JPWO2002100777A1 - シリコンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、シラン類から、半導体級または太陽光発電級のシリコンを製造する方法に関する。さらに詳しくは、本発明はシリコン析出反応器内で基材上に析出したシリコンを、冷却することなくかつ少ない労力で析出基材から剥離させて回収することにより、反応器の稼働率を向上させることができる高純度シリコンの製造方法に関する。
発明の背景
従来から、半導体あるいは太陽光発電用電池(photo voltaic system)の原料として使用されるシリコンを製造する方法は種々知られており、そのうちのいくつかは既に工業的に実施されている。
その一つはジーメンス法と呼ばれる方法である。この方法は析出の基材となる細いシリコン棒(フィラメント)をベルジャー内部に配置して通電により加熱し、該基材にトリクロロシラン(SiHCl3)やモノシラン(SiH4)を接触させてシリコンを固体状態で析出させる方法であり、現在もっとも一般的に実施されている方法である。
ジーメンス法では、通電を停止した後、析出物であるシリコン棒を十分に冷却してからベルジャーを開放し、割れやすい析出物を慎重に回収した後、再び細いシリコンのフィラメントを精度よく設置しなければならないため、析出物を回収するごとに多大な労力を必要とするだけでなく、析出休止時間も長く、析出反応器の稼働率が低かった。
一方、析出反応器内で析出したシリコンを連続的に回収する方法については、特開昭59−121109号公報および特開昭51−37819号公報、特開2002−29726号公報に提案されている。これらは、シリコンの融点以上の温度に加熱した基材表面にシラン類を接触させ、シリコンを溶融状態で析出させながら、該析出物を溶融状態のまま基材表面より回収し、シリコン融液としてまたは冷却固化された塊状物として反応器より抜出す方法である。
この方法はシリコンの析出を高温域で行うために非常に析出効率がよく、安価にシリコンを製造することができる。しかし、この方法で得られるシリコンの融液は「万能溶媒」(super solvent)とさえ呼ばれるほどの強い反応性を持ち、該融液が接触する基材表面からの汚染を受けやすいという問題を有する。そのため、特に半導体用途に使用し得る程度の高純度のシリコンを得ることが困難な場合があった。
発明の目的
従って、本発明の目的は、シラン類から、半導体用または太陽光発電用のシリコンを連続的に析出回収することが可能であり、これにより反応器の稼働率を向上させることができ、また、シリコンの析出を溶融状態で行う従来のシリコンの製造方法に比べて、高純度のシリコンを連続的に製造することが可能なシリコンの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
発明の開示
本発明の上記目的および利点は、本発明によれば、同一装置内で、基材の表面をシリコンの融点未満の温度に加熱してシリコンを固体で析出せしめる工程と、上記シリコンの固体状での析出がある程度進行した時に、基材表面をシリコンの融点以上に加熱して該析出したシリコンの一部または全部を溶融させて落下せしめる工程とを繰り返すことによって達成することができる。
すなわち、本発明によれば、基材の表面をシリコンの融点未満の温度に加熱しかつ保持しながら、該基材表面にシラン類を接触させてシリコンを析出させる工程(以下、この工程を「工程1」ともいう)および基材表面温度を上昇させて、析出したシリコンの一部または全部を溶融させて基材表面から落下させかつ回収する工程(以下、この工程を「工程2」ともいう)を含むことを特徴とするシリコンの製造方法が提供される。
上記本発明の方法は、シリコンを固体状態で析出せしめることにより、シリコン析出時に上記シリコンが基材からの汚染をほとんど受けない。そして、回収に際しては、少なくとも基材表面のシリコンを溶融させて析出したシリコンを基材より落下させることにより、シリコンが析出時から融液の状態で存在する従来の方法に比べ、シリコンの融液が析出面の基材と接触する時間を短縮することができる。その結果、基材とシリコン融液との接触による汚染を効果的に低減することができる。また、本発明の方法によれば、シリコンの析出回収を連続的に実施することができる。さらに、基材表面へのシリコンの析出速度は、融点より僅かに低い温度領域で最大となるため、従来の溶融析出法に比べ析出速度が大きい温度領域を選ぶことができ、生産性の向上を図ることが可能である。
発明の詳細な説明
本発明の工程(1)は、基材表面をシリコンの融点未満の温度に加熱しかつ保持しながら、該基材表面にシラン類を接触させてシリコンを析出させる工程である。
上記工程(1)において用いられるシラン類として、下記式で表される化合物を挙げることができる。
SiaHbXc
(ここで、Xはハロゲン原子、アルコキシル基またはアルキル基であり、aは正の整数であり、bおよびcは互いに独立に0または正の整数である、ただし2a+2=b+cの関係を満足するものとする。)
Xのハロゲン原子は、好ましくは塩素である。アルコキシル基としては炭素数1〜2のアルコキシル基が好ましく、またアルキル基としては炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
かかるシラン類を具体的に示せば、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)のごとき水素化シラン;モノクロロシラン(SiH3Cl)、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、トリクロロシラン(SiHCl3)、四塩化珪素(SiCl4)のごときハロシラン;トリエトキシシラン(SiH(C2H5O)3)、テトラエトキシシラン(Si(C2H5O)4)のごときアルコキシシラン;メチルシラン(SiH3CH3)、ジメチルシラン(SiH2(CH3)2)のごときアルキルシラン;およびメチルジクロロシラン(SiHCl2CH3)、メチルトリクロロシラン(SiCl3CH3)、ジメチルクロロシラン(SiHCl(CH3)2)、ジメチルジクロロシラン(SiCl2(CH3)2)のごときアルキルハロシランなどが挙げられる。
本発明の方法により得られるシリコンを半導体用または太陽光発電用の原料として使用する場合には、これらのシラン類のうち、好ましくは、水素化シラン、ハロシラン、アルコキシシランを主成分として使用するのが好ましい。これらのうち、高純度に精製可能な、モノシラン、ジシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、四塩化珪素、トリエトキシシラン、テトラエトキシシランを用いるのがさらに好ましく、工業的に大量生産することができかつ広く用いられている、モノシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、四塩化ケイ素を使用するのが特に好ましい。シラン類は1種または2種以上を一緒にして用いることができる。
これらのシラン類は、シラン類単独でまたは必要であれば水素と共にガス状で反応系に供給するのが有利である。
本発明において、基材の加熱は、電流または電磁波によって行う方法が簡便であり好ましい。
例えば、基材の加熱を電磁波によって行う場合、電磁波の周波数は、数百Hz〜数10GHzのものが使用できる。このとき適切な周波数は、加熱される基材の材質や形状に応じて、適宜選択される。
本発明において、その表面にシリコンを析出させるための基材の材質は、シリコンの融点以上の温度まで直接あるいは間接的に加熱することのできる物質からなることが必要である。かかる材質としては、例えば、グラファイトに代表される炭素材料、炭化ケイ素のごときセラミックス材料が挙げられる。炭素材料が最も好ましい。
上記炭素材料を基材として使用した場合、シリコン融液との接触により一部または全部が炭化ケイ素に変わるが、本発明においては、その状態で基材として使用することが可能である。
また、析出するシリコンと直接接触する上記基材の表面部分は、シリコンの溶融液に対して比較的耐性の高いものによって構成することができる。具体的には、電磁波によって基材を加熱する場合、表面部分を、例えば、窒化ケイ素、炭化ケイ素、熱分解炭素等の材料で被覆することが好ましい。被覆方法は限定されない。別途成形したインサートによって行うのが好都合である。
本発明の重要な目的の一つは、シリコンをシリコンの溶融温度で析出させる従来の方法に対し、溶融シリコンによる基材の劣化、およびそれに起因する製品シリコンの汚染を防止することにある。従って、原料ガスと基材との接触によってシリコンの析出を行う工程(1)において、該基材表面はシリコンの融点未満に維持することが重要である。
すなわち、シリコンを溶融状態で析出する従来の方法では、析出物は常にシリコンの融液が基材と接触するため、析出物は常に汚染の機会にさらされていることになる。これに対し、本発明による工程(1)では、シリコンは固体状で析出するため、基材がどのような材質であっても、ほとんどの析出物は高純度のシリコンの固体表面上に順次析出し、析出物はジーメンス法と同様に本質的に高純度である。しかも、析出温度を可及的にシリコンの融点に近づけることにより、析出速度を一層速めることができる。
また、本発明の工程(1)では、析出基材の大きさは、シリコン融液の表面張力と自重による制限を受けることもないため、十分に大きくすることができるので、工業的な生産量を十分に確保することが可能である。
工程(1)の基材表面の温度は、好ましくはシリコンが析出する600℃以上であればよいが、シリコンの析出効率を向上させるためには、好ましくは1,100℃以上、さらに好ましくは1,250℃を超える温度、最も好ましくは1,350℃以上である。
これらの好ましい析出温度は、従来のジーメンス法では採用し難い条件であり、本発明の方法であるが故に採用が可能な温度である。すなわち、上記析出温度が1,100℃の場合、ジーメンス法では凹凸の多い表面形態が発生して正常な析出の継続が困難となりやすい。また、上記析出温度が1,250℃以上になるとジーメンス法では析出物が溶断する可能性が極めて高くなる。
また、工程(1)におけるシリコンの析出温度の上限は、シリコンの融点未満である。この上限温度であるシリコンの融点については種々の見解があるが、概ね1,410〜1,430℃の範囲にあると理解されるべきである。
本発明は、工程(2)において、基材表面の温度をシリコンの融点以上の温度に上昇させ、析出したシリコンの一部または全部を溶融させ、基材表面から析出物を落下させて回収する。
また、工程(2)において上昇させる基材表面の温度は、析出したシリコンが溶融する温度すなわちシリコンの融点以上であればよい。しかし、高温になるほど不必要にエネルギーを消費したり、場合によっては基材材質の劣化が促進されたりすることがあるため、1,600℃以下であることがより好ましい。
本発明の工程(2)において、基材表面に析出したシリコンの一部または全部を溶融させて落下させるため、基材温度をシリコンの溶融温度以上に上昇させて維持する時間を回収時間とした場合、かかる回収時間は、回収シリコンの汚染防止、基材材料の劣化、および析出反応器の稼働率向上を図るために、できるだけ短いことが望ましい。すなわち、回収時間は全運転時間に対して好ましくは30%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満となるようにすることが好ましい。
上記工程(2)において、基材表面に析出したシリコンの一部または全部を溶融させて落下させるためには、該シリコンの存在する基材表面を前記したシリコンの融点以上の温度に加熱すればよい。この基材表面の温度を上昇させる手段としては、前記加熱のための電流、電磁波の出力を増加させる方法が一般的である。また、上記方法と組合せてあるいは単独で、反応装置に流れるガス流量を減少させる方法も採用することができる。
この場合、該基材表面に析出したシリコンを安定して落下させるために、反応装置は、基材表面の加熱を分割して制御できるようにすることが好ましい。具体的には、基材を電磁波によって加熱する態様においては、該電磁波を印加するための加熱コイルを複数段に分割し、各分割段において出力を独立して制御できるようにしたものを使用することが推奨される。
本発明において、基材表面の温度をシリコンの融点以上まで上昇させる方法としては、例えば、電磁波による加熱においては加熱コイルの出力を上昇させる方法が挙げられる。
上記説明は、基材の加熱態様を、電磁波を使用して行う方法を中心に行ったが、基材に電流を流して加熱することも可能である。
なお、シリコンは半導体であり、析出反応を行う高温下ではシリコンもかなりの導電性を有する。従って、導電性の基材を使用し、これに電流を流して加熱することにより該基材表面にシリコンを析出させる場合には、必然的にシリコン析出物自体にも電流が流れている。上述の析出したシリコンの溶融を行うために電流を増大させると、シリコンの基材との接触面の一部が溶け始め、該部分に電流密度が集中する結果、該部分を起点として上記接触面における溶融が優先的に起こり、基材表面に析出したシリコンを落下させることができる。
上述した加熱方法において、電磁波によって基材を加熱する方法では、基材の加熱によるシリコンの溶融は析出層の厚みや結晶状態に影響されることがないため、本発明の加熱方法としては該電磁波による加熱方法がより好ましい。
本発明の方法は、基材表面の析出物を一部または全部溶融して回収する工程(2)を採用することによって、従来のジーメンス法で必要であったバッチ操作における、ベルジャー内部のガス置換、開放、新規なシリコンフィラメントの設置などの作業を一切省くことができ、装置の稼働率を著しく向上させることができる。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの添付図面に示された態様に限定されるものではない。
図1、2は、電磁波(高周波)によって基材を加熱するようにした反応装置を使用した、本発明の方法における各工程を示す概念図である。
図1、2に示される装置は、析出原料となるシラン類を供給する供給口1、電磁波を発生させる加熱装置2、電磁波によって加熱される基材3、析出物を落下回収する回収部4および排ガス出口5を備えたケーシング13よりなる。このとき、加熱される基材3との間に、図1、2に示すように、電磁波を遮らない物質よりなる隔壁8を挿入する構成とすることによって、電磁波を発生する加熱装置2を、該基材3の存在する雰囲気と隔離することが好ましい。
上記電磁波を遮らない物質として、例えば石英、サイアロン、窒化アルミニウム等の耐熱性を有しかつ絶縁性を有する材質が好適である。
また、図1は、基材3が棒状であり、その外面にシリコンを析出させるようにした態様を、図2は、基材が下方に開口した筒状であり、その内面にシリコンを析出させるようにした態様をそれぞれ示す。これらの態様のうち、特に、基材が筒状の態様(図2)が、加熱効率が良好であり好適である。
さらに、図1、2において、(a)は、工程(1)により基材表面にシリコン11を析出させている状態を示しており、(b)は、工程(2)により該シリコン11を溶融落下させた状態を示している。
上記工程(1)において、基材表面のシリコンの析出領域以外の基材表面に原料ガスが接触しないようにシールガスを供給することが好ましい。
図2には、筒状の基材と原料ガス供給口1との間隙にシールガス供給口9よりシールガスを供給するようにした態様が示されている。かかるシールガスとしては、水素、アルゴン等のガスが好適に使用される。
また、上記シールガスと共にあるいはシールガスに替えて、シリコンと反応して原料ガスを生成する反応試剤を連続的または断続的に供給することによっても、析出領域外でのシリコンの析出を防止することができる。かかる反応試剤としては、例えば塩化水素、四塩化ケイ素等が使用される。
さらに、前記筒状の基材を使用する場合、該筒状の基材の外面に存在する空間部、図2および4においては、基材3と隔壁8との間の空間部に四塩化ケイ素と水素とを供給し、該空間部の熱を利用してトリクロロシランを生成させることも可能である。生成したトリクロロシランは、一部が筒状の基材の内面においてシリコンの析出反応に使用され、残部は、排ガス取出口5より回収され、公知の精製手段を経て原料ガスとして再利用することができる。
さらにまた、前記電磁波を遮らない物質よりなる隔壁8を挿入する態様においては、ケーシング13と該隔壁間に、前記シールガスを供給することが好ましい。
図3は、本発明において、電流による加熱手段を用いた代表的な反応装置の概念図を示している。この場合、図1や図2に示す反応装置と同様、原料ガス供給口1、排ガス出口5、回収部4が設けられる。
上記図3に示すように、基材3は棒状物を連結して通電可能とした態様でもよい。また、他の態様として、基材を絶縁材により構成し、該基材とは別に、電流を流すことにより発熱する発熱体を用意し、該発熱体により該基材を加熱することにより、基材に析出するシリコンから該発熱体を電気的に隔離する態様としてもよい。後者の態様を具体的に示せば、前記筒状の絶縁物を基材とし、電流を流すことにより発熱する発熱体をその外周面に設け、該筒状絶縁物の内側表面でシリコンの析出を行うこともできるし、内部に空間を有する絶縁物を基材とし、その内部に上記発熱体を設けて該絶縁物の外側表面でシリコンの析出を行うこともできる。
上記電流を流すことにより発熱させる態様において、シリコン析出時と該析出したシリコンの溶融時との温度の切り替えは、電流量を調節して行うことができる。この場合、電磁波発生装置2にかえて、基材温度および析出表面温度を適切に調節するための電流電源装置6を用いる。上記電流電源装置6としては、交流電源と直流電源のいずれも好適に使用できる。
本発明において、回収部4からのシリコン11の取り出し方法は特に制限されない。図4は、本発明の方法を工業的に実施するために好適な構造を有する反応装置の概念図を示すものである。図4には、回収部4よりシリコン11の取り出しを行う一態様として、析出反応の空間と回収部の間を雰囲気遮断器7で雰囲気を遮断できる構造が示されている。より具体的には、雰囲気遮断器の代表的な態様として、板状体をスライドさせてその上下の雰囲気を遮断する態様が挙げられる。
本発明に使用する反応装置を上記のような雰囲気遮断器を備えた構造とすることによって、上部に設置したシリコン析出部では析出反応を継続しながら、下部に位置する回収部4を開放して、落下回収したシリコンを外部に搬送することができる。
上記外部への搬送手段は、落下するシリコン11を回収部4に設置した受皿15で受け、シリコンが所定量程度蓄積した状態で取り出すようにすることが好ましい。
一方、析出反応の空間と回収部の間を特に遮断する構造としない場合には、析出原料ガスの供給を停止し、一旦不活性ガスなどに切り替えた後、落下回収物を外部に搬送することもできる。この場合も、加熱基材を加熱状態で保持しておけばよいため、析出原料ガスの供給を開始すれば、速やかに析出を開始することができ、シリコン製造の稼働率を著しく低下させることはない。
また、シリコン析出物は、析出部から落下させるごとに反応器外部に搬出回収してもよいが、経済的には、反応器下部に比較的大容量の回収部4を設置し、該回収部に数回落下させた後まとめて反応器外部に搬出回収する方法が好適に採用される。
本発明において好適に使用することができる前記反応装置に示したように、シリコンの回収部4を一体としてケーシング13を設ける場合には、該ケーシングの材質として公知の鉄鋼材料や炭素材料等を使用することができる。
この場合、落下により上記鉄鋼材料等と接触して汚染を受けた回収物は、必要であれば、化学的洗浄などで表面をエッチングすることにより、製品として問題なく使用できる。より好ましい態様は、シリコンの落下面を高純度シリコンで構成する態様であり、これにより回収物の汚染はより一層防止される。
本発明において、回収される析出物の形状は、前記したシリコンの析出物と基材との接触部分を加熱してシリコンを固体状で回収した場合、基材表面の形状を転写した形状の塊状物として得られる。本発明では、これをそのまま製品としてもよいし、必要であれば冷却後の工程で破砕して製品とすることもできる。
また、析出物を溶融液として落下させて回収する場合、該溶融物は公知の凝固法によって冷却凝固させ、粉末状として回収してもよいし、回収部に容器を設置してその容器内に回収し、凝固させて製品とすることもできる。
発明の効果
以上の説明より理解されるように、本発明によれば、従来のジーメンス法では必要であったバッチ操作における、ベルジャー内部のガス置換、開放、新規なシリコンフィラメントの設置などの作業を一切省くことができ、稼働率の向上と作業費の低減によって製造コストを大幅に低減できる。また、シリコンを溶融状態で析出させる技術と比較して、基材とシリコン溶融液が接触する機会が極めて少なくなるため、十分な高純度製品を得ることができる。
従って、本発明は、工業的に極めて有用な高純度シリコンを、従来法より効率的に製造することを可能にするものであり、その価値は極めて高い。
実施例
以下、本発明を詳細に説明するために実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
図4に示された構造を有する反応装置を使用した。具体的には、基材3として、内壁にCVD−SiCをコーティングした、内径50mm、長さ300mm、厚さ1mmのグラファイト製円筒を使用し、その外周部にサイアロンよりなる円筒の隔壁8を介して加熱装置2として8kHzの周波数をもつ電磁波発生コイルを設け、該コイルより電磁波を印加してグラファイト筒を加熱するようにした。
上記加熱装置2により基材3のグラファイト円筒を加熱し、その内表面の温度がほぼ均質にほぼ1,400℃となるように維持した。次いで、該基材2の内部に、原料ガスとして水素100NL/min、トリクロロシラン60g/minの割合で、水素とトリクロロシランの混合ガスを供給口1より、供給管12を通して供給し、基材の内面にシリコンを固体の状態で析出させた。また、排ガスは排ガス出口5より排出し、公知の方法により未反応物を回収、精製して原料ガスとして再利用した。
上記操作において、シールガス供給口9からは、水素ガスを供給して上記供給管12と基材3との間隙におけるシリコンの析出を防止した。また、前記円筒の隔壁8とケーシング13との間および基材3と円筒の隔壁8との間には、水素ガスをシールガスとして供給した。
上記シリコンの析出を2時間連続して行った後、トリクロロシランの供給を停止し、水素の供給量を下げた後に、基材3の内表面温度がほぼ1,500℃で一定値になるよう加熱装置2の電磁波出力を調整したところ、円筒からグラファイトの内壁と接触していた部分のみ溶解し、大部分が固体のままのシリコン塊が落下した。このようにして得られたシリコンの量を測定したところ、時間当りの析出重量は約370gであった。
その後、上記析出を3時間行い、析出物を溶融落下させる操作を繰り返し、3日間運転を継続した。操作終了後、開放してグラファイト筒を検査したが、異常は認められなかった。
また、回収物の全量を単結晶化させ、FT−IR法によってカーボン濃度を測定したところ、約1ppmであった。
回収部4には、底面にシリコンを配した受皿15を設置し、落下したシリコン11をここで回収した。また、この受皿15内にシリコンが一定量に増えた場合には、シリコン析出時に雰囲気遮断器7により回収部4と反応部との空間を遮断し、回収部4のガス置換を行った後、シリコン取出口14を開放して上記受皿を取り出した。次いで、代わりの受皿を回収部4にセットし、シリコン取出口14を閉じて、雰囲気遮断器7による遮断を解き、定常の運転を行った。
実施例2
実施例1において、基材3のグラファイト製円筒の内壁に熱分解炭素をコーティングし、同様にしてシリコンの析出、溶融を行った。
その結果、時間当りのシリコンの析出量は約370gであった。また、回収物の全量を単結晶化させ、FT−IR法によってカーボン濃度を測定したところ、約2ppmであった。
実施例3
実施例1において、基材3のグラファイト製円筒の内壁に焼結で成型した窒化珪素製の筒を挿入した以外は、同様にしてシリコンの析出、溶融を行った。
その結果、時間当りのシリコンの析出量は約370gであった。また、回収物の全量を単結晶化させ、FT−IR法によってカーボン濃度を測定したところ、検出下限の1ppm以下であった。
実施例4
実施例1において、基材3のグラファイト製円筒をそのまま使用した以外は、同様にして、シリコンの析出溶融を行った。
その結果、時間当りのシリコンの析出量は約370gであった。また、回収物の全量を単結晶化させ、FT−IR法によってカーボン濃度を測定したところ、約5ppmであった。
実施例5
実施例4において、グラファイト円筒内表面の温度をほぼ1,300℃に維持した以外は、同様にして、シリコンの析出、溶融を行った。
その結果、時間当りのシリコンの析出量は150gであった。また、回収物の全量を単結晶化させ、FT−IR法によってカーボン濃度を測定したところ、約1ppmであった。
実施例6
図4に示した反応装置において、基材3として、直径25mm、長さ300mmのCVD−SiCをコーティングしたグラファイト製棒に替え、この基材3を吊下した状態で、その周囲から、石英よりなる筒状の壁8を介して300kHzの周波数をもつ加熱装置2より電磁波を印加してグラファイト棒を加熱した。基材表面温度を1,300〜1,400℃に維持しながら、供給口1より水素100NL/min、トリクロロシラン60g/minの割合で、水素とトリクロロシランの混合ガスを、前記基材と筒状の隔壁8との間に供給してシリコンを2時間にわたり析出させた。
次いで、電磁波出力を上昇し基材3の表面温度を上昇させたところ、シリコンが溶融物として落下した。冷却された落下物の重量を測定すると、時間当りの析出重量は約180gであった。また、回収物を単結晶化してFT−IR法にてカーボン濃度を測定すると、約1ppmであった。
その後も同様な操作を繰り返してシリコンの析出、溶融回収を実施したが、3日間問題なく運転を継続できた。
実施例7
反応装置として、図3に示すように、直径20mm、片側の長さ300mmのグラファイト製棒状物をV字型に接続し、これをケーシング13の上部から吊下して配置し、外部から交流電源装置6によってカーボン棒に通電して加熱を行った。
上記基材であるグラファイト棒の表面温度を1,200〜1,400℃に維持しながら、ケーシング13内に供給口1より、水素100NL/min、トリクロロシラン60g/minの割合で、水素とトリクロロシランの混合ガスを供給した。
シリコンの析出を3時間連続して行った後、電流出力を上昇して基材3の表面温度を融点以上に上昇せしめたところ、シリコン析出物が落下した。落下回収したシリコンは、基材上で溶融中に、ほとんどが溶融状態を履歴したと考えられる性状を呈していた。また、時間当りの析出重量は約250gであった。また、上記方法で回収されたシリコンの全量を単結晶化させ、FT−IR法によってカーボン濃度を測定したところ、約5ppmであった。
その後も、上記シリコンの析出、溶融を繰り返し、3日間連続して運転を行ったが、全く問題はなかった。
比較例1
実施例1において、シリコン析出時における基材の表面温度をほぼ1,500℃とし、析出したシリコンを基材3より常時落下するようにした以外は、同様にしてシリコンを製造した。
その結果、時間当りのシリコンの析出量は230gであった。また、回収物の全量を単結晶化させ、FT−IR法によってカーボン濃度を測定したところ、約7ppmであった。
【図面の簡単な説明】
図1は、代表的な態様の反応装置を使用した本発明の方法における各工程を示す概念図である。また、図2は、他の代表的な態様の反応装置を使用した、本発明の方法における各工程を示す概念図である。さらに、図3、4は、本発明で使用される反応装置の他の態様を示す概略図である。
Claims (2)
- 基材の表面をシリコンの融点未満の温度に加熱しかつ保持しながら、該基材表面にシラン類を接触させてシリコンを析出させる工程および基材表面温度を上昇させて、析出したシリコンの一部または全部を溶融させて基材表面から落下させかつ回収する工程を含むことを特徴とするシリコンの製造方法。
- シリコン析出時の基材表面温度が1,350℃以上シリコンの融点未満の温度の範囲にある請求項1に記載の方法。
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