JPS641971Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本考案は、耐摩擦溶融性及び吸発汗性に優れた
衣料用編地に関するものである。

〈従来の技術〉 従来、肌着やスポーツの際着用するシヤツ類に
は汗を吸収する編地製品が好まれ、その素材とし
ては綿が多く使用されている。この綿素材は汗を
良く吸うが、それにより編地全体が濡れて肌側に
も多く汗を含み、運動をやめて発汗が止まつたと
きには体内からの発熱が少なくなり、衣料に吸収
された汗が時間の経過とともに冷却されて体温よ
り低温になり、冷たさを感じて不快感を覚えるこ
とが多い。また、一方実公昭32−11784号公報な
どに記載されているごとき裏面に綿糸を用い、表
面に合成繊維糸を用いた編地が知られているが、
かかる編地は表面に合成繊維糸条を用いているの
で編地全体の濡れ感は上記の場合よりは少ないも
のの、編地からの汗の発散速度がおそく上記と同
様の欠点がある。さらに、多量の発汗を伴う激し
い運動を行う際に着用するスポーツ用シヤツなど
にはポリエチレンテレフタレート繊維糸条などか
らなる編地が用いられているが、かかる編地を用
いたシヤツはピリングやスナツキングの発生が多
くまたバレーボールなどのスポーツにおいて床面
あるいは地面などの接地面との接触によつて摩擦
溶融が起こり易いという問題がある。

〈考案が解決しようとする問題点〉 本考案は、上述のごとき従来の衣料用編地の欠
点を解消し、汗を速やかに蒸発散させて不快感を
和らげ、かつピリングやスナツキングの発生も少
なく、耐摩擦溶融性に優れた衣料用編地を提供す
ることを目的とするものである。

〈問題点を解決するための手段〉 すなわち、本考案は表裏両面の地編層の間に中
間層を有する３層編地であつて、表地編層は全酸
成分に対しスルホイソフタル酸成分を0.8〜1.8モ
ル％共重合させたエチレンテレフタレート系共重
合ポリエステル繊維糸条とセルロース系繊維糸条
を流体処理して交絡させた糸条で編目が形成さ
れ、中間層はセルロース系繊維糸条で、裏地編層
は全酸成分に対しスルホイソフタル酸成分を0.8
〜1.8モル％共重合させたエチレンテレフタレー
ト系共重合ポリエステル繊維糸条で編成されてい
ることを特徴とするものである。

以下、さらに本考案を詳細に説明する。

第１図は、本考案編地の一例を示す模式断面図
であり、本考案編地は全酸成分に対しスルホイソ
フタル酸成分を0.8〜1.8モル％共重合させたエチ
レンテレフタレート系共重合ポリエステル繊維糸
条とセルロース系繊維糸条を空気処理して交絡さ
せた糸条からなる表地編層１と全酸成分に対しス
ルホイソフタル酸成分を0.8〜1.8モル％共重合さ
せたエチレンテレフタレート系共重合ポリエステ
ル繊維糸条からなる裏地編層２との間にセルロー
ス系繊維糸条からなる中間層３が挿入されて構成
されている。

ここで、表地編層に使用されるスルホイソフタ
ル酸成分を共重合させたエチレンテレフタレート
系共重合ポリエステル繊維糸条は、そのスルホイ
ソフタル酸成分が全酸成分に対し0.8〜1.8モル％
であることが必要である。スルホイソフタル酸成
分が0.8モル％未満ではセルロース系繊維と交絡
させたときにピリング防止効果及び耐摩擦溶融性
が不十分であり、しかも通常鮮明な色が得られる
カチオン染料で染色しても濃色に染色することが
困難で、多量の染料を要したり、高温高圧での染
色が必要となり、所望の色相を得ることが困難で
ある。また、1.8モル％を超えると糸条の強度が
低下して編地の摩耗強力が弱くなり、しかも特に
スポーツ用衣料などに用いる場合は編地表面にか
えつてピリング、スナツキングなどが発生し易く
なつて、スナツキングなどが残留することにな
り、実用上不適当である。なお、スルホイソフタ
ル酸成分を例えば５モル％程度に増加させると摩
耗強力が低下して摩耗によつて繊維が脱落するの
で、ピリング防止に有効であるが、かかる場合は
糸条の強度低下が大きく、汎用性のある編地を得
ることができないので好ましくない。また、表地
編層及び中間層に使用するセルロース系繊維とし
ては、綿、レーヨン、キユプラなどが使用され
る。

さらに、裏地編層には前記表地編層に使用され
るスルホイソフタル酸成分を共重合させたエチレ
ンテレフタレート系共重合ポリエステル繊維糸条
が使用され、そのスルホイソフタル酸成分は全酸
成分に対して0.8〜1.8モル％であることが必要で
ある。スルホイソフタル酸成分が0.8モル％未満
では、通常鮮明な色相が得られるカチオン染料で
染色しても濃色に染色することは困難である。一
方、1.8モル％を超えると糸条の強度が低下し、
仮撚加工などによつて加工糸にするとさらに強度
低下が大きくなり、編地の摩耗強力が弱くなりス
ポーツ用衣料としては実用上不適当になる。裏地
編層に使用する共重合ポリエステル繊維糸条のス
ルホイソフタル酸成分のモル％は表地編層に使用
する糸条のモル％と実質的に同じにすることが好
ましく、このようにすることにより表地と裏地の
色目を同じにすることができる。

本考案編地は、その表地編層１に前記の全酸成
分に対しスルホイソフタル酸成分を0.8〜1.8モル
％共重合させたエチレンテレフタレート系共重合
ポリエステル繊維糸条とセルロース系繊維糸条を
流体噴射ノズルを用いて流体処理を施して交絡さ
せた糸条で編目が形成されているので、染色加工
などの熱処理により両者の収縮差によつてセルロ
ース系繊維糸条が編地の表面にあらわれる。した
がつて、スポーツ用衣料として使用した場合体育
館の床などで起こる編地と床の耐摩擦溶融性は綿
100％などを表地編層に使用した編地に比し遜色
ないものであり、しかも共重合ポリエステル繊維
糸条とセルロース系繊維糸条とが分離することが
ないものである。また、エチレンテレフタレート
系共重合ポリエステル繊維糸条を使用しているた
め、多量の発汗を伴うような激しい運動を行うス
ポーツ用衣料に用いても綿素材100％などを表地
編層に使用したものよりはるかに摩耗強力や破裂
強力が強いものである。

次に、本考案編地はその中間層３にセルロース
系繊維糸条を使用するので、裏地編層において吸
収された汗を速やかに該中間層によつて表地編層
１へ移行させることができる。このように中間層
３は吸汗効果を促進するための役目を果たすもの
である。

さらに、裏地編層２にスルホイソフタル酸成分
を共重合させたエチレンテレフタレート系共重合
ポリエステル繊維糸条を使用するものであるが、
共重合ポリエステル繊維は疎水性繊維であるので
肌との接触部の汗による濡れを防ぐことができ
る。また、カチオン染料で染色することにより
汗、日光、洗濯などの染色堅牢度が良く、さらに
付帯加工用の仕上剤によつてもトラブルが起こり
にくいものである。

しかして、上記構成よりなる編地を用いて衣料
として着用する場合には、肌に接する側の裏地編
層２に吸い込まれた汗は、中間層３のセルロース
系繊維糸条に吸い込まれ拡散される。ここで、汗
の層が形成され体温の熱を遮断し、一層保温効果
を良好にする。中間層３のセルロース系繊維糸条
に吸い込まれた汗は表地編層１に移行するが、表
地編層１にセルロース系繊維糸条を使用している
ので、容易に拡散して表地編層１表面から蒸散し
肌と編地との間に汗が存在することがなく、常に
さらつとした感触を保つことができる。

本考案編地は、緯編又は経編のいずれの基本編
組織で編成されたものでもよく、中間層の形成は
常法のレイイン、プレイテイング、タツク編など
の何れで行つてもよい。さらに、裏地編層をパイ
ル編層にすることにより、中間層を形成させても
よい。なお、表地編層に占めるセルロース系繊維
の役割は、効果の点からして50％以上とすること
が好ましい。また、両地編層の編組織としては、
凹凸のある編組織とすることが好ましく、衣料と
したときの裏面側においては凹凸により肌に接す
る部分が少なくなり、多量の発汗で濡れてもべと
つき感が少なく、一方表面側においては凹凸によ
つて表面積が増し、汗の拡散、蒸散を促進するこ
とができる。

〈実施例〉 以下、本考案を実施例により具体的に説明す
る。

実施例 ダブルニツト機（福原精機製LIL−４型33”×
22G×84F）を用いて第２図の組織図に従つて第
1F（フイーダー）、第4F、第7F、第10Fに綿100％
の紡績糸40s／−と全酸成分に対してスルホイソ
フタル酸成分1.5モル％を共重合させたカチオン
染料可染エチレンテレフタレート系ポリエステル
マルチフイラメント糸75d／36fとを３Kg／cm²の空
気圧にて交絡処理した糸条を、第2F、第6F、第
8F、第12Fには綿100％の紡績糸40s／−を、また
第5F、第11Fに全酸成分に対してスルホイソフタ
ル酸成分1.5モル％を共重合させたカチオン染料
可染エチレンテレフタレート系ポリエステルマル
チフイラメント糸の仮撚加工糸150d／72fを２本
引揃えた糸条をそれぞれ供給し、また第3F、第
9Fにおいて水溶性ビニロンを使用して編成し、
第5F及び第11Fの糸条が１ウエール毎にパイルル
ープを形成するように、通常のカチオン染料によ
る染色加工工程において水溶性ビニロンを溶解さ
せ、パイルループの編層が肌に接する層とし、三
層を構成する本考案編地を製造した。

得られた編地を用いてバレーボール用シヤツに
縫製し、着用したところ、汗が多量に出てもその
着心地はさらつとしてべとつき感がなく、スライ
デイングレシーブや回転レシーブで床と何回も接
触摩擦させても溶融せず、耐摩擦溶融性に優れた
ものであつた。

〈考案の効果〉 本考案編地は上記のごとき構成からなり、特に
表地編層が共重合ポリエステル繊維糸条とセルロ
ース繊維糸条を流体処理して交絡した糸条からな
るものであるから、床などとの耐摩擦溶融性に優
れるとともに、ピリングやスナツキングなどの発
生が少ない。また、本考案編地は上記構成によつ
てこれを衣料として着用した場合、汗の表面への
拡散、移行及び表面から外部への蒸散が速やかに
行われ、べとつき感がなく、常に快適な着心地が
保たれる。しかも、汗による染色堅牢度の問題も
なく、より付加価値の高い衣料製品が得られるな
どの効果を奏し、特にスポーツ用衣料に使用して
極めて好適な編地である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案編地の断面模式図、第２図は本
考案編地の編組織の一例を示す編方図である。 １……表地編層、２……裏地編層、３……中間
層、１Ｆ〜１２Ｆ……フイーダ番号。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 表裏両面の地編層の間に中間層を有する３層編
   地であつて、表地編層は全酸成分に対しスルホイ
   ソフタル酸成分を0.8〜1.8モル％共重合させたエ
   チレンテレフタレート系共重合ポリエステル繊維
   糸条とセルロース系繊維糸条を流体処理して交絡
   させた糸条で編目が形成され、中間層はセルロー
   ス系繊維糸条で、裏地編層は全酸成分に対しスル
   ホイソフタル酸成分を0.8〜1.8モル％共重合させ
   たエチレンテレフタレート系共重合ポリエステル
   繊維糸条で編成されていることを特徴とする衣料
   用編地。