JPS648095B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明はトータルデニール250〜4000の高強度
ポリエステル糸条の加撚方法に関するものであ
る。本発明の目的とするところは高強度ポリエス
テル糸条の加撚の際に強度が著しく低下するとい
う従来法の欠点を改良する新規な加撚方法を提供
するにある。 ポリエステル糸条は初期モジユラスが高く、寸
法安定性が良好なため、タイヤコード、ブレーキ
ホース等の工業資材としての需要が一段と増加し
ている。 しかしながら、ポリエステル糸条はポリアミド
糸条と異なり、例えばタイヤコードとして用いる
場合に、300〜600回／ｍの上撚り、あるいは下撚
りを加えると、強度が著しく低下するという欠陥
があつた。例えば本発明者らの実験によれば、強
度9.5ｇ/d、1260d／210fのポリアミド糸条に500
回／ｍの下撚りを施した後、この下撚りコード２
本に500回／ｍの上撚りを施した場合、強度低下
率は約20％であるのに対し、1000d／192fのポリ
エステル糸条の場合は、強度低下率は約35％であ
つた。このように高強度ポリエステル糸条はポリ
アミド糸条に対し加撚時の強度低下が著しく大で
あるため、例えばタイヤを製造するためには、ポ
リアミドより多くのコードを使用しなければなら
ず、例え、１％であつても加撚時の強度低下を抑
制することは、工業的には重要なことである。 本発明者らは、このような従来法の欠陥を解消
すべく鋭意研究を重ねた結果、従来法よりも強度
低下を減少することができる改良方法を見出し、
本発明を完成するに至つた。 即ち、本発明は６ｇ/d以上の強度を有する高
強度ポリエステルマルチフイラメント糸条を加撚
するに際し、上記ポリエステルマルチフイラメン
ト糸条のガラス転移温度をＴｇ〔℃〕、融点を
Tm〔℃〕、加熱温度をＴ〔℃〕、トータルデニール
をｄ、加熱時間をｔ〔秒〕とすると、下記式 Ｔｇ＋20≦Ｔ≦Tm―15 (1) 0.01√≦ｔ≦0.32√ (2) 75≦Ｔ×ｔ≦900 (3) を同時に満足させる温度および時間で、該ポリエ
ステルマルチフイラメント糸条を加熱し、直ちに
300〜600回／分の加撚を施すことを特徴とする工
業資材用の高強度ポリエステル糸条の加撚方法に
ある。 本発明において使用される好ましいポリエステ
ルはエステル交換、直接エステル化、BHET等
の周知の重合法によりテレフタル酸から得られる
ものであるが、その主鎖内に75％以上グリコール
テレフタレート構造を有するものである。 本発明において、使用されるポリエステルポリ
マーは75モル％以上のエチレンテレフタレート単
位を含有することが望ましいが、他の酸を使用す
る場合にフタール酸、イソフタール酸、アジピン
酸、蓚酸、セバチン酸、ヌペリン酸、グルタル
酸、ピメクン酸、フマール酸、コハク酸等の二塩
基酸が使用される。プロピオン酸等の重合度調節
剤も使用される。アルコール成分としては、炭素
数２〜10のポリメチレングリコールおよびシクロ
ヘキサンジメタノール等の二価アルコールが好ま
しい。そしてそれらは以下に示す成分を変性剤と
して少量含有する。例えば、５―オキシジメチル
イソフタレート、５オキシジメチルヘキサヒドロ
イソフタレート、ベンゼン―１，３，５トリカル
ボン酸、パラカルボメトキシフエニルジエチルホ
スフエート、３，５―ジカルボキシフエニルジエ
チルホスフエート、ペンタエリスクトール、グリ
セロール、グルコース、リン酸、トリフエニルホ
スフエート、トリ―ｐカルボメトキシフエニルホ
スフエート、トリカプリルボレート、ソルビタ
ン、トリメシン酸、ジエチレングリコール等であ
る。 本発明法の特に代表的な具体例では、ポリエス
テル糸条は実質的にはすべてポリエチレンテレフ
タレートである。 本発明の方法は、引張強度６ｇ/d以上を有す
る高強度ポリエステルマルチフイラメント糸条に
有効であり、引張強度８ｇ/d以上を有する高強
度ポリエステルマルチフイラメント糸条に特に有
効である。 また本発明は例えば10回／ｍ程度の低加撚数の
場合は顕著に有効ではないが、加撚数の増大に伴
ないその効果が明瞭となり、特に通常タイヤコー
ドを製造する場合の300〜600回／ｍの加撚数の場
合有効である。加撚数が更に増大しても本発明の
効果は有効であるが、かかる加撚数は現在は工業
資材用には余り用いられていない。 本発明の方法ではかかる高強度ポリエステルマ
ルチフイラメント糸条に300〜600回／ｍの加撚を
施し、工業資材用の糸条を製造する際に、上記ポ
リエステルマルチフイラメント糸条のガラス転移
温度をＴｇ〔℃〕、融点をTm〔℃〕、加熱温度を
Ｔ〔℃〕、トータルデニールをｄ、加熱時間をｔ
〔秒〕とすると、下記式 Ｔｇ＋20≦Ｔ≦Tm―15 (1) 0.01√≦ｔ≦0.14√ (2) 75≦Ｔ×ｔ≦900 (3) を同時に満足させる温度および時間で、該ポリエ
ステルマルチフイラメント糸条を加熱し、直ちに
300〜600回／分の加撚を施す。 工業資材用のポリエステルマルチフイラメント
糸条は、通常1000d／192fのようにトータルデニ
ールが大であるので、例えば熱板を用いて加熱す
る場合は高温であることが必要である。例えばガ
ラス転移温度70℃、融点265℃の延伸ポリエチレ
ンテレフタレートフイラメントの場合は、加熱温
度は90〜250℃であることが、マルチフイラメン
ト糸条に充分な熱量を供給するために必要であ
り、また上記のトータルデニール1000dの場合に
は、加熱時間は0.3〜10.0秒とすることが必要で
ある。加熱温度及び時間が前記式(1)、(2)、(3)式の
下限より小の場合は強度の低下を抑制する効果が
少なく、また前記式の上限より大の場合は外表面
に存するフイラメント同志の融着が生じ、好まし
くない。 300〜600回／ｍの加撚は、前記(1)、(2)、(3)式の
条件で加熱した直後に行う必要があり、例えばこ
の加熱を加熱ロールを用いて行い、それに連続し
て加撚することが望ましい。 このような構成の方法に従うことにより、例え
ば9.1ｇ／ｄ、1000d／192fのポリエステル糸条に
500回／ｍの下撚りを施した後、この下撚コード
２本に500回／ｍの上撚りを施した場合、強度低
下率を約30％抑制することができる。 なお、フイラメント糸条の加熱と加撚に関して
は、例えば特開昭55−22087号公報に記載がある。
これは完全に配向され加撚されたフイラメント合
成糸を少ない工程数で高い生産性を得る目的のも
ので、その構成は部分配向フイラメント合成糸を
二重撚りスピンドルを用いて加撚し、合成糸がス
ピンドルを通るとき、特にスピンドルを離れる際
に形成されるバルーン内で糸に与えられる緊張に
よつて配向させ、ついで２個のフイーダーによつ
て規制された緊張下に、曲面加熱板で加熱処理
し、巻取機にて巻取るものである。しかしながら
これは本発明とは異る発明である。 以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明
するが、本発明は剛直なポリマーに対してより有
効なので、ポリエステルをポリエチレンテレフタ
レートとした場合について説明する。 実施例 １〜６ 原糸強度9.10ｇ/d、伸度13.8％、トータルデニ
ール1038dのポリエチレンテレフタレートマルチ
フイラメント（1000d／192f）を、リング撚糸機
を用いて加撚を施した。この際、スピンドルの回
転数は5976r.p.m、給糸速度12m／分とし、500
回／ｍに相当する加撚を行なつた。下撚はＳ方向
に、上撚はＺ方向に加撚した。また糸加熱用の熱
板は長さ10cmの電熱加熱ヒーターを用い、リング
直前のフイードロールとスピンドルガイドとの間
に設置した。給糸速度12m／分の場合、糸条と熱
板との接触時間は0.5秒間である。なお、上撚ま
で施したコードのトータルデニールは、2335±50
となるようにした。その結果を第１表に示す。各
例とも、熱板を用いない場合の比較例１に比し、
強度保持率は１〜４％向上していることが認めら
れる。 実施例 ７〜10 実施例１〜６に用いたポリエチレンテレフタレ
ートマルチフイラメントを用い、加撚数を500
回／ｍに合わせ、実施例１〜６と同様の熱板を用
い、供糸速度を遅くして、熱板上での加熱時間を
長くした。この際熱板温度は150℃とした。その
結果を第２表に示す。各例とも比較例１に対し
て、強度保持率は４〜９％向上していることが認
められる。

【表】

【表】

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ６ｇ/d以上の強度を有する高強度ポリエス
   テルマルチフイラメント糸条を加撚するに際し、
   上記ポリエステルマルチフイラメント糸条のガラ
   ス転移温度をＴｇ〔℃〕、融点をTm〔℃〕、加熱
   温度をＴ〔℃〕、トータルデニールをｄ、加熱時間
   をｔ〔秒〕とすると、下記式 Ｔｇ＋20≦Ｔ≦Tm―15 (1) 0.01√≦ｔ≦0.32√ (2) 75≦Ｔ×ｔ≦900 (3) を同時に満足させる温度および時間で、該ポリエ
   ステルマルチフイラメント糸条を加熱し、直ちに
   300〜600回／ｍの加撚を施すことを特徴とする工
   業資材用の高強度ポリエステル糸条の加撚方法。 ２ ポリエステルが実質的にすべてポリエチレン
   テレフタレートである特許請求の範囲第１項記載
   の加撚方法。