JP2011033546A - 等電点電気泳動方法及び粗雑物除去の判定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】:検体を含むゲル1本につき100V〜600Vの範囲内の値の定電圧の印加による定電圧工程を行い、泳動30分間あたりの電流変化幅が5μAの範囲内となった後に前記定電圧から電圧を上昇させる電圧上昇工程を始めることを特徴とする等電点電気泳動方法。
【選択図】図1
Description
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、検体を含むゲル1本につき100V〜600Vの範囲内の値の定電圧の印加による定電圧工程を行い、泳動30分間あたりの電流変化幅が5μAの範囲内となった後に前記定電圧から電圧を上昇させる電圧上昇工程を始める、等電点電気泳動方法である。
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に記載の等電点電気泳動方法において、電圧上昇工程の最終電圧が3000V〜6000Vの範囲内である、等電点電気泳動方法である。
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に記載の等電点電気泳動方法において、電極とゲルの間に水で湿らせた通電性の保水材を挟む、等電点電気泳動方法である。
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る等電点電気泳動方法が、2次元電気泳動における1次元目の電気泳動として行うものである、等電点電気泳動方法である。
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、検体を含むゲル1本につき100V〜600Vの範囲内の値の定電圧による定電圧工程を行い、泳動30分間あたりの電流変化幅が5μAの範囲内となった時点で検体中の粗雑物が除去されたと判定する、粗雑物除去の判定方法である。
第1発明によって、検体中の粗雑物を効率的に除去する等電点電気泳動方法が提供される。
第2発明の特徴は、最終電圧を3000V〜6000Vの範囲内という高い電圧にすることである。等電点電気泳動においては、電圧(V)と当該電圧を加えた時間(hr)の積であるVhrを指標として用いることができる。最終電圧を3000V〜6000Vという高い値に設定することで、より短い泳動時間で高いVhr値を得ることができる。よって、等電点電気泳動の高スループットを実現できる。
等電点電気泳動においては、等電点電気泳動用ゲルに電極が接触する。特に、第2発明においては最終電圧が3000V〜6000Vの範囲内という高い値になっているため熱が発生し易い。よって、電極付近のゲル中の水の蒸発によりゲルが乾かないようにする工夫が必要とされる。電極とゲルの間に水で湿らせたろ紙等の保水材を挟むことで、等電点電気泳動における電極付近のゲルの乾燥を抑制することができる。また、保水材に粗雑物が効率的に吸収され、粗雑物の除去も良好となると考えられる。
第1発明〜第3発明のいずれかに係る等電点電気泳動方法を2次元電気泳動における1次元目の電気泳動として行うことにより、第1発明〜第3発明の効果を確保した2次元電気泳動を行うことができる。
第5発明により、単位時間あたりの電流変化幅を判定基準として、検体中の粗雑物が有効に除去された時点を過不足なく決定できる。第1発明に関して前記したように、定電圧工程においては、検体に残存した粗雑物がゲルから除かれるまでの間に、高い電流量が測定される段階、電流量が低下していく段階(ある程度の粗雑物が電極へ移動し終わった段階)、安定した電流量が測定される段階(粗雑物が除去された段階)のように変化していくと考えられる。即ち、定電圧工程の開始後は電流量に起伏が見られても、泳動を続けていくと電流量は安定するので、単位時間あたりの電流変化幅により電流の安定を判定し、もって粗雑物の除去を判定できる。この内の「安定した電流量」の具体的な判定基準として、ゲル1本につき泳動30分間あたりの電流変化幅が5μAの範囲内であれば、電流量の変化が小さいので電流量は安定しているといえる。ゆえに、粗雑物が除去できたと判定することができる。
本発明における「単位時間あたりの電流変化幅」について図3を用いて説明する。図3における縦軸は電流(μA)であり、横軸は定電圧での等電点電気泳動の泳動時間(分)である。単位時間をx分間として、任意に定めたn分からm分までのx分間の電流を測定していき、当該x分間の電流の変化幅(縦軸方向の変化幅)が、5μAの範囲内、より好ましくは3μAの範囲内であれば、等電点電気泳動を開始してm分間を経過した時点において電流は安定したと判定でき、粗雑物の除去ができたと判定できる。
本発明において用いられる等電点電気泳動用ゲルは、単独に等電点電気泳動を行うためのゲルであっても良いし、2次元電気泳動における1次元目の等電点電気泳動に用いるゲルであっても良い。
等電点電気泳動は、検体中の蛋白質等の分離対象物質が有する等電点を利用して分離を行う。正に荷電した分離対象物質は陰極側に移動し、他方、負に荷電した分離対象物質は陽極側に移動する。そして、等電点(pI)と等しいpHのゲルの位置で分離対象物質の正味の電荷がゼロとなり、泳動を止める。よって泳動開始後は荷電状態の化合物が移動するので、電流が流れることとなる。
上記等電点電気泳動方法は、2次元電気泳動における1次元目の電気泳動として行うこともできる。この場合、2次元目の電気泳動は、必ずしも限定されないが、SDS−PAGEであることが好ましい。2次元電気泳動を行う場合、等電点電気泳動に続いて、好ましくはSDS−PAGEが行われるので、以下、2次元目のSDS−PAGEについて説明する。
SDS−PAGEは、検体に界面活性剤であるSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を加え、検体に含まれる蛋白質の高次構造を解くと共に、蛋白質のアミノ酸残基の荷電もSDSによって相対的に減少させたもとで、分子篩い効果を利用して電気泳動を行うものである。よって、1次元目電気泳動を完了したゲルは予めSDS平衡化処理等を施されることが好ましい。
1次元目電気泳動用ゲルのゲル長が短く設定されている場合には、2次元目として行うSDS−PAGEでは、その電気泳動用ゲルにおける泳動方向基端部のゲル濃度が3〜6%程度の低濃度であることが好ましい。ゲル濃度とは、直接的には当該ゲルの重合反応時のモノマー濃度を意味するが、重合反応時のモノマー濃度が高い程ゲルの網目構造は密になるので、実質的にはゲルの網目構造の密度を意味する。
等電点電気泳動に適用される検体は特に限定されないが、動物、植物、微生物由来の抽出物や、化学、生化学的に合成された化合物、蛋白質、核酸等を含む種々の検体が適用できる。検体が生物細胞、特に動物細胞、とりわけヒト細胞の抽出物であることが好ましい。
(蛋白質の抽出)
ヒトケラチノサイトからなる再構成3次元培養皮膚(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製の商品名LabCyte EPI-MODEL 12)の培養物1枚(約1cm2)を、蛋白質抽出液であるmammalian cell lysis kit;MCL1(SIGMA−ALDRICH社製)500μlに浸漬し、4℃で2時間、voltexを使用して振とう破砕した。この振とう破砕の後、蛋白質抽出液を回収した。上記のmammalian cell lysis kit;MCL1の組成は下記の通りである。
50mM Tris−HCl pH7.5
1mM EDTA
250mM NaCl
0.1%(w/v) SDS
0.5%(w/v) Deoxycholic acid sodium salt
1%(v/v) Igepal CA-630(SIGMA−ALDRICH社製の界面活性剤(Octylphenoxy)polyethoxyethanol)
適量のProtease Inhibitor
その後、2D-CleanUPキット〔GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社(以下、GE社と省略する)製〕を使用して2回の沈殿操作を行った。第1回目の沈殿操作は、回収した上記蛋白質抽出液にTCAを加えて沈殿を行い、当該操作で生じた沈殿(TCA沈殿)を回収した。第2回目の沈殿操作は、回収した前記TCA沈殿にアセトンを加えて沈殿を行い、当該操作で得られた沈殿(検体)を回収した。回収した当該検体は全量500μgであった。
得られた検体の一部30μgを1次元目等電点電気泳動用ゲルの膨潤用緩衝液であるDeStreak Rehydration Solution(GE社製)130μlに溶解し、1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨潤用検体溶液)とした。DeStreak Rehydration Solutionの組成は以下の通りである。
7M Thiourea
2M Urea
4%(w/v) CHAPS:
3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonate
0.5%(v/v) IPGbuffer;GE社製
適量のDeStreakReagent;GE社製
適量のBPB(ブロモフェノールブルー)
(1次元目等電点電気泳動用ゲルの調製)
前記したIPG法により、本実施例で用いる1次元目の等電点電気泳動用ゲル(ポリアクリルアミドゲル)を調製した。このゲルは長さが7cmで径が0.3cmの棒状ゲルであり、T=4%、C=3%であって、pHの範囲を3〜10に設定した。
上記の1次元目等電点電気泳動用ゲルを前記した1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨潤用検体溶液)130μlに浸漬した後、シリコンオイルを流し込み、シリコンオイルがゲルを覆った状態で、一晩、室温にて検体溶液をゲルに浸透させた。その後、当該シリコンオイルは廃棄した。
本実施例においては、電気泳動機器としてGE社製のIPGphorとCup Loading Manifold Light Kitを使用した。本電気泳動機器は、電圧及び電流測定機能を備えるものであり、等電点電気泳動における電圧及び電流は本泳動機器を用いて測定した。
上記の1次元目の等電点電気泳動を行った後、等電点電気泳動機器からゲルを取り外し、還元剤を含む平衡化緩衝液に当該ゲルを浸漬して、15分・室温にて振とうした。上記還元剤を含む平衡化緩衝液の組成は以下の通りである。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
6M Urea
30%(v/v) Glycerol
2%(w/v) SDS
1%(w/v) DTT
次に、上記還元剤を含む平衡化緩衝液を除き、ゲルをアルキル化剤を含む平衡化緩衝液に浸漬して、15分・室温にて振とうし、SDS平衡化したゲルを得た。上記アルキル化剤を含む平衡化緩衝液の組成は以下の通りである。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
6M Urea
30%(v/v) Glycerol
2%(w/v) SDS
2.5%(w/v) Iodoacetamide
(2次元目のSDS−PAGE)
本実施例においては、電気泳動機器としてInvitrogen社製のXCell SureLock Mini-Cellを使用した。2次元目泳動用ゲルはInvitrogen社製NuPAGE 4-12% Bis-Tris Gelsを使用した。また、以下の組成の泳動用緩衝液を調製し、使用した。
50mM MOPS
50mM Tris base
0.1%(w/v) SDS
1mM EDTA
又、本実施例においては上記泳動用緩衝液に0.5%(w/v)のアガロースS(ニッポンジーン社製:融解温度≦90℃、ゲル化温度37℃〜39℃のいわゆる高融点アガロース)と適量のBPB(ブロモフェノールブルー)を溶解させた接着用アガロース溶液を使用した。
SyproRuby(Invitrogen社製)を用いてゲルの蛍光染色を行った。
上記一連の処理を施した2次元目泳動用ゲルをTyphoon9400(GE社製)を使用した蛍光イメージのスキャンに供した。2次元電気泳動の結果を図1に示す。図1の左端はSDS−PAGEにおいて使用されたマーカーである。
第2実施例では、2D−DIGEを行った。第2実施例においては、第1実施例に記載した手順の内、「(検体溶液の調製)」の項の手順を下記「(2D−DIGEにおける検体溶液の調製)」の項の手順に変更し、又、「(ゲルの蛍光染色)」のプロセスを省略した以外は、第1実施例と同様の手順の操作を行った。
得られた検体の全量を下記の組成の溶液100μlに溶解した。
30mM Tris−HCl(pH8.5)
2M ThioUrea
7M Urea
4%(w/v) CHAPS
溶解したサンプル20μgに対しCydye(GE社製)160pmolを添加し、その溶液の入った容器を氷上で30分間静置した。その後10mMリジン水溶液を0.5μl添加して更に10分間、容器を氷上で静置した。このような処理を行った後、溶液を等電点電気泳動に適した量である130μlまでDeStreak Rehydration Solutionでメスアップした。メスアップ後充分に攪拌し、氷上で10分以上静置して、1次元目の等電点電気泳動用の検体溶液とした。
本比較例では、第1実施例における「(一次元目の等電点電気泳動)」の項の以下の変更点以外は、検体の調製からゲルの蛍光染色及び解析に至る全てのステップを第1実施例と同様に行った。
Claims (5)
- 検体を含むゲル1本につき100V〜600Vの範囲内の値の定電圧の印加による定電圧工程を行い、泳動30分間あたりの電流変化幅が5μAの範囲内となった後に前記定電圧から電圧を上昇させる電圧上昇工程を始めることを特徴とする等電点電気泳動方法。
- 前記等電点電気泳動方法において、電圧上昇工程の最終電圧が3000V〜6000Vの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の等電点電気泳動方法。
- 前記等電点電気泳動方法において、電極とゲルの間に水で湿らせた通電性の保水材を挟むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の等電点電気泳動方法。
- 前記等電点電気泳動方法が、2次元電気泳動における1次元目の電気泳動として行うものであることを特徴とする請求項1〜請求3のいずれかに記載の等電点電気泳動方法。
- 等電点電気泳動において、検体を含むゲル1本につき100V〜600Vの範囲内の値の定電圧による定電圧工程を行い、泳動30分間あたりの電流変化幅が5μAの範囲内となった時点で検体中の粗雑物が除去されたと判定することを特徴とする粗雑物除去の判定方法。
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