JPWO2003004566A1 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ポリカーボネート系難燃性樹脂組成物に関する。
背景技術
ポリカーボネート系樹脂は、優れた耐衝撃性、耐熱性、電気的特性などにより、電気・電子部品、OA機器、家庭用品あるいは建築材料として広く用いられている。ポリカーボネート系樹脂は、ポリスチレン系樹脂などに比べると高い難燃性を有しているが、電気・電子部品、OA機器などの分野を中心に、高い難燃性を要求される分野があり、各種難燃剤の添加により、その改善が図られている。たとえば、有機ハロゲン系化合物や有機リン系化合物の添加が従来広く行なわれている。しかし、有機ハロゲン系化合物や有機リン系化合物の多くは毒性の面で問題があり、特に有機ハロゲン系化合物は、燃焼時に腐食性ガスを発生するという問題があった。このようなことから、近年、非ハロゲン・非リン系難燃剤による難燃化の要求が高まりつつある。
非ハロゲン・非リン系難燃剤としては、ポリオルガノシロキサン系化合物(シリコーンともいう)の利用が提案されている。たとえば、特開昭54−36365号公報には、モノオルガノポリシロキサンからなるシリコーン樹脂を非シリコーンポリマーに混錬することで難燃性樹脂がえられることが記載されている。
特公平3−48947号公報には、シリコーン樹脂と第IIA族金属塩の混合物が熱可塑性樹脂に難燃性を付与すると記載されている。
特開平8−113712号公報には、ポリオルガノシロキサン100重量部とシリカ充填剤10〜150重量部とを混合することによって調製したシリコーン樹脂を熱可塑性樹脂に分散させることで難燃性樹脂組成物をうる方法が記載されている。
特開平10−139964号公報には、重量平均分子量が1万以上27万以下の溶剤に可溶なシリコーン樹脂を芳香環を含有する非シリコーン樹脂に添加することで難燃性樹脂組成物がえられることが記載されている。
しかしながら、前記公報記載のシリコーン樹脂は、難燃性の付与がある程度認められるが、添加しすぎると樹脂組成物の耐衝撃性を悪化させ、難燃性および耐衝撃性のバランスがとれた難燃性樹脂組成物をうることが困難という課題がある。
特開2000−17029号公報には、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムにビニル系単量体をグラフト重合した複合ゴム系難燃剤を熱可塑性樹脂に配合することで難燃性樹脂組成物が得られることが記載されている。
特開2000−226420号公報には、芳香族基を有するポリオルガノシロキサンとビニル系重合体との複合粒子にビニル系単量体をグラフトしたポリオルガノシロキサン系難燃剤を熱可塑性樹脂に配合することで難燃性樹脂組成物が得られることが記載されている。
特開2000−264935号公報には、0.2μm以下のポリオルガノシロキサン粒子にビニル系単量体をグラフト重合したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を熱可塑性樹脂に配合することで難燃性樹脂組成物が得られることが記載されている。
前記特開2000−17029号公報、特開2000−226420号公報、特開2000−264935号公報に記載のいずれの難燃性樹脂組成物も、耐衝撃性は満足できるレベルであるが、難燃性が不十分であることから、難燃性−耐衝撃性バランスが悪いという課題を有している。
発明の開示
本発明の目的は、非ハロゲン・非リン系難燃剤を用いて、難燃性−耐衝撃性に優れたポリカーボネート系難燃性樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート系樹脂、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、フッ素系樹脂および酸化防止剤をそれぞれ特定量用いると耐衝撃性を低下させずに優れた難燃性を示す難燃性樹脂組成物がえられることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の構成である。
(1) (A)ポリカーボネート系樹脂100重量部、(B)ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)の存在下にビニル系単量体(b−2)を重合してえられるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体1〜20重量部、(C)フッ素系樹脂0.05〜1重量部および(D)酸化防止剤0.03〜2重量部からなる難燃性熱可塑性樹脂組成物。
(2) (B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が、平均粒子径0.008〜0.6μmのポリオルガノシロキサン粒子(b−1)40〜90%(重量%、以下同様)の存在下にビニル系単量体(b−2)60〜10%を重合してえられるものであって、かつ該ビニル単量体が、該ビニル系単量体の重合体の溶解度パラメーターが9.15〜10.15(cal/cm3)1/2である上記(1)に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
(3) ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)がラテックス状である上記(1)又は(2)に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
(4) ビニル系単量体(b−2)が芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびカルボキシル基含有ビニル系単量体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明の内容を詳細に説明する。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート系樹脂100部、(B)ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)の存在下にビニル系単量体(b−2)を重合して得られるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体1〜20部、(C)フッ素系樹脂0.05〜1部および(D)酸化防止剤0.03〜2部からなるものである。
本発明のポリカーボネート系樹脂(A)は、ポリカーボネートを50%以上、さらには70%以上含んだ混合樹脂組成物を含む
前記ポリカーボネート系樹脂(A)の好ましい具体例としては、経済的な面および難燃性−耐衝撃性バランスが良好な点から、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート混合樹脂およびポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート混合樹脂などのポリカーボネート/ポリエステル混合樹脂、ポリカーボネート/アクリロニトリル−スチレン共重合体混合樹脂、ポリカーボネート/ブタジエンゴム−スチレン共重合体(HIPS樹脂)混合樹脂、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(ABS樹脂)混合樹脂、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエンゴム−α−メチルスチレン共重合体混合樹脂、ポリカーボネート/スチレン−ブタジエンゴム−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド共重合体混合樹脂、ポリカーボネート/アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体(AAS樹脂)混合樹脂などを用いることができる。また、混合樹脂同士をさらに混合して使用してもよい。
これらの中で、ポリカーボネートまたはポリカーボネート/ポリエステル混合樹脂が好ましく、特にポリカーボネートが好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂およびポリカーボネートを含んだ混合樹脂に使用されるポリカーボネートの粘度平均分子量は、10000〜50000、さらには15000〜25000のものが成形加工性の点から好ましい。
前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(B)は、難燃剤として用いる成分であり、ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)の存在下にビニル系単量体(b−2)をグラフト重合したものである。
前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(B)に使用される前記ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)は、難燃性の発現の点から、光散乱法または電子顕微鏡観察から求められる平均粒子径が0.008〜0.6μm、さらには0.008〜0.2μm、さらには0.01〜0.15μm、とくには、0.01〜0.1μmであることが好ましい。該平均粒子径が0.008μm未満のものをうることは困難な傾向にあり、0.6μmを超える場合には、難燃性が悪くなる傾向にある。
該ポリオルガノシロキサン粒子の粒子径分布の変動係数(100×標準偏差/平均粒子径)(%)は、本発明の難燃剤を配合した樹脂組成物の成形体表面外観が良好という点で、好ましくは10〜70%、さらには好ましくは20〜60%、とくに好ましくは20〜50%に制御するのが望ましい。
なお、本発明における、ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)は、ポリオルガノシロキサンのみからなる粒子だけでなく、他の(共)重合体を5%以下を含んだ変性ポリオルガノシロキサンを含んだ概念である。即ち、ポリオルガノシロキサン粒子は、粒子中に、たとえば、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体などを5%以下含有してもよい。
前記ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)の具体例としては、ポリジメチルシロキサン粒子、ポリメチルフェニルシロキサン粒子、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体粒子などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)は、例えば、(1)オルガノシロキサン、(2)2官能シラン化合物、(3)オルガノシロキサンと2官能シラン化合物、(4)オルガノシロキサンとビニル系重合性基含有シラン化合物、(5)2官能シラン化合物とビニル系重合性基含有シラン化合物あるいは(6)オルガノシロキサン、2官能シラン化合物及びビニル系重合性基含有シラン化合物等を重合するあるいはこれらに更に3官能以上のシラン化合物を加えて重合することによりうることができる。
前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物はポリオルガノシロキサン鎖の主骨格を構成する成分であり、オルガノシロキサンの具体例としては、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)など、2官能シラン化合物の具体例としては、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどがあげられる。
これらの中では、経済性および難燃性が良好という点からD4またはD3〜D7の混合物もしくはD3〜D8の混合物を70〜100%、さらには80〜100%を含み、残りの成分としてはジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが0〜30%、さらには0〜20%を含むものが好ましく用いられる。
前記ビニル系重合性基含有シラン化合物は、前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、3官能以上のシラン化合物などと共重合し、共重合体の側鎖または末端にビニル系重合性基を導入するための成分であり、このビニル系重合性基は後述するビニル系単量体(b−2)から形成されるビニル系(共)重合体と化学結合する際のグラフト活性点として作用する。さらには、ラジカル重合開始剤によってグラフト活性点間をラジカル反応させて架橋結合を形成させることができ架橋剤としても使用できる成分でもある。このときのラジカル重合開始剤は後述のグラフト重合において使用されうるものと同じものが使用できる。なお、ラジカル反応によって架橋させた場合でも、一部はグラフト活性点として残るのでグラフトは可能である。
また、本発明においては、ビニル系重合性基を含有しないシラン化合物も用いることができる。後述するが、ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)にビニル重合性基が存在しない場合、特定のラジカル開始剤、例えばt−ブチルパーオキシラウレートなどを用いれば、ケイ素原子に結合したメチル基などの有機基から水素を引く抜き、生成したラジカルによってビニル系単量体(b−2)が重合しグラフトが形成される。
前記シラン化合物の具体例としては、例えば、
一般式(I):
(式中、R1は水素原子、メチル基、R2は炭素数1〜6の1価の炭化水素基、Xは炭素数1〜6のアルコキシ基、aは0、1または2、pは1〜6の数を示す)で表わされるシラン化合物、
一般式(II):
(式中、R2、X、a、pは一般式(I)と同じ)で表わされるシラン化合物、一般式(III):
(式中、R2、X、aは一般式(I)と同じ)で表わされるシラン化合物、
一般式(IV):
(式中、R2、X、aは一般式(I)と同じ、R3は炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す)で表わされるシラン化合物、
一般式(V):
(式中、R2、X、aは一般式(I)と同じ、R4は炭素数1〜18の2価の炭化水素基を示す)で表わされるシラン化合物などがあげられる。
一般式(I)〜(V)のR2の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基などがあげられ、また、Xの具体例としては、たとえばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基などがあげられる。また、一般式(IV)のR3の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などがあげられ、一般式(V)のR4の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などがあげられる。
一般式(I)で表わされるシラン化合物の具体例としては、例えばβ−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジプロポキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどが、一般式(II)で表わされるシラン化合物の具体例としては、例えばp−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリエトキシシラン、p−ビニルフェニルジエトキシメチルシランなどが、一般式(III)で表わされるシラン化合物の具体例としては、たとえばビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが、一般式(IV)で表わされるシラン化合物の具体例としては、アリルメチルジメトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどが、一般式(V)で表わされるシラン化合物の具体例としては、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどがあげられる。これらの中では一般式(I)、一般式(III)、一般式(V)で表わされるシラン化合物が経済性の点から好ましく用いられる。
なお、前記ビニル系重合性基含有シラン化合物がトリアルコキシシラン型である場合には、次に示す3官能以上のシラン化合物の役割も有する。
前記3官能以上のシラン化合物は、前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物などと共重合することによりポリオルガノシロキサンに架橋構造を導入してゴム弾性を付与するための成分、即ちポリオルガノシロキサンの架橋剤として用いられる。
具体例としては、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランなどの4官能、3官能のアルコキシシラン化合物などがあげられる。これらのなかではテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランが架橋効率の高さの点から好ましく用いられる。
前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物、および3官能以上のシラン化合物の重合時の使用割合は、通常、オルガノシロキサンおよび/または2官能シラン化合物(オルガノシロキサンと2官能シラン化合物との割合は、通常重量比で100/0〜0/100、さらには100/0〜70/30)50〜99.9%、さらには60〜99%、ビニル系重合性基含有シラン化合物0〜40%、さらには0.5〜30%、3官能以上のシラン化合物0〜50%、さらには0.5〜39%であるのが好ましい。なお、ビニル系重合性基含有シラン化合物、3官能以上のシラン化合物は同時に0%になることはなく、いずれかは0.1%以上使用するのが好ましい。
前記オルガノシロキサンおよび2官能シラン化合物の使用割合があまりにも少なすぎる場合には、配合して得られた樹脂組成物が脆くなる傾向がある。また、あまりにも多い場合は、ビニル系重合性基含有シラン化合物および3官能以上のシラン化合物の量が少なくなりすぎて、これらを使用する効果が発現されにくくなる傾向にある。また、前記ビニル系重合性基含有シラン化合物あるいは前記3官能以上のシラン化合物の割合があまりにも少ない場合には、難燃性の発現効果が低くなり、また、あまりにも多い場合には、配合して得られた樹脂組成物が脆くなる傾向がある。
前記ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)は、ラテックス状のものを用いることが製造面から好ましい。
前記ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)は、例えば、前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物等、必要に応じて使用される3官能以上のシラン化合物を加えてなるポリオルガノシロキサン形成成分を乳化重合することにより製造することが好ましい。
前記乳化重合は、例えば、前記ポリオルガノシロキサン形成成分および水を乳化剤の存在下で機械的剪断により水中に乳化分散して酸性状態にすることで行なうことができる。この場合、機械的剪断により数μm以上の乳化液滴を調製した場合、重合後にえられるポリオルガノシロキサン粒子の平均粒子径は使用する乳化剤の量により0.02〜0.6μmの範囲で制御することができる。また、えられる粒子径分布の変動係数(100×標準偏差/平均粒子径)(%)は20〜70%を得ることができる。
また、0.1μm以下で粒子径分布の狭いポリオルガノシロキサン粒子を製造する場合、多段階で重合することが好ましい。例えば前記ポリオルガノシロキサン形成成分、水および乳化剤を機械的剪断により乳化してえられた、数μm以上の乳化液滴からなるエマルジョンの1〜20%を先に酸性状態で乳化重合し、えられたポリオルガノシロキサン粒子をシードとしてその存在下で残りのエマルジョンを追加して重合する。
このようにしてえられたポリオルガノシロキサン粒子は、乳化剤の量により平均粒子径が0.02〜0.1μmで、かつ粒子径分布の変動係数が10〜60%に制御可能である。
さらに好ましい方法は、該多段重合において、ポリオルガノシロキサン粒子のシードの代わりに、後述するグラフト重合時に用いるビニル系単量体(例えばスチレン、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなど)を通常の乳化重合法により(共)重合してなるビニル系(共)重合体を用いて同様の多段重合を行なうと、えられるポリオルガノシロキサン(変性ポリオルガノシロキサン)粒子の平均粒子径は乳化剤量により0.008〜0.1μmでかつ粒子径分布の変動係数が10〜50%に制御できる。
なお、前記数μm以上の乳化液滴は、ホモミキサーなど高速撹拌機を使用することにより調製することができる。
前記乳化重合では、酸性状態下で乳化能を失わない乳化剤が用いられる。具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、(ジ)アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウムなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、(ジ)アルキルスルホコハク酸ナトリウムがエマルジョンの乳化安定性が比較的高いことから好ましい。さらに、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルスルホン酸はポリオルガノシロキサン形成成分の重合触媒としても作用するので特に好ましい。
酸性状態は、系に硫酸や塩酸などの無機酸やアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸を添加することでえられ、pHは生産設備を腐食させないことや適度な重合速度がえられるという点で1〜3に調整することが好ましく、さらに1.0〜2.5に調整することがより好ましい。
重合のための加熱は適度な重合速度がえられるという点で60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
なお、酸性状態下ではポリオルガノシロキサンの骨格を形成しているSi−O−Si結合は切断と生成の平衡状態にあり、この平衡は温度によって変化するので、ポリオルガノシロキサン鎖の安定化のために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液の添加により中和することが好ましい。さらには、該平衡は、低温になるほど生成側により、高分子量または高架橋度のものが生成しやすくなるので、高分子量または高架橋度のものをうるためには、ポリオルガノシロキサン形成成分の重合を60℃以上で行ったあと室温以下に冷却して5〜100時間程度保持してから中和することが好ましい。
かくして、えられるポリオルガノシロキサン粒子は、例えば、オルガノシロキサンあるいは2官能シラン化合物、更にこれらにビニル系重合性基含有シラン化合物を加えて重合し形成された場合、それらは通常ランダムに共重合してビニル系重合性基を有した重合体となる。また、3官能以上のシラン化合物を共重合した場合、架橋された網目構造を有したものとなる。さらに、後述するグラフト重合時に用いられるようなラジカル重合開始剤によってビニル系重合性基間をラジカル反応により架橋させた場合、ビニル系重合性基間が化学結合した架橋構造を有し、かつ一部未反応のビニル系重合性基が残存したものとなる。
該ポリオルガノシロキサン粒子のトルエン不溶分量、即ち、該粒子0.5gをトルエン80mlに室温で24時間浸漬した場合のトルエン不溶分量は、難燃効果の点から、95%以下、さらには90%以下がより好ましい。
前記プロセスでえられたポリオルガノシロキサン粒子にビニル系単量体(b−2)をグラフト重合させることにより、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体からなる熱可塑性樹脂用難燃剤がえられる。
前記難燃剤は、前記ポリオルガノシロキサン粒子にビニル系単量体(b−2)がグラフトした構造のものであり、そのグラフト率は5〜150%、さらには15〜120%のものが、難燃性−耐衝撃性のバランスが良好な点から好ましい。
前記ビニル系単量体(b−2)は、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体からなる難燃剤をうるために使用される成分であるが、さらには該難燃剤を熱可塑性樹脂に配合して難燃化を付与する場合に、難燃剤と熱可塑性樹脂との相溶性を確保して熱可塑性樹脂に難燃剤を均一に分散させるために使用される成分でもある。
このため、ビニル系単量体(b−2)としては、該ビニル系単量体の重合体の溶解度パラメーターが9.15〜10.15[(cal/cm3)1/2]であり、さらには9.17〜10.10[(cal/cm3)1/2]、とくには9.20〜10.05[(cal/cm3)1/2]であるように選ばれることが好ましい。溶解度パラメーターが前記範囲から外れると難燃性が低下する傾向にある。
なお、溶解度パラメーターは、John Wiley&Son社出版「ポリマーハンドブック」1999年、第4版、セクションVII第682〜685頁)に記載のグループ寄与法でSmallのグループパラメーターを用いて算出した値である。
例えば、ポリメタクリル酸メチル(繰返単位分子量100g/mol、密度1.19g/cm3として)9.25[(cal/cm3)1/2]、ポリアクリル酸ブチル(繰返単位分分子量128g/mol、密度1.06g/cm3として)8.97[(cal/cm3)1/2]、ポリメタクリル酸ブチル(繰返単位分子量142g/mol、密度1.06g/cm3として)9.47[(cal/cm3)1/2]、ポリスチレン(繰返単位分子量104、密度1.05g/cm3として)9.03[(cal/cm3)1/2]、ポリアクリロニトリル(繰返単位分子量53、密度1.18g/cm3として)12.71[(cal/cm3)1/2]である。
なお、各重合体の密度は、VCH社出版の「ウルマンズ エンサイクロペディア オブ インダストリアル ケミストリー(ULLMANN’S ENCYCLOPEDIA OF INDUSTRIAL CHEMISTRY)」1992年、第A21巻、第169頁記載の値を用いた。また、共重合体の溶解度パラメーターδcは、重量分率5%未満の場合は主成分の値を用い、重量分率5%以上の場合では重量分率で加成性が成立するとした。
即ち、m種類のビニル系単量体からなる共重合体を構成する個々のビニル系単量体の単独重合体の溶解度パラメーターδnとその重量分率Wnとから式(1)により算出できる。
例えば、スチレン75%とアクリロニトリル25%からなる共重合体の溶解度パラメーターは、ポリスチレンの溶解度パラメーター9.03[(cal/cm3)1/2]、とポリアクリロニトリルの溶解度パラメーター12.71[(cal/cm3)1/2]を用いて式(1)に代入して9.95[(cal/cm3)1/2]の値がえられる。
また、ビニル系単量体を2段階以上で、かつ各段階においてビニル系単量体の種類を変えて重合してえられるビニル系重合体の溶解度パラメーターδsは、最終的にえられたビニル系重合体の全重量で各段階でえられたビニル系重合体の重量を割った値、即ち重量分率で加成性が成立するとした。
即ち、q段階で重合し、各段階でえられた重合体の溶解度パラメータδiとその重量分率Wiとから式(2)により算出できる。
例えば、2段階で重合し、1段階目にスチレン75%とアクリロニトリル25%からなる共重合体が50部えられ、2段階目にメタクリル酸メチルの重合体が50部えられたとすると、この2段階の重合でえられた重合体の溶解度パラメーターは、スチレン75%とアクリロニトリル25%共重合体の溶解度パラメーター9.95[(cal/cm3)1/2]とポリメタクリル酸メチルの溶解度パラメーター9.25[(cal/cm3)1/2]を用いて式(2)に代入して9.60[(cal/cm3)1/2]の値がえられる。
ビニル系単量体(b−2)の使用量は、前記ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)40〜90%、さらには60〜80%、とくには65〜80%に対して合計量が100%になるように、60〜10%、さらには40〜20%、とくには35〜20%であることが好ましい。
前記ビニル系単量体(b−2)の使用量が多すぎる場合、少なすぎる場合、いずれも、難燃性が十分発現しなくなる傾向にある。
前記ビニル系単量体(b−2)としては、ビニル系重合性基含有の単量体であれば何れでもよいが、例えばスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、パラブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体などが好ましい。
これらは、前述したように重合体の溶解度パラメーターが前記記載の範囲に入る限り、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記グラフト重合は、通常のシード乳化重合が適用でき、ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)のラテックス中で前記ビニル系単量体(b−2)のラジカル重合を行なえばよい。また、ビニル系単量体(b−2)は、1段階で重合させてもよく2段階以上で重合させてもよい。
前記ラジカル重合としては、ラジカル重合開始剤を熱分解することにより反応を進行させる方法でも、また、還元剤を使用するレドックス系での反応など特に限定なく行なうことができる。
ラジカル重合開始剤の具体例としては、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、ラウロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、シクロヘキサンノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などがあげられる。このうち、反応性の高さから有機過酸化物または無機過酸化物が特に好ましい。
また、前記レドックス系で使用される還元剤としては硫酸第一鉄/グルコース/ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄/デキストロース/ピロリン酸ナトリウム、または硫酸第一鉄/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート/エチレンジアミン酢酸塩などの混合物などがあげられる。
前記ラジカル重合開始剤の使用量は、用いられるビニル系単量体(b−2)100部に対して、通常、0.005〜20部、さらには0.01〜10部であり、とくには0.03〜5部であるのが好ましい。前記ラジカル重合開始剤の量が0.005部未満の場合には反応速度が低く、生産効率が悪くなる傾向があり、20部をこえると反応中の発熱が大きくなり生産が難しくなる傾向がある。
また、ラジカル重合の際に要すれば連鎖移動剤も使用できる。該連鎖移動剤は通常の乳化重合で用いられているものであればよく、特に限定はされない。
前記連鎖移動剤の具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタンなどがあげられる。
連鎖移動剤は任意成分であるが、使用する場合の使用量は、ビニル系単量体(b−2)100部に対して0.01〜5部であることが好ましい。前記連鎖移動剤の量が0.01部未満の場合には用いた効果がえられず、5部をこえると重合速度が遅くなり生産効率が低くなる傾向がある。
また、重合時の反応温度は、通常30〜120℃であるのが好ましい。
前記重合では、ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)がビニル系重合性基を含有する場合にはビニル系単量体(b−2)がラジカル重合開始剤によって重合する際に、ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)のビニル系重合性基と反応することにより、グラフトが形成される。
ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)にビニル重合性基が存在しない場合、特定のラジカル開始剤、例えばt−ブチルパーオキシラウレートなどを用いれば、ケイ素原子に結合したメチル基などの有機基から水素を引く抜き、生成したラジカルによってビニル系単量体(b−2)が重合しグラフトが形成される。
また、ビニル系単量体(b−2)のうちの0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%をビニル系重合性基含有シラン化合物を用いて重合し、pH5以下の酸性状態下で再分配反応させてもグラフトが生成する。これは、酸性状態ではポリオルガノシロキサンの主骨格のSi−O−Si結合は、切断と生成の平衡状態にあるので、この平衡状態でビニル系単量体とビニル系重合性基含有シラン化合物を共重合すると、重合によって生成中あるいは生成したビニル系共重合体の側鎖のシランがポリオルガノシロキサン鎖と反応してグラフトが生成するのである。
該ビニル系重合性基含有シラン化合物は、ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)の製造時に必要あれば使用されるものと同じものでよく、該ビニル系重合性基含有シラン化合物の量が0.1%未満の場合には、ビニル系単量体(b−2)のグラフトする割合が低下し、10%をこえる場合には、ラテックスの安定性が低くなる傾向にある。
なお、ポリオルガノシロキサン粒子の存在下でのビニル系単量体(b−2)の重合では、グラフト共重合体の枝にあたる部分、ここではビニル系単量体(b−2)の重合体が幹成分、ここではポリオルガノシロキサン粒子(b−1)にグラフトせずに枝成分だけで単独に重合してえられるいわゆるフリーポリマーも副生し、グラフト共重合体とフリーポリマーの混合物としてえられるが、本発明においてはこの両者を併せてグラフト共重合体という。
乳化重合によってえられたグラフト共重合体からなる難燃剤は、ラテックスのまま使用してもよいが、適用範囲が広いことから、ラテックスからポリマーを分離して粉体として使用することが好ましい。ポリマーを分離する方法としては、通常の方法、例えばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加することによりラテックスを凝固、分離、水洗、脱水し、乾燥する方法があげられる。また、スプレー乾燥法も使用できる。
かくして難燃剤として使用されるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(B)は得られる。
前記フッ素系樹脂(C)は、フッ素原子を有する重合体樹脂であり、燃焼時の滴下防止剤として使用される成分である。滴下防止効果が大きい点で好ましい具体例としては、ポリモノフルオロエチレン、ポリジフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロエチレン共重合体などのフッ素化ポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂などをあげることができる。さらに、フッ素化ポリオレフィン樹脂が好ましく、とくに平均粒子径が700μm以下のフッ素化ポリオレフィン樹脂が好ましい。
ここでいう平均粒子径とは、フッ素化ポリオレフィン樹脂の一次粒子が凝集して形成される二次粒子の平均粒子径をいう。さらにフッ素化ポリオレフィン樹脂で好ましくは、密度と嵩密度の比(密度/嵩密度)が6.0以下のフッ素化ポリオレフィン樹脂である。ここでいう密度と嵩密度とはJIS−K6891に記載されている方法にて測定したものである。
フッ素系樹脂(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記酸化防止剤(D)は、本発明においては、成形時の樹脂の酸化分解を抑制することを目的とするだけでなく、難燃性を向上させることも目的とする成分である。酸化防止剤は、通常の成形時に使用されるものであれば、特に限定されない。
具体例としては、トリス[N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート(旭電化株式会社製、アデカスタブAO−20など)、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010など)、ブチリデン−1,1−ビス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチル−フェニル)(旭電化株式会社製、アデカスタブAO−40など)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(吉冨ファインケミカル株式会社製、ヨシノックス930など)などのフェノール系酸化防止剤、ビス(2,6,ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト(旭電化株式会社製、アデカスタブPEP−36など)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化株式会社製、アデカスタブ2112など)、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(旭電化株式会社製、アデカスタブHP−10など)などのリン系酸化防止剤、ジラウリル3,3’−チオ−ジプロピオネート(吉冨ファインケミカル株式会社製、ヨシノックスDLTP)、ジミリスチル3,3’−チオ−ジプロピオネート(吉冨ファインケミカル株式会社製、ヨシノックスDMTP)などのイオウ系酸化防止剤などがあげられる。
これらの中で、窒素原子含有のフェノール系酸化防止剤および(または)融点100℃以上、さらには150℃以上のリン系酸化防止剤が難燃性の発現の点で特に好ましい。前記具体例の中では、窒素原子含有フェノール系酸化防止剤として、トリス[N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレートがあげられ、融点100℃以上のリン系酸化防止剤としては、ビス(2,6,ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト(融点237℃)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(融点183℃)、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(融点148℃)などがあげられる。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、前記ポリカーボネート系樹脂(A)100部に対して、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(B)1〜20部、好ましくは1〜10部、更に好ましくは1〜4.5部、フッ素系樹脂(C)0.05〜1部、好ましくは0.1〜0.5部、更に好ましくは0.1〜0.4部、酸化防止剤(D)0.03〜2部、好ましくは0.05〜2部、更に好ましくは0.1〜1部を配合することにより得られる。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(B)の使用量が少なすぎると難燃性が低下する傾向にあり、また多すぎると組成物のコストアップにつながり市場での価値が低くなる傾向にある。また、フッ素系樹脂(C)の使用量が少なすぎると難燃性が低下する傾向にあり、多すぎると成形体の表面が荒れやすくなる傾向にある。また、酸化防止剤(D)の使用量が少なすぎると難燃性の向上作用が小さくなり、多すぎると成形性が低下する傾向にある。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を製造するための方法は、特に限定はなく、通常の方法が使用できる。たとえば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、ロール、押出機、ニーダーなどで混合する方法があげられる。
このとき、通常使用される配合剤、すなわち可塑剤、安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、顔料、ガラス繊維、充填剤、高分子加工助剤、高分子滑剤、耐衝撃性改良剤などを配合することができる。高分子加工助剤の好ましい具体例は、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体などのメタクリレート系(共)重合体があげられ、耐衝撃性改良剤の好ましい具体例は、ブタジエンゴム系耐衝撃性改良剤(MBS樹脂)、アクリル酸ブチルゴム系耐衝撃性改良剤、アクリル酸ブチルゴム/シリコーンゴムの複合ゴム系耐衝撃性改良剤などがあげられる。また、他の難燃剤も併用してもよい。
例えば、併用する難燃剤として非ハロゲン・非リン系という点で好ましい具体例としては、芳香族基含有ポリオルガノシロキサンなどのシリコーン系化合物、シアヌル酸、シアヌル酸メラニンなどのトリアジン系化合物、酸化ホウ素、ホウ酸亜鉛などのホウ素系化合物、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなどの芳香族金属塩などをあげることができる。
また、トリフェノールホスフェート、縮合リン酸エステル、安定化赤リンなどのリン系化合物との併用も可能である。この場合は、リン系難燃剤の組成物において、本発明のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を用いることで、リン系難燃剤を減らすことができるメリットがある。
これらの配合剤の好ましい使用量は、効果−コストのバランスの点から熱可塑性樹脂100部に対して、0.01〜20部、さらには0.05〜10部、とくには0.05〜5部である。
えられた難燃性熱可塑性樹脂組成物の成形法としては、通常の熱可塑性樹脂組成物の成形に用いられる成形法、すなわち、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法などを適用することができる。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品の用途としては、特に限定されないが、たとえば、デスクトップ型コンピューター、ノート型コンピューター、タワー型コンピューター、サーバー型コンピューター、プリンター、コピー機、FAX機、携帯電話、PHS、TV、ビデオデッキ等の各種OA/情報/家電機器のハウジングおよびシャーシー部品、各種建材部材および各種自動車部材などの難燃性が必要となる用途があげられる。
実施例
本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。
なお、以下の実施例および比較例における測定および試験は次のように行った。
[重合転化率]
ラテックスを120℃の熱風乾燥器で1時間乾燥して固形成分量を求めて、100×固形成分量/仕込み単量体量(%)で算出した。
[トルエン不溶分量]
ラテックスから乾燥させてえられたポリオルガノシロキサン粒子の固体0.5gを室温にてトルエン80mlに24時間浸漬し、12000rpmにて60分間遠心分離してポリオルガノシロキサン粒子のトルエン不溶分の重量分率(%)を測定した。
[グラフト率]
グラフト共重合体1gを室温にてアセトン80mlに48時間浸漬し、12000rpmにて60分間遠心分離して求めたグラフト共重合体の不溶分量(w)を求め、次式によりグラフト率を算出した。
グラフト率(%)=100×
{(w−1×グラフト共重合体中のポリオルガノシロキサン成分分率)/
(1×グラフト共重合体中のポリオルガノシロキサン成分分率)}
[平均粒子径]
ポリオルガノシロキサン粒子およびグラフト共重合体の平均粒子径をラテックスの状態で測定した。測定装置として、リード&ノースラップインスツルメント(LEED&NORTHRUP INSTRUMENTS)社製のMICROTRACUPAを用いて、光散乱法により数平均粒子径(μm)および粒子径分布の変動係数(標準偏差/数平均粒子径)(%)を測定した。
[耐衝撃性]
ASTM D−256に準じて、ノッチつき1/8インチバーを用いて23℃でのアイゾット試験により評価した。
[難燃性]
UL94 V試験に準拠した垂直燃焼試験法にて、5サンプルの総燃焼時間を測定して評価した。
(参考例1) ポリオルガノシロキサン粒子(S−1)の製造
次の成分からなる水溶液をホモミキサーにより10000rpmで5分間撹拌してエマルジョンを調製した。
成分 量(部)
純水 251
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS) 0.5
オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4) 100
γ−アクリロイルオキシプロピル
ジメトキシメチルシラン(DSA) 5
このエマルジョンを撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに一括して仕込んだ。系を撹拌しながら、10%ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)水溶液1部(固形分)を添加し、80℃に約40分かけて昇温後、80℃で6時間反応させた。その後、25℃に冷却して、20時間放置後、系のpHを水酸化ナトリウムで6.8に戻して重合を終了し、ポリオルガノシロキサン粒子(S−1)を含むラテックスをえた。
重合転化率、ポリオルガノシロキサン粒子のラテックスの平均粒子径およびトルエン不溶分量を測定し、結果を表1に示す。
(参考例2) ポリオルガノシロキサン粒子(S−2)の製造
次の成分からなる水溶液をホモミキサーにより10000rpmで5分間撹拌してエマルジョンを調製した。
成分 量(部)
純水 251
SDBS 0.5
D4 70
DSA 5
このエマルジョンを撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに一括して仕込んだ。系を撹拌しながら、10%DBSA水溶液1部(固形分)を添加し、80℃に約40分かけて昇温した。80℃で1時間反応させたのち、ジフェニルジメトキシシラン(DPhS)30部を3時間かけて滴下追加した。滴下後、2時間撹拌し、その後、25℃に冷却して、20時間放置した。系のpHを水酸化ナトリウムで6.5に戻して重合を終了し、ポリオルガノシロキサン粒子(S−2)を含むラテックスをえた。
重合転化率、ポリオルガノシロキサン粒子のラテックスの平均粒子径およびトルエン不溶分量を測定し、結果を表1に示す。
(参考例3) ポリオルガノシロキサン粒子(S−3)の製造
撹拌機、還流冷却器、チッ素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、
成分 量(部)
純水 189
SDBS 1.2
を仕込んだ。
次に、系をチッ素置換しながら70℃に昇温し、純水1部と過硫酸カリウム(KPS)0.02部からなる水溶液を添加してから、つづいて
成分 量(部)
スチレン(St) 0.7
メタクリル酸ブチル(BMA) 1.3
からなる混合液を一括添加して、1時間撹拌して重合を完結させて、St−BMA共重合体のラテックスをえた。重合転化率は99%であった。えられたラテックスの固形分含有率は1.0%、平均粒子径0.01μmであった。また、このときの変動係数は38%であった。St−BMA共重合体の溶剤不溶分量は0%であった。
別途、つぎの成分からなる混合物をホモミキサーで10000rpmで5分間撹拌してポリオルガノシロキサン形成成分のエマルジョンを調製した。
成分 量(部)
純水 70
SDBS 0.5
D4 94
ビニルトリメトキシシラン 4
つづいて、St−BMA共重合体を含むラテックスを80℃に保ち、系に10%DBSA水溶液2部(固形分)を添加したのち、上記ポリオルガノシロキサン形成成分のエマルジョンを一括で添加した後6時間撹拌を続けたのち、25℃に冷却して20時間放置した。その後、水酸化ナトリウムでpHを6.6にして重合を終了し、ポリオルガノシロキサン粒子(S−3)を含むラテックスをえた。
重合転化率、ポリオルガノシロキサン粒子のラテックスの平均粒子径およびトルエン不溶分量を測定し、結果を表1に示す。該ポリオルガノシロキサン粒子を含むラテックス中のポリオルガノシロキサン粒子は仕込み量および転化率かポリオルガノシロキサン成分98%およびSt−BMA共重合体成分2%からなる。
(参考例4〜8)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口および温度計を備えた5口フラスコに、純水300部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.2部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.01部、硫酸第一鉄0.0025部および表2に示されるポリオルガノシロキサン粒子を仕込み、系を撹拌しながら窒素気流下に60℃まで昇温させた。60℃到達後、表2に示される単量体とラジカル重合開始剤の混合物を、表2に示すように1段階または2段階で4時間かけて滴下添加したのち、60℃で1時間撹拌を続けることによってグラフト共重合体のラテックスをえた。
つづいて、ラテックスを純水で希釈し、固形分濃度を15%にしたのち、10%塩化カルシウム水溶液2部(固形分)を添加して、凝固スラリーを得た。凝固凝固スラリーを80℃まで加熱したのち、50℃まで冷却して脱水後、乾燥させてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(SG−1〜SG−5)の粉体をえた。
重合転化率、平均粒子径、グラフト率を表2に示す。
なお、表2の中のMMAはメタクリル酸メチル、ANはアクリロニトリル、BAはアクリル酸ブチル、AlMAはメタクリル酸アリル(以上、単量体)、CHPはクメンハイドロパーオキサイド(ラジカル重合開始剤)、SPは明細書記載の方法で求めた溶解度パラメーターをそれぞれ示す。
(実施例1〜5および比較例1〜7)
ポリカーボネート樹脂の難燃化
ポリカーボネート樹脂(PC−1:出光石油化学株式会社製タフロンA−2200,粘度平均分子量22000、PC−2:出光石油化学株式会社製タフロンA−1900,粘度平均分子量19000)、参考例4〜8で得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(SG−1〜SG−5)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン:ダイキン工業株式会社製ポリフロンFA−500)および酸化防止剤(AO−20:旭電化株式会社製アデカスタブAO−20、PEP−36:旭電化製株式会社アデカスタブPEP−36)を用いて表3に示す組成で配合した。
えられた配合物を2軸押出機(日本製鋼所株式会社製 TEX44SS)で280℃にて溶融混錬し、ペレットを製造した。えられたペレットをシリンダー温度270℃に設定した株式会社ファナック(FANUC)製のFAS100B射出成形機で1/8インチのアイゾット試験片および1/16インチ難燃性評価用試験片を作成した。えられた試験片を用いて前記評価方法に従って評価した。
結果を表3に示す。
表3から、ポリカーボネート樹脂に、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、フッ素系樹脂、酸化防止剤を配合することで難燃性−耐衝撃性バランスの優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られることがわかる。
(実施例6および比較例8〜9)
ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート混合樹脂の難燃化
PC−1、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET:鐘紡株式会社製ベルペット EFG−70)、参考例5で得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(SG−2)、PTFEおよび酸化防止剤(PEP−36:旭電化株式会社製アデカスタブPEP−36)を用いて表4に示す組成で配合した。
えられた配合物を2軸押出機(日本製鋼所株式会社製 TEX44SS)で260℃にて溶融混錬し、ペレットを製造した。えられたペレットをシリンダー温度260℃に設定した株式会社ファナック(FANUC)製のFAS100B射出成形機で1/8インチのアイゾット試験片および1/10インチ難燃性評価用試験片を作成した。えられた試験片を用いて前記評価方法に従って評価した。
結果を表4に示す。
表4から、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート混合樹脂に、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、フッ素系樹脂、酸化防止剤を配合することで難燃性−耐衝撃性バランスの優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られることがわかる。
産業上の利用可能性
本発明により、難燃性−耐衝撃性バランスの優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
Claims (4)
- (A)ポリカーボネート系樹脂100重量部、(B)ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)の存在下にビニル系単量体(b−2)を重合してえられるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体1〜20重量部、(C)フッ素系樹脂0.05〜1重量部および(D)酸化防止剤0.03〜2重量部からなる難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- (B)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が、平均粒子径0.008〜0.6μmのポリオルガノシロキサン粒子(b−1)40〜90重量%の存在下にビニル系単量体(b−2)60〜10重量%を重合してえられるものであって、かつ該ビニル単量体が、該ビニル系単量体の重合体の溶解度パラメーターが9.15〜10.15(cal/cm3)1/2である請求の範囲第1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- ポリオルガノシロキサン粒子(b−1)がラテックス状である請求の範囲第1項又は第2項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- ビニル系単量体(b−2)が芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびカルボキシル基含有ビニル系単量体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
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