JPWO2004077042A1 - 電気泳動用ゲル及びその製造法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカン、または該グルカンと、第2の多糖、あるいは、アクリルアミド及び/又はその誘導体との混合物から調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル;β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、該グルカンのヘリックス構造を破壊し得る第1の溶媒に溶解して1本鎖構造のグルカンとした後、第1の溶媒を除去し、該1本鎖構造のグルカンを溶解する第2の溶媒に溶解し、加熱処理する上記電気泳動用ゲルの製造法を提供するものである。本発明のゲルは、孔径の調整が容易で、広範囲の分子量の核酸又は蛋白質の分離分析ができ、ゲル上又はゲル中に分離展開した核酸又は蛋白質の染色による検出が妨害されることが無い。

Description

本発明は、新規な電気泳動用ゲル、その製造方法、およびそれを用いる電気泳動法に関するものであり、さらに詳しくは生化学、医学の分野において、核酸又は蛋白質の電気泳動による分離分析に際して、支持体として使用される新規なゲル、その製造方法、およびそれを用いる電気泳動法に関するものである。
従来、核酸又は蛋白質を電気泳動により分離分析するための支持体として、アガロースゲルやポリアクリルアミドゲルが用いられている。通常、これらのゲルによる分離分析は分子篩い効果により行われるが、それぞれのゲルの孔径は異なり、分析の対象となる物質の大きさにより使い分けられている。すなわち、比較的高分子量の核酸又は蛋白質の電気泳動にはアガロースゲルが、比較的低分子量の核酸又は蛋白質にはポリアクリルアミドゲルが使われている。
近年、アガロースやポリアクリルアミドを支持体とするゲル電気泳動法が確立され、高い精度の分子篩い効果により高分解能が期待できるようになった。しかし、アガロースゲル及びポリアクリルアミドゲルによる電気泳動法には以下のような問題点がある。
まず、アガロースはゲルの透明性が低く、白濁している。特に、対象物質が低分子の場合、より高濃度のゲルを用いる必要があるが、低分子のDNAの分画に高濃度ゲルを使用すると、電気泳動後、DNAの鮮明な検出像を得ることが困難となる。また、微量の不純物として、硫酸基やカルボキシル基などの陰性荷電基を含むため、電気浸透が大きくなり、特に等電点電気泳動法においては大きな問題になる。
一方、ポリアクリルアミドの場合は、電気泳動に使用するに足る強度を持つゲルを形成できるポリアクリルアミド濃度が実質4〜30質量%である。この濃度範囲のゲルは、孔径が小さいので、電気泳動に使用できる強度を持つアガロースゲル内なら移動できる分子量の物質でも、大きな分子量のものはポリアクリルアミドゲル内の移動が阻害される。即ち、ポリアクリルアミドゲルは、アガロースゲルに比べ、分離可能な物質の分子量の範囲が狭い。また、ポリアクリルアミドゲルの調製方法は非常に煩雑である。
また、電気泳動法は、分離した物質をゲルから容易に抽出回収することができれば、特に蛋白質の有用な分離精製法となり得るが、ポリアクリルアミドゲルからの蛋白質の回収率は一般的に低い。比較的回収率の高い電気的溶出法の場合でも、専用の装置が必要であること、操作が煩雑であることなどの問題がある。
また、Schizophyllum commune Fries(スエヒロタケ)が産生するシゾフィラン、Sclerotium glucanicumが産生するスクレログルカン、レンチナン、ラミナラン、パキマンなどの水溶性グルカンは、何本かの分子鎖が絡み合ってヘリックス構造を持つ多量体を形成しており、これらヘリックス構造を持つ多量体を、水素結合を破壊する溶媒に溶解すると1本鎖状に溶解し、この溶解液から該溶媒を除去するとゲルを形成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、シゾフィランについては、水中では三重らせん(以下3本鎖という)分子として、またジメチルスルホキシド中では3本鎖がほどけたランダムコイル(以下1本鎖という)として溶解することが確かめられている(例えば、非特許文献1参照)。また、シゾフィランの水溶液を135℃に加熱しても、3本鎖が1本鎖として融解し、これを再び冷却すると、ゲルを形成することが見出されている(例えば、非特許文献2参照)。
なお、グルカンと類似した構造をもつ多糖であるカードランを電気泳動用ゲルとして利用できることが知られているが(例えば、特許文献2及び3参照)、カードランゲルは透明ではなく、特に蛋白質を分離した後、染色法により蛋白質のスポットを検出する際にその不透明さが問題となる。
特許文献1 特開昭56−127603号公報
特許文献2 特許第2628229号
特許文献3 米国特許第4774093号
非特許文献1 T.Norisue,J.Polym.Sci.Polym.Phys.Ed.,18.547(1980)
非特許文献2 T.Yanaki,Carbohydr.Polym.,5,275(1985)
本発明は、上記問題を解決することを目的とするものであり、生化学、医学の分野における核酸又は蛋白質の分離分析を、電気泳動法により、より簡便に、より効率良く、かつより安全に行うことができる、新規の電気泳動用ゲル、その製造方法、およびそのゲルを用いる電気泳動法を提供することを目的としている。
さらに具体的には、本発明の目的は、孔径の調整が容易で、広範囲の分子量の核酸又は蛋白質の分離分析ができ、ゲル上又はゲル中に分離展開した核酸又は蛋白質の染色による検出が妨害されることが無いような電気泳動用ゲルを提供することである。
本発明の他の目的は、上記電気泳動用ゲルの製造法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、上記電気泳動用ゲルを用いた電気泳動法を提供することである。
本発明の他の目的は、上記電気泳動用ゲルを用いた核酸又は蛋白質の分離精製法を提供することである。
本発明者は上記課題を克服すべく鋭意研究を重ねた結果、β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖にもつ、種々の分子量の水溶性グルカンを含有するゲルを調製し、それを電気泳動の支持体とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示す電気泳動用ゲル、その製造方法、それを用いる電気泳動法、それを用いる核酸又は蛋白質の電気泳動による分離精製法を提供するものである。
なお、この明細書において、「核酸」とは、ポリヌクレオチド鎖のみからなる核酸の他、ヌクレオチド以外の成分が結合した核酸複合体(例えば、各種糖類と結合した糖核酸、各種脂質と結合したリポ核酸、各種蛋白質と結合した核酸蛋白質など)、これらの同種又は異種のものが2以上会合した会合体も意味するものであり、「蛋白質」とは、ポリペプチド鎖のみからなる単純蛋白質の他、アミノ酸又はペプチド以外の成分が結合した複合蛋白質(例えば、各種糖類が結合した糖蛋白質、各種脂質が結合したリポ蛋白質、各種核酸が結合した核酸蛋白質)、これらの2種以上が会合した会合体も意味するものとする。
1.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカンから調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
2.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカンと、該グルカン以外の第2の多糖との混合物から調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
3.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物との混合物から調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
4.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカンと、該グルカン以外の第2の多糖と、及びポリアクリルアミド形成用組成物との混合物から調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
5.乾燥ゲルである上記1〜4のいずれか1項記載の電気泳動用ゲル。
6.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、該グルカンのヘリックス構造を破壊し得る第1の溶媒に溶解して1本鎖構造のグルカンとした後、第1の溶媒を除去し、該1本鎖構造のグルカンを溶解する第2の溶媒に溶解し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
7.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、アルカリ性水溶液に溶解し、該溶液にアルカリ中和物質を加えて中和することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
8.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、アルカリ性水溶液に溶解し、該溶液にアルカリ中和物質を加えて中和し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
9.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、該グルカンのヘリックス構造を破壊し得る第1の溶媒に溶解して1本鎖構造のグルカンとした後、第1の溶媒を除去して得られる該1本鎖構造のグルカンと、グルカン以外の第2の多糖とを第2の溶媒に溶解し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
10.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、グルカン以外の第2の多糖とをアルカリ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
11.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、グルカン以外の第2の多糖とをアルカリ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
12.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、該グルカンのヘリックス構造を破壊し得る第1の溶媒に溶解して1本鎖構造のグルカンとした後、第1の溶媒を除去し、該1本鎖構造のグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物とを第2の溶媒に溶解し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
13.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物とをアルカリ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
14.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物とをアルカリ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
15.上記1〜5のいずれか1項記載の電気泳動用ゲル、又は上記6〜14のいずれか1項記載の方法により製造された電気泳動用ゲルを支持体として使用することを特徴とする電気泳動法。
16.上記1〜5のいずれか1項記載の電気泳動用ゲル、又は上記6〜14のいずれか1項記載の方法により製造された電気泳動用ゲルを支持体として使用することを特徴とする核酸又は蛋白質の分離精製法。
17.上記1〜5のいずれか1項記載の電気泳動用ゲル、又は上記6〜14のいずれか1項記載の方法により製造された電気泳動用ゲルを支持体として使用し、電気泳動後のゲルを酵素処理することを特徴とする核酸又は蛋白質の分離精製法。
18.β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカンの、電気泳動用ゲルの製造のための使用。
本発明の電気泳動用ゲルは、グルカンの分子量、濃度などにより容易にゲルの孔径などを幅広い範囲で調節することができ、特に高分子量の1本鎖シゾフィランの低濃度ゲルはポリアクリルアミドゲルに比べてゲルの孔径が大きいため、1000kDa以上の高分子量の核酸又は蛋白質を、その高次構造および生理活性を保ったまま分離分析することができる。
また、本発明のゲルは、ゲルの透明性が非常に高いため、ゲル上又はゲル中の核酸又は蛋白質の染色による検出が妨害されず、広範囲の分子量の蛋白質、DNAなどの分離分析が可能になる。さらに、ゲル上又はゲル中に展開分離した物質の回収が容易なため、分取を目的とする電気泳動用ゲルとしても利用できる。
図1は、実施例3、比較例(1)及び比較例(2)の各ゲル上での25〜250kDaの蛋白質の電気泳動パターンを示す図である。
図2は、シゾフィランの分子量及び濃度が異なる2種類のゲル上での50kDaの蛋白質(BPB)の電気泳動パターンを示す図である。
図3は、実施例5とその比較例の各ゲル上での75〜250kDaの高分子量蛋白質の電気泳動パターンを示す図である。
図4は、実施例6とその比較例の各ゲル上での67〜1000kDaの高分子量蛋白質の電気泳動パターンを示す図である。
図5は、2種類のDNA分子量マーカー((1)Smart Ladder及び(2)pBR322/Msp I digest)の電気泳動パターンについて、実施例8のゲル上のものと、3重量%アガロースゲル上のものを比較した図である。
図6は、1本鎖シゾフィランとデンプンから調製した変性系電気泳動用チューブゲル上での、蛋白質分子量マーカーの泳動パターンを示す図である。
図7は、DNAの電気泳動パターンを、1本鎖シゾフィランと市販寒天の混合物から調製したゲルと、市販寒天のみから調製したゲルとで比較した図である。
図8は、実施例16とその比較例の各ゲル上での10〜250kDaの蛋白質の分離パターンを示す図である。
図9は、実施例20とその比較例(17%ポリアクリルアミドゲル)の各ゲル上での4−34.5kDaの蛋白質の分離パターンを示す図である。
図10は、勾配ゲル形成器の一例を示す図面である。
図11は、実施例22とその比較例(4−20%勾配ポリアクリルアミドゲル)の各ゲル上での10−250kDaの蛋白質の分離パターンを示す図である。
図12は、実施例23の45−200万分子量勾配グルカンゲル及びPA(ポリアクリルアミド)勾配ゲル上での10−250kDaの蛋白質の分離パターンを示す図である。
図13は、実施例24の10〜250kDa蛋白質の分離パターンを示す図である。
図14は、実施例6の電気泳動パターンと実施例25の232〜669kDa蛋白質の分離パターンを示す図である。
図15は、実施例27とその比較例の等電点4.45〜9.6蛋白質の分離パターンを示す図である。
図16は、実施例28の12.2〜232kDa、pI4.45〜9.6の蛋白質の2次元分離(1次元目:シゾフィランゲル、2次元目:PAゲルで共に非変性系)パターンを示す図である。
図17は、実施例28の12.2〜232kDa、pI4.45〜9.6の蛋白質の2次元分離(1次元目(非変性系):シゾフィランゲル、2次元目(変性系):シゾフィランゲル)パターンを示す図である。
図18は、実施例30の232〜669kDa蛋白質の分離パターンを示す図である。
本発明のゲルの原料となるグルカンは水溶性グルカンであり、具体例としては、Schizophyllum commune Fries(スエヒロタケ)が産生するシゾフィラン、Sclerotium glucanicumが産生するスクレログルカン、レンチナン、ラミナラン、パキマンなどが挙げられ、好ましくはシゾフィラン、スクレログルカンが挙げられる。前述のとおり、これらの多糖は何本かの分子鎖が絡み合ってヘリックス構造を持つ多量体を形成しているが、これらヘリックス構造を持つ多量体を、水素結合を破壊する溶媒に溶解すると1本鎖状に溶解し、この溶解液から該溶媒を除去するとゲルを形成することが知られている。
例えば、シゾフィランについては、水中では3本鎖の分子として、またジメチルスルホキシド中では3本鎖がほどけたランダムコイル(以下1本鎖という)として溶解することが確かめられている。3本鎖の水素結合を破壊し1本鎖状に溶解するための溶媒としては、ジメチルスルホキシド以外に、0.15M以上のアルカリ水溶液、トリエチレンジアミンカドミウムヒドロキシドなどが利用できる。
また、シゾフィランの水溶液を135℃に加熱しても、3本鎖が1本鎖として融解し、これを再び冷却すると、ゲルを形成することが知られている。
水溶性グルカンのゲルを調製する方法としては、上述の知見からも示唆されるように、(1)加熱ゲル化法、(2)透析ゲル化法、及び(3)中和ゲル化法がある。
(1)加熱ゲル化法は、まず、3本鎖グルカンを1本鎖状に溶解するための第1の溶媒、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の水溶液のようなアルカリ性水溶液(例えば、0.2M水酸化ナトリウム水溶液)、ジメチルスルホキシド、トリエチレンジアミンカドミウムヒドロキシド、尿素水溶液などの溶媒に、ゲル化させない場合には約1質量%以下となるように溶解した後、透析、イオン交換などの方法によりこれらの溶媒を除去し、こうして得られた1本鎖シゾフィランを第2の溶媒、例えば、水、緩衝液などの適当な溶媒に溶かして60℃〜135℃、好ましくは80〜120℃で数秒〜数時間、好ましくは10〜60分間加熱した後、例えば、室温付近まで冷却してゲルを得る方法である。
例えば、グルカンを第1の溶媒に低濃度で溶解後、透析によりこれらの溶媒を除去(この段階ではゲルではない)して得た透析液を凍結乾燥して1本鎖グルカン(固体)を得る。この1本鎖グルカンを水などの溶媒に溶解して加熱してゲルを得る。
なおグルカンを第1の溶媒に高濃度で溶解後、透析によりこれらの溶媒を除去(この段階でゲルとなる)して得たゲルを凍結乾燥して得たグルカンを水などの溶媒に溶解して加熱してもゲルが得られる。
(2)透析ゲル化法は、グルカンを高濃度で、好ましくは1〜10質量%となるように、第1の溶媒に溶解して調製した1本鎖グルカン溶液から、透析などの方法により該溶媒を除去してゲルを得る方法である。
(3)中和ゲル化法は、特許文献2に記載されているように、3本鎖グルカンをアルカリ水溶液に溶解後、アルカリ中和物質で中和することにより(透析などによりこれらの溶媒を除去することなく)ゲル化する方法である。アルカリ中和物質としては、特許文献2に記載されているように、各種酸から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また、酸アミド及び/又はエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることもできる。酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等の有機酸、硫酸、りん酸等の無機酸が挙げられる。また、酸アミド及びエステルとしては、上記酸と、アンモニア、炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキルアミン、又は炭素数2〜8の直鎖又は分岐ジアルキルアミン等のアミンとの酸アミド、例えば、ホルムアミドが挙げられ、エステルとしては、上記酸とアルコール、好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルコールとのエステルが挙げられる。さらに、上記酸を酸成分とする酸無水物や酸ハロゲン化物(ハロゲンとして好ましくは弗素、塩素、臭素)等も、アルカリ中和物質として使用できる。中和物質としての酸、酸アミド、エステル、酸無水物、酸ハロゲン化物の添加量は、アルカリ性水溶液中のアルカリ1当量に対して0.6当量以上、好ましくは0.6〜10当量、特に好ましくは1〜4当量である。
いずれの方法で得られたゲルも特性に大きな差はなく、本発明の電気泳動用ゲルとして充分な強度を持っている。しかし、電気泳動用ゲルの形態調整の容易性、及びグルカン濃度調整の容易性という点においては、加熱ゲル化法と、酸アミド及び/又はエステルを用いる中和ゲル化法が好ましい。
なお、1本鎖グルカンは水溶液中では経時的にヘリックス構造を形成し3本鎖グルカンを形成することが知られているが、加熱ゲル化法、透析ゲル化法、中和ゲル化法ともに、ゲル化の過程で1本鎖グルカンがヘリックス構造を形成して3本鎖グルカンになることが考えられる。また、加熱ゲル化法で用いる1本鎖グルカン粉末の調製時に3本鎖グルカンが混在することも考えられるが、その粉末中の1本鎖グルカン濃度が0.2質量%以上であれば、本発明のゲルを形成することができる。
本発明の電気泳動用ゲルの作成方法を次に具体的に説明する。前述の如く、1本鎖グルカンからゲルを形成するには(1)加熱ゲル化法、(2)透析ゲル化法、(3)中和ゲル化法があるが、いずれの場合も適当なゲル形成器を用いる。すなわち、(1)加熱ゲル化法では、加熱可能なゲル形成器を用い、電気泳動用平板ゲル又はチューブゲルを調製することができる。また、(2)透析ゲル化法では、透析膜と補強板を組み合わせた透析ゲル形成器を用い、電気泳動用平板ゲルを調製することができる。(3)中和ゲル化法では、通常のゲル形成器を用いて、電気泳動用平板ゲル、チューブゲル等任意の形状のゲルを調製することができる。加熱ゲル化法及び中和ゲル化法では、濃度勾配、分子量勾配、分子種勾配、pH勾配等の種々の勾配ゲルを容易に調製することができる。
また、濃度、分子量、分子種、pH等が異なる数種類の層からなるゲルも調製することができる。
また、シゾフィランゲルでは垂直型電気泳動装置用のサンプル溝の作成が容易ではないことが多い。この場合には、まずシゾフィランゲルでほぼ全体の泳動用ゲルを作成し、これにサンプル溝形成部分を、溝形成が容易な他のゲル、例えば、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲルを用いて作成しても良い。
平板ゲルの大きさは、例えば、平幅×長さ×厚さ=70mm×85mm×3mmが一般的であり、チューブゲルの大きさは、例えば、直径×長さ=5mm×85mmが一般的であるが、これらに限定されるものではなく、必要に応じて任意の大きさのゲルを調製することができる。
このようにして得られるゲルは、非常に透明で、ゲル上又はゲル中に展開した蛋白質や核酸(DNA、RNA)のスポットの各種染色法による検出、特に、核酸(DNA、RNA)のスポットのエチジウムブロマイドによる染色による検出が阻害されず、鮮明な検出像の写真撮影ができるという、電気泳動用ゲルとして、公知のカードランゲルと比較して非常に優れた有益な特徴を有している。
本発明のゲルは、グルカンの分子量、濃度、種類などにより容易にゲルの強度、孔径などを幅広い範囲で調節することができる。具体的には、本発明に使用するグルカンは、好ましくは分子量1万から500万の1本鎖グルカンであるが、低分子量のグルカンの場合は高濃度のゲルの調製が、高分子量のグルカンの場合は低濃度のゲルの調製が可能となり、グルカン濃度0.2から50質量%のゲルを調製することができる。特に分子量が50万から500万の1本鎖グルカンは、低濃度でも、電気泳動後の染色、脱色などの操作を行うために充分な強度を持つゲルを調製することが可能である。このような高分子量1本鎖グルカンの低濃度ゲルはポリアクリルアミドゲルに比べてゲルの孔径が大きいため、高分子量の核酸又は蛋白質の分離分析にも適用できる。例えば、ポリアクリルアミドゲルでは電気泳動され難い1000kDa以上の高分子量蛋白質でも、その高次構造および生理活性を保ったまま、すなわち変性剤を用いない非変性条件下でも分離することが可能になる。
また、本発明のゲルは、ゲル上に展開した物質の回収率がポリアクリルアミドゲルよりも高く、分取又は回収を目的とする電気泳動用ゲルとしても有用である。従って本発明のゲルを用いた電気泳動法は核酸又は蛋白質などの生体由来物質の有用な分離精製法となり得る。電気泳動後、ゲル上又はゲル中に分離展開した物質を回収する具体的な方法としては、溶出液により溶出する方法、凍結融解により溶出する方法、電気泳動的に溶出する方法、β−1,3−グルカナーゼ活性を有する酵素でゲルを溶解させる酵素法などが適用できる。特に酵素法によれば、加熱、有機溶媒処理等を伴わず、ゲル全体を完全に溶解させるので、目的の核酸又は蛋白質を変性させることなく天然の状態で理論上100%回収することができる。
本発明のゲルは、1本鎖グルカン単独でゲル化したものでもよいが、アガロース、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、タマリンドガム、プルラン、デキストラン、デンプン、セルロース等の1種類以上の第2の多糖を併用してゲル化したものでも良い。1本鎖グルカンと第2の多糖を併用したゲルの調製には、上記(1)加熱ゲル化法、(2)透析ゲル化法、及び(3)中和ゲル化法のいずれも使用することができる。こうして得られたゲルはいずれも優れた電気泳動用支持体となる。
1本鎖グルカンと第2の多糖を併用する場合、1本鎖グルカンと第2の多糖の総量に対する1本鎖グルカンの比率は、好ましくは0.1〜100質量%、さらに好ましくは1〜90質量%である。1本鎖グルカンの比率が0.1質量%未満では、本発明の目的が充分に達成されなくなる。
低純度アガロースとしては、一般的な市販アガロースを挙げることができる。それらのゲルの多くは、不純物として硫酸基やカルボキシル基などの陰性荷電基を数%含むため電気浸透度が大きく、電気泳動に用いた場合、核酸又は蛋白質の分離能が劣る。しかし、本発明者らは、そのようなアガロースでも、1本鎖グルカンを併用してゲル化したゲルにすると、電気浸透度が緩和されて、電気泳動時の核酸又は蛋白質の分離能が飛躍的に向上することを見出した。
一般に電気泳動用として使用されているアガロースは、海藻から抽出されるアガロースの不純物を徹底的に除去することにより高度に精製したものである。従って、電気泳動用アガロースは、製造に膨大な労力とコストを要し、非常に高価なものとなっている。しかし、上述のように、一般的な市販のアガロースに1本鎖グルカンを併用してゲル化することにより、電気泳動時の核酸又は蛋白質の分離能が高度に精製したアガロースのゲルと同等のゲルが調製可能となるため、高度に精製したアガロースのゲルに匹敵する電気泳動用ゲルを安価かつ容易に提供できる。
β−1,3−グルコシド結合を主鎖とするグルカンは、例えば増粘多糖として食品用途にも多く利用されており、その安全性は非常に高い。
本発明のゲルは、1本鎖グルカン単独でゲル化したものでも、これに第2の多糖を併用したものでもよいが、さらにアクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体を併用してゲル化したものでも良い。1本鎖グルカンとアクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体を併用したゲルの調製には、上記(1)加熱ゲル化法、(2)透析ゲル化法、及び(3)中和ゲル化法のいずれも使用することができるが、(1)加熱ゲル化法、及び(3)中和ゲル化法が好適である。こうして得られたゲルはいずれも優れた電気泳動用支持体となる。
1本鎖グルカンと、アクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体を併用する場合、1本鎖グルカンとアクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体の総量に対する1本鎖グルカンの比率は、好ましくは0.1〜100質量%、さらに好ましくは1〜90質量%である。1本鎖グルカンの比率が0.1質量%未満では、本発明の目的が充分に達成されなくなる。
1本鎖グルカンとアクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体を併用した本発明のゲルは、例えば、β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、該グルカンのヘリックス構造を破壊し得る第1の溶媒に溶解して1本鎖構造のグルカンとした後、第1の溶媒を除去し、該1本鎖構造のグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物とを第2の溶媒に溶解し、加熱処理する方法、β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物とをアルカリ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和する方法、あるいはβ−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物とをアルカリ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和し、加熱処理する方法等により製造することができる。
ポリアクリルアミド形成用組成物は、モノマー、架橋剤、重合開始剤、重合促進剤及び溶媒を含み、必要により、変性剤、還元剤を含有させてもよい。モノマーとしては、アクリルアミド、N置換アクリルアミド誘導体、例えば、一般式:CH=CH−CONH−(CH−R(式中、nは1〜5の整数を示し、Rは、カルボキシル基、硫酸基、リン酸基等の酸性基、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又はモルホリノ基等の塩基性基を示す。)等が挙げられる。架橋剤としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等が、重合促進剤としては、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)等が、重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム等が、溶媒としては、水、pH3〜11の緩衝液等が挙げられる。また変性剤としては、SDS、尿素、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル(TritonX(登録商標))、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸(CHAPS)等が、還元剤としては、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール等が挙げられる。
アクリルアミド及びN,N’−メチレンビスアクリルアミドは電気泳動用グレードとして単独で市販されており、最近ではアクリルアミド及びN,N’−メチレンビスアクリルアミドを一定の割合で混合したものも市販されている。市販のアクリルアミド/N,N’−メチレンビスアクリルアミド混合品は、混合比19/1〜37.5/1のものが入手可能である。
N置換アクリルアミド誘導体としては、アマシャムファルマシア社製「イモビライン(Immobiline)(登録商標)II」等が挙げられる。「イモビライン(登録商標)」には、上記一般式のn及び置換基Rの違いによりpKの異なる製品があり、pK3.6,4.6,6.2,7.0,8.5,9.3のものが入手可能である。
上記試薬は最初からゲルを作成する場合の溶液(0.2M)として市販されている。実際には上記pKの異なる「イモビライン(登録商標)」を混合して勾配範囲の最低pHと最大pHのものを用意しておき、これらの混合比をグラジェントしながら市販のアクリルアミド(N,N’−メチレンビスアクリルアミドの混合品を使用)と混合して共重合させることで、pH勾配をつけたゲルを作成することができる。
本発明の1本鎖グルカンとアクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体を用いてpH勾配ゲルを製造するには、ゲル中のグルカン濃度は好ましくは0.2〜50質量%、ゲル中のアクリルアミドの濃度範囲は好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜4質量%、及びゲル中のアクリルアミド誘導体の濃度範囲は、好ましくは0.2M〜0.002M、さらに好ましくは0.01M〜0.03Mである。
以上のように、本発明に使用するグルカンが、特定の条件下でゲルを形成することは公知であるが、このゲル、あるいは該グルカンに第2の多糖、あるいは、アクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体を併用して調製したゲルが電気泳動用ゲルとして優れた特性を有することは従来全く知られておらず、本発明者等が初めて見出したものである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
1本鎖シゾフィランの調製
A ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン10.0g(3本鎖としての分子量約45万)を0.5N−NaOH 1000mlに室温で攪拌しながら溶解した。溶解液を、透析用セルロースチューブ(孔径約50オングストローム)を用いて、透析液が中性になるまで、脱イオン水に対して透析した。そして、セルロースチューブ内のシゾフィラン水溶液を凍結乾燥して分子量約15万の1本鎖シゾフィランを9.79g得た。
B ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン5.0g(3本鎖としての分子量約600万)を0.5N−NaOH 100mlに室温で攪拌しながら溶解した。溶解液を、透析用セルロースチューブを用い、透析液が中性になるまで、脱イオン水に対して透析した。そして、セルロースチューブ内のシゾフィランゲルを凍結乾燥して分子量約200万の1本鎖シゾフィランを4.85g得た。
C ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン10.0g(3本鎖としての分子量約15万)を0.5N−NaOH 2000mlに室温で攪拌しながら溶解した。透析液が中性になるまで、脱イオン水に対して透析した。次に、セルロースチューブ内のシゾフィラン水溶液を別の容器に移し、アセトン2000mlを攪拌しながら徐々に加えてシゾフィランを凝固させた。そして、凝固物をろ過法によって回収し、減圧下、60℃で一夜乾燥して、分子量約5万の1本鎖シゾフィランを9.2g得た。
なお、上記で用いた3法は、ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィランから1本鎖シゾフィランを調製する方法であり、いずれの方法によっても分子量に関係なく1本鎖シゾフィランを調製することができる。
ゲルの調製
1−1.加熱ゲル化法による平板ゲルの調製
実施例1のA、B、又はCで調製した1本鎖シゾフィランを、脱イオン水とともにホモジナイズ処理し、1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。これを減圧下で脱気した後、加熱ゲル形成器に注入し、120℃で20分加熱してゲル化させ、電気泳動用平板ゲル(70mm×85mm×3mm)を作製した。
1−2.加熱ゲル化法による変性系チューブゲルの調製
実施例1のA、B、又はCで調製した1本鎖シゾフィランを脱イオン水11.1ml、1.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)3.75mlとともにホモジナイズ処理して減圧下で脱気した後、10%SDS水溶液0.15mlを加えて攪拌して1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。この液をガラス管(直径×長さ=5mm×100mm)に注入し、120℃で20分間加熱してゲル化させ、変性系電気泳動用チューブゲル(直径×長さ=5mm×85mm)を作製した。
1−3.加熱ゲル化法による非変性系チューブゲルの調製
実施例1のA、B、又はCで調製した1本鎖シゾフィランを脱イオン水15ml、1.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)5mlとともにホモジナイズ処理し、1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。この液を減圧下で脱気した後、ガラス管(直径×長さ=5mm×100mm)に注入し、120℃で20分間加熱してゲル化させ、非変性系電気泳動用チューブゲル(直径×長さ=5mm×85mm)を作成した。
1−4.中和ゲル化法による平板ゲルの調製
ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン1.5g(3本鎖としての分子量約45万)を0.5N−NaOH 25mlに室温で攪拌しながら溶解した。これを55℃に保温しながら5M酢酸で中和した。中和溶液をすばやくゲル形成器に注入し、冷却ゲル化させて電気泳動用平板ゲルを作製した。
なお、1本鎖シゾフィランから加熱ゲル化法によりゲルを調製するときの1本鎖シゾフィラン濃度、分子量、加熱温度、および加熱時間とゲルの状態との関係について、表1〜表3に示す。1本鎖シゾフィランから加熱ゲル化法によりゲルを調製するとき、1本鎖シゾフィラン濃度が高いほど、分子量が大きいほど、加熱温度が高いほど、さらに加熱時間が長いほど強いゲルが形成される。
ゲル強度の判定
ゲル強度測定容器(30ml容のサンプル管)中で、加熱ゲル化法によりゲルを調製し、20℃でレオメーター(不動工業(株)、モデルNRM−2010J−CW)により破断強度を測定し、破断強度が500g/cm以上のゲルを+++、500g/cm未満50g/cm以上のゲルを++、50g/cm未満のゲルを+で示す。
グルカンの分子量の測定
試料の一定量を水に溶解し、ウベローデ型粘度計により25℃で極限粘度を測定した。則末らにより得られた極限粘度と分子量の関係(T.Norisue,J.Polym.Sci.Polym.Pys.Ed.,18,547(1980))を用いて各試料の重量平均分子量を求めた。
3本鎖グルカンは水溶液中でコンゴーレッドと可溶性の錯体を形成し、その可視部における極大吸収波長はコンゴーレッドの極大吸収波長よりも長波長側にシフトする。一方、1本鎖グルカンは錯体を形成しない。従って、グルカンとコンゴーレッドの混合液の極大吸収波長を測定することにより、1本鎖又は3本鎖グルカンを識別できる(K.Tabata et al.,Carbohydrate Research,89,121−135(1981))。また1本鎖及び3本鎖グルカンが混合されている場合のそれぞれのグルカンの割合は、示差走査熱量計によるピーク面積比から決定することができる。
Figure 2004077042
Figure 2004077042
Figure 2004077042
さらに、実施例により作製したゲルと、比較例として作製した(1)濃度10質量%で作製したポリアクリルアミドゲル(比較例1)、(2)濃度1質量%で作製したアガロースゲル(和光純薬工業(株)、Agarose LE)(比較例2)、及び(3)濃度1質量%で作製したカードランゲル(和光純薬工業(株)、カードラン)(比較例3)の700nmから220nmの各波長における吸光度を表4に示した。これらの測定値は、形成されたゲル中の曇りの量、及び、DNAや蛋白質を紫外吸収により検出する際の妨害度合いを反映するものである。実施例のゲルの吸光度は、現在、電気泳動用として汎用されているポリアクリルアミドゲルのものと比較して、可視領域でほぼ同程度であり、紫外領域では同程度からやや小さい値であった。また、アガロースゲルおよびカードランゲルに比較すると、明らかに小さい値であった。即ち、本発明の実施例のゲルは、従来の電気泳動用ゲルよりもより広範囲の波長に対して透明性に優れ、電気泳動用ゲルとしてより適していることが確認できた。
Figure 2004077042
2.透析ゲル化法による平板ゲルの調製
ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン1.5g(3本鎖としての分子量約45万)を0.5M−NaOH水溶液25mlに室温で攪拌しながら溶解した。これを透析ゲル形成器に注入し、脱イオン水に対して透析液が中性になるまで透析してゲル化させ、電気泳動用平板ゲル(150mm×100mm×3mm)を作製した。
蛋白質の平板ゲル電気泳動
実施例1で調製した分子量約15万の1本鎖シゾフィランから、実施例2の1−1と同様にして、グルカン濃度6質量%の平板ゲル(70mm×85mm×3mm)を作製した。このゲルを、ゲルバッファー(イオン交換水−1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8−10%SDS 111:37.5:1.5v/v)と平衡化するため、該ゲルバッファーに一夜浸漬した。次に、この平衡化したゲルを泳動バッファー(25mMトリス、192mMグリシン、0.1%SDS、pH8.3)を入れたサブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレイに移し、蛋白質分子量マーカー(BIO RAD、プレシジョンスタンダード、分子量範囲:10−250kDa)を、マーカー色素BPB(Bromophenol blue)がゲルの端から約51mmの位置に移動するまで定電流20mAで電気泳動した。
比較例として、(1)10%ポリアクリルアミドゲル、及び(2)1.5%アガロースゲルでも、同様の電気泳動を行った。泳動後の蛋白質の検出は、クマシーブリリアントブルーR250染色法によった。図1に実施例と比較例の泳動パターンを示す。実施例のゲルは、比較例の(1)10%ポリアクリルアミドゲルとほとんど同程度の分離能を示したが、特に75kDaから250kDaの高分子量蛋白質において鮮明な分離パターンが得られ、その良好な分子篩い効果が示された。これに対して、比較例の(2)1.5%アガロースゲルではほとんど分離されなかった。
蛋白質の平板ゲル電気泳動
実施例1で調製した分子量約15万又は200万の1本鎖シゾフィランから、実施例2の1−1と同様にして、グルカン濃度10質量%又は2質量%の平板ゲル(70mm×85mm×3mm)を作製した。以下、実施例3と同様に電気泳動を行った。図2に泳動パターンを示す。また、50kDaの蛋白質のBPBに対する相対移動度とグルカン濃度の関係を表5に示す。グルカン濃度が高くなるにつれて蛋白質の相対移動度が低くなり、グルカン濃度によりゲル孔径が調節できることが観察された。
Figure 2004077042
蛋白質の変性系ディスク電気泳動
実施例1で調製した分子量約15万の1本鎖シゾフィランから、実施例2の1−2と同様にして、グルカン濃度6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを作製した。更に、そのゲル上に、厚さ5mmとなるように、脱イオン水6.1ml、30%アクリルアミド1.3ml、0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH6.8)2.5ml、並びに10%SDS 0.1mlを溶解後脱気した溶液にTEMED(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)10μl及び10%APS(過硫酸アンモニウム)50μlを混合した溶液を注入してゲル化させ、濃縮ゲルを作成した。そして、このように上部に厚さ5mmの濃縮ゲルが形成されたチューブゲルを、ディスク型電気泳動装置に取り付け、該装置の上部泳動槽及び下部泳動槽に泳動バッファー(25mMトリス、192mMグリシン、0.1%SDS、pH8.3)を入れ、蛋白質分子量マーカー(BIO RAD、プレシジョンスタンダード、分子量範囲:10−250kDa)を、マーカー色素のBPBがゲルの下端から約5mmの位置に移動するまで、チューブゲル1本当たり5mAの定電流で電気泳動した。
比較例として、脱イオン水5.73ml、30%アクリルアミド溶液1.67ml、1.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)2.5ml、10%SDS0.1ml、TEMED 10μl、及び10%APS 50μlから調製した5質量%ポリアクリルアミドチューブゲルにより、蛋白質分子量マーカーを、実施例と同様に電気泳動した。泳動後の蛋白質の検出は、クマシーブリリアントブルーR250染色法にて行った。得られたそれぞれの泳動パターンを図3に示す。実施例の6質量%シゾフィランゲルによる分子量75kDaから250kDaの蛋白質の分離は、比較例の5質量%ポリアクリルアミドゲルによるものと同程度であった。
蛋白質の非変性系ディスク電気泳動
実施例1で調製した分子量約200万の1本鎖シゾフィランから、実施例2の1−3と同様に、グルカン濃度として2.5質量%の非変性系電気泳動用チューブゲルを作製した。このチューブゲルをディスク型電気泳動装置に取り付け、該装置の上部泳動槽及び下部泳動槽に泳動バッファー(25mMトリス、192mMグリシン、pH8.3)を入れ、IgM(ケミコンインターナショナルINC.、HUMAN IgM)、α2−マクログロブリン(和光純薬工業(株))、及び分子量マーカー(アマシャムファルマシアバイオテク、HMWマーカーキット(Native−PAGE用))を、マーカー色素のBPBがゲルの下端から約5mmの位置に移動するまで、チューブゲル1本当たり2mAの定電流で電気泳動した。
比較例として、脱イオン水5.73ml、30%アクリルアミド溶液1.67ml、1.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)2.5ml、TEMED 10μl、及び10%APS 50μlから調製した5%ポリアクリルアミドチューブゲルについても、実施例と同様の電気泳動を行った。蛋白質の検出には、クマシーブリリアントブルーR250染色法を用いた。その結果得られたそれぞれの泳動パターンを図4に示す。分子量900〜1,000kDaのIgMは、比較例の5質量%ポリアクリルアミドゲルではほとんど泳動せず原点付近に留まっていたのに対し、実施例のシゾフィランゲルでは泳動しており、BPBに対する相対移動度は0.07であった。また、分子量720kDaのα2−マクログロブリンのBPBに対する相対移動度は、5質量%アクリルアミドゲルでは0.14、シゾフィランゲルでは0.58で、後者の方が大きかった。電気泳動に使用するに足る強度を持つゲルを形成できるポリアクリルアミドのゲル濃度は最低4〜5質量%である。従って、ここの比較例よりも、蛋白が移動し易い電気泳動用ポリアクリルアミドゲルを作製することは困難である。即ち、実施例のシゾフィランゲルは5質量%アクリルアミドゲルよりも蛋白の電気泳動による移動が大きかったことから、このゲルは、広範囲の分子量の蛋白質分析に利用でき、特に、ポリアクリルアミドゲルでは分離することが困難なより大きな蛋白質の分離に適していることが示唆された。
蛋白質の平板ゲル電気泳動
実施例1のBと同様の方法で調製した分子量約200万の1本鎖スクレログルカンから、実施例2の2と同様にして、グルカン濃度3質量%の平板ゲル(150mm×100mm×3mm)を作製した。以下、実施例3と同様の条件で電気泳動を行った。その結果、シゾフィランから調製したゲルを用いた場合と同様、鮮明な分離パターンを確認することができた。
DNAの平板ゲル電気泳動
ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン(3本鎖としての分子量約250万)から実施例2の2と同様にして、5質量%のグルカンの平板ゲル(150mm×100mm×3mm)を作製した。そのゲルを、1×TAE泳動バッファー(0.04Mトリス、0.04M氷酢酸、0.001M EDTA)に一夜浸漬し、平衡化した。そして、この平衡化したゲルを用いて、2種類のDNA分子量マーカー(ニッポンジーン、Smart Ladder及びpBR322/Msp I digest)を、マーカー色素のBPBがゲル長の約2/3移動するまで、50V定電圧で電気泳動した。
比較例として、3質量%のアガロース(ニッポンジーン、Agarose 21)ゲルについても、同様の電気泳動を行った。泳動後のゲルをエチジウムブロマイドで染色し、トランスイルミネーターでDNAの泳動パターンを観察した結果を図5に示す。実施例のゲルによる方が比較例のゲルによるよりもバンド間の幅が広く、実施例のゲルの方が分解能に優れることが確認できた。
超音波法による蛋白質の回収
実施例1で調製した分子量約15万の1本鎖シゾフィランから実施例2の1−2と同様に、グルカン濃度として6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを作製した。次に、実施例5と同様に、ヒト血清アルブミン(和光純薬工業(株))を電気泳動した。電気泳動後のゲルを、固定液(酢酸:メタノール:水=5:20:75)に一夜浸漬した後、10ml容量のねじ口瓶に入れてスパーテルで破砕した。破砕したゲルに水5mlを加え、60分間超音波処理し、4℃で一晩インキュベーションした後、ろ過(フィルター孔径0.80μm)し、得られたろ液を蛋白質回収溶液とした。蛋白質回収溶液中の蛋白質濃度をDC Protein Assay Kit II(BIO RAD)を用いて測定し、蛋白質回収率(=(蛋白質回収量/電気泳動に供した蛋白質量)×100)を求めた。なお、電気泳動後のゲルを固定液に浸漬せずに処理した場合についても、同様にして蛋白質回収率を求めた。
比較例として、脱イオン水5.73ml、30%アクリルアミド溶液1.67ml、1.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)2.5ml、10%SDS 0.1ml、TEMED 10μl、10%APS 50μlから調製した5質量%ポリアクリルアミドチューブゲルについても、実施例と同様にヒト血清アルブミンを電気泳動し、蛋白質の回収率を測定した。結果を表6に示した。固定化処理した場合、固定化処理しない場合のいずれにおいても、実施例の回収率の方が比較例の回収率よりも高かった。
Figure 2004077042
溶解法による蛋白質の回収
実施例1の方法により調製した分子量約15万の1本鎖シゾフィランから実施例2の1−2と同様にして、グルカン濃度として6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを2本作製した。それぞれのチューブゲルについて、実施例5と同様にして、ヒト血清アルブミン(和光純薬工業(株))の電気泳動を行った。電気泳動後のゲルを各々10ml容量のねじ口瓶に入れてスパーテルで破砕した。破砕したゲルに、1%SDSを含む0.2N NaOH溶液5ml、又は1%SDSを含む9M尿素溶液5mlを加えた。ゲルが溶媒に解けるまで80℃で加熱し、得られた溶解液を蛋白質回収溶解液とした。以下、実施例9と同様に蛋白質回収溶解液中の蛋白質量を測定し、蛋白質の回収率を求めた。
比較例として、脱イオン水5.73ml、30%アクリルアミド溶液1.67ml、1.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)2.5ml、10%SDS 0.1ml、TEMED 10μl、10%APS 50μlから調製した5質量%ポリアクリルアミドチューブゲルにより、実施例と同様にヒト血清アルブミンを電気泳動し、その回収率を測定した。結果を表7に示した。実施例での蛋白質回収率は、NaOH溶液又は尿素溶液のいずれの溶解液を使用した場合でも、比較例での回収率より高かった。
Figure 2004077042
凍結融解法による蛋白質の回収
実施例1で調製した分子量約15万の1本鎖シゾフィランから実施例2の1−2と同様に、グルカン濃度として6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを作製した。次に、実施例5と同様の方法により、ヒト血清アルブミン(和光純薬工業(株))を電気泳動した。電気泳動後のゲルを10ml容量のねじ口瓶に入れてスパーテルで破砕した。破砕したゲルに水1mlを加え、−20℃で、一晩凍結した後、30℃で融解した。融解液をろ過(フィルター孔径0.80μm)し、ろ液を蛋白質回収液とした。以下、実施例9と同様の方法により蛋白質回収液中の蛋白質量を測定し回収率を求めた。
比較例として、脱イオン水5.73ml、30%アクリルアミド溶液1.67ml、1.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)2.5ml、10%SDS 0.1ml、TEMED 10μl、及び10%APS 50μlから調製した5質量%ポリアクリルアミドチューブゲルを用いて、実施例と同様にヒト血清アルブミンを電気泳動し、蛋白質の回収率を測定した。結果を表8に示した。実施例の回収率は、比較例に比べて非常に高い回収率であった。
Figure 2004077042
1本鎖シゾフィランと中性多糖の混合ゲルを用いた蛋白質の変性系ディスク電気泳動
実施例1で調製した分子量約15万の1本鎖シゾフィラン0.9gと、デキストラン(SIGMA−ALDRICH、平均分子量11,000)0.075g、デンプン(和光純薬工業(株))0.075g、又はローカストビーンガム(台糖(株))0.075gを、脱イオン水11.1ml、1.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)3.75mlとともにホモジナイズ処理して、減圧下で脱気した後、10%SDS水溶液0.15mlを加えて攪拌し、1本鎖シゾフィランと中性多糖の混合懸濁液を得た。以下、実施例2の1−2と同様に、これら混合液から変性系電気泳動用チューブゲル(直径×長さ=5mm×85mm)を作製し、実施例5と同様に蛋白質分子量マーカーを電気泳動した。何れの中性多糖を用いたゲルについても、実施例5に示したシゾフィラン単独ゲルに比較して、蛋白質の移動度は異なるが、蛋白質の分離能は同等であることが確認できた。デンプンを用いたゲルでの泳動パターンを図6に示す。
低純度アガロースの分解能の改善
1×TAE泳動バッファーに、分子量約15万の1本鎖シゾフィラン0.6質量%と、低純度アガロース(台糖(株))1質量%を入れて加熱溶解した後、この溶解液をサブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレイ(70mm×85mm)に移し、冷却して、ゲルを調製した。該ゲルを用いて、DNA分子量マーカー((株)ニッポンジーン、Smart Ladder)を、マーカー色素のBPBがゲル長の約2/3移動するまで、50V定電圧で泳動させた。
比較例として、1質量%の低純度アガロースゲルについても、同様の電気泳動を行った。実施例及び比較例の電気泳動後のゲルをエチジウムブロマイドで染色し、トランスイルミネーターでDNAの泳動パターンを観察した。図7に実施例と比較例の泳動パターンを示す。実施例のゲルの方が明らかに分離能が優れていることが確認できた。
中和ゲルを支持体とする蛋白質の平板ゲル電気泳動
3本鎖としての分子量が約45万のシゾフィランから、実施例2の1−4と同様にして、グルカン濃度6質量%の平板ゲル(70mm×85mm×3mm)を作製した。このゲルを、脱イオン水に対して2日間透析した後、ゲルバッファー(イオン交換水−1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8−10%SDS 111:37.5:1.5v/v)と平衡化するため、該ゲルバッファーに2日間浸漬した。次に、この平衡化したゲルを泳動バッファー(25mMトリス、192mMグリシン、0.1%SDS、pH8.3)を入れたサブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレイに移し、蛋白質分子量マーカー(BIO RAD、プレシジョンスタンダード、分子量範囲:10−250kDa)を、マーカー色素のBPBがゲルの端から約5mmの位置に移動するまで定電流40mAで電気泳動した。
蛋白質の検出は、クマシーブリリアントブルーR250染色法により行った。中和ゲル化法のゲルを支持体とした電気泳動によって、250〜37kDaの蛋白質が分離できた。
ホルムアミドを用いた平板ゲルの調製
ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン0.8g(3本鎖としての分子量約45万)を0.5N−NaOH 10mlに室温で攪拌しながら溶解した。この溶液を、減圧下で脱気した後、ホルムアミド0.182mlを加えてよく攪拌した。続いて、ゲル形成器に注入し、二晩放置してゲル化させ、電気泳動用平板ゲル(60mm×52mm×4mm)を作製した。
蛋白質の平板ゲル電気泳動
実施例15と同様にして、グルカン濃度8質量%の平板ゲル(60mm×52mm×4mm)を作製した。このゲルを、ゲル容量に対して40倍量のイオン交換水に浸漬(1時間×2回)した後、10倍量のゲルバッファー(イオン交換水−1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8−10%SDS 111:37.5:1.5v/v)に一晩浸漬して該ゲルバッファーと平衡化した。次に、この平衡化したゲルを泳動バッファー(25mMトリス、192mMグリシン、0.1%SDS、pH8.3)を入れたサブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレイに移し、蛋白質分子量マーカー(BIO RAD、プレシジョンプラススタンダード、分子量範囲:10〜250kDa)を該ゲルの試料溝に載せ、マーカー色素のBPBがゲルの先端から約5mmの位置に移動するまで、定電圧100Vで電気泳動を行った。
比較例として、12%ポリアクリルアミドゲルを用いて、同様の電気泳動を行った。泳動後の蛋白質の検出は、クマシーブリリアントブルーR250染色法によった。図8に実施例16とその比較例の泳動パターンを示す。実施例16のゲルは、比較例の12%ポリアクリルアミドゲルとほとんど同程度の分離能を示した。
酵素法による蛋白質の回収1
ビオチン標識β−1,3−グルカナーゼの調製
Zymolyase(生化学工業(株))50mgをゲル濾過クロマトグラフィー(Sephadex G100,25φ×400)に付し、精製β−1,3−グルカナーゼを約10mg得た。この精製β−1,3−グルカナーゼをビオチンラベル化キット(同仁化学(株))により、ビオチン標識した。
蛋白質の回収
実施例1で調製した分子量約15万の1本鎖シゾフィランから実施例2の1−2と同様にしてグルカン濃度6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを作成した。次に、このチューブゲルを用いて実施例5と同様に、ヒト血清アルブミン(和光純薬工業(株))を電気泳動した。電気泳動後のゲルを10ml容量のねじ口瓶に入れてスパーテルで破砕した。破砕したゲルを上記ビオチン標識β−1,3−グルカナーゼの1%水溶液1mlに加え、約37℃で一夜放置した。その酵素反応溶液を分子量1万カット透析膜を用いてリン酸緩衝溶液中で透析した後、その内液を固定化アビジンカラム(PIERCE)に付し、ImmunoPure(登録商標)溶出緩衝液で溶出した。その溶出液を蛋白質回収液とした。以下、実施例9と同様に蛋白質回収溶液中の蛋白質を測定し、蛋白質の回収率を求めたところ、回収率は90%であった。
酵素法による蛋白質の回収2
固定化酵素の調製
アミノセルロファイン(生化学工業(株))約5mlを純水で洗浄後、2.5%グルタルアルデヒド溶液5mlに懸濁し、減圧下約1時間撹拌した。これを純水及び50mMリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄後、上記精製β−1,3−グルカナーゼ溶液(0.1mg/ml)5mlを加え、室温、一昼夜放置した。これを50mMリン酸緩衝液でよく洗浄して固定化酵素とした。
蛋白質の回収
実施例1で調製した分子量約15万の1本鎖シゾフィランから実施例2の1−2と同様にしてグルカン濃度6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを作成した。次に、このチューブゲルを用いて実施例5と同様に、ヒト血清アルブミン(和光純薬工業(株))を電気泳動した。電気泳動後のゲルを10ml容量のねじ口瓶に入れてスパーテルで破砕した。破砕したゲルに水1mlを加え、さらに上記固定化酵素20mgを加えて約37℃で一夜放置した。その酵素反応溶液をろ過し、分子量1万カット透析膜を用いてリン酸緩衝溶液中で透析してその内液を蛋白質回収液とした。以下、実施例9と同様に蛋白質回収溶液中の蛋白質を測定し、蛋白質の回収率を求めたところ、回収率は87%であった。
高濃度グルカンゲルの調製
ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン(3本鎖としての分子量約45万)3.5gに対して0.5M NaOHを加えて25gにした(14質量%)。気泡が無くなるまでよく攪拌したのち、ホルムアミド0.455ml(NaOHに対して1当量)を加えて均一になるまで攪拌してからゲル形成器に流し込んだ。室温で二晩放置してゲル化させた後、イオン交換水,ゲルバッファー(イオン交換水−1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8−10%SDS 111:37.5:1.5v/v)に浸漬して置換させて電気泳動用支持体とした。
低分子ポリペプチドの電気泳動
実施例19と同様にして、グルカン濃度14質量%の平板ゲル(7mm×85mm×3mm)を作製した。このゲルを、ゲル容量に対して40倍量のイオン交換水に浸漬(1時間×2回)した後、10倍量のゲルバッファー(イオン交換水−1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8−10%SDS 111:37.5:1.5v/v)に一晩浸漬して該ゲルバッファーと平衡化した。次に、この平衡化したゲルを、泳動バッファー(25mMトリス、192mMトリシン、0.1%SDS、pH8.3)を入れたサブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレイに移し、カレイドスコープポリペプチドスタンダード(BIO RAD、分子量範囲:4−34.5kDa)を該ゲルの試料溝に載せ、マーカー色素のBPBがゲルの先端から約5mmの位置に移動するまで、定電圧100Vで電気泳動を行った。
比較例として、17%ポリアクリルアミドゲルを用いて、同様の電気泳動を行った。
図9に実施例20とその比較例の泳動パターンを示す。実施例20のゲルは、比較例の17%ポリアクリルアミドゲルとほとんど同程度の分離能を示した。
濃度勾配ゲルによる泳動
実施例15と同様にしてグルカン濃度6%,14%のアルカリ溶液を調製し、それぞれにホルムアミドを水酸化ナトリウムに対して当量を加えてよく攪拌した。各濃度のグルカン溶液を勾配ゲル作成器(図10)に充填した。グルカン濃度が高い方を図10のA層に入れ、低い方をB層に入れた。A層の上部をストッパーで止めた後、A層を攪拌しながらペリスタポンプでグルカン溶液をゲル形成器に静かに流し入れ、6−14%濃度勾配平板ゲルを作成した。
蛋白質の濃度勾配平板ゲル電気泳動
実施例21と同様にして、グルカン濃度6〜14%の平板ゲル(70mm×85mm×3mm)を作製した。実施例15と同様にこのゲルを用いて蛋白質分子量マーカー(BIO RAD、プレシジョンプラスプロテインスタンダード、分子量範囲:10−250kDa)を泳動した。
泳動後の蛋白質の検出は、クマシーブリリアントブルーR250染色法によった。
比較例として、4〜20%ポリアクリルアミドゲルによる泳動パターン(BIO RAD社 プレシジョンプラスプロテインスタンダード添付のマニュアルより抜粋)を記載した。
図11に実施例22とその比較例の泳動パターンを示す。実施例22のグルカン濃度6〜14%のゲルは、比較例の4〜20%ポリアクリルアミドゲルとほとんど同程度の分離能を示した。
分子量勾配グルカンゲルの作製
3本鎖としての分子量が45万のシゾフィラン2.1gに対して0.5M NaOHを加えて15gにしたもの(14%w/w)と、3本鎖としての分子量が200万のシゾフィラン1.2gに対して0.5M NaOHを加えて20gにしたもの(6%w/w)を、気泡が無くなるまでよく攪拌したのち、それぞれにホルムアミド0.273mlと0.364ml(NaOHに対して当量)を加えて均一になるまで攪拌した。
14%グルカン(45万シゾフィラン)溶液を図10に示す勾配ゲル形成器のA層に入れ、6%グルカン(200万シゾフィラン)溶液をB層に入れた。A層の上部をストッパーで止めた後、A層を攪拌しながらペリスタポンプでグルカン溶液をゲル形成器に静かに流し入れた。室温で二晩放置してゲル化させた後、イオン交換水,ゲルバッファー(イオン交換水111ml、1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8 37.5ml、10% SDS 1.5ml)に浸漬して置換させて電気泳動用支持体とした。
電気泳動はLaemmli法(U.K.Laemmli,Nature,227,680(1970))に基づいて、サンプルを10μlアプライしたのち100V定電圧で行った。
図12に45−200万分子量勾配グルカンゲルの泳動パターンを示した。PA(ポリアクリルアミド)勾配ゲルと比べると、75−250kDaの分離は悪いが15−250kDaの蛋白質が分離できた。
ホルムアミド−加熱ゲル化法を用いた平板ゲルの調製
ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン1.0g(3本鎖としての分子量約45万)を0.5N−NaOH 10mlに室温で攪拌しながら溶解した。この溶液を、減圧下で脱気した後、ホルムアミド0.182mlを加えてよく攪拌した。続いて、ゲル作製器に注入し、二晩放置してゲル化させた。その後、ゲル作製器のまま80℃、30分間加熱処理を行い、電気泳動用平板ゲル(60mm×52mm×4mm)を作製した。次にこのゲルを用いて実施例16と同様に、蛋白質分子量マーカー(BIO RAD、プレシジョンスタンダード、分子量範囲:10−250kD)を電気泳動した。結果を図13に示す。
シゾフィラン/ポリアクリルアミド(PA)混合ゲルの調製
1.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)、脱イオン水、1本鎖シゾフィラン(3本鎖としての分子量約600万)(実施例1)を表9の通りに混ぜて、スターラーで一晩攪拌してシゾフィランを溶解させた。30%アクリルアミド溶液(アクリルアミド/N,N’−メチレンビスアクリルアミド=37.5/1)、10%過硫酸アンモニウム50μl、TEMED(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)10μlを加えて攪拌した。10分間脱気した後、この溶液をガラス管(直径×長さ=5mm×100mm)に注入し、120℃20分間加熱してゲル化させ、シゾフィラン/ポリアクリルアミド(PA)混合の非変性系電気泳動用チューブゲル(直径×長さ=5mm×85mm)を作製した。
Figure 2004077042
作製したシゾフィラン/PA混合非変性系電気泳動用チューブゲルを用いて、実施例6と同様にして分子量マーカー(アマシャムファルマシアバイオテク、HMWマーカーキット(Native−PAGE用))を電気泳動した。その結果得られた泳動パターンを、実施例6の泳動パターンとともに図14に示す。分子量669kDa及び440kDaは、実施例6ではバンドがテーリングしているのに対して、実施例25のシゾフィラン/PA混合ゲルでは分離能が改善されていることがわかる。
等電点電気泳動用乾燥シゾフィランゲルの調製
ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン1.6g(3本鎖としての分子量約600万)を0.5N−NaOH 40mlに室温で攪拌しながら溶解した。この溶液にホルムアミド0.96mlを加えてよく攪拌した後、減圧下で脱気した。続いてこの溶液を、ガラスプレート(プレーン)とガラスプレート(ノッチ、厚さ1mmのスペーサー付き)のプレーン側に、親水性フィルム(FMC BioProducts、Gel Bond Film)を貼り付けたゲル形成器(200mm×200mm×1mm)に注入して二晩ゲル化させた。80℃で15分間加熱した後、ゲル作成器からフィルムに接着した平板ゲルを取り出した。このゲルを、フィルム上で一昼夜室温乾燥、脱イオン水で膨潤する操作を3回行い、ゲル中の中和不純物を除いた後、膨潤状態で120℃、15分間オートクレーブ処理をした。最後に10%グリセリン水溶液中に1時間浸漬してから、一晩乾燥させたゲルに疎水性フィルム(FMC BioProducts、Gel Bond Film)をゲルに接着して、親水性フィルム、シゾフィランゲル、疎水性フィルムの三層構造である等電点電気泳動用乾燥シゾフィランゲルを作製した。
乾燥シゾフィランゲルを用いた等電点電気泳動
実施例26と同様にして、グルカン濃度4質量%の等電点電気泳動用乾燥シゾフィランゲル(70×50×1mm)を作製した。このゲルを5mlの膨潤液(バイオライト3/10(BIO RAD)250μl、バイオライト5/7(BIO RAD)62.5μl、0.1%(w/v)オレンジG(和光純薬工業(株))125μlをイオン交換水で5mlにメスアップしたもの)で一晩膨潤させた。膨潤終了後、等電点電気泳動にはクールホレスターIPG−IEF Type−P(アナテック(株))を用いた。サンプル(BIO RAD、IEF Standards)5μlを試料用ろ紙にしみ込ませて平板ゲル上の陽極側にアプライした。電極用ろ紙を蒸留水に浸し、ゲルの両端に置いて密着させ、電極ろ紙に電極をのせて200V−20分、500V−30分、800V−10分の3電圧プログラムで泳動を行った。結果を、比較例(ポリアクリルアミドゲルによる泳動パターン(BIO RAD、IEF Standards添付マニュアルより抜粋))とともに図15に示す。
乾燥シゾフィランゲルを用いた2次元電気泳動
実施例26と同様にして、グルカン濃度4質量%の等電点電気泳動用乾燥シゾフィランゲルを作製し、ゲルの幅を3mmにカット(70×3×1mm)した。実施例27と同様にして1次元目として等電点電気泳動を行い、泳動終了後、ゲルを表10に示す平衡化緩衝液またはSDS処理液に20分間浸漬して平衡化またはSDS処理した。次にこのゲルを非変性系電気泳動または変性系電気泳動に供した。2次元目の変性系電気泳動は実施例16と同様にして、非変性系電気泳動は実施例16から変性剤を除いて行った。非変性系電気泳動の分離パターンを図16に、変性系電気泳動の分離パターンを図17に示す。
Figure 2004077042
シゾフィランゲルからの蛋白質の回収
分子量約200万の3本鎖シゾフィランから実施例15と同様に、グルカン濃度として5質量%の平板ゲル(60mm×52mm×4mm)を作製した。このゲルを、ゲル容量にして40倍量のイオン交換水に浸漬(1時間×2回)した後、10倍量のゲルバッファー(イオン交換水−1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8 112.5:37.5v/v)に一晩浸漬して該ゲルバッファーと平衡化した。
次に、この平衡化したゲルを泳動バッファー(25mMトリス、192mMグリシン、pH8.3)を入れたサブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレイに移し、サンプルバッファー(精製水−0.5Mトリス塩酸緩衝液pH6.8−グリセロール−0.5%(w/v)ブロモフェノールブルー)で3倍に希釈したペルオキシダーゼ(和光純薬工業(株)、西洋わさび由来)をマーカー色素のBPBがゲルの下端から約mmの位置に移動するまで、200Vの定電圧で電気泳動した。続いて、あらかじめ同条件で泳動して確認しておいたペルオキシダーゼのバンド位置を切り出してエッペンドルフチューブに入れ、β−1,3−グルカナーゼ溶液(β−1,3−グルカナーゼ10mg、0.05Mトリス塩酸緩衝液pH6.8 0.99ml、プロテアーゼインヒビターカクテル(SIGMA)10μl)1mlを加えてゲルをスパーテルでよく破砕した。37℃、2.5時間インキュベーションしてゲルを溶解させて、ろ過(フィルター孔径0.80μm)して得られた溶液をペルオキシダーゼ回収溶液とした。ペルオキシダーゼの回収率は約50%であった。
ペルオキシダーゼの回収率はペルオキシダーゼ活性の測定値から以下の式により求めた。
ペルオキシダーゼ回収率(%)=(ペルオキシダーゼ回収溶液の活性)/電気泳動に供したペルオキシダーゼ溶液の活性)×100
垂直型電気泳動装置用平板ゲル電気泳動
実施例1のBで調製した分子量200万の1本鎖シゾフィラン0.25gに、1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8を2.5ml、脱イオン水を7.25ml加えてホモジナイズ処理し、1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。これを減圧下で脱気した後、垂直型電気泳動装置用加熱ゲル形成器に注入し、120℃で15分加熱してゲル化させ、垂直型電気泳動用のグルカン濃度2.5%の平板ゲル(85mm×75mm×1mm)を作製した。このゲルを垂直型電気泳動装置にセットして、泳動バッファー(25mMトリス、192mMグリシン、0.1%SDS、pH8.3)を加えて、蛋白質マーカー(アマシャムファルマシアバイオテク、HMWマーカーキット(Native−PAGE用))を、BPBがゲルの端から約5mmの位置に移動するまで定電流20mAで電気泳動した。泳動パターンを図18に示す。
加熱ゲル化法によるポリアクリルアミドゲルとシゾフィランゲルの二層ゲル作製方法
脱イオン水5.8ml、30%アクリルアミド溶液1.7ml、1.5Mトリス塩酸緩衝液(pH8.8)2.5ml、TEMED10μl、及び10%APS50μlを混合し、加熱ゲル作製器の中央まで注入し、ゲル化させて5質量%ポリアクリルアミドゲルを作製した。次に、実施例1のBで調製した分子量約200万の1本鎖シゾフィラン0.25gに、1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8を2.5ml、脱イオン水を7.25ml加えてホモジナイズ処理し、1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。これを減圧下で脱気した後、加熱ゲル形成器のポリアクリルアミドゲル上部に注入し、120℃で15分加熱してゲル化させた。このようにして、ポリアクリルアミドゲルとシゾフィランゲルからなる二層の電気泳動用平板ゲル(85mm×75mm×1mm)を作製した。
加熱ゲル化法によるシゾフィランゲルとアガロースゲルの二層ゲル作製方法
実施例1のBで調製した分子量約200万の1本鎖シゾフィラン0.25gに、1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8を2.5ml、脱イオン水を7.25ml加えてホモジナイズ処理し、1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。これを減圧下で脱気した後、加熱ゲル形成器の中央まで注入し、120℃で15分加熱してゲル化させた。次にアガロース(和光純薬工業(株)、Agarose LE)0.1g、脱イオン水7.5ml、1.5Mトリス塩酸緩衝液(pH8.8)2.5mlの懸濁液を加熱してアガロースを溶解させ、加熱ゲル作製器のシゾフィランゲル上部に注入し、冷却してゲル化させた。このようにして、シゾフィランゲルとアガロースゲルからなる二層の電気泳動用平板ゲル(85mm×75mm×1mm)を作製した。
加熱ゲル化法によるポリアクリルアミドゲル、シゾフィランゲル、及びアガロースゲルの三層ゲル作製方法
脱イオン水5.8ml、30%アクリルアミド溶液1.7ml、1.5Mトリス塩酸緩衝液(pH8.8)2.5ml、TEMED10μl、及び10%APS50μlを混合し、加熱ゲル作製器の1/3まで注入し、ゲル化させて5質量%ポリアクリルアミドゲルを作製した。次に、実施例1のBで調製した分子量約200万の1本鎖シゾフィラン0.25gに、1.5Mトリス塩酸緩衝液pH8.8を2.5ml、脱イオン水を7.25ml加えてホモジナイズ処理し、1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。これを減圧下で脱気した後、加熱ゲル形成器のポリアクリルアミドゲル上部に2/3となるように注入し、120℃で15分加熱してゲル化させた。最後に、アガロース(和光純薬工業(株)、Agarose LE)0.1g、脱イオン水7.5ml、1.5Mトリス塩酸緩衝液(pH8.8)2.5mlの懸濁液を加熱してアガロースを溶解させ、加熱ゲル作製器のシゾフィランゲル上部に注入し、冷却してゲル化させた。このようにして、ポリアクリルアミドゲル、シゾフィランゲル、及びアガロースゲルからなる三層の電気泳動用平板ゲル(85mm×75mm×1mm)を作製した。
中和ゲル化法によるポリアクリルアミドゲルとシゾフィランゲルの二層ゲル作製方法
脱イオン水8.3ml、30%アクリルアミド溶液1.7ml、TEMED10μl、及び10%APS 50μlを混合し、ゲル作製器の中央まで注入し、ゲル化させて5質量%ポリアクリルアミドゲルを作製した。次に、ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン(3本鎖としての分子量約45万)1.0gを0.5N NaOH 10mlに室温で攪拌しながら溶解した。この溶液を、減圧下で脱気した後、ホルムアミド0.182mlを加えてよく攪拌した。続いて、ゲル作製器のポリアクリルアミドゲル上部に注入し、二晩放置してゲル化させた。このようにして、ポリアクリルアミドゲルとシゾフィランゲルからなる二層の電気泳動用平板ゲル(75mm×85mm×2mm)を作製した。
中和ゲル化法によるシゾフィランゲルとアガロースゲルの二層ゲル作製方法
ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン(3本鎖としての分子量約45万)1.0gを0.5N NaOH 10mlに室温で攪拌しながら溶解した。この溶液を、減圧下で脱気した後、ホルムアミド0.182mlを加えてよく攪拌した。続いて、ゲル作製器の中央まで注入し、二晩放置してゲル化させた。次に、アガロース(和光純薬工業(株)、Agarose LE)0.1g、脱イオン水10mlの懸濁液を加熱してアガロースを溶解させ、加熱ゲル作製器のシゾフィランゲル上部に注入し、冷却してゲル化させた。このようにしてシゾフィランゲルとアガロースゲルからなる二層の電気泳動用平板ゲル(75mm×85mm×2mm)を作製した。
中和ゲル化法によるポリアクリルアミドゲル、シゾフィランゲル、及びアガロースゲルの三層ゲル作製方法
脱イオン水8.3ml、30%アクリルアミド溶液1.7ml、TEMED10μl、及び10%APS 50μlを混合し、ゲル作製器の1/3まで注入し、ゲル化させて5質量%ポリアクリルアミドゲルを作製した。次に、ヘリックス構造を持つ3本鎖シゾフィラン(3本鎖としての分子量約45万)1.0gを0.5N NaOH 10mlに室温で攪拌しながら溶解した。この溶液を、減圧下で脱気した後、ホルムアミド0.182mlを加えてよく攪拌した。続いて、ゲル作製器のポリアクリルアミドゲル上部に2/3となるように注入し、二晩放置してゲル化させた。最後に、アガロース(和光純薬工業(株)、Agarose LE)0.1g、脱イオン水10mlの懸濁液を加熱してアガロースを溶解させ、ゲル作製器のシゾフィランゲル上部に注入し、冷却してゲル化させた。このようにしてポリアクリルアミドゲル、シゾフィランゲル、及びアガロースゲルからなる三層の電気泳動用平板ゲル(75mm×85mm×2mm)を作製した。
本発明の新規な電気泳動用ゲルは、従来のアガロースゲルやポリアクリルアミドゲルなどの電気泳動用ゲルではできなかった、より広範囲の分子量の核酸又は蛋白質の分離分析、及び高い回収率が求められる分離精製に利用可能であり、生化学、医学の分野において重要な分離分析法であるゲル電気泳動法を改善するものである。
本発明によれば、所望のゲル強度及び孔径に調節した電気泳動用ゲルを容易に製造することができる。また本発明のゲルを使用すると、核酸、蛋白質の分離、精製、回収を効率良く行うことができる。

Claims (18)

  1. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカンから調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
  2. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカンと、該グルカン以外の第2の多糖との混合物から調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
  3. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物との混合物から調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
  4. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカンと、該グルカン以外の第2の多糖と、及びポリアクリルアミド形成用組成物との混合物から調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
  5. 乾燥ゲルである請求項1〜4のいずれか1項記載の電気泳動用ゲル。
  6. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、該グルカンのヘリックス構造を破壊し得る第1の溶媒に溶解して1本鎖構造のグルカンとした後、第1の溶媒を除去し、該1本鎖構造のグルカンを溶解する第2の溶媒に溶解し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
  7. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、アルカリ性水溶液に溶解し、該溶液にアルカリ中和物質を加えて中和することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
  8. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、アルカリ性水溶液に溶解し、該溶液にアルカリ中和物質を加えて中和し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
  9. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、該グルカンのヘリックス構造を破壊し得る第1の溶媒に溶解して1本鎖構造のグルカンとした後、第1の溶媒を除去して得られる該1本鎖構造のグルカンと、グルカン以外の第2の多糖とを第2の溶媒に溶解し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
  10. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、グルカン以外の第2の多糖とをアルカリ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
  11. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、グルカン以外の第2の多糖とをアルカリ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
  12. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、該グルカンのヘリックス構造を破壊し得る第1の溶媒に溶解して1本鎖構造のグルカンとした後、第1の溶媒を除去し、該1本鎖構造のグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物とを第2の溶媒に溶解し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
  13. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物とをアルカリ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
  14. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、ポリアクリルアミド形成用組成物とをアルカリ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和し、加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
  15. 請求項1〜5のいずれか1項記載の電気泳動用ゲル、又は請求項6〜14のいずれか1項記載の方法により製造された電気泳動用ゲルを支持体として使用することを特徴とする電気泳動法。
  16. 請求項1〜5のいずれか1項記載の電気泳動用ゲル、又は請求項6〜14のいずれか1項記載の方法により製造された電気泳動用ゲルを支持体として使用することを特徴とする核酸又は蛋白質の分離精製法。
  17. 請求項1〜5のいずれか1項記載の電気泳動用ゲル、又は請求項6〜14のいずれか1項記載の方法により製造された電気泳動用ゲルを支持体として使用し、電気泳動後のゲルを酵素処理することを特徴とする核酸又は蛋白質の分離精製法。
  18. β−1,3−グルコシド結合を主鎖とし、β−1,6−グルコシド結合を側鎖に有する1本鎖構造のグルカンの、電気泳動用ゲルの製造のための使用。
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