JP4561061B2 - 拡散フィルムの製造方法 - Google Patents

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本発明は、光の入射方向に応じて、散乱性が異なる(あるいは、入射角度選択性を持つ)ような、光散乱特性に角度依存性を持つ拡散フィルムおよびその製造方法に関し、特にこの拡散フィルムを適用して、表示画像の視認性(明るさやコントラスト等)を向上することが可能な拡散フィルムおよびその製造方法に関する。
散乱性を有する従来の拡散シートとしては、表面をマット状に加工した樹脂フィルムや、内部に拡散材を包含した樹脂フィルムなどが用いられている。
前述の表面をマット状に加工した拡散フィルムの場合、フィルム表面を、サンドブラスター処理のように、物理的に加工してマット面を形成したり、あるいは、酸性またはアルカリ性の溶液による溶解処理により、化学的にマット面を形成する。
このようなマット面(凹凸の形状など)の制御により、散乱光の出射範囲/方向(以後、散乱指向性と称する)を制御することは可能である。しかしながら、光の入射角度のよって散乱性が変化するようなフィルムを製造することは、原理的に困難である。
また、内部に拡散材を包含した拡散フィルムにおいても、散乱性を制御するために、拡散材の屈折率,大きさ,形状などを制御する試みもなされているが、技術的に難易度が高く、実用上十分であるとは言えないのが現状である。
特に、前記構成の拡散フィルムは、散乱異方性や軸外しの光散乱特性がなく、光散乱の指向性が小さく、表示装置に適用しても、表示の明るさやコントラストの低下等の、問題点が発生する。
また、散乱板としてホログラムを用いた透過型液晶表示装置が提案されている。このホログラムを用いた液晶表示装置は、バックライトを有する液晶表示装置からの出射表示光を散乱させるものであり、散乱板としてホログラムを採用しているため、散乱異方性や散乱指向性を制御することも容易ではある。しかしながら、必然的に分光(波長分散)を伴ってしまうため、観察する視点を移動するに応じて、表示光の色が変化して視覚されることになる。(例えば、特許文献1参照)
また、数μm〜数十μmのフィラーを樹脂中または、粘着材の中に入れた拡散フィルムが公知である。このような拡散フィルムは、液晶ディスプレイにおいて、バックライトからの光を散乱させたり、外部からの光を散乱させるなどにより、広い範囲からディスプレイを観察可能とするものである。(例えば、特許文献2参照)
このようにフィラーを入れた拡散フィルムでは、どのような方向から入射した光でも同様の拡散性を有するため、特定方向の光のみを散乱させるような用途には適さない。そこで、入射方向により散乱性の異なる拡散フィルムが求められ、このような拡散フィルムが提案されている。(例えば、特許文献3参照)
特開平9−152602号公報 特開平10−104611号公報 特開2000−171619号公報。
しかしながら、前述のような入射方向により拡散性が異なるようなフィルムを、連続的にフィルムに記録していくのは非常に困難である。またこのようなフィルムを複製する場合、例えばシート状のものを一枚一枚板状の原版に貼り付けて平行な紫外線を照射し複製する事が考えられるが、非常に生産性が悪い。
そこで、本発明の目的は、入射方向により拡散性が異なるようなフィルムを効率よく記録することにより容易に、高機能拡散フィルムを作製することが可能な製造方法を提供することである。
本発明の請求項1に記載の発明は、原版のパターンに応じて前記感光性フィルム内部に屈折率の異なる厚み方向に柱状の微小な領域ができ、光の入射方向の角度によって散乱性が変化する拡散パターン記録領域を間隔おいて複数個配置したことを特徴とする拡散フィルムである。
このように、一定間隔をおいて拡散パターンを設けることで、原版のパターンに応じて前記感光性フィルム内部に屈折率の異なる厚み方向に柱状の微小な領域ができ、光の入射方向の角度によって散乱性が変化する拡散パターンを安定して設けることができる。
請求項2記載の発明は、前記拡散パターン記録領域が、非対称形状であることを特徴とする請求項1記載の拡散フィルムである。
このように拡散記録パターンを、非対称形状とすることで、拡散フィルムを表示装置に取り付ける際、表裏、左右の位置合わせが容易となる。。
請求項3に記載の発明は、前記拡散パターン記録領域が、領域内に拡散パターンが形成されていない非記録領域を有することをを特徴とする、請求項1または2記載の拡散フィルムである。
このように、領域内に拡散パターンが形成されていない非記録領域を有する構成とすることで、拡散フィルム中に、製造ロット番号等必要な情報を一体的に設けることが可能となる。
請求項4に記載の発明は、前記拡散性フィルムは、連続状であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の拡散フィルムである。
このように、拡散パターンを記録する感光性フィルムを連続状とすることで、安定した記録パターンを有する拡散フィルムとすることができる。
請求項5に記載の発明は、前記拡散パターン記録領域に記録されたパターンは、2種類以上であることを特徴とする、請求項1または4のいずれかに記載の拡散フィルムである。
請求項6に記載の発明は、前記拡散パターン記録領域間の間隔が一定であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の拡散フィルムである。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の拡散フィルムを、表示素子の観察側に設けたことを特徴とする表示装置である。
請求項8に記載の発明は、前記拡散フィルムが、観察側にハードコート層を設けたことを特徴とする請求項7記載の表示装置である。
請求項9に記載の発明は、前記拡散フィルムが、観察側にハードコート層と反射防止層を設けたことを特徴とする請求項7記載の表示装置である。
請求項10に記載の発明は、前記拡散フィルムが、観察側の最表面に防汚層を設けたことを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の表示装置である。
請求項11記載の発明は、支持体に設けた感光性フィルム上に、光を透過する領域と、光を遮断する領域からなるパターンが記録されている原版を配置し、平行な紫外線を照射することにより、原版のパターンに応じて前記感光性フィルム内部に屈折率の異なる厚み方向に柱状の微小な領域ができ、光の入射方向の角度によって散乱性が変化する拡散パターン記録領域を間隔おいて複数個作成したことを特徴とする拡散フィルムの製造方法である。
請求項12記載の発明は、前記感光性フィルムは、使用前、支持体フィルムと保護フィルムで挟持され、使用時に保護フィルムを剥離して使用することを特徴とする、請求項11記載の拡散フィルムの製造方法である。
請求項13に記載の発明は、前記感光性フィルムと支持体フィルムは剥離可能であることを特徴とする、請求項11または12記載の拡散フィルムの製造方法である。
このように本発明によれば、透過部/非透過部からなるパターンが記録された原版を用いて、そのパターンを間欠送りを行ないながら、紫外線等により露光し、感光材料フィルムに順次転写する事によって、一定間隔で、フィルムに拡散パターンが記録され、光の入射方向によって散乱性が変化する拡散フィルムを効率よく作製する事ができる。
また、一定間隔で、フィルムに拡散パターンを記録するため、液晶表示装置等に貼り合せて使う際にも、フィルムを無駄にする事なく仕様でき、原版として、板状のものを用いることができる。
また、作製途中で条件を変更する事も可能であることから、複数の品種の拡散フィルムを一つの巻きの中に作製する事が可能である。このような原版としては、リス乾板のような銀塩乾板に保護層を設けたもの、またクロム層からなる、パターンを有するマスクブランクス等を用いる事ができる。
また、拡散層としては、デュポン社商品名Omnidex−705等の光により屈折率変調が起こるようなフィルムを用いる事ができる。
<複製方法>
図3に示すように、入射方向により光の散乱性が異なるような拡散フィルムは、透過部/遮光部からなるパターンを有する原版7を、支持体フィルム5/感光性フィルム4/保護フィルム3(図2参照)という配置されてなる感光材料フィルムを用意し、保護フィルム3を剥がした後、原版7に密着させて、平行な紫外線等を照射する事により、原版7のパターンに応じてフィルム内部に屈折率の異なる厚み方向に柱状の微小な領域が形成される事により作製できる。
ここで、前記感光フィルムの材料としては、例えば、デュポン社製Omnidex-705(商品名)等を用いる事ができる。
また、支持体フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)、TACフィルム等を用いる事ができる。
なお、この支持体フィルムが後工程で残る場合には、その表面を感光性フィルムが接着しやすいように易接着処理を行ない、感光性フィルムが剥離しないようにすることが望ましい。また、液晶表示装置等用で支持体フィルムが残る場合には、特に偏光依存性が少ないTACフィルム等が望ましい。
<複製工程>
本発明では、ロール状となっているフィルムを原版に貼り合わせ、露光、剥離、搬送という工程を、間欠送りにより繰り返すことによって、板状の原版に記録された拡散パターンを、記録していく事により、図1に示すように、拡散パターン1が一定間隔で記録された拡散フィルム2を容易に、且つ安価に作製する事が可能である。
なお、この板状の原版に記録された拡散パターンの並ぶ間隔は、後工程での都合等を考慮して適時設定する事が望ましい。
ここで、前記拡散パターンは、図1(a)に示すように、対称形だけでなく、図1(b)に示すように、コーナー部の1つが欠如する非対称系にしてもよい。このように非対称形とすることで、拡散フィルムを使用する際、表裏、上下左右の方向が判別し易く、取り扱いが容易となる。
また、拡散パターン中に、領域内に拡散パターンが形成されていない非記録領域30を設けることで、製造ロット等の必要な情報を一体化できる。
<原版>
前記作製工程で用いられる原版として、ガラス(ソーダガラス、石英ガラス等)にクロム膜がパターニングされているものを用いることができる。
このようなマスクを、表面を研磨したガラスにクロム膜を蒸着し、さらにこのようなクロム膜の上にパターニングの際、光の反射を抑制するための酸化膜をつくり、その上にパターニングのためのフォトレジストを塗布したマスクブランクスに、レーザーで描画をする事により作製する事ができる。
描画の際には、レーザー等による直描画装置を用いて露光し、アルカリ溶液で現像すると、露光された部分のみが溶解する事により、描画パターンが記録される。
次に、フォトレジスト層をマスクとして、クロム膜を選択的にエッチング除去した後、レジストを除去する。この工程により、描画装置によりパターンニングされた通りのクロム膜のパターンが形成されたマスクを作製することが可能である。
さらにこのパターニングされたクロム膜の上に、複製工程における原版からの感光材料への再付着等による欠陥を低減するため、例えば、シリコン、フッ素等を含有する離型剤を塗布することにより、感光材料の付着防止層を、その表面に付加する離型処理をすることによって、拡散フィルムを製造する際の原版を作製することができる。
一般的に広く光を拡散させるようなフィルムを作製する場合、細かいパターン(例えば、0.5〜5μm程度)の原版を使用する事によって、広い範囲に光を散乱する拡散フィルムを得ることができる。
また、(例えば、5〜50μm程度)のものを用いる事によって、狭い範囲に光を散乱する拡散フィルムを得る事ができる。
このように拡散フィルムの散乱性は、拡散フィルムに記録された拡散パターンにより制御が可能であり、その拡散パターンは、フィルムを作製する際の原版のパターンに依存する。したがって、原版のパターンを所望のデータから作製する事によって、望ましい散乱性を有する拡散フィルムを作製する事が可能となる。
<原版構成>
この場合、原版が、離型剤層/パターン記録層/ガラス基板の順で構成されているか、または、ハードコート層/パターン記録層/ガラス基板の順で構成されている事が望ましい。
<ノングレアガラス>
また、紫外線を照射して原版5を複製するときには、入射光の裏面反射等のノイズの影響を抑制する目的で、ノングレアガラス等を使用することが望ましい。
<露光方法>
このような原版があらかじめセットされている露光部において、原版に貼り合わせて、露光を行なうために、セパレーターフィルム/感光材料層/基材フィルムの構成からなる原反を用意し、それを、セパレーターフィルムを剥離しながら用意した原版に貼り合わせ、露光、原版からの剥離の工程を繰り返すような露光機構によりフィルムに一定間隔で拡散パターンを記録する事が可能である。
<2品種以上の場合>
また複製を行なっている途中で、原版を変更または、紫外線の照射量、照射角度を適時変えることによって、一つの連続シートの中に、2つ以上の異なったパターンを混在させることができ、少量多品種の場合にも、容易に対応できる。
<複製時安定性>
また、原版のパターンが記録されている面に直接感光材料を貼り合せて、記録を行うため、振動等により、光源が変動しても、記録されるパターンへの影響が極めて少ないため、安定した露光が行える。
<原版上異物>
このフィルムにパターンを記録する際において、その原版に異物があっても、感光材料の粘着性により、異物を感光材料といっしょに剥離されるので、最初にリードのフィルムを通すことで、原版上の異物が原版から除去される。
また、途中で異物混入があっても、極めて小さい記録領域にのみ、異物が残ることがあるが、その後の記録領域では、異物の影響を受けないで製造することができる。
<貼合せ機構>
ところで、原版5から複製フィルム1を剥離する方法として、単に、複製フィルムの一端を上側へ引き上げたの場合、面内に剥離速度差が生じ、このため剥離がいったん止まるような位置で、剥離端に沿ってスジ状の剥離線が発生してしまい、複製に欠陥が生じる。
このような断続的な剥離を抑制するためには、圧着時と同様に、連続状フィルムを原版に押し付けながら順次剥離するのが望ましい。
この場合も、ロールを介して剥離すればよく、このロールの径は細い方が好ましく、貼り合わせロールを逆回転で剥離用ロールとして用いる事ができる。
<ニップ痕>
ところで、原版を複製するのに、フィルムとしては、通常長尺のものを使用し、これを原版上に間欠的に1コマの寸法にコマ間距離分加えた長さだけ送り出しながら、複数の周期的な複製を行う。
すなわち、複製フィルムには、フィルム長手方向の拡散パターン記録領域が、送り間隔を置いて周期的に複製される。このような間欠送りによって原版を複製する場合、通常、フィルムをロールでニップし搬送されるが、原版を複製する際、フィルムの送りが停止され、その間、フィルムを固定するニップロール停止位置にロールの圧力が加わり続け、スジ状の凹みができる。
この凹みが拡散パターン記録領域に対応した位置にできるとキズになり、好ましくない。
<ニップ痕位置>
そこで、撮影中のフィルム1の送り停止に伴うスジ状の凹みが、隣り合う拡散パターン記録領域の間に位置することになり、拡散パターン記録領域を切り出したときの製品に影響をきわめて少なくできる。
なお、上記送り間隔は、ニップロールによりできるニップ痕が拡散パターン記録領域の有効領域にかから無いように適時設定する必要がある。
<アキュムレーター・ダンサー>
また、原版のパターンをフィルムに記録する露光部と、その後のフィルムパスの間に、フィルム緩衝部を設ける事により、間欠的にフィルム送っている露光部と、連続的に搬送する後処理部とに分けることも可能である。
<保護フィルム貼合>
このようにして剥離した複製フィルムは、感光材料が露出しているので、これを巻き取るには、感光材料側に保護フィルムを貼り合わせる事により、傷等を予防する事ができる。この際、保護フィルムのかわりに、粘着フィルムを貼合する事によって、後加工での糊付け加工工程を一工程省く事ができる。
<後加工>
このようなフィルムを液晶表示装置に搭載する場合、表示装置の表示画面の大きさと合うようにな有効範囲で記録されている拡散パターン記録領域から拡散フィルムを抜き取り、適時拡散フィルムを液晶表示装置に貼合する事ができる。
また、偏光板等の他の光学フィルムと貼合した後に抜き加工を行なっても良い。尚、拡散パターン記録領域の配置間隔を適時に設定することにより、無駄なくフィルムを利用する事ができる。
また、フィルムを後工程でシート状に断裁し、表示装置または、偏光板等に貼合して使用することも可能である。また、あらかじめ、拡散パターンが記録されていない領域の拡散層を剥離(トリミング)しても良い。
<工程全体>
このように本発明の拡散フィルムは、感光材料の両面を支持体フィルムで挟んでなる感光材料フィルムを供給しながら、その一面上の支持フィルム(セパレーターフィルム)を剥離し、その剥離面を原版に向けてその反対側から感光材料フィルムをロールで順次原版に張り付け、感光材料フィルム側又はその反対側から光を照射する。
次いで、原版から感光材料フィルムをロールで押さえながら、一端から順次剥離し、剥離された感光材料フィルムの剥離面に保護フィルムを順次貼り付け、その後、感光材料フィルムを巻き取ることような方法で作製する事ができる。
<複製品特性例>
また、このような装置により、紫外線を略30度の角度で感光材料フィルムに入射することにより、拡散フィルムを作製したヘーズが30〜60の範囲で、垂直方向から平行光をフィルムの入射したときの透過輝度が30%以上であり、略30度の角度で入射した際には、透過輝度が10%以下のものが得られた。
<ディフューザーの説明>
図4は、本発明の拡散フィルムの一例を示す断面説明図である。
同図に示すように、拡散フィルムの内部では、屈折率の異なる部分が分布し、屈折率の高低からなる濃淡(同図では、白−黒で表現する)を形成している。
また、光の回折による色付きを抑制するため、屈折率の異なる部分は微小な領域内(0.1〜1mm程度)では、非周期的であるが、そのサイズは規則的であり、その空間周波数は、どの場所をとっても、略一定となっている。
図4に示されるように、フィルム断面では、屈折率の異なる部分が略柱状で方向を揃えて分布している。また、この柱状構造の角度は、観察する角度等により、適時設定されるものである。
図4において、白で示した部分は屈折率n1であり、黒で示した部分は屈折率n2であると、その屈折率差Δn=|n1−n2|に応じた光路間の位相差に伴って回折現象が発生し、入射光が拡散して伝播することは公知である。
<散乱の分布>
屈折率の異なる部分のフィルム表面上の形状が、横長(あるいは、縦長)であると、その部分に入射する光が散乱出射する場合には、それぞれの部分からの出射光の光散乱特性が、縦長(あるいは、横長)となるような指向性を持つ。
例えば、形状が横長であると、拡散フィルムからの散乱出射光は、縦長の楕円形となるような分布となる。
さらに、屈折率の異なる部分のフィルム表面上の形状が等方的形状、例えば、円形であると、その部分に入射する光が散乱出射する場合には、それぞれの部分からの出射光の光散乱特性が、等方性となるよう散乱分布となる。
縦横方向での散乱特性を制御するべく、縦横の長さ比は、30:1〜1:30程度の間で選ばれ、大きさは、1μmから100μmの範囲内で、所望の散乱性や散乱角度となるよう選ばれる。
このような屈折率の異なる部分の表面での形状は、拡散フィルムを作製する際に用いる原版に記録されているパターンによって制御する事ができる。このため、拡散フィルムでの散乱性をある程度制御する事ができる。
拡散する度合い(ヘーズ)は、前記屈折率差Δnとフィルム内を通過する近接する2光路の光路長Lとによって決まり、ΔnとLの積が、入射光の半波長の奇数倍となる場合に、屈折率n1の部分を透過する光と屈折率n2の部分を透過する光とが打ち消し合うように干渉し、最もヘーズが高くなる。
逆に、Δn×Lが、入射光波長の整数倍(半波長の偶数倍)となる場合に、屈折率n1の部分を透過する光と、屈折率n2の部分を透過する光とが強め合うように干渉し、最もヘーズが低くなり、入射光は拡散することなく透過する。
<正面方向に向ける散乱の性質>
特定のフィルム断面を表す図4では、前記帯状の濃淡の伸びる方向が、フィルムの厚みほうに対して略垂直方向にそろって、屈折率の異なる領域が分布している。
図4の拡散フィルムの光学特性について、液晶表示装置において、正面からも良好な画像が得られ、視域が反転してしまうような領域でも、拡散フィルムを付加する事によりその反転が改善されるような拡散層としては、垂直方向からの光に対しては比較的散乱せず、斜め方向からの光に関しては、散乱するようなフィルムが望ましい。このようなフィルムを得る為に、屈折率の異なった領域の屈折率差をその層との厚みとの関係において、
Δn × L = λ/2
となるようにする事により、柱状構造に沿った光の散乱性は高く、それと異なった方向からの光に対しては、散乱性が低くなるような拡散層を得る事ができた。
本発明による拡散フィルムでは、図4における白黒パターンの細かさに関しては、適用する応用分野・機器に応じて任意に変更可能とし、一方で、前記Δn×Lを、可視光の半波長の、奇数倍の範囲とする。
前記Δn×Lの実用的な範囲は、等倍の200nmから300nmである。
図4の場合、フィルム内の柱状構造に沿って入射する光に対するΔn×Lの値を、可視光の半波長の等倍とすることで、上記の説明のように、散乱性を高くして、特定方向から入射してくる光に対してのみ光を散乱するフィルムとして機能するものとしている。
垂直方向から一定の範囲を外して入射する光(例えば、フィルムに斜めに入射する光)は、フィルム中を通過する際の光路長が長くなるため、自ずとΔn×Lの値が大きくなり、上記「可視光の半波長の等倍」の値からは外れ、散乱性が下がる。
また、垂直方向から一定の範囲を外して入射する光のうちの近接する2光路は、それぞれ一定の屈折率の媒体内のみを通過するわけではなく、フィルム内で種々の屈折率の部分を、微視的な反射,屈折を受けながら通過するため、透明フィルム中の通過とは異なる結果(何らかの散乱が生じる)となる。
散乱が生じる度合いは、フィルム内で屈折率の異なる部分の、周囲との屈折率差や、そのサイズや形状にも影響される。
このように、フィルム中の柱状向上に沿ってに入射する光に対しては、光散乱が生じ、入射光を所望の範囲に広げて出射することになる。一方、それと異なる方向からの入射する光に対しては、透明フィルムのように機能する。
さらに、屈折率の異なる部分は、フィルム表面では周期性がないため、光の回折現象によって引き起こされる色分散や、レンズアレイのようなモアレが生じない。
従って、本発明の拡散フィルムによれば観察位置による出射光の色変化は生じず、理想的な白色を呈し、液晶等と組み合わせた際に不要なパターンを生じない。このような拡散フィルムの元となる原版に記録されるパターンも周期性がなく、規則性に乏しいためデータ量が増加してしまう。
そのため、この周期性のないパターンを小さな領域(例えば、0.05〜1mm程度)の領域でのみ定義し、それをフィルム全面に敷き詰める事によって、ほとんど、パターンを定義した領域を描画するときのデータ量と同様のデータ量で、大きな面積のフィルム用の原版を作製する事ができる。
<内部構造詳細>
次に、本発明の拡散フィルムの構造について、更に詳細に説明する。
上述したように、本発明の拡散フィルムの内部には、屈折率の異なる部分が不規則な形状・厚さで分布することにより、屈折率の高低からなる濃淡模様が形成されている。
この屈折率の差異は、小さすぎると散乱性が悪くなり、逆に大きすぎるとどのような角度で光が入射しても光散乱が生じてしまうことになり、入射角選択性の特性を持たせることが困難となる。
そのため、表面上の屈折率差だけでは光散乱が生じず、フィルム1に厚みがあることで十分な散乱性を持つような最適な屈折率差である必要がある。
本発明では、上記条件に適合するように、屈折率差は0.001から0.2の範囲で適宜選択し、フィルム厚みは屈折率差に応じて1000μmから1μmの範囲で適宜選択している。
記録できる屈折率差は、フィルムの作製方法や記録材料などにより制限を受けるため、大きな屈折率差を持つ場合はフィルムを薄く、小さな屈折率差を持つ場合はフィルムを厚くすることで、本発明の拡散フィルムを実現することが可能である。
一例を挙げると、平均屈折率が1.52で厚みが20μmのフィルム中に、屈折率が1.56(屈折率差0.04)の部分を分布させて、濃淡模様を形成することで、十分な散乱性と入射角度選択性を持つ拡散フィルムを得ることができた。
屈折率の異なる部分の大きさは、光散乱を生じさせるために一定ではないが、必要な散乱性を持たせるために、その平均の大きさは直径で0.1μmから300μmの範囲内で、それぞれの用途での必要な散乱性に応じて適宜選択される。
一例として、12μmの平均の大きさを持つ屈折率の高低からなる濃淡模様とすることで、約±40°程度の散乱広がりをもつ散乱性が得られた。
また、光散乱に指向性を持たせるために、フィルムの縦方向と横方向とでは、屈折率の異なる部分の平均の大きさを異ならせている。
一例として、縦方向に伸びた楕円状に光散乱を生じさせるために、縦方向での平均サイズは12μmであるが、横方向での平均サイズは50μmという横長の形状とすることで、縦方向に約±40度,横方向には約±10度という散乱指向性を持つ拡散フィルムが得られた。
また、このようなフィルムを、位相差補償フィルムを有するTN配向の液晶ディスプレイの前面に配置し、位相差補償されない方向に散乱フィルムの散乱する方向で配置する事によって、階調反転のない液晶ディスプレイを実現する事ができる。
また、本発明の拡散フィルムは、本明細書中ではフィルムという用語で統一して述べたが、例えば、ガラス基板や樹脂基板のような硬質基板上に形成されたシートであっても良い。
<拡散フィルムの加工>
前記拡散フィルムを表示装置の観察側に使用する際、ハードコート層、反射防止層、防汚層を適宜必要な層を設けた構成とする。
本発明のハードコート層は、紫外線および電子線硬化型樹脂単体、またはこの硬化物中に金属酸化物微粒子が分散されたものである。
前記ハードコート層に用いる紫外線および電子線硬化型樹脂化合物としては基材の表面改質を目的として、スチールウールラビング試験による耐擦傷性、鉛筆ひっかき試験による表面硬度、セロハン性粘着テープ剥離試験による密着性、最小曲げ試験によるクラック性等の諸特性を要求されるスペックを満足させるように樹脂を選択して使用することが出来る。この化合物は、光重合性プレポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤等を含有するものである。
前記光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等が挙げられる。これらの光重合性プレポリマーは1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また,光重合性モノマーとしては、例えばポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、これらの屈折率は1.5前後であるが、屈折率が高いモノマーとしては、環状基を有するものさらに/またはフッ素原子以外のハロゲン原子やS、N、P等の原子を含むものが挙げられる。環状基には芳香族基、複素環基および脂肪族環基が含まれる。例えば、ビス(4−メタクリロイルチオフェノキシ)スルフィド、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、 テトラブロモビスフェノールAジエポキシアクリレートなどが挙げられる。特に本発明では、プレポリマーとしてウレタンアクリレート系、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート等を用いることが好ましい。
更に光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ− n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
本発明のハードコート層においては、さらに金属酸化物微粒子を添加することができる。
金属酸化物微粒子の種類は特に制限は無いが,例えばSiO2,TiO2,Al2O3,ZnO,Sb2O5,ZrO2等を用いることができる。金属酸化物微粒子を添加することにより,ハードコート層の屈折率を制御することが可能となり,あわせて導電層との密着性に優れ,ハードコート層の硬度を向上させることができる。微粒子表面には表面処理を施してバインダーである有機化合物との親和性を高めることが好ましい。表面処理には、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理表面処理と、カップリング剤を使用する化学的表面処理に分類できる。化学的表面処理のみ、または物理的/化学的表面処理両方で実施することが好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物であるシランカップリング剤やチタンカップリング剤などが好ましい。カップリング剤による表面処理には、触媒として無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、炭酸など)、有機酸(例、酢酸、ポリアクリル酸、ポリグルタミン酸など)を用いることが好ましい。
ハードコート層の硬度は、鉛筆硬度でH以上であるのが好ましく、反射防止積層フィルムに必要な耐擦傷性を備えることができる。
ハードコート層形成用のハードコート剤の調整において、各成分の配合順序については特に制限はなく、各種溶媒中に金属酸化物と紫外線および電子線硬化型樹脂化合物を加えて混合する。
溶媒としては、特に限定することはないが、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソプチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類等を挙げることができる。また、このハードコート剤には、所望により消泡剤やレベリング剤等の公知の添加剤を配合することができる。ハードコート剤の固形分濃度については特に制限はなく、塗工性、乾燥性、経済性等の面から10〜70重量%の範囲が好ましく、特に30〜50重量%の範囲が好適である。
ハードコート剤の基材への塗工方法については特に制限はなく、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法等を用いることができる。
この塗工層の厚さは、ハードコート剤の固形分濃度および硬化後における防眩層の密度から必要なハードコート剤の塗工量を算出することにより、制御する事ができる。
また、乾燥後の塗工層に窒素パージした雰囲気下で紫外線および電子線を照射して硬化させ、酸素障害が少なく、表面硬度の高いハードコート層を形成しても良い。
硬化に用いる紫外線照射装置については、特に制限はなく、例えば高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、フュージョンランプ等を用いた公知の紫外線照射装置を使用することができる。
紫外線照射量は、通常100〜800mJ/cm2程度である。電子線照射装置については特に制限はなく、加速電圧は通常50〜300kVである。
このようにして得られたハードコートフィルムは,物品の表面に基材との密着性,表面硬度、屈曲性、耐擦傷性、透明性に優れたハードコート層及びハードコート層成形物品を提供することができる。
反射防止層の構成成分としては、例えばSiO、SiO2 、ZrO2 、Al2 O3 、TiO、TiO2 、Ti2 O3 、Y2 O3 、Yb2O3 、MgO、Ta2 O5 、CeO2 、HfO2 などの酸化物;MgF2 、AlF3 、BaF2 、LiF、CaF2 、Na3 AlF6 、Na5 Al3 F14などのフッ化物;Si3 N4 などの窒化物;Cr、Ta、Ti、Wなどの金属を挙げることができる。これらの物質は、1種のみならず2種以上を混合して使用することも可能である。
該反射防止層は単層であっても多層であってもよいが、反射防止効果の点からは2層以上の多層が好ましく適用される。多層にした場合、多層膜の膜構成の組み合わせとしては、すでに多くの組み合わせが公知であり本発明においてもこれらの組み合わせを用いることができる。
上記以外の反射防止層として、低屈折率層を設けてもよい。この低屈折率層は、中空シリカ粒子を含む構成とすることにより,膜強度と低反射率化,および防汚性を兼ね備えた反射防止積層フィルムを提供することができる。中空シリカ粒子は中が空隙であるため,それ自身の屈折率は、通常の粒子と比較して低く、例としては、シリカ粒子(屈折率=1.46)に対して中空シリカ粒子(屈折率≦1.45)である。また、中空シリカ微粒子をマトリックス中に添加した場合、この微粒子は中空であるために、マトリックスが微粒子内部に浸漬することが無く、屈折率の上昇を防ぐことが出来る。中空シリカ微粒子の添加量は特に制限はないが,層強度と反射率の面から10〜80重量%の範囲が好ましく,特に20〜70重量%の範囲が好適である。粒径100nm以下の白色の中空シリカ微粒子を用いることにより、,低反射率化を示すと共に透過率の低下や、層の着色の無い導電層の形成が可能となる。粒径が100nmを越えるとレイリー散乱によって光が著しく反射され,膜が白くなって透明性の低下がみられ,また1nm未満では粒子の作製が困難であることや,粒子間の凝集による膜の不均一性等の問題が生じる。また,中空微粒子のマトリックス中における分散性を向上するために,マトリックス中に分散剤を用いることができる。分散剤としては,特に制限はなく,シリコーン系の分散剤を用いることが好ましい。
ハードコート層に表面処理を行うことにより,各表面の表面張力を変化させることができるため,ハードコート層と低屈折率層との密着力を向上させることができる。表面処理法としては,アルカリ処理,プラズマ処理,レーザー処理,またはコロナ処理を行うことができる。各層間の密着力を向上させると共に各種表面処理を行うことにより,表面上の異物を低減させることができる。
ハードコート層が設けられた場合には、表面の硬度が向上し傷がつきにくくなる。その結果、付着した埃、ごみ、汚れなどを傷をつけずに拭き取ることが可能となる。
また、防汚層が設けられた場合には、可視角度調整フィルムの表面への汚れ付着が防止でき、また汚れの拭き取り性能が向上する。防汚層は水およびヘキサデカンに対する静止接触角がそれぞれ90゜以上、25゜以上であることが好ましい。防汚層としてはフッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂等が好ましく用いられる。
該防汚層の塗布方法としては、通常行われている浸漬法、噴霧法、スピンコート法、バーコート法、ローラーコート法、フローコート法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等いずれの方法によっても可能である。
該防汚層の膜厚は、膜の強度の点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが最も好ましい。
本発明の可視角度調整フィルムを用いる表示装置としては、CRTディスプレー、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー、発光ダイオードディスプレー、電光表示、指針表示、インクによる表示などの表示物の前面に配置するフィルターが挙げられる。
によって散乱性が変化する拡散フィルムを得ることができる。
本発明の拡散フィルム関する説明図。 本発明の拡散フィルムの構成を示す部分断面図。 本発明の拡散フィルムの作製方法を示す説明図。 本発明の拡散フィルムの1例を示す説明図。
符号の説明

1…拡散フィルム
2…拡散パターン記録領域
3…保護フィルム
4、15…拡散層
5…支持フィルム
6…セパレーターフィルム
7…拡散フィルム用原版
8…拡散パターン記録層
9…感光材料フィルム
10…紫外線
15a…高屈折率領域
15b…低屈折率領域
16a…垂直入射光
16b…垂直に入射した光の射出光
16a…斜めからの入射光
16b…斜めからの入射した光の射出光
17…散乱光

Claims (3)

  1. 原版のパターンに応じて感光性フィルム内部に屈折率の異なる厚み方向に柱状の微小な領域ができ、光の入射方向の角度によって散乱性が変化する拡散パターン記録領域を間隔おいて複数個配置した連続状の拡散フィルムの製造方法であって、支持体に設けた感光性フィルム上に、光を透過する領域と、光を遮断する領域からなるパターンが記録されている、離型剤層/パターン記録層/ガラス基板もしくは、ハードコート層/パターン記録層/ガラス基板の順に構成される原版を直接前記離型剤層もしくは前記ハードコート層面を感光性フィルムに貼り合わせ、平行な紫外線を照射することにより、前記原版のパターンに応じて前記感光性フィルム内部に屈折率の異なる厚み方向に柱状の微小な領域を形成し、前記感光性フィルムを前記原版にロールを介して押し付けながら前記原版から剥離し、光の入射方向の角度によって散乱性が変化する拡散パターン記録領域を間隔おいて前記感光性フィルムに複数個作製することを特徴とする拡散フィルムの製造方法
  2. 前記感光性フィルムは、使用前、支持体フィルムと保護フィルムで挟持され、使用時に保護フィルムを剥離して使用することを特徴とする、請求項1記載の拡散フィルムの製造方法。
  3. 前記感光性フィルムと支持体フィルムは剥離可能であることを特徴とする、請求項1または2記載の拡散フィルムの製造方法。
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