JPS6353669B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

(イ) 産業上の利用分野 本発明はアルカリ蓄電池に係り、特に水酸化ニ
ツケルを活物質とする陽極板の製造方法に関する
ものである。 (ロ) 従来の技術 例えば、ニツケル−カドミウム系アルカリ蓄電
池は特に高温（35〜65℃）で充電した場合、陽極
の酸素過電圧が低下して酸素ガスの発生が起りや
すい。したがつて充電に要するエネルギーの一部
が消費されてしまい、充電効率が低くなるため放
電容量が減少するという問題がある。 そこで従来より上記問題を解決するために、陽
極板にコバルト或いはカドミウム化合物を添加す
ることが、たとえば特開昭51−87733号公報等に
提案されている。これには、ニツケル、コバルト
及びカドミウム塩の三成分混合溶液を、電極基体
に含浸、充填して陽極板とするものである。この
方法によれば、高温における特性が改善される
が、まだ十分とは言えない。 (ハ) 発明が解決しようとする問題点 本発明は前記問題点に鑑みなされたものであつ
て、水酸化ニツケルを主活物質とする陽極板にお
いて、コバルト化合物及びカドミウム化合物の効
果的な添加方法を提案するものであつて、更なる
高温時の充電効率の向上を計るものである。 (ニ) 問題点を解決するための手段 本発明のアルカリ蓄電池用陽極板の製造方法に
よれば、コバルト化合物を固溶せる水酸化ニツケ
ルを主活物質とし、該主活物質を電極基体に充填
した後、該電極基体にカドミウム塩溶液を含浸し
て陽極板とすることを特徴とするものである。 又、前記コバルト化合物及びカドミウム塩溶液
を含浸して生成せるカドミウム化合物の添加量
は、水酸化ニツケルに対して夫々３〜15重量％及
び0.1〜10重量％とするのが望ましい。 (ホ) 作用 而して、本発明者がその添加方法について種々
実験検討した結果、コバルト化合物については電
極基板に活物質である水酸化ニツケルを充填する
際に同時に含まれていること、即ち、水酸化ニツ
ケルと固溶体を形成しなければ高温時の充電効率
向上に効果がない。一方カドミウム化合物の添加
方法については次の如く結果が得られた。即ち、
コバルト化合物を固溶せる水酸化ニツケルからな
る主活物質を充填した後カドミウム塩溶液を含浸
することにより得られる陽極板が、高温特性上、
特に好ましい事を見い出した。つまり、本発明に
よる陽極板においては、コバルト化合物を固溶せ
る水酸化ニツケルからなる主活物質表面に、カド
ミウム化合物が存在している状態が推測される。
このような状態により、コバルト化合物が、水酸
化ニツケルの結晶格子にとり込まれ固溶し、水酸
化ニツケルの結晶格子を歪ませて、水酸化ニツケ
ルの活性度を向上させる。更にカドミウム化合物
が、この主活物質を覆うことにより、前記活性度
を更に高くすることが可能となる。したがつて、
充電効率が低下しやすい高温であつても、活物質
の活性度を高いままに維持することが可能であ
り、陽極板の放電容量の低下が抑制され、高い電
池容量が得られる。 (ヘ) 実施例 実施例 以下、本発明の製造方法による陽極板の作成例
を詳述する。 ニツケル活物質量に対してコバルトが10重量％
になるように硝酸コバルトを添加した硝酸ニツケ
ル水溶液を含浸液とし、この含浸液を通常の方法
で多孔度約80％の焼結基板（電極基体）の孔部に
含浸し、中間乾燥後アルカリ処理して水洗・乾燥
するという工程を数回繰返して所定量の主活物質
を充填する。尚、この時点における主活物質は水
酸化ニツケルに添加剤としてのコバルト化合物が
固溶した形態となつている。その後、この極板を
比重1.41の硝酸カドミウム溶液中に５分間浸漬
し、乾燥後アルカリ処理し水洗・乾燥を行なう。
その結果、ニツケル活物質量に対して約８重量％
のカドミウム量が含浸、付着された本発明による
ニツケル陽極板Ａを得る。 この陽極板Ａと、カドミウム陰極板とを組合せ
て、公称容量1.8AHの円筒型アルカリ蓄電池を組
みたてた。 比較例 本発明の効果を確認するため、次述の如き３種
の製造方法により得た陽極板を用いて同様の円筒
型アルカリ蓄電池を組みたてた。 比較例 １ 硝酸ニツケル溶液に硝酸コバルトと硝酸カドミ
ウム溶液を添加した混合水溶液を含浸液とし、こ
の含浸液をニツケル基板の孔部に含浸して比較陽
極板１を形成した。この製造方法は、特開昭51−
87733号公報等に記載された三成分混合溶液を用
いている。 比較例 ２ 硝酸ニツケル水溶液に硝酸カドミウム溶液を添
加したものを含浸液とし、この含浸液をニツケル
基板の多孔部に含浸したのち、ついで硝酸コバル
ト溶液中に浸漬して活物質の表面にコバルト化合
物を存在させて、比較陽極板２を作成した。 比較例 ３ 硝酸ニツケル水溶液単独の含浸液をニツケル基
板の多孔部に含浸したのち、ついで硝酸コバルト
と硝酸カドミウムの混合水溶液中に浸漬してコバ
ルト及びカドミウムを添加し、比較陽極板３を作
成した。 尚、これら比較陽極板１，２及び３において、
コバルト及びカドミウム量は本発明の陽極板Ａの
場合と同一になるように調整した。 表１及び図面はこれら陽極板を用いて作成した
アルカリ蓄電池の性能を比較したものであり、表
１は温度45℃において、60ｍＡ（１／30C）の電
流で48時間充填し、1800ｍＡ（1C）の電流で放電
して端子電圧が1.0Vになるまでの放電時間を比
較したものである。これより本発明の陽極板Ａを
用いた電池は、比較例に係る電池と比較すると、
同じ充電時間であつても充電効率が高いので陽極
板が十分に充電され放電時間が長くなる。したが
つて本発明の陽極板Ａの放電容量が最も大きいこ
とがわかる。 又、図面は表１の充、放電条件におけるサイク
ル特性を示し、このサイクル特性においても本発
明による陽極板Ａを用いた電池が最も優れてい
る。

【表】 本発明の効果を考察するに、従来より高温時の
充電効率向上のための添加剤として知られている
コバルト及びカドミウム化合物において、コバル
ト化合物は水酸化ニツケル活物質に固溶させた形
で主活物質として組込み、一方カドミウム化合物
は前記主活物質表面を覆うごとく、カドミウム塩
溶液として、主活物質を充填せる電極基体に含浸
されている。かかる構成により添加剤の効果を効
率よく発揮させることができるためであると考え
られる。 尚、添加剤の量については、コバルト量が少く
ないと常温充電時の容量は増大するが、高温充電
時の容量は逆に減少する傾向を示す。一方コバル
ト量を多くすると極板内における水酸化ニツケル
活物質量が低下するため容量の減少を来たす。従
つて本発明者の実験検討に依ればその添加量は水
酸化ニツケル活物質量に対して３〜15重量％が適
当であつた。 又、カドミウム量は微量でもその効果を発揮す
るが多量に用いると常温時の容量の低下が生じ
た。この理由は詳かでないが、このような不都合
を生じない添加量としては水酸化ニツケル活物質
量に対して0.1〜10重量％が適当であつた。 尚、本発明において、コバルト化合物を固溶せ
る水酸化ニツケルからなる主活物質は、ニツケル
塩とコバルト塩を同時に析出させることにより得
られるものである。 (ト) 発明の効果 以上、詳述した如く本発明の陽極板の製造方法
に依れば、高温時の充電効率を改善することがで
き、電池容量の増大を計れるものであり、その工
業的価値は極めて大である。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明による陽極板を用いたアルカリ蓄
電池のサイクル特性を示す。 Ａ……本発明による陽極板、１，２，３……比
較陽極板。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ コバルト化合物を固溶せる水酸化ニツケルを
   主活物質とし、該主活物質を電極基体に充填した
   後、該電極基体にカドミウム塩溶液を含浸して陽
   極板とすることを特徴とするアルカリ蓄電池用陽
   極板の製造方法。 ２ 前記コバルト化合物及びカドミウム塩溶液を
   含浸して生成せるカドミウム化合物の添加量は、
   水酸化ニツケルに対して夫々３〜15重量％及び
   0.1〜10重量％であることを特徴とする特許請求
   の範囲第１項記載のアルカリ蓄電池用陽極板の製
   造方法。