明細書
電気泳動用ゲル及びその製造法 技術分野
本宪明は、 新規な電気泳動用ゲル、 その製造方法、 およびそれを用いる電気泳 動法に関するものであり、 さらに詳しくは生化学、 医学の分野において、 核酸又 は蛋白質の電気泳動による分離分析に際して、 支持体として使用される新規なゲ ル、 その製造方法、 およびそれを用いる電気泳動法に関するものである。 背景技術
従来、 核酸又は蛋白質を電気泳動により分離分析するための支持体として、 ァ ガロースゲルやポリアクリルアミドゲルが用いられている。通常、 これらのゲル による分離分析は分子篩い効果により行われるが、 それぞれのゲルの孔径は異な り、 分析の対象となる物質の大きさにより使い分けられている。 すなわち、 比較 的高分子量の核酸又は蛋白質の電気泳動にはァガロースゲルが、 比較的低分子量 の核酸又は蛋白質にはポリアクリルアミドゲルが使われている。
近年、 ァガロースやポリアクリルアミドを支持体とするゲル電気泳動法が確立 され、 高い精度の分子篩い効果により高分解能が期待できるようになった。 しか し、 ァガロースゲル及びポリアクリルアミドゲルによる電気泳動法には以下のよ うな問題点がある。
まず、 ァガロースはゲルの透明性が低く、 白濁している。 特に、 対象物質が低 分子の場合、 より高濃度のゲルを用いる必要があるが、 低分子の DNAの分画に高 濃度ゲルを使用すると、 電気泳動後、 DNAの鮮明な検出像を得ることが困難とな る。 また、 微量の不純物として、 硫酸基やカルボキシル基などの陰性荷電基を含 むため、 電気浸透が大きくなり、 特に等電点電気泳動法においては大きな問題に
なる。
一方、 ポリアクリルアミドの場合は、 電気泳動に使用するに足る強度を持つゲ ルを形成できるポリアクリルアミド濃度が実質 4〜3 0質量%である。 この濃度 範囲のゲルは、 孔径が小さいので、 電気泳動に使用できる強度を持つァガロース ゲル内なら移動できる分子量の物質でも、 大きな分子量のものはポリァクリルァ ミドゲル内の移動が阻害される。 即ち、 ポリアクリルアミドゲルは、 ァガロース ゲルに比べ、 分離可能な物質の分子量の範囲が狭い。 また、 ポリアクリルアミド ゲルの調製方法は非常に煩雑である。
また、 電気泳動法は、 分離した物質をゲルから容易に抽出回収することができ れば、 特に蛋白質の有用な分離精製法となり得るが、 ポリアクリルアミドゲルか らの蛋白質の回収率は一般的に低い。 比較的回収率の高い電気的溶出法の場合で も、 専用の装置が必要であること、 操作が煩雑であることなどの問題がある。 また、 Schizophyllum co腿 une Fries (スェヒロタケ) が産生するシゾフィラン、 Sclerotium glucanicumが産生するスクレ口グルカン、 レンチナン、 ラミナラン、 パキマンなどの水溶性グルカンは、 何本かの分子鎖が絡み合ってヘリヅクス構造 を持つ多量体を形成しており、 これらへリックス構造を持つ多量体を、 水素結合 を破壊する溶媒に溶解すると 1本鎖状に溶解し、 この溶解液から該溶媒を除去す るとゲルを形成することが知られている (例えば、 特許文献 1参照)。
例えば、 シゾフィランについては、 水中では三重らせん (以下 3本鎖という) 分子として、 またジメチルスルホキシド中では 3本鎖がほどけたランダムコイル (以下 1本鎖という)として溶解することが確かめられている(例えば、非特許文 献 1参照)。 また、 シゾフィランの水溶液を 135°Cに加熱しても、 3本鎖が 1本鎖 として融解し、これを再び冷却すると、ゲルを形成することが見出されている(例 えば、 非特許文献 2参照)。
なお、 グルカンと類似した構造をもつ多糖であるカードランを電気泳動用ゲル
として利用できることが知られているが(例えば、特許文献 2及び 3参照)、 力一 ドランゲルは透明ではなく、 特に蛋白質を分離した後、 染色法により蛋白質のス ポットを検出する際にその不透明さが問題となる。
特許文献 1 特開昭 56- 127603号公報
特許文献 2 特許第 2628229号
特許文献 3 米国特許第 4774093号
非特許文献 1 T . Nor isue, J · Po lym . Sc i · Po lpi . Phys .Ed. , 18.547(1980) 非特許文献 2 T. Yanaki , Carbohydr . Polym.55 , 275 ( 1985 ) 発明の開示
本発明は、 上記問題を解決することを目的とするものであり、 生化学、 医学の 分野における核酸又は蛋白質の分離分析を、 電気泳動法により、 より簡便に、 よ り効率良く、 かつより安全に行うことができる、 新規の電気泳動用ゲル、 その製 造方法、 およびそのゲルを用いる電気泳動法を提供することを目的としている。 さらに具体的には、 本発明の目的は、 孔径の調整が容易で、 広範囲の分子量の 核酸又は蛋白質の分離分析ができ、 ゲル上又はゲル中に分離展開した核酸又は蛋 白質の染色による検出が妨害されることが無いような電気泳動用ゲルを提供する ことである。
本発明の他の目的は、 上記電気泳動用ゲルの製造法を提供することである。 本発明のさらに他の目的は、 上記電気泳動用ゲルを用いた電気泳動法を提供す ることである。
本発明の他の目的は、 上記電気泳動用ゲルを用いた核酸又は蛋白質の分離精製 法を提供することである。
本発明者は上記課題を克服すべく鋭意研究を重ねた結果、 3—グルコ シド結合を主鎖とし、 ?— 1 , 6 —ダルコシド結合を側鎖にもつ、 種々の分子量
の水溶性グルカンを含有するゲルを調製し、 それを電気泳動の支持体とすること により、 上記課題を解決できることを見出し、 本発明を完成するに至った。
本発明は、 以下に示す電気泳動用ゲル、 その製造方法、 それを用いる電気泳動 法、 それを用いる核酸又は蛋白質の電気泳動による分離精製法を提供するもので ある。
なお、 この明細書において、 「核酸」とは、 ポリヌクレオチド鎖のみからなる核 酸の他、ヌクレオチド以外の成分が結 した核酸複合体 (例えば、各種糖類と結合 した糖核酸、 各種脂質と結合したリポ核酸、 各種蛋白質と結合した核酸蛋白質な ど)、これらの同種又は異種のものが 2以上会合した会合体も意味するものであり、 ' 「蛋白質」 とは、 ポリペプチド鎖のみからなる単純蛋白質の他、 アミノ酸又はべ プチド以外の成分が結合した複合蛋白質 (例えば、各種糖類が結合した糖蛋白質、 各種脂質が結合したリポ蛋白質、各種核酸が結合した核酸蛋白質)、これらの 2種 以上が会合した会合体も意味するものとする。
1. β- 1, 3一グルコシド結合を主鎖とし、 β- \, 6—グルコシド結合を側 鎖に有する 1本鎖構造のグルカンから調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
2. β-1, 3—ダルコシド結合を主鎖とし、 一 1, 6—グルコシド結合を側 鎖に有する 1本鎖構造のグルカンと、 該グルカン以外の第 2の多糖との混合物か ら調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
3. /3-1, 3—グルコシド結合を主鎖とし、 6—グルコシド結合を側 鎖に有する 1本鎖構造のグルカンと、 ポリアクリルアミド形成用組成物との混合 物から調製されたゲルを含む電気泳動用ゲル。
4. β- 1, 3 -グルコシド結合を主鎖とし、 ,6- 1, 6—ダルコシド結合を側 鎖に有する 1本鎖構造のグルカンと、 該グルカン以外の第 2の多糖と、 及びポリ ァクリルアミド形成用組成物との混合物から調製されたゲルを含む電気泳動用ゲ ル。
5. 乾燥ゲルである上記 1〜4のいずれか 1項記載の電気泳動用ゲル。
6. /3- 1, 3—グルコシド結合を主鎖とし、 ^— 1, 6—グルコシド結合を側 鎖に有するグルカンを、 該グルカンのへリヅクス構造を破壊し得る第 1の溶媒に 溶解して 1本鎖構造のグルカンとした後、 第 1の溶媒を除去し、 該 1本鎖構造の グルカンを溶解する第 2の溶媒に溶解し、 加熱処理することを特徴とする電気泳 動用ゲルの製造法。
7. 3 -グルコシド結合を主鎖とし、 β- 1, 6—グルコシド結合を側 鎖に有するクルカンを、 アル力リ性水溶液に溶解し、 該溶液にアル力リ中和物質 を加えて中和することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
8. 3- 1, 3—グルコシド結合を主鎖とし、 1, 6—グルコシド結合を側 鎖に有するグルカンを、 アル力リ性水溶液に溶解し、 該溶液にアル力リ中和物質 を加えて中和し、 加熱処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
9. β- 1, 3—グルコシド結合を主鎖とし、 ?— 1, 6—ダルコシド結合を側 鎖に有するグルカンを、 該グルカンのヘリヅクス構造を破壊し得る第 1の溶媒に 溶解して 1本鎖構造のグルカンとした後、 第 1の溶媒を除去して得られる該 1本 鎖構造のグルカンと、 グルカン以外の第 2の多糖とを第 2の溶媒に溶解し、 加熱 処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
10. β- 1, 3 -グルコシド結合を主鎖とし、 J3- 1, 6—グルコシド結合を 側鎖に有するグルカンと、 グルカン以外の第 2の多糖とをアル力リ性水溶液に溶 解し、 当該溶解液にアル力リ中和物質を加えて中和することを特徴とする電気泳 動用ゲルの製造法。
11. β- 1, 3―ダルコシド結合を主鎖とし、 /3- 1, 6—グルコシド結合を 側鎖に有するグルカンと、 グルカン以外の第 2の多糖とをアル力リ性水溶液に溶 解し、 当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和し、 加熱処理することを特徴 とする電気泳動用ゲルの製造法。
12. j3- l, 3—ダルコシド結合を主鎖とし、 ?— 1, 6—グルコシド結合を 側鎖に有するグルカンを、 該グルカンのヘリヅクス構造を破壊し得る第 1の溶媒 に溶解して 1本鎖構造のグルカンとした後、 第 1の溶媒を除去し、 該 1本鎖構造 のグルカンと、 ボリアクリルアミド形成用組成物とを第 2の溶媒に溶解し、 加熱 処理することを特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
13. β- 1 , 3-ダルコシド結合を主鎖とし、 β- 1 , 6 -ダルコシド結合を 側鎖に有するグルカンと、 ポリアクリルアミド形成用組成物とをアルカリ性水溶 液に溶解し、 当該溶解液にアル力リ中和物質を加えて中和することを特徴とする 電気泳動用ゲルの製造法。
14. β-1, 3—グルコシド結合を主鎖とし、 一 1 , 6—グルコシド結合を 側鎖に有するグルカンと、 ポリアクリルアミド形成用組成物とをアルカリ性水溶 液に溶解し、 当該溶解液にアルカリ中和物質を加えて中和し、 加熱処理すること を特徴とする電気泳動用ゲルの製造法。
15. 上記 1〜 5のいずれか 1項記載の電気泳動用ゲル、 又は上記 6〜 14のい ずれか 1項記載の方法により製造された電気泳動用ゲルを支持体として使用する ことを特徴とする電気泳動法。
16. 上記 1〜 5のいずれか 1項記載の電気泳動用ゲル、 又は上記 6〜 14のい ずれか 1項記載の方法により製造された電気泳動用ゲルを支持体として使用する ことを特徴とする核酸又は蛋白質の分離精製法。
17. 上記 1〜 5のいずれか 1項記載の電気泳動用ゲル、 又は上記 6〜: 14のい ずれか 1項記載の方法により製造された電気泳動用ゲルを支持体として使用し、 電気泳動後のゲルを酵素処理することを特徴とする核酸又は蛋白質の分離精製法。
18. β-1, 3—グルコシド結合を主鎖とし、 /3- 1, 6—グルコシド結合を 側鎖に有する 1本鎖構造のグルカンの、 電気泳動用ゲルの製造のための使用。
本発明の電気泳動用ゲルは、 グルカンの分子量、 濃度などにより容易にゲルの 孔径などを幅広い範囲で調節することができ、 特に高分子量の 1本鎖シゾフィラ ンの低濃度ゲルはポリアクリルアミドゲルに比べてゲルの孔径が大きいため、 lOOOkDa以上の高分子量の核酸又は蛋白質を、 その高次構造および生理活性を保 つたまま分離分析することができる。
また、 本発明のゲルは、 ゲルの透明性が非常に高いため、 ゲル上又はゲル中の 核酸又は蛋白質の染色による検出が妨害されず、 広範囲の分子量の蛋白質、 DNA などの分離分析が可能になる。 さらに、 ゲル上又はゲル中に展開分離した物質の 回収が容易なため、 分取を目的とする電気泳動用ゲルとしても利用できる。 図面の簡単な説明
図 1は、 実施例 3、 比較例 ( 1 )及び比較例 (2 ) の各ゲル上での 25〜250kDa の蛋白質の電気泳動パターンを示す図である。
図 2は、 シゾフイランの分子量及び濃度が異なる 2種類のゲル上での 50kDaの 蛋白質 (BPB) の電気泳動パターンを示す図である。
図 3は、実施例 5とその比較例の各ゲル上での 75〜250kDaの高分子量蛋白質の 電気泳動ノ 夕一ンを示す図である。
図 4は、 実施例 6とその比較例の各ゲル上での 67〜; LOOOkDaの高分子量蛋白質 の電気泳動パターンを示す図である。
図 5は、 2種類の DNA分子量マーカ一(( 1 ) Smart Ladder及び( 2 ) p BR322/Msp I digest) の電気泳動パターンについて、 実施例 8のゲル上のものと、 3重量% ァガロースゲル上のものを比較した図である。
図 6は、 1本鎖シゾフィランとデンプンから調製した変性系電気泳動用チュー プゲル上での、 蛋白質分子量マーカ一の泳動パ夕一ンを示す図である。
図 7は、 DNAの電気泳動パ夕一ンを、 1本鎖シゾフィランと市販寒天の混合物
から調製したゲルと、 市販寒天のみから調製したゲルとで比較した図である。 図 8は、実施例 1 6とその比較例の各ゲル上での 10〜250kDaの蛋白質の分離パ ターンを示す図である。
図 9は、実施例 2 0とその比較例(17ポリアクリルアミドゲル)の各ゲル上で の 4— 34.5kDaの蛋白質の分離ノ ターンを示す図である。
図 1 0は、 勾配ゲル形成器の一例を示す図面である。
図 1 1は、 実施例 2 2とその比較例 (4— 20%勾配ポリアクリルアミドゲル) の 各ゲル上での 10— 250kDaの蛋白質の分離パターンを示す図である。
図 1 2は、実施例 2 3の 45 - 200万分子量勾配グルカンゲル及び PA (ポリァク リルアミド)勾配ゲル上での 10- 250kDaの蛋白質の分離パターンを示す図である。 図 1 3は、 実施例 2 4の10〜2501^&蛋白質の分離パ夕一ンを示す図でぁる。 図 1 4は、 実施例 6の電気泳動パターンと実施例 2 5の 232〜669kDa蛋白質の 分離パターンを示す図である。
図 1 5は、 実施例 2 7とその比較例の等電点 4.45〜9.6蛋白質の分離パターン を示す図である。
図 1 6は、実施例 2 8の 12.2〜232kDa、 pI4.45〜9.6の蛋白質の 2次元分離 (1 次元目:シゾフィランゲル、 2次元目: PAゲルで共に非変性系)パターンを示す 図である。
図 1 7は、実施例 2 8の 12.2〜232kDa、 pI4.45〜9.6の蛋白質の 2次元分離(1 次元目 (非変性系):シゾフィランゲル、 2次元目 (変性系):シゾフィランゲル) パターンを示す図である。
図 1 8は、 実施例 3 0の 232〜669kDa蛋白質の分離パターンを示す図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明のゲルの原料となるグルカンは水溶性グルカンであり、具体例としては、
Schizophyllum commune Fries (スェヒロタケ) が産生するシゾフィラン、
Sclerotium glucanicumが産生するスクレログルカン、 レンチナン、 ラミナラン、 パキマンなどが挙げられ、 好ましくはシゾフィラン、 スクレログルカンが挙げら れる。 前述のとおり、 これらの多糖は何本かの分子鎖が絡み合ってヘリックス構 造を持つ多量体を形成しているが、 これらへリックス構造を持つ多量体を、 水素 結合を破壊する溶媒に溶解すると 1本鎖状に溶解し、 この溶解液から該溶媒を除 去するとゲルを形成することが知られている。
例えば、 シゾフィランについては、 水中では 3本鎖の分子として、 またジメチ ルスルホキシド中では 3本鎖がほどけたランダムコイル (以下 1本鎖という) と して溶解することが確かめられている。 3本鎖の水素結合を破壊し 1本鎖状に溶 解するための溶媒としては、 ジメチルスルホキシド以外に、 0 . 1 5 M以上のァ ルカリ水溶液、トリエチレンジァミンカドミウムヒドロキシドなどが利用できる。 また、 シゾフィランの水溶液を 135°Cに加熱しても、 3本鎖が 1本鎖として融 解し、 これを再び冷却すると、 ゲルを形成することが知られている。
水溶性グルカンのゲルを調製する方法としては、 上述の知見からも示唆される ように、 ( 1 ) 加熱ゲル化法、 (2 ) 透析ゲル化法、 及び ( 3 ) 中和ゲル化法があ 。
( 1 ) 加熱ゲル化法は、 まず、 3本鎖グルカンを 1本鎖状に溶解するための第 1の溶媒、 例えば、 水酸化ナトリウム、 水酸ィ匕カリウム、 水酸化バリウム等のァ ルカリ金属化合物又はアル力リ土類金属化合物の水溶液のようなアル力リ性水溶 液(例えば、 0 . 2 M水酸化ナトリウム水溶液)、 ジメチルスルホキシド、 トリエ チレンジァミンカドミウムヒドロキシド、 尿素水溶液などの溶媒に、 ゲル化させ ない場合には約 1質量%以下となるように溶解した後、 透析、 イオン交換などの 方法によりこれらの溶媒を除去し、 こうして得られた 1本鎖シゾフイランを第 2 の溶媒、 例えば、 水、 緩衝液などの適当な溶媒に溶かして 60°C〜135°C、 好まし
くは 80〜; 120°Cで数秒〜数時間、好ましくは 1 0〜6 0分間加熱した後、例えば、 室温付近まで冷却してゲルを得る方法である。
例えば、 グルカンを第 1の溶媒に低濃度で溶解後、 透析によりこれらの溶媒を 除去 (この段階ではゲルではない) して得た透析液を凍結乾燥して 1本鎖グルカ ン (固体) を得る。 この 1本鎖グルカンを水などの溶媒に溶解して加熱してゲル を得る。
なおグルカンを第 1の溶媒に高濃度で溶解後、 透析によりこれらの溶媒を除去
(この段階でゲルとなる) して得たゲルを凍結乾燥して得たグルカンを水などの 溶媒に溶解して加熱してもゲルが得られる。
( 2 ) 透析ゲル化法は、 グルカンを高濃度で、 好ましくは 1〜: 10質量%となる ように、 第 1の溶媒に溶解して調製した 1本鎖グルカン溶液から、 透析などの方 法により該溶媒を除去してゲルを得る方法である。
( 3 ) 中和ゲル化法は、 特許文献 2に記載されているように、 3本鎖グルカン をアルカリ水溶液に溶解後、 アルカリ中和物質で中和することにより (透析など によりこれらの溶媒を除去することなく) ゲル化する方法である。 アルカリ中和 物質としては、 特許文献 2に記載されているように、 各種酸から選ばれる少なく とも 1種を用いることができる。 また、 酸アミド及び/又はエステルからなる群 から選ばれる少なくとも 1種を用いることもできる。 酸としては、 蟻酸、 酢酸、 プロピオン酸、 ブタン酸等の有機酸、 硫酸、 りん酸等の無機酸が挙げられる。 ま た、 酸アミド及びエステルとしては、 上記酸と、 アンモニア、 炭素数 1〜4の直 鎖又は分岐アルキルアミン、 又は炭素数 2〜 8の直鎖又は分岐ジアルキルァミン 等のァミンとの酸アミド、例えば、 ホルムアミドが挙げられ、エステルとしては、 上記酸とアルコール、 好ましくは、 炭素数 1〜4の直鎖又は分岐アルコールとの エステルが挙げられる。 さらに、 上記酸を酸成分とする酸無水物や酸ハロゲン化 物 (ハロゲンとして好ましくは弗素、 塩素、 臭素) 等も、 アルカリ中和物質とし
て使用できる。 中和物質としての酸、 酸アミド、 エステル、 酸無水物、 酸ハロゲ ン化物の添加量は、 アルカリ性水溶液中のアルカリ 1当量に対して 0 . 6当量以 上、 好ましくは 0 . 6〜1 0当量、 特に好ましくは 1〜4当量である。
いずれの方法で得られたゲルも特性に大きな差はなく、 本発明の電気泳動用ゲ ルとして充分な強度を持っている。しかし、電気泳動用ゲルの形態調整の容易性、 及びグルカン濃度調整の容易性という点においては、 加熱ゲル化法と、 酸アミド 及び/又はエステルを用レ、る中和ゲル化法が好ましい。
なお、 1本鎖グルカンは水溶液中では絰時的にへリックス構造を形成し 3本鎖 グル力ンを形成することが知られているが、 加熱ゲル化法、 透析ゲル化法、 中和 ゲル化法ともに、 ゲル化の過程で 1本鎖グルカンがヘリヅクス構造を形成して 3 本鎖グルカンになることが考えられる。 また、 加熱ゲル化法で用いる 1本鎖グル 力ン粉末の調製時に 3本鎖グルカンが混在することも考えられるが、 その粉末中 の 1本鎖グルカン濃度が 0 . 2質量%以上であれば、 本発明のゲルを形成するこ とができる。
本発明の電気泳動用ゲルの作成方法を次に具体的に説明する。 前述の如く、 1 本鎖グルカンからゲルを形成するには( 1 )加熱ゲル化法、 ( 2 )透析ゲル化法、 ( 3 ) 中和ゲル化法があるが、 いずれの場合も適当なゲル形成器を用いる。 すな わち、 ( 1 )加熱ゲル化法では、加熱可能なゲル形成器を用い、電気泳動用平板ゲ ル又はチューブゲルを調製することができる。また、 (2 )透析ゲル化法では、透 析膜と補強板を組み合わせた透析ゲル形成器を用い、 電気泳動用平板ゲルを調製 することができる。 (3 )中和ゲル化法では、通常のゲル形成器を用いて、電気泳 動用平板ゲル、 チュ一プゲル等任意の形状のゲルを調製することができる。 加熱 ゲル化法及び中和ゲル化法では、 濃度勾配、 分子量勾配、 分子種句配、 p H勾配 等の種々の勾配ゲルを容易に調製することができる。
また、 濃度、 分子量、 分子種、 pH等が異なる数種類の層からなるゲルも調製す
ることができる。
また、 シゾフィランゲルでは垂直型電気泳動装置用のサンプル溝の作成が容易 ではないことが多い。 この場合には、 まずシゾフィランゲルでほぼ全体の泳動用 ゲルを作成し、 これにサンプル溝形成部分を、溝形成が容易な他のゲル、例えば、 ァガロースゲル、 ポリアクリルアミドゲルを用いて作成しても良い。
平板ゲルの大きさは、 例えば、 平幅 X長さ X厚さ =70蘭 X 85腿 X 3醒が一般的 であり、 チューブゲルの大きさは、 例えば、 直径 X長さ =5顧 X 85麗が一般的で あるが、 これらに限定されるものではなく、 必要に応じて任意の大きさのゲルを 調製することができる。
このようにして得られるゲルは、 非常に透明で、 ゲル上又はゲル中に展開した 蛋白質や核酸 (D NA、 R NA) のスポットの各種染色法による検出、 特に、 核 酸 (D NA、 R NA) のスポヅ卜のェチジゥムブ口マイドによる染色による検出 が阻害されず、鮮明な検出像の写真撮影ができるという、電気泳動用ゲルとして、 公知の力一ドランゲルと比較して非常に優れた有益な特徴を有している。 本発明のゲルは、 グルカンの分子量、濃度、種類などにより容易にゲルの強度、 孔径などを幅広い範囲で調節することができる。 具体的には、 本発明に使用する グルカンは、 好ましくは分子量 1万から 500万の 1本鎖グルカンであるが、 低分 子量のグルカンの場合は高濃度のゲルの調製が、 高分子量のグルカンの場合は低 濃度のゲルの調製が可能となり、グルカン濃度 0.2から 50質量%のゲルを調製す ることができる。特に分子量が 50万から 500万の 1本鎖グルカンは、低濃度でも、 電気泳動後の染色、 脱色などの操作を行うために充分な強度を持つゲルを調製す ることが可能である このような高分子量 1本鎖グルカンの低濃度ゲルはポリァ クリルアミドゲルに比べてゲルの孔径が大きいため、 高分子量の核酸又は蛋白質 の分離分析にも適用できる。例えば、 ポリアクリルアミドゲルでは電気泳動され
難い lOOOkDa以上の高分子量蛋白質でも、 その高次構造および生理活性を保った まま、 すなわち変性剤を用 、ない非変性条件下でも分離することが可能になる。 また、 本発明のゲルは、 ゲル上に展開した物質の回収率がポリアクリルアミド ゲルよりも高く、分取又は回収を目的とする電気泳動用ゲルとしても有用である。 従って本発明のゲルを用いた電気泳動法は核酸又は蛋白質などの生体由来物質の 有用な分離精製法となり得る。 電気泳動後、 ゲル上又はゲル中に分離展開した物 質を回収する具体的な方法としては、 溶出液により溶出する方法、 凍結融解によ り溶出する方法、 電気泳動的に溶出する方法、 β - 1 , 3—グルカナーゼ活性を 有する酵素でゲルを溶解させる酵素法などが適用できる。特に酵素法によれば、 加熱、 有機溶媒処理等を伴わず、 ゲル全体を完全に溶角军させるので、 目的の核酸 又は蛋白質を変性させることなく天然の状態で理論上 100%回収することができ 。
本発明のゲルは、 1本鎖グルカン単独でゲル化したものでもよいが、 ァガ口一 スヽ 口一カストビーンガム、 夕ラガム、 グァ一ガム、 夕マリンドガム、 プルラン、 デキストラン、 デンプン、 セルロース等の 1種類以上の第 2の多糖を併用してゲ ル化したものでも良い。 1本鎖グルカンと第 2の多糖を併用したゲルの調製には、 上記( 1 )加熱ゲル化法、 ( 2 )透析ゲル化法、 及び(3 ) 中和ゲル化法のいずれ も使用することができる。 こうして得られたゲルはいずれも優れた電気泳動用支 持体となる。
1本鎖グルカンと第 2の多糖を併用する場合、 1本鎖グルカンと第 2の多糖の 総量に対する 1本鎖グルカンの比率は、 好ましくは 0 . 1〜 1 0 0質量%、 さら に好ましくは 1〜9 0質量%である。 1本鎖グルカンの比率が 0 . 1質量%未満 では、 本発明の目的が充分に達成されなくなる。
低純度ァガロースとしては、 一般的な市販ァガロースを挙げることができる。 それらのゲルの多くは、 不純物として硫酸基やカルボキシル基などの陰性荷電基
を数%含むため電気浸透度が大きく、 電気泳動に用いた場合、 核酸又は蛋白質の 分離能が劣る。 しかし、 本発明者らは、 そのようなァガロースでも、 1本鎖グル カンを併用してゲル化したゲルにすると、 電気浸透度が緩和されて、 電気泳動時 の核酸又は蛋白質の分離能が飛躍的に向上することを見出した。
一般に電気泳動用として使用されているァガロースは、 海藻から抽出されるァ ガロースの不純物を徹底的に除去することにより高度に精製したものである。 従 つて、 電気泳動用ァガロースは、 製造に膨大な労力とコストを要し、 非常に高価 なものとなっている。 しかし、 上述のように、 一般的な巿販のァガロースに 1本 鎖グルカンを併用してゲル化することにより、 電気泳動時の核酸又は蛋白質の分 離能が高度に精製したァガロースのゲルと同等のゲルが調製可能となるため、 高 度に精製したァガロースのゲルに匹敵する電気泳動用ゲルを安価かつ容易に提供 できる。
/3 - 1 , 3—グルコシド結合を主鎖とするグルカンは、 例えば増粘多糖として 食品用途にも多く利用されており、 その安全 ½ ^ま非常に高い。
本発明のゲルは、 1本鎖グルカン単独でゲル化したものでも、 これに第 2の多 糖を併用したものでもよいが、 さらにアクリルアミド及び/又はアクリルアミド 誘導体を併用してゲル化したものでも良い。 1本鎖グルカンとアクリルアミド及 び/又はアクリルアミド誘導体を併用したゲルの調製には、 上記 (1 )加熱ゲル 化法、 ( 2 )透析ゲル化法、 及び(3 )中和ゲル化法のいずれも使用することがで きるが、 ( 1 )加熱ゲル化法、及び(3 ) 中和ゲル化法が好適である。 こうして得 られたゲルはいずれも優れた電気泳動用支持体となる。
1本鎖グルカンと、 アクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体を併用す る場合、 1本鎖グルカンとァクリルアミ卜'及び/又はァクリルァミド誘導体の総 量に対する 1本鎖グルカンの比率は、 好ましくは 0 . 1〜1 0 0質量%、 さらに 好ましくは 1〜9 0質量%である。 1本鎖グルカンの比率が 0 . 1質量%未満で
は、 本発明の目的が充分に達成されなくなる。
1本鎖グルカンとアクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体を併用した 本発明のゲルは、 例えば、 β - 1 , 3—ダルコシド結合を主鎖とし、 β - 1 , 6 ―グルコシド結合を側鎖に有するグルカンを、 該グルカンのへリックス構造を破 壊し得る第 1の溶媒に溶解して 1本鎖構造のグルカンとした後、 第 1の溶媒を除 去し、 該 1本鎖構造のグルカンと、 ポリアクリルアミド形成用組成物とを第 2の 溶媒に溶解し、 加熱処理する方法、 ?— 1 , 3—ダルコシド結合を主鎖とし、 β — 1, 6—ダルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、 ポリアクリルァミド形成 用組成物とをアル力リ性水溶液に溶解し、 当該溶解液にアル力リ中和物質を加え て中和する方法、 あるいは^— 1 , 3—グルコシド結合を主鎖とし、 1, 6 ―グルコシド結合を側鎖に有するグルカンと、 ポリアクリルアミド形成用組成物 とをアル力リ性水溶液に溶解し、当該溶解液にアル力リ中和物質を加えて中和し、 加熱処理する方法等により製造することができる。
ポリアクリルアミド形成用組成物は、 モノマ一、架橋剤、 重合開始剤、 重合促 進剤及び溶媒を含み、 必要により、 変性剤、 還元剤を含有させてもよい。 モノマ —としては、 アクリルアミド、 Ν置換アクリルアミド誘導体、 例えば、 一般式: C H 2 = C H - C O N H - ( C H 2 ) n - R (式中、 nは 1〜5の整数を示し、 R は、 カルボキシル基、 硫酸基、 リン酸基等の酸性基、 又はジメチルァミノ基、 ジ ェチルァミノ基、又はモルホリノ基等の塩基性基を示す。)等が挙げられる。架橋 剤としては、 Ν,Ν'-メチレンビスァクリルアミ ド等が、 重合促進剤としては、 Ν, Ν, Ν,, Ν,-テトラメチルェチレンジアミン(TEMED)等が、 重合開始剤としては、 過 硫酸アンモニゥム等が、溶媒としては、水、 ρΗ 3〜1 1の緩衝液等が挙げられる。 また変性剤としては、 SDSヽ尿素、 ポリオキシエチレンイソォクチルフエ二ルエー テル (Triton X (登録商標))、 3— [( 3—コラミドプロピル) ジメチルアンモニ ォ] 一 1—プロパンスルホン酸 (CHAPS)等が、 還元剤としては、 2—メルカプト
エタノール、 ジチオトレイト一ル等が挙げられる。
ァクリルアミド及び Ν,Ν'-メチレンビスァクリルアミドは電気泳動用グレード として単独で市販されており、最近ではァクリルアミド及び Ν,Ν'-メチレンビスァ クリルアミドを一定の割合で混合したものも市販されている。 市販のアクリルァ ミド /Ν,Ν'-メチレンビスァクリルァミド混合品は、 混合比 19/1〜37.5/1のも のが入手可能である。
Ν置換アクリルアミド誘導体としては、 ァマシャムフアルマシァ社製「ィモビ ライン (I画 obiline) (登録商標) II」等が挙げられる。 「ィモビライン (登録商 標)」 には、 上記一般式の n及び置換基 Iの違いにより pKの異なる製品があり、 Κ 3.6, 4.6, 6.2, 7.0, 8.5, 9.3のものが入手可能である。
上記試薬は最初からゲルを作成する場合の溶液(0.2Μ)として市販されている。 実際には上記 ρΚの異なる 「ィモビライン (登録商標)」 を混合して勾配範囲の最 低 ρΗと最大 ρΗのものを用意しておき、 これらの混合比をグラジェントしながら 市販のアクリルアミド (Ν,Ν'-メチレンビスアクリルアミドの混合品を使用) と混 合して共重合させることで、 ρΗ勾配をつけたゲルを作成することができる。 本発明の 1本鎖グルカンとアクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体を 用いて ρΗ勾配ゲルを製造するには、ゲル中のグルカン濃度は好ましくは 0.2〜50 質量%、ゲル中のアクリルアミドの濃度範囲は好ましくは 0.01〜; 10質量%、さら に好ましくは 0.1〜4質量%、及びゲル中のァクリルアミド誘導体の濃度範囲は、 好ましくは 0.2Μ〜0.002Μ、 さらに好ましくは 0.01Μ〜0.03Μである。
以上のように、 本発明に使用するグルカンが、 特定の条件下でゲルを形成する ことは公知であるが、 このゲル、 あるいは該グルカンに第 2の多糖、 あるいは、 アクリルアミド及び/又はアクリルアミド誘導体を併用して調製したゲルが電気 泳動用ゲルとして優れた特性を有することは従来全く知られておらず、 本発明者 等が初めて見出したものである。
実施例
以下、 本発明を実施例により具体的に説明するが、 本発明はこれらの実施例に より限定されるものではない。
実施例 1
1本鎖シゾフィランの調製
A ヘリヅクス構造を持つ 3本鎖シゾフイラン 10. Og ( 3本鎖としての分子量約 45万) を 0.5N- NaOH 1000mlに室温で攪拌しながら溶解した。 溶解液を、 透析用 セルロースチューブ' (孔径約 50オングストロ一ム)を用いて、透析液が中性にな るまで、 脱ィォン水に対して透析した。 そして、 セルロースチューブ内のシゾフ ィラン水溶液を凍結乾燥して分子量約 15万の 1本鎖シゾフィランを 9.79g得た。 B ヘリックス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン 5.0g ( 3本鎖としての分子量約 600万) を 0.5N-NaOH 100mlに室温で攪拌しながら溶解した。 溶解液を、 透析用 セルロースチューブを用い、 透析液が中性になるまで、 脱イオン水に対して透析 した。 そして、 セルロースチュ一プ内のシゾフィランゲルを凍結乾燥して分子量 約 200万の 1本鎖シゾフィランを 4.85g得た。
C ヘリヅクス構造を持つ 3本鎖シゾフイラン 10. Og ( 3本鎖としての分子量約 15万) を 0.5N- NaOH 2000mlに室温で攪拌しながら溶解した。 透析液が中性にな るまで、 脱イオン水に対して透析した。 次に、 セルロースチューブ内のシゾフィ ラン水溶液を別の容器に移し、アセトン 2000mlを攪拌しながら徐々に加えてシゾ フイランを凝固させた。 そして、 凝固物をろ過法によって回収し、 減圧下、 60°C で一夜乾燥して、 分子量約 5万の 1本鎖シゾフィランを 9.2g得た。
なお、 上記で用いた 3法は、 ヘリックス構造を持つ 3本鎖シゾフィランから 1 本鎖シゾフィランを調製する方法であり、 いずれの方法によっても分子量に関係 なく 1本鎖シゾフィランを調製することができる。
実施例 2
ゲルの調製
1-1. 加熱ゲル化法による平板ゲルの調製
実施例 1の A、 Bヽ 又は Cで調製した 1本鎖シゾフィランを、脱イオン水ととも にホモジナイズ処理し、 1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。 これを減圧下で脱気 した後、 加熱ゲル形成器に注入し、 120°Cで 20分加熱してゲル化させ、 電気泳動 用平板ゲル (70廳 X 85腿 X 3腿) を作製した。
1-2. 加熱ゲル化法による変性系チュ一ブゲルの調製
実施例 1の A、 B、又は Cで調製した 1本鎖シゾフィランを脱イオン水 11. lml、 1.5Mトリス—塩酸緩衝液 (pH8.8) 3.75mlとともにホモジナイズ処理して減圧下 で脱気した後、 10%SDS水溶液 0.15mlを加えて攪拌して 1本鎖シゾフィラン懸濁 液を得た。 この液をガラス管 (直径 X長さ =5雇 X 100腿) に注入し、 120°Cで 20 分間加熱してゲル化させ、 変性系電気泳動用チューブゲル (直径 X長さ =5画 X 85腿) を作製した。
1-3. 加熱ゲル化法による非変性系チュ一ブゲルの調製
実施例 1の A、 B、又は Cで調製した 1本鎖シゾフィランを脱ィォン水 15ml、 1 · 5M トリス一塩酸緩衝液(pH8.8) 5mlとともにホモジナイズ処理し、 1本鎖シゾフィ ラン懸濁液を得た。 この液を減圧下で脱気した後、 ガラス管 (直径 X長さ =5雇 100mm) に注入し、 120°Cで 20分間加熱してゲル化させ、 非変性系電気泳動用 チューブゲル (直径 X長さ =5顧 X 85顧) を作成した。
1-4. 中和ゲル化法による平板ゲルの調製
ヘリヅクス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン 1.5g ( 3本鎖としての分子量約 45 万) を 0.5N-Na0H 25mlに室温で攪拌しながら溶解した。 これを 55°Cに保温しな がら 5M酢酸で中和した。中和溶液をすばやくゲル形成器に注入し、冷却ゲル化さ
せて電気泳動用平板ゲルを作製した。
なお、 1本鎖シゾフィランから加熱ゲル化法によりゲルを調製するときの 1本 鎖シゾフィラン濃度、 分子量、 加熱温度、 および加熱時間とゲルの状態との関係 について、 表 1〜表 3に示す。 1本鎖シゾフイランから加熱ゲル化法によりゲル を調製するとき、 1本鎖シゾフィラン濃度が高いほど、 分子量が大きいほど、 加 熱温度が高いほど、 さらに加熱時間が長いほど強いゲルが形成される。
ゲル強度の判定
ゲル強度測定容器 (30ml容のサンプル管) 中で、 加熱ゲル化法によりゲルを調 製し、 20°Cでレオメーター (不動工業 (株)、 モデル NRM-2010J-CW)により破断強 度を測定し、 破断強度が 500g/cm2以上のゲルを +++、 500 g/cm2未満 50g/cm2以上 のゲルを ++、 50g/cm2未満のゲルを +で示す。
グルカンの分子量の測定
試料の一定量を水に溶解し、ウベローデ型粘度計により 25°Cで極限粘度を測定 した。則末らにより得られた極限粘度と分子量の関係 (T.Norisue, J.Polym. Sci . Polym.Pys.Ed. , 18, 547(1980))を用いて各試料の重量平均分子量を求めた。
3本鎖グルカンは水溶液中でコンゴ一レッドと可溶性の錯体を形成し、 その可 視部における極大吸収波長はコンゴ一レヅドの極大吸収波長よりも長波長側にシ フトする。 一方、 1本鎖グルカンは錯体を形成しない。従って、 グルカンとコン ゴ一レツドの混合液の極大吸収波長を測定することにより、 1本鎖又は 3本鎖グ ルカンを識別できる (K. Tabata et al. , Carbohydrate Research, 89, 121-135 ( 1981 ) )。また 1本鎖及び 3本鎖グルカンが混合されている場合のそれぞれのグル 力ンの割合は、 示差走査熱量計によるピーク面積比から決定することができる。
1本鎖シゾフイランの分子量: 8 0万
加熱条件: 1 2 0 °Cヽ 2 0分
λ
1本鎖シゾフィランの濃度: 3 %
加熱条件: 1 2 0 °C、 2 0分
表 3
1本鎖シゾフィランの分子量: 8 0万
1本鎖シゾフィランの濃度: 5質量% さらに、実施例により作製したゲルと、比較例として作製した( 1 )濃度 10質量% で作製したポリアクリルアミドゲル (比較例 1 )、 (2)濃度 1質量%で作製したァ ガロースゲル (和光純薬工業 (株)、 Agarose LE) (比較例 2 )、 及び (3)濃度 1質
量%で作製した力一ドランゲル (和光純桀工業 (株)、 力一ドラン) (比較例 3 ) の 700 から 220nmの各波長における吸光度を表 4に示した。これらの測定値は、 形成されたゲル中の曇りの量、 及び、 DMや蛋白質を紫外吸収により検出する際 の妨害度合いを反映するものである。 実施例のゲルの吸光度ほ、 現在、 電気泳動 用として汎用されているポリアクリルアミドゲルのものと比較して、 可視領域で ほぼ同程度であり、 紫外領域では同程度からやや小さい値であった。 また、 ァガ ロースゲルおよび力一ドランゲルに比較すると、 明らかに小さい値であった。 即 ち、 本発明の実施例のゲルは、 従来の電気泳動用ゲルよりもより広範囲の波長に 対して透明性に優れ、 電気泳動用ゲルとしてより適していることが確認できた。 表 4 吸光度
2. 透析ゲル化法による平板ゲルの調製
ヘリックス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン 1.5g ( 3本鎖としての分子量約 45 万)を 0.5M-Na0H水溶液 25mlに室温で攪拌しながら溶解した。これを透析ゲル形 成器に注入し、脱イオン水に対して透析液が中性になるまで透析してゲル化させ、 電気泳動用平板ゲル (150腿 X 100腿 X 3顧) を作製した。 実施例 3
蛋白質の平板ゲル電気泳動
実施例 1で調製した分子量約 1 5万の 1本鎖シゾフイランから、 実施例 2の 1-1と同様にして、 グルカン濃度 6質量%の平板ゲル (70雇 X 85画 >く3鹏) を作製 した。 このゲルを、 ゲルバッファ一(イオン交換水一 1.5M トリス塩酸緩衝液 p H
8.8-10% S D S 111: 37.5: 1.5v/v) と平衡化するため、 該ゲルバッファ一に 一夜浸漬した。次に、 この平衡化したゲルを泳動バッファー(25mMトリス、 192mM グリシン、 0. 1%SDS、 pH8.3)を入れたサブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレ ィに移し、 蛋白質分子量マーカー(BI0 RAD、 プレシジョンスタンダード、 分子量 範囲: 10 - 250kDa) を、 マ一カー色素 BPB (Bromophenol blue) がゲルの端から 約 5腿の位置に移動するまで定電流 20mAで電気泳動した。
比較例として、(1 )10%ポリアクリルアミドゲル、及び (2)1.5%ァガロースゲル でも、 同様の電気泳動を行った。 泳動後の蛋白質の検出は、 クマシ一ブリリアン トブル一 R250染色法によった。図 1に実施例と比較例の泳動パターンを示す。実 施例のゲルは、比較例の(1 )10%ポリアクリルアミドゲルとほとんど同程度の分離 能を示したが、特に 75kDaから 250kDaの高分子量蛋白質において鮮明な分離パ夕 ーンが得られ、 その良好な分子篩い効果が示された。 これに対して、 比較例の (2 )1.5%ァガロースゲルではほとんど分離されなかった。 実施例 4
蛋白質の平板ゲル電気泳動
実施例 1で調製した分子量約 15万又は 200万の 1本鎖シゾフィランから、実施 例 2の 1と同様にして、グルカン濃度 10質量%又は 2質量%の平板ゲル(70顧 X 85mm X 3mm) を作製した。 以下、 実施例 3と同様に電気泳動を行った。 図 2に 泳動パ夕一ンを示す。 また、 50kDaの蛋白質の BPBに対する相対移動度とグルカ ン濃度の関係を表 5に示す。 グルカン濃度が高くなるにつれて蛋白質の相対移動 度が低くなり、 グルカン濃度によりゲル孔径が調節できることが観察された。
表 5
実施例 5
蛋白質の変性系
実施例 1で調製した分子量約 15万の 1本鎖シゾフイランから、実施例 2の 1-2 と同様にして、 グルカン濃度 6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを作製し た。更に、 そのゲル上に、厚さ 5雇となるように、脱イオン水 6· 1ηι1、 30%ァクリ ルアミド 1.3mlヽ 0.5Mトリス—塩酸緩衝液 (pH6.8) 2.5mlヽ 並びに 10% SDS 0.1ml を溶解後脱気した溶液に TEMED (Ν,Ν,Ν',Ν'-テトラメチルエチレンジアミン) 10 〃1及び 10% APS (過硫酸アンモニゥム) 50〃1を混合した溶液を注入してゲル 化させ、 濃縮ゲルを作成した。そして、 このように上部に厚さ 5顧の濃縮ゲルが 形成されたチューブゲルを、 ディスク型電気泳動装置に取り付け、 該装置の上部 泳動槽及び下部泳動槽に泳動バッファ一(25mMトリス、 19MIグリシン、 0.1%SDS、 pH8.3) を入れ、 蛋白質分子量マ一カー (BIO RADs プレシジョンスタンダード、 分子量範囲: 10- 250kDa) を、 マーカ一色素の BPBがゲルの下端から約 5腿の位 置に移動するまで、 チュ一プゲル 1本当たり 5mAの定電流で電気泳動した。
比較例として、脱イオン水 5.73ml、 30%アクリルアミド溶液 1.67ml、 1.5Mトリ ス—塩酸緩衝液 (PH8.8) 2.5ml、 10%SDS0.1ml、 TEMED 10〃 1、 及び 10%APS 50 1から調製した 5質量%ポリアクリルアミドチューブゲルにより、 蛋白質分子量 マーカ一を、 実施例と同様に電気泳動した。 泳動後の蛋白質の検出は、 クマシ一 プリリアントブルー R250染色法にて行った。得られたそれぞれの泳動パターンを 図 3に示す。実施例の 6質量%シゾフィランゲルによる分子量 75kDaから 250kDa
の蛋白質の分離は、 比較例の 5質量%ポリアクリルアミドゲルによるものと同程 度であった。 実施例 6
蛋白質の非変性系ディスク電気 ¾c動
実施例 1で調製した分子量約 200万の 1本鎖シゾフィランから、実施例 2の 1-3 と同様に、 グルカン濃度として 2.5質量%の非変性系電気泳動用チュ一プゲルを 作製した。 このチューブゲルをディスク型電気泳動装置に取り付け、 該装置の上 部泳動槽及び下部泳動槽に泳動バヅファー(25m トリス、 192mMグリシン、 H8.3) を入れ、 IgM (ケミコンイン夕一ナショナル INC.、 HUMAN IgM)ヽ ひ 2—マクログロ プリン (和光純薬工業 (株))、 及び分子量マーカ一 (アマシャムフアルマシアバ ィォテク、 HMWマ一力一キット (Native- PAGE用)) を、 マ一力一色素の BPBがゲ ルの下端から約 5腿の位置に移動するまで、チューブゲル 1本当たり 2mAの定電 流で電気泳動した。
比較例として、脱イオン水 5.73ml、 30%アクリルアミド溶液 1.67ml、 1.5Mトリ ス—塩酸緩衝液 (PH8.8) 2.5ml、 TEMED 10〃1、 及び 10%APS 50 z lから調製した 5 %ポリアクリルアミドチューブゲルについても、 実施例と同様の電気泳動を行 つた。蛋白質の検出には、 クマシ一プリリアントブル一 R250染色法を用いた。そ の結果得られたそれぞれの泳動パ夕一ンを図 4に示す。 分子量 900〜1, OOOkDaの IgMは、 比較例の 5質量%ポリアクリルアミドゲルではほとんど泳動せず原点付 近に留まっていたのに対し、 実施例のシゾフィランゲルでは泳動しており、 BPB に対する相対'移動度は 0.07であった。 また、 分子量 720kDaの《2-マクログロブ リンの BPBに対する相対移動度は、 5質量%アクリルアミドゲルでは 0.14、 シゾ フイランゲルでは 0.58で、後者の方が大きかった。電気泳動に使用するに足る強 度を持つゲルを形成できるポリアクリルァミドのゲル濃度は最低 4〜 5質量%で
ある。 従って、 ここの比較例よりも、 蛋白が移動し易い電気泳動用ポリアクリル アミドゲルを作製することは困難である。 即ち、 実施例のシゾフィランゲルは 5 質量%アクリルアミドゲルよりも蛋白の電気泳動による移動が大きかったことか ら、 このゲルは、 広範囲の分子量の蛋白質分析に利用でき、 特に、 ポリアクリル アミドゲルでは分離することが困難なより大きな蛋白質の分離に適していること が示唆された。 実施例 7
蛋白質の平板ゲル電気泳動
実施例 1の Bと同様の方法で調製した分子量約 200万の 1本鎖スクレログルカ ンから、 実施例 2の 2と同様にして、 グルカン濃度 3質量%の平板ゲル (150腿 X 100mm X 3m) を作製した。 以下、 実施例 3 と同様の条件で電気泳動を行った。 その結果、 シゾフィランから調製したゲルを用いた場合と同様、 鮮明な分離パ夕 ーンを確認することができた。 実施例 8
DNAの平板ゲル電気泳動
へリヅクス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン ( 3本鎖としての分子量約 250万) から実施例 2の 2と同様にして、 5質量%のグルカンの平板ゲル (150腿 X 100雇 X 3雇) を作製した。 そのゲルを、 l xTAE泳動バッファ一 (0.04Mトリス、 0.04M 氷酢酸、 0.001M EDTA) に一夜浸漬し、 平衡ィ匕した。 そして、 この平衡化したゲル を用いて、 2種類の DNA分子量マ一カー (二ヅポンジーン、 Smart Ladder及び pBR322/Msp I digest) を、 マーカ一色素の BPBがゲル長の約 2/3移動するまで、 5 0 V定電圧で電気泳動した。
比較例として、 3質量%のァガロース (二ヅポンジーン、 Agarose 21) ゲルに
ついても、 同様の電気泳動を行った。 泳動後のゲルをェチジゥムブ口マイドで染 色し、 トランスイルミネー夕一で DNAの泳動パ夕一ンを観察した結果を図 5に示 す。 実施例のゲルによる方が比較例のゲルによるよりもバンド間の幅が広く、 実 施例のゲルの方が分解能に優れることが確認できた。 実施例 9
超音波法による蛋白質の回収
実施例 1で調製した分子量約 15万の 1本鎖シゾフィランから実施例 2の 1-2 と同様に、 グルカン濃度として 6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを作製 した。次に、 実施例 5と同様に、 ヒト血清アルブミン (和光純薬工業(株)) を電 気泳動した。 電気泳動後のゲルを、 固定液 (酢酸:メタノール:水 =5: 20: 75) に一夜浸漬した後、 10ml容量のねじ口瓶に入れてスパーテルで破砕した。破砕し たゲルに水 5mlを加え、 60分間超音波処理し、 4°Cでー晚ィンキュベ一シヨンし た後、 ろ過 (フィル夕一孔径 0.80〃m) し、 得られたろ液を蛋白質回収溶液とし た。 蛋白質回収溶液中の蛋白質濃度を DC Protein Assay Kit II (BIO RAD) を用 いて測定し、 蛋白質回収率 (= (蛋白質回収量/電気泳動に供した蛋白質量) X 100)を求めた。なお、電気泳動後のゲルを固定液に浸漬せずに処理した場合につ いても、 同様にして蛋白質回収率を求めた。
比較例として、脱イオン水 5.73ml、 30%アクリルアミド溶液 1.67ml、 1.5Mトリ ス一塩酸緩衝液 (PH8.8) 2.5ml. 10%SDS 0.1ml、 TE ED 10〃1、 10%APS 50〃1か ら調製した 5質量%ポリアクリルアミドチューブゲルについても、 実施例と同様 にヒト血清アルブミンを電気泳動し、 蛋白質の回収率を測定した。 結果を表 6に 示した。 固定化処理した場合、 固定ィ匕処理しない場合のいずれにおいても、 実施 例の回収率の方が比較例の回収率よりも高かった。
表 6 超音波法による蛋白質の回収率
溶解法による蛋白質の回収
実施例 1の方法により調製した分子量約 15万の 1本鎖シゾフィランから実施 例 2の: 1-2と同様にして、 グルカン濃度として 6質量%の変性系電気泳動用チュ ープゲルを 2本作製した。 それぞれのチューブゲルについて、 実施例 5と同様に して、 ヒト血清アルブミン (和光純薬工業(株))の電気泳動を行った。電気泳動 後のゲルを各々 10ml容量のねじ口瓶に入れてスパーテルで破砕した。破砕したゲ ルに、 1%SDSを含む 0.2N NaOH溶液 5 ml、 又は 1%SDSを含む 9M尿素溶液 5mlを加 えた。ゲルが溶媒に解けるまで 80°Cで加熱し、得られた溶解液を蛋白質回収溶解 液とした。 以下、 実施例 9と同様に蛋白質回収溶解液中の蛋白質量を測定し、 蛋 白質の回収率を求めた。
比較例として、 脱イオン水 5.73ml、 30%アクリルアミド溶液 1.67ml、 1.5Mトリ ス—塩酸緩衝液 (PH8.8) 2.5ml、 10%SDS 0. 1ml、 TE ED 10〃1、 10¾APS 50〃1か ら調製した 5質量%ポリアクリルアミドチューブゲルにより、 実施例と同様にヒ ト血清アルブミンを電気泳動し、 その回収率を測定した。 結果を表 7に示した。 実施例での蛋白質回収率は、 aOH溶液又は尿素溶液のいずれの溶解液を使用した 場合でも、 比較例での回収率より高かった。
表 7 溶解法による蛋白質の回収率
凍結融解法による蛋白質の回収
実施例 1で調製した分子量約 15万の 1本鎖シゾフィランから実施例 2の 1-2 と同様に、 グルカン濃度として 6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを作製 した。 次に、 実施例 5と同様の方法により、 ヒト血清アルブミン (和光純藥工業 (株)) を電気泳動した。 電気泳動後のゲルを 10ml容量のねじ口瓶に入れてスパ —テルで破砕した。 破砕したゲルに水 lmlを加え、 —20°Cで、 一晩凍結した後、 30°Cで融解した。 融解液をろ過 (フィル夕一孔径 0.80 /m) し、 ろ液を蛋白質回 収液とした。 以下、 実施例 9と同様の方法により蛋白質回収液中の蛋白質量を測 定し回収率を求めた。
比較例として、脱イオン水 5.73ml、 30%アクリルアミド溶液 1.67ml、 1.5Mトリ ス—塩酸華衝液 (PH8.8) 2.5mls 10 SDS 0.1ml、 TEMED lOuU 及び 10%APS 50 Λέ ΐから調製した 5質量%ポリアクリルアミドチューブゲルを用いて、 実施例と 同様にヒト血清アルブミンを電気泳動し、 蛋白質の回収率を測定した。 結果を表 8に示した。 実施例の回収率は、 比較例に比べて非常に高い回収率であった。
表 8 凍結融解法による蛋白質の回収率
蛋白質回収率
実施例 85%
比較例 19%
実施例 1 2
1本鎖シゾフィランと中性多糖の混合ゲルを用いた蛋白質の変性系ディスク電気 泳動 .
実施例 1で調製した分子量約 15万の 1本鎖シゾフィラン 0.9gと、デキストラ ン (SIGMA-ALDRICH,平均分子量 11,000) 0.075g, デンプン(和光純薬工業(株)) 0.075g、 又は口一カストビ一ンガム (台糖(株)) 0.075gを、脱イオン水 ll. lml、 1.5Mトリス—塩酸緩衝液 (pH8.8) 3.75mlとともにホモジナイズ処理して、 減圧 下で脱気した後、 10%SDS水溶液 0.15mlを加えて攪拌し、 1本鎖シゾフィランと 中性多糖の混合懸濁液を得た。 以下、 実施例 2のト2と同様に、 これら混合液か ら変性系電気泳動用チューブゲル (直径 X長さ =5醒 X 85腦) を作製し、 実施例 5と同様に蛋白質分子量マーカ一を電気泳動した。何れの中性多糖を用いたゲル についても、 実施例 5に示したシゾフィラン単独ゲルに比較して、 蛋白質の移動 度は異なるが、 蛋白質の分離能は同等であることが確認できた。 デンプンを用い たゲルでの泳動パターンを図 6に示す。 実施例 1 3
低純度ァガ口一スの分解能の改善
l xTAE泳動バヅファ一に、分子量約 15万の 1本鎖シゾフイラン 0.6質量%と、 低純度ァガロース (台糖(株)) 1質量%を入れて加熱溶解した後、 この溶解液を サブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレイ (70腿 X 85腿) に移し、 冷却して、 ゲルを調製した。該ゲルを用いて、 DNA分子量マーカ一((株)二ツボンジーン、 Smart Ladder) を、 マーカ一色素の BPBがゲル長の約 2/3移動するまで、 50V定 電圧で泳動させた。
比較例として、 1質量%の低純度ァガロースゲルについても、 同様の電気泳動 を行った。 実施例及び比較例の電気泳動後のゲルをェチジゥムブ口マイドで染色
し、 トランスイルミネー夕一で DMの泳動パ夕一ンを観察した。 図 7に実施例と 比較例の泳動ノ 夕一ンを示す。 実施例のゲルの方が日月らかに分離能が優れてレヽる ことが確認できた。 実施例 1 4
中和ゲルを支持体とする蛋白質の平板ゲル電気泳動
3本鎖としての分子量が約 4 5万のシゾフィランから、 実施例 2の 4と同様 にして、 グルカン濃度 6質量%の平板ゲル (70腿 X 85mm x 3腿) を作製した。 こ のゲルを、 脱イオン水に対して 2日間透析した後、 ゲルバッファー (イオン交換 水一 1.5Mトリス塩酸緩衝液 P H8.8— 10% S D S 111: 37.5: 1.5v/v) と平衡ィ匕 するため、 該ゲルバッファ一に 2日間浸漬した。 次に、 この平衡化したゲルを泳 動バッファー(25 トリス、 19MIグリシン、 0.1%SDS、 pH8.3) を入れたサブマ リン型小型電気泳動装置のゲルトレイに移し、蛋白質分子量マーカ一(BI0 RAD、 プレシジョンスタンダード、 分子量範囲: 10- 250kDa) を、 マ一力一色素の BPB がゲルの端から約 5腿の位置に移動するまで定電流 40mAで電気泳動した。
蛋白質の検出は、 クマシ一ブリリアントプル一 R250染色法により行った。中和 ゲル化法のゲルを支持体とした電気泳動によって、 250〜37kDaの蛋白質が分離で きた。 実施例 1 5
ホルムアミドを用いた平板ゲルの調製
ヘリックス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン 0.8g ( 3本鎖としての分子量約 45 万) を 0.5N - NaOH 10mlに室温で攪拌しながら溶解した。 この溶液を、 減圧下で 脱気した後、 ホルムアミド 0.182mlを加えてよく攪拌した。続いて、 ゲル形成器 に注入し、 ニ晚放置してゲル化させ、 電気泳動用平板ゲル (60画 X 52薩 X 4雇)
2163 を作製した。 実施例 1 6
蛋白質の平板ゲル電気泳動
実施例 1 5と同様にして、グルカン濃度 8質量%の平板ゲル(60顧 X 52顧 x4i腿) を作製した。このゲルを、ゲル容量に対して 40倍量のイオン交換水に浸漬 ( 1時 間 X 2回) した後、 10倍量のゲルバッファ一 (イオン交換水— 1.5Mトリス塩酸 緩衝液 PH8.8— 10%SDS 111: 37.5: 1.5 v/v) に一晚浸漬して該ゲルバッファ一 と平衡化した。次に、 この平衡化したゲルを泳動バッファ一(25ιηΜトリス、 192mM グリシン、 0.1%SDS、 pH8.3)を入れたサブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレ ィに移し、 蛋白質分子量マーカ一(BI0 RAD、 プレシジョンプラススタンダード、 分子量範囲: 10〜250kDa) を該ゲルの試料溝に載せ、 マーカー色素の BPBがゲル の先端から約 5蘭の位置に移動するまで、 定電圧 100Vで電気泳動を行った。 比較例として、 12%ポリアクリルアミドゲルを用いて、同様の電気泳動を行った。 泳動後の蛋白質の検出は、 クマシ一ブリリアントブルー R250染色法によった。図 8に実施例 1 6とその比較例の泳動パターンを示す。 実施例 1 6のゲルは、 比較 例の 1¾ポリアクリルアミドゲルとほとんど同程度の分離能を示した。 実施例 1 7
酵素法による蛋白質の回収 1
ビォチン標識/? -1 , 3-グルカナ一ゼの調製
Zymolyase (生化学工業(株)) 50mgをゲル濾過クロマトグラフィー(Sepliadex G100, 250 x400) に付し、 精製/? -1,3-グルカナーゼを約 lOiiig得た。 この精製 ^- 1,3-グルカナーゼをビォチンラペル化キット (同仁化学 (株)) により、 ピオ チン標識した。
蛋白質の回収
実施例 1で調製した分子量約 1 5万の 1本鎖シゾフィランから実施例 2の 1-2 と同様にしてグルカン濃度 6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを作成した。 次に、 このチューブゲルを用いて実施例 5と同様に、 ヒト血清アルブミン (和光 純薬工業 (株)) を電気泳動した。 電気泳動後のゲルを 10ml容量のねじ口瓶に入 れてスパーテルで破碎した。破砕したゲルを上記ビォチン標識/? - 1, 3-グルカナー ゼの 1%水溶液 lffllに加え、約 37°Cで一夜放置した。その酵素反応溶液を分子量 1 万カツト透析膜を用いてリン酸緩衝溶液中で透析した後、 その内液を固定化アビ ジンカラム (PIERCE) に付し、 I腿 unoPure (登録商標)溶出緩衝液で溶出した。 そ の溶出液を蛋白質回収液とした。 以下、 実施例 9と同様に蛋白質回収溶液中の蛋 白質を測定し、 蛋白質の回収率を求めたところ、 回収率は 90%であった。 実施例 1 8
酵素法による蛋白質の回収 2
固定化酵素の調製
アミノセノレロフアイン(生化学工業(株))約 5mlを純水で洗浄後、 2.5%グノレ夕 ルアルデヒド溶液 5mlに懸濁し、減圧下約 1時間撹拌した。 これを純水及び 50mM リン酸緩衝液(PH7.4)で洗浄後、上記精製 - 1,3-グルカナ一ゼ溶液(0.1mg/ml) 5mlを加え、 室温、 一昼夜放置した。 これを 50mMリン酸緩衝液でよく洗浄して固 定化酵素とした。
蛋白質の回収
実施例 1で調製した分子量約 1 5万の 1本鎖シゾフィランから実施例 2の 2 と同様にしてグルカン濃度 6質量%の変性系電気泳動用チューブゲルを作成した。 次に、 このチューブゲルを用いて実施例 5と同様に、 ヒト血清アルブミン (和光 純薬工業 (株)) を電気泳動した。 電気泳動後のゲルを 10ml容量のねじ口瓶に入
れてスパーテルで破碎した。破砕したゲルに水 lmlを加え、 さらに上記固定化酵 素 20mgを加えて約 37°Cで一夜放置した。 その酵素反応溶液をろ過し、 分子量 1 万力ヅト透析膜を用いてリン酸緩衝溶液中で透析してその内液を蛋白質回収液と した。 以下、 実施例 9と同様に蛋白質回収溶液中の蛋白質を測定し、 蛋白質の回 収率を求めたところ、 回収率は 87であった。 実施例 1 9
高濃度グルカンゲルの調製
ヘリヅクス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン ( 3本鎖としての分子量約 45万) 3.5gに対して 0.5M NaOHを加えて 25gにした (14質量%)。 気泡が無くなるまで よく攪拌したのち、 ホルムアミド 0.455ml (NaOHに対して 1当量) を加えて均一 になるまで攪拌してからゲル形成器に流し込んだ。 室温でニ晚放置してゲル化さ せた後、 イオン交換水, ゲルバッファー(イオン交換水一1.5Mトリス塩酸緩衝液 pH8.8-10%SDS 111: 37.5: 1.5 v/v) に浸漬して置換させて電気泳動用支持体と した。 - 実施例 2 0
低分子ポリぺプチドの電気泳動
実施例 1 9と同様にして、グルカン濃度 14質量 %の平板ゲル (70讓 X 85讓 X 3應) を作製した。このゲルを、ゲル容量に対して 40倍量のイオン交換水に漫漬(1時 間 X 2回) した後、 10倍量のゲルバッファー (イオン交換水— 1.5Mトリス塩酸 緩衝液 PH8.8— 10%SDS 111: 37.5: 1.5 v/v) に一晚浸漬して該ゲルバッファ一 と平衡化した。次に、この平衡化したゲルを、泳動バヅファー (25ιιιΜトリス、 1麵 トリシン、 0.1%SDS、 pH8.3) を入れたサブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレ ィに移し、 カレイドスコープポリペプチドスタンダード (BI0 RAD、 分子量範囲:
4-34.5kDa) を該ゲルの試料溝に載せ、 マ一カー色素の BPBがゲルの先端から約 5mmの位置に移動するまで、 定電圧 100Vで電気泳動を行った。
比較例として、 17%ポリアクリルアミドゲルを用いて、同様の電気泳動を行った。 図 9に実施例 2 0とその比較例の泳動パターンを示す。 実施例 2 0のゲルは、 比較例の 17%ポリアクリルアミドゲルとほとんど同程度の分離能を示した。 実施例 2 1
濃度勾配ゲルによる泳動
実施例 1 5と同様にしてグルカン濃度 6%, 14%のアルカリ溶液を調製し、 それ それにホルムアミドを水酸化ナトリウムに対して当量を加えてよく攪拌した。 各 濃度のグルカン溶液を勾配ゲル作成器 (図 1 0 ) に充填した。 グルカン濃度が高 い方を図 1 0の A層に入れ、 低い方を B層に入れた。 A層の上部をストッパーで 止めた後、 A層を攪拌しながらぺリス夕ポンプでグルカン溶液をゲル形成器に静 かに流し入れ、 6— 14%濃度勾配平板ゲルを作成した。 実施例 2 2
蛋白質の濃度勾配平板ゲル電気泳動
実施例 2 1と同様にして、 グルカン濃度 6〜; 14%の平板ゲル(70腿 X 85mm x 3顧) を作製した。 実施例 1 5と同様にこのゲルを用いて蛋白質分子量マ一力一 (BI0 RAD、 プレシジョンプラスプロテインスタンダード、分子量範囲: 10 - 250kDa)を 泳動した。
泳動後の蛋白質の検出は、 クマシ一プリリアントブル一 R250染色法によった。 比較例として、 4〜20%ボリァクリルアミドゲルによる泳動パターン (BIO RAD 社 プレシジョンプラスプロティンスタンダード添付のマニュアルより抜粋)を記 載した。
図 1 1に実施例 2 2とその比較例の泳動パターンを示す。 実施例 2 2のグルカ ン濃度 6~14%のゲルは、比較例の 4〜20%ポリアクリルアミドゲルとほとんど同程 度の分離能を示した。 実施例 2 3
分子量勾配グルカンゲルの作製
3本鎖としての分子量が 45万のシゾフィラン 2.1gに対して 0.5M NaOHを加え て 15gにしたもの (14% w/w) と、 3本鎖としての分子量が 200万のシゾフィラン 1.2gに対して 0.5M NaOHを加えて 20gにしたもの (6% w/ ) を、 気泡が無くなる までよく攪拌したのち、 それぞれにホルムアミド 0.273mlと 0.364ml (NaOHに対 して当量) を加えて均一になるまで攪拌した。
14%グルカン(45万シゾフィラン)溶液を図 1 0に示す勾配ゲル形成器の A層に 入れ、 6%グルカン (200万シゾフィラン)溶液を B層に入れた。 A層の上部をスト ヅパ一で止めた後、 A層を攪拌しながらペリス夕ボンプでグルカン溶液をゲル形 成器に静かに流し入れた。 室温でニ晚放置してゲル化させた後、 イオン交換水, ゲルバッファ一 (イオン交換水 lllml、 1.5Mトリス塩酸緩衝液 pH8. 8 37.5ml、 10% SDS 1.5ml) に浸潰して置換させて電気泳動用支持体とした。
電気泳動は Lae顧 li法 (U.K.Lae腿 li, Nature, 227, 680 ( 1970)) に基づいて、 サンプルを 10〃1アプライしたのち 100V定電圧で行った。
図 1 2に 45 - 200万分子量勾配グルカンゲルの泳動パ夕一ンを示した。 PA (ポ リアクリルァミド)勾配ゲルと比べると、 75一 250kDaの分離は悪いが 15一 250kDa の蛋白質が分離できた。 実施例 2 4
ホルムアミドー加熱ゲル化法を用いた平板ゲルの調製
へリックス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン l. Og ( 3本鎖としての分子量約 45 万) を 0.5N— NaOH 10mlに室温で攪拌しながら溶解した。 この溶液を、 減圧下で 脱気した後、 ホルムアミド 0.182mlを加えてよく攪袢した。 続いて、 ゲル作製器 に注入し、ニ晚放置してゲル化させた。その後、 ゲル作製器のまま 80で、 30分間 加熱処理を行い、 電気泳動用平板ゲル (60雇〉〈52腿 X 4腿) を作製した。 次にこ のゲルを用いて実施例 1 6と同様に、 蛋白質分子量マ一力一 (BI0 RAD、 プレシジ ョンスタンダ一ド、分子量範囲: 10― 250kD)を電気泳動した。結果を図 1 3に示 す。 実施例 2 5
シゾフィラン Zポリァクリルァミ ド (PA) 混合ゲルの調製
1.5Mトリス一塩酸緩衝液(pH8.8)、 脱イオン水、 1本鎖シゾフィラン (3本鎖 としての分子量約 600万) (実施例 1) を表 9の通りに混ぜて、 ス夕一ラーで一晩 攪拌してシゾフィランを溶解させた。 30%ァクリルアミ ド溶液(ァクリルアミ ド Z Ν,Ν'-メチレンビスアクリルアミ ド = 37.5/1)、 10%過硫酸アンモニゥム 50 / 1、 TEMED (Ν,Ν,Ν,,Ν,-テトラメチルエチレンジァミン) 10 1を加えて攪拌した。 10 分間脱気した後、この溶液をガラス管(直径 X長さ =5腿 Χ 100顧)に注入し、 120°C 20分間加熱してゲル化させ、 シゾフィラン/ポリアクリルアミド (PA) 混合の非 変性系電気泳動用チューブゲル (直径 X長さ =5薩 X 85腿) を作製した。 表 9
作製 1 混合非変性系電気泳動用チューブゲルを用いて、 実
施例 6と同様にして分子量マーカ一 (アマシャムフアルマシアバイオテク、 画 マーカ一キヅト (Native-PAGE用)) を電気泳動した。 その結果得られた泳動パ夕 —ンを、 実施例 6の泳動パターンとともに図 1 4に示す。 分子量 669kDa及び 4401-Jkは、実施例 6ではバンドがテ一リングしているのに対して、実施例 2 5の 混合ゲルでは分離能が改善されていることがわかる。 実施例 2 6
等電点電気泳動用乾燥シゾフィランゲルの調製
ヘリックス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン 1.6g ( 3本鎖としての分子量約 600 万) を 0.5N- NaOH 40mlに室温で攪拌しながら溶解した。 この溶液にホルムアミド 0.96mlを加えてよく攪拌した後、減圧下で脱気した。続いてこの溶液を、 ガラス プレート (プレーン) とガラスプレート (ノッチ、 厚さ 1誦のスぺ一サ一付き) のプレーン側に、 親水性フィルム (FMC BioProducts、 Gel Bond Film) を貼り付 けたゲル形成器 (200顧 X 200腿 X I腿) に注入してニ晚ゲル化させた。 80°Cで 15 分間加熱した後、 ゲル作成器からフィルムに接着した平板ゲルを取り出した。 こ のゲルを、フィルム上で一昼夜室温乾燥、脱イオン水で膨潤する操作を 3回行い、 ゲル中の中和不純物を除いた後、 膨潤状態で 120°C、 15分間オートクレープ処理 をした。 最後に 10%グリセリン水溶液中に 1時間浸漬してから、 一晩乾燥させた ゲルに疎水性フィルム (MC BioProductSs Gel Bond Film) をゲルに接着して、 親水性フィルム、 シゾフィランゲル、 疎水性フィルムの三層構造である等電点電 気泳動用乾燥シゾフィランゲルを作製した。 実施例 2 7
'ゾフィランゲルを用いた等電点電気泳動
実施例 2 6と同様にして、グルカン濃度 4質量 %の等電点電気泳動用乾燥シゾフ
イランゲル (70x50x1蘭) を作製した。 このゲルを 5ml の膨潤液 (バイオライ ト 3/10 (BI0RAD) 250 1、 バイオライト 5/7 (BI0RAD) 62.5 /1、 0.1% (w/v) オレンジ G (和光純薬工業 (株)) 125 lをイオン交換水で 5mlにメスアップし たもの) でー晚膨潤させた。 膨潤終了後、 等電点電気泳動にはクールホレス夕一 IPG-IEF Type-P (アナテック(株))を用いた。サンプル(BI0RAD、 IEF Standards) 5,"1 を試料用ろ紙にしみ込ませて平板ゲル上の陽極側にアプライした。 電極用 ろ紙を蒸留水に浸し、 ゲルの両端に置いて密着させ、 電極ろ紙に電極をのせて 200V- 20分、 500V-30分、 800V-10分の 3電圧プログラムで泳動を行った。結果を、 比較例(ポリァクリルアミドゲルによる泳動パターン(BI0BAD、 IEF Standards添 付マニュアルより抜粋)) とともに図 15に示す。 実施例 28
乾燥シゾフィランゲルを用いた 2次元電気泳動
実施例 26と同様にして、グルカン濃度 4質量 %の等電点電気泳動用乾燥シゾフ イランゲルを作製し、 ゲルの幅を 3顏にカヅト (70X3 XI纖) した。実施例 27 と同様にして 1次元目として等電点電気泳動を行い、 泳動終了後、 ゲルを表 10 に示す平衡化緩衝液または SDS処理液に 20分間浸漬して平衡化または SDS処理し た。 次にこのゲルを非変性系電気泳動または変性系電気泳動に供した。 2次元目 の変性系電気泳動は実施例 16と同様にして、非変性系電気泳動は実施例 16から 変性剤を除いて行った。 非変性系電気泳動の分離パターンを図 16に、 変性系電 気泳動の分離パターンを図 17に示す。
表 1 0
シゾフィランゲルからの蛋白質の回収
分子量約 200万の 3本鎖シゾフィランから実施例 1 5と同様に、 グルカン濃度 として 5質量%の平板ゲル (60腿 X 52蘭 X4麵) を作製した。 このゲルを、 ゲル容 量にして 40倍量のイオン交換水に浸漬 (1時間 X 2回) した後、 10倍量のゲル バッファー (イオン交換水— 1.5Mトリス塩酸緩衝液 PH8.8 112.5: 37.5 v/v) に 一晚浸漬して該ゲルバヅファーと平衡化した。
次に、 この平衡ィ匕したゲルを泳動バッファ一 (25mMトリス、 192mMグリシン、 PH8.3)を入れたサブマリン型小型電気泳動装置のゲルトレイに移し、サンプルバ ヅファー(精製水一0.5Mトリス塩酸緩衝液 pH6.8—グリセ口一ルー 0.5% (w/v)ブ ロモフエノールブルー)で 3倍に希釈したペルォキシダ一ゼ (和光純薬工業 (株)、 西洋わさび由来) をマーカ一色素の BPBがゲルの下端から約
删の位置に移動するまで、 200Vの定電圧で電気泳動した。続いて、あらかじめ同 条件で泳動して確認しておいたペルォキシダーゼのバンド位置を切り出してェヅ ペンドルフチューブに入れ、 ^— 1, 3—グルカナ一ゼ溶液 ( ?— 133—ダルカナ一 ゼ 10mg、 0.05Mトリス塩酸緩衝液 pH6.8 0. 99ml、 プロテア一ゼインヒビ夕一カク テル (SIGMA) IQju l ) 1mlを加えてゲルをスパーテルでよく破砕した。 37で、 2.5
時間インキュベーションしてゲルを溶解させて、 ろ過(フィルタ一孔径 0.80 m) して得られた溶液をペルォキシダ一ゼ回収溶液とした。 ペルォキシダーゼの回収 率は約 50%であった。
ペルォキシダ一ゼの回収率はペルォキシダーゼ活性の測定値から以下の式によ り求めた。
ペルォキシダーゼ回収率 ( ) = (ペルォキシダーゼ回収溶液の活性) Z電気泳 動に供したペルォキシダ一ゼ溶液の活性) 100 実施例 3 0
垂直型電気泳動装置用平板ゲル電気泳動 '
実施例 1の Bで調製した分子量 200万の 1本鎖シゾフイラン 0.25gに、 1.5Mト リス塩酸緩衝液 PH8.8を 2.5ml、脱ィオン水を 7.25ml加えてホモジナイズ処理し、 1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。 これを減圧下で脱気した後、 垂直型電気泳動 装置用加熱ゲル形成器に注入し、 120°Cで 15分加熱してゲル化させ、 垂直型電気 泳動用のグルカン濃度 2.5%の平板ゲル (85mmx 75腿 X I腿) を作製した。 このゲ ルを垂直型電気泳動装置にセヅ卜して、 泳動バヅファー (25mMトリス、 192mMグ リシン、 0.1%SDS、 pH8.3) を加えて、 蛋白質マーカ一 (アマシャムフアルマシア バイオテク、 HMWマ一力一キット (Native— PAGE用)) を、 BPBがゲルの端から約 5麗の位置に移動するまで定電流 20mAで電気泳動した。泳動ノ 夕一ンを図 1 8に 示す。 実施例 3 1
加熱ゲル化法によるポリアクリルアミドゲルとシゾフィランゲルの二層ゲル作製 方法
脱イオン水 5.8ml、 30%アクリルアミド溶液 1.7ml、 1.5M トリス塩酸緩衝液
3
(pH8.8) 2.5ml, TE ED10 z l , 及び 10%APS 50 z 1を混合し、 加熱ゲル作製器の 中央まで注入し、ゲル化させて 5質量 %ポリアクリルアミドゲルを作製した。次に、 実施例 1の Bで調製した分子量約 200万の 1本鎖シゾフイラン 0.25gに、 1.5Mト リス塩酸緩衝液 pH8.8を 2.5ml、脱ィォン水を 7.25ml加えてホモジナイズ処理し、 1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。 これを減圧下で脱気した後、 加熱ゲル形成器 のポリァクリルァミドゲル上部に注入し、 120°Cで 15分加熱してゲル化させた。 このようにして、 ポリアクリルアミドゲルとシゾフィランゲルからなる二層の電 気泳動用平板ゲル (85腿 X 75画 X 1mm) を作製した。 実施例 3 2
加熱ゲル化法によるシゾフィランゲルとァガロースゲルの二層ゲル作製方法 実施例 1の Bで調製した分子量約 200万の 1本鎖シゾフィラン 0.25gに、 1.5M トリス塩酸緩衝液 PH8.8を 2.5ml、脱イオン水を 7.25ml加えてホモジナイズ処理 し、 1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。 これを減圧下で脱気した後、 加熱ゲル形 成器の中央まで注入し、 120°Cで 15分加熱してゲル化させた。次にァガロース(和 光純薬工業(株)、 Agarose LE) 0.1g、 脱イオン水 7.5ml、 1.5Mトリス塩酸緩衝液 (pH8.8) 2.5mlの懸濁液を加熱してァガロースを溶解させ、 加熱ゲル作製器のシ ゾフィランゲル上部に注入し、 冷却してゲル化させた。 このようにして、 シゾフ イランゲルとァガロースゲルからなる二層の電気泳動用平板ゲル (85藤 X 75醒 X lmm) を作製した。 実施例 3 3
加熱ゲル化法によるポリアクリルアミドゲル、 シゾフィランゲル、 及びァガ口一 スゲルの三層ゲル作製方法 —
脱イオン水 5.8ml、 30%アクリルアミド溶液 1.7ml、 1.5M トリス塩酸緩衝液
(pH8.8) 2.5mk TEMEDlO^ l , 及び 10%APS 50〃 1を混合し、 加熱ゲル作製器の 1X3まで注入し、 ゲル化させて 5質量 %ポリアクリルアミドゲルを作製した。 次 に、実施例 1の Bで調製した分子量約 00万の 1本鎖シゾフィラン 0.25 に、 1.5M 卜リス塩酸緩衝液 PH8.8を 2,5ml、脱イオン水を 7.25ml加えてホモジナイズ処理 し、 1本鎖シゾフィラン懸濁液を得た。 これを減圧下で脱気した後、 加熱ゲル形 成器のポリアクリルァミドゲル上部に 2/3となるように注入し、 120°Cで 15分力口 熱してゲル化させた。最後に、ァガロース (和光純薬工業 (株)、 Agarose LE) O. lgヽ 脱イオン水 7.5ml、 1.5M トリス塩酸緩衝液 (pH8.8) 2.5mlの懸濁液を加熱してァ ガロ一スを溶解させ、 加熱ゲル作製器のシゾフイランゲル上部に注入し、 冷却し てゲル化させた。このようにして、ポリアクリルアミドゲル、 シゾフィランゲル、 及びァガロースゲルからなる三層の電気泳動用平板ゲル (85画 X 75腿 x l腿) を 作製した。 実施例 3 4
中和ゲル化法によるポリアクリルアミドゲルとシゾフィランゲルの二層ゲル作製 方法
脱イオン水 8.3ml、 30%ァクリルアミド溶液 1.7ml、 TEMEDlO/z 1、及び 10 APS 50 / 1を混合し、ゲル作製器の中央まで注入し、ゲル化させて 5質量 %ポリアクリル アミドゲルを作製した。 次に、 ヘリックス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン (3本 鎖としての分子量約 45万) l.Ogを 0.5N NaOH 10mlに室温で攪拌しながら溶解し た。 この溶液を、 減圧下で脱気した後、 ホルムアミド 0.182mlを加えてよく攪拌 した。 続いて、 ゲル作製器のポリアクリルアミドゲル上部に注入し、 ニ晚放置し てゲル化させた。 このようにして、 ポリアクリルアミドゲルとシゾフィランゲル からなる二層の電気泳動用平板ゲル (75顧 X 85腿 X 2腿) を作製した。
実施例 3 5
中和ゲル化法によるシゾフィランゲルとァガロースゲルの二層ゲル作製方法 へリヅクス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン( 3本鎖としての分子量約 45万) 1. Og を 0.5N NaOH 10mlに室温で攪拌しながら溶解した。 この溶液を、 減圧下で脱気し た後、 ホルムアミ ド 0.182mlを加えてよく攪拌した。 続いて、 ゲル作製器の中央 まで注入し、 二晚放置してゲル化させた。次に、 ァガロース (和光純薬工業(株)、 Agarose LE) O. lg,脱イオン水 10mlの懸濁液を加熱してァガ口一スを溶解させ、 加熱ゲル作製器のシゾフィランゲル上部に注入し、 冷却してゲル化させた。 この ようにしてシゾフィランゲルとァガロースゲルからなる二層の電気泳動用平板ゲ ル (75画 85醒 2腿) を作製した。 実施例 3 6
中和ゲル化法によるポリアクリルアミ ドゲル、 シゾフィランゲル、 及びァガ口一 スゲルの三層ゲル作製方法
脱ィオン水 8.3ml、 30%ァクリルアミ ド溶液 1.7ml、 TEMED10〃 1、及び 10%APS 50 1を混合し、 ゲル作製器の 1 3まで注入し、 ゲル化させて 5質量%ポリアクリ ルアミ ドゲルを作製した。 次に、 へリックス構造を持つ 3本鎖シゾフィラン ( 3 本鎖としての分子量約 45万) l.Ogを 0.5N NaOH 10mlに室温で攪拌しながら溶解 した。 この溶液を、 減圧下で脱気した後、 ホルムアミ ド 0.182mlを加えてよく攪 拌した。続いて、ゲル作製器のポリアクリルアミ ドゲル上部に 2/3となるように 注入し、 ニ晚放置してゲル化させた。最後に、 ァガロース (和光純薬工業 (株)、 Agarose LE) O. lg,脱イオン水 10mlの懸濁液を加熱してァガロースを溶解させ、 ゲル作製器のシゾフィランゲル上部に注入し、 冷却してゲル化させた。 このよう にしてポリアクリルアミ ドゲル、 シゾフィランゲル、 及びァガロースゲルからな
る三層の電気泳動用平板ゲル (75画 X 85讓 X 2蘭) を作製した。 産業上の利用可能性
本発明の新規な電気 ¾c動用ゲルは、 従来のァガロースゲルやポリァクリルァミ ドゲルなどの電気泳動用ゲルではできなかった、 より広範囲の分子量の核酸又は 蛋白質の分離分析、 及び高い回収率が求められる分離精製に利用可能であり、 生 化学、 医学の分野において重要な分離分析法であるゲル電気泳動法を改善するも のである。
本発明によれば、 所望のゲル強度及び孔径に調節した電気泳動用ゲルを容易に 製造することができる。 また本発明のゲルを使用すると、 核酸、 蛋白質の分離、 精製、 回収を効率良く行うことができる。