JP3682688B2 - 骨粗鬆症薬剤感受性予測方法およびそのための試薬キット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨粗鬆症の治療において有用な情報を提供し得る新規なヒト由来試料の分析方法に関する。詳細には、本発明は、骨粗鬆症治療薬、特にビタミンD、エストロゲンおよびビタミンK2のうち、いずれの薬剤を使用することが最も有効な治療効果を示すかを予測するための、ヒト由来試料中のゲノムDNAの遺伝子多型の分析方法に関する。また、本発明はヒト由来試料中のゲノムDNAの遺伝子多型の組み合わせから、該試料が前記薬剤に対する感受性において特定の優先性を示す個人由来のものであると予測する方法に関する。さらに、本発明は上記の方法において使用し得る遺伝子多型分析用キットに関する。また、該遺伝子多型分析用試薬キットを用いて分析された遺伝子多型の組み合わせから、適当な骨粗鬆症治療薬を選択する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
骨粗鬆症は骨量(骨に含まれるカルシウムを中心としたミネラルの量)が減少し、かつ、骨組織の微細構造が変化し、そのために骨が脆くなり骨折しやすくなった病態であり。閉経後の女性や高齢の男性に多く、我が国の患者数は推定1000万人といわれてい。人口の高齢化に伴い、今後も患者数は不可避的に増加するものと予測される。
【0003】
現在、骨粗鬆症の治療薬として、カルシウム製剤、ビタミンD等の骨活性化薬、エストロゲン等の骨吸収抑制薬、ビタミンK等の骨形成促進薬など、種々の薬剤が用いられているが、その治療効果は患者によってまちまちであり、それらをどのように使い分けるかについての検討はほとんどなされていない。これらの治療薬は単剤投与が原則とされているので、どの治療薬が最も効果的であるかを調べるには、実際に1つの薬剤を数年間患者に投与して、その結果を見て判断するしかないのが現状であり、極めて非効率的である。
【0004】
一方、近年の遺伝子研究から、いくつかの遺伝子の多型と患者の骨粗鬆症治療薬に対する感受性との関連が提唱されている。例えば、ビタミンD受容体(以下、VDRという)遺伝子の第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内でApa Iにより切断されない遺伝子型Aは、同制限酵素によって切断される遺伝子型aに比べて、ビタミンDに対して高感受性であるとの報告がある[例えば、特開平8-126497号公報および特開平8-126500号公報参照]。
【0005】
また、白木ら[1997年骨代謝学会要旨集第52頁]には、VDR遺伝子の多型とビタミンD感受性、エストロゲン受容体(以下、ERという)遺伝子の多型とエストロゲン感受性およびアポリポ蛋白E(以下、ApoEという)遺伝子の多型とビタミンK2感受性について調べた結果、VDR遺伝子多型AAB(Bは第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内でBsm Iにより切断されない遺伝子型)は、aabbに比べてビタミンD3に対する感受性が有意に低く、またER遺伝子多型PpXx(PおよびXはそれぞれPvu IおよびXba Iで切断されない遺伝子型)は他の遺伝子型群に比べて、エストロゲンに対する感受性が有意に高く、さらに、ApoE4(+)群はApoE4(−)群に比べてビタミンK2に対する感受性が有意に低かったと記載されている。
【0006】
さらに、ビタミンD結合蛋白(以下、DBPという)遺伝子をHae IIIおよびSty Iで切断して得られるRFLPパターンがGC−2型のものは、他の群に比べてビタミンD類に対する感受性が高いと記載されている[特開平8-201373号公報]。
【0007】
しかしながら、これらのいずれも1遺伝子の多型から1つの薬剤に対する感受性を予測するものであり、1つの薬剤について他の遺伝子型よりも感受性が高いか否かを予測するものでしかない。すなわち、VDR遺伝子型がaabbであり、かつApoE遺伝子型がApoE4(−)である人は、他のVDR遺伝子型およびApoE遺伝子型を有する人に比べてビタミンDおよびビタミンK2に対する感受性が高いと予測されるが、それでは、このような遺伝子型を有する患者に対してビタミンDを投与するのと、ビタミンK2を投与するのとでは、どちらがより高い治療効果が得られるかについては、依然として予測することができない。したがって、結局のところ、異なる薬剤のいずれに対して患者がより感受性が高いかを知るには、上述のように、実際に各薬剤を、1つの薬剤について数年間のスパンで順次患者に投与して結果を見るしかなかった。特に、エストロゲンは、治療効果は大きいが副作用も大きいため、感受性の低い患者への長期投与は患者のQOL(Quality of Life)を著しく損なうおそれがあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、骨粗鬆症患者もしくは将来、骨粗鬆症を発症する可能性のある人が、複数の骨粗鬆症治療薬のいずれかに対してより高い感受性を有するかを予測する手段を提供することであり、それによって治療効果の低い薬剤の長期投与による病状の進行を回避し、患者のQOLを向上させることである。
【0009】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ゲノムDNAを含有するヒト由来試料を、VDR遺伝子、ER遺伝子およびApoE遺伝子の多型について分析することにより、得られる多型の組み合わせに基づいて、ビタミンD、エストロゲンおよびビタミンK2のうちのいずれかの薬剤に対する感受性が、他の2つの薬剤に対する感受性に比べて高いことが予測可能であることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明者らは、ApoE遺伝子型として、対立遺伝子3を有する遺伝子型3(+)(=3/3)はそれ以外に比べて、ビタミンK2に関する薬剤感受性が高くなることを見出した。また、2/3、3/4型が2/2、2/4または4/4型に比べて有意にビタミンK2感受性が高いことも同時に見出した。
すなわち、他の遺伝子型に比べてエストロゲンに高感受性のER遺伝子型および他の遺伝子型に比べてビタミンK2に高感受性のApoE遺伝子型{ここで、ビタミン感受性K2に高感受性のApoE遺伝子型とは、対立遺伝子3を有する遺伝子型3(+)(すなわち、3/3)と該対立遺伝子3を有しない遺伝子型3(−)(すなわち、2/2、2/3、2/4、3/4または4/4)と類別される遺伝子型のうち、前者をいう。}を有する場合、エストロゲンよりもビタミンK2に対してより感受性が高く、他の遺伝子型に比べてビタミンDに高感受性のVDR遺伝子型および他の遺伝子型に比べてビタミンK2に高感受性のApoE遺伝子型を有する場合、ビタミンK2よりもビタミンDに対してより感受性が高い傾向にあることを見出した。
【0011】
本発明は、ヒトから採取した試料中に含まれるゲノムDNAから、ビタミンD受容体遺伝子、エストロゲン受容体遺伝子およびアポリポ蛋白E3対立遺伝子(2/2、2/3、2/4、3/3、3/4または4/4)のそれぞれの遺伝子多型を分析し、これらの遺伝子多型の組み合わせに基づいて、該試料が複数の骨粗鬆症治療薬に対する感受性において特定の優先性を示す個人由来のものであると予測することを特徴とする骨粗鬆症薬剤感受性予測方法である。
【0012】
また、本発明はビタミンD受容体(以下、VDR)遺伝子、アポリポタンパク(以下、ApoE)遺伝子およびエストロゲン受容体(以下、ER)遺伝子のそれぞれの遺伝子に対して、特異的な増幅プライマー、およびVDR遺伝子多型、アポリポ蛋白E3対立遺伝子(2/2、2/3、2/4、3/3、3/4または4/4)多型およびER遺伝子多型をそれぞれ検出するための検出プローブを含むことを特徴とするVDR、ApoEおよびER遺伝子の遺伝子多型分析用試薬キットである。
【0013】
さらに、本発明は、上記したVDR、ApoEおよびER遺伝子の遺伝子多型分析用キットを用いて分析されたVDR、ApoEおよびER遺伝子の遺伝子多型の組み合わせと骨関連疾患の治療薬を結びつけることを特徴とする骨関連疾患治療薬の選択方法である。
【0014】
【発明の実施態様】
本発明の分析に供され得るヒト由来試料は、ヒトゲノムDNAを含有するものであれば、特に限定されない。好ましくは、各種ヒト細胞から単離されたゲノムが例示される。ゲノムDNAの抽出は、SDS/フェノール法、グアニジンチオシナネート法、CTAB法等の慣用の方法で行えばよい。また、全血、分画された血球細胞、擦過材料として使用される表皮細胞や粘膜細胞、あるいは毛髪などの、入手が容易で且つPCR法の鋳型DNA試料として従来から使用されている細胞・組織も好ましくは用いられる。この場合、例えば細胞・組織を水中で煮沸したり、あるいはアルカリ溶液中で加熱することにより、細胞を破砕してゲノムDNA試料とする。
【0015】
本発明の分析方法は、VDR遺伝子、ER遺伝子およびApoE遺伝子についての遺伝子型を調べることを特徴とする。
VDR遺伝子は第12染色体上にある。VDR遺伝子多型の1つは、第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内での制限酵素Bsm Iによる切断の可否によって検出される。Bsm Iで切断されない対立遺伝子をB、同酵素により切断される対立遺伝子をbで表すと、BB、Bbおよびbbの3つの遺伝子型をとり得るが、本発明においては、VDR遺伝子多型は、対立遺伝子Bを有する遺伝子B(+)(すなわち、BBおよびBb)と対立遺伝子Bを有しない遺伝子型B(-)(すなわち、bb)とに類別される。また、VDR遺伝子の多型部位とは、対立遺伝子bの第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内のBsm I制限部位(GAATGC)および対立遺伝子Bのそれに対応する部位(GAATGT)をいうものとする。
【0016】
ER遺伝子は第6番染色体上にある。ER遺伝子の多型の1つは、第1エクソンと第2エクソンの間のイントロン領域内での制限酵素Xba Iによる切断の可否によって検出される。Xba Iで切断されない対立遺伝子をX、同酵素で切断される対立遺伝子をxで表すと、XX、Xxおよびxxの3つの遺伝子型を取り得るが、本発明においては、ER遺伝子多型は、対立遺伝子Xを有する遺伝子型X(+)(すなわち、XXおよびXx)と対立遺伝子Xを有しない遺伝子型X(-)(すなわち、xx)とに類別される。また、ER遺伝子の多型部位とは、対立遺伝子xの第1エクソンと第2エクソンの間のイントロン領域内のXba I制限部位(TCTAGA)および対立遺伝子Xのそれに対応する部位(TCCAGA)をいうものとする。
【0017】
ApoE遺伝子は第19染色体上にあり、4つのエクソンと3つのイントロンからなり、299個のアミノ酸からなる蛋白質をコードする。ApoE蛋白はリポ蛋白によるトリグリセリドやコレステロールの輸送に関与し、ビタミンK2の転送蛋白でもある。ApoE蛋白には3つのアイソフォーム(E2、E3およびE4)が知られており、このうち、E3が野生型(第112番目がシステイン、第158番目がアルギニン)であると考えられている。E4は第112番目のシステイン(コドン:TGC)がアルギニン(コドン:CGC)に置換されたものである。また、E2は第158番目のアルギニンがシステインに置換されたものである。したがって、ApoE4対立遺伝子は変異部位において制限酵素Hha Iにより切断されるが、ApoE2およびApoE3対立遺伝子は同部位において同酵素により切断されない。これらを要約すると下記の通りである。
【0018】
ApoE2、ApoE3およびApoE4対立遺伝子をそれぞれ2、3および4で表すと、2/2、2/3、2/4、3/3、3/4および4/4の遺伝子型をとり得るが、本発明においては、ApoE遺伝子多型を、3/3を有する遺伝子型3(+)(すなわち、3/3)と、これを有しない遺伝子型3(-)(すなわち、2/2、2/3、2/4、3/4および4/4)とに類別する。
【0019】
本発明の遺伝子多型の測定方法は、VDR遺伝子の多型B(+)とB(-)、ER遺伝子の多型X(+)とX(-)およびApoE遺伝子の多型3(+)と3(-)をそれぞれ区別し得る方法であれば、特に制限されず、サザンハイブリダイゼーション法、シーケンス法、PCR法等の通常のゲノムDNAの検出・分析法を適宜組み合わせた種々の方法が利用できる。
【0020】
これらの遺伝子多型の測定方法は、その原理に基づいて3つに大別される。すなわち、(1)多型部位を含む遺伝子断片を単離して当該部位の塩基配列を決定するか、あるいは特異的なプローブまたはプライマーを用いて多型部位を直接検出する方法、(2)多型部位を含む遺伝子断片の高次構造の差を利用して、電気泳動度により多型を判別する方法および(3)多型部位での制限酵素による切断の可否を利用して、電気泳動度により多型を判別する方法である。(1)の具体的な方法として、例えば、シーケンス法、配列特異的オリゴプローブ(sequence-specific pligonucleotide probes; SSOP)法、アレル特異的増幅(mutant allele specific amplification; MASA)法などが挙げられる。
【0021】
シーケンス法では、まず、VDR遺伝子、ER遺伝子およびApoE遺伝子のそれぞれの多型部位を内部に含む適当な長さの各遺伝子断片を増幅し得るような特異的プライマー対を合成する。該プライマー対は約15〜約40塩基であり、通常のPCRプライマーに要求される好適な条件を満たすものであれば、特に制限されない。次いで、該プライマー対を用い、ヒト由来試料を鋳型としてPCRを行い、目的の各遺伝子断片を増幅させる。PCRの反応条件は通常使用される範囲で適宜選択することができる。各遺伝子断片を適当なベクターにそれぞれサブクローニングし、マキサム・ギルバート法やジデオキシ法を用いた通常のシーケンスにより各多型部位の塩基配列を決定することができる。また、サブクローニングすることなく直接サイクリングシーケンス法により配列決定することもできる。
【0022】
SSOP法は、多型部位を吹くむ約15〜約100塩基の、一方の対立遺伝子配列に完全相補的なプローブを作製し、ハイブリダイゼーション温度を厳密に制御しながらヒト由来試料から抽出したゲノムDNAとサザンハイブリダイゼーションを行い、ハイブリッド形成の有無により遺伝子多型を判別する方法である。ハイブリダイゼーションは各遺伝子について別個に行っても、あるいは同時に行ってもよい。但し、本発明において測定される3つの遺伝子の多型はいずれも1塩基置換であるので、ミスマッチによる不安定効果を最大限にするために、プローブの中央付近に多型部位が存在するようにプローブを設計することが望ましい。好ましい変法として、ハイブリダイゼーションに先立って多型部位を含む断片をPCRで増幅しておくPCR−SSOP法が挙げられる。また、両方の対立遺伝子に完全相補的な2つのプローブを作製し、その一方のみを標識して両者共存下にハイブリダイゼーション法は、ハイブリダイゼーション条件を厳密に制御することなく1塩基置換を判別することができる。
【0023】
MASA法は、多型部位を含む約15〜約40塩基の、一方の対立遺伝子配列に完全相同的(または完全相補的)なオリゴDNAを一方のプライマーとして合成し、アニーリング温度を厳密に制御しながら、ヒト由来試料を鋳型としてPCRを行い、増幅産物の存在の有無により遺伝子多型を判別する方法である。該方法も上記と同様、交叉反応を防ぐためにPCRの条件を高度に制御する必要があるが、自動サーマルサイクラー中で反応を行えば、比較的容易に正確な判別が可能である。
【0024】
上記(2)の方法としては、以下のPCR−SSCP(single-strand conformation polymorphism)法、PCR−DGGE(denaturing gradient gel electrophoresis)法、PCR−CFLP(cleavase fragment length polymorphism)法等が挙げられる。これらの方法は、いずれの方法は、いずれも(1)のシーケンス法と同様にして、多型部位を内部に含む適当な長さの各遺伝子断片を増幅することを第一の工程とし含む。
【0025】
PCR−SSCP法では、増幅産物を加熱またはアルカリ処理等により一本鎖に変性する。一本鎖に解離したDNA断片はその塩基配列に依存した独自の高次構造を形成するので、これをポリアクリルアミド等の非変性ゲル上で電気泳動することにより、1塩基置換の多型を移動度の差として検出することができる。
【0026】
PCR−DGGE法では、増幅産物を変性・再会合させた後、変性剤(SDS、尿素、ホルムアミドなど)の濃度勾配をつけた変性ゲル上で電気泳動する。1塩基置換の多型は、それを含むドメインの融解温度(Tm)を変化させるので、異なる変性剤濃度の位置で部分解離し、その結果異なる移動度を示す。特に、へテロ接合体のDNAの場合、変性・再会合により、野生型および変異型のホモデュプレックスと、ミスマッチを有する2種のヘテロデュプレックスとが生成されるので、4本のバンドが検出される。但し、最もTmの高いドメイン中に変異を有する場合は移動度に差が生じない。その場合は、GCクランプと呼ばれる約20〜約50bpのGCリッチな配列を5’側に付加すれば、その部分が最もTmの高いドメインになるので、多型を移動度の差として検出することができる。
【0027】
PCR−CFLP法は、増幅産物を加熱またはアルカリ処理等により一本鎖に変性し、さらにcleavageと呼ばれるヘアピン構造を認識して切断する酵素で処理した後、ゲル電気泳動を行う方法であり、多型によるヘアピン構造の有無またはヘアピン形成部位の相違をバンドの数および/または移動度の差として検出することができる。
【0028】
上記(3)の方法も、迅速且つ簡便に遺伝子多型を測定できるので好ましい。このような方法としては、RFLP法、PCR−RFLP法等が挙げられる。
【0029】
RFLP法は、ヒト由来試料から単離したゲノムDNAを、一方の遺伝子多型を多型部位で切断し得る酵素(さらに必要に応じて、該多型部位の上流および下流の適当な部位でゲノムDNAを切断し得る他の制限酵素)で消化し、当該遺伝子の部分配列または全配列をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行い、バンドの長さおよび数に基づいて多型を判別する方法である。本発明においては、VDR遺伝子の分析にはBsm Iが、ER遺伝子の分析にはXba Iが、ApoE遺伝子の分析には、Hha Iがそれぞれ使用される。
【0030】
PCR−RFLP法は、VDR遺伝子、ER遺伝子およびApoE遺伝子のそれぞれの多型部位を内部に含む適当な長さの各遺伝子断片を増幅し得るような特異的プライマー対を合成し、該プライマー対を用い、ヒト由来試料を鋳型としてPCRを行い、目的の各遺伝子断片を増幅させた後、増幅産物について上記のRFLP法と同様の制限酵素処理を行い、ゲル電気泳動してバンドの長さおよび数から多型を判別する方法である。また、PCRに先立って制限酵素処理を行えば、制限酵素で切断されるDNAは遺伝子増幅されないので、バンドの有無により多型を判別することができる。
【0031】
上記のような本発明の多型分析により、ヒト由来試料は、VDR遺伝子、ER遺伝子およびApoE遺伝子の遺伝子多型の組み合わせに基づいて、3型遺伝子については、[B(-)X(-)3(-)], [B(-)X(-)3(+)], [B(-)X(+)3(-)], [B(-)X(+)3(+)], [B(+)X(-)3(+)], [B(+)X(+)3(+)]に類別される。
【0032】
本発明は、上記の遺伝子多型の組み合わせに基づいて、該ヒト由来試料が、複数の骨粗鬆症治療薬に対する感受性において特定の優先性を示す個人由来のものであると予測することを特徴とする。本発明において、複数の骨粗鬆症治療薬とは、好ましくはビタミンD、エストロゲンおよびビタミンK2である。また、ここで骨粗鬆症治療薬に対する感受性とは、治療薬の骨粗鬆症治療効果の度合いの大きさ意味する。すなわち、ある患者において薬剤Aが薬剤Bよりも治療効果が高い場合には、「その患者の薬剤Aに対する感受性は薬剤Bに対する感受性に比べて高い」。本発明においては、薬剤投与前後での骨塩量の変化率を感受性の指標とし、[骨塩量変化率]−[期待骨塩量変化率]の値が大きい程、その薬剤に対する感受性が高いと定義する。
【0033】
本発明では、VDR遺伝子、ER遺伝子およびApoE遺伝子の遺伝子多型の組み合わせが、[B(+)X(+)3(+)]および[B(+)X(-)3(+)]の場合、ビタミンK2に対する感受性が、ビタミンDに対する感受性およびエストロゲンに対する感受性に比べて高い個人由来の試料であると予測し、遺伝子多型の組み合わせが、[B(-)X(-)3(+)]および [B(-)X(-)3(-)]の場合、ビミタンDに対する感受性が、ビタミンK2に対する感受性およびエストロゲンに対する感受性に比べて高い個人由来の試料であると予測し、遺伝子多型の組み合わせが、[B(-)X(+)3(+)], [B(-)X(+)3(-)]および[B(+)X(+)3(-)]の場合、エストロゲンに対する感受性が、ビタミンDに対する感受性およびビタミンK2に対する感受性に比べて高い個人由来の試料であると予測することを特徴とする。
【0034】
【表1】
[B(+)X(-)3(-)]については、3つの治療薬のいずれにも感受性がないと推定される。
【0035】
本発明はまた、上記の分析方法を実施するのに有用なヒトゲノムDNA含有試料の遺伝子多型分析用試薬キットに関する。本発明の試薬キットは、VDR遺伝子を特異的に増幅し得るプライマー対、ER遺伝子を特異的に増幅し得るプライマー対、およびApoE遺伝子を特異的に増幅し得るプライマー対、および/またはVDR遺伝子と特異的にハイブリダイズし得る核酸プローブ、ER遺伝子と特異的にハイブリダイズし得る核酸プローブおよびApoE遺伝子と特異的にハイブリダイズし得る核酸プローブを含む。
【0036】
多型分析にシーケンス法、PCR−SSOP法、PCR−SSCP法、PCR−DGGE法、PCR−CFLP法等を用いる場合、各プライマー対は、多型部位を含む各遺伝子断片を増幅し得るように、各遺伝子の多型部位よりも上流の配列と、多型部位よりも下流の配列と同一の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドが使用される。一方、MASA法を用いる場合は、一方のプライマーは、各遺伝子の多型部位を含む領域に完全相同的(=センス)または完全相補的(=アンチセンス)な塩基配列を有するものである。
【0037】
また、多型分析にRFLP法を用いる場合、核酸プローブは各遺伝子の一部または全部の配列を含むものであれば、特に制限されず、多型部位の配列を必ずしも含む必要はない。一方、多型分析にSSOP法またはPCR−SSOP法を用いる場合、核酸プローブは、各遺伝子の多型部位を含む領域の配列に完全相補的な塩基配列を有するものである。
【0038】
本発明において使用するVDR遺伝子に特的なプライマーとは、ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(以下、PCR)法によって、本発明の検出目標部位であるVDRのイントロン8のBsm I制限酵素多型を含むようなVDR遺伝子領域を増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドのうち、ApoE遺伝子、ER遺伝子の増幅プライマーと似通ってTmを有するものである。具体的には、PCR時のアニーリング温度が50℃のものとして、下記増幅プライマーを例示することができる。
gtgcaggcga ttcggtaggg 20 (1) (配列番号1)および
ccagcggaag aggtcaaggg 20 (2) (配列番号2)
【0039】
本発明において使用するApoE遺伝子に特異的なプライマーとは、PCR法によって、本発明の検出目標部位であるApoEの多型領域を含むようなApoE遺伝子領域を増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドのうち、VDR遺伝子、ER遺伝子の増幅プライマーと似通ったTmを有するものである。具体的にはPCR時のアニーリング温度が50℃のものとして、下記増幅プライマーを例示することができる。
ctgggcgcgg acatgg 16 (3) (配列番号3)および
cccggcctgg tacact 16 (4) (配列番号4)、
または
ctgggcgcc acatggagga 20 (5) (配列番号5)および
cccggcctgg tacactgcca 20 (6) (配列番号6)
【0040】
本発明において使用するER遺伝子に特異的なプライマーとは、PCR法によって、本発明の検出目標部位であるERのイントロン1のXba I制限酵素多型を含むようなER遺伝子領域を増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドのうち、VDR遺伝子、ApoE遺伝子の増幅プライマーと似通ったTmを有するものである。具体的にはPCR時のアニーリング温度が50℃のものとして、下記増幅プライマーを例示することができる。
gttccaaatg tcccagccgt 20 (7) (配列番号7)および
cctgcaccag aatatgtacc 20 (8) (配列番号8)、
または
gttccaaatg tcccagccgt 20 (7) (配列番号7) および
cctgcaccag aatatgttacc 21 (9) (配列番号9)
【0041】
本発明において使用するVDR遺伝子を検出するためのプローブとは、VDR遺伝子のBsam I多型部分において、B型またはb型と結合するオリゴヌクレオチドのうち、ApoE遺伝子、ER遺伝子の検出プローブと似通ったTmを有するものである。具体的にはハイブリダイゼーション時の温度が45℃の場合のものとして、下記検出用プローブを例示することができる。
caggcctgcg cattcc 16 (10) (配列番号10)および
caggcctgca cattcc 16 (11) (配列番号11)
【0042】
本発明において使用するApoE遺伝子を検出するためのプローブとは、ApoE遺伝子の多型部分において3(+)型または3(−)型と結合するオリゴヌクレオチドのうち、VDR遺伝子、ER遺伝子の検出プローブと似通ったTmを有するものである。具体的にハイブリダイゼーション時の温度が45℃の場合のものとして、下記検出用プローブを例示することができる。
aggacgtgcg cggc 14 (12) (配列番号12)
aggacgtgtg cggcc 15 (13) (配列番号13)
cagaagcgcc tggcag 16 (18) (配列番号18)および
cagaagtgcc tggcag 16 (19) (配列番号19)
【0043】
本発明において使用するER遺伝子を検出するためのプローブとは、ER遺伝子のXba I多型部分においてX型またはx型と結合するオリゴヌクレオチドのうち、VDR遺伝子、ApoE遺伝子の検出プローブと似通ったTmを有するものである。具体的にハイブリダイゼーション時の温度が45℃の場合として、下記検出用プローブを例示することができる。
gtgtggtcta gagttg 16 (14) (配列番号14)および
gtgtggtctg gagtta 16 (15) (配列番号15)、
または
tctggagttg ggatga 16 (16) (配列番号16)および
gtggtctaga gttggg 16 (17) (配列番号17)
【0044】
本発明のVDR、ApoEおよびER遺伝子増幅用試薬とは、上記増幅プライマー(1),(2),(3),(4),(7)および(8)、または(1),(2),(5),(6),(7),および(8)、または(1),(2),(3),(4),(7)および(9)、または(1),(2),(5),(6),(7)および(9)を含む。
【0045】
該増幅試薬は、さらに耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTPsおよび緩衝液を含む。耐熱性DNAポリメラーゼとしては、Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼなどが例示される。dNTPsとはdATP, dCTP, dGTP, dTTPの混合物をいう。さらに緩衝液としては、使用する耐熱性DNAポリメラーゼに応じて選ばれる。例えば、Taq DNAポリメラーゼで、Mgイオン、グルセロールを含むトリス緩衝液などを使用する。
【0046】
本発明のVDR、ApoEおよびER遺伝子の遺伝子多型分析用試薬キットは、上記検出用プローブ (10),(11),(12),(13),(18),(19),(14)および(15)、または(10),(11),(12),(13),(18),(19)(16)および(17)を含む。
増幅用プライマーまたは検出プローブは直接または間接に標識物質を結合してもよい。標準物質としては、放射性物質、酵素、蛍光性物質またはビオチンなどが例示される。
標識物質が放射性物質であれば、その放射線量を計測する。また、標準物質が酵素、例えばアルカリホスファターゼであれば、その基質である5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリールリン酸−p−トルイジン塩(BCIP)およびニトロ・ブルー・テトラゾリウム(NBT)を作用させ、その生成物を発色強度を測定する。また、アルカリホスファターゼには、1,2−ジオキセタン化合物などの発光性物質を作用させ、該化合物が分解する際に生じる発光量を測定することも可能である。標識物質がビオチンであれば、PCR後、例えばアルカリホスファターゼ結合ビオチンを反応させ、反応後のアルカリホスファターゼを常法に従い、測定する。
【0047】
本発明のVDR、ApoEおよびER遺伝子の遺伝子多型検出用試薬キットは、上記増幅プライマー(1),(2),(3),(4),(7)および(8)、または(1),(2),(5),(6),(7),および(8)、または(1),(2),(3),(4),(7)および(9)、または(1),(2),(5),(6),(7)および(9)、さらに上記検出用プローブ(10),(11),(12),(13),(18),(19),(14)および(15)、または(10),(11),(12),(13),(18),(19),(16)および(17)を含んでいてもよい。
上記増幅試薬において、プライマーはPCR最終組成物中、0.1〜1.0μMであることが好ましい。また、上記検出試薬において、プローブは、0.1〜1.0pmol/μLであることが好ましい。
【0048】
本発明において、上記遺伝子多型を検出する生体試料としては、上記タンパク(VDR、ApoE、ER)を産生する生体から採取されるゲノムであれば、特に制限されないが、例えば、ヒト血球成分からフェノールなどにより抽出し、必要により精製したゲノム(DNA)がある。
本発明のVDR、ApoEおよびER遺伝子多型分析方法とは、通常の遺伝子分析法に従う。すなわち、試料中のDNAをVDR、ApoEおよびER遺伝子に特異的に増幅プライマーを含む増幅試薬を用いて増幅し、次いでVDR、ApoEおよびER遺伝子多型を検出するための検出プローブを含む検出用試薬を用いて、試料中のVDR、ApoEおよびER遺伝子の遺伝子多型を分析する方法である。
具体的には、試料中のDNA、例えばヒト血液から精製したDNAを上記増幅プライマーを含む増幅試薬を用いて増幅し、増幅された試料を上記検出用プローブを含む検出用試薬を用いて、試料中のVDR、ApoEおよびER遺伝子多型を分析する方法である。
【0049】
増幅方法の1つは、一般的にポリメラーゼ・チェイン・リアクション(以下、PCR)法と呼ばれる方法であって、2本鎖の試料DNAを加熱して、1本鎖としてから、該1本鎖を鋳型として増幅プライマーをアニールさせ、次いで加温してDNAポリメラーゼにより該プライマーからdNTPsを合成し、伸長させる。得られた2本鎖を1本鎖に分離して、上記反応を繰り返すことにより、効率的に目標領域を有するDNAを増幅することができる。一般に反応条件は92〜95℃で30秒間〜1分間、50〜65℃を20秒〜1分間、70〜75℃を20秒から5分間を、20〜40回繰り返す。50〜60℃を部分で上記アニールがおこり、反応を成功させるためのアニール温度は、主にプライマー組成によって規定される。70〜75℃の部分で伸長がおこり、反応を成功させるための伸長時間は増幅する目標領域の長さによって規定される。
【0050】
検出方法とは、上記増幅方法により増幅したDNAを検出プローブによって検出する方法である。増幅プライマーには何らかの標識物質が結合してあることが好ましい。標識物質はプライマーに複数結合していてもよい。
【0051】
本発明では、例えば1つの固相担体に3種の検出プローブを固定化し、該検出プローブに増幅した試料DNAを結合させることにより、固相担体上でVDR、ApoEおよびER遺伝子多型を検出することが可能である。固相担体としては、ナイロン膜、マイクロタイター・プレートなどが使用できる。検出プローブを固相担体へ固定化するには、例えば、該検出プローブの末端に、ターミナル・デオキシヌクレオジル・トランスフェラーゼ(TdT)によってdTTPを鎖状に付加(polyT付加)し、上記担体へ物理的吸着させる方法がある。1つの担体、例えばナイロン膜の別々な場所、あるいはマイクロタイター・プレートの個々のウェルにVDR、ApoEおよびER遺伝子の検出プローブを固定化することにより、1つの増幅試料中の3種の遺伝子多型を同時に判定することができる。
【0052】
固相担体上で検出プローブにハイブリダイズした増幅DNAは、結合する標識物質を測定することにより検出できる。
例えば、検出プローブ(1)に対して反応し、(2)に反応しない試料はVDR遺伝子BB型、検出プローブ(1)に対して反応せず、(2)に反応する試料をbb型、検出プローブ(1)および(2)に反応する試料はBb型である。BB型、およびBb型をVDR遺伝子B(+)型、bb型をB(−)型と判定する。
同様に、検出プローブ(3)に対して反応する試料は、ApoE遺伝子4型、検出プローブ(4)に反応する試料は2または3型、検出プローブ(5)に反応する試料はApoE遺伝子3または4型、検出プローブ(6)に対して反応する試料は、ApoE遺伝子2型である。ApoE遺伝子3/3型(つまり、ApoE3(+)型)の場合、検出プローブ(4)および(5)が反応し、検出プローブ(3)および(6)が反応しないことになる。ApoE3(−)型の場合(つまり3/3型以外)、検出プローブ(3)、(4)、(5)および(6)が上記反応を示すこととなる。
検出プローブ(7)または(9)に対して反応し、(8)および(10)に反応する試料をER遺伝子XX型、検出プローブ(8)および(10)に対して反応して、検出プローブ(7)または(9)に対して反応しない試料は、Xx型である。ER遺伝子XXおよびXx型の場合をX(+)型、xx型の場合をX(−)型とする。
これらの組み合わせにより、試料中の3つの遺伝子多型を分析することができる。
【0053】
本発明の試薬キットは、本発明の分析方法を実施するのに好適な各種試薬および/または器具等をさらに含んでいてもよい。
【0054】
【実施例】
以下、参考例および実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【0055】
参考例1
無作為に選んだ閉経後の167人の日本人女性から血液を採取し、血球細胞を分画して、常法によりゲノムDNAを抽出精製した。該ゲノムDNAを鋳型とし、下記プライマー対を用いてVDR遺伝子断片、ER遺伝子断片およびApoE遺伝子断片をそれぞれ別個に増幅した。
VDR遺伝子断片増幅用プライマー:
センス: 5'-caaccaagac tacaagtacc gcgtcagtga-3' (配列番号20)
アンチセンス: 5'-aaccagcggg aagaggtcaa ggg-3' (配列番号21)
ER遺伝子断片増幅用プライマー:
センス: 5'-ctgccaccct atctgtatct tttcctattc tcc-3'(配列番号22)
アンチセンス:5-tctttctctg ccaccctggc gtcgattatc tga-3' (配列番号23)
ApoE遺伝子断片増幅用プライマー:
センス: 5'-cgggcacggc tgtccaagga g-3' (配列番号24)
アンチセンス: 5'-cacgcggccc tgttccacga g-3' (配列番号25)
【0056】
PCR条件は、VDR遺伝子については、変性:94℃、60秒;アニーリング:62℃、60秒;伸長72℃、60秒(30サイクル)、ER遺伝子については、変性94℃、30秒:アニーリング:65℃、30秒;伸長:72℃、30秒(30サイクル);ApoE遺伝子については、変性94℃、30秒;アニーリング:61℃、40秒;伸長:72℃、90秒(30サイクル)であった。このPCR増幅を含む7.2kbpのVDR遺伝子断片、1.3kbpのER遺伝子断片および244bpのApoE遺伝子断片がそれぞれ得られる。VDR遺伝子増幅反応液はBsm Iで、ER遺伝子増幅反応液をXba Iで、ApoE遺伝子増幅反応液をHha Iでそれぞれ処理した後、アガロースゲル電気泳動にかけた。各増幅産物が多型部位において制限酵素で切断される場合、VDR増幅産物では4.6kbpと2.6kbp、ER増幅産物では900bpと400bp、ApoE増幅産物では72、48、38、35、19、17、および15bpのバンドが検出される。
【0057】
ApoE3型遺伝子の検出には増幅産物を制限酵素Hha Iで処理した後、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動にかけ、電気泳動終了後にエチジウムプロマイドでゲルを染色し、バンド・パターンよりApoE遺伝子の遺伝子多型を判別した。
2/2 型 16, 18, 38, 81, 91bp
2/3 型 16, 18, 33, 38, 48, 81, 91bp
2/4 型 16, 18, 19, 33, 38, 48, 72, 81, 91bp
3/3 型 16, 18, 33, 38, 48, 91bp
3/4 型 16, 18, 19, 33, 38, 48, 72, 91bp
4/4 型 16, 18, 19, 33, 38, 48, 72bp
泳動終了後、エチジウムブロマイドでゲルを染色し、バンドバターンからVDR、ERおよびApoE遺伝子多型を判別し、8つの多型群に類別した(表2)。
【0058】
【表2】
遺伝子型別平均治療効果(%)−期待治療効果(%)
【0059】
表2から明らかなように、遺伝子型が[B(+)X(+)3(+)]または[B(+)X(-)3(+)]の場合、ビタミンK2に対する感受性が、ビタミンDに対する感受性およびエストロゲンに対する感受性に比べて高く、[B(-)X(-)3(+)]または [B(-)X(-)3(-)]の場合、ビタミンDに対する感受性が、ビタミンK2に対する感受性およびエストロゲンに対する感受性に比べて高く、[B(-)X(+)3(+)], [B(-)X(+)3(-)]または[B(+)X(+)3(-)]の場合、エストロゲンに対する感受性が、ビタミンDに対する感受性およびビタミンK2に対する感受性に比べて高かった。
【0060】
実施例1
ある日本人の骨粗鬆症患者から血液を採取し、血球細胞を分画して、常法によりゲノムDNAを抽出精製する。該ゲノムDNAを鋳型とし、参考例2と同様の方法でVDR遺伝子、ER遺伝子およびApoE遺伝子の多型を分析する。得られた遺伝子型が[B(+)X(+)3(+)]および[B(+)X(-)3(+)]の場合、該ゲノムDNAは、ビタミンK2に対する感受性が、ビタミンDに対する感受性およびエストロゲンに対する感受性に比べて高い個人由来のものであると判定し、遺伝子型が[B(-)X(-)3(+)]または[B(-)X(-)3(-)]の場合、該ゲノムDNAは、ビタミンDに対する感受性が、ビタミンK2に対する感受性およびエストロゲンに対する感受性に比べて高い個人由来のものであると判定する。さらに、遺伝子型が[B(-)X(-)3(+)]、[B(-)X(-)3(-)]および[B(+)X(+)3(-)]の場合、該ゲノムDNAは、エストロゲンに対する感受性が、ビタミンDに対する感受性およびビタミンK2に対する感受性に比べて高い個人由来のものであると判定する。
【0061】
本発明の分析方法によれば、投薬前に対象となる患者がどの骨粗鬆症治療薬に対してより感受性が高いかを高い確率で予測することできるので、適切な薬剤の選択が可能となる。したがって、治療効果の乏しい薬剤を長期間投与するという非効率的な治療を回避することができ、患者のQOLを向上することができる点が極めて有用である。
【0062】
【発明の効果】
本発明の分析試薬を使用して、VDR、ApoEおよびER遺伝子の3つの遺伝子を増幅し、その増幅物を用いて1回の操作で3つの遺伝子多型を分析することができる。また、これらの遺伝子が骨粗鬆症に関わっていることから、該分析試薬を使用して、ヒト検体中のこれらの遺伝子の遺伝子多型を分析した結果から、その組みあわせにより、有効な骨粗鬆症治療薬を選択することが可能となる。
【0063】
配列番号1、2、20および21:多型部位を含むVDR遺伝子の断片を増幅するためのプライマーとして働くべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号3、4、5、6、24および25:多型部位を含むApoE遺伝子の断片を増幅するためのプライマーとして働くべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号7、8、9、22および23:多型部位を含むER遺伝子の断片を増幅するためのプライマーとして働くべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号10および11:VDR遺伝子の断片を検出するためのプローブとして働くべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号12、13、18および19:ApoE遺伝子の断片を検出するためのプローブとして働くべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号14、15、16および17:ER遺伝子の断片を検出するためのプローブとして働くべく設計されたオリゴヌクレオチド。
【0064】
【配列表】
SEQUENCING LIST
<110> NISSHO CORPORATION
<120> Method for Anticipating Sensitivity to Medicine for Osteoporosis and a Reagent Kit therefor
<130> 12-040
<160> 25
【0065】
<210> 1
<211> 20
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of vitamin D receptor gene
<400> 1
gtgcaggcga ttcggtaggg 20
【0066】
<210> 2
<211> 20
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of vitamin D receptor gen
<400> 2
ccagcggaag aggtcaaggg 20
【0067】
<210> 3
<211> 16
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of apolipoprotein E gene
<400> 3
ctgggcgcgg acatgg 16
【0068】
<210> 4
<211> 16
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of apolipoprotein E gene
<400> 4
cccggcctgg tacact 16
【0069】
<210> 5
<211> 20
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of apolipoprotein E gene
<400> 5
ctgggcgcc acatggagga 20
【0070】
<210> 6
<211> 20
<212> DNA
<213> Human
<222> A part of the base sequence of apolipoprotein E gene
<400> 6
cccggcctgg tacactgcca 20
【0071】
<210> 7
<211> 20
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of estrogen receptor gene
<400> 7
gttccaaatg tcccagccgt 20
【0072】
<210> 8
<211> 20
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of estrogen receptor gene
<400> 8
cctgcaccag aatatgtacc 20
【0073】
<210> 9
<211> 21
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of estrogen receptor gene
<400> 9
cctgcaccag aatatgttac c 21
【0074】
<210> 10
<211> 16
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of vitamin D receptor gene
<400> 10
caggcctgcg cattcc 16
【0075】
<210> 11
<211> 16
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of vitamin D receptor gene
<400> 11
caggcctgca cattcc 16
【0076】
<210> 12
<211> 14
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of apolipoprotein E gene
<400> 12
aggacgtgcg cggc 14
【0077】
<210> 13
<211> 15
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of apolipoprotein E gene
<400> 13
aggacgtgtg cggcc 15
【0078】
<210> 14
<211> 16
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of estrogen receptor gene
<400> 14
gtgtggtcta gagttg 16
【0079】
<210> 15
<211> 16
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of estrogen receptor gene
<400> 15
gtgtggtctg gagttg 16
【0080】
<210> 16
<211> 16
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of estrogen receptor gene
<400> 16
tctggagttg ggatga 16
【0081】
<210> 17
<211> 16
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of estrogen receptor gene
<400> 17
gtggtctaga gttggg 16
【0082】
<210> 18
<211> 16
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of apolipoprotein E gene
<400> 18
cagaagcgcc tggcag 16
【0083】
<210> 19
<211> 16
<212> DNA
<213> Human
<223> A part of the base sequence of apolipoprotein E gene
<400> 19
cagaagtgcc tggcag 16
【0084】
<210> 20
<211> 30
<212> Nuleic acid
<213> Human
<223> Oligonucleotide designed to act as primer for amplifying VDR gene fragment containing polymorphic site
<400> 20
caaccaagac tacaagtacc gctgtcagtga 30
【0085】
<210> 21
<211> 23
<212> DNA
<213> Human
<223> Oligonucleotide designed to act as primer for amplifying VDR gene fragment containing polymorphic site
<400> 21
aaccagcggg aagaggtcaa ggg 23
【0086】
<210> 22
<211> 33
<212> DNA
<213> Human
<223> Oligonucleotide designed to act as primer for amplifying ER gene fragment containing polymorphic site
<400> 22
ctgccaccct atctgtatc tttcctattc tcc 33
【0087】
<210> 23
<211> 33
<212> DNA
<213> Human
<223> Oligonucleotide designed to act as primer for amplifying ER gene fragment containing polymorphic site
<400> 23
tctttctctg ccaccctggc gtcgattatc tga 33
【0088】
<210> 24
<211> 21
<212> DNA
<213> Human
<223> Oligonucleotide designed to act as primer for amplifying ApoE gene fragment containing polymorphic site
<400> 24
cgggcacggc tgtccaagga g 21
【0089】
<210> 25
<211> 21
<212> DNA
<213> Human
<223> Oligonucleotide designed to act as primer for amplifying ApoE gene fragment containing polymorphic site
<400> 25
cacgcggccc tgttccacga g 21
Claims (1)
- ヒトから採取した試料中に含まれるゲノムDNAから、ビタミンD受容体遺伝子、エストロゲン受容体遺伝子およびアポリポ蛋白E3対立遺伝子(2/2、2/3、2/4、3/3、3/4または4/4)のそれぞれの遺伝子多型を分析し、これらの遺伝子多型の組み合わせが、 [B(+)X(+)3(+)] または [B(+)X(-)3(+)] の場合、ビタミンK2に対する感受性が、ビタミンDに対する感受性およびエストロゲンに対する感受性に比べて高い個人由来の試料であると予測し、 [B(-)X(-)3(+)] または [B(-)X(-)3(-)] の場合、ビタミンDに対する感受性が、ビタミンK 2 に対する感受性およびエストロゲンに対する感受性に比べて高い個人由来の試料であると予測し、 [B(-)X(+)3(+)] 、 [B(-)X(+)3(-)] または [B(+)X(+)3(-)] の場合、エストロゲンに対する感受性が、ビタミンDに対する感受性およびビタミンK2に対する感受性に比べて高い個人由来の試料であると予測することを特徴とする骨粗鬆症薬剤感受性予測方法(ここで、Bは第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内で Bsm I により切断されないビタミンD受容体対立遺伝子を、Xは第1エクソンと第2エクソンの間のイントロン領域内で Xba I により切断されないエストロゲン受容体対立遺伝子をそれぞれ表し、B(+)またはX(+)およびB(−)またはX(−)はその対立遺伝子を有するおよび有しないことをそれぞれ表し、3(+)はアポリポ蛋白E遺伝子3/3型を、3(−)はアポリポ蛋白E遺伝子3/3型以外の多型を表している)。
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