JPS641114Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、耐薬品性、耐溶剤性等の諸物性に優
れた転写層を被転写体上に形成しうる転写シート
に関するものである。 従来より転写による絵付方法は、直接印刷する
ことが困難な物に対しての絵付けによく利用され
ている。例えば、ホツトスタンプと呼ばれる転写
シートは数多く存在し紙、合成皮革やプラスチツ
ク成形品に簡単に絵付けする方法として利用され
てきており、広範囲にわたつて多数の用途に有効
に活用されている。その殆んどは、ポリエステル
などのベースフイルムにアクリル系樹脂、ゴム系
樹脂、ビニル系樹脂等からなる透明層更に絵柄
層、接着剤層を積層したもので、転写後は透明層
が絵柄層を保護する保護層として働らく構成にな
つている。 しかしながら、これらの層は、樹脂を溶剤に溶
かして作られた印刷インキを用いて製造されるも
のなので特定の溶剤には耐溶剤性のあるものが得
られるが、一般にエステル系溶剤、ケトン系溶
剤、芳香族系溶剤に対しては全く耐溶剤性がなか
つた。 このことは、耐溶剤性を要求される箇所への使
用が制限されるばかりか、通常転写後の転写面に
文字、マーク等をスクリーン印刷する場合が多い
のであるが、スクリーン印刷時の仕損品の修正が
きかないなどの欠点があり、耐薬品性、耐溶剤性
の優れた転写シートが望まれていた。もつとも、
耐溶剤性を有する保護層を構成するには、架橋構
造を有する重合体を用いればよいのであるが、従
来の熱硬化による方法で、例えば、イソシアネー
トやエポキシ等の架橋剤を利用する方法では転写
時に保護層が基体シートから剥れにくくなる不都
合が避けられない。 本考案者は上記欠点を解決するために種々研究
した結果、転写後に表面を保護する保護層を、電
子線硬化材料を用いて電子線照射により硬化した
層にすることにより耐溶剤性、耐薬品性および基
本シートからの剥離性が著しく向上することを見
い出した。すなわち、紫外線照射による硬化は、
三次元的に架橋した硬化膜を形成し、この硬化膜
は溶剤に対して、非常に溶け難く、一般には不溶
性膜となる。加えて、本考案者の研究結果によれ
ば、紫外線や電子線の照射により硬化させた硬化
膜はポリエステルフイルム等の基本シートに対す
る接着性が乏しくなることが見出された。 この理由は、紫外線硬化材料や電子線硬化材料
が紫外線もしくは電子線の照射により液体から固
体に急速に固化するときに体積収縮やひずみが発
生し、このため基体シートとの接着性が低下して
いるためと考えられる。 本考案者は、上記の硬化膜が不溶性膜である点
と、基体シートに対する接着性が乏しい点、特に
通常は欠点とみなされる後者の点に注目し、転写
シートを用いた転写後の表面が該硬化膜で保護さ
れる構成にすることにより、転写層の耐溶剤性は
著しく向上し紫外線照射により硬化した膜は、基
体シートとの剥離性も良好であることを見い出し
本考案を完成したものである。 したがつて、本考案の要旨は、ポリエステルフ
イルムの一方の面に、電子線硬化材料を電子線照
射により硬化させた不溶性透明保護層を設け、該
不溶性透明保護層上に絵柄層を設け、次いで接着
剤層を設けてなる転写シートである。 つぎに本考案を図面を参照しながら詳細に説明
する。 第１図は本考案の最も簡単な転写シートの断面
図を示すもので１は基体シートとしてのポリエス
テルフイルム、２は電子線照射により硬化した不
溶性透明保護層、３は絵柄層、及び４は接着剤層
である。第２図は、第１図に示した本考案の転写
シートにおいてポリエステルフイルム１の透明保
護層２を設ける側に凸状模様層５を有するものを
用いた場合の転写シートの断面図である。第３図
は、第１図に示した転写シートを被転写体６に接
着剤層４により接着しポリエステルフイルム１を
不溶性透明保護層２から剥離してなる転写製品の
模式的断面図である。第４図は、第２図に示した
転写シートを被転写体６に接着剤層４により接着
し、ポリエステルフイルム１を不溶性透明保護層
２から剥離してなる転写製品の模式的断面図であ
る。 第１図に示す転写シートは、ポリエステルフイ
ルム１に電子線硬化可能なプレポリマー及び反応
性希釈剤と必要に応じて各種添加剤とからなる電
子線硬化材料をグラビア印刷、オフセツト印刷、
スクリーン印刷などの印刷法によりコーテイング
した後、電子線を照射して硬化させた後、更にそ
の上に絵柄層３、接着剤層４を印刷して製造す
る。ここでいう、電子線硬化可能なプレポリマー
とはエチレン性不飽和結合を有するプレポリマー
で具体的には不飽和ポリエステル、ポリエステル
アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン
アクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリ
オールアクリレート、メラミンアクリレートなど
のアクリレート類、ポリエステルメタクリレー
ト、エポキシメタクリレート、ウレタンメタクリ
レート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオー
ルメタクリレート、メラミンメタクリレートなど
のメタクリレート類などの一種又は二種以上を必
要に応じて使用できるものであり、又反応性希釈
剤は、電子線硬化材料の粘度を調節すると共に硬
化膜の物性をも調節すると共に硬化膜の物性をも
調節する役割をはたすもので具体的には下記の如
くエチレン性不飽和結合を有する低粘度品あるい
はチオール類のことである。すなわち、スチレ
ン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー
類；アクリル酸メチル、アクリル酸２−エチルヘ
キシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸
ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸
メトキシブチル、アクリル酸フエニル等のアクリ
ル酸エステル類；メタクリル酸メチル、メタクリ
ル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル
酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチ
ル、メタクリル酸フエニル、メタクリル酸ラウリ
ル等のメタクリル酸エステル類；アクリルアミ
ド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミ
ド；アクリル酸２−（Ｎ，Ｎ、ジメチルアミノ）
エチル、メタクリル酸２−（Ｎ，Ｎ−ジメチルア
ミノ）エチル、アクリル酸２−（Ｎ，Ｎ−ジベン
ジルアミノ）エチル、メタクリル酸（Ｎ，Ｎ−ジ
メチルアミノ）メチル、アクリル酸２−（Ｎ，Ｎ
−ジエチルアミノ）プロピル等の不飽和酸の置換
アミノアルコールエステル類；エチレングリコー
ルジアクリレート、プロピレングリコールジアク
リレート、ネオペンチルグリコールジアクリレー
ト、１，６−ヘキサンジオールジアクリレート、
ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチ
レングリコールジアクリレート、ジプロピレング
リコールジアクリレート、エチレングリコールジ
メタクリレート、プロピレングリコールジメタク
リレート、ジエチレングリコールジメタクリレー
ト等の多管能性化合物；トリメチロールプロパン
トリチオクリレート、トリメチロールプロパント
リチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテ
トラチオグリコレートなどの多官能性チオール類
などであり、これらは必要に応じて一種又は二種
以上を使い分けることができるものである。不溶
性透明保護層２はポリエステルフイルム１の片面
にコーテイングされた電子線硬化材料を窒素雰囲
気中で低エネルギー電子加速器（Energy
Science社製、エレクトロカーテンCB20d50／30）
あるいは（オツトーデユール社製 NR−ESH／
50）などを用いて１〜10Mradの吸収線量で硬化
させることにより得られる。該透明保護層２は厚
さ0.5〜20μ 程度に設けることが好ましい。次い
で、不溶性透明保護層２上に設ける絵柄層３は不
溶性透明保護層２と接着性が良い樹脂バインダー
を溶剤に溶かしたベヒクル中に着色顔料や各種添
加剤を添加して得られるインキ組成物を用いてグ
ラビア印刷法、オフセツト印刷法、スクリーン印
刷法などによつて形成することができる。次いで
その上にアクリル系樹脂、ABS樹脂、各種のハ
ードレジン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプ
ロピレンなどの樹脂系のインキ組成物を例えばグ
ラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法に
よつて塗工して接着剤層４を形成することによつ
て本考案の転写シートを製造することができる。 而して、上記の本考案に係る転写シートにおい
てポリエステルフイルム１の不溶性透明保護層２
を設けるべき側の面をマツト状にして、転写層の
表面の艶消しがなされるように構成しても良い。 次に上記の本考案に係る転写シートにおいて不
溶性透明保護層を、染料を混入した電子線硬化材
料を硬化させて構成しても良い。 次に第２図に示す転写シートの製造方法と同様
であるが、この場合にはポリエステルフイルム１
に凸模様層５を形成した点を異にするものであ
る。この場合、凸状模様層５はポリエステルフイ
ルム１との接着性が良く且つ不溶性透明保護層２
との剥離が可能であることが必要であり、例えば
ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン
系樹脂などを使用しそれらに体質顔料を添加し更
に必要に応じてシリコン等の洪水剤、揮発剤を添
加したインキ組成物を用いて印刷形成したものを
使用することができる。 つぎに、本考案の具体的実施例を説明する。以
下の文中において「部」は「重量部」を示す。 実施例 １ 厚み25μのポリエステルフイルム（東レ社製）
の片面に下記組成の不溶性保護層形成用電子線硬
化材料 ポリエステルアクリレート（東亜合成社製 アロ
ニツクス M8060） 30部 オリゴエステルアクリレート（東亜合成社製
X513A） 70部 を版深40μのグラビアベタ版で全面均一にコート
し、30ｍ／minの速度で巻き取りながら、窒素雰
囲気中で150KeV、5mAのカーテン状電子線によ
り2Mradの線量を照射した。次いで下記組成の
印刷インキ： アクリル系樹脂 25部 顔 料 20部 メチルエチルケトン 25部 トルエン 30部 を使用し網点グラビア版にて木目柄を印刷した。
次いで該印刷面に下記組成の接着層形成用イン
キ： アクリル系樹脂 30部 メチルエチルケトン 35部 トルエン 35部 を版深60μのグラビアベタ版で全面均一にコート
して本考案の転写シートＡを得た。 上記転写シートＡをABS樹脂板に密着させ、
表面温度200℃のシリコーンゴムローラにて圧6.5
Kg／cm²、走行スピード15mm／秒の条件で転写し
た。得られた木目柄の転写層は酢酸エチルまたは
トルエンまたはメチルエチルケトンの溶剤を浸し
た綿布を使用して学振型マサツ試験機で50回こす
つても絵柄は何の変化もなかつた。 実施例 ２ 厚み25μのポリエステルフイルム（東レ社製）
の片面にポリエステル樹脂と体質顔料を含むイン
キで凸模様を印刷し、以後実施例１と同様にして
印刷面に下記組成の不溶性透明保護層形成用電子
線硬化材料を全面コートし、電子線により硬化さ
せた、次いで木目柄を印刷し、次いで接着剤層形
成用インキを全面コートして本考案の転写シート
Ｂを得た。 （電子線硬化材料組成） アクリルウレタン樹脂（日本合成社製 XP−
4200T） 40部 オリゴエステルアクリレート（東亜合成社製
X511A） 60部 上記転写シートＢをABS樹脂板に密着させ、
表面温度200℃のシリコーンゴムローラーにて圧
6.5Kg／cm²、走行スピード15mm／秒の条件で転写
した。得られた転写層は実施例１と同様の耐溶剤
性試験において何の変化も起らなかつた。 実施例 ３ 厚み25μのポリエステルフイルム（東レ社製）
の片面にポリエステル樹脂と体質顔料とワツクス
と溶剤とからなる艶消しインキを版深25μのグラ
ビアベタ版で全面に均一にコーテイングされたも
のを基本シートとして使用し艶消し面上に実施例
１と同様にしてただし電子線硬化材料を下記の組
成にして転写シートＣを得た。 （電子線硬化材料組成） ポリウレタンアクリレート（三井東圧社製 オレ
スターXRA1149） 40部 オリゴエステルアクリレート（東亜合成社製 ア
ロニクスM8030） 40部 トリメチロールプロパントリアクリレート 20部 実施例１と同様にしてABS樹脂板にて転写し
て得られた転写物は表面が艶消しされており耐溶
剤性試験において何の変化もみられなかつた。 実施例 ４ 厚み25μの艶消しポリエステルフイルム（ダイ
ヤホイル社製）の片面にポリエステル樹脂と体質
顔料を含むインキで凸状模様を印刷し以後実施例
１と同様にして、転写シートＤを得た。 転写シートＤをABS樹脂板に密着させ表面温
度200℃のシリコーンゴムローラーにて圧6.5Kg／
cm²、走行スピード15mm／秒の条件で転写した。得
られた転写製品は表面が艶消しされておりかつエ
ンボス模様があるもので耐溶剤試験においても変
化はみられなかつた。 比較例 １〜３ 厚み25μのポリエステルフイルム（東レ社製）
の片面に下記組成１〜３よりなる透明保護層構成
用インキを40μのグラビアベタ版を用いて全面に
均一にコートし透明保護層を設けた。 （インキ１）；還化ゴム20部、トルエン40部、酢
酸エチル40部 （インキ２）；アクリル樹脂25部、メチルケトン
40部、酢酸エチル35部 （インキ３）；塩ビ系樹脂25部、メチルエチルケ
トン40部、酢酸エチル35部 次いで実施例１と同様にして印刷インキを用い
て木目柄を印刷し、次いで接着剤層形成用インキ
を用いて接着剤層を設け、従来より存在する転写
シートＥ，Ｆ，Ｇを得た。 得られた転写シートＥ，Ｆ，Ｇを上記実施例と
同様にして、ABS樹脂板に転写した。得られた
転写物を学振型摩擦試験機を用いてトルエン、酢
酸エチル、メチルケトルケトン、メタノールを浸
ませた綿布にて200ｇの荷重で50回こすり耐溶剤
試験をした。 耐溶剤試験結果は下記の通りであつた。 【表】

△；絵柄がぼける
○；絵柄は何の変化もない

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図はそれぞれ本考案に係る転写
シートを模式的に示す断面図、第３図及び第４図
はそれぞれ第１図及び第２図に示す転写シートを
用いて被転写体に転写したところを模式的に示す
断面図である。 １……ポリエステルフイルム、２……不溶性透
明保護層、３……絵柄層、４……接着剤層。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) ポリエステルフイルムの一方の面に、該フイ
   ルムに対し剥離性を有すると共に後記印刷絵柄
   層との接着性が大きい、電子線硬化材料を電子
   線の照射によつて硬化させた不溶性透明保護
   層、印刷絵柄層、および接着剤層を順に積層し
   てあることを特徴とする転写シート。 (2) 前記基体シートが、透明保護層を積層する側
   に凸状模様層を有するものであることを特徴と
   する実用新案登録請求の範囲第１項記載の転写
   シート。 (3) 前記基体シートの透明保護層を積層する面が
   艶消しされていることを特徴とする実用新案登
   録請求の範囲第１項記載の転写シート。