JPS6338342Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は内燃機関のピストンリング装置に関す
る。

往復動型内燃機関のピストンリング部のフリク
シヨンロス、とくに爆発上死点付近でのメタルコ
ンタクトを防いで摺動摩擦を低減することを目的
として、本出願人により第１図〜第３図に示すよ
うな装置が提案されている。（実願昭55−1793の
変更出願である特開昭57−44755号公報） 図において、１はピストン、２はシリンダ壁、
３と４はそれぞれ第１、第２のピストンリング部
である。

第２のピストンリング部４は主としてオイルの
潤滑供給を調整するオイルリングの役割があるの
に対し、第１のピストンリング部３は燃焼ガスの
気密維持とオイル供給との役割を兼ねる。

そして、第１のピストンリング部３は、リング
溝５にピストンの軸方向に重ね合せて装着される
２枚のピストンリング６，７と、これらリング
６，７の背面（内周）に接触するバツクアツプリ
ング８とから構成される。

ピストンリング６，７はシリンダ壁２と接触面
はテーパ面６Ａ，７Ａが形成され、このテーパ面
６Ａ，７Ａはリング６，７の互の接触側面から遠
ざかるにつれて外径が縮少するような傾きをも
つ。

この結果、第１図のようにピストン１の上昇過
程では上方のリング６がテーパ面６Ａにかかる油
圧で内側に引つ込むのに対し、下方のリング７は
これと逆テーパのためシリンダ壁２に接触して壁
面の付着オイルを適正な厚みを残してかき上げ、
２つのリング６，７とバツクアツプリング８との
間にオイルを溜め込む。

このようにして溜め込まれたオイルは、圧縮上
死点付近で点火（着火）し、筒内ガス圧力がいつ
きに上昇すると、第２図のように、ピストンリン
グ６の矢印で示すような下方への移動により、シ
リンダ壁２に向けて押し出される。

したがつてこのようにピストン速度が低くなる
上死点付近でもピストン摺動面に十分なオイルを
供給することができ、メタルコンタクトに近い境
界潤滑を起こすことなく摩擦損失の少ない流体潤
滑を確保するのである。

なお、吸入行程などのピストン下降時は、第３
図のように、上昇行程とは逆に下方のピストンリ
ング７が引つ込み上方のピストンリング６によ
り、シリンダ壁２に付着する余剰オイルをかき落
すので、上昇行程と同じく適正油膜の形成が行え
る。

このようにして、常に良好な潤滑性能を確保
し、ピストンリング部のフリクシヨンロスを低減
して、エンジン出力や燃費の向上をはかつている
のである。

ところが、この種のピストンリングをピストン
１に装着するには、２枚のピストンリング６，７
とバツクアツプリング８をそれぞれ個別にリング
溝５に嵌め込まなければならず組立が繁雑とな
り、また組立工程に至るまでの配送段階において
も３つの部材を取違える事態をしばしば生じてい
た。

本考案はこのような問題を解決するためになさ
れたもので、断面Ｕ字の一枚のピストンリングを
そのＵ字開口部をシリンダ壁に対向して設け、Ｕ
字溝部にオイル押出し用のリングを摺動自在に装
着することにより、上述の配送ミス及び装着ミス
を回避することを目的とするピストンリング装置
を提供するものである。

以下本考案の実施例を図面に基づいて説明する
が、第１図から第３図に示す部位と同一部位には
同一符号を符して示す。

第４図〜第６図において、ピストンリング１０
の断面形状をＵ字型として、その開口部１０Ａを
シリンダ壁２に対向するように環状溝部１０Ｂを
形成する。

開口部１０Ａの反対側のリング内周部には、環
状溝部１０Ｂとリング溝５とを連通する穴部１０
Ｃを複数個設け、燃焼室からリング溝５の背後を
通つて伝わるガス圧が溝部１０Ｂに作用するよう
にする。

そしてこの溝部１０Ｂに、第７図に示すような
環状リング１１を摺動自由に装入する。リング１
１はその合口を斜めに切り、これら斜面１１Ａと
１１Ｂとが当接するように形成し、第５図の矢印
で示すようにリング１０の背後側から強いガス圧
が作用したとき外径を増大する方向に変形するよ
うに構成する。

なお、リング１０のシリンダ壁２との摺接部は
従来例と同様にテーパ面１０Ｄ，１０Ｅに形成す
る。

このように構成したので、ピストン上昇時に
は、第４図に示すようにテーパ面１０Ｅによりオ
イルを掻き上げ、上死点に近づくに従い開口部１
０Ａのオイル量を増大し、リング１１は図におい
て左方に移動（径を収縮）する。

ピストンが圧縮行程から燃焼行程に移行する
と、第５図に矢印で示すように燃焼ガス圧力がピ
ストンとシリンダ壁２との間隙を通つてリング溝
５の背後からリング１１をいつきに右方に押し出
す（リング１１が拡径する）。この結果リング１
１の前方に貯えられたオイルはシリンダ壁２との
摺接部に積極的に供給されるので潤滑状態を保持
し、円滑なピストン摺動を維持する。

吸気行程などのピストン下降時には、第６図に
示すように慣性力、吸入負圧などによりリング１
０，１１の全体がリング溝５の上面に押し付けら
れるとともに、シリンダ壁２に付着するオイルを
テーパ面１０Ｄにより掻き落しオイル消費の抑制
を図つている。

このようにして、とくに上死点付近の潤滑性能
を良好に保ちフリクシヨンロスを著しく低減する
ことができる。

また、シリンダ壁２と摺接するリングをＵ字型
のリング１０一部材で賄つているためリング溝５
へ装着する際従来のようにテーパ面６Ａと７Ａと
を逆にして装入することはあり得ないので組立が
容易となる。また、運搬過程においてピストンの
部品点数の錯誤を生じることも少なくなり、ピス
トンの生産性を高めることができる。

第８図、第９図は他の実施例を示すものであつ
て、前記実施例のピストンリング１０をリング溝
の底部にいくに従い巾広に形成されるリング溝１
２に装着したものである。

これによれば、ピストン上昇時には、リング溝
１２の下側斜面に当たつてピストンリング１０が
傾き、第８図に示すように、テーパ面１０Ｅはシ
リンダ壁２と摺接するのに対しテーパ面１０Ｄは
シリンダ壁２から若干後退するので、オイルを開
口部１０Ａにより多く貯える。一方、ピストン下
降時には逆にテーパ面１０Ｄのみがシリンダ壁２
と摺接しオイルを開口部１０Ａに貯えることがで
きる。

したがつて、上記実施例と同様にピストンリン
グの組立性が向上することはもちろん、これに加
えて潤滑状態をなお一層改善することができる。

以上説明してきたように、本考案によれば、一
枚Ｕ字断面のピストンリングをその開口部がシリ
ンダの壁に対向するようにリング溝に装着すると
ともに、Ｕ字溝部に摺動自由なオイル押出し用の
リングを嵌め込んだので、ピストンリング等のオ
イル潤滑性能を良好に維持するとともに、ピスト
ンリング等の部品の運搬段階及び組立工程におい
て配送ミスや組立ミスを減らせると同時に工程数
の簡略化を図りひいては生産性の向上、コストダ
ウンが期待できるという効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図、第３図は従来例の断面図、第２図は従
来例の部分断面図、第４図、第６図は本考案の実
施例の断面図、第５図は同じく実施例の要部断面
図、第７図は同じく実施例のリングの正面図、第
８図、第９図は他の実施例の断面図である。 １……ピストン、２……シリンダ壁、５……リ
ング溝、１０……ピストンリング、１０Ａ……Ｕ
字開口部、１０Ｂ……Ｕ字溝部、１０Ｃ……孔、
１１……摺動リング、１２……リング溝。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ シリンダ内を上下動するピストンを備えた内
   燃機関において、ピストンのリング溝に断面Ｕ
   字のピストンリングを嵌め、このリングの外周
   に環状溝部を設け、このリングの背面から環状
   溝部と連通する孔を形成し、さらに環状溝部に
   径方向に拡縮自由なリングを装入したことを特
   徴とする内燃機関のピストンリング装置。 ２ 前記ピストンのリング溝はピストン内周側に
   向うに従い巾広になるような傾斜側面を形成し
   たことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第
   １項記載の内燃機関のピストンリング装置。