JPWO2002097483A1 - 制御された散乱特性を有する光拡散フィルムおよびそれを用いた光学素子および液晶表示装置 - Google Patents

制御された散乱特性を有する光拡散フィルムおよびそれを用いた光学素子および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

従来以上に視野角においてより明るい画像を提供するような選択的光拡散性、さらには集光性を有する光拡散フィルムとして、光を散乱透過させる屈折率の異なる二相からなる光拡散フィルムにおいて、屈折率の大きい一相がフィルムの厚さ方向に延在する柱状構造を有する多数の領域を含み、前記多数の領域は柱状構造の横断面形状が長尺状の領域を含み、かつ前記長尺状領域がフィルムの特定方向に配向していることを特徴とする。又その光拡散フィルムを用いた光学フィルムおよび液晶表示装置を提供する。

Description

発明の技術分野
本発明は制御された散乱特性を有する光拡散フィルムおよびそれを用いた光学素子および液晶表示装置に関する。
背景技術
反射型の液晶表示装置あるいは半透過型の液晶表示装置では、一般に、入射光が液晶層を透過し反射膜で反射され再び液晶層を透過して視者の目に表示画像が入る際に、液晶層の表面に及び/又は液晶層と反射膜の間に光散乱フィルムを配置して光を散乱させることにより、広い視野角で画像の視認を可能にしている。光散乱はまた光拡散とも言われる。
光散乱を得る方法としては、例えば、プラスチックフィルムに透明微粒子を分散含有させて光を散乱させる方法や、プラスチックフィルムの表面を粗面化して光を散乱させる方法が代表的である。
また、複屈折特性が異なる微小領域を分散分布させてなる複屈折フィルムの重畳体からなり、複屈折性フィルムを微小領域との屈折率差を利用して、光を散乱させる方法が提案されている(特開平11−174211号公報)。
高分子フィルム中に同じ高分子からなる微小結晶領域が分散分布してなり、その微小領域と他部分との屈折率が相違して光散乱性を示すフィルムも提案されている(特開平11−326610号公報、特開2000−266936号公報、特開2000−275437号公報など)。
しかしながら、上記のような光散乱方法は、いずれも基本的に光を等方的に散乱させるものであるので、バックライトを用いない反射式液晶画面では画像が暗くなる欠点がある。
これに対して、高分子フィルム中に屈折率の高い領域をフィルムの厚さ方向に円柱状に多数形成した光拡散フィルムが販売されている。この拡散フィルムによれば、一方向の散乱と逆方向の透過性を両立させ、また選択的な視野角/拡散性能も実現できると謳われている。
確かにこの拡散フィルムによれば、等方散乱タイプの従来の散乱フィルムなどと比べて、特定の視野角において相対的に明るい画像を得ることができる。
しかしながら、携帯電話などのように入射光の少ないところでも使用される液晶表示装置では、特に反射型あるいは半透過型液晶表示装置においてさらに高い明度の画像が望まれる。
本発明はこのような従来技術の課題を解決せんとするものであり、従来以上に視野角においてより明るい画像を提供するような選択的光拡散性、さらには集光性を有する光拡散フィルム、それを用いた光学フィルムおよび液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
発明の開示
本発明は、上記の目的を達成するために、下記を提供する。
(1)光を散乱透過させる屈折率の異なる二相からなる光拡散フィルムにおいて、屈折率の大きい一相がフィルムの厚さ方向に延在する柱状構造を有する多数の領域を含み、前記多数の領域は柱状構造の横断面形状が長尺状の領域を含み、かつ前記長尺状領域がフィルムの特定方向に配向していることを特徴とする光拡散フィルム。
(2)前記長尺状領域の前記横断面の長軸および短軸の平均アスペクト比が1.2:1〜10:1の範囲内である(1)に記載の光拡散フィルム。
(3)前記多数の領域は柱状構造の軸線が互に平行であり、かつその軸線がフィルムの法線方向に対して傾斜している(1)(2)に記載の光拡散フィルム。
(4)前記多数の領域は柱状構造の軸線がフィルムの法線方向である(1)(2)に記載の光拡散フィルム。
(5)前記フィルムの屈折率の異なる二相の屈折率の差が0.005〜0.2の範囲内である(1)〜(4)に記載の光拡散フィルム。
(6)前記フィルムが感光性を有する高分子材料から製造されたものである(1)〜(5)に記載の光拡散フィルム。
(7)(1)〜(6)に記載の光拡散フィルムを用いたことを特徴をする光学素子。
(8)(7)に記載の光学素子を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
(9)光拡散フィルムの前記領域の横断面の前記長軸方向が液晶表示装置の視点方向から見て左右方向になるように、光拡散フィルムが配置されている(8)記載の液晶表示装置。
(10)光拡散フィルムの前記領域の柱状構造の軸線方向がフィルム法線方向に対して傾斜しかつその傾斜方向が視点に対して遠ざかる方向である(9)記載の液晶表示装置。
(11)液晶表示装置が偏光フィルムを含み、偏光フィルムの偏光軸が液晶表示画面の視点方向から見て左右いずれか方向に傾けて設置され、光拡散フィルムの前記領域の横断面の前記短軸方向が偏光フィルムの前記偏光軸方向に配置されている(8)記載の液晶表示装置。
発明の実施の形態
本発明を説明するために、従来の光拡散フィルムにおける光拡散現象を先に図を参照して説明することが便宜である。
図1Aは高屈折率領域を円筒状に形成した従来の光拡散フィルム1の横断面図である。高分子フィルム2中に光の波長に近い直径を有する円柱状の高屈折率領域3がフィルム表面に垂直に形成されている。このような円筒状高屈折率領域3は円柱レンズとして機能し、フィルムに垂直に即ち円柱の軸線に平行に入射した光は例えば半値幅約10〜20度のガウス分布の散乱を示すことができる。図1Aの光拡散フィルム1においてフィルム1に対する入射角が大きくなって、円柱の軸線に対して大きく傾斜した角度で入射するようになると、光は散乱性を失い、高い透過性を示すようになる。例えば、フィルム表面に対して45度〜60度の角度で入射した光は殆ど散乱されず、透過する。
図1Bは、フィルム表面に垂直の角度(入射角ゼロ度)で入射した光がこのフィルムを透過したとき出射角θの透過光の強度を示す。透過光強度はガウス分布をしているが、この半値幅をもって散乱の広がり、選択性を表すことができる。図1Bでは半値幅は10°である。
図1Cは高分子フィルムにフィラーを分散させたタイプの従来の散乱フィルムの模式横断面を、図1Dはその透過光の図1Bと同様の散乱強度を示す。図1Bと図1Dを比較すると、図1Aの光拡散フィルム1が選択的な散乱特性(特定幅内の散乱)を示すことが示されている。
図2は図1Aの拡散フィルムの入射光の方向および入射角に依存する散乱特性を表示したものである。座標の中心は、フィルム表面に垂直に光が入射する場合を表し、この座標中心に描かれた図形(円4)はフィルム表面に垂直に光が入射する場合の透過散乱光の指向性と強度を示す。円4は散乱光が等方的に散乱することを表し、円の大きさは散乱強度が大きいことを表すので、出射光は入射光軸に対してあまり大きくない角度(例えば10〜20°)で強く散乱したことを示している。座標軸のx軸上の楕円状の図形5,6は、フィルム表面に垂直な方向からフィルムのx軸方向(図1の図面法線方向をx軸方向とする)に角度θ(x)だけ傾斜して光が入射する場合の透過散乱光の指向性と強度を示す。この透過散乱光5,6は、全体として散乱強度が垂直入射の場合より弱く、しかもy軸方向に比べてx軸方向の散乱が少ないことが見られる。同様に、座標軸のy軸上の円または楕円状の図形7,8は、フィルム表面に垂直な方向からフィルム上のx軸に垂直なy軸方向に角度θ(y)だけ傾斜して光が入射する場合の透過散乱光の指向性と強度を示す。この透過散乱光7,8は、全体として散乱強度が垂直入射の場合より弱く、しかもx軸方向に比べてy軸方向の散乱が少ないことが見られる。図2を参照すると、フィルム表面に垂直な方向から光が入射した場合(入射角ゼロ度)4には、一定の範囲の強い散乱が観測されるが、入射角が大きくなると楕円5〜8の径が小さく成っており、即ち、光散乱が減少し殆どの光が透過することが読み取られる。また、傾斜して入射する場合5〜8、入射方向に対して平行方向よりも横方向に余計に散乱することも示されている。
図3Aは、図1Aと同様の円柱状領域(円筒レンズ)23を高分子フィルム22の表面に対して法線方向ではなく、フィルムのy軸方向(図3Aの左方向がy軸正方向とする)に角度θだけ傾斜させて形成した拡散フィルム21の横断面を示す。このフィルムの光散乱は、円柱状領域23の軸線方向から入射した場合が図1Aの拡散フィルムの法線方向から入射した場合に相当する特性を示す。結果として、フィルム表面を基準に図2と同様に散乱特性を表現すると、図3Bになる。
図3Bにおいて、フィルムのy軸正方向の角度θから入射した場合の透過光24は、図1Bのフィルムの法線方向から入射した場合に相当するので円形散乱を示す。フィルムの法線方向から入射した場合の透過光25は、図2のフィルムのy軸マイナス角度θから入射した場合に相当して、透過光24よりは散乱強度が小さいがx軸方向への指向性が強い楕円状散乱を示す。フィルムのy軸負方向の角度θから入射した場合の透過光26は、円筒レンズの軸線に対して入射角が大きく傾斜して円筒レンズの横断方向から入射するので、散乱(強度)が小さくなっている。また、フィルムのx軸方向から入射した場合の透過光27、28は、図3Bに見られるように、傾斜した楕円状の散乱特性を示し、いずれの透過光27,28もy軸方向への指向性が強くなる傾向を示している。
その結果、図3A及び図3Bの拡散フィルムを反射膜と組み合わせて使用したとき、y軸負方向を視者(目視方向)とすると、正面(y軸正方向)からの入射光は一定の角度範囲で強く散乱され、従って視者方向にも一定の強い散乱があり、かつ反射光は散乱が少ない。また、左右(x軸正負方向)からの入射光は一定強度で散乱され、また視者方向への集光効果もあり、しかもその透過光の反射光も散乱は少ないといえる。以上のことから、図3A及び図3Bの拡散フィルムを具備した液晶表示装置、例えば、携帯電話の表示画面をy軸負方向ないし正面から見るとき、正面(y軸正方向)あるいは左右(x軸正負方向)からの入射光(照明光)は視者の方向に一定の集光効果をもって散乱するので、図2の等方的散乱フィルムの場合と比べて視者からは明るい画面が観測されることになる。
本発明者が知る限りでは、従来技術では、図3Aの態様の拡散フィルムが図1の拡散フィルムを含む他の拡散フィルムと比べて、選択散乱特性および集光効果が優れていることまでは報告されていない。しかし、従来技術の開示の態様には高分子フィルムに円筒状領域を傾斜して形成して拡散フィルムとして使用できるとの開示が含まれている。いま仮に、その傾斜方向を全て同じに形成した場合には、図3Aの態様の拡散フィルムになる。
これに対して、本発明は、高分子フィルム中に断面形状が長尺状の円柱構造の高屈折率領域をフィルム膜厚方向に延在するように多数形成し、かつその長尺状の領域をフィルムの特定方向に配向させた拡散フィルム、好ましくはその長尺状の円柱構造をフィルム表面に傾斜して平行に形成した拡散フィルムを提供するものであり、その特定の構成及び効果は従来技術では開示または示唆されていないものである。
図4は、そのような本発明の拡散フィルムの1例のフィルム表面を示すものである。拡散フィルム31は高分子フィルム32中に分散して形成された高屈折率領域33を多数有し、かつこの高屈折率領域33は長尺状であり、かつフィルムの特定方向に配向している。図4において、高屈折率の長尺状領域33の長軸が配向された方向をフィルムのx軸方向、短軸方向をフィルムのy軸方向とする。
本発明の拡散フィルム31において高屈折率の長尺状領域33を傾斜させる場合、傾斜方向はy軸方向が好ましい。図5Bは、図4のような表面パターンを有し、図5Aに示す如くy軸方向に角度θ(約20°)だけ傾斜した長尺状領域(アスペクト比約2:1)33を有する拡散フィルムについての、図2と同様の散乱特性を模式的に示すものである。
図5Bにおいて、フィルムのy軸正方向からの入射光は長尺状断面の柱状構造によって散乱されるとき、高屈折率の長尺状領域33の長軸方向が短軸方向より光透過性が高いために、フィルムを透過した光の散乱特性は楕円34で表されるようにy軸方向への指向性が強い散乱を示し、かつこの散乱光の楕円は同じ傾きの円柱状構造を透過した場合よりも余計にy軸方向への指向性散乱特性である。フィルムの法線方向から入射した場合にもなおy軸方向への指向性散乱特性35を示すことができる。フィルムの左右方向(x軸方向)から入射した光についても同様であり、図3Bの場合の散乱特性をy軸方向に長くなるように変形した散乱特性36、37が得られる。いずれの場合も、視者方向(y軸負方向)への散乱光強度は図3Bの場合より強くなっている。図5Bにはxy座標の第1象限および第2象限の方向からの入射光についての透過散乱特性38も示した。これらの透過散乱特性38も、視角方向(y軸負方向)への散乱光強度が強く表れている。従って、拡散フィルムを表示画面とすると、視者に対して、視者の背後以外の全ての方向、特に正面方向の広い角度からの入射光(照明光)が、高屈折領域が円柱状構造の場合よりもより強く視角方向(y軸負方向)へ散乱集光することが示されている。さらに、視角方向(y軸負方向)の透過散乱特性39は、むしろy軸方向に短くなる傾向を示しており、このことは透過率が高いと解釈でき、上記の如く、視者の背後以外の全ての方向から選択的に散乱集光した光を、反射膜で反射された後、無駄に散乱することなく視角に反射してくることを意味する。従って、この点も反射画像の明るさの向上に寄与する。
本発明の拡散フィルムは、上記の如く、柱状構造がフィルム表面に対して傾斜していることが好ましいが、必ずしも傾斜している必要はなく、フィルムの法線方向に形成されていてもよい。
図6Bは、図4に示したような表面パターンに高屈折率領域43を高分子フィルム42中に形成しかつ図6Aに示す如く柱状構造をフィルム法線方向に形成した拡散フィルム41の、図2と同様の散乱特性を模式的に示すものである。
この場合、フィルムに垂直に入射した光は、前述のように楕円の長軸方向の光透過性が短軸方向より高いので、楕円の短軸方向、即ち、フィルムのy軸方向(図の左右方向)により多く散乱する(透過光散乱特性44)。y軸方向に傾斜して入射した光のy軸方向の散乱は、柱状構造に対して斜めに入射する分だけ法線方向入射の場合より少ないが、やはりy軸方向に散乱する(透過光散乱特性45,46)。一方、フィルムのx軸方向(図の法線方向)から傾斜して入射する光は、柱状構造に対して長軸方向に入射するため、短軸方向(y軸方向)への散乱はずっと少なくなり、全体として散乱が少なくなる(透過光散乱特性47,48)。
図6の場合にも、散乱特性は、高屈折率領域が円形から長尺状に変化したことにより、視角方向への散乱が多い散乱特性、特に視者に対して正面方向からの入射光の選択的散乱が高い散乱特性44、45が得られる。
本発明の拡散フィルムにおける長尺状の横断面形状を有する柱状構造の形成方法は特に限定されず、従来公知の全ての方法から選択採用できるが、感放射線性を有する高分子フィルムに選択的に放射線照射して、高屈折率の柱状構造を形成する方法が好ましい。高分子フィルムは放射線照射前にはプレポリマーまたはモノマーでもよく、放射線照射後に必要に応じて加熱などの方法で重合させてもよい。感放射線性高分子フィルムに柱状構造を形成することは、感放射線性高分子フィルムの表面にマスクとなる層を形成し、このマスク層に長尺状孔パターンを形成し、その長尺状孔パターンを通して感放射線性高分子フィルムに放射線を所定の角度で照射することによって、行うことができる。マスクの形成方法はフォトリソグラフィー法で知られている。そのほか、感放射線性高分子フィルムに放射線を走査照射して直接に感放射線領域を形成してもよい。また、高分子フィルムにレーザービームその他の方法で穿孔して、孔内に高屈折率材料を充填させる方法でもよい。
放射線照射により高屈折率領域を形成する感放射線性高分子フィルムの材料は、特に限定されないが、例えば、DuPont社よりOMNIDEX(登録商標)、HRF 150およびHRF 600として市販されているものを使用できる。
高分子フィルム母材および高屈折率領域の屈折率は、本発明では特に限定されず、使用する光学素子などの他の部材とのマッチングを考慮して決められるが、一般的には1.48付近の屈折率が好適に利用される。複屈折率があると着色するので、好ましくないが、複屈折率が許容される用途であれば複屈折率が存在してもよい。高分子フィルム母材および高屈折率領域それ自体は光透過性の高い材料が好ましい。高分子フィルム母材と高屈折率領域の屈折率の差は大きいほど好適であるが、一般的には0.005〜0.2の範囲内の屈折率差に設定される。屈折率差が0.005未満では充分な散乱特性を得ることが容易ではない。好ましくは0.005〜0.1の範囲内である。
高分子フィルム母材と高屈折率領域の屈折率は、これら二相の界面で急激に変化してもよいが、漸進的に変化するほうが、望ましい散乱特性が得られるので好ましい。
本発明の拡散フィルムに形成する長尺状高屈折率領域の寸法(フィルム表面における寸法)は、光の波長との関係から、短軸および長軸共に、数10nm〜数100μm,好ましくは50nm〜100μm、特に100nm〜50μmである。この寸法が大きすぎても小さすぎても、光が透過して所望の散乱特性が得られない。
本発明の拡散フィルムに形成する長尺状高屈折率領域の横断面の長軸と短軸の平均寸法比(平均アスペクト比)は、1:1より大きいことが必須であるが、通常は1.2:1〜10:1の範囲から選択され、好ましくは1.5:1〜5:1の範囲内、特に2:1付近である。平均アスペクト比が10:1を超えると散乱特性が低下する。また、長尺状高屈折率領域の形状は、楕円が好ましいが、矩形、棒状、卵形などでもよい。なお、本発明の拡散フィルムに形成する高屈折率領域は、長尺状領域とともに等軸領域、典型的には円形領域を含んでいてもよい。長尺状高屈折率領域だけが存在する場合も、長尺状領域と等軸領域と両方の高屈折率領域が混在する場合も、フィルムの特定方向における高屈折率領域の横断面の平均の長軸と短軸の寸法比(平均アスペクト比)が上記の範囲内にあることが好ましい。
本発明の拡散フィルムに形成する長尺状高屈折率領域の寸法およびアスペクト比は、個々の長尺状高屈折率領域で異なってもよいし、全てが同じでもよい。しかし、寸法およびアスペクト比をランダムにする方が、モアレを防止でき、また散乱特性を良好にする効果があるので好ましい。
本発明の拡散フィルムに形成する長尺状高屈折率領域は、フィルムの特定方向に配向させることを特徴としているが、全ての長尺状高屈折率領域が同一方向に配向する必要はなく、平均として配向していれば所望の散乱効果は得ることができるものである。
本発明の拡散フィルムに形成する長尺状高屈折率領域の柱状構造のフィルムに対する傾斜角度は、一般的には0〜50度の範囲内、好ましくは10〜20度の範囲内である。先に図面を参照して説明したように、長尺状高屈折率領域はフィルムの法線方向から傾斜している方が選択散乱、集光特性が優れているので好ましい。長尺状高屈折率領域の傾斜角度、即ち、柱状構造の傾斜角度は、一般的に散乱特性からもまた製法的に同じにすることが容易であることからも好ましいが、異なる角度に傾斜した柱状構造が混在していても、平均としての傾斜角度によって大略の散乱特性を表すことができるし、傾斜角度の分散は視角依存の選択散乱集光特性を、より広い視角で所望にする作用があるので、好ましい場合がある。さらには、意図的に2以上の異なる傾斜角度(例えば交差状)の柱状構造の長尺状高屈折率領域を組み合わせて、特異的な散乱特性を得るようにしてもよい。
本発明の拡散フィルムの膜厚は、限定されないが、約2μm〜約100μmの範囲内が一般的である。
本発明の拡散フィルムは、好適には、液晶表示装置、特に反射型および半透過型の液晶表示装置の拡散フィルムとして有用である。
図7および図8に液晶表示装置の例を示す。電極62,64を形成したガラス基板61、65間に液晶層63が存在し、拡散フィルム66は一般的に光入射側のガラス基板65の上に配置されるか(図7)、または光反射側のガラス基板61の下に反射膜67の表面に配置される(図8)。位相差板68、偏光フィルム69は用いる場合、一般に拡散フィルム66の外側に設置される(図示しないが図8も同じ)。拡散フィルム66は両方に配置してもよく、また液晶表示装置の構成は図示の例に限定されない。
また、バックライトにより液晶層背面から光が照射される場合には、バックライトと液晶層との間、即ち入射光側に通常光拡散フィルム層が設けられる。このバックライト方式の液晶表示装置とされる場合、本発明の光学フィルムを反射偏光子と組み合わせることにより好ましい結果が得られる。図9に、バックライト方式の液晶表示装置において、本発明の光学フィルムと反射偏光子とを組み合わせた例を示す。
反射偏光子を、携帯電話・PDA等の液晶表示装置に用いるためには、反射時の明るさを確保する必要がある。反射偏光子を用いる場合、透過時の輝度を上げることに執着すると反射時の輝度が下がる。携帯電話・PDA等の液晶表示装置において、透過、反射の両状態にあっても明るく視認性の優れた画像を実現できる光拡散フィルムとして機能する光学フィルムは好ましいものである。
図9において、71は光拡散フィルムであり、72は反射偏光子、73はアクリル系粘着剤、74は導光板、75は光源である。通常光拡散フィルム71の上に図8の液晶表示装置のガラス基板61が接着される。導光板74からの光は図示されていないBEF(集光シート)により集光されて、反射偏光子72に入射される。入射した光は、反射偏光子72によりP波のみが透過されS波は反射される。さらに、BEF等で反射された光のP波を透過しS波を反射する。これを繰り返すうちにS波は、P波に変換され従来利用されなかったS波を、利用できるようになる。すなわち通常液晶表示装置に設けられる偏光フィルムにより、S波はカットされるが、反射偏光子の使用により従来偏光フィルムでカットされていたS波も有効に利用することができるようになる。なお、本発明においては、必ずしもバックライトにBEFを利用する必要はなく、集光した光でなくてもよい。また、バックライトによる照明を行わない場合においても、反射偏光子は反射膜としての機能を有するため、全反射膜などの反射膜に比べれば幾分性能は落ちるが、十分反射型液晶表示装置として利用することができる。
また、図10に示すように、本発明の光学フィルムを光拡散フィルム76として用い、これを従来知られた等方散乱性の光拡散フィルム77と組み合わせて用いることにより、正面方向の明るさが明るく、広視野角を有する液晶表示装置を得ることができる。この等方散乱性光拡散フィルムは、フィルム状とされたものでなくてもよい。例えば、本発明の光学フィルムを反射膜、ガラス基板などに接着あるいは粘着する際、接着剤あるいは粘着剤として、ベースポリマーと屈折率の異なる例えば球状のフィラーを含有する接着剤あるいは粘着剤を用い、これを用いて光学フィルムを反射膜、ガラス基板などに接着あるいは粘着し、光拡散性の接着剤層あるいは粘着剤層を形成することによってもよい。等方散乱性の光拡散フィルムあるいは光拡散層と本発明の光学フィルムとを組み合わせることにより、等方散乱性の光拡散フィルムにより周辺からの光はブロードに拡散され、このブロードに拡散された光をも含め本発明の光学フィルムにより正面方向に光の集光が行われる。これにより、本発明の光学フィルムの効果と従来の等方散乱性のフィルムとの効果が相俟って、正面方向から液晶画面を観察の際には視認性がよく、明るい画像を観察することができるとともに、広い視野角を有する液晶表示装置を形成することができる。
液晶表示装置の例として携帯電話を参照して説明すると、図4,図5に示したような拡散フィルムを使用し、図11Bの如く、携帯電話81の表示画面82の左右方向に長尺状高屈折率領域83の長軸方向が配向し、また柱状構造83の傾斜が柱状構造のフィルム表面側端部が画面の上方に、柱状構造のフィルム底面側端部が画面の下方に向くように拡散フィルムを設置することが、最適の散乱特性を得ることができるので好ましい。このような携帯電話では、視者86が携帯電話81を目視するとき、視者の背後上方から正面の上方までの広い範囲から入射した光が、液晶表示素子で反射されるとき、主として視者86の方向に選択的に散乱集光反射することができる。このような散乱反射特性は、携帯電話などの表示画面を見る場合の最も多い利用態様において、画像の明るさを向上させるものである。
図12は本発明の別の液晶表示装置の例を示す。液晶表示装置91は偏光板(図7の69参照)を含むタイプが多いが、その場合、偏光板はその偏光軸の方向93を表示画面92の視者からみて上下方向94からある角度θ(例えば約35〜45°)だけ左右どちらかに傾けて設置されることが多い。偏光板は偏光軸方向の光を利用するので、本発明の散乱フィルムも偏光軸方向の散乱が強くなるように、長尺状領域(円柱構造の横断面)95の短軸方向が偏光板の偏光軸方向に設定されることが望ましい。なおこの場合も長尺状領域と偏光軸との配向の整合性は完全であることは好ましいが、実質的であればよい。
上記したごとき特性は、バックライトから液晶表示装置に照射光が入射される場合も同様であり、したがって、透過、反射の両状態において、明るく視認性の優れた画像を実現できる。また、上記したように、反射偏光子あるいは等方散乱性光拡散フィルムを本発明の光拡散フィルムとともに用いた場合にも、正面方向で従来の光拡散フィルムを用いた場合に比べより明るい表示画像を得ることが可能になるとともに、視野角の広い表示を行うことができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何等限定されるものではない。
実施例
実施例1
図13を参照する。感光性ポリマーとしてポリエチレンテレフタレートフィルム101上に塗布された厚さ50μmのDuPont製OMNIDEX,HRF 600を用い、この感光性ポリマー層102の表面に図4の如く楕円形孔パターンを有するマスク103をハードコンタクト法で密着させた。ただし、マスクの楕円形孔パターンは、長軸および短軸の比が2:1、長軸寸法が500nm〜30μmの範囲内で平均が2μmであった。楕円形孔は一軸方向に配向していた。
水銀ランプから得られた紫外線をレンズ系で平行光に集光して、マスク103の上方から法線に対してθ=0〜50度の範囲の照射角度から選択して照射した。照射時間は数秒から数分とした。その後、120℃で1時間加熱処理した。
その結果、マスクの孔パターンに従った断面構造を有し、フィルム法線方向に対して所定の傾斜角度の柱状構造を成す高屈折率領域を有する拡散フィルムが得られた。拡散フィルムの高分子マトリックスの屈折率は1.47、高屈折率領域の屈折率は1.52であった。
こうして得られた拡散フィルムの透過散乱特性を、図14に示すように、拡散フィルム105の一方側から入射106させ、フィルムの反対側に光ディテクター107を配置し、光ディテクター107の位置を変えて出射光の方向および角度(入射光の進行方向に対する方向および角度)と透過光強度の関係を求めた。また、入射光の入射方向および角度を変えて、それぞれについて同様に、出射光の方向および角度(入射光の進行方向に対する方向および角度)と透過光強度の関係を求めた。入射光および出射光の方向および角度の定義は、先に図1〜6を参照して説明したとおりとした。
その結果、例えば、感光性ポリマーに対する光照射角度20度の拡散フィルムについて、得られた透過散乱特性を図5Bに示す。即ち、フィルム表面において、楕円の長軸方向をx軸方向、柱状構造の軸線方向に入射する方向をy軸正の方向とすると、y軸負の方向では殆ど散乱のない透明な状態であった。一方、x軸正方向からy軸正方向を経てx軸負方向へ至る上半分の光は、正面方向に散乱が集中するように異方性を持った散乱が生じている。これらのため、入射した光は効率よく正面に集光され、正面輝度が向上していた。
実施例2
実施例1と同様の感光性ポリマーに、楕円形状の長短軸比が1.5:1のマスクを用い、光照射角度θを20度とした以外、実施例1と同様にして、拡散フィルムを作成した。
実施例1と同様に透過散乱特性を評価した。
実施例1と同様に、効率よく正面に入射光を集光できていた。
実施例3
実施例1と同様の感光性ポリマーに、楕円形状の長短軸比が2:1のマスクを用い、光照射角度θを10度とした以外、実施例1と同様にして、拡散フィルムを作成した。
実施例1と同様に透過散乱特性を評価した。
実施例1と同様に、効率よく正面に入射光を集光できていた。
実施例4
実施例1と同様の感光性ポリマーに、楕円形状の長短軸比が1.5:1のマスクを用い、光照射角度θを10度とした以外、実施例1と同様にして、拡散フィルムを作成した。
実施例1と同様に透過散乱特性を評価した。
実施例1と同様に、効率よく正面に入射光を集光できていた。
実施例5
実施例1と同様の感光性ポリマーに、楕円形状の長短軸比が1.5:1のマスクを用い、光照射角度θを0度とした以外、実施例1と同様にして、拡散フィルムを作成した。
実施例1と同様に透過散乱特性を評価した。
得られた透過散乱特性を図6Bに示す。即ち、フィルム表面において楕円短軸方向(フィルムy軸方向)から入射した光は、フィルムy軸方向に伸びた散乱をしていた。この方向の光は効率よく正面に光を集光することができる。携帯電話の小型情報機器の液晶ディスプレイでは正面の光を効率よく集光することがポイントになっているので、実施例5の拡散フィルムはこの方向の光を効率よく集光できている。
産業上の利用可能性
本発明によれば、高分子フィルム中に長尺状断面を持つ柱状構造の高屈折率領域を形成した拡散フィルムが提供され、正面に散乱が集中するように異方性を持った散乱が生じる効果があり、さらには正面視角方向は透明であるため、液晶表示パネルなどに拡散フィルムとして使用した場合、視角方向の正面輝度が向上する効果がある。またこのような効果を有する拡散フィルムを用いた光学素子および液晶表示装置も提供される。
【図面の簡単な説明】
図1A−1Dは高分子フィルム中に円柱構造の高屈折率領域を有する拡散フィルムと、高分子フィルム中にフィラーを充填した拡散フィルムの、断面図および垂直入射光の透過散乱特性図である。
図2は高分子フィルム中に円柱構造の高屈折率領域をフィルム法線方向に有する拡散フィルムの入射角依存の透過散乱特性図である。
図3A及び図3Bは高分子フィルム中に円柱構造の高屈折率領域をフィルム法線方向に対して傾斜して有する拡散フィルムの断面図と入射角依存の透過散乱特性図である。
図4は高分子フィルム中に楕円断面の柱状構造の高屈折率領域を有する拡散フィルムの平面図である。
図5A及び図5Bは高分子フィルム中に楕円断面の柱状構造の高屈折率領域をフィルム法線方向に対して傾斜して有する拡散フィルムの断面図と入射角依存の透過散乱特性図である。
図6A及び図6Bは高分子フィルム中に楕円断面の柱状構造の高屈折率領域をフィルム法線方向に有する拡散フィルムの断面図と入射角依存の透過散乱特性図である。
図7は液晶表示装置の模式断面図である。
図8は別の液晶表示装置の模式断面図である。
図9は光学フィルムと反射偏光子の積層フィルムの光拡散・透過特性を説明するための説明図である。
図10は本発明の光学フィルムと等方光拡散フィルムとの積層フィルムである。
図11A及び図11Bは携帯電話に拡散フィルムを使用した例を示す正面図および部分側面図である。
図12は本発明を偏光フィルムを用いた液晶表示装置に適用する場合の例を示す。
図13は実施例における感光性ポリマーの露光方法を説明する図である。
図14は実施例における拡散フィルムの透過散乱特性の評価方法を説明する図である。

Claims (11)

  1. 光を散乱透過させる屈折率の異なる二相からなる光拡散フィルムにおいて、屈折率の大きい一相がフィルムの厚さ方向に延在する柱状構造を有する多数の領域を含み、前記多数の領域は柱状構造の横断面形状が長尺状の領域を含み、かつ前記長尺状領域がフィルムの特定方向に配向していることを特徴とする光拡散フィルム。
  2. 前記長尺状領域の前記横断面の長軸および短軸の平均アスペクト比が1.2:1〜10:1の範囲内である請求項1に記載の光拡散フィルム。
  3. 前記多数の領域は柱状構造の軸線が互に平行であり、かつその軸線がフィルムの法線方向に対して傾斜している請求項1または2に記載の光拡散フィルム。
  4. 前記多数の領域は柱状構造の軸線がフィルムの法線方向である請求項1または2に記載の光拡散フィルム。
  5. 前記フィルムの屈折率の異なる二相の屈折率の差が0.005〜0.2の範囲内である請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散フィルム。
  6. 前記フィルムが感光性を有する高分子材料から製造されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散フィルムを用いたことを特徴をする光学素子。
  8. 請求項7に記載の光学素子を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
  9. 光拡散フィルムの前記領域の横断面の前記長軸方向が液晶表示装置の視点方向から見て左右方向になるように、光拡散フィルムが配置されている請求項8記載の液晶表示装置。
  10. 光拡散フィルムの前記領域の柱状構造の軸線方向がフィルム法線方向に対して傾斜しかつその傾斜方向が視点に対して遠ざかる方向である請求項9記載の液晶表示装置。
  11. 液晶表示装置が偏光フィルムを含み、偏光フィルムの偏光軸が液晶表示画面の視点方向から見て左右いずれか方向に傾けて設置され、光拡散フィルムの前記領域の横断面の前記短軸方向が偏光フィルムの前記偏光軸方向に配置されている請求項8に記載の液晶表示装置。
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