JPWO2004031645A1 - 水素吸蔵合金容器 - Google Patents

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Abstract

水素吸蔵合金を収容した容器で、水素の吸収、放出に伴って水素吸蔵合金が膨張、収縮し、その変形による応力が容器に加わるのを緩和する。合金膨張の緩和材として、繊維材料を合金に添加混合する。上記繊維材料により、水素吸蔵時の合金の膨張を緩和し、容器変形を大幅に抑えることができる。容器内への合金充填において、合金が均等に分散するように充填することができ、さらに水素吸収、放出による膨張収縮の繰り返しで、容器内の合金が大幅に移動するのを防止する。

Description

技術分野
本発明は、水素の吸収・放出を可能とした水素吸蔵合金を収容した水素吸蔵合金容器に関するものである。
背景技術
水素吸蔵合金は、吸収熱・放出熱を伴って可逆的に水素を吸収・放出することが可能であり、したがって冷却により水素を合金に吸収させ、水素を吸収した合金を加熱することにより水素を放出させることができる。
該水素吸蔵合金は、種々の用途に使用することができ、吸収熱・放出熱を利用した冷暖房や水素の貯蔵装置、精製装置として用いることができる。また、最近では環境に優しい動力源として燃料電池が注目されており、該燃料電池に燃料として使用される水素を貯蔵して適宜取り出すことができる装置としても水素吸蔵合金の利用が図られている。
上記水素吸蔵合金は、通常、適宜の容器に水素の吸蔵、放出が可能な状態で貯蔵され、該容器の外部または内部から熱媒との熱交換が可能にされていたり、外部から容器内部の圧力調整が可能になっている。
該水素吸蔵合金は、合金の種別によって異なるものの、概ね、水素の吸収により20〜30%の膨張が起こる。また、水素吸蔵合金は、水素の吸収、放出を繰り返すことにより、微粉化が進み、該水素吸蔵合金が水素を吸収して体積が膨張することにより該水素吸蔵合金を収容した容器の変形ひずみがさらに増加する。また、容器の変形の課題には最大変形率の他に容器位置(深さ方向等)により容器変形の差が大きいという問題があり、容器長手方向の奥(水素入口の反対側)の変形が大きくなる傾向がある。これは水素吸収、放出による膨張収縮の繰り返しで、容器内の合金は容器長手方向の奥(水素入口の反対側)に合金が移動しやすくなるため、合金密度が高くなり、変形が大きくなると思われる。
上記した容器の変形ひずみを緩和するものとして従来、いくつかの提案がなされている。
(a)特開2002−22097号公報では、容器内に膨張吸収用の隙間を形成した容器が示されている。
(b)特開平7−269795号公報では、容器内部に特殊構造の分割容器を配置して容器への応力の緩和を図った容器が示されている。
(c)特開平7−330302号公報では、水素吸蔵合金に低摩擦性を有する無機あるいは有機物質からなる粉末を添加することにより、合金粒体間及び合金粒体と容器内摩擦係数を小さくし、水素ガス吸蔵時の水素吸蔵合金の体積膨張に伴う貯蔵容器内壁に加わる圧力を低下させる容器が示されている。
(d)特開平7−280492号公報では、細管内に水素吸蔵合金を収容することで耐圧性を上げ、さらに水素吸蔵合金に有機物を混合することで潤滑効果を付与して容器への応力付加を緩和した容器が示されている。
(e)特開平5−99074号公報では、水素吸蔵合金粉末と弾性を有するシリコン樹脂粉体を混合して、混合粉体を充填する方法が示されている。
(f)特開平5−248598号公報では、空間分に圧粉成形体の水素吸蔵時の体積膨張を許容し且つ熱伝導性を有する金属製緩衝部材を配置した容器が示されている。
(g)また本願出願人は、特開2002−154801号公報で、容器内に無機繊維の筒状成形体からなる通気材を配置して、該通気材によって水素貯蔵容器の応力蓄積の緩和効果を図った容器を提案している。
上記提案容器を整理すると、以下の項目に分けられる。
(1)水素貯蔵合金の膨張分を予め予測し、膨張を緩和させるような空間を予め形成させることにより、容器の膨張を抑える(提案a〜c)。
(2)水素貯蔵合金に、無機あるいは有機物質からなる粉末を添加する方法、およびシリコン樹脂粉体を合金に混合することによる容器の膨張を緩和する(提案d〜e)。
(3)容器内の空隙に金属製緩衝部材を予め配置することにより、水素貯蔵合金が膨張しても金属製緩衝部材が合金膨張を吸収する(提案f)。
(4)容器内に筒成形体の通気材を容器内に配置することにより、水素吸蔵合金の膨張を無機繊維の筒成形体が吸収緩和させ、容器への応力も緩和させる(提案g)。
しかし、上記した各提案では以下に記載する問題点が存在している。
(1)水素貯蔵合金の膨張分を予め予測し、膨張を緩和させるような空間を容器内に予め形成させる方法は容器設計上の問題があり、適用範囲が限られる。
(2)無機あるいは有機物質、金属製緩衝部材を添加する方法では、容器変形を低減する効果が小さく、十分な改善効果が得られない。
(3)筒成形体を容器内に配置する方法では、合金の充填密度を下げるとともに通気材を多数必要とするため、合金の収容効率が悪い。さらに水素吸蔵合金の種類によっては、合金の充填率を性能の下限値まで引き下げても容器変形量の規格から外れることもある。
発明の開示
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、膨張を緩和させるような空間を形成させる方法や通気材の代わりに、繊維材料を水素吸蔵合金に添加、混合することにより、合金の膨張によるひずみを効果的に緩和させて、水素貯蔵合金容器の変形を低減させることを目的としている。
すなわち、本発明の水素吸蔵合金容器のうち、第1の発明は、繊維材料と水素吸蔵合金粉末とが混合されて収容されていることを特徴とする。
第2の水素吸蔵合金容器の発明は、第1の発明において、前記繊維材料が、繊維片からなることを特徴とする。
第3の水素吸蔵合金容器の発明は、第2の発明において、前記繊維片は、カーボン繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維のいずれかからなることを特徴とする。
第4の水素吸蔵合金容器の発明は、第2の発明において、前記繊維片は、長さが0.01〜10mm、断面大きさが円相当径で2〜20μmの範囲内にあることを特徴とする。
第5の水素吸蔵合金容器の発明は、第4の発明において、前記繊維材料の混合量が、水素吸蔵合金粉末に対し、1〜10wt%の範囲内にあることを特徴とする。
第6の水素吸蔵合金容器の発明は、第1〜第5のいずれかの発明において、水素吸蔵合金粉末の大きさが、30μm〜1.7mmの範囲内にあることを特徴とする。
第7の水素吸蔵合金容器の発明は、第1〜第6のいずれかの発明において、容器の長手方向に沿って容器内部に通気材が配置されており、該通気材は、通気材の筒壁を通して容器内合金と水素通気性を持たせることができることを特徴とする。なお、本発明としては、必ずしも通気材を必要としない。
本発明の水素吸蔵合金容器では、適宜材料の水素吸蔵合金粉末と適宜材料の繊維材料とが収容されている。本発明としては上記水素吸蔵合金粉末の種別は特に限定されるものではなく、水素吸蔵合金容器の使用用途などに従って合金が選択される。該合金としては、例えば、AB系、AB系、BCC系等が挙げられ、水素貯蔵用、燃料電池用等の用途に好適に使用することができる。
該水素吸蔵合金粉末は、既知の方法により溶製し粉末化することにより得ることができ、本発明としてはその製造方法が特に限定されるものではない。水素吸蔵合金粉末の大きさは、30μm〜1.7mmの範囲内にあるのが好適である。
また、上記繊維材料には、例えばカーボン繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維等を使用することができる。該繊維材料としては、好適には繊維片形状からなるものが使用される。該繊維片の形状としては、長さ0.01〜10mm、断面大きさが円相当径で2〜20μmの範囲内にあるものが望ましい。さらには、長さ0.1〜5mm、円相当径で5〜15μmの範囲内にあるのが一層望ましい。
なお、円相当径とは、断面積を基準にして、断面が円形であると仮定した場合の径をいう。したがって、繊維片の断面は必ずしも円形であることは必要ではなく、楕円形、角形、薄片形状の断面を有するものであってもよい。
なお、上記水素吸蔵合金および繊維片を収容する容器の材質、形状は、本発明としては特定のものに限定されるものではない。望ましい特性としては弾性変形可能であることが挙げられる。したがって金属材料や塑性変形可能な合成樹脂等を用いることができる。軽量かつ適度な強度を有する材質としてはアルミニウム合金を挙げることができる。
また、上記容器の形状も特に限定されるものではなく、収容容量が十分に得られるような形状設計や、設置スペースの制約に基づく形状設計等により形状を選定することができる。
また、上記容器には、水素吸蔵合金で吸収、放出される水素を移動させるために通気材を配置することができる。該通気材は、筒状にするとともに筒壁に通気性を持たせて水素吸蔵合金と筒孔との間で移動する水素を通気材の軸方向に移動させて容器外部との水素通気性を確保することができる。該通気材の配置においては、容器の長尺方向に沿って通気材を配置するのが望ましい。
容器への水素吸蔵合金粉末および繊維材料の収容は、予め水素吸蔵合金粉末と繊維材料とを均一に混合しておき、該混合物を容器内に収容するのが望ましい。これにより水素吸蔵合金粉末と繊維材料とを容器内に均等に分散させることができる。
発明の効果
本発明の水素吸蔵合金容器では、水素吸蔵合金粉末と繊維材料とを混合、収容した状態では、繊維材料がネット状に分散することで、合金粉末が均等に分散し、かつ合金間にも適度に分散した空隙が形成される。該水素吸蔵合金への水素の吸収、放出を行わせると、水素貯蔵合金の水素吸収により該合金が膨張変形するものの繊維材料が容易に変形して、上記分散空隙によって水素吸蔵合金の変形による応力が緩和される。また、該繊維材料は、合金粉末をネットワーク状に保持することができ、このため容器の位置によって合金粉末の粗密が生じるのを防止でき、例えば 容器内への合金充填において、容器深さ方向に均一に充填が可能となる。また、繊維材料は合金粉末の均等な分散を長期に亘り維持する効果がある。例えば、水素吸収、放出による膨張収縮の繰り返しで、容器内の合金は容器長手方向の奥(水素入口の反対側)に合金が移動しやすいが、繊維材料の添加により、移動しにくくなる。
また、水素吸蔵合金での水素の吸収、放出の継続によって該合金粉末の微粉化が生じた際にも、該合金粉末は繊維材料で均等に保持され、該合金粉末間の空隙が維持されて合金の変形に伴う応力を緩和する。上記により水素吸蔵合金の膨張収縮によって容器壁に加わる応力を緩和し、容器変形を防止することができる。
実施例
以下に本発明の実施例を説明する。
水素吸蔵合金容器10、20は、アルミニウム合金製からなり、箱型形状の箱形容器(第1図)または円筒型形状のシリンダータイプ容器(第2図)になっている。両容器とも内部に無機繊維からなる筒状の通気材12、22が容器内部の中央に長手方向に沿って配置されている。該通気材12、22は、筒壁が多孔となっており、該筒壁を通して通気性を有するように構成されている。
第1図、第2図のとおり、両容器は構造が異なっており、箱形の容器10の場合は容器本体11と上蓋14とに分かれており、上蓋14に通気管13が接合されている。該通気管13には、バルブ15がねじで固定されている。該箱形の水素吸蔵合金容器10では、容器本体10内に繊維材料を混合した水素吸蔵合金30を充填後、該容器本体11の内部空間上部にフィルター16を詰め、該容器本体11と上蓋14とを接合して箱形の水素吸蔵合金容器10とする。また、箱型容器はシリンダータイプ容器に対して容積が大きいことが多く、合金の片寄り防止等から容器内に仕切り板17を設けることが多い。
それに対し、シリンダータイプの水素吸蔵合金容器20は、第2図に示すように、シリンダ型の容器本体21の開口部28がネジ穴1つ分と小さく、合金充填後は内部上方にフィルター26を詰め、バルブ25が固定される。尚、両容器とも水素吸収、放出の際はバルブ15、25の通気口15a、25aを介して行う。
第3図は上記各容器への合金の充填状況を示したもので、方法としては、AB系合金からなる粒径30〜500μmの水素吸蔵合金粉末と、カーボン繊維の材質からなり、長さが0.1〜5mm、断面大きさが円相当径5〜15μmの繊維材料を用意し、水素吸蔵合金粉末100%重量部に対し、繊維材料を5%重量部添加し、両者を均等に混合する。
該混合物30は、第1図、第2図に示すように両容器とも上蓋14及びバルブ15、25を付けない状態で、第3図に示す開口部18、28より、漏斗状の充填具40等を使用して容器10、20内に所定の量を収容する。収容後には、第1図、第2図に示すようにフィルター16、26を詰め、箱形の容器10では開口部18を上蓋14で覆って密閉する。またシリンダータイプの容器20では開口部28にバルブ25を取り付けて密閉する。上記により水素吸蔵合金粉末と繊維材料からなる混合物30を収容した密閉容器を得る。
第4図は、該容器10、20内部の混合物30を拡大して示した概略図であり、水素吸蔵合金間に細長い繊維材料が無方向に入りこんで、水素吸蔵合金粉末が均等に分散している。該水素吸蔵合金容器10、20では、バルブ15、25を通して外部の水素貯留部等に接続しておき、該水素吸蔵合金容器10、20の冷却や水素貯留部での高圧付与により、水素が水素吸蔵合金容器10、20内に移動する。この水素はフィルター16、26を通って通気材12、22および水素吸蔵合金粉末間に移動し、該合金で水素が吸収される。水素の吸収により、水素貯蔵合金が膨張した時は第5図の状態になり、水素吸蔵合金が繊維材料を圧するが、繊維材料が水素吸蔵合金の膨張によるひずみを吸収するため、水素吸蔵合金間に隙間が維持され、水素吸蔵合金容器の変形は低減される。水素吸蔵合金に水素が吸蔵された状態で、該水素吸蔵合金容器10、20の加熱や水素貯留部での低圧付与により、水素吸蔵合金粉末から水素が放出され、該水素は合金間を通って通気材12、22の筒壁から筒孔を通ってフィルタ16、26に至り、さらに外部の水素貯留部や他部に移動する。この水素吸蔵合金での水素放出により水素を収縮する。この収縮により繊維材料への圧力は低減され、該繊維材料が弾性復帰して水素を吸収する前の状態になる。
さらに水素の吸収、放出を繰り返すことにより、合金は第6図に示すように微細化する状態(微粉化)が始まり、合金の数も増え、合金粒子同士が近づこうとするが、第6図のように繊維材料が水素吸蔵合金を包む状態になり、合金粒子同士が近づくのを防ぐため、容器の変形は低減される。以上のような作用により、繊維材料が入っていないものと比べ、合金の膨張が低減され、容器にかかる膨張は少なくなると思われる。
次に、上記のように水素吸蔵合金粉末に繊維材料を混合して収容した容器と、水素吸蔵合金粉末のみを収容した容器(合計収容量は同じにする)とを用意し、水素の吸収、放出を繰り返し、容器の変形率をマイクロメータにより容器厚さ変化によって求めた。その結果を第7図に示す。
第7図から明らかなように、水素吸蔵合金粉末に繊維材料を混合したものでは改善前に比べ、容器の変形を1/4以下に抑えることができた。
さらに、容器の変形率を容器内部の異なる部位において測定した。その結果を第8図に示す。第8図から明らかなように、従来問題点となっていた容器長さ方向の変形率の差は、改善前の約3%に対して改善後は約0.5%に抑えることができ、容器部位毎での変形率のバラツキを小さくできた。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施例における水素吸蔵合金容器を示す正面断面図である。
第2図は、同じく他の水素吸蔵合金容器を示す正面断面図である。
第3図は、第1図および第2図に示す水素吸蔵合金容器への混合物の充填状況を示す図である。
第4図は、同じく該容器内での合金粉末と繊維材料の分散状態を示す概念図である。
第5図は、同じく該容器内での水素吸蔵合金粉末が水素を吸収した状態での合金粉末と繊維材料の分散状態を示す概念図である。
第6図は、同じく該容器内での水素吸蔵合金粉末が微粉化した状態での該合金粉末と繊維材料の分散状態を示す概念図である。
第7図は、同じく水素吸蔵合金容器で繰り返し水素の吸収、放出を行った際の容器変形率の変化を示したグラフである。
第8図は、同じく水素吸蔵合金容器で繰り返し水素の吸収、放出を行った際の容器変形率を、繊維材料を添加したものと無添加のものでそれぞれ容器内部部位毎に測定して示したグラフである。

Claims (8)

  1. 繊維材料と水素吸蔵合金粉末とが混合されて収容されていることを特徴とする水素吸蔵合金容器。
  2. 前記繊維材料が、繊維片からなることを特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金容器。
  3. 前記繊維片は、カーボン、ガラス、セラミックのいずれかからなることを特徴とする請求項2記載の水素吸蔵合金容器。
  4. 前記繊維片は、長さが0.01〜10mm、断面大きさが円相当径で2〜20μmの範囲内にあることを特徴とする請求項2記載の水素吸蔵合金容器。
  5. 前記繊維材料の混合量が、水素吸蔵合金粉末に対し、1〜10wt%の範囲内にあることを特徴とする請求項4記載の水素吸蔵合金容器。
  6. 水素吸蔵合金粉末の大きさが、30μm〜1.7mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素吸蔵合金容器。
  7. 容器の長手方向に沿って容器内部に通気材が配置されており、該通気材は、通気材の筒壁を通して容器内合金と水素通気性を持たせることができることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素吸蔵合金容器。
  8. 容器の長手方向に沿って容器内部に通気材が配置されており、該通気材は、通気材の筒壁を通して容器内合金と水素通気性を持たせることができることを特徴とする請求項6記載の水素吸蔵合金容器。
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