分が切断される。この切断によって3’末端が新しく出現するので、DNAポリメラーゼによる伸長反応が進み、鋳型DNAが増幅される。一方,DRDプライマーと鋳型DNAがその場所でマッチしていない場合、つまり、SNPが存在するときは、RNアーゼHがDRDプライマーを切断しないので、DNA増幅が起こらない。この遺伝子増幅の有無を検出することで遺伝子多型を検出することができる。
DNAチップ又はDNAマイクロアレイは、多種類の多型部位を含むDNAプローブをガラス基盤上に固定したもので、これに標識した核酸試料をハイブリダイゼーションして、蛍光シグナルによって多型の有無を検出する。一般に、DNAをガラス基盤上で合成していくものをDNAチップ(オリゴDNAチップ)と称し、ガラス基盤上にcDNAを乗せていくものをDNAマイクロアレイと称する。基盤上に固定(又は合成)されるプローブは、オリゴDNAチップであれば、多型部位を含む20塩基程度のオリゴヌクレオチドが好ましく、cDNAマイクロアレイであれば、100〜1500塩基程度の2本鎖DNAが好ましい。
ECA法は、DNAの2本鎖に結合するインターカレーターの電気化学的性質を利用した遺伝子タイピング法である。すなわち、多型を含む領域をPCR法により増幅し、基盤に固定化したそれぞれのアレルと相補するプローブとハイブリダイズ後にインターカレーターを作用させる。このとき,プローブに対して完全相補と不完全相補の場合で結合するインターカレーターの量が異なる。ECA法で用いるインターカレーターは、電気化学的性質を有するフェロセンという物質を含有するため、結合したインターカレーターの量に比例して電気的シグナルが異なる.ECA法は、この違いを利用して遺伝子多型を検出する方法[「アナリティカル・ケミストリー(Analytical chemistry)」,2000年,第72巻,p.1334−1341]である。
本発明の試験方法では、本発明の検出方法により薬物代謝速度がEMか、PMかを検出し、医薬品の試験に用いるイヌを選別し、次いでEM群又はPM群のイヌに被験薬を投与し、被験薬の薬理効果及び/又は毒性を試験する。この際EM群、特にC/C遺伝子型のイヌを用いることがより好ましい。
毒性を試験する方法としては常法を用いることができ、例えば、ビーグル犬における単回経口投与毒性試験、ビーグル犬における2週間経口投与毒性試験、ビーグル犬における単回静脈内投与毒性試験、ビーグル犬における1週間静脈内投与毒性試験、ビーグル犬における4週間静脈内投与毒性試験、ビーグル犬における1週間静脈内持続投与毒性試験、ビーグル犬における4週間静脈内持続投与毒性試験、ビーグル犬における単回静脈内増量方式投与試験、ビーグル犬における2週間反復静脈内投与毒性試験、ビーグル犬における4週間反復経口投与毒性試験、ビーグル犬における13週間反復経口投与毒性試験、又はビーグル犬における52週間反復経口投与毒性試験等が挙げられる[マーヒン・メイナス(Mahin・Maines)主著「カレント プロトコールズ イン トキシコロジー ボリューム1,2(Current protocols in toxicology volume1,2)」,ジョンウィリィ&ソンズ社(JohnWiley & Sons.Inc.),2001年,p.1.0.1−16.6.5;及び白須泰彦,吐山豊秋編「毒性試験ハンドブック」,株式会社サイエンスフォーラム,1980年5月,p.81−282]。
本発明の一本鎖DNAは、ストリンジェントな条件で、配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号22で表される塩基配列における63番目〜1601番目の塩基からなる配列又はその遺伝子多型を有するイヌCYP1A2遺伝子のセンス鎖若しくはアンチセンス鎖にハイブリダイズし、
(1)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がCである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA[好ましくは、配列番号14で表される塩基配列からなる一本鎖DNA(すなわち、実施例4で使用したプライマーS07wild)]、
(2)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がTである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA[好ましくは、配列番号16で表される塩基配列からなる一本鎖DNA(すなわち、実施例4で使用したプライマーS07mutant)]、及び
(3)(1)若しくは(2)の相補鎖である、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNAからなる群から選択される、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNAである。
「配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基」とは、配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基であれば、前後の配列が配列番号1又は配列番号22で表される塩基配列と完全に一致する必要はないことを意味する。
本発明の一本鎖DNAとして、配列番号14又は16で表される塩基配列からなるDNAが特に好ましい。
また、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目における塩基に該当する塩基を検出するための試薬を有効成分として含有する、イヌCYP1A2の特異的基質である薬物の代謝活性多型の診断剤も本発明に含まれる。検出するための試薬としては、例えば、本発明の一本鎖DNAが含まれる。
本実施例では、以下に示す手順に従って、ビーグル犬肝臓より単離したトータルRNAを鋳型として、RT−PCR(Reverse transcription−polymerase chain reaction)法により、ビーグル犬CYP1A2cDNAの部分塩基配列を同定し、更には一部のビーグル犬CYP1A2遺伝子のSNPを決定した。
PCR反応条件を表2に示す。
本実施例では、以下に示す手順に従って、ビーグル犬肝臓より単離したトータルRNAを鋳型として、5’RACE(5’rapid amplification of cDNA ends)法により、ビーグル犬CYP1A2遺伝子5’末端未同定領域の塩基配列を同定し、開始コドンであるメチオニンからストップコドンまでを含むビーグル犬CYP1A2cDNA全塩基配列を同定した。
摘出後速やかに急速凍結されたビーグル犬肝臓組織約0.1gをすり鉢で細かく粉砕し、Invitrogen TRIzol Reagent(Invitrogen社)1mLに懸濁した。その懸濁液にクロロホルム0.2mLを加え、振とう後、遠心分離し、水層のみ回収し、イソプロパノール沈殿法により、RNAをペレット状にし、RNアーゼフリー水100μLにてペレットを溶解した。
抽出したトータルRNA溶液6.5μL(10μg量)に、10×DNアーゼIリアクションバッファー1μL、1U/μL−DNアーゼI1μL、及びRNアーゼフリー水1.5μLをそれぞれ加え、室温15分間インキュベートした。次に、25mmol/L−EDTA1μLを加え、65℃にて10分間インキュベートした。
すなわち、トータルRNAを仔ウシ小腸アルカリホスファターゼ(CIP;Calf Intestine Alkaline Phosphatase)で処理した。CIP処理後、タバコ酸性ピロホスファターゼ(TAP;tobacco acid pyrophosphatase)で処理し、キャップ化されたmRNAからキャップ構造を取り除き、5’末端のリン酸を露出させた。TAPで処理したRNAにGeneRacer RNA Oligo(配列番号19)をT4RNAリガーゼを用いて結合させた。Invitrogen SuperScript III RT(Invitrogen社)を用いて50℃にて60分間処理した。得られたcDNAを鋳型とし、GeneRacer 5’プライマー(配列番号20)と遺伝子特異的プライマー(GSP;gene specific primer)(配列番号21)でPCRを行い、5’末端を増幅した。反応条件を表4に示す。
ベクターpCR4−TOPOにクローニングしたDNA断片のシークエンス解析を行った。その結果、既知のビーグル犬CYP1A2部分塩基配列(Molecular pharmacology,1990年,第38巻,p.644−651)とのオーバーラップが確認された。5’RACE法によって得られた6クローンのコンセンス配列は、配列番号22で表される塩基配列における1番目から170番目までの塩基配列である。
また、ビーグル犬CYP1A2遺伝子に関する既知の部分塩基配列と今回我々が得たCYP1A2部分配列とのオーバーラップにより得られた、実施例1のEM型ビーグル犬AのCYP1A2cDNA全塩基配列は、配列番号22で表される塩基配列であり、オープンリーディングフレーム(ORF)は63番目〜1601番目である。
なお、9例のEM型ビーグル犬についても同様にCYP1A2cDNA全塩基配列を決定した。ビーグル犬Aでは、配列番号22で表される塩基配列における1305、1361、1365、及び1615番目は、それぞれ、C/G、C/T、G/A、及びC/Tとヘテロであったが、他のビーグル犬においてはC、C、G、及びCであった
以上の結果より、実施例1において同定されたストップコドンを生じる既知CYP1A2遺伝子部分塩基配列の1087番目のSNPは、ビーグル犬CYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基がCからTへと置換されており、373番目のアミノ酸がアルギニンからストップコドンに変換するSNPであることが明らかとなった。
続いて、このビーグル犬CYP1A2遺伝子の1117番目の塩基がCからTへと置換するSNPを容易に検出するために、ゲノムDNA上でのSNPの位置を探索した。
本実施例では、以下に示す手順に従って、他の哺乳類CYP1ファミリーのゲノム情報を参考に目的SNPの位置を予測し、ビーグル犬白血球中のゲノムDNAを単離し、PCRを実施後、ダイレクトシークエンス法により目的SNP周辺のゲノムDNA塩基配列を決定した。
抽出したゲノムDNAを鋳型に用いて目的のSNPを含有するゲノムDNA領域を増幅させるために、DNAポリメラーゼ酵素としてKOD−plus−(東洋紡社)を用いてPCRを実施した。プライマーセットとして、第4エキソン前後の第3イントロン及び第4イントロンの塩基配列を明らかにするために、予想される第3エキソン内にセンス方向のプライマーS05(配列番号10)を、第5エキソン内にアンチセンス方向のプライマーA05(配列番号11)を設計した。プライマーはEasy Oligos(プロリゴ・ジャパン株式会社)を使用した。
PCR反応条件を表5に示す。
CYP1A2cDNA塩基配列及び高等真核生物のイントロンの両端には、GT及びAGというコンセサス配列が存在する。「GT−AG」ルールに従って、CYP1A2ゲノムDNAにおける第3イントロン、第4エキソン、及び第4イントロンの塩基配列を同定した。その結果、配列番号1で表される塩基配列において、63番目〜318番目が第3イントロンであり、319番目〜442番目が第4エキソンであり、443番目〜1338番目が第4イントロンであると考えられる。
以上の結果より、目的SNPは、CYP1A2遺伝子の第4エキソン87番目の塩基におけるCからTへの置換であることが判明した。
本実施例では、以下に示す手順に従って、ビーグル犬CYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基がCからTへと置換するSNPを検出するため、ビーグル犬白血球中のゲノムDNAを単離し、ASP−PCRを実施後、アガロースゲル電気泳動パターンによってSNPの存在を判定した。
抽出したゲノムDNAを鋳型に用いてDNAポリメラーゼ酵素としてKOD−plus−(東洋紡社)を用いてPCRを実施した。アレル特異的に反応するPCRプライマーセットとしては、プライマーS07wild(配列番号14)及びプライマーA07(配列番号15)のセット、並びにプライマーS07mutant(配列番号16)及びプライマーA07のセットの、2つのPCRプライマーセットを用いた。配列番号14で表される塩基配列における19番目(C)及び配列番号16で表される塩基配列における19番目(T)が目的SNPを認識する箇所である。プライマーは、Easy Oligos(プロリゴ・ジャパン株式会社)を使用した。
PCR反応条件を表6に示す。
本実施例では、以下に示す手順に従って、CYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基がCからTへと置換するSNPを検出するため、ビーグル犬白血球中のゲノムDNAを単離し、PCRを実施後、ダイレクトシークエンスによってSNPの存在を判定した。
抽出したゲノムDNAを鋳型に用いてDNAポリメラーゼ酵素としてKOD−plus−(東洋紡社)を用いてPCRを実施した。PCRプライマーとして、プライマーS05及びプライマーA07がセットのPCRプライマーセットを用いた。プライマーはEasy Oligos(プロリゴ・ジャパン株式会社)を使用した。
PCR反応条件を表7に示す。
本実施例では、以下に示す手順に従って、CYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基がCからTへと置換するSNPのアレル頻度を解析するため、実施例4及び実施例5の試験結果を採用した。
ビーグル犬65例のCYP1A2遺伝子1117番目の塩基がCからTへと置換するSNP遺伝子診断結果を、表8に示す。
フォスフォジエステラーゼIV阻害薬である4−シクロヘキシル−1−エチル−7−メチルピリド[2,3−D]ピリミジン−2(1H)−オン(国際公開WO97/19078号パンフレット又は特許第3110765号明細書の実施例7参照;以下、化合物Aと称する)は、ビーグル犬において、MM−1からMM−5までの5種の代謝物に代謝されることが知られている。これらはいずれも一水酸化体であり、第一相薬物代謝反応による生成物と考えられている。宮下(Miyashita)らは、ビーグル犬をMM−2が血漿中主代謝物である群及びMM−1ならびにMM−5が主代謝物である群に大別できることを報告している[「第17回日本薬物動態学会年会ポスター発表」,(日本),2002年,20PE−46]。
すなわち、雄性ビーグル犬10例に、0.5%メチルセルロース溶液に懸濁させた化合物A投与液を経口投与(0.3mg/kg)後、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、及び8.0時間後に採血を実施した。血漿を液−液抽出後、未変化体及び代謝物の高性能液体クロマトグラフィーを用いた蛍光検出器による同時測定法(以下、HPLC−FL法と称する)に従い血漿中濃度推移を測定した。
化合物A及び代謝物同時測定HPLC−FL法の条件を表9に、移動相濃度勾配を表10に、それぞれ示す。
また、実施例6におけるCYP1A2遺伝子の1117番目(すなわち、第4エキソン87番目)の塩基がCからTへと置換するSNP遺伝子診断の結果、EM群のビーグル犬はC/C遺伝子型が2例で、C/T遺伝子型が3例であり、一方、PM群のビーグル犬においては5例全てがT/T遺伝子型であった。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
[図2]II型ビーグル犬における、4−シクロヘキシル−1−エチル−7−メチルピリド[2,3−D]ピリミジン−2(1H)−オン及び代謝物の血漿中濃度推移を示すグラフである。横軸は時間(hr)を、縦軸は血漿中濃度(ng/mL)を示す。また、記号「A」は化合物Aを意味する。
配列番号20の配列で表される塩基配列は、人工的に合成したGeneRacer 5’primerである。
配列番号23の配列で表されるアミノ酸配列において、415番の位置の記号「Xaa」はGlu又はGlnを意味し、433番の位置の記号「Xaa」はGlyを意味し、435番の位置の記号「Xaa」はAla又はThrを意味する。
TDI法は、遺伝子多型を含むDNA断片をPCRで増幅させた後、多型部位の直前に設計されたプライマーを用いて、プライマー伸張反応により、それぞれのアレルに対応する異なる蛍光色素で標識されたダイデオキシヌクレオチドを多型部位に取り込ませる方法[「プロシィーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイティッド・ステェィト・オブ・アメリカ(Proceedings of the national academy of sciences of the United States of America)」,1997年,第94巻,p.10756-10761]である。プライマー伸張産物は、DNAシークエンサー(ABIプリズム377,アプライドバイオシステム社)などを用いて解析する。このときに用いられるPCRプライマーは、多型部位を含む約0.05〜1kbのDNA断片を増幅するための、15〜30塩基のオリゴヌクレオチドが好ましい。
モレキュラー・ビーコンは、両末端に発光抑制体(Quencher)と蛍光体(Fluorophore)を持ったオリゴヌクレオチドである。ステム部分が5〜7塩基でループ構造が15〜30塩基のステムループ構造が好ましい。従って、蛍光体は発光抑制体の働きにより、励起光照射下でも発光しない。一方、ループ構造内の塩基配列と相同なターゲットのDNAとループ構造内の塩基配列がハイブリダイズすると、発光抑制体と蛍光体の距離が離れるために、蛍光体が励起光下で励起し蛍光を発する[「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature biotechnology)」,1998年,第1巻,p.49-53;及び「遺伝子医学」2000年,第4巻,p.46-48]。モレキュラー・ビーコンのステム部分の塩基配列は、ターゲットDNAとは相補的ではない。モレキュラー・ビーコンのステム構造のTm値は、ターゲット領域をPCRで増幅させるときにモレキュラー・ビーコンを反応液にいれて、PCRのアニーリング温度で励起光を当て蛍光を測定すると、モレキュラー・ビーコンがターゲット遺伝子に完全に相同な配列であれば、ハイブリダイズするため蛍光を発する。逆にミスマッチがあれば、モレキュラー・ビーコンはターゲットにハイブリダイズできず、蛍光を発することができない。この方法により遺伝子多型を検出することができる。
Claims (7)
- イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を決定することを特徴とする、イヌCYP1A2遺伝子多型の検出方法。
- イヌから核酸試料を得、イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を決定する工程を含む、薬物代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザーであるか、又は、プアー・メタボライザーであるかを検出する方法。
- 請求項2に記載の方法により薬物代謝速度がエクステンスィブ・メタボライザーであるか、又は、プアー・メタボライザーであるかを検出する工程を含む、医薬品の試験に用いるイヌを選別する方法。
- 請求項3に記載の方法で選別したエクステンスィブ・メタボライザー群又はプアー・メタボライザー群に被験薬を投与する工程を含む、被験薬の薬理効果及び/又は毒性を試験する方法。
- ストリンジェントな条件で、配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号22で表される塩基配列における63番目〜1601番目の塩基からなる配列又はその遺伝子多型を有するイヌCYP1A2遺伝子のセンス鎖若しくはアンチセンス鎖にハイブリダイズし、
(1)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がCである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA、
(2)配列番号1で表される塩基配列における405番目又は配列番号22で表される塩基配列における1179番目に該当する塩基を含み、その405番目又は1179番目に該当する塩基がTである、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA、及び
(3)(1)若しくは(2)の相補鎖である、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNAからなる群から選択される、15塩基以上30塩基以下の一本鎖DNA。 - 配列番号14又は16で表される塩基配列からなる、請求項5に記載の一本鎖DNA。
- イヌCYP1A2遺伝子の1117番目(配列番号22で表される塩基配列の1179番目)の塩基に該当する塩基を検出するための試薬を有効成分として含有する、イヌCYP1A2の特異的基質である薬物の代謝活性多型の診断剤。
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