JP4048555B2 - 骨粗鬆症薬剤感受性予測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨粗鬆症の治療において有用な情報を提供し得る新規なヒト由来試料の分析方法に関し、さらに詳細には、ヒト由来試料中に存在するゲノムDNAの遺伝子多型の組み合わせから、該試料が骨粗鬆症治療薬剤に対する感受性において、特定の優先性を示すヒト由来のものであると予測する方法に関する。また、本発明は上記の方法において使用し得る遺伝子多型分析用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
骨粗鬆症は骨量(骨に含まれるカルシウムを中心としたミネラルの量)が減少し、かつ骨組織の微細構造が変化し、そのために骨が脆くなり骨折しやすくなった病態である。閉経後の女性や高齢の男性に多く、我が国の患者数は推定1,000万人いわれている。人口の高齢化に伴い、今後も患者数は不可避的に増加するものと予測される。
【0003】
現在、骨粗鬆症の治療薬として、カルシウム製剤、ビタミンD等の骨活性化薬、エストロゲン等の骨吸収抑制薬、ビタミンK等の骨形成促進薬など、種々の薬剤が用いられているが、その治療効果は患者によってまちまちであり、それらをどのように使い分けるかについての検討はほとんどなわれていない。これらの治療薬は単剤投与が原則とされているので、どの治療薬が最も効果的であるかを調べるには、実際に1つの薬剤を数年間患者に投与して、その結果を見て判断するしかないのが現状であり、極めて非効率的である。
【0004】
一方、近年の遺伝子研究から、いくつかの遺伝子の多型と患者の骨粗鬆症治療薬に対する感受性との関連が提唱されている。例えば、ビタミンD受容体(以下、VDRという)遺伝子の第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内でApa Iにより切断されない遺伝子型Aは、同制限酵素によって切断される遺伝子型aに比べてビタミンDに対して高感受性であるとの報告がある(例えば、特開平8-126497号公報および特開平8-126500号公報参照)。
【0005】
また、白木ら〔1997年骨代謝学会要旨集52頁〕には、VDR遺伝子の多型とビタミンD感受性、エストロゲン受容体(以下、ERという)遺伝子の多型とエストロゲン感受性およびアポリポ蛋白E(以下、ApoE)遺伝子の多型とビタミンK2感受性について調べた結果、VDR遺伝子型AABBまたはAABb(AおよびBはそれぞれ第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内で、ApaIおよびBsm Iにより切断されない遺伝子型)はaabbに比べて、ビタミンD3に対する感受性が有意に低く、また、ER遺伝子型PpXx(PおよびXはそれぞれPvu IIおよびXba Iで切断されない遺伝子型)は他の遺伝子型群に比べてエストロゲンに対する感受性が有意に高く、さらに、ApoE4(+)群はApoE4(-)群に比べて、ビタミンK2に対する感受性が有意に低かったと記載されている。
【0006】
さらに、ビタミンD結合蛋白(DBP)遺伝子をHae IIIおよびStyIで切断して得られるRFLPパターンが、GC2−2型のものは、他の群に比べてビタミンD類に対する感受性が高いと記載されている(特開平8-201373号公報)。
【0007】
しかしながら、これらはいずれも1遺伝子の多型から1つの薬剤に対する感受性を予測するものであり、1つの薬剤について、他の遺伝子型よりも感受性が高いか否かを予測するものでしかない。すなわち、VDR遺伝子型がaabbでかつApoE遺伝子型がApoE4(-)である人は、他のVDR遺伝子型およびApoE遺伝子型を有する人に比べて、ビタミンDおよびビタミンK2に対する感受性が高いと予測されるが、それでは、このような遺伝子型を有する患者に対してビタミンDを投与するのとビタミンK2を投与するのとでは、どちらがより高い治療効果が得られるかについては、依然として予測することができない。従って、結局のところ、異なる薬剤のいずれに対して患者がより感受性が高いかを知るには、上述のように、実際に各薬剤を、1つの薬剤について数年間のスパンで順次患者に投与して結果を見るしかなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、骨粗鬆症患者もしくは将来、骨粗鬆症を発症する可能性のある人が、複数の骨粗鬆症薬のいずれに対してより高い感受性を有するかを予測する手段を提供することであり、それによって治療効果の低い薬剤の長期投与による病状の進行を回避し、患者のQOL(Quality of life)を向上することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ゲノムDNAを含有するヒト由来試料を、VDR遺伝子およびApoE遺伝子の多型について分析することにより、得られる多型の組み合わせに基づいて、ビタミンDおよびビタミンK2のうちのいずれかの薬剤に対する感受性が、他方の薬剤に対する感受性に比べて高いかを予測することが可能であることを見出した。すなわち、他の遺伝子型に比べてビタミンDに高感受性のVDR遺伝子型および他の遺伝子型に比べてビタミンK2に高感受性のApoE遺伝子型を有する場合、ビタミンDよりもビタミンK2に対してより感受性が高い傾向を見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明はヒトから採取した試料中に含まれるゲノムDNAから、ビタミンD受容体遺伝子およびアポリポ蛋白E遺伝子のそれぞれの遺伝子型を分析し、これらの遺伝子型の組み合わせに基づいて、該試料が複数の骨粗鬆症治療薬に対する感受性において特定の優先性を示すヒト由来のものであることを予測することを特徴とする骨粗鬆症薬剤感受性予測方法である。
【0011】
また、本発明はビタミンD受容体遺伝子を特異的に増幅し得るプライマー対およびアポリポ蛋白E遺伝子を特異的に増幅し得るプライマー対、および/またはビタミンD受容体遺伝子と特異的にハイブリダイズし得る核酸プローブおよびアポリポ蛋白E遺伝子と特異的にハイブリダイズし得る核酸プローブを含むことを特徴とするヒトゲノムDNA含有試料の遺伝子多型分析用キットである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の分析方法に供され得るヒト由来試料は、ヒトゲノムDNAを含有するものであれば特に限定されない。たとえば、ヒト各種細胞、組織などから単離されたゲノムDNAが含まれる。好ましくは、全血、分画された血球細胞、擦過診材料として使用される表皮細胞や粘膜細胞、あるいは毛髪など、入手が容易で且つPCR法の鋳型DNA使用として、従来から使用されている細胞、組織などが例示される。この場合、例えば細胞、組織などを水中で煮沸したり、あるいはアルカリ溶液中で加熱することにより、細胞を破砕してゲノムDNA試料とする。ゲノムDNAの抽出は、SDS/フェノール法、グアニジンチオシアネート法、CTAB法等の慣用の方法で行えばよい。
【0013】
本発明の分析方法は、VDR遺伝子およびApoE遺伝子についての遺伝子多型を分析することを特徴とする。
VDR(ビタミンD受容体)とは、ビタミンDの効果発現系において大きな役割を果たす427個のアミノ酸配列を有する蛋白質である。ビタミンDが骨およびカルシウム代謝の有力な制御因子であることから、VDRも骨量などに大きく関っている。
VDR遺伝子とは第12番染色体上に存在する上記VDRをコードする遺伝子である。VDR遺伝子の多型の1つは、第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内での制限酵素Bsm Iによる切断の可否によって検出される。Bsm Iで切断されない対立遺伝子をB、同酵素によって切断される対立遺伝子をbで表すと、BB、Bbおよびbbの3つの遺伝子型をとり得る。しかし、本発明においては、VDR遺伝子多型は、対立遺伝子Bを有する遺伝子型B(+)(すなわち、BBおよびBb)と対立遺伝子Bを有しない遺伝子型B(-)(すなわち、bb)とに類別される。なお、VDR遺伝子の多型部位とは、対立遺伝子bの第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内のBsm I制限部位(GAATGC)および対立遺伝子Bのそれに対応する部位(GAATGT)をいうものとする。
【0014】
ApoE蛋白とは、リポ蛋白によるトリグリセリドやコレステロールの輸送に関与する蛋白であり、さらにリポ蛋白を介したビタミンK2の転送に関与する蛋白でもあり、299個のアミノ酸配列を有する。ApoE蛋白には3つのアイソフォーム(E2、E3およびE4)が知られており、このうち、E3が野性型であると考えられている。E4は第112番目のシステイン(コドン:TGC)がアルギニン(コドン:CGC)に置換されたものである。また、E2は第158番目のアルギニンがシステインに置換されたものである。
ApoE遺伝子とは第19番染色体上に存在し、上記ApoEをコードする遺伝子であり、4つのエクソンと3つのイントロンからなる。上記3つのアイソフォームが存在することから、ApoE4対立遺伝子は変異部位において、制限酵素Hha Iにより切断されるが、ApoE2およびApoE3対立遺伝子は同部位において同酵素により切断されない。また、ApoE2、ApoE3およびApoE4対立遺伝子をそれぞれ2、3および4で表すと、2/2、2/3、2/4、3/3、3/4および4/4の遺伝子型をとり得る。しかし、本発明においては、ApoE遺伝子多型は対立遺伝子4を有する遺伝子型4(+)(すなわち、2/4、3/4および4/4)と、対立遺伝子4を有しない遺伝子型4(-)(すなわち、2/2、2/3および3/3)とに分類する。なお、ApoE遺伝子の多型部位とは、対立遺伝子4の第112コドンにおけるHhaI制限部位(GCGC)および対立遺伝子2および3のそれに対応する部位(GTGC)をいうものとする。
【0015】
本発明において、ビタミンD受容体遺伝子およびアポリポ蛋白E遺伝子の遺伝子多型の組み合わせは、[B(-)4(-)], [B(-)4(+)], [B(+)4(-)]および[B(+)4(+)]からなる群より選択されるいずれかである(ここで、Bは第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内でBsm Iにより切断されないビタミンD受容体対立遺伝子を、4はApoE4型アポリポ蛋白E対立遺伝子をそれぞれ表し、(+)または(-)はその対立遺伝子を有する、または有しないことをそれぞれ表している)。
【0016】
本発明の遺伝子多型の測定法は、VDR遺伝子の多型B(+)とB(-)およびApoE遺伝子の多型4(+)と4(-)をそれぞれ区別し得る方法であれば、特に制限されず、サザンハイブリダイゼーション法、シーケンス法、PCR法等の通常ゲノムDNAの検出・分析法を適宜組み合わせた種々の方法が利用できる。
【0017】
これら遺伝子多型の測定法法は、その原理に基づいて3つ
に大別される。すなわち、(1)多型部位を含む遺伝子断片を単離して当該部位の塩基配列を決定するか、あるいは特異的なプローブまたはプライマーを用いて多型部位を直接検出する方法、(2)多型部位を含む遺伝子断片の高次構造の差を利用して、電気泳動により多型を判別する方法、および(3)多型部位での制限酵素による切断の可否を利用して、電気泳動により多型を判別する方法である。(1)の具体的な方法としては、例えば、シーケンス法、配列特異的オリゴプローブ(sequence-specific oligonucleotide probe;SSOP)法、アレル特異的増幅(mutant allelespecific amplification;MASA)法などが挙げられる。
【0018】
シーケンス法では、まず、VDR遺伝子およびApoE遺伝子のそれぞれの多型部位を内部に含む適当な長さの各遺伝子断片を増幅し得るような特異的プライマー対を合成する。該プライマー対は約15〜40塩基であり、通常のPCRプライマーに要求される好適な条件を満たすものであれば特に制限されない。次いで、該プライマー対を用い、ヒト由来試料を鋳型としてPCRを行い、目的の各遺伝子断片を増幅させる。PCRの反応条件は通常使用される範囲で適宜選択することができる。各遺伝子断片の増幅は別個に行っても同時に行ってもよい。得られた増幅断片を適当なベクターにそれぞれサブクローニングし、マキサム・ギルバート法やジデオキシ法を用いた通常のシーケンスにより、各多型部位の塩基配列を決定することができる。また、サブクローニングすることなく、直接サイクルシーケンス法により配列決定することもできる。
【0019】
SSOP法は、多型部位を含む約15〜100塩基の一方の対立遺伝子配列に完全に相補的なプローブを作製し、ハイブリダイゼーション温度を厳密に制御しながら、ヒト由来試料から抽出したゲノムDNAとサザンハイブリダイゼーションを行い、ハイブリッド形成の有無により遺伝子多型を判別する方法である。ハイブリダイゼーションは各遺伝子について別個に行っても同時に行ってもよい。但し、本発明において測定される3つの遺伝子の多型はいずれも1塩基置換であるので、ミスマッチを含むプローブとの交叉反応を防ぐためにはハイブリダイゼーション条件を高度に制御する必要がある。また、ミスマッチによる不安定化効果を最大限にするために、プローブの中央付近に多型部位が存在するようにプローブを設計することが望ましい。好ましい変法として、ハイブリダイゼーションに先立って多型部位を含む断片をPCRで増幅しておくPCR−SSOP法が挙げられる。また、両方の対立遺伝子に完全相補的な2つのプローブを作製し、その一方のみを標識して両者共存化にハイブリダイゼーションを行う競合的ハイブリダイゼーション法は、ハイブリダイゼーション条件を厳密に制御することなく1塩基置換を判別することができる。
【0020】
MASA法は、多型部位を含む約15〜40塩基の一方の対立遺伝子配列に完全相同的(または完全相補的)なオリゴDNAを一方のプライマーとして合成し、アニーリング温度を厳密に制御しながら、ヒト由来試料を鋳型としてPCRを行い、増幅産物の存在の有無により遺伝子多型を判別する方法である。該方法も上記と同様、交叉反応を防ぐためにPCRの条件を高度に制御する必要があるが、自動サーマルサイクラー中で反応を行えば、比較的容易に正確な判断が可能である。
【0021】
上記(2)の方法としては、以下のPCR−SSCP(single-strand conformation polymorphism)法、PCR−DGGE(denatureing gradient gel electrophoresis)法、OCR−CFLP(cleavase fragment length polymorphism)法等が挙げられる。これらの方法は、いずれも(1)のシーケンス法と同様にして、多型部位を内部に含む適当な長さの各遺伝子断片を増幅することを第一の工程として含む。
【0022】
PCR−SSCP法では、増幅産物を加熱またはアルカリ処理等により一本鎖に変成する。一本鎖に解離したDNA断片はその配列に依存した独自の高次構造を形成するので、これをポリアクリルアミドゲル等の非変成ゲル上で電気泳動することにより、1塩基置換の多型を移動度の差として検出することができる。
【0023】
PCR−DGGE法では、増幅産物を変成、再合成させた後、変性剤(SDS、尿素、ホルムアミドなど)の濃度勾配をつけた変成ゲル上で電気泳動する。1塩基置換の多型は、それを含むドメインの融解温度(Tm)を変化させるので異なる変性剤濃度の位置で部分解離し、その結果、異なる移動度を示す。特に、ヘテロ接合体のDNAの場合、変成・再会合により、野性型および変異型のホモデュプレックスと、ミスマッチを有する2種のヘテロデュプレックスとが生成されるので、4本のバンドが検出される。但し、最もTmの高いドメイン中に変異を有する場合は移動度に差を生じない。その場合は、GCクランプと呼ばれる約20〜約50bpのGCリッチな配列を5’側に付加すれば、その部分が最もTmの高いドメインになるので、多型を移動度の差として検出することができる。
【0024】
PCR−CFLP法は、増幅産物を加熱またはアルカリ処理等により一本鎖に変成し、さらにクレバーゼ(cleavase)と呼ばれるヘアピン構造を認識して切断する酵素で処理した後、ゲル電気泳動を行う方法であり、多型によるヘアピン構造の有無またはヘアピン形成部位の相違をバンドの数および/または移動度の差として検出することができる。
【0025】
上記(3)の方法も、迅速且つ簡便に遺伝し多型を測定できるので好ましい。このような方法としては、RFLP法、PCR−RFLP法等が挙げられる。
【0026】
RFLP法は、ヒト由来試料から単離したゲノムDNAを、一方の遺伝子多型を多型部位で切断し得る制限酵素(さらに必要に応じて、該多型部位の上流および下流の適当な部位でゲノムDNAを切断し得る他の制限酵素)で消化し、当該遺伝子の部分配列または全配列をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行い、バンドの長さおよび数に基づいて多型を判別する方法である。本発明においてはVDR遺伝子の分析にはBsm Iが、ApoE遺伝子の分析にHha Iがそれぞれ使用される。
【0027】
PCR−RFLP法は、VDRおよびApoE遺伝子のそれぞれの多型部位を内部に含む適当な長さの各遺伝子断片を増幅し得るような特異的プライマー対を合成し、該プライマー対を用い、ヒト由来試料を鋳型としてPCRを行い、目的の遺伝子断片を増幅させた後、増幅産物について上記のRFLP法と同様の制限酵素処理を行い、ゲル電気泳動してバンドの長さおよび数から判別する方法である。また、PCRに先立って制限酵素処理を行えば制限酵素で切断されるDNAは遺伝子増幅されないので、バンドの有無により多型を判別することができる。
【0028】
上記のような本発明の多型分析により、ヒト由来試料は、VDR遺伝子およびApoE遺伝子の遺伝子多型の組み合わせに基づいて、[B(-)4(-)], [B(-)4(+)], [B(+)4(-)]および[B(+)4(+)]に類別される。
【0029】
本発明は、上記の遺伝子多型の組み合わせに基づいて、該ヒト由来試料が複数の骨粗鬆症治療薬に対する感受性において特定の優先性を示すヒト由来のものであると予測することを特徴とする。本発明において、複数の骨粗鬆症治療薬とは、好ましくはビタミンDおよびビタミンK2である。また、ここで骨粗鬆症治療薬に対する感受性とは、治療薬の骨粗鬆症治療効果の度合いの大きさを意味する。すなわち、ある患者において薬剤Aが薬剤Bよりも治療効果が高い場合には、「その患者の薬剤Aに対する感受性は薬剤Bに対する感受性に比べて高い」。本発明においては、薬剤投与前後での骨塩量の変化率を感受性の指標とし、[骨塩量変化率]−[期待骨塩量変化率]の値が大きい程、その薬剤に対する感受性が高いと定義する。
【0030】
本発明の分析方法では、VDR遺伝子およびApoE遺伝子の遺伝子多型の組み合わせが、[B(-)4(-)]および[B(+)4(-)]の場合、ビタミンK2に対する感受性が、ビタミンDに対する感受性に比べて高いヒト由来の試料であると予測し、遺伝子多型の組み合わせが[B(-)4(+)]の場合、ビタミンDに対する感受性が、ビタミンK2に対する感受性に比べて高いヒト由来の試料であると予測することを特徴とする。
【0031】
本発明はまた、上記の分析方法を実施するのに有用なゲノムDNA含有試料の遺伝子多型分析用キットを提供する。本発明のキットは、VDR遺伝子を特異的に増幅し得るプライマー対およびApoE遺伝子を特異的に増幅し得るプライマー対、および/またはVDR遺伝子と特異的にハイブリダイズし得る核酸プローブおよびApoE遺伝子と特異的にハイブリダイズし得る核酸プローブを含む。
【0032】
多型分析にシーケンス法、PCR−SSOP法、PCR−SSCP法、PCR−DGGE法、PCR−CFLP法等を用いる場合、各プライマー対は、多型部位を内部に含む各遺伝子断片を増幅し得るように、各遺伝子の多型部位よりも上流の配列と、多型部位よりも下流の配列と同一の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドが使用される。一方、MASA法を用いる場合は、一方のプライマーは、遺伝子の多型部位を含む領域に完全相同的(=センス)または完全相補的(=アンチセンス)な塩基配列を有するものである。
【0033】
また、多型分析にRFLP法を用いる場合、核酸プローブは各遺伝子の一部または全部を含むものであれば特に制限されず、多型部位の配列を必ずしも含む必要はない。一方、多型分析にSSOP法またはPCR−SSOP法を用いる場合、核酸プローブは、各遺伝子の多型部位を含む領域の配列に完全相補的な塩基配列を有するものである。
【0034】
本発明のキットは、本発明の分析方法を実施するのに好適な各種試薬および/または器具等をさらに含んでいてもよい。
【0035】
【実施例】
以下、参考例および実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【0036】
参考例1
無作為に選んだ閉経後の151人の日本人女性から血液を採取し、血球細胞を分画して、常法によりゲノムDNAを抽出精製した。該ゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマー対を用いてVDR遺伝子断片およびApoE遺伝子断片をそれぞれ個別に増幅した。
【0037】
PCR条件は、VDR遺伝子については、変成94℃、60秒;アニーリング:62℃、60秒;伸長:72℃、60秒(30サイクル)、ApoE遺伝子については、変成:94℃、30秒;アニーリング:61℃、40秒;伸長:72℃、90秒(30サイクル)であった。このPCR増幅により、多型部位を含む7.2kbpのVDR遺伝子段の案および244bpのApoE遺伝子断片がそれぞれ得られた。
【0038】
VDR遺伝子増幅反応液をBsm Iで、ApoE遺伝子増幅反応液をHha Iでそれぞれ処理した後、アガロースゲル電気泳動にかけた。各増幅産物が多型部位において制限酵素で切断され場合、VDR増幅産物では4.6kbpと2.6kbp、ApoE増幅産物では72、48、38、35、19、17および15bpのバンドが検出された。4型を持たない(すなわち、4(-))場合は認められない72bpのバンドが検出された。泳動終了後、エチジウムブロマイドでゲルを染色し、バンドパターンからVDRおよびApoEの遺伝子型を判別し、4つの多型群に類別した(表2)。
【0039】
上記のように多型分析を行った日本人女性151人の骨塩量をそれぞれ測定した。次いで、これらの患者にビタミンD3またはビタミンK2のいずれかを6ヶ月間投与した。投与量はビタミンD3が1μg/日およびビタミンK2が45mg/日であった。6ヶ月後に再度骨塩量を測定し、薬剤投与前の骨塩量に対する変化率を求めた。各遺伝子型別の平均骨塩量変化率から各薬剤の治療効果期待値(無作為に抽出した患者に対する全平均治療効果;表1)を差し引いた値を各遺伝子型における薬剤感受性とした。その結果を表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表2から明らかなように、遺伝子型が[B(-)4(-)]および[B(+)4(-)]の場合、ビタミンK2に対する感受性が、ビタミンDに対する感受性に比べて高く、遺伝子型が[B(-)4(+)]の場合ビタミンDに対する感受性が、ビタミンK2に対する感受性に比べ高かった。
【0043】
実施例1
ある日本人の骨粗鬆症患者から血液を採取し、血球細胞を分画して、常法によりゲノムDNAを抽出精製する。該ゲノムDNAを鋳型とし、参考例1と同様の方法でVDR遺伝子およびApoE遺伝子の多型を分析する。得られた遺伝子型が[B(-)4(-)]および[B(+)4(-)]の場合、該ゲノムDNAは、ビタミンK2に対する感受性が、ビタミンDに対する感受性に比べ高いヒト由来のものであると判定し、遺伝子型が[B(-)4(+)]の場合、該ゲノムDNAは、ビタミンDに対する感受性が、ビタミンK2に対する感受性比べて高いヒト由来主のであると判定する。
【0044】
【発明の効果】
本発明の分析方法によれば、投薬前に対象となる患者がどの骨粗鬆症治療薬に対してより感受性が高いかを高い確率で予測することができるので、適切な薬剤選択が可能となる。したがって、治療効果の乏しい薬剤を長期間投与するという非効率的な治療を回避することができ、患者のQOLを向上することができる点で有用である。
【0045】
【配列表】
【0046】
【0047】
【0048】
Claims (1)
- ヒトから採取した試料中に含まれるゲノムDNAから、ビタミンD受容体遺伝子およびアポリポ蛋白E遺伝子のそれぞれの遺伝子型を分析し、これらの遺伝子多型の組み合わせに基づいて、該試料が複数の骨粗鬆症治療薬に対する感受性を予測する方法であって、
ビタミンD受容体遺伝子およびアポリポ蛋白E遺伝子の遺伝子型の組み合わせが、[B(-)4(-)]の場合、ビタミンK2に対する感受性がビタミンDに対する感受性に比べて高いヒト由来の試料である
と予測することを特徴とする骨粗鬆症薬剤感受性予測方法(ここで、Bは第8エクソンと第9エクソンの間のイントロン領域内でBsm Iにより切断されないビタミンD受容体対立遺伝子を、4はApoE4型アポリポ蛋白E対立遺伝子をそれぞれ表し、(+)または(-)はその対立遺伝子を有する、または有しないことをそれぞれ表している)。
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