JPWO2002092675A1 - ポリオレフィン多孔質膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分として含む樹脂を押出機で非反応性ガスと溶融混練する工程(溶融混練工程)と、該溶融混練物を任意の形状の中実樹脂成形体に成形する工程(成形工程)と、該中実樹脂成形体を多孔化する工程(多孔化工程)とを含むポリオレフィン多孔質膜の製造方法。
Description
技術分野
本発明は、電池セパレーターや濾過材などの用途に適したポリオレフィン多孔質膜の製造方法に関するものであり、特に高分子量ポリオレフィンなどの押出成形が困難な成形材料の多孔質膜の製造方法に関する。
背景技術
ポリオレフィン多孔質膜は、電池用セパレーターやコンデンサー用隔膜や水処理用濾過材等として用いられている。
ポリオレフィン多孔質膜の製造方法としては、(1)微粉体などの孔形成剤をポリオレフィンに混合して膜を形成した後に孔形成剤を抽出する方法、(2)ポリオレフィンを溶融成形して得られた膜を熱処理により結晶化させた後、延伸して開孔する方法、(3)ポリオレフィンを溶融成形して得られた不透気性フィルムの非晶性部分を、ポリオレフィンと相溶性の溶媒により溶解させて開孔する方法、(4)ポリオレフィンに溶媒を混合した溶液から膜を成形した後、溶媒を抽出する方法が知られている。
近年ポリオレフィン多孔質膜を使用する機器の小型化及び性能向上を図るために、より薄くより高強度なポリオレフィン多孔質膜が求められている。ポリオレフィン多孔質膜の強度を高めるために、高分子量ポリオレフィンを用いることは知られている。
高分子量ポリオレフィンは溶融粘度が極めて高いために、単体での押出成形が困難であり、上記(1)や(2)のポリオレフィン多孔質膜の製造方法では、分子量が低い通常のポリオレフィンが使用されている。
ポリオレフィンと相溶性の溶媒を、不透気性のポリオレフィン膜と接触させて、ポリオレフィン膜の非晶性部分を溶解させることによって多孔化する上記製造方法(3)は、特開昭55−161830の実施例に用いられているポリオレフィンが重量平均分子量が8万未満のポリエチレンであることからも明らかなように、低分子量のポリオレフィンを多孔化する方法として行われている。
このため、高分子量ポリオレフィンを用いた多孔質膜は、特公平5−54495号公報及び特公平6−2841号公報で提案されているように、溶媒を混合した樹脂を成形して得られた膜から溶媒を抽出することによって多孔化させる上記製造方法(4)を高分子量ポリオレフィンに応用して行われてきた。すなわち、高分子量ポリオレフィンに可塑性を付与する一般には可塑剤とよばれる溶媒を高分子量ポリオレフィンと混合して、高分子量ポリオレフィンの溶融粘度を低下させて押出成形を行い、押出成形された可塑剤を含む膜から可塑剤を抽出することにより多孔質膜が製造されている。
例えば、特公平5−54495号公報では、高分子量ポリエチレンをノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、デカリン、パラフィン油などの脂肪族若しくは環式炭化水素又は沸点がこれらに対応する鉱油留分などの溶媒に加熱溶解して成形した後、溶媒を除去することにより高分子量ポリエチレン多孔質膜を得る方法が提案されている。特公平6−2841号公報では、高分子量ポリエチレンに、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類などの脂肪族化合物や脂環式化合物を混合して得られた成形体からこれらの化合物や脂環式化合物を抽出して多孔化する方法が提案されている。
最近、ポリオレフィンと相溶性の溶媒をポリオレフィン膜と接触させてポリオレフィンの非晶性部分を溶解させることによって多孔化する上記方法(3)を、高分子量ポリオレフィンに応用して高分子量ポリオレフィンの多孔質膜を製造する方法(5)が提案されている。
例えば、特開平10−258462号公報や特開2000−344930号公報では、単軸押出機で高分子量ポリオレフィンを溶融させてマンドレルがスクリューの回転に伴って、又は単独で回転するチューブダイから押し出し、押し出された管状の高分子量ポリオレフィンの内部に空気を吹き込んで膨張させて高分子量ポリオレフィンからなる不透気性膜を作り、この不透気性膜にポリオレフィンと相溶性の溶媒を接触させてポリオレフィンの非晶性部分を溶解して多孔化させる高分子量ポリオレフィン多孔質膜の製造方法が提案されている。
一方、上記製造方法(4)や(5)とは異なる高分子量ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法として、(6)特開2000−119432号公報に見られるように、常温、常圧で気体状のガスを高分子量ポリオレフィンに溶解させて押出機で溶融混練し、押出機先端の金型からガスを含んだ高分子量ポリオレフィンを押し出した後、延伸して多孔質膜を得る方法が最近提案されている。
高分子量ポリオレフィンと可塑剤を押出機で溶融混練する上記(4)の高分子量ポリオレフィン多孔質膜製造方法は、多量の溶剤を取り扱うために設備的、技術的な負担を強いられている。また、高分子量ポリオレフィンは、可塑剤と混合されることによって融点が低下するとともに粘度が低下するため、高分子量ポリオレフィンに可塑剤が混合された混合組成物を、高分子量ポリオレフィン本来の融点以上で延伸しようと試みても、混合組成物は溶融して破れてしまい、高分子量ポリオレフィンの融点より高い温度では延伸することができない。高分子量ポリオレフィン本来の融点より低い温度で延伸された後に可塑剤を抽出して多孔化した多孔質膜は、高分子量ポリオレフィンの融点より低い温度で収縮し始めるため、例えば電池セパレーターとして用いられた場合に、電池が過充電状態となって温度が上昇した時に、高分子量ポリオレフィンが溶融して多孔質膜の孔が閉塞する前に、多孔質膜が収縮してしまい、電池の内部で電極間が短絡してしまう可能性が大きくなってしまう。
上記(5)の高分子量ポリオレフィン多孔質膜製造方法では、ポリオレフィンと相溶性の溶媒と接触させ、その非晶性部分を溶解させて多孔化する不透気性高分子量ポリオレフィン膜が、可塑剤を含まない高分子量ポリオレフィンを単軸押出機で押出成形することによって得られている。
可塑剤を含まない高分子量ポリオレフィンの溶融粘度は極めて大きく、可塑剤を含まない高分子量ポリオレフィンを通常の速度で押し出した場合は、単軸押出機のスクリューやダイのマンドレルの回転運動によって高分子量ポリオレフィンが攪拌混合されることによって発生する粘性発熱量が過大なものとなる。この結果、高分子量ポリオレフィンの分子が切断される反応に必要な熱エネルギーが、溶融した高分子量ポリオレフィンの内部に蓄積され、押し出される高分子量ポリオレフィンの分子が切断され、その分子量が低下してしまう。
これを避けるためには、単軸押出機のスクリューやチューブダイのマンドレルの回転速度を小さくし、粘性発熱量を小さくして押出を行う必要がある。このことは、たとえば特開平10−237201号公報の実施例において、高分子量ポリエチレンをスクリュー外径50mmφの単軸押出機を用いて押し出すにあたって、押出機スクリューを15回転/分と極めて低速で回転させて押し出すことが記載されていることからもわかる。
このように単軸押出機の押出スクリューを低速で回転させて樹脂を押出す方法では、原料樹脂を均一に溶融することが難しくなる。特に、低分子量のポリオレフィンと比べて溶融しにくい高分子量ポリオレフィンでは、押し出された樹脂の中に溶融しきれない樹脂が粒状の固形物として残ってしまう。
さらに、溶融温度や分子量が異なる樹脂をブレンドした原料樹脂を押し出す場合には、異なる原料樹脂の分子同士が相互に絡み合うまでの攪拌作用が得られないために、溶融温度が高い樹脂や分子量が大きい樹脂が溶融しきれずに粒状の固形物で押し出されてしまう問題や、押し出された樹脂を延伸すると異なる樹脂と樹脂の界面で破断してしまい高い倍率で延伸することができない問題などが生じてしまう。高い倍率で延伸できないために、延伸により得られるフィルムの強度は低いものとなってしまい、極端な場合には、延伸を行うことすらできないことがある。
上記(6)のような常温、常圧で気体状のガスを高分子量ポリオレフィンに溶解させて押出機で溶融混練し、押出機先端の金型からガスを含んだ高分子量ポリオレフィンを押し出した後、延伸して多孔質膜を得る製造方法では、高分子量ポリオレフィンはそれに含まれるガスによって発泡し、発泡によって生成した気泡を延伸によって連通化させ、さらには孔径を大きくすることにより多孔質膜が得られる。この方法では、延伸する温度が樹脂の融点を超えてしまうと、延伸により連通化する気泡よりも、樹脂が溶融して潰れてしまう気泡の方が多くなって、得られる多孔質膜の気孔率は小さいものとなってしまう。このことは、特開2000−119432号公報において、延伸を融点未満の温度で行うと記載されており、実施例では高分子量ポリエチレンの融点より低い120℃で高分子量ポリエチレンの延伸を行うことが記載されていることからも明らかである。
このように高分子量ポリオレフィンの融点未満の温度で延伸された多孔質膜は、高分子量ポリオレフィンの融点より低い温度で収縮し始める。このため、例えば電池セパレーターとして用いられた場合に、電池が過充電状態となって温度が上昇した時に、高分子量ポリオレフィンが溶融して多孔質膜の孔が閉塞する前に収縮してしまい、電池の内部で電極間が短絡してしまう可能性が大きい。また、上記(6)の方法では、高分子量ポリオレフィンを延伸することにより、分子配向によるフィルムの強度が増加する効果と同時に、孔径が増加することによる強度低下も同時に起こる。延伸倍率を大きくしていった場合には、分子配向による膜強度の増加よりも、孔径の増加による強度の低下の方が大きくなってしまう。このため、延伸倍率を大きくすることができず、延伸による多孔質膜の気孔率の増加が不十分なものとなる。このことは、特開2000−119432号公報の実施例が1方向に4倍と延伸倍率が極めて小さく、その結果得られる多孔質フィルムの気孔率は35.6%と小さいものとなっていることからも明らかである。従って、上記(6)の方法は、発泡倍率が小さい発泡体を得る方法としては有用であっても、多孔質膜を得る製造方法としては適切な方法とは言えないものである。
発明の開示
そこで、本発明者らは、従来技術においては高分子量ポリオレフィンの押し出し成形の時に使用される可塑剤や溶媒や低分子量化合物を使用することなく、高分子量ポリオレフィンを主成分とする樹脂から多孔質膜を高い生産速度で得る方法について鋭意研究を行った結果、高分子量ポリオレフィンを主成分とする樹脂を非反応性ガスと溶融混練し、発泡させずに成形して多孔質ではない中実樹脂成形体を成形し、得られた多孔質ではない中実樹脂成形体を多孔化することによって、高分子量ポリオレフィン多孔質膜を均一かつ高い生産速度で得ることができることを見いだし、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、
(1)粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分として含む樹脂を押出機で非反応性ガスと溶融混練する工程(溶融混練工程)と、該溶融混練物を任意の形状の中実樹脂成形体に成形する工程(成形工程)と、該中実樹脂成形体を多孔化する工程(多孔化工程)とを含むポリオレフィン多孔質膜の製造方法、
(2)前記溶融混練工程と、前記成形工程との間に、溶融混練物から非反応性ガスを除去する工程を含む上記(1)記載の方法、
(3)前記溶融混練工程と、前記成形工程との間に、溶融混練物中にガスが封入された状態に維持することができる温度まで樹脂を冷却する工程を含む上記(1)記載の方法、
(4)前記多孔化工程が、ポリオレフィンの非晶性部分を選択的に溶解する液体で中実樹脂成形体を熱処理して多孔化する工程である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法、
(5)粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンからなる樹脂を押出機で非反応性ガスと溶融混練して中実樹脂を押出し、押出された中実樹脂から非反応性ガスを除去した後、これを多孔化処理することを含むポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法、
に関するものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明について、原料から製造工程までの順序に沿って以下に具体的に説明する。
a.樹脂
本発明に用いる樹脂は粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分とする樹脂である。
成形物の強度を高めるために粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分とする必要があり、粘度平均分子量が50万〜300万のポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン及びα−オレフィンから選ばれる一つ又は二つ以上の単量体を重合して得られる単独重合体、共重合体、及びこれらの重合体のブレンド物であり、線状ポリエチレンやポリプロピレンが特に好ましい。
本発明における粘度平均分子量とは、以下の方法で求められるMvである。
粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてデカリンを使用し測定温度135℃にて[η]を測定し、次式から計算した。
[η]=0.00068×Mv0.67
本発明の樹脂には、必要に応じて酸化防止剤、造核剤、無機充填材等の各種添加剤が添加される。
本発明の樹脂は、ポリオレフィンのほかに、耐熱性や強度などの性能を改良する場合には、無水マレイン酸などをグラフト化した変性ポリエチレンや変性ポリフェニレンエーテル樹脂やポリアミド樹脂などをブレンドしてもよい。その場合には、これらの樹脂とポリオレフィンとの均一な混合体を得るために、必要に応じて相溶化剤が添加される。樹脂としてはポリオレフィンが好ましい。
b.非反応性ガス
本発明では、ポリオレフィンを主成分として含む樹脂を押出機で溶融して均一に混練する時に樹脂に混合するガスとしては、常温常圧では気体状態のガスであって、ポリオレフィンを主成分とする樹脂とは反応しないで、樹脂に溶解した時に樹脂の粘度を小さくするガスが好ましい。例えば、炭酸ガス、窒素ガスは、安価で安全に取り扱える点で好ましく、これらを単独で又は組み合わせて使用してもよい。このうち、炭酸ガスは、ポリオレフィンとの溶解度が高く、樹脂の粘度を小さくする効果が大きく、より好ましい。
c.樹脂と非反応性ガスの溶融混練工程
本発明のポリオレフィン多孔質膜の製造方法には、押出機で粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分として含む樹脂を非反応性ガスと共に溶融混練する工程が含まれる。
樹脂を非反応性ガスと共に溶融混練する押出機としては、単軸押出機、同方向回転二軸押出機、異方向回転二軸押出機を単独で又は複数の押出機を組み合わせて用いることができる。
ポリオレフィンを主成分とし、ポリオレフィン以外の樹脂を含む樹脂を非反応性ガスと混合して押し出す場合は、異なる樹脂を混合した原料から均一な樹脂を得るために、溶融混練能力が大きい同方向回転二軸押出機を用いることが好ましい。
押出機への非反応性ガスの注入は、ガスボンベから気体状態のガスを直接押出機に注入してもよいが、冷却した液体状態の非反応性ガスをプランジャーポンプ等を用いて押出機に加圧して定量的に供給する方法が好ましい。樹脂に均一に溶解するためには、非反応性ガスを臨界状態で押出機に注入する方がより好ましい。
押出機スクリューは、押出機に注入された非反応性ガスが押出機のシリンダーに設けられた樹脂供給口から流出しないようにするために、押出機のシリンダーの樹脂供給口から非反応性ガスの注入孔の間で、押出機内の樹脂の流動に伴って発生する樹脂圧力が非反応性ガスの注入圧力より大きくなるように、スクリュー形状を設定することが好ましい。例えば、同方向回転二軸押出機を用いる場合は、非反応性ガスの注入孔より樹脂供給口に近い位置のスクリューエレメントに、逆ねじスクリューエレメントやニーディングディスクなどを使用することが好ましい。また、押出機に注入された非反応性ガスが押出機の出口に向けて流動する樹脂に溶解しやすくするために、非反応性ガスの注入孔と押出機の出口の間の位置のスクリューエレメントには、切り欠きスクリューやカラーなどの樹脂の滞留時間が長く混合機能が大きいスクリューエレメントを使用することが好ましい。
d.中実樹脂成形体の成形工程
本発明のポリオレフィン多孔質膜の製造方法には、粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分とする樹脂を発泡させずに、任意の形状の多孔質ではない中実樹脂成形体に成形する工程を含む。
本発明における多孔質ではない中実樹脂成形体とは、樹脂を成形した樹脂成形体を電子顕微鏡で観察して、樹脂成形体に混合されたガスが発泡することによって形成された気泡が認められない樹脂成形体のことを表す。
本発明では、任意の形状の多孔質ではない中実樹脂成形体を成形するために、先端にダイが取り付けられた押出機が用いられる。
本発明では、押出機を用いて任意の形状の多孔質ではない中実樹脂成形体を押出成形するために、以下の二つの方法が単独で又は組み合わせて行われる。
d−1.樹脂に混合された非反応性ガスを除去してから任意の形状の成形体に成形する方法。
d−2.非反応性ガスが発泡しないように、樹脂中に非反応性ガスを封入できる温度にまで冷却して任意の形状の成形体に成形する方法。
d−1の非反応性ガスを除去して中実成形体を成形する方法
本発明では、一般にベントポートと呼ばれている押出機のシリンダーに設けたガス排出口を有する押出機を用いる方法や、一般にタンデム押出機と呼ばれている複数の押出機を用いる方法がある。
樹脂に混合された非反応性ガスを除去してから任意の形状の多孔質ではない成形体に成形する押出機に、ベントポートを有する押出機を用いる場合、押出機のシリンダーにベントポートを設ける位置は、押出機内部で非反応性ガスが溶解して可塑化された樹脂が均一に溶融混練される位置より押出機の出口側の位置にすることが好ましい。ベントポートから非反応性ガスと一緒に溶融した樹脂が噴出する場合には、一般にベントスタッファーと呼ばれているスクリュー型フィーダーをベントポートに取り付けて押出機外への樹脂の流出を防ぎつつ非反応性ガスを押出機外に除去することができる。
ベントポートを有する押出機を用いる場合は、押出機のシリンダーの原料供給側の位置に非反応性ガスを注入するための注入口を設けることにより、樹脂に非反応性ガスを溶融混練する工程と、樹脂から非反応性ガスを除去して多孔質ではない中実樹脂成形体を成形する工程とを、一台の押出機で行うことができる。
樹脂に混合された非反応性ガスを除去してから任意の形状の多孔質ではない成形体に成形する工程にタンデム押出機を用いる場合は、前段の押出機には非反応性ガスを注入するための注入口を有する押出機を使用して樹脂と非反応性ガスを溶融混練する工程を行う。
タンデム押出機で非反応性ガスを除去して多孔質ではない中実樹脂成形体を成形することは、タンデム押出機の後段の押出機にベントポートを有する押出機を用い、前段の押出機から押し出されてきた非反応性ガスを含む樹脂を後段の押出機に供給して、非反応性ガスを後段の押出機のベントポートから除去しながら樹脂を押し出すことによって行うことができる。
あるいは、タンデム押出機の後段の押出機にベントポートを有しない押出機を用いる場合は、前段の押出機と後段の押出機を減圧室で連結したり、あるいは連結部に大気下に開放する部分を設けることによって、前段の押出機から押し出される非反応性ガスを含む樹脂から非反応性ガスを除去しながら後段の押出機に供給することができ、また、後段の押出機から非反応性ガスが除去された多孔質ではない中実樹脂成形体を任意の形状に押し出すことができる。
非反応性ガスが除去された樹脂は、押出機の先端に取り付けられるダイから、任意の形状の多孔質ではない中実樹脂成形体に成形されて押し出される。
ダイは、スリットダイ、Tダイ、フィッシュテールダイなどのシートダイや、スパイラルダイ、スパイダーダイ、マンドレルが回転するスクリューダイなどのチューブダイや、中空糸紡口などのなかから、中実樹脂成形体の形状に適したダイを選択して使用することができる。
d−2.冷却して中実樹脂成形体を成形する方法
本発明では、押出機で非反応性ガスと共に溶融混練した樹脂を押出機の先端に取り付けたダイから発泡させずに押し出すことによっても、多孔質ではない中実樹脂成形体を成形することができる。
非反応性ガスを含む樹脂を発泡させずにダイから押し出すために、ダイ内壁の温度をダイに流入する樹脂の温度より低い温度に調節してダイ内の非反応性ガスを含む樹脂を冷却し、樹脂が大気圧下に押し出されても発泡することなく非反応性ガスが樹脂中に封入することができる温度まで、樹脂の温度を下げてダイから押し出される。
ガスを樹脂中に封入できる温度は、用いる樹脂とガスとの組み合わせや、押し出しの条件によって異なる。このため、ダイの温度を変えて押出すことを繰り返して、樹脂を発泡させずにガスを封入して押し出すことができるダイの温度を探すという方法が採れらる。このダイの温度を探すために、樹脂の結晶化ピーク温度を示差走査型熱量計(DSC)で測定し、この結晶化ピーク温度を参考にすることができる。
発泡せずに押し出された非反応性ガスを含む多孔質ではない中実樹脂成形体は、中実樹脂成形体を成形する工程の後に続く延伸工程や多孔化工程などで、中実樹脂成形体が加熱されたときに発泡してしまわないように、非反応性ガスが除去される。非反応性ガスを含む多孔質ではない中実樹脂成形体を常温で保管しておくと、中実樹脂成形体から非反応性ガスが蒸散していくので、非反応性ガスを除去するために特別な設備を用意する必要はない。非反応性ガスを効率的に除去するために、減圧した容器や室内に非反応性ガスを含む多孔質ではない中実樹脂成形体を保管して非反応性ガスを除去してもよい。
e.多孔化工程
上記に説明した方法によって成形される多孔質ではない中実樹脂成形体を多孔化処理することにより多孔質膜が得られる。この多孔化処理の方法を以下に説明する。
多孔化処理の一つの方法としては、多孔質ではない中実樹脂成形体を熱処理することによって結晶化度を高めた後に延伸することにより、ポリオレフィンのラメラ結晶間を開裂させて多孔化させる方法があり、別の方法としては、ポリオレフィンの非晶性部分を選択的に溶解又は溶融する液体(a)中で、ポリオレフィンを主成分とする多孔質ではない中実樹脂成形体を熱処理した後、液体(a)と相溶性はあるが樹脂成形体は溶解しない液体(b)で樹脂成形体を洗浄して液体(a)を除去した後に乾燥することにより、多孔質ではない中実樹脂成形体を多孔化する方法がある。
液体(a)としては、パラフィンオイルなどの炭化水素、低級脂肪族アルコール、低級脂肪族ケトン、窒素含有有機化合物、エーテル、グリコール、低級脂肪族エステル、シリコンオイルなどを単独で又は組み合わせて用いることができる。好ましい熱処理温度は、ポリオレフィンや液体(a)の種類によるが、例えばポリエチレンの場合は、100℃〜140℃の温度が好ましい。熱処理時間は処理温度が高ければ短くでき、多孔化された後の樹脂の強度を維持するために、処理時間は短い方が好ましい。
液体(b)としては、ヘキサンなどの低沸点炭化水素、ハイドロフロロエーテルやハイドロフロロカーボンなどの非塩素含有フッ素系有機溶剤やメチルエーテルケトンなどのケトンを用いることが好ましい。また、液体(a)中で高分子量ポリオレフィンを延伸することや、液体(b)で洗浄して乾燥した後の高分子量ポリオレフィンを延伸することは、得られる多孔質フィルムの気孔の大きさや数を調整するために行ってもよい。また、液体中の高分子量ポリオレフィンのたるみを解消するために、液体と接触するために送られる樹脂の速度よりも、液体と接触した後の樹脂を引き取る速度の方を大きくしてもよい。
これらの多孔化処理方法のなかで、前者の延伸による多孔化処理方法は、高分子量ポリオレフィンを延伸する時の延伸応力が大きいために装置が大型となるので、高分子量ポリオレフィンを多孔化する方法としては、後者のポリオレフィンの相溶性の溶媒で非晶部分を溶解して多孔化する方法の方が好ましい。
f.延伸工程
本発明において、分子配向による強度向上や多孔質膜の薄膜化を目的に、延伸してもよい。強度を大きくする目的では、延伸は多孔化処理を行う前に行う方が好ましいが、多孔化処理された後に延伸することにより、多孔質膜の孔径や厚みの調整を行うことができ、多孔化処理の前と後の片方で延伸しても、あるいは延伸の前と後の両方で延伸してもよい。
延伸方法には、フラット延伸とチューブラー延伸があり、高い厚み精度や頻繁な延伸倍率の調整が必要な場合にはフラット延伸が、設備コストを小さくする場合にはチューブラー延伸が好ましく、適宜延伸方法を選択することができる。
フラット延伸の場合は、機械方向と幅方向のいずれか一方向だけを延伸する一軸延伸と、機械方向と幅方向の両方を延伸する二軸延伸とがあり、いずれか一方、又は両方を組み合わせた延伸ができる。二軸延伸には、一方向に延伸した後に他の方向に延伸する逐次延伸と、二方向を同時に延伸する同時延伸とがあり、いずれか一方、又は両方を組み合わせた延伸ができる。
本発明の実施態様の一例を実施例に基づいて説明する。
実施例における多孔質膜の物性評価方法は次の通りである。
(a)厚み
尾崎製作所製ダイアルゲージPEACOK No.25を用いて測定した。
(b)気孔率
厚みと面積からサンプルの体積を求め、重量を測定して、次の式を用いて気孔率を求めた。
気孔率(%)=(1−(重量/樹脂密度)/体積)×100
(c)突刺強度
カトーテック製圧縮試験機KES−G5に、先端の曲率半径が0.5mmの針を取り付け、突刺速度2mm/秒で突刺試験を行い、最大突刺荷重を突刺強度(g)とした。
(d)透気度
JIS P−8117に準拠したガーレー式透気度計を用いて測定した。
実施例1
シリンダーブロック(L/D比 3)が15個連結されたシリンダーと、直径が35mmであるスクリューとからなる同方向回転二軸押出機を用い、二軸押出機の先端には、ギヤポンプとスリットの巾が100mmで間隙が1mmであるスリットダイを取り付けて用いた。
二軸押出機の最上流のシリンダーブロックに設けたフィード口からは、定量フィーダーを用いて粘度平均分子量が100万である超高分子量ポリエチレンを、1時間あたり5kg供給した。冷凍機を用いて冷却されたエチレングリコールで満たされた槽に沈めた管に、液化炭酸ガスボンベから取り出したガスを通過させた後、プランジャーポンプで10MPaにガスを加圧して、押出機の最上流から6番目のシリンダーブロックに設けた注入孔から1時間あたり500g注入した。二軸押出機の最下流側から3番目のシリンダーブロックに設け、ベントポートから押出機内の非反応性ガスを押出機外に排出した。
二軸押出機のシリンダーとスリットダイの温度が200℃となるように、シリンダーとスリットダイの電熱ヒーターの電流と冷却水の水量を調節した。
二軸押出機のスクリューは1分間当たり300回転の回転速度で回転させ、スリットダイから押し出される樹脂は、水冷のニップローラーで引き取られ、板状のサンプルが得られた。
得られたサンプルの断面を電子顕微鏡で観察したところ、炭酸ガスの発泡による気泡が含まれていないことが確かめられた。押し出されたサンプルから50cmの長さに切り取り、重量を測定したあと、温度が30℃で圧力が6cmHgに設定した真空乾燥機に保管した。8時間保管したサンプルの重量を測定したところ、保管前の重量からの減少度合いは保管前の重量と同じであった。
板状サンプルの粘度平均分子量を測定したところ98万であった。
岩本製作所製二軸延伸機を用いて、このサンプルの同時二軸延伸を行った。延伸速度は10mm/秒であった。延伸温度を120℃から5℃間隔に150℃まで変えて延伸を行い、各々の延伸温度で破膜する直前の最大延伸倍率を求めた。
最も延伸倍率が大きい延伸条件は、135℃で縦横10倍であった。
この延伸(最大延伸倍率)した薄膜は、130℃に加熱した流動パラフィンに30秒間浸漬した後、メチルエチルケトンに24時間浸漬して流動パラフィンを除去し、常温常圧で24時間乾燥した。
乾燥した薄膜は、厚みが17μm、気孔率が45%、透気度が320秒、突刺強度が520gであった。
実施例2
実施例1のスリットダイを、円環状のスリットの外径が10mmで内径が8mmである円筒ダイに取り替えた以外は、実施例1と同じ条件で粘度平均分子量が100万の超高分子量ポリエチレンを押し出した。円筒ダイのインナーダイに設けた管から、圧縮した空気を管状に押し出された樹脂の内部に送り、チューブラー延伸を行った。管状に押し出された樹脂の外側に、エアーリングを設けて、エアーリングから20℃に調整された空気を吹き出して、管状の樹脂を冷却することにより、チューブラー延伸が一定の位置で開始するように樹脂の温度を調整した。チューブラー延伸された薄膜は、デフレーターロールにより折り畳んで、金属ローラーとゴムローラーのニップロールを通して、引き取った。
延伸され折り畳まれた2枚重ねの薄膜の幅は142mmであり、円筒ダイの円環状スリットの外径が10mmであることから、幅方向の延伸倍率は9倍となる。円筒ダイの円環状スリットの面積と押出量とから計算される円筒ダイから押し出される樹脂の線速度と、ニップローの引き取り速度の比から、機械方向の延伸倍率は9.5倍であった。
このチューブラー延伸された薄膜を実施例1と同じ条件で多孔化処理を行った。得られた多孔質フィルムは、厚みが16μm、気孔率が47%、透気度が290秒、突刺強度が470gであった。
実施例3
前段の押出機が、シリンダーブロック(L/D比 3)が15個連結されたシリンダーと、直径が35mmであるスクリューとからなる同方向回転二軸押出機であり、後段の押出機が口径が70mm、L/D比が10、シリンダーの途中にベントポートを設けた単軸押出機である、タンデム押出機を用いた。
二軸押出機の最上流のシリンダーブロックに設けたフィード口からは、定量フィーダーを用いて粘度平均分子量が100万の超高分子量ポリエチレンを1時間あたり5kg供給した。二軸押出機の最上流から6番目のシリンダーブロックに設けた注入孔から実施例1と同じ装置を用いて10MPaに加圧した炭酸ガスを1時間あたり500g注入した。
二軸押出機のシリンダーの温度は200℃となるように、シリンダーの電熱ヒーターの電流と冷却水の水量を調節した。二軸押出機のスクリューは1分間当たり300回転の回転速度で回転させ、二軸押出機出口から押し出される樹脂は、冷却固化する前に、単軸押出機のポリマーフィード口に供給された。
単軸押出機のベントポートには真空ポンプを接続し、単軸押出機内のガスの排出を行った。単軸押出機の先端には、スリットの幅が100mmで間隙が1mmであるスリットダイを取り付けて用いた。単軸押出機のシリンダーの温度は200℃となるように、スリットダイの温度は200℃となるように、押出機のシリンダーとダイの電熱ヒーターの電流と冷却水の水量を調節した。
単軸押出機のスクリューは1分間当たり60回転の回転速度で回転させ、ポリエチレン樹脂をスリットダイより押し出して板状のサンプルが得られた。
押し出されたサンプルの断面を電子顕微鏡で観察し、気泡が含まれていないことが確かめられた。押し出されたサンプルから50cmの長さに切り取り、重量を測定したあと、温度が30℃で圧力が6cmHgに設定した真空乾燥機に保管した。8時間保管したサンプルの重量を測定したところ、保管前の重量からの減少度合いは保管前の重量と同じであった。
板状サンプルの粘度平均分子量を測定したところ99万であった。
岩本製作所製二軸延伸機を用いて、このサンプルの同時二軸延伸を行った。延伸速度は10mm/秒であった。延伸温度を120℃から5℃間隔に150℃まで変えて延伸を行い、各々の延伸温度で破膜する直前の最大延伸倍率を求めた。最も延伸倍率が大きい延伸条件は、135℃で縦横10倍であった。
この延伸(最大延伸倍率)した薄膜は、130℃に加熱した流動パラフィンに30秒間浸漬した後、メチルエチルケトンに24時間浸漬して流動パラフィンを除去し、常温常圧で24時間乾燥した。
この乾燥した薄膜は、厚みが16μm、気孔率が47%、透気度が270秒、突刺強度が480gであった。
実施例4
押出機としては、シリンダーブロック(L/D比 3)が15個連結されたシリンダーと、直径が35mmであるスクリューとからなる同方向回転二軸押出機を用い、押出機の先端には、ギヤポンプとスリットの幅が100mmで間隙が1mmであるスリットダイを取り付けて用いた。
押出機の最上流のシリンダーブロックに設けたフィード口からは、定量フィーダーを用いて粘度平均分子量が40万の高密度ポリエチレンを1時間あたり5kg供給した。実施例1と同じ装置を用いて10MPaに加圧した炭酸ガスを、押出機の最上流から6番目のシリンダーブロックに設けた注入孔から1時間あたり500g注入した。
押出機のシリンダーの温度は200℃となるように、スリットダイの温度は120℃となるように、押出機のシリンダーとダイの電熱ヒーターの電流と冷却水の水量を調節した。押出機スクリューを1分間当たり300回転の回転数で回転させて、ポリエチレンをスリットダイから押し出し、板状のサンプルが得られた。押し出されたサンプルの断面を電子顕微鏡で観察し、中実樹脂の成形体であることが確かめられた。押し出されたサンプルから50cmの長さに切り取り、重量を測定した後、温度が30℃で圧力が6cmHgに設定した真空乾燥機に保管した。8時間保管したサンプルの重量を測定し、保管前の重量からの減少度合いが保管前の重量の0.1%以下であるかどうかを調べ、0.1%を超える場合には、更に8時間真空乾燥機に保管し、重量の減少度合いが0.1%以下になるまで、真空乾燥機への保管と重量減少の確認を繰り返した。
重量減少の度合いが0.1%以下となったサンプルの粘度平均分子量を測定したところ39万であった。
岩本製作所製二軸延伸機を用いて、このサンプルの同時二軸延伸を行った。延伸速度は10mm/秒であった。延伸温度を120℃から5℃間隔に150℃まで変えて延伸を行い、各々の延伸温度で破膜する直前の最大延伸倍率を求めた。最も延伸倍率が大きい延伸条件は135℃で縦10倍横10倍の延伸であった。
この延伸(最大延伸倍率)した薄膜は、130℃に加熱した流動パラフィンに30秒間浸漬した後、メチルエチルケトンに24時間浸漬して流動パラフィンを除去し、常温常圧で24時間乾燥した。
この乾燥した薄膜は、厚みが15μm、気孔率が48%、透気度が260秒、突刺強度が450gであった。
実施例5
粘度平均分子量が330万の超高分子量ポリエチレンと粘度平均分子量が30万の高密度ポリエチレンを50重量%対50重量%の比率でブレンドした。ブレンドした樹脂の粘度平均分子量は105万であった。このブレンド樹脂を用いた以外は、実施例1と同じ条件で押出しを行い、電子顕微鏡で観察して気泡のない中実樹脂の板状サンプルを得た。サンプルの粘度平均分子量を測定したところ、101万であった。
このサンプルの同時二軸延伸は、実施例1と同じ同時二軸延伸機で行い、延伸倍率は140℃で最大の縦10倍横10倍となった。この延伸された薄膜を実施例1と同様にして多孔化処理を行った。得られた薄膜は、厚みが15μm、気孔率が47%、透気度が280秒、突刺強度が510gであった。
比較例1
炭酸ガスを注入しないで、実施例1と同じ押出機を用いて、粘度平均分子量が100万の超高分子量ポリエチレンを押出した。シリンダー温度、ダイ温度の設定及び押出機スクリューの回転速度は実施例1と同じ条件で押出を行った。
押出機出口の樹脂温度は320℃と、実施例1の場合の265℃と比べて大きく上昇しており、このためにダイから押し出された樹脂は黄褐色に変色していた。押し出された樹脂の粘度平均分子量を測定したところ24万であった。
比較例2
実施例4と同じ押出機を用いて、ダイの温度を200℃に設定したことを除いて実施例1と同じ条件で、粘度平均分子量が40万の高密度ポリエチレンを押出した。ダイから押し出された樹脂は発泡し、冷却したあと断面を電子顕微鏡で観察したところ、数十μmの大きさの気泡が多数観察された。この発泡した樹脂を、実施例1と同じ同時二軸延伸機を用いて135℃の延伸温度で同時二軸延伸を試みたが、延伸が始まるとすぐに破れてしまい、延伸することができなかった。
比較例3
スクリュー外径が30mm、L/D比が34で溝付きシリンダーの単軸押出機に実施例5に用いたスリットダイを取り付けて、実施例5に用いた樹脂と同じ、粘度平均分子量が330万の超高分子量ポリエチレンと粘度平均分子量が30万の高密度ポリエチレンを50重量%対50重量%の比率でブレンドした樹脂を、1時間あたり5kgの押出量で押出した。押出機シリンダーの温度は280℃、スクリュー回転速度は1分間あたり15回転、スリットダイの温度は200℃に設定して押出を行った。押し出された板状のサンプルの粘度平均分子量を測定したところ75万であった。この板状サンプルを、実施例3と同じ同時二軸延伸機を用いて、120℃から150℃の延伸温度の範囲で延伸を試みたが、樹脂は引きちぎられるように破れてしまい、いずれの温度でも延伸ができなかった。
産業上の利用可能性
本発明のポリオレフィン多孔質膜の製造方法は、高分子量ポリオレフィンを主成分として含む樹脂の分子量を高く維持して、高強度且つ高温まで収縮しにくいポリオレフィン多孔質膜を製造する方法として極めて有用である。
本発明は、電池セパレーターや濾過材などの用途に適したポリオレフィン多孔質膜の製造方法に関するものであり、特に高分子量ポリオレフィンなどの押出成形が困難な成形材料の多孔質膜の製造方法に関する。
背景技術
ポリオレフィン多孔質膜は、電池用セパレーターやコンデンサー用隔膜や水処理用濾過材等として用いられている。
ポリオレフィン多孔質膜の製造方法としては、(1)微粉体などの孔形成剤をポリオレフィンに混合して膜を形成した後に孔形成剤を抽出する方法、(2)ポリオレフィンを溶融成形して得られた膜を熱処理により結晶化させた後、延伸して開孔する方法、(3)ポリオレフィンを溶融成形して得られた不透気性フィルムの非晶性部分を、ポリオレフィンと相溶性の溶媒により溶解させて開孔する方法、(4)ポリオレフィンに溶媒を混合した溶液から膜を成形した後、溶媒を抽出する方法が知られている。
近年ポリオレフィン多孔質膜を使用する機器の小型化及び性能向上を図るために、より薄くより高強度なポリオレフィン多孔質膜が求められている。ポリオレフィン多孔質膜の強度を高めるために、高分子量ポリオレフィンを用いることは知られている。
高分子量ポリオレフィンは溶融粘度が極めて高いために、単体での押出成形が困難であり、上記(1)や(2)のポリオレフィン多孔質膜の製造方法では、分子量が低い通常のポリオレフィンが使用されている。
ポリオレフィンと相溶性の溶媒を、不透気性のポリオレフィン膜と接触させて、ポリオレフィン膜の非晶性部分を溶解させることによって多孔化する上記製造方法(3)は、特開昭55−161830の実施例に用いられているポリオレフィンが重量平均分子量が8万未満のポリエチレンであることからも明らかなように、低分子量のポリオレフィンを多孔化する方法として行われている。
このため、高分子量ポリオレフィンを用いた多孔質膜は、特公平5−54495号公報及び特公平6−2841号公報で提案されているように、溶媒を混合した樹脂を成形して得られた膜から溶媒を抽出することによって多孔化させる上記製造方法(4)を高分子量ポリオレフィンに応用して行われてきた。すなわち、高分子量ポリオレフィンに可塑性を付与する一般には可塑剤とよばれる溶媒を高分子量ポリオレフィンと混合して、高分子量ポリオレフィンの溶融粘度を低下させて押出成形を行い、押出成形された可塑剤を含む膜から可塑剤を抽出することにより多孔質膜が製造されている。
例えば、特公平5−54495号公報では、高分子量ポリエチレンをノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、デカリン、パラフィン油などの脂肪族若しくは環式炭化水素又は沸点がこれらに対応する鉱油留分などの溶媒に加熱溶解して成形した後、溶媒を除去することにより高分子量ポリエチレン多孔質膜を得る方法が提案されている。特公平6−2841号公報では、高分子量ポリエチレンに、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類などの脂肪族化合物や脂環式化合物を混合して得られた成形体からこれらの化合物や脂環式化合物を抽出して多孔化する方法が提案されている。
最近、ポリオレフィンと相溶性の溶媒をポリオレフィン膜と接触させてポリオレフィンの非晶性部分を溶解させることによって多孔化する上記方法(3)を、高分子量ポリオレフィンに応用して高分子量ポリオレフィンの多孔質膜を製造する方法(5)が提案されている。
例えば、特開平10−258462号公報や特開2000−344930号公報では、単軸押出機で高分子量ポリオレフィンを溶融させてマンドレルがスクリューの回転に伴って、又は単独で回転するチューブダイから押し出し、押し出された管状の高分子量ポリオレフィンの内部に空気を吹き込んで膨張させて高分子量ポリオレフィンからなる不透気性膜を作り、この不透気性膜にポリオレフィンと相溶性の溶媒を接触させてポリオレフィンの非晶性部分を溶解して多孔化させる高分子量ポリオレフィン多孔質膜の製造方法が提案されている。
一方、上記製造方法(4)や(5)とは異なる高分子量ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法として、(6)特開2000−119432号公報に見られるように、常温、常圧で気体状のガスを高分子量ポリオレフィンに溶解させて押出機で溶融混練し、押出機先端の金型からガスを含んだ高分子量ポリオレフィンを押し出した後、延伸して多孔質膜を得る方法が最近提案されている。
高分子量ポリオレフィンと可塑剤を押出機で溶融混練する上記(4)の高分子量ポリオレフィン多孔質膜製造方法は、多量の溶剤を取り扱うために設備的、技術的な負担を強いられている。また、高分子量ポリオレフィンは、可塑剤と混合されることによって融点が低下するとともに粘度が低下するため、高分子量ポリオレフィンに可塑剤が混合された混合組成物を、高分子量ポリオレフィン本来の融点以上で延伸しようと試みても、混合組成物は溶融して破れてしまい、高分子量ポリオレフィンの融点より高い温度では延伸することができない。高分子量ポリオレフィン本来の融点より低い温度で延伸された後に可塑剤を抽出して多孔化した多孔質膜は、高分子量ポリオレフィンの融点より低い温度で収縮し始めるため、例えば電池セパレーターとして用いられた場合に、電池が過充電状態となって温度が上昇した時に、高分子量ポリオレフィンが溶融して多孔質膜の孔が閉塞する前に、多孔質膜が収縮してしまい、電池の内部で電極間が短絡してしまう可能性が大きくなってしまう。
上記(5)の高分子量ポリオレフィン多孔質膜製造方法では、ポリオレフィンと相溶性の溶媒と接触させ、その非晶性部分を溶解させて多孔化する不透気性高分子量ポリオレフィン膜が、可塑剤を含まない高分子量ポリオレフィンを単軸押出機で押出成形することによって得られている。
可塑剤を含まない高分子量ポリオレフィンの溶融粘度は極めて大きく、可塑剤を含まない高分子量ポリオレフィンを通常の速度で押し出した場合は、単軸押出機のスクリューやダイのマンドレルの回転運動によって高分子量ポリオレフィンが攪拌混合されることによって発生する粘性発熱量が過大なものとなる。この結果、高分子量ポリオレフィンの分子が切断される反応に必要な熱エネルギーが、溶融した高分子量ポリオレフィンの内部に蓄積され、押し出される高分子量ポリオレフィンの分子が切断され、その分子量が低下してしまう。
これを避けるためには、単軸押出機のスクリューやチューブダイのマンドレルの回転速度を小さくし、粘性発熱量を小さくして押出を行う必要がある。このことは、たとえば特開平10−237201号公報の実施例において、高分子量ポリエチレンをスクリュー外径50mmφの単軸押出機を用いて押し出すにあたって、押出機スクリューを15回転/分と極めて低速で回転させて押し出すことが記載されていることからもわかる。
このように単軸押出機の押出スクリューを低速で回転させて樹脂を押出す方法では、原料樹脂を均一に溶融することが難しくなる。特に、低分子量のポリオレフィンと比べて溶融しにくい高分子量ポリオレフィンでは、押し出された樹脂の中に溶融しきれない樹脂が粒状の固形物として残ってしまう。
さらに、溶融温度や分子量が異なる樹脂をブレンドした原料樹脂を押し出す場合には、異なる原料樹脂の分子同士が相互に絡み合うまでの攪拌作用が得られないために、溶融温度が高い樹脂や分子量が大きい樹脂が溶融しきれずに粒状の固形物で押し出されてしまう問題や、押し出された樹脂を延伸すると異なる樹脂と樹脂の界面で破断してしまい高い倍率で延伸することができない問題などが生じてしまう。高い倍率で延伸できないために、延伸により得られるフィルムの強度は低いものとなってしまい、極端な場合には、延伸を行うことすらできないことがある。
上記(6)のような常温、常圧で気体状のガスを高分子量ポリオレフィンに溶解させて押出機で溶融混練し、押出機先端の金型からガスを含んだ高分子量ポリオレフィンを押し出した後、延伸して多孔質膜を得る製造方法では、高分子量ポリオレフィンはそれに含まれるガスによって発泡し、発泡によって生成した気泡を延伸によって連通化させ、さらには孔径を大きくすることにより多孔質膜が得られる。この方法では、延伸する温度が樹脂の融点を超えてしまうと、延伸により連通化する気泡よりも、樹脂が溶融して潰れてしまう気泡の方が多くなって、得られる多孔質膜の気孔率は小さいものとなってしまう。このことは、特開2000−119432号公報において、延伸を融点未満の温度で行うと記載されており、実施例では高分子量ポリエチレンの融点より低い120℃で高分子量ポリエチレンの延伸を行うことが記載されていることからも明らかである。
このように高分子量ポリオレフィンの融点未満の温度で延伸された多孔質膜は、高分子量ポリオレフィンの融点より低い温度で収縮し始める。このため、例えば電池セパレーターとして用いられた場合に、電池が過充電状態となって温度が上昇した時に、高分子量ポリオレフィンが溶融して多孔質膜の孔が閉塞する前に収縮してしまい、電池の内部で電極間が短絡してしまう可能性が大きい。また、上記(6)の方法では、高分子量ポリオレフィンを延伸することにより、分子配向によるフィルムの強度が増加する効果と同時に、孔径が増加することによる強度低下も同時に起こる。延伸倍率を大きくしていった場合には、分子配向による膜強度の増加よりも、孔径の増加による強度の低下の方が大きくなってしまう。このため、延伸倍率を大きくすることができず、延伸による多孔質膜の気孔率の増加が不十分なものとなる。このことは、特開2000−119432号公報の実施例が1方向に4倍と延伸倍率が極めて小さく、その結果得られる多孔質フィルムの気孔率は35.6%と小さいものとなっていることからも明らかである。従って、上記(6)の方法は、発泡倍率が小さい発泡体を得る方法としては有用であっても、多孔質膜を得る製造方法としては適切な方法とは言えないものである。
発明の開示
そこで、本発明者らは、従来技術においては高分子量ポリオレフィンの押し出し成形の時に使用される可塑剤や溶媒や低分子量化合物を使用することなく、高分子量ポリオレフィンを主成分とする樹脂から多孔質膜を高い生産速度で得る方法について鋭意研究を行った結果、高分子量ポリオレフィンを主成分とする樹脂を非反応性ガスと溶融混練し、発泡させずに成形して多孔質ではない中実樹脂成形体を成形し、得られた多孔質ではない中実樹脂成形体を多孔化することによって、高分子量ポリオレフィン多孔質膜を均一かつ高い生産速度で得ることができることを見いだし、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、
(1)粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分として含む樹脂を押出機で非反応性ガスと溶融混練する工程(溶融混練工程)と、該溶融混練物を任意の形状の中実樹脂成形体に成形する工程(成形工程)と、該中実樹脂成形体を多孔化する工程(多孔化工程)とを含むポリオレフィン多孔質膜の製造方法、
(2)前記溶融混練工程と、前記成形工程との間に、溶融混練物から非反応性ガスを除去する工程を含む上記(1)記載の方法、
(3)前記溶融混練工程と、前記成形工程との間に、溶融混練物中にガスが封入された状態に維持することができる温度まで樹脂を冷却する工程を含む上記(1)記載の方法、
(4)前記多孔化工程が、ポリオレフィンの非晶性部分を選択的に溶解する液体で中実樹脂成形体を熱処理して多孔化する工程である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法、
(5)粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンからなる樹脂を押出機で非反応性ガスと溶融混練して中実樹脂を押出し、押出された中実樹脂から非反応性ガスを除去した後、これを多孔化処理することを含むポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法、
に関するものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明について、原料から製造工程までの順序に沿って以下に具体的に説明する。
a.樹脂
本発明に用いる樹脂は粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分とする樹脂である。
成形物の強度を高めるために粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分とする必要があり、粘度平均分子量が50万〜300万のポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン及びα−オレフィンから選ばれる一つ又は二つ以上の単量体を重合して得られる単独重合体、共重合体、及びこれらの重合体のブレンド物であり、線状ポリエチレンやポリプロピレンが特に好ましい。
本発明における粘度平均分子量とは、以下の方法で求められるMvである。
粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてデカリンを使用し測定温度135℃にて[η]を測定し、次式から計算した。
[η]=0.00068×Mv0.67
本発明の樹脂には、必要に応じて酸化防止剤、造核剤、無機充填材等の各種添加剤が添加される。
本発明の樹脂は、ポリオレフィンのほかに、耐熱性や強度などの性能を改良する場合には、無水マレイン酸などをグラフト化した変性ポリエチレンや変性ポリフェニレンエーテル樹脂やポリアミド樹脂などをブレンドしてもよい。その場合には、これらの樹脂とポリオレフィンとの均一な混合体を得るために、必要に応じて相溶化剤が添加される。樹脂としてはポリオレフィンが好ましい。
b.非反応性ガス
本発明では、ポリオレフィンを主成分として含む樹脂を押出機で溶融して均一に混練する時に樹脂に混合するガスとしては、常温常圧では気体状態のガスであって、ポリオレフィンを主成分とする樹脂とは反応しないで、樹脂に溶解した時に樹脂の粘度を小さくするガスが好ましい。例えば、炭酸ガス、窒素ガスは、安価で安全に取り扱える点で好ましく、これらを単独で又は組み合わせて使用してもよい。このうち、炭酸ガスは、ポリオレフィンとの溶解度が高く、樹脂の粘度を小さくする効果が大きく、より好ましい。
c.樹脂と非反応性ガスの溶融混練工程
本発明のポリオレフィン多孔質膜の製造方法には、押出機で粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分として含む樹脂を非反応性ガスと共に溶融混練する工程が含まれる。
樹脂を非反応性ガスと共に溶融混練する押出機としては、単軸押出機、同方向回転二軸押出機、異方向回転二軸押出機を単独で又は複数の押出機を組み合わせて用いることができる。
ポリオレフィンを主成分とし、ポリオレフィン以外の樹脂を含む樹脂を非反応性ガスと混合して押し出す場合は、異なる樹脂を混合した原料から均一な樹脂を得るために、溶融混練能力が大きい同方向回転二軸押出機を用いることが好ましい。
押出機への非反応性ガスの注入は、ガスボンベから気体状態のガスを直接押出機に注入してもよいが、冷却した液体状態の非反応性ガスをプランジャーポンプ等を用いて押出機に加圧して定量的に供給する方法が好ましい。樹脂に均一に溶解するためには、非反応性ガスを臨界状態で押出機に注入する方がより好ましい。
押出機スクリューは、押出機に注入された非反応性ガスが押出機のシリンダーに設けられた樹脂供給口から流出しないようにするために、押出機のシリンダーの樹脂供給口から非反応性ガスの注入孔の間で、押出機内の樹脂の流動に伴って発生する樹脂圧力が非反応性ガスの注入圧力より大きくなるように、スクリュー形状を設定することが好ましい。例えば、同方向回転二軸押出機を用いる場合は、非反応性ガスの注入孔より樹脂供給口に近い位置のスクリューエレメントに、逆ねじスクリューエレメントやニーディングディスクなどを使用することが好ましい。また、押出機に注入された非反応性ガスが押出機の出口に向けて流動する樹脂に溶解しやすくするために、非反応性ガスの注入孔と押出機の出口の間の位置のスクリューエレメントには、切り欠きスクリューやカラーなどの樹脂の滞留時間が長く混合機能が大きいスクリューエレメントを使用することが好ましい。
d.中実樹脂成形体の成形工程
本発明のポリオレフィン多孔質膜の製造方法には、粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分とする樹脂を発泡させずに、任意の形状の多孔質ではない中実樹脂成形体に成形する工程を含む。
本発明における多孔質ではない中実樹脂成形体とは、樹脂を成形した樹脂成形体を電子顕微鏡で観察して、樹脂成形体に混合されたガスが発泡することによって形成された気泡が認められない樹脂成形体のことを表す。
本発明では、任意の形状の多孔質ではない中実樹脂成形体を成形するために、先端にダイが取り付けられた押出機が用いられる。
本発明では、押出機を用いて任意の形状の多孔質ではない中実樹脂成形体を押出成形するために、以下の二つの方法が単独で又は組み合わせて行われる。
d−1.樹脂に混合された非反応性ガスを除去してから任意の形状の成形体に成形する方法。
d−2.非反応性ガスが発泡しないように、樹脂中に非反応性ガスを封入できる温度にまで冷却して任意の形状の成形体に成形する方法。
d−1の非反応性ガスを除去して中実成形体を成形する方法
本発明では、一般にベントポートと呼ばれている押出機のシリンダーに設けたガス排出口を有する押出機を用いる方法や、一般にタンデム押出機と呼ばれている複数の押出機を用いる方法がある。
樹脂に混合された非反応性ガスを除去してから任意の形状の多孔質ではない成形体に成形する押出機に、ベントポートを有する押出機を用いる場合、押出機のシリンダーにベントポートを設ける位置は、押出機内部で非反応性ガスが溶解して可塑化された樹脂が均一に溶融混練される位置より押出機の出口側の位置にすることが好ましい。ベントポートから非反応性ガスと一緒に溶融した樹脂が噴出する場合には、一般にベントスタッファーと呼ばれているスクリュー型フィーダーをベントポートに取り付けて押出機外への樹脂の流出を防ぎつつ非反応性ガスを押出機外に除去することができる。
ベントポートを有する押出機を用いる場合は、押出機のシリンダーの原料供給側の位置に非反応性ガスを注入するための注入口を設けることにより、樹脂に非反応性ガスを溶融混練する工程と、樹脂から非反応性ガスを除去して多孔質ではない中実樹脂成形体を成形する工程とを、一台の押出機で行うことができる。
樹脂に混合された非反応性ガスを除去してから任意の形状の多孔質ではない成形体に成形する工程にタンデム押出機を用いる場合は、前段の押出機には非反応性ガスを注入するための注入口を有する押出機を使用して樹脂と非反応性ガスを溶融混練する工程を行う。
タンデム押出機で非反応性ガスを除去して多孔質ではない中実樹脂成形体を成形することは、タンデム押出機の後段の押出機にベントポートを有する押出機を用い、前段の押出機から押し出されてきた非反応性ガスを含む樹脂を後段の押出機に供給して、非反応性ガスを後段の押出機のベントポートから除去しながら樹脂を押し出すことによって行うことができる。
あるいは、タンデム押出機の後段の押出機にベントポートを有しない押出機を用いる場合は、前段の押出機と後段の押出機を減圧室で連結したり、あるいは連結部に大気下に開放する部分を設けることによって、前段の押出機から押し出される非反応性ガスを含む樹脂から非反応性ガスを除去しながら後段の押出機に供給することができ、また、後段の押出機から非反応性ガスが除去された多孔質ではない中実樹脂成形体を任意の形状に押し出すことができる。
非反応性ガスが除去された樹脂は、押出機の先端に取り付けられるダイから、任意の形状の多孔質ではない中実樹脂成形体に成形されて押し出される。
ダイは、スリットダイ、Tダイ、フィッシュテールダイなどのシートダイや、スパイラルダイ、スパイダーダイ、マンドレルが回転するスクリューダイなどのチューブダイや、中空糸紡口などのなかから、中実樹脂成形体の形状に適したダイを選択して使用することができる。
d−2.冷却して中実樹脂成形体を成形する方法
本発明では、押出機で非反応性ガスと共に溶融混練した樹脂を押出機の先端に取り付けたダイから発泡させずに押し出すことによっても、多孔質ではない中実樹脂成形体を成形することができる。
非反応性ガスを含む樹脂を発泡させずにダイから押し出すために、ダイ内壁の温度をダイに流入する樹脂の温度より低い温度に調節してダイ内の非反応性ガスを含む樹脂を冷却し、樹脂が大気圧下に押し出されても発泡することなく非反応性ガスが樹脂中に封入することができる温度まで、樹脂の温度を下げてダイから押し出される。
ガスを樹脂中に封入できる温度は、用いる樹脂とガスとの組み合わせや、押し出しの条件によって異なる。このため、ダイの温度を変えて押出すことを繰り返して、樹脂を発泡させずにガスを封入して押し出すことができるダイの温度を探すという方法が採れらる。このダイの温度を探すために、樹脂の結晶化ピーク温度を示差走査型熱量計(DSC)で測定し、この結晶化ピーク温度を参考にすることができる。
発泡せずに押し出された非反応性ガスを含む多孔質ではない中実樹脂成形体は、中実樹脂成形体を成形する工程の後に続く延伸工程や多孔化工程などで、中実樹脂成形体が加熱されたときに発泡してしまわないように、非反応性ガスが除去される。非反応性ガスを含む多孔質ではない中実樹脂成形体を常温で保管しておくと、中実樹脂成形体から非反応性ガスが蒸散していくので、非反応性ガスを除去するために特別な設備を用意する必要はない。非反応性ガスを効率的に除去するために、減圧した容器や室内に非反応性ガスを含む多孔質ではない中実樹脂成形体を保管して非反応性ガスを除去してもよい。
e.多孔化工程
上記に説明した方法によって成形される多孔質ではない中実樹脂成形体を多孔化処理することにより多孔質膜が得られる。この多孔化処理の方法を以下に説明する。
多孔化処理の一つの方法としては、多孔質ではない中実樹脂成形体を熱処理することによって結晶化度を高めた後に延伸することにより、ポリオレフィンのラメラ結晶間を開裂させて多孔化させる方法があり、別の方法としては、ポリオレフィンの非晶性部分を選択的に溶解又は溶融する液体(a)中で、ポリオレフィンを主成分とする多孔質ではない中実樹脂成形体を熱処理した後、液体(a)と相溶性はあるが樹脂成形体は溶解しない液体(b)で樹脂成形体を洗浄して液体(a)を除去した後に乾燥することにより、多孔質ではない中実樹脂成形体を多孔化する方法がある。
液体(a)としては、パラフィンオイルなどの炭化水素、低級脂肪族アルコール、低級脂肪族ケトン、窒素含有有機化合物、エーテル、グリコール、低級脂肪族エステル、シリコンオイルなどを単独で又は組み合わせて用いることができる。好ましい熱処理温度は、ポリオレフィンや液体(a)の種類によるが、例えばポリエチレンの場合は、100℃〜140℃の温度が好ましい。熱処理時間は処理温度が高ければ短くでき、多孔化された後の樹脂の強度を維持するために、処理時間は短い方が好ましい。
液体(b)としては、ヘキサンなどの低沸点炭化水素、ハイドロフロロエーテルやハイドロフロロカーボンなどの非塩素含有フッ素系有機溶剤やメチルエーテルケトンなどのケトンを用いることが好ましい。また、液体(a)中で高分子量ポリオレフィンを延伸することや、液体(b)で洗浄して乾燥した後の高分子量ポリオレフィンを延伸することは、得られる多孔質フィルムの気孔の大きさや数を調整するために行ってもよい。また、液体中の高分子量ポリオレフィンのたるみを解消するために、液体と接触するために送られる樹脂の速度よりも、液体と接触した後の樹脂を引き取る速度の方を大きくしてもよい。
これらの多孔化処理方法のなかで、前者の延伸による多孔化処理方法は、高分子量ポリオレフィンを延伸する時の延伸応力が大きいために装置が大型となるので、高分子量ポリオレフィンを多孔化する方法としては、後者のポリオレフィンの相溶性の溶媒で非晶部分を溶解して多孔化する方法の方が好ましい。
f.延伸工程
本発明において、分子配向による強度向上や多孔質膜の薄膜化を目的に、延伸してもよい。強度を大きくする目的では、延伸は多孔化処理を行う前に行う方が好ましいが、多孔化処理された後に延伸することにより、多孔質膜の孔径や厚みの調整を行うことができ、多孔化処理の前と後の片方で延伸しても、あるいは延伸の前と後の両方で延伸してもよい。
延伸方法には、フラット延伸とチューブラー延伸があり、高い厚み精度や頻繁な延伸倍率の調整が必要な場合にはフラット延伸が、設備コストを小さくする場合にはチューブラー延伸が好ましく、適宜延伸方法を選択することができる。
フラット延伸の場合は、機械方向と幅方向のいずれか一方向だけを延伸する一軸延伸と、機械方向と幅方向の両方を延伸する二軸延伸とがあり、いずれか一方、又は両方を組み合わせた延伸ができる。二軸延伸には、一方向に延伸した後に他の方向に延伸する逐次延伸と、二方向を同時に延伸する同時延伸とがあり、いずれか一方、又は両方を組み合わせた延伸ができる。
本発明の実施態様の一例を実施例に基づいて説明する。
実施例における多孔質膜の物性評価方法は次の通りである。
(a)厚み
尾崎製作所製ダイアルゲージPEACOK No.25を用いて測定した。
(b)気孔率
厚みと面積からサンプルの体積を求め、重量を測定して、次の式を用いて気孔率を求めた。
気孔率(%)=(1−(重量/樹脂密度)/体積)×100
(c)突刺強度
カトーテック製圧縮試験機KES−G5に、先端の曲率半径が0.5mmの針を取り付け、突刺速度2mm/秒で突刺試験を行い、最大突刺荷重を突刺強度(g)とした。
(d)透気度
JIS P−8117に準拠したガーレー式透気度計を用いて測定した。
実施例1
シリンダーブロック(L/D比 3)が15個連結されたシリンダーと、直径が35mmであるスクリューとからなる同方向回転二軸押出機を用い、二軸押出機の先端には、ギヤポンプとスリットの巾が100mmで間隙が1mmであるスリットダイを取り付けて用いた。
二軸押出機の最上流のシリンダーブロックに設けたフィード口からは、定量フィーダーを用いて粘度平均分子量が100万である超高分子量ポリエチレンを、1時間あたり5kg供給した。冷凍機を用いて冷却されたエチレングリコールで満たされた槽に沈めた管に、液化炭酸ガスボンベから取り出したガスを通過させた後、プランジャーポンプで10MPaにガスを加圧して、押出機の最上流から6番目のシリンダーブロックに設けた注入孔から1時間あたり500g注入した。二軸押出機の最下流側から3番目のシリンダーブロックに設け、ベントポートから押出機内の非反応性ガスを押出機外に排出した。
二軸押出機のシリンダーとスリットダイの温度が200℃となるように、シリンダーとスリットダイの電熱ヒーターの電流と冷却水の水量を調節した。
二軸押出機のスクリューは1分間当たり300回転の回転速度で回転させ、スリットダイから押し出される樹脂は、水冷のニップローラーで引き取られ、板状のサンプルが得られた。
得られたサンプルの断面を電子顕微鏡で観察したところ、炭酸ガスの発泡による気泡が含まれていないことが確かめられた。押し出されたサンプルから50cmの長さに切り取り、重量を測定したあと、温度が30℃で圧力が6cmHgに設定した真空乾燥機に保管した。8時間保管したサンプルの重量を測定したところ、保管前の重量からの減少度合いは保管前の重量と同じであった。
板状サンプルの粘度平均分子量を測定したところ98万であった。
岩本製作所製二軸延伸機を用いて、このサンプルの同時二軸延伸を行った。延伸速度は10mm/秒であった。延伸温度を120℃から5℃間隔に150℃まで変えて延伸を行い、各々の延伸温度で破膜する直前の最大延伸倍率を求めた。
最も延伸倍率が大きい延伸条件は、135℃で縦横10倍であった。
この延伸(最大延伸倍率)した薄膜は、130℃に加熱した流動パラフィンに30秒間浸漬した後、メチルエチルケトンに24時間浸漬して流動パラフィンを除去し、常温常圧で24時間乾燥した。
乾燥した薄膜は、厚みが17μm、気孔率が45%、透気度が320秒、突刺強度が520gであった。
実施例2
実施例1のスリットダイを、円環状のスリットの外径が10mmで内径が8mmである円筒ダイに取り替えた以外は、実施例1と同じ条件で粘度平均分子量が100万の超高分子量ポリエチレンを押し出した。円筒ダイのインナーダイに設けた管から、圧縮した空気を管状に押し出された樹脂の内部に送り、チューブラー延伸を行った。管状に押し出された樹脂の外側に、エアーリングを設けて、エアーリングから20℃に調整された空気を吹き出して、管状の樹脂を冷却することにより、チューブラー延伸が一定の位置で開始するように樹脂の温度を調整した。チューブラー延伸された薄膜は、デフレーターロールにより折り畳んで、金属ローラーとゴムローラーのニップロールを通して、引き取った。
延伸され折り畳まれた2枚重ねの薄膜の幅は142mmであり、円筒ダイの円環状スリットの外径が10mmであることから、幅方向の延伸倍率は9倍となる。円筒ダイの円環状スリットの面積と押出量とから計算される円筒ダイから押し出される樹脂の線速度と、ニップローの引き取り速度の比から、機械方向の延伸倍率は9.5倍であった。
このチューブラー延伸された薄膜を実施例1と同じ条件で多孔化処理を行った。得られた多孔質フィルムは、厚みが16μm、気孔率が47%、透気度が290秒、突刺強度が470gであった。
実施例3
前段の押出機が、シリンダーブロック(L/D比 3)が15個連結されたシリンダーと、直径が35mmであるスクリューとからなる同方向回転二軸押出機であり、後段の押出機が口径が70mm、L/D比が10、シリンダーの途中にベントポートを設けた単軸押出機である、タンデム押出機を用いた。
二軸押出機の最上流のシリンダーブロックに設けたフィード口からは、定量フィーダーを用いて粘度平均分子量が100万の超高分子量ポリエチレンを1時間あたり5kg供給した。二軸押出機の最上流から6番目のシリンダーブロックに設けた注入孔から実施例1と同じ装置を用いて10MPaに加圧した炭酸ガスを1時間あたり500g注入した。
二軸押出機のシリンダーの温度は200℃となるように、シリンダーの電熱ヒーターの電流と冷却水の水量を調節した。二軸押出機のスクリューは1分間当たり300回転の回転速度で回転させ、二軸押出機出口から押し出される樹脂は、冷却固化する前に、単軸押出機のポリマーフィード口に供給された。
単軸押出機のベントポートには真空ポンプを接続し、単軸押出機内のガスの排出を行った。単軸押出機の先端には、スリットの幅が100mmで間隙が1mmであるスリットダイを取り付けて用いた。単軸押出機のシリンダーの温度は200℃となるように、スリットダイの温度は200℃となるように、押出機のシリンダーとダイの電熱ヒーターの電流と冷却水の水量を調節した。
単軸押出機のスクリューは1分間当たり60回転の回転速度で回転させ、ポリエチレン樹脂をスリットダイより押し出して板状のサンプルが得られた。
押し出されたサンプルの断面を電子顕微鏡で観察し、気泡が含まれていないことが確かめられた。押し出されたサンプルから50cmの長さに切り取り、重量を測定したあと、温度が30℃で圧力が6cmHgに設定した真空乾燥機に保管した。8時間保管したサンプルの重量を測定したところ、保管前の重量からの減少度合いは保管前の重量と同じであった。
板状サンプルの粘度平均分子量を測定したところ99万であった。
岩本製作所製二軸延伸機を用いて、このサンプルの同時二軸延伸を行った。延伸速度は10mm/秒であった。延伸温度を120℃から5℃間隔に150℃まで変えて延伸を行い、各々の延伸温度で破膜する直前の最大延伸倍率を求めた。最も延伸倍率が大きい延伸条件は、135℃で縦横10倍であった。
この延伸(最大延伸倍率)した薄膜は、130℃に加熱した流動パラフィンに30秒間浸漬した後、メチルエチルケトンに24時間浸漬して流動パラフィンを除去し、常温常圧で24時間乾燥した。
この乾燥した薄膜は、厚みが16μm、気孔率が47%、透気度が270秒、突刺強度が480gであった。
実施例4
押出機としては、シリンダーブロック(L/D比 3)が15個連結されたシリンダーと、直径が35mmであるスクリューとからなる同方向回転二軸押出機を用い、押出機の先端には、ギヤポンプとスリットの幅が100mmで間隙が1mmであるスリットダイを取り付けて用いた。
押出機の最上流のシリンダーブロックに設けたフィード口からは、定量フィーダーを用いて粘度平均分子量が40万の高密度ポリエチレンを1時間あたり5kg供給した。実施例1と同じ装置を用いて10MPaに加圧した炭酸ガスを、押出機の最上流から6番目のシリンダーブロックに設けた注入孔から1時間あたり500g注入した。
押出機のシリンダーの温度は200℃となるように、スリットダイの温度は120℃となるように、押出機のシリンダーとダイの電熱ヒーターの電流と冷却水の水量を調節した。押出機スクリューを1分間当たり300回転の回転数で回転させて、ポリエチレンをスリットダイから押し出し、板状のサンプルが得られた。押し出されたサンプルの断面を電子顕微鏡で観察し、中実樹脂の成形体であることが確かめられた。押し出されたサンプルから50cmの長さに切り取り、重量を測定した後、温度が30℃で圧力が6cmHgに設定した真空乾燥機に保管した。8時間保管したサンプルの重量を測定し、保管前の重量からの減少度合いが保管前の重量の0.1%以下であるかどうかを調べ、0.1%を超える場合には、更に8時間真空乾燥機に保管し、重量の減少度合いが0.1%以下になるまで、真空乾燥機への保管と重量減少の確認を繰り返した。
重量減少の度合いが0.1%以下となったサンプルの粘度平均分子量を測定したところ39万であった。
岩本製作所製二軸延伸機を用いて、このサンプルの同時二軸延伸を行った。延伸速度は10mm/秒であった。延伸温度を120℃から5℃間隔に150℃まで変えて延伸を行い、各々の延伸温度で破膜する直前の最大延伸倍率を求めた。最も延伸倍率が大きい延伸条件は135℃で縦10倍横10倍の延伸であった。
この延伸(最大延伸倍率)した薄膜は、130℃に加熱した流動パラフィンに30秒間浸漬した後、メチルエチルケトンに24時間浸漬して流動パラフィンを除去し、常温常圧で24時間乾燥した。
この乾燥した薄膜は、厚みが15μm、気孔率が48%、透気度が260秒、突刺強度が450gであった。
実施例5
粘度平均分子量が330万の超高分子量ポリエチレンと粘度平均分子量が30万の高密度ポリエチレンを50重量%対50重量%の比率でブレンドした。ブレンドした樹脂の粘度平均分子量は105万であった。このブレンド樹脂を用いた以外は、実施例1と同じ条件で押出しを行い、電子顕微鏡で観察して気泡のない中実樹脂の板状サンプルを得た。サンプルの粘度平均分子量を測定したところ、101万であった。
このサンプルの同時二軸延伸は、実施例1と同じ同時二軸延伸機で行い、延伸倍率は140℃で最大の縦10倍横10倍となった。この延伸された薄膜を実施例1と同様にして多孔化処理を行った。得られた薄膜は、厚みが15μm、気孔率が47%、透気度が280秒、突刺強度が510gであった。
比較例1
炭酸ガスを注入しないで、実施例1と同じ押出機を用いて、粘度平均分子量が100万の超高分子量ポリエチレンを押出した。シリンダー温度、ダイ温度の設定及び押出機スクリューの回転速度は実施例1と同じ条件で押出を行った。
押出機出口の樹脂温度は320℃と、実施例1の場合の265℃と比べて大きく上昇しており、このためにダイから押し出された樹脂は黄褐色に変色していた。押し出された樹脂の粘度平均分子量を測定したところ24万であった。
比較例2
実施例4と同じ押出機を用いて、ダイの温度を200℃に設定したことを除いて実施例1と同じ条件で、粘度平均分子量が40万の高密度ポリエチレンを押出した。ダイから押し出された樹脂は発泡し、冷却したあと断面を電子顕微鏡で観察したところ、数十μmの大きさの気泡が多数観察された。この発泡した樹脂を、実施例1と同じ同時二軸延伸機を用いて135℃の延伸温度で同時二軸延伸を試みたが、延伸が始まるとすぐに破れてしまい、延伸することができなかった。
比較例3
スクリュー外径が30mm、L/D比が34で溝付きシリンダーの単軸押出機に実施例5に用いたスリットダイを取り付けて、実施例5に用いた樹脂と同じ、粘度平均分子量が330万の超高分子量ポリエチレンと粘度平均分子量が30万の高密度ポリエチレンを50重量%対50重量%の比率でブレンドした樹脂を、1時間あたり5kgの押出量で押出した。押出機シリンダーの温度は280℃、スクリュー回転速度は1分間あたり15回転、スリットダイの温度は200℃に設定して押出を行った。押し出された板状のサンプルの粘度平均分子量を測定したところ75万であった。この板状サンプルを、実施例3と同じ同時二軸延伸機を用いて、120℃から150℃の延伸温度の範囲で延伸を試みたが、樹脂は引きちぎられるように破れてしまい、いずれの温度でも延伸ができなかった。
産業上の利用可能性
本発明のポリオレフィン多孔質膜の製造方法は、高分子量ポリオレフィンを主成分として含む樹脂の分子量を高く維持して、高強度且つ高温まで収縮しにくいポリオレフィン多孔質膜を製造する方法として極めて有用である。
Claims (5)
- 粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンを主成分として含む樹脂を押出機で非反応性ガスと溶融混練する工程(溶融混練工程)と、該溶融混練物を任意の形状の中実樹脂成形体に成形する工程(成形工程)と、該中実樹脂成形体を多孔化する工程(多孔化工程)とを含むポリオレフィン多孔質膜の製造方法。
- 前記溶融混練工程と、前記成形工程との間に、溶融混練物から非反応性ガスを除去する工程を含む請求項1記載の方法。
- 前記溶融混練工程と、前記成形工程との間に、溶融混練物中にガスが封入された状態に維持することができる温度まで樹脂を冷却する工程を含む請求項1記載の方法。
- 前記多孔化工程が、ポリオレフィンの非晶性部分を選択的に溶解する液体で中実樹脂成形体を熱処理して多孔化する工程である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 粘度平均分子量が30万以上のポリオレフィンからなる樹脂を押出機で非反応性ガスと溶融混練して中実樹脂を押出し、押出された中実樹脂から非反応性ガスを除去した後、これを多孔化処理することを含むポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法。
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