JPWO2003064318A1 - 水素発生装置、水素発生システムおよびこれらの用途 - Google Patents
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Abstract
水素発生装置は、被処理物を活性化するための水素排出口を有する被処理物容器と、前記被処理物容器内に前記被処理物容器に対して垂直に設けられた少なくとも1本の板状活性構造体とから構成される。前記板状活性構造体が珪素、チタン、ニッケル、サマリウムから成る群から選択された単一成分の元素または弗化炭素から構成された粒子を、各元素または弗化炭素に固有の波動性エネルギを増幅させる位置に配置して、前記粒子間にエネルギ集中の場を持たせた板状活性構造体であり、そして前記被処理物容器内の被処理物が前記エネルギ集中の場に滞留または通過することによって水素を含む気体を発生させる。より少ないエネルギで水素を発生することができ、かつ省スペース化を図ることが可能となる。
Description
技術分野
本発明は、水素発生装置、水素発生システムおよびその用途に関する。より詳しく述べると、特定の元素から構成された粒子間にエネルギ集中の場を持たせ、このエネルギ集中の場に被処理物を通過または滞留させることによって、当該物質を活性化させて水素を含む気体を発生させる機能を有する活性構造体を用いた水素発生装置および水素発生システム並びにかかる水素発生システムを用いた各種用途に関する。
背景技術
近年、石油等の既存の資源の枯渇化や二酸化炭素の放出等の観点から、石油に代わる代替燃料として水素が注目されている。
従来、このようなエネルギ源として水素を製造するには水、メタノール等の電気分解が一般的であった。
例えば、水を電気分解する場合、下記式(1)の反応に従って水素を発生させる。
H2O → H2 +1/2O2 (1)
この場合に、水を電気分解して水素を得るためには標準状態で1.23Vの電位差が必要とされるが、水の有する高い電気抵抗のため、それ以上の電位差を水に与えなければ、水の電気分解を行うことは不可能である。そのため、水素を発生させるのに、アルカリ等の電解質を水に溶解させた水溶液の電気分解が行われているが、副産物として生成するアルカリ化合物を除去する必要があり、また分解率が低いという問題点もある。
水素を発生させる他の方法として、水の熱分解が考えられる。しかしながら、水を熱分解させて水素を得るためには4300℃程度の高温下で行う必要があり、さらに大きなエネルギが必要となり、実用的でない。
また、外部からのエネルギを加えることなしに水素を発生させる方法として、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属類を水に添加してこれらの金属と水とを化学反応させる方法が考えられるが、これらの金属は比較的高価であり、またこれらの化学反応が急激であるので、工業的に利用するのは困難である。
メタノール、ガソリン等の炭化水素では、水素と炭素との結合エネルギが比較的小さく、それらの電気分解に必要とされる電位差は少なくてすむが、反応時のCO、CO2等の副産物の生成を伴うため、そのままではクリーンなエネルギとして使用するのが困難であり、これらの副産物を除去する対策を講じる必要がある。
このように、水素をエネルギとして使用する試みは数多く行われている。例えば、燃料電池システム、燃料電池システムを搭載する車両(燃料電池自動車および燃料電池システムと内燃機関の両者を備えたハイブリッド自動車)、内燃機関、外燃機関、ハイブリッド燃料自動車、更には水素を動力源とするロケット等が挙げられる。ちなみに、燃料電池システムは、携帯機器用途としても注目されている。
このような目的に水素を使用する場合には、水素を発生するための水素の発生システムは小型化されることが望まれている。
従来、例えばメタノール、ガソリン等の炭化水素を出発原料として触媒の存在下に改質することにより水素を製造していた。しかしながら、このような改質反応を用いて水素を製造した場合、選択率が低いためにCO等の副産物を生成するので、これを除去するための対策を講じる必要があった。さらに、改質反応は高温下で進行するので多大なエネルギを必要としていた。
さらに、出発原料である炭化水素は限りある資源であり、リサイクル可能な資源を出発原料としたいという要望がある。
従って、より少ないエネルギで、好ましくは外部からエネルギを与えることなしにこのようなエネルギとして使用するための水素を発生する装置、当該水素発生装置を備えた水素発生システム、特に燃料電池システム、燃料電池システム搭載車両、更には水素を動力源とするロケット等に搭載するための省スペース化可能な水素発生装置および水素発生システムに対する強い要望がある。
さらに、水、海水等のリサイクル可能な資源からより少ないエネルギを付与することで充分な量の水素を発生することが可能な水素発生装置および水素発生システムに対する強い要望がある。
従って、本発明の課題は、より少ないエネルギで水素を発生することができ、かつ省スペース化を図ることが可能な水素発生装置、当該水素発生装置を備えた水素発生システムを提供することである。
本発明者は、前記の課題に鑑みて鋭意検討した結果、所定の金属元素から構成された粒子を所定の配列で配置させると、当該粒子間に高いエネルギが生じ、このエネルギを用いて、物質を活性化させることを見出して先に特許出願を行った(特願2001−021734)。
この出願によると、珪素、チタン、ニッケル、サマリウムから成る群から選択された単一成分の元素または弗化炭素から構成された粒子を、各元素または弗化炭素に固有の波動性エネルギを増幅させる位置に配置して、前記粒子間にエネルギ集中の場を持たせた活性構造体が、当該粒子間で高いエネルギ(による相互作用)を発生し、すなわち、エネルギ集中の場が生じ、当該エネルギ集中の場に各種物質を通過または滞留させることにより当該物質を活性化することが可能となることが記載されている。
発明の開示
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、板状に成形した前記活性構造体を所定位置に所定の容器内に配置したものが上記課題を解決することを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、被処理物を活性化するための水素排出口を有する被処理物容器と、前記被処理物容器内に粒子間にエネルギ集中の場を有する活性構造体とから構成された水素発生装置であって、前記被処理物容器内の被処理物が前記エネルギ集中の場に滞留または通過することによって水素を含む気体を発生させることを特徴とする水素発生装置に関するものである。
このように構成することによって、簡単な構成でかつ外部エネルギをほとんど使用せずに被処理物から水素を発生させることが可能な水素発生装置が提供される。
本発明はまた、前記活性構造体が、珪素、チタン、ニッケル、サマリウムから成る群から選択された単一成分の元素または弗化炭素から構成された粒子を、各元素または弗化炭素に固有の波動性エネルギを増幅させる位置に配置して、前記粒子間にエネルギ集中の場を持たせた活性構造体である水素発生装置に関するものである。
このように構成すると、被処理物が活性構造体の内部を通過して、すなわち活性構造体におけるエネルギ集中の場を通過するので、被処理物を効率よく活性化して水素を発生させることが可能である。
また、前記板状活性構造体は板状に成形されていることが好ましく、前記活性構造体は、前記被処理物容器内に対して気発生気体と流体が速やかに分離する構造、また発生気体により流体と触媒の接触が阻害されない位置に配置されていても良い。
さらに、前記活性構造体は、前記被処理物容器内に対して垂直方向に配置されていても良く、また、前記被処理物容器を上下方向に仕切るように設けられていても良い。
このようにすることにより、(板状)活性構造体の断面長さ方向に沿って被処理物の対流が生じる。このような対流により被処理物が(板状)活性構造体におけるエネルギ集中の場を通過する確率が増加する。従って、効率よく被処理物を活性化して水素を発生させることが可能となる。
なお、「前記被処理物容器に対して垂直方向に板状の活性構造体を設ける」とは、「板状構造体の形状」、「板状構造体の辺の方向」、板状構造体の「配置位置」に限定されないことを意味している。
すなわち、活性構造体(板状活性構造体)は、その面方向の形状が円形、楕円形であっても、正方形であっても、長方形であってもよい(好ましくは長方形である)。また、例えば長方形や楕円形等の長辺(長軸)や短辺(短軸)を有している形状の場合には、長辺(長軸)を被処理物容器に対して垂直に設けるのが好ましい。
また、板状活性構造体は、前記被処理物容器の底面や側面に接触して配置されてもよく、また保持手段により底面や側面に接触しないで配置されていてもよい。
本発明において使用される用語「活性化」は、被処理物である分子や原子にエネルギを付与することを包含している。したがって、本発明に使用される用語「活性化」は、分子や原子を励起させることを包含していることを意味する。
なお、「板状活性構造体が被処理物容器を上下方向に仕切るように配置する」とは、一枚の板状活性構造体により被処理物容器を上下方向に仕切ってもよくあるいは各々別の一枚の板状活性構造体により被処理物容器を上下方向に仕切ってもよいことを意味する。
また、「板状活性構造体を被処理物容器を上下方向に仕切るように配置する」構成と「前記被処理物容器に対して垂直方向に板状活性構造体を設ける」構成を組合せた構成を有しているのが好ましい。
このように構成すると、被処理物と板状活性構造体との接触面積、すなわち被処理物がエネルギ集中の場に浸入(通過・滞留)する確率が増加するとともに、活性構造体の断面長さ方向に沿って被処理物の対流が生じる。このような滞留により被処理物が板状活性構造体におけるエネルギ集中の場を通過する確率が増加する。従って、効率よく被処理物を活性化することが可能となる。
なお、このような構成を有する本発明の水素発生装置において、(板状)活性構造体、被処理物容器あるいは両者を加熱する加熱手段を設けることによって強制的に被処理物の対流を惹起させる構成とすることが好ましい。このように構成すると、被処理物の対流を調整することが可能となるので、被処理物の活性化速度を調整することが可能となる。
同様な効果の享受を目的として、前記(板状)活性構造体を振とうさせる振とう手段を設けた構成とすることも可能である。
また、このような構成を有する本発明の水素発生装置において、前記の加熱手段を設ける構成に代えて、あるいは加熱手段と組合せて被処理物を水素発生装置内で循環させる循環手段を設けることが好ましい。このように構成することによって、被処理物の対流を調整することが可能となるので、被処理物の活性化速度を調整することが可能となる。
さらに、このような構成を有する本発明の水素発生装置において、前記活性構造体と被処理物との上下方向の接触面積とを相対的に移動させる移動機構を設けることが好ましい。
このように構成することによって、被処理物と板状活性構造体との接触面積を自在に変化させることが可能となるので、被処理物の活性化、活性化の停止および活性化速度の停止を適宜調整することが可能となる。
なお、好ましい移動機構手段は、板状活性構造体を垂直方向に移動させる垂直方向移動手段および水素発生装置本体に設けられた循環ポンプ等の移動手段を備えた被処理物の予備槽である。
また、前記被処理物が水、水性媒体、炭化水素、またはこれらの混合物であることが好ましい。
特に被処理物として水または水性媒体を選択すると、本発明の活性構造体により活性化され、水素、酸素および窒素を含む混合気体が得られる。このようにして得られた混合気体を、適当な手段により水素を分離することによって、酸素と窒素との混合気体が得られる。従って、水または水性媒体を本発明の活性構造体により処理することによって、空気を製造することが可能となる。
本発明において使用される用語「炭化水素」とは、本発明の水素発生装置に使用される板状活性構造体を用いて水素を遊離することが可能な炭化水素であって、すなわち、水素を遊離可能なOH結合またはCH結合を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール、脂肪族アルデヒド、脂肪族ケトン、ガソリン、石油エーテル等を包含するものである。
水素は、化石燃料をはじめとする各種既存のエネルギの代替エネルギとして非常に注目されている。本発明の水素発生装置を用いて、このような水または炭化水素から水素を遊離させることが可能となり、特に本発明においては、このように水または炭化水素から外部からエネルギを加えることなしに、かつ副産物の生成なしに選択的に水素を製造することが可能となる。
これらの水素発生装置は、水素発生システムに有効に利用できる。この水素発生装置は、メインの水素発生装置としても水素発生補助装置としても利用できる。
このような水素発生システムは、内燃機関、外燃機関、燃料電池システム、水素ロケット、車両の水素エンジンなどとして有効に利用することが可能である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
(活性構造体)
まず、本発明に使用される活性構造体の基本構成について第1図および第2図を用いて説明する。
(構成元素)
本発明に使用される活性構造体は、珪素、チタン、ニッケル及びサマリウムから成る群から選択された元素から構成される。これらの元素の選択は、後述する本発明者による繰り返しの実験結果から導き出したものであり、珪素、チタンおよびニッケルについては、原子の最外核軌道(M、N)公転電子数が偶数である金属元素であり、かつ酸素と反応しにくい元素であり、またサマリウムについては原子の最外核軌道(M、N)公転電子数が偶数(2)である希土類元素であり、かつ酸素と反応しにくい元素である。なお、ニッケルおよびサマリウムは強い磁性を有することを特徴としている。
本発明に使用される活性構造体において、これらの元素を単体で使用するがその際の純度は、使用する元素の種類および活性化しようとする物質の種類等によって適宜選択される。例えば、前記活性構造体として珪素を用いて水を活性化して水素と酸素を発生させる場合には、珪素の純度は約90%以上、好ましくは95%以上である。これらの純度は高ければ高いほど好ましい。また前記活性構造体を構成し得る他の元素、すなわち、チタン、ニッケル及びサマリウムも同様の純度であることが好ましい。また、前記活性構造体は、一般には、例えば珪素なら珪素を単独で構成されるが、このような各単体元素を組み合わせて前記活性構造体を構成してもよい。
前記活性構造体において、かかる元素を造粒して粒子として使用するが、所定の位置への配置の容易さ、造粒のしやすさ等の観点から、球状、特に真球状であるのが好ましく、その際に粒径は、5μm〜80μmとするのが好ましい。5μm以下の粒径を有する粒子を製造するのは比較的困難であるとともに、粒子を所定位置に配置した際に、後記するエネルギ集中の場である粒子間に物質を通過させるのが比較的困難となるからである。また粒径が80μmを超えた場合には、粒子を配置した際に、粒子間に十分なエネルギが発生しないからである。一般に粒径が150μmを超えると本発明による物質を活性化させるエネルギの発生が困難となる。
また、これらの粒子の粒度分布は、狭ければ狭いほど好ましい。具体的には、本発明者の繰り返しの予備実験の結果、粒径のバラツキが±15μm(すなわち、粒子径の大小の誤差が30μm)以内の際に顕著な効果が得られることが判った。
本発明における特定の元素をこのような形状に造粒する方法は、特に限定されるものではなく、触媒製造分野で一般に知られている造粒方法を適用することが可能である。製造の簡便さ、粒子形状を比較的均質にすることが可能であるという観点からガスアトマイズ法が好ましい。しかしながら、前記活性構造体は、上記した粒子を形成できれば特にガスアトマイズ法により成形した粒子に限定されるものではなく、例えばゾル−ゲル法等の従来公知の方法を好適に使用することができる。
また、例えばジェット粉砕法により前記球状粒子を製造することができる。ジェット粉砕法も、ガスアトマイズ法と同様に触媒粒子を製造する一般的方法であり、本発明における活性構造体における各粒子を製造するのにも適用可能である。
第1図に示す通り、本発明においてこのようにして、珪素、チタン、ニッケル及びサマリウムから成る群から選択された元素から構成された粒子Pを、波動性エネルギを増幅させる位置に配置する。
すなわち、前記活性構造体を構成するこれらの各元素は、例えばイオン化時には各々表1に示す通り、式:E=hν(式中、Eは各元素に固有のイオン化エネルギ(eV)であり、hはプランク定数であり、そしてνは周波数である)で表される固有の周波数を有しており、前記活性構造体を構成するこれらの元素は電気磁場的振動を発振している。そして、このような電気磁場的振動は、所定の揺らぎを有している。このことから、前記活性構造体を構成するこれらの元素は常態においても固有の振動を持つものと推測され、これらの各元素に固有の振動を効果的に与える位置に粒子Pを配置することによって、粒子間に形成された間隙Sを通過または滞留する物質に、振動エネルギを付与し、当該物質を活性化するものと推測される。
また、どのような理由で同様の作用・効果を示すかは明確ではないが、本発明者がさらに繰り返し実験を行ったところ、弗化炭素(FC)も前記金属元素を用いた場合と同様な作用効果を示すことを見出した。従って、前記活性構造体は、弗化炭素から構成された粒子も包含するものである。
本発明に使用する活性構造体は、このような推測に基づいて、繰り返しの実験により実証されたものであり、各粒子を実質的に均一なサイズ(同一の粒径を有する真球)とした場合に、例えば第1図(b)に示す通り三角形の頂点に配置すると高い活性を示すことを見出したものである。すなわち、本発明において物質が特定の元素から構成された粒子Pと粒子Pの間の空隙S(エネルギ集中の場)を通過または滞留する際に、前記活性構造体を構成する各元素の固有の振動・揺らぎ等により、当該物質に高いエネルギを付与する。
本発明に使用する活性構造体においては、このような位置に所定の元素から構成された粒子を配置する。なお、実際には各粒子は、完全に球体となるとは限らず、また各粒子の粒径も一定ではないので実際には正確に正三角形の各頂点に配置するのは困難である。本発明において使用される用語「正三角形の各頂点に配置する」とは、このような誤差範囲を含むことを意味し、例えば参考図である第2図(a)に示す通りに各粒子を配置することを意味する。なお、第2図(a)は、ガスアトマイズ法により製造した粒子Pを52ミクロンメッシュの篩にかけ、篩を通過した粒子を収集して(均一なサイズの粒子)、配置させたものである。
また、第1図(b)に示す通り、正三角形の頂点に粒子を配置させた場合、粒子Pと粒子Pの間の空隙Sに形成される三角形、すなわち、粒子の接線の交点から形成される三角形の各頂点は、90度以下であることが必要であり、好ましくは39〜70.5度であり、理想的には約60度である。
また、第1図(d)に示す通り、本発明に係る各粒子を正四面体の頂点に配置すると最も高い活性を示すことを見出した。すなわち、正四面体構造は、本発明において物質が特定の元素から構成された粒子Pと粒子Pの間の空隙S(エネルギ集中の場)を通過または滞留する際に、前記活性構造体を構成する各元素の固有の振動・揺らぎ等により、当該物質に高いエネルギを付与する正三角形構造を四面配置した構造となり、より一層高いエネルギ集中の場が構成される。正三角形構造と同様にして、本発明においては、このような位置に所定の元素から構成された粒子を配置する。なお、実際には各粒子は、完全に球体となるとは限らず、また各粒子の粒径も一定ではないので実際には正確に正四面体の各頂点に配置するのは困難である。したがって、本発明において使用される用語「正四面体の各頂点に配置する」とは、このような誤差範囲を含むことを意味し、例えば参考図である第2図(a)に示す通りに各粒子を配置することを意味する。なお、第2図(a)は、ガスアトマイズ法により製造した粒子Pを52ミクロンメッシュの篩にかけ、篩を通過した粒子を収集して(均一なサイズの粒子)、配置させたものである。
正三角形の頂点に各粒子を配置した形態と同様にして、正四面体を構成する各正三角形についても、粒子Pと粒子Pの間の空隙Sに形成される三角形、すなわち、粒子の接線の交点から形成される三角形の各頂点は、90度以下であることが必要であり、好ましくは39〜70.5度であり、理想的には約60度である。
また、本発明に使用する活性構造体における波動性エネルギを増幅させる位置とは、前記の正四面体の頂点の位置に限らず、物質が特定の元素から構成された粒子Pと粒子Pの間の空隙S(エネルギ集中の場)を通過または滞留する際に、各元素の固有の振動・揺らぎ等により、当該物質に高いエネルギを付与することが可能な位置であれば特に限定されるものでない。すなわち、例えば第2図(b)に示す通りの不規則な形状の粒子をランダムに配置すると、各元素に固有の振動が互いに打ち消し合って、各粒子間に存在する間隙に、高いエネルギの場が生じるのが困難となり、被処理物質の活性化が生じなくなる。第2図(b)に示す粒子は、ガスアトマイズ装置のチャンバ壁面に付着した原料物質を破砕した後、52ミクロンメッシュの篩にかけ、篩を通過した粒子を収集して、配置させたものである。
(板状活性構造体)
本発明は、このような基本構成を有する活性構造体を板状に成形した板状活性構造体を用いる。以下、本発明に使用する板状活性構造体(以下、単に「板状活性構造体」と言う)について、第3図および第4図を用いて説明する。
(板状活性構造体の構成)
板状活性構造体は、このような基本構成を有する活性構造体を板状に成形したものである。すなわち、上記した粒子を、圧縮成形、焼結成形等の種々の成形方法により成形して構成することができる。すなわち、第1図(a)に示す通り、前記の通り珪素、チタン、ニッケル、サマリウムから成る群から選択された単一成分の元素または弗化炭素から構成された粒子Pを各元素または弗化炭素に固有の波動性エネルギに増幅させる位置S、代表的には、正三角形の頂点、好ましくは正四面体の頂点に各粒子Pが配列するように配置する。そして、加熱下、例えば粒子の溶融温度以下の温度で加熱して、圧縮することによって、第3図(b)に示すような板状活性構造体を得ることができる。
また、後述する板状活性構造体から構成される水素発生装置の構成に応じて、第3図(b)に示すようなL型や、第3図(c)に示すようなU型や、第3図(d)に示すようなS型の板状活性構造体に形成することができる。なお、本発明で言う板状活性構造体とは、所定の厚み、幅および長さを持った活性構造体であれば特にその形状は、限定されるものではなく、また、用語“L型”、“U型”および“S型”とは、厳密に“L型”、“U型”および“S型”形状を有するものでなくともよい。例えば、“U型”の板状活性構造体は、曲線部のない垂直な3つの板状からなる形態であってもよい。
このような板状活性構造体は、第4図(a)に示す通り、粒子P間にエネルギ集中の場である空隙Sが多数形成されている(この空隙の好ましい形態は前述の粒状の活性構造体と同様であるので省略する)。すなわち、板状に成形しても珪素、チタン、ニッケルまたはサマリウム元素または弗化炭素から構成された粒子を本発明に規定する各元素または弗化炭素に固有の波動性エネルギに増幅させる位置に配置することによって、同様な物質の活性効果を示す。
これに対して、第4図(b)に示す通り前記粒子を本発明の規定する範囲外、すなわちランダムに配置すると、例え粒子間にある程度の空隙を有していても前記(本発明の)活性構造体の有する物質の活性効果を示すものではない。
なお、板状活性構造体は、使用する目的に応じて種々の寸法とすることができるが、効率よく被処理物を本発明で規定するエネルギ集中の場に導くため(滞留および通過)、その厚さは、350μm〜1500μm、好ましくは500μm〜1000μmであることが好ましい(すなわち、本発明の活性構造体を構成する粒子が5〜15層積層された状態であることが好ましい)。板厚が上記範囲より小さい場合には破損等の取扱いの点で注意を要することになり、逆に、板厚が上記範囲より大きい場合には、被処理物が充分に板状活性構造体におけるエネルギ集中の場に導けない場合がある。
また、板状活性構造体は、構造体全体として、嵩密度45〜60%の範囲であることが好ましく、特に約50%であることが好ましい。上記の範囲の嵩密度を有する板状活性構造体を使用すると、被処理物を比較的少ない流量(圧力)で板状活性構造体におけるエネルギ集中の場に導入して処理することが可能である。活性構造体の嵩密度が上記範囲よりも大きい場合には、被処理物を処理する際に、高い圧力が必要となり、板状活性構造体の破損や被処理物中の不純物によるエネルギ集中の場の目詰まりが生じることがある。逆に、板状活性構造体の嵩密度が上記範囲よりも小さい場合には被処理物が板状活性構造体のエネルギ集中の場で充分に滞留・通過する時間が取れず活性化しにくい場合がある。なお、最も好ましい板状活性構造体の嵩密度は約50%である。
(活性構造体の製造)
以下、本発明に使用される板状活性構造体および活性構造物の製造方法について記載する。
(粒子の製造:段階a)
本発明の好ましい実施の形態において、本発明の活性構造体は、前記した板状活性構造体以外に種々の形状の活性構造体とすることができる。以下、本発明の板状活性構造体について、第5図および第6図を用いて説明する。
本発明の活性構造体は、上記した板状活性構造体以外に、例えば図種々の形状に成形することができる。例えば、星型(コンペイ糖型)(第5図(a))、円盤状(第5図(b))、少なくとも1個の穴を有する板状(第5図(c))、球形(第5図(d))、回転楕円体(第5図(e))、ひょうたん型(第5図(f))またはハニカム状(第5図(g))等の形状に成形することが可能である。すなわち、例えば第5図(a)から第5図(g)に示すように、従来の触媒粒子と同様な形状、寸法に本発明の活性構造体(活性構造物)を成形することによって、従来の触媒粒子と同様な取扱いをすることが可能となる。また、従来の触媒を用いた反応装置を本発明の活性構造体を用いた物質の活性化装置に流用することも可能であるという効果も奏する。
また、第6図(a)から第6図(f)に示すように、例えば第5図(a)から第5図(f)に示す構造を有する本発明の活性構造体(活性構造物)は、斜線で示すように中心に本発明粒子と反応性が少ない材料あるいは比熱の高い金属から構成されたコア上に形成することができる。このように形成することによって、本発明の活性構造体を安価に製造したり、あるいは熱伝導率の高い金属を使用することで被処理物との熱交換を容易に行うことが可能となるという効果を奏する場合がある。
このように、コア上に本発明の活性構造体をコーティングする方法は、従来公知の方法、例えば転動流動法、噴霧乾燥法によって形成することができる。
(活性構造体の製造)
以下、本発明の活性構造体のうち、板状活性構造体および活性構造物の製造方法について記載する。
(粒子の製造:段階a)
まず、活性構造体の基本単位となる所定元素または弗化炭素から構成された粒子を形成する。この粒子の形成方法は、前述の通りである。
すなわち、例えばガスアトマイズ法やゾル−ゲル法等の触媒粒子の製造分野に公知の方法により、球状、特に真球状の粒子を形成する。
(帯電防止処理:段階b)
次いで、各粒子間の配置を容易に行う目的で、このようにして形成された粒子に帯電防止処理を行う。すなわち、形成された粒子は、粒子を配列する際に静電気により各粒子が付着あるいは反発して所望の位置に配置できない場合がある。
そのため、陰陽両イオンを粒子に施すことによって、帯電防止処理を行う。
(焼結処理:段階c)
このようにして帯電した所定の元素または弗化炭素から構成された粒子を第1図(a)に示すように配置し、そして所定形状に焼結成形を行う。この際の焼結条件は、使用する粒子を構成する元素または弗化水素の融点以下の温度でかつ焼結成形可能な温度(例えば珪素元素を使用する場合には1200〜1300℃)であり、焼結時間は2.5〜3.5h、焼結圧力は12〜25MPaである。(なお、弗化炭素の場合には直接焼結不能であるので、例えばCIP(コールド立体プレス)により作製する)。
このようにして焼結成形を行うと第1図(b)に示すような配列をもった第3図に示すような形状を有する板状活性構造体が得られる。また、板状以外の構造、すなわち第5図に示すような構造を有する本発明の活性構造体(活性構造物)を得ることも可能である。
本発明における板状活性構造体あるいは活性構造物の形成の際に、通常の焼結成形とは異なりバインダを使用しないで焼結成形することに特徴がある。すなわち、従来公知のバインダを用いて焼結処理を行うと、各粒子間の隙間S、すなわちエネルギの集中を均一に配置して板状活性構造体あるいは活性構造物を作製するのが困難である、粒子表面にバインダ由来の不純物が付着し、粒子の活性が失われる恐れがあるからである。もちろん、本発明に規定する粒子間を配置できかつ不純物の表面への付着を防止できればバインダを用いて焼結成形することも可能であり、本発明の製造方法はバインダの使用・不使用に限定されるものではない。バインダを用いる際の焼結温度は、バインダの分解点温度以上である。
以下、このようにして形成された板状活性構造体を使用した水素発生装置について記載する。
(被処理物)
本発明において被処理物として、水、水性媒体、過酸化水素水、炭化水素等の水素を有する液体化合物が使用される。水性媒体とは、水に溶解または混和可能な成分、例えば塩化ナトリウム等の電解質、低級アルコール等の極性溶剤、ショ糖等の糖分、その他種々の成分を含む水溶液、乳液、懸濁液等を含むことを意味するものである。また、炭化水素とは、本発明による活性構造体を構成する粒子間を通過させた際に、C−H結合、C−OH結合等の結合から水素を遊離させるものであれば特に制限されるものではなく、例えばメタノール、エタノール等の脂肪族アルコール、ガソリン、石油エーテル等の炭化水素の混合物等まで幅広い範囲を包含する。
(予備処理:不純物の除去・加熱等)
このような被処理物の液体は、目的に応じて適宜選択されるものである。また、例えば被処理物である液体中に前記(本発明の)活性構造体におけるエネルギ集中の場に対して目詰まりを生じさせるような不純物が存在する場合(例えば海水を使用する場合には海水中に存在する砂、微粒子等の不純物)を凝集・沈殿あるいはろ過等により予め除去してから前記(本発明の)活性構造体に通過させるのが好ましい。また、所望に応じて、液体を加熱手段により加熱してから前記(本発明の)活性構造体に通過させてもよい。
このようにして、前記(本発明の)活性構造体におけるエネルギ集中の場(粒子間)に水または炭化水素を介在させることによって、O−H結合またはC−H結合等の結合エネルギより高いエネルギを付与し、水素(H)を遊離させることが可能である。このようにして遊離した水素は、水素分子(H2)として、従来公知の方法により容易に回収することが可能である。
(装置例:板状活性構造体の例:液体処理例)
この実施の形態は、例えば第3図に記載されたような板状に成形された板状活性構造体を水素発生装置に使用する例を説明するものである。以下、本実施の形態を第7図から第13図に基づいて説明する。
第7図から第13図に示す前記(本発明の)活性構造体を充填した水素発生装置は、各々板状活性構造体を用いて流体を活性化する装置であって、予備的に加熱手段が施されている。
第7図から第13図に示すように、本発明の水素発生装置は、板状活性構造体1が設けられた被処理物を処理するための被処理物槽2から主として構成されている。
第7図に示す水素発生装置は、被処理物である液体を本発明の板状活性構造体により処理する基本的構造の活性装置であって、第7図(a)に示す水素発生装置1は、板状活性構造体を被処理物槽2内に垂直に配置した本発明の一実施の形態を示し、第7図(b)に示す水素発生装置は、板状活性構造体を被処理物槽2を上下方向に仕切るように設けた本発明の別の実施の形態を示す。第7図(a)および第7図(b)に示す水素発生装置は、主として被処理物を活性化する際に気体の発生を伴うことを想定した装置である。
第7図(a)に示す水素発生装置1は、板状活性構造体の断面長さ方向に沿って前記活性構造体を配置し、前記被処理物を前記活性構造体のエネルギ集中の場に通過または滞留させることによって前記被処理物を活性化する水素発生装置1の一例を示し、一方、第7図(b)に示す水素発生装置は、板状活性構造体の断面長さ方向の内部を通過させる位置に前記活性構造体を配置し、前記被処理物を前記活性構造体のエネルギ集中の場に通過または滞留させることによって前記被処理物を活性化する装置である。
(垂直配置)
第7図(a)に示す水素発生装置1は、被処理物槽2内に本発明の板状活性構造体I(I型)を複数平行に配置した構成を有している。この被処理物槽2は、例えば流体を活性化して気体を放出する場合には、気体の出口3を有している。そして、例えば被処理物である液体として水を使用して、本発明の板状活性構造体Iにおけるエネルギ集中の場により水を活性化して水素を含む気体発生させる場合、まず、板状活性構造体Iにおけるエネルギ集中の場に浸入した水が活性化されて気体を発生する。発生した気体はエネルギ集中の場に留まるのではなく、気泡として上方に浮上する。この繰り返しにより第7図(a)において矢印で示すような被処理物の対流が発生する。そして、このようにして発生した液体の対流により、板状活性構造体Iにより液体が活性化された際に放出される気泡が板状活性構造体Iのエネルギ集中の場に長期間滞留するのではなく、素早く浮上できる構成としている。なお、発生した気体の成分を分析したところ水素、酸素および窒素であった。
このように板状活性構造体の断面長さ方向に沿って前記活性構造体を配置し、前記被処理物を前記活性構造体のエネルギ集中の場に通過または滞留させる構成とすることで、効率的に被処理物である液体を活性化することが可能となる。
(上下の仕切り)
一方、第7図(b)に示す水素発生装置1aは、板状活性構造体により被処理物槽2を上下方向に仕切った構成を有している。
板状活性構造体により被処理物槽2を上下方向を仕切るためには、一枚の板状活性構造体Iを被処理物層2の底面に対して平行に設け、被処理物槽2を仕切るのが最も簡単な構成であるが(図示せず)、好ましくは、板状活性構造体により被処理物槽2を上下方向に仕切るのと同時に、板状活性構造体を被処理物槽2に対して垂直方向へ配置する構成とするのが、前述の被処理物を対流させる観点から好ましい。
第7図(b)に示す水素発生装置1aは、このように板状活性構造体により被処理物槽2を上下方向に仕切るのと同時に、板状活性構造体を被処理物槽2に対して垂直方向へ配置する構成を有している。すなわち、S型の板状活性構造体SあるいはI型の板状活性構造体I、L型の板状活性構造体LおよびU型の活性構造体Uを組合せて、被処理物槽の水平面を板状活性構造体Sまたは活性構造体I、L、およびUで遮断している構成を有している(以下、このような水素発生装置1aにおける活性構造体を総称して活性構造体Sと称する)。
このようにして構成した第7図(b)に示す水素発生装置1aは、第7図(a)に示す水の活性化装置1と同様にして、例えば被処理物である液体として水を使用して、本発明の活性構造体Sにおけるエネルギ集中の場により水を活性化して水素を含む気体発生させる場合、まず、活性構造体Sにおけるエネルギ集中の場に浸入した水が活性化されて気体を発生する。発生した気体はエネルギ集中の場に留まるのではなく、気泡として上方に浮上する。この繰り返しにより第7図(b)において矢印で示すような被処理物の対流が発生する。
また、活性構造体Sが被処理物槽2の上下方向、すなわち水平面を区切っているので、被処理物の活性化によって発生した気泡は、必ず活性構造体Sを通過して浮上する構成となっている。このように構成することで、被処理物である液体は、活性構造体Sにおけるエネルギ集中の場に浸入する確率が増加し、これによって活性化速度(反応速度)が増加する。
(応用例1:活性構造体加熱)
以下、このような基本構成を有する水素発生装置の好ましい実施の形態を第8図から第13図を用いて説明する。なお、以下の応用例の説明において、第7図(a)に示す構成を有する水素発生装置1と第7図(b)に示す水素発生装置1aにおいて共通する説明については、主として第7図(a)に示す構成を有する水素発生装置1を説明し、第7図(b)に示す水素発生装置1aの説明は省略する。
第8図に示す水素発生装置1cは、被処理物を加熱することによって積極的に被処理物の対流を発生させる構成の水素発生装置である。この水素発生装置1cは、第7図(a)に示す前記板状活性構造体Iの断面長さ方向に沿って前記活性構造体を配置した水素発生装置1および第7図(b)に示す被処理物が活性構造体を通過することによって物質を活性化する水素発生装置1aの両方に対応可能である。すなわち、第7図(a)および(b)に示す水素発生装置が被処理物の活性化に伴う気体の発生によるいわゆる自然発生的に被処理物を対流させるのに対して、この装置は、板状活性構造体(および被処理物)を加熱することにより積極的に対流を発生する構成としている。
第8図に示す水素発生装置1cは、前記板状活性構造体Iを複数平行に配置し、前記板状活性構造体I間に加熱手段4である発熱体を各々間隔を設けて配置した被処理物槽2から構成されている。なお、この際の板状活性構造体Iと加熱手段4である発熱体との本数は特に制限されるものではなく、被処理物の種類、被処理物槽2の容積等に応じて適宜選択されるものである。
このように構成すると、加熱手段4である発熱体の放射熱が発熱体の近傍にある流体である被処理物に伝播して、被処理物の対流が生じる。そして、このようにして被処理物の対流が生じると、板状活性構造体Iにおけるエネルギ集中の場(図示せず)に被処理物が通過する確率が増加され、そして被処理物の活性化が促進される。
このような加熱手段による板状活性構造体Iの加熱例を第14図および第15図に示す。
すなわち、第14図は、本発明の板状活性構造体を直接加熱する方法の一例を示す斜視図であり、第15図は、本発明の板状活性構造体を直接加熱する方法の別の例を示す斜視図である。
第14図に示す通り、板状活性構造体Iを加熱する加熱手段4は、板状活性構造体Iに異種導電性金属めっき加工を施し、この板状活性構造体Iに導線を介して電源PSにより電圧を印加することにより板状活性構造体Iを加熱する構成となっている。この際の、異種導電性金属めっきの膜厚は、活性構造体の作用を阻害しない範囲で適宜選択されるが、例えば3〜5μmの範囲である。特に、発熱に有効なのは部分的にメッキする方法である。
なお、例えば、第8図に示す5枚の板状活性構造体Iの全てに第14図に示す加熱手段4を施してもよく、あるいは一部、例えば1枚おきに加熱手段を構成してもよい。また、複数枚の板状活性構造体Iに第14図に示す加熱手段4を施す場合、全ての板状活性構造体Iを並列または直列式に導線により接続して、1つの電源から電圧を印加してもよく、あるいは各々別々の電源と接続されていてもよい。
このように構成すると、電源からの電圧を制御することによって、板状活性構造体Iの発熱量を自由に制御可能である。このように発熱量を自由に変化させることによって、被処理物の対流を制御することが可能となるので、物質の活性化速度を調整することが可能となる。また物質の活性化速度の制御は、自然発生的に対流が生じる第7図に示す水素発生装置と比較して容易である。
第15図に示す加熱手段4は、板状活性構造体Iと板状活性構造体Iとの間に発熱体HEを設けた構成となっている。
この発熱体HEは、被処理物を効率的に板状活性構造体Iにおけるエネルギ集中の場へ通過させるために、多孔質であることが必須である。このような多孔質発熱体HEは、各種セラミック発熱体として公知のものから選択することができる。
このように、発熱体の発熱量を制御することによって、被処理物の対流を制御することが可能となるので、物質の活性化速度を調整することが可能となる。また物質の活性化速度の制御は、自然発生的に対流が生じる第7図に示す水素発生装置と比較して容易である。
なお、第14図および第15図に示した加熱手段4は、第7図(b)に示す水素発生装置1aにおける板状活性構造体の、垂直方向の板状活性構造体に同様な構成を施すことによって、同様な効果を得ることが可能となる。
(応用例2:活性構造体間接加熱)
第9図に示す水素発生装置は、本発明の板状活性構造体I(S)を配置した被処理物槽2および前記被処理物槽2中の被処理物を外部から加熱する加熱手段4から構成されている。
第9図(a)に示す水素発生装置1dは、加熱手段4を被処理物槽2に接触させて配置した構成の一例である。例えば、図示した構成以外にも、被処理物槽2の側面に加熱手段を設けてもよく、あるいは加熱手段、例えば熱媒チューブを被処理物槽2の全面を覆う形式で設けても良い。また、第9図(b)に示す活性化装置1eは、加熱手段4である外部加熱器を被処理物槽2と一体成形して設けた構成を有している。この構成は、例えばガス釜により浴槽内の水を加熱する方式と同様な形式である。
板状活性構造体Iを直接加熱する第8図に示す水素発生装置1cとは異なり、第9図に示す水素発生装置1d、1eは、被処理物を加熱することによって間接的に板状活性構造体Iを加熱する方式である。このように構成することによって、第8図に示す水素発生装置1cと同様に、被処理物槽2内で被処理物の対流が生じる。そして、このようにして被処理物の対流が生じると、本発明の板状活性構造体Iにおけるエネルギ集中の場(図示せず)に被処理物が通過する確率が増加され、そして被処理物の活性化が促進される。
なお、発熱体の発熱量を制御することによって、被処理物の対流を制御することが可能となるので、第8図に示す例と同様にして物質の活性化速度をより容易に調整することが可能となる。
(応用例3:活性構造体上下方向移動)
第10図に示す、水素発生装置1fは、被処理物を活性化する水素発生装置であって、板状活性構造体I(S)と被処理物槽2内で水または水性媒体の液面相対的な高さ位置関係を変化させる構成の水素発生装置である。このように板状活性構造体I(S)と水または水性媒体の液面の相対的な高さ位置関係を変化させることによって板状活性構造体Iと被処理物である液体との接触面積を変化させる。すなわち反応容積を変化させることで活性速度を調整する。
この型の装置は、大別して2種類の構成をとることが可能である。すなわち、第10図(a)は、外部タンク5を被処理物槽2と一体成形し、外部タンク5により被処理物の液面を変化させる方式の水素発生装置1fである。第10図(a)に示す水素発生装置1fにおいて、外部タンク5は図示しない液量調節手段(液量調節バルブ等)により被処理物槽2内の液量(容積)を変化させる。このようにして、液量が変化すると板状活性構造体Iと被処理物である液体との接触面積が変化する。換言すると、板状活性構造体Iの被処理物中への浸漬量が変化する。このように板状活性構造体Iにおける図示しないエネルギ集中の場へ浸入する被処理物である液体の絶対量が変化することとなる。
第10図(b)に示す水素発生装置1gは、第10図(a)における外部タンク5の代わりに各板状活性構造体Iに接続された垂直方向移動手段5’により板状活性構造体Iを垂直方向(高さ方向)に移動させるように構成されている。
被処理物である液体の容積を変化させる構成を有する第10図(a)に示す水素発生装置1fと異なり、第10図(b)に示す水素発生装置1gは、板状活性構造体Iを直接垂直方向に垂直方向移動手段5’により移動することによって、板状活性構造体Iと被処理物である液体との接触面積を変化させている。第10図(a)に示す水素発生装置1fと同様に、液体と板状活性構造体Iとの接触面積の変化により物質の反応量を制御とする構成を有している。
第10図(a)および第10図(b)に示すように、板状活性構造体Iと被処理物である液体との相対的接触面積が変化する構成とした場合には、板状活性構造体Iと被処理物である液体とを完全に離間させることによって、被処理物の活性化を停止することができるという利点を有する。
第11図から第12図(b)に示す水素発生装置1h〜1jは、被処理物である液体を循環させる循環手段を設けて、被処理物を強制的に循環させる水素発生装置である。
第11図に示す水素発生装置1hは、第7図に示す本発明の水素発生装置において、さらに被処理物槽2の側面に循環手段が設けられた構成を有している。
第11図に示す水素発生装置1hは、循環手段を、例えば循環式のポンプ7Pと、被処理物の入口7inと、被処理物の出口7outとから構成した例である。このように構成すると、矢印に示す通りに被処理物槽2の側面の下側に位置する入口7inから入った被処理物は、循環式のポンプ7Pにより圧送されて被処理物層2の側面の上側に位置する出口7outから所定の流速で排出される。
このようにして循環手段により起こされた被処理物の流れにより、強制的な被処理物の対流が生じる。この対流の度合いは、循環式のポンプ7Pによる圧送速度により調整できるので、被処理物の物質の活性化速度は、所望に応じて調整することが可能となる。
第12図(a)および第12図(b)に示す水素発生装置は、被処理物槽2の底部に循環手段の本体であるポンプ7Pが設けられた構成を有している。そして、第12図(a)に示す水素発生装置1iにおいては、被処理物槽2の底部に被処理物の出口7outが設けられており、また第12図(b)に示す水素発生装置1jにおいては、被処理物槽2の上方の側部に被処理物の排出口である出口7outが設けられている。
第12図(a)に示す水素発生装置1iにおいて、ポンプ7Pを被処理物槽2の底部の中心に配置し、そしてポンプ7Pの周辺に複数の被処理物の出口7outを設けている。このように構成するとポンプ7Pにより圧送された被処理物である流体が被処理物槽2内で均一に拡散される。
第12図(b)に示す水素発生装置1jにおいて、ポンプ7Pを被処理物槽2の低部の中心に配置し、そして被処理物槽2の側部の所定箇所、すなわち被処理物の界面より高い任意の箇所に少なくとも1個の被処理物の出口7outを有している。そして、ポンプ7Pから圧送された被処理物の流体は、所定の流速で上方に送られて被処理物の界面の上方に設けられた出口7outからオーバーフローして流出する構成となっている。このように構成すると、第12図(a)に示す水素発生装置1iと同様に、第12図(b)に示す水素発生装置1jもポンプ7Pにより圧送された被処理物である流体が被処理物槽2内で均一に拡散される。
このように、第12図(a)および第12図(b)に示す、被処理物槽2の底面に循環手段であるポンプ7Pを有する水素発生装置1i、1jは、ポンプ7Pにより被処理物の流量を調整することにより被処理物の活性化速度を高めるだけでなく被処理物の活性化速度を調整することが可能である。
なお、第12図(a)および第12図(b)に示す、被処理物槽2の底面に循環手段であるポンプ7Pを有する水素発生装置1i、1jは、第7図(b)に示す基本構成を有する水素発生装置1a、すなわち被処理物が活性構造体Sの内部を横切って活性化させる構成を有する水素発生装置に適用するのが特に好ましい。
第13図に示す、水素発生装置1kは、第7図に示す物質の活性装置1において、板状活性構造体I(板状活性構造体S)の垂直方向に平行に発振体8を設けた構成を有している。
発振体8を設けて、この発振体8より所定の振動を板状活性構造体Iに印加することによって、板状活性構造体Iの近傍および板状活性構造体Iの内部に存在する物質を効率よく板状活性構造体におけるエネルギ集中の場に導くことが可能となり、被処理物の活性化が効率よく行うことが可能となる。特に、板状活性構造体Iの内部に滞留する被処理物および殊に処理によって発生した気泡を放出することが可能となる。
以上、第7図から第13図を用いて、主として被処理物が液体である水素発生装置を説明したが、これらの技術を組合せることも本発明の範囲内である。すなわち、例えば第7図に示す基本構成を有する水素発生装置に、加熱手段4と循環手段7の両方を有する構成とすることも可能である。
また、第5図および第6図に示す粒状の活性構造体や所定形状を有する活性構造物を流動床として被処理物槽2の低部または上部に設けることも可能である。
(水素分離)
このようにして第7図から第13図に記載の水素発生装置により発生した水素を含む気体は、使用した被処理物に応じて水素以外に、主として酸素、窒素等の不純物ガスを含んでいる。従って、これらの不純物ガスを分離・除去する必要がある。以下に、第16図から第18図を用いて水素を含有する気体から水素を単離する方法を説明する。
第16図および第17図は、各々本発明の水素発生装置により発生した水素を含む気体から水素を単離する気体分離装置の一例を示す断面図であり、そして第18図は、気体分離装置を設けた水素の分離システムの一例を示す模式図である。
第16図に示す気体分離装置50は、第7図から第13図に示す本発明の水素発生装置で発生し、そして気体出口3からの気体を導入する導入口51と、導入した気体を水素とその他のガスとに分離する本体52と、前記本体52の上部に設けられ、単離された水素を回収するための水素出口53と、前記水素出口53の下方に設けられた水素以外の気体を排出するための排出口54とから構成されている。
所定の流速で導入口51から本体52に導入された気体は、図中矢印で示すような旋回流を発生する。ここで水素は、比重の軽い気体であるので、導入口51から導入された気体中の水素は本体52の上方から排出される。一方、水素以外の気体は、水素と比較して重いので、下方の排出口54から排出される。このようにして、本発明の水素分離装置で発生した気体から濃度の高い水素を回収することが可能となる。
第17図に示す気体分離装置60は、第16図に示す気体分離装置50の本体に遠心分離器61が設けられた構成を有している。遠心分離器61は、攪拌するためのファンFと、ファンFを駆動するためのモータMとから構成されている。
そしてファンFを所定速度で回転させることにより、水素と他の気体とを高速に分離することが可能である。
以上説明した気体分離装置の中で、気体分離装置50を第7図から第13図に示す本発明の水素発生装置1〜1kの下流に設けた、水素発生システム70の基本構成の一例を第18図に基づいて説明する。
第18図に示す通り、本発明の水素発生システム70は、被処理物中に存在するダスト等の不純物を除去するためのフィルタ71、被処理物を循環させるためのポンプP、被処理物から水素を含む気体を発生するための本発明の水素発生装置1(第7図から第13図参照)、前記水素発生装置1で活性化された被処理物(液体と気体を含む)を気体と液体とに分離するための気液分離器72、前記気液分離器72で分離された気体を水素と他の気体とに分離するための気体分離装置50とから概ね構成されている。そして、前記気液分離器72で分離された液体は配管73を介してフィルタ71に戻される。このように、本発明の水素発生システム70は、循環系を形成している。
まず、フィルタ71にて不純物が除去された水等の被処理物は配管を通りポンプPを介して水素発生装置1に導入される。
そして、水素発生装置1に導入された被処理物は配管を介して気液分離器72に送られる。気液分離器72により水素を含む気体と、被処理物である液体とに分離され、水素を含む気体は、気体分離装置50に送られる。そして、ここで気体は、前記の通り水素とそれ以外の気体に分離されて、水素が回収される。
一方、被処理物の液体は、再びフィルタ71に戻され循環再利用される。
(水素発生システム)
以上説明した水素発生システムの具体例を第19図に基づいて説明する。
なお、以下の記載においては被処理物として水を例として挙げたが、同様に水性媒体、炭化水素類等を通流しても同様な効果を奏するものである。
(1)最初に弁V1,V2,V3を開としてV1から水を供給し水の小循環ラインを形成する。水循環ポンプ11を起動し水を循環する。弁V4及び弁V5を開、弁V3を閉とする。
(2)ヒータ12、水素発生装置1、電解槽13、気液分離器14、弁V5、弁V2、水循環ポンプ11、弁V4から形成される大循環ラインに水を循環させる。
(3)ヒータ12のスイッチON。尚、ヒータ12で加熱するのは、被処理物である水の活性化をさらに促進するために行う。なお、ヒータ12の代わりに、例えば第9図に示す水素発生装置における加熱手段4を使用することも可能である。また、本発明に係る水素発生装置に水を通過すると、板状活性構造体I(S)における波動性エネルギ集中の場でエネルギーを付与され、水が活性化される。
(4)電解槽13のスイッチON。水を電解することによりガスを発生。
このとき水はヒータ12(加熱手段4)で加熱され、水素発生装置1によりさらに水分子が活性化される結果、電解槽13内の水の分解が促進され単位電力当たりの水素の発生量が向上する。
(5)電解槽13をから排出される気泡を含んだ液は、気液分離器14に導入され、電解槽13から発生する気泡を含んだ液から気泡のみを分離する。
(6)気液分離器14で分離された気泡は、水素透過膜を備えた膜分離離装置15により、水素を回収され、水素透過膜を透過できなかった酸素含有ガスはそのまま大気に放出される。
(7)一方、気液分離器14で気泡を分離された液は、再び水循環ポンプ11で系内を循環される。
(8)運転中に電解され消費された水の量は、弁V1から補給水として補給される。
尚、本発明に係る水素発生装置1の活性が高いときは電解槽13を省略することもでき、あるいは電解槽13の代わりに更に水素発生装置1を直列配置することも可能である。
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
この実施例は太陽光の入射がなく、かつ室内灯の直接当たらない場所にて行った。
純度98.0%の珪素を用いてガスアトマイズ法により第2図(a)に示す通りの直径5〜80μm(最大150μm)の真球状の粒子を製造し、このようにして構成した粒子(P1)100cm3を、容量300ccの三角フラスコ102内に積層して第20図に示すような本発明による活性構造体を含む水素発生装置を作製した。
なお、この水素発生装置100は、加熱台101に搭載された粒子Pが導入された三角フラスコ102と、気体と氷水で満たした水槽103中で気体を捕集する捕集瓶105とを導管106を介して気密に接続している。
なお、水槽103を氷水で満たしたのは、水槽103の中であらかじめ水蒸気を凝縮させておくことで、水槽から取り出した後の捕集瓶105の内気圧が室内圧よりも低くならないようにするためであり、水槽内の温度を10℃以下に保持した。
また、捕集瓶105内の気体は比重差により分離することが予備実験で確認されたので、ガスクロマトグラフィで分析する前に十分に攪拌するためにシリコン材から構成したチップ107を捕集瓶に予め入れておいた。
次いで、このようにして構成された活性構造体中に、精製水(92℃)を三角フラスコ102から容量164ccの捕集瓶105の先まで満たし、この温度で放置して捕集瓶105に発生した気体を捕集した。このようにして捕集した気体をガスクロマトグラフィにより分析したところ、水素ガス78容量%、酸素ガス5容量%およびその他ガス17容量%となった。
[実施例2]
精製水の温度を50℃および90℃に保つ以外は実施例1と同様にして実験を繰り返した。その結果、50℃におけるガス発生量は、28cc/時であり、90℃におけるガス発生量は、56cc/時であった。この実験により90℃において水の分解速度が50℃の場合に比較して加速されたことを見出した。
同様に捕集した気体をガスクロマトグラフィにより分析したところ、水素ガス78容量%、酸素ガス5容量%および窒素ガス17容量%となった。
[実施例3〜実施例10]
活性構造体の容積を75cm3とし、精製水の温度を90℃または99℃とし、そして活性構造体の粒径を表2に示す通りとした以外は実施例1を繰り返した。気体の発生量を表2に併記する。
表2の結果から、同一温度において本発明における活性構造体を構成する粒子の粒径が小さいほどガスの発生量が増加し、高い活性を示すことが分かった。また、同一の粒径の場合、温度が高い方がガスの発生量が増加し、高い活性を示すことが分かった。
また、繰り返し実験の結果、どのような理由かは明確でないが窒素ガスの発生かみられた。また、酸素ガスと窒素ガスとの容量比は、1:約3.4でありやや酸素過剰な空気が得られた。
[比較例1]
活性構造体を構成する粒子として第2図(b)に示す不規則な粒子を用いて作製した比較用活性構造体(PC)を使用した以外実施例1と同様な操作を行ったところガスの発生は観察されなかった。
[実施例11〜14]
実施例1と同様にして、Ti(活性構造体(P2))、Ni(活性構造体(P3))、Sm(活性構造体(P4))およびFC(活性構造体(P5))を用いて本発明の活性構造体(2)〜(5)を作製した。
[実施例15、比較例2および3](板状活性構造体)
実施例1で得られた活性構造体(P1)を静電気防止処理した後、表3に示す条件で焼結して本発明の板状活性構造体(T1)を作製した。
比較例1で得られた比較構造体(PC)を表3に示す条件で焼結して比較用構造体(TC2)を作製した(比較例2)。また、静電気防止処理を行わない以外実施例15と同様な方法で比較構造体(TC3)を作製した(比較例3)。
なお、比較用構造体TC2は、本発明の構造体T1と同様な範囲の空隙率を有しており、TC3は、空隙率60%以上である。
これらの板状活性構造体の物性を表3およびに示す。
第4図より明らかな通り、本発明の条件で製造された活性構造体T1は、粒子間にエネルギ集中の場を有するが、本発明の条件を逸脱した、すなわちエネルギ集中の場を有していない比較用構造体TC2およびTC3は、充分なエネルギ集中の場を有していないのが判る。
なお、比較用構造体TC1および3を使用した所、気体の発生は観察されなかった。
[実施例16] (その他の活性構造体)
実施例11〜14により得られた本発明の活性構造体(P2〜P5)を用いて、実施例15と同様な実験を行ったところ、水素の発生が観察された。
このことより、所定条件で製造されたチタン、ニッケル、サマリウムおよび弗化炭素粒子からなる活性構造体もSiを用いた構造体と同様の効果があることがわかる。
[実施例17および比較例5〜6]
第8図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例7と同様な実験を行った所、本発明の板状活性構造体T1は激しい気体の発生が観察されたが、比較用構造体TC2およびTC3は気体の発生は観察されなかった。
実施例17で捕集した気体をガスクロマトグラフィにより分析したところ、水素ガス78容量%、酸素ガス5容量%および窒素ガス17容量%となった。
[実施例18]
表4に示す液体を用いた以外は実施例15と同様な実験を行って、気体(水素)の発生を観察した。結果を表4に示す。なお、気体の発生状態を、目視評価し、良好に発生を**、発生を*、若干の発生を×で示した。
このことより、本発明の活性構造体は、水以外にも、電解質水(海水)、有機極性溶剤、有機非極性溶剤等の種々の非処理物質を活性化することが判る。
これに対して、比較用構造体TC2およびTC3では、いずれも非処理物質の活性化は観察されなかった。
[実施例19](暖めた場合との比較)
第9図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された(液温:92℃)。
[実施例20]
第10図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された。
[実施例21]
第11図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された。
[実施例22]
第12図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された。
[実施例23]
第13図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された。
[実施例24]
第14図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された。
以上、本発明を実施の形態および実施例を元に説明したが、本発明はこの構成に特に限定されるものではない。たとえば、粒子間のエネルギ集中の場を有する活性構造体で有れば活性構造体を構成する元素、化合物は特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に使用される活性構造体の配置の一例を示す図であり、第1図(a)は本発明に使用される活性構造体全体の一例を示す図であり、第1図(b)は、第1図(a)に示す本発明に使用される活性構造体の基本配置の一例を示す図であり、第1図(c)は本発明の好ましい活性構造体全体の別の例を示す斜視図であり、第1図(d)は、第1図(c)に示す本発明の活性構造体の基本配置の一例を示す斜視図である。
第2図(a)および第2図(b)は、各々本発明に使用される活性構造体を構成する粒子の形状および比較用の粒子の形状を示す電子顕微鏡写真である。
第3図は、本発明に使用される活性構造体の好ましい形態の一例を示す図面である。第3図(a)は、本発明に使用される活性構造体をI型の板状に成形する前の構成を示す斜視図であり、第3図(b)は、本発明に使用される活性構造体をL型の板状に成形した場合の斜視図を示し、第3図(c)は、本発明に使用される活性構造体をU型の板状に成形した場合の斜視図を示し、第3図(d)は、本発明に使用される活性構造体をS型の板状に成形した場合の斜視図を示した場合の斜視図を示す。
第4図(a)ないし第4図(c)は、各々第3図(a)における本発明に使用される板状に成形された活性構造体を構成する粒子の形状および比較用の粒子の形状を示す電子顕微鏡写真である。
第5図(a)から第5図(g)は、本発明に使用される活性構造体の別の形状の一例を示す斜視図である。
第6図(a)から第6図(f)は、各々第5図(a)から第5図(f)に示す活性構造体のコアを設けた場合の断面形状を示す断面図である。
第7図は、本発明の活性構造体を充填した水素発生装置の一例を示す断面図である(流動床式)。
第8図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第9図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第10図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第11図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第12図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第13図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第14図は、本発明に使用される板状活性構造体を直接加熱する方法の一例を示す斜視図である。
第15図は、本発明に使用される板状活性構造体を直接加熱する方法の別の例を示す斜視図である。
第16図は、本発明の水素発生装置により発生した水素を含む気体から水素を分離する気体分離装置の一例を示す断面図である。
第17図は、本発明の水素発生装置により発生した水素を含む気体から水素を分離する気体分離装置の一例を示す断面図である。
第18図は、本発明の水素発生システムの概略構成図である。
第19図は、本発明の水素発生システムのより具体的な概略構成図である。
第20図は、本発明の水素発生装置による効果を確認するために行った実験に使用した装置の構成図である。
本発明は、水素発生装置、水素発生システムおよびその用途に関する。より詳しく述べると、特定の元素から構成された粒子間にエネルギ集中の場を持たせ、このエネルギ集中の場に被処理物を通過または滞留させることによって、当該物質を活性化させて水素を含む気体を発生させる機能を有する活性構造体を用いた水素発生装置および水素発生システム並びにかかる水素発生システムを用いた各種用途に関する。
背景技術
近年、石油等の既存の資源の枯渇化や二酸化炭素の放出等の観点から、石油に代わる代替燃料として水素が注目されている。
従来、このようなエネルギ源として水素を製造するには水、メタノール等の電気分解が一般的であった。
例えば、水を電気分解する場合、下記式(1)の反応に従って水素を発生させる。
H2O → H2 +1/2O2 (1)
この場合に、水を電気分解して水素を得るためには標準状態で1.23Vの電位差が必要とされるが、水の有する高い電気抵抗のため、それ以上の電位差を水に与えなければ、水の電気分解を行うことは不可能である。そのため、水素を発生させるのに、アルカリ等の電解質を水に溶解させた水溶液の電気分解が行われているが、副産物として生成するアルカリ化合物を除去する必要があり、また分解率が低いという問題点もある。
水素を発生させる他の方法として、水の熱分解が考えられる。しかしながら、水を熱分解させて水素を得るためには4300℃程度の高温下で行う必要があり、さらに大きなエネルギが必要となり、実用的でない。
また、外部からのエネルギを加えることなしに水素を発生させる方法として、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属類を水に添加してこれらの金属と水とを化学反応させる方法が考えられるが、これらの金属は比較的高価であり、またこれらの化学反応が急激であるので、工業的に利用するのは困難である。
メタノール、ガソリン等の炭化水素では、水素と炭素との結合エネルギが比較的小さく、それらの電気分解に必要とされる電位差は少なくてすむが、反応時のCO、CO2等の副産物の生成を伴うため、そのままではクリーンなエネルギとして使用するのが困難であり、これらの副産物を除去する対策を講じる必要がある。
このように、水素をエネルギとして使用する試みは数多く行われている。例えば、燃料電池システム、燃料電池システムを搭載する車両(燃料電池自動車および燃料電池システムと内燃機関の両者を備えたハイブリッド自動車)、内燃機関、外燃機関、ハイブリッド燃料自動車、更には水素を動力源とするロケット等が挙げられる。ちなみに、燃料電池システムは、携帯機器用途としても注目されている。
このような目的に水素を使用する場合には、水素を発生するための水素の発生システムは小型化されることが望まれている。
従来、例えばメタノール、ガソリン等の炭化水素を出発原料として触媒の存在下に改質することにより水素を製造していた。しかしながら、このような改質反応を用いて水素を製造した場合、選択率が低いためにCO等の副産物を生成するので、これを除去するための対策を講じる必要があった。さらに、改質反応は高温下で進行するので多大なエネルギを必要としていた。
さらに、出発原料である炭化水素は限りある資源であり、リサイクル可能な資源を出発原料としたいという要望がある。
従って、より少ないエネルギで、好ましくは外部からエネルギを与えることなしにこのようなエネルギとして使用するための水素を発生する装置、当該水素発生装置を備えた水素発生システム、特に燃料電池システム、燃料電池システム搭載車両、更には水素を動力源とするロケット等に搭載するための省スペース化可能な水素発生装置および水素発生システムに対する強い要望がある。
さらに、水、海水等のリサイクル可能な資源からより少ないエネルギを付与することで充分な量の水素を発生することが可能な水素発生装置および水素発生システムに対する強い要望がある。
従って、本発明の課題は、より少ないエネルギで水素を発生することができ、かつ省スペース化を図ることが可能な水素発生装置、当該水素発生装置を備えた水素発生システムを提供することである。
本発明者は、前記の課題に鑑みて鋭意検討した結果、所定の金属元素から構成された粒子を所定の配列で配置させると、当該粒子間に高いエネルギが生じ、このエネルギを用いて、物質を活性化させることを見出して先に特許出願を行った(特願2001−021734)。
この出願によると、珪素、チタン、ニッケル、サマリウムから成る群から選択された単一成分の元素または弗化炭素から構成された粒子を、各元素または弗化炭素に固有の波動性エネルギを増幅させる位置に配置して、前記粒子間にエネルギ集中の場を持たせた活性構造体が、当該粒子間で高いエネルギ(による相互作用)を発生し、すなわち、エネルギ集中の場が生じ、当該エネルギ集中の場に各種物質を通過または滞留させることにより当該物質を活性化することが可能となることが記載されている。
発明の開示
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、板状に成形した前記活性構造体を所定位置に所定の容器内に配置したものが上記課題を解決することを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、被処理物を活性化するための水素排出口を有する被処理物容器と、前記被処理物容器内に粒子間にエネルギ集中の場を有する活性構造体とから構成された水素発生装置であって、前記被処理物容器内の被処理物が前記エネルギ集中の場に滞留または通過することによって水素を含む気体を発生させることを特徴とする水素発生装置に関するものである。
このように構成することによって、簡単な構成でかつ外部エネルギをほとんど使用せずに被処理物から水素を発生させることが可能な水素発生装置が提供される。
本発明はまた、前記活性構造体が、珪素、チタン、ニッケル、サマリウムから成る群から選択された単一成分の元素または弗化炭素から構成された粒子を、各元素または弗化炭素に固有の波動性エネルギを増幅させる位置に配置して、前記粒子間にエネルギ集中の場を持たせた活性構造体である水素発生装置に関するものである。
このように構成すると、被処理物が活性構造体の内部を通過して、すなわち活性構造体におけるエネルギ集中の場を通過するので、被処理物を効率よく活性化して水素を発生させることが可能である。
また、前記板状活性構造体は板状に成形されていることが好ましく、前記活性構造体は、前記被処理物容器内に対して気発生気体と流体が速やかに分離する構造、また発生気体により流体と触媒の接触が阻害されない位置に配置されていても良い。
さらに、前記活性構造体は、前記被処理物容器内に対して垂直方向に配置されていても良く、また、前記被処理物容器を上下方向に仕切るように設けられていても良い。
このようにすることにより、(板状)活性構造体の断面長さ方向に沿って被処理物の対流が生じる。このような対流により被処理物が(板状)活性構造体におけるエネルギ集中の場を通過する確率が増加する。従って、効率よく被処理物を活性化して水素を発生させることが可能となる。
なお、「前記被処理物容器に対して垂直方向に板状の活性構造体を設ける」とは、「板状構造体の形状」、「板状構造体の辺の方向」、板状構造体の「配置位置」に限定されないことを意味している。
すなわち、活性構造体(板状活性構造体)は、その面方向の形状が円形、楕円形であっても、正方形であっても、長方形であってもよい(好ましくは長方形である)。また、例えば長方形や楕円形等の長辺(長軸)や短辺(短軸)を有している形状の場合には、長辺(長軸)を被処理物容器に対して垂直に設けるのが好ましい。
また、板状活性構造体は、前記被処理物容器の底面や側面に接触して配置されてもよく、また保持手段により底面や側面に接触しないで配置されていてもよい。
本発明において使用される用語「活性化」は、被処理物である分子や原子にエネルギを付与することを包含している。したがって、本発明に使用される用語「活性化」は、分子や原子を励起させることを包含していることを意味する。
なお、「板状活性構造体が被処理物容器を上下方向に仕切るように配置する」とは、一枚の板状活性構造体により被処理物容器を上下方向に仕切ってもよくあるいは各々別の一枚の板状活性構造体により被処理物容器を上下方向に仕切ってもよいことを意味する。
また、「板状活性構造体を被処理物容器を上下方向に仕切るように配置する」構成と「前記被処理物容器に対して垂直方向に板状活性構造体を設ける」構成を組合せた構成を有しているのが好ましい。
このように構成すると、被処理物と板状活性構造体との接触面積、すなわち被処理物がエネルギ集中の場に浸入(通過・滞留)する確率が増加するとともに、活性構造体の断面長さ方向に沿って被処理物の対流が生じる。このような滞留により被処理物が板状活性構造体におけるエネルギ集中の場を通過する確率が増加する。従って、効率よく被処理物を活性化することが可能となる。
なお、このような構成を有する本発明の水素発生装置において、(板状)活性構造体、被処理物容器あるいは両者を加熱する加熱手段を設けることによって強制的に被処理物の対流を惹起させる構成とすることが好ましい。このように構成すると、被処理物の対流を調整することが可能となるので、被処理物の活性化速度を調整することが可能となる。
同様な効果の享受を目的として、前記(板状)活性構造体を振とうさせる振とう手段を設けた構成とすることも可能である。
また、このような構成を有する本発明の水素発生装置において、前記の加熱手段を設ける構成に代えて、あるいは加熱手段と組合せて被処理物を水素発生装置内で循環させる循環手段を設けることが好ましい。このように構成することによって、被処理物の対流を調整することが可能となるので、被処理物の活性化速度を調整することが可能となる。
さらに、このような構成を有する本発明の水素発生装置において、前記活性構造体と被処理物との上下方向の接触面積とを相対的に移動させる移動機構を設けることが好ましい。
このように構成することによって、被処理物と板状活性構造体との接触面積を自在に変化させることが可能となるので、被処理物の活性化、活性化の停止および活性化速度の停止を適宜調整することが可能となる。
なお、好ましい移動機構手段は、板状活性構造体を垂直方向に移動させる垂直方向移動手段および水素発生装置本体に設けられた循環ポンプ等の移動手段を備えた被処理物の予備槽である。
また、前記被処理物が水、水性媒体、炭化水素、またはこれらの混合物であることが好ましい。
特に被処理物として水または水性媒体を選択すると、本発明の活性構造体により活性化され、水素、酸素および窒素を含む混合気体が得られる。このようにして得られた混合気体を、適当な手段により水素を分離することによって、酸素と窒素との混合気体が得られる。従って、水または水性媒体を本発明の活性構造体により処理することによって、空気を製造することが可能となる。
本発明において使用される用語「炭化水素」とは、本発明の水素発生装置に使用される板状活性構造体を用いて水素を遊離することが可能な炭化水素であって、すなわち、水素を遊離可能なOH結合またはCH結合を有する飽和または不飽和脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール、脂肪族アルデヒド、脂肪族ケトン、ガソリン、石油エーテル等を包含するものである。
水素は、化石燃料をはじめとする各種既存のエネルギの代替エネルギとして非常に注目されている。本発明の水素発生装置を用いて、このような水または炭化水素から水素を遊離させることが可能となり、特に本発明においては、このように水または炭化水素から外部からエネルギを加えることなしに、かつ副産物の生成なしに選択的に水素を製造することが可能となる。
これらの水素発生装置は、水素発生システムに有効に利用できる。この水素発生装置は、メインの水素発生装置としても水素発生補助装置としても利用できる。
このような水素発生システムは、内燃機関、外燃機関、燃料電池システム、水素ロケット、車両の水素エンジンなどとして有効に利用することが可能である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
(活性構造体)
まず、本発明に使用される活性構造体の基本構成について第1図および第2図を用いて説明する。
(構成元素)
本発明に使用される活性構造体は、珪素、チタン、ニッケル及びサマリウムから成る群から選択された元素から構成される。これらの元素の選択は、後述する本発明者による繰り返しの実験結果から導き出したものであり、珪素、チタンおよびニッケルについては、原子の最外核軌道(M、N)公転電子数が偶数である金属元素であり、かつ酸素と反応しにくい元素であり、またサマリウムについては原子の最外核軌道(M、N)公転電子数が偶数(2)である希土類元素であり、かつ酸素と反応しにくい元素である。なお、ニッケルおよびサマリウムは強い磁性を有することを特徴としている。
本発明に使用される活性構造体において、これらの元素を単体で使用するがその際の純度は、使用する元素の種類および活性化しようとする物質の種類等によって適宜選択される。例えば、前記活性構造体として珪素を用いて水を活性化して水素と酸素を発生させる場合には、珪素の純度は約90%以上、好ましくは95%以上である。これらの純度は高ければ高いほど好ましい。また前記活性構造体を構成し得る他の元素、すなわち、チタン、ニッケル及びサマリウムも同様の純度であることが好ましい。また、前記活性構造体は、一般には、例えば珪素なら珪素を単独で構成されるが、このような各単体元素を組み合わせて前記活性構造体を構成してもよい。
前記活性構造体において、かかる元素を造粒して粒子として使用するが、所定の位置への配置の容易さ、造粒のしやすさ等の観点から、球状、特に真球状であるのが好ましく、その際に粒径は、5μm〜80μmとするのが好ましい。5μm以下の粒径を有する粒子を製造するのは比較的困難であるとともに、粒子を所定位置に配置した際に、後記するエネルギ集中の場である粒子間に物質を通過させるのが比較的困難となるからである。また粒径が80μmを超えた場合には、粒子を配置した際に、粒子間に十分なエネルギが発生しないからである。一般に粒径が150μmを超えると本発明による物質を活性化させるエネルギの発生が困難となる。
また、これらの粒子の粒度分布は、狭ければ狭いほど好ましい。具体的には、本発明者の繰り返しの予備実験の結果、粒径のバラツキが±15μm(すなわち、粒子径の大小の誤差が30μm)以内の際に顕著な効果が得られることが判った。
本発明における特定の元素をこのような形状に造粒する方法は、特に限定されるものではなく、触媒製造分野で一般に知られている造粒方法を適用することが可能である。製造の簡便さ、粒子形状を比較的均質にすることが可能であるという観点からガスアトマイズ法が好ましい。しかしながら、前記活性構造体は、上記した粒子を形成できれば特にガスアトマイズ法により成形した粒子に限定されるものではなく、例えばゾル−ゲル法等の従来公知の方法を好適に使用することができる。
また、例えばジェット粉砕法により前記球状粒子を製造することができる。ジェット粉砕法も、ガスアトマイズ法と同様に触媒粒子を製造する一般的方法であり、本発明における活性構造体における各粒子を製造するのにも適用可能である。
第1図に示す通り、本発明においてこのようにして、珪素、チタン、ニッケル及びサマリウムから成る群から選択された元素から構成された粒子Pを、波動性エネルギを増幅させる位置に配置する。
すなわち、前記活性構造体を構成するこれらの各元素は、例えばイオン化時には各々表1に示す通り、式:E=hν(式中、Eは各元素に固有のイオン化エネルギ(eV)であり、hはプランク定数であり、そしてνは周波数である)で表される固有の周波数を有しており、前記活性構造体を構成するこれらの元素は電気磁場的振動を発振している。そして、このような電気磁場的振動は、所定の揺らぎを有している。このことから、前記活性構造体を構成するこれらの元素は常態においても固有の振動を持つものと推測され、これらの各元素に固有の振動を効果的に与える位置に粒子Pを配置することによって、粒子間に形成された間隙Sを通過または滞留する物質に、振動エネルギを付与し、当該物質を活性化するものと推測される。
また、どのような理由で同様の作用・効果を示すかは明確ではないが、本発明者がさらに繰り返し実験を行ったところ、弗化炭素(FC)も前記金属元素を用いた場合と同様な作用効果を示すことを見出した。従って、前記活性構造体は、弗化炭素から構成された粒子も包含するものである。
本発明に使用する活性構造体は、このような推測に基づいて、繰り返しの実験により実証されたものであり、各粒子を実質的に均一なサイズ(同一の粒径を有する真球)とした場合に、例えば第1図(b)に示す通り三角形の頂点に配置すると高い活性を示すことを見出したものである。すなわち、本発明において物質が特定の元素から構成された粒子Pと粒子Pの間の空隙S(エネルギ集中の場)を通過または滞留する際に、前記活性構造体を構成する各元素の固有の振動・揺らぎ等により、当該物質に高いエネルギを付与する。
本発明に使用する活性構造体においては、このような位置に所定の元素から構成された粒子を配置する。なお、実際には各粒子は、完全に球体となるとは限らず、また各粒子の粒径も一定ではないので実際には正確に正三角形の各頂点に配置するのは困難である。本発明において使用される用語「正三角形の各頂点に配置する」とは、このような誤差範囲を含むことを意味し、例えば参考図である第2図(a)に示す通りに各粒子を配置することを意味する。なお、第2図(a)は、ガスアトマイズ法により製造した粒子Pを52ミクロンメッシュの篩にかけ、篩を通過した粒子を収集して(均一なサイズの粒子)、配置させたものである。
また、第1図(b)に示す通り、正三角形の頂点に粒子を配置させた場合、粒子Pと粒子Pの間の空隙Sに形成される三角形、すなわち、粒子の接線の交点から形成される三角形の各頂点は、90度以下であることが必要であり、好ましくは39〜70.5度であり、理想的には約60度である。
また、第1図(d)に示す通り、本発明に係る各粒子を正四面体の頂点に配置すると最も高い活性を示すことを見出した。すなわち、正四面体構造は、本発明において物質が特定の元素から構成された粒子Pと粒子Pの間の空隙S(エネルギ集中の場)を通過または滞留する際に、前記活性構造体を構成する各元素の固有の振動・揺らぎ等により、当該物質に高いエネルギを付与する正三角形構造を四面配置した構造となり、より一層高いエネルギ集中の場が構成される。正三角形構造と同様にして、本発明においては、このような位置に所定の元素から構成された粒子を配置する。なお、実際には各粒子は、完全に球体となるとは限らず、また各粒子の粒径も一定ではないので実際には正確に正四面体の各頂点に配置するのは困難である。したがって、本発明において使用される用語「正四面体の各頂点に配置する」とは、このような誤差範囲を含むことを意味し、例えば参考図である第2図(a)に示す通りに各粒子を配置することを意味する。なお、第2図(a)は、ガスアトマイズ法により製造した粒子Pを52ミクロンメッシュの篩にかけ、篩を通過した粒子を収集して(均一なサイズの粒子)、配置させたものである。
正三角形の頂点に各粒子を配置した形態と同様にして、正四面体を構成する各正三角形についても、粒子Pと粒子Pの間の空隙Sに形成される三角形、すなわち、粒子の接線の交点から形成される三角形の各頂点は、90度以下であることが必要であり、好ましくは39〜70.5度であり、理想的には約60度である。
また、本発明に使用する活性構造体における波動性エネルギを増幅させる位置とは、前記の正四面体の頂点の位置に限らず、物質が特定の元素から構成された粒子Pと粒子Pの間の空隙S(エネルギ集中の場)を通過または滞留する際に、各元素の固有の振動・揺らぎ等により、当該物質に高いエネルギを付与することが可能な位置であれば特に限定されるものでない。すなわち、例えば第2図(b)に示す通りの不規則な形状の粒子をランダムに配置すると、各元素に固有の振動が互いに打ち消し合って、各粒子間に存在する間隙に、高いエネルギの場が生じるのが困難となり、被処理物質の活性化が生じなくなる。第2図(b)に示す粒子は、ガスアトマイズ装置のチャンバ壁面に付着した原料物質を破砕した後、52ミクロンメッシュの篩にかけ、篩を通過した粒子を収集して、配置させたものである。
(板状活性構造体)
本発明は、このような基本構成を有する活性構造体を板状に成形した板状活性構造体を用いる。以下、本発明に使用する板状活性構造体(以下、単に「板状活性構造体」と言う)について、第3図および第4図を用いて説明する。
(板状活性構造体の構成)
板状活性構造体は、このような基本構成を有する活性構造体を板状に成形したものである。すなわち、上記した粒子を、圧縮成形、焼結成形等の種々の成形方法により成形して構成することができる。すなわち、第1図(a)に示す通り、前記の通り珪素、チタン、ニッケル、サマリウムから成る群から選択された単一成分の元素または弗化炭素から構成された粒子Pを各元素または弗化炭素に固有の波動性エネルギに増幅させる位置S、代表的には、正三角形の頂点、好ましくは正四面体の頂点に各粒子Pが配列するように配置する。そして、加熱下、例えば粒子の溶融温度以下の温度で加熱して、圧縮することによって、第3図(b)に示すような板状活性構造体を得ることができる。
また、後述する板状活性構造体から構成される水素発生装置の構成に応じて、第3図(b)に示すようなL型や、第3図(c)に示すようなU型や、第3図(d)に示すようなS型の板状活性構造体に形成することができる。なお、本発明で言う板状活性構造体とは、所定の厚み、幅および長さを持った活性構造体であれば特にその形状は、限定されるものではなく、また、用語“L型”、“U型”および“S型”とは、厳密に“L型”、“U型”および“S型”形状を有するものでなくともよい。例えば、“U型”の板状活性構造体は、曲線部のない垂直な3つの板状からなる形態であってもよい。
このような板状活性構造体は、第4図(a)に示す通り、粒子P間にエネルギ集中の場である空隙Sが多数形成されている(この空隙の好ましい形態は前述の粒状の活性構造体と同様であるので省略する)。すなわち、板状に成形しても珪素、チタン、ニッケルまたはサマリウム元素または弗化炭素から構成された粒子を本発明に規定する各元素または弗化炭素に固有の波動性エネルギに増幅させる位置に配置することによって、同様な物質の活性効果を示す。
これに対して、第4図(b)に示す通り前記粒子を本発明の規定する範囲外、すなわちランダムに配置すると、例え粒子間にある程度の空隙を有していても前記(本発明の)活性構造体の有する物質の活性効果を示すものではない。
なお、板状活性構造体は、使用する目的に応じて種々の寸法とすることができるが、効率よく被処理物を本発明で規定するエネルギ集中の場に導くため(滞留および通過)、その厚さは、350μm〜1500μm、好ましくは500μm〜1000μmであることが好ましい(すなわち、本発明の活性構造体を構成する粒子が5〜15層積層された状態であることが好ましい)。板厚が上記範囲より小さい場合には破損等の取扱いの点で注意を要することになり、逆に、板厚が上記範囲より大きい場合には、被処理物が充分に板状活性構造体におけるエネルギ集中の場に導けない場合がある。
また、板状活性構造体は、構造体全体として、嵩密度45〜60%の範囲であることが好ましく、特に約50%であることが好ましい。上記の範囲の嵩密度を有する板状活性構造体を使用すると、被処理物を比較的少ない流量(圧力)で板状活性構造体におけるエネルギ集中の場に導入して処理することが可能である。活性構造体の嵩密度が上記範囲よりも大きい場合には、被処理物を処理する際に、高い圧力が必要となり、板状活性構造体の破損や被処理物中の不純物によるエネルギ集中の場の目詰まりが生じることがある。逆に、板状活性構造体の嵩密度が上記範囲よりも小さい場合には被処理物が板状活性構造体のエネルギ集中の場で充分に滞留・通過する時間が取れず活性化しにくい場合がある。なお、最も好ましい板状活性構造体の嵩密度は約50%である。
(活性構造体の製造)
以下、本発明に使用される板状活性構造体および活性構造物の製造方法について記載する。
(粒子の製造:段階a)
本発明の好ましい実施の形態において、本発明の活性構造体は、前記した板状活性構造体以外に種々の形状の活性構造体とすることができる。以下、本発明の板状活性構造体について、第5図および第6図を用いて説明する。
本発明の活性構造体は、上記した板状活性構造体以外に、例えば図種々の形状に成形することができる。例えば、星型(コンペイ糖型)(第5図(a))、円盤状(第5図(b))、少なくとも1個の穴を有する板状(第5図(c))、球形(第5図(d))、回転楕円体(第5図(e))、ひょうたん型(第5図(f))またはハニカム状(第5図(g))等の形状に成形することが可能である。すなわち、例えば第5図(a)から第5図(g)に示すように、従来の触媒粒子と同様な形状、寸法に本発明の活性構造体(活性構造物)を成形することによって、従来の触媒粒子と同様な取扱いをすることが可能となる。また、従来の触媒を用いた反応装置を本発明の活性構造体を用いた物質の活性化装置に流用することも可能であるという効果も奏する。
また、第6図(a)から第6図(f)に示すように、例えば第5図(a)から第5図(f)に示す構造を有する本発明の活性構造体(活性構造物)は、斜線で示すように中心に本発明粒子と反応性が少ない材料あるいは比熱の高い金属から構成されたコア上に形成することができる。このように形成することによって、本発明の活性構造体を安価に製造したり、あるいは熱伝導率の高い金属を使用することで被処理物との熱交換を容易に行うことが可能となるという効果を奏する場合がある。
このように、コア上に本発明の活性構造体をコーティングする方法は、従来公知の方法、例えば転動流動法、噴霧乾燥法によって形成することができる。
(活性構造体の製造)
以下、本発明の活性構造体のうち、板状活性構造体および活性構造物の製造方法について記載する。
(粒子の製造:段階a)
まず、活性構造体の基本単位となる所定元素または弗化炭素から構成された粒子を形成する。この粒子の形成方法は、前述の通りである。
すなわち、例えばガスアトマイズ法やゾル−ゲル法等の触媒粒子の製造分野に公知の方法により、球状、特に真球状の粒子を形成する。
(帯電防止処理:段階b)
次いで、各粒子間の配置を容易に行う目的で、このようにして形成された粒子に帯電防止処理を行う。すなわち、形成された粒子は、粒子を配列する際に静電気により各粒子が付着あるいは反発して所望の位置に配置できない場合がある。
そのため、陰陽両イオンを粒子に施すことによって、帯電防止処理を行う。
(焼結処理:段階c)
このようにして帯電した所定の元素または弗化炭素から構成された粒子を第1図(a)に示すように配置し、そして所定形状に焼結成形を行う。この際の焼結条件は、使用する粒子を構成する元素または弗化水素の融点以下の温度でかつ焼結成形可能な温度(例えば珪素元素を使用する場合には1200〜1300℃)であり、焼結時間は2.5〜3.5h、焼結圧力は12〜25MPaである。(なお、弗化炭素の場合には直接焼結不能であるので、例えばCIP(コールド立体プレス)により作製する)。
このようにして焼結成形を行うと第1図(b)に示すような配列をもった第3図に示すような形状を有する板状活性構造体が得られる。また、板状以外の構造、すなわち第5図に示すような構造を有する本発明の活性構造体(活性構造物)を得ることも可能である。
本発明における板状活性構造体あるいは活性構造物の形成の際に、通常の焼結成形とは異なりバインダを使用しないで焼結成形することに特徴がある。すなわち、従来公知のバインダを用いて焼結処理を行うと、各粒子間の隙間S、すなわちエネルギの集中を均一に配置して板状活性構造体あるいは活性構造物を作製するのが困難である、粒子表面にバインダ由来の不純物が付着し、粒子の活性が失われる恐れがあるからである。もちろん、本発明に規定する粒子間を配置できかつ不純物の表面への付着を防止できればバインダを用いて焼結成形することも可能であり、本発明の製造方法はバインダの使用・不使用に限定されるものではない。バインダを用いる際の焼結温度は、バインダの分解点温度以上である。
以下、このようにして形成された板状活性構造体を使用した水素発生装置について記載する。
(被処理物)
本発明において被処理物として、水、水性媒体、過酸化水素水、炭化水素等の水素を有する液体化合物が使用される。水性媒体とは、水に溶解または混和可能な成分、例えば塩化ナトリウム等の電解質、低級アルコール等の極性溶剤、ショ糖等の糖分、その他種々の成分を含む水溶液、乳液、懸濁液等を含むことを意味するものである。また、炭化水素とは、本発明による活性構造体を構成する粒子間を通過させた際に、C−H結合、C−OH結合等の結合から水素を遊離させるものであれば特に制限されるものではなく、例えばメタノール、エタノール等の脂肪族アルコール、ガソリン、石油エーテル等の炭化水素の混合物等まで幅広い範囲を包含する。
(予備処理:不純物の除去・加熱等)
このような被処理物の液体は、目的に応じて適宜選択されるものである。また、例えば被処理物である液体中に前記(本発明の)活性構造体におけるエネルギ集中の場に対して目詰まりを生じさせるような不純物が存在する場合(例えば海水を使用する場合には海水中に存在する砂、微粒子等の不純物)を凝集・沈殿あるいはろ過等により予め除去してから前記(本発明の)活性構造体に通過させるのが好ましい。また、所望に応じて、液体を加熱手段により加熱してから前記(本発明の)活性構造体に通過させてもよい。
このようにして、前記(本発明の)活性構造体におけるエネルギ集中の場(粒子間)に水または炭化水素を介在させることによって、O−H結合またはC−H結合等の結合エネルギより高いエネルギを付与し、水素(H)を遊離させることが可能である。このようにして遊離した水素は、水素分子(H2)として、従来公知の方法により容易に回収することが可能である。
(装置例:板状活性構造体の例:液体処理例)
この実施の形態は、例えば第3図に記載されたような板状に成形された板状活性構造体を水素発生装置に使用する例を説明するものである。以下、本実施の形態を第7図から第13図に基づいて説明する。
第7図から第13図に示す前記(本発明の)活性構造体を充填した水素発生装置は、各々板状活性構造体を用いて流体を活性化する装置であって、予備的に加熱手段が施されている。
第7図から第13図に示すように、本発明の水素発生装置は、板状活性構造体1が設けられた被処理物を処理するための被処理物槽2から主として構成されている。
第7図に示す水素発生装置は、被処理物である液体を本発明の板状活性構造体により処理する基本的構造の活性装置であって、第7図(a)に示す水素発生装置1は、板状活性構造体を被処理物槽2内に垂直に配置した本発明の一実施の形態を示し、第7図(b)に示す水素発生装置は、板状活性構造体を被処理物槽2を上下方向に仕切るように設けた本発明の別の実施の形態を示す。第7図(a)および第7図(b)に示す水素発生装置は、主として被処理物を活性化する際に気体の発生を伴うことを想定した装置である。
第7図(a)に示す水素発生装置1は、板状活性構造体の断面長さ方向に沿って前記活性構造体を配置し、前記被処理物を前記活性構造体のエネルギ集中の場に通過または滞留させることによって前記被処理物を活性化する水素発生装置1の一例を示し、一方、第7図(b)に示す水素発生装置は、板状活性構造体の断面長さ方向の内部を通過させる位置に前記活性構造体を配置し、前記被処理物を前記活性構造体のエネルギ集中の場に通過または滞留させることによって前記被処理物を活性化する装置である。
(垂直配置)
第7図(a)に示す水素発生装置1は、被処理物槽2内に本発明の板状活性構造体I(I型)を複数平行に配置した構成を有している。この被処理物槽2は、例えば流体を活性化して気体を放出する場合には、気体の出口3を有している。そして、例えば被処理物である液体として水を使用して、本発明の板状活性構造体Iにおけるエネルギ集中の場により水を活性化して水素を含む気体発生させる場合、まず、板状活性構造体Iにおけるエネルギ集中の場に浸入した水が活性化されて気体を発生する。発生した気体はエネルギ集中の場に留まるのではなく、気泡として上方に浮上する。この繰り返しにより第7図(a)において矢印で示すような被処理物の対流が発生する。そして、このようにして発生した液体の対流により、板状活性構造体Iにより液体が活性化された際に放出される気泡が板状活性構造体Iのエネルギ集中の場に長期間滞留するのではなく、素早く浮上できる構成としている。なお、発生した気体の成分を分析したところ水素、酸素および窒素であった。
このように板状活性構造体の断面長さ方向に沿って前記活性構造体を配置し、前記被処理物を前記活性構造体のエネルギ集中の場に通過または滞留させる構成とすることで、効率的に被処理物である液体を活性化することが可能となる。
(上下の仕切り)
一方、第7図(b)に示す水素発生装置1aは、板状活性構造体により被処理物槽2を上下方向に仕切った構成を有している。
板状活性構造体により被処理物槽2を上下方向を仕切るためには、一枚の板状活性構造体Iを被処理物層2の底面に対して平行に設け、被処理物槽2を仕切るのが最も簡単な構成であるが(図示せず)、好ましくは、板状活性構造体により被処理物槽2を上下方向に仕切るのと同時に、板状活性構造体を被処理物槽2に対して垂直方向へ配置する構成とするのが、前述の被処理物を対流させる観点から好ましい。
第7図(b)に示す水素発生装置1aは、このように板状活性構造体により被処理物槽2を上下方向に仕切るのと同時に、板状活性構造体を被処理物槽2に対して垂直方向へ配置する構成を有している。すなわち、S型の板状活性構造体SあるいはI型の板状活性構造体I、L型の板状活性構造体LおよびU型の活性構造体Uを組合せて、被処理物槽の水平面を板状活性構造体Sまたは活性構造体I、L、およびUで遮断している構成を有している(以下、このような水素発生装置1aにおける活性構造体を総称して活性構造体Sと称する)。
このようにして構成した第7図(b)に示す水素発生装置1aは、第7図(a)に示す水の活性化装置1と同様にして、例えば被処理物である液体として水を使用して、本発明の活性構造体Sにおけるエネルギ集中の場により水を活性化して水素を含む気体発生させる場合、まず、活性構造体Sにおけるエネルギ集中の場に浸入した水が活性化されて気体を発生する。発生した気体はエネルギ集中の場に留まるのではなく、気泡として上方に浮上する。この繰り返しにより第7図(b)において矢印で示すような被処理物の対流が発生する。
また、活性構造体Sが被処理物槽2の上下方向、すなわち水平面を区切っているので、被処理物の活性化によって発生した気泡は、必ず活性構造体Sを通過して浮上する構成となっている。このように構成することで、被処理物である液体は、活性構造体Sにおけるエネルギ集中の場に浸入する確率が増加し、これによって活性化速度(反応速度)が増加する。
(応用例1:活性構造体加熱)
以下、このような基本構成を有する水素発生装置の好ましい実施の形態を第8図から第13図を用いて説明する。なお、以下の応用例の説明において、第7図(a)に示す構成を有する水素発生装置1と第7図(b)に示す水素発生装置1aにおいて共通する説明については、主として第7図(a)に示す構成を有する水素発生装置1を説明し、第7図(b)に示す水素発生装置1aの説明は省略する。
第8図に示す水素発生装置1cは、被処理物を加熱することによって積極的に被処理物の対流を発生させる構成の水素発生装置である。この水素発生装置1cは、第7図(a)に示す前記板状活性構造体Iの断面長さ方向に沿って前記活性構造体を配置した水素発生装置1および第7図(b)に示す被処理物が活性構造体を通過することによって物質を活性化する水素発生装置1aの両方に対応可能である。すなわち、第7図(a)および(b)に示す水素発生装置が被処理物の活性化に伴う気体の発生によるいわゆる自然発生的に被処理物を対流させるのに対して、この装置は、板状活性構造体(および被処理物)を加熱することにより積極的に対流を発生する構成としている。
第8図に示す水素発生装置1cは、前記板状活性構造体Iを複数平行に配置し、前記板状活性構造体I間に加熱手段4である発熱体を各々間隔を設けて配置した被処理物槽2から構成されている。なお、この際の板状活性構造体Iと加熱手段4である発熱体との本数は特に制限されるものではなく、被処理物の種類、被処理物槽2の容積等に応じて適宜選択されるものである。
このように構成すると、加熱手段4である発熱体の放射熱が発熱体の近傍にある流体である被処理物に伝播して、被処理物の対流が生じる。そして、このようにして被処理物の対流が生じると、板状活性構造体Iにおけるエネルギ集中の場(図示せず)に被処理物が通過する確率が増加され、そして被処理物の活性化が促進される。
このような加熱手段による板状活性構造体Iの加熱例を第14図および第15図に示す。
すなわち、第14図は、本発明の板状活性構造体を直接加熱する方法の一例を示す斜視図であり、第15図は、本発明の板状活性構造体を直接加熱する方法の別の例を示す斜視図である。
第14図に示す通り、板状活性構造体Iを加熱する加熱手段4は、板状活性構造体Iに異種導電性金属めっき加工を施し、この板状活性構造体Iに導線を介して電源PSにより電圧を印加することにより板状活性構造体Iを加熱する構成となっている。この際の、異種導電性金属めっきの膜厚は、活性構造体の作用を阻害しない範囲で適宜選択されるが、例えば3〜5μmの範囲である。特に、発熱に有効なのは部分的にメッキする方法である。
なお、例えば、第8図に示す5枚の板状活性構造体Iの全てに第14図に示す加熱手段4を施してもよく、あるいは一部、例えば1枚おきに加熱手段を構成してもよい。また、複数枚の板状活性構造体Iに第14図に示す加熱手段4を施す場合、全ての板状活性構造体Iを並列または直列式に導線により接続して、1つの電源から電圧を印加してもよく、あるいは各々別々の電源と接続されていてもよい。
このように構成すると、電源からの電圧を制御することによって、板状活性構造体Iの発熱量を自由に制御可能である。このように発熱量を自由に変化させることによって、被処理物の対流を制御することが可能となるので、物質の活性化速度を調整することが可能となる。また物質の活性化速度の制御は、自然発生的に対流が生じる第7図に示す水素発生装置と比較して容易である。
第15図に示す加熱手段4は、板状活性構造体Iと板状活性構造体Iとの間に発熱体HEを設けた構成となっている。
この発熱体HEは、被処理物を効率的に板状活性構造体Iにおけるエネルギ集中の場へ通過させるために、多孔質であることが必須である。このような多孔質発熱体HEは、各種セラミック発熱体として公知のものから選択することができる。
このように、発熱体の発熱量を制御することによって、被処理物の対流を制御することが可能となるので、物質の活性化速度を調整することが可能となる。また物質の活性化速度の制御は、自然発生的に対流が生じる第7図に示す水素発生装置と比較して容易である。
なお、第14図および第15図に示した加熱手段4は、第7図(b)に示す水素発生装置1aにおける板状活性構造体の、垂直方向の板状活性構造体に同様な構成を施すことによって、同様な効果を得ることが可能となる。
(応用例2:活性構造体間接加熱)
第9図に示す水素発生装置は、本発明の板状活性構造体I(S)を配置した被処理物槽2および前記被処理物槽2中の被処理物を外部から加熱する加熱手段4から構成されている。
第9図(a)に示す水素発生装置1dは、加熱手段4を被処理物槽2に接触させて配置した構成の一例である。例えば、図示した構成以外にも、被処理物槽2の側面に加熱手段を設けてもよく、あるいは加熱手段、例えば熱媒チューブを被処理物槽2の全面を覆う形式で設けても良い。また、第9図(b)に示す活性化装置1eは、加熱手段4である外部加熱器を被処理物槽2と一体成形して設けた構成を有している。この構成は、例えばガス釜により浴槽内の水を加熱する方式と同様な形式である。
板状活性構造体Iを直接加熱する第8図に示す水素発生装置1cとは異なり、第9図に示す水素発生装置1d、1eは、被処理物を加熱することによって間接的に板状活性構造体Iを加熱する方式である。このように構成することによって、第8図に示す水素発生装置1cと同様に、被処理物槽2内で被処理物の対流が生じる。そして、このようにして被処理物の対流が生じると、本発明の板状活性構造体Iにおけるエネルギ集中の場(図示せず)に被処理物が通過する確率が増加され、そして被処理物の活性化が促進される。
なお、発熱体の発熱量を制御することによって、被処理物の対流を制御することが可能となるので、第8図に示す例と同様にして物質の活性化速度をより容易に調整することが可能となる。
(応用例3:活性構造体上下方向移動)
第10図に示す、水素発生装置1fは、被処理物を活性化する水素発生装置であって、板状活性構造体I(S)と被処理物槽2内で水または水性媒体の液面相対的な高さ位置関係を変化させる構成の水素発生装置である。このように板状活性構造体I(S)と水または水性媒体の液面の相対的な高さ位置関係を変化させることによって板状活性構造体Iと被処理物である液体との接触面積を変化させる。すなわち反応容積を変化させることで活性速度を調整する。
この型の装置は、大別して2種類の構成をとることが可能である。すなわち、第10図(a)は、外部タンク5を被処理物槽2と一体成形し、外部タンク5により被処理物の液面を変化させる方式の水素発生装置1fである。第10図(a)に示す水素発生装置1fにおいて、外部タンク5は図示しない液量調節手段(液量調節バルブ等)により被処理物槽2内の液量(容積)を変化させる。このようにして、液量が変化すると板状活性構造体Iと被処理物である液体との接触面積が変化する。換言すると、板状活性構造体Iの被処理物中への浸漬量が変化する。このように板状活性構造体Iにおける図示しないエネルギ集中の場へ浸入する被処理物である液体の絶対量が変化することとなる。
第10図(b)に示す水素発生装置1gは、第10図(a)における外部タンク5の代わりに各板状活性構造体Iに接続された垂直方向移動手段5’により板状活性構造体Iを垂直方向(高さ方向)に移動させるように構成されている。
被処理物である液体の容積を変化させる構成を有する第10図(a)に示す水素発生装置1fと異なり、第10図(b)に示す水素発生装置1gは、板状活性構造体Iを直接垂直方向に垂直方向移動手段5’により移動することによって、板状活性構造体Iと被処理物である液体との接触面積を変化させている。第10図(a)に示す水素発生装置1fと同様に、液体と板状活性構造体Iとの接触面積の変化により物質の反応量を制御とする構成を有している。
第10図(a)および第10図(b)に示すように、板状活性構造体Iと被処理物である液体との相対的接触面積が変化する構成とした場合には、板状活性構造体Iと被処理物である液体とを完全に離間させることによって、被処理物の活性化を停止することができるという利点を有する。
第11図から第12図(b)に示す水素発生装置1h〜1jは、被処理物である液体を循環させる循環手段を設けて、被処理物を強制的に循環させる水素発生装置である。
第11図に示す水素発生装置1hは、第7図に示す本発明の水素発生装置において、さらに被処理物槽2の側面に循環手段が設けられた構成を有している。
第11図に示す水素発生装置1hは、循環手段を、例えば循環式のポンプ7Pと、被処理物の入口7inと、被処理物の出口7outとから構成した例である。このように構成すると、矢印に示す通りに被処理物槽2の側面の下側に位置する入口7inから入った被処理物は、循環式のポンプ7Pにより圧送されて被処理物層2の側面の上側に位置する出口7outから所定の流速で排出される。
このようにして循環手段により起こされた被処理物の流れにより、強制的な被処理物の対流が生じる。この対流の度合いは、循環式のポンプ7Pによる圧送速度により調整できるので、被処理物の物質の活性化速度は、所望に応じて調整することが可能となる。
第12図(a)および第12図(b)に示す水素発生装置は、被処理物槽2の底部に循環手段の本体であるポンプ7Pが設けられた構成を有している。そして、第12図(a)に示す水素発生装置1iにおいては、被処理物槽2の底部に被処理物の出口7outが設けられており、また第12図(b)に示す水素発生装置1jにおいては、被処理物槽2の上方の側部に被処理物の排出口である出口7outが設けられている。
第12図(a)に示す水素発生装置1iにおいて、ポンプ7Pを被処理物槽2の底部の中心に配置し、そしてポンプ7Pの周辺に複数の被処理物の出口7outを設けている。このように構成するとポンプ7Pにより圧送された被処理物である流体が被処理物槽2内で均一に拡散される。
第12図(b)に示す水素発生装置1jにおいて、ポンプ7Pを被処理物槽2の低部の中心に配置し、そして被処理物槽2の側部の所定箇所、すなわち被処理物の界面より高い任意の箇所に少なくとも1個の被処理物の出口7outを有している。そして、ポンプ7Pから圧送された被処理物の流体は、所定の流速で上方に送られて被処理物の界面の上方に設けられた出口7outからオーバーフローして流出する構成となっている。このように構成すると、第12図(a)に示す水素発生装置1iと同様に、第12図(b)に示す水素発生装置1jもポンプ7Pにより圧送された被処理物である流体が被処理物槽2内で均一に拡散される。
このように、第12図(a)および第12図(b)に示す、被処理物槽2の底面に循環手段であるポンプ7Pを有する水素発生装置1i、1jは、ポンプ7Pにより被処理物の流量を調整することにより被処理物の活性化速度を高めるだけでなく被処理物の活性化速度を調整することが可能である。
なお、第12図(a)および第12図(b)に示す、被処理物槽2の底面に循環手段であるポンプ7Pを有する水素発生装置1i、1jは、第7図(b)に示す基本構成を有する水素発生装置1a、すなわち被処理物が活性構造体Sの内部を横切って活性化させる構成を有する水素発生装置に適用するのが特に好ましい。
第13図に示す、水素発生装置1kは、第7図に示す物質の活性装置1において、板状活性構造体I(板状活性構造体S)の垂直方向に平行に発振体8を設けた構成を有している。
発振体8を設けて、この発振体8より所定の振動を板状活性構造体Iに印加することによって、板状活性構造体Iの近傍および板状活性構造体Iの内部に存在する物質を効率よく板状活性構造体におけるエネルギ集中の場に導くことが可能となり、被処理物の活性化が効率よく行うことが可能となる。特に、板状活性構造体Iの内部に滞留する被処理物および殊に処理によって発生した気泡を放出することが可能となる。
以上、第7図から第13図を用いて、主として被処理物が液体である水素発生装置を説明したが、これらの技術を組合せることも本発明の範囲内である。すなわち、例えば第7図に示す基本構成を有する水素発生装置に、加熱手段4と循環手段7の両方を有する構成とすることも可能である。
また、第5図および第6図に示す粒状の活性構造体や所定形状を有する活性構造物を流動床として被処理物槽2の低部または上部に設けることも可能である。
(水素分離)
このようにして第7図から第13図に記載の水素発生装置により発生した水素を含む気体は、使用した被処理物に応じて水素以外に、主として酸素、窒素等の不純物ガスを含んでいる。従って、これらの不純物ガスを分離・除去する必要がある。以下に、第16図から第18図を用いて水素を含有する気体から水素を単離する方法を説明する。
第16図および第17図は、各々本発明の水素発生装置により発生した水素を含む気体から水素を単離する気体分離装置の一例を示す断面図であり、そして第18図は、気体分離装置を設けた水素の分離システムの一例を示す模式図である。
第16図に示す気体分離装置50は、第7図から第13図に示す本発明の水素発生装置で発生し、そして気体出口3からの気体を導入する導入口51と、導入した気体を水素とその他のガスとに分離する本体52と、前記本体52の上部に設けられ、単離された水素を回収するための水素出口53と、前記水素出口53の下方に設けられた水素以外の気体を排出するための排出口54とから構成されている。
所定の流速で導入口51から本体52に導入された気体は、図中矢印で示すような旋回流を発生する。ここで水素は、比重の軽い気体であるので、導入口51から導入された気体中の水素は本体52の上方から排出される。一方、水素以外の気体は、水素と比較して重いので、下方の排出口54から排出される。このようにして、本発明の水素分離装置で発生した気体から濃度の高い水素を回収することが可能となる。
第17図に示す気体分離装置60は、第16図に示す気体分離装置50の本体に遠心分離器61が設けられた構成を有している。遠心分離器61は、攪拌するためのファンFと、ファンFを駆動するためのモータMとから構成されている。
そしてファンFを所定速度で回転させることにより、水素と他の気体とを高速に分離することが可能である。
以上説明した気体分離装置の中で、気体分離装置50を第7図から第13図に示す本発明の水素発生装置1〜1kの下流に設けた、水素発生システム70の基本構成の一例を第18図に基づいて説明する。
第18図に示す通り、本発明の水素発生システム70は、被処理物中に存在するダスト等の不純物を除去するためのフィルタ71、被処理物を循環させるためのポンプP、被処理物から水素を含む気体を発生するための本発明の水素発生装置1(第7図から第13図参照)、前記水素発生装置1で活性化された被処理物(液体と気体を含む)を気体と液体とに分離するための気液分離器72、前記気液分離器72で分離された気体を水素と他の気体とに分離するための気体分離装置50とから概ね構成されている。そして、前記気液分離器72で分離された液体は配管73を介してフィルタ71に戻される。このように、本発明の水素発生システム70は、循環系を形成している。
まず、フィルタ71にて不純物が除去された水等の被処理物は配管を通りポンプPを介して水素発生装置1に導入される。
そして、水素発生装置1に導入された被処理物は配管を介して気液分離器72に送られる。気液分離器72により水素を含む気体と、被処理物である液体とに分離され、水素を含む気体は、気体分離装置50に送られる。そして、ここで気体は、前記の通り水素とそれ以外の気体に分離されて、水素が回収される。
一方、被処理物の液体は、再びフィルタ71に戻され循環再利用される。
(水素発生システム)
以上説明した水素発生システムの具体例を第19図に基づいて説明する。
なお、以下の記載においては被処理物として水を例として挙げたが、同様に水性媒体、炭化水素類等を通流しても同様な効果を奏するものである。
(1)最初に弁V1,V2,V3を開としてV1から水を供給し水の小循環ラインを形成する。水循環ポンプ11を起動し水を循環する。弁V4及び弁V5を開、弁V3を閉とする。
(2)ヒータ12、水素発生装置1、電解槽13、気液分離器14、弁V5、弁V2、水循環ポンプ11、弁V4から形成される大循環ラインに水を循環させる。
(3)ヒータ12のスイッチON。尚、ヒータ12で加熱するのは、被処理物である水の活性化をさらに促進するために行う。なお、ヒータ12の代わりに、例えば第9図に示す水素発生装置における加熱手段4を使用することも可能である。また、本発明に係る水素発生装置に水を通過すると、板状活性構造体I(S)における波動性エネルギ集中の場でエネルギーを付与され、水が活性化される。
(4)電解槽13のスイッチON。水を電解することによりガスを発生。
このとき水はヒータ12(加熱手段4)で加熱され、水素発生装置1によりさらに水分子が活性化される結果、電解槽13内の水の分解が促進され単位電力当たりの水素の発生量が向上する。
(5)電解槽13をから排出される気泡を含んだ液は、気液分離器14に導入され、電解槽13から発生する気泡を含んだ液から気泡のみを分離する。
(6)気液分離器14で分離された気泡は、水素透過膜を備えた膜分離離装置15により、水素を回収され、水素透過膜を透過できなかった酸素含有ガスはそのまま大気に放出される。
(7)一方、気液分離器14で気泡を分離された液は、再び水循環ポンプ11で系内を循環される。
(8)運転中に電解され消費された水の量は、弁V1から補給水として補給される。
尚、本発明に係る水素発生装置1の活性が高いときは電解槽13を省略することもでき、あるいは電解槽13の代わりに更に水素発生装置1を直列配置することも可能である。
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
この実施例は太陽光の入射がなく、かつ室内灯の直接当たらない場所にて行った。
純度98.0%の珪素を用いてガスアトマイズ法により第2図(a)に示す通りの直径5〜80μm(最大150μm)の真球状の粒子を製造し、このようにして構成した粒子(P1)100cm3を、容量300ccの三角フラスコ102内に積層して第20図に示すような本発明による活性構造体を含む水素発生装置を作製した。
なお、この水素発生装置100は、加熱台101に搭載された粒子Pが導入された三角フラスコ102と、気体と氷水で満たした水槽103中で気体を捕集する捕集瓶105とを導管106を介して気密に接続している。
なお、水槽103を氷水で満たしたのは、水槽103の中であらかじめ水蒸気を凝縮させておくことで、水槽から取り出した後の捕集瓶105の内気圧が室内圧よりも低くならないようにするためであり、水槽内の温度を10℃以下に保持した。
また、捕集瓶105内の気体は比重差により分離することが予備実験で確認されたので、ガスクロマトグラフィで分析する前に十分に攪拌するためにシリコン材から構成したチップ107を捕集瓶に予め入れておいた。
次いで、このようにして構成された活性構造体中に、精製水(92℃)を三角フラスコ102から容量164ccの捕集瓶105の先まで満たし、この温度で放置して捕集瓶105に発生した気体を捕集した。このようにして捕集した気体をガスクロマトグラフィにより分析したところ、水素ガス78容量%、酸素ガス5容量%およびその他ガス17容量%となった。
[実施例2]
精製水の温度を50℃および90℃に保つ以外は実施例1と同様にして実験を繰り返した。その結果、50℃におけるガス発生量は、28cc/時であり、90℃におけるガス発生量は、56cc/時であった。この実験により90℃において水の分解速度が50℃の場合に比較して加速されたことを見出した。
同様に捕集した気体をガスクロマトグラフィにより分析したところ、水素ガス78容量%、酸素ガス5容量%および窒素ガス17容量%となった。
[実施例3〜実施例10]
活性構造体の容積を75cm3とし、精製水の温度を90℃または99℃とし、そして活性構造体の粒径を表2に示す通りとした以外は実施例1を繰り返した。気体の発生量を表2に併記する。
表2の結果から、同一温度において本発明における活性構造体を構成する粒子の粒径が小さいほどガスの発生量が増加し、高い活性を示すことが分かった。また、同一の粒径の場合、温度が高い方がガスの発生量が増加し、高い活性を示すことが分かった。
また、繰り返し実験の結果、どのような理由かは明確でないが窒素ガスの発生かみられた。また、酸素ガスと窒素ガスとの容量比は、1:約3.4でありやや酸素過剰な空気が得られた。
[比較例1]
活性構造体を構成する粒子として第2図(b)に示す不規則な粒子を用いて作製した比較用活性構造体(PC)を使用した以外実施例1と同様な操作を行ったところガスの発生は観察されなかった。
[実施例11〜14]
実施例1と同様にして、Ti(活性構造体(P2))、Ni(活性構造体(P3))、Sm(活性構造体(P4))およびFC(活性構造体(P5))を用いて本発明の活性構造体(2)〜(5)を作製した。
[実施例15、比較例2および3](板状活性構造体)
実施例1で得られた活性構造体(P1)を静電気防止処理した後、表3に示す条件で焼結して本発明の板状活性構造体(T1)を作製した。
比較例1で得られた比較構造体(PC)を表3に示す条件で焼結して比較用構造体(TC2)を作製した(比較例2)。また、静電気防止処理を行わない以外実施例15と同様な方法で比較構造体(TC3)を作製した(比較例3)。
なお、比較用構造体TC2は、本発明の構造体T1と同様な範囲の空隙率を有しており、TC3は、空隙率60%以上である。
これらの板状活性構造体の物性を表3およびに示す。
第4図より明らかな通り、本発明の条件で製造された活性構造体T1は、粒子間にエネルギ集中の場を有するが、本発明の条件を逸脱した、すなわちエネルギ集中の場を有していない比較用構造体TC2およびTC3は、充分なエネルギ集中の場を有していないのが判る。
なお、比較用構造体TC1および3を使用した所、気体の発生は観察されなかった。
[実施例16] (その他の活性構造体)
実施例11〜14により得られた本発明の活性構造体(P2〜P5)を用いて、実施例15と同様な実験を行ったところ、水素の発生が観察された。
このことより、所定条件で製造されたチタン、ニッケル、サマリウムおよび弗化炭素粒子からなる活性構造体もSiを用いた構造体と同様の効果があることがわかる。
[実施例17および比較例5〜6]
第8図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例7と同様な実験を行った所、本発明の板状活性構造体T1は激しい気体の発生が観察されたが、比較用構造体TC2およびTC3は気体の発生は観察されなかった。
実施例17で捕集した気体をガスクロマトグラフィにより分析したところ、水素ガス78容量%、酸素ガス5容量%および窒素ガス17容量%となった。
[実施例18]
表4に示す液体を用いた以外は実施例15と同様な実験を行って、気体(水素)の発生を観察した。結果を表4に示す。なお、気体の発生状態を、目視評価し、良好に発生を**、発生を*、若干の発生を×で示した。
このことより、本発明の活性構造体は、水以外にも、電解質水(海水)、有機極性溶剤、有機非極性溶剤等の種々の非処理物質を活性化することが判る。
これに対して、比較用構造体TC2およびTC3では、いずれも非処理物質の活性化は観察されなかった。
[実施例19](暖めた場合との比較)
第9図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された(液温:92℃)。
[実施例20]
第10図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された。
[実施例21]
第11図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された。
[実施例22]
第12図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された。
[実施例23]
第13図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された。
[実施例24]
第14図に示す装置を用いて、本発明の板状活性構造体T1、比較用構造体TC2およびTC3を用いて実施例15と同様な実験を行った所、第8図に示す装置よりも大量の気体の発生が観察された。
以上、本発明を実施の形態および実施例を元に説明したが、本発明はこの構成に特に限定されるものではない。たとえば、粒子間のエネルギ集中の場を有する活性構造体で有れば活性構造体を構成する元素、化合物は特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に使用される活性構造体の配置の一例を示す図であり、第1図(a)は本発明に使用される活性構造体全体の一例を示す図であり、第1図(b)は、第1図(a)に示す本発明に使用される活性構造体の基本配置の一例を示す図であり、第1図(c)は本発明の好ましい活性構造体全体の別の例を示す斜視図であり、第1図(d)は、第1図(c)に示す本発明の活性構造体の基本配置の一例を示す斜視図である。
第2図(a)および第2図(b)は、各々本発明に使用される活性構造体を構成する粒子の形状および比較用の粒子の形状を示す電子顕微鏡写真である。
第3図は、本発明に使用される活性構造体の好ましい形態の一例を示す図面である。第3図(a)は、本発明に使用される活性構造体をI型の板状に成形する前の構成を示す斜視図であり、第3図(b)は、本発明に使用される活性構造体をL型の板状に成形した場合の斜視図を示し、第3図(c)は、本発明に使用される活性構造体をU型の板状に成形した場合の斜視図を示し、第3図(d)は、本発明に使用される活性構造体をS型の板状に成形した場合の斜視図を示した場合の斜視図を示す。
第4図(a)ないし第4図(c)は、各々第3図(a)における本発明に使用される板状に成形された活性構造体を構成する粒子の形状および比較用の粒子の形状を示す電子顕微鏡写真である。
第5図(a)から第5図(g)は、本発明に使用される活性構造体の別の形状の一例を示す斜視図である。
第6図(a)から第6図(f)は、各々第5図(a)から第5図(f)に示す活性構造体のコアを設けた場合の断面形状を示す断面図である。
第7図は、本発明の活性構造体を充填した水素発生装置の一例を示す断面図である(流動床式)。
第8図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第9図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第10図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第11図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第12図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第13図は、本発明の活性構造体を用いた水素発生装置の別の一例を示す断面図である。
第14図は、本発明に使用される板状活性構造体を直接加熱する方法の一例を示す斜視図である。
第15図は、本発明に使用される板状活性構造体を直接加熱する方法の別の例を示す斜視図である。
第16図は、本発明の水素発生装置により発生した水素を含む気体から水素を分離する気体分離装置の一例を示す断面図である。
第17図は、本発明の水素発生装置により発生した水素を含む気体から水素を分離する気体分離装置の一例を示す断面図である。
第18図は、本発明の水素発生システムの概略構成図である。
第19図は、本発明の水素発生システムのより具体的な概略構成図である。
第20図は、本発明の水素発生装置による効果を確認するために行った実験に使用した装置の構成図である。
Claims (19)
- 被処理物を活性化するための水素排出口を有する被処理物容器と、前記被処理物容器内に粒子間にエネルギ集中の場を有する活性構造体とから構成された水素発生装置であって、
前記被処理物容器内の被処理物が前記エネルギ集中の場に滞留または通過することによって水素を含む気体を発生させることを特徴とする水素発生装置。 - 前記活性構造体が、珪素、チタン、ニッケル、サマリウムから成る群から選択された単一成分の元素または弗化炭素から構成された粒子を、各元素または弗化炭素に固有の波動性エネルギを増幅させる位置に配置して、前記粒子間にエネルギ集中の場を持たせた活性構造体であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の水素発生装置。
- 前記活性構造体は板状に成形されていることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の水素発生装置。
- 前記活性構造体は、前記被処理物容器内に対して、発生気体と流体が速やかに分離する構造、または発生気体により流体と触媒の接触が阻害されない位置に配置されていることを特徴とする請求の範囲第3項に記載の水素発生装置。
- 前記活性構造体は、前記被処理物容器内に対して垂直方向に配置されていることを特徴とする請求の範囲第3項に記載の水素発生装置。
- 前記活性構造体は、前記被処理物容器を上下方向に仕切るように設けられていることを特徴とする請求の範囲第3項に記載の水素発生装置。
- 前記被処理物容器を加熱する加熱手段を設けたことを特徴とする請求の範囲第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の物質の水素発生装置。
- 前記活性構造体を直接加熱する加熱手段を設けたことを特徴とする請求の範囲第1項ないし第7項のいずれか1項に記載の水素発生装置。
- 前記活性構造体を振とうさせる振とう手段を設けたことを特徴とする請求の範囲第1項ないし第8項のいずれか1項に記載の水素発生装置。
- 前記被処理物を前記被処理物内で循環させる循環機構を設けたことを特徴とする請求の範囲第1項ないし第9項のいずれか1項に記載の水素発生装置。
- 前記活性構造体と被処理物との上下方向の接触面積を相対的に移動させる移動機構を設けたことを特徴とする請求の範囲第1項ないし第10項に記載の水素発生装置。
- 前記被処理物が水、水性媒体、炭化水素またはこれらの混合物であることを特徴とする請求の範囲第1項ないし第11項のいずれか1項に記載の水素発生装置。
- 請求の範囲第1項ないし請求の範囲第12項のいずれか1項に記載の水素発生装置を含む水素発生システム。
- 請求の範囲第1項ないし請求の範囲第13項のいずれか1項に記載の水素発生装置を水素発生補助装置として含む水素発生システム。
- 請求の範囲第13項または第14項に記載の水素発生システムを搭載した燃料電池システム。
- 請求の範囲第13項または第14項に記載の水素発生システムを搭載した水素ロケット。
- 請求の範囲第15項に記載の燃料電池システムを搭載した車両。
- 請求の範囲第1項ないし請求の範囲第13項のいずれか1項に記載の水素発生装置で得られた水素を用いる内燃機関。
- 請求の範囲第1項ないし請求の範囲第13項のいずれか1項に記載の水素発生装置で得られた水素を用いる外燃機関。
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