JPS645540B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は熱可塑性樹脂の２軸配向シート及びそ
の製法に係る。

熱可塑性樹脂の２軸配向シートは、その無配向
シートに比べ、機械的性質、化学的性質が著しく
優れている。２軸配向シートの性質の変化は延伸
倍率と共に変化するが、樹脂の分子量により異
り、一般には分子量が大きい程配向の効果は大き
く、その機械的性質は良くなる。特に衝撃強度は
２軸配向により著しい向上を示すが、それも分子
量が大きい程その向上は著しい。そのため２軸配
向シートには分子量の大きい樹脂が使用されてい
る。しかし、一般に熱可塑性樹脂は分子量が大き
くなる程製造が困難になり製造費がかゝる。特に
熱可塑性樹脂の重合法が塊状重合により行われる
場合には、分子量が大きくなる程粘度が上り製造
が困難になる。

本発明は高分子量の熱可塑性樹脂と比較的分子
量の小さい熱可塑性樹脂を組み合せた多層構造を
有する２軸配向された厚肉シートであり、比較的
分子量の低い樹脂を併用するにもかゝわらず高分
子量樹脂とほぼ同等の性能を有するものである。

本発明は、２軸配向された厚肉の熱可塑性樹脂
シートであり、表層樹脂の分子量が内核層樹脂よ
りも大きいことを特徴とする樹脂シートである。
２軸配向シートの性能は主に表層により左右さ
れ、表層に高分子量樹脂の十分に２軸配向された
層を用いることを特徴とする。

本発明に述べる厚肉の２軸配向シートとは、厚
みが１mm以上の２軸配向シートである。表層と内
核層は同一組成の樹脂でもよいし、互に接着性を
有する異る組成の樹脂でもよい。例えば、表層に
ポリメチルメタクリレートを用い、内核層にはポ
リメチルメタクリレート、メチルメタクリレート
−メチルアクリレート共重合体、スチレン−アク
リロニトリル共重合体、ポリカーボネート等が使
用できる。

表層樹脂と内核層樹脂の分子量は、表層樹脂の
分子量が内核層樹脂のそれより大きくする必要が
あるが、一般には重量平均分子量で２万以上が必
要であり、内核層樹脂は重量平均分子量２万から
40万、表層樹脂は重量平均分子量30万から500万
が好ましい。表層の厚さは、シートの厚さによつ
て異るが、表層の好ましい厚さは、片側でシート
の厚さの1/10以上1/4以下である。

本発明の熱可塑性樹脂シートは圧縮成形法によ
り良好に成形することができる。すなわち、熱可
塑性樹脂の板状素地を該素地のガラス転位温度付
近から、ほゞ溶融点までの温度に予熱し、該素地
のガラス転位温度以上に加熱された圧縮金型内に
前記素地を置いて圧縮して成形する方法であり、
板状素地を３個以上重ね合せて一つの板状素地と
し、重ね合せた板状素地の表裏層には内核層より
分子量の大きい熱可塑性樹脂を用い、重ね合せた
素地の外側表面あるいは及び圧縮金型表面に潤滑
剤を塗布した後、重ね合せた素地を圧縮して該素
地を一体とすると同時に２軸配向させることによ
り成形することができる。

本発明を図面により説明する。図面は本発明の
２軸配向シートを圧縮成形により成形する過程を
示したものである。図面に於て、４枚の板状素地
を重ね合せて一つの板状素地とし(A)、表層の板状
素地１の熱可塑性樹脂の分子量は内核層の板状素
地２の熱可塑性樹脂の分子量より大きい。重ね合
せた一つの板状素地３を、板状素地加板熱４には
さんで該板状素地の樹脂のガラス転位点温度付近
からほゞ溶融点までの温度に加熱する(B)。加熱板
４の温度を素地の加熱温度より若干高めに設定し
て、素地を急速に加熱すると、重ね合せた板状素
地３の表層の温度が高く、内核層が低くなる。こ
の温度の差が、分子量の大きい表層樹脂と分子量
が表層より小さい内核樹脂の粘度をほゞ等しくす
る、あるいは表層樹脂の粘度を小さくする効果を
有する。この様に加熱された板状素地を、素地の
表層樹脂とほゞ同等あるいはそれより若干高めに
加熱された圧縮金型５にはさみ(C)、その時素材表
面あるいは及び圧縮金型表面６に潤滑剤を塗布
し、次いで圧縮して該素地を２軸配向させ(D)、そ
のまゝ型内で、あるいは型外に取り出して冷却固
化させ本発明の２軸配向シートを得る。この様に
多層の素材を一体としつゝ２軸配向させることに
より、非常に性能の優れたシートが得られる。

熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート
（以下PMMAと示す）を用いた場合について説明
する。PMMAのシートはPMMAの押出成形で成
形されるものと、モノマーキヤステイングで直接
シートに成形されるものがある。押出成形で成形
されるシートは製造費が比較的安価にできるが、
しかし押出成形性の関係で分子量が比較的低いも
のが使用され、一般には重量平均分子量が30万以
下のPMMAが使用される。一方モノマーキヤス
テイングによるシートは製造費が高いが、分子量
の大きなシートが得られ、重量平均分子量500万
程度のものまで容易に得られる。PMMAでは重
量平均分子量か10万以上のものが物理的性質も比
較的良く、従つて、10万以上30万以下のPMMA
が押出成形に使用されている。PMMAの２軸配
向シートでは分子量が大きい程、延伸による性能
向上が大きく、従つてモノマーキヤステイングで
成形した高分子量PMMAシートの２軸配向シー
トが好ましい。

シートの物理的性質、化学的性質はシートの表
層の影響が最も大きく、表層に高分子量の
PMMAを用いれば性能の優れたシートを得られ
ることを発見した。表層にモノマーキヤステイン
グで成形した重量平均分子量40万から500万のも
の、内核に押出成形で成形した重量平均分子量10
万から30万のものが最も好ましい。

重量平均分子量が100万以上のPMMAの単独重
合体の２軸配向成形は、これまでに述べてきた圧
縮成形法に於てはじめて良好に成形できる。本発
明の２軸配向シートも同様にこの圧縮成形が良好
に使用できる。

異種の樹脂の組合せによるシートも本発明で使
用できる。例えばモノマーキヤステイングで成形
したPMMAの高分子量のシートを表層に用い、
押出成形で成形したスチレン−アクリロニトリル
共重合体のシートを内核層に用いた板状素地を用
いて圧縮成形して本発明の２軸配向シートを得筏
ことができる。表層にPMMA内核層にポリカー
ボネートを用いることもできる。ビスフエノール
Ａとフオスゲンから合成されるポリカーボネート
は耐熱性、衝撃性に優れており、PMMAは耐候
性、硬さに優れている。表層にPMMA、内核に
ポリカーボネートを用いた複合２軸配向シートは
互にその特性を出し非常に優れた性能を有するシ
ートである。この場合一般にポリカーボネートは
PMMAより成形温度は高くする必要があるが、
しかし本発明では、PMMAの重量平均分子量を
100万から500万という非常に大きな分子量のモノ
マーキヤステイングで成形した重合体を表層に用
い、押出成形で成形したポリカーボネートを内核
層に用いることにより、成形時のPMMAとポリ
カーボネートの粘度を近づけることがででき、図
面に示した成形法で容易に成形できることがわか
つた。特に重量平均分子量が２万〜５万のポリカ
ーボネート分子量100万以上のPMMAの組合せが
良好である。

本発明に述べる２軸配向シートの延伸倍率（又
は圧延倍率、こゝに述べる延伸倍率とは、２軸配
向させた時の延伸又は圧延倍率で、面積比又は厚
み比で表す。延伸倍率と圧延倍率は本発明では同
じ意味に用いる）は1.5倍以上、好ましくは３倍
以上であり、強い配向度のかゝつたものが好まし
い。

配向は樹脂の分子量が大きい程、成形温度が低
温度で溶融粘度が大きい程、延伸倍率が大きい
程、それぞれ配向度合は大きくなる。特に好まし
い本発明のシートは、表層が重量平均分子量が
100万以上のPMMAで圧縮法により高粘度状態で
３倍以上に２軸配向に圧延して成形した表層の配
向度の大きい強靭なシートである。

本発明は優れた性能を有する２軸配向シートを
経済的に製造できるものであり、その経済的効果
は大きい。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の２軸配向シートを圧縮成形によ
り成形する過程の側断面を示す説明図である。 １……表層の板素地、２……内核層の板素地、
４……加熱板、５……圧縮金型。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ２軸配向された厚肉の熱可塑性樹脂シートに
   於て、表層樹脂の分子量が内核層樹脂の分子量よ
   りも大きいことを特徴とする熱可塑性樹脂の２軸
   配向シート。 ２ 熱可塑性樹脂の板状素地を該素地のガラス転
   位温度付近から、ほゞ溶融点までの温度に予熱
   し、該素地のガラス転位温度以上に加熱された圧
   縮金型内に前記素地を置いて圧縮して成形する方
   法に於て、板状素地を３個以上重ね合せて一つの
   板状素地とし、重ね合せた板状素地の表裏層には
   内核層より分子量の大きい熱可塑性樹脂を用い、
   重ね合せた素地の外側表面あるいは及び圧縮金型
   表面に潤滑剤を塗布した後、重ね合せた素地を圧
   縮し該素地を一体とすると同時に２軸配向させる
   ことを特徴とする熱可塑性樹脂の２軸配向シート
   の製法。