JPWO2003004552A1 - 難燃性発泡体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、難燃性の樹脂組成物を微細に発泡させた難燃性発泡体およびその製造方法、特に発泡セル径が10μm以下または1周期の長さが5nm以上100μm以下であるマイクロセルを有した難燃性発泡体およびその製造方法に関する。
背景技術
従来、OA機器、電気電子機器および部品、自動車部品などは、強度、剛性、耐衝撃性などの物性を維持あるいは改良しつつ、軽量化および難燃化が強く求められている。このような要望に応えるため、超臨界状ガスを用いたマイクロセル発泡法が提案されているが、実用に耐え得る難燃性を付与されたマイクロセル構造の難燃性発泡体は得られていなかった。
発明の開示
本発明は、鋭意検討した結果、例えばOA機器、電子電気部品および自動車部品の実用に耐え得る高い難燃性を持ち、かつ均質で微細な発泡構造であるマイクロセル構造の難燃性発泡体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の難燃性発泡体は、熱可塑性樹脂および難燃剤を含有する樹脂組成物に超臨界状ガスが浸透され、この超臨界状ガスが浸透された前記樹脂組成物を脱ガスさせて得られたことを特徴とする。
この発明では、熱可塑性樹脂および難燃剤を含有する樹脂組成物に超臨界状ガスを浸透した後脱ガスして得られる。このことにより、難燃性の発現およびマイクロセルが均質かつ微細に発生する。
本発明において、熱可塑性樹脂は、目的に応じて適宜選択して良く、複数の熱可塑性樹脂のアロイでもよい。例えば、樹脂として、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテル、ABS、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミドなどのポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルニトリル、各種熱可塑性エラストマーなどが用いられる。
そして、これら樹脂の中でも、特にOA機器、電気電子機器および部品などへ頻繁に用いられるポリカーボネート(PC)は、本発明を適用することでより本発明のメリットが発現する点で好ましい。なお、ポリカーボネートは単独で用いても良く、他の熱可塑性樹脂、例えば前記に列記した樹脂とブレンドして用いても適用できる。さらに、分岐を持つポリカーボネート(分岐PC)、またはポリオルガノシロキサン部を含むポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体、もしくは両者の混合物を用いることが、均質で緻密なマイクロセルを持つ難燃性発泡体を製造するうえで好ましい。なお、これらポリカーボネートは、公知の物を適用できる。例えば、特開平7−258532号公報に開示された一般的なPC、分岐PC、PC−ポリオルガノシロキサン共重合体を用いることができる。
また、分岐状ポリカーボネートは、分岐剤として、以下に示す一般式(I)のものが用いられる。
この一般式(I)で表される化合物から誘導された分岐核構造を有する分岐状ポリカーボネートが用いられる。ここで、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、例えば、メチル基,エチル基,n−プロピル基,n−ブチル基,n−ペンチル基などである。また、R1〜R6は、水素原子,ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素および沃素など)、または炭素数1〜5のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基およびn−ペンチル基など)であり、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。そのうち、Rとしては、メチル基が好ましく、また、R1〜R6としては、それぞれ水素原子が好ましい。
そして、一般式(I)で表される化合物としては、具体的には、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1,1−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1,1−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−エタンなどが挙げられる。これらの中では、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−アルカン類が好ましく、特に、Rがメチル基、R1〜R6がそれぞれ水素原子である1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−エタンが好適である。
本発明における分岐状ポリカーボネートは具体的には、以下に示す式(II)で表わされるものである。
ここで、式(II)中、m,nおよびoは、整数であり、PCはポリカーボネート部分を示す。上記分岐状ポリカーボネートにおいて、PCとして、例えば原料成分としてビスフェノールAを使用した場合には、下記の式(III)で示す式の繰り返し単位となる。
そして、分岐状ポリカーボネートは、好ましくは、15,000以上40,000以下の粘度平均分子量を有するものである。ここで、粘度平均分子量が15,000未満では、耐衝撃性が低下する恐れがある。一方、40,000を超えると、成形性が悪くなる場合がある。
また、分岐状ポリカーボネートは、好ましくは、アセトン可溶分が3.5質量%以下のものである。ここで、アセトン可溶分が3.5質量%を超えると、耐衝撃性が低下することがある。このため、分岐状ポリカーボネートのアセトン可溶分を3.5質量%以下とする。なお、ここでアセトン可溶分とは、対象とする分岐状ポリカーボネートから、アセトンを溶媒としてソックスレー抽出される成分を意味するものである。
そして、分岐状ポリカーボネートは、各種の方法、例えば、特開平3−182524号公報に開示されている方法により製造することができる。すなわち、芳香族二価フェノール類、一般式(I)で表わされる分岐剤およびホスゲンから誘導されるポリカーボネートオリゴマ、芳香族二価フェノール類および末端停止剤を、これらを含む反応混合液が乱流となるように撹拌しながら反応させる。そして、反応混合液の粘度が上昇した時点で、アルカリ水溶液を加えるとともに反応混合液を層流として反応させる。この方法によれば、効率よく製造することができる。
次に、分岐状ポリカーボネート以外のもの、つまり非分岐状ポリカーボネートとしては、好ましくは、以下の一般式(IV)の芳香族ポリカーボネートが用いられる。
ここで、式(IV)中、Xは、それぞれ水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素および沃素)、または炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基およびヘキシル基など)である。そして、Xが複数の場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、aおよびbは、それぞれ1〜4の整数である。そして、Yは、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基または炭素数2〜8のアルキリデン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテリレン基、ヘキシレン基、エチリデン基およびイソプロピリデン基など)、炭素数5〜15のシクロアルキレン基または炭素数5〜15のシクロアルキリデン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチリデン基およびシクロヘキシリデン基など)、または−S−,−SO−,−SO2−,−O−,−CO−結合もしくは以下の式(V)で表される結合などで表される構造単位を有する重合体である。
ここで、Xは水素原子が好ましく、また、Yはエチレン基、プロピレン基が好ましい。
この芳香族ポリカーボネートは、以下の一般式(VI)で表される二価フェノールとホスゲンまたは炭酸ジエステル化合物とを反応させることによって容易に製造することができるものである。
ここで、式(VI)中、X、Y、aおよびbは、上述した場合と同じである。すなわち、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応などによって製造される。
ここで、一般式(VI)で表わされる二価フェノールとしては、様々なものがある。例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−イソプロピルフェニル)メタン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−ナフチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−エチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4−メチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのジヒドロキシジアリールアルカン類、あるいは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカンなどのジヒドロキシジアリールシクロアルカン類、また、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、さらに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシジアリールエーテル類、そしてさらに、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジヒドロキシジアリールケトン類、あるいは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、また、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、さらに、4,4’−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、そしてさらに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシアリールフルオレン類などが挙げられる。これらの中では、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕が好適である。
また、一般式(VI)で表される二価フェノール類以外としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、メチルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、あるいは、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類などが挙げられる。そして、これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。また、炭酸ジエステル化合物としては、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートが挙げられる。
そして、分子量調節剤としては、通常、ポリカーボネートの重合に用いられるものでよく、各種のものを用いることができる。具体的には、一価フェノールとして、例えば、フェノール、p−クレゾール、p−tret−ブチルフェノール、p−tret−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、ノニルフェノールなどが挙げられる。さらに、本発明で用いる芳香族ポリカーボネートは、2種以上の芳香族ポリカーボネートの混合物であってもよい。そして、芳香族ポリカーボネートは、機械的強度および成形性の点から、その粘度平均分子量が10,000以上100,000以下のものが好ましく、特に、20,000〜40,000のものが好適である。また、場合によっては、芳香族ポリカーボネートとしては、以下に示す一般式(VII)で表される構造の繰返し単位を有するポリカーボネート部と、以下に示す一般式(VIII)で表される構造の繰返し単位を有するポリオルガノシロキサン部とからなるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を用いてもよい。
ここで、式(VII)中、X、Y、aおよびbは、上述の場合と同じである。また、式(VIII)中、R7、R8およびR9は、それぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基およびヘキシル基など)、またはフェニル基であり、それぞれ同じであっても異なるものであってもよい。さらに、式(VIII)中のsおよびiは、それぞれ0または1以上の整数である。この一般式(VIII)で表されるポリオルガノシロキサン部の重合度は5以上が好ましい。
そして、上記ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の全体を100質量%として、n−ヘキサン可溶分が1.0質量%以下、かつ粘度平均分子量が10000以上50000以下であり、ポリジメチルシロキサンブロック部の割合が0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
ここで、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の粘度平均分子量が10000未満であると耐熱性や強度低下が起り易い。また、粗大な発泡セルが生成し易くなる恐れがある。一方、50000を超えると、発泡し難くなる恐れがある。このため、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の粘度平均分子量を10000以上50000以下に設定することが好ましい。
また、n−ヘキサン可溶分が1.0質量%を超えると耐衝撃性が低下する恐れがある。このため、共重合体の全体を100質量%としたときに、n−ヘキサン可溶分を1.0質量%以下に設定することが好ましい。ここで、n−ヘキサン可溶分とは、対象とする共重合体から、n−ヘキサンを溶媒として抽出される成分を意味するものである。
本発明において、難燃剤は、目的に応じて適宜選択して良く、ハロゲン系難燃剤、ノンハロゲン系難燃剤のいずれでも問題ないが、環境問題などを考慮すると、ノンハロゲン系難燃剤が好ましい。
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、塩素化ポリエチレン、パークロロシクロペンタデカン、クロレンド酸、テトラクロロ無水フタル酸等の塩素系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモデカンなどの臭素系難燃剤が挙げられる。
ノンハロゲン系難燃剤としては、例えば、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル系難燃剤、縮合系ポリホスフェート、オルガノシロキサン系、ポリリン酸アンモニウム系、含窒素リン化合物、赤燐、重合性リン化合物モノマービニルホスホネート、有機スルホン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属塩が挙げられる。
本発明における好ましい難燃剤は、ハロゲン非含有リン酸エステル系難燃剤、前記のノンハロゲン系難燃剤の金属塩、オルガノシロキサン系難燃剤である。このような難燃剤を用いると、良好な難燃性に加え、均質で緻密なマイクロセルが生成し易い。そして、ハロゲン非含有リン酸エステル系難燃剤としては、例えば特開平8−239654号公報に開示されたハロゲン非含有リン酸エステルモノマが挙げられる。具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどが挙げられ、好ましくはトリフェニルホスフェートである。
本発明の組成物において、上記ハロゲン非含有リン酸エステル系難燃剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、3質量部以上20質量部以下の範囲で、好ましくは5質量部以上15質量部以下の範囲で配合される。ここで、この配合量が3質量部未満では、難燃性評価が低下する。一方、20質量部を超えると、その量の割には難燃性向上が認められず、樹脂組成物の衝撃強度などの物性の低下をもたらすおそれがある。このため、ハロゲン非含有リン酸エステル系難燃剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対して3質量部以上20質量部以下で配合される。
また、ポリオルガノシロキサンとしては、例えば特開平8−176425号公報に記載のオルガノポリシロキサンと同じものが用いられる。このオルガノポリシロキサンは、以下の一般式(IX)で表される基本構造を有する。
この一般式(IX)において、R1はエポキシ基含有一価有機基を示す。具体例としては、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、グリシドキシメチル基、エポキシ基などが挙げられる。工業的には、γ−グリシドキシプロピル基が好ましい。また、R2は炭素数1〜12の炭化水素基を示す。この炭化水素基としては、例えば炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアリールアルキル基などが挙げられ、フェニル基、ビニル基およびメチル基が好ましい。特に、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する場合は、相溶性が良いフェニル基を含有させたオルガノポリシロキサンか、難燃性を高める上でビニル基を含有させたオルガノポリシロキサンが好適である。
さらに、aおよびbは、それぞれ0<a<2、0≦b<2および0<a+b<2の関係を満たす数である。そして、aの値としては、0<a≦1が好ましい。ここで、エポキシ基含有有機基(R1)が全く含まれないと(a=0)、芳香族ポリカーボネート樹脂末端のフェノール性水酸基との反応点がないため、所望の難燃性が得られない。一方、aが2以上では高価なポリシロキサンになり、経済的に不利である。このため、0<a<2に設定することが好ましい。
一方、bの値が2以上では耐熱性が悪く、かつ分子量も低くなるため難燃性が低下する。このため、0≦b<2に設定することが好ましい。
この条件のオルガノポリシロキサンは、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル・メチルジエトキシシランなどのエポキシ基含有シラン単独、あるいはこのエポキシ基含有シランと他のアルコキシシランモノマーとを共加水分解することにより、製造することができる。なお、共加水分解の方法は、例えば特開平8−176425号公報に記載の方法など、公知の方法を用いることができる。
また、本発明で用いるポリオルガノシロキサンは、ポリスチレン換算での平均分子量が1,000以上500,000以下の範囲にあるものが好ましく使用される。ここで、平均分子量が1,000未満であると耐熱性、強度低下が起り易なる。一方、500,000を超えると、発泡し難くなる恐れがある。このため、ポリオルガノシロキサンは、ポリスチレン換算での平均分子量が1,000以上500,000以下とする。
そして、本発明の組成物において、上記ポリオルガノシロキサンと熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上5質量部以下の範囲で選ばれる。ここで、この配合量が0.05質量部未満では、燃焼時の滴下を防止する効果が充分に発揮されず、結果として難燃性評価が低下する。一方、5質量部を超えるとその量の割には燃焼時の滴下防止効果の向上が認められず、難燃性樹脂組成物の衝撃強度などの物性の低下をもたらすうえ、発泡し難くなる。このため、ポリオルガノシロキサンは、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上5質量部以下で配合される。好ましい配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.10質量部以上2.0質量部以下の範囲である。
一方、本発明で用いる金属塩系難燃剤としては、例えば特開平7−258532号公報に開示された有機スルホン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩が用いられる。また、10A(商品名;福島化学工業(株)製)、キスマー5(商品名;協和化学工業製)など、公知の水酸化マグネシウム、H−100(商品名;昭和電工株式会社製)など、公知の水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を用いることができる。これら金属水酸化物は、平均粒子径が1μm以上10μm以下の範囲で、かつ粒子径15μm以上の粗粉の割合が10質量%以下であるものが好ましい。
また、本発明の組成物において、上記金属塩系難燃剤が金属水酸化物である場合は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、50質量部以上300質量部の範囲で選ばれる。ここで、この配合量が50質量部未満では、難燃性が低下する。一方、300質量部を超えると、衝撃強度などの物性低下が起り、発泡による軽量効果が相殺されるうえ、発泡し難くなるおそれがある。このため、金属水酸化物の金属塩系難燃剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対して50質量部以上300質量部で配合することが好ましい。なお、好ましい配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、75質量部以上200質量部以下の範囲である。
さらに、金属塩系難燃剤が、上述した有機スルホン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩の場合は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.03質量部以上1質量部以下の範囲で配合される。ここで、この配合量が0.03質量部未満では、難燃性が低下する。一方、1質量部を超えると、配合量の割に難燃性向上効果は発現しない。このため、有機スルホン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩の金属塩系難燃剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.03質量部以上1質量部以下で配合することが好ましい。
本発明においては、必要に応じ難燃助剤を配合しても良い。この難燃助剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いると、良好な難燃性に加え、均質で緻密なマイクロセルが生成し易い。そして、本発明で用いるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の平均分子量は、500,000以上であることが必要であり、好ましくは500,000〜10,000,000である。なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い難燃性を付与することができるので好ましい。このフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)としては、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、例えばテフロン6−J(商品名、三井・デュポンフロロケミカル社製)、ポリフロンD−1およびポリフロンF−103(商品名、ダイキン工業社製)などが挙げられる。また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(商品名、モンテフルオス社製)、ポリフロンMPA FA−100およびF201(商品名、ダイキン工業社製)などが挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
また、本発明の組成物において、上記ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上2質量部以下の範囲で配合される。ここで、この配合量が0.01質量部未満では、配合の効果が殆ど認められない。一方、2質量部を超えると、その量の割には燃焼時の滴下防止効果の向上が認められず、難燃性の樹脂組成物の衝撃強度などの物性が低下するうえ、発泡し難くなるおそれがある。このため、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01質量部以上2質量部以下で配合することが好ましい。
そして、本発明の難燃性発泡体とは、前述の難燃性の樹脂組成物に、超臨界状態のガスを浸透させた後、脱ガスすることで得られる微細な発泡構造を持つ発泡成形体である。
この発泡構造は、独立した発泡セルが有る独立発泡体でも、独立した発泡セルがない連続発泡体でもよい。
連続発泡体の場合は、樹脂相と気孔相とが各々連続して形成され、互いに絡み合った周期構造を持つ発泡構造の例が挙げられる。
独立発泡体の場合は、好ましくは発泡セルの長径が10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。発泡セルの長径が10μmを超えると、発泡前の剛性を維持できるマイクロセルラー構造のメリットを充分に発現できない場合がある。また、得られる難燃性発泡体の発泡倍率は、1.1倍以上3倍以下が通常であり、好ましくは1.2倍以上2.5倍以下とする。
また、周期構造を持つ連続発泡体の場合は、1周期の長さが5nm以上100μm以下であり、好ましくは、10nm以上50μm以下である。ここで、周期が100μmを超えると、発泡構造が粗い「す」の状態となる。一方、5nm未満の場合は、気孔相が小さすぎて、連続発泡体のメリット、例えばフィルタ機能が期待できない恐れがある。このため、連続発泡体の1周期の長さを5nm以上100μm以下、好ましくは10nm以上50μm以下とする。このことから、連続発泡体の発泡倍率は、周期構造が保持される限り制限はないが、通常、1.1倍以上3倍以下、好ましくは1.2倍以上2.5倍以下である。
また、本発明の発泡体において、上述した難燃性の樹脂組成物に、超臨界状ガスである超臨界状態のガスを浸透させた後、脱ガスさせる方法であれば、特に制限はない。この本発明の発泡体の製造方法例を下記する。
ここで、超臨界状態とは、気体状態と液体状態との中間の性質を示す状態である。ガスの種類で定まった温度および圧力(臨界点)以上になると超臨界状態となり、樹脂内部への浸透力も液体状態に比べて強くなり、かつ、均一となる。
そして、本発明では、超臨界状態の際に樹脂に浸透するものであれば、ガスの種類は問わない。例えば、二酸化炭素、窒素、空気、酸素、水素、ヘリウムなどの不活性ガスを例示することができる。特に、二酸化炭素、窒素が好ましい。
また、超臨界状ガスを樹脂組成物に浸透させて独立発泡体を製造する方法および装置は、樹脂組成物を賦形する賦形工程と、超臨界状ガスを成形体に浸透させた後、脱ガスさせて発泡させる発泡工程とを備えている。これら賦形工程および発泡工程が別工程であるバッチ式発泡法と、賦形工程および発泡工程を連続して行う連続式発泡法がある。例えば米国特許第5158986号、特開平10−230528号公報などに記載の成形方法および製造装置を用いることができる。
本発明において、押出機内で、難燃性の樹脂組成物に超臨界状ガスを浸透させる射出、または押出発泡方法(連続式発泡法)においては、超臨界状ガスを押出機内で混練中の樹脂組成物にガスを吹き込むことが常用されている。具体的には、非晶性樹脂の場合にあっては、ガス雰囲気中の温度を、ガラス転移温度Tgの近傍以上、より具体的には、ガラス転移温度Tgより20℃低い温度以上とする。このことにより、非晶性樹脂とガスとが均一に相溶しやすくなる。この温度の上限値は、樹脂材料に悪影響を与えない範囲で自由に設定することができる。なお、ガラス転移温度Tgより250℃を超えない範囲が好ましい。すなわち、この温度を超えると、難燃性発泡体の発泡セルまたは周期構造が大きくなったり、樹脂組成物が熱で劣化することで、難燃性発泡体の強度が低下する恐れがある。なお、本発明における非晶性樹脂には、結晶性樹脂であっても無配向状態であって実質的に非晶性のものが含まれる。
また、結晶性樹脂であって射出・押出成形時に押出機内で樹脂にガスを浸透する射出・押出方法にあっては、ガス雰囲気中の温度を、融点(Tm)以上融点より50℃高い温度(Tm+50)℃以下とする。このガスを浸透させる際のガス雰囲気中の温度が融点未満であると、樹脂組成物の溶融混練が不十分になり、成形困難となる。一方、(Tm+50)℃より高いと、樹脂の分解が起る場合がある。このため、ガス雰囲気中の温度を、融点(Tm)以上融点より50℃高い温度(Tm+50)℃以下とすることが好ましい。
一方、結晶性樹脂であってオートクレーブ内に充填されたガスを浸透するバッチ式にあっては、ガス雰囲気中の温度を、結晶化温度(Tc)より20℃低い温度(Tc−20)℃以上結晶化温度(Tc)より50℃高い温度(Tc+50)℃以下とする。このガスを浸透させる際のガス雰囲気中の温度が(Tc−20)℃未満であると、超臨界状ガスでも浸透し難く発泡効果が劣る。一方、(Tc+50)℃を超えると、粗大な発泡構造になる。このため、ガス雰囲気中の温度を、(Tc−20)℃以上(Tc+50)℃以下とすることが好ましい。
そして、ガスを樹脂に浸透させる場合のガス圧は、浸透させるガスの臨界圧以上を必須とし、好ましくは15MPa以上、特に好ましくは、20MPa以上である。
また、ガスを浸透させる量は、目的とする発泡倍率に応じて決定される。本発明では、通常、樹脂の質量の0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは、1質量%以上10質量%以下である。
さらに、ガスを浸透させる時間は特に制限はなく、浸透方法や樹脂の厚みにより適宜選択できる。このガスの浸透量が多ければ、周期構造が大きくなり、少なければ、周期構造が小さくなるという相関関係がある。
バッチ式で浸透させる場合には、10分以上2日以下が通常であり、好ましくは30分以上3時間以下である。また、射出・押出方法の場合には、浸透効率が高くなるため、20秒以上10分以下でよい。
また、本発明の難燃性発泡体は、前述の方法で超臨界状ガスを浸透させた難燃性の樹脂組成物を減圧することで脱ガスさせて得られる。この発泡させることを考慮すれば、浸透させたガスの臨界圧以下まで下げれば十分であるが、取り扱いなどのために常圧まで下げることが通常であり、また減圧と同時に冷却することが通常である。好ましくは、脱ガス時に、超臨界状ガスを浸透させた難燃性の樹脂組成物を、(Tc±20)℃まで冷却する。この温度範囲を外れる温度で脱ガスすると、粗大発泡が生成したり、発泡は均質であっても樹脂組成物の結晶化が不十分で強度や剛性が低下する恐れがある。
上述した射出、または押出発泡方法(連続式発泡法)においては、超臨界状ガスを浸透させた樹脂組成物を金型内に充満させた後、金型を後退させることで、この超臨界状ガスが浸透された樹脂組成物に加わる圧力を減圧することが、特に好ましい。このような操作を行うと、ゲート近傍における発泡不良が発生しにくくなり、均質な発泡構造体を持つことができるためである。
また、難燃性の樹脂組成物の成形品を、超臨界状ガスが充填されたオートクレーブ内に置くことで、ガスを浸透させるバッチ式発泡法においても、脱ガス時の条件は、上述した射出、または押出発泡方法(連続式発泡法)と同様でよく、さらに(Tc±20)℃の温度範囲を、脱ガスする為に十分な時間通過すればよい。
なお、連続発泡法、バッチ式発泡法のいずれにおいても、均質な独立発泡セルを持つ発泡構造を得るには、樹脂組成物の冷却速度が0.5℃/sec未満とし、結晶化温度以下まで冷却することが好ましい。ここで、冷却速度が0.5□/secを超えると、独立発泡セルの他に、連続した発泡部が生成する恐れがあり、均質な発泡構造にならない場合がある。このため、樹脂組成物の冷却速度を0.5□/sec未満とすることが好ましい。
さらに、均質な独立発泡セルを持つ発泡構造を得るには、樹脂組成物の減圧速度は20MPa/sec未満が好ましく、より好ましくは15MPa/sec未満、特に0.5MPa/sec未満であることが好ましい。ここで、減圧速度が20MPa/sec以上の場合は、独立発泡セルの他に、連続した発泡部が生成する恐れがあり、均質な発泡構造にならない場合がある。このため、樹脂組成物の減圧速度を20MPa/sec未満とすることが好ましい。なお、研究の結果、減圧速度が20MPa/sec以上の場合でも、冷却しなければ、または極めて冷却速度を遅くすれば、球状の独立気泡が形成され易いことが見出された。
一方、樹脂相と気孔相とがそれぞれ連続して形成され、互いに絡み合った周期構造を持つ難燃性発泡体の製造に際しては、超臨界状態のガスを、結晶樹脂と層状珪酸塩とを含有する上述した樹脂組成物に浸透させ、ガスが浸透した樹脂組成物に、急冷と急減圧とを略同時に行う。このような操作をすることで、ガスが抜けた後には気孔相が形成され、この気孔相と樹脂相とがそれぞれ連続相を形成し、かつ、これらが絡み合った状態が保持される。
この超臨界状ガスを樹脂に浸透させる方法および装置は、独立発泡セル型の製造方法および装置と同様なものが用いられる。超臨界状ガスを樹脂組成物に浸透させる好ましい温度、圧力条件も独立発泡セル型の製造方法と同様でよい。そして、ガス浸透後の冷却は、冷却速度が少なくとも0.5℃/sec以上、好ましくは5□/sec以上、さらに好ましくは10□/secである。ここで、冷却速度の上限値は難燃性発泡体の製造方法によって異なるが、バッチ式発泡法では50□/secであり、連続式発泡法では1000□/secである。そして、冷却速度が0.5℃/sec未満であると、気孔相が独立気泡を有する球状に形成されることになり、連結多孔構造の機能を達成することができない。一方、冷却速度が上限値を超えると、冷却装置の設備が大掛かりなものになり、難燃性発泡体の製造コストが高いものになる。このため、冷却速度は、バッチ式発泡法では少なくとも0.5□/sec以上50□/sec、連続式発泡法では少なくとも0.5□/sec以上1000□/sec以下とすることが好ましい。
さらに、脱ガス工程における減圧速度は、0.5MPa/sec以上が好ましく、15MPa/sec以上がより好ましく、特に20MPa/sec以上が好ましく、かつ、50MPa/sec以下が好ましい。ここで、減圧されて最終的に50MPa以下になった場合には、連結多孔構造が凍結維持される。そして、減圧速度が0.5MPa/sec未満であると、気孔相が独立気泡を有する球状に形成されることになり、連結多孔構造の機能を達成することができない。一方、減圧速度が50MPa/secを超えると、冷却装置の設備が大掛かりなものになり、難燃性発泡体の製造コストが高いものになる。このため、減圧速度を0.5MPa/sec以上50MPa/sec以下とすることが好ましい。
そして、減圧と急冷とは略同時に行う。略同時とは、本発明の目的を達成する範囲での誤差を許容する意味である。なお、研究の結果、ガスが浸透した樹脂の急冷を先行させて急減圧を後で行う場合は問題がないが、冷却しないで急減圧のみを行うと、樹脂に球状の独立気泡が形成され易いことが判明した。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明おいて、発泡させる難燃性の樹脂組成物は、後述する実施例に記載の方法や配合成分を、公知の方法、例えばブレンダーで十分に混練した後、二軸混練機で溶融混練することで製造することができる。
この樹脂組成物を発泡させて、発泡セルの長径が10μm以下、または周期が5nm以上100μm以下の周期構造を持つことを特徴とする難燃性発泡体を得る。以下、このような難燃性発泡体の成形方法などについて説明する。なお、本発明の難燃性発泡体のうち、独立発泡型について、公知の独立発泡セルを持つ発泡体と同様な構造である。但し、発泡セルの長径が10μm以下と非常に小さいことに特徴がある。
図1において、1は難燃性発泡体である樹脂発泡体で、この樹脂発泡体1は、マトリックス相と称される樹脂相2と気孔相3とが各々連続して形成され、互いに絡み合った周期構造を有している。この周期構造は、変調構造と称されるもので、樹脂相2と気孔相3との濃度ゆらぎが周期的に変化するものである。このゆらぎの1周期の長さXが、周期構造の1周期の長さ寸法となる。本実施形態では、1周期の長さXは5nm以上100μm以下で、好ましくは、10nm以上50μm以下である。
次に、本実施の形態の樹脂発泡体1の製造方法を図2に基づいて説明する。
図2(A)はバッチ式で浸透工程をするための装置を示し、図2(B)は冷却・減圧工程をするための装置を示す。
図2(A)において、所定の樹脂組成物1Aはオートクレーブ10の内部に配置される。このオートクレーブ10は、樹脂組成物1Aを加熱するためのオイルバス11に浸され、その内部には樹脂組成物1Aに浸透させるガスがポンプ12によって供給される。
本実施の形態では、樹脂組成物1Aを、(この樹脂組成物1Aの結晶化温度[Tc]−20)℃以上(Tc+50)℃以下の範囲に昇温させる。これにより、樹脂組成物1Aは超臨界状態のガス雰囲気中に配置されることになる。
図2(B)において、オートクレーブ10ごとアイスバス20に配置される。このアイスバス20は、その内部にドライアイスなどの冷媒や、徐冷する場合の温水や油などを導入および排出できる構造で、オートクレーブ10を冷却することで樹脂組成物1Aを冷却する。
また、オートクレーブ10には圧力調整装置21が接続され、オートクレーブ10から排出されるガスの量を調整することで、オートクレーブ10の内部圧力が調整される。なお、本実施の形態では、アイスバス20に代えてアイスボックスやウォーターバスなどを用いてもよい。
本実施の形態において、独立発泡セルを持つ難燃性発泡体を得る場合は、ガスが浸透された樹脂組成物1Aを冷却および減圧のうちの少なくともいずれか一方をすることで、脱ガスする。図1に示す様な周期構造を持つ難燃性発泡体を得る場合は、ガスが浸透した樹脂組成物1Aに急冷と急減圧と略同時に行うことで、脱ガスする。なお、樹脂組成物1Aの冷却速度および減圧速度は前述の範囲である。
図3は、射出成形中に超臨界状ガスの浸透工程をする連続式発泡法の装置を示す。
前述した難燃性の樹脂組成物を、ホッパから射出成形機内に投入する。そして、ガスボンベから出た二酸化炭素や窒素などを昇圧機で臨界圧力および臨界温度以上に昇圧し、制御ポンプを開き、射出成形機内に吹き込むことで、難燃性の樹脂組成物に超臨界状ガスを浸透させる。
超臨界ガスが浸透された難燃性の樹脂組成物は、金型キャビティ内に充満される。樹脂組成物が金型キャビティ内に流入することで、樹脂組成物に加わる圧力が減少すると、完全に金型キャビティ内に充満する前に浸透させたガスが抜ける可能性がある。これを防ぐために、カウンタープレッシャーを加えておいてもよい。そして、完全に金型キャビティ内に樹脂組成物が充満した後、金型キャビティ内に加える型圧を低くする。このことにより、樹脂組成物に加わる圧力は急減し、脱ガスが促進される。
本発明の難燃性発泡体は、必要に応じ、アルミナ、窒化珪素、タルク、マイカ、酸化チタン、粘土化合物およびカーボンブラックなどの無機充填材、酸化防止剤、光安定剤、顔料などを、発泡体100質量部に対し0.01質量部以上30質量部以下、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下含んでいてもよい。また、より高強度および高剛性を必要とする場合に、炭素繊維やガラス繊維などを、難燃性発泡体100質量部に対し1質量部以上100質量部以下含んでいても構わない。
次に、本発明の効果を具体的な実施例に基づいて説明する。なお、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
[原材料の調整(配合例1〜23)]
表1および表2に示す配合比になるようにドライブレンドした。この表1、表2の各成分は表3に記載のものを用いた。
[発泡前のフィルムの製造(製造例1〜23)]
(1)製造例1
表1に示す配合例1を、35mmφ二軸混練押出機にかけて、混練温度280℃、スクリュー回転速度300rpmで混練してペレットを得た。得られたペレットをプレス成形機にて、プレス温度280℃、ゲージ圧100kg/cm2でプレスし、150mm角×300μmのフィルムを得た。
(2)製造例2〜23
35mmφ二軸混練押出機にかける原材料および混練温度、製膜時のプレス圧(ゲージ圧)およびプレス温度を表4に示す条件にする以外は、製造例1と同様とした。
[実施例1]
表4に示す製造例3で得られた樹脂組成物としてのフィルムを、図2(A)に示すような超臨界発泡装置のオートクレーブ10(内寸40mmφ×150mm)中に設置する。そして、室温で昇圧して超臨界状ガスである超臨界状になった二酸化炭素をオートクレーブ10に導入する。さらに、室温を保ちながら15MPaまで昇圧させた後、オートクレーブ10を油浴温度140□のオイルバス11内に1時間浸した。その後、圧力弁を開放して、約7秒で常圧まで減圧すると同時に、水浴温度25□のウォーターバス内に浸して冷却し、難燃性発泡体としての発泡フィルムを調整した。
そして、得られた発泡フィルムを下記方法で評価した。結果を表5に示す。
(1)発泡セルの平均粒子径、気泡(セル)密度および気泡(セル)の均一性 発泡フィルムのSEM観察写真の断面切片にて、通常方法により評価した。気泡(セル)の均一性は、SEM観察写真を目視評価した。
(2)難燃性
株式会社広田社製S−EIGHT(使い捨てライタ)の炎を約2cmに調整し、発泡フィルムを5mm×10mmに切断した試験片の端面に1秒接炎する。そして、着火後から消火までの時間を測定した。
[実施例2〜21、比較例1〜23]
超臨界状二酸化炭素を浸透させるフィルムを表5または表6に示す製造例で得られるフィルムにした以外は実施例1と同様にして発泡させ、評価した。その結果を表5(実施例)および表6(比較例)に示す。なお、比較例3〜23は発泡させなかった例である。
産業上の利用可能性
本発明は、難燃性の樹脂組成物を微細に発泡させた難燃性発泡体およびその製造方法に関し、OA機器、電気電子機器および部品、自動車部品など、強度、剛性、耐衝撃性が要求されるとともに、軽量化および難燃化が求められる部分等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の一実施の形態にかかる発泡体としての樹脂発泡体を示すもので、図1(A)は樹脂発泡体の要部を拡大して概略斜視図であり、図1(B)は樹脂発泡体の二次元の模式図である。
図2は本発明の一実施の形態にかかる樹脂発泡体の製造方法(バッチ発泡法)を実施するための装置を示すもので、図2(A)は超臨界状ガスの浸透工程を実施するための装置概略図であり、図2(B)は冷却・減圧工程を実施するための装置概略図である。
図3は本発明の一実施形態にかかる樹脂発泡体の製造方法(連続発泡法)を実施するための装置を示す概略図である。
Claims (10)
- 熱可塑性樹脂および難燃剤を含有する樹脂組成物に超臨界状ガスが浸透され、この超臨界状ガスが浸透された前記樹脂組成物を脱ガスさせて得られたことを特徴とした難燃性発泡体。
- 請求項1に記載の難燃性発泡体において、前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネートであることを特徴とした難燃性発泡体。
- 請求項2に記載の難燃性発泡体において、前記ポリカーボネートは、分岐を持つポリカーボネートおよびポリジオルガノシロキサン部を含むポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体のうちの少なくともいずれか一方であることを特徴とした難燃性発泡体。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の難燃性発泡体において、前記難燃剤は、リン系、金属塩およびポリオルガノシロキサン系難燃剤から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とした難燃性発泡体。
- 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の難燃性発泡体において、前記樹脂組成物は、難燃助剤としてポリテトラフルオロエチレンを含有することを特徴とした難燃性発泡体。
- 熱可塑性樹脂および難燃剤を含有する樹脂組成物に超臨界状ガスを浸透し、この超臨界状ガスが浸透された前記樹脂組成物を脱ガスすることを特徴とする難燃性発泡体の製造方法。
- 請求項6に記載の難燃性発泡体の製造方法において、前記熱可塑性樹脂としてポリカーボネートを用いることを特徴とする難燃性発泡体の製造方法。
- 請求項7に記載の難燃性発泡体の製造方法において、前記ポリカーボネートとして分岐を持つポリカーボネートおよびポリジオルガノシロキサン部を含むポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体のうちの少なくともいずれか一方を用いることを特徴とする難燃性発泡体の製造方法。
- 請求項7ないし請求項8のいずれかに記載の難燃性発泡体の製造方法において、前記難燃剤としてリン系、金属塩およびポリオルガノシロキサン系難燃剤から選ばれる少なくとも一つを用いることを特徴とする難燃性発泡体の製造方法。
- 請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の難燃性発泡体の製造方法において、前記樹脂組成物に難燃助剤としてポリテトラフルオロエチレンを含有することを特徴とする難燃性発泡体の製造方法。
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