JPS6361435B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔技術分野〕 本発明は外観品位、触感に優れ、かつライテイ
ング効果を表面に有し極細繊維の立毛と高分子弾
性重合体の立毛が共存した新構造シート物に関す
る。

〔従来技術〕

従来、表面に立毛を有するシート物としてはス
エード、ベロア、バツクスキン、ヌバツクなどが
天然物で知られている。これらは立毛が全てコラ
ーゲン繊維のみで形成されたものである。

一方、人工物では繊維のみで形成された立毛を
有するシート物としてはスエード調、ベロア調お
よびバツクスキン調があり、高分子弾性重合体の
みで形成された立毛を有するシート物としてはヌ
バツク調がある。

繊維のみで形成された立毛を有するヌバツク調
シート物は立毛が超高密度および均一超短立毛の
形成が現状では困難であり、天然のヌバツクを凌
駕するものは得られていない。また、繊維のみか
らなる立毛である以上、永久的にシボ模様等を賦
型することはできない。

高分子弾性重合体のみで形成された立毛を有す
るヌバツク調シート物は中間段階として高分子弾
性重合体層を均一なタテ長型気孔構造につくり、
ついで表面を研削して毛羽立たせる方法が知られ
ているが、タテ長型気孔構造を均一につくること
が困難であり、その結果、表面のヌバツク調の品
位に斑がでること、所謂、立毛が高分子弾性重合
体であるが故に触感がゴム的であり、ゴワゴワし
た感じで滑らかさ、ソフトさ、手に馴じむ触感に
欠け、その結果、表面のライテイング効果が認め
られないものであつた。すなわち視覚的には天然
皮革のヌバツクにかなり似たものは知られている
が、触覚的には未だ天然皮革のヌバツクに似たも
のは得られていない。また、従来の高分子弾性重
合体のみで形成された立毛を有するヌバツク調シ
ート物はこの高分子弾性重合体の軟化点以上の熱
を加え圧力を加えてシボなどを付与しようとする
と多孔構造自体が崩壊しスムース調のものとな
り、もはやヌバツク調の外観はなくなり、かつ表
面が硬化して風合が低下し、透湿性および通気性
も大幅に低下する欠点がある。

〔本発明の目的〕

本発明の目的はかかる従来の欠点を改善した新
構造シート物を提供するにある。

〔本発明の構成〕

かかる目的をもつて鋭意検討した結果本発明に
到達した。すなわち、本発明は、繊維質基体の少
なくとも一方の表面に、主として高分子弾性重合
体からなる層を有するシート物において、該層を
有するシート表面が、極細繊維立毛および高分子
弾性重合体立毛を有し、かつ前記極細繊維立毛が
前記高分子弾性重合体立毛よりも実質的に長い立
毛長を呈してなる混合立毛層よりなることを特徴
とする新構造シート物である。

本発明にかかるシート物の断面写真を第１０図
（倍率200）に、平面写真を第１１図（倍率400）
に示した。さらに参考のため、高分子弾性重合体
の多孔質膜に覆われたシート物の断面図および平
面図を第１３図（倍率200）および第１４図（倍
400）に示した。

このように本発明品は表面が極細繊維立毛およ
び高分子弾性重合体立毛から構成されている。

さらに本発明品の態様を模式的に示すと第１図
〜第９図の如くになる。これらの図からわかるよ
うに、本発明品は、極細繊維立毛が高分子弾性重
合体立毛よりも実質的に長い立毛長を有している
ので、高分子弾性重合体層の表面より繊維が露出
しているため、手を触れたときスエード調人工皮
革の如きライテイング効果が強調され、かつ極細
繊維の感触と、高分子弾性重合体の層が加味され
て、手に吸いつくような感触が得られる。さらに
高分子弾性重合体の立毛層単独よりも繊維立毛と
混在することにより、色の深味が増し好ましい傾
向である。

かかる特徴ある表面をシート物の両面に有して
いても良いことはもちろんである。また、片面の
みの場合であつても、他面を繊維立毛とすること
により、表がヌバツク調、裏がスエード調のシー
ト物を得ることができる（第２図、第４図）。

なお、繊維の色と高分子弾性重合体の色を異な
らしめることにより、色彩的にも独特な効果が得
られる。

本発明の繊維質基体は、合成繊維、化学繊維、
天然繊維いずれでも良いが、細い方が良い。合成
繊維の場合、ポリエステル、ポリアミド、ポリア
クリルなどの繊維をニードルパンチ、ウオータジ
エツトパンチなどとした不織布、または編物、織
物などの繊維シートであつて、必要に応じポリウ
レタンやアクリル樹脂など一般公知の各種高分子
重合体を付与したものであり、着色されているこ
とが望ましい。繊維質基体の表面が極細繊維およ
び／またはその束が緻密に交絡したものが好まし
い。高分子重合体のコーテイング面は、予かじめ
起毛していても、していなくても良いが、起毛し
ていた方がより好ましい。

極細繊維としては、海島型高分子相互配列体繊
維、剥離型複合繊維、特殊ポリマーブレンド型繊
維などから得られるもので、その繊度は0.8デニ
ール以下、好ましくは0.3デニール以下である。
なお、0.05dあるいはさらに0.01d以下の細い繊維
とすれば極めて短い立毛でもライテイング効果が
強調されて天然ヌバツク調の高級感が増すのであ
る。

高分子弾性重合体は、ポリウレタン、ポリ塩化
ビニール、ポリアクリルなど通常用いられる高分
子弾性重合体を用いる。膜形成方法には乾式法、
乾式発泡および湿式法があるが湿式法が好まし
い。湿式法で使用される高分子弾性重合体には、
多孔質の膜を形成するポリウレタンが最も好適で
ある。ポリウレタンは、Ｎ−N′−ジメチルホル
ムアミド（DMF）、Ｎ−N′−ジメチルアセトア
ミド（DMAC）、Ｎ−N′−ジメチルスルホキシド
（DMSO）、テトラヒドロフラン、ジオキサンジ
エチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミ
ド等の溶剤で溶解した溶液である。重合体溶液中
には顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界
面活性剤、気孔調節剤、油剤、充填剤、防水剤等
の種々の添加剤を加えることができる。各種の添
加剤を加えた重合体溶液の固形分濃度として５〜
50％、粘度１〜5000ポイズ（20℃）が多孔構造形
成において好ましい。繊維質基体に重合体溶液を
コーテイングする方法として、ナイフコーテイン
グ、リバースコーテイング等、公知のいずれかの
方法でよい。

重合体物質の凝固剤として水、エタノール、メ
タノール、アセトン、エチレングリコール、グリ
セリン等を用いる。かくの如き湿式凝固して得ら
れるシート状物は多孔質で柔軟であり、また透湿
性が良好である。得られた多孔質高分子重合体の
孔の平均直径は５〜200ミクロンで、膜厚は５〜
300ミクロンが最も好ましい。湿式凝固上りのま
までは、表面はゴムライクで繊維が露出していな
いので、サンドペーパーにて研削し、膜の多孔質
部分および膜の中に埋つている繊維を露出させ
る。その結果、表面から見た場合、高分子弾性重
合体と繊維が混在して見える。断面から見た場
合、繊維が露出しているのがわかる。露出繊維長
は、研削条件および高分子弾性重合体の孔構造、
繊維質基体への高分子弾性重合体層のしみ込み程
度などを調整することにより、変更しうる。好ま
しい露出繊維長は本発明の効果を損わない程度で
３mm以下で、好ましくは１mm以下である。また露
出繊維密度は500本／cm²以上が望ましい。より好
ましくは、1000本／cm²以上である。

なお、本発明でいう新構造シート物には、いわ
ゆるスリツト糸も含むものとする。このようなス
リツト糸は裁断等の手段によつて容易に得ること
ができるが、ある程度平面的に広がりをもつもの
と同様の効果が得られることは当然である。さら
にスリツト糸の場合は、これを用いて織物、編物
とすることができる。この場合、新構造シート物
の表裏の特徴を異ならしめておくと、これら２つ
の特徴を織編物の表面に出すことも可能となる。

〔本発明の効果〕

本発明の効果をまとめると次のようになる。

高分子弾性重合体の表面より繊維が露出して
いるため、ライテイング効果が得られる。

極細繊維の立毛と高分子弾性重合体の立毛が
混合して、所謂、ヌバツク調のものとなり、手
に吸いつくような感触が得られる。

シボを付与してもヌバツク調外観がくずれな
い。

極細繊維と高分子弾性重合体の色彩を異なら
しめることにより、独特の色彩効果が得られ
る。

以上の特徴をシート物の両面にもたせ、また
は片面をスエード調のもの、あるいは銀面のも
のとするとリバーシブル使いにも最適なものと
なる。

スリツト糸の場合には、上述の特徴を有する
織編物の実現が可能となる。

次に本発明の新構造シート物に関する実施例を
示すが、本発明はこれに限定されたり、制約され
たりするものではない。とくに断わりがなければ
量はすべて重量を表わす。

実施例１および実施例２ 島成分がポリエステル70部、海成分がポリスチ
レン30部からなる島本数16本、単糸デニール3.0
デニール、繊維長51mmのものを使つて、ニードル
パンチングによりフエルトをつくつた。つぎにこ
れを熱水中にて収縮させ、耐溶剤性のポリウレタ
ンのエマルジヨンをポリエステル繊維に対し固形
で15％付くように含浸し、その後ポリスチレンを
トリクレンで抽出除去した。さらにポリカプロラ
クトン系ポリウレタン13％DMF溶液を、ポリエ
ステル繊維に対して固形で30％付くように含浸
し、水中で凝固させた後、80℃熱水中で十分洗浄
し乾燥した。乾燥後半分の厚さにスライスし、片
面（実施例１）および両面（実施例２）を＃100
サンドペーパーでバフイングし、さらに＃150サ
ンドペーパーで仕上げバフイングし、液流染色機
で染色した。このようにして、厚さ0.65mm、目付
220ｇ／m²のナツプのある染色された繊維質基体
を得た。

つぎにポリカプロラクトン系ポリウレタン
DMF溶液に顔料、気孔調節剤、その他添加剤を
加えて20％溶液にした。そのときの高分子重合体
溶液粘度は60ポイズ（20℃）であつた。ナイフコ
ーテイング方式にて厚み0.3mmで高分子重合体溶
液を繊維質基体上にコーテイングし、すみやかに
水中にて湿式法凝固させ、その後80℃熱水中で十
分脱溶媒（DMF）行ない乾燥した。乾燥で得ら
れた多孔質の高分子重合体の膜厚は約150ミクロ
ンであつた。その後、膜面から＃100サンドペー
パーにて、繊維が露出し膜と混在している状態ま
でバフイング仕上げを行なつた。そのときの露出
繊維長は0.05mm、露出繊維密度は2000本／cm²であ
り、膜の厚みが50ミクロンであつた。

以上の方法で得られた新構造シート物は、第１
図（実施例１）、第５図（実施例２）に示すとお
り、表面に繊維と多孔質の高分子重合体が混在し
ているため、光の反射が少なく深みのある色味
と、しつとりした手に吸いつく感触と、ライテイ
ング効果が得られた。また透湿性もスムース調銀
付人工皮革に較べてかなり良く、スエード調人工
皮革とほぼ同じ透湿度で約6000ｇ／m²・24hrであ
つた。

実施例 ３ 実施例１および実施例２で得た新構造シート物
に、さらに種々の凹凸模様のシボを有するエンボ
スロールでエンボスをすることにより、第３図、
第６図、第７図に示すとおりシボ模様を有する該
新構造シート物が得られた。該新構造シート物の
凸部は、一見スムース調銀付人工皮革に見える
が、この銀付皮革特有のギラギラした光沢はな
く、色に深味があり、さらに手で触れたとき、し
つとりした感触を与える。

実施例 ４ 羊革のシボを有する離型紙に１液型ポリウレタ
ンと顔料とからなる溶液を途布、乾燥し、約５ミ
クロンの被膜を得た。さらにこの上に２液型ポリ
ウレタンと顔料とからなる溶液を塗布し、半乾燥
の状態で実施例１、または実施例３で得た新構造
シート物の裏面（高分子重合体層の反対の面）を
圧着、乾燥し離型紙を剥離し、第８図および第９
図に示した片面に銀面を有する新構造シートを得
た。

実施例 ５ 実施例１〜実施例４で得られた新構造シート物
を、スリツターにより幅1.5mmにカツトし、本発
明の新構造ヤーンを得た。該ヤーンの種類、色
彩、および両面の組み合わせ等により、衣服、ハ
ンドバツグ、クツシヨンなど各種衣料およびイン
テリア品を編み、または織りにより作製した。該
製品は立体感があり、独特の風合と色彩が得られ
高級感のある製品であつた。また幅を３cmにカツ
トしたものを、テニスやバトミントンのグリツプ
に巻いて使用した結果、手によくなじみ良好であ
つた。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第９図は、本発明の新構造シート物の
断面模式図の例を示す。図中１は繊維質基体、２
は永久的可塑性混合立毛体、３はシボ模様を有す
る永久的可塑性混合立毛体、４は繊維質基体から
なるナツプ、５は銀面を示す。第１０図および第
１１図はそれぞれ本発明品の断面写真および平面
写真である。第１２図および第１３図は、高分子
弾性重合体の多孔質膜からなるシート物の断面写
真および平面写真である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 繊維質基体の少なくとも一方の表面に、主と
   して高分子弾性重合体からなる層を有するシート
   物において、該層を有するシート表面が、極細繊
   維立毛および高分子弾性重合体立毛を有し、かつ
   前記極細繊維立毛が前記高分子弾性重合体立毛よ
   りも実質的に長い立毛長を呈してなる混合立毛層
   よりなることを特徴とする新構造シート物。 ２ シート表面から露出している極細繊維立毛密
   度が500本／cm²以上であることを特徴とする特許
   請求の範囲第１項に記載の新構造シート物。 ３ 表面にシボ模様を有することを特徴とする特
   許請求の範囲第１項または第２項に記載の新構造
   シート物。