JP4325787B2 - グルクロン酸抱合酵素1a9による薬物解毒代謝の異常の遺伝子診断に用いることができる変異型ポリヌクレオチドおよび核酸分子 - Google Patents

グルクロン酸抱合酵素1a9による薬物解毒代謝の異常の遺伝子診断に用いることができる変異型ポリヌクレオチドおよび核酸分子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、グルクロン酸抱合酵素1A9による解毒代謝の異常の遺伝子診断に用いることができる変異型ポリヌクレオチドおよび核酸分子に関する。
【0002】
背景技術
ヒトグルクロン酸抱合酵素(UDP-glucuronosyltransferase, UGT)は、化合物にグルクロン酸を結合(抱合)させる酵素である。このグルクロン酸抱合により化合物の水溶性が高くなり、該化合物が体外に排出されやすくなる。よって、ヒトUGTは、生体内における解毒代謝機構において重要な役割を果たしている。
【0003】
ヒトUGTの一種であるヒトグルクロン酸抱合酵素1A9(UGT1A9)は530アミノ酸からなるタンパク質であり、これをコードする遺伝子配列も報告されている(非特許文献1:Wooster, R. et al., Biochem. J. 278, 465-469, 1991)。また、UGT1A9が肝臓、腸、腎臓、精巣、卵巣等において発現することも報告されている(非特許文献2:Strassburg, C. P. et al., J. Biol. Chem. 273, 8719-8726, 1998;非特許文献3:Albert, C. et al., Endocrinology 140, 3292-3302, 1999)。
【0004】
UGT1A9は、生体内生理活性物質である卵胞ホルモンおよび甲状腺ホルモンの解毒代謝に関与するだけでなく、様々な薬物、例えば、抗癌剤であるイリノテカンの活性代謝物であるSN−38、ベータ遮断薬であるプロプラノロール、解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェン、麻酔剤であるプロポフォール等、の解毒代謝に関与することが知られている(非特許文献3:Albert, C. et al., Endocrinology 140, 3292-3302, 1999;非特許文献4:Findlay, K. A. B. et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 85, 2879-2883, 2000;非特許文献5:Luukkanen, L. et al., Drug Metab. Dispos. 29, 1096-1101, 2001;非特許文献6:Court, M. H. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 299, 998-1006, 2001;非特許文献7:Ebner, T. et al., Drug Metab. Dispos. 21, 50-55, 1993;非特許文献8:Hanioka, N. et al., Xenobiotica 31, 687-699, 2001)。従って、UGT1A9の活性が低下すると、上記の薬物の血中濃度が上昇し、その副作用が増進するものと考えられる。
【0005】
一般に、あるタンパク質の活性の低下を予め診断(予測)する方法として、このような活性の低下をもたらす遺伝子変異を検出する方法が考えられる。しかし、UGT1A9の機能変化、特に活性低下、をもたらす遺伝子多型は報告されていない。
【0006】
【非特許文献1】
Wooster, R. et al., Biochem. J. 278, 465-469, 1991
【非特許文献2】
Strassburg, C. P. et al., J. Biol. Chem. 273, 8719-8726, 1998
【非特許文献3】
Albert, C. et al., Endocrinology 140, 3292-3302, 1999
【非特許文献4】
Findlay, K. A. B. et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 85, 2879-2883, 2000
【非特許文献5】
Luukkanen, L. et al., Drug Metab. Dispos. 29, 1096-1101, 2001
【非特許文献6】
Court, M. H. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 299, 998-1006, 2001
【非特許文献7】
Ebner, T. et al., Drug Metab. Dispos. 21, 50-55, 1993
【非特許文献8】
Hanioka, N. et al., Xenobiotica 31, 687-699, 2001
【0007】
【発明の概要】
本発明者らは、グルクロン酸抱合酵素1A9(UGT1A9)遺伝子において、UGT1A9タンパク質の第256番目のアスパラギン酸残基をコードするコドンがアスパラギン残基をコードするコドンとなり、UGT1A9の機能が低減する遺伝子変異を見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0008】
上記の変異を有するヒトにおいては、UGT1A9タンパク質の発現量が減少し、さらに、発現したUGT1A9タンパク質のグルクロン酸抱合活性も低下するため、UGT1A9による解毒代謝機構が作動しにくい。
【0009】
従って、本発明は、グルクロン酸抱合酵素1A9による解毒代謝の異常の遺伝子診断に用いることができる変異型ポリヌクレオチドおよび変異型タンパク質ならびに核酸分子の提供を目的とする。
【0010】
そして、本発明による変異型ポリヌクレオチドは、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質において、第256番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン残基への変異を有してなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
【0011】
さらに、本発明による変異型タンパク質は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質において、第256番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン残基への変異を有してなるタンパク質である。
【0012】
さらに、本発明による核酸分子は、グルクロン酸抱合酵素1A9遺伝子における、グルクロン酸抱合酵素1A9の第256番目のアスパラギン酸残基をコードするコドンがアスパラギン残基をコードするコドンとなる変異を検出しうる核酸分子であって、本発明による変異型ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子である。
【0013】
【発明の具体的説明】
ヒトグルクロン酸抱合酵素1A9(UGT1A9)は配列番号2で表されるアミノ酸配列を含んでなるものであり、これをコードするDNA配列としては、例えば、配列番号1で表されるヌクレオチド配列が挙げられる。本発明により検出されるグルクロン酸抱合酵素1A9(UGT1A9)遺伝子中の変異は、UGT1A9タンパク質の第256番目のアスパラギン酸残基をコードするコドンがアスパラギン残基をコードするコドンとなるもの(本発明において「Asp256Asn変異」という)である。このような変異としては、例えば、翻訳開始コドンから数えて第766番目(配列番号1中においては第766番目に相当)のグアニン(G)残基のアデニン(A)残基への変異(本発明において「766G>A」という)が挙げられる。
【0014】
Asp256Asn変異により、UGT1A9タンパク質の発現量が減少し、さらには、発現したUGT1A9の機能であるグルクロン酸抱合活性も低下するため、前記変異を有する被験者においてはUGT1A9による解毒代謝機構が作動しにくい。従って、Asp256Asn変異を検出することにより、UGT1A9による解毒代謝の異常の予知または検出が可能となる。特に、UGT1A9による解毒代謝を受ける薬物を投与する前に、UGT1A9遺伝子上のAsp256Asn変異を検出することにより、該薬物に対する感受性が高いヒト被験者を見出すことが可能となる。これにより、そのような被験者に対する薬物の投与量を調節し、該薬物による副作用を軽減することが可能となる。UGT1A9による解毒代謝を受ける薬物としては、特に限定されるものではないが、例えば、抗癌剤であるイリノテカンの活性代謝物であるSN−38(7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン)、ベータ遮断薬であるプロプラノロール、解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェン、麻酔剤であるプロポフォール等が挙げられる。
【0015】
変異型ポリヌクレオチドおよび変異型タンパク質
Asp256Asn変異を検出するためには、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質において、第256番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン残基への変異を有してなるタンパク質、ならびにこれをコードするポリヌクレオチドを標的とすることができる。すなわち、このような変異型タンパク質または変異型ポリヌクレオチドの存在を確認することにより、Asp256Asn変異を検出することができる。
【0016】
Asp256Asn変異を検出する際には、ゲノム中の上記変異型ポリヌクレオチドを標的とすることができる。従って、本発明の好ましい実施態様によれば、検出の標的となる変異型ポリヌクレオチドは、ヒトUGT1A9遺伝子のゲノムDNA配列を含んでなるポリヌクレオチドにおいて、配列番号2中の第256番目のアスパラギン酸残基をコードするコドンのアスパラギン残基をコードするコドンへの変異を有してなるポリヌクレオチドとされる。ヒトUGT1A9遺伝子のゲノムDNA配列は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質を発現しうる限り、特に限定されないが、好ましくは、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列中のチミン(T)残基がウラシル(U)残基に置換されたヌクレオチド配列を含んでなるmRNAを生体内において生産しうるヌクレオチド配列とされ、例えば、NCBIデータベースに登録番号AF297093として登録されているゲノム配列中のUGT1A9遺伝子配列が挙げられる。UGT1A9遺伝子の両末端部位は当業者にとって明らかであるが、好ましくはUGT1A9遺伝子の全エクソンを含むものとする。
【0017】
また、Asp256Asn変異を検出する際に、ゲノムにおける上記変異型ポリヌクレオチドの転写産物であるmRNAに対して生成させたcDNAを標的とすることもできる。従って、本発明の好ましい実施態様によれば、検出の標的となる変異型ポリヌクレオチドは、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において、第766番目のグアニン(G)残基がアデニン(A)残基に置換されたヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0018】
本発明による変異型ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても、相補鎖がハイブリダイズした二本鎖であってもよい。
【0019】
本発明による変異型タンパク質および変異型ポリヌクレオチドは、既述の通り、Asp256Asn変異を検出する際の標的として有用であるが、さらには、該変異を有するグルクロン酸抱合酵素1A9を活性化する化合物をスクリーニングするためにも有用である。
【0020】
核酸分子およびこれを用いた解毒代謝異常の予知/検出方法
本発明による核酸分子は、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異を検出しうるものであり、該核酸分子は、本発明による変異型ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる。
【0021】
本発明において「ハイブリダイズする」とは、本発明による核酸分子が通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的ヌクレオチド分子にハイブリダイズし、標的ヌクレオチド分子以外のヌクレオチド分子にはハイブリダイズしないことを意味する。ストリンジェントな条件は、本発明による核酸分子とその相補鎖との二重鎖の融解温度Tm(℃)およびハイブリダイゼーション溶液の塩濃度などに依存して決定することができ、例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)等を参照することができる。例えば、使用する核酸分子の融解温度よりわずかに低い温度下でハイブリダイゼーションを行なうと、核酸分子を標的ヌクレオチド分子に特異的にハイブリダイズさせることができる。また、あるヌクレオチド分子にハイブリダイズする核酸分子は、特異的なハイブリダイズが可能であれば、そのヌクレオチド分子に対して完全に相補的である必要はないが、好ましくは、そのヌクレオチド分子に相補的なヌクレオチド分子の全部または一部の配列を含んでなるものとする。
【0022】
本発明において「核酸分子」は、DNA、RNA、およびPNA(peptide nucleic acid)を含む意味で用いられる。本発明の好ましい実施態様によれば、核酸分子はDNAである。
【0023】
本発明による核酸分子のヌクレオチド配列は、当業者により適宜設計されうる。例えば、検出の標的をゲノムとする場合には、本発明による核酸分子は、エクソンにハイブリダイズする部分だけでなく、イントロンにハイブリダイズする部分をも含むことができ、あるいは、これらのどちらか一方のみにより構成されていてもよい。
【0024】
本発明による核酸分子は、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異の検出において、核酸プローブとして用いることができる。この目的のためには、本発明による核酸分子は、本発明による変異型ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドの、配列番号2中の第256番目のアスパラギン酸残基に対応する部分を含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなることが好ましい。該核酸プローブは、市販のオリゴヌクレオチド合成機等を用いて合成オリゴヌクレオチドとして作製してもよいし、あるいは、制限酵素処理等によって取得される二本鎖DNA断片として作製してもよい。
【0025】
本発明による核酸分子を核酸プローブとして用いる場合、核酸分子の鎖長は15ヌクレオチド以上とすることが好ましく、また、100ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以下とすることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明による核酸分子を核酸プローブとして用いる場合、該核酸分子を適宜標識することが好ましい。標識する方法としては、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて、オリゴヌクレオチドの5’端を32Pでリン酸化することにより標識する方法、およびクレノウ酵素等のDNAポリメラーゼを用い、ランダムヘキサマーオリゴヌクレオチド等をプライマーとして32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を取り込ませる方法(ランダムプライム法等)が挙げられる。
【0027】
また、本発明による核酸分子は、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異の検出において、核酸増幅用プライマーとして用いることができる。この目的のためには、本発明による核酸分子は、本発明による変異型ポリヌクレオチドの、配列番号2中の第256番目のアスパラギン酸残基に対応する部分を含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものであることが好ましい。
【0028】
本発明による核酸分子を核酸増幅用プライマーとして用いる場合、核酸分子の鎖長は15〜100ヌクレオチドとすることが好ましく、より好ましくは17〜40ヌクレオチドとする。
【0029】
本発明の他の好ましい実施態様によれば、本発明による核酸分子の鎖長は、15〜100ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも17ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、さらに好ましくは18〜50ヌクレオチドとする。このような鎖長を有する本発明による核酸分子は、特に夾雑物を含む核酸試料から上記Asp256Asn変異を検出する上で好ましいものである。
【0030】
核酸増幅法は、通常、プライマーのペアを用いて実施される。従って、本発明によれば、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異を検出するためのプライマーペアであって、本発明による変異型ポリヌクレオチドの、配列番号2中の第256番目のアスパラギン酸残基に対応する部分を含む領域を核酸増幅法において増幅しうるプライマーペアが提供される。このようなプライマーペアを構成する2本のプライマーとしては、本発明による核酸分子を用いることができる。このようなプライマーは、増幅の対象となる領域のヌクレオチド配列に基づいて当業者が適宜設計することができる。例えば、プライマーペアの一方のプライマーを、増幅対象領域のヌクレオチド配列中における5’末端部分の配列を有するものとし、他方のプライマーを、増幅対象領域の相補鎖のヌクレオチド配列中における5’末端部分の配列を有するものとすることができる。
【0031】
本発明による核酸分子または本発明によるプライマーペアを用いることにより、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異の有無を検出することができ、これにより、グルクロン酸抱合酵素1A9による解毒代謝の異常を予知もしくは検出または予測もしくは診断することができる。
【0032】
具体的には、本発明による核酸分子または本発明によるプライマーペアは、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異を検出するための核酸増幅法においてプライマーとして用いることができ、より具体的には、本発明による変異型ポリヌクレオチドの、配列番号2中の第256番目のアスパラギン酸残基に対応する部分を含む領域を増幅するための核酸増幅法においてプライマーとして用いることができる。従って、本発明によれば、本発明による核酸分子またはプライマーペアを用いて、被検者由来の核酸試料を鋳型とする核酸増幅法を行ない、得られた増幅産物中においてAsp256Asn変異の有無を検出する工程を含んでなる、UGT1A9による解毒代謝の異常を予知または検出する方法が提供される。
【0033】
この方法による解毒代謝異常の予測または診断に当たっては、例えば、被験者から白血球、皮膚、口腔粘膜等の組織または細胞、涙、唾液、尿、糞便または毛髪などの試料を採取し、得られた試料からゲノムDNAやmRNA等の核酸試料を抽出し、必要であればmRNAから逆転写酵素によりcDNAを作製し、得られた核酸試料を鋳型として、本発明による核酸分子またはプライマーペアを用いて核酸増幅法を実施し、得られた増幅産物のヌクレオチド配列を解析することにより、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異を検出することができる。核酸増幅法およびこれによる変異の検出法としては、当技術分野において公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、核酸増幅法としては、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とする場合には通常のPCR法等を用いることができ、mRNAを鋳型とする場合には、RT−PCR法、NASBA法等を用いることができる。
【0034】
核酸増幅法により得られた増幅産物のヌクレオチド配列の解析は、例えば、シークエンス用プライマーを用いるダイレクトシークエンス法等により容易に行なうことができる。このような方法は当技術分野において周知であり、例えば、市販のキットを用いて実施することができる。
【0035】
上記の核酸増幅法とダイレクトシークエンス法とによりAsp256Asn変異を検出する場合には、例えば、以下の配列を有するプライマー:
フォワード:5'-CCAAGGCAAAGACCATAAGC-3'(配列番号5);
リバース:5'-TTGCTACTGACGAGTACACGC-3'(配列番号6)、
を用いて核酸増幅法を行ない、これらのプライマーをシークエンスプライマーとしてダイレクトシークエンス法を行なうことができる。あるいは、シークエンスプライマーとして以下のプライマーを用いてもよい:
フォワード:5'-TGCTCCTCTTTCCTATGTCC-3'(配列番号7);
リバース:5'-TGTCAAATCACAGTTCAGTAAAGA-3'(配列番号8)。
【0036】
また、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異において、この変異により特定の制限酵素による認識配列が失われるかまたは生成する場合には、制限断片長多型(RFLP)を利用する方法、例えば、PCR−RFLP法を用いて上記の変異を検出することができる。このような方法は、例えば、上述の核酸増幅法において前記制限酵素認識配列を包含する領域を増幅するようなプライマーペアを用い、得られた増幅断片をこの制限酵素で消化した後、得られる断片の数およびそれらの鎖長を調べることにより実施することができる。このような方法は当技術分野において周知であり、当業者であれば、適切な制限酵素、プライマー、増幅反応条件、制限酵素反応条件等を適宜設定することができる。
【0037】
さらに、上述のような核酸増幅法によって得られた増幅断片につき、その増幅断片中に何らかの変異が存在するか否かを簡便な方法により調べ、変異を有すると判断されたサンプルについてのみ、Asp256Asn変異の検出を行なうこともできる。
【0038】
上記の簡便法としては、例えば、一本鎖高次構造多型(single-strand conformation polymorphism)を利用した方法(PCR−SSCP法:Cloning and polymerase chain reaction-single-strand conformation polymorphism analysis of anonymous Alu repeats on chromosome 11. Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.、Detection of p53 gene mutations in human brain tumors by single-strand conformation polymorphism analysis of polymerase chain reaction products. Oncogene. 1991 Aug 1; 6(8): 1313-1318.、Multiple fluorescence-based PCR-SSCP analysis with postlabeling.、PCR Methods Appl. 1995 Apr 1; 4(5): 275-282)が挙げられる。この方法では、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させ、次いで、この一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離し、そのゲル上での移動度を、変異を有しない対照サンプルの移動度と比較する。この方法において増幅するDNA断片の鎖長は200〜400bpとすることが好ましい。
【0039】
上記の簡便法としては、また、変性剤濃度勾配ゲル法(denaturant gradient gel electrophoresis:DGGE法)を用いることもできる。この方法では、増幅したDNAをDNA変性剤の濃度が次第に高まるゲル上で分離し、そのゲル上での移動度を、変異を有しない対照サンプルの移動度と比較する。このような方法は当技術分野において公知であり、当業者であれば適切に実施することができる。
【0040】
本発明による解毒代謝異常の予測または診断法においては、アレル特異的PCR法を実施できるようにプライマーを設計することもできる。具体的には、プライマーの一方を変異部位に対合できるように設計し、他方を変異部位を含まない領域に対合できるように設計することができる。このように設計されたプライマーペアを用いて核酸増幅法を実施すると、核酸試料中に変異が存在する場合には増幅産物が得られ、変異が存在しない場合には増幅産物が得られない。従って、この場合には、増幅産物の有無を検出することにより変異の有無を判定することができる。
【0041】
本発明による核酸分子は、ハイブリダイゼーション法等による変異の検出にプローブとして用いることができる。従って、本発明によれば、本発明による核酸分子と被検者由来の核酸試料とのハイブリダイゼーションを行ない、次いでハイブリダイゼーション複合体の存在を検出する工程を含んでなる、UGT1A9による解毒代謝の異常を検出する方法が提供される。ハイブリダイゼーション複合体の存在は、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異の存在を示す。このハイブリダイゼーション法を用いる方法は、上述の核酸増幅法を用いる方法により得られる増幅産物に対して適用することもできる。
【0042】
この方法による解毒代謝異常の予測または診断に当たっては、例えば、被検者から白血球、皮膚、口腔粘膜等の組織または細胞、涙、唾液、尿、糞便または毛髪などの試料を採取し、得られた試料からゲノムDNAやmRNA等の核酸試料を抽出し、必要であればmRNAから逆転写酵素によりcDNAを作製し、ストリンジェントな条件下、本発明による核酸分子とのハイブリダイゼーションの有無を検出することにより、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異を検出することができる。核酸試料は必要であれば制限酵素処理等を施し、ハイブリダイゼーションに適切な長さとすることもできる。ハイブリダイゼーション法とこれによる変異の検出法としては、当技術分野において公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、サザンハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等の技術を用いることができ、これらの方法については、例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)を参照することができる。
【0043】
本発明による核酸分子をハイブリダイゼーション法による変異の検出においてプローブとして用いる場合、本発明による核酸分子を基板上に固定したDNAチップを作製し、このDNAチップと被験者由来の核酸試料とをハイブリダイゼーション条件下で接触させ、ハイブリダイゼーションの有無を検出してもよい。従って、本発明によれば、本発明による核酸分子を基板上に固定してなる、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異を検出しうるDNAチップ、さらには、このDNAチップを用いてAsp256Asn変異を検出する工程を含んでなる、UGT1A9による解毒代謝の異常を検出する方法が提供される。本発明において基板に結合させるプローブの鎖長は特に制限されないが、好ましくは15〜100ヌクレオチド、より好ましくは15〜50ヌクレオチド、さらに好ましくは17〜25ヌクレオチドとする。このようなDNAチップを用いて変異を検出する技術は当技術分野において周知であり(ポストシークエンスのゲノム科学、第1巻「SNP遺伝子多型の戦略」、松原謙一・榊佳之、中山書店、p128−135、2000年)、当業者であれば、本発明による核酸分子を用いて適切なDNAチップを作製し、このDNAチップを用いてAsp256Asn変異を検出することができる。
【0044】
UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異を検出する場合には、また、本発明による核酸分子をプライマーとして使用するプライマーエクステンション法を用いることもできる。この方法は、Asp256Asn変異が一塩基多型である場合において特に好ましい。このような一塩基多型としては、例えば、766G>Aが挙げられる。プライマーエクステンション法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、上記のプライマーエクステンション法としては、SNaPshotTM法またはPyrosequencing法として知られる方法が用いられる。
【0045】
SNaPshotTM法においては、一塩基多型の部位に隣接するプライマーであって、伸長反応によりその3’末端に付加するヌクレオチドが前記一塩基多型の部位に相補的なものとなるプライマーが用いられる。このようなプライマーを使用し、被検者からの核酸試料を鋳型としてプライマーの伸長反応が行なわれるが、その際にddNTP(ジデオキシNTP)を用いることにより、伸長反応は、上記の多型部位に対応する一個のヌクレオチドを取り込んだ時点で終了する。取り込まれたヌクレオチドは、蛍光標識等で予め標識しておくことにより容易に同定され、従って、多型部位のヌクレオチドが同定される。このような方法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0046】
Pyrosequencing法(Ahmadian A et al., Anal. Biochem. vol. 280, pp103-110, (2000))においては、被検者からの核酸試料を鋳型とするプライマーの伸長反応の際に、4種のdNTPを1種ずつ反応させる。dNTPのいずれかが取り込まれると、等量のピロリン酸塩(PPi)が遊離し、遊離したPPiはスルフリラーゼと反応してATPを生成させ、このATPによりルシフェラーゼの反応が起こり、発光が起こる。従って、ある特定のdNTPを加えたときに発光が起こった場合には、そのdNTPに対応するヌクレオチドが取り込まれたことが明らかとなり、これにより核酸試料中の対象部位のヌクレオチドが同定される。この方法においては、dNTPが用いられるため、SNaPshotTM法で用いられるような多型部位に隣接するプライマーを用いる必要はなく、数塩基はなれたプライマーを用いてもよい。このような方法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0047】
UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異が上述のような一塩基多型である場合には、さらに、本発明による核酸分子をプローブおよび/またはプライマーとして使用する遺伝子型決定法(タイピング法)を用いてその変異を検出することもできる。遺伝子型決定法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプローブおよび/またはプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、上記の遺伝子型決定法としては、TaqMan PCR法として知られる方法が用いられる。
【0048】
TaqMan PCR法(Livak KJ. Genet. Anal. vol.14, pp143-149, (1999))において、例えば、766G>A変異を検出する場合には、多型部位のヌクレオチドを含む領域に対して、GアレルおよびAアレルのそれぞれに特異的にハイブリダイズする2種のプローブであって、それぞれ別の蛍光標識物質が5’末端に付され、その蛍光標識に対するクエンチャー(消光物質)が3’末端に付され、さらに3’末端がリン酸化されてなるプローブ(TaqManプローブ)が用いられ、これらをPCR反応液中に添加して、被検者由来の核酸試料を鋳型とするPCR反応を行なう。TaqManプローブおよびPCR用プライマーとしては、本発明による核酸分子を用いることができ、それらの具体的なヌクレオチド配列は、当業者であれば適宜決定することができる。また、2種の蛍光標識物質は、互いに識別可能な組合せであればよく、そのような蛍光標識物質の組合せはそれぞれのクエンチャーとともに当業者に公知のもの、例えば、FAMとVICの組合せ等を用いることができる。このPCR反応においては、まず、各アレルにTaqManプローブがハイブリダイズし、プライマーからの伸長反応がそのハイブリダイゼーション領域に到達した際にTaqDNAポリメラーゼの作用によって蛍光標識物質が遊離する。遊離した蛍光標識物質はクエンチャーの作用を受けないため、蛍光を発する。従って、この方法によれば、各アレルの存在量に対応する強度の各蛍光を観察することができ、これにより、被検者の遺伝子型(G/G、G/A、またはA/A)が容易に決定される。
【0049】
UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異の検出に用いることのできる他の方法としては、質量分析法による方法(Griffin TJ and Smith LM, Trends Biotechnol. vol. 18, pp77-84, (2000))、Invader法(Lyamichev V et al., Nat. Biotechnol. vol. 17, pp292-296, (1999);「遺伝子医学」vol.4, No.1, メディカルドゥ社発行、pp44-51およびpp68-72 (2000))が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、遺伝子の変異を検出しうる方法であれば、いかなる方法を用いることもできる。
【0050】
本発明による解毒代謝異常の予測または診断法において、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異が存在すると評価されたサンプルは、UGT1A9のグルクロン酸抱合活性が低いと、すなわち、UGT1A9による解毒代謝機構が作動しにくいものと判断することができる。従って、Asp256Asn変異を有すると評価された被験者はUGT1A9による解毒代謝を受ける薬物に対して感受性が高いものと判断され、その被験者に対する前記薬物の投与量を予め調節することが可能となる。これにより、前記被験者における前記薬物による副作用を低減することが可能となる。また、本発明によれば、出生前および出生直後の診断も可能である。
【0051】
以上のような解毒代謝異常の予測または診断のために、必要な試薬をまとめてキットとすることができる。従って、本発明によるキットは、本発明による核酸分子および/または本発明によるプライマーペアを含んでなる。本発明によるキットはさらに、UGT1A9遺伝子におけるAsp256Asn変異を検出するための具体的方法に応じて、試薬類、反応容器、説明書等を含んでいてもよい。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0053】
例1:UGT1A9遺伝子中の多型の探索およびその機能との関連
(1)ヒトゲノムDNA試料の調製
イリノテカンを投与された各種癌の日本人患者47名から血液白血球を採取し、その白血球からDNAを抽出した。なお、本研究を行なうに当たり、国立がんセンター(日本国)および国立医薬品食品衛生研究所(日本国)の倫理審査委員会の承認を得た。また、上記の全ての患者から、書面にてインフォームドコンセントを得た。
【0054】
(2)PCRによるDNA配列決定
まず、2.5ユニットのZ−Taq(宝酒造、東京、日本国)ならびに各0.2μMのプライマー:UGT1A9-ZF:5'-TCTTGATTGTCCTCCATTGAGT-3'(配列番号3);およびUGT1A9-ZR:5'-ACCAAGCAACCATACTCATAGG-3'(配列番号4)を用いて、ゲノムDNA(150ng)からUGT1A9のエクソン1を増幅した。この第一のPCRは、98℃で5秒間、55℃で5秒間および72℃で190秒間の反応を30サイクルという条件で行なった。次いで、得られたPCR産物を、0.625ユニットのEx−Taq(宝酒造)ならびにイントロン中に設計した各0.2μMのプライマー:UGT1A9-1stF:5'-CCAAGGCAAAGACCATAAGC-3'(配列番号5);およびUGT1A9-1stR:5'-TTGCTACTGACGAGTACACGC-3'(配列番号6)を用いて増幅した。この第二のPCRは、94℃で5分間の反応の後に、94℃で30秒間、55℃で1分間および72℃で2分間の反応を30サイクルという条件で行なった。この2段階のPCRにより、UGT1A9のエクソン1を特異的に増幅した。次いで、得られたPCR産物をPCR Product Pre-Sequencing Kit(USB Co., Cleveland, OH, USA)で処理し、その両鎖につき、ABI Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)およびプライマー:UGT1A9F3:5'-TGCTCCTCTTTCCTATGTCC-3'(配列番号7);およびUGT1A9R3:5'-TGTCAAATCACAGTTCAGTAAAGA-3'(配列番号8)を用いて直接配列決定した。余分な色素は、DyeEx96 Kit(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて除去した。得られた溶出液を、ABI Prism 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems)を用いて分析した。
【0055】
決定されたヌクレオチド配列をUGT1A9の参照配列(GenBankアクセス番号:AF297093)と比較したところ、遺伝子変異がヘテロ接合体として見出された。この遺伝子変異は、UGT1A9のmRNAに対するcDNAのヌクレオチド配列において、翻訳開始コドンの第一ヌクレオチドであるアデニン(A)残基を1とした場合に第766ヌクレオチドとなるグアニン(G)残基がアデニン(A)残基に置換されるものである(766G>A変異;この変異の位置は、配列番号1中の第766ヌクレオチドに相当する)。この変異により、発現されるUGT1A9タンパク質の第256アミノ酸であるアスパラギン酸残基がアスパラギン残基に置換される(Asp256Asn変異;この変異の位置は、配列番号2中の第256アミノ酸に相当する)。
【0056】
(3)プラスミドの構築
ヒト肝臓ポリARNA(OriGene Technologies, Rockville, MD)から、SuperScript first-strand synthesis system for RT-PCR(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)およびオリゴ(dT)プライマーを用いてcDNAを合成した。得られた一本鎖cDNAから、attBアダプターPCRによって野生型UGT1A9をコードするcDNAを増幅し、該cDNAを、GATEWAYTMクローニング技術(Invitrogen)によってpDONR201ベクター中にクローニングした。すなわち、まず、12ヌクレオチドの部分的attB配列を5’末端に含む遺伝子特異的プライマー:attB1 UGT1A9F:5'-AAAAAGCAGGCTGCAGTTCTCTGATGGCTTGCA-3'(配列番号9);およびattB2 UGT1AR:5'-AGAAAGCTGGGTCTCAATGGGTCTTGGATTTGTGGG-3'(配列番号10)(下線部は部分的attB配列である)を用いた10サイクルのPCRにより、UGT1A9のcDNAを増幅した。次いで、得られた反応混合物の一部を、attBアダプタープライマー:attB1 Adaptor:5'-GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCT-3'(配列番号11);およびattB2 Adaptor:5'-GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGT-3'(配列番号12)を用いた25サイクルの第二のPCRに供した。得られたattB配列付加産物を、GATEWAY BP反応を用いたattB部位とattP部位との間における組換えにより、pDONR201ベクター中にクローニングした。5'−リン酸化オリゴヌクレオチドプライマー(UGT1A9 766A):5'-phospho-TTGGTTGTTGCGAACGAACTTTGTTTTGGACTATC-3'(配列番号13)(下線部は置換されるヌクレオチドである)を用いるQuikChange multi site-directed mutagenesis kit(Stratagene, La Jolla, CA, USA)を利用して、pDONR201中の野生型UGT1A9 cDNAクローン中に変異(766G>A)を導入した。増幅過程において誤ったヌクレオチドが導入されていないことを確認するために、全プラスミド構築物の両鎖のDNA配列を決定した。pDONR201からのそれぞれのUGT1A9断片を、GATEWAY LR反応を用いたattL部位とattR部位との間における組換えにより、pcDNA−DEST40中にサブクローニングした。
【0057】
(4)COS−1細胞中における野生型および変異型(766G>A)UGT1A9の発現
COS−1細胞(ヒューマンサエンス研究資源バンク、大阪、日本国)を、10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地中で増殖させた。トランスフェクションの前日に、COS−1細胞を、5.5×10細胞/cmの密度で100mm培養皿にプレーティングした。翌日、培地を8mlのOpti−MEM(Invitrogen)に置換し、LipofectAMINE 2000試薬(Invitrogen)を用いて発現プラスミドをトランスフェクトした。すなわち、希釈したDNA(810μlのOpti−MEM中の14μg)と希釈したLipofectAMINE 2000試薬(810μlのOpti−MEM中の48μl)とを混合し、室温で20分間インキュベートした。得られたDNA−LipofectAMINE 2000複合体を各培養皿に直接添加した。
【0058】
トランスフェクションの48時間後、COS−1細胞を、氷冷したリン酸緩衝化生理食塩水で2回洗浄し、0.25Mスクロース−5mMHEPES(pH7.4)(緩衝化スクロース)中に回収した。得られた細胞懸濁液について、超音波処理装置USP−300(島津製作所、京都、日本国)での10秒間の処理を3回行ない、次いで、105,000×gでの遠心処理を60分間行なった。得られたペレットを緩衝化スクロース中に再懸濁し、−80℃で保存した。
【0059】
(5)ウェスタンブロッティング
COS−1細胞からの20μgの膜画分タンパク質をSDS−PAGE(10%ゲル)によって電気泳動し、PVDF膜上に転写した。各UGT1A9タンパク質は、ウサギ抗ヒトUGT1A抗体(1:5000で希釈;Gentest, Woburn, MA, USA)および西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したロバ抗ウサギIg抗体(1:2000で希釈)を用いる化学蛍光によって、免疫化学的に検出した。化学蛍光(ECL-plus, Amersham Biosciences, Piscataway, NJ, USA)は、Typhoon 9400 Variable Mode ImagerおよびImageQuant解析ソフトウェア(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA, USA)を用いて検出・定量した。
【0060】
各サンプルのUGT1A9タンパク質発現量は、野生型試料の一つの発現量を基準とする相対量として算出した。また、これらのデータは、3つの別々に調製した試料から得られたものである。図1に示すように、Asp256Asn変異体の相対発現量は0.76±0.05であり、野生型の発現量との間で、Studentのt検定による有意差が認められた(p<0.05)。
【0061】
(6)酵素アッセイ
野生型および変異型UGT1A9のグルクロン酸抱合活性を、文献(Hanioka, N., Ozawa, S., Jinno, H., Ando, M., Saito, Y. and Sawada, J.: Human liver UDP-glucuronosyltransferase isoforms involved in the glucuronidation of 7-ethyl-10-hydroxycamptothecin. Xenobiotica 31: 687-699, 2001)に記載の方法に従ってアッセイした。すなわち、50mMのTris−HCl緩衝液(pH7.4)、2.5〜150μMのSN−38(ヤクルト本社、東京、日本国、Lot: 970507R)、COS−1細胞の膜画分(タンパク質量:100μg)、および10mMのMgClを含む混合物を調製し、この混合物を37℃で1分間インキュベートした。その後、この混合物に5mMのUDP−グルクロン酸を添加することにより反応を開始し、該混合物を37℃で80分間インキュベートした。この反応は、100μlの10%(w/v)HClOの添加によって停止した。得られた混合物を12,000×g、4℃で10分間遠心処理し、透明な上清を0.45μmPTFE膜フィルターを用いて濾過し、HPLCにより分析した。
【0062】
見かけの酵素動力学パラメーター(K、Vmax、およびVmax/K)は、各種濃度のSN−38(2.5〜150μM)の存在下において測定された初期反応速度値を、Prism 3.0(Graph Pad Software, Inc., San Diego, CA, USA)を用いてミカエリス・メンテンの式にフィッティングすることにより算出した。また、動力学パラメーターは、3つの別々に調製したUGT1A9タンパク質から得られたものである。さらに、統計学的な比較は、Studentのt検定によって行なった。
【0063】
図2に示す代表的な非線形回帰曲線から明らかなように、上記の酵素反応はミカエリス・メンテンの動力学に従うものであった。さらに、下記の表1は、野生型UGT1A9およびAsp256Asn変異型UGT1A9によるSN−38グルクロン酸抱合についての見かけの動力学パラメーターをまとめたものである。
【0064】
【表1】
Figure 0004325787
【0065】
野生型UGT1A9によるSN−38グルクロン酸抱合の見かけのK値が19.3μMであったのに対し、Asp256Asn変異体によるK値は44.4μMであった。また、これらの酵素反応におけるVmax値は、野生型およびAsp256Asn変異型について、それぞれ、膜タンパク質1mg当たり2.94および0.24pmol/minであった。このVmax値を発現量の相違について標準化した場合、SN−38グルクロン酸抱合の効率(標準化されたVmax/K)は、野生型およびAsp256Asn変異型について、それぞれ、膜タンパク質1mg当たり153および7.1nl/minであった。これらの動力学パラメーターにより、Asp256Asn変異型UGT1A9は、野生型UGT1A9に比べて、SN−38グルクロン酸抱合の機能を本質的に欠いていることが明確に実証された。
【0066】
(7)まとめ
以上の結果から、Asp256Asn変異を有するUGT1A9は、野生型に比べて、発現量が76%に低下し、発現されたタンパク質のSN−38グルクロン酸抱合活性が4.6%に低下することが明らかとなった。
【0067】
【配列表】
Figure 0004325787
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、野生型およびAsp256Asn変異型それぞれのUGT1A9タンパク質の発現量(野生型試料の一つの発現量を基準とする相対量)を示す棒グラフである。
【図2】図2は、野生型およびAsp256Asn変異型それぞれのUGT1A9の、SN−38に対するグルクロン酸抱合活性を示す図である。

Claims (11)

  1. 配列番号2で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質において、第256番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン残基への変異を有してなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  2. ヒトグルクロン酸抱合酵素1A9遺伝子のゲノムDNA配列を含んでなるポリヌクレオチドにおいて、配列番号2中の第256番目のアスパラギン酸残基をコードするコドンのアスパラギン残基をコードするコドンへの変異を有してなるポリヌクレオチドである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  3. 配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において、第766番目のグアニン(G)残基がアデニン(A)残基に置換されたヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  4. グルクロン酸抱合酵素1A9遺伝子における、グルクロン酸抱合酵素1A9の第256番目のアスパラギン酸残基をコードするコドンがアスパラギン残基をコードするコドンとなる変異を検出しうる核酸分子であって、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、またはこれに相補的なポリヌクレオチドの、配列番号2中の第256番目のアスパラギン酸残基に対応する部分を含む領域のヌクレオチド配列を含んでなり、
    15〜100ヌクレオチドの鎖長を有する、核酸分子。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドの、配列番号2中の第256番目のアスパラギン酸残基に対応する部分を含む領域を核酸増幅法において増幅することができる、請求項4に記載の核酸分子。
  6. グルクロン酸抱合酵素1A9による解毒代謝の異常の予測または診断に用いるための、請求項4または5に記載の核酸分子。
  7. グルクロン酸抱合酵素1A9遺伝子における、グルクロン酸抱合酵素1A9の第256番目のアスパラギン酸残基をコードするコドンがアスパラギン残基をコードするコドンとなる変異を検出するためのプライマーペアであって、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドの、配列番号2中の第256番目のアスパラギン酸残基に対応する部分を含む領域を核酸増幅法において増幅することができ、一方のプライマーが請求項4に記載の核酸分子である、プライマーペア。
  8. グルクロン酸抱合酵素1A9による解毒代謝の異常の予測または診断に用いるための、請求項7に記載のプライマーペア。
  9. グルクロン酸抱合酵素1A9遺伝子の変異を検出することにより、グルクロン酸抱合酵素1A9による解毒代謝の異常を予知または検出する方法であって、
    請求項4〜6のいずれか一項に記載の核酸分子、および/または請求項7または8に記載のプライマーペアを用いて、グルクロン酸抱合酵素1A9遺伝子における、グルクロン酸抱合酵素1A9の第256番目のアスパラギン酸残基をコードするコドンがアスパラギン残基をコードするコドンとなる変異の有無を検出する工程を含んでなる、方法。
  10. 請求項4〜6のいずれか一項に記載の核酸分子、および/または請求項7または8に記載のプライマーペアを含んでなる、グルクロン酸抱合酵素1A9による解毒代謝の異常の予測または診断用キット。
  11. 配列番号2で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質において、第256番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン残基への変異を有してなるタンパク質。
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